JP2021136157A - バインダー及びその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境への負荷が小さく、活物質に対して高い結着力を有すると共に、活物質と集電体との結着力にも優れた電極を形成可能なバインダー、該バインダーを含有する電極組成物、該電極組成物から形成されてなる電極、該電極を有する二次電池を提供する。【解決手段】樹脂粒子を含むバインダーであって、前記樹脂粒子は、コア部と、該コア部を囲むシェル部とを有し、前記コア部を構成する重合体のガラス転移温度が−40℃〜110℃であり、前記シェル部を構成する重合体は、一般式(1)〔式(1)中、R1は、炭素数1〜4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又は4級アンモニウムを示す。〕で示される構造単位を有し、前記シェル部を構成する重合体のうち少なくとも一部が加水分解されている。【選択図】なし

Description

本開示は、バインダー、該バインダーを含有する電極組成物、該電極組成物から形成されてなる電極、該電極を有する二次電池に関する。
二次電池の電極に用いられるバインダーとしては、表面酸量を規定したスチレン・ブタジエンゴムを含むもの(例えば特許文献1参照)や、ポリアクリル酸架橋型吸水性樹脂微粒子を含むもの(例えば特許文献2参照)等が提案されている。
国際公開第2013/191080号 国際公開第2017/073589号
しかし、特許文献1のスチレン・ブタジエンゴム系のバインダーでは、活物質に対する結着力(活物質とバインダーとの結着力)を高めるためにカルボン酸量を増やしても、特にシリコン活物質等のような充放電時に大きな体積変化を伴う活物質に用いた場合、該活物質への密着性が十分ではなく、高い結着力が得られないという問題がある。特許文献2のポリアクリル酸系バインダーでは、中和塩として用いる場合、得られる電極は固脆いものとなるため、プレスによる電極の圧密化時に電極にひびや割れが生じるおそれがある(換言すると、バインダーによる活物質と集電体との結着力(ピール強度)が十分ではない)という問題がある。また、特許文献2のポリアクリル酸系バインダーは、カルボン酸量が多く、非水溶媒を用いて逆相懸濁重合で合成する必要があるため、環境への負荷が大きいという不都合もある。
そこで、本開示の課題は、前記問題を鑑みてなされたものであり、環境への負荷が小さく、活物質に対して高い結着力を有すると共に、活物質と集電体との結着力(ピール強度)にも優れた電極を形成可能なバインダー、該バインダーを含有する電極組成物、該電極組成物から形成されてなる電極、該電極を有する二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は、前記問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、低ガラス転移温度の重合体で構成されたコア部の表面に、特定の構造単位を有する重合体の加水分解物で構成されたシェル部を形成することで、上記課題が解決されることを見出した。本開示は、具体的には以下のとおりである。
[1] 樹脂粒子を含むバインダーであって、前記樹脂粒子は、コア部と、該コア部を囲むシェル部とを有し、前記コア部を構成する重合体のガラス転移温度が−40℃〜110℃であり、前記シェル部を構成する重合体は、一般式(1)
Figure 2021136157
〔式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又は4級アンモニウムを示す。〕で示される構造単位を有し、前記シェル部を構成する重合体のうち少なくとも一部が加水分解されているバインダー。
[2] 前記シェル部を構成する重合体は、さらに多官能エチレン性不飽和単量体由来の構造単位を有する前記[1]に記載のバインダー。
[3] 前記多官能エチレン性不飽和単量体が非加水分解性単量体である前記[2]に記載のバインダー。
[4] 前記シェル部を構成する重合体中における前記一般式(1)で示される構造単位の割合が合計で30〜99.99質量%である前記[1]〜[3]のいずれか一つに記載のバインダー。
[5] 樹脂粒子及び水を含有し、該樹脂粒子が前記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の樹脂粒子であるバインダー。
[6] 水と、該水中に分散された樹脂粒子とを含む水分散体を含有し、該樹脂粒子が前記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の樹脂粒子であるバインダー。
[7] 電極を形成するための電極組成物であって、前記[1]〜[6]のいずれか一つに記載のバインダーと活物質とを含有する電極組成物。
[8] 集電体及び電極合材層を含む電極であって、前記電極合材層が前記集電体上に形成され、該電極合材層が前記[7]に記載の電極組成物から形成されてなる電極。
[9] 前記[8]に記載の電極を有する二次電池。
本開示によれば、環境への負荷が小さく、活物質に対して高い結着力を有すると共に、活物質と集電体との結着力(ピール強度)にも優れた電極を形成可能なバインダー、該バインダーを含有する電極組成物、該電極組成物から形成されてなる電極、該電極を有する二次電池を提供することができる。
凝集破壊法による凝集破壊強度の測定用電極の作製方法を説明するための断面図である。 凝集破壊法による凝集破壊強度の測定方法を説明するための断面図である。
以下、本開示の実施形態を詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
<バインダー>
(バインダーの構成)
本実施形態に係るバインダーは、例えば、二次電池の電極に用いられるバインダーとして好適に使用できる。このバインダーは、重合体として樹脂粒子を含む。この樹脂粒子は、コア部(内層)及びシェル部(外層)の二相の樹脂層で構成されている。
ここで、本実施形態に係るバインダーでは、コア部を構成する重合体のガラス転移温度(Tg)が−40℃〜110℃であり、シェル部は、以下の特定の構造単位を有し且つシェル部を構成する重合体のうち少なくとも一部が加水分解されている。
なお、本出願人は、前記特定の構造単位を有し且つ少なくとも一部が加水分解された、単相(一相)の樹脂粒子(重合体)を含むバインダーを特願2019−144721の出願明細書に開示している。このバインダーは、環境への負荷が小さく、活物質への結着力に優れた電極を形成できる。
本出願人は、さらに鋭意研究を重ねた結果、前記樹脂粒子の柔軟性を向上させることで、電極をプレスして加圧処理を施すときに、活物質と集電体との密着度が向上し、その結果、活物質に対して高い結着力を有しながら、活物質と集電体との結着力(ピール強度)がさらに改善することを見出した。そして、低ガラス転移温度の重合体でコア部を構成し、このコア部の表面に前記特定の構造単位を有し且つ少なくとも一部が加水分解された重合体でシェル部を構成することを想到し、本開示のバインダーを完成させた。
(コア部)
コア部は、柔軟性を付与する組成であれば特に限定されないが、ガラス転移温度が−40℃〜110℃である重合体で構成されていることが好ましい。
コア部を構成する重合体のガラス転移温度が低すぎるとコア部及びコア部を有する樹脂粒子(全体)の粒子形状が保てないため、−40℃以上、好ましくは−30℃以上、より好ましくは−20℃以上である。また、コア部及びコア部を有する樹脂粒子の柔軟性を向上する観点から、110℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下、より一層好ましくは40℃以下、さらに好ましくは20℃以下、さらに一層好ましくは10℃以下である。
コア部を構成する重合体のガラス転移温度は、コア部の原料として用いられる単量体成分(以下「コア部用単量体成分」ともいう)に用いられる単量体の組成を調整することにより、容易に調節できる。
なお、本明細書において、重合体のガラス転移温度は、重合体を構成する単量体成分に用いられる単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
〔式中、Wmは重合体を構成する単量体成分における単量体mの含有率(重量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度を意味する。
なお、特殊単量体、多官能単量体等のようにガラス転移温度が不明の単量体については、単量体成分における当該ガラス転移温度が不明の単量体の合計量が10質量%以下である場合には、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度が求められる。単量体成分におけるガラス転移温度が不明の単量体の合計量が10質量%を超える場合には、重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)等によって求められる。
コア部用単量体成分は、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを含有する単量体成分を好適に用いることができる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。「(メタ)アクリロイル基」は、「アクリロイル基」又は「メタクリロイル基」を意味する。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート等のエステル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。アルキル(メタ)アクリレートのなかでは、コア部及びコア部を有する樹脂粒子の柔軟性を向上する観点から、エステル基の炭素数が1〜8のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、エステル基の炭素数が1〜4のアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、メチル(メタ)アクリレート及びn−ブチル(メタ)アクリレートがより一層好ましく、メチルメタクリレート及びn−ブチルアクリレートがさらに好ましい。
