JP2021127385A - ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】比摩耗性が高い優れた摺動性を有し、且つ成形品の外観強度に優れ、さらに強度や耐衝撃性等の機械物性にも優れるポリカーボネート樹脂組成物及び成形品を提供する。【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、D50粒径が3〜50μmのポリテトラフルオロエチレン(B)を1〜20質量部、酸変性ポリエチレン樹脂(C)を1〜7質量部含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関し、詳しくは、比摩耗性が高い優れた摺動性を有し、且つ成形品の外観強度に優れ、さらに強度や耐衝撃性等の機械物性にも優れるポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、電気絶縁性、寸法安定性等に優れ、これらの特性のバランスも良好であることから、電気電子機器部品、OA機器部品、精密機械部品、車輌用部品などの分野で広く使用されている。
しかし、ポリカーボネート樹脂は、自己潤滑性がないため、摺動性が求められる分野に使用するには制限がある。
ポリカーボネート樹脂材料に摺動性を付与する方法として、例えば、特許文献1では、ポリカーボネート樹脂に、非極性α−オレフィン(共)重合体とビニル系(共)重合体からなり、分散樹脂の粒子径が0.001〜10μmである多相構造熱可塑性樹脂を配合した摺動特性が向上した樹脂組成物を提案している。
特許文献2ではポリカーボネート樹脂にシラン変性ポリエチレン樹脂を配合させる方法を開示している。また、その他にもシリコーン系の添加剤を配合することがよく行われるが、シリコーン系添加剤、例えばオルガノシロキサン系エラストマーやシリコーングラフトポリオレフィン等では一定の摺動性を付与することができるものの、シリコーン系添加剤は成形品の外観が悪くなるという欠点を有している。
そして、本出願人は、特許文献3にて、ポリカーボネート樹脂(A)に、スチレン系(共)重合体セグメントを有するエチレン又はエチレン―酢酸ビニル共重合体(B)と酸変性ポリエチレン樹脂(C)を組み合わせて含有するポリカーボネート樹脂組成物を提案した。この組成物では、酸変性ポリエチレン樹脂(C)は外観を良好にするものの、スチレン系(共)重合体セグメントを有するエチレン又はエチレン―酢酸ビニル共重合体(B)を使用せずに酸変性ポリエチレン樹脂(C)を単独で配合した場合には摩耗量が大きく(同文献の比較例4−5を参照)、比摩耗性が必ずしも十分ではない。
特開平4−211447号公報 特開平5−247236号公報 特開2018−141076号公報
本発明の課題(目的)は、上記従来技術の問題点に鑑み、比摩耗性が高い優れた摺動性を有し、且つ成形品の外観強度に優れ、さらに強度や耐衝撃性等の機械物性にも優れるポリカーボネート樹脂組成物及び成形品を提供することにある。
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂に、酸変性ポリエチレン樹脂及び特定の粒径を有するポリテトラフルオロエチレンをそれぞれ特定の量で組み合わせて含有するポリカーボネート樹脂組成物が、比摩耗性が高い優れた摺動性を有し、且つ成形品の外観強度に優れ、さらに強度や耐衝撃性等の機械物性にも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物及び成形品を提供する。
[1]ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、D50粒径が3〜50μmのポリテトラフルオロエチレン(B)を1〜20質量部、酸変性ポリエチレン樹脂(C)を1〜7質量部含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
[2]ポリテトラフルオロエチレン(B)のD50粒子径が3〜20μmである上記[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[3]酸変性ポリエチレン(C)のMFR(190℃、21.2N荷重)が15g/10min以下である上記[1]または[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[4]ポリテトラフルオロエチレン(B)と酸変性ポリエチレン樹脂(C)の含有量の質量比(C)/(B)が1以下である上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、比摩耗性が高い優れた摺動性を有し、且つ成形品の外観強度に優れ、さらに強度や耐衝撃性等の機械物性にも優れる。そのため、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品は、高度の摺動性と良好な外観性、高い機械強度が求められる製品に好適に使用することができる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではない。
なお、本願明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、D50粒径が3〜50μmのポリテトラフルオロエチレン(B)を1〜20質量部、酸変性ポリエチレン樹脂(C)を1〜7質量部含有することを特徴とする。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物が含有するポリカーボネート樹脂(A)は、その種類に制限は無く、また、1種のみを用いてもよく、2種以上を、任意の組み合わせ及び任意の比率で、併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂は、一般式:−[−O−X−O−C(=O)−]−で示される炭酸結合を有する基本構造の重合体である。上記式中、Xは、一般には炭化水素であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)としては、特には芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂とは、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素であるポリカーボネート樹脂をいう。芳香族ポリカーボネートは、各種ポリカーボネートの中でも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、優れている。
