JP2021141889A - 改質食用素材の製造方法およびそれを用いた改質食用素材 - Google Patents

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Abstract

【課題】例えば化学品、酵素などの化学物質を用いた化学的な処理に頼ることなく、飲食品の品質改良に改質した素材を製造する方法を提供すること。【解決手段】改質食用素材の製造方法を開示する。この製造方法は、原食用素材の粉末を過熱水蒸気にて加熱する工程を含み、該原食用素材が、たん白、たん白分解物、多糖類、および食物繊維からなる群から選択される少なくとも1種である。【選択図】なし

Description

本発明は、改質食用素材の製造方法およびそれを用いた改質食用素材に関する。
飲食品の品質改良のために、植物性または動物性のたん白およびその分解物、多糖類、食物繊維などの食用素材が食品添加物として用いられる。上記食用素材は、例えば、粉末形態で飲食品に添加され得る。
他方で、上記食用素材は、飲食品の品質改良の向上のために、化学品、酵素などの化学物質を用いた種々の化学的な処理がなされている。
食品の品質改良のために、その食品に望まれる品質について向上した改良効果を奏し、かつ安全性がある食用素材の提供がなお求められている。
本発明は、例えば化学品、酵素などの化学物質を用いた化学的な処理に頼ることなく、飲食品の品質改良に改質した素材を製造する方法およびそれを用いた改質食用素材を提供することを目的とする。
本発明は、改質食用素材の製造方法を提供し、これは、
原食用素材の粉末を過熱水蒸気で加熱する工程を含み、
該原食用素材が、たん白、たん白分解物、多糖類、食物繊維からなる群から選択される少なくとも1種である。
1つの実施形態では、上記加熱する工程は閉鎖系領域内で行われる。
1つの実施形態では、上記加熱する工程は開放系環境下で行われる。
1つの実施形態では、上記加熱する工程は101℃から400℃の温度で行われる。
1つの実施形態では、上記加熱する工程は、上記原食用素材の粉末を処理台上に配置した状態で行われる。
1つの実施形態では、上記加熱する工程は、上記原食用素材の粉末を撹拌しながら行われる。
1つの実施形態では、上記領域内または環境下の酸素濃度は空気中の酸素濃度より低い。
本発明は、上記方法により製造された改質食用素材を提供する。
1つの実施形態では、上記改質食用素材の水分含量が質量を基準にして8%以下である。
本発明はさらに、上記改質食用素材を含む、食用製剤を提供する。
本発明はまた、飲食品の製造方法を提供し、これは、
飲食品原料と、上記改質食用素材または上記食用製剤とを合わせて、粗飲食品を得る工程を含む。
1つの実施形態では、上記飲食品の製造方法は、上記粗飲食品を加熱する工程を含む。
本発明は、上記改質食用素材または食用製剤を含む、飲食品を提供する。
本発明は、上記飲食品の製造方法により製造された、飲食品を提供する。
本発明によれば、原食用素材では到底なし得なかった飲食品の品質の新たな変化を生じさせることができる。本発明の製造方法を用いることによって、上記のような品質の改変を簡便な操作で行うことができる。さらに、本発明の製造方法は、種々の原食用素材に対して適用可能である。
種々の条件下で過熱水蒸気処理を行った小麦たん白を配合した茹で麺の破断強度を示すグラフである。 種々の条件下で過熱水蒸気処理を行ったエンドウたん白を配合した茹で麺の破断強度を示すグラフである。 種々の条件下で過熱水蒸気処理を行った玄米たん白を配合した茹で麺の破断強度を示すグラフである。 種々の条件下で過熱水蒸気処理を行ったキサンタンガムの粘度を示すグラフである。 種々の条件下で過熱水蒸気処理を行った粉末寒天のゲル強度を示すグラフである。 種々の条件下で過熱水蒸気処理を行ったキサンタンガムの粘度を示すグラフである。 過熱水蒸気処理を行って得られた改質キサンタンガムのグァーガムとの反応性評価の結果を示すグラフである。
(改質食用素材の製造方法)
本発明は、改質食用素材の製造方法を提供する。この方法は、原食用素材の粉末を過熱水蒸気で加熱する工程を含む。
本明細書において用語「過熱水蒸気」は、水蒸気をさらに加熱して得られる水蒸気ガスであり、水の沸点(例えば、大気圧下100℃)よりも高い温度まで加熱された蒸気をいう。
本明細書において用語「食用素材」とは、食品もしくは飲料(これらをまとめて「飲食品」ともいう)の原料または食品添加物として用いることができる、飲食品を構成するための材料をいう。例えば、たん白、たん白分解物、多糖類、食物繊維などの物質について、当該物質を含む原料の植物または動物から分離または精製、あるいは追加の加工を行うことにより、飲食可能に調整された製品は、食用素材である。例えば、このように原料の植物または動物から分離精製された上記物質を含む製品は、単にその物質名、例えば、たん白、たん白分解物、多糖類、食物繊維などとも称され得る。
本明細書において用語「原食用素材」は、食用素材のうち、以下に説明する過熱水蒸気加熱の処理(これを「過熱水蒸気処理」ともいう)を施す前の状態にある食用素材をいう。用語「改質食用素材」は、食品素材のうち、過熱水蒸気処理を施した後の状態にある食用素材(これを「原食用素材の過熱水蒸気処理物」ともいう)であって、原食用素材と比べて物理的性質および/または化学的性質が改変した食用素材をいう。
本明細書において用語「原食用素材の粉末」とは、例えば固形の当該素材の粉砕や造粒を通じて得られるような、原食用素材の粒子またはその集合物をいう。粒子の平均粒径や粒度分布は、特に限定されない。原食用素材の粉末は、例えば、当業者が通常用いる方法、例えば、粉砕、または必要に応じて乾燥(例えば、スプレードライ)を用いて、当該原食用素材の原料から得ることができる。
原食用素材としては、たん白、たん白分解物、多糖類および食物繊維、ならびにこれらの任意の2つ以上の組合せなどが挙げられる。