コア部用単量体成分におけるアルキル(メタ)アクリレートの含有率は、コア部及びコア部を有する樹脂粒子の柔軟性を向上する観点から、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。コア部用単量体成分は、アルキル(メタ)アクリレートのみで構成されていてもよい。一方、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは0〜10質量%の範囲内で、アルキル(メタ)アクリレート以外の単量体が含有されていてもよい。
アルキル(メタ)アクリレート以外の単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン系単量体、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、カルボニル基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体等が挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類等のスチレン系単官能単量体等が挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)ア
クリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有脂肪族系単量体等が挙げられる。
カルボニル基含有単量体としては、例えば、アクロレイン、ホウミルスチロール、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
オキソ基含有単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート等の(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート等のエステル基の炭素数が2〜6のフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(シェル部)
シェル部を構成する重合体は、一般式(1)
Figure 2021136157
〔式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又は4級アンモニウムを示す。〕で示される構造単位を有する。
一般式(1)において、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又は4級アンモニウムを示す。炭素数1〜4のアルキル基は、加水分解性を向上させる観点から、好ましくは炭素数1〜2のアルキル基、より好ましくは炭素数1のアルキル基(メチル基)である。
一般式(1)で示される構造単位とは、一般式(2)
Figure 2021136157
〔式(2)中、Rは、前記と同じ。〕で示されるRが炭素数1〜4のアルキル基であるヒドロキシメチルアクリル酸系単量体(以下単に「ヒドロキシメチルアクリル酸系単量体」ともいう)に由来する単量体単位(構造単位ともいう。より具体的には、炭素二重結合が重合に関与した後の残基を意味する。以下同じ。)を意味する。なお、一般式(1)において、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、及び4級アンモニウムは、ヒドロキシメチルアクリル酸系単量体を含有する単量体成分を重合させて重合体にした後に、Rを加水分解することにより導入されたものであってもよい。
ヒドロキシメチルアクリル酸系単量体としては、例えば、2−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、2−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、2−ヒドロキシメチルアクリル酸プロピル、2−ヒドロキシメチルアクリル酸ブチル等のヒドロキシメチルアクリル酸エステル等が挙げられる。ヒドロキシメチルアクリル酸系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中では、加水分解性を向上させる観点から、2−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル及び2−ヒドロキシメチルアクリル酸エチルが好ましく、2−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルがより好ましい。
シェル部を構成する重合体中における一般式(1)で示される構造単位の割合(換言すると、シェル部の原料として用いられる単量体成分(以下「シェル部用単量体成分」ともいう)における一般式(2)で示されるヒドロキシメチルアクリル酸系単量体の含有率)は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より一層好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに一層好ましくは90質量%以上である。また、シェル部を構成する重合体中における一般式(1)で示される構造単位の割合は、好ましくは99.99質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下、より一層好ましくは99質量%以下、さらに好ましくは97質量%以下、さらに一層好ましくは95質量%以下である。シェル部を構成する重合体中における一般式(1)で示される構造単位の割合を前記した範囲内にすることで、高い親水性を有するシェル部(換言すると、高親水性のシェル部を有する樹脂粒子)を得ることができる。
樹脂粒子(コア部及びシェル部を含む)中における一般式(1)で示される構造単位の割合(換言すると、樹脂粒子を構成する全単量体成分における一般式(2)で示されるヒドロキシメチルアクリル酸系単量体の含有率)は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、より一層好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、さらに一層好ましくは30質量%以上である。また、樹脂粒子中における一般式(1)で示される構造単位の割合は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、より一層好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下、さらに一層好ましくは50質量%以下である。樹脂粒子中における一般式(1)で示される構造単位の割合を前記した範囲内にすることで、高親水性のシェル部を有する樹脂粒子を得ることができる。
また、シェル部は、多官能エチレン性不飽和単量体由来の構造単位を有していてもよい。活物質同士及び活物質と集電体との結着力を向上させる(バインダー性能を向上させる)観点から、シェル部は、一般式(1)で示される構造単位と、多官能エチレン性不飽和単量体由来の構造単位とが架橋した架橋構造を有することが好ましい。多官能エチレン性不飽和単量体由来の構造単位とは、多官能エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を意味する。
多官能エチレン性不飽和単量体は、好ましくは非加水分解性単量体である。非加水分解性単量体としては、炭素原子と水素原子のみから構成される多官能性単量体(炭化水素類)が好ましく、必要に応じてエーテル結合を有していてもよい。このエーテル結合を有していてもよい炭化水素類としての多官能性単量体を、本明細書では、「エーテル結合を有していてもよい炭化水素系架橋剤」と称する。エーテル結合を有していてもよい炭化水素系架橋剤は、エチレン性不飽和結合を2つ以上有するものが好ましく、エチレン性不飽和結合を2つ有するもの(二官能不飽和単量体)がより好ましい。
エーテル結合を有していてもよい炭化水素系架橋剤(二官能不飽和単量体)としては、例えば、ジビニルベンゼン(DVB)、1,4−ブタジエン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルシクロヘキサン、ジビニルエーテル、ポリエチレングリコール#200ジメタクリレート等が挙げられる。エーテル結合を有していてもよい炭化水素系架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中では、ジビニルベンゼン及び1,4−ブタジエンが好ましく、ジビニルベンゼンがより好ましい。
シェル部を構成する重合体中における多官能エチレン性不飽和単量体由来の構造単位の割合(換言すると、シェル部用単量体成分における多官能エチレン性不飽和単量体の含有率)は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、より一層好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらに一層好ましくは5質量%以上である。また、シェル部を構成する重合体中における多官能エチレン性不飽和単量体由来の構造単位の割合は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、より一層好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらに一層好ましくは10質量%以下である。シェル部を構成する重合体中における多官能エチレン性不飽和単量体由来の構造単位の割合を前記した範囲内にすることで、高い親水性を有するシェル部(換言すると、高親水性のシェル部を有する樹脂粒子)を得ることができる。