芳香族ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限はないが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなる芳香族ポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしてもよい。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いてもよい。また芳香族ポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、芳香族ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単独重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このような芳香族ポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
これらの中でもビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーの例を挙げると、
エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、デカン−1,10−ジオール等のアルカンジオール類;
シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタン−1,3−ジオール等のシクロアルカンジオール類;
エチレングリコール、2,2’−オキシジエタノール(即ち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6−ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’−ビフェニルジメタノール、4,4’−ビフェニルジエタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
1,2−エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2−エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−エポキシシクロヘキサン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2,3−エポキシノルボルナン、1,3−エポキシプロパン等の環状エーテル類;等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、粘度平均分子量[Mv]で10,000〜40,000であることが好ましい。粘度平均分子量が10,000未満では、機械的強度が十分ではなくなる傾向があり、粘度平均分子量が40,000を超えると、流動性が悪く成形性が悪くなる傾向にある。粘度平均分子量は、より好ましくは16,000〜40,000であり、さらに好ましくは18,000〜30,000、特には18,500〜25,000である。分子量をこのような範囲に調節するには、後記するような分子量調節剤の量を制御する等の公知の方法で可能である。
ここで、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83 から算出される値を意味する。また極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
Figure 2021127385
ポリカーボネート樹脂に関するその他の事項
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1,000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下である。このようにすることで、ポリカーボネート樹脂組成物の滞留熱安定性及び色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、ポリカーボネート樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)にて行われる。
なお、ポリカーボネート樹脂(A)は、ポリカーボネート樹脂の1種のみを含む態様に限定されず、モノマー組成、分子量、末端水酸基濃度等が異なるポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して使用してもよい。また、ポリカーボネート樹脂に他の熱可塑性樹脂を混合したアロイ(混合物)として組み合わせて用いてもよい。
さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;光学的性質を改良するためにポリスチレン等のオレフィン系構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500以上、好ましくは2,000以上であり、また、通常9,500以下、好ましくは9,000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
さらにポリカーボネート樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。前記の使用済みの製品としては、例えば、光学ディスク等の光記録媒体;導光板;自動車窓ガラス、自動車ヘッドランプレンズ、風防等の車両透明部材;水ボトル等の容器;メガネレンズ;防音壁、ガラス窓、波板等の建築部材などが挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、なかでも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
[ポリテトラフルオロエチレン(B)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、D50粒径が3〜50μmのポリテトラフルオロエチレン(B)を含有する。D50粒径が3〜50μmの範囲にあるポリテトラフルオロエチレン(B)を酸変性ポリエチレン(C)と併せて含有することにより、比摩耗性に優れた高度の摺動性を示し、成形品の外観にも優れたものにすることが可能である。D50粒径が3μm未満では表層部でポリカーボネートと相分離し、シルバーストリーク等の外観が悪化しやすく、50μmを超えるとポリテトラフルオロエチレンが表層よりも沈みやすく、摺動性が悪化しやすいくなる。D50粒径は、好ましくは4μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは6μm以上であり、好ましくは47μm以下、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下、中でも33μm以下、とりわけ30μm以下、さらには25μm以下、20μm以下、特には15μm以下であり、最も好ましくは10μm以下である。D50粒径が、例えば20μm以下、あるいは15μm以下、さらには10μm以下のように小粒径になると、成形品の外観がさらに良化し、耐衝撃性も向上し、成型収縮率も小さくなるので好ましい。
