JP2021127270A - 圧電体および圧電素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】電気特性の優れた圧電体および圧電素子の提供。【解決手段】LiTaO3単結晶からなり、キュリー温度をX℃とし、Ir含有量をYng/gとしたときに、0<Y<10^(−0.10034×X+63.67)を満たす圧電体7。Xは607℃以下である、圧電体7。Yは400ng/gh以下である、圧電体7。上面7aにピッチ1μmのテスト用IDT電極9を配置し、室温でこれに印加する直流電圧の値を変化させながら共振周波数と反共振周波数との差であるΔfを測定したときに、直流電圧の値が40Vまでは、Δfの変化が1MHz以下である、圧電体7。圧電体7と、圧電体上に間をあけて位置する1対の電極9と、を備える圧電素子1。1対の電極9は、1対の櫛歯電極を含むIDT電極9である、圧電素子1。圧電体7の厚みは、IDT電極9のピッチの2倍以下である、圧電素子1。【選択図】図1

Description

本発明は、信頼性の優れた圧電体およびそれ用いた圧電素子に関するものである。
近年、圧電体を用いた電子部品の需要が高まっている。このような電子部品としては、例えば、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:以下SAWということがある)を用いたSAWフィルタが例示できる。
このような電子部品において安定した電気特性を実現するためには、圧電体の各種電気特性を安定させる必要がある。特許文献1には、圧電体の焦電性に着目し、焦電性によるスパーク等を抑制するために体積抵抗率を所望の値で一定にする技術が提案されている。
特開2008−201640号公報
さらに安定した電気特性を実現できる圧電体や、それを用いた圧電素子を提供することが求められている。
本発明は上述の事情のもとに案出されたものであり、その目的は、安定した電気特性を実現できる圧電体およびそれを用いた圧電素子を提供することである。
本開示の一態様の圧電体は、LiTaO単結晶からなり、キュリー温度をX(℃)とし、Ir含有量をY(ng/g)としたときに、以下の式を満たす。
0<Y<10^(−0.10034×X+63.67)
本開示の一態様に係る圧電素子は、上記の圧電体と、前記圧電体に間をあけて位置する1対の電極と、を備える。
上述の本開示の一態様に係る圧電体は、焦電性による電気特性変化を抑制したものとなる。また、このような圧電体を備え圧電素子は、電気特性の優れたものとなる。
本開示にかかる圧電素子の一実施形態を示す断面図である。 図1に示す圧電素子の上面図である。 比較例に係る圧電素子の周波数特性を示す線図である。 図4(a)は図3に示す圧電素子のAFM像であり,図4(b)は図4(a)に示す領域における圧電応答力顕微鏡像である。 印加電圧および共振周波数と反共振周波数との差(Δf)の関係を示す線図である。 圧電体のキュリー温度とIr含有量と分極反転のしやすさとの関係を示す図である。 キュリー温度と直流電圧を50V印加したときのΔf値との関係を示す。 図8(a)は、Ir含有量と直流電圧を50V印加したときのΔf値との関係を示す線図であり、図8(b)は、Zr含有量と直流電圧を50V印加したときのΔf値との関係を示す線図である。 図9(a),図9(b)はそれぞれ図1に示す圧電素子の変形例を示す断面図である。 図1に示す圧電素子の変形例を示す断面図である。
以下、本開示の圧電体、圧電素子にかかる実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
また、変形例等の説明において、既に説明された実施形態の構成と同一または類似する構成については、既に説明された実施形態と同一の符号を付し、説明を省略することがある。
圧電体、圧電素子は、いずれの方向が上方または下方とされてもよいものであるが、以下では、便宜的に、互いに直交するD1方向、D2方向、D3方向を定義するとともにD3方向の正側を上方として、上面、下面等の用語を用いるものとする。なお、上述のD1方向,D2方向およびD3方向で定義される直交座標系は、圧電体、圧電素子の形状に基づいて定義されているものであり、圧電体を構成する圧電結晶の結晶軸(X軸,Y軸,Z軸)を指すものではない。また、基本構成が類似しているものは、第1、第2等の記載を省略してこれらを区別せずに説明することがある。