多官能エチレン性不飽和単量体中における二官能不飽和単量体の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より一層好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに一層好ましくは100質量%(多官能エチレン性不飽和単量体が二官能不飽和単量体のみからなるもの)である。
シェル部には、本開示の目的が阻害されない範囲内で、ヒドロキシメチルアクリル酸系単量体及び多官能エチレン性不飽和単量体以外の単量体(以下単に「他の単量体」という)に由来する構造単位が含まれていてもよい。この場合、シェル部を構成する重合体中における他の単量体由来の構造単位の割合(換言すると、シェル部用単量体成分における他の単量体の含有率)は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、より一層好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、さらに一層好ましくは2質量%以下である。なお、他の単量体としては、例えば、前記コア部用単量体成分に用いられる単量体等が挙げられる。
また、シェル部は、該シェル部を構成する重合体のうち少なくとも一部が加水分解されている。本明細書において、重合体のうち少なくとも一部が加水分解されているとは、重合体が、部分加水分解物、完全加水分解物、これらの加水分解中和物のいずれかであることを意味する。
より具体的には、部分加水分解物又はその中和物は、一般式(2)で示されるRが炭素数1〜4のアルキル基であるヒドロキシメチルアクリル酸系単量体に由来する構造単位と、一般式(2)で示されるRが水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又は4級アンモニウムであるヒドロキシメチルアクリル酸系単量体に由来する構造単位の両方を含む。換言すると、部分加水分解物又はその中和物は、一般式(1)で示されるRが炭素数1〜4のアルキル基であるヒドロキシメチルアクリル酸系単量体に由来する構造単位と、一般式(3)
Figure 2021136157
で示されるヒドロキシメチルアクリル酸系単量体に由来する単量体単位(なお、カルボン酸基の水素原子は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又は4級アンモニウムで置換されていてもよい。)の両方を含む。
完全加水分解物又はその中和物は、一般式(1)で示されるRが炭素数1〜4のアルキル基であるヒドロキシメチルアクリル酸系単量体に由来する構造単位を実質的に含まず、一般式(3)で示されるヒドロキシメチルアクリル酸系単量体に由来する構造単位を含む。
シェル部を構成する重合体を加水分解する方法としては、例えば、コア部及びシェル部を有する樹脂粒子を含む溶液又は分散体に塩基を添加する方法等が挙げられる。また、得られた加水分解液に酸を適宜添加することで、シェル部を構成する重合体の部分中和又は完全中和を行うことができる。シェル部を構成する重合体の加水分解及び中和を行うことにより、一般式(1)で示されるRを水素原子(即ち、一般式(3))、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又は4級アンモニウムにできる。
シェル部を構成する重合体のカルボン酸エステル基が加水分解して生じるカルボキシル基量は、一般式(1)又は一般式(3)で示される構造単位を含む樹脂粒子を作製する際に添加される塩基の添加量(モル数)を適宜調整することにより決定できる。
(樹脂粒子)
樹脂粒子には、本開示の目的が阻害されない範囲内で、コア部及びシェル部以外の層が形成されていてもよい。例えば、コア部の内側にさらに他の樹脂層(最内層)が形成されていてもよく、コア部とシェル部との間に他の樹脂層(中間層)が形成されていてもよい。
樹脂粒子がコア部及びシェル部の二相で構成されている場合、コア部とシェル部との質量比(コア部/シェル部)は、好ましくは30/70以上、より好ましくは35/65以上、さらに好ましくは40/60以上、さらに一層好ましくは45/55以上である。また、コア部とシェル部との質量比(コア部/シェル部)は、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下、さらに好ましくは80/20以下、さらに一層好ましくは75/25以下である。コア部とシェル部との質量比(コア部/シェル部)を前記した範囲内にすることで、活物質に対して高い結着力を有すると共に、活物質と集電体との結着力(ピール強度)にも優れた電極を形成できる。
樹脂粒子の体積平均粒子径は、樹脂粒子自体の機械的安定性を向上させる観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、より一層好ましくは100nm以上、さらに好ましくは150nm以上である。また、樹脂粒子の体積平均粒子径は、活物質同士及び活物質と集電体との結着力を向上させる観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、より一層好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下である。
なお、本明細書において、樹脂粒子の体積平均粒子径は、光散乱粒度分布測定機(スペクトリクス社製、「Zetasizer Ultra」)を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
シェル部を構成する重合体が加水分解がされていない樹脂粒子の25℃でのpHは、好ましくは1.5以上7未満、より好ましくは2以上6以下、より一層好ましくは2.5以上5.5以下、さらに好ましくは2.7以上5.0以下である。
一方、シェル部を構成する重合体の少なくとも一部が加水分解された樹脂粒子の25℃でのpHは、集電体の腐食を抑制する観点から、好ましくは5以上、より好ましくは5.5以上、より一層好ましくは6以上、さらに好ましくは6.5以上である。また、少なくとも一部が加水分解された重合体のpHは、集電体の腐食を抑制する観点から、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、より一層好ましくは8以下、さらに好ましくは7.5以下である。
なお、本明細書において、pHは、ガラス電極式水素イオン濃度計〔(株)堀場製作所製、品番:F−72〕を用いて測定したときの値である。
<バインダーの製造方法>
次に、バインダーの製造方法について説明する。バインダーは、例えば、以下の方法で製造できる。まず、コア部用単量体成分を水系溶媒中で重合させて、コア部を構成する重合体からなる樹脂粒子を形成する。続いて、ヒドロキシメチルアクリル酸系単量体、必要に応じて多官能エチレン性不飽和単量体等を含有するシェル部用単量体成分を水系溶媒中で重合させて、前記樹脂粒子(コア部)の表面にシェル部を形成する。最後に、コア部及びシェル部を有する樹脂粒子に塩基を添加して、シェル部を構成する重合体を部分的に又は完全に加水分解する。以上により得られるバインダーは、コア部及びシェル部を有する樹脂粒子の部分又は完全加水分解物を含有する。
なお、コア部を形成した後、シェル部を形成する前に、本開示の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる層を形成してもよい。また、コア部を形成する前に、本開示の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる層(最内層)を形成してもよい。この場合、前記最内層の表面にコア部を形成すればよい。
ここで、多官能エチレン性不飽和単量体を用いてシェル部を構成する重合体に架橋構造が導入されている場合、重合後に加水分解しても、架橋構造を有する重合体の加水分解物は粒子状態を維持できる。
水系溶媒は、例えば、水単独、水と水混和性有機溶媒との混合溶媒等が挙げられ、典型的には、水の含有量が50体積%を超える溶媒をいう。水としては、例えば、イオン交換水(脱イオン水)、蒸留水、純水等が挙げられる。水混和性有機溶媒としては、例えば、水と均一に混合し得る有機溶剤(メタノール等の低級アルコール等)等が挙げられる。これらの水系溶媒の中では、重合体中に有機溶媒が極力残存しないようにする(環境への負荷を低減する)観点から、水系溶媒の80体積%以上が水である水系溶媒が好ましく、水系溶媒の90体積%以上が水である水系溶媒がより好ましく、水系溶媒の95体積%以上が水である水系溶媒がより一層好ましく、実質的に水からなる水系溶媒(99.5体積%以上が水である水系溶媒)がさらに好ましく、水単独であることがさらに一層好ましい。
コア部用単量体成分又はシェル部用単量体成分100質量部あたりの水系溶媒の量は、好ましくは100質量部以上、より好ましくは200質量部以上、より一層好ましくは400質量部以上、さらに好ましくは700質量部以上である。また、該水系溶媒の量は、好ましくは2000質量部以下、より好ましくは1500質量部以下、さらに好ましくは1000質量部以下である。
コア部用単量体成分又はシェル部用単量体成分を重合させる方法としては、例えば、懸濁重合、乳化重合、分散重合等が挙げられる。これらの中では、乳化剤の存在下、単量体成分を反応溶媒に分散させて(ラジカル)重合反応を行う乳化重合が好ましい。コア部用単量体成分を乳化重合させることにより、コア部を形成する重合体がエマルション粒子の形態で得られる。また、前記エマルション粒子(コア部)の存在下でシェル部用単量体成分を乳化重合させることにより、該エマルション粒子の表面にシェル部を形成できる。
乳化剤は、非反応性乳化剤であってもよく、ラジカル重合可能な基を構造中に有する反応性乳化剤であってもよい。これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
非反応性乳化剤には、例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤等が包含される。
