以下、図面を参照して本発明に係るホイールローダの実施形態について説明する。図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、その重複説明は省略する。また、以下の説明では、上下、左右、前後の方向及び位置は、ホイールローダの通常の使用状態、すなわち車輪が地面に接地する状態を基準とする。
[第1実施形態]
図1は第1実施形態に係るホイールローダを示す側面図であり、図2は第1の実施形態に係るホイールローダの油圧回路図であり、図3は第1の実施形態に係るホイールローダのブロック構成図である。本実施形態のホイールローダ1は、リフトアーム2、バケット3、車輪4、フロントボディ11、リアボディ12等を備えている。フロントボディ11及びリアボディ12は、ホイールローダ1の車体を構成する。リアボディ12は、運転室5及びエンジン室6等を有する。また、運転室5には、電気リフト操作レバー16と、電気バケット操作レバー(図示せず)とが設けられており、オペレータはこれらのレバーを操作することでホイールローダ1の荷役装置を動作させる。
より具体的には、ホイールローダ1は、フロントボディ11の前部に取り付けられるとともに昇降可能な左右一対のリフトアーム2と、リフトアーム2に着脱可能に装着されるバケット(アタッチメント)3と、油圧ポンプ21から供給される圧油により駆動されるとともに、リフトアーム2を介してバケット3を昇降させる一対のリフトシリンダ7と、油圧ポンプ21から供給される圧油により駆動されるとともに、ベルクランク9を介してバケット3を傾動させるバケットシリンダ8と、を備えている。
バケット3は、ベルクランク9及びバケットリンク10を介してバケットシリンダ8の伸縮により回動し、これによってバケット3の向きが上下する。なお、アタッチメントとしては、バケット3のほか、例えばフォーク(図4参照)等が挙げられる。
リフトシリンダ7は、油圧ポンプ21から供給される圧油によって駆動される油圧アクチュエータであり、伸縮動作でリフトアーム2を上下方向に駆動する。具体的には、油圧ポンプ21によって圧油がリフトシリンダ7のボトム室に供給されると、リフトシリンダ7のロッド7aが伸長し、これによってリフトアーム2は上昇する(すなわち、リフト上げ)。一方、圧油がリフトシリンダ7のロッド室に供給されると、ロッド7aが縮退し、これによってリフトアーム2は下降する(すなわち、リフト下げ)。そして、このようなリフト上げ及びリフト下げによって、リフトアーム2の先端に装着されたバケット3は昇降することができる。
バケットシリンダ8は、油圧ポンプ21から供給される圧油によって駆動される油圧アクチュエータであり、伸縮動作でバケット3を上下方向に傾動させる。具体的には、油圧ポンプ21によって圧油がバケットシリンダ8のボトム室に供給されると、バケットシリンダ8のロッド8aが伸長し、これによってバケット3は上方向に回動する。一方、圧油がバケットシリンダ8のロッド室に供給されると、ロッド8aが縮退し、これによってバケット3は下方向に回動する。
リフトアーム2とフロントボディ11との間には、リフト角センサ(リフト角検出装置)13が設けられている。リフト角センサ13は、リフトアーム2とフロントボディ11との相対角度を検出し、検出した結果をコントローラ27(後述する)に出力する。また、リフトアーム2とベルクランク9との間には、ベルクランク角センサ(ベルクランク角検出装置)14が設けられている。ベルクランク角センサ14は、リフトアーム2とベルクランク9の相対角度を検出し、検出した結果をコントローラ27に出力する。
本実施形態では、リフトアーム2、ベルクランク9、バケットリンク10、リフトシリンダ7、及びバケットシリンダ8は総称してリンク機構と呼ばれる。このリンク機構は、バケット底面が地面に接地した状態から、バケットシリンダ8を動作させずにリフトシリンダ7のみを動作させた場合に、リフトアーム2が上昇し、リフトアーム2の上昇につれて少なくとも一定区間においてバケット3の爪先が上向きになる。このようなリンク機構はZリンク機構と呼ばれ、ホイールローダのアタッチメントとしてバケットを装着する場合に多く使われている。
図4は図1のホイールローダのアタッチメントをフォーク15にした場合の図である。図4に示すように、フォーク15の爪先がフロントボディ11に対してなす角度(ホイールローダ1が水平面上にある場合には水平面に対してなす角度)を、フォーク爪先角度αとする。フォーク爪先角度αは、特許請求の範囲に記載の「アタッチメントの車体に対する角度」に相当するものであり、上述のリフト角センサ13及びベルクランク角センサ14の検出結果から演算される。
