JP2021130884A - ゴム−金属複合体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ブルームが生じにくい硫黄を用いて良好な金属接着性を発揮可能にしたゴム−金属複合体およびその製造方法の提供。【解決手段】金属部材11と被覆ゴム12とで構成されたゴム−金属複合体10において、金属部材11を少なくとも一部にオープン構造を含むスチールコードにし、被覆ゴム12を、ゴム成分に対して可溶性硫黄および不溶性硫黄を含む硫黄成分を必ず含み、任意でオイル成分が添加される不溶性硫黄組成物が配合されたゴム組成物で構成し、不溶性硫黄組成物に対して115℃±0.2℃かつ8分±5秒間の条件で熱転化処理を加えた後に熱転化せずに残存した不溶性硫黄の質量を測定し、不溶性硫黄組成物の質量に対する熱転化処理後の不溶性硫黄の質量の割合として算出される不溶性硫黄含有率I115×8と不溶性硫黄組成物の配合量aとオイル成分の含有率RoとがI115×8≧[a×(1−Ro)−1.5]/aの関係を満たすようにする。【選択図】図2
Description
本発明は、オープン構造のスチールコードと被覆ゴムとからなるゴム−金属複合体およびその製造方法に関する。
空気入りタイヤにおいては、金属部材(スチールコードなど)とそれを被覆する被覆ゴムとからなるゴム−金属複合体が使用される。このようなゴム―金属複合体に使用されるスチールコードは、スチールコードの長手方向に直交する断面において隣り合う素線どうしの間に隙間を有することがある(即ち、少なくとも一部に所謂オープン構造を含んでいる)。オープン構造は、素線どうしの間に隙間を有するため、素線間へのゴム浸透が良好であり、ゴム−金属複合体に使用される場合には、ゴムと金属との接触面積が大きくなり初期接着性に優れるという利点がある。また、素線どうしの隙間がゴムで埋められるために酸素や水分の浸透が防止され耐酸化劣化接着性・耐水接着性にも優れるという利点がある。
一方で、ゴム−金属複合体では、加硫前の保管時に被覆ゴム中の硫黄のブルームによって被覆ゴムと金属部材との接着界面に硫黄が析出する虞があり、このブルームに起因して被覆ゴムと金属部材との接着が阻害されることがある。特に、前述のオープン構造では、前述の素線どうしの隙間を通じてスチールコード内にゴムが浸透してゴムと金属との接触面積が大きいため、却ってブルームに起因する接着阻害の影響がより顕著に発生するという問題がある。
このようなブルームに起因する接着阻害を抑制するために、ゴム−金属複合体を構成する被覆ゴムに配合される硫黄として、硫黄のブルームが生じにくい不溶性硫黄を用いることが提案されている(例えば特許文献1を参照)。ところが、不溶性硫黄は加熱および経時変化によって可溶性硫黄に転化する性質を有する。そのため、一般的に、市販の不溶性硫黄中には微量の可溶性硫黄が含まれており、また、製品ごとに安定性(可溶性硫黄への転化のしにくさ)が異なる傾向がある。不溶性硫黄の安定性の指標としては、例えば、JIS K6222‐1:2010に準拠して、熱安定性(105℃15分熱安定性)、すなわち熱転化処理を加える前の不溶性硫黄の含有率と105℃かつ15分間の条件で熱転化処理を加えた後に熱転化せずに残存した不溶性硫黄の含有率(以下、「不溶性硫黄含有率I105×15 」という)との比を用いることが知られている。しかしながら、この方法を用いても、ゴム金属複合体を構成する被覆ゴムに配合するのに適した品質の不溶性硫黄を精度よく判定することは難しかった。そのため、ブルームに起因する接着不良が生じ難いゴム‐金属複合体を安定して製造することも困難であった。
本発明の目的は、ブルームが生じにくい硫黄を用いて良好な金属接着性を発揮可能にしたゴム−金属複合体およびその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成する本発明のゴム−金属複合体は、金属部材と、前記金属部材を被覆する被覆ゴムとで構成されたゴム−金属複合体であって、前記金属部材は、複数本の素線が撚り合わされた少なくとも一部にオープン構造を含むスチールコードであり、前記スチールコードの長手方向と直交する断面は偏平形状を有しており、前記被覆ゴムは、ゴム成分に対して可溶性硫黄および不溶性硫黄を含む硫黄成分を必ず含み、任意でオイル成分が添加される不溶性硫黄組成物が配合されたゴム組成物からなり、前記不溶性硫黄組成物の不溶性硫黄含有率I115×8と、前記ゴム成分100質量部に対する前記不溶性硫黄組成物の配合量a[質量部]と、前記不溶性硫黄組成物における前記オイル成分の含有率RoとがI115×8≧[a×(1−Ro)−1.5]/aの関係を満たし、前記不溶性硫黄含有率I115×8は、前記不溶性硫黄組成物に対して115℃±0.2℃かつ8分±5秒間の条件で熱転化処理を加えた後に熱転化せずに残存した不溶性硫黄の質量を測定し、前記不溶性硫黄組成物の質量に対する熱転化処理後の前記不溶性硫黄の質量の割合として算出されることを特徴とする。
また、上記目的を達成する本発明のゴム−金属複合体の製造方法は、金属部材と、前記金属部材を被覆する被覆ゴムとで構成されたゴム−金属複合体の製造方法であって、前記金属部材として、複数本の素線が撚り合わされた少なくとも一部にオープン構造を含むスチールコードを使用し、前記被覆ゴムとして、ゴム成分に対して可溶性硫黄および不溶性硫黄を含む硫黄成分を必ず含み、任意でオイル成分が添加される不溶性硫黄組成物が配合されたゴム組成物を用い、前記ゴム組成物に配合する前記不溶性硫黄組成物として、前記不溶性硫黄組成物に対して115℃±0.2℃かつ8分±5秒間の条件で熱転化処理を加えた後に熱転化せずに残存した不溶性硫黄の質量を測定し、前記不溶性硫黄組成物の質量に対する熱転化処理後の前記不溶性硫黄の質量の割合として算出される不溶性硫黄含有率I115×8と、前記ゴム成分100質量部に対する前記不溶性硫黄組成物の配合量a[質量部]と、前記不溶性硫黄組成物における前記オイル成分の含有率RoとがI115×8≧[a×(1−Ro)−1.5]/aの関係を満たすものを選別して使用することを特徴とする。