<圧電素子:弾性波素子1>
以下、圧電素子の一例としてSAW等の弾性波を励振する弾性波素子を用いて説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る圧電素子としての弾性波素子1の模式的な断面図である。
弾性波素子1は、支持基板3と中間部5と圧電体7とIDT電極9とを備える。支持基板3と中間部5と圧電体7とはこの順に積層されている。
支持基板3は、この例では、その上に積層される中間部5および圧電体7を支持するものであり、一定の強度を備えれば特に限定されない。例えば、圧電体7に比べて線膨張係数の小さい材料で構成する場合には、温度変化による圧電体7の変形を低減することで、温度変化による特性変化を低減することができる。また、圧電体7中を伝搬する弾性波の横波音速に比べて支持基板3中を伝搬する弾性波の横波音速が早くなるように材料を選定した場合には、弾性波を圧電体7に閉じ込めることができ、周波数特性の優れた弾性波素子1を提供することができる。
このような材料として、例えば、サファイア基板やSi基板等を例示できる。本実施形態においては支持基板3としてSi基板を用いた場合を例に説明する。
なお、支持基板3と中間部5と圧電体7との積層体の反りを低減するように、支持基板3の材料を選定してもよい。例えば、中間部5の線膨張係数が圧電体7の線膨張係数に比べて小さい場合には、支持基板3は中間部5よりも線膨張係数の大きい材料にしてもよい。
中間部5は、例えば、酸化ケイ素、窒素ケイ素、酸化アルミニウム等の絶縁性を有する材料からなり、その結晶性は特に限定されない。中間部5を設けることにより、不要の電位が形成されたり不要の容量が形成されたりすることを低減することができるので、弾性波素子1の電気特性を向上させることができる。この例では、中間部5として、酸化ケイ素を用いている。
特に、本例のように、支持基板3として半導体材料であるSi基板を用いる場合には、圧電体7と支持基板3との間に絶縁性の中間部5を設けることにより、支持基板3の影響を低減すことができる。絶縁性を確保しつつ、かつ、支持基板3の高音速材料の特性を活かすためには、中間部3の厚みは、後述のIDT電極9により規定されるピッチpに対して0.01p以上2p以下としてもよい。特に0.1p〜0.4pとした場合には支持基板3(この場合はSi)の導電率の影響を避けることができる。
また、中間部5として酸化ケイ素を用いる場合には、圧電体7中を伝搬する弾性波の横波音速に比べて中間部5中を伝搬する弾性波の横波音速が遅くなる。この場合には、以下のメカニズムによりロバスト性を高めることができる。すなわち、圧電体7が想定の厚みより薄くなり弾性波素子1としての共振周波数が高くなるときには、中間部5における弾性波の分布量が増え、共振周波数を低くするように働く。圧電体7が規定の厚みより厚くなり弾性波素子1としての共振周波数が低くなるときには、中間部5における弾性波の分布量が減り、共振周波数を高くするように働く。このように、弾性波素子1において圧電体7の厚みが変動しても周波数特性の変化を低減することができるので、ロバスト性を高めることができる。さらに、温度特性の向上効果も期待できる。
圧電体7は、第1面7aとこれに対向する第2面7bとを備える。便宜上、第2面7bから第1面7aに向かう方向(D3方向)を上方ということがある。中間部5は圧電体7の第2面7bに接合されている。
圧電体7は、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO:以下LTという)結晶からなる圧電性を有する単結晶の基板や、ニオブ酸リチウム(LiNbO:以下LNという)結晶からなる圧電性を有する単結晶の基板や薄膜等を用いることができる。
圧電体7は、厚みは2p以下、すなわち弾性波の波長λ以下である。弾性波の波長λ以下の厚みとすることで、弾性波を圧電体7に閉じ込めることができ、弾性波素子1のQ値を高めることができる。また、圧電体7のオイラー角を選定することにより、共振周波数を高くすることもできる。
ここで、圧電体7は、LTを用いる場合には、そのキュリー温度をX(℃)とし、Ir元素の含有量をY(ng/g)としたときに以下の関係式(1)を満たす。