リフトアーム2にフォーク15を装着した場合、リフトアーム2の上昇時(言い換えれば、リフト上げ時)又はリフトアーム2の下降時(言い換えれば、リフト下げ時)にフォーク15が略水平を保つ必要がある。すなわち、フォーク爪先角度αが微小で、略一定であることが必要となる。そして、Zリンク機構を用いてフォーク15を略水平に昇降するためには、リフトシリンダ7とバケットシリンダ8を同時に動作させなくてはならない。
リフト上げ時には、リフトシリンダ7を伸長させながらバケットシリンダ8を縮退させ、リフト下げ時には、リフトシリンダ7を縮退させながらバケットシリンダ8を伸長させることになる。リフトシリンダ7及びバケットシリンダ8は、どちらも伸長するときに重力に逆らって動作することになるので、負荷が大きい。一方、リフトシリンダ7及びバケットシリンダ8がともに縮退するときには、重力方向に動作することになるので、負荷が小さい。
このため、リフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の片方が伸長してもう片方を縮退する動作は、両者の負荷の差が大きい。また、リフトシリンダ7とバケットシリンダ8がパラレル回路となっている場合には、負荷の小さいシリンダが優先的に動作し、操作性が悪く、フォーク15を略水平に昇降することは難しい。操作性を保つために、負荷の小さいシリンダ側の油路にバルブを設けて圧油の流れを絞る従来の方法も考えられるが、流れを絞ると、一度油圧ポンプ21で昇圧した圧油エネルギを絞りで消費することになるので、エネルギのロスが大きくなる。
このような問題を解決するために、本実施形態のホイールローダ1は、図2に示す油圧回路を備えている。具体的には、従来のホイールローダの油圧回路では、リフトシリンダ7の動作は図2に示すリフトコントロールバルブ23のみで、バケットシリンダ8の動作は図2に示すバケットコントロールバルブ24のみで制御されていた。これに対し、本実施形態では、リフトコントロールバルブ23及びバケットコントロールバルブ24に加えて、リフト下げバルブ25及びダンプバルブ26を更に備えている。
図2に示すように、油圧ポンプ21は、エンジン(図示せず)によって駆動され、リフトコントロールバルブ23を介してリフトシリンダ7へ、バケットコントロールバルブ24を介してバケットシリンダ8へ、それぞれ圧油を供給する。リフトコントロールバルブ23及びバケットコントロールバルブ24は、それぞれパイロット圧によって動作する比例弁である。リフトコントロールバルブ23は、油圧ポンプ21とリフトシリンダ7とをつなぐ管路に設けられ、バケットコントロールバルブ24は、油圧ポンプ21とバケットシリンダ8とをつなぐ管路に設けられている。リフトシリンダ7とバケットシリンダ8とは油圧ポンプ21に対し互いにパラレルに接続されている。
リフトコントロールバルブ23は(R)、(N)、(L)、(F)の4位置をもち、リフトシリンダ7への圧油の流れを制御している。(R)位置ではリフトシリンダ7のボトム側に油圧ポンプ21の圧油を導くことでロッド7aが伸長し、(N)位置ではボトム側及びロッド側を油圧ポンプ21及びタンク22と遮断することでロッド7aが停止し、(L)位置ではロッド側に圧油を導くことでロッド7aが縮退する。(F)位置では、ボトム側及びロッド側をタンク22と連通させるので、自重でロッド7aが縮退する。
一方、バケットコントロールバルブ24は(T)、(N)、(D)の3位置をもち、バケットシリンダ8への圧油の流れを制御している。(T)位置ではバケットシリンダ8のボトム側に油圧ポンプ21の圧油を導くことでロッド8aが伸長し、(N)位置ではボトム側及びロッド側を油圧ポンプ21及びタンク22と遮断することでロッド8aが停止し、(D)位置ではロッド側に圧油を導くことでロッド8aが縮退する。
リフト下げバルブ25は、リフトシリンダ7とリフトコントロールバルブ23との間の油路から分岐してタンク22と連通するタンク22への戻り油路25aに設けられている。リフト下げバルブ25は、例えば4ポート2位置の電磁比例弁であり、(N)、(F)の2位置をもつ。(N)位置ではリフトシリンダ7のボトム側及びロッド側をタンク22と遮断し、(F)位置ではボトム側及びロッド側をタンク22と連通させる。従って、リフト下げバルブ25は、動作していないときには(N)位置である。
