JP2021133463A - ワイヤ放電加工用電極線 - Google Patents

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Abstract

【課題】種々の条件で的確にワイヤ放電加工を行うことができるワイヤ放電加工用電極線を提供する。【解決手段】ワイヤ放電加工用の電極線1は、芯線2と、芯線2の外周を被覆する被覆層3とを備えている。被覆層3は、芯線2の外周上に形成された内層3aと内層3a上に形成された外層3bとを有する積層膜からなる。内層3aは、銅または鉄を主成分とする金属材料からなる。外層3bは、内層3aよりも仕事関数が小さい金属材料からなり、かつ、内層3aの厚さよりも小さい厚さを有する。内層3aの厚さと外層3bの厚さとの合計は、30〜50μmである。【選択図】図2

Description

本発明は、ワイヤ放電加工用電極線に関するものである。
導電性を有する被加工物の輪郭形状を加工する加工機の1つとして、ワイヤ放電加工用電極線と被加工物との間で間欠的なパルス放電を発生させ、この時の熱的作用と衝撃力によって被加工物を溶融・除去しながら放電加工を行うワイヤ放電加工機が知られている。
特許文献1(特開平3−111126号公報)および特許文献2(特開平6−238523号公報)には、ワイヤ放電加工用電極線に関する技術が記載されている。
特開平3−111126号公報 特開平6−238523号公報
ワイヤ放電加工においては、荒加工と仕上加工とがある。例えば、被加工物をおおよその加工形状まで放電加工するための荒加工を行った後に、荒加工で放電加工された被加工物を最終仕上がり形状まで放電加工するための仕上加工を行うことにより、高精度の加工を行うことができる。荒加工と仕上加工とでは、例えば、放電加工の際に使用する電気条件、ワイヤ放電加工用電極線(以下、単に「電極線」ともいう)の加工送り速度、電極線の消耗量など、放電加工の条件が異なる。そのため、通常は、荒加工用の電極線と仕上加工用の電極線とを別々に用意し、荒加工用の電極線と仕上加工用の電極線とを使い分けている。しかし、該電極線の使い分けは、ワイヤ放電加工機の電極線を荒加工と仕上加工とで変更する(取り替える)必要があるため、ワイヤ放電加工を用いて種々の製品を製造する場合に生産効率の低下を招いてしまうことがある。
このため、荒加工用の電極線と仕上加工用の電極線とを共通化し、1種類の電極線を、荒加工と仕上加工との両方に使用可能とすることが望まれる。しかしながら、荒加工と仕上加工とでは、放電加工の条件が異なることから、荒加工と仕上加工の両方に適した電極線構造を採用しなければ、荒加工と仕上加工のいずれかの放電加工において不具合が発生する虞がある。
従って、本発明の目的は、荒加工と仕上加工のいずれにおいても好適に使用できるワイヤ放電加工用電極線を提供することである。
一実施の形態によれば、ワイヤ放電加工用電極線は、芯線と、前記芯線の外周を被覆する被覆層とを備えている。前記被覆層は、前記芯線の外周上に形成された第1層と前記第1層上に形成された第2層とを有する積層膜からなる。前記第1層は、銅または鉄を主成分とする第1金属材料からなり、かつ、第1厚さを有する。前記第2層は、前記第1金属材料よりも仕事関数が小さい第2金属材料からなり、かつ、前記第1厚さよりも小さい第2厚さを有する。前記第1厚さと前記第2厚さとの合計は、30〜50μmである。
一実施の形態によれば、種々の放電加工の条件で的確にワイヤ放電加工を行うことができる。
一実施の形態におけるワイヤ放電加工用電極線を示す斜視図である。 一実施の形態におけるワイヤ放電加工用電極線の断面図である。 一実施の形態におけるワイヤ放電加工用電極線を含むワイヤ放電加工機の概略構成を示す斜視図である。
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