たん白およびたん白分解物は、食用のたん白およびたん白分解物であり得る。たん白は、由来を問わず、植物性および動物性のいずれでもよく、植物性および動物性のたん白の組合せでもよい。植物性たん白としては、例えば、小麦たん白、大麦たん白、大豆たん白、エンドウたん白、ソラマメたん白、米たん白(玄米たん白)、トウモロコシたん白類、グルテニン、グリアジン、ならびにこれらの任意の2つ以上の組合せが挙げられる。動物性たん白としては、例えば、ゼラチン、乳たん白、卵白たん白、ホエーたん白、カゼイン、カゼインナトリウム、動物性血漿たん白、ならびにこれらの任意の2つ以上の組合せなどが挙げられる。たん白分解物としては、上記の植物性たん白および動物性たん白の分解物が挙げられ、例えば、加水分解により得られるペプチドである(「たん白加水分解物」ともいう)。たん白分解物の分子量は問わない。たん白分解物における加水分解処理としては、例えば、酸処理、強アルカリ処理または酵素処理が挙げられるが、食用素材に対して通常用いる方法であればよく、好ましくは、酵素処理である。酵素としては、例えば、たん白分解酵素(プロテアーゼ)、ペプチド分解酵素(ペプチダーゼ)などが挙げられる。例えば、エンド型プロテアーゼが用いられる。たん白またはたん白分解物は、当業者が通常用いる方法によって調製されてもよく、あるいは、市販品であってもよい。たん白またはたん白分解物は、精製されたものであっても、未精製のものであっても、またはこれらを組み合わせたものであってもよい。原食用素材は、上述したたん白およびたん白分解物の中の任意の2つ以上の組合せであってもよい。
多糖類としては、例えば、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギナン、グルコマンナン、サイリウムガム、ペクチン、カードラン、タマリンドガム、アラビアガム、アルギン酸類、ジェランガム、タラガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、サイリウムシードガム、グルコマンナンならびにこれらの任意の2つ以上の組合せが挙げられる。多糖類は、精製されたものであっても、未精製のものであっても、またはこれらを組み合わせたものであってもよい。多糖類として、例えば、プランタゴ・オバタ末(サイリウム)、シトラス、オレンジ、アップルなどのファイバー(ペクチン原料)、白キクラゲ抽出物(トレメルガム)なども挙げられる。
食物繊維としては、例えば、水溶性食物繊維および水不溶性食物繊維ならびにこれらの組み合わせとが挙げられる。水溶性食物繊維としては、例えば、ペクチン、グルコマンナン、アガロース、アガロペクチン、アルギン酸、カラギナン、ポリデキストロース、フルクタン、イヌリン、βグルカン、難消化性オリゴ糖、難消化性デキストリンならびにこれらの任意の2つ以上の組合せが挙げられる。水不溶性食物繊維としては、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサン、ならびにこれらの任意の2つ以上の組合せが挙げられる。食物繊維は、精製されたものであっても、未精製のものであっても、またはこれらを組み合わせたものであってもよい。
過熱水蒸気による原食用素材の粉末の加熱は、原食用素材の粉末を過熱水蒸気に曝露することによって行うことができる。この加熱は、例えば、閉鎖系領域内または開放系環境下のいずれかで原食用素材粉末に過熱水蒸気を接触させることによって行われる。ここで、本明細書における用語「閉鎖系領域」とは、外気と遮断可能な任意の区画(例えば、容器、処理槽)で構成される空間を指して言う。これに対し、本明細書における用語「開放系環境」とは、上記「閉鎖系領域」以外の任意の空間を示す用語として用いられ、例えば外気との遮断がなされていない(いわゆる開放系の)容器内、処理槽内、処理台上の任意の空間がこれに包含される。
加熱を閉鎖系領域内で行う場合、閉鎖系領域を構築するために用いられる装置は、例えば、工業用または家庭用のバッチ条件下で過熱水蒸気を供給可能な装置であり、具体的には、過熱水蒸気オーブンレンジ、過熱水蒸気撹拌混合式殺菌装置、過熱水蒸気静置式殺菌装置などが挙げられる。
加熱を開放系環境下で行う場合、開放系環境を構築するために用いられる装置は、例えば、製品の開放撹拌下で過熱水蒸気を供給可能な装置、および製品の連続生産のため開放下で過熱水蒸気を供給可能な装置であり、具体的には、開放容器中で固定された処理台上に配置されたまたは撹拌下にある原食用素材粉末に対して過熱水蒸気を連続的に供給可能な装置、開放容器中で連続供給される原食用素材粉末に対して順次過熱水蒸気を接触させる装置などが挙げられる。例えば、より具体的には、本体内に過熱水蒸気の供給手段を有し、かつ容器底部に撹拌羽根、容器側面に取り外し可能な解砕羽根、容器上部に空気および過熱水蒸気の排出口を有する過熱水蒸気撹拌混合式殺菌装置などが挙げられる。粉末の過熱水蒸気処理を行う容器内は常圧であってもよく、または加圧されてもよい。
原食用素材の粉末への過熱水蒸気の供給は循環式または非循環式のいずれの様式で行われてもよい。原食用素材の粉末を過熱水蒸気に曝露する際の過熱水蒸気量および原食用素材の粉末量は限定されない。過熱水蒸気量および原食用素材の粉末量は、用いる装置の容器の容量に応じて決定され得る。例えば、12L容量の容器を備えた過熱水蒸気撹拌混合式殺菌装置を用いる場合、原食用素材の粉末1kg〜3kgに対して過熱水蒸気量15kg/時間にて処理時間30秒〜60分間で処理を行う。過熱水蒸気処理は、当該処理を行う容器の容量および過熱水蒸気量に応じて処理時間を調整して行うことができる。
本発明の製造方法においては、上記加熱は、上記閉鎖系領域内または開放系環境下において、原食用素材の粉末を所定の処理台上に配置した状態で行うことができる。さらに、この加熱の際、例えば、原食用素材の粉末を処理台上に薄く広げて配置することで、原食用素材は過熱水蒸気に対してより均一に曝露され、原食品用素材を一層均等に改質することができる。あるいは、この加熱の際、例えば、撹拌羽根を有する容器内で原食用素材の粉末を撹拌しながら過熱水蒸気を供給することにより、この粉末に過熱水蒸気を均一に曝露し、より均質に原食品用素材を改質することができる。
