JP2021150160A - 負極活物質、負極、硫化物系全固体電池、および、負極の製造方法 - Google Patents

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浩 長瀬
大輝 前田
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大輝 前田
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Shinichiro Otani
慎一郎 大谷
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匠 竹中
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Abstract

【課題】チタン酸リチウムを負極活物質として含む硫化物系全固体電池において、電池抵抗を低減すること。【解決手段】負極活物質は、硫化物系全固体電池用である。負極活物質は、チタン酸リチウムを含む。チタン酸リチウムにホウ素が含有されている。ICP−AESによって測定される、ホウ素含有量が700質量ppm以上である。XPSによって測定されるナロースペクトルにおいて、ホウ素の1s軌道の結合エネルギー(B1s)が、190eVから195eVの範囲内にピークトップを有している。非極性有機溶媒が使用される非水滴定によって測定される、酸量が0.025mmоl/g以上である。【選択図】図4

Description

本開示は、負極活物質、負極、硫化物系全固体電池、および、負極の製造方法に関する。
特開2017−157359号公報(特許文献1)は、フッ化リチウムおよび塩化リチウムのうち1以上と、リチウムホウ素含有酸化物と、を含む共晶混合物を開示している。
特開2017−157359号公報
硫化物固体電解質は、全固体電池の電解質として有望である。硫化物固体電解質が、高いイオン伝導度を有し得るためである。本開示において「硫化物系全固体電池」は、正極、セパレータ層および負極の各々が硫化物固体電解質を含む、全固体電池を示す。
硫化物系全固体電池の負極は、例えば、ウエットプロセスにより製造され得る。すなわち、負極活物質と、硫化物固体電解質と、バインダと、溶媒とが混合されることにより、負極スラリーが調製される。負極スラリーが基材の表面に塗工され、乾燥されることにより、負極活物質層が形成される。
負極スラリーの溶媒としては、例えば「非極性有機溶媒」が使用され得る。一般的な極性溶媒(例えば、水、N−メチル−ピロリドン等)は、硫化物固体電解質と反応しやすい傾向がある。溶媒と硫化物固体電解質との反応により、硫化物固体電解質のイオン伝導度が低下する可能性がある。非極性有機溶媒は、硫化物固体電解質と反応し難い傾向がある。
負極のバインダとしては、例えば「ポリフッ化ビニリデン(PVdF)系バインダ」が使用され得る。PVdF系バインダは、硫化物固体電解質と反応し難い傾向がある。PVdF系バインダは、好適な耐電圧も有し得る。
負極活物質としては、例えば「チタン酸リチウム」が使用され得る。全固体系においては、活物質と固体電解質との接触界面を維持することが重要となる。チタン酸リチウムは、充放電に伴う体積変化が小さい傾向がある。充放電に伴う活物質の体積変化が小さいことにより、充放電中、活物質と固体電解質との接触界面が維持されることが期待される。
しかしながら、本開示の新知見によると、チタン酸リチウムと、硫化物固体電解質と、PVdF系バインダと、非極性有機溶媒との組み合わせにより、電池抵抗が増加する可能性がある。
すなわち、チタン酸リチウムは、非極性有機溶媒中において塩基性を示す傾向がある。PVdF系バインダは、塩基性物質との接触により、ゲル化する傾向がある。負極スラリー中において、チタン酸リチウムとPVdF系バインダとが接触することにより、PVdF系バインダがゲル化し得る。PVdF系バインダがゲル化し、凝集することにより、粗大粒が形成され得る。PVdF系バインダの粗大粒は、負極活物質層内のイオン伝導および電子伝導を阻害する可能性がある。すなわち、PVdF系バインダの粗大粒は、電池抵抗を増加させる可能性がある。
本開示の目的は、チタン酸リチウムを負極活物質として含む硫化物系全固体電池において、電池抵抗を低減することである。
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし、本開示の作用メカニズムは、推定を含んでいる。作用メカニズムの正否は、特許請求の範囲を限定しない。
〔1〕 負極活物質は、硫化物系全固体電池用である。負極活物質は、チタン酸リチウムを含む。チタン酸リチウムにホウ素が含有されている。誘導結合プラズマ発光分析法によって測定される、ホウ素含有量が700質量ppm以上である。「質量ppm」は、チタン酸リチウムとホウ素との合計に対する、ホウ素の質量分率をppm(parts per million)で表したものである。「質量ppm」は「μg/g」と等しい。X線光電子分光法によって測定されるナロースペクトルにおいて、ホウ素の1s軌道の結合エネルギーが、190eVから195eVの範囲内にピークトップを有している。非極性有機溶媒が使用される非水滴定によって測定される、酸量が0.025mmоl/g以上である。
上記〔1〕の各条件が満たされることにより、負極スラリーにおいて、PVdF系バインダのゲル化が起こり難くなることが期待される。チタン酸リチウムにホウ素が含有されることにより、非極性有機溶媒中における、チタン酸リチウムの塩基性が弱められていると考えられる。PVdF系バインダのゲル化が起こり難くなることにより、負極活物質層における、PVdF系バインダの平均粒サイズが小さくなることが期待される。その結果、電池抵抗の低減が期待される。
本開示の負極活物質において、ホウ素含有量は、700質量ppm以上である。ホウ素の1s軌道の結合エネルギー(以下「B1s」とも記される。)は、ホウ素の存在形態を反映していると考えられる。B1sのピークトップが190eVから195eVの範囲内にある時、特定のホウ素化合物が形成されていると考えられる。該ホウ素化合物は、非極性有機溶媒中において酸として機能し得ると考えられる。