(実施の形態)
図1は、本実施の形態におけるワイヤ放電加工用電極線1を示す斜視図であり、図2は、本実施の形態におけるワイヤ放電加工用電極線1の断面図である。図2は、ワイヤ放電加工用電極線1の延在方向に略垂直な断面図に対応している。図3は、本実施の形態におけるワイヤ放電加工用電極線1を含むワイヤ放電加工機の概略構成を示す斜視図である。
図1および図2に示される本実施の形態のワイヤ放電加工用電極線1(以下、単に「電極線1」と称する)は、可撓性および導電性を有する円柱状のワイヤであり、電極線1の断面は、円形状である。なお、本実施の形態において、電極線1などの断面に言及する場合、電極線1の延在方向に略垂直な断面に対応している。
図2に示されるように、電極線1は、芯線(芯材、金属線)2と、芯線2の外周を被覆する被覆層3とからなる。被覆層3は、内側(芯線2側)に位置する内層(第1層)3aと、内層3aの外側に位置する外層(第2層)3bとからなる。従って、被覆層3は、芯線2の外周上に形成された内層3aと内層3a上に形成された外層3bとを有する積層膜からなる。芯線2と内層3aと外層3bは、導電性を有しており、それぞれ金属材料からなる。
内層3aは、芯線2の外周に接しており、芯線2の外周を被覆している。外層3bは、内層3aの外周(芯線2に接する側とは反対側の面)と接しており、内層3aの外周を被覆している。電極線1の外表面は、外層3bの外周(内層3aに接する側とは反対側の面)により構成されている。
芯線2は金属線であり、芯線2の断面は円形状である。芯線2は、電極線1の主部を構成し、電極線1の耐久性および真直性などを確保する機能を有している。芯線2は、金属材料からなるが、好ましくは、銅(Cu)または鉄(Fe)を主成分とする金属材料からなる。芯線2を構成する金属材料として、特に、黄銅(銅と亜鉛の合金)または鋼を好適に用いることができる。
なお、主成分とは、構成元素のうち、最も含有率(原子比)が高い元素に対応している。
内層3aは、銅(Cu)または鉄(Fe)を主成分とする金属材料からなり、その主成分の含有率は60原子%以上が好ましい。内層3aは、導電率(電気伝導度)が5%IACS以上、70%IACS以下である。
なお、IACS(International Annealed Copper Standard)とは、導電率(電気伝導度)の基準であり、国際的に採択された焼鈍標準軟銅(体積抵抗率: 1.7241×10−2μΩm)の導電率を、100%IACSとして規定している。
本実施の形態では、相対的に導電率が低い芯線2を、芯線2よりも導電率が高い内層3aで被覆することにより、電極線1の抵抗が低下し、放電加工時に放電に伴う電流が流れた際の電極線1の発熱量(ジュール熱)を小さくすることができる。これにより、放電加工の加工速度を高くすることができる。
また、芯線2が、銅(Cu)または鉄(Fe)を主成分とする金属材料からなり、かつ、内層3aが、芯材2と同種の銅(Cu)または鉄(Fe)を主成分とする金属材料からなる場合は、内層3aと芯線2との密着性を向上させることができるという利点も得られる。すなわち、芯材2と内層3aとは、同種の金属材料で構成されることにより、内層3aと芯線2との密着性を向上させることができる。例えば、芯材2が銅(Cu)を主成分とする金属材料からなる場合は、内層3aも銅(Cu)を主成分とする金属材料からなることがよい。
また、内層3aの主成分が鉄(Fe)である場合は、内層3aの耐久性をより高くすることができるため、放電加工時の内層3aの消耗量をより抑制することができる。また、内層3aの主成分が鉄(Fe)である場合は、加工精度を高めることができる。一方、内層3aの主成分が銅(Cu)である場合は、鉄(Fe)が主成分である場合に比べて、内層3aの導電率をより高くすることができるため、放電加工時の加工速度をより高めることができる。