本発明の製造方法では、上記閉鎖系領域内または開放系環境下において加熱が行われる場合、この領域内または環境下の酸素濃度が空気中の濃度よりも低い濃度に設定されていることが好ましい。例えば、領域内または環境下の酸素濃度が1%以下に保持されていることが好ましい。領域内または環境下の酸素濃度が空気中の濃度よりも低いことにより、原食用素材の粉末を過熱水蒸気で加熱する際に、この原食用素材が閉鎖系領域内に存在する酸素によって無用な酸化を生じることを回避できるからである。このような酸素濃度は、例えば、加熱の際に、予め閉鎖系領域内に過熱水蒸気を導入すると同時に当該領域内の空気(酸素を含む)を当該領域外に排出することにより調整可能である。こうした酸素濃度の調整は、例えば市販の過熱水蒸気オーブンレンジ、過熱水蒸気撹拌混合式殺菌装置および過熱水蒸気静置式殺菌装置を用いて行われ得る。
本発明の製造方法では、上記加熱は、過熱水蒸気からの熱のみで行ってもよく、あるいは他の熱源(電熱線、オイルヒーターなど)を利用してもよい。他の熱源は、例えば、閉鎖系領域内または開放系環境下の温度を維持するために用いられ得る。他の熱源は、製造方法に用いる装置においてジャケットとして備え付けることができる。
原食用素材の改質の程度は、原食用素材の粉末と接触する過熱水蒸気の上記量(原食用素材と過熱水蒸気との相対量の比)以外に、過熱水蒸気の温度や時間(加熱時間)によっても変動し得る。
原食用素材の粉末を加熱する際に設定される過熱水蒸気の温度は、原食用素材の種類や量、所望される改質の程度、領域環境(すなわち、閉鎖系領域内または開放系環境下のいずれであるか)等によって変動するため、必ずしも限定されないが、好ましくは100℃より高くかつ400℃以下である。過熱水蒸気の温度が100℃以下であると、大気圧を下回る環境での加熱を必要とし、原食用素材が適切に改質されないことがある。過熱水蒸気の温度が400℃を上回ると、本質的にそのような温度を達成する装置自体が複雑かつ高価となり、最終的に得られる飲食物の生産効率を低下させることがある。
ここで、原食用素材がたん白またはたん白分解物である場合、過熱水蒸気の温度は、領域内または環境下の温度が好ましくは110℃〜400℃、より好ましくは150℃〜350℃となるように設定される。原食用素材が多糖類である場合、過熱水蒸気の温度は、領域内または環境下の温度が好ましくは110℃〜400℃、より好ましくは150℃〜350℃となるように設定される。原食用素材が食物繊維である場合、過熱水蒸気の温度は、領域内または環境下の温度が110℃〜400℃、より好ましくは150℃〜350℃となるように設定される。
あるいは、本発明における過熱水蒸気による原食用素材の粉末の加熱は、好ましくは110℃〜400℃、より好ましくは130℃〜350℃の温度で行われる。閉鎖系領域内または開放系環境下でこのような範囲内での温度が採用されることにより、使用する装置を複雑化させることなく、改質食用素材を効率良く製造することができる。
過熱水蒸気処理は、加熱される粉末の温度(本明細書において「品温」ともいう)に基づいて終了することができる。過熱水蒸気処理の終了の基準となる品温は、例えば、120℃〜160℃である。当該品温は、過熱水蒸気処理に用いる装置の大きさによって変動し得る。例えば、加熱される粉末を配置する容器の容量が12L〜120L未満である場合、過熱水蒸気処理の終了の基準となる品温は、例えば、140℃〜160℃である。加熱される粉末を配置する容器の容量が120L以上である場合、過熱水蒸気処理の終了の基準となる品温は、例えば、120℃〜150℃である。品温を基準として過熱水蒸気処理の継続または終了を判断することにより、得られる改質食用素材の品質を安定に保持することができる。このような品温は、例えば缶体内の温度センサーを用いて測定され得る。
加熱に要する時間(加熱時間)は、原食用素材の種類や量、その粒径、その水分含量、所望される改質の程度、領域環境、加熱のために設定される温度等によって変動するため、必ずしも限定されない。
原食用素材の加熱が行われる場合、加熱時間は、品温が上記のような基準の温度に達するまでの期間であり得、例えば30秒間〜120分間である。原食用素材がたん白またはたん白分解物である場合、加熱時間は、例えば30秒間〜120分間であり、好ましくは30秒間〜30分間である。原食用素材が多糖類または食物繊維である場合、加熱時間は、例えば30秒間〜120分間であり、好ましくは3分間〜60分間である。
上記加熱により、原食用素材が改質され、改質食用素材が製造される。
(改質食用素材および食用製剤)
上記により得られた改質食用素材は、原食用素材の種類や量、所望される改質の程度、領域環境、加熱のために設定される温度や時間に基づいて、原食用素材とは異なる物理的性質および/または化学的性質を有するように改質されている。
原食用素材がたん白およびたん白分解物からなる群から選択される少なくとも1種である場合、例えば、原食用素材の水分含量は質量を基準にして10%程度であり、改質食用素材の水分含量は質量を基準にして8%以下(例えば、0.01%〜8%、好ましくは2%〜7%)である。原食用素材が多糖類(例えば、キサンタンガム)および食物繊維からなる群から選択される少なくとも1種である場合、例えば、原食用素材の水分含量は質量を基準にして10%程度であり、改質食用素材の水分含量は質量を基準にして8%以下(例えば、0.01%〜8%、好ましくは2%〜7%)である。改質食用素材は原食用素材と比べて水分含量が例えば約20%、好ましくは約50%低下されている。本発明において、「水分含量」は、原食用素材の過熱水蒸気処理が完了した直後(すなわち、改質食用素材の製造直後)、ハロゲン水分計(例えば、METTLER TOLEDO製,HG53)を用いて105℃で測定した値を得ることによって決定される。
原食用素材がたん白またはたん白分解物である場合、上記加熱を通じて得られた改質食用素材には、水分含量の低下に加え、例えばゲル強度の改変、これを含む食品の食感の改変などが観察され得る。原食用素材がキサンタンガムである場合、上記加熱を通じて得られた改質食用素材には、水分含量の低下に加え、例えば、粒度の増大、粘度の増大、甘さのある香りの発生などが観察され得る。改質キサンタンガムの粒度は、例えば、レーザー回折式粒子径分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製,SALD-2100)にて湿式条件で測定した粒度分布から決定されるメディアン径が、改質前と比較して、例えば1%〜20%増大される。改質キサンタンガムの粘度は、例えば、B形粘度計(例えば、TVB−10形粘度計(東機産業株式会社製))にて測定した粘度が、改質前と比較して、例えば、10%〜1100%増大される。さらに改質キサンタンガムは、改質前と比較して、グァーガムとの反応性が変化する。原食用素材が寒天である場合、上記加熱を通じて得られた改質食用素材には、水分含量の低下に加え、例えばゲル強度の改変などが観察され得る。原食用素材がグルコマンナン(こんにゃく粉)である場合、上記加熱を通じて得られた改質食用素材には、水分含量の低下に加え、例えば、こんにゃく粉特有の生臭さの低減などが観察され得る。
