JP2021134335A - 粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物、粉体成形用塩化ビニル樹脂成形体および積層体 - Google Patents

粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物、粉体成形用塩化ビニル樹脂成形体および積層体 Download PDF

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Takanori Fujiwara
崇倫 藤原
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Abstract

【課題】臭気の発生が抑制された塩化ビニル樹脂成形体を形成可能な粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を提供する。【解決手段】塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含む粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物。なお、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、パウダースラッシュ成形に用いられることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル樹脂成形体および積層体に関するものである。
塩化ビニル樹脂は、一般に、耐寒性、耐熱性、耐油性などの特性に優れているため、種々の用途に用いられている。
具体的には、例えば、自動車インスツルメントパネルおよびドアトリム等の自動車内装部品の形成には、塩化ビニル樹脂成形体からなる表皮や塩化ビニル樹脂成形体からなる表皮に発泡ポリウレタン等の発泡体を裏打ちしてなる積層体などの自動車内装材が用いられている。
そして、自動車インスツルメントパネル等の自動車内装部品の表皮を構成する塩化ビニル樹脂成形体は、例えば、塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、顔料等の添加剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形などの既知の成形方法を用いて粉体成形することにより製造されている(例えば、特許文献1参照)。
具体的には、例えば特許文献1では、塩化ビニル樹脂粒子と、トリメリット酸エステル系可塑剤と、フタロシアニンブルー、酸化チタンおよびカーボンの混合品よりなる顔料等の添加剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形することにより、塩化ビニル樹脂成形体からなる表皮を製造している。
特開平8−291243号公報
ここで、塩化ビニル樹脂成形体を自動車内装部品の表皮などの自動車内装材として使用した場合、当該塩化ビニル樹脂成形体から臭気が発生し、自動車の乗員に不快感を与え得ることが問題となっている。そのため、塩化ビニル樹脂成形体からの臭気の発生を抑制することが求められる。
そこで、本発明は、臭気の発生が抑制された塩化ビニル樹脂成形体を形成可能な粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、臭気の発生が抑制された塩化ビニル樹脂成形体を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、当該塩化ビニル樹脂成形体を有し、臭気の発生が抑制された積層体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含む塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形すれば、臭気の発生が抑制された塩化ビニル樹脂成形体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含むことを特徴とする。このように、塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含む粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を用いれば、臭気の発生が抑制された塩化ビニル樹脂成形体を形成することができる。
ここで、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが下記式(I):
Figure 2021134335
〔式(I)中、
nは2以上20以下の整数を表し、
Rは水素または脂肪酸残基を表し、
複数のRのうち少なくとも1つは脂肪酸残基を表し、
複数のRはそれぞれ同一であっても、相異なっていてもよい。〕
で表されることが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルが、グリセリン由来の構造単位の繰り返し数nを上記所定範囲内とする式(I)で表されれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体からの臭気の発生を更に抑制できると共に、塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを高めることができる。
また、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、前記複数のRのうち、脂肪酸残基の個数がn+1以下であることが好ましい。複数のRのうち、脂肪酸残基の個数が上記所定値以下であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体からの臭気の発生を更に抑制できると共に、塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを高めることができる。
さらに、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、前記脂肪酸残基の炭素数が2以上30以下であることが好ましい。脂肪酸残基の炭素数が上記所定範囲内であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体からの臭気の発生を更に抑制できると共に、塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを高めることができる。
また、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、前記複数のRのうち少なくとも1つが飽和脂肪酸残基を表すことが好ましい。複数のRのうち少なくとも1つが飽和脂肪酸残基を表せば、形成される塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを高めることができる。
さらに、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が上記所定範囲内であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体からの臭気の発生を更に抑制できると共に、塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを高めることができる。
また、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、前記可塑剤の含有量が、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して30質量部以上であることが好ましい。粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物中の可塑剤の含有量が上記所定値以上であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを高めることができる。
さらに、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、前記可塑剤が、トリメリット酸エステルおよびポリエステルの少なくとも一方を含み、前記トリメリット酸エステルおよび前記ポリエステルの含有量の合計が、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して30質量部以上200質量部以下であることが好ましい。粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物がトリメリット酸エステルおよび/またはポリエステルを合計で上記所定量含めば、形成される塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを高めることができる。
また、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、前記可塑剤が、トリメリット酸エステルとポリエステルとを含み、前記トリメリット酸エステルと前記ポリエステルとの質量比(トリメリット酸エステル/ポリエステル)が1/9以上9/1以下であることが好ましい。可塑剤がトリメリット酸エステルとポリエステルとを上記所定の質量比で含めば、形成される塩化ビニル樹脂成形体からの臭気の発生を更に抑制することができる。
