JP5457066B2 - ゴム−スチールコード複合体および空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
複数本のシースフィラメントまたはシースストランドを撚り合わせて層撚りスチールコードまたは複撚りスチールコードを形成し、
該層撚りスチールコードまたは複撚りスチールコードの外表面にコーティングゴム(C)を被覆してなるゴム−スチールコード複合体であって、
前記充填ゴム(A)が接着プロモーターを含有してなり、少なくとも下記の何れかを満たすことを特徴とする。
・前記コーティングゴム(C)が、前記充填ゴム(A)における接着プロモーターの含有量よりも少ない量で接着プロモーターを含有してなる。
・前記コーティングゴム(C)が、接着プロモーターを含有しない。
・前記層撚りスチールコードまたは複撚りスチールコードの外表面に予め被覆ゴム(B)を被覆したのち、前記コーティングゴム(C)を被覆してなり、前記被覆ゴム(B)が、前記コーティングゴム(C)における接着プロモーターの含有量よりも多い量で接着プロモーターを含有してなる。
・前記充填ゴム(A)およびコーティングゴム(C)が硫黄を含有してなり、該コーティングゴム(C)における硫黄の含有量が、前記充填ゴム(A)における硫黄の含有量よりも少ない。
また、コアに充填ゴム(A)が存在するため、コアにおけるフィラメントやストランドとゴムとの接触面積を増大させることができ、より強固で高い耐久性を発揮する接着が可能となる。
このような本発明のゴム−スチールコード複合体を補強層として採用すれば、耐久性に優れた空気入りラジアルタイヤを実現することができる。
以下、本発明のゴム−スチールコード複合体における第一態様および第二態様ごとに、各種充填ゴム(A)、コーティングゴム(C)および被覆ゴム(B)特有の組成について述べる。
本発明の第一態様では、上記図3(a)の模式図に示すように、充填ゴム(A)およびコーティングゴム(C)を用いる。
充填ゴム(A)は、直接フィラメント(またはストランド)と接触するゴムであり、これらとの良好な接着性を求められることから接着プロモーターを含有してなる。接着プロモーターの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、通常1.0〜5.0質量部、好ましくは3.0〜5.0質量部である。すなわち、後述するコーティングゴム(C)中における接着プロモーターの含有量よりも多いのが望ましい。上記下限値以上の量であれば、加硫の際に接着プロモーターがコーティングゴム(C)に拡散移行しても、充填ゴム(A)中に充分な量で接着プロモーターを残存させることができ、スチールコードとの優れた劣化接着性を保持しつつ、初期接着性をも必要以上に低下するおそれがない。一方、上記上限値を超えて配合した場合、顕著な接着促進効果を得難く、コスト増大を引き起こす上に、共に配合された加硫促進剤や老化防止剤等と反応し、劣化接着性が不充分になるおそれがある。
本発明で用いるコーティングゴム(C)が接着プロモーターを含有する場合には、上記充填ゴム(A)における接着プロモーターの含有量よりも少ないのが望ましく、含有しないのがより望ましい。具体的には、ゴム成分100質量部に対して、通常0.0〜1.0質量部、好ましくは0.5質量部未満である。このように、コーティングゴム(C)における接着プロモーターの含有量を低減しても、加硫の際に充填ゴム(A)或いは被覆ゴム(B)から接着プロモーターが拡散移行してくるため、良好な接着性を充分に保持することができる。しかも、上記範囲内の量とすることにより、コーティングゴム(C)に配合される加硫促進剤や老化防止剤等との反応を有効に低減することができ、劣化接着性および耐老化性の低下を抑制することが可能となる。また、コスト削減に大きく寄与することもできる。さらに、上記充填ゴム(A)を含め、接着プロモーターに関する配合設計の自由度が向上する。
本発明の第二態様では、上記図3(b)の模式図に示すように、充填ゴム(A)、被覆ゴム(B)およびコーティングゴム(C)を用いる。
