JP2021152306A - 鋼矢板の縦継ぎ構造及び縦継ぎ構造の施工方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一般的には、施工現場において溶接により縦継ぎが行われている。縦継ぎの具体的な方法としては、予め鋼矢板に開先加工を施しておく。施工現場において一対の鋼矢板の断面の位置を合わせ(突き合わせ)、鋼矢板同士を壁体方向(材軸方向)に接合するための継手を除く断面を対象として、完全溶け込み溶接により一対の鋼矢板を互いに接合する。接合の際の断面欠損を補うために、鋼矢板のウェブ及びアームに補強板をそれぞれ接合することが行われている。
しかしながら、近年の鋼矢板の大断面化に伴い、施工現場における溶接時間が増加している。溶接時間が増加すると、施工の工期や検査時間も長期化する。
本発明の鋼矢板の縦継ぎ構造は、第1鋼矢板と、前記第1鋼矢板に対して、前記第1鋼矢板の材軸方向の一方側に並べて配置された第2鋼矢板と、前記第2鋼矢板における前記第2鋼矢板の厚さ方向の表面に接合され、前記第2鋼矢板よりも前記材軸方向の他方側に向かって延びる補強板と、前記第1鋼矢板の前記厚さ方向の表面と前記補強板とを接合する溶接部と、を備えることを特徴としている。
例えば、地盤に第1鋼矢板を、材軸方向が上下方向に沿うように打設する。次に、クレーン等で補強板付き鋼矢板を吊る。その際に、第2鋼矢板よりも補強板が下方に向かって延びるように配置する。ここで、第1鋼矢板の厚さ方向の表面に補強板を厚さ方向に接触させることで、第1鋼矢板及び第2鋼矢板を材軸方向に並べて配置する。これにより、材軸方向及び厚さ方向にそれぞれ沿う断面における両鋼矢板の位置を合わせた状態で、両鋼矢板を材軸方向に並べて配置することができる。
また、第2鋼矢板と補強板との接合は予め工場等で行うことができる。このため、施工現場で第2鋼矢板と補強板との溶接も行う場合に比べて、施工現場で行われる溶接に関する作業を低減させることができる。
従って、施工現場における断面の位置を合わせる作業、及び溶接作業が容易になり、施工現場において施工に要する時間を低減させることができる。
この発明によれば、第1鋼矢板の厚さ方向の一方側を向く表面に、複数の補強板を厚さ方向の他方側に移動させて接触させる際に、複数の補強板のいずれによっても断面の位置を合わせる作業を行うことができる。これにより、断面の位置を合わせる作業をより確実に行うことができる。
この発明によれば、第1鋼矢板及び第2鋼矢板のそれぞれが、ウェブ、一対のフランジ、及び一対のアームを備えるハット形鋼矢板である場合に関して、施工現場において施工に要する時間を低減させることができる。
この発明によれば、ウェブ及び一対のアームは互いに略平行に配置され、これらウェブ及び一対のアームにウェブ補強板及び一対のアーム補強板が接合されている。このため、ウェブ補強板及び一対のアーム補強板により、材軸方向及び厚さ方向にそれぞれ直交する直交方向の広い範囲にわたって、両鋼矢板の断面の位置を合わせることができる。
この発明によれば、例えば第1鋼矢板を打設して補強板付き鋼矢板を吊る。補強板付き鋼矢板を厚さ方向に移動させて、一対のアーム補強板を第1鋼矢板の厚さ方向の表面にそれぞれ接触させる。このとき、一対のアーム補強板が第2鋼矢板よりも材軸方向の他方側に向かって延びる長さが、ウェブ補強板が第2鋼矢板よりも材軸方向の他方側に向かって延びる長さよりもそれぞれ長いため、ウェブ補強板を第1鋼矢板に接触させない状態にすることができる。
そして、一対のアーム補強板により材軸方向及び厚さ方向にそれぞれ沿う断面における両鋼矢板の位置を合わせた状態で、第1鋼矢板に第2鋼矢板を近づけ、ウェブ補強板を第1鋼矢板の厚さ方向の表面に接触させることができる。
この発明によれば、フランジ位置合わせ板が第1鋼矢板のフランジに接触する表面は直交方向に対して傾斜している。従って、フランジ位置合わせ板により、両鋼矢板の直交方向における位置を合わせることができる。
第2鋼矢板と補強板との接合は、予め工場等で行うことができる。このため、施工現場における溶接作業を、施工現場で第2鋼矢板と補強板との溶接も行う場合に比べて、溶接工程で行われる溶接に関する作業に低減させることができる。