本発明の発明者は、不溶性硫黄組成物の品質の判定手法について鋭意研究した結果、上述の不溶性硫黄含有率I115×8は、ブルームの生じ難さや金属接着性に対して、従来一般的に用いられている105℃15分熱安定性よりも密接な相関関係があることを知見した。そして、不溶性硫黄組成物の不溶性硫黄含有率I115×8と、ゴム成分100質量部に対する不溶性硫黄組成物の配合量a[質量部]と、不溶性硫黄組成物におけるオイル成分の含有率Roとが上述の関係を満たすようにすることで、ゴム組成物の金属部材に対する接着性や金属接着性を向上できることを知見した。そのため、不溶性硫黄含有率I115×8が上述の関係を満たす硫黄を配合したゴム組成物を、金属部材(少なくとも一部にオープン構造を含むスチールコード)を被覆ゴムで被覆して構成されたゴム−金属複合体の被覆ゴムに用いることで、ブルームを抑制して、優れた金属接着性を発揮することが可能になる。
本発明においては、スチールコードが、複数本の素線が撚り合わされた単層撚りオープン構造を有する仕様にすることもできる。この仕様では、スチールコードを構成する素線の本数が3本〜8本であることが好ましい。また、スチールコードの長手方向と直交する断面が偏平形状を有し、偏平形状における短径Aと長径Bとの比B/Aが1.2〜2.5であることが好ましい。このような構造にすることで、スチールコードへのゴムの浸透性を良好に確保しながら金属接着性を向上するには有利になる。
本発明においては、スチールコードが、N本のコアフィラメントとM本のシースフィラメントとを撚り合わせたN+M構造を有する仕様にすることもできる。この仕様では、コアフィラメントの本数Nが2〜3本、シースフィラメントの本数Mが2〜9本であることが好ましい。また、スチールコードにおけるコアフィラメントの素線径DC とシースフィラメントの素線径DS とが1<DC /DS <1.3の関係を満たすことが好ましい。このような構造にすることで、スチールコードへのゴムの浸透性を良好に確保しながら金属接着性を向上するには有利になる。
本発明においては、スチールコードが、1本のコアフィラメントとX本のシースフィラメントとからなるY本のストランドを撚り合わせたY×(1+X)構造を有する仕様にすることもできる。この仕様では、シースフィラメントの本数Xが5〜6本、ストランドの本数Yが3〜7本であることが好ましい。また、スチールコードにおけるコアフィラメントの素線径dC とシースフィラメントの素線径dS とが1.1<dC /dS <1.3の関係を満たすことが好ましい。このような構造にすることで、スチールコードへのゴムの浸透性を良好に確保しながら金属接着性を向上するには有利になる。
上述のゴム−金属複合体を用いた空気入りタイヤは、ゴム−金属複合体の優れた金属接着性に基づいて、優れた耐久性能を発揮することができる。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
一般的な空気入りタイヤは、図1に示すように、トレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。図1において、符号CLはタイヤ赤道を示す。図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。以下、図1を用いた説明は基本的に図示の子午線断面形状に基づくが、各タイヤ構成部材はいずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
左右一対のビード部3間にはタイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含むカーカス層4が装架されている。各ビード部には、ビードコア5が埋設されており、そのビードコア5の外周上に断面略三角形状のビードフィラー6が配置されている。カーカス層4は、ビードコア5の廻りにタイヤ幅方向内側から外側に折り返されている。これにより、ビードコア5およびビードフィラー6はカーカス層4の本体部(トレッド部1から各サイドウォール部2を経て各ビード部3に至る部分)と折り返し部(各ビード部3においてビードコア5の廻りに折り返されて各サイドウォール部2側に向かって延在する部分)とにより包み込まれている。
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図示の例では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。
更に、ベルト層7の外周側には、ベルト補強層8が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する補強コードを含む。ベルト補強層8において、補強コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°〜5°に設定されている。図示の例では、ベルト補強層8は、ベルト層7の全域を覆うフルカバー層8aと、ベルト層7の両端部を局所的に覆う一対のエッジカバー層8bとで構成される。