本発明の第二態様では、充填ゴム(A)における接着プロモーターの含有量は、コーティングゴム(C)における接着プロモーターの含有量よりも多いのが望ましく、また後述する被覆ゴム(B)中における接着プロモーターの含有量と同量若しくはそれよりも多いのが望ましい。第二態様では、第一態様にはない被覆ゴム(B)を採用するので、該被覆ゴム(B)においても接着プロモーターが含有される分、充填ゴム(A)における接着プロモーターの含有量を低減することができ、さらなる作業性の改善を図ることが可能となる。具体的には、ゴム成分100質量部に対して、通常1.0〜5.0質量部、好ましくは3.0〜5.0質量部である。上記下限値以上の量であれば、加硫の際に接着プロモーターが被覆ゴム(B)に拡散移行しても、充填ゴム(A)中に充分な量で接着プロモーターを残存させることができ、スチールコードとの優れた劣化接着性を保持しつつ、初期接着性をも必要以上に低下するおそれがない。一方、上記上限値を超えて配合した場合、顕著な接着促進効果を得難く、コスト増大を引き起こす上に劣化接着性が不充分になるおそれがある。接着プロモーターの含有量を上記範囲内とすることにより、被覆ゴム(B)における接着プロモーターの含有量とも相まってコーティングゴム(C)における接着プロモーターの含有量をも有効に低減することができ、さらにコスト削減に大きく寄与することが可能となる。
被覆ゴム(B)が接着プロモーターを含有する際、上記充填ゴム(A)と同様、上記コーティングゴム(C)における接着プロモーターの含有量よりも多いのが望ましく、上記充填ゴム(A)中における接着プロモーターの含有量と同量若しくはそれよりも少ないのが望ましい。また、上記充填ゴム(A)における接着プロモーターの含有量の不足分を被覆ゴム(B)における接着プロモーターの含有量で補うという付随効果も得られる。具体的には、ゴム成分100質量部に対して、通常1.0〜5.0質量部、好ましくは3.0〜4.0質量部の量である。上記下限値以上の量であれば、加硫後に接着プロモーターがコーティングゴム(C)或いは充填ゴム(A)に拡散移行しても、被覆ゴム(B)中に充分な量で接着プロモーターを残存させることができ、スチールコードとの優れた劣化接着性を保持しつつ、初期接着性をも必要以上に低下するおそれがない。一方、上記上限値を超えて配合した場合、顕著な接着促進効果を得難く、コスト増大を引き起こす上に劣化接着性が不充分になるおそれがある。このように、接着プロモーターを含有する上記充填ゴム(A)と被覆ゴム(B)とがスチールコードに直接接することとなり、充填ゴム(A)或いは被覆ゴム(B)単独で接する場合よりも、スチールコードとゴムとの接着面積がより大きくなり、耐腐食疲労性の向上にさらに寄与することとなる。また、上記充填ゴム(A)における接着プロモーターの含有量と相まって、コーティングゴム(C)における接着プロモーターの含有量だけでなく充填ゴム(A)における接着プロモーターの含有量をも低減し得ることとなり、作業性の改善に大きく寄与することができる。
本発明の第二態様に用いるコーティングゴム(C)は、上記第一態様に用いるコーティングゴム(C)と同様のものを採用する。コーティングゴム(C)における接着プロモーターおよび硫黄の含有量も同様である。
本発明のゴム−スチールコード複合体は、まず、例えば図4に示すコード製造設備によってコードを製造する。かかるコード製造設備は、複数のコアフィラメントを撚り合わせて形成されたコア部9aを巻出すコア巻出し部9およびシースフィラメント10aを巻出すシース巻出し部10の所定数を設置し、各々の巻出し部より巻き出したフィラメントを集束させるワイヤー集束器11と、この集束したフィラメント同士を撚り合わせる撚り線機12を設けている。そして、コア巻出し部9とワイヤー集束器11との間に、コア部9aに未加硫の充填ゴム(A)を被覆するゴム被覆装置13が設置されている。
次に、ゴム被覆装置52のゴム押出しヘッド部52から導かれたコアストランド50aは、他方でシースストランド55aを巻出すために設置されたシースストランド巻出し部55へ供給され、真直矯正冶具56を経由しつつ整形されて複撚りコード57aが形成され、複撚りコード巻取り部57へと移行する。その後、上述と同様にして被覆ゴム(B)およびコーティングゴム(C)を被覆して、ゴム−スチールコード複合体を得る。
本発明のゴム−スチールコード複合体を、空気入りラジアルタイヤのベルト層、カーカス層、またはビード部の補強層として採用することにより、かかる補強層における接着耐久性、耐老化性、耐疲労破壊性などを向上させることが可能となり、コスト削減を図りつつ、優れた耐久性を有する高性能な空気入りラジアルタイヤを実現することができる。