そして、リフトコントロールバルブ23が(N)位置のときに、リフト下げバルブ25を動作させる(F)位置にすると、リフトシリンダ7のボトム側及びロッド側はタンク22と連通し、自重によりリフトシリンダ7は縮退する。
ダンプバルブ26は、バケットシリンダ8とバケットコントロールバルブ24との間の油路から分岐してタンク22と連通するタンク22への戻り油路26aに設けられている。ダンプバルブ26は、例えば4ポート2位置の電磁比例弁であり、(N)、(F)の2位置をもつ。(N)位置ではバケットシリンダ8のボトム側及びロッド側をタンク22と遮断し、(F)位置ではボトム側及びロッド側をタンク22と連通させる。従って、ダンプバルブ26は、動作していないときには(N)位置である。
そして、バケットコントロールバルブ24が(N)位置のときに、ダンプバルブ26を動作させる(F)位置にすると、バケットシリンダ8のボトム側及びロッド側はタンク22と連通し、自重によりバケットシリンダ8は縮退する。
図3に示すように、本実施形態のホイールローダ1は、ホイールローダ1の各制御を行うコントローラ27を更に備えている。コントローラ27は、例えば演算を実行するCPU(Central Processing Unit)と、演算のためのプログラムを記録した二次記憶装置としてのROM(Read Only Memory)と、演算経過の保存や一時的な制御変数を保存する一時記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)とを組み合わせてなるマイクロコンピュータにより構成されており、記憶されたプログラムの実行によって各判定、各演算、各指令などの制御処理を行う。なお、図3において点線は電気信号、破線はパイロット圧を示す。コントローラ27には、リフト角センサ13、ベルクランク角センサ14のそれぞれにより検出された角度の他、電気リフト操作レバー16により操作された操作量が電気信号として入力されるように各配線が接続されている。また、コントローラ27からは、リフト下げバルブ25に対し開口指令に対応した信号が出力され、ダンプバルブ26に対して開口指令に対応した信号が出力される他、パイロットバルブ28に対してリフトアーム2の操作量に対応した信号、バケット3の操作量に対応した信号が出力されるように各配線が接続されている。
本実施形態では、コントローラ27は、リフトコントロールバルブ23、バケットコントロールバルブ24、リフト下げバルブ25及びダンプバルブ26をそれぞれ制御する。例えば、コントローラ27は、リフトコントロールバルブ23、バケットコントロールバルブ24、リフト下げバルブ25及びダンプバルブ26を遮断したり、開口したりする制御を行う。また、コントローラ27は、リフトコントロールバルブ23、バケットコントロールバルブ24、リフト下げバルブ25及びダンプバルブ26の開口面積をそれぞれ制御する。
図3に示すように、コントローラ27は、フォーク爪先角度演算部27aと、バルブ指令演算部27bとを有する。フォーク爪先角度演算部27aは、リフト角センサ13及びベルクランク角センサ14から出力された検出結果に基づいて、フォーク爪先角度αを演算し、演算した結果をバルブ指令演算部27bに出力する。なお、このフォーク爪先角度αは、アタッチメントがフォーク15のときにフォーク15の爪先がフロントボディ11に対する角度であり、アタッチメントがバケット3のときにバケット3の爪先がフロントボディ11に対する角度である。
バルブ指令演算部27bは、フォーク爪先角度演算部27aから出力されたフォーク爪先角度αと、電気リフト操作レバー16から出力された操作信号とに基づいて、リフト下げバルブ25、ダンプバルブ26及びパイロットバルブ28への指令信号を演算し、これらのバルブにそれぞれ指令する。パイロットバルブ28は、パイロットポンプ29からの圧油の圧力を制御し、リフトコントロールバルブ23及びバケットコントロールバルブ24を動作させるパイロット圧を生成するためのバルブである。
