JP2021141022A - 通信用電線 - Google Patents

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Takaki Endo
崇樹 遠藤
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欣司 田口
亮真 上柿
Ryoma UEGAKI
亮真 上柿
亜由武 皆川
Ayumu Minagawa
亜由武 皆川
健一郎 岩間
Kenichiro Iwama
健一郎 岩間
悠太 安好
Yuta Yasuyoshi
悠太 安好
達也 嶋田
Tatsuya Shimada
達也 嶋田
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Abstract

【課題】シールドテープを信号線の外周に設けた構造の安定性と、シールドテープと編組シールドの間の導通形成における簡便性とを両立できる通信用電線を提供する。【解決手段】絶縁電線11を複数本含む信号線10と、絶縁性の基材の一方の面に金属層21を有するテープ体として構成され、前記金属層を外側に向けて、前記信号線10の外周を被覆するシールドテープ20と、絶縁性のテープ体として構成され、前記シールドテープ20の外側に巻き付けられた押さえ巻きテープ30と、前記押さえ巻きテープ30の外側に配置された編組シールド40と、を有し、前記押さえ巻きテープ30は、前記信号線10を前記シールドテープ20で被覆した集合体の外周に、隣接するターン間に間隙Gを設けて、螺旋状に巻き付けられており、隣接するターン間に、前記シールドテープ20の前記金属層を露出させている、通信用電線1とする。【選択図】図1

Description

本開示は、通信用電線に関する。
自動車内の高速通信において、複数の絶縁電線を含む通信用電線を用いた差動伝送方式での信号伝送が、利用されている。この種の通信用電線においては、ノイズを低減するために、信号線の外周に、金属材料を含んだシールド体が配置される。シールド体としては、樹脂製の基材の表面に金属層を設けたシールドテープと、金属素線の編組体よりなる編組シールドとを重ねて配置する形態が、多用されている。この場合に、例えば特許文献1に開示されるように、内側にシールドテープを、外側に編組シールドを配置するのが一般的である。
そのように、2重のシールド体を有する通信用電線の例を、図3A,3Bに断面図にて示す。図3Aの通信用電線100においては、1対の絶縁電線11,11を含む信号線10の外周に、シールドテープ20が配置され、さらにその外周に、編組シールド40が配置されている。通信用電線100の強度や構造の安定性をさらに向上させたい場合には、シールドテープ20の内側または外側に、融着層付きの樹脂テープ30(PETテープ等)が巻きつけられる。
図3Aに示した形態では、シールドテープ20の内側に樹脂テープ30が配置されている。シールドテープ20は、図中に太線で示す金属層21を外側に向けた状態で配置されており、樹脂テープ30とシールドテープ20の基材面(金属層21と反対側の面)との間に、融着が施される。この構造においては、シールドテープ20の金属層21と外側の編組シールド40が直接接触し、両者の間が導通される。
一方、図3Bに示した通信用電線200では、図3Aの形態とは逆に、樹脂テープ30がシールドテープ20の外側に配置されている。この場合には、シールドテープ20は、金属層21を内側に向けた状態で配置される。そして、シールドテープ20の外側に、樹脂テープ30が巻き付けられ、シールドテープ20の基材面に融着される。このように、樹脂テープ30をシールドテープ20の外側に設ける形態は、シールドテープ20を信号線10に対して縦添え状に配置する場合に特に有利である。縦添え状のシールドテープ20が信号線10に対して浮き上がるのを、樹脂テープ30で押さえつけ、通信用電線200全体としての強度を確保することができるからである。この構造においては、シールドテープ20の金属層21が内側に向けられるため、シールドテープ20の金属層21と編組シールド40との間に、直接の接触による導通を形成することができない。そこで、信号線10とともにドレイン線60が設けられ、ドレイン線60を金属層21に接触させて、シールドテープ20が配置される。そして、通信用電線200の端末部において、ドレイン線60と編組シールド40との間を導通させることで、シールドテープ20と編組シールド40との間の導通を確保する。図示した形態では、構造を簡素に表示するために、信号線10を1本しか配置していないが、このようにシールドテープ20の外側に樹脂テープ30を設ける形態は、複数の信号線10を含む多心構造において採用される場合が多い。つまり、1本の信号線10とドレイン線60の集合体の外周にシールドテープ20を配置し、そのシールドテープ20の外周に樹脂テープ30を配置した線心を、多数集合させ、その集合体の外周を共通の編組シールド40で被覆する形態がとられる。
