<第1実施形態>
以下、本発明に係る制御回路を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る制御回路は、電力変換器としての3相インバータに適用される。本実施形態において、インバータを備える制御システムは、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載される。
図1に示すように、制御システムは、回転電機10及びインバータ15を備えている。回転電機10は、車載主機であり、そのロータが図示しない駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、回転電機10として、同期機が用いられており、より具体的には、永久磁石同期機が用いられている。
インバータ15は、スイッチングデバイス部20を備えている。スイッチングデバイス部20は、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとの直列接続体を3相分備えている。各相において、上,下アームスイッチSWH,SWLの接続点には、回転電機10の巻線11の第1端が接続されている。各相巻線11の第2端は、中性点で接続されている。各相巻線11は、電気角で互いに120°ずらされて配置されている。ちなみに、本実施形態では、各スイッチSWH,SWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的には、IGBTが用いられている。上,下アームスイッチSWH,SWLには、フリーホイールダイオードである上,下アームダイオードDH,DLが逆並列に接続されている。
各上アームスイッチSWHの高電位側端子であるコレクタには、高電位側電気経路22Hを介して、高圧電源30の正極端子が接続されている。各下アームスイッチSWLの低電位側端子であるエミッタには、低電位側電気経路22Lを介して、高圧電源30の負極端子が接続されている。本実施形態において、高圧電源30は、2次電池であり、その出力電圧(定格電圧)が例えば百V以上である。
高電位側電気経路22Hには、第1遮断スイッチ23aが設けられ、低電位側電気経路22Lには、第2遮断スイッチ23bが設けられている。各スイッチ23a,23bは、例えば、リレー又は半導体スイッチング素子である。ここで、各スイッチ23a,23bは、インバータ15が備える制御回路50によって駆動されてもよいし、図示しない上位ECUによって駆動されてもよい。上位ECUは、制御回路50に対して上位の制御装置である。
インバータ15は、「蓄電部」としての平滑コンデンサ24を備えている。平滑コンデンサ24は、高電位側電気経路22Hのうち第1遮断スイッチ23aよりもスイッチングデバイス部20側と、低電位側電気経路22Lのうち第2遮断スイッチ23bよりもスイッチングデバイス部20側とを電気的に接続している。
制御システムは、車載電気機器25を備えている。電気機器25は、例えば、電動コンプレッサ及びDCDCコンバータのうち少なくとも一方を含む。電動コンプレッサは、車室内空調装置を構成し、車載冷凍サイクルの冷媒を循環させるべく、高圧電源30から給電されて駆動される。DCDCコンバータは、高圧電源30の出力電圧を降圧して車載低圧負荷に供給する。低圧負荷は、図2に示す低圧電源31を含む。本実施形態において、低圧電源31は、その出力電圧(定格電圧)が高圧電源30の出力電圧(定格電圧)よりも低い電圧(例えば12V)の2次電池であり、例えば鉛蓄電池である。
インバータ15は、放電抵抗体26及び放電スイッチ27を備えている。放電抵抗体26及び放電スイッチ27は直列接続されている。この直列接続体は、高電位側電気経路22Hのうち第1遮断スイッチ23aよりもスイッチングデバイス部20側と、低電位側電気経路22Lのうち第2遮断スイッチ23bよりもスイッチングデバイス部20側とを電気的に接続している。放電スイッチ27は、制御回路50からの指示により駆動される。
図2を用いて、制御回路50の構成について説明する。制御回路50は、入力回路61、中間電源回路62及び第1〜第5低圧電源回路63〜67を備えている。入力回路61には、ヒューズ32及び電源スイッチ33を介して低圧電源31の正極端子が接続されている。低圧電源31の負極端子には、接地部位としてのグランドが接続されている。
制御システムは、角度センサ41を備えている。角度センサ41は、回転電機10の電気角に応じた角度信号を出力する。角度センサ41は、例えば、レゾルバ、エンコーダ又は磁気抵抗効果素子を有するMRセンサであり、本実施形態ではレゾルバである。
中間電源回路62は、入力回路61の出力電圧VBを降圧することにより、中間電圧Vm(例えば6V)を生成する。第1低圧電源回路63は、中間電源回路62の出力電圧Vmを降圧することにより、第1電圧V1r(例えば5V)を生成する。第2低圧電源回路64は、第1低圧電源回路63から出力された第1電圧V1rを降圧することにより、第2電圧V2r(例えば3.3V)を生成する。第3低圧電源回路65は、第1低圧電源回路63から出力された第1電圧V1rを降圧することにより、第3電圧V3rを生成する。本実施形態において、第3電圧V3rは、第2電圧V2rよりも低い電圧(例えば1.2V)とされている。
第4低圧電源回路66は、入力回路61の出力電圧VBを降圧することにより、第4電圧V4r(例えば5V)を生成する。本実施形態において、第4電圧V4rは、第1電圧V1rと同じ値である。第5低圧電源回路67は、入力回路61の出力電圧VBを昇圧することにより、第5電圧V5r(例えば30V)を生成する。入力回路61、各電源回路62〜67及びマイコン60は、制御回路50の低圧領域に設けられている。
制御回路50は、励磁回路71、FBインターフェース部72及びレゾルバデジタルコンバータ73を備えている。励磁回路71は、第5低圧電源回路67の第5電圧V5rが供給されることにより動作可能に構成されている。励磁回路71は、角度センサ41を構成するレゾルバステータに正弦波状の励磁信号を供給する。レゾルバステータから出力された角度信号は、FBインターフェース部72を介してレゾルバデジタルコンバータ73に入力される。FBインターフェース部72及びレゾルバデジタルコンバータ73は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。レゾルバデジタルコンバータ73は、FBインターフェース部72からの角度信号に基づいて、回転電機10の電気角を算出する。算出された電気角は、マイコン60に入力される。マイコン60は、入力された電気角に基づいて、回転電機10の電気角速度を算出する。
なお、励磁回路71、FBインターフェース部72及びレゾルバデジタルコンバータ73は、制御回路50の低圧領域に設けられている。
マイコン60は、CPUと、それ以外の周辺回路とを備えている。周辺回路には、例えば、外部と信号をやり取りするための入出力部と、AD変換部とが含まれている。マイコン60には、第1低圧電源回路63の第1電圧V1r、第2低圧電源回路64の第2電圧V2r及び第3低圧電源回路65の第3電圧V3rが供給される。
制御回路50は、電圧センサ77、過電圧検出部78及び状態判定部79を備えている。電圧センサ77は、高電位側電気経路22H及び低電位側電気経路22Lに電気的に接続され、入力回路61の出力電圧VB及び第5低圧電源回路67の第5電圧V5rが供給されることにより動作可能に構成されている。電圧センサ77は、平滑コンデンサ24の端子電圧に応じた電圧信号を出力する。電圧センサ77から出力された電圧信号は、マイコン60及び過電圧検出部78に入力される。
過電圧検出部78は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。過電圧検出部78は、入力された電圧信号に基づいて算出した平滑コンデンサ24の端子電圧がその上限電圧を超えているか否かを判定する。過電圧検出部78は、その端子電圧が上限電圧を超えていると判定した場合、マイコン60及び状態判定部79に対して過電圧信号を出力する。
状態判定部79は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。また、本実施形態において、状態判定部79は、ロジック回路で構成されている。電圧センサ77、過電圧検出部78及び状態判定部79は、制御回路50の低圧領域に設けられている。
制御システムは、始動スイッチ28を備えている。始動スイッチ28は、例えばイグニッションスイッチ又はプッシュ式のスタートスイッチであり、車両のユーザにより操作される。上位ECUは、始動スイッチ28がオン状態に切り替えられたと判定した場合、電源スイッチ33をオン状態に切り替える。これにより、低圧電源31から制御回路50への給電が開始される。一方、上位ECUは、始動スイッチ28がオフ状態に切り替えられたと判定した場合、電源スイッチ33をオフ状態に切り替える。具体的には、上位ECUは、始動スイッチ28がオフ状態に切り替えられたと判定した場合、所定の終了シーケンス処理の後、電源スイッチ33をオフ状態に切り替える。これにより、低圧電源31から制御回路50への給電が停止される。
マイコン60は、回転電機10の制御量をその指令値に制御すべく、スイッチングデバイス部20の各スイッチSWH,SWLに対するスイッチング指令を生成する。制御量は、例えばトルクである。マイコン60は、角度センサ41の出力信号等に基づいて、スイッチング指令を生成する。スイッチング指令は、スイッチのオン駆動を指示するオン指令又はスイッチのオフ駆動を指示するオフ指令のいずれかである。なお、マイコン60は、各相において、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとが交互にオン状態にされるようなスイッチング指令を生成する。また、本実施形態において、マイコン60が「スイッチ指令生成部」を含む。
制御回路50は、絶縁電源80、上アームドライバ81及び下アームドライバ82を備えている。本実施形態において、上アームドライバ81は、各上アームスイッチSWHに対応して個別に設けられ、下アームドライバ82は、各下アームスイッチSWLに対応して個別に設けられている。このため、ドライバ81,82は合わせて6つ設けられている。
絶縁電源80は、入力回路61から供給された電圧に基づいて、上アームドライバ81に供給する上アーム駆動電圧VdHと、下アームドライバ82に供給する下アーム駆動電圧VdLとを生成して出力する。絶縁電源80及び各ドライバ81,82は、制御回路50において、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。具体的には、絶縁電源80は、3相の上アームドライバ81それぞれに対して個別に設けられた上アーム絶縁電源と、3相の下アームドライバ82に共通の下アーム絶縁電源とを備えている。本実施形態では、各上アーム絶縁電源と下アーム絶縁電源とが共通の電源制御部により制御される。なお、下アーム絶縁電源は、3相の下アームドライバ82それぞれに対して個別に設けられていてもよい。
続いて、図3を用いて、上,下アームドライバ81,82について説明する。
上アームドライバ81は、「スイッチ駆動部」としての上アーム駆動部81aと、上アーム絶縁伝達部81bとを備えている。上アーム駆動部81aは、高圧領域に設けられている。上アーム絶縁伝達部81bは、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。上アーム絶縁伝達部81bは、低圧領域及び高圧領域の間を電気的に絶縁しつつ、マイコン60から出力されたスイッチング指令を上アーム駆動部81aに伝達する。上アーム絶縁伝達部81bは、例えば、フォトカプラ又は磁気カプラである。
上アームドライバ81のうち、上アーム駆動部81a、及び上アーム絶縁伝達部81bの高圧領域側の構成等は、絶縁電源80の上アーム駆動電圧VdHが供給されることにより動作可能に構成されている。上アームドライバ81のうち、上アーム絶縁伝達部81bの低圧領域側の構成等は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。