以下、図5及び図6を参照してホイールローダ1のリフト上げ及びリフト下げに関する制御処理を説明する。ホイールローダ1のリフト上げ及びリフト下げは、ホイールローダ1の荷役装置の操作に関するものであり、エネルギのロスを抑えつつ、フォーク15(図4参照)を略水平姿勢に保って昇降する操作を本発明ではパラレル操作と呼ぶ。このパラレル操作は、コントローラ27によって自動で行われており、例えば運転室5に設けられた開始ボタン(図示せず)が押されると開始される。なお、パラレル操作中、オペレータは電気リフト操作レバー16のみを操作し、それによりリフトシリンダ7が動作し、その動作にあわせてバケットシリンダ8が自動で動作する。
まず、図5を参照してパラレル操作のうち、リフト上げ時の制御処理を説明する。
図5に示すように、リフト上げのパラレル操作が開始されると、コントローラ27は、その時点におけるフォーク爪先角度α、すなわち現在のフォーク爪先角度αをフォーク爪先角度目標値α0に設定する(ステップS1参照)。そして、この後のステップでは、コントローラ27は、フォーク爪先角度目標値α0を保持しながらリフト上げを実行できるように各部分を制御する。現在のフォーク爪先角度αは、上述したようにフォーク爪先角度演算部27aによって演算される。フォーク爪先角度目標値α0は、特許請求の範囲に記載の「目標角度」と相当するものであって、例えば予め設定されたものであり、コントローラ27に記憶される。
ステップS1に続くステップS2では、バルブ指令演算部27bは、電気リフト操作レバー16の操作量に応じて、リフトコントロールバルブ23が(R)位置となるように、パイロットバルブ28への指令信号を演算し、演算した指令信号をパイロットバルブ28に出力する。これによって、リフトシリンダ7は伸長する。
なお、このとき、バルブ指令演算部27bは、リフトコントロールバルブ23の(R)位置の開口面積が予め決められた所定の値よりも大きくならないように、指令信号の上限値を更に設ける。これは、後述するダンプバルブ26によるバケットシリンダ8の縮退は、バケットシリンダ8の自重によって行われるため応答性に限界があり、バケットシリンダ8の縮退が追従できる範囲にリフトシリンダ7の伸長を制限するためである。
ステップS2に続くステップS3では、コントローラ27は、現在のフォーク爪先角度αがフォーク爪先角度目標値α0より大きいか否かを判定する。現在のフォーク爪先角度αがフォーク爪先角度目標値α0より大きいと判定された場合、制御処理はステップS4に進む。
ステップS4では、バルブ指令演算部27bは、バケットコントロールバルブ24が(N)位置となるようにパイロットバルブ28への指令信号を演算し、演算した指令信号をパイロットバルブ28に出力することにより、バケットコントロールバルブ24を遮断する。これによって、バケットシリンダ8は油圧ポンプ21と遮断されるので、油圧ポンプ21からの圧油はリフトシリンダ7を伸長させることのみに用いられる。
ステップS4に続くステップS5では、バルブ指令演算部27bは、ダンプバルブ26が(F)位置となるように指令信号を演算して該ダンプバルブ26に出力することにより、ダンプバルブ26を開口する。なお、このとき、バルブ指令演算部27bは、現在のフォーク爪先角度αとフォーク爪先角度目標値α0との差分に比例した指令信号を出力しても良い。
そして、ダンプバルブ26が(F)位置となると、バケットシリンダ8のボトム側及びロッド側がタンク22と連通するので、バケットシリンダ8は、自重で縮退する。従って、フォーク15が下向き方向に回動し、フォーク爪先角度αが小さくなる。
ステップS2では油圧ポンプ21でリフトシリンダ7を伸長させ、ステップS4及びS5ではバケットシリンダ8を油圧ポンプ21と遮断した状態で縮退させるので、リフトシリンダ7とバケットシリンダ8は遮断された状態で、それぞれ動作する。これによって、リフトシリンダ7とバケットシリンダ8との負荷の差が大きい場合であっても、負荷の小さい方のシリンダが優先的に駆動されることはなく、それぞれの操作性は保たれる。
一方、ステップS3において現在のフォーク爪先角度αがフォーク爪先角度目標値α0以下であると判定された場合、制御処理はステップS6に進む。ステップS6では、バケットコントロールバルブ24が(T)位置となるようにパイロットバルブ28への指令信号を演算し、演算した指令信号をパイロットバルブ28に出力することにより、バケットコントロールバルブ24を開口する。なお、このとき、現在のフォーク爪先角度αとフォーク爪先角度目標値α0との差分に比例した指令信号を出力しても良い。
そして、バケットコントロールバルブ24が(T)位置となると、バケットシリンダ8のボトム側に油圧ポンプ21の圧油を導くことでロッド8aが伸長し、フォーク15が上向き方向に回動する。従って、フォーク爪先角度αが大きくなる。