本発明においては、過熱水蒸気処理後の製造物の評価にパルスNMRもまた用いることができる。パルスNMR法は、サンプル(製造物)またはサンプル水溶液における水分子の緩和時間から当該製造物の「分子運動性」を評価することに特化した手法である。パルスNMRでは数十MHz程度の周波数が使用される。サンプルまたはサンプル水溶液に磁場をパルスとして与えると、サンプル中またはサンプル水溶液中のプロトンの核スピンは、向きの揃った励起状態となる。これが元のランダムな基底状態に戻るまでの過程を緩和と呼び、この過程に要する時間を緩和時間と呼ぶ。サンプルまたはサンプル水溶液中の水分子の分子運動性が高い場合、近接するプロトンの影響が小さくなるため、相互作用は小さくなり、緩和に時間がかかる。つまり、分子運動性が高いサンプルの緩和時間は長く現れる。サンプルまたはサンプル水溶液中の水分子の分子運動性は、当該サンプルを構成する分子構造により決定される。例えば、分子構造中、多くの架橋を有する物質や溶媒である水分子との親和性が増した物質は、架橋の少ない物質や水分子との親和性が低い物質に比べて分子運動性が低いため、短い緩和時間を示す。
過熱水蒸気処理後の改質食用素材またはその水溶液は、処理前の原食用素材と比較してパルスNMR法において短い緩和時間を示す。処理前の原食用素材の緩和時間を1とすると、改質食用素材(例えば、改質キサンタンガム)またはその水溶液の緩和時間は、例えば、0.6〜0.95であり、好ましくは0.65〜0.9である。
このようにして得られた改質食用素材は、飲食品または食用製剤の原料として用いられる。改質食用素材は、必要に応じて当該当業者に公知の手法を用いて乾燥等の追加の操作が行われ、このまま粉末状で用いてもよく、あるいは食用媒体(例えば、水、油脂)と混合して溶液状または懸濁液状としてもよい。
さらに、本発明は改質食用素材を含む食用製剤を提供する。「食用製剤」とは、飲食品またはその原料を構成し得る少なくとも1つの物質(例えば食用素材)について、独立して市場で流通可能となるように所定の形態に加工されたものをいう。食用製剤は、例えば、食品添加物および食品として扱われる製剤のいずれも包含する。食用製剤の形態としては、例えば、粉末剤、顆粒剤、ゲル剤、分散剤、ペースト剤、液剤などが挙げられる。本発明の食用製剤は、改質食用素材とその原食用素材(未改質食用素材)とを併せて含んでもよい。本発明の食用製剤は、必要に応じて、未改質のたん白、未改質のたん白分解物、未改質の多糖類、未改質の食物繊維、澱粉、加工デンプン、糖類、油脂、乳化剤、ソルビトール、水、賦形剤などの飲食品の製造上許容され得る他の成分をさらに含有してもよい。本発明の食用製剤における他の成分の含有量は、上記改質食用素材による食品の品質改良効果を阻害しない範囲にて当業者によって適宜設定され得る。
本発明の改質食用素材または食用製剤は、飲食品の製造に際して、その飲食品の原料に添加して用いることができる。本発明は、本発明の改質食用素材または食品添加物を含む飲食品もまた提供する。このような飲食品としては、特に限定されないが、例えば、麺類・餃子皮・パン等の穀粉(例えば小麦粉)加工品、穀粉、菓子・ケーキ類(例えば、洋菓子、和菓子、中華菓子など)、飴類(例えばキャラメル)、冷菓(例えば、アイスクリーム、アイスミルク、氷菓、ゼリーなど)、グミ、米飯、惣菜、汁物、スープ、めんつゆ(例えばうどんつゆ、そばつゆなど)、ソース、たれ、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、ハム・ソーセージ類、畜産加工品、水産練り製品、水産加工品、農産・林産加工食品、乳・乳製品、油脂・油脂加工品、調味料、酒類、清涼飲料(例えば、ジュース、コーヒー、茶、麦芽飲料、発泡飲料、スポーツドリンク、ダイエット飲料)などが挙げられる。
(飲食品の製造方法)
本発明は、飲食品の製造方法もまた提供する。この製造方法は、飲食品原料と、上記方法により製造された改質食用素材または食用製剤とを合わせて、粗飲食品を得る工程を含む。「粗飲食品」とは、例えば、飲食品の製造に加熱(例えば、焼く、煮る、蒸す、炒める、揚げるなど、ならびにそれらの組合せ)の工程を含む場合、加熱前の段階の飲食品をいうが、飲食品の製造に加熱の工程を含まない場合は、用語「粗飲食品」が最終製品であってもよい。本発明の改質食用素材または食品添加物と飲食品の原料とを合わせるタイミングについては、当業者によって、食品製造における任意の段階が選択され得る。本発明の改質食用素材または食品添加物は、例えば、原食用素材について食品の製造の際に当該食品の原料と合わせるタイミングと同様のタイミングで、食品の原料と合わせることができる。合わせる方法については、改質食用素材、飲食品の原料の種類、飲食品の製造の手順などの要因に依存するが、例えば、混和させる、混捏する、練り込む、塗布する、まぶす、溶解させる、予め調製した水溶液を加える等によって行われる。
本発明の飲食品の製造方法は、例えば、さらに、前記粗飲食品を加熱する工程を含む。加熱する工程は上述の通りである。本発明の改質食用素材または食品添加物は、飲食品の加熱を通じて得られる性質を改変することができる。例えば、工場等での製造過程では加熱を含まず、飲食品原料と上記改質食用素材または食品添加物とを合わせて粗飲食品を得て、その後調理において加熱を行う場合も本発明の範囲内である。
本発明の改質食用素材または食品添加物の添加量は、改質食用素材および/または食品の原料の種類、所望される品質の種類とその改変または改良の程度などによって変動するため、必ずしも限定されないが、本発明の改質食用素材または食品添加物は、食品の原料100重量部に対し、改質食用素材が例えば0.001重量部〜50重量部、好ましくは0.01重量部〜20重量部であるように添加され得る。