非水滴定により、非極性有機溶媒中における酸量が測定される。本開示の負極活物質においては、酸量が0.025mmоl/g以上である。酸量が0.025mmоl/g未満であると、PVdF系バインダの平均粒サイズが大きくなる可能性がある。
〔2〕 負極は、負極活物質層を含む。負極活物質層は、上記〔1〕に記載の負極活物質と、硫化物固体電解質と、ポリフッ化ビニリデン系バインダとを含む。
上記〔1〕に記載の負極活物質が使用されているため、負極活物質層においてPVdF系バインダが小さい平均粒サイズを有し得る。これにより負極活物質層内のイオン伝導および電子伝導の抵抗が低減されることが期待される。
〔3〕 上記〔2〕の負極において、ポリフッ化ビニリデン系バインダは、例えば、231μm以下の平均粒サイズを有していてもよい。
PVdF系バインダの平均粒サイズが231μm以下であることにより、電池抵抗の低減が期待される。
〔4〕 硫化物系全固体電池は、上記〔2〕または〔3〕の負極を含む。
硫化物系全固体電池は、低い電池抵抗を示すことが期待される。負極活物質層において、PVdF系バインダが小さい平均粒サイズを有し得るためである。
〔5〕 負極の製造方法は、下記(f)および(g)を含む。
(f) 上記〔1〕に記載の負極活物質と、硫化物固体電解質と、ポリフッ化ビニリデン系バインダと、非極性有機溶媒とを混合することにより、負極スラリーを調製する。
(g) 負極スラリーを基材の表面に塗工し、乾燥することにより、負極活物質層を形成する。
上記〔1〕の負極活物質が使用されていることにより、負極スラリーにおいてPVdF系バインダがゲル化し難くなることが期待される。よって、負極活物質層(塗膜)において、PVdF系バインダの平均粒サイズが小さくなることが期待される。PVdF系バインダの平均粒サイズが小さいことにより、電池抵抗が低減することが期待される。
〔6〕 上記〔5〕に記載の負極の製造方法において、非極性有機溶媒は、例えば、酪酸ブチル、メチルイソブチルケトンおよびヘプタンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
図1は、本実施形態における負極活物質の製造方法の概略フローチャートである。 図2は、本実施形態における負極の製造方法の概略フローチャートである。 図3は、本実施形態における硫化物系全固体電池を示す概略断面図である。 図4は、試料1、試料4および試料7におけるホウ素のXPSナロースペクトルである。
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」とも記される。)が説明される。ただし、以下の説明は、特許請求の範囲を限定しない。
本実施形態において、例えば「1μmから30μm」等の記載は、特に断りのない限り、境界値を含む範囲を示す。例えば「1μmから30μm」は、「1μm以上30μm以下」の範囲を示す。
<負極活物質>
本実施形態の負極活物質は、硫化物系全固体電池に使用される。硫化物系全固体電池は、後述される。負極活物質は、粉末(粒子群)である。負極活物質の二次粒子(一次粒子の凝集体)は、例えば、1μmから30μmのメジアン径を有していてもよい。負極活物質の二次粒子は、例えば、1μmから10μmのメジアン径を有していてもよい。「メジアン径」は、体積基準の粒度分布において、小粒径側からの累積粒子体積が全粒子体積の50%になる粒子径を示す。メジアン径は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定され得る。負極活物質の一次粒子は、例えば、0.1μmから3μmの粒子径を有していてもよい。一次粒子の粒子径は、顕微鏡法により測定され得る。
《バルク組成》
本実施形態における「バルク組成」は、1mоl%未満の成分が除かれた組成を示す。負極活物質のバルク組成は、誘導結合プラズマ発光分析法(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy,ICP−AES)により特定される。測定方法は後述される。負極活物質のバルク組成は、チタン酸リチウムである。すなわち負極活物質は、チタン酸リチウムを含む。本実施形態における「チタン酸リチウム」は、リチウム(Li)、チタン(Ti)、および酸素(O)を含む化合物を示す。
チタン酸リチウムは、結晶質であってもよいし、非晶質であってもよい。チタン酸リチウムは、結晶質部分と非晶質部分とを両方含んでいてもよい。結晶質部分は、任意の結晶構造を有し得る。結晶質部分は、例えば、スピネル型構造等を含んでいてもよい。例えば、チタン酸リチウム全体が、実質的に、スピネル型構造からなっていてもよい。
Li、TiおよびOは、任意の組成比を有し得る。チタン酸リチウムは、例えば、Li4Ti512、Li2TiO3等を含んでいてもよい。チタン酸リチウムは、実質的にLi4Ti512からなっていてもよい。各成分の組成比は、3回以上測定される。3回以上の算術平均値が、対象成分の組成比とみなされる。
本実施形態においては、チタン酸リチウムにホウ素が含有されている。特定量かつ特定形態のホウ素(B)が含有されていることにより、非極性有機溶媒中においてチタン酸リチウムの塩基性が弱められ、PVdF系バインダがゲル化し難くなると考えられる。
《ICP−AES》
負極活物質のホウ素含有量は、700質量ppm以上である。ホウ素含有量は、例えば、800質量ppm以上であってもよいし、1000質量ppm以上であってもよいし、2300質量ppm以上であってもよいし、2400質量ppm以上であってもよい。ホウ素含有量は、任意の上限値を有する。ホウ素含有量は、例えば、2800質量ppm以下であってもよい。
ホウ素含有量は、ICP−AESにより測定される。測定手順は次のとおりである。