0<Y<10^(−0.10034×X+63.67) ・・・・(1)
XとYとの関係について、詳しくは後述する。
圧電体7に設けられる一対の電極として、この例では、IDT電極9を備えるものとする。IDT電極9は、一対の櫛歯電極90を含み、圧電体7の第1面7aに位置する。IDT電極9と第1面7aとの間には、下地層が位置していてもよい。
IDT電極9は、導電性を有する材料を用いて形成されており、この例ではAlにCuを添加したAl−Cu合金で形成されている。IDT電極9は、Al,Cu,Pt,Mo,Au等種々の導電性材料を採用することができ、さらに、これら複数の層を積層させて構成してもよい。また。複数層の積層体からなる場合には、積層界面に下地層を介在させてもよい。
図2に、IDT電極9の形状を示す。図2は、弾性波素子1の上面図である。図2に示すように、IDT電極9は、2つのバスバー91と、バスバー91のいずれかに接続される複数の長尺状の電極指92が複数一方向に配列されている。そして一方のバスバー91に接続される電極指92と他方のバスバー91に接続される電極指92とが交互に配置されている。また、一方のバスバー91に接続される電極指92の先端に対向し、他方のバスバー91に接続されるダミー電極93を備えている。
すなわち、一方のバスバー91とこれに接続された電極指92,ダミー電極93とで一方の櫛歯電極90を構成し、他方のバスバー91とこれに接続された電極指92,ダミー電極93とで他方の櫛歯電極90を構成する。なお、図中において、一方のバスバー91に接続される構成(一方の櫛歯電極90)と他方のバスバー91に接続される構成(他方の櫛歯電極90)とを区別するために、一方に斜線を付している。
このようなIDT電極9に高周波信号が印加されると、電極指92の中心間間隔pを半波長とする定在波が励振される。
なお、IDT電極9の電極指92の配列方向の両側には反射器11が位置している。これにより、IDT電極9と反射器11とで1ポート型の共振子として機能する。なお、本開示の弾性波素子1はこのようなIDT電極9を含めばよく、その数、配置等については特に限定されない。例えば、このような共振子を複数含むラダー型フィルタや、縦結合型フィルタ等を構成することもできる。
本開示の弾性波素子1によれば、上述の構成を備えることで、電気特性の優れたものとなる。以下、そのメカ二ズムについて詳述する。
発明者は、弾性波素子を作製したときに、IDT電極の設計によらず周波数特性が劣化する場合があることを発見した。具体的には、共振周波数および反共振周波数の近傍にリップルが発生することがあることを発見した。
図3は、IDT電極でフィルタを構成したときの参考例に係る弾性波素子の通過帯域近傍の周波数特性を示す。横軸は周波数であり、縦軸は透過特性を示す。周波数特性の良好な比較品1の値を線L1で、周波数特性の劣化が確認できる比較品2の値を線L2で示す。線L1は線L2に比べ通過帯域内に図中に矢印で示すようなリップルが発生し電気特性が劣化していることが分かる。
一般に、圧電体7の焦電性を改善するために、圧電体として予め還元処理を施したLT基板やLN基板を用いることが知られている。これに対して、発明者は圧電体が薄くなる場合には、例え還元処理を施した圧電体を用いてもリップルが発生することがあることを見出した。また、焦電防止にFeを添加したLT基板も知られている。この場合であっても、圧電体が薄くなる場合には、リップルが発生することがあることを見出した。
この現象につき発明者が鋭意検討を行なった結果、線L1のリップルは、熱と焦電効果を原因として圧電体7の一部で発生する分極反転に起因することを見出した。ここで「熱」とは、IDT電極7形成後に加わる弾性波素子1作製上の熱履歴や、高周波信号印加による発熱を含む。
作製時の工程や急激な高周波信号印加により弾性波素子1の温度が急激に上昇すると、焦電効果により電荷が発生し、それが原因でIDT電極9の電極間に電圧が生じる。LT基板には還元処理が施されているのでこの電圧はそれほど高くないが(5〜20V程度と推察される)、高温になるとLT基板の抗電界が低下するため、容易に分極反転が起こってしまうと考えられる。
また、圧電体7が薄いと、分極反転部が容易に裏面まで到達し、安定な180°ドメインを構成してしまう。このため、一度生じた分極反転は固定されてしまい、前記したフィルタ特性のリップルとなって表れる。