内層3aの外周は、外層3bで被覆されている。外層3bは、内層3aよりも放電効率が高い金属材料からなる。従って、外層3bは、内層3aよりも仕事関数が小さい金属材料からなる。すなわち、外層3bを構成する金属材料の仕事関数は、内層3aを構成する金属材料の仕事関数よりも小さい。例えば、外層3bは、仕事関数が3.50eV以上4.45eV以下である金属材料からなり、内層3aは、仕事関数が4.45eVよりも大きく5.50eV以下である金属材料からなることが好ましい。このような外層3bとしては、例えば、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)または錫(Sn)を主成分とする金属材料からなり、その主成分の含有率は60原子%以上であることがより好ましい。例えば、外層3bは、亜鉛(Zn)層、マグネシウム(Mg)層、アルミニウム(Al)層または錫(Sn)層からなる。これに加えて、外層3bを構成する金属材料の融点は、内層3aを構成する金属材料の融点よりも小さい(低い)ことが好ましい。例えば、外層3bは、融点が200℃以上800℃以下である金属材料からなり、内層3aは、融点が1000℃以上である金属材料からなることが好ましい。
なお、例えば、亜鉛の仕事関数は3.63eV、マグネシウムの仕事関数は3.66eV、アルミニウムの仕事関数は4.20eV、錫の仕事関数は4.42eV、銅の仕事関数は5.10eV、鉄の仕事関数は4.67eV等である。また、例えば、亜鉛の融点は420℃、マグネシウムの融点は651℃、アルミニウムの融点は660℃、錫の融点は232℃、銅の融点は1083℃、鉄の融点は1539℃等である。
外層3bは、ワイヤ放電加工の仕上加工を行う際に、放電が起こりやすくして、放電効率を高めるために設けられている。電極線1と被加工物との間で放電が起こりやすくして放電効率を高めるためには、電極線1の外表面を構成する金属材料の仕事関数および融点を小さく(低く)することが有効である。
ワイヤ放電加工の仕上加工を行う場合は、荒加工を行う場合と比べて、電極線1に印加するパルス電圧が低いため、電極線1と被加工物との間に流れる電流が小さく、電極線1と被加工物との間で放電が起こりにくい。内層3aは、導電率を高くすることができ、かつ、荒加工を行う際の消耗量を小さくすることができるような耐久性の高い金属材料を用いる。従って、内層3aは、仕事関数を小さくするという観点で金属材料を選択することができず、内層3aの仕事関数は小さくしにくい。このため、本実施の形態とは異なり、外層3bが存在せず、電極線1の外表面が内層3aで構成されている場合は、仕上加工を行う際に、電極線1と被加工物との間で放電が起こりにくくなって、放電効率が低くなり、仕上加工を的確に行えなくなる虞がある。
それに対して、本実施の形態では、内層3aの外周を、内層3aよりも仕事関数が小さな外層3bで被覆して、電極線1の外表面を構成する金属材料(外層3bを構成する金属材料に対応)の仕事関数を小さくしている。これにより、仕上加工を行う際に、電極線1と被加工物との間で放電が起こりやすくして放電効率を高めることができるため、仕上加工を的確に行うことができるようになる。
一方、ワイヤ放電加工の荒加工を行う場合は、仕上加工を行う場合と比べて、電極線1に印加するパルス電圧が高いため、放電に伴い電極線1と被加工物との間に流れる電流が大きく、電極線1と被加工物との間で放電が起こりやすい。このため、荒加工を行う際は、電極線1の外表面を構成する金属材料の仕事関数がそれほど小さくなくとも、電極線1と被加工物との間で放電が起こりやすく、荒加工を的確に行うことができる。このため、外層3bがあり、電極線1の外表面が外層3bで構成されている場合と、外層3bがなく、電極線1の外表面が内層3aで構成されている場合のいずれにおいても、ワイヤ放電加工の荒加工を行う際は、電極線1と被加工物との間で放電が起こりやすく、荒加工を的確に行うことができる。