所定の容器が準備される。測定試料(粉末)が秤量される。測定試料が容器に入れられる。さらに、希硫酸および希塩酸が容器に入れられる。容器が密閉される。容器が加熱されることにより、粉末が溶解される。粉末の溶解後、容器が放冷される。容器の放冷後、超純水により、容器内の液体が定容される。これにより試料溶液が調製される。試料溶液がICP−AES装置に導入されることにより、試料に含まれる各成分の濃度が測定される。例えば、SHIMADZU社製のICP−AES装置「型式 ICPS−8100」等(またはこれと同等品)が使用されてもよい。ホウ素含有量は、3回以上測定される。3回以上の算術平均値が、本実施形態における「ホウ素含有量」とみなされる。
《XPS》
負極活物質におけるホウ素の存在形態は、X線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy,XPS)によって測定されるナロースペクトルに反映されると考えられる。本実施形態においては、ホウ素の1s軌道の結合エネルギー(B1s)が、190eVから195eVの範囲内にピークトップを有している。B1sのピークトップが190eVから195eVの範囲内にある時、特定のホウ素化合物が形成されていると考えられる。該ホウ素化合物は、非極性有機溶媒中において酸として機能し得ると考えられる。B1sのピークトップ位置は、例えば、192eV以上であってもよい。B1sのピークトップ位置は、例えば、193eV以下であってもよい。
XPSの測定条件は、例えば下記のとおりである。
装置:ULVAC−PHI社製、製品名「PHI 5000 VersaProbe II」(またはこれと同等品であってもよい。)
X線源:単色化Al Kα線(1486.6eV)
X線出力:25W(15kV)
スキャン:ナロースキャン
B1sのピークトップ位置は、3回以上測定される。3回以上の算術平均値が、本実施形態における「B1sのピークトップ位置」とみなされる。
《非水滴定》
本実施形態においては、チタン酸リチウムにホウ素が含有されることにより、非極性有機溶媒中におけるチタン酸リチウムの塩基性が弱められている。本実施形態においては、非水滴定により測定される負極活物質の酸量が0.025mmоl/g以上である。酸量は、例えば、0.030mmоl/g以上であってもよいし、0.046mmоl/g以上であってもよいし、0.059mmоl/g以上であってもよい。酸量は、任意の上限値を有する。例えば、酸量は、0.067mmоl/g以下であってもよい。
非水滴定の手順は、次のとおりである。
過塩素酸の1,4−ジオキサン溶液が準備される。該溶液における過塩素酸の濃度は、0.1mоl/Lである。メチルイソブチルケトン(MIBK)が準備される。MIBKは、非極性有機溶媒の一種である。過塩素酸の1,4−ジオキサン溶液が、MIBKにより10倍希釈される。これにより、過塩素酸のMIBK溶液(濃度 0.01mоl/L)が調製される。以下、該溶液は「過塩素酸−MIBK溶液」と記される。
テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAOH)のメタノール溶液が準備される。該溶液におけるTBAOHの濃度は、37質量%である。該溶液がMIBKにより希釈される。希釈倍率は、TBAOHの濃度が0.01mоl/Lとなるように調整される。これにより、TBAOHのMIBK溶液(濃度 0.01mоl/L)が調製される。以下、該溶液は「TBAOH−MIBK溶液」と記される。
1gの負極活物質が秤量される。1gの負極活物質と、30mLのTBAOH−MIBK溶液とが、三角フラスコに入れられる。三角フラスコが密栓される。密栓後、1時間にわたって三角フラスコが振とうされる。振とう後、三角フラスコ内の混合物が遠心分離される。遠心分離後、上澄み液が回収される。10mLの上澄み液が、10mLのMIBKによって希釈される。これにより、試料溶液が調製される。
過塩素酸−MIBK溶液により、試料溶液が逆滴定される。滴定は、自動滴定装置により実施され得る。例えば、京都電子工業社製の電位差自動滴定装置「モデル名 AT−710WIN」が使用されてもよい。該装置と同等品が使用されてもよい。滴定時の液温は、23℃から27℃である。逆滴定により、酸量が算出される。酸量は、3回以上測定される。3回以上の算術平均値が、本実施形態における「酸量」とみなされる。
<負極活物質の製造方法>
図1は、本実施形態における負極活物質の製造方法の概略フローチャートである。
負極活物質の製造方法は、「(a)原料の調製」、「(b)第1熱処理」、「(c)解砕」、「(d)ホウ素の添加」および「(e)第2熱処理」を含む。
《(a)原料の調製》
負極活物質の製造方法は、リチウム化合物とチタン化合物と分散媒とを混合することにより、第1原料スラリーを調製することを含む。
リチウム化合物が準備される。リチウム化合物は、例えば、炭酸リチウム(Li2CO3)、水酸化リチウム(LiOH)等を含んでいてもよい。リチウム化合物は、例えば、粉末であってもよい。リチウム化合物は、例えば、1μmから30μmのメジアン径を有していてもよい。
チタン化合物が準備される。チタン化合物は、例えば、二酸化チタン(TiO2)、チタン酸塩等を含んでいてもよい。チタン化合物は、任意の結晶構造を有し得る。チタン化合物は、例えば、アナターゼ型構造、ルチル型構造等を含んでいてもよい。チタン化合物は、粉末であってもよい。チタン化合物は、任意の比表面積を有し得る。チタン化合物は、例えば、1m2/gから50m2/gの比表面積を有していてもよい。比表面積は、BET多点法により測定される。
チタンの物質量に対する、リチウムの物質量の比(以下「Li/Ti比」とも記される。)が所定の値となるように、リチウム化合物とチタン化合物とが混合される。Li/Ti比は、例えば、0.75から0.85であってもよい。Li/Ti比は、例えば、0.80から0.85であってもよい。