ベルト補強層8を構成する補強コードは一般的に有機繊維コードが用いられるが、カーカス層4を構成する補強コードやベルト層7を構成する補強コードについてはスチールコードが用いられることがある。本発明のゴム−金属複合体は、このように補強コードとしてスチールコードが用いられる各層に用いることができる。図示のカーカス層4やベルト層7の他にもゴム中にスチールコードが埋設されて構成された補強層を備える場合は、それらの層に本発明のゴム−金属複合体を用いることができる。
本発明のゴム−金属複合体10は、図2〜4に示すように、金属部材(スチールコード11)と、このスチールコード11を被覆する被覆ゴム12とで構成される。
本発明において、スチールコード11は、複数本の素線が撚り合わされて構成され、少なくとも一部にオープン構造を含む。オープン構造とは、図示のように長手方向に直交する断面において、隣り合う素線どうしの少なくとも一部に隙間を有する構造である。尚、本発明は、ゴム−金属複合体におけるゴムと金属との接着界面で効力を発揮するものであるので、オープン構造を有さない場合であっても、スチールコード11の最外面とゴムの接着界面において効果を発揮する。但し、前述のように、オープン構造では素線どうしの隙間を通じてスチールコード内にゴムが浸透してゴムと金属との接触面積が大きいため、ブルームに起因する接着阻害の影響がより顕著に発生するため、本発明はオープン構造の場合により効力を発揮するものである。
図2の例では、スチールコード11は、複数本の素線11aが撚り合わされた単層撚りオープン構造(図示のように素線11aの間に隙間を有する単層撚り構造)を有する。単層撚りとは、1本または複数本の素線からなる内層とその周囲に配された1本または複数本の素線からなる外層を撚り合わせて構成された複撚り構造ではなく、図示のように複数本の素線11aからなる層が1層であることを意味する。素線11aの本数は特に限定されないが、図2の単層撚りオープン構造では、好ましくは3〜8本(図示の例は6本)であるとよい。
図2の単層撚りオープン構造の場合、スチールコード11は、長手方向と直交する断面形状が偏平形状を有しているとよい。このような素線数や断面形状を採用することで上述のオープン構造を確実に形成することができる。特に、本発明のスチールコード11は、長手方向に沿って同一の偏平形状を有しており、任意の位置における断面形状(偏平形状)が同一であるとよい。尚、偏平形状とは、図示のように素線11aの長手方向と直交する断面における外接円(図中の破線)が楕円形などの偏平な形状であることを意味する。スチールコード11の長手方向と直交する断面の偏平形状における短径Aと長径Bとの比B/Aが好ましくは1.2〜2.5、より好ましくは1.3〜2.4であるとよい。このような偏平形状のスチールコード11は、ゴム−金属複合体10(スチールコード11が埋設されたゴム層)の厚み方向が短径Aとなるように配設することが好ましい。
図3の例では、スチールコード11は、N本の素線(コアフィラメント11b)からなる内層とその周囲に配されたM本の素線(シースフィラメント11c)からなる外層を撚り合わせた複撚り構造(N+M構造)を有する。この場合も、図示のように素線(コアフィラメント11b、シースフィラメント11c)の間に隙間を有して、オープン構造が形成されている。各層における素線の本数は特に限定されないが、図3のN+M構造の場合、コアフィラメント11bの本数Nが好ましくは2〜3本(図示の例は3本)、シースフィラメント11cの本数Mが好ましくは2〜9本(図示の例は8本)であるとよい。
図3のN+M構造の場合、上述のオープン構造が確実に形成されるように、シースフィラメント11cの本数Mを、N本のコアフィラメントに接触しながらその周囲を完全に覆う本数よりも少なくした仕様にすることもできる。この場合、M本のシースフィラメント11cがコアフィラメント11bを完全に覆わないためオープン構造が形成される。或いは、M本のシースフィラメント11cのうち1本以上M本未満に癖付けを施した仕様にすることもできる。この場合、癖付けが施されたシースフィラメント11cによってシースフィラメント11cの間に十分な隙間が形成されるためオープン構造が形成される。
或いは、図3のN+M構造の場合も、図2の単層撚りオープン構造の場合と同様に、スチールコード11の長手方向と直交する断面形状を偏平形状にしてもよい。N+M構造の場合も、スチールコード11は、長手方向に沿って同一の偏平形状を有し、任意の位置における断面形状(偏平形状)が同一であるとよい。N+M構造の場合も、偏平形状のスチールコード11は、ゴム−金属複合体10(スチールコード11が埋設されたゴム層)の厚み方向が短径Aとなるように配設することが好ましい。但し、N+M構造の場合、中心にコアフィラメント11bが存在するため、スチールコード11の長手方向と直交する断面の偏平形状における短径Aと長径Bとの比B/Aは好ましくは1.1〜1.5、より好ましくは1.1〜1.3であるとよい。
図3のN+M構造の場合、スチールコード11におけるコアフィラメント11bの素線径DC とシースフィラメント11cの素線径DS とが好ましくは1<DC /DS <1.3の関係を満たすとよい。このようにコアフィラメント11bの素線径を適度に大きくすることで、シースフィラメント11cどうしの隙間が十分に確保されるので、スチールコード11へのゴムの浸透性を良好に確保しながら金属接着性を向上するには有利になる。DC /DS ≦1の関係であると、シースフィラメント11cの間に隙間が形成されにくくなり、スチールコード11へのゴムの浸透性を十分に確保することが難しくなる。DC /DS ≧1.3の関係であると、コアフィラメント11bとシースフィラメント11cの素線径の差が大きくなりすぎて、スチールコード11の撚り構造が不安定になる虞がある。