つまり、外層3bは、電極線1と被加工物との間の放電効率を高めてワイヤ放電加工の仕上加工を的確に行うことができるようにするために設けられている。
内層3aは、仕事関数を小さくする必要性がなく、耐久性が高い材料を選択することができる。それゆえ、外層3bの耐久性は、内層3aの耐久性よりも低くなる。例えば、内層3aに上述のように銅(Cu)または鉄(Fe)を主成分とする金属材料を採用し、外層3bに上述のように亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)または錫(Sn)を主成分とする金属材料を採用した場合には、外層3bの仕事関数は内層3aの仕事関数よりも小さくすることができるが、外層3bの耐久性は、内層3aの耐久性よりも低くなってしまう。なお、耐久性とは、放電加工時の耐久性に対応し、耐久性が低いほど、放電に伴う消耗が生じやすくなる。例えば、外層3bの融点は、内層3aの融点よりも低くなり、これを反映して、外層3bの耐久性が内層3aの耐久性よりも低くなる。
ワイヤ放電加工の荒加工を行う場合は、仕上加工を行う場合と比べて、電極線1に印加するパルス電圧が高く、放電に伴い電極線1と被加工物との間に流れる電流が大きいため、放電に伴い電極線1の外表面が消耗しやすい。このため、ワイヤ放電加工の荒加工を行う際は、放電に伴い外層3bが消耗することにより、外層3bが消失して内層3aが露出することになる。しかしながら、内層3aは外層3bよりも耐久性が高いため、ワイヤ放電加工の荒加工を行う際に、内層3aが露出した後は、内層3aの消耗量を抑制することができる。このため、ワイヤ放電加工の荒加工を行う際に、内層3aが消失して芯線2が露出するのを防止することができる。別の見方をすると、内層3aは外層3bよりも耐久性が高いため、ワイヤ放電加工の荒加工において、内層3aの全厚みが消失するのに要する時間を長くすることができる。ワイヤ放電加工時には、後述するようにロール12,13(図3参照)が回転することにより電極線1を下方または上方に送り出しながら放電加工を行うが、荒加工において内層3aの全厚みが消失するのに要する時間を長くすることができることにより、電極線1の送り出し速度を抑制することが可能となるため、放電加工を終了するまでに必要な電極線1の長さを短くすることができる。このため、放電加工に要する費用を低減することができる。
また、上述したように、ワイヤ放電加工の荒加工を行う場合は、仕上加工を行う場合と比べて、電極線1と被加工物との間で放電が起こりやすい。このため、ワイヤ放電加工の荒加工を行う際に、内層3aの全厚みが消失して内層3aが露出し、内層3aが電極線1の外表面を構成した状態になったとしても、電極線1と被加工物との間で放電は起こりやすく、放電加工の荒加工を的確に行うことができる。
つまり、内層3aは、電極線1の抵抗を低くして放電加工時の電極線1の発熱量(ジュール熱)を小さくするためと、ワイヤ放電加工の荒加工時の電極線1の消耗を抑制して荒加工を的確に行うことができるようにするために設けられている。
また、ワイヤ放電加工の仕上加工を行う場合は、荒加工を行う場合と比べて、電極線1に印加するパルス電圧が低く、放電に伴い電極線1と被加工物との間に流れる電流が小さいため、放電に伴う電極線1の外表面の消耗は生じにくい。このため、ワイヤ放電加工の仕上加工を行う際には、外層3bは消耗しにくいので、仕上加工によって外層3bの全厚みが消失して内層3aが露出するのを防止することができる。従って、外層3bが電極線1の外表面を構成した状態で仕上加工を行うことができるため、放電加工の仕上加工を的確に行うことができる。
電極線1を構成する芯線2と内層3aと外層3bとは、それぞれ上述したような役割(機能)を有しているため、それらの役割を考慮して、内層3aと外層3bのそれぞれの厚さを設定することが重要である。