上アーム駆動部81aは、入力されたスイッチング指令がオン指令である場合、上アームスイッチSWHのゲートに充電電流を供給する。これにより、上アームスイッチSWHのゲート電圧が閾値電圧Vth以上となり、上アームスイッチSWHがオン状態とされる。一方、上アーム駆動部81aは、入力されたスイッチング指令がオフ指令である場合、上アームスイッチSWHのゲートからエミッタ側へと放電電流を流す。これにより、上アームスイッチSWHのゲート電圧が閾値電圧Vth未満となり、上アームスイッチSWHがオフ状態とされる。
上アーム駆動部81aは、自身及び上アームスイッチSWHの少なくとも一方に異常が発生している旨の情報であるフェール信号Sgfailと、上アームスイッチSWHの温度Tswdの情報とを、上アーム絶縁伝達部81bを介してマイコン60に伝達する。上アームスイッチSWHの異常には、過熱異常、過電圧異常及び過電流異常の少なくとも1つが含まれる。
下アームドライバ82は、「スイッチ駆動部」としての下アーム駆動部82aと、下アーム絶縁伝達部82bとを備えている。本実施形態において、各ドライバ81,82の構成は基本的には同じである。このため、以下では、下アームドライバ82の詳細な説明を適宜省略する。
下アームドライバ82のうち、下アーム駆動部82a、及び下アーム絶縁伝達部82bの高圧領域側の構成等は、絶縁電源80の下アーム駆動電圧VdLが供給されることにより動作可能に構成されている。下アームドライバ82のうち、下アーム絶縁伝達部82bの低圧領域側の構成等は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。
下アーム駆動部82aは、入力されたスイッチング指令がオン指令である場合、下アームスイッチSWLのゲートに充電電流を供給する。これにより、下アームスイッチSWLのゲート電圧が閾値電圧Vth以上となり、下アームスイッチSWLがオン状態とされる。一方、下アーム駆動部82aは、入力されたスイッチング指令がオフ指令である場合、下アームスイッチSWLのゲートからエミッタ側へと放電電流を流す。これにより、下アームスイッチSWLのゲート電圧が閾値電圧Vth未満となり、下アームスイッチSWLがオフ状態とされる。
下アーム駆動部82aは、自身又は下アームスイッチSWLの少なくとも一方に異常が発生している旨の情報であるフェール信号Sgfailと、下アームスイッチSWLの温度Tswdの情報とを、下アーム絶縁伝達部82bを介してマイコン60に伝達する。下アームスイッチSWLの異常には、過熱異常、過電圧異常及び過電流異常の少なくとも1つが含まれる。
なお、実際には、放電スイッチ27を駆動するためのドライバ、及びこのドライバにマイコン60からの指令を伝達する絶縁伝達部等が制御回路50に備えられるが、図2及び図3では、このドライバ及び絶縁伝達部の図示を省略している。
図2の説明に戻り、制御回路50は、フェール検知部83を備えている。フェール検知部83は、低圧領域に設けられ、各ドライバ81,82からのフェール信号Sgfailが入力されるようになっている。本実施形態において、フェール検知部83は、各ドライバ81,82のいずれかからフェール信号Sgfailが入力された場合、論理Hの異常信号SgFをマイコン60及び状態判定部79に出力する。一方、フェール検知部83は、各ドライバ81,82からフェール信号Sgfailが入力されない場合、論理Lの異常信号SgFをマイコン60及び状態判定部79に出力する。マイコン60に入力された異常信号SgFは、マイコン60が備える記憶部としてのメモリ60aに記憶される。メモリ60aは、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)である。
制御回路50は、低圧側ASC指令部84、監視部85、OR回路86、及び「異常判定部」としての電源停止部87を備えている。低圧側ASC指令部84、監視部85、OR回路86及び電源停止部87は、低圧領域に設けられている。監視部85は、入力回路61の出力電圧VBが供給されることにより動作可能に構成され、電源停止部87は、第4低圧電源回路66の第4電圧V4rが供給されることにより動作可能に構成されている。
低圧側ASC指令部84は、状態判定部79から低圧側ASC指令CmdASCが入力された場合、3相分の下アームドライバ82に入力されるスイッチング指令を、マイコン60から出力されるスイッチング指令にかかわらず強制的にオン指令にする。
図2及び図3を用いて、制御回路50のうち高圧領域の構成について説明する。
制御回路50は、異常用電源90と、「異常時制御部」としての高圧側ASC指令部91とを備えている。異常用電源90は、平滑コンデンサ24の出力電圧VHが供給されることにより異常用駆動電圧Vepsを生成する。異常用電源90として、種々の電源を用いることができ、例えばスイッチング電源を用いることができる。異常用電源90の入力側には、平滑コンデンサ24の高電位側が接続されている。異常用電源90の出力側から出力される異常用駆動電圧Vepsがその目標電圧に制御される。
制御回路50は、通常用電源経路92、通常用ダイオード93、異常用電源経路94及び異常用ダイオード95を備えている。通常用電源経路92は、絶縁電源80の出力側と下アーム駆動部82aとを接続し、下アーム駆動電圧VdLを下アーム駆動部82aに供給する。通常用ダイオード93は、アノードが絶縁電源80の出力側に接続された状態で、通常用電源経路92の中間位置に設けられている。
通常用電源経路92のうち通常用ダイオード93よりも下アーム駆動部82a側と、異常用電源90の出力側とは、異常用電源経路94により接続されている。異常用ダイオード95は、アノードが異常用電源90の出力側に接続された状態で、異常用電源経路94に設けられている。異常用電源経路94は、異常用駆動電圧Vepsを下アーム駆動部82aに供給する。
高圧側ASC指令部91には、通常用電源経路92を介して絶縁電源80の下アーム駆動電圧VdLが供給されるようになっている。高圧側ASC指令部91は、高圧側ASC指令SgASCを下アーム駆動部82aに対して出力する。
続いて、図4を用いて、OR回路86、電源停止部87及びその周辺構成について説明する。OR回路86は、第1〜第4抵抗体86a〜86d及び第1,第2スイッチ86e,86fを備えている。第1抵抗体86aの第1端には、マイコン60と、第2抵抗体86bの第1端とが接続されている。第2抵抗体86bの第2端は、グランドに接続されている。第1抵抗体86aの第2端には、第3抵抗体86cを介して監視部85に接続されている。
第4抵抗体86dの第1端には、第4低圧電源回路66が接続され、第4抵抗体86dの第2端には、第1スイッチ86eを介してグランドが接続されている。第1スイッチ86eのベースには監視部85からの第1判定信号Sg1が供給される。第1抵抗体86aの第2端には、第2スイッチ86fを介してグランドが接続されている。第2スイッチ86fのベースには、第4抵抗体86dと第1スイッチ86eとの接続点が接続されている。
マイコン60は、自己監視機能を有している。マイコン60は、自身に異常が発生していないと判定した場合、第2判定信号Sg2の論理をHにする。この場合、OR回路86の出力信号である異常通知信号FMCUの論理がHになる。一方、マイコン60は、自身に異常が発生していると判定した場合、第2判定信号Sg2の論理をLにする。この場合、異常通知信号FMCUの論理がLになる。
監視部85は、マイコン60に異常が発生しているか否かを監視する機能を有し、例えば、ウォッチドックカウンタ(WDC)又はファンクションウォッチドックカウンタ(F−WDC)で構成されている。監視部85は、マイコン60に異常が発生していないと判定した場合、第1判定信号Sg1の論理をLにする。この場合、第1,第2スイッチ86e,86fがオフ状態に維持され、異常通知信号FMCUの論理がHになる。一方、監視部85は、マイコン60に異常が発生していると判定した場合、第1判定信号Sg1の論理をHにする。この場合、第1,第2スイッチ86e,86fがオン状態に切り替えられ、異常通知信号FMCUの論理がLにされる。
異常通知信号FMCUは、電源停止部87に入力される。電源停止部87は、異常検知回路87aと、切替スイッチ87bとを備えている。切替スイッチ87bの第1端には、グランドが接続され、切替スイッチ87bの第2端には、制御回路50が備える第1,第2分圧抵抗体96a,96bの接続点が接続されている。第1,第2分圧抵抗体96a,96bの直列接続体の第1端には、入力回路61が接続され、この直列接続体の第2端には、グランドが接続されている。第1,第2分圧抵抗体96a,96bの接続点には、絶縁電源80のUVLO端子が接続されている。絶縁電源80の制御部は、この接続点に入力される電圧である判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLOを下回ったと判定した場合、絶縁電源80を停止させる低電圧誤動作防止処理を実施する。一方、絶縁電源80の制御部は、入力された判定電圧Vjinが、低電圧閾値VUVLOよりも高い解除閾値(<VB)を超えたと判定した場合、低電圧誤動作防止処理を停止し、絶縁電源80の動作を再開させる。
異常検知回路87aは、第4低圧電源回路66の第4電圧V4rが供給されることにより動作可能に構成されている。異常検知回路87aは、異常通知信号FMCUの論理がHであると判定した場合、切替スイッチ87bをオフ状態にする。この場合、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLO以上とされる。一方、異常検知回路87aは、異常通知信号FMCUの論理がLであると判定した場合、切替スイッチ87bをオン状態にする。この場合、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLO未満となり、低電圧誤動作防止処理が実施される。この処理が実施されると、絶縁電源80は停止され、上アーム駆動電圧VdH及び下アーム駆動電圧VdLは0Vに向かって徐々に低下し始める。
本実施形態では、従来ではシャットダウン状態となるような制御回路50内の異常が発生した場合であっても、3相短絡制御(ASC:Active Short Circuit)が実施可能となっている。シャットダウン状態とは、3相分の上,下アームスイッチSWH,SWLがオフ状態になることである。ここで、制御回路50内の異常には、マイコン60の異常と、中間電源回路62及び第1〜第3低圧電源回路63〜65の少なくとも1つの異常と、マイコン60から上,下アームドライバ81,82へとスイッチング指令を正常に伝達できなくなる異常と、絶縁電源80から電圧を出力できなくなる異常とが含まれる。絶縁電源80から電圧を出力できなくなる異常には、絶縁電源80の異常と、低圧電源31から絶縁電源80に給電できなくなる異常とが含まれる。ここで、低圧電源31から絶縁電源80に給電できなくなる異常は、例えば、入力回路61等、低圧電源31から絶縁電源80までの電気経路が断線することで発生する。また、下アームドライバ82を例に説明すると、スイッチング指令を正常に伝達できなくなる異常には、マイコン60から下アーム絶縁伝達部82bまでの信号経路が断線する異常が含まれる。なお、上述した異常は、例えば車両の衝突により発生する。
図5を用いて、制御回路50内に異常が発生した場合に実施される3相短絡制御について説明する。
ステップS10では、電源停止部87の異常検知回路87aは、入力される異常通知信号FMCUの論理がLであるか否かを判定する。マイコン60から出力される第2判定信号Sg2の論理がLの場合、又は監視部85から出力される第1判定信号Sg1の論理がHの場合、異常通知信号FMCUの論理がLとなる。中間電源回路62やマイコン60の電源となる第1〜第3低圧電源回路63〜65に異常が発生した場合にも、マイコン60から出力される第2判定信号Sg2の論理がLとなる。
異常検知回路87aは、異常通知信号FMCUの論理がLであると判定した場合、切替スイッチ87bをオン状態に切り替える。これにより、絶縁電源80のUVLO端子に入力される判定電圧Vjinがグランド電位である0Vに向かって低下する。