同様のことは、圧電体7が厚い場合でも起こるが、この場合は分極反転部が圧電体7の裏面まで到達しないため、安定な180°ドメインが構成されない。このため、焦電効果による電圧がなくなったり温度が下がったりすると、分極反転部がもとに戻ってしまう。このような原理により、圧電体7が厚い場合は、前記したフィルタ特性のリップルのような不具合が起こりにくい。ただし、この場合でも実使用時に電力を印加すると通過帯域やその他の周波数にリップルが発生してしまい、通信機器の性能劣化の一因となっていた。
ここで、図1に示す弾性波素子1において、中間部5を備えない場合には、リップルが発生しにくいこともある。これは、圧電体7が薄くなっても、圧電体とSi基板とが直接接合されることで表面電位が安定し、かつ、導電性を一定以上備えるSi基板の側に電荷を逃がすことができるためと考えられる。また、中間部5よりも支持基板3の方が熱導電率が大きいため、中間部5がない場合には、圧電体7で生じた熱を効率よく支持基板3に放熱することができるためと考えられる。
これに対し、図1に示す構成においては、圧電体7に絶縁性の材料(中間部5)が接していることでさらに表面電位が不安定となり焦電効果が発現しやすくなる。このような状況下で、熱により焦電効果が発生し、IDT電極9において電圧が生じ、分極反転が生じるものと推察される。
このように、線L1におけるリップルは圧電体7の分極反転によるものとすると、上述の現象についても矛盾が生じない。
そこで、分極反転を抑制するために、本開示では圧電体7のキュリー温度Xと不純物濃度Yとを式(1)を満たす関係となるようにしている。キュリー温度は、圧電体の特性を示す指標の1つであり、例えば、Li,Ta,Oの組成比によっても変化する。そして、このキュリー温度と不純物濃度とがこのような関係式を満たすことにより、圧電体7において、ストイキオメトリックの値から組成比をずらし、かつ、電気特性や結晶性に影響のない範囲で適度に不純物を含有させることで、圧電体7を構成する圧電結晶の結晶格子に歪や欠陥を発生させることができる。これにより、結晶ドメインを反転しにくくしたり、反転したドメインの移動を低減したりすることができる。
このような圧電体7を用いることで、線L1のようなリップルは発生せずに線L2のような波形を得ることを確認した。なお、圧電体7は式(1)を満たした上で還元処理を施したものとしてもよい。また、Feなど他の不純物がドープされていてもよい。
上述のような弾性波素子1を実際に作製した。具体的には、圧電体7の膜厚を0.8μm(0.7p)、中間部5の膜厚を0.32μm(0.3p)とした。このような弾性波素子1に対して、共振周波数近傍の周波数を有する高周波信号を印加して耐電力試験を行なった場合と、熱履歴のない弾性波素子1に対して加熱を行なった場合との双方においてリップルは発生しないことを確認した。一方で、比較例として、圧電体7として還元処理をしたのみで式(1)を満たさない圧電結晶を用いた場合にも同様の試験を行なったところ、線L1のリップルを再現することができることを確認した。
さらに、このような比較例にかかるSAW装置について、ウエットエッチングによりIDT電極9を除去して圧電体7を露出させ、圧電応答力顕微鏡(PFM)により分極状態を測定した。その結果を図4に示す。図4(a)は圧電体7表面のダミー電極93があった場所付近のAFM像である。IDT電極9そのものは除去されているが、製造工程でできた圧電体7表面の凸凹が検出されており、IDT電極9の痕跡が確認できる。図4(a)では、左端にバスバー91があり、そこからダミー電極93が紙面の右方向に伸びており、紙面左側から伸びている電極指92にギャップを隔てて対向している。図4(b)は同じ場所のPFM像である。図4(b)から、ダミー電極93と対向電極のギャップ付近を中心に、ダミー電極と対向電極に沿って電圧Vがマイナスになっており、分極の方向がその他の部分と反転していることが確認できた。なお、弾性波素子1では正負反転している部分は確認されなかった。