特開2019−061766公報
図3Bに示した通信用電線200のように、信号線10の外周にシールドテープ20を配置し、さらにその外周に樹脂テープ30を巻き付けてシールドテープ20を押さえつける形態は、シールドテープ20を信号線10の外周に配置した構造を安定化させるのに、高い効果を発揮する。しかし、シールドテープ20の金属層21と編組シールド40を直接接触させることができず、両者の間の導通を確保するためには、ドレイン線60を配置しておき、通信用電線200の端末部にてドレイン線60と編組シールド40の間に導通を形成する必要がある。そのように、端末部で導通を確保する形態は、多心構造において、各線心を構成するシールドテープ20の金属層21を、共通の編組シールド40と導通させる場合や、シグナルグラウンドとフレームグラウンドが分離されており、シグナルグラウンドとなる編組シールド40およびシールドテープ20の金属層21を、フレームグラウンドに接続しない場合には、好適である。
しかし、通信用電線を自動車内に配置する場合等、シグナルグラウンドとフレームグラウンドが分離されていない場合には、図3Bの通信用電線200のように、ドレイン線60を備えた構造は、実用性が低くなってしまう。シールドテープ20の金属層21と編組シールド40の間の導通、また、コネクタ等、グラウンド電位を構成する部材への通信用電線200の接続を、通信用電線200の端末部において、ドレイン線60を介して行うとすれば、端末部の構造が複雑になり、また、接続作業が煩雑になるからである。シールドテープ20の外側に樹脂テープ30を巻き付けた構造を採用しながら、ドレイン線60を用いなくても、シールドテープ20の金属層21と編組シールド40の間の導通を確保することができる通信用電線があれば、樹脂テープ30の巻き付けによる構造安定化の効果を享受しながら、シールドテープ20と編組シールド40の間の導通の確保およびグラウンド電位への接続を、簡便に行うことができると期待される。
そこで、信号線の外周に、シールドテープと編組シールドをこの順に配置した通信用電線において、シールドテープを信号線の外周に設けた構造の安定性と、シールドテープと編組シールドの間の導通形成における簡便性とを両立できる通信用電線を提供することを課題とする。
本開示の通信用電線は、導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁被覆と、を有する絶縁電線を複数本含む信号線と、絶縁性の基材の一方の面に金属層を有するテープ体として構成され、前記金属層を外側に向けて、前記信号線の外周を被覆するシールドテープと、絶縁性のテープ体として構成され、前記シールドテープの外側に巻き付けられた押さえ巻きテープと、金属素線の編組体として構成され、前記押さえ巻きテープの外側に配置された編組シールドと、を有し、前記押さえ巻きテープは、前記信号線を前記シールドテープで被覆した集合体の外周に、隣接するターン間に間隙を設けて、螺旋状に巻き付けられており、隣接するターン間に、前記シールドテープの前記金属層を露出させている。
本開示にかかる通信用電線は、信号線の外周に、シールドテープと編組シールドをこの順に配置した通信用電線において、シールドテープを信号線の外周に設けた構造の安定性と、シールドテープと編組シールドの間の導通形成における簡便性とを両立できる。
図1は、本開示の一実施形態にかかる通信用電線を示す平面図である。図では、端末部において、構成部材を段階的に除去した状態を示している。 図2A,2Bは、上記通信用電線の断面図である。図2Aは図1中のA−A断面、図2BはB−B断面を示している。 図3A,3Bは、従来の通信用電線の一例、および別の例をそれぞれ示す断面図である。 図4は、試料#1〜#4にかかる通信用電線について、挿入損失の周波数特性を評価した結果を示している。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示にかかる通信用電線は、導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁被覆と、を有する絶縁電線を複数本含む信号線と、絶縁性の基材の一方の面に金属層を有するテープ体として構成され、前記金属層を外側に向けて、前記信号線の外周を被覆するシールドテープと、絶縁性のテープ体として構成され、前記シールドテープの外側に巻き付けられた押さえ巻きテープと、金属素線の編組体として構成され、前記押さえ巻きテープの外側に配置された編組シールドと、を有し、前記押さえ巻きテープは、前記信号線を前記シールドテープで被覆した集合体の外周に、隣接するターン間に間隙を設けて、螺旋状に巻き付けられており、隣接するターン間に、前記シールドテープの前記金属層を露出させている。