図4の例では、スチールコード11は、1本の素線(コアフィラメント11d)からなる内層とその周囲に配されたX本の素線(シースフィラメント11e)からなる外層を撚り合わせた構造のストランド11fを含み、このストランド11fがY本撚り合わせれて構成されたY×(1+X)構造を有する。この場合も、図示のように素線(コアフィラメント11d、シースフィラメント11e)の間に隙間を有して、オープン構造が形成されている。各層における素線の本数は特に限定されないが、図4のY×(1+X)構造の場合、シースフィラメント11eの本数Xが好ましくは5〜6本(図示の例は6本)、ストランド11fの本数Yが好ましくは3〜7本(図示の例は3本)であるとよい。
図4のY×(1+X)構造の場合、スチールコード11におけるコアフィラメント11dの素線径dC とシースフィラメント11eの素線径dS とが好ましくは1.1<dC /dS <1.3の関係を満たすとよい。このようにコアフィラメント11dの素線径を適度に大きくすることで、シースフィラメント11eどうしの隙間が十分に確保されるので、スチールコード11へのゴムの浸透性を良好に確保しながら金属接着性を向上するには有利になる。尚、dC /dS ≦1.1の関係であると、シースフィラメント11eの間に隙間が形成されにくくなり、スチールコード11へのゴムの浸透性を十分に確保することが難しくなる。dC /dS ≧1.3の関係であると、コアフィラメント11dとシースフィラメント11eの素線径の差が大きくなりすぎて、スチールコード11の撚り構造が不安定になる虞がある。
被覆ゴム12は、ゴム成分に対して硫黄(不溶性硫黄組成物)が配合されたゴム組成物からなる。被覆ゴム12において、ゴム成分はジエン系ゴムであり、空気入りタイヤに使用されるゴム−金属複合体(被覆ゴム12)用のゴム組成物として一般的な材料を使用することができる。例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴムを例示することができる。これらジエン系ゴムは、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
被覆ゴム12には、タイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤、例えば、後述の硫黄(不溶性硫黄組成物)を除く加硫又は架橋剤、加硫促進剤、カーボンブラック、シリカ、クレー、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、亜鉛華などの各種無機充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、シランカップリング剤などを配合することができる。このような添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は、ゴム−金属複合体の使用部位、目的等に応じて、従来の一般的な配合量とすることができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどを使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
被覆ゴム12には、架橋剤として不溶性硫黄組成物が配合される。ゴム成分100質量部に対する不溶性硫黄組成物の配合量aは特に限定されないが、一般的な被覆ゴム12の場合は、例えば硫黄分として3質量部〜10質量部、好ましくは4質量部〜8質量部である。不溶性硫黄組成物は、図5に示すように、可溶性硫黄および不溶性硫黄を含む硫黄成分と、オイル成分とで構成される。可溶性硫黄は、トルエンまたは二硫化炭素に可溶な結晶形の硫黄であり、ゴムへの溶解性が不溶性硫黄に比べて高く、ブルームを生じやすい傾向がある。不溶性硫黄は、トルエンまたは二硫化炭素に不溶な無定形の高分子硫黄であり、ゴムに溶解せず分散するため、ブルームを生じない特性を有する。不溶性硫黄は、加熱および経時変化によって可溶性硫黄に転化する性質を有する。オイル成分は、任意に配合される成分であり、使用時に硫黄が飛散することを防止する目的で添加される成分である。
不溶性硫黄組成物中の各成分の割合(含有率)は特に限定されないが、オイル成分の含有率Ro(不溶性硫黄組成物の質量に対するオイル成分の質量の割合)は例えば0質量%〜30質量%、好ましくは10質量%〜30質量%、可溶性硫黄の含有率Rs(不溶性硫黄組成物の質量に対する可溶性硫黄の質量の割合)は例えば0.5質量%〜30質量%、不溶性硫黄の含有率Ri(不溶性硫黄組成物の質量に対する不溶性硫黄の質量の割合)は例えば55質量%〜90質量%である。
不溶性硫黄組成物においては、不溶性硫黄の含有率が多いほど、ブルームが生じ難いので、硫黄のブルームに起因する接着不良は生じ難く、被覆ゴム12に配合される硫黄として適している。また、加熱および経時変化による可溶性硫黄への転化が生じにくい(安定性が高い)ほど、金属接着用ゴム組成物に配合される硫黄として適している。更に、一般に「不溶性硫黄」として流通している製品は、基本的に油処理が施された不溶性硫黄であり、且つ、一定量の可溶性硫黄を含んでいる(つまり、本発明における「不溶性硫黄組成物」に該当する)。そのため、被覆ゴム12の高品質化のためには、ブルームが発生しにくく、金属接着用ゴム組成物に用いた際に良好な金属接着性が得られる硫黄を選別することが求められる。本発明のゴム−金属複合体(被覆ゴム12)は、後述の方法によって、このような高品質の硫黄を選別して使用したものである。