以下、電極線1を構成する内層3aと外層3bの厚さについて説明する。ここで、電極線1を構成する内層3aの厚さを、符号t1を付して厚さt1と称することとする。また、電極線1を構成する外層3bの厚さを、符号t2を付して厚さt2と称することとする。また、内層3aの厚さt1と外層3bの厚さt2との合計を、符号t3を付して合計厚さt3と称することとする。従って、t1+t2=t3の関係が成り立つ。厚さt1、厚さt2および合計厚さt3は、図2に示されている。なお、厚さt1は、ワイヤ放電加工に使用していない状態における電極線1の内層3aの厚さに対応し、厚さt2は、ワイヤ放電加工に使用していない状態における電極線1の外層3bの厚さに対応している。
電極線1の直径は、被加工物の加工形状などに応じて設定することができ、例えば0.1mm以上0.3mm以下とすることができる。内層3aと外層3bの合計厚さt3が厚いと、その分、電極線1を構成する芯線2の直径を小さくする必要がある。しかしながら、芯線2の直径を小さくすることは、電極線1の耐久性および真直性を低下させることにつながるため、望ましくない。このため、内層3aと外層3bの合計厚さt3は、厚くしすぎないことが望ましく、従って、限られた合計厚さt3を、内層3aと外層3bのそれぞれの役割に合わせて、内層3aの厚さt1と外層3bの厚さt2とに割り当てることが重要である。
上述のように、電極線1をワイヤ放電加工の仕上加工に使用する際には、電極線1の外表面が仕事関数の小さな外層3bで構成された状態で放電が行われるようにする必要があり、仕事関数が大きな内層3aが露出するのを防ぐ必要がある。一方、電極線1をワイヤ放電加工の荒加工に使用する際には、外層3bが消耗することで、仕事関数が大きな内層3aが露出したとしても問題はないが、内層3aが消耗することで芯線2が露出するのを防ぐ必要がある。このため、外層3bは、主として仕上加工のために設けられているが、仕上加工では放電に伴う電極線1の外表面の消耗は生じにくい。従って、外層3bの厚さt2はそれほど厚くしなくとも、仕上加工で外層3bの全厚みが消失するのを防止できる。このため、外層3bは、仕上加工での消耗量程度以上の厚さがあれば十分であり、それより厚くする必要はない。一方、内層3aは、主として荒加工のために設けられており、荒加工では放電に伴う電極線1の外表面の消耗が生じやすい。このため、内層3aの厚さt1はできるだけ厚くして、荒加工で内層3aの全厚みが消失するのを防止する(すなわち芯線2が露出するのを防止する)ことが望ましい。
このため、電極線1の外表面の消耗が生じにくい仕上加工用に設けられた外層3bは、ある程度薄くてもよく、一方、電極線1の外表面の消耗が生じやすい荒加工用に設けられた内層3aは、消耗しにくい(耐久性の高い)金属材料で構成するとともに、厚さt1を厚くすることが望ましい。従って、本実施の形態では、電極線1を構成する内層3aと外層3bとについて、内層3aの厚さt1を外層3bの厚さt2よりも厚くする(t1>t2)。これにより、内層3aと外層3bの合計厚さt3の過半(半分より多く)を内層3aの厚さt1に割り当てることができるため、電極線1をワイヤ放電加工の荒加工に使用した場合に、内層3aの全厚みが消失して芯線2が露出するのを防止することができ、荒加工を的確に行うことができる。