アニオン性乳化剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル(アリル)スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸塩等が挙げられる。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
反応性乳化剤には、例えば、アニオン性反応性乳化剤、ノニオン性反応性乳化剤等が包含される。
アニオン性反応性乳化剤としては、例えば、エーテルサルフェート型反応性乳化剤、リン酸エステル系反応性乳化剤等が挙げられる。
エーテルサルフェート型反応性乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩又はポリオキシアルキレンフェニルエーテル硫酸塩を基本骨格とし、重合性のアルケニル基(例えばアリル基等)、(メタ)アクリロイル基等を有する化合物が包含される。商業的に入手可能なものとしては、例えば、ラテムルPD−104、PD−105(花王(株)製)、エレミノールRS−30、NHS−20(三洋化成工業(株)製)、アクアロンKH−5、KH−10、KH−20(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSR−10、SR−20((株)ADEKA製)等が挙げられる。
リン酸エステル系反応性乳化剤としては、例えば、アルキルリン酸エステル又は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸(塩)又はポリオキシアルキレンフェニルエーテルリン酸(塩)を基本骨格とし、重合性のアルケニル基(例えばアリル基等)、(メタ)アクリロイル基等を有する化合物が含まれる。商業的に入手可能なものとしては、例えば、SIPOMER PZ-100(ソルベイ日華(株)製)、H−3330PL、ニューフロンティアS−510(第一工業製薬(株)製)、Maxemul6106、6112(クローダジャパン(株)製)、アデカリアソープPP−70((株)ADEKA製)等が挙げられる。
その他のアニオン性反応性乳化剤としては、例えば、SIPOMER COPS1(ソルベイ日華(株)製)、エレミノールJS-20(三洋化成工業(株)製)、Maxemul 5010、5011(クローダジャパン(株)製)等が挙げられる。
ノニオン性反応性乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを基本骨格とし、重合性のアルケニル基(例えばアリル基等)、(メタ)アクリロイル基等を有する化合物が包含される。例えば、アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、ER−10、ER−20、ER−30((株)ADEKA製)、ラテムルPD−420、PD−430、PD−450((株)花王製)、アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50(第一工業製薬(株)製)等がある。
ヒドロキシメチルアクリル酸系単量体を含有するシェル部用単量体成分を乳化重合させるときに用いられる乳化剤としては、反応性乳化剤が好ましく、アニオン性反応性乳化剤がより好ましく、その中でもエーテルサルフェート型反応性乳化剤がさらに好ましい。
コア部用単量体成分又はシェル部用単量体成分100質量部あたりの乳化剤の量は、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上である。また、該乳化剤の量は、活物質同士及び活物質と集電体との結着力を向上させる観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、より一層好ましくは5質量部以下で、さらに好ましくは3質量部以下である。
単量体成分を乳化重合させる方法としては、例えば、水系溶媒中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下で単量体成分及び重合開始剤を滴下させる方法、乳化剤及び水を用いてあらかじめ乳化させておいた単量体成分を水系溶媒に滴下させる方法等が挙げられる。
反応系内への単量体成分の添加態様としては、例えば、重合開始剤の添加前に全量を一度に反応系内へと仕込む態様;単量体組成物の一部を重合させた後、残部を一度に、又は分割して反応系内へと添加する態様;単量体組成物を一定の割合で連続的に反応系内へと添加する態様;等が挙げられる。これらの添加態様の中では、粗大な重合体が生成するのを防止する観点から、単量体組成物の一部を重合させた後、残部を反応系内へと(一度又は連続的に)添加する態様が好ましい。この場合、単量体組成物の一部の重合を開始した後、重合が完結する前に、重合温度に保ったまま残部を添加する態様が好ましい。
単量体成分を重合する際には、例えば、重合開始剤、紫外線や放射線の照射、熱の印加等の手段が用いられ、重合開始剤を使用することが好ましい。重合開始剤としては、単量体成分の分散性を向上させる観点から、酸化剤及び還元剤を組み合わせた重合開始剤(レドックス型重合開始剤)が好ましい。
酸化剤としては、例えば、過酸化水素、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルヒドロパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ヒドロパーオキサイド等のヒドロパーオキサイド;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルケトンパーオキサイド等ケトンパーオキサイド類;硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類等が挙げられる。これらの酸化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
還元剤としては、例えば、アスコルビン酸及びアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム等のアスコルビン酸塩類;エリソルビン酸及びエリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウム等のエリソルビン酸塩類;酒石酸及び酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等の酒石酸塩類;亜燐酸及び亜燐酸ナトリウム、亜燐酸カリウム等の亜燐酸塩類;亜燐酸水素ナトリウム、亜燐酸水素カリウム等の亜燐酸水素塩類;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩類;亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸水素塩類;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム等のチオ硫酸塩類;チオ亜硫酸ナトリウム、チオ亜硫酸カリウム等のチオ亜硫酸塩類;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム等のピロ亜硫酸塩類;ピロ亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸水素カリウム等のピロ亜硫酸水素塩類;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のピロリン酸塩類;ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウム(ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム)等が挙げられる。また、必要に応じて、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、あるいはセリウム等の重金属の硫酸塩又は塩化物塩を併用することもできる。これらの還元剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
レドックス型重合開始剤としては、例えば、ヒドロパーオキサイド類から選択される1種以上の酸化剤と、アスコルビン酸及びアスコルビン酸塩類から選択される1種以上の還元剤との組み合わせた重合開始剤が好ましく、過酸化水素(酸化剤)とアスコルビン酸(還元剤)とを組み合わせた重合開始剤がより好ましい。これらのレドックス型重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分100質量部あたりの還元剤及び酸化剤の合計量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上である。また、該還元剤及び酸化剤の合計量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
なお、重合開始剤は、最初(反応開始前)に全量仕込んでもよく、最初に一部を仕込み、残りを連続フィード添加してもよく、断続的にパルス添加してもよく、これらを組み合わせた方法で添加してもよい。
反応系内には、必要に応じて、例えば、tert−ドデシルメルカプタン等のチオール基を有する化合物等の連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤、造膜助剤等の添加剤が含まれていてもよい。単量体成分100質量部あたりの添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
重合反応を行う際の雰囲気は、特に限定されず、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガス等の不活性ガスであることが好ましい。