そして、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、パウダースラッシュ成形に用いられることが好ましい。粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形に用いれば、例えば、自動車インスツルメントパネル用表皮などの自動車内装材として良好に使用し得る塩化ビニル樹脂成形体がより容易に得られる。
さらに、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、上述した粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物のいずれかを成形してなることを特徴とする。このように、上述した粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を成形してなる塩化ビニル樹脂成形体は、臭気の発生が抑制されている。
そして、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、自動車インスツルメントパネル表皮用であることが好ましい。本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、臭気の発生が抑制された自動車インスツルメントパネルの表皮として好適に用いることができる。
さらに、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の積層体は、発泡ポリウレタン成形体と、上述した塩化ビニル樹脂成形体のいずれかとを有することを特徴とする。発泡ポリウレタン成形体および上述した塩化ビニル樹脂成形体を有する積層体は、臭気の発生が抑制されている。
そして、本発明の積層体は、自動車インスツルメントパネル用であることが好ましい。このように、本発明の積層体を自動車インスツルメントパネルに用いれば、表皮からの臭気の発生が抑制された自動車インスツルメントパネルを製造することができる。
本発明によれば、臭気の発生が抑制された塩化ビニル樹脂成形体を形成可能な粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、臭気の発生が抑制された塩化ビニル樹脂成形体を提供することができる。
さらに、本発明によれば、当該塩化ビニル樹脂成形体を有し、臭気の発生が抑制された積層体を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、例えば、本発明の塩化ビニル樹脂成形体を形成する際に用いることができる。そして、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体は、例えば、自動車インスツルメントパネルおよびドアトリム等の自動車内装部品が備える表皮などの、自動車内装材として好適に用いることができる。
また、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、例えば、本発明の積層体を形成する際に用いることができる。そして、本発明の塩化ビニル樹脂成形体を用いて形成した積層体は、例えば、自動車インスツルメントパネルおよびドアトリム等の自動車内装部品を製造する際に用いる自動車内装材として好適に用いることができる。
(粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物)
本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、(a)塩化ビニル樹脂と、(b)可塑剤と、(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含むことを特徴とする。
なお、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、任意に、上記(a)塩化ビニル樹脂(b)可塑剤、および(c)ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の添加剤を更に含んでいてもよい。
そして、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、少なくとも、上記(a)塩化ビニル樹脂と、(b)可塑剤と、(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含んでいるため、臭気の発生が抑制された塩化ビニル樹脂成形体を形成可能である。また、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、少なくとも、上記(a)塩化ビニル樹脂と、(b)可塑剤と、(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含んでいるため、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成された塩化ビニル樹脂成形体は、加熱された後に低温下で評価した場合の引張伸び(以下、「加熱後の低温引張伸び」と称することがある)にも優れている。
したがって、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を使用すれば、例えば、臭気の発生が抑制された自動車インスツルメントパネル用表皮およびドアトリム用表皮などの、自動車内装材として好適な塩化ビニル樹脂成形体を得ることができる。
なお、例えば、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を用いて、自動車内装材として良好に使用し得る塩化ビニル樹脂成形体を容易に得る観点からは、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、パウダースラッシュ成形に用いられることが好ましい。
<(a)塩化ビニル樹脂>
(a)塩化ビニル樹脂としては、通常、粒子状の塩化ビニル樹脂を用いる。そして、(a)塩化ビニル樹脂としては、例えば、1種類または2種類以上の塩化ビニル樹脂粒子を含有することができ、任意に、1種類または2種類以上の塩化ビニル樹脂微粒子を更に含有することができる。中でも、(a)塩化ビニル樹脂は、少なくとも塩化ビニル樹脂粒子を含有することが好ましく、塩化ビニル樹脂粒子および塩化ビニル樹脂微粒子を含有することがより好ましい。
そして、(a)塩化ビニル樹脂は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法など、従来から知られているいずれの製造法によっても製造し得る。
なお、本明細書において、「樹脂粒子」とは、粒子径が30μm以上の粒子を指し、「樹脂微粒子」とは、粒子径が30μm未満の粒子を指す。
また、(a)塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル単量体単位からなる単独重合体の他、塩化ビニル単量体単位を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する塩化ビニル系共重合体が挙げられる。そして、塩化ビニル系共重合体を構成し得る、塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体(共単量体)の具体例としては、例えば、国際公開第2016/098344号に記載のものを使用することができる。また、これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
<<塩化ビニル樹脂粒子>>
塩化ビニル樹脂組成物において、塩化ビニル樹脂粒子は、通常、マトリックス樹脂(基材)として機能する。なお、塩化ビニル樹脂粒子は、懸濁重合法により製造することが好ましい。
[平均重合度]
そして、塩化ビニル樹脂粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度は、800以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2800以下であることが更に好ましい。塩化ビニル樹脂粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記下限以上であれば、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の物理的強度を十分確保しつつ、例えば、引張特性、特には引張伸びをより良好にできるからである。そして、引張伸びが良好な塩化ビニル樹脂成形体は、例えば、エアバッグが膨張、展開した際に、破片が飛散することなく設計通りに割れる、延性に優れた自動車インスツルメントパネルの表皮などの自動車内装材として好適に用いることができる。また、塩化ビニル樹脂粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記上限以下であれば、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物の溶融性を向上させることができるからである。
なお、本発明において「平均重合度」は、JIS K6720−2に準拠して測定することができる。
[平均粒子径]
また、塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径は、通常30μm以上であり、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径が上記下限以上であれば、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性がより向上するからである。また、塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径が上記上限以下であれば、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物の溶融性がより向上すると共に、当該組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の表面平滑性を向上できるからである。