従って、施工現場における断面の位置を合わせる作業、及び溶接作業が容易になり、施工現場において施工に要する時間を低減させることができる。
以下、本発明に係る鋼矢板の縦継ぎ構造(以下、単に縦継ぎ構造とも言う)の第1実施形態を、図1から図6を参照しながら説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の縦継ぎ構造1は、第1鋼矢板10Aと、第2鋼矢板10Bと、補強板20と、隅肉溶接部(溶接部)30と、を備えている。図1は、鋼矢板10A,10Bを第1鋼矢板10Aの材軸方向Zに沿って見た平面図である。材軸方向Zは、鋼矢板10A,10Bが延びる方向を意味する。なお、第2鋼矢板10B、補強板20、及び後述するウェブ溶接部24、アーム溶接部25により、補強板付き鋼矢板35が構成される。
本実施形態では、第1鋼矢板10Aの構成と第2鋼矢板10Bの構成とは、互いに同一である。このため、第1鋼矢板10Aの構成を、数字、又は数字及び英小文字に英大文字「A」を付加することで示す。第2鋼矢板10Bのうち第1鋼矢板10Aに対応する構成を、第1鋼矢板10Aと同一の数字、又は数字及び英小文字に英大文字「B」を付加することで示す。これにより、重複する説明を省略する。例えば、第1鋼矢板10Aの後述するウェブ11Aと第2鋼矢板10Bのウェブ11Bとは、互いに同一の構成である。
なお、第2鋼矢板10Bは、第1鋼矢板10Aに対して材軸方向Zの一方側Z1に並べて配置されている。
第1鋼矢板10Aの厚さ方向Xは、ウェブ11Aの厚さ方向でもあり、第2鋼矢板10Bの厚さ方向でもある。厚さ方向Xは、継手部14Aを用いた通常の接続により複数のウェブ11Aで鋼製連壁を構成したときに、鋼製連壁の厚さ方向となる方向のことを意味する。
ここで、材軸方向Z及び厚さ方向Xにそれぞれ直交する方向を、直交方向Yと言う。図1に示す平面視において、ウェブ11Aは直交方向Yに延びる線状に形成されている。
一対のアーム13Aは、一対のフランジ12Aの先端からウェブ11Aに沿ってそれぞれ延びている。一対のアーム13Aは、互いに離間する方向に延びている。一対のアーム13Aは、ウェブ11Aに対して略平行に配置されている。
一対の継手部14Aは、公知の構成のものである。継手部14A同士は、互いに連結可能である。各継手部14Aは、各アーム13Aの先端に固定されている。
図2に示すように、ウェブ11A、一対のフランジ12A、一対のアーム13A、及び一対の継手部14Aのそれぞれにおける材軸方向Zの一方側Z1とは反対側の他方側Z2の端縁の位置は、互いに一致している。それらにおける材軸方向Zの一方側Z1の端縁の位置も、同様である。
鋼矢板10A,10Bは、鋼板をロールフォーミングすること等により形成されている。
この例では、鋼矢板10A,10Bは、材軸方向Zが上下方向に沿うように配置され、材軸方向Zの一方側Z1が上方になるように配置されている。しかし、鋼矢板10A,10Bが配置される向きは、この限りではない。
ウェブ補強板21は、第2鋼矢板10Bのウェブ11Bにおける厚さ方向Xの一方側X1の(を向く)表面11aBに接合されている。具体的には、ウェブ11Bの表面11aBとウェブ補強板21とは、隅肉溶接により形成されるウェブ溶接部24により互いに接合されている。例えばウェブ溶接部24は、ウェブ補強板21の材軸方向Zの一方側Z1の部分における直交方向Yの両側の端面及び材軸方向Zの一方側Z1の端面にそれぞれ接合されている。ウェブ補強板21は、ウェブ11B(第2鋼矢板10B)よりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びている。
本実施形態では、ウェブ補強板21がウェブ11Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びる長さL1、及び、一対のアーム補強板22がアーム13Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びる長さL2は、互いに同等である。ウェブ補強板21がウェブ11Bに接合されている材軸方向Zの長さ、及び、アーム補強板22がアーム13Bに接合されている材軸方向Zの長さは、互いに同等である。