重合反応を行う際の反応温度は、特に限定されず、通常、好ましくは30℃以上、より好ましくは60℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下である。反応温度がこの範囲にあれば、重合反応の制御が容易である。
重合反応を行う反応時間は、特に限定されず、通常、好ましくは10分〜1200分、より好ましくは30分〜360分である。
なお、コア部用単量体成分を乳化重合させる方法および重合条件と、シェル部用単量体を乳化重合させる方法および重合条件とは、同様であればよく、異なっていてもよい。
以上のようにして、まず、コア部用単量体成分を乳化重合させ、続いて、シェル部用単量体成分を乳化重合させることにより、コア部及びシェル部を有する樹脂粒子(エマルション粒子)、より具体的には、樹脂粒子を含有する樹脂エマルション(重合体水分散体)が得られる。この樹脂粒子は、シェル部にカルボン酸エステル基及びヒドロキシメチル基を有するため、親水性に優れる。その結果、この樹脂粒子は、水に対する優れた分散性を有するため、水分散体としての貯蔵安定性にも優れ、さらに容易に加水分解を行うことができる。
最後に、得られた水分散体に含まれている樹脂粒子のシェル部を構成する重合体に対して、例えば、水酸化ナトリウム水溶液やアンモニア水溶液等の塩基性水溶液を所定の割合で添加する。このとき、樹脂粒子を含む水分散体と塩基性水溶液とからなる加水分解液に酸を適宜添加することで、部分中和又は完全中和を行ってもよい。これにより、シェル部を構成する重合体が部分的に又は完全に加水分解された樹脂粒子が得られる。このように、重合時、加水分解時、又は中和時に用いる酸や塩基の量を調整したり、Rが水素原子である構造単位の割合を調整することで、樹脂粒子のpH及び体積平均粒子径を容易に調整できるため、重合体は幅広い用途に適用できる。
以上により得られる、特定のコア部と、該コア部を囲む特定のシェル部とを有する樹脂粒子は、該樹脂粒子が水に分散された重合体水分散体の状態で、例えば二次電池の電極に用いられるバインダーに好適に使用できる。即ち、このバインダーは、水と、その水中に分散された該樹脂粒子とを含む水分散体を含有するものである。なお、バインダーは、該樹脂粒子が水に溶解された重合体溶液を含有するものであってもよい。
なお、バインダーは、前記したように、水とその水中に分散した状態の樹脂粒子とを含有するものであってもよく、水と乾燥した状態の樹脂粒子とを含有するものであってもよい。乾燥方法としては、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、噴霧乾燥、マイクロ波乾燥等が挙げられる。
また、バインダーには、本開示の目的が阻害されない範囲内で、他の樹脂成分等が含まれていてもよい。
以上により得られる本実施形態に係るバインダーは、コア部及びシェル部を有する樹脂粒子を含み、シェル部を構成する重合体の原料として用いられる単量体成分に親水性単量体であるヒドロキシメチルアクリル酸系単量体を含有している。これにより、非水溶媒を用いなくても、水系溶媒中で前記単量性成分を重合できるため(シェル部を形成できるため)、環境への負荷が小さい(環境にやさしい)。
シェル部は、一般式(1)で示される構造単位を有する重合体、換言するとカルボン酸基と水酸基(ヒドロキシル基)を合わせ持つ官能基密度の高い重合体で構成されている。これにより、該シェル部を有する樹脂粒子を含むバインダーは、優れた水分散性と、活物質に対して高い結着力を有する。
また、シェル部は、カルボン酸エステル基の加水分解によりカルボン酸基が遊離したポリカルボン酸構造を有する重合体、換言すると少なくとも一部が加水分解された重合体で構成されている。これにより、該シェル部を有する樹脂粒子を含むバインダーは、充放電時に大きな体積変化を伴う活物質(特にシリコン活物質)に対しても高い結着力を有する電極を形成できる。
また、シェル部を構成する重合体が、一般式(1)で示される構造単位と共に、多官能エチレン性不飽和単量体由来の構造単位を有する場合、該重合体で構成されるシェル部を有する樹脂粒子の加水分解物は粒子状態を維持できる。これにより、該シェル部を有する樹脂粒子を含むバインダーは、活物質に対する結着力がより一層向上する。
また、コア部は、ガラス転移温度が−40℃〜110℃である重合体で構成されているため、柔軟性を有する。これにより、該コア部を有する樹脂粒子自体にも柔軟性が付与されるため、該樹脂粒子を含むバインダーの柔軟性が向上する。その結果、該バインダーによる活物質と集電体との結着力に優れる(高いピール強度を有する)電極を形成できる。
従って、柔軟性を有するコア部と、ポリカルボン酸構造を有するシェル部(加水分解物)とを有するコアシェル構造を備える樹脂粒子を含有することで、シリコン活物質等のような充放電時に大きな体積変化を伴う活物質に対する高い結着力及び高いピール強度を有するバインダーを実現できる。このバインダーは、二次電池の電極(負極)に用いられるバインダーとして好適に使用できる。
<電極組成物>
(電極組成物の構成)
本実施形態に係る電極組成物は、例えば非水二次電池等の電極を形成するためのものであり、リチウムイオン二次電池用の水系電極組成物として好適に使用できる。この電極組成物は、本開示のバインダーと活物質とを含有する。なお、電極組成物は、本開示のバインダーを単独で含有(使用)してもよく、必要により本開示のバインダーと、(メタ)アクリル系ポリマー、ニトリル系ポリマー、ジエン系ポリマー、スチレン系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等の他のバインダー成分を含有(併用)してもよい。
リチウムイオン二次電池用の水系電極組成物には、水系正極組成物と水系負極組成物がある。本開示のバインダーは、いずれの組成物にも用いることができるが、リチウムイオン二次電池用の水系負極組成物に好適に使用できる。
(リチウムイオン二次電池用の水系負極組成物)
リチウムイオン二次電池用の水系負極組成物(以下単に「水系負極組成物」ともいう)は、リチウムイオン二次電池の負極を形成するためのものであり、負極活物質、導電助剤、本開示のバインダー、必要に応じて他のバインダー成分等を含有する。
負極活物質としては、例えば、グラファイト、天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、ポリアセン系導電性ポリマー、チタン酸リチウム等の複合金属酸化物、リチウム合金、シリコン系材料等が挙げられる。負極活物質は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの負極活物質の中では、シリコン系材料(シリコン活物質)が好ましい。
水系負極組成物の不揮発分における負極活物質の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性及び電気特性を向上させる観点から、好ましくは85〜99.7質量%、より好ましくは90〜99.5質量%である。
導電助剤は、リチウムイオン二次電池の出力を向上させるために用いられる。導電助剤には、主として導電性カーボンが用いられる。導電性カーボンとしては、例えば、カーボンブラック、ファイバー状カーボン、黒鉛等が挙げられる。これらの導電助剤の中では、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。
水系負極組成物の不揮発分における導電助剤の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性及び電気特性を向上させる観点から、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1.5〜10質量%である。
水系負極組成物の不揮発分における、本開示のバインダーの不揮発分の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性及び電気特性を向上させる観点から、好ましくは0.2〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
水系負極組成物には、必要により、例えば、分散剤、増粘剤、防腐剤等の他の成分を含有させてもよい。水系負極組成物の不揮発分における他の成分の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性及び電気特性を向上させる観点から、好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0〜10質量%である。
(リチウムイオン二次電池用の水系正極組成物)
リチウムイオン二次電池用の水系正極組成物(以下単に「水系正極組成物」ともいう)は、リチウムイオン二次電池の正極を形成するためのものであり、正極活物質、導電助剤、本開示のバインダー、必要に応じて他のバインダー成分等を含有する。
水系正極組成物に用いられる正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵ないし放出することができる正極活物質であることが好ましい。リチウムイオンを吸蔵ないし放出することができる化合物としては、リチウムを含有する金属酸化物が挙げられる。リチウムを含有する金属酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物等が挙げられる。これらの正極活物質は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
水系正極組成物の不揮発分における正極活物質の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性及び電気特性を向上させる観点から、好ましくは70〜98.8質量%、より好ましくは80〜98.3質量%である。
導電助剤は、前記した導電助剤と同様のものを用いることができる。水系正極組成物の不揮発分における導電助剤の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性及び電気特性を向上させる観点から、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1.5〜10質量%である。