本発明によって製造された飲食品に対し、原食用素材が本来有する品質改良効果を増強し得、かつ/または、原食用素材で見られない品質改良効果を付与し得る。本発明の食品用品質改良剤を用いて製造された食品の品質改良効果としては、改質食用素材の種類および/または製造された食品の種類に依存するが、例えば、食感の改変、生地の伸展性向上、麺の茹で伸び抑制、作業性(例えば、保湿性、結着性など)の向上などが挙げられる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1:過熱水蒸気によるたん白質の物性改質)
被験物質の原食用素材として、小麦たん白(グルテン)、エンドウたん白および小麦たん白加水分解物(いずれも粉末状)を用いた。
(1−1:過熱水蒸気処理)
過熱水蒸気発生装置(シャープ株式会社製,ウォーターオーブンヘルシオAX−XS500)の庫内に、黒皿にキッチンペーパーを敷いた上に被験物質の粉末を均一に広げた状態で庫内に入れ、以下の表1に示す条件で過熱水蒸気処理を行った(以下、「過熱水蒸気処理」ともいう)。なお処理前に、装置の庫内を同じ処理温度および過熱水蒸気量にて予熱した。本装置では、過熱水蒸気のみで試験物質を加熱できた。庫内の酸素濃度は1%以下に抑えられた。
Figure 2021141889
(1−2:加熱ゲルの調製および物性測定)
水を小麦たん白(グルテン)の重量に対し1.5倍重量、エンドウたん白の重量に対し2.0倍重量、そして小麦たん白加水分解物の重量に対し1.0倍重量にてそれぞれ加え、混捏して生地を作製した。得られた生地を型に入れ、蒸し器で90℃にて90分間加熱後に5℃にて12時間保管し、加熱ゲルを得た。
小型卓上試験機テクスチャーアナライザー(株式会社島津製作所製、Ez Test EZ-SX)にて加熱ゲルの貫入試験を行った。試験冶具として下部にφ118mmの圧盤、上部にφ10mm球状プランジャーを使用し、試験速度10mm/分にて貫入試験を行った。小麦たん白分解物の測定には上部にφ118mmの圧盤を使用し0.05mm/秒にて圧縮試験を行った。試験片は全て測定直前まで5℃で保存した。結果を表2に示す。
(1−3:結果)
過熱水蒸気処理後の粉末の状態を確認した。処理温度100℃では、飽和水蒸気が多く、水分を吸収して部分的に硬く、固結する傾向が観察された。処理温度150℃以上では固結が無く、乾いた状態でサンプルを得ることができた。
小麦たん白の過熱水蒸気処理では、処理温度の上昇に伴い、粉外観が褐変した。処理温度150℃のサンプルは甘い香りがした。加水生地は処理温度の上昇に伴い、まとまり性が低下しソボロ状になった。また、加熱ゲルを作製し貫入試験を行ったところ、100℃で荷重が低下し、150℃でゲルの荷重と最大荷重時の変位が大きく向上した(表2)。
エンドウたん白の過熱水蒸気処理では、処理温度200℃で粉外観が褐変した。処理温度の上昇に伴い青臭さが増し、処理温度200℃のサンプルは醗酵したような特異な香りがした。加水生地は処理温度200℃で脆く崩壊性のある生地となった。また、加熱ゲルを作製し貫入試験を行ったところ、処理温度150℃までは、温度の上昇に伴いゲルの荷重が増加した。200℃では脆いゲルとなり、少ない変位点で崩壊した(表2)。
小麦たん白加水分解物の過熱水蒸気処理では、処理温度の上昇に伴い、粉外観が褐変した。処理温度150℃のサンプルは醤油タレのような特異な香りがした。加水生地は処理温度150℃で硬めのペースト状となった。また、加熱ゲルを作製し貫入試験を行ったところ、過熱水蒸気処理を行うことでゲルの荷重が低下した(表2)。
Figure 2021141889
(実施例2:過熱水蒸気処理たん白素材の食品系試験)
(2−1.過熱水蒸気処理)
表3に示すように、小麦たん白、エンドウたん白および玄米たん白(いずれも粉末状)を被験物質の原食用素材として用いて以下の条件で行ったこと以外は、実施例1と同様にして、被験物質の粉末を過熱水蒸気処理に供した。
Figure 2021141889
(2−2.水分含量測定)
過熱水蒸気処理の直後に、ハロゲン水分計(METTLER TOLEDO製,HG53)を用いて105℃にて水分含量を測定した。結果を以下の表4に示す。
(2−3.麺の作製および破断試験、官能試験)
小麦粉300gと過熱水蒸気処理後の被験物質6gとを予備混合後、万能撹拌機専用容器に入れ、麺用フックをセットして撹拌を開始した。水道水99gおよび食塩3gを予め混合し、練り水として投入した。混合した生地をパスタマシンで押出し成形した(ダイス:φ1.9mm)。麺をPE袋に入れ10℃にて12時間保管した後、沸騰したお湯で4分間茹でて試験サンプルとした。
小型卓上試験機テクスチャーアナライザー(株式会社島津製作所製、Ez Test EZ-SX)にて麺の破断試験を行った。試験冶具として下部にφ118mmの圧盤、上部に歯形押し棒Bプランジャーを使用し、試験速度20mm/分にて破断荷重を測定した。破断荷重は茹でた麺を各5本ずつ測定し、平均値を算出した。結果を図1〜3に示す。図1〜3は、種々の条件下で過熱水蒸気加熱処理を行った各種たん白を配合した茹で麺の破断強度を示すグラフである(図1:小麦たん白、図2:エンドウたん白および図3:玄米たん白)。
生麺を4分間茹でて官能試験を行った。官能試験は、パネリスト10名にて茹で立ての麺を喫食した際の食感、例えば麺の硬さおよびコシ(弾力性)を評価した。
(2−4:結果)
(小麦たん白)
過熱水蒸気処理した小麦たん白を加えた生地を押出し成形したところ、未処理品との作業性の違いはなかった。麺の外観は150℃処理品でわずかに茶褐色になった。
テクスチャーアナライザー測定の結果、過熱水蒸気で処理することで、110℃処理品は未処理品よりも破断変位が減少し、最大荷重が増加した。130℃処理品は破断変位、破断荷重ともに増加し最大値を示した(図1)。150℃処理品は破断変位、破断荷重が130℃処理品よりも減少した。
官能試験の結果110℃処理品は麺の外側に硬さとハリがありモチモチとした食感であった。130℃処理品は外側の硬さに加え、腰のある硬さであった。150℃処理品は130℃に似た食感ではあるが、やや茹で溶けていた。