上記通信用電線においては、信号線の外周にシールドテープが配置され、さらにそのシールドテープの外側に、押さえ巻きテープが巻き付けられている。押さえ巻きテープによって、シールドテープを外側から押さえつけることで、シールドテープの緩みを抑制し、信号線の外周にシールドテープを配置した構造を、安定に保持することができる。
シールドテープは、金属層を外側に向けているが、押さえ巻きテープが絶縁性の部材であるため、押さえ巻きテープに被覆された箇所においては、シールドテープの金属層が、押さえ巻きテープの外側に設けられた編組シールドと接触し、導通を形成することができない。一方で、押さえ巻きテープは、シールドテープの外周に密に巻き付けられるのではなく、隣接するターン間に間隙を設けた状態で、粗く巻き付けられており、ターン間にシールドテープの金属層を露出させている。ターン間でシールドテープの金属層が露出した箇所においては、その金属層が編組シールドに直接接触することができ、両者の間に導通が確保される。シールドテープの金属層と編組シールドの間の導通のために、ドレイン線を設ける必要や、端末部において、導通のための操作を行う必要はない。このように、押さえ巻きテープを粗く巻き付けた構造を採用することで、シールドテープを信号線の外周に設けた構造の安定性と、シールドテープと編組シールドの間の導通形成における簡便性とが、両立される。
ここで、前記シールドテープは、前記信号線に対して、縦添え状に配置されているとよい。シールドテープを縦添え状に配置する際には、シールドテープに大きな張力を印加することができず、横巻き状に配置する場合と比較して、シールドテープに緩みが生じやすい。しかし、その縦添え状のシールドテープの外側に、押さえ巻きテープを巻き付けることで、シールドテープの緩みを効果的に抑制することができる。
前記信号線は、1対の前記絶縁電線が、並列に配置されてなるとよい。この場合には、1対の絶縁電線が相互に撚り合わせられる場合と比較して、信号線の構造の安定性が低くなりやすいが、信号線を被覆するシールドテープの外周に押さえ巻きテープを巻き付けることで、1対の絶縁電線が並列に並んだ構造を、安定に保持することができる。
前記押さえ巻きテープのターン間に設けられた前記間隙の幅は、前記押さえ巻きテープの幅の1/3以上であるとよい。すると、押さえ巻きテープのターン間に十分な幅でシールドテープの金属層が露出されることになり、編組シールドとの間の導通面積を確保しやすくなる。
前記押さえ巻きテープは、ピッチ12mm以下の螺旋状に巻き付けられているとよい。すると、シールドテープを信号線の外周に配置した構造を、押さえ巻きテープによって安定に保持する効果が、高くなる。また、特に、1対の絶縁電線が並列に配置され、その外周にシールドテープが縦添え状に配置されている場合には、シールドテープの外側に巻き付けられる押さえ巻きテープの螺旋構造の周期性によって、共振が発生し、螺旋のピッチに対応する周波数において、挿入損失が急激に大きくなる。しかし、押さえ巻きテープの螺旋ピッチを12mm以下としておけば、そのような落ち込みが、10GHz以下の周波数域には発生しにくくなる。その結果、通信用電線を、10GHzまでの周波数域の通信に、好適に用いることができる。
前記押さえ巻きテープの巻き付け方向と、前記編組シールドを構成する前記金属素線の方向がなす角度が、30°以下であるとよい。すると、押さえ巻きテープのターン間にシールドテープの金属層が露出した領域が延びる方向と、編組シールドを構成する金属素線が延びる方向が、近くなることにより、編組シールドを構成する金属素線と金属層との間の接触面積が、大きくなる。その結果、シールドテープと編組シールドの間の導通が、効果的に確保されるようになる。
前記押さえ巻きテープの厚さは、50μm以下であるとよい。すると、押さえ巻きテープの螺旋のターン間の領域において、シールドテープの金属層と編組シールドとの接触が、押さえ巻きテープの厚みによって妨げられにくくなり、広い面積で導通を確保しやすくなる。
前記押さえ巻きテープは、前記シールドテープに対して固着されているとよい。すると、信号線の外周にシールドテープを配置した構造を、押さえ巻きテープによって安定に保持する効果が、特に高くなる。また、螺旋のターン間に間隙を設けた押さえ巻きテープの巻き付け構造を、強固に維持しやすくなる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。本明細書において、並列、垂直等、部材の形状や配置を示す語には、幾何的に厳密な概念のみならず、通信用電線として一般に許容される範囲の誤差も含むものとする。
<通信用電線の構成>