なお、本発明において、「平均粒子径」は、JIS Z8825に準拠し、レーザー回折法により体積平均粒子径として測定することができる。
[含有割合]
そして、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂粒子の含有割合は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%とすることができ、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂粒子の含有割合が上記下限以上であれば、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の物理的強度を十分確保しつつ引張伸びを良好にできるからである。また、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂粒子の含有割合が上記上限以下であれば、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が向上するからである。
<<塩化ビニル樹脂微粒子>>
粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物において、塩化ビニル樹脂微粒子は、通常、ダスティング剤(粉体流動性改良剤)として機能する。なお、塩化ビニル樹脂微粒子は、乳化重合法により製造することが好ましい。
[平均重合度]
そして、塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度は、500以上が好ましく、700以上がより好ましく、2600以下が好ましく、2400以下がより好ましい。ダスティング剤としての塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記下限以上であれば、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性がより良好になると共に、当該組成物を用いて得られる成形体の引張伸びがより良好になるからである。また、塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記上限以下であれば、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物の溶融性が向上し、当該組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の表面平滑性が向上するからである。
[平均粒子径]
また、塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径は、通常30μm未満であり、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径が上記下限以上であれば、例えばダスティング剤としてのサイズを過度に小さくすることなく、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を更に良好にすることができるからである。また、塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径が上記上限以下であれば、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物の溶融性がより高まり、形成される塩化ビニル樹脂成形体の表面平滑性を更に向上させることができるからである。
[含有割合]
そして、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂微粒子の含有割合は、0質量%であってもよいが、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂微粒子の含有割合が上記下限以上であれば、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が更に向上するからである。また、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂微粒子の含有割合が上記上限以下であれば、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の物理的強度をより高めることができるからである。
<(b)可塑剤>
(b)可塑剤は、特に限定されないが、(b1)トリメリット酸エステル、および(b2)ポリエステルの少なくとも一方で含むことが好ましい。本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物に使用する(b)可塑剤として、(b1)トリメリット酸エステル、および(b2)ポリエステルの少なくとも一方が含まれていれば、加熱後の低温引張伸びに更に優れる塩化ビニル樹脂成形体を形成可能である。
なお、(b)可塑剤は、(b1)トリメリット酸エステル、および(b2)ポリエステル以外のその他の可塑剤を含んでいてもよいものとする。
<<(b1)トリメリット酸エステル>>
(b)可塑剤中に含まれる(b1)トリメリット酸エステルは、好ましくは、トリメリット酸と一価アルコールとのエステル化合物である。
上記一価アルコールの具体例としては、特に限定されることなく、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール等の脂肪族アルコールが挙げられる。中でも、一価アルコールとしては、炭素数6〜18の脂肪族アルコールが好ましく、炭素数6〜18の直鎖脂肪族アルコールがより好ましい。
中でも、上記(b1)トリメリット酸エステルとしては、上述した一価アルコールによりトリメリット酸のカルボキシ基を実質的に全てエステル化したトリエステル化物が好ましい。トリエステル化物におけるアルコール残基部分は、同一のアルコール由来のものであってもよく、それぞれ異なるアルコール由来のものであってもよい。
上記(b1)トリメリット酸エステルは、単一の化合物からなるものであってもよいし、異なる化合物の混合物であってもよい。
好適な(b1)トリメリット酸エステルの具体例は、トリメリット酸トリ−n−ヘキシル、トリメリット酸トリ−n−ヘプチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、トリメリット酸トリ−(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリ−n−ノニル、トリメリット酸トリ−n−デシル、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリ−n−ウンデシル、トリメリット酸トリ−n−ドデシル、トリメリット酸トリアルキルエステル(炭素数が異なるアルキル基〔但し、炭素数は6〜18である。〕を分子内に2種以上有するエステル)、トリメリット酸トリ−n−アルキルエステル(炭素数が異なるアルキル基〔但し、炭素数は6〜18である。〕を分子内に2種以上有するエステル)、及びこれらの混合物等である。
より好ましい(b1)トリメリット酸エステルの具体例は、トリメリット酸トリ−n−オクチル、トリメリット酸トリ−(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリ−n−ノニル、トリメリット酸トリ−n−デシル、トリメリット酸トリ−n−アルキルエステル(炭素数が異なるアルキル基〔但し、炭素数は6〜18である。〕を分子内に2種以上有するエステル)、及びこれらの混合物等である。
(b)可塑剤中における(b1)トリメリット酸エステルの含有割合は、0質量%以上とすることができ、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、100質量%以下とすることができ、70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。(b)可塑剤中における(b1)トリメリット酸エステルの含有割合が上記所定範囲内であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを更に高めることができる。
また、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物中における(b1)トリメリット酸エステルの含有量は、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して、0質量部以上とすることができ、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは20質量部以上であり、更に好ましくは30質量部以上であり、好ましくは100質量部以下であり、より好ましくは70質量部以下であり、更に好ましくは50質量部以下である。粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物中における(b)トリメリット酸エステルの含有量が上記所定範囲内であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを更に高めることができる。
<<(b2)ポリエステル>>