縦継ぎ構造1では、第2鋼矢板10Bの厚さ方向Xの表面11aB,13aBに複数の補強板20が接合されている。
例えばウェブ溶接部31は、ウェブ補強板21の直交方向Yの両側の端面及び材軸方向Zの他方側Z2の端面にそれぞれ接合されている。一対のアーム溶接部32は、アーム補強板22の材軸方向Zの他方側Z2の部分における直交方向Yの両側の端面及び材軸方向Zの他方側Z2の端面にそれぞれ接合されている。
まず、第1配置工程(図3に示すステップS2)において、図4に示すように、地盤Gに第1鋼矢板10Aを、材軸方向Zが上下方向に沿うように打設する。例えば、図示しないクレーンにより、ワイヤ100及びチャック101を介して補強板付き鋼矢板35を吊る。その際に、第2鋼矢板10Bよりも補強板20が下方(材軸方向Zの他方側Z2)に向かって延びるように配置する。
第1配置工程S2が終了すると、ステップS4に移行する。
第2配置工程S4では、第1鋼矢板10Aに対して第2鋼矢板10Bを厚さ方向Xの一方側X1とは反対側の他方側X2に移動させて、第1鋼矢板10Aのウェブ11Aの表面11aA、及び一対のアーム13Aの13aAに複数の補強板20をそれぞれ接触させる。このとき、複数の補強板20は位置決めのガイドとして機能する。
図5に示すように、第2鋼矢板10Bを厚さ方向Xの他方側X2に移動させる際に、第1鋼矢板10Aと、複数の補強板20における第2鋼矢板10Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びた部分の一部とが、材軸方向Zにそれぞれ重なるように、第1鋼矢板10Aに対する補強板付き鋼矢板35の上下方向の位置を調節する。
このとき、第1鋼矢板10Aに第2鋼矢板10Bを突き合わせるように配置する。
第2配置工程S4が終了すると、ステップS6に移行する。
なお、溶接工程S6における溶接には、開先溶接等、隅肉溶接以外の溶接を用いてもよい。
溶接工程S6が終了すると、施工方法S1の全工程が終了し、縦継ぎ構造1が施工される。
例えば、地盤Gに第1鋼矢板10Aを、材軸方向Zが上下方向に沿うように打設する。次に、クレーン等で補強板付き鋼矢板35を吊る。その際に、第2鋼矢板10Bよりも補強板20が下方に向かって延びるように配置する。ここで、第1鋼矢板10Aの厚さ方向Xの表面11aA,13aAに補強板20を厚さ方向Xに接触させることで、第1鋼矢板10A及び第2鋼矢板10Bを材軸方向Zに並べて配置する。これにより、断面Pにおける両鋼矢板10A,10Bの位置を合わせた状態で、両鋼矢板10A,10Bを材軸方向Zに並べて配置することができる。
また、第2鋼矢板10Bと補強板20との接合は予め工場等で行うことができる。このため、施工現場における溶接作業を、施工現場で第2鋼矢板10Bと補強板20との溶接も行う場合に比べて、隅肉溶接部30を形成するための隅肉溶接に関する作業に低減させることができる。
従って、施工現場における断面の位置を合わせる作業、及び溶接作業が容易になり、施工現場において施工に要する時間を低減させることができる。
補強板20として、ウェブ補強板21と、一対のアーム補強板22と、を備えている。ウェブ11B及び一対のアーム13Bは互いに略平行に配置され、これらウェブ11B及び一対のアーム13Bにウェブ補強板21及び一対のアーム補強板22が接合されている。このため、ウェブ補強板21及び一対のアーム補強板22により、直交方向Yの広い範囲にわたって、両鋼矢板10A,10Bの断面の位置を合わせることができる。
また、第2鋼矢板10Bと補強板20との接合は、予め工場等で行うことができる。このため、施工現場における溶接作業を、施工現場で第2鋼矢板10Bと補強板20との溶接も行う場合に比べて、溶接工程S6で行われる隅肉溶接に関する作業に低減させることができる。
従って、施工現場における断面の位置を合わせる作業、及び溶接作業が容易になり、施工現場において施工に要する時間を低減させることができる。