ステップS11では、絶縁電源80の電源制御部は、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLOを下回るまで待機する。電源制御部は、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLOを下回ったと判定した場合、ステップS12において、低電圧誤動作防止処理を行い、絶縁電源80を停止させる。これにより、絶縁電源80から出力される上,下アーム駆動電圧VdH,VdLは0Vに向かって低下し始める。
ステップS13では、高圧側ASC指令部91は、絶縁電源80から出力される下アーム駆動電圧VdLを検出し、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、異常用電源90に対して起動を指示する。これにより、ステップS14において、異常用電源90から異常用駆動電圧Vepsが出力され始める。
具体的には、高圧側ASC指令部91は、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、上アームスイッチSWHがオフ状態になるまでの十分な期間が経過してから異常用電源90の起動を指示する。これは、上下アーム短絡の発生を防止するためである。
例えば、高圧側ASC指令部91は、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、検出した下アーム駆動電圧VdLが所定電圧Vpを下回ったと判定した場合に異常用電源90の起動を指示してもよい。ここで、所定電圧Vpは、上アームスイッチSWHがオフ状態になるまでの十分な期間が経過したことを判定できる値に設定され、例えば、上記閾値電圧Vthと同じ値又は閾値電圧Vth未満の値に設定されていればよい。
また、例えば、高圧側ASC指令部91は、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めてから所定期間経過したタイミングで異常用電源90の起動を指示してもよい。ここで、上記所定期間は、上アームスイッチSWHがオフ状態になるまでの十分な期間が経過したことを判定できる値に設定されていればよい。
その後、ステップS15において、高圧側ASC指令部91は、高圧側ASC指令SgASCを下アーム駆動部82aに対して出力する。これにより、ステップS16において、下アーム駆動部82aは、3相分の下アームスイッチSWLをオンする。つまり、3相分の「オン側スイッチ」としての下アームスイッチSWLがオン状態にされ、3相分の「オフ側スイッチ」としての上アームスイッチSWHがオフ状態にされる3相短絡制御が行われる。
図6を用いて、図5の処理についてさらに説明する。図6(a)はマイコン60の異常の有無の推移を示し、図6(b)は監視部85から出力される第1判定信号Sg1の推移を示し、図6(c)は異常通知信号FMCUの推移を示し、図6(d)は絶縁電源80の動作状態の推移を示す。図6(e),(f)は絶縁電源80から出力される上,下アーム駆動電圧VdH,VdLの推移を示し、図6(g)は異常用電源90の動作状態の推移を示し、図6(h)は高圧側ASC指令部91から出力される高圧側ASC指令SgASCの推移を示し、図6(i)は各相の下アームスイッチSWLの駆動状態の推移を示す。
時刻t1において、マイコン60の異常が発生する。このため、時刻t2において、監視部85から出力される第1判定信号Sg1の論理がHに反転し、時刻t3において、異常通知信号FMCUの論理がLに反転する。その結果、切替スイッチ87bがオン状態に切り替えられ、絶縁電源80の低電圧誤動作防止処理が実施される。これにより、時刻t4において、絶縁電源80が停止され、上,下アーム駆動電圧VdH,VdLが低下し始める。
下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、時刻t4から上アームスイッチSWHがオフ状態になるまでの十分な期間が経過した時刻t5において、高圧側ASC指令部91により異常用電源90の起動が指示される。これにより、異常用電源90から異常用駆動電圧Vepsが出力され始める。ここで、十分な期間が経過したか否かは、上述したように、例えば、検出された下アーム駆動電圧VdLが所定電圧Vpを下回ったか否か、又は下アーム駆動電圧VdLが低下し始めてから所定期間経過したか否かで判定されればよい。その後、時刻t6において、高圧側ASC指令部91から下アーム駆動部82aへと高圧側ASC指令SgASCが出力され、時刻t7において、下アーム駆動部82aにより3相分の下アームスイッチSWLがオン状態にされる。
なお、低圧電源31に異常が発生したり、入力回路61に異常が発生したり、低圧電源31と制御回路50とを電気的に接続する給電経路が断線したり、絶縁電源80に異常が発生したりする場合にも、ステップS11〜S16の処理により、3相短絡制御が行われる。つまり、この場合、低電圧誤動作防止処理により絶縁電源80が停止され、上,下アーム駆動電圧VdH,VdLが0Vに向かって低下し、3相短絡制御が行われる。
また、過電圧異常が発生した場合にも、3相短絡制御が実施される。詳しくは、状態判定部79は、過電圧検出部78から過電圧信号が入力されたか否かを判定する。状態判定部79は、過電圧信号が入力されたと判定した場合、低圧側ASC指令部84に対して低圧側ASC指令CmdASCを出力する。
低圧側ASC指令部84は、低圧側ASC指令CmdASCが入力された場合、3相分の上アームドライバ81に入力されるスイッチング指令を、マイコン60から出力されるスイッチング指令にかかわらず強制的にオフ指令にするシャットダウン指令CmdSDNを出力する。また、低圧側ASC指令部84は、3相分の下アームドライバ82に入力されるスイッチング指令を、マイコン60から出力されるスイッチング指令にかかわらず強制的にオン指令にする。これにより、3相短絡制御が実施される。
また、以下に説明する場合にも、マイコン60により3相短絡制御が行われる。詳しくは、マイコン60は、フェール検知部83からの異常信号SgFに基づいて、各上,下アームスイッチSWH,SWLのいずれかに異常が発生しているか否かを判定する。マイコン60は、異常が発生していると判定した場合、各上,下アームスイッチSWH,SWLのうち、いずれの相及びいずれのアームのスイッチに異常が発生したかを特定し、また、その異常がオープン異常又はショート異常のいずれであるかを特定する。
マイコン60は、上,下アームのうち、一方のアームの少なくとも1つのスイッチにショート異常が発生したと判定した場合、上,下アームのうち、ショート異常が発生したアームの3相分のスイッチに対するスイッチング指令としてオン指令を出力し、他のアームの3相分のスイッチに対するスイッチング指令としてオフ指令を出力する。これにより、3相短絡制御が実施される。一方、マイコン60は、上,下アームのうち、一方のアームの少なくとも1つのスイッチにオープン異常が発生したと判定した場合、上,下アームのうち、オープン異常が発生したアームとは別のアームの3相分のスイッチに対してオン指令を出力し、他のアームの3相分のスイッチに対してオフ指令を出力する。これにより、3相短絡制御が実施される。
続いて、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを確認する構成について説明する。制御回路50は、その高圧領域に下アームASCチェック部110及び上アームASCチェック部130を備えている。下アームASCチェック部110は、例えば下アーム駆動電圧VdLが供給されることにより動作可能に構成されている。上アームASCチェック部130は、例えば上アーム駆動電圧VdHが供給されることにより動作可能に構成されている。
まず、図7を用いて、下アームASCチェック部110について説明する。
下アームASCチェック部110は、下アームスイッチ電圧検出部111、下アーム判定部112及び下アームAND回路113を備えている。本実施形態において、下アームスイッチ電圧検出部111、下アーム判定部112及び下アームAND回路113は、各相の下アームスイッチSWLに対応して個別に設けられている。なお、本実施形態において、下アームASCチェック部110及びマイコン60が「オン判定部」を構成する。
下アームスイッチ電圧検出部111は、下アームスイッチSWLのコレクタ及びエミッタ間電圧VceLを検出し、本実施形態では差動増幅回路で構成されている。下アームスイッチ電圧検出部111の出力信号VcLは、下アーム判定部112に入力される。また、下アーム判定部112には、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgeLも入力される。
下アーム判定部112は、入力されたゲート電圧VgeLがオン判定電圧Vjon以上であるとの第1条件と、下アームスイッチ電圧検出部111の出力信号VcLが0V近傍であるとの第2条件との双方が成立した場合、下アームスイッチSWLがオン状態にされていると判定し、下アーム判定信号SgJLの論理をHにする。オン判定電圧Vjonは、例えば、閾値電圧Vthと同じ値、又は閾値電圧Vthよりも大きくてかつ下アーム駆動電圧VdL未満の値に設定されていればよい。
一方、下アーム判定部112は、第1条件又は第2条件のいずれかが成立していない場合、下アーム判定信号SgJLの論理をLにする。
下アームAND回路113には、各相に対応する下アーム判定部112の下アーム判定信号SgJLが入力される。下アームAND回路113は、下アーム判定信号SgJLの論理が3相ともHである場合、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理をHにする。一方、下アームAND回路113は、少なくとも1相の下アーム判定信号SgJLの論理がLである場合、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理をLにする。
下アームAND回路113から出力された下アームASCチェック信号ASCMоnLは、制御回路50の備える下アーム絶縁伝達部120を介してマイコン60に伝達される。下アーム絶縁伝達部120は、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。下アーム絶縁伝達部120は、例えば、フォトカプラ又は磁気カプラである。下アーム絶縁伝達部120の高圧領域側の構成は、絶縁電源80の上アーム駆動電圧VdHが供給されることにより動作可能に構成され、下アーム絶縁伝達部120の低圧領域側の構成は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。
続いて、図8を用いて、上アームASCチェック部130について説明する。
上アームASCチェック部130は、上アームスイッチ電圧検出部131及び上アーム判定部132を備えている。本実施形態において、上アームスイッチ電圧検出部131及び上アーム判定部132は、各相の上アームスイッチSWHに対応して個別に設けられている。また、制御回路50は、その低圧領域に上アームAND回路133を備えている。なお、本実施形態において、上アームASCチェック部130、上アームAND回路133及びマイコン60が「オフ判定部」を構成する。
上アームスイッチ電圧検出部131は、上アームスイッチSWHのコレクタ及びエミッタ間電圧VceHを検出し、本実施形態では差動増幅回路で構成されている。上アームスイッチ電圧検出部131の出力信号VcHは、上アーム判定部132に入力される。また、上アーム判定部132には、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgeHも入力される。
上アーム判定部132は、入力されたゲート電圧VgeHがオフ判定電圧Vjoff以下であるとの第3条件と、上アームスイッチSWHのコレクタ及びエミッタ間電圧VceHが高圧電源30の端子電圧近傍であるとの第4条件との双方が成立した場合、上アームスイッチSWHがオフ状態にされていると判定し、上アーム判定信号SgJHの論理をHにする。上アーム判定部132は、上アームスイッチ電圧検出部131の出力信号VcHに基づいて、第4条件が成立しているか否かを判定する。なお、オフ判定電圧Vjoffは、例えば、閾値電圧Vth未満の値に設定されていればよい。