(b)可塑剤に含まれる(b2)ポリエステルとしては、特に限定されることはなく、例えば、アジピン酸由来の構造単位を含有するポリエステル(アジピン酸系ポリエステル)、セバシン酸由来の構造単位を含有するポリエステル(セバシン酸系ポリエステル)、およびフタル酸由来の構造単位を含有するポリエステル(フタル酸系ポリエステル)などのポリエステルを用いることができる。なお、これらのポリエステルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の比率で混合して用いてもよい。
また、(b)可塑剤に含まれる(b2)ポリエステルとしては、特に限定されることはなく、例えば、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、および1,3−ブタンジオールなどのジオール化合物由来の構造単位を含有するポリエステルを用いることができる。
そして、形成される塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを更に高める観点から、(b2)ポリエステルとしては、アジピン酸由来の構造単位を含有するポリエステルを用いることが好ましく、アジピン酸由来の構造単位と、ジオール化合物由来の構造単位とを含有するポリエステルを用いることがより好ましく、アジピン酸由来の構造単位と、3−メチル−1,5−ペンタンジオール由来の構造単位とを含有するポリエステルを用いることが特に好ましい。
以下、説明の便宜上、アジピン酸由来の構造単位と、3−メチル−1,5−ペンタンジオール由来の構造単位とを含有するポリエステルを、「ポリエステルA」と称することにする。
ここで、上記所定の構造単位を含有するポリエステルAは、アジピン酸由来の構造単位および3−メチル−1,5−ペンタンジオール由来の構造単位以外の構造単位を有していてもよいが、アジピン酸由来の構造単位および3−メチル−1,5−ペンタンジオール由来の構造単位の合計が、全構造単位の50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。また、上記所定の構造単位を含有するポリエステルAは、繰り返し単位としてアジピン酸由来の構造単位および3−メチル−1,5−ペンタンジオール由来の構造単位のみを有することが好ましい。
そして、上記所定の構造単位を含有するポリエステルAは、特に限定されることなく、アジピン酸と、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとを縮合重合することにより得ることができる。なお、上述した縮合重合は、触媒の存在下で実施することができる。また、上述した縮合重合は、末端停止成分としてアルコールおよび/または一塩基酸を用いて実施することができる。更に、アジピン酸と、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとを縮合重合と、得られた縮合重合物と上記末端停止成分との停止反応とは、一括して行なってもよいし、別々に行なってもよいものとする。また、縮合重合および停止反応を経て得られる生成物には、蒸留等の後処理を施してもよい。そして、上述した単量体、触媒および末端停止成分の使用量などの縮合重合の反応条件としては、公知の条件を採用することができる。
なお、上記所定の構造単位を含有するポリエステルAとしては、市販品を用いてもよい。
縮合重合反応に用いる触媒としては、特に限定されることなく、例えば、ジブチル錫オキサイド、テトラアルキルチタネートなどが挙げられる。
また、末端停止成分として使用し得るアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、ヘプタノール、イソヘプタノール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、イソノナノール、デカノール、イソデカノール、ウンデカノール、イソウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、イソトリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、セロソルブ、カルビトール、フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコールおよびそれらの混合物が挙げられる。
更に、末端停止成分として使用し得る一塩基酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、安息香酸およびそれらの混合物が挙げられる。
中でも、末端停止成分としては、2−エチルヘキサノールが好ましい。
そして、上記所定の構造単位を含有するポリエステルAは、数平均分子量が1000以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、10000以下であることが好ましく、7000以下であることがより好ましい。
なお、「数平均分子量」は、VPO(蒸気圧浸透圧)法にて測定することができる。
また、上記所定の構造単位を含有するポリエステルAは、酸価が1以下であることが好ましい。
更に、上記所定の構造単位を含有するポリエステルAは、水酸基価が30以下であることが好ましい。
更に、上記所定の構造単位を含有するポリエステルAは、粘度が500mPa・s以上であることが好ましく、1000mPa・s以上であることがより好ましく、8000mPa・s以下であることが好ましく、5000mPa・s以下であることがより好ましい。
なお、「粘度」は、JIS Z8803に準拠し、温度23℃で測定することができる。
(b)可塑剤中における(b2)ポリエステルの含有割合は、0質量%以上とすることができ、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、100質量%以下とすることができ、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70%以下であることが更に好ましい。(b)可塑剤中における(b2)ポリエステルの含有割合が上記所定範囲内であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを更に高めることができる。
また、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物中における(b2)ポリエステルの含有量は、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して、0質量部以上とすることができ、好ましくは20質量部以上であり、より好ましくは40質量部以上であり、更に好ましくは50質量部以上であり、好ましくは100質量部以下であり、より好ましくは90質量部以下であり、更に好ましくは80質量部以下であり、一層好ましくは70質量部以下である。粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物中における(b2)ポリエステルの含有量が上記所定範囲内であれば、塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを更に高めることができる。
さらに、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物中における(b1)トリメリット酸エステルおよび(b2)ポリエステルの含有量の合計は、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して30質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましく、70質量部以上であることが更に好ましく、90質量部以上であることが一層好ましく、200質量部以下であることが好ましく、180質量部以下であることがより好ましく、150質量部以下であることが更に好ましく、110質量部以下であることが一層好ましい。粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物中における(b1)トリメリット酸エステルおよび(b2)ポリエステルの合計含有量が上記所定範囲内であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを更に高めることができる。
また、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物中における(b1)トリメリット酸エステルと(b2)ポリエステルとの質量比(トリメリット酸エステル/ポリエステル)は、1/9以上であることが好ましく、2/8以上であることがより好ましく、3/7以上であることが更に好ましく、9/1以下であることが好ましく、8/2以下であることがより好ましく、7/3以下であることが更に好ましい。粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物中における(b1)トリメリット酸エステルと(b2)ポリエステルとの質量比(トリメリット酸エステル/ポリエステル)が上記所定範囲内であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体からの臭気の発生を更に抑制することができる。
なお、(b)可塑剤に含まれる(b2)ポリエステルは、後述するポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なる成分である。