次に、本発明の第2実施形態について図3、図7から図9を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図7及び図8に示す縦継ぎ構造2では、ウェブ補強板21は、第2鋼矢板10Bのウェブ11Bにおける厚さ方向Xの一方側X1とは反対側の他方側X2の表面11bBに接合されている。一対のアーム補強板22がアーム13Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びる長さL2が、ウェブ補強板21がウェブ11Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びる長さL1よりもそれぞれ長い。
なお、本実施形態の第2鋼矢板10B、複数の補強板20、ウェブ溶接部24、及びアーム溶接部25により、補強板付き鋼矢板35aが構成される。
アーム補強板22がアーム13Bに接合されている材軸方向Zの長さは、ウェブ補強板21がウェブ11Bに接合されている材軸方向Zの長さよりも長い。
施工方法S11では、前記第1配置工程S2を行った後で、第2配置工程(ステップS12)を行う。
図8及び図9に示すように、第2配置工程S12では、第1鋼矢板10Aに対して第2鋼矢板10Bを厚さ方向Xの他方側X2に移動させつつ、第1鋼矢板10Aの一対のアーム13Aの表面13aAに一対のアーム補強板22を接触させる。このとき、ウェブ補強板21が第1鋼矢板10Aのウェブ11Aに干渉しないように、第1鋼矢板10Aに対するウェブ補強板21の上下方向の位置を調節する。
そして、第1鋼矢板10Aに対して第2鋼矢板10Bを下方に移動させ、第1鋼矢板10Aに第2鋼矢板10Bを突き合わせる。このとき、第1鋼矢板10Aのウェブ11Aの表面11bAに、ウェブ補強板21におけるウェブ11Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びた部分を厚さ方向Xに接触させる。
第2配置工程S12が終了すると、前記溶接工程S6を行う。溶接工程S6が終了すると、施工方法S11の全工程が終了し、縦継ぎ構造2が施工される。
さらに、例えば第1鋼矢板10Aを打設して補強板付き鋼矢板35aを吊る。補強板付き鋼矢板35aを厚さ方向Xの他方側X2に移動させて、一対のアーム補強板22を一対のアーム13Bの表面13aAにそれぞれ接触させる。このとき、一対のアーム補強板22がアーム13Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びる長さL2が、ウェブ補強板21がウェブ11Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びる長さL1よりもそれぞれ長いため、ウェブ補強板21をウェブ11Aに接触させない状態にすることができる。
そして、一対のアーム補強板22により断面Pにおける両鋼矢板10A,10Bの位置を合わせた状態で、第1鋼矢板10Aに第2鋼矢板10Bを近づけ、ウェブ補強板21をウェブ11Aの厚さ方向Xの他方側X2の表面11bAに接触させることができる。
以上のように、両鋼矢板10A,10Bの断面の位置を合わせた状態で、第2鋼矢板10Bに接合された複数の補強板20により第1鋼矢板10Aを厚さ方向Xの両側から挟むことができる。これにより、第2実施形態の縦継ぎ構造2では、第1実施形態の縦継ぎ構造1よりも鋼重(縦継ぎ構造に用いられる補強板20の重量)が増えるものの、他の部材、治具、装置等を用いることなく、第2鋼矢板10Bの厚さ方向Xの移動を確実に止めることができる。
次に、本発明の第3実施形態について図3及び図10を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図10に示すように、本実施形態の縦継ぎ構造3では、ウェブ補強板21がウェブ11Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びる長さL1が、一対のアーム補強板22がアーム13Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びる長さL2よりも長い。この例では、ウェブ補強板21がウェブ11Bに接合されている材軸方向Zの長さは、一対のアーム補強板22がアーム13Bに接合されている材軸方向Zの長さよりも長い。