一方、上アーム判定部132は、第3条件又は第4条件のいずれかが成立していない場合、上アーム判定信号SgJHの論理をLにする。
上アーム判定部132から出力された上アーム判定信号SgJHは、制御回路50の備える上アーム絶縁伝達部140を介して上アームAND回路133に入力される。上アーム絶縁伝達部140は、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。上アーム絶縁伝達部140は、例えば、フォトカプラ又は磁気カプラである。上アーム絶縁伝達部140の高圧領域側の構成は、絶縁電源80の上アーム駆動電圧VdHが供給されることにより動作可能に構成され、上アーム絶縁伝達部140の低圧領域側の構成は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。
上アームAND回路133は、上アーム判定信号SgJHの論理が3相ともHである場合、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理をHにする。一方、上アームAND回路133は、少なくとも1相の上アーム判定信号SgJHの論理がLである場合、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理をLにする。上アームAND回路133から出力される上アームASCチェック信号ASCMоnHは、マイコン60に入力される。なお、制御回路50に上アームAND回路133を備えることなく、上アーム判定部132から出力された上アーム判定信号SgJHが、上アーム絶縁伝達部140を介してマイコン60に入力されてもよい。この場合、上アームAND回路133におけるAND処理をマイコン60が実施してもよい。
図9を用いて、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを確認する処理の手順について説明する。
ステップS20では、マイコン60は、回転電機10の停止処理を行う。本実施形態では、始動スイッチ28がオフ状態にされたと上位ECUが判定した場合、上位ECUがマイコン60に対してこの停止処理の実行指示を行う。
マイコン60は、回転電機10の停止処理を行った後、ステップS21において、回転電機10のロータの回転が停止するまで待機する。ここで、ロータの回転が停止したか否かは、例えば電気角速度に基づいて判定すればよい。
ロータの回転が停止したとマイコン60により判定された場合には、ステップS22に進み、第1チェック処理が実施される。図10に、第1チェック処理の手順を示す。
ステップS40では、マイコン60は、3相分の下アームドライバ82に対してオン指令を出力し、3相分の上アームドライバ81に対してオフ指令を出力する。これにより、ステップS41において、下アーム駆動部82aは、3相分の下アームスイッチSWLをオン駆動する。つまり、下アーム駆動部82aは、3相分の下アームスイッチSWLのゲートに充電電流を供給する。また、上アーム駆動部81aは、3相分の上アームスイッチSWHをオフ駆動する。ステップS40の処理は、絶縁電源80の停止をトリガとせずに、下アームスイッチSWLにオン駆動を指示し、上アームスイッチSWHにオフ駆動を指示するための処理である。
ステップS42では、下アーム判定部112は、上記第1条件及び第2条件の双方が成立した場合、下アーム判定信号SgJLの論理をHにする。一方、下アーム判定部112は、第1条件又は第2条件のいずれかが成立していない場合、下アーム判定信号SgJLの論理をLにする。
また、ステップS42では、上アーム判定部132は、上記第3条件及び第4条件の双方が成立した場合、上アーム判定信号SgJHの論理をHにする。一方、上アーム判定部132は、第3条件又は第4条件のいずれかが成立していない場合、上アーム判定信号SgJLの論理をLにする。
ステップS43では、下アームAND回路113は、下アーム判定信号SgJLの論理が3相ともHである場合、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理をHにする。一方、下アームAND回路113は、少なくとも1相の下アーム判定信号SgJLの論理がLである場合、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理をLにする。
また、ステップS43では、上アームAND回路133は、上アーム判定信号SgJHの論理が3相ともHである場合、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理をHにする。一方、上アームAND回路133は、少なくとも1相の上アーム判定信号SgJHの論理がLである場合、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理をLにする。
図9の説明に戻り、ステップS23では、マイコン60は、下アーム絶縁伝達部120を介して入力された下アームASCチェック信号ASCMоnLに基づいて、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にできるか否かを判定する。詳しくは、マイコン60は、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理がHであると判定した場合、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にできると判定する。一方、マイコン60は、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理がLであると判定した場合、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にできないと判定する。
また、マイコン60は、入力された上アームASCチェック信号ASCMоnHに基づいて、3相分の上アームスイッチSWHをオフ状態にできるか否かを判定する。詳しくは、マイコン60は、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理がHであると判定した場合、3相分の上アームスイッチSWHをオフ状態にできると判定する。一方、マイコン60は、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理がLであると判定した場合、3相分の上アームスイッチSWHをオフ状態にできないと判定する。なお、ステップS22,S23の処理が「第1処理」に相当する。
マイコン60は、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にできない、又は3相分の上アームスイッチSWHをオフ状態にできないと判定した場合には、3相短絡制御を正常に実施できないと判定し、ステップS24に進む。ステップS24では、第1チェック処理において正常に実施できなかった旨の情報をメモリ60aに記憶する。その後、ステップS25に進む。
一方、マイコン60は、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にでき、かつ、3相分の上アームスイッチSWHをオフ状態にできると判定した場合には、3相短絡制御を正常に実施できると判定し、ステップS25に進む。ステップS25では、第2チェック処理が実施される。図11に、第2チェック処理の手順を示す。
ステップS50では、マイコン60は、監視部85からのマイコン60のリセットを無効にした上で、自身に異常が発生していると監視部85が判定する動作を意図的に行う。ステップS50の処理は、絶縁電源80の停止をトリガとして下アームスイッチSWLにオン駆動を指示するための処理である。
ステップS51では、監視部85は、マイコン60に異常が発生していると判定し、第1判定信号Sg1の論理をHにする。その結果、異常通知信号FMCUの論理がLにされる。異常検知回路87aは、異常通知信号FMCUの論理がLであると判定した場合、切替スイッチ87bをオン状態にする。これにより、絶縁電源80のUVLO端子に入力される判定電圧Vjinが0Vに向かって低下する。
ステップS52では、絶縁電源80の電源制御部は、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLOを下回るまで待機する。電源制御部は、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLOを下回ったと判定した場合、ステップS53において、低電圧誤動作防止処理を行い、絶縁電源80を停止させる。これにより、絶縁電源80から出力される上,下アーム駆動電圧VdH,VdLは0Vに向かって低下し始める。
ステップS54では、高圧側ASC指令部91は、絶縁電源80から出力される下アーム駆動電圧VdLを検出し、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、異常用電源90に対して起動を指示する。これにより、ステップS55において、異常用電源90から異常用駆動電圧Vepsが出力され始める。なお、ステップS54における異常用電源90に対する起動指示方法は、先の図5のステップS13における起動指示方法と同様の方法であればよい。
その後、ステップS56において、高圧側ASC指令部91は、高圧側ASC指令SgASCを下アーム駆動部82aに対して出力する。これにより、ステップS57において、下アーム駆動部82aは、3相分の下アームスイッチSWLのゲートに充電電流を供給する処理を行う。
ステップS58では、下アーム判定部112は、上記第1条件及び第2条件の双方が成立した場合、下アーム判定信号SgJLの論理をHにする。一方、下アーム判定部112は、第1条件又は第2条件のいずれかが成立していない場合、下アーム判定信号SgJLの論理をLにする。
また、ステップS58では、上アーム判定部132は、上記第3条件及び第4条件の双方が成立した場合、上アーム判定信号SgJHの論理をHにする。一方、上アーム判定部132は、第3条件又は第4条件のいずれかが成立していない場合、上アーム判定信号SgJHの論理をLにする。
ステップS59では、下アームAND回路113は、下アーム判定信号SgJLの論理が3相ともHである場合、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理をHにする。一方、下アームAND回路113は、少なくとも1相の下アーム判定信号SgJLの論理がLである場合、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理をLにする。
また、ステップS59では、上アームAND回路133は、上アーム判定信号SgJHの論理が3相ともHである場合、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理をHにする。一方、上アームAND回路133は、少なくとも1相の上アーム判定信号SgJHの論理がLである場合、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理をLにする。
図9の説明に戻り、ステップS26では、マイコン60は、下アーム絶縁伝達部120を介して入力された下アームASCチェック信号ASCMоnLに基づいて、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にできるか否かを判定する。詳しくは、マイコン60は、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理がHであると判定した場合、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にできると判定し、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理がLであると判定した場合、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にできないと判定する。