また、(b2)ポリエステルの重量平均分子量は、4200以上であることが好ましく、4500以上であることがより好ましく、5000以上であることが更に好ましく、5500以上であることが一層好ましく、10000以下であることが好ましい。
なお、ポリエステルの重量平均分子量は、本明細書の実施例に記載の方法により測定することができる。
<<(b3)その他の可塑剤>>
粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物に含まれる(b)可塑剤は、任意で、上述した(b1)トリメリット酸エステル、および(b2)ポリエステル以外の可塑剤(「(b3)その他の可塑剤」と称することがある。)を含んでいてもよい。
(b3)その他の可塑剤の具体例としては、国際公開第2016/098344号に記載の可塑剤のうち、上述した(b1)トリメリット酸エステル、および(b2)ポリエステル以外の可塑剤などが挙げられる。中でも、形成される塩化ビニル樹脂成形体の低温での柔軟性を更に高める観点から、エポキシ化大豆油を用いることが好ましい。
(b)可塑剤中における上記(b3)その他の可塑剤の含有割合は、特に限定されないが、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。(b)可塑剤中における(b3)その他の可塑剤の含有割合が上記範囲内であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを更に高めることができる。
また、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物中における上記(b3)その他の可塑剤の含有量は、特に限定されないが、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下とすることができる。
そして、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物中における上記(b1)トリメリット酸エステル、(b2)ポリエステル、および(b3)その他の可塑剤の合計含有量(即ち、(b)可塑剤の含有量)は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、30質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましく、70質量部以上であることが更に好ましく、90質量部以上であることが一層好ましく、205質量部以下であることが好ましく、185質量部以下であることがより好ましく、155質量部以下であることが更に好ましく、115質量部以下であることが一層好ましい。粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物中における(b)可塑剤の含有量が上記所定範囲内であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを更に高めることができる。
<(c)ポリグリセリン脂肪酸エステル>
本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物に含まれる(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、複数分子のグリセリンが縮合重合してなるポリグリセリンと、脂肪酸とのエステル化合物である。
そして、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物が(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルを含むことにより、形成される塩化ビニル樹脂成形体からの臭気発生を良好に抑制することができる。また、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物が(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルを含むことにより、形成される塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを向上させることができる。
ここで、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物に含まれる(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、下記式(I):
Figure 2021134335
〔式(I)中、
nは2以上の整数を表し、
Rは水素または脂肪酸残基を表し、
複数のRのうち少なくとも1つは脂肪酸残基を表し、
複数のRはそれぞれ同一であっても、相異なっていてもよい。〕
で表すことができる。
上記式(I)において、nはグリセリン由来の構造単位の繰り返し数を表す。そして、グリセリン由来の構造単位の繰り返し数nは、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましく、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、4であることが特に好ましい。グリセリン由来の構造単位の繰り返し数nが上記所定範囲内であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体からの臭気の発生を更に抑制できると共に、塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを更に高めることができる。
また、上記(I)で表されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、複数(n+2個)のRを有している。そして、上記(I)で表されるポリグリセリン脂肪酸エステルが有する複数のRのうち、脂肪酸残基(アルキルカルボニル基)の個数の下限は、1以上であれば、特に限定されることはない。また、上記(I)で表されるポリグリセリン脂肪酸エステルが有する複数のRのうち、脂肪酸残基(アルキルカルボニル基)の個数の上限は、n+2以下であれば、特に限定されないが、n+1以下であることが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルが有する脂肪酸残基の個数がn+1以下であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体からの臭気の発生を更に抑制できると共に、塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを更に高めることができる。なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルが有する脂肪酸残基の個数は、例えば、n以下であってもよいし、n−1以下であってもよいものとする。
そして、上記(I)で表されるポリグリセリン脂肪酸エステルが有する複数のRのうち、脂肪酸残基(アルキルカルボニル基)の個数は1であることが特に好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルが有する脂肪酸残基の個数が1であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体からの臭気の発生を一層抑制できると共に、塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを一層高めることができる。
Rが脂肪酸残基(アルキルカルボニル基)を表す場合、脂肪酸残基は、特に限定されず、例えば、カプリル酸残基、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、ステアリン酸残基、ベヘン酸残基等の飽和脂肪酸残基であってもよいし、オレイン酸残基、エルカ酸残基等の不飽和脂肪酸残基であってもよいが、形成される塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを更に高める観点から、飽和脂肪酸であることが好ましい。
また、Rが脂肪酸残基(アルキルカルボニル基)を表す場合、脂肪酸残基(アルキルカルボニル基)の炭素数は、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることが更に好ましく、30以下であることが好ましく、25以下であることがより好ましく、20以下であることが更に好ましい。脂肪酸残基の炭素数が上記所定範囲内であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体からの臭気の発生を更に抑制できると共に、塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを更に高めることができる。
そして、上記式(I)で表されるポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリントリステアレート、デカグリセリンデカステアレート、ヘキサグリセリンモノステアレート、ヘキサグリセリントリステアレート、ヘキサグリセリンペンタステアレート、テトラグリセリンモノステアレート、テトラグリセリントリステアレート、テトラグリセリンペンタステアレート等のポリグリセリンステアリン酸エステル;デカグリセリンモノオレート、デカグリセリンデカオレート、ヘキサグリセリンモノオレート、ヘキサグリセリンペンタオレート、テトラグリセリンモノオレート、テトラグリセリンペンタオレート等のポリグリセリンオレイン酸エステル;デカグリセリンモノカプリレート、ジグリセリンモノカプリレート等のポリグリセリンカプリル酸エステル;デカグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンモノラウレート等のポリグリセリンラウリン酸エステル;デカグリセリンモノミリステート等のポリグリセリンミリスチン酸エステル;デカグリセリンヘプタベヘネート、デカグリセリンドデカベヘネート等のポリグリセリンベヘン酸エステル;デカグリセリンオクタエルケート等のポリグリセリンエルカ酸エステル;ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル;などが挙げられる。