水系正極組成物の不揮発分における、本開示のバインダーの不揮発分の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性及び電気特性を向上させる観点から、好ましくは0.2〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
バインダー成分として、本開示のバインダーと他のバインダー成分を併用する場合、本開示のバインダーと他のバインダー成分との質量比(本開示のバインダー/バインダー成分)は、前記水系負極組成物における該質量比と同様である。
水系正極組成物には、他の成分として、必要により、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、ニトリル系ポリマー、ジエン系ポリマー等の非フッ素系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー等のポリマー、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤等の乳化剤;スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン等の高分子分散剤等の分散剤、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、アルカリ可溶型(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の増粘剤、防腐剤等を含有させてもよい。水系正極組成物の不揮発分における他の成分の含有率は、好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0〜10質量%である。
(電極組成物の製造方法)
本実施形態に係る電極組成物は、例えば、本開示のバインダー、活物質、導電助剤、必要により他のバインダー、他の成分を混合することによって調製することができる。具体的には、電極組成物は、例えば、活物質、導電助剤、必要により他のバインダー、他の成分を混合し、ビーズミル、ボールミル、攪拌型混合機等を用いて分散させることによって得ることができる。
粘度計〔東機産業(株)製、品番:TVB−10〕を用い、25±1℃の温度で30rpmの条件で測定したときの電極組成物の粘度は、塗工作業性を向上させる観点から、好ましくは1〜20Pa・sであり、より好ましくは2〜15Pa・sである。電極組成物の粘度は、該組成物に含有される水の量、増粘剤の量等を調製することにより、容易に調節することができる。
電極組成物の25℃でのpHは、集電体の腐食を抑制する観点から、好ましくは5以上、より好ましくは5.5以上、より一層好ましくは6以上、さらに好ましくは6.5以上である。また、電極組成物の25℃でのpHは、集電体の腐食を抑制する観点から、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、より一層好ましくは8以下、さらに好ましくは7.5以下である。
<電極>
(電極の構成)
本実施形態に係る電極は、例えば、非水二次電池、特にリチウムイオン二次電池に用いられる電極として好適に使用できる。この電極は、集電体及び電極合材層を含み、該電極合材層が該集電体上に形成され、該電極合材層が前記電極組成物から形成されている。
リチウムイオン二次電池用の電極には、正極及び負極が含まれる。本実施形態に係る電極は、いずれの電極にも用いることができるが、リチウムイオン二次電池の負極に好適に使用できる。
(リチウムイオン二次電池用の負極)
リチウムイオン二次電池用の負極は、負極集電体上に、電極組成物として前記水系負極組成物から形成された負極合材層を有する。
負極集電体に用いられる金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等が挙げられる。これらの中では銅が好ましい。なお、負極集電体の形状や寸法は特に制限されない。
(リチウムイオン二次電池用の正極)
リチウムイオン二次電池用の正極は、正極集電体上に、電極組成物として前記水系正極組成物から形成された正極合材層を有する。
正極集電体に用いられる金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等が挙げられる。これらの中ではアルミニウムが好ましい。なお、正極集電体の形状や寸法は、特に制限されない。
(電極の製造方法)
本実施形態に係る電極は、例えば、集電体に、前記電極組成物を塗布し、乾燥させて電極合材層を形成させることによって製造することができる。なお、電極には、必要により、例えば、金型プレス、ロールプレス等を用いて加圧処理を施してもよい。この電極では、バインダーとして、本開示のバインダーが用いられているため、プレスによる電極の圧密化時に、電極にひびや割れが生じることが抑制される。即ち、電極は、プレスにより活物質と集電体との密着度が向上し、その結果、活物質と集電体との結着力が向上するため、加圧処理を施すことが好ましい。
<二次電池>
(二次電池の構成)
本実施形態に係る二次電池は、例えば、非水二次電池、特にリチウムイオン二次電池に好適に使用できる。この二次電池は、前記電極(正極及び負極)を含有する。より具体的には、この二次電池は、前記正極及び負極と、該正極及び負極との間に設けられたセパレーターと、該セパレーターに含浸された状態で、該正極及び負極等と共に外装ケースに収容される電解液とを備える。
セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂からなるフィルムを用いることができる。
電解液には、支持電解質を有機溶媒に溶解させた電解液を用いることができる。支持電解質としては、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(FSONLi、(CFSONLi、(CSONLi等が挙げられる。前記有機溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート、γ‐ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル、1,2‐ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル等が挙げられる。
(二次電池の製造方法)
本実施形態に係る二次電池は、例えば、正極と負極とをセパレーターを介して重ね合わせ、得られた積層体を電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより、容易に製造することができる。
電池容器には、必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、リード板等を入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。
電池の形状としては、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型等が挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
(本開示のバインダーの、二次電池の電極に用いられるバインダーとしての使用)
本開示によれば、バインダーの、二次電池の電極に用いられるバインダーとしての使用が提供される。バインダーの、二次電池の電極に用いられるバインダーとしての使用の形態としては、非水二次電池の電極に用いられるバインダーとしての使用が好ましく、リチウムイオン二次電池の電極に用いられるバインダーとしての使用がより好ましく、リチウムイオン二次電池の負極に用いられるバインダーとしての使用がより一層好ましく、リチウムイオン二次電池のシリコン活物質を含有する負極に用いられるバインダーとしての使用がさらに好ましい。
以下に、本開示を実施例に基づいて説明する。なお、本開示は、以下の実施例に限定されるものではなく、以下の実施例を本開示の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本開示の範囲から除外するものではない。
<バインダーの調製>
(合成例1)
攪拌機、温度計及び冷却機を備えたステンレス製の第1の反応釜に、脱イオン水1378.0質量部、及びエーテルサルフェート型アンモニウム塩を主成分とするアニオン性反応性乳化剤アデカリアソープSR−20(有効成分100質量%、ADEKA社製)をイオン交換水で有効成分10質量%に希釈したもの(以下「SR−20(有効成分10質量%)」という)0.96質量部を加え、内温を75℃まで昇温し、同温度に保った。
他方、第1の反応釜とは異なる第2の反応釜で、メチルメタクリレート50質量部とn−ブチルアクリレート50質量部とを混合して、コア部用単量体組成物(単量体成分)100質量部を調製した。
さらに、第1の反応釜、第2の反応釜とは異なる第3の反応釜で、2−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル(以下「RHMA」という)90質量部と、ジビニルベンゼン(日鉄ケミカル&マテリアル(株)製、純度81%、以下「DVB810」という)10質量部とを混合して、シェル部用単量体組成物100質量部を調製した。