表2に示す組成に従ってゴムを作製し、下記評価内容に従って図3(a)の模式図に示す態様のスチールコードおよびゴム−スチールコード複合体を上述の方法により作製し、評価した。なお、対照例1および比較例1として、図3(c)の模式図に示すような、スチールコードにコーティングゴム(C)を被覆したのみの従来のゴム−スチールコード複合体を作製した。結果を表3に示す。
図1に示す3+9×0.22mmのスチールコードを2.0mm間隔で平行に並べ、各ゴム組成を用いてスチールコードの上下方向からコーティングし、これを145℃で15分間加硫して試料を作製した。該試料を室温で1時間放置した後、スチールコードを引き抜き、そのゴム被覆率を表1に示す評価基準に従って、目視により評価した。
図1に示す3+9×0.22mmのスチールコードを2.0mm間隔で平行に並べ、各ゴム組成を用いてスチールコードの上下方向からコーティングし、これを145℃で40分間加硫して試料を作製した。該試料を温度75度、湿度90%で10日間放置し、次いでスチールコードを引き抜き、そのゴム被覆率を初期接着性の評価と同様、下記に示す評価基準に従って、目視により評価した。
図1に示す3+9×0.22mmのスチールコードを1.5mm間隔で平行に並べ、各ゴム組成を用いてスチールコードの上下方向からコーティングし、これを145℃で40分間加硫した。次いで、試料としてスチールコード3本の束(上ゲージ:1.0mm、下ゲージ:2.0mm、総ゲージ:3.9mm、コードピッチ:1.5mm)を切り出し、70℃の温水に12時間浸水させた。その後、図8に示すような装置を用い、各試料30をプーリー31(径22mm)に通し、コード強力7.0%のテンションを掛けた状態で試料30を上下X方向に駆動させ、試料30の破断に至るまでの繰り返し回数を測定した。得られた結果を表3では対照例を100として、表4〜5では比較例2を100として指数表示した。数値が高いほど、耐腐食疲労性が高いことを示す。
同じサイズのゴム−スチールコード複合体を作製した際におけるコストについて、安い順に1〜5の数値により5段階評価した。
なかでも、実施例4〜10によれば、コーティングゴム(C)に接着プロモーターを含有させずとも比較例1と同等の接着性能を保持しつつ、効果的なコスト削減を図ることができるのが明らかである。
表2に示す組成に従ってゴムを作製し、各スチールコードをすべて2.0mm間隔で平行に並べた以外、上記評価内容に従って図3(b)の模式図に示す態様のスチールコードおよびゴム−スチールコード複合体を作製し、評価した。なお、比較例2として、図3(c)の模式図に示すようなスチールコードにコーティングゴム(C)を被覆したのみの従来のゴム−スチールコード複合体に、被覆ゴム(B)のみを被覆したスチールコードを作製した。結果を表4〜5に示す。
なお、充填ゴム(A)における硫黄の含有量が被覆ゴム(B)における硫黄の含有量よりも少ない量である実施例20〜24では、加硫工程前での加硫進行を有効に抑制することができ、作業性が非常に良好であった。
1a コアフィラメント
2 シース
2a シースフィラメント
3a 層撚りコード
3b 複撚りコード
4 充填ゴム(A)層
5 コアストランド
6 シースストランド
7 コーティングゴム(C)層
8 被覆ゴム(B)層
9 コア巻出し部
9a コア部
10 シース巻出し部
10a シースフィラメント
11 ワイヤー集束器
11a 集束フィラメント
12 撚り線機
13 ゴム被覆装置
13a ゴム被覆フィラメント
15 コード
16 ゴム押出し機
17 ゴム押出しスクリュー
18 ゴム押出しヘッド部
19 充填ゴム(A)
20 コードガイド
21 口金
27 コア
28 シース
30 試料
31 プーリー
32 チャック
50 コアストランド巻出し部
50a コアストランド
51 ゴム押出機
52 ゴム押出しヘッド部
53 ゴム被覆装置
55 シースストランド巻出し部
55a シースストランド
56 真直矯正冶具
57 複撚りコード巻取り部
57a 複撚りスチールコード
Claims (10)
- 1本または複数本のコアフィラメントまたはコアストランドの周囲および間隙に充填ゴム(A)を被覆あるいは装填してなるコアの周囲に、