(エンドウたん白)
過熱水蒸気処理したエンドウたん白を加えた生地を押出し成形したところ、未処理品との作業性、外観の違いはなかった。
テクスチャーアナライザー測定の結果、過熱水蒸気の130℃処理品は、破断荷重が未処理品よりもわずかに増加した(図2)。
官能試験の結果、未処理品は弾力が弱く、噛み込むと歯に付着し、ザラツキを感じた。110℃、130℃処理品は麺の外側にわずかに硬さとハリが付与された。また、歯への付着性がわずかに改善した。150℃処理品は茹で溶けがあり、脆く崩壊性のある食感であった。未処理品はエンドウたん白の青臭さが強く感じられた。過熱水蒸気処理により青臭さを抑制する傾向を示した。
(玄米たん白)
過熱水蒸気処理した玄米たん白を加えた生地を押出し成形したところ、未処理品との作業性の違いはなかった。麺の外観は150℃処理品でわずかに茶褐色になった。
テクスチャーアナライザー測定の結果、過熱水蒸気110℃処理品は、破断荷重が他の温度よりもわずかに増加した(図3)。
官能試験の結果、未処理品は粘りがあり、表面がヌルヌルとしていた(米のオネバのようなヌルヌルした食感)。110℃処理品は麺の外側にわずかにハリがあった。130℃処理品は麺の外側にハリがあり、硬さと粘りがわずかに付与された。150℃処理品はわずかに脆さが付与された。玄米たん白を麺に加えると、わずかに糠のような風味と米の甘味が付与された。
Figure 2021141889
(実施例3:キサンタンガムの過熱水蒸気処理)
(3−1.過熱水蒸気処理)
キサンタンガムの粉末を被験物質として用い、以下の条件で行ったこと以外は、実施例1と同様に過熱水蒸気処理を行った。
(3−2.粘度測定)
上記過熱水蒸気処理で得られた素材を篩過して得られたものを試料として使用した。500mLトールビーカーに300gのイオン交換水(20℃)を入れ、3枚翼のプロペラをセットした撹拌機にて1000rpmで撹拌した。試料1.5gを少量ずつ入れ、全量を投入した時点から2000rpmにて2分間撹拌した(0.5%(w/v)水溶液を作製)。TVB−10形粘度計(東機産業株式会社製)にて2分間回転後の粘度を測定した。同様の方法で調製したキサンタンガム水溶液に対して精製塩(塩化ナトリウム含有率が99.5%以上)30gを入れ、撹拌機にて2000rpmで2分間撹拌後にTVB−10形粘度計にて2分間回転後の粘度を測定した。結果を以下の表5および図4に示す。図4は、種々の条件下で過熱水蒸気処理を行ったキサンタンガムの粘度を示すグラフである。図4中、精製塩が「無」であった結果を塗りつぶしの棒グラフにて表し、精製塩が「有」であった結果を斜線のハッチングが施された棒グラフにて表す。
(3−3.結果)
過熱水蒸気処理を160℃にて15分間または180℃にて6分間行うことにより、粘度の顕著な増加が見られた。試験した中では、過熱水蒸気加熱処理を160℃にて15分間行った場合に最高粘度に達した(表5および図4)。以上の結果から、本実施例の過熱水蒸気処理では低温にて長時間処理を行う方が粘度の増加が高くなることが考えられた。また、140℃以上で処理した場合に、焙焼糖のような甘さのある香りが発生した。過熱水蒸気温度110℃〜150℃では精製塩の添加により、未処理で精製塩を添加した場合と比較して高い粘度が発現した。
Figure 2021141889
(実施例4:粉末寒天の過熱水蒸気加熱処理)
(4−1:過熱水蒸気加熱処理)
被験物質として粉末寒天を用い、過熱水蒸気量をレベル3にて150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃または230℃にて6分間処理を行ったこと以外は、実施例1と同様に過熱水蒸気処理を行った。
(4−2:加熱ゲルの調製および物性測定)
上記過熱水蒸気処理で得られた素材を篩過して得られたものを試料として使用した。100mLビーカーに70gのイオン交換水と試料0.7gとを投入し、達温95℃で3分30秒間混合溶解した。溶解液を型に流し込み、10℃にて12時間静置後にゲルを得た。
小型卓上試験機テクスチャーアナライザー(株式会社島津製作所製、Ez Test EZ-SX)にて加熱ゲルの貫入試験を行った。試験冶具は下部にφ118mmの圧盤、上部にφ10mm球状プランジャーを使用し、試験速度10mm/分にて貫入試験を行った(n=4)。結果を表6および図5に示す。図5は、種々の条件下で過熱水蒸気加熱処理を行った粉末寒天のゲル強度を示すグラフであり、各処理温度の斜線の棒は荷重(N)の結果であり、白棒は、変位(mm)の結果である。
(4−3:結果)
処理温度の上昇に伴って荷重(N)および変位(mm)が上昇して、160〜170℃で最大値を示し、180℃以上の処理で荷重(N)、変位(mm)が徐々に低下し200℃以上の処理で未処理よりも数値が低下した(表6および図5)。200℃以上のゲルは褐色の不溶物を確認した。
Figure 2021141889
(実施例5〜10および比較例1:キサンタンガムの過熱水蒸気処理)
(過熱水蒸気処理)
過熱水蒸気撹拌混合式殺菌装置を用いて食用素材の過熱水蒸気処理を行った。この装置は、本体内に過熱水蒸気の供給手段を有し、容器(缶体)底部に撹拌羽根、容器側面に解砕羽根、そして容器上部に空気および過熱水蒸気の排出口を有し、容器の缶内容量は12Lである。容器上部に設けられた排気部を閉じることで加圧が可能であるが、本実施例では開放して試験を行った。蒸気流量を15kg/時間、容器缶保温ジャケット温度を150℃に設定した。過熱水蒸気温度(給気温度)を給気口の温度センサーで測定し、品温を缶体内の温度センサーで測定した。実施例5〜10および比較例1の処理条件を以下の表7に示す。
(粘度測定)
実施例3の3−2と同様にして、過熱水蒸気処理後のキサンタンガムの粘度を測定した。結果を以下の表7および図6に示す。図6は、種々の条件下で過熱水蒸気処理を行ったキサンタンガムの粘度を示すグラフである。図6中、精製塩が「無」であった結果を塗りつぶしの棒グラフにて表し、精製塩が「有」であった結果を斜線のハッチングが施された棒グラフにて表す。
(水分含量測定)
過熱水蒸気処理の直後に、ハロゲン水分計(METTLER TOLEDO製,HG53)を用いて105℃にて水分含量を測定した。結果を以下の表8に示す。