但し、電極線1を構成する外層3bの厚さt2については、電極線1をワイヤ放電加工の仕上加工に使用した場合に外層3bの全厚みが消失して内層3aが露出した状態になるのを防ぐのに必要な最低限度の厚さを確保する必要がある。なぜなら、外層3bの厚さt2があまりにも薄すぎると、仕上加工で外層3bの全厚みが消失して内層3aが露出した状態になる虞があるが、そのような状態では、内層3aの仕事関数が比較的大きいことから、放電が起こりにくくなり、仕上加工を的確に行えなくなる懸念があるからである。このため、本実施の形態では、外層3bの厚さt2は、1μm以上で、かつ5μm以下とする(1μm≦t2≦5μm)ことが好ましい。これにより、電極1をワイヤ放電加工の仕上加工に使用した場合に、外層3bの全厚みが消失して内層3aが露出した状態になるのを防止することができるため、仕上加工を的確に行うことができる。そして、外層3bが不必要に厚くなるのを防ぐことができるため、その分、内層3aの厚さt1を厚くすることができる。内層3aの厚さt1を厚くすることができることにより、電極線1をワイヤ放電加工の荒加工に用いた場合に、内層3aの全厚みが消失して芯線2が露出するのを防止することができるため、荒加工を的確に行うことができる。
このように、本実施の形態では、電極線1を構成する外層3bの厚さt2は、内層3aと外層3bの合計厚さt3の半分未満、好ましくは1〜5μm(1μm≦t2≦5μm)とし、内層3aと外層3bの合計厚さt3のうち、外層3bの厚さt2に割り当てた残りは、内層3aの厚さt1に割り当てる。
内層3aと外層3bの合計厚さt3を厚くすると、その分、電極線1を構成する芯線2の直径を小さくする必要がある。しかしながら、芯線2の直径を小さくすることは、電極線1の耐久性を低下させることにつながるため、望ましくない。このため、内層3aと外層3bの合計厚さt3は、厚くしすぎないことが望ましい。一方、合計厚さt3の過半は内層3aの厚さt1に割り当てることから、内層3aと外層3bの合計厚さt3を薄くしすぎると、内層3aの厚さt1が薄くなることになる。しかしながら、内層3aの厚さt1が薄くなると、ワイヤ放電加工の荒加工で内層3aの全厚みが消失して芯線2が露出する虞がある。このため、電極線1を構成する内層3aの厚さt1については、電極線1をワイヤ放電加工の荒加工に使用した場合に内層3aの全厚みが消失して芯線2が露出した状態になるのを防ぐのに必要な最低限度の厚さを確保する必要がある。
そこで、本実施の形態では、電極線1を構成する内層3aと外層3bの合計厚さt3は、30〜50μm(30μm≦t3≦50μm)とし、より好ましくは30〜40μm(30μm≦t3≦40μm)とする。内層3aと外層3bの合計厚さt3を30μm以上とし、その合計厚さt3のうち、過半(半分より多く)を内層3aの厚さt1に割り当て、残り(好ましくは1〜5μm)を外層3bの厚さt2に割り当てることにより、内層3aの厚さt1について、ワイヤ放電加工の荒加工で内層3aの全厚みが消失して芯線2が露出した状態になるのを防ぐのに必要な最低限度の厚さを確保することができる。これにより、電極1をワイヤ放電加工の荒加工に使用した場合に、内層3aの全厚みが消失して芯線2が露出した状態になるのを防止することができるため、荒加工を的確に行うことができる。
また、芯線2の直径が小さくなることは、電極線1の耐久性および真直性を低下させることにつながるため、望ましくない。そこで、本実施の形態では、内層3aと外層3bの合計厚さt3を50μm以下(より好ましくは40μm以下)としている。これにより、内層3aと外層3bの合計厚さt3が不必要に厚くなるのを防ぐことができるため、その分、芯線2の直径を大きくすることができる。このため、芯線2の直径を確保することができるので、電極線1の耐久性および真直性を向上させることができる。