例えば、湿式混合処理および湿式粉砕処理が実施されてもよい。本実施形態においては、任意の混合機、攪拌機、分散機、粉砕機等が使用され得る。分散媒は、例えば、イオン交換水、エタノール等を含んでいてもよい。例えば、ボールミル等により、リチウム化合物と、チタン化合物と、分散媒とが混合されることにより、第1原料スラリーが調製されてもよい。第1原料スラリーは、例えば、30質量%から50質量%の固形分濃度を有していてもよい。本実施形態における「固形分濃度」は、不揮発成分の合計濃度を示す。
さらに、例えば、ビーズミル等により、第1原料スラリーに対して湿式粉砕処理が施されてもよい。ボールミル、ビーズミル等における粉砕媒体は、例えば、ジルコニア製であってよい。
《(b)第1熱処理》
負極活物質の製造方法は、第1原料スラリーに対して熱処理を施すことにより、焼成物を調製することを含む。
第1熱処理は、任意の熱処理装置によって実施され得る。例えば、電気炉等が使用されてもよい。加熱温度は、例えば、800℃から1200℃であってもよい。加熱温度は、例えば、800℃から1000℃であってもよい。加熱時間は、例えば、10分から6時間であってもよい。加熱時間は、例えば、10分から1時間であってもよい。加熱雰囲気は、例えば、窒素雰囲気等であってもよい。第1熱処理後、焼成物が回収される。
《(c)解砕》
負極活物質の製造方法は、焼成物を解砕することにより、焼成粉末を調製することを含む。
解砕処理は、任意の解砕装置により実施され得る。例えば、ハンマーミル等が使用されてもよい。解砕装置により、焼成物が所定のサイズに解砕される。これにより焼成粉末が調製される。
《(d)ホウ素の添加》
負極活物質の製造方法は、解砕後の焼成粉末と、ホウ素化合物とを混合することを含む。
ホウ素化合物が準備される。ホウ素化合物は、例えば、ホウ酸(H3BO3)等を含んでいてもよい。例えば、湿式混合処理が実施されてもよい。すなわち、焼成粉末と、ホウ素化合物と、分散媒とが混合されることにより、第2原料スラリーが調製されてもよい。本実施形態においては、任意の混合機、攪拌機、分散機等が使用され得る。例えば、超音波分散機等が使用されてもよい。第2原料スラリーは、例えば、20質量%から40質量%の固形分濃度を有していてもよい。
第2原料スラリーにおける分散媒は、ホウ素化合物を溶解し得るものであってもよい。分散媒は、例えば、イオン交換水等を含んでいてもよい。
ホウ素化合物の配合量は、最終製品(負極活物質)のホウ素含有量が700質量ppm以上になるように調整される。例えば、ホウ素化合物がホウ酸(H3BO3)である時、ホウ素化合物の配合量は、例えば、焼成粉末に対して、0.4質量%以上であってもよいし、1.0質量%以上であってもよいし、1.5質量%以上であってもよいし、1.8質量%以上であってもよい。例えば、ホウ素化合物がホウ酸である時、ホウ素化合物の配合量は、例えば、焼成粉末に対して、2.0質量%以下であってもよいし、1.8質量%以下であってもよい。
第2原料スラリーが加熱され、乾燥されることにより、乾燥粉末が調製される。加熱温度は、例えば、80℃から120℃であってもよい。加熱中、第2原料スラリーが攪拌されてもよい。
《(e)第2熱処理》
負極活物質の製造方法は、乾燥粉末に対して、第2熱処理を施すことにより、負極活物質を製造することを含む。
第2熱処理は、任意の熱処理装置によって実施され得る。例えば、電気炉等が使用されてもよい。加熱温度は、例えば、400℃から600℃であってもよい。加熱時間は、例えば、10分から6時間であってもよい。加熱時間は、例えば、30分から2時間であってもよい。第2熱処理後、負極活物質が回収される。負極活物質に対して、解砕処理、分級処理等がさらに施されてもよい。
<負極の製造方法>
図2は、本実施形態における負極の製造方法の概略フローチャートである。
負極の製造方法は、「(f)負極スラリーの調製」および「(g)塗工」を含む。
《(f)負極スラリーの調製》
負極の製造方法は、負極活物質と、硫化物固体電解質と、PVdF系バインダと、非極性有機溶媒とを混合することにより、負極スラリーを調製することを含む。
本実施形態においては、任意の混合機、攪拌機、分散機等が使用され得る。例えば、超音波分散機等が使用されてもよい。混合条件は、任意である。混合条件は、分散質が適度に分散するように調整される。
負極活物質の詳細は、前述のとおりである。負極活物質は、チタン酸リチウムを含む。チタン酸リチウムにホウ素が含有されている。本実施形態においては、チタン酸リチウムにホウ素が含有されることにより、非極性有機溶媒中における、チタン酸リチウムの塩基性が弱められていると考えられる。そのため、負極スラリーの調製時、PVdF系バインダのゲル化が起こり難いと考えられる。
(硫化物固体電解質)
硫化物固体電解質は、粉末(粒子群)であってもよい。硫化物固体電解質は、例えば、0.05μmから5μmのメジアン径を有していてもよい。硫化物固体電解質は、例えば、0.1μmから1μmのメジアン径を有していてもよい。
硫化物固体電解質の配合量は、100質量部の負極活物質に対して、例えば、1質量部から100質量部であってもよい。硫化物固体電解質の配合量は、100質量部の負極活物質に対して、例えば、10質量部から60質量部であってもよい。硫化物固体電解質の配合量は、100質量部の負極活物質に対して、例えば、20質量部から40質量部であってもよい。
硫化物固体電解質は、負極活物質層においてイオン伝導パスを形成し得る。硫化物固体電解質は、例えば、ガラスであってもよい。硫化物固体電解質は、例えば、ガラスセラミックス(「結晶化ガラス」とも称される。)であってもよい。
硫化物固体電解質は、硫黄(S)およびLiを含む。硫化物固体電解質は、例えば、リン(P)等をさらに含んでいてもよい。すなわち、硫化物固体電解質は、硫化リンリチウム等を含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えば、ハロゲン元素等をさらに含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えば、ヨウ素(I)、臭素(Br)等をさらに含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えば、酸素(O)、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)等をさらに含んでいてもよい。