(結果)
実施例5〜10の過熱水蒸気処理後のキサンタンガムは、未処理の比較例1と比べて粘度が増加した(表7および図6)。実施例5および実施例10の過熱水蒸気処理キサンタンガムは、精製塩の添加によって粘度が増加した。比較例1の水分含量が10.1%であるのに対し、実施例5〜10の過熱水蒸気処理後のキサンタンガムは水分含量が5%以下であった(表8)。また、実施例5〜10の過熱水蒸気処理キサンタンガムは、焙焼糖のような甘さのある香りが発生した。
Figure 2021141889
Figure 2021141889
(実施例11〜13および比較例2:茹でうどんの製造および評価)
卓上ミキサー(株式会社品川工業所製:5DM 03r)に小麦粉(中力粉)210g、加工デンプン90g、小麦たん白6g、原キサンタンガム(過熱水蒸気未処理キサンタンガム)または過熱水蒸気処理キサンタンガム1.5g、水126g、食塩6gを配合し、8分間混捏後に複合、熟成し、麺生地を得た。得られた麺生地を圧延後に切出し(厚さ3.0mm、8番角[幅3.75mm])、麺を得た。得られた麺を沸騰水中で11分間茹でた後、1分間水で冷却し、茹でうどんを得た。茹でうどんの配合を以下の表9に示す。
得られた各茹でうどんを10℃にて24時間保存後、官能評価および麺ほぐれ性評価を行った。
官能評価では、茹でうどんをパネリスト10名にて麺の食感(硬さと粘弾性)、滑らかさ、および食味を評価した。麺の食感については、茹で立ての麺を喫食した際の麺の硬さおよびコシ(粘弾性)をそれぞれ評価した。滑らかさについては、茹で立ての麺を喫食した際の舌触りの滑らかさを評価した。食味については、茹で立ての麺を喫食したときの味を評価した。これらの評価は、かなり良いものを5点、やや良いものを4点、普通を3点、やや悪いものを2点、かなり悪いものを1点とし、0.5点刻みで各々採点し、10名の集計結果から得られた各々の平均点を以下の表9に示す。
麺ほぐれ性評価は、100gの茹でうどんの塊状の麺に水40mLをかけた後、箸で麺をほぐし、そのほぐれ易さの程度をパネリスト10名による採点にて評価した。この評価は、ほぐれ易いほど良好であり、かなり良いものを5点、やや良いものを4点、普通を3点、やや悪いものを2点、かなり悪いものを1点とし、0.5点刻みで採点し、10名の集計結果から得られた平均点を以下の表9に示す。
表9に示す評価結果から、実施例11(実施例5の過熱水蒸気処理キサンタンガムを配合)、実施例12(実施例8の過熱水蒸気処理キサンタンガムを配合)および実施例13(実施例10の過熱水蒸気処理キサンタンガムを配合)の茹でうどんはそれぞれ、比較例2(原キサンタンガムを配合)の茹でうどんに比べ、食味はほぼ同程度でありながらも食感と滑らかさが良好であった。麺ほぐれ性についても、実施例11、実施例12および実施例13の茹でうどんはそれぞれ、比較例2の茹でうどんに比べて良好であり、ほぐれ易かった。
Figure 2021141889
(実施例14、実施例15および比較例3:ドレッシングの製造および評価)
容器に水21.5g、和風だし1g、砂糖7g、食塩1.5g、醤油32g、酢21.5g、レモン果汁3.5gを入れ、3枚翼のプロペラをセットした撹拌機にて1000rpmで撹拌し溶解した。原キサンタンガム(過熱水蒸気未処理キサンタンガム)または過熱水蒸気処理キサンタンガム0.5gを入れ、2分間撹拌し溶解した。サラダ油12gを入れ、2分間撹拌しドレッシングを得た。
得られた各ドレッシングの全量をメスシリンダーに移し、20℃で2日間静置後、水相および油相の容量を測定した。水相と油相の分離度を、以下の式を用いて求めた:
分離度(%)=油相(ml)/[油相(ml)+水相(ml)]×100
ドレッシングの配合および分離度の結果を以下の表10に示す。
表10に示す結果から、高濃度の塩、高濃度の酸の存在下でも実施例14(実施例5の過熱水蒸気処理キサンタンガムを配合)および実施例15(実施例10の過熱水蒸気処理キサンタンガムを配合)のドレッシングはそれぞれ、比較例3(原キサンタンガムを配合)のドレッシングに比べ、経時的な油相と水相の分離が少ないことを確認した。
Figure 2021141889
(実施例16:粉末キサンタンガムの過熱水蒸気加熱処理)
被験物質として粉末キサンタンガムを用い、過熱水蒸気量をレベル3にて160℃、15分間処理を行ったこと以外は、実施例1と同様に過熱水蒸気処理を行った。
(比較例4:粉末キサンタンガムのスチーム加熱処理)
ガスコンベクションスチームオーブン(オザキ株式会社製、OZCSO−95)の庫内に、受け皿にオーブンペーパーを敷いた上に被験物質の粉末を均一に広げた状態で庫内に入れ、100℃、15分間のスチーム加熱処理を行った。
(比較例5:粉末キサンタンガムのオーブン加熱処理)
ガスコンベクションスチームオーブン(オザキ株式会社製、OZCSO−95)の庫内に、受け皿にオーブンペーパーを敷いた上に被験物質の粉末を均一に広げた状態で庫内に入れ、160℃、15分間の処理を行った。
(実施例5、実施例10、実施例16および比較例1、比較例4、比較例5:粒度分布測定、水分含量測定)
実施例5、実施例10および実施例16の過熱水蒸気処理後のキサンタンガム、ならびに比較例1の過熱水蒸気未処理のキサンタンガム、比較例4および比較例5のスチーム加熱処理後のキサンタンガムについて、以下のように粒度分布および水分含量を測定した。
(粒度分布測定)
レーザー回折式粒子径分布測定装置(株式会社島津製作所製,SALD-2100)にて湿式条件で粒度分布を測定した。溶媒に2−プロパノールを用いた。結果を以下の表11に示す。
(水分含量測定)
過熱水蒸気処理の直後にハロゲン水分計(METTLER TOLEDO製,HG53)を用いて105℃にて水分含量を測定した。結果を以下の表11に示す。
(結果)
表11の結果から、実施例5、実施例10、実施例16の過熱水蒸気処理キサンタンガムは比較例1の原キサンタンガムと比べてメディアン径が大きく、かつ、水分含量が6%以下であった。比較例4のスチーム加熱処理キサンタンガムはメディアン径および水分含量の両方が大きくなった。比較例5のオーブン加熱処理キサンタンガムは、メディアン径は変わらず、水分含量が6%以下であった。また、実施例5、実施例10、実施例16は焙焼糖のような甘い香りがした。