本発明では、上述の不溶性硫黄組成物に対して115℃±0.2℃かつ8分±5秒間の条件で熱転化処理を加え、その後に熱転化せずに残存した不溶性硫黄の質量を測定し、不溶性硫黄含有率I115×8(不溶性硫黄組成物の質量に対する熱転化処理後の不溶性硫黄の質量の割合)に基づいて、不溶性硫黄組成物をゴム−金属複合体の被覆ゴムに配合することの可否が判定されている。具体的には、上述の不溶性硫黄組成物の配合量aと、オイル成分の含有率Roと、不溶性硫黄含有率I115×8とがI115×8≧[a×(1−Ro)−1.5]/aの関係を満たす上述の熱転化処理後の可溶性硫黄の量が1.5質量部以下である不溶性硫黄組成物を使用する。尚、前述の説明では、オイル成分の含有率Roの単位を「質量%」で示したが、この関係式におけるRoは百分率ではなく割合の数値(前述の質量%の100分の1)を用いている(即ち、Roは0以上1未満の実数である)。
特に、熱転化処理は、例えば以下の手順で行うことができる。先ず、金属接着用ゴム組成物への配合の可否を判定する対象の不溶性硫黄組成物(以下、試料という)を最低10g用意し、これを混ぜ合わせて均質にする。次に、ガラス製試験管に流動パラフィンを30cm3 注ぎ入れて、撹拌子を入れる。そして、試験管を115℃±0.2℃に保った恒温槽に入れる。このとき、試験管はマグネチックスターラの中央に設置し、少なくとも10cmの深さまで恒温槽に浸ける。15分後、1000±50mgの試料を速やかに加え、直ちにストップウォッチで時間の測定を開始する。8分±5秒後に、試験管を恒温槽から取り出し、直ちに氷水で満たした水浴に浸けて1分間かき混ぜる。尚、この手順は一例であり、不溶性硫黄組成物に対して115℃±0.2℃かつ8分±5秒間の条件で熱転化処理を加えられる方法であれば、熱転化処理の具体的な方法は上記の例に限定されない。
また、熱転化処理後の不溶性硫黄の質量は、例えば以下の手順で測定することができる。上述の熱転化処理を終えた試験管に、二硫化炭素を50cm3 加え、マグネチックスターラ上に試験管を置き、3分間かき混ぜる。ガラス濾過器を吸引瓶に載せ、熱転化処理を終えた試料(先に調製した流動パラフィンと不溶性硫黄組成物(試料)との混合物)をガラス濾過器へ傾斜法で注ぎ、濾過すると共に,引き続き20cm3 の二硫化炭素で5回洗浄する。濾過するときに,不溶性硫黄の冷却による転化を防ぐため,ガラス濾過器内の二硫化炭素を切らさないように注意しながら吸引する。最後の洗浄の後、ガラス濾過器を吸引して、できる限り乾燥させる。その後、ガラス濾過器を80℃の乾燥器で1時間乾燥させてから、デシケータ中で冷却して、残渣(熱転化せずに残存した不溶性硫黄)の質量を量る。尚、この手順は一例であり、熱転化処理後の不溶性硫黄の質量を正確に測定できる方法であれば、具体的な方法は上記の例に限定されない。
不溶性硫黄含有率I115×8は、上述のように不溶性硫黄組成物の質量に対する熱転化処理後の不溶性硫黄の質量の割合であるので、熱転化処理に使用した不溶性硫黄(試料)の質量(1000±50mg)に対する残渣(熱転化せずに残存した不溶性硫黄)の質量の割合が不溶性硫黄含有率I115×8となる。この不溶性硫黄含有率I115×8が、判定対象の不溶性硫黄組成物を配合する金属接着用ゴム組成物の種類や目的に応じて設定される条件(即ち、上述の関係式)を満たせば、不溶性硫黄の含有率が高く、安定性に優れるので、被覆ゴム12を構成するゴム組成物に好適に用いることができると判定される。
本発明の発明者は、硫黄の選別方法について鋭意研究した結果、上述の不溶性硫黄含有率I115×8は、ブルームの生じ難さや金属接着性に対して、従来一般的に用いられている105℃15分熱安定性よりも密接な相関関係があることを知見した。そのため、不溶性硫黄含有率I115×8(特に、上述の関係式)に基づいて、不溶性硫黄組成物をゴム−金属複合体の被覆ゴム12に配合することの可否を判定することで、ゴム−金属複合体の被覆ゴム12を構成するゴム組成物に配合するのに適した品質の硫黄を精度よく選別することが可能になり、選別された硫黄を用いることで、優れた接着性能を有する被覆ゴム12を得ることが可能になる。
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
製造者および製品番号が同じ4種類の不溶性硫黄組成物(高熱安定性(HS)グレードの「不溶性硫黄」として市販される製品、オイル量:20質量%)を、ロット別にサンプルA〜Dとした。また、サンプルCに熱安定処理を施したもの(100質量部のサンプルCに対して0.2質量部のN−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドを添加)をサンプルC′とした。これら5種類の不溶性硫黄組成物について、熱転化処理前の不溶性硫黄含有率、105℃かつ15分間の条件の熱転化処理後の不溶性硫黄含有率、115℃かつ8分間の条件の熱転化処理後の不溶性硫黄含有率を測定した。
熱転化処理前の不溶性硫黄含有率は、JIS K6222−1:2010の7.3法に準拠して求めた全試料(不溶性硫黄組成物)に対する不溶性硫黄の含有量である。105℃かつ15分間の条件の熱転化処理後の不溶性硫黄含有率は、JIS K6222−1:2010の8.2.4法に準拠して105℃かつ15分間の条件で熱転化処理を施した後の、試料(不溶性硫黄組成物)に対する不溶性硫黄の含有量である。115℃かつ8分間の条件の熱転化処理後の不溶性硫黄含有率は、上述の本発明の判定方法に従って測定した115℃かつ8分間の条件で熱転化処理を施した後の、試料(不溶性硫黄組成物)に対する不溶性硫黄の含有量である。