ステップS2ではリフトシリンダ7を伸長させる方向に、ステップS6ではバケットシリンダ8を伸長させる方向にそれぞれリフトコントロールバルブ23とバケットコントロールバルブ24を動作させることになる。これは、どちらも負荷の大きい方向への動作であるので、リフトシリンダ7とバケットシリンダ8との負荷の差は小さく、リフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の操作性はそれぞれ保たれる。
そして、ステップS5又はステップS6に続くステップS7では、コントローラ27は、電気リフト操作レバー16の操作が終了したか否かを判定する。電気リフト操作レバー16の操作が終了していないと判定された場合、制御処理は上述のステップS2に戻る。一方、電気リフト操作レバー16の操作が終了したと判定された場合、一連の制御処理は終了する。
以上のホイールローダ1のリフト上げ制御処理によれば、コントローラ27は、バケットコントロールバルブ24を開口することによりフォーク15を上向きにし、ダンプバルブ26を開口することによりフォーク15を下向きにするため、フォーク15の略水平を保ちながら、リフトアーム2を上昇させることが可能となる。しかも、バケットシリンダ8を縮退させるにあたり自重を利用して行い、油圧ポンプ21の圧油を用いないため、その分油圧ポンプ21で昇圧する油圧エネルギが少なくなる。更に、従来のようにシリンダの操作性を確保するために油圧エネルギを可変絞りで消費することもないので、エネルギのロスを抑えることができる。
次に、図6を参照してパラレル操作のうち、リフト下げ時の制御処理を説明する。
図6に示すように、リフト下げのパラレル操作が開始されると、コントローラ27は、現在のフォーク爪先角度αをフォーク爪先角度目標値α0に設定する(ステップS11参照)。そして、この後のステップでは、コントローラ27は、フォーク爪先角度目標値α0を保持しながらリフト下げを実行できるように各部を制御する。
ステップS11に続くステップS12では、バルブ指令演算部27bは、リフトコントロールバルブ23が(N)位置となるようにパイロットバルブ28への指令信号を演算し、演算した指令信号をパイロットバルブ28に出力することにより、リフトコントロールバルブ23を遮断する。これによって、リフトシリンダ7は油圧ポンプ21と遮断され、油圧ポンプ21からの圧油はバケットシリンダ8を動作させるためのみに用いられる。
ステップS12に続くステップS13では、バルブ指令演算部27bは、電気リフト操作レバー16の操作量に応じて、リフト下げバルブ25が(F)位置となるように指令信号を演算し、リフト下げバルブ25に出力することにより、リフト下げバルブ25を開口する。これによって、リフトシリンダ7のボトム側及びロッド側がタンク22と連通し、自重でリフトシリンダ7が縮退する。縮退の速度はリフト下げバルブ25の開口面積によって変わるので、リフト下げバルブ25への指令信号の大きさによって制御することができる。
このとき、リフト下げバルブ25の(F)位置の開口面積が予め決められた所定の値よりも大きくならないようにする。これは、後述するバケットコントロールバルブ24によるバケットシリンダ8の縮退は、バケットコントロールバルブ24の応答性に限界があり、バケットシリンダ8の縮退が追従できる範囲にリフトシリンダ7の伸長を制限するためである。
ステップS13に続くステップS14では、コントローラ27は、現在のフォーク爪先角度αがフォーク爪先角度目標値α0より大きいか否かを判定する。現在のフォーク爪先角度αがフォーク爪先角度目標値α0より大きいと判定された場合、制御処理はステップS15に進む。
ステップS15では、バルブ指令演算部27bは、バケットコントロールバルブ24を開口する。具体的には、バルブ指令演算部27bは、バケットコントロールバルブ24が(D)位置となるようにパイロットバルブ28への指令信号を演算し、演算した指令信号をパイロットバルブ28に出力する。これによって、バケットシリンダ8は圧油で縮退し、フォーク15が下向き方向に回動し、フォーク爪先角度αが小さくなる。
なお、ステップS15において、バルブ指令演算部27bは、現在のフォーク爪先角度αとフォーク爪先角度目標値α0との差分に比例した指令信号を出力しても良い。
一方、ステップS14において現在のフォーク爪先角度αがフォーク爪先角度目標値α0以下であると判定された場合、制御処理はステップS16に進む。