Figure 2021141889
(実施例17〜20および比較例6:改質キサンタンガムの製造および評価)
容器の缶内容量が12Lまたは120Lであることを除いて実施例5と同様の過熱水蒸気撹拌混合式殺菌装置を用いて、改質キサンタンガムを調製した。容器上部に設けられた排出部を閉じることで加圧が可能であるが、本実施例では開放して試験を行った。缶内容量12L機体では蒸気流量を15kg/時間、容器缶保温ジャケット温度を150℃に設定した(実施例17〜19)。缶内容量120L機体では蒸気流量45kg/時間、容器缶保温ジャケット温度を180℃に設定した(実施例20)。過熱水蒸気温度(給気温度)を給気口の温度センサーで測定し、品温を缶体内の温度センサーで測定した。
(キサンタンガム水溶液の粘度)
500mLのビーカーに300mLの蒸留水(20℃)を測りとり、撹拌羽(3枚羽を上下2枚配置したもの)を2,000rpmで撹拌しながら、キサンタンガムを添加し20分間撹拌した。キサンタンガムの濃度は0.2%(w/v)であった。その後、超音波洗浄機で10分間脱泡した後に粘度を測定した。粘度の測定を、B型粘度計(TVB−10M:東機産業株式会社製)を用い、液温20℃にてM2ローター(CORD No.21)で回転(回転数30rpm)させた状態で測定した。
(キサンタンガム水溶液のT2緩和時間およびpH)
500mLのビーカーに、300mLの蒸留水(20℃)を測りとり、撹拌羽(3枚羽を上下2枚配置したもの)を2,000rpmで撹拌しながら、キサンタンガムを添加し20分間撹拌した。キサンタンガムの濃度は0.2%(w/v)であった。その後、超音波洗浄機で脱泡した後にNMRテストチューブに充填した。T緩和時間をパルスNMR法(NMR方式湿式比表面積測定装置/Acorn Area:XiGo Nanotools)を用いてヒーター温度25℃で測定した。
(キサンタンガム水溶液のpH)
500mLのビーカーに300mLの蒸留水(20℃)を測りとり、撹拌羽(3枚羽を上下2枚配置したもの)を2,000rpmで撹拌しながら、キサンタンガムを添加し20分間撹拌した。キサンタンガムの濃度は0.2%(w/v)であった。得られたキサンタンガム水溶液のpHを、液温25℃にてガラス電極を用い測定した。
結果を表12に示す。粉末状キサンタンガムに過熱水蒸気を噴射し加熱した結果、到達品温の上昇に伴ってキサンタンガム水溶液の粘度が増加し、T緩和時間(ms)が短くなった。また、到達品温の上昇に伴って当該水溶液のpHが低下したことを確認した。
Figure 2021141889
(実施例21:改質キサンタンガムのグァーガムとの反応性評価)
表13に示す比率にて実施例20の改質キサンタンガムまたは比較例6の原キサンタンガムの各粉末をグァーガム粉末と混合し、粉末混合品を得た。
500mLのビーカーに300mLの蒸留水(20℃)を測りとり、撹拌羽(3枚羽を上下2枚配置したもの)を2,000rpmで撹拌しながら、粉末混合品を添加し20分間撹拌した。粉末混合品の濃度は0.5%(w/v)であった。その後、超音波洗浄機で10分間脱泡した後に粘度を測定した。粘度の測定を、B型粘度計(TVB−10M:東機産業株式会社製)を用い、液温20℃にてM3ローター(CORD No.22)で回転(回転数6rpm)させた状態で測定した。
結果を表13および図7に示す。図7は、過熱水蒸気処理を行って得られた改質キサンタンガムのグァーガムとの反応性評価の結果を示すグラフである。
Figure 2021141889
比較例6のキサンタンガム原素材が、混合比率グァーガム:キサンタンガム=4:1で最も高い粘度が得られたのに対し、実施例20の改質キサンタンガムでは混合比率グァーガム:キサンタンガム=3:2で最も高い粘度となった。また、得られる粘度も改質キサンタンガムの方が高かった。このように、改質キサンタンガムは、キサンタンガム原素材とは明らかにグァーガム反応性が変化していた。
本発明は、例えば、食品添加物および飲食品の製造分野、ならびに食品加工分野において有用である。

Claims (14)

  1. 改質食用素材の製造方法であって、
    原食用素材の粉末を過熱水蒸気にて加熱する工程を含み、
    該原食用素材が、たん白、たん白分解物、多糖類および食物繊維からなる群から選択される少なくとも1種である、方法。
  2. 前記加熱する工程が閉鎖系領域内で行われる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記加熱する工程が開放系環境下で行われる、請求項1に記載の方法。
  4. 前記加熱する工程が110℃から400℃の温度で行われる、請求項2または3に記載の方法。
  5. 前記加熱する工程が、前記原食用素材を処理台上に配置した状態で行われる、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記加熱する工程が、前記原食用素材を撹拌しながら行われる、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  7. 前記領域内または環境下の酸素濃度が空気中の酸素濃度より低い、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
  8. 請求項1から7のいずれかの方法により製造された改質食用素材。
  9. 前記改質食用素材の水分含量が質量を基準にして8%以下である、請求項8に記載の改質食用素材。
  10. 請求項8または9に記載の改質食用素材を含む、食用製剤。
  11. 飲食品の製造方法であって、
    飲食品原料と、請求項8または9に記載の改質食用素材または請求項10に記載の食用製剤とを合わせて、粗飲食品を得る工程、
    を含む、方法。
  12. さらに、前記粗飲食品を加熱する工程を含む、請求項11に記載の方法。
  13. 請求項8または9に記載の改質食用素材または請求項10に記載の食用製剤を含む、飲食品。
  14. 請求項11または12に記載の方法により製造された、飲食品。
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