このように、ダミー電極93においては加熱・冷却時の焦電性により電圧が生じると同時に、電場の方向が分極方向に沿った方向(ダミー電極とその電極指の方向)になるため、分極反転が生じるものと推察される。このため、ダミー電極93を備え、焦電効果による電圧が印加される可能性があるIDT電極9を含む場合には、圧電体7を備える弾性波素子1とすることが好ましい。特に、広い面積の引き回し配線に接続されているIDT電極9において分極反転が生じやすくなる。
<圧電体7>
上述の通り、分極反転を抑制するためには、圧電体7の極僅かな組成値等の制御が必要である。以下に、圧電体自体の特性について詳述する。
以下の圧電体として、サンプル1〜10のLT基板をウェハで用意した。サンプル1〜10の組成値等について、キュリー温度,Ir量,Zr量,Fe量,式(1)を満たすかどうかの順に“,”で区切り表示する。
サンプルNo:(キュリー温度,Ir量,Zr量,Fe量,式(1))
サンプル1:(605.66,320,21000,60,○)
サンプル2:(605.61,280,6300,90,○)
サンプル3:(606.49,300,10000,70,○)
サンプル4:(606.64,220,2800,41000,○)
サンプル5:(605.62,1300,7800,8700,×)
サンプル6:(608.4,670,890,1400,×)
サンプル7:(607.16,790,170,1200,×)
サンプル8:(606.79,1100,290,80,×)
サンプル9:(609.1,710,100,200,×)
サンプル10:(608.77,510,800,41000,×)

式(1)を満たすかどうかは、満たす場合を“〇”,それ以外を“×”で表す。なお、各サンプルのIr量,Zr量,Fe量等は圧電体を溶解させた後に誘導結合プラズマ発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma:ICP発光分析)により定量分析して算出した。
サンプル1〜10の圧電体上にテスト用IDT電極を設けて、このIDT電極に電圧を印加した。テスト用IDT電極は基本的な構成は図2に示すIDT電極9と同じであり、ピッチpを1μmとしたものである。
このようなテスト用IDT電極に対して直流電圧を0Vから80Vまで変化させながら、各印加電圧における周波数特性を測定した。印加電圧によって圧電体において分極反転が生じると、共振周波数と反共振周波数との差(以下、Δfという)が小さくなることから、Δfに変化が生じた電圧を抗電界と定義する。また、Δfの変化量が大きいほど、分極反転領域が広くなっていると考えられるため、ある電圧を印加した時のΔfの変化量は分極反転のし易さの指標とすることができる。
図5に、印加電圧とΔfとの関係を示す。図5において、横軸は印加電圧(単位:V)であり、縦軸は初期のΔfと電圧を印加した時のΔfの変化量(単位:MHz)を示す。図からも明らかなように、式(1)を満たすサンプル1〜4では印加電圧によらず一定のΔfを維持することができる(分極反転が起こらない)。これに対して、サンプル5〜10では印加電圧が30Vを超えるとΔfが減少していき、その減少量は印加電圧の大きさに比例して大きくなることが確認できた。また、サンプル5〜10において抗電界は略一致することが確認された。このことから、抗電界が40V以上であれば、分極反転を抑制できているものと推察される。言い換えると、印加電圧を40VとしたときにΔfが−1(MHz)以下であれば、分極反転を抑制できているものと推察される。なお、この値は室温での場合であり、温度を上げるとこの電圧は低下する。例えば200℃に場合、分極反転が生じる電圧は10V以下になる。
より詳細に確認すると、サンプル3,4とサンプル7,8とを比較すると、同じキュリー温度でも分極反転をする場合としない場合とに分かれる。このことから、分極反転が生じるかどうかは、キュリー温度のみに影響されるものではないことが分かる。
さらに、サンプル1〜4とサンプル5とを比較すると、キュリー温度とZr量との関係性よりも、キュリー温度とIr量との相関が強いことが分かる。
そこで、キュリー温度とIr量とを変化させたときの印加電圧を50VとしたときのΔf変化量の大きさとの関係をを図6に示す。図6において、横軸はキュリー温度,縦軸はIr量をとり、バブルチャートの大きさでΔf変化量の大きさ、すなわち分極反転のしやすさを示す。