なお、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物に含まれる(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、上記式(I)で表されるポリグリセリン脂肪酸エステルのうち、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を任意の比率で混合して用いてもよい。
そして、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物に含まれる(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、上記式(I)で表されるポリグリセリン脂肪酸エステルを2種以上含む混合物である場合、当該混合物中のポリグリセリン脂肪酸エステルのグリセリン由来の構造単位の繰り返し数n、脂肪酸残基(アルキルカルボニル基)の個数、および、脂肪酸残基の炭素数の各々の平均値の好ましい範囲は、上述したグリセリン由来の構造単位の繰り返し数n、脂肪酸残基(アルキルカルボニル基)の個数、および、脂肪酸残基の炭素数の好ましい範囲と同じ範囲とすることができる。
(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルの重量平均分子量は、600以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましく、1000以上であることが更に好ましく、4000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2000以下であることが更に好ましい。(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルの重量平均分子量が上記所定範囲内であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体からの臭気の発生を更に抑制できると共に、塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを更に高めることができる。
なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルの重量平均分子量は、本明細書の実施例に記載の方法により測定することができる。
また、(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値は、例えば、1以上15以下であることが好ましい。
なお、(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの鹸化価をS、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の酸価をAとする算出式:20(1−S/A)により求めることができる。
(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、市販品を用いることもでき、例えば、製品名「DAS−7S」、「PS−5S」、「MS−3S」、「PS−3S」、「PO−5S」、「PO−3S」(いずれも阪本薬品工業社製)等を用いることができる。
粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物中の(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることが更に好ましく、10質量部以下であることが好ましく、6質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが更に好ましい。粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物中の(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が上記所定範囲内であれば、形成される塩化ビニル樹脂成形体からの臭気の発生を更に抑制できると共に、塩化ビニル樹脂成形体の加熱後の低温引張伸びを更に高めることができる。
<添加剤>
本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、上述した成分以外に、各種添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、特に限定されることなく、滑剤;過塩素酸処理ハイドロタルサイト、ゼオライト、β−ジケトン、脂肪酸金属塩などの安定剤;離型剤;上記塩化ビニル樹脂微粒子以外のその他のダスティング剤;耐衝撃性改良剤;過塩素酸処理ハイドロタルサイト以外の過塩素酸化合物(過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等);酸化防止剤;防カビ剤;難燃剤;帯電防止剤;充填剤;光安定剤;発泡剤;顔料;などが挙げられる。
そして、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物が含み得る上述した添加剤としては、例えば、国際公開第2016/098344号に記載のものを使用することができ、その好適含有量も国際公開第2016/098344号の記載と同様とすることができる。
<粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物の調製方法>
本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、上述した成分を混合して調製することができる。
ここで、上記(a)塩化ビニル樹脂と、(b)可塑剤と、(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルと、必要に応じて更に配合される各種添加剤との混合方法としては、特に限定されることなく、例えば、ダスティング剤(塩化ビニル樹脂微粒子を含む)を除く成分をドライブレンドにより混合し、その後、ダスティング剤を添加、混合する方法が挙げられる。ここで、ドライブレンドには、ヘンシェルミキサーの使用が好ましい。また、ドライブレンド時の温度は、特に制限されることなく、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、200℃以下が好ましい。
<粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物の用途>
そして、得られた粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、粉体成形に用いることができ、パウダースラッシュ成形に好適に用いることができる。
(塩化ビニル樹脂成形体)
本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、上述した粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を、任意の方法で成形することにより得られることを特徴とする。そして、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、上述した粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成されているため、通常、少なくとも、(a)塩化ビニル樹脂と、(b)可塑剤と、(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含んでおり、臭気の発生が抑制されている。また、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、上述した粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成されているため、加熱後の低温引張伸びにも優れている。
したがって、本発明の塩化ビニル樹脂成形体に発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして形成された積層体は、臭気の発生が抑制されているため、自動車インスツルメントパネルの表皮などの自動車内装材として好適に用いることができる。
<塩化ビニル樹脂成形体の形成方法>
ここで、パウダースラッシュ成形により塩化ビニル樹脂成形体を形成する場合、パウダースラッシュ成形時の金型温度は、特に制限されることなく、200℃以上とすることが好ましく、220℃以上とすることがより好ましく、300℃以下とすることが好ましく、280℃以下とすることがより好ましい。