また、マイコン60は、入力された上アームASCチェック信号ASCMоnHに基づいて、3相分の上アームスイッチSWHをオフ状態にできるか否かを判定する。詳しくは、マイコン60は、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理がHであると判定した場合、3相分の上アームスイッチSWHをオフ状態にできると判定する。一方、マイコン60は、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理がLであると判定した場合、3相分の上アームスイッチSWHをオフ状態にできないと判定する。なお、ステップS25,S26の処理が「第2処理」に相当する。
マイコン60は、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にできない、又は3相分の上アームスイッチSWHをオフ状態にできないと判定した場合には、3相短絡制御を正常に実施できないと判定し、ステップS27に進む。ステップS27では、第2チェック処理において正常に実施できなかった旨の情報をメモリ60aに記憶する。その後、ステップS28に進む。
一方、マイコン60は、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にでき、かつ、3相分の上アームスイッチSWHをオフ状態にできると判定した場合には、3相短絡制御を正常に実施できると判定し、ステップS28に進む。ステップS28では、第1遮断スイッチ23a及び第2遮断スイッチ23bがオフ状態に切り替えられる。
ステップS29では、マイコン60は、平滑コンデンサ24、放電抵抗体26及び放電スイッチ27を含む閉回路に電流を流して平滑コンデンサ24の蓄積電荷を放出させるべく、放電スイッチ27に対する駆動指示を出力する。これにより、放電スイッチ27が駆動され、その後平滑コンデンサ24の端子電圧が0になる。
所定の終了シーケンスが完了すると、ステップS30では、上位ECUにより電源スイッチ33がオフ状態に切り替えられる。これにより、低圧電源31から制御回路50への給電が停止される。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
第2チェック処理において、マイコン60は、自身に異常が発生していると監視部85に判定させる動作を意図的に行う。これにより、その後、低電圧誤動作防止処理により絶縁電源80が停止させられる。その後、高圧側ASC指令部91は、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、異常用電源90に対して起動を指示し、また、高圧側ASC指令SgASCを下アーム駆動部82aに対して出力する。これにより、3相分の下アームスイッチSWLに対してオン駆動が指示される。
そして、下アームASCチェック部110は、オン駆動が指示されている場合における下アームスイッチSWLの駆動状態を検出し、その検出結果に基づいて、マイコン60に送信する下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理を定める。また、上アームASCチェック部130及び上アームAND回路133により、上アームスイッチSWHの駆動状態の検出結果に基づいて、マイコン60に送信する上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理が定められる。マイコン60は、受信した各ASCチェック信号ASCMоnL,ASCMonHに基づいて、図5の3相短絡制御が正常に実施できるか否かを判定する。これにより、従来ではシャットダウン状態となるような制御回路50内の異常が発生する場合等に備えて、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを事前に判定することができる。
また、マイコン60に異常が発生していると監視部85に判定させる第2チェック処理におけるマイコン60の動作により、図5の処理を模擬した図11のステップS51〜S57の処理が実施され、上述したように、下アームスイッチSWLに対するオン駆動が指示される。このため、従来ではシャットダウン状態となるような制御回路50内の異常が実際に発生した場合に実施される図5の処理を正常に実施できるか否かも踏まえ、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを判定できる。
第1チェック処理において、マイコン60は、3相分の下アームドライバ82に対してオン指令を出力し、3相分の上アームドライバ81に対してオフ指令を出力する。そして、下アームASCチェック部110は、オン指令がなされている場合における下アームスイッチSWLの駆動状態を検出し、その検出結果に基づいて、マイコン60に送信する下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理を定める。また、上アームASCチェック部130及び上アームAND回路133により、オフ指令がなされている場合における上アームスイッチSWHの駆動状態の検出結果に基づいて、マイコン60に送信する上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理が定められる。マイコン60は、受信した各ASCチェック信号ASCMоnL,ASCMonHに基づいて、マイコン60からの指示による3相短絡制御が正常に実施できるか否かを判定する。このように、マイコン60からの3相短絡制御の指示を模擬した処理により、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを事前に判定することができる。
下アームASCチェック部110は、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にできるか否かを判定するために、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgeLを用いる。図10の第1チェック処理では、下アームスイッチSWLに対するマイコン60のオン指令をトリガとして、その後下アームスイッチSWLのゲートの充電処理が実施される。また、図11の第2チェック処理では、マイコン60の動作をトリガとして、その後下アームスイッチSWLのゲートの充電処理が実施される。そして、ゲートが正常に充電されていれば、ゲート電圧VgeLが上昇する。このため、ゲート電圧VgeLは、マイコン60から下アームスイッチSWLのゲートまでの経路が正常であるか否かを簡易かつ的確に把握するためのパラメータとなる。
ただし、ゲート電圧VgeLが上昇して閾値電圧Vth以上になっていたとしても、必ずしも下アームスイッチSWLがオン状態になっていることを担保できない。そこで、下アームASCチェック部110は、下アームスイッチSWLがオン状態になっているか否かを判定するために、下アームスイッチ電圧検出部111の出力信号VcLを用いる。この出力信号VcLは、下アームスイッチSWLがオン状態とされているかオフ状態とされているかに応じて変化する値であるため、下アームスイッチSWLがオン状態になっていることを把握できるパラメータとなる。したがって、ゲート電圧VgeLに加え、出力信号VcLを用いることにより、下アームスイッチSWLがオン状態になっているか否かの判定精度を高めることができる。
上アームASCチェック部130は、3相分の上アームスイッチSWHをオフ状態にできるか否かを判定するために、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgeHを用いる。図10の第1チェック処理では、上アームスイッチSWHに対するマイコン60のオフ指令をトリガとして、その後上アームスイッチSWHのゲートの放電処理が実施される。そして、ゲートから電荷が正常に放出されていれば、ゲート電圧VgeHが0まで低下する。このため、ゲート電圧VgeHは、マイコン60から上アームスイッチSWHのゲートまでの経路が正常であるか否かを簡易かつ的確に把握するためのパラメータとなる。
ただし、ゲート電圧VgeHが0まで低下して閾値電圧Vth未満になっていたとしても、必ずしも上アームスイッチSWHがオフ状態になっていることを担保できない。そこで、上アームASCチェック部130は、上アームスイッチSWHがオフ状態になっているか否かを判定するために、上アームスイッチ電圧検出部131の出力信号VcHを用いる。この出力信号VcHは、上アームスイッチSWHがオフ状態とされているかオン状態とされているかに応じて変化する値であるため、上アームスイッチSWHがオフ状態になっていることを把握できるパラメータとなる。したがって、ゲート電圧VgeHに加え、出力信号VcHを用いることにより、上アームスイッチSWHがオフ状態になっているか否かの判定精度を高めることができる。
第1,第2遮断スイッチ23a,23bがオフ状態であると、高圧電源30から平滑コンデンサ24に電力が供給されなくなる。この場合、平滑コンデンサ24を電力供給源とする異常用電源90から電力を出力できなくなるため、図11のステップS50〜S57により下アームスイッチSWLのオン駆動が指示されても、下アームスイッチSWLをオン状態にすることができない。この場合、実際には3相短絡制御を正常に実施できるにもかかわらず、正常に実施できないと誤判定されてしまう。この点、本実施形態では、第1,第2遮断スイッチ23a,23bがオフ状態に切り替えられる前に図9のステップS25,S26の処理が行われる。このため、実際には3相短絡制御を正常に実施できるにもかかわらず、正常に実施できないと誤判定されてしまうことを防止できる。
第2チェック処理が第1チェック処理よりも後に行われる。これにより、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを確認する処理に要する時間を短縮できる。なお、これに対し、第2チェック処理が第1チェック処理よりも後に行われる場合、この確認処理に要する時間が長くなってしまい、ひいては図9の処理に要する時間が長くなってしまう。つまり、第2チェック処理では、絶縁電源80を停止させることをトリガとして下アームスイッチSWLにオン駆動が指示される。絶縁電源80を停止させてしまうと、その後第1チェック処理を行うために、絶縁電源80を再起動させる必要がある。この場合、第1,第2チェック処理の双方の完了に要する時間が長くなってしまう。
回転電機10のロータの回転が停止している場合に3相短絡制御が行われるとき、巻線11に逆起電圧が発生しないことから、巻線11及び下アームスイッチSWLを含む閉回路に循環電流が流れない。このため、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを確認する処理は、電流が流れない安全な状態であるロータの回転停止状態で行われるのが望ましい。
ここで、巻線11の線間電圧が平滑コンデンサ24の端子電圧以下になるようにロータが回転している場合において、シャットダウン制御が行われるときは巻線11及び平滑コンデンサ24を含む閉回路に電流が流れないのに対し、3相短絡制御が行われるときは巻線11及び下アームスイッチSWLを含む閉回路に循環電流が流れる。一方、ロータの回転が停止している場合は、シャットダウン制御が行われるとき及び3相短絡制御が行われるときそれぞれにおいて電流が流れない。つまり、ロータの回転が停止している場合は、シャットダウン制御が行われるときの電流流通状態と、3相短絡制御が行われるときの電流流通状態とが同じになるため、これら電流流通状態に基づいて下アームスイッチSWLがオン状態になっているか否かを判別することができない。