図1に、本開示の一実施形態にかかる通信用電線1を、平面図にて表示する。図1では、構成部材の積層構造を説明するために、通信用電線1の端末部において、各構成部材を段階的に除去した状態を表示している。また、図2A,2Bに、それぞれ図1のA−A位置およびB−B位置において、通信用電線1を軸線方向に垂直に切断した断面の状態を示す。
通信用電線1は、複数の絶縁電線11を含む信号線10を有している。信号線10の外周は、シールドテープ20に被覆されており、さらにシールドテープ20の外側に押さえ巻きテープ30が巻き付けられている。押さえ巻きテープ30の外側には、編組シールド40が配置されている。さらに編組シールド40の外周が、シース50によって被覆されている。本通信用電線1は、シールドテープ20と編組シールド40を導通させるためのドレイン線は有していない。
信号線10を構成する各絶縁電線11は、導体12と、導体12の外周を被覆する絶縁被覆13を有している。導体12は、柔軟性の観点から、撚線よりなることが好ましい。信号線10を構成する絶縁電線11の本数は特に限定されず、2本、4本等とすることができるが、ここでは、2本(1対)の絶縁電線11,11を用いる形態を扱う。また、信号線10において、1対の絶縁電線11,11は、相互に撚り合わせられていてもよいが、より高い周波数領域での通信が可能になる点で、1対の絶縁電線11,11が、並列に配置され、軸線方向を略平行に揃えて相互に接触したパラレルペア線として、信号線10が構成されることが好ましい。信号線10は、差動モード信号を伝達することができる。
本実施形態にかかる通信用電線1においては、シールドテープ20と編組シールド40が、2重のシールド体として機能し、外部から信号線10に侵入するノイズ、および信号線10から外部に放出されるノイズを遮蔽する。特に、信号線10が、撚り合わせ構造を有さないパラレルペア線として形成されている場合には、外部からの同相モードのノイズの影響を受けやすいが、シールドテープ20と編組シールド40の2重のシールド構造を用いることで、外部からのノイズの影響を効果的に低減することができる。
シールドテープ20は、テープ状の基材の一方の面に、金属層21を有している。断面図では、金属層21を太線で表示している。基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表される樹脂材料等、絶縁性の材料より構成されている。金属層21を構成する金属種は特に限定されるものではないが、アルミニウムまたはアルミニウム合金、銅または銅合金を好適に例示することができる。
シールドテープ20は、1本の信号線10の外周を、全周にわたって被覆している。シールドテープ20は、金属層21を外側(信号線10と反対側)に向けて、配置されている。シールドテープ20は、信号線10に対して、横巻き状、つまり螺旋状に巻き付けられていてもよいが、信号線10に対して、縦添え状に配置されていることが好ましい。つまり、信号線10の周方向に沿って、シールドテープ20の面で1本の信号線10を包み込むように、シールドテープ20が配置されていることが好ましい。特に、信号線10がパラレルペア線として構成されている場合に、シールドテープ20を横巻き状に配置すると、巻き付けの周期性によって、特定の周波数およびその近傍において挿入損失が大きくなるのに対し、シールドテープ20を縦添え状に配置すると、そのような周期性に起因する損失は発生せず、高周波域まで高い伝送特性を確保することができる。シールドテープ20は、信号線10に対して固着されていないことが好ましい。
編組シールド40は、細い金属素線41が、編み込まれて中空筒状に成形された編組体として構成されている。編組シールド40を構成する金属材料としては、銅、銅合金、またアルミニウム、アルミニウム合金を好適に例示することができる。
本実施形態にかかる通信用電線1においては、シールドテープ20の層と編組シールド40との間に、押さえ巻きテープ30が設けられている。押さえ巻きテープ30は、シールドテープ20の基材と同様に、PETに代表される樹脂材料等、絶縁性の材料より構成されている。押さえ巻きテープ30は、シールドテープ20とは異なり、金属層等、導電性の材料を表面に露出させていない。押さえ巻きテープ30は、一方の面に、接着性材料または融着性材料よりなる固着層(図略)を有することが好ましい。
押さえ巻きテープ30の状態と特性については、後に詳しく説明するが、押さえ巻きテープ30は、シールドテープ20の外側に巻き付けられ、信号線10とシールドテープ20の集合体を、外側から押さえ込んでいる。押さえ巻きテープ30が固着層を有する場合には、固着層が設けられた面が内側に向けられ、シールドテープ20に対して固着(接着または融着)されることが好ましい。押さえ巻きテープ30の外側には、間に他の部材を介さず、編組シールド40が設けられる。