この図から明らかなように、分極反転を起こすサンプル(サンプル5〜10)と起こさないサンプル(サンプル1〜4)との間には明確に区分されている。そして、この2つの領域を区分するキュリー温度XとIr量Yとの関係式が式(1)に相当する。
以下、式(1)を満たす場合に分極反転を抑制するメカニズムについて考察する。
LT結晶において、化学量論比通りのLi/Ta比(ストイキオメトリック)の場合と、LT結晶を引き上げたときにとるLi/Ta比(コングルーエント)の場合とで、分極反転電圧が大幅に異なることが知られている。具体的にはコングルーエントの場合にストイキオメトリックの場合に比べて分極反転電圧が大きくなることが知られている。ストイキオメトリックの場合に比べてコングルーエントの場合にはLi/Ta比が小さく、Liが欠損するため結晶内部に欠陥が多くなり、これにより分極反転が生じにくいものと推察される。
ここで、コングルーエント近傍の組成比を備える圧電体において、Li/Ta比が0.05%程度異なるだけでも分極反転が生じる場合と生じない場合とがあった。そこで、発明者は、この極僅かな組成比の違いを検証できるパラメータとしてキュリー温度を採用した。具体的には、Li/Ta比がストイキオメトリックからコングルーエントに向かうにつれ(Li/Ta比が小さくなるにつれ)キュリー温度は低くなる。
図7にキュリー温度と直流電圧を50V印加したときのΔf変化量との関係を示す。図7からも明らかなように、キュリー温度と分極反転のしやすさには一定の関係性が確認され、例えばキュリー温度が608℃以下、より好ましくは607℃以下の場合に分極反転を抑制できる傾向があることが分かる。その一方で、キュリー温度が低い場合であっても分極反転を抑制できない場合もあることから、Li欠損以外に結晶欠陥の要因になっている要素があると推察した。そこで、不純物としてIr含有量に着目した。 図8に示すように、Ir含有量と分極反転のし易さには相関があり、Ir含有量が多いほど分極反転しやすい傾向があることが分かる。この原因について詳細は明らかではないが、IrがLi欠損でできた格子欠陥を中和してしまうことが考えられる。また、Irは圧電体7の結晶育成時のるつぼから混入してしまう可能性があるため、分極反転しにくい圧電体7を作製するためには、育成時の条件をうまくコントロールしてIrが混入してしないようにする必要がある。
ここで、IrはLi欠損以外の結晶欠陥の要因と推察されるため、Ir含有量の下限値は0ng/gを超えて含有されればよいが、100ng/g以上であってもよい。また、図8(a)より400ng/g以下としてもよい。
さらに、図8(b)に示すように、Zr含有量と分極反転のしやすさとも一定の関係性が確認される。ZrとIrとは同じ4価の元素ではあるが、ZrのドープによりIrとは別要因の結晶欠陥を誘発できるものと推察される。このため、式(1)を満たすとともにZrの含有量を2000ng/g以上としてもよい。なお、Zr量の上限値としては、結晶性の確保のために200000ng/g未満としてもよい。ドーパント(不純物)が多すぎると結晶成長が難しくなったり、結晶が脆くなったりするためである。
また、サンプル4,サンプル10との対比からも明らかなように、Fe含有量と分極反転との間には大きな相関は確認できなかった。同様に、各サンプル間でカット角を変更した場合であっても、カット角と分極反転との間には大きな相関は確認されなかった。
なお、サンプル1〜10はウェハ状の圧電体とした。したがって、圧電体の厚みに拘わらず、式(1)を満たすことで分極反転自体を抑制できるので、基板として式(1)を満たす圧電体7を用意した場合には、焦電性を抑制し、安定した圧電特性を実現する圧電基板を提供することができる。
一方で、ウェハ状の圧電体の場合には、一旦分極反転が発生した場合であっても、電圧印加を停止した後一定時間経過するとΔfの値が回復することを確認した。これは、IDT電極が形成された表面の結晶が分極反転しても、厚みの中心付近を含む周辺の分極反転していない結晶からの効果により元の分極状態に戻されるものと推察される。そして、圧電体の厚みが薄い場合には分極反転した領域の周辺部に通常の分極方向を有する結晶が位置する割合が少なくなり、元に戻れなくなる。その結果、圧電体の厚みが薄くなったときに、一度分極反転が発生すると回復しなくなるものと推察される。具体的には圧電体の厚みが1λ以下(2p以下)となったときに、本開示の圧電体7を用いることで、分極反転の影響の少ない弾性波素子1を提供できる。サンプル1〜10の圧電体を用いて、図1に示す弾性波素子1を作製し図3に示す周波数特性を測定した結果、式(1)を満たす圧電体(サンプル1〜4)を用いた場合にはリップルは測定されず、式(1)を満たさない圧電体(サンプル5〜10)を用いた場合にはリップルが発生したことを確認した。