そこで、本実施形態では、第1,第2チェック処理において、ロータの回転が停止している場合に3相短絡制御を正常に実施できるか否かを判定するために、上,下アームスイッチSWH,SWLのゲート電圧VgeH,VgeL及び上,下アームスイッチ電圧検出部111,131の出力信号VcH,VcLが用いられる。この構成によれば、ロータの回転が停止している場合であっても、下アームスイッチSWLがオン状態になっているか否かと、上アームスイッチSWHがオフ状態になっているか否かとを的確に判定でき、ひいては第1,第2チェック処理により3相短絡制御を正常に実施できるか否かを的確に判定できる。
<第1実施形態の変形例>
・マイコン60は、図10の第1チェック処理において、例えばステップS43の処理の完了後、さらに、3相分の上アームドライバ81に対してオン指令を出力し、3相分の下アームドライバ82に対してオフ指令を出力する処理を行ってもよい。これは、上アームスイッチSWHにショート異常が発生する場合に備えた3相短絡制御を正常に実施できるか否かを確認するためのものである。この場合、上アーム判定部132、上アームAND回路133、下アーム判定部112及び下アームAND回路113の構成を以下のようにすればよい。
まず、上アーム側について説明する。上アーム判定部132では、オフ判定電圧Vjoffに代えて、オン判定電圧Vjonが用いられる。詳しくは、上アーム判定部132は、入力されたゲート電圧VgeHがオン判定電圧Vjon以上であるとの第5条件と、上アームスイッチ電圧検出部131の出力信号VcHが0V近傍であるとの第6条件との双方が成立した場合、上アーム判定信号SgJHの論理をHにする。一方、上アーム判定部132は、第5条件又は第6条件のいずれかが成立していない場合、上アーム判定信号SgJHの論理をLにする。
上アームAND回路133は、上アーム判定信号SgJHの論理が3相ともHである場合、3相分の上アームスイッチSWHがオン状態にされていると判定し、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理をHにする。一方、上アームAND回路133は、少なくとも1相の上アーム判定信号SgJHの論理がLである場合、3相分の上アームスイッチSWHをオン状態にできないと判定し、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理をLにする。
続いて、下アーム側について説明する。下アーム判定部112では、オン判定電圧Vjonに代えて、オフ判定電圧Vjoffが用いられる。詳しくは、下アーム判定部112は、入力されたゲート電圧VgeLがオフ判定電圧Vjoff以下であるとの第7条件と、下アームスイッチSWLのコレクタ及びエミッタ間電圧VceLが高圧電源30の端子電圧近傍であるとの第8条件との双方が成立した場合、下アーム判定信号SgJLの論理をHにする。ここでは、下アーム判定部112は、下アームスイッチ電圧検出部111の出力信号VcLに基づいて、第8条件が成立しているか否かを判定する。一方、下アーム判定部112は、第7条件又は第8条件のいずれかが成立していない場合、下アーム判定信号SgJLの論理をLにする。
下アームAND回路113は、下アーム判定信号SgJLの論理が3相ともHである場合、3相分の下アームスイッチSWLがオフ状態にされていると判定し、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理をHにする。一方、下アームAND回路113は、少なくとも1相の下アーム判定信号SgJLの論理がLである場合、3相分の下アームスイッチSWLをオフ状態にできないと判定し、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理をLにする。
・図9のステップS22,S23では、下アームスイッチSWLをオン状態にできるか否かの判定と、上アームスイッチSWHをオフ状態にできるか否かの判定との双方が実施されたがこれに限らず、いずれか一方の判定が実施されてもよい。オフ状態にできるか否かの判定が実施されない場合、制御回路50が上アームASCチェック部130を備えなくてもよく、オン状態にできるか否かの判定が実施されない場合、制御回路50が下アームASCチェック部110を備えなくてもよい。
・図9のステップS25,S26では、下アームスイッチSWLをオン状態にできるか否かの判定と、上アームスイッチSWHをオフ状態にできるか否かの判定との双方が実施されたがこれに限らず、いずれか一方の判定が実施されてもよい。
・上アームスイッチSWHをオフ状態にできるか否かの判定方法としては、ゲート電圧VgeH及び出力信号VcHが用いられる方法に限らず、例えば、以下(A),(B)の方法であってもよい。
(A)マイコン60は、3相分の上アームドライバ81に対してオフ指令を出力し、3相分の下アームドライバ82に対してオン指令を出力する。この際、上アームスイッチSWHにショート異常が発生していると、上下アーム短絡が発生し、上アームドライバ81により過電流異常が検知され、上アーム駆動部81aからマイコン60へと過電流異常が発生した旨の情報が伝達される。マイコン60は、過電流異常が発生した旨の情報を取得した場合、上アームスイッチSWHをオフ状態にできないと判定し、その情報を取得していない場合、上アームスイッチSWHをオフ状態にできると判定すればよい。
(B)高電位側電気経路22H及び低電位側電気経路22Lのうち少なくとも一方に直流電流センサが設けられる。直流電流センサの検出値は、例えば電流インターフェースを介して、マイコン60に入力される。この構成において、マイコン60は、3相分の上アームドライバ81に対してオフ指令を出力し、3相分の下アームドライバ82に対してオン指令を出力する。この際、上アームスイッチSWHにショート異常が発生していると、上下アーム短絡が発生し、直流電流センサにより過電流が検出される。マイコン60は、直流電流センサの検出値に基づいて過電流異常が発生したと判定した場合、上アームスイッチSWHをオフ状態にできないと判定し、過電流異常が発生していないと判定した場合、上アームスイッチSWHをオフ状態にできると判定すればよい。
なお、上記(B)の方法において、直流電流センサの検出値に代えて、高圧電源30を監視対象とする電池監視装置により検出された高圧電源30の電流検出値が用いられてもよい。
・下アームASCチェック部110は、下アームドライバ82に内蔵されていてもよく、上アームASCチェック部130は、上アームドライバ81に内蔵されていてもよい。
・3相短絡制御として、3相分の上アームスイッチSWHをオンし、3相分の下アームスイッチSWLをオフする制御が実施されてもよい。この場合、異常用電源90は、3相分の上アーム駆動部81aそれぞれに対して個別に備えられればよい。なお、この場合、3相の上アームドライバ81それぞれに上アームASCチェック部130が個別に内蔵されていてもよい。
・各ASCチェック部110,130は、マイコンで構成されていてもよい。
・フォトカプラ又は磁気カプラ等の絶縁伝達部を用いることなく、各ASCチェック部110,130による確認結果を通信でマイコン60に伝達させてもよい。通信としては、例えば、SPI(登録商標)や、CAN、UART、Ethernet(登録商標)、パラレル通信を用いることができる。また、通信は、例えば、2値のデジタル信号であってもよいし、Duty信号であってもよい。
・下アームスイッチSWLのコレクタ及びエミッタ間電圧VceLを検出する構成は、図7に示した構成に限らず、例えばコンデンサの分圧で検出する構成であってもよい。なお、上アームスイッチSWHのコレクタ及びエミッタ間電圧VceHを検出する構成についても同様である。
・下アーム判定部112としては、3相それぞれに対応して個別に設けられるものに限らず、3相共通のものであってもよい。この場合、各相における下アームスイッチ電圧検出部111の出力信号VcL及びゲート電圧VgeLが共通の下アーム判定部112に集約されればよい。
・下アームASCチェック部110による各相の判定結果の集約は、制御回路50の低圧領域の構成(例えばマイコン60)で実施されてもよい。この構成は、例えば、下アームASCチェック部110が下アームドライバ82に内蔵される場合に採用される。
・3相短絡制御を正常に実施できるか否かの判定に下アームスイッチSWLのゲート電圧VgeLが用いられず、下アームスイッチ電圧検出部111の出力信号VcLのみ用いられてもよい。この場合、3相短絡制御を正常に実施できるか否かの判定は、例えば以下のように実施されればよい。
マイコン60は、3相の上アームスイッチSWHに対するスイッチング指令としてオフ指令を出力し、かつ、3相の下アームスイッチSWLに対するスイッチング指令としてオン指令を出力している状況下、絶縁伝達部を介して各相の上,下アームスイッチ電圧検出部131,111の出力信号VcH,VcLに関する情報を取得する。マイコン60は、その取得情報に基づいて、各相の下アームスイッチSWLのコレクタ及びエミッタ間電圧VceLが0近傍であると判定して、かつ、各相の上アームスイッチSWHのコレクタ及びエミッタ間電圧VceLが高圧電源30の端子電圧近傍の値であると判定した場合、3相短絡制御を正常に実施できると判定すればよい。
ただし、この場合、3相の上アームスイッチSWHに対してオフ指令が出力され、かつ、3相の下アームスイッチSWLに対してオン指令が出力されている場合にのみ、3相短絡制御を正常に実施できるか否かの判定に用いる出力信号VcH,VcLが有効にされればよい。これは、3相の上,下アームスイッチSWH,SWL全てがオフ状態になる場合、スイッチSWH,SWL周辺のインピーダンスで出力信号VcH,VcLが変化してしまい、オン状態であるかオフ状態であるかを誤判定するおそれがあることに鑑みたものである。
・図9の処理において、第1チェック処理が行われる順番は、ステップS30の処理の前であれば任意に設定できる。例えば、第2チェック処理は、第1チェック処理よりも後に行われてもよい。
・第1チェック処理及び第2チェック処理がロータの回転中に行われてもよい。
・図9の処理において、ステップS23で否定判定された場合、ステップS25〜S27の処理が実施されることなくステップS28に移行されてもよい。
・図9の処理において、第1チェック処理が無くてもよい。
・図4において、絶縁電源80を停止させるための異常通知信号FMCUの生成源としては、第1判定信号Sg1及び第2判定信号Sg2のいずれか一方であってもよい。
・高圧側ASC指令部91は、下アーム駆動電圧VdLに代えて、上アーム駆動電圧VdHに基づいて高圧側ASC指令SgASCを出力してもよい。この場合、高圧側ASC指令部91は、絶縁伝達部を介して上アーム駆動電圧VdHの情報を取得すればよい。
・監視部85に供給される電圧としては、入力回路61の出力電圧VBに限らず、第1〜第3低圧電源回路63〜65の出力電圧以外であれば他の電源の電圧であってもよい。
・絶縁電源80を構成する電源制御部が、上アーム絶縁電源及び下アーム絶縁電源それぞれに対して個別に設けられていてもよい。この場合、低電圧誤動作防止処理により、上アーム絶縁電源に対応して設けられた電源制御部と、下アーム絶縁電源に対応して設けられた電源制御部との双方を停止させることにより絶縁電源80を停止させればよい。
・上,下アームドライバ81,82を構成する上,下アーム絶縁伝達部81b,82bの低圧領域側の構成に第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されなくなるカプラ異常が発生すると、マイコン60からのスイッチング指令を上,下アーム駆動部81a,82aに伝達できなくなる。この場合、シャットダウン状態になってしまう。この問題に対処すべく、以下に説明する構成を採用することができる。
下アーム絶縁伝達部82bの低圧領域側の構成に対する電力供給源を、第1低圧電源回路63とは別の電源回路(以下、別電源回路)とする。別電源回路としては、例えば、第1低圧電源回路63に異常が発生した場合であって従属故障が発生しない電源を用いることができ、具体的には例えば、中間電源回路62の出力電圧Vmを降圧することにより第5電圧V5r(例えば5V)を生成する第5電源回路を用いることができる。