なお、本実施形態の第2鋼矢板10B、複数の補強板20、ウェブ溶接部24、及びアーム溶接部25により、補強板付き鋼矢板35bが構成される。
施工方法S21では、前記第1配置工程S2を行った後で、第2配置工程(ステップS22)を行う。第2配置工程S22では、第1鋼矢板10Aに対して第2鋼矢板10Bを厚さ方向Xの一方側X1に移動させつつ、第1鋼矢板10Aのウェブ11Aの表面11bAにウェブ補強板21を接触させる。このとき、一対のアーム補強板22が第1鋼矢板10Aの一対のアーム13Aに干渉しないように、第1鋼矢板10Aに対する一対のアーム補強板22の上下方向の位置を調節する。このとき、ウェブ補強板21は位置決めのガイドとして機能する。
そして、第1鋼矢板10Aに対して第2鋼矢板10Bを下方に移動させ、第1鋼矢板10Aに第2鋼矢板10Bを突き合わせる。このとき、第1鋼矢板10Aの一対のアーム13Aの表面13aAに、一対のアーム補強板22における一対のアーム13Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びた部分を厚さ方向Xに接触させる。
第2配置工程S22が終了すると、前記溶接工程S6を行う。溶接工程S6が終了すると、施工方法S21の全工程が終了し、縦継ぎ構造3が施工される。
さらに、例えば第1鋼矢板10Aを打設して補強板付き鋼矢板35bを吊る。補強板付き鋼矢板35bを厚さ方向Xの一方側X1に移動させて、ウェブ補強板21を第1鋼矢板10Aのウェブ11Aの表面11bAに接触させる。このとき、ウェブ補強板21がウェブ11Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びる長さL1が、一対のアーム補強板22がアーム13Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びる長さL2よりも長い。このため、第1鋼矢板10Aに対する一対のアーム補強板22の上下方向の位置を調節することで、一対のアーム補強板22を第1鋼矢板10Aに接触させない状態にすることができる。
ウェブ補強板21により断面Pにおける両鋼矢板10A,10Bの位置を合わせた状態で、第1鋼矢板10Aに第2鋼矢板10Bを近づけ、一対のアーム補強板22を第1鋼矢板10Aの一対のアーム13Aの表面13aAにそれぞれ接触させる。
以上のように、両鋼矢板10A,10Bの断面の位置を合わせた状態で、第2鋼矢板10Bに接合された複数の補強板20により第1鋼矢板10Aを厚さ方向Xの両側から挟むことができる。このため、第2鋼矢板10Bの厚さ方向Xの動きを止めつつ、アーム補強板22とウェブ補強板21の溶接長を同等にしつつ、補強板20の重量を抑えることができる。
この場合、一部の補強板20を位置決めのガイドとして機能させ、両鋼矢板10A,10Bの断面の位置を合わせることができる。そして、両鋼矢板10A,10Bの断面の位置を合わせた状態で、第2鋼矢板10Bに接合された複数の補強板20により第1鋼矢板10Aを厚さ方向Xの両側から挟むことができる。
次に、本発明の第4実施形態について図11を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図11に示すように、本実施形態の縦継ぎ構造4では、第2実施形態の縦継ぎ構造2において、一対のアーム補強板22が一対のアーム13Bにおける厚さ方向Xの他方側X2の表面13bBにそれぞれ接合されている。すなわち、複数の補強板20は、第2鋼矢板10Bにおける厚さ方向Xの他方側X2の表面11bB,13bBに、それぞれ接合されている。
そして、アーム補強板22がアーム13Bに接合されている材軸方向Zの長さL3が、ウェブ補強板21がウェブ11Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びる長さL1よりも短い。このため、アーム補強板22の質量を低減させることができる。
さらに、アーム溶接部32は、アーム補強板22の材軸方向Zの他方側Z2の端部には形成されていない。このため、施工現場において、溶接が比較的難しい上向き溶接を行わないため、溶接施工性が向上する。