いずれのサンプルについても、被覆ゴムを構成するゴム組成物に配合する際の不溶性硫黄組成物の配合量a(ゴム成分100質量部に対する配合量)は7.5質量部とした。尚、被覆ゴムを構成するゴム組成物に配合する他の材料の配合量は表2に示した。また、上述のように、すべての例でオイル成分の含有率Roは20質量%である。これらの値から、閾値を[a×(1−Ro)−1.5]/a=[7.5×(1−0.2)−1.5]/7.5=0.6に設定した。即ち、熱転化処理後の不溶性硫黄含有率が閾値「0.6」よりも大きければ被覆ゴムとして好適であり、閾値「0.6」よりも小さければ被覆ゴムとして好適でないと判定した。言い換えると、熱転化処理後の可溶性硫黄の量が1.5質量部以下であるか否かを判定基準とした。
表1には、熱転化処理前の不溶性硫黄含有率に対する各条件での熱転化処理後の不溶性硫黄含有率の割合を熱安定性として併せて示した。また、105℃かつ15分間の条件の熱転化処理後の不溶性硫黄含有率I105×15 と閾値との大小関係、115℃かつ8分間の条件の熱転化処理後の不溶性硫黄含有率I115×8と閾値との大小関係も併せて示した(I105×15 ,I115×8が閾値よりも大きい場合を「○」、小さい場合を「×」で示した)。
これらサンプルA〜DおよびC′の硫黄(不溶性硫黄組成物)を用いた表2〜4の配合からなる被覆ゴムと、表2〜4に記載のスチールコードを用いて、ゴム−金属複合体を作製し、下記に示す方法により、剥離力(条件1〜3)およびブルーム性の評価を行った。
尚、表2は、スチールコードとして単層撚りのコードを用いた場合であり、コードの構成と偏平比B/Aを設定した。表2では、これらスチールコードの特徴と、上述の硫黄の種類を異ならせて、基準例1、実施例1〜3,比較例1〜2のゴム−金属複合体を作成した。表3は、スチールコードとしてN+M構造のコードを用いた場合であり、コードの構成、偏平比B/A、シースフィラメントの癖付けの有無、コアフィラメントの素線径DC とシースフィラメントの素線径DS との比DC /DS をそれぞれ設定した。表3では、これらスチールコードの特徴と、上述の硫黄の種類を異ならせて、基準例10、実施例11〜16,比較例11〜13のゴム−金属複合体を作成した。表4は、スチールコードとしてY×(1+X)構造のコードを用いた場合であり、コードの構造、コアフィラメントの素線径dC とシースフィラメントの素線径dS との比dC /dS を設定した。表4では、これらスチールコードの特徴と、上述の硫黄の種類を異ならせて、基準例20、実施例21〜24,比較例21〜23のゴム−金属複合体を作成した。
剥離力(条件1)
各被覆ゴムをスチールコードと圧延して得た2枚のゴム−金属複合体を、スチールコードの延長方向が90°ずれるように積層して貼り合わせた後に150℃、30分間加硫して試験片を作製した。そして、この試験片を構成する2枚のゴム−金属複合体を剥離速度50mm/分の条件で剥離する際の単位幅当たりの力(剥離力[kN/m])を測定した。評価結果は、表2については基準例1、表3については基準例10、表4については基準例20を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど上記の条件における剥離力が大きく、初期性能における金属接着性に優れることを意味する。
各被覆ゴムをスチールコードと圧延して得た2枚のゴム−金属複合体を、スチールコードの延長方向が90°ずれるように積層して貼り合わせた後に150℃、30分間加硫して試験片を作製した。そして、この試験片を構成する2枚のゴム−金属複合体を剥離速度50mm/分の条件で剥離する際の単位幅当たりの力(剥離力[kN/m])を測定した。評価結果は、表2については基準例1、表3については基準例10、表4については基準例20を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど上記の条件における剥離力が大きく、初期性能における金属接着性に優れることを意味する。
剥離力(条件2)
各被覆ゴムをスチールコードと圧延して得た2枚のゴム−金属複合体を、スチールコードの延長方向が90°ずれるように積層して貼り合わせた後に150℃、30分間加硫して試験片を作製し、その後、濃度20%、温度30℃の塩水に浸して14日放置した。そして、この試験片を構成する2枚のゴム−金属複合体を剥離速度50mm/分の条件で剥離する際の単位幅当たりの力(剥離力[kN/m])を測定した。評価結果は、表2については基準例1、表3については基準例10、表4については基準例20を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど上記の条件における剥離力が大きく、タイヤ走行後における金属接着性に優れることを意味する。
各被覆ゴムをスチールコードと圧延して得た2枚のゴム−金属複合体を、スチールコードの延長方向が90°ずれるように積層して貼り合わせた後に150℃、30分間加硫して試験片を作製し、その後、濃度20%、温度30℃の塩水に浸して14日放置した。そして、この試験片を構成する2枚のゴム−金属複合体を剥離速度50mm/分の条件で剥離する際の単位幅当たりの力(剥離力[kN/m])を測定した。評価結果は、表2については基準例1、表3については基準例10、表4については基準例20を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど上記の条件における剥離力が大きく、タイヤ走行後における金属接着性に優れることを意味する。