そして、塩化ビニル樹脂成形体を製造する際には、特に限定されることなく、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、上記温度範囲の金型に本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を振りかけて、5秒以上30秒以下の間放置した後、余剰の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を振り落とし、さらに、任意の温度下、30秒以上3分以下の間放置する。その後、金型を10℃以上60℃以下に冷却し、得られた本発明の塩化ビニル樹脂成形体を金型から脱型する。そして、金型の形状をかたどったシート状の成形体を得る。
(積層体)
本発明の積層体は、発泡ポリウレタン成形体と、上述した塩化ビニル樹脂成形体とを有する。なお、塩化ビニル樹脂成形体は、通常、積層体の一方の表面を構成する。
そして、本発明の積層体は、例えば、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成された塩化ビニル樹脂成形体を有しているため、臭気の発生が抑制されている。したがって、本発明の積層体は、自動車内装部品、特に、自動車インスツルメントパネルを形成する自動車内装材として好適に用いられる。
ここで、発泡ポリウレタン成形体と塩化ビニル樹脂成形体との積層方法は、特に限定されることなく、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、(1)発泡ポリウレタン成形体と、塩化ビニル樹脂成形体とを別途準備した後に、熱融着、熱接着、または、公知の接着剤などを用いることにより貼り合わせる方法;(2)塩化ビニル樹脂成形体上で発泡ポリウレタン成形体の原料となるイソシアネート類とポリオール類などとを反応させて重合を行うと共に、公知の方法によりポリウレタンの発泡を行うことにより、塩化ビニル樹脂成形体上に発泡ポリウレタン成形体を直接形成する方法;などが挙げられる。中でも、工程が簡素である点、および、種々の形状の積層体を得る場合においても塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体とを強固に接着し易い点から、後者の方法(2)が好適である。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、ポリエステルAおよびポリグリセリン脂肪酸エステルの重量平均分子量、並びに、塩化ビニル樹脂成形シートの低温引張伸びおよび臭気強度は、下記の方法で測定および評価した。
<重量平均分子量>
ポリエステルAおよびポリグリセリン脂肪酸エステルの重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、THFを溶媒としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の値として求めた。
<低温引張伸び>
<<加熱前(初期)>>
得られた塩化ビニル樹脂成形シートを、JIS K6251に記載の1号ダンベルで打ち抜き、JIS K7113に準拠して、引張速度200mm/分で、−10℃の低温下における引張破断伸び(%)を測定した。引張破断伸びの値が大きいほど、塩化ビニル樹脂成形シートは加熱前(初期)の低温下での引張伸び(低温引張伸び)に優れている。
<<加熱(熱老化試験)後>>
発泡ポリウレタン成形体が裏打ちされた積層体を試料とした。当該試料をオーブンに入れ、温度120℃の環境下で1200時間、加熱を行った。次に、加熱後の積層体から発泡ポリウレタン成形体を剥離して、塩化ビニル樹脂成形シートのみを準備した。そして、上記初期の場合と同様の条件にて、120℃、1200時間加熱後の塩化ビニル樹脂成形シートの引張破断伸び(%)を測定した。引張破断伸びの値が大きいほど、塩化ビニル樹脂成形シートは加熱後の低温引張伸びに優れている。
<臭気強度>
得られた塩化ビニル樹脂成形シートを5cm×5cmの寸法に切断して得られた試験片を、ポリエチレンテレフタレート製6Lバッグに入れて、ヒートシールにて閉じた。上記バッグの注入口より窒素ガスを4L封入した後、100℃の恒温槽で1時間加熱を行った。加熱後、バッグを取り出して、室温まで冷却した後、バッグを開封して、5人のパネラーによってバッグ内の臭気を下記の5段階の基準で評価した。そして、5人のパネラーによる評価の平均値を、臭気強度とした。なお、臭気強度の値が小さいほど、塩化ビニル樹脂成形シートからの臭気の発生が抑制されていることを示す。
4 非常に強い臭い
3 感知できる臭い
2 何の匂いかわかる弱い臭い
1 やっと感知できる臭い
0 無臭
(製造例)
実施例および比較例で使用したポリエステルは、以下のようにして調製した。
<ポリエステルA>
多価カルボン酸としてのアジピン酸、多価アルコールとしての3−メチル−1,5−ペンタンジオール、及びストッパー(末端停止成分)としての2−エチルヘキサノールを反応容器に仕込み、触媒としてテトライソプロピルチタネートを加え、適宜溶剤を添加し、攪拌しながら昇温した。副生する水は常圧および減圧で除去し、最終的に220〜230℃まで温度を上げて脱水縮合反応を完結させた。得られた生成物について、圧力4〜80Pa、外套温度250℃の条件下で薄膜蒸留を行なうことで、末端が2−エチルヘキソキシ基からなるポリエステルA(粘度:3600mPa・s、数平均分子量:5300、酸価:0.32、水酸基価:12.7)を得た。なお、上述の方法に従って測定したところ、ポリエステルAの重量平均分子量は、6227であった。
(実施例1)
<粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物の調製>
表1に示す配合成分のうち、可塑剤(トリメリット酸エステル、ポリエステルA、およびエポキシ化大豆油)と、ダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子とを除く成分をヘンシェルミキサーに入れて混合した。そして、混合物の温度が80℃に上昇した時点で上記可塑剤を全て添加し、ドライアップ(可塑剤が、塩化ビニル樹脂である塩化ビニル樹脂粒子に吸収されて、上記混合物がさらさらになった状態をいう。)させた。その後、ドライアップさせた混合物が温度70℃以下に冷却された時点でダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子を添加し、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を調製した。
また、上述の方法に従って、配合成分として用いたポリグリセリン脂肪酸エステルの重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
<塩化ビニル樹脂成形体の形成>
以下のようにして、寸法が200mm×300mm×1mmの塩化ビニル樹脂成形シートを調製した。
具体的には、上述で得られた粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を、温度250℃に加熱したシボ付き金型に振りかけ、任意の時間放置して溶融させた後、余剰の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を振り落とした。その後、当該粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を振りかけたシボ付き金型を、温度200℃に設定したオーブン内に静置し、静置から60秒経過した時点で当該シボ付き金型を冷却水で冷却した。金型温度が40℃まで冷却された時点で、塩化ビニル樹脂成形体としての塩化ビニル樹脂成形シートを金型から脱型した。
そして、得られた塩化ビニル樹脂成形シート(寸法:200mm×300mm×1mm)について、上述の方法に従って、臭気強度、および加熱前(初期)の低温引張伸びを測定、評価した。結果を表1に示す。
<積層体の形成>
得られた塩化ビニル樹脂成形シート(寸法:200mm×300mm×1mm)を、200mm×300mm×10mmの金型の中に、シボ付き面を下にして敷いた。
別途、プロピレングリコールのPO(プロピレンオキサイド)・EO(エチレンオキサイド)ブロック付加物(水酸基価28、末端EO単位の含有量=10%、内部EO単位の含有量4%)を50部、グリセリンのPO・EOブロック付加物(水酸基価21、末端EO単位の含有量=14%)を50部、水を2.5部、トリエチレンジアミンのエチレングリコール溶液(東ソー社製、商品名「TEDA−L33」)を0.2部、トリエタノールアミンを1.2部、トリエチルアミンを0.5部、および整泡剤(信越化学工業製、商品名「F−122」)を0.5部混合して、ポリオール混合物を得た。また、得られたポリオール混合物とポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)とを、インデックスが98になる比率で混合した混合液を調製した。そして、調製した混合液を、上述の通り金型内に敷かれた塩化ビニル樹脂成形シートの上に注いだ。その後、348mm×255mm×10mmのアルミニウム板で上記金型に蓋をして、金型を密閉した。金型を密閉してから5分間放置することにより、表皮としての塩化ビニル樹脂成形シート(厚さ:1mm)に、発泡ポリウレタン成形体(厚み:9mm、密度:0.2g/cm3)が裏打ちされた積層体が、形成された。
そして、形成された積層体を金型から取り出し、上述の方法に従って、塩化ビニル樹脂成形シートの加熱(熱老化試験)後の低温引張伸びを測定、評価した。結果を表1に示す。
(実施例2〜6)
ポリグリセリン脂肪酸エステルの種類を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル樹脂成形体および積層体を作製した。そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル樹脂成形体および積層体を作製した。そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