ステップS16では、バルブ指令演算部27bは、バケットコントロールバルブ24を開口する。具体的には、バルブ指令演算部27bは、バケットコントロールバルブ24が(T)位置となるようにパイロットバルブ28への指令信号を演算し、演算した指令信号をパイロットバルブ28に出力する。これによって、バケットシリンダ8が伸長し、フォーク15が上向き方向に回動するので、フォーク爪先角度αが大きくなる。
なお、ステップS16において、バルブ指令演算部27bは、現在のフォーク爪先角度αとフォーク爪先角度目標値α0との差分に比例した指令信号を出力しても良い。
ステップS15又はステップS16に続くステップS17では、コントローラ27は、電気リフト操作レバー16の操作が終了したか否かを判定する。電気リフト操作レバー16の操作が終了していないと判定された場合、制御処理は上述のステップS13に戻る。一方、電気リフト操作レバー16の操作が終了したと判定された場合、一連の制御処理は終了する。
以上のホイールローダ1のリフト下げ制御処理によれば、コントローラ27は、バケットコントロールバルブ24を開口することでフォーク15を上向きにしたり下向きにしたりする(すなわち、フォーク15を上下方向に傾動させる)ので、フォーク15の略水平を保ちながら、リフトアーム2を下降させることが可能となる。しかも、リフトシリンダ7を縮退させるにあたり自重を利用して行い、油圧ポンプ21の圧油を用いないため、その分油圧ポンプ21で昇圧する油圧エネルギが少なくなる。更に、従来のようにシリンダの操作性を確保するために油圧エネルギを可変絞りで消費することもないので、エネルギのロスを抑えることができる。
なお、図5及び図6に示すパラレル操作(リフト上げ及びリフト下げ)は、上述したようにコントローラ27により自動的に実行されるものであり、手動で独立に操作する場合にはリフト下げバルブ25及びダンプバルブ26は使用しない。これは、リフト下げバルブ25及びダンプバルブ26は、リフトシリンダ7又はバケットシリンダ8を自重で縮退させるため、応答性に限界があるからである。
本実施形態に係るホイールローダ1では、コントローラ27は、リフトシリンダ7を縮退するときにリフトコントロールバルブ23を遮断してリフト下げバルブ25を開口し、バケットシリンダ8を縮退するときにバケットコントロールバルブ24を遮断してダンプバルブ26を開口する。その結果、リフトシリンダ7とバケットシリンダ8との複合操作を行う際に、両者の負荷圧の差が大きくても、負荷圧の小さい方のシリンダを油圧ポンプ21と遮断して自重でシリンダを縮退させることができるので、エネルギのロスを抑えつつ両方のシリンダの操作性を確保できる。
また、使用用途に合わせてリフトアーム2に着脱可能に取り付けるアタッチメントをバケット3にしたり、フォーク15にしたりする場合がある。しかし、従来では、バケット3を取り付ける場合にはリフトシリンダ7の上昇と共にバケット3の先端が上向きになるZリンク機構、フォーク15を取り付ける場合にはリフトシリンダ7が上昇してもフォーク15が水平を保つパラレルリンク機構、とリンク機構ごとを付け替える必要がある。本実施形態のホイールローダ1によれば、Zリンク機構のリフトシリンダ7とバケットシリンダ8を同時に操作できるので、Zリンク機構にフォーク15を取り付けることが可能となる。これによって、一つのリンク機構でバケット3にもフォーク15にも対応できるため、コスト低減も期待できる。
[第2実施形態]
以下、図7を参照してホイールローダの第2実施形態を説明する。本実施形態のホイールローダ1は、リフト下げ時にバケットシリンダ8を縮退させる制御処理において、上述の第1実施形態と相違する。すなわち、第1実施形態のリフト下げの制御処理では、バケットシリンダ8を縮退させるのにバケットコントロールバルブ24を(D)位置にしたが(ステップS15参照)、本実施形態では、ダンプバルブ26を(F)位置にすることでバケットシリンダ8を縮退させる。なお、本実施形態に係るホイールローダ1の他の構造及び制御処理等は第1実施形態と同様である。以下では、上述の第1実施形態との相違点のみを説明する。