剥離力(条件3)
各被覆ゴムスチールコードと圧延して得た2枚のゴム−金属複合体を、スチールコードの延長方向が90°ずれるように積層して貼り合わせた後に、温度30℃かつ相対湿度90%のチャンバー内に14日放置し、その後、150℃、30分間加硫して試験片を作製した。そして、この試験片を構成する2枚のゴム−金属複合体を剥離速度50mm/分の条件で剥離する際の単位幅当たりの力(剥離力[kN/m])を測定した。評価結果は、表2については基準例1、表3については基準例10、表4については基準例20を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど上記の条件における剥離力が大きく、ゴム−金属複合体の未加硫半製品における貯蔵安定性に優れることを意味する。
各被覆ゴムスチールコードと圧延して得た2枚のゴム−金属複合体を、スチールコードの延長方向が90°ずれるように積層して貼り合わせた後に、温度30℃かつ相対湿度90%のチャンバー内に14日放置し、その後、150℃、30分間加硫して試験片を作製した。そして、この試験片を構成する2枚のゴム−金属複合体を剥離速度50mm/分の条件で剥離する際の単位幅当たりの力(剥離力[kN/m])を測定した。評価結果は、表2については基準例1、表3については基準例10、表4については基準例20を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど上記の条件における剥離力が大きく、ゴム−金属複合体の未加硫半製品における貯蔵安定性に優れることを意味する。
ブルーム性
上述の剥離力(湿熱劣化後)の試験における加硫前に、ブルームの状態を目視で判定した。評価結果は、ブルームが生じていた場合を「×」、ブルームが生じていない場合を「○」で示した。
上述の剥離力(湿熱劣化後)の試験における加硫前に、ブルームの状態を目視で判定した。評価結果は、ブルームが生じていた場合を「×」、ブルームが生じていない場合を「○」で示した。
尚、表2〜4において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、タイ国製RSS#3
・SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1502
・CB:カーボンブラック、東海カーボン社製SeastKH
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・老化防止剤:Eastman Chemical社製Santoflex 6PPD
・ステアリン酸コバルト:DIC社製ステアリン酸コバルト
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーDZ
・NR:天然ゴム、タイ国製RSS#3
・SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1502
・CB:カーボンブラック、東海カーボン社製SeastKH
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・老化防止剤:Eastman Chemical社製Santoflex 6PPD
・ステアリン酸コバルト:DIC社製ステアリン酸コバルト
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーDZ
表1から明らかなように、105℃かつ15分間の条件で熱転化処理を施した後の熱安定性(従来の105℃15分熱安定性)に基づくと、サンプルA〜DおよびC′はいずれもゴム−金属複合体の被覆ゴムとして好適であると判定された。一方、本発明の115℃かつ8分間の条件で熱転化処理を施した後の不溶性硫黄含有量に基づくと、サンプルA,B,C′がゴム−金属複合体の被覆ゴムとして好適であり、サンプルC,Dは好適でないと判定された。
これに対して、表2から明らかなように、実施例1〜3は、115℃かつ8分間の条件で熱転化処理を施した後の不溶性硫黄含有量に基づいて好適と判定された硫黄(サンプルA,B,C′)を用いているので、基準例1と比較して、ブルーム性および剥離力(条件1〜3)の試験において良好な結果を得ることができた。一方、比較例1,2は、従来の105℃15分熱安定性に基づいた判定では好適と判定されたものの、115℃かつ8分間の条件で熱転化処理を施した後の不溶性硫黄含有量に基づくと不適切と判定された硫黄(サンプルC,D)を用いているので、ブルーム性が悪化し、条件1,3の剥離力が低下した。
同様に、表3から明らかなように、実施例11〜16は、115℃かつ8分間の条件で熱転化処理を施した後の不溶性硫黄含有量に基づいて好適と判定された硫黄(サンプルA,B,C′)を用いているので、基準例10と比較して、ブルーム性および剥離力(条件1〜3)の試験において良好な結果を得ることができた。一方、比較例11〜13は、従来の105℃15分熱安定性に基づいた判定では好適と判定されたものの、115℃かつ8分間の条件で熱転化処理を施した後の不溶性硫黄含有量に基づくと不適切と判定された硫黄(サンプルC,D)を用いているので、ブルーム性が悪化し、条件3の剥離力が低下した。
同様に、表4から明らかなように、実施例21〜24は、115℃かつ8分間の条件で熱転化処理を施した後の不溶性硫黄含有量に基づいて好適と判定された硫黄(サンプルA,B,C′)を用いているので、基準例20と比較して、ブルーム性および剥離力(条件1〜3)の試験において良好な結果を得ることができた。一方、比較例21〜23は、従来の105℃15分熱安定性に基づいた判定では好適と判定されたものの、115℃かつ8分間の条件で熱転化処理を施した後の不溶性硫黄含有量に基づくと不適切と判定された硫黄(サンプルC,D)を用いているので、ブルーム性が悪化し、条件3の剥離力が低下した。