以上の厚さの関係をまとめると、次のようになる。すなわち、電極線1を構成する内層3aと外層3bの合計厚さt3は、30〜50μm(30μm≦t3≦50μm)とし、より好ましくは30〜40μm(30μm≦t3≦40μm)とし、合計厚さt3のうち、過半を内層3aの厚さt1に割り当て、残り(好ましくは1〜5μm)を外層3bの厚さt2に割り当てる。このように、電極線1を構成する芯線2と内層3aと外層3bのそれぞれの役割を考慮して、芯線2の材料と、内層3aの材料と、外層3bの材料と、内層3aおよび外層3bの合計厚さt3と、内層3aの厚さt1と、外層3bの厚さt2とを設定する。これにより、電極線1は、ワイヤ放電加工の荒加工と仕上加工の両方に適した構造となり、共通の電極線1を、ワイヤ放電加工の荒加工と仕上加工のどちらにも使用できるとともに、荒加工と仕上加工のいずれに使用した場合でも、的確にワイヤ放電加工を行うことができるようになる。従って、電極線1は、荒加工と仕上加工のいずれにおいても好適に使用できる。このため、ワイヤ放電加工機の電極線を荒加工と仕上加工とで変更する(取り替える)必要がなくなり、ワイヤ放電加工を用いて種々の製品を製造する際に生産効率を向上させることができる。
次に、図3を参照して、ワイヤ放電加工用電極線(ここでは電極線1)の使用形態の一例について説明する。図3に示されるX方向およびY方向は、互いに直交する方向であり、Z方向は、X方向およびY方向の両方に直交する方向である。
図3に示されるように、ワイヤ放電加工機は、消耗部品であり交換可能なワイヤ放電加工用電極線(ここでは電極線1)と、電極線1をZ方向に延在するように張った状態で固定するためのロール(ローラ)12,13とを有している。また、図示はしていないが、ワイヤ放電加工機は、電極線1の周囲に、X方向およびY方向に動かすことが可能なテーブルを備えており、テーブル上には、被加工物(加工対象)11が固定されている。ロール12はテーブルおよび被加工物11のそれぞれの上に位置し、ロール13はテーブルおよび被加工物11のそれぞれの下に位置している。図3では、板状の被加工物11の上面から下面に貫通するスタート穴14が形成されており、ワイヤ放電を行って被加工物11のスタート穴14から所定の領域を加工した様子が示されている。図示はしていないが、被加工物11は、加工液中に浸漬されている。加工液は、例えば導電率が一定となっている液体であり、絶縁油またはイオン交換水などが用いられる。
ワイヤ放電加工機は、電極線1にパルス電圧を印加して電極線1と被加工物11との間で間欠的なパルス放電を発生させ、この時の熱的作用と衝撃力によって被加工物11を溶融・除去しながら被加工物11の加工を行うものである。ここでは、上記テーブルおよび被加工物11をX方向またはY方向に動かすことにより加工を行う。電極線1は、X方向およびY方向において移動せずに固定されているが、Z方向においては、加工作業中にロール12,13が回転することにより下方または上方に送り出される。これは、放電に伴う電極線1の消耗に起因して、加工精度の低下や電極線1の断線が生じるのを防ぐためである。
電極線1の構成は上述した通りであり、従って、電極線1は導電性を有する。また、被加工物11も導電性を有する導電性部材からなる。ワイヤ放電加工では、共に導電性を有する電極線1と被加工物11との間で放電を起こしながら、電極線1に対して被加工物11を動かす(走査させる)ことで、被加工物11を加工することができる。
荒加工と仕上加工とでは、電極線1への印加電圧などの条件が相違している。具体的には、ワイヤ放電加工では、ワイヤ放電加工用の電極線1にパルス電圧を印加することにより、電極線1と被加工物11との間で間欠的なパルス放電を発生させる。そして、荒加工時に電極線1に印加するパルス電圧よりも、仕上加工時に電極線1に印加するパルス電圧の方が、低い。