次に、第1の反応釜内を窒素ガスで置換した後、コア部用単量体組成物100質量部、過酸化水素水(濃度3.35質量%)20質量部、及びL−アスコルビン酸水溶液(濃度5.0質量%)20質量部を第1の反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。続いて、シェル部用単量体組成物100質量部、過酸化水素水(濃度0.67質量%)100質量部、及びL−アスコルビン酸水溶液(濃度1.00質量%)100質量部、SR−20(有効成分10質量%)7.04質量部とアンモニア水溶液(濃度28質量%)0.36質量部とイオン交換水92.6質量部との混合組成物100質量部を、各々異なる投入口より、第1の反応釜へ3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、第1の反応釜の内温を75℃に保持し、同温度で2時間保持して熟成した後、反応溶液を冷却して、コア部及びシェル部を有する二相の樹脂粒子(1)が分散した重合体水分散体(1a)を得た。
前記で得られた重合体水分散体(1a)10質量部、及び塩基性水溶液として水酸化ナトリウム水溶液(濃度10.0質量%)0.76質量部を第1の反応釜に加え、25℃で終夜(例えば12時間)撹拌することにより、シェル部を構成する重合体が部分的に加水分解された樹脂粒子(1)が分散した重合体水分散体(1b)を得た。
なお、樹脂粒子(1)のうち、コア部を構成する重合体のガラス転移温度は、3℃であった。ガラス転移温度は、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求めた。各単量体の単独重合体のガラス転移温度としては、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体は105℃、n−ブチルアクリレートの単独重合体は−56℃である。
以上により得られた重合体水分散体(1b、バインダー種)の単量体組成、塩基の添加量のモル比等を表1に示す(以下の重合体水分散体において同じ)。
なお、表1中の「塩基の添加量のモル比」は、合成例1では、一般式(2)で示されるRが炭素数1〜4のアルキル基であるカルボン酸エステル基のモル数に相当する塩基性水溶液の量1.52質量部(基準(100モル%))に対する、合成例1における塩基性水溶液の添加量0.76質量部の比率(50モル%)を記載した。
(合成例2)
第1の反応釜とは異なる第2の反応釜で、メチルメタクリレート40質量部とn−ブチルアクリレート60質量部とを混合して、コア部用単量体組成物(単量体成分)100質量部を調製したこと以外は、合成例1の手順と同様にしてコア部及びシェル部を有する二相の樹脂粒子(2)が分散した重合体水分散体(2a)を得た。前記で得られた重合体水分散体(2a)について、合成例1の手順と同様にして、シェル部を構成する重合体が部分的に加水分解された樹脂粒子(2)が分散した重合体水分散体(2b)を得た。なお、樹脂粒子(2)のうち、コア部を構成する重合体のガラス転移温度は、−11℃であった。
(合成例3)
第1の反応釜とは異なる第2の反応釜で、コア部用単量体組成物(単量体成分)としてメチルメタクリレート100質量部を用いたこと以外は、合成例1の手順と同様にしてコア部及びシェル部を有する二相の樹脂粒子(3)が分散した重合体水分散体(3a)を得た。前記で得られた重合体水分散体(3a)について、合成例1の手順と同様にして、シェル部を構成する重合体が部分的に加水分解された樹脂粒子(3)が分散した重合体水分散体(3b)を得た。なお、樹脂粒子(3)のうち、コア部を構成する重合体のガラス転移温度は、105℃であった。
(合成例4)
攪拌機、温度計及び冷却機を備えたステンレス製の第1の反応釜に、脱イオン水832質量部、及びエーテルサルフェート型アンモニウム塩を主成分とするアニオン性反応性乳化剤アデカリアソープSR−20(有効成分100質量%、ADEKA社製)をイオン交換水で有効成分25質量%に希釈したもの(以下「SR−20(有効成分25質量%)」という)0.96質量部を加え、内温を75℃まで昇温し、同温度に保った。
他方、第1の反応釜とは異なる第2の反応釜で、RHMA180質量部と、DVB810を20質量部とを混合して、単量体組成物200質量部を調製した。
次に、第1の反応釜内を窒素ガスで置換した後、前記単量体組成物40質量部、過酸化水素水(濃度1.28質量%)21質量部、及びL−アスコルビン酸水溶液(濃度1.9質量%)21質量部を第1の反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。続いて、前記単量体組成物の残部160質量部、過酸化水素水(濃度0.22質量%)479質量部、及びL−アスコルビン酸水溶液(濃度0.33質量%)479質量部とSR−20(有効成分25質量%)7.04質量部との混合組成物486.04質量部を、各々異なる投入口より、第1の反応釜へ4時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、第1の反応釜の内温を85℃まで昇温し、同温度で2時間保持して熟成した後、反応溶液を冷却して、単相(一相)の樹脂粒子(4)が分散した重合体水分散体(4a)を得た。
前記で得られた重合体水分散体(4a)10質量部、及び塩基性水溶液として水酸化ナトリウム水溶液(濃度6.6質量%)1.4質量部を第1の反応釜に加え、25℃で終夜撹拌することにより、部分的に加水分解された樹脂粒子(4)が分散した重合体水分散体(4b)を得た。
なお、表1中の「塩基の添加量のモル比」は、合成例4では、一般式(2)で示されるRが炭素数1〜4のアルキル基であるカルボン酸エステル基のモル数に相当する塩基性水溶液の量4.6質量部(基準(100モル%))に対する、合成例4における塩基性水溶液の添加量1.4質量部の比率(30モル%)を記載した。
<バインダーの評価>
(1)凝集破壊法によるシリコン活物質に対する結着力の評価
従来の負極(集電体上に合材層を塗布した電極)による剥離強度では、主に界面での剥離による強度を測定するため、バインダーによる活物質と集電体との結着力を評価する手法となっており、活物質とバインダーとの結着力を必ずしも反映していない課題があると考えられる。そこで、活物質とバインダーとの結着力を評価するために、各合成例で得られたバインダーを用いて測定用電極を作製し、凝集破壊法による凝集破壊強度を測定した。
(1−1)電極用スラリーの調製
(実施例1)
カルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム(株)製、商品名「CMCダイセル2200」)を純水に投入し、撹拌脱泡機((株)シンキー製、商品名「泡とり練太郎」、以下同じ)を使用して、2000rpmで10分間撹拌混合することにより、濃度4質量%のカルボキシメチルセルロース(以下「CMC」ともいう)水溶液を調製した。
前記で得られたCMC水溶液26部と、負極活物質としてシリコン((株)高純度化学研究所製、5μm)(以下「Si」ともいう)100質量部と、バインダーとして合成例1で得られた重合体水分散体(1b)(濃度9.2質量%)16質量部と、さらに水11質量部を添加し、撹拌脱泡機を使用して、2000rpmで10分間撹拌混合することにより、電極用スラリー(負極組成物)を調製した。電極用スラリーの組成、各固形分量等を表1に示す。
(実施例2)
合成例1で得られた重合体水分散体(1b)の代わりに、バインダーとして合成例2で得られた重合体水分散体(2b)(濃度9.2%)16質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順でスラリーを調製した。
(実施例3)
合成例1で得られた重合体水分散体(1b)の代わりに、バインダーとして合成例3で得られた重合体水分散体(3b)(濃度9.2%)16質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順でスラリーを調製した。
(参考例1)
合成例1で得られた重合体水分散体(1b)の代わりに、バインダーとして合成例4で得られた重合体水分散体(4b)(濃度9.1質量%)17質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして電極用スラリーを調製した。
(比較例1)
合成例1で得られた重合体水分散体(1b)の代わりに、スチレン・ブタジエンゴムを含む電極用バインダー(以下「SBR」という)を含む水分散体(固形分48.5%)3.1質量部と、水21質量部とを用いたこと以外は、実施例1と同様にして電極用スラリーを調製した。
(1−2)凝集破壊強度の測定用電極の作製
図1に示すように、集電体である銅箔(福田金属箔粉工業(株)製、厚み16μm)1に、両面テープ(コクヨ(株)製、製品名「T−E240」、幅40mm)2を貼り付けた。このとき、銅箔1の一端部(図1では下端部)に両面テープ2が貼り付けられていない部分を設けた。続いて、銅箔1に貼り付けた両面テープ2の粘着面上に、前記で得られた電極用スラリーを乾燥後の合材層の膜厚が60μmとなるようにアプリケーターで塗布し、60℃で10分間乾燥し、次いで80℃で10時間真空乾燥処理を行うことにより、銅箔1上に貼り付けた両面テープ2の粘着面上に負極合材層3が形成された凝集破壊強度の測定用電極(負極)4を得た。
(1−3)凝集破壊法による凝集破壊強度の測定
活物質とバインダーとの結着力を評価するために、凝集破壊法による剥離強度測定を行った。より具体的には、本手法では、図1に示すように、負極合材層3を、両面テープ2と後述する両面テープ5とで挟むことにより、集電体(銅箔1)と合材層(負極合材層3)との界面で剥離することなく、合材層内部での凝集破壊による剥離強度(凝集破壊強度)が測定可能である。
凝集破壊強度の測定手順は、以下の通りである。まず、図1及び図2に示すように、幅25mm、長さ100mmに裁断した凝集破壊強度の測定用電極4を両面テープ5でアルミニウム板6に貼り付けた。続いて、図2に示すように、銅箔1の両面テープ2が貼り付けられていない部分に、幅25mmのPETフィルム7を粘着テープ8で貼り付けた。最後に、引張試験機((株)島津製作所製、装置名「AUTOGRAPH AG−I/R」)を用い、アルミニウム板6とPETフィルム7とを、20℃の雰囲気中、剥離方向180°(図2に示す矢印方向)、剥離速度50mm/分の条件にて引っ張り、剥離強度を測定した。得られた剥離強度の測定値を凝集破壊強度とした。その結果を表1に示す。
Figure 2021136157