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトカバー層
10 ゴム−金属複合体
11 金属部材(スチールコード)
11a 素線
11b,11d コアフィラメント
11c,11e シースフィラメント
11f ストランド
12 被覆ゴム
CL タイヤ赤道
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトカバー層
10 ゴム−金属複合体
11 金属部材(スチールコード)
11a 素線
11b,11d コアフィラメント
11c,11e シースフィラメント
11f ストランド
12 被覆ゴム
CL タイヤ赤道
Claims (12)
- 金属部材と、前記金属部材を被覆する被覆ゴムとで構成されたゴム−金属複合体であって、
前記金属部材は、複数本の素線が撚り合わされた少なくとも一部にオープン構造を含むスチールコードであり、
前記被覆ゴムは、ゴム成分に対して可溶性硫黄および不溶性硫黄を含む硫黄成分を必ず含み、任意でオイル成分が添加される不溶性硫黄組成物が配合されたゴム組成物からなり、
前記不溶性硫黄組成物の不溶性硫黄含有率I115×8と、前記ゴム成分100質量部に対する前記不溶性硫黄組成物の配合量a[質量部]と、前記不溶性硫黄組成物における前記オイル成分の含有率RoとがI115×8≧[a×(1−Ro)−1.5]/aの関係を満たし、
前記不溶性硫黄含有率I115×8は、前記不溶性硫黄組成物に対して115℃±0.2℃かつ8分±5秒間の条件で熱転化処理を加えた後に熱転化せずに残存した不溶性硫黄の質量を測定し、前記不溶性硫黄組成物の質量に対する熱転化処理後の前記不溶性硫黄の質量の割合として算出されることを特徴とするゴム−金属複合体。 - 前記スチールコードが、複数本の素線が撚り合わされた単層撚りオープン構造を有することを特徴とする請求項1に記載のゴム−金属複合体。
- 前記スチールコードを構成する素線の本数が3本〜8本であることを特徴とする請求項2に記載のゴム−金属複合体。
- 前記スチールコードの長手方向と直交する断面が偏平形状を有し、前記偏平形状における短径Aと長径Bとの比B/Aが1.2〜2.5であることを特徴とする請求項2または3に記載のゴム−金属複合体。
- 前記スチールコードが、N本のコアフィラメントとM本のシースフィラメントとを撚り合わせたN+M構造を有することを特徴とする請求項1に記載のゴム−金属複合体。
- 前記コアフィラメントの本数Nが2〜3本、前記シースフィラメントの本数Mが2〜9本であることを特徴とする請求項5に記載のゴム−金属複合体。
- N+M構造を有する前記スチールコードにおける前記コアフィラメントの素線径DC と前記シースフィラメントの素線径DS とが1<DC /DS <1.3の関係を満たすことを特徴とする請求項5または6に記載のゴム−金属複合体。
- 前記スチールコードが、1本のコアフィラメントとX本のシースフィラメントとからなるY本のストランドを撚り合わせたY×(1+X)構造を有することを特徴とする請求項1に記載のゴム−金属複合体。
- 前記シースフィラメントの本数Xが5〜6本、前記ストランドの本数Yが3〜7本であることを特徴とする請求項8に記載のゴム−金属複合体。
- Y×(1+X)構造を有する前記スチールコードにおける前記コアフィラメントの素線径dC と前記シースフィラメントの素線径dS とが1.1<dC /dS <1.3の関係を満たすことを特徴とする請求項5または6に記載のゴム−金属複合体。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のゴム−金属複合体を用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
- 金属部材と、前記金属部材を被覆する被覆ゴムとで構成されたゴム−金属複合体の製造方法であって、
前記金属部材として、複数本の素線が撚り合わされた少なくとも一部にオープン構造を含むスチールコードを使用し、
前記被覆ゴムとして、ゴム成分に対して可溶性硫黄および不溶性硫黄を含む硫黄成分を必ず含み、任意でオイル成分が添加される不溶性硫黄組成物が配合されたゴム組成物を用い、
前記ゴム組成物に配合する前記不溶性硫黄組成物として、前記不溶性硫黄組成物に対して115℃±0.2℃かつ8分±5秒間の条件で熱転化処理を加えた後に熱転化せずに残存した不溶性硫黄の質量を測定し、前記不溶性硫黄組成物の質量に対する熱転化処理後の前記不溶性硫黄の質量の割合として算出される不溶性硫黄含有率I115×8と、前記ゴム成分100質量部に対する前記不溶性硫黄組成物の配合量a[質量部]と、前記不溶性硫黄組成物における前記オイル成分の含有率RoとがI115×8≧[a×(1−Ro)−1.5]/aの関係を満たすものを選別して使用することを特徴とするゴム−金属複合体の製造方法。
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JP2020025578A JP2021130884A (ja) | 2020-02-18 | 2020-02-18 | ゴム−金属複合体およびその製造方法 |
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