(他の例)
上述の例では、支持基板3を備える構成としたがその構成に限定されない。例えば、図9(a)に示すように中間部5が厚く、支持基板3を備えない構成や、図9(b)に示ように、中間部5の直下に支持基板3が存在しない構成であってもよい。図9においては、中間部5を備えずに、圧電体7がメンブレン状に支持基板3に支持された構成としてもよい。
図9(a)に示す例としては、例えば中間部5としてサファイア基板を用いた場合を例示できる。
さらに、図10に示すように、支持基板3と中間部5との間に複数層が介在してもよい。図10において、支持基板3と圧電体7との間に音響多層膜15を含んでいてもよい。圧電体7としては、LT基板でそのオイラー角を(0,25,0)付近とすると発生する弾性波の音速が高くなる。この高音速の弾性波を圧電体7の側に閉じ込めるために音響多層膜15が必要となる。
音響多層膜15は高音響インピーダンス層15aと低音響インピーダンス層15bとが交互に複数層積層されてなる。高音響インピーダンス層15aとしては酸化タンタルや酸化ハフニウム等を例示できる。低音響インピーダンス層15bとしては酸化ケイ素を例示できる。この低音響インピーダンス層15bが中間部5として機能する。
このような構成の場合には、高音速の弾性波を圧電体7の側に反射させ支持基板3の側に漏洩させることがないため低ロスの弾性波素子とすることができることに加え、分極反転を抑制することができるので、高い電気特性を実現することができる。
なお、上述の例では、圧電体7と中間部5とが直接接合されている場合を例に説明したが、両者の間に、電気特性に影響しない範囲の厚みおよび導電率の導電層を備えていてもよい。例えば5nm以下の厚みの導電層としてもよい。この場合には、電位を安定させ、焦電性の影響を低減することができる。同様に、圧電体7と中間部5と間に、Fe,Ni,Cu等の金属元素を分散させてもよい。導電性を有する元素が点在することにより、圧電体7の第2面7bにおいて電位を安定させることができる。分散濃度としては、接合界面に露出する圧電体7の原子数よりも少なく、例えば1/10以下、より好ましくは1/1000以下としてもよい。具体的な濃度としては、例えば1014atoms/cm以下としてもよい。
さらに、上述の例では、弾性波素子としてIDT電極を形成した弾性波共振子を例に説明したが、この限りではない。弾性波素子(圧電素子)は、厚み方向もしくは平面方向に対向配置された一対の電極を設けた共振子であってもよい。
1:圧電素子(弾性波素子)
3:支持基板
5:中間部
7:圧電体
9:一対の電極(IDT電極)

Claims (7)

  1. LiTaO単結晶からなり、キュリー温度をX℃とし、Ir含有量をYng/gとしたときに、
    0<Y<10^(−0.10034×X+63.67)
    を満たす圧電体。
  2. Xは607℃以下である、請求項1の圧電体。
  3. Yは400ng/gh以下である、請求項1または2に記載の圧電体。
  4. 上面にピッチ1μmのテスト用IDT電極を配置し、室温でこれに印加する直流電圧の値を変化させながら共振周波数と反共振周波数との差であるΔfを測定したときに、直流電圧の値が40Vまでは、Δfの変化が1MHz以下である、請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電体。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の圧電体と、
    前記圧電体上に間をあけて位置する1対の電極と、を備える圧電素子。
  6. 前記1対の電極は、1対の櫛歯電極を含むIDT電極である、請求項5に記載の圧電素子。
  7. 前記圧電体の厚みは、前記IDT電極のピッチの2倍以下である、請求項6に記載の圧電素子。
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