ポリテトラフルオロエチレン(B)のD50粒径は、樹脂組成物製造時の溶融混練の影響を受けて小さくなることはあまり考えられないが、本発明においては溶融混練前の原料のD50粒径である。なお、ポリテトラフルオロエチレンには乳化重合と懸濁重合の2種の製法があり、乳化重合品と懸濁重合品では対象となる状態が異なるため、乳化重合の場合は2次粒子径を対象とし、懸濁重合は1次粒子径を対象とする。
ポリテトラフルオロエチレン(B)は、フィブリル形成能を有さないフッ素樹脂であることが好ましい。ここで、「フィブリル形成能」とは、せん断力等の外的作用により、樹脂同士が結合して繊維状になる傾向を示すことをいう。フッ素樹脂が「フィブリル形成能を有さない」かどうかの目安は、比溶融粘度により評価することも可能であり、380℃における比溶融粘度(ASTM 1238−52T)が1×10ポイズ以下であり、さらには1×10ポイズ以下であり、その下限は、通常、5×10ポイズである。
ポリテトラフルオロエチレン(B)がフィブリル形成能を有さないことで、溶融混練や成形加工時等にフィブリルを形成することがなく摺動性を良くすることができる。
ポリテトラフルオロエチレン(B)は、フィブリル形成能を有さない範囲で、共重合成分としてヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロアルキルエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテル等の含フッ素オレフィン、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート等の含フッ素アルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。このような共重合成分の含有量は、ポリテトラフルオロエチレン中の全テトラフルオロエチレンに対して、好ましくは10質量%以下である。
また、ポリテトラフルオロエチレン(B)の質量平均分子量(Mv)は、特に限定されないが、10,000以上が好ましく、30,000以上がより好ましく、50,000以上がさらに好ましく、100,000以上が特に好ましい。質量平均分子量の上限は、特に限定されないが、通常10,000,000以下である。
ポリテトラフルオロエチレン(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、1〜20質量部である。含有量が1質量部未満では摺動性が不十分となり、20質量部を超えると流動性は悪化し、成形時のゲート部で樹脂が乱流した際にポリカーボネート樹脂と相分離し剥離や白化が起こりやすくなる。好ましい含有量は2質量部以上、より好ましくは2.5質量部以上、さらには3質量部以上であり、また好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
[酸変性ポリエチレン樹脂(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、酸変性ポリエチレン樹脂(C)をポリテトラフルオロエチレン(B)と併せて含有する。
酸変性ポリエチレン樹脂(C)は、不飽和カルボン酸又はその誘導体等の酸で変性されたポリエチレン樹脂である。
酸変性に用いる酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。また、これら不飽和カルボン酸の誘導体も使用できる。その誘導体としては、例えば、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩が挙げられ、具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、マレイン酸エチル、アクリルアミド、マレイン酸アミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウムが挙げられる。
上記の中でも、不飽和ジカルボン酸又はその誘導体が好ましく、マレイン酸、無水マレイン酸がより好ましい。不飽和カルボン酸又はその誘導体は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
酸変性する前のポリエチレンは、代表的にはエチレン単独重合体であるが、本発明の効果を損なわない範囲内において、エチレンと少量のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。
α−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、エチル−1−ペンテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、ジメチル−1−ヘキセン、トリメチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、メチルエチル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、プロピル−1−ペンテン、1−デセン、メチル−1−ノネン、ジメチル−1−オクテン、トリメチル−1−ヘプテン、エチル−1−オクテン、メチルエチル−1−ヘプテン、ジエチル−1−ヘキセン、1−ドデセン、1−ヘキサドデセン等の炭素原子数3〜20のα−オレフィンが挙げられる。これらα−オレフィンは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
変性の方法も特に制限は無く、公知の方法を用いれば良い。
例えば、ポリエチレンにラジカル開始剤の存在下で酸成分(例えばマレイン酸又はその無水物)をグラフト重合させて得られる。その際に、必要に応じてラジカル開始剤としての、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物、金属水素化物を加えてもよい。ラジカル開始剤は、酸成分及び酸変性前のポリエチレンとそのまま混合して使用しても良いし、少量の有機溶媒に溶解して使用してもよい。
また、押出機を用いて、無溶媒で、ポリエチレンにラジカル開始剤の存在下で酸成分をグラフト重合させてもよい。グラフト重合反応は、ポリエチレンの融点以上の温度で0.5〜10分間行うことが好ましい。
酸成分の仕込み量は、酸変性前のポリエチレン100質量部に対して、通常0.01〜15質量部、好ましくは0.01〜5質量部である。ラジカル開始剤の使用量は、酸変性前のポリエチレン100質量部に対して、通常0.001〜1質量部、好ましくは0.001〜0.3質量部である。
酸変性ポリエチレン樹脂(C)中の酸含量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.8〜8質量%である。
酸変性ポリエチレン樹脂(C)は、MFR(温度190℃、21.2N荷重で測定)が15g/10min以下であることが、酸変性ポリエチレン樹脂(C)の溶融時の粘度が高くなるので好ましい。MFRはJIS K7210に準拠し、温度190℃、21.2N荷重の条件で測定したメルトフローレートである。MFRは、好ましくは13g/10min以下、より好ましくは12g/10min以下であり、好ましくは1g/10min以上、より好ましくは2g/10min以上、さらに好ましくは3g/10min以上である。