硫化物固体電解質は、例えば、Li2S−P25、Li2S−SiS2、LiI−Li2S−SiS2、LiI−Si2S−P25、LiI−LiBr−Li2S−P25、LiI−Li2S−P25、LiI−Li2O−Li2S−P25、LiI−Li2S−P25、LiI−Li3PO4−P25、およびLi2S−P25−GeS2からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
ここで、例えば「Li2S−P25」は、硫化物固体電解質が、「Li2S」に由来する成分と、「P25」に由来する成分とからなることを示す。Li2S−P25は、例えば、Li2SとP25とのメカノケミカル反応により生成され得る。Li2SとP25との混合比は、任意である。Li2SとP25とは、例えば、物質量比(モル比)で「Li2S/P25=50/50」から「Li2S/P25=90/10」の関係を満たしていてもよい。Li2SとP25とは、例えば、物質量比で「Li2S/P25=60/40」から「Li2S/P25=80/20」の関係を満たしていてもよい。
例えば、「10LiI−10LiBr−80[0.75Li2S−0.25P25]」は、「LiI」に由来する成分が10mоl%であり、「LiBr」に由来する成分が10mоl%であり、「0.75Li2S−0.25P25」に由来する成分が80mоl%であることを示している。「0.75Li2S−0.25P25」は、「0.75Li2S−0.25P25」のうち、Li2Sに由来する成分が75mоl%であり、P25に由来する成分が25mоl%であることを示している。
(PVdF系バインダ)
PVdF系バインダは、負極活物質層において固体材料同士を結合し得る。PVdF系バインダは、硫化物固体電解質と反応し難い傾向がある。PVdF系バインダは、非極性有機溶媒に溶解してもよい。PVdF系バインダは、非極性有機溶媒中に分散してもよい。PVdF系バインダの配合量は、100質量部の負極活物質に対して、例えば、0.1質量部から10質量部であってもよい。
本実施形態における「PVdF系バインダ」は、フッ化ビニリデン(VdF)の重合により形成される。PVdF系バインダは、例えば、VdFの単独重合体であってもよい。PVdF系バインダは、例えば、VdFと、その他の単量体との共重合体であってもよい。PVdF系バインダは、例えば、PVdF、およびフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF−HFP)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。共重合体は、交互共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。
(非極性有機溶媒)
非極性有機溶媒は、硫化物固体電解質と反応し難い傾向がある。非極性有機溶媒は、例えば、カルボン酸エステル、ケトン、液体アルカン等を含んでいてもよい。非極性有機溶媒は、例えば、酪酸ブチル、MIBKおよびヘプタンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
非極性有機溶媒の配合量は、任意である。例えば、負極スラリーの固形分濃度が40質量%から70質量%となるように、非極性有機溶媒が使用されてもよい。
(導電材)
負極スラリーに導電材が追加で配合されてもよい。導電材の配合量は、100質量部の負極活物質に対して、例えば、0.1質量部から10質量部であってもよい。
導電材は、負極活物質層において電子伝導パスを形成し得る。導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、カーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)およびグラフェンフレークからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
《(g)塗工》
負極の製造方法は、負極スラリーを基材の表面に塗工し、乾燥することにより、負極活物質層を形成することを含む。
本実施形態においては、任意のアプリケータが使用され得る。例えば、ドクターブレード、グラビアコータ、ダイコータ等が使用されてもよい。本実施形態においては、任意の乾燥機が使用され得る。例えば、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、ホットプレート等が使用されてもよい。
基材は、例えば、負極集電体であってもよい。負極集電体の表面に負極活物質層が形成されることにより、負極が製造されてもよい。負極集電体は、例えば、ニッケル(Ni)箔、銅(Cu)箔等を含んでいてもよい。負極集電体は、例えば、5μmから30μmの厚さを有していてもよい。
基材は、例えば、仮支持体であってもよい。仮支持体の表面に負極活物質層が形成された後、負極活物質層が別の部材の表面に転写されてもよい。これにより負極が製造されてもよい。例えば、別途形成された負極活物質層の表面に、負極活物質層が転写されることにより、厚い負極活物質層が形成されてもよい。仮支持体は、例えば、アルミニウム(Al)箔等を含んでいてもよい。仮支持体は、例えば、5μmから30μmの厚さを有していてもよい。
<負極>
本実施形態の負極は、上記の製造方法により、製造される。負極は、負極活物質層を含む。負極は、実質的に負極活物質層からなっていてもよい。負極は、負極集電体を含んでいてもよい。負極活物質層は、負極集電体の表面に形成されていてもよい。
負極活物質層は、例えば、10μmから200μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層は、負極活物質と、硫化物固体電解質と、PVdF系バインダとを含む。負極活物質層は、導電材をさらに含んでいてもよい。各材料の詳細は、前述のとおりである。