図7に示すように、ステップS14において現在のフォーク爪先角度αがフォーク爪先角度目標値α0より大きいと判定された場合、制御処理はステップS15’に進む。ステップS15’では、バルブ指令演算部27bは、ダンプバルブ26が(F)位置となるように指令信号を演算して該ダンプバルブ26に出力することにより、ダンプバルブ26を開口する。なお、このとき、バルブ指令演算部27bは、現在のフォーク爪先角度αとフォーク爪先角度目標値α0との差分に比例した指令信号を出力しても良い。
そして、ダンプバルブ26が(F)位置となると、バケットシリンダ8のボトム側及びロッド側がタンク22と連通するので、バケットシリンダ8は、自重で縮退する。従って、フォーク15が下向き方向に回動し、フォーク爪先角度αが小さくなる。
本実施形態に係るホイールローダによれば、第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、ステップS15’においてバケットシリンダ8の縮退を油圧ポンプ21からの圧油を用いずに実行するため、その分油圧ポンプ21で昇圧する油圧エネルギが必要なくなり、燃費の改善を更に図ることができる。
[第3実施形態]
以下、図8を参照してホイールローダの第3実施形態を説明する。本実施形態のホイールローダ1は、リフト下げバルブ30及びダンプバルブ31がそれぞれ2つのバルブによって構成される点において、上述の第1実施形態と相違する。すなわち、第1実施形態では、リフト下げバルブ25及びダンプバルブ26はそれぞれ4ポート2位置の電磁比例弁であったが、本実施形態では、リフト下げバルブ30及びダンプバルブ31は、それぞれ2ポート2位置の電磁比例弁とチェック弁とで構成されている。なお、本実施形態に係るホイールローダ1の他の構造及び制御処理等は第1実施形態と同様である。以下では、上述の第1実施形態との相違点のみを説明する。
図8に示すように、リフト下げバルブ30は、リフト下げボトム側バルブ30aとリフト下げロッド側バルブ30bとで構成されている。リフト下げボトム側バルブ30aは2ポート2位置の電磁比例弁であり、リフト下げロッド側バルブ30bはチェック弁である。
リフト下げボトム側バルブ30aは、(N)、(F)の2位置をもつ。(N)位置ではリフトシリンダ7のボトム側をタンク22と遮断し、(F)位置ではボトム側がタンク22と連通する。従って、動作していないときは(N)位置である。そして、リフトコントロールバルブ23が(N)位置のときに、リフト下げボトム側バルブ30aを動作させる(F)位置にすると(すなわち、リフトコントロールバルブ23を遮断してリフト下げバルブ30を開口すると)、リフトシリンダ7のボトム側がタンク22と連通し、自重によりリフトシリンダ7は縮退する。このとき、リフトシリンダ7のロッド側には、リフト下げロッド側バルブ30bを介してタンク22から圧油が供給される。
ダンプバルブ31は、ダンプボトム側バルブ31aとダンプロッド側バルブ31bとで構成されている。ダンプボトム側バルブ31aは2ポート2位置の電磁比例弁であり、ダンプロッド側バルブ31bはチェック弁である。ダンプボトム側バルブ31aは、(N)、(F)の2位置をもつ。(N)位置ではバケットシリンダ8のボトム側をタンク22と遮断し、(F)位置ではボトム側がタンク22と連通する。従って、動作していないときは(N)位置である。
バケットコントロールバルブ24が(N)位置のときに、ダンプボトム側バルブ31aを動作させる(F)位置にすると(すなわち、バケットコントロールバルブ24を遮断してダンプバルブ31を開口すると)、バケットシリンダ8のボトム側がタンク22と連通し、自重によりバケットシリンダ8は縮退する。このとき、バケットシリンダ8のロッド側には、ダンプロッド側バルブ31bを介してタンク22から圧油が供給される。
本実施形態に係るホイールローダによれば、第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、リフト下げバルブ30及びダンプバルブ31に用いられる電磁比例弁が2ポートであるため、省スペース化及びコスト低減を図ることができる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、上述の第1実施形態においてリフト下げバルブ25及びダンプバルブ26はそれぞれ4ポート2位置の電磁比例弁、第3実施形態においてリフト下げバルブ30及びダンプバルブ31はそれぞれ2ポート2位置の電磁比例弁とチェック弁とで構成されることを説明したが、リフト下げバルブ及びダンプバルブのうち一方が4ポート2位置の電磁比例弁、他方が2ポート2位置の電磁比例弁とチェック弁とで構成されても良い。