さらに、第1鋼矢板10Aの厚さ方向Xの他方側X2の表面11bB,13bBに、複数の補強板20を厚さ方向Xの一方側X1に移動させて接触させる際に、複数の補強板20のいずれによっても断面の位置を合わせる作業を行うことができる。これにより、断面の位置を合わせる作業をより確実に行うことができる。
次に、本発明の第5実施形態について図12を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図12に示す縦継ぎ構造5は、第2実施形態の縦継ぎ構造2の各構成に加えて、一対のフランジ位置合わせ板40を備えている。各フランジ12Bにおける厚さ方向Xの他方側X2の表面12aBとフランジ位置合わせ板40の材軸方向Zの一方側Z1の部分とは、隅肉溶接により形成されるフランジ溶接部41により互いに接合されている。
ウェブ補強板21がウェブ11Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びる長さL1は、一対のフランジ位置合わせ板40がフランジ12Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びる長さL4よりも長い。
なお、本実施形態の第2鋼矢板10B、複数の補強板20、アーム溶接部25、及びフランジ溶接部41により、補強板付き鋼矢板35dが構成される。
さらに、例えば第1鋼矢板10Aを打設して補強板付き鋼矢板35dを吊る。補強板付き鋼矢板35dを厚さ方向Xの他方側X2に移動させて、一対のアーム補強板22をアーム13Aの厚さ方向Xの一方側X1の表面13aAにそれぞれ接触させる。このとき、一対のアーム補強板22がアーム13Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びる長さL2が、一対のフランジ位置合わせ板40がフランジ12Bよりも材軸方向Zの他方側Z2に向かって延びる長さL4よりもそれぞれ長いため、一対のフランジ位置合わせ板40をフランジ12Aに接触させない状態にすることができる。
一対のアーム補強板22により断面Pにおける両鋼矢板10A,10Bの位置を合わせた状態で、第1鋼矢板10Aに第2鋼矢板10Bを近づけ、一対のフランジ位置合わせ板40を第1鋼矢板10Aのフランジ12Aの厚さ方向Xの他方側X2の表面12aAにそれぞれ接触させる。
この際に、各フランジ位置合わせ板40が第1鋼矢板10Aのフランジ12Aに接触する表面12aAは直交方向Yに対して傾斜しているため、両鋼矢板10A,10Bの直交方向Yにおける位置をさらに精度よく合わせることができる。
例えば、前記第1実施形態から第4実施形態の縦継ぎ構造では、補強板20として、第2鋼矢板10Bの一対のフランジ12Bの少なくとも一方に接合された前記フランジ位置合わせ板40を備えてもよい。フランジ位置合わせ板40が第1鋼矢板10Aのフランジ12Aに接触する表面は直交方向Yに対して傾斜している。従って、フランジ位置合わせ板40により、両鋼矢板10A,10Bの直交方向Yにおける位置を合わせることができる。
このように構成することで、例えばフック等を貫通孔内に通すことで、第2鋼矢板10Bをクレーン等により容易に吊ることができる。
溶接部が、隅肉溶接部30であるとした。しかし、溶接部は開先溶接等、隅肉溶接以外の溶接により形成してもよい。
例えば、図13に示すように、鋼矢板50A,50Bは、U形鋼矢板であるとしてもよい。鋼矢板50Aは、ウェブ11Aと、一対のフランジ12Aと、一対の継手部14Aと、を備えている。鋼矢板50Aでは、厚さ方向Xは、ウェブ11Aの厚さ方向となる。鋼矢板50Bについても、同様である。
また、図14に示すように、鋼矢板55A,55Bは、Z形鋼矢板であるとしてもよい。鋼矢板55Aは、ウェブ11Aと、フランジ12ABと、アーム13Aと、一対の継手部14Aと、を備えている。鋼矢板55Aでは、厚さ方向Xは、ウェブ11Aの厚さ方向となる。鋼矢板55Bについても、同様である。
厚さ方向の第1側は、厚さ方向Xの一方側X1としたが、厚さ方向Xの他方側X2としてもよい。
第1鋼矢板10Aは、一対の継手部14Aを備えなくてもよい。第2鋼矢板10Bについても同様である。
以下では、本発明の実施例を具体的に示してより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