通信用電線1の最外周には、シース50が設けられる。シース50は、絶縁性の樹脂材料より構成されている。シース50は、内側の各部材10〜40を物理的に保護する役割や、水等との接触による通信用電線1の特性への影響を抑制する役割を果たす。
<押さえ巻きテープの状態と特性>
上記のように、本実施形態にかかる通信用電線1においては、信号線10の外周をシールドテープ20で被覆した集合体の外周に、押さえ巻きテープ30を巻き付け、さらに押さえ巻きテープ30の外側に編組シールド40を配置している。以下では、この押さえ巻きテープ30の状態に関する詳細と、その押さえ巻きテープ30の状態によって通信用電線1にもたらされる特性について、説明する。
押さえ巻きテープ30は、シールドテープ20の外側に、信号線10の軸を中心として、螺旋状に巻き付けられている。しかし、押さえ巻きテープ30は、隙間なく密に巻き付けられているのではなく、隣接するターン間に間隙Gを設けた状態で、粗く巻かれている。隣接するターン間においては、押さえ巻きテープ30の構成材料に覆われない間隙Gが形成されていることにより、外側に向けられたシールドテープ20の金属層21が、シールドテープ20の外側の空間に対して露出している。
粗く巻かれた押さえ巻きテープ30の外周に編組シールド40が配置されることにより、押さえ巻きテープ30のターン間の間隙Gにおいて露出したシールドテープ20の金属層21が、編組シールド40と接触し、金属層21と編組シールド40の間に導通が形成されることになる。つまり、押さえ巻きテープ30に被覆されている箇所においては、シールドテープ20の金属層21が編組シールド40と接触することができず、両者の間に導通は形成されない。一方、押さえ巻きテープ30の螺旋形状のターン間において、シールドテープ20の金属層21が、押さえ巻きテープ30に被覆されずに露出している、間隙Gの箇所においては、金属層21が編組シールド40と直接接触し、両者の間に導通が形成される。
シールドテープ20の金属層21と編組シールド40の間の接触状態が、図2A,2Bの断面図に説明されている。図2A,2Bは、図1中のA−A断面およびB−B断面を表示しており、それぞれ、図1の紙面手前側に、押さえ巻きテープ30が配置されている箇所と、配置されていない箇所に相当する。図2AのA−A断面では、図中上方の位置においては、シールドテープ20の金属層21は、押さえ巻きテープ30に隔てられて、編組シールド40に接触することができない。しかし、図中下方の位置においては、シールドテープ20の外側の金属層21の表面に、押さえ巻きテープ30が配置されておらず、金属層21が露出されている。この露出されたシールドテープ20の金属層21は、他の部材を介さずに編組シールド40と対向することになり、編組シールド40と直接接触して、編組シールド40との間に、導通を形成することができる。図2BのB−B断面では、反対に、シールドテープ20の金属層21は、図中下方の位置においては、編組シールド40に接触することができず、図中上方の位置では、編組シールド40と直接接触して、編組シールド40との間に、導通を形成することができる。
このように、通信用電線1においては、軸線方向に沿って、押さえ巻きテープ30の螺旋形状の1ピッチの中で、シールドテープ20の金属層21と編組シールド40の間に導通が形成される位置が変化する。A−A断面の上方部やB−B断面の下方部のように、軸線方向の各位置の断面においては、押さえ巻きテープ30に隔てられて、シールドテープ20の金属層21が編組シールド21と接触できない箇所が存在するが、1ピッチ全体として見ると、シールドテープ20の金属層21が、周方向の全域で、編組シールド21と接触し、導通を形成することができる。
本実施形態にかかる通信用電線1においては、信号線10を被覆するシールドテープ20の外周に、押さえ巻きテープ30を螺旋状に巻き付け、シールドテープ20を外側から押さえつけることにより、シールドテープ20に緩みが発生するのを抑制することができる。その結果、信号線10をシールドテープ20で被覆した構造の安定性を高め、その構造を強固に保持することができる。特に、信号線10がパラレルペア線として構成されている場合には、撚り合わせ構造を有する場合と比較して、1対の絶縁電線11,11の相対位置にずれが生じやすいが、シールドテープ20を介して、押さえ巻きテープ30で信号線10を押さえつけることで、パラレルペア構造を安定に保持することができる。また、シールドテープ20が信号線10に対して縦添え状に配置されている場合には、シールドテープ20の配置に際して、シールドテープ20に大きな張力を印加することができないので、横巻き状に配置する場合と比較して、シールドテープ20に緩みが生じやすいが、外周に押さえ巻きテープ30を配置することで、シールドテープ20の緩みを、高度に抑制することができる。