この構成において、別電源回路の出力電圧が低下した場合に絶縁電源80を停止させ、高圧側ASC指令部91から高圧側ASC指令SgASCを下アーム駆動部82aに対して出力させればよい。具体的には例えば、電源停止部87の異常検知回路87aは、別電源回路の出力電圧を検出し、検出した出力電圧が低下した場合に切替スイッチ87bをオンに切り替えればよい。以上説明した構成によれば、カプラ異常が発生した場合であっても、3相短絡制御を行うことができる。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図12に示すように、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを確認する処理の一部が変更されている。図12において、先の図9に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
ステップS23において正常に実施できるとマイコン60により判定された場合、又はステップS24の処理の完了した場合、ステップS28の処理が行われる。
その後、ステップS31では、マイコン60は、電圧センサ77により検出された平滑コンデンサ24の端子電圧VHdが所定値Vr未満であるか否かを判定する。所定値Vrは、高圧電源30の端子電圧(例えば定格電圧)よりも低い値であって、かつ、0よりも高い値である。マイコン60は、ステップS31において否定判定した場合、ステップS32に進み、平滑コンデンサ24の端子電圧を低下させる電圧調整処理を行う。この処理は、例えば、放電スイッチ27の駆動による放電抵抗体26が用いられる放電処理、電気機器25を構成するDCDCコンバータの駆動による放電処理、又はスイッチングデバイス部20により巻線11に電流を流す放電処理として実施されればよい。ここで、巻線11に流す場合、q軸電流を0とし、d軸電流のみ流して回転電機10のトルクを発生させないようにすることが望ましい。なお、ステップS32の処理が「放電制御部」に相当する。
ステップS31においてマイコン60により肯定判定された場合、ステップS25に進み、第2チェック処理が実施される。つまり、平滑コンデンサ24の端子電圧が低下させられた状態で異常用電源90から電力が出力され始める(図11のステップS56参照)。これにより、異常用電源90の入力電圧を低減でき、異常用電源90の劣化の進行を抑制したり、異常用電源90の故障の発生を抑制したりできる。例えば、異常用電源90がスイッチング電源の場合、異常用電源90で発生する損失(特にスイッチング損失)を低減でき、異常用電源90の発熱を抑制することができる。また、例えば、異常用電源90がシリーズ電源の場合、異常用電源90の入出力電圧の差を低減でき、異常用電源90を構成するMOSFET等のスイッチの発熱を抑制することができる。
<第2実施形態の変形例>
インバータ15が放電スイッチ27を備えていなくてもよい。この場合、図12のステップS28において第1,第2遮断スイッチ23a,23bがオフ状態に切り替えられた後、平滑コンデンサ24の端子電圧VHdが低下して所定値Vr未満になるのを待った後にステップS25の第2チェック処理が実施されればよい。
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図13及び図14に示すように、各ASCチェック部110,130の構成が変更されている。図13及び図14において、先の図7及び図8に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
図13に示すように、下アームASCチェック部110は、下アームスイッチ電圧検出部111を備えていない。このため、下アーム判定部112には、下アームスイッチ電圧検出部111の出力信号VcLは入力されない。
下アーム判定部112は、入力されたゲート電圧VgeLがオン判定電圧Vjon以上である場合、下アーム判定信号SgJLの論理をHにする。一方、下アーム判定部112は、ゲート電圧VgeLがオン判定電圧Vjon未満である場合、下アーム判定信号SgJLの論理をLにする。
図14に示すように、上アームASCチェック部130は、上アームスイッチ電圧検出部131を備えていない。このため、上アーム判定部132には、上アームスイッチ電圧検出部131の出力信号VcHは入力されない。
上アーム判定部132は、入力されたゲート電圧VgeHがオフ判定電圧Vjoff以下である場合、上アーム判定信号SgJHの論理をHにする。一方、上アーム判定部132は、ゲート電圧VgeHがオフ判定電圧Vjoffを上回る場合、上アーム判定信号SgJHの論理をLにする。
図15を用いて、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを確認する処理の手順について説明する。図15において、先の図9に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
ステップS22では、第1チェック処理が実施される。図16に、第1チェック処理の手順を示す。図16において、先の図10に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
ステップS42aでは、下アーム判定部112は、入力されたゲート電圧VgeLがオン判定電圧Vjon以上である場合、下アーム判定信号SgJLの論理をHにする。一方、下アーム判定部112は、入力されたゲート電圧VgeLがオン判定電圧Vjon未満である場合、下アーム判定信号SgJLの論理をLにする。
また、ステップS42aでは、上アーム判定部132は、入力されたゲート電圧VgeHがオフ判定電圧Vjoff以下である場合、上アーム判定信号SgJHの論理をHにする。一方、上アーム判定部132は、入力されたゲート電圧VgeHがオフ判定電圧Vjoffを上回る場合、上アーム判定信号SgJHの論理をLにする。
図15の説明に戻り、続くステップS33では、マイコン60は、入力された第1チェック処理における上,下アームASCチェック信号ASCMоnH,ASCMоnLと、メモリ60aに記憶された異常信号SgFとに基づいて、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを判定する。詳しくは、マイコン60は、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理がHであって、かつ、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理がHであって、かつ、記憶された異常信号SgFの論理がL(つまり正常)の場合、ステップS34に進み、3相短絡制御を正常に実施できると判定する。
一方、マイコン60は、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理がLの場合、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理がLの場合、又は異常信号SgFの論理がHの場合、3相短絡制御を正常に実施できないと判定し、ステップS24に進む。ステップS33において、異常信号SgFが用いられるのは、回転電機10のトルクをその指令値に制御する通常制御が実施される場合の結果を用いて3相短絡制御を正常に実施できるか否かを判定するためである。
つまり、本実施形態では、下アームスイッチSWLがオン状態になっているか否かを判定するために下アームスイッチ電圧検出部111の出力信号VcLが用いられない。このため、下アームスイッチSWLがオン状態になっていることを担保するために代わりの情報が必要となる。ここで、本実施形態では、この代替情報として、通常制御が実施される場合の異常信号SgFが用いられる。異常信号SgFの論理がLの場合、通常制御時において下アームスイッチSWLに異常が発生していないことから、下アームスイッチSWLの駆動状態を意図通りの駆動状態にできると考えられる。このため、ゲート電圧VgeLに加え、異常信号SgFを用いることにより、下アームスイッチSWLをオン状態にできることを担保する。
また、上アームスイッチSWHがオフ状態になっているか否かを判定するために上アームスイッチ電圧検出部131の出力信号VcHが用いられない。このため、上アームスイッチSWHがオフ状態になっていることを担保するために代わりの情報が必要となる。ここで、本実施形態では、この代替情報として、下アーム側と同様に、通常制御が実施される場合の異常信号SgFが用いられる。異常信号SgFの論理がLの場合、通常制御時において上アームスイッチSWHに異常が発生していないことから、上アームスイッチSWHの駆動状態を意図通りの駆動状態にできると考えられる。このため、ゲート電圧VgeHに加え、異常信号SgFを用いることにより、上アームスイッチSWHをオフ状態にできることを担保する。
ステップS25では、第2チェック処理が行われる。図17に、第2チェック処理の手順を示す。図17において、先の図11に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
ステップS58aでは、下アーム判定部112は、入力されたゲート電圧VgeLがオン判定電圧Vjon以上である場合、下アーム判定信号SgJLの論理をHにする。一方、下アーム判定部112は、入力されたゲート電圧VgeLがオン判定電圧Vjon未満である場合、下アーム判定信号SgJLの論理をLにする。
また、ステップS58aでは、上アーム判定部132は、入力されたゲート電圧VgeHがオフ判定電圧Vjoff以下である場合、上アーム判定信号SgJHの論理をHにする。一方、上アーム判定部132は、入力されたゲート電圧VgeHがオフ判定電圧Vjoffを上回る場合、上アーム判定信号SgJHの論理をLにする。
図15の説明に戻り、続くステップS35では、マイコン60は、入力された第2チェック処理における上,下アームASCチェック信号ASCMоnH,ASCMоnLと、メモリ60aに記憶された異常信号SgFとに基づいて、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを判定する。詳しくは、マイコン60は、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理がHであって、かつ、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理がHであって、かつ、記憶された異常信号SgFの論理がLの場合、ステップS36に進み、3相短絡制御を正常に実施できると判定する。一方、マイコン60は、下アームASCチェック信号ASCMоnLの論理がLの場合、上アームASCチェック信号ASCMоnHの論理がLの場合、又は異常信号SgFの論理がHの場合、3相短絡制御を正常に実施できないと判定し、ステップS27に進む。ステップS35で異常信号SgFが用いられる理由は、ステップS33で異常信号SgFが用いられる理由と同じである。
以上説明したように、本実施形態では、第1,第2チェック処理において3相短絡制御を正常に実施できるか否かの判定に、ゲート電圧VgeH,VgeLに対応する上,下アームASCチェック信号ASCMоnH,ASCMоnLに加え、通常制御時に取得される異常信号SgFが用いられる。このため、この判定用のコレクタ及びエミッタ間電圧VceH,VceLを検出する構成を制御回路50に備えることなく、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを判定できる。つまり、上,下アームスイッチSWH,SWLの駆動状態を意図通りの駆動状態にできることを担保しつつ、制御回路50の簡素化を図ることができる。
<第3実施形態の変形例>
下アーム駆動部82a、下アームスイッチSWL、及び下アーム駆動部82aと下アームスイッチSWLのゲートとを接続する電気経路等を含む構成と、上アーム駆動部81a、上アームスイッチSWH、及び上アーム駆動部81aと上アームスイッチSWHのゲートとを接続する電気経路等を含む構成との故障率を何等かの手段で低い値にできるなら、3相短絡制御を正常に実施できるか否かの判定に異常信号SgFが用いられなくてもよい。つまり、この場合、この判定にゲート電圧VgeH,VgeLのみが用いられることとなる。