本実施形態の負極においては、PVdF系バインダが小さい平均粒サイズを有し得る。これにより、電池抵抗の低減が期待される。平均粒サイズは、例えば、231μm以下であってもよい。平均粒サイズは、例えば、148μm以下であってもよい。平均粒サイズは、例えば、121μm以下であってもよい。平均粒サイズは、任意の下限値を有する。平均粒サイズは、例えば、114μm以上であってもよい。
平均粒サイズは、レーザ顕微鏡により測定される。例えば、キーエンス社製の形状測定レーザマイクロスコープ「型式 VK−X200」等(またはこれと同等品)が使用されてもよい。レーザ顕微鏡により、負極活物質層の表面が観察される。20個以上のPVdF系バインダについて、定方向接線径(フェレ径)が測定される。20個以上の定方向接線径の算術平均値が、本実施形態における「平均粒サイズ」とみなされる。
<硫化物系全固体電池>
図3は、本実施形態における硫化物系全固体電池を示す概略断面図である。
電池100は、硫化物系全固体電池である。電池100は、電池要素50を含む。電池100は、筐体(不図示)を含んでいてもよい。電池要素50は、筐体に収納されていてもよい。筐体は、例えば、金属製のケース等であってもよい。筐体は、例えば、アルミラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。
電池要素50は、正極10と負極20とセパレータ層30とを含む。すなわち、電池100は、負極20を含む。負極20の詳細は、前述のとおりである。負極20においては、PVdF系バインダが小さい平均粒サイズを有し得る。したがって、電池100は、低い電池抵抗を有することが期待される。
電池100は、1個の電池要素50を単独で含んでいてもよい。電池100は、複数個の電池要素50を含んでいてもよい。複数個の電池要素50は、図3のz軸方向に積み重ねられていてもよい。複数個の電池要素50は、電気的に直列接続されていてもよい。複数個の電池要素50は、電気的に並列接続されていてもよい。
《正極》
正極10は、正極活物質層を含む。正極10は、正極集電体を含んでいてもよい。正極活物質層は、正極集電体の表面に形成されていてもよい。正極集電体は、例えば、Al箔等を含んでいてもよい。正極集電体は、例えば、5μmから30μmの厚さを有していてもよい。
正極活物質層は、例えば、10μmから200μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層は、例えば、正極活物質と、硫化物固体電解質と、導電材と、PVdF系バインダとを含んでいてもよい。正極活物質以外の材料の詳細は、前述のとおりである。正極活物質は、任意の成分を含み得る。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、および、リン酸鉄リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
正極活物質に表面処理が施されていてもよい。例えば、正極活物質(粒子)の表面が酸化物固体電解質等により被覆されていてもよい。例えば、正極活物質の表面がLiNbO3等により被覆されていてもよい。正極活物質と硫化物固体電解質とが直接接触することにより、Li空乏層が形成される可能性がある。Li空乏層により、電池抵抗が増加する可能性がある。正極活物質と硫化物固体電解質との間に、例えば酸化物固体電解質等が介在することにより、Li空乏層が形成され難くなることが期待される。
《セパレータ層》
セパレータ層30は、「固体電解質層」とも称され得る。セパレータ層30は、正極10と負極20との間に介在している。セパレータ層30は、正極10と負極20とを分離している。セパレータ層30は、例えば、1μmから100μmの厚さを有していてもよい。
セパレータ層30は、電子を伝導しない。セパレータ層30は、イオンを伝導する。セパレータ層30は、例えば、硫化物固体電解質と、バインダとを含む。硫化物固体電解質の詳細は、前述のとおりである。バインダは、例えば、ブタジエンゴム、ブチルゴム等を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の硫化物固体電解質に対して、例えば、0.05質量部から5質量部であってもよい。
以下、本開示の実施例(以下「本実施例」とも記される。)が説明される。ただし、以下の説明は、特許請求の範囲を限定しない。
<負極活物質の製造>
《(a)原料の調製》
下記材料が準備された。
リチウム化合物:Li2CO3(メジアン径 4.6μm)
チタン化合物:TiO2(アナターゼ型構造、比表面積 10m2/g)
Li/Ti比が0.83になるように、リチウム化合物とチタン化合物とが秤量された。リチウム化合物と、チタン化合物と、イオン交換水とが混合されることにより、第1原料スラリーが調製された。第1原料スラリーの固形分濃度は、40質量%であった。
Willy A. Bachofen社製のビーズミル(型式「DYNO−MILL KD−20BC」、アジテータ材質 ポリウレタン、ベッセル内面材質 ジルコニア)が準備された。ジルコニア製のビーズ(外径 0.65mm)がベッセルに充填された。ビーズの充填量は、ベッセルの内容積に対して、80体積%であった。下記運転条件により、第1原料スラリーに対して湿式粉砕処理が施された。
アジテータ周速:13m/s
スラリーフィード速度:55kg/h
ベッセル内圧:0.02MPaから0.03MPa
《(b)第1熱処理》
熱処理装置として、ロータリーキルン(炉心管の長さ 4m、炉心管の直径 30cm、外部加熱式、炉内付着防止機構付き)が準備された。入口側(材料フィーダ)から第1原料スラリーが炉心管内に導入された。出口側から炉心管内に窒素が導入された。下記運転条件により、第1原料スラリーが乾燥されると共に、不揮発成分が焼成された。すなわち、第1原料スラリーに対して熱処理が施されることにより、焼成物が調製された。