表1に示すように、ポリエステルAを添加しない分だけ、トリメリット酸エステルの添加量を増やしたこと以外は、実施例3と同様にして、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物、および塩化ビニル樹脂成形体を作製した。そして、低温引張伸びの評価を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加しなかったこと以外は実施例7と同様にして、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物、および塩化ビニル樹脂成形体を作製した。そして、低温引張伸びの評価を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
表1に示すように、トリメリット酸エステルを添加しない分だけ、ポリエステルAの添加量を増やしたこと以外は、実施例3と同様にして、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物、および塩化ビニル樹脂成形体を作製した。そして、低温引張伸びの評価を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加しなかったこと以外は実施例8と同様にして、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物、および塩化ビニル樹脂成形体を作製した。そして、低温引張伸びの評価を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例9)
表1に示すように、トリメリット酸エステルおよびポリエステルAの添加量をいずれも減らしたこと以外は、実施例3と同様にして、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物、および塩化ビニル樹脂成形体を作製した。そして、低温引張伸びの評価を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加しなかったこと以外は実施例9と同様にして、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物、および塩化ビニル樹脂成形体を作製した。そして、低温引張伸びの評価を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2021134335
1)新第一塩ビ社製、製品名「ZEST(登録商標)1700ZI」(懸濁重合法で調製、平均重合度:1700、平均粒子径:129μm)
2)新第一塩ビ社製、製品名「ZEST PQLTX」(乳化重合法で調製、平均重合度:800、平均粒子径:1.8μm)
3)東ソー社製、製品名「リューロンペースト761」(乳化重合法で調製、平均重合度:2100、平均粒子径:1.7μm)
4)花王社製、製品名「トリメックスN−08」
5)ADEKA社製、製品名「アデカサイザー O−130S」
6)協和化学工業社製、製品名「アルカマイザー(登録商標)5」
7)水澤化学工業社製、製品名「MIZUKALIZER DS」
8)昭和電工社製、製品名「カレンズDK−1」
9)ADEKA社製、製品名「アデカスタブ SC−131」
10)堺化学工業社、製品名「SAKAI SZ2000」
11)ADEKA社製、製品名「アデカスタブ LS−12」
12)阪本薬品工業社製、製品名「DAS−7S」(HLB値:3.8)
13)阪本薬品工業社製、製品名「PS−5S」(HLB値:4.5)
14)阪本薬品工業社製、製品名「MS−3S」(HLB値:8.4)
15)阪本薬品工業社製、製品名「PS−3S」(HLB値:2.6)
16)阪本薬品工業社製、製品名「PO−5S」(HLB値:4.7)
17)阪本薬品工業社製、製品名「PO−3S」(HLB値:2.9)
18)信越シリコーン社製、製品名「KF−96H−30万cs」(未変性シリコーンオイル(ポリジメチルシロキサン)、粘度:30×104cs)
19)大日精化社製、製品名「DA PX 1720(A)ブラック」
表1より、塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含む実施例1〜6の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成された塩化ビニル樹脂成形シートでは、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含まないこと以外は同じ配合組成である比較例1の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成された塩化ビニル樹脂成形シートと比較して、臭気の発生を抑制できていることが分かる。
同様に、塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含む実施例7〜9の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成された塩化ビニル樹脂成形シートでは、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含まないこと以外は上記実施例7〜9のそれぞれと同じ配合組成である比較例2〜4の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成された塩化ビニル樹脂成形シートと比較して、臭気の発生を抑制できていることが分かる。
本発明によれば、臭気の発生が抑制された塩化ビニル樹脂成形体を形成可能な粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、臭気の発生が抑制された塩化ビニル樹脂成形体を提供することができる。
さらに、本発明によれば、当該塩化ビニル樹脂成形体を有し、臭気の発生が抑制された積層体を提供することができる。

Claims (14)

  1. 塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含む粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物。
  2. 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが下記式(I):
    Figure 2021134335
    〔式(I)中、
    nは2以上20以下の整数を表し、
    Rは水素または脂肪酸残基を表し、
    複数のRのうち少なくとも1つは脂肪酸残基を表し、
    複数のRはそれぞれ同一であっても、相異なっていてもよい。〕
    で表される、請求項1に記載の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物。
  3. 前記複数のRのうち、脂肪酸残基の個数がn+1以下である、請求項2に記載の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物。
  4. 前記脂肪酸残基の炭素数が2以上30以下である、請求項2または3に記載の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物。
  5. 前記複数のRのうち少なくとも1つが飽和脂肪酸残基を表す、請求項2〜4のいずれかに記載の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物。
  6. 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物。
  7. 前記可塑剤の含有量が、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して30質量部以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物。
  8. 前記可塑剤が、トリメリット酸エステルおよびポリエステルの少なくとも一方を含み、
    前記トリメリット酸エステルおよび前記ポリエステルの含有量の合計が、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して30質量部以上200質量部以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物。
  9. 前記可塑剤が、トリメリット酸エステルとポリエステルとを含み、
    前記トリメリット酸エステルと前記ポリエステルとの質量比(トリメリット酸エステル/ポリエステル)が1/9以上9/1以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物。
  10. パウダースラッシュ成形に用いられる、請求項1〜9のいずれかに記載の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる、塩化ビニル樹脂成形体。
  12. 自動車インスツルメントパネル表皮用である、請求項11に記載の塩化ビニル樹脂成形体。
  13. 発泡ポリウレタン成形体と、請求項11または12に記載の塩化ビニル樹脂成形体とを有する、積層体。
  14. 自動車インスツルメントパネル用である、請求項13に記載の積層体。
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