同時に、シールドテープ20を、金属層21を外側に向けて配置したうえで、そのシールドテープ20の外周に配置する押さえ巻きテープ30を、隙間なく密に巻き付けるのではなく、粗く巻き付け、ターン間に間隙Gを残して、シールドテープ20の金属層21を露出させていることにより、シールドテープ20の金属層21と編組シールド40との間で、導通が確保される。図3Bに示す通信用電線200のように、ドレイン線60を設け、金属層21を内側に向けて配置したシールドテープ20と接触させる形態の場合には、端末部において、ドレイン線60を編組シールド40と導通させる処理を行わなければ、シールドテープ20の金属層21と編組シールド40の間の導通を確保することができず、ノイズ遮蔽効果を十分に得られなくなるが、本実施形態にかかる通信用電線1においては、シールドテープ20の金属層21が、間隙Gにおいて露出し、編組シールド40と直接接触することで、両者の間の導通が確保される。そのため、ドレイン線60等、導通のための部材を設けることも、導通のために特段の処理操作を行うことも、必要もない。よって、通信用電線1の構成を簡素に保ち、端末部等における加工工程も簡便なものとすることができる。このような構造の簡素性および端末処理の簡便性は、自動車内等、シグナルグラウンドとフレームグラウンドが分離されていない状態で、通信用電線1を用いる場合に、特に有利となる。
以上のように、本実施形態にかかる通信用電線1は、金属層21を外側に向けたシールドテープ20の外周に、押さえ巻きテープ30を粗く巻きつけることにより、シールドテープ20を信号線10の外周に設けた構造の安定性と、シールドテープ20と編組シールド40の間の導通形成における簡便性を、両立するものとなっている。特に、パラレルペア線として構成された信号線10の外周に、シールドテープ20を縦添え状に配置したうえで、押さえ巻きテープ30を粗く巻き付ける形態を、好適に適用することができる。パラレルペア線においては、シールドテープ20の配置の周期性に起因して、特定周波数で挿入損失が大きくなることを避けるために、シールドテープ20を縦添え配置にすることが好ましいが、縦添え配置にしたシールドテープ20の緩みを、押さえ巻きテープ30で効果的に抑制できるからである。
押さえ巻きテープ30は、シールドテープ20に対して、必ずしも固着(接着または融着)されなくてもよいが、固着されることで、シールドテープ20の緩みを効果的に抑制することができる。また、所定間隔で間隙Gを設けた押さえ巻きテープ30の巻き付け構造が、強固に維持されるため、シールドテープ20の金属層21が編組シールド40に接触した導通部が、通信用電線1の周方向の各位置に周期的に形成された構造が、通信用電線1において安定に保持されやすくなる。
押さえ巻きテープ30の巻き付け構造において、押さえ巻きテープ30がシールドテープ20の表面を被覆している領域の面積に対して、押さえ巻きテープ30のターン間の間隙Gにおいて金属層21が露出している面積の割合が大きいほど、金属層21と編組シールド40の間の接触面積を大きくし、金属層21と編組シールド40の間の導通を各間隙Gにおいて確保しやすくなる。その観点から、押さえ巻きテープ30のターン間で金属層21を露出させた間隙Gの幅が、押さえ巻きテープ30の幅の1/3以上であるとよい。ここで、間隙Gおよび押さえ巻きテープ30の幅は、押さえ巻きテープ30自体の長手方向に直行する方向、または通信用電線1の軸線方向に沿って規定すればよい。また、金属層21を露出させた間隙Gの割合は、開口率でも定義することができる。信号線10の外周に設けられたシールドテープ20の層の外表面全体の面積のうち、間隙Gとして金属層21が露出されている領域の面積の割合が、開口率となる。金属層21と編組シールド40の間の導通を確保しやすくする観点から、開口率は、30%以上、さらには45%以上であることが好ましい。一方、押さえ巻きテープ30がシールドテープ20を押さえつけている領域の面積が、押さえつけていない領域である間隙Gの面積に比べて小さくなりすぎると、信号線10の外周をシールドテープ20で被覆した構造を押さえ巻きテープ30によって安定に保持する効果が、低くなる。構造の安定保持の効果を十分に得る観点から、間隙Gの幅は、押さえ巻きテープ30の幅に対して、3倍以下であるとよい。また、開口率にして、75%以下であるとよい。間隙Gと押さえ巻きテープ30の幅の比率、また開口率は、用いる押さえ巻きテープ30の幅および/または押さえ巻きテープ30の螺旋形状のピッチによって、調整することができる。