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1〜第3実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図18及び図19に示すように、制御回路50の高圧領域側の構成が一部変更されている。なお、図18及び図19において、先の図2及び図3に示した構成については、便宜上、同一の符号を付している。
図18に示すように、制御回路50の低圧領域には、シャットダウン指令部100が設けられている。シャットダウン指令部100は、ロジック回路で構成され、OR回路86からの異常通知信号FMCUが入力される。シャットダウン指令部100は、入力される異常通知信号FMCUの論理がHになった場合、マイコン60からのスイッチング指令にかかわらず、3相分の上,下アームドライバ81,82に対するスイッチング指令を強制的にオフ指令にする。この構成によれば、上アーム駆動電圧VdHの低下を待たずに3相短絡制御を開始できる。つまり、制御回路50の異常が発生した後、3相短絡制御を迅速に開始できる。
図19に示すように、通常用電源経路92には、異常用ダイオード95に代えて、異常用スイッチ101が設けられている。高圧側ASC指令部91は、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、異常用スイッチ101をオン状態に切り替える。これにより、異常用電源90から下アーム駆動部82aへと異常用駆動電圧Vepsが供給され始める。なお、高圧側ASC指令部91は、シャットダウン指令部100により強制的にオフ指令にされた後に高圧側ASC指令SgASCを下アーム駆動部82aに対して出力すればよい。
本実施形態において、異常用電源90は、第1,第2遮断スイッチ23a,23bがオンに切り替えられて異常用電源90の入力電圧VHinが0から上昇し始めてから、異常用電源90の入力電圧VHinが平滑コンデンサ24の端子電圧VH(高圧電源30の端子電圧)になるまでの期間において、その入力電圧VHinが規定電圧Vαを超えるタイミングで起動される。具体的には、上記規定電圧Vαは、異常用電源90の制御部が起動する電圧である。この起動電圧は、例えば、低電圧誤動作防止処理の解除閾値と同じ値に設定される。
図20を用いて、異常用電源90の動作等について説明する。図20(a)は入力回路61の出力電圧VBの推移を示し、図20(b)は異常用電源90の入力電圧VHinの推移を示し、図20(c)は第1〜第3低圧電源回路63〜65の出力電圧の推移を示す。図20(d)はマイコン60の動作状態の推移を示し、図20(e)は絶縁電源80から出力される上,下アーム駆動電圧VdH,VdLの推移を示し、図20(f)は異常用電源90の出力電圧Vepsの推移を示す。なお、第1〜第3低圧電源回路63〜65それぞれの出力電圧の推移は実際には異なるが、図20(c)ではその推移を簡略化して示している。
時刻t1において、入力回路61の出力電圧VBが所定の電圧に到達し、第1〜第3低圧電源回路63〜65の出力電圧が上昇し始める。第1,第2遮断スイッチ23a,23bがオン状態に切り替えられた後、時刻t2において、異常用電源90の入力電圧VHinが規定電圧Vαを超え、異常用電源90が起動する。その後、時刻t3においてマイコン60が起動する。
以上の構成により、異常用電源90は、OR回路86から出力される異常通知信号FMCUの論理がLに反転する前から動作することとなる。このため、異常用スイッチ101がオンに切り替えられることにより、異常用電源90から下アーム駆動部82aへと速やかに異常用駆動電圧Vepsが供給され始める。これにより、3相短絡制御を迅速に開始することができる。
以上説明した本実施形態においても、第1〜第3実施形態で説明した3相短絡制御を正常に実施できるか否かを確認する構成を適用できる。この場合、先の図11のステップS54において、高圧側ASC指令部91は、絶縁電源80から出力される下アーム駆動電圧VdLを検出し、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、異常用スイッチ101をオン状態に切り替えればよい。これにより、ステップS55において、異常用電源90から下アームドライバ82へと異常用駆動電圧Vepsが供給され始める。なお、ステップS54における異常用スイッチ101のオン状態への切り替えタイミングは、先の図5のステップS13で説明したタイミングと同様のタイミングであればよい。
<第4実施形態の変形例>
・シャットダウン指令部100は、上,下アームドライバ81,82のうち、いずれかのアームドライバに対するスイッチング指令を強制的にオフ指令にしてもよい。例えば、シャットダウン指令部100は、3相分の上アームドライバ81のみに対するスイッチング指令をオフ指令とし、3相分の下アームスイッチSWLは、第1実施形態で説明したのと同様に、下アーム駆動電圧VdLの低下をトリガとしてオンされればよい。
・シャットダウン指令部100によりスイッチング指令を強制的にオフ指令にするトリガは、異常通知信号FMCUに限らず、3相短絡制御の実行を指示する他の信号であってもよい。
・上アームスイッチSWHを強制的にオフにするための構成としては、シャットダウン指令部100を用いた構成に限らない。例えば、上アームドライバ81に対する上アーム駆動電圧VdHの供給を停止させることにより上アームドライバ81を停止させる構成、又は上アーム絶縁伝達部81bとは別の絶縁伝達部を介して上アーム駆動部81aにオフ指令を伝達する構成により、上アームスイッチSWHを強制的にオフさせてもよい。
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第4実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図21及び図22に示すように、ゲートに電圧を直接供給するために、制御回路50の高圧領域側の構成が一部変更されている。なお、図21及び図22において、先の図18及び図19に示した構成については、便宜上、同一の符号を付している。また、本実施形態においても、異常用電源90の起動タイミングは、第4実施形態と同じである。
制御回路50の高圧領域において、下アーム駆動部82aと下アームスイッチSWLのゲートとを接続するゲート充放電経路には、第1規制ダイオード102が設けられている。第1規制ダイオード102は、アノードが下アーム駆動部82a側に接続された状態で設けられている。なお、図22では、下アームスイッチSWLのゲート放電経路の図示を省略している。
制御回路50は、異常用スイッチ103を備えている。異常用スイッチ103は、異常用電源90の出力側と、共通経路104とを接続する。共通経路104には、各第2規制ダイオード105を介して各下アームスイッチSWLのゲートが接続されている。
高圧側ASC指令部91は、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、異常用スイッチ103をオン状態に切り替える。これにより、異常用電源90から各下アームスイッチSWLのゲートへと異常用駆動電圧Vepsが直接供給され始める。その結果、3相短絡制御が実施される。なお、異常用スイッチ103のオン状態への切り替えタイミングは、第4実施形態で説明した異常用スイッチ101のオン状態への切り替えタイミングと同じタイミングにすればよい。
以上説明した本実施形態においても、第4実施形態と同様に、3相短絡制御を正常に実施できるか否かを確認することができる。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・第1,第2チェック処理において上アームスイッチSWHをオフ状態にできるか否かの判定方法としては、例えば以下に説明する方法であってもよい。
まず、マイコン60は、上アームスイッチSWHに対する低圧領域の最終的なスイッチング指令がオフ指令になっているか否かを判定する。ここで、最終的なスイッチング指令は、マイコン60から上アーム絶縁伝達部81bに対して出力されるスイッチング指令と、状態判定部79から上アーム絶縁伝達部81bに対して出力されるシャットダウン指令CmdSDNとの論理演算値である。そして、マイコン60は、最終的なスイッチング指令がオフ指令になっていると判定して、かつ、メモリ60aに記憶された異常信号SgFの論理がL(つまり正常)であると判定した場合、意図どおりに上アームスイッチSWHをオフ状態にできると判定する。
上アームスイッチSWHは異常用電源90を電力供給源としてオンされないため、上アームスイッチSWHをオフ状態にするための高圧領域の構成が正常であることは、異常信号SgFを用いることにより担保できる。また、上アームスイッチSWHをオフ状態にするための低圧領域の構成が正常であることは、低圧領域の最終的なスイッチング指令を確認することにより担保できる。このため、上述した方法によれば、上アームスイッチSWHをオフ状態にできるか否かを判定することができる。また、上述した方法によれば、上アームASCチェック部130、上アームAND回路133及び上アーム絶縁伝達部140を不要にできる。なお、マイコン60からのスイッチング指令と、状態判定部79からのシャットダウン指令CmdSDNとを上アームドライバ81が取得し、上アームドライバ81が上記論理演算値を算出してマイコン60に対して出力してもよい。また、低圧領域の最終的なスイッチング指令であれば、他の形態の指令であってもよい。この形態としては、具体的には例えば、マイコン60からのスイッチング指令が状態判定部79に入力される場合、状態判定部79の出力信号を低圧領域の最終的なスイッチング指令とするものが挙げられる。
・電源停止部87及び高圧側ASC指令部91に代えて、マイコン60又は状態判定部79等が制御システムに異常が発生しているか否かを判定し、異常が発生したと判定した場合に3相短絡制御を行ってもよい。つまり、マイコン60又は状態判定部79等が異常判定部及び異常時制御部の機能を有していてもよい。
・異常用電源90としては、スイッチング電源(具体的には、絶縁型又は非絶縁型スイッチング電源)に限らず、例えば、シリーズ電源又はツェナーダイオードで構成された電源であってもよい。
・第2〜第5実施形態において、先の第1実施形態の変形例で説明したように、カプラ異常が発生した場合に備えて別電源回路が設けられ、別電源回路の出力電圧が低下した場合に絶縁電源80を停止させて3相短絡制御を行う構成が用いられてもよい。
・各ドライバ81,82として、低圧領域及び高圧領域の境界を跨がず、高圧領域のみに設けられるドライバが用いられてもよい。
・先の図1に示す構成において、平滑コンデンサ24と各遮断スイッチ23a,23bとの間に昇圧コンバータが備えられていてもよい。
・スイッチングデバイス部を構成するスイッチとしては、IGBTに限らず、例えばボディダイオードを内蔵するNチャネルMOSFETであってもよい。この場合、ドレインが高電位側端子に相当し、ソースが低電位側端子に相当する。
・スイッチングデバイス部を構成する各相各アームのスイッチとしては、互いに並列接続された2つ以上のスイッチであってもよい。この場合、互いに並列接続されたスイッチの組み合わせとしては、例えば、SiCのスイッチング素子及びSiのスイッチング素子の組み合わせ、又はIGBT及びMOSFETの組み合わせであってもよい。
・回転電機の制御量としては、トルクに限らず、例えば、回転電機のロータの回転速度であってもよい。
・回転電機としては、永久磁石同期機に限らず、例えば巻線界磁型同期機であってもよい。また、回転電機としては、同期機に限らず、例えば誘導機であってもよい。さらに、回転電機としては、車載主機として用いられるものに限らず、電動パワーステアリング装置や空調用電動コンプレッサを構成する電動機等、他の用途に用いられるものであってもよい。
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。