本実施の形態では、上述のように、電極線1を構成する芯線2、内層3aおよび外層3bのそれぞれの材料と厚さを工夫することにより、電極線1を、ワイヤ放電加工の荒加工と仕上加工のどちらにも使用可能とし、荒加工と仕上加工のいずれに使用した場合でも、ワイヤ放電加工を的確に行うことができるようにしている。このため、例えば、ワイヤ放電加工の荒加工が終了した後に、ワイヤ放電加工の仕上加工を開始するような場合であっても、電極線1を荒加工用から仕上加工用に交換する(入れ替える)必要がない。従って、電極線1を用いて被加工物11に対して荒加工を施した後、電極線1を交換することなく、すなわち電極線1を仕上加工用のワイヤ放電加工用電極線と入れ替えることなく、電極線1を用いて被加工物11に対して仕上加工を施すことができる。このため、ワイヤ放電加工を用いて種々の製品を製造する場合に生産効率を向上させることができる。また、ワイヤ放電加工用電極線を、荒加工用と仕上加工用との2つの用途に分けて管理することが不要になる。そのため、ワイヤ放電加工用電極線の必要な在庫を減らすことができ、また、在庫を管理する方法や手間も軽減される。
また、ロール12,13が回転することにより電極線1を下方または上方に送り出しながら、放電加工を行うため、電極線1のある部分が、荒加工と仕上加工の両方に使用されるわけではない。すなわち、電極線1は、荒加工と仕上加工のどちらにも使用可能であるが、荒加工で使用された部分の電極線1は、仕上加工では使用されず、また、仕上加工で使用された部分の電極線1は、荒加工では使用されない。荒加工と仕上加工のそれぞれにおいて、未使用の部分の電極線1が使用される。未使用の部分の電極線1は、内層3aと外層3bの材料と厚さが上述のように設定されていることにより、荒加工と仕上加工の両方に適した構造となっている。このため、未使用の部分の電極線1が、荒加工で使用されても、あるいは、仕上加工で使用されても、ワイヤ放電加工を的確に行うことができる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
1 ワイヤ放電加工用電極線(電極線)
2 芯線
3 被覆層
3a 内層
3b 外層
11 被加工物
12,13 ロール
14 スタート穴

Claims (7)

  1. 芯線と、
    前記芯線の外周を被覆する被覆層と、
    を備え、
    前記被覆層は、前記芯線の外周上に形成された第1層と、前記第1層上に形成された第2層とを有する積層膜からなり、
    前記第1層は、銅または鉄を主成分とする第1金属材料からなり、かつ、第1厚さを有し、
    前記第2層は、前記第1金属材料よりも仕事関数が小さい第2金属材料からなり、かつ、前記第1厚さよりも小さい第2厚さを有し、
    前記第1厚さと前記第2厚さとの合計は、30〜50μmである、ワイヤ放電加工用電極線。
  2. 請求項1記載のワイヤ放電加工用電極線において、
    前記第2金属材料は、亜鉛、マグネシウム、アルミニウムまたは錫を主成分とする、ワイヤ放電加工用電極線。
  3. 請求項1または2に記載のワイヤ放電加工用電極線において、
    前記第1厚さと前記第2厚さとの合計は、30〜40μmである、ワイヤ放電加工用電極線。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載のワイヤ放電加工用電極線において、
    前記第2金属材料の融点は、前記第1金属材料の融点よりも低い、ワイヤ放電加工用電極線。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載のワイヤ放電加工用電極線において、
    前記第1層の導電率は、5%IACS以上、70%IACS以下である、ワイヤ放電加工用電極線。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載のワイヤ放電加工用電極線において、
    前記芯線は、銅または鉄を主成分とする第3金属材料からなる、ワイヤ放電加工用電極線。
  7. 請求項1〜6の何れか1項に記載のワイヤ放電加工用電極線において、
    前記第2厚さは、1〜5μmである、ワイヤ放電加工用電極線。
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