表1に示された結果から、実施例1〜3(合成例1〜3)のコアシェル構造の樹脂粒子を含むバインダー、及び参考例1(合成例4)の単相構造の樹脂粒子を含むバインダーは、共に樹脂粒子が一般式(1)で示される構造単位を有するため、比較例1の該樹脂粒子を含まないバインダーと比較して、シリコン活物質に対する結着力に優れることが分かる。
(2)バインダーによる活物質と集電体との結着力(ピール強度)の評価
バインダーによる活物質と集電体との結着力(ピール強度)を評価するために、負極(集電体上に合材層を塗布した電極)を用いて試験片を作製し、剥離強度を測定した。
(2−1)電極用スラリーの調製
(実施例4)
カルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム(株)製、商品名「CMCダイセル2200」)を純水に投入し、撹拌脱泡機を使用して、2000rpmで10分間撹拌混合することにより、濃度4質量%のCMC水溶液を調製した。
前記で得られたCMC水溶液25部と、負極活物質として天然球状黒鉛(日立化成(株)製、商品名「SMG」)100質量部と、導電助剤(1)(昭和電工(株)製、製品名「VGCF−H」)2部及び導電助剤(2)(デンカ(株)製、製品名「デンカブラック粉状品」)3部と、さらに水32質量部とを添加し、撹拌脱泡機を使用して、2000rpmで3分間撹拌混合した。その後、前記混合物を薄膜旋回型高速ミキサー(プライミクス(株)製、型番「FM−40−40」)により周速20m/sで1分間分散した。次いで、合成例1で得られたバインダー(1b)(濃度9.2質量%)21.3質量部と、SBRを含む水分散体(固形分48.5%)2.1質量部とを加えて混合し、電極用スラリー(負極組成物)を調製した。
(実施例5)
合成例1で得られた重合体水分散体(1b)の代わりに、バインダーとして合成例2で得られた重合体水分散体(2b)(濃度9.2質量%)21.3部を用いたこと以外は、実施例4と同様にして電極用スラリーを調製した。
(実施例6)
合成例1で得られた重合体水分散体(1b)の代わりに、バインダーとして合成例3で得られた重合体水分散体(3b)(濃度9.2質量%)21.3部を用いたこと以外は、実施例4と同様にして電極用スラリーを調製した。
(参考例2)
合成例1で得られた重合体水分散体(1b)の代わりに、バインダーとして合成例4で得られた重合体水分散体(4b)(濃度9.1質量%)22.0部を用いたこと以外は、実施例4と同様にして電極用スラリーを調製した。
(2−2)ピール強度評価用の負極の作製
集電体である銅箔(福田金属箔粉工業(株)製、厚み16μm)に、前記で得られた電極用スラリーを乾燥後の塗工重量が9.9g/cmとなるようにアプリケーターで塗布し、60℃で10分間乾燥し、次いで80℃で10時間真空乾燥処理を行った。その後、ロールプレス機により密度1.5g/cmとなるまで加圧成形することにより、銅箔上に負極合材層が形成されたピール強度の測定用電極(負極)を得た。なお、得られたピール強度の測定用電極は、前記凝集破壊強度の測定用電極4と比較して、当該電極4と銅箔5との間に両面テープ2が介在していない点で相違している。
(2−3)ピール強度の測定
集電体とバインダーとの結着力を評価するために、前記で得られたピール強度の測定用電極(負極)を用いて剥離強度測定を行った。
ピール強度の測定手順は、以下の通りである。まず、幅25mm、長さ100mmに裁断したピール強度の測定用電極を両面テープでアルミニウム板に貼り付けた。続いて、銅箔の負極合材層が形成されていない部分に、幅25mmのPETフィルムを粘着テープで貼り付けた。最後に、引張試験機((株)島津製作所製、装置名「AUTOGRAPH AG−I/R」)を用い、アルミニウム板とPETフィルムとを、20℃の雰囲気中、剥離方向180°、剥離速度50mm/分の条件にて引っ張り、剥離強度を測定した。得られた剥離強度の測定値をピール強度とした。その結果を表2に示す。
Figure 2021136157
表2に示された結果から、実施例4〜6(合成例1〜3)のコアシェル構造の樹脂粒子を含むバインダーは、参考例2(合成例4)の単相構造の樹脂粒子を含むバインダーと比較して、ピール強度が優れることが分かる。コア部に柔軟性を付与することでバインダーの柔軟性が向上した結果、電極のプレス時に、電極にひびや割れが生じることなく、活物質と集電体との密着度が向上し、両者の結着力(ピール強度)の向上につながったと考えられる。
以上により、合成例1〜3のバインダーはいずれも、合成例4のバインダーと比較して、シリコン活物質に対する結着力に優れる(凝集破壊強度に優れる)と共に、ピール強度にも優れることが分かった。
(3)電池評価
合成例1で得られたバインダー(1b)及び合成例4で得られたバインダー(4b)を用いて、電池評価用の電極(負極)をそれぞれ作製し、所定の充放電試験条件により電池評価を行った。
(3−1)電池評価用の負極の作製
前記(2−1)及び(2−2)と同様の手順により、電池評価用の負極をそれぞれ得た。具体的には、以下のとおりである。
(評価例1)実施例2と同様の手順により、電池評価用の負極1を得た。
(評価例2)参考例2と同様の手順により、電池評価用の負極2を得た。
(3−2)電池の作製
正極としてリチウム箔(本城金属(株)製、厚み0.5mm)、前記で得られた負極1又は2、及びポリエチレン製セパレーター(厚み25μm)を、それぞれ円形(負極Φ12mm、リチウム箔Φ14mm、セパレーターΦ16mm)に打ち抜いた。CR2032コイン型電池用部品(宝泉(株)製:ケース(SUS316L製)、キャップ(SUS316L製)、スペーサー(0.5mm厚、SUS316L製)、ウェーブワッシャー(SUS316L製)、ガスケット(ポリプロピレン製))を用いて、以下の手順でコイン型リチウムイオン二次電池をそれぞれ作製した。
まず、ガスケットを装着したキャップ、ウェーブワッシャー、スペーサー、リチウム箔、セパレーターをこの順で重ねた。次に、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:7(体積比)溶液(キシダ化学(株)製)にLiPF(ステラケミファ(株)製)を1.2mol/Lの濃度で溶解させて調製した電解液を、セパレーターに含浸させた。そして、負極塗布面がリチウム箔と対向するように、前記で得られた負極を設置し、その上にケースを重ね、カシメ機(宝泉(株)製)で封口してコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。
(3−3)充放電試験
前記で得られたコイン型リチウムイオン二次電池(設計容量4.1mAh)について、温度25℃の環境下、充放電試験装置(アスカ電子(株)製)を使用し、所定の放電条件(0.05C、終止電圧0.01V、定電流モード)及び充電条件(0.05C、終止電圧2V、定電流モード)にて、各充放電前には10分の休止時間を設けて充放電試験を行った。その初期放電(リチウム挿入)容量、充電(リチウム脱離)容量、及び充放電試験の結果(充放電効率)を表3に示す。
Figure 2021136157
表3に示された結果から、評価例1(コアシェル構造)及び評価例2(単相構造)で得られたコイン型リチウムイオン二次電池の充放電効率(充電容量/放電容量)は、共に90%以上であった。合成例1のバインダーは、リチウムイオン二次電池用の電極(特に負極)を形成するためのバインダー(電極組成物の成分)に好適に使用できることが分かる。
以上説明したように、本開示は、二次電池の電極に用いられるバインダーに適している。
1 銅箔(集電体)
2 両面テープ
3 負極合材層(電極組成物)
4 凝集破壊強度の測定用電極
5 両面テープ
6 アルミニウム板
7 PETフィルム
8 粘着テープ

Claims (9)

  1. 樹脂粒子を含むバインダーであって、
    前記樹脂粒子は、コア部と、該コア部を囲むシェル部とを有し、
    前記コア部を構成する重合体のガラス転移温度が−40℃〜110℃であり、
    前記シェル部を構成する重合体は、一般式(1)
    Figure 2021136157
    〔式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又は4級アンモニウムを示す。〕で示される構造単位を有し、
    前記シェル部を構成する重合体のうち少なくとも一部が加水分解されているバインダー。
  2. 前記シェル部を構成する重合体は、さらに多官能エチレン性不飽和単量体由来の構造単位を有する請求項1に記載のバインダー。
  3. 前記多官能エチレン性不飽和単量体が非加水分解性単量体である請求項2に記載のバインダー。
  4. 前記シェル部を構成する重合体中における前記一般式(1)で示される構造単位の割合が合計で30〜99.99質量%である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のバインダー。
  5. 水及び樹脂粒子を含有し、該樹脂粒子が請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の樹脂粒子であるバインダー。
  6. 水と、該水中に分散された樹脂粒子とを含む水分散体とを含有し、該樹脂粒子が請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の樹脂粒子であるバインダー。
  7. 電極を形成するための電極組成物であって、
    請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のバインダーと活物質とを含有する電極組成物。
  8. 集電体及び電極合材層を含む電極であって、
    前記電極合材層が前記集電体上に形成され、該電極合材層が請求項7に記載の電極組成物から形成されてなる電極。
  9. 請求項8に記載の電極を有する二次電池。
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