例えば、鋼矢板10A,10Bがハット形鋼矢板25H(規格記号SYW295)である場合に、補強板20の仕様を検討した。補強板20は、図10の縦継ぎ構造3に用いられるウェブ補強板21及び一対のアーム補強板22を対象とした。
縦継ぎ構造2の鋼矢板10A,10Bによる縦継ぎ断面における、複数の補強板20の断面積A、曲げ剛性EI、曲げ降伏耐力Myが、鋼矢板10A,10Bの断面積A、曲げ剛性EI、曲げ降伏耐力My以上となるように、補強板20の仕様を設計した。
補強板20は、鋼材規格がSM490である溶接構造用圧延鋼材で形成されるとした。溶接部の溶接脚長は12mmとし、溶接後の溶接部の強度は低下しないとした。各補強板20は、それぞれの厚さ方向に見たときに矩形状を呈する板状に形成されているとした。
このとき、ウェブ補強板21において、幅(直交方向Yの長さ)は168mmであり、厚さ(厚さ方向Xの長さ)は43mmである。アーム補強板22において、幅は84mmであり、厚さは43mmである。
10A,50A,55A,60A 第1鋼矢板
10B,50B,55B,60B 第2鋼矢板
11aA,11aB,12aA,12aB,13aA,13aB,13bA,13bB 表面
11A,11B ウェブ
12A,12B フランジ
13A,13B アーム
20 補強板
21 ウェブ補強板(補強板)
22 アーム補強板(補強板)
30 隅肉溶接部(溶接部)
31 ウェブ溶接部(溶接部)
32 アーム溶接部(溶接部)
35,35a,35b,35d 補強板付き鋼矢板
40 フランジ位置合わせ板
L1,L2 長さ
S1,S11,S21 施工方法(縦継ぎ構造の施工方法)
S4,S12,S22 第2配置工程(配置工程)
S6 溶接工程
X 厚さ方向
X1 一方側
X2,Z2 他方側
Z 材軸方向
Z1 一方側
Claims (7)
- 第1鋼矢板と、
前記第1鋼矢板に対して、前記第1鋼矢板の材軸方向の一方側に並べて配置された第2鋼矢板と、
前記第2鋼矢板における前記第2鋼矢板の厚さ方向の表面に接合され、前記第2鋼矢板よりも前記材軸方向の他方側に向かって延びる補強板と、
前記第1鋼矢板の前記厚さ方向の表面と前記補強板とを接合する溶接部と、
を備える鋼矢板の縦継ぎ構造。 - 前記補強板を複数備え、
複数の前記補強板は、前記第2鋼矢板における前記厚さ方向の一方側の表面にそれぞれ接合されている請求項1に記載の鋼矢板の縦継ぎ構造。 - 前記第1鋼矢板及び前記第2鋼矢板のそれぞれは、前記材軸方向に見たときに、
線状に形成されたウェブと、
前記ウェブの両端から、前記ウェブに対して離間するに従い漸次前記厚さ方向の第1側にそれぞれ延びる一対のフランジと、
前記一対のフランジの先端から前記ウェブに沿ってそれぞれ互いに離間する方向に延びる一対のアームと、
を備える請求項1又は2に記載の鋼矢板の縦継ぎ構造。 - 前記補強板として、
前記第2鋼矢板の前記ウェブに接合されたウェブ補強板と、
前記第2鋼矢板の前記一対のアームにそれぞれ接合された一対のアーム補強板と、
を備える請求項3に記載の鋼矢板の縦継ぎ構造。 - 前記一対のアーム補強板が前記第2鋼矢板よりも前記材軸方向の前記他方側に向かって延びる長さが、前記ウェブ補強板が前記第2鋼矢板よりも前記材軸方向の前記他方側に向かって延びる長さよりもそれぞれ長い請求項4に記載の鋼矢板の縦継ぎ構造。
- 前記第2鋼矢板の前記一対のフランジの少なくとも一方に接合されたフランジ位置合わせ板を備える請求項3から5のいずれか一項に記載の鋼矢板の縦継ぎ構造。
- 第1鋼矢板と、第2鋼矢板の厚さ方向の表面に補強板が接合された補強板付き鋼矢板と、を用いて鋼矢板の縦継ぎ構造を施工する縦継ぎ構造の施工方法であって、
前記第1鋼矢板の前記厚さ方向の表面に、前記補強板における前記第2鋼矢板よりも前記第1鋼矢板の材軸方向の他方側に向かって延びた部分を前記厚さ方向に接触させることで、前記第1鋼矢板及び前記第2鋼矢板を前記材軸方向に並べて配置する配置工程と、
前記第1鋼矢板と前記補強板とを溶接により接合する溶接工程と、
を行う縦継ぎ構造の施工方法。
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