上記のように、押さえ巻きテープ30の螺旋形状のピッチは、間隙Gの幅と押さえ巻きテープ30の幅との間の比率に影響を与えるパラメータではあるが、そのピッチを設定するに際し、押さえ巻きテープ30の螺旋構造の周期性による共振を考慮する必要がある。つまり、通信用電線1においては、シールドテープ20の金属層21が編組シールド40と接触した導通部の位置が、周方向に沿って、押さえ巻きテープ30の螺旋構造のピッチと同じ周期で変化するので、その周期に対応する通信周波数において、共振が起こり、挿入損失が大きくなる。この共振が起こる周波数は、押さえ巻きテープ30の螺旋構造のピッチが小さいほど高周波数になる。そこで、通信用電線1の適用を想定している周波数範囲よりも高い周波数において共振が起こるように、押さえ巻きテープ30の螺旋構造のピッチを設定すればよい。例えば、10GHz以上の帯域で通信用電線1を使用する場合には、そのピッチを12mm以下とすればよい。さらに好ましくは、ピッチを、10mm以下、また7mm以下とすればよい。押さえ巻きテープ30の螺旋ピッチを小さくすることは、シールドテープ20で信号線10を被覆した構造の保持の安定性を高める点でも、効果を有する。なお、螺旋ピッチを小さくしすぎると、各ターン間に十分な幅の間隙Gを確保することが難しくなる場合もあるので、螺旋ピッチは、2mm以上としておくとよい。
通信用電線1において、押さえ巻きテープ30が薄いものであるほど、各ターン間の間隙Gにおいて、シールドテープ20の金属層21と編組シールド40を大面積で接触させやすくなる。例えば、押さえ巻きテープ30の厚さを、50μm以下とすることが好ましい。押さえ巻きテープ30の強度を十分に確保する観点からは、押さえ巻きテープ30の厚さを、5μm以上としておくとよい。
シールドテープ20の金属層21と編組シールド40との間の接触は、編組シールド40を構成する各金属素線41の表面において形成される。この際、シールドテープ20の螺旋構造の巻き付け方向D1(シールドテープ20の長手方向)と、編組シールド40を構成する金属素線41の方向D2(金属素線41の長手方向)が、なるべく揃っている方が、編組シールド40を構成する各金属素線41と、シールドテープ20の金属層21との間の接触面積を大きくすることができ、編組シールド40全体として、金属層21との間に大きな接触面積を獲得することになる。その接触面積を十分に大きくする観点から、シールドテープ20の巻き付け方向D1と、編組シールド40を構成する金属素線41の方向D2の間の角度が、±30°の範囲内に収まっているとよい。なお、編組シールド40において、金属素線41は、複数の方向(図1では2方向)に向いた群に分けられて、各群が相互に編み込まれているが、それら複数の方向のうち、シールドテープ20の巻き付け方向D1との間の角度が最も小さい方向を、金属素線41の方向D2とみなせばよい。
以下、実施例を示す。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
<試料の作製>
いずれもパラレルペア線として構成した信号線の外周に、PET製の基材に金属層として銅めっき層を設けたシールドテープと、編組シールドと、PET製の押さえ巻きテープを配置し、以下の試料#1〜#4にかかる通信用電線を作製した。
・試料#1:図3Bのように、信号線とドレイン線の集合体の外周に、金属層を内側に向けて、シールドテープを配置した。シールドテープは、横巻き状とした。そのシールドテープの外側に、押さえ巻きテープを間隙なく密に巻き付けたうえで、編組シールドを配置した。さらにその外周にシースを形成した。端末において、ドレイン線と編組シールドを導通させた。
・試料#2:試料#1において、シールドテープを横巻き状ではなく、縦添え状に配置した。
・試料#3:図1,2A,2Bに示すように、信号線の外周に、金属層を外側に向けて、シールドテープを配置した。シールドテープは、横巻き状とした。そのシールドテープの外側に、押さえ巻きテープを、ターン間に間隙を設けて粗く巻き付けたうえで、編組シールドを配置した。さらにその外周にシースを形成した。
・試料#4:試料#3において、シールドテープを横巻き状ではなく、縦添え状に配置した。
試料#3,#4においては、押さえ巻きテープは、5.5mmピッチの螺旋状に巻き付けた。テープ幅は3mm、間隙の幅は2.5mmであり、開口率が45%となった。試料#1,#3において、横巻き状のシールドテープの螺旋ピッチは、5.5mmとした。試料#1〜#4のいずれにおいても、押さえ巻きテープとシールドテープの間は、押さえ巻きテープの面に設けた融着層を介して熱融着した。
作製した試料#1〜#4にかかる通信用電線に、差動信号を入力し、挿入損失の周波数特性を評価した。評価は、大気中、室温にて行った。
<結果>