炉内雰囲気:窒素雰囲気(窒素の流速 20L/min)
炉心管の傾斜角度:水平方向に対して2度
炉心管の回転速度:0.33s-1(20rpm)
炉心管の加熱温度:入口側 900℃/中央部 900℃/出口側 900℃
焼成物の炉心管内の保持時間:30分
《(c)解砕》
ロータリーキルンの出口(回収口)から焼成物が回収された。粉砕機として、ダルトン社製のハンマーミル(型式「AIIW−5」)が準備された。下記運転条件により、焼成物が粉砕されることにより、焼成粉末が調製された。
スクリーンサイズ(目開き):0.5mm
回転数:133.33s-1(8000rpm)
材料フィード速度:25kg/h
《(d)ホウ素の添加》
ホウ素化合物として、H3BO3が準備された。焼成粉末と、ホウ素化合物と、イオン交換水とが混合されることにより、第2原料スラリーが調製された。第2原料スラリーの固形分濃度は、30質量%であった。
本実施例においては、下記のように、ホウ素化合物の配合量が変更されることにより、試料1から試料8の第2原料スラリーがそれぞれ調製された。
試料1から試料3においては、ホウ素化合物の配合量が、焼成粉末の質量に対して、0質量%であった。
試料4においては、ホウ素化合物の配合量が、焼成粉末の質量に対して、0.1質量%であった。
試料5においては、ホウ素化合物の配合量が、焼成粉末の質量に対して、1.5質量%であった。
試料6および試料7においては、ホウ素化合物の配合量が、焼成粉末の質量に対して、1.8質量%であった。
試料8においては、ホウ素化合物の配合量が、焼成粉末の質量に対して、2.0質量%であった。
第2原料スラリーが攪拌されながら、加熱され、乾燥された。加熱温度は、100℃であった。これにより乾燥粉末が調製された。
《(e)第2熱処理》
乾燥粉末が匣鉢(アルミナ製)に載積された。熱処理装置として、メッシュベルト搬送式連続炉が準備された。同装置により、乾燥粉末に対して、500℃で1時間にわたって熱処理が施された。熱処理後、メッシュパス(目開き 53μm)により、乾燥粉末が分級された。以上より、負極活物質が製造された。
《物性評価》
上記測定手順に従って、ICP−AESによりホウ素含有量が測定された。結果は下記表1に示される。なお、負極活物質のバルク組成は「Li4Ti512」であった。
上記測定条件に従って、XPSにより負極活物質が分析された。ホウ素のナロースペクトルにおいて、B1sのピークトップ位置が測定された。結果は、下記表1に示される。
上記手順に従って、非水滴定により酸量が測定された。結果は下記表1に示される。
<負極の製造>
下記材料が準備された。
負極活物質:上記で製造されたもの
導電材:VGCF
硫化物固体電解質:LiI−LiBr−Li2S−P25(ガラスセラミックス)
PVdF系バインダ:PVdF
非極性有機溶媒:下記表1を参照のこと
負極集電体:Ni箔
《(f)負極スラリーの調製》
エスエムテー社製の超音波ホモジナイザ(製品名「UH−50」)により、2.5質量部の負極活物質と、0.06質量部の導電材と、0.84質量部の硫化物固体電解質と、0.12質量部のPVdF系バインダと、4.1質量部の非極性有機溶媒とが混合された。これにより、負極スラリーが調製された。
《(g)塗工》
ブレード式のアプリケータにより、負極スラリーが負極集電体の表面に塗工された。100℃のホットプレート上において、負極スラリーが30分間乾燥された。これにより、負極集電体の表面に負極活物質層が形成された。以上より、負極が製造された。
本実施例においては、下記表1に示されるように、非極性有機溶媒として、酪酸ブチル、MIBK、ヘプタンが使用された。
試料1、試料4、試料5、試料8においては、酪酸ブチルが使用されることにより、負極スラリーが調製された。
試料2、試料6においては、MIBKが使用されることにより、負極スラリーが調製された。
試料3、試料7においては、ヘプタンが使用されることにより、負極スラリーが調製された。
《平均粒サイズの評価》
レーザ顕微鏡により、負極活物質層の表面が観察されることにより、PVdFの平均粒サイズが測定された。結果は、下記表1に示される。
<硫化物系全固体電池の製造>
《正極の製造》
下記材料が準備された。なおLiNi1/3Co1/3Mn1/32は、LiNbO3によって表面が被覆されていた。
正極活物質:LiNi1/3Co1/3Mn1/32/LiNbO3
導電材:VGCF
硫化物固体電解質:LiI−LiBr−Li2S−P25(ガラスセラミックス)
バインダ:PVdF
非極性有機溶媒:酪酸ブチル
正極集電体:Al箔
エスエムテー社製の超音波ホモジナイザ(製品名「UH−50」)により、2.2質量部の正極活物質と、0.053質量部の導電材と、0.448質量部の硫化物固体電解質と、0.018質量部のPVdF系バインダと、1.46質量部の非極性有機溶媒とが混合された。これにより、正極スラリーが調製された。
ブレード式のアプリケータにより、正極スラリーが正極集電体の表面に塗工された。100℃のホットプレート上において、正極スラリーが30分間乾燥された。これにより、正極集電体の表面に正極活物質層が形成された。以上より、正極が製造された。
《セパレータ層の形成》
下記材料が準備された。
硫化物固体電解質:LiI−LiBr−Li2S−P25(ガラスセラミックス、メジアン径 2.5μm)
バインダ:ブタジエンゴム系バインダ溶液(溶媒 ヘプタン、濃度 5質量%)
非極性有機溶媒:ヘプタン
ポリプロピレン製の容器が準備された。該容器に、硫化物固体電解質と、バインダ溶液と、非極性有機溶媒とが投入された。超音波分散装置により、容器内の材料が30秒間攪拌された。攪拌後、容器が振とう器にセットされた。振とう器により、容器が3分間振とうされた。以上より、固体電解質スラリーが調製された。