酸変性ポリエチレン樹脂(C)としては、マレイン酸変性ポリエチレン樹脂がより好ましい。
酸変性ポリエチレン樹脂(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、1〜7質量部である。含有量が、1質量部を下回ると摺動性に対する向上効果は確認されない。また、酸変性ポリエチレン樹脂は、完全にはポリカーボネート樹脂と相溶しないため、7質量部を超えると顕著に表面に浮き出やすい。これは特に射出成形時にゲート部での樹脂乱流時に顕著に確認される。酸変性ポリエチレン樹脂(C)の含有量は、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは2.5質量部以上、中でも3質量部以上、とりわけ3.5質量部以上、特には4質量部以上であり、好ましくは6.5質量部以下、より好ましくは6質量部以下、さらに好ましくは5.5質量部以下、特には5質量部以下であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は酸変性ポリエチレン樹脂(C)をポリテトラフルオロエチレン(B)と組み合わせて含有することを特徴とするが、ポリテトラフルオロエチレン(B)と酸変性ポリエチレン樹脂(C)の含有量の質量比(C)/(B)は1以下であることが好ましく、より好ましくは0.9以下であり、また、より好ましくは0超、さらには0.1以上であることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、スチレン系(共)重合体セグメントを有するエチレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有しないか、含有する場合でもその量がポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、特に3質量部以下であることが好ましい。スチレン系(共)重合体セグメントを有するエチレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体を、上記したポリテトラフルオロエチレン(B)及び酸変性ポリエチレン樹脂(C)と併せて含有すると、スチレン系(共)重合体セグメントを有するエチレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体はポリカーボネート樹脂と相溶しないため、表層でのポリテトラフルオロエチレン及び酸変性ポリエチレン樹脂の表層への分布を妨げるため好ましくない。
スチレン系(共)重合体セグメントを有するエチレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体は、スチレン系(共)重合体部分(セグメント)と、エチレン(共)重合体部分(セグメント)又はエチレン−酢酸ビニル共重合体部分(セグメント)からなる共重合体であり、スチレン系(共)重合体セグメントと、エチレン(共)重合体セグメント又はエチレン−酢酸ビニル共重合体セグメントからなるグラフト共重合体であることが好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はエチレン(共)重合体セグメントを主鎖とし、スチレン系(共)重合体セグメントを側鎖とするグラフト共重合体が好ましい。
スチレン系(共)重合体セグメントは、スチレン系単量体の単独重合体または他のビニル系単量体と共重合体であるスチレン系単量体としては、例えばスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
他のビニル系単量体としては、シアン化ビニル単量体;アクリル酸もしくはメタクリル酸のグリシジルエステル;アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルキルエステル等が好ましく挙げられる。
また、スチレン系(共)重合体セグメントを有するエチレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体(B)は市販されており、例えば、日油株式会社の商品名「モディパー」シリーズの中から選択して入手することができる。
[離型剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は離型剤を含有することも好ましい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。また、数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。脂肪族炭化水素は単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましく、ポリエチレンワックスが特に好ましい。
なお、離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上である。離型剤の含有量が0.1質量部未満の場合は離型性の効果が不十分な場合がある。離型剤の含有量は、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。
[その他の含有成分]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物においては、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上述したもの以外のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、上記以外の樹脂、上記以外の各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
その他の樹脂
その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)等の熱可塑性ポリエステル樹脂;
ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)等のスチレン系樹脂;
ポリエチレン樹脂(PE樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、環状シクロオレフィン樹脂(COP樹脂)、環状シクロオレフィン共重合体(COP)樹脂等のポリオレフィン樹脂;
ポリアミド樹脂(PA樹脂);ポリイミド樹脂(PI樹脂);ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂);ポリウレタン樹脂(PU樹脂);ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE樹脂);ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂);ポリスルホン樹脂(PSU樹脂);ポリメタクリレート樹脂(PMMA樹脂);等が挙げられる。