複数本のシースフィラメントまたはシースストランドを撚り合わせて層撚りスチールコードまたは複撚りスチールコードを形成し、
該層撚りスチールコードまたは複撚りスチールコードの外表面にコーティングゴム(C)を被覆してなるゴム−スチールコード複合体であって、
前記充填ゴム(A)が接着プロモーターを含有してなり、
前記コーティングゴム(C)が、前記充填ゴム(A)における接着プロモーターの含有量よりも少ない量で接着プロモーターを含有してなることを特徴とするゴム−スチールコード複合体。 - 1本または複数本のコアフィラメントまたはコアストランドの周囲および間隙に充填ゴム(A)を被覆あるいは装填してなるコアの周囲に、
複数本のシースフィラメントまたはシースストランドを撚り合わせて層撚りスチールコードまたは複撚りスチールコードを形成し、
該層撚りスチールコードまたは複撚りスチールコードの外表面にコーティングゴム(C)を被覆してなるゴム−スチールコード複合体であって、
前記充填ゴム(A)が接着プロモーターを含有してなり、
前記コーティングゴム(C)が、接着プロモーターを含有しないことを特徴とするゴム−スチールコード複合体。 - 前記充填ゴム(A)およびコーティングゴム(C)が硫黄を含有してなり、該コーティングゴム(C)における硫黄の含有量が、前記充填ゴム(A)における硫黄の含有量よりも少ないことを特徴とする請求項1または2に記載のゴム−スチールコード複合体。
- 前記層撚りスチールコードまたは複撚りスチールコードの外表面に予め被覆ゴム(B)を被覆したのち、前記コーティングゴム(C)を被覆してなる請求項1〜3のいずれかに記載のゴム−スチールコード複合体。
- 前記被覆ゴム(B)が、前記コーティングゴム(C)における接着プロモーターの含有量よりも多い量で接着プロモーターを含有してなることを特徴とする請求項4に記載のゴム−スチールコード複合体。
- 1本または複数本のコアフィラメントまたはコアストランドの周囲および間隙に充填ゴム(A)を被覆あるいは装填してなるコアの周囲に、
複数本のシースフィラメントまたはシースストランドを撚り合わせて層撚りスチールコードまたは複撚りスチールコードを形成し、
該層撚りスチールコードまたは複撚りスチールコードの外表面にコーティングゴム(C)を被覆してなるゴム−スチールコード複合体であって、
前記充填ゴム(A)が接着プロモーターを含有してなり、
前記層撚りスチールコードまたは複撚りスチールコードの外表面に予め被覆ゴム(B)を被覆したのち、前記コーティングゴム(C)を被覆してなり、
前記被覆ゴム(B)が、前記コーティングゴム(C)における接着プロモーターの含有量よりも多い量で接着プロモーターを含有してなることを特徴とするゴム−スチールコード複合体。 - 前記充填ゴム(A)およびコーティングゴム(C)が硫黄を含有してなり、該コーティングゴム(C)における硫黄の含有量が、前記充填ゴム(A)における硫黄の含有量よりも少ないことを特徴とする請求項6に記載のゴム−スチールコード複合体。
- 前記被覆ゴム(B)が、前記充填ゴム(A)における接着プロモーターの含有量以下の量で接着プロモーターを含有してなることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のゴム−スチールコード複合体。
- 1本または複数本のコアフィラメントまたはコアストランドの周囲および間隙に充填ゴム(A)を被覆あるいは装填してなるコアの周囲に、
複数本のシースフィラメントまたはシースストランドを撚り合わせて層撚りスチールコードまたは複撚りスチールコードを形成し、
該層撚りスチールコードまたは複撚りスチールコードの外表面にコーティングゴム(C)を被覆してなるゴム−スチールコード複合体であって、
前記充填ゴム(A)が接着プロモーターを含有してなり、
前記充填ゴム(A)およびコーティングゴム(C)が硫黄を含有してなり、該コーティングゴム(C)における硫黄の含有量が、前記充填ゴム(A)における硫黄の含有量よりも少ないことを特徴とするゴム−スチールコード複合体。 - 請求項1〜9のいずれかに記載のゴム−スチールコード複合体からなる補強層を有する空気入りラジアルタイヤ。
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