正極にプレス加工が施された。プレス加工後、ダイコータにより、正極活物質層の表面に固体電解質スラリーが塗工された。100℃のホットプレート上において、固体電解質スラリーが30分間乾燥された。固体電解質スラリーが乾燥することにより、正極活物質層の表面にセパレータ層が形成された。これにより第1積層体が形成された。第1積層体にロールプレス加工が施された。プレスの圧力は、2tоn/cm2(2×103kg/cm2)であった。ロールプレス加工後、打ち抜き加工により、第1積層体が所定の平面形状に加工された。
負極にプレス加工が施された。プレス加工後、ダイコータにより、負極活物質層の表面に固体電解質スラリーが塗工された。100℃のホットプレート上において、固体電解質スラリーが30分間乾燥された。固体電解質スラリーが乾燥することにより、負極活物質層の表面にセパレータ層が形成された。これにより第2積層体が形成された。第2積層体にロールプレス加工が施された。プレスの圧力は、2tоn/cm2であった。ロールプレス加工後、打ち抜き加工により、第2積層体が所定の平面形状に加工された。
《組み立て》
仮支持体として、Al箔が準備された。仮支持体の表面に、固体電解質スラリーが塗工され、乾燥されることにより、セパレータ層が形成された。
仮支持体の表面に形成されたセパレータ層が、第2積層体の表面に転写された。第2積層体に第1積層体が重ね合わされることにより、電池要素が形成された。電池要素においては、正極集電体、正極活物質層、セパレータ層、負極活物質層および負極集電体がこの順で積層されていた。電池要素にホットプレス加工が施された。ホットプレスの温度は、130℃であった。ホットプレスの圧力は、2tоn/cm2であった。
筐体が準備された。筐体は、アルミラミネートフィルム製のパウチであった。筐体に電池要素が封入された。電池要素に1MPaの圧力が加わるように、筐体の周囲が拘束された。以上より、供試電池(硫化物系全固体リチウムイオン電池)が製造された。
《電池抵抗の評価》
2.5Cの電流により、定電流方式で供試電池が充電された。10秒充電後の電圧と、充電開始時の電圧との差が、充電電流で除されることにより、直流抵抗が算出された。結果は、下記表1に示される。なお、本実施例における「1C」は、満充電容量が1時間で充電される電流の大きさを示す。
Figure 2021150160
<結果>
上記表1に示されるように、試料1から試料4においては、ホウ素含有量が110質量ppm以下である。試料5から試料8においては、ホウ素含有量が700質量ppm以上である。
図4は、試料1、試料4および試料7におけるホウ素のXPSナロースペクトルである。試料1から試料4においては、B1sが検出されなかった。試料5から試料8においては、B1sが検出された。上記表1に示されるように、試料5から試料8において、B1sは、190eVから195eVの範囲内にピークトップを有していた。
上記表1に示されるように、試料1から試料4においては、酸量が0.025mmоl/g未満であった。試料5から試料8においては、酸量が0.025mmоl/g以上であった。
試料5から試料8は、試料1から試料4に比して、負極活物質層におけるPVdF系バインダの平均粒サイズが小さい。試料5から試料8においては、チタン酸リチウムにホウ素を含有させることにより、チタン酸リチウムの塩基性が弱められていると考えられる。そのため、負極スラリーにおいて、PVdF系バインダのゲル化が起こり難くなったと考えられる。
試料5から試料8は、試料1から試料4に比して、電池抵抗が低い傾向がみられる。PVdF系バインダの平均粒サイズが小さいことにより、負極活物質層内におけるイオン伝導および電子伝導の抵抗が低減されるためと考えられる。
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。特許請求の範囲の記載に基づいて定められる技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味における全ての変更を包含する。特許請求の範囲の記載に基づいて定められる技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の範囲内における全ての変更も包含する。
10 正極、20 負極、30 セパレータ層、50 電池要素、100 電池(硫化物系全固体電池)。

Claims (6)

  1. 硫化物系全固体電池用の負極活物質であって、
    チタン酸リチウムを含み、
    前記チタン酸リチウムにホウ素が含有されており、
    誘導結合プラズマ発光分析法によって測定される、ホウ素含有量が700質量ppm以上であり、
    X線光電子分光法によって測定されるナロースペクトルにおいて、ホウ素の1s軌道の結合エネルギーが、190eVから195eVの範囲内にピークトップを有しており、
    非極性有機溶媒が使用される非水滴定によって測定される、酸量が0.025mmоl/g以上である、
    負極活物質。
  2. 負極活物質層を含み、
    前記負極活物質層は、請求項1に記載の負極活物質と、硫化物固体電解質と、ポリフッ化ビニリデン系バインダとを含む、
    負極。
  3. 前記ポリフッ化ビニリデン系バインダは、231μm以下の平均粒サイズを有する、
    請求項2に記載の負極。
  4. 請求項2または請求項3に記載の負極を含む、
    硫化物系全固体電池。
  5. 請求項1に記載の負極活物質と、硫化物固体電解質と、ポリフッ化ビニリデン系バインダと、非極性有機溶媒とを混合することにより、負極スラリーを調製すること、
    および、
    前記負極スラリーを基材の表面に塗工し、乾燥することにより、負極活物質層を形成すること、
    を含む、
    負極の製造方法。
  6. 前記非極性有機溶媒は、酪酸ブチル、メチルイソブチルケトンおよびヘプタンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
    請求項5に記載の負極の製造方法。
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