なお、その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。ただし、その他の樹脂を含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらに5質量部以下、中でも3質量部以下、特には1質量部以下とすることが好ましい。
樹脂添加剤
樹脂添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料(酸化チタン、カーボンブラックを含む。)、帯電防止剤、充填材、難燃剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
また、さらに前記した成分以外のその他の摺動性改良剤、例えばシリコーンとポリオレフィンの混合物(グラフト結合物を含む)、あるいはシリコーン系エラストマー等を含有してもよい。ただし、その他の摺動性改良剤を含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、特には7質量部以下とすることが好ましい。
なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、上記した(A)〜(C)成分、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
[成形体]
得られた樹脂組成物ペレットから成形体を製造する方法に制限はなく、ポリカーボネート樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法などが挙げられる。成形が容易なことと生産性の観点から射出成形、射出圧縮成形が好ましい。
ポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品は、比摩耗性が高い優れた摺動性を有し、且つ成形品の外観強度に優れ、さらに強度や耐衝撃性等の機械物性にも優れるため、自動車分野、OA機器分野、家電、電気・電子分野等の部品等として好適に使用でき、特に、高度の摺動性と良好な外観性、高い機械強度が求められる製品に好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例により説明する。
実施例及び比較例に用いた各原料成分は、以下の表1の通りである。
Figure 2021127385
[実施例1〜7、比較例1〜7]
上記した各成分を下記表2−3に記載の割合で配合し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製二軸押出機(TEX30α)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間、樹脂温度280〜300℃(測定値)にて溶融混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂組成物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化してポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
<各種物性の評価>
[試験片の作製]
得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製射出成形機(NEX80III)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で、曲げ試験用のISO多目的試験片(4mm厚)、シャルピー衝撃試験用のISO多目的試験片(3mm厚)及び外観評価用の90×60×2mmの試験片を射出成形した。
[曲げ弾性率、曲げ強度]
上記ISO多目的試験片(4mm厚)を用い、ISO178に準拠して、23℃の環境下において、曲げ弾性率(単位:MPa)及び曲げ強度(単位:MPa)を測定した。
[シャルピー衝撃強度]
上記ISO多目的試験片(3mm厚)を用い、ISO179−1に準拠して、23℃の環境下において、ノッチ付きシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。
[外観の評価]
上記で得られた外観評価用の試験片の外観を、目視にて以下の基準で判断した。
◎:分散状態が極めて良好で、表面に光沢感がある。
○:分散状態が良好で、表面に光沢感がある。
△:表面の一部に不均一な部分やツブ状のものが観察される。
×:表面の全体に不均一部やツブ状のものが観察される。
××:表面全体で不均一部やツブ状物あるいは螺鈿状のものが観察される。
[比摩耗量]
上述した方法で得られた樹脂組成物のペレットを、120℃で5時間乾燥した後、射出成型機(日本製鋼所社製「J55−60H」)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で射出成形し、円筒形スラスト試験片(接触面積2cm)の試験片を作製した。
得られた円筒形スラスト試験片について、鈴木式摩擦摩耗試験機を用い、温度23℃、試験面圧0.25MPa、試験速度55mm/sec、試験時間180分、相手材(ポリカーボネート樹脂80質量部、ABS樹脂20質量部からなる樹脂組成物製)を上にして、摩擦摩耗試験を行い、本材料と相手材の比摩耗量(単位:×0.01mm/kgf・km)を測定した。
以上の評価結果を以下の表2−3に示す。
Figure 2021127385
Figure 2021127385
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、比摩耗性が高い優れた摺動性を有し、且つ成形品の外観強度に優れ、さらに強度や耐衝撃性等の機械物性にも優れるので、自動車分野、OA機器分野、家電、電気・電子分野等の種々の部品・製品として広く利用することができ、工業的利用価値が極めて高い。

Claims (5)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、D50粒径が3〜50μmのポリテトラフルオロエチレン(B)を1〜20質量部、酸変性ポリエチレン樹脂(C)を1〜7質量部含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. ポリテトラフルオロエチレン(B)のD50粒子径が3〜20μmである請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 酸変性ポリエチレン(C)のMFR(190℃、21.2N荷重)が15g/10min以下である請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. ポリテトラフルオロエチレン(B)と酸変性ポリエチレン樹脂(C)の含有量の質量比(C)/(B)が1以下である請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
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