図4に、試料#1〜#4にかかる通信用電線について、差動モードの挿入損失(sdd21)の周波数特性を示す。図4によると、金属層を外側に向けて配置したシールドテープの外周に、間隙を設けて押さえ巻きテープを配置し、その外周に編組シールドを配置した試料#3,#4では、ドレイン線を用いて、シールドテープと編組シールドの間の導通をドレイン線によって確保した試料#1,#2と、それぞれ類似した周波数特性が得られている。このことから、試料#3,#4においては、シールドテープの外周に絶縁性の押さえ巻きテープを配置しているにもかかわらず、シールドテープと編組シールドの間に、ドレイン線を用いた場合とほぼ同等の導通が確保できていることが確認される。つまり、押さえ巻きテープのターン間の間隙において露出したシールドテープの金属層と、編組シールドとが接触し、両者の間に導通が形成されていることが、確認される。特に、試料#4では、試料#2よりも挿入損失の周波数依存性が緩やかになっており、ドレイン線を用いる場合よりも良好な周波数特性が得られていると言える。
試料#3と試料#4で周波数特性を比較すると、シールドテープを縦添え状に配置している試料#4では、周波数に対して損失量が緩やかに増大しているだけである。一方、シールドテープを横巻き状に配置している試料#3では、13GHz近傍で、急激な落ち込みが見られる。この挙動は、共振による挿入損失の増大に対応付けることができる。この結果から、シールドテープを縦添え状に配置して、その外周に押さえ巻きテープを巻く場合の方が、シールドテープを横巻き状に配置する場合よりも、広い周波数域で通信用電線を使用できることが、示される。試料#3の場合は、挿入損失の増大による落ち込みの影響が10GHz以下の領域にも及んでおり、10GHzに達する高周波数域において、通信に用いることは難しい。これに対し、試料#4の場合は、10GHzを超え、さらに20GHzに達する広い周波数領域にわたって、安定な周波数特性を利用して、通信を行うことができる。
本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
1 通信用電線
10 信号線
11 絶縁電線
12 導体
13 絶縁被覆
20 シールドテープ
21 金属層
30 押さえ巻きテープ(樹脂テープ)
40 編組シールド
41 金属素線
50 シース
60 ドレイン線
100,200 従来の通信用電線
D1 押さえ巻きテープの巻き付け方向
D2 金属素線の方向
G 間隙

Claims (8)

  1. 導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁被覆と、を有する絶縁電線を複数本含む信号線と、
    絶縁性の基材の一方の面に金属層を有するテープ体として構成され、前記金属層を外側に向けて、前記信号線の外周を被覆するシールドテープと、
    絶縁性のテープ体として構成され、前記シールドテープの外側に巻き付けられた押さえ巻きテープと、
    金属素線の編組体として構成され、前記押さえ巻きテープの外側に配置された編組シールドと、を有し、
    前記押さえ巻きテープは、前記信号線を前記シールドテープで被覆した集合体の外周に、隣接するターン間に間隙を設けて、螺旋状に巻き付けられており、隣接するターン間に、前記シールドテープの前記金属層を露出させている、通信用電線。
  2. 前記シールドテープは、前記信号線に対して、縦添え状に配置されている、請求項1に記載の通信用電線。
  3. 前記信号線は、1対の前記絶縁電線が、並列に配置されてなる、請求項1または請求項2に記載の通信用電線。
  4. 前記押さえ巻きテープのターン間に設けられた前記間隙の幅は、前記押さえ巻きテープの幅の1/3以上である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信用電線。
  5. 前記押さえ巻きテープは、ピッチ12mm以下の螺旋状に巻き付けられている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通信用電線。
  6. 前記押さえ巻きテープの巻き付け方向と、前記編組シールドを構成する前記金属素線の方向がなす角度が、30°以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の通信用電線。
  7. 前記押さえ巻きテープの厚さは、50μm以下である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の通信用電線。
  8. 前記押さえ巻きテープは、前記シールドテープに対して固着されている、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の通信用電線。
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