本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成に置換してもよい。本発明は、他の構成を含んでもよい。図面は、所定の構成を模式的に示す。従って、各図面は、他の図面との対応が正確ではない場合もある。ハッチングは、切断面を示す。二点鎖線は、想像線である。破線は、かくれ線である。
<インクジェット記録装置>
インクジェット記録装置10について、図1〜6を参照して説明する。実施形態では、インクジェット記録装置10を特定するための方向を、第一方向、第二方向及び第三方向という。第二方向は、第一方向に直交する。第三方向は、第一方向及び第二方向の両方向に直交する。第一方向を鉛直方向とする。この場合、第二方向及び第三方向は、水平方向となる。第一方向の一方側を「第一側」といい、第一方向の他方側を「第二側」という。第一方向の第一側を鉛直方向の上側とし、第一方向の第二側を鉛直方向の下側とする。第二方向の一方側を「第三側」といい、第二方向の他方側を「第四側」という。第三方向の一方側を「第五側」といい、第三方向の他方側を「第六側」という。
インクジェット記録装置10は、記録媒体80に柄を記録する(図1〜3参照)。記録媒体80の例としては、建築用資材が挙げられる。建築用資材の例としては、建物の内装材及び外装材が挙げられる。実施形態では、記録媒体80は、直方体形状を有する平板とする。柄が記録される記録媒体80の外面を「第一領域R1」及び「第二領域R2」という。第一領域R1を記録媒体80の表面とし、第二領域R2を記録媒体80の側面とする。
第二領域R2として、第三領域R3、第四領域R4、第五領域R5及び第六領域R6を設定する。記録媒体80が直方体形状を有する場合、第二領域R2は、長方形状の4つの側面を含む。第三領域R3、第四領域R4、第五領域R5及び第六領域R6は、この4つの側面に対応する(図1〜3参照)。第三領域R3は、4つの側面のうちの任意の側面とする。第四領域R4は、この4つの側面で第三領域R3と接する2つの側面のうちの一方とする。第五領域R5は、この4つの側面で第三領域R3とは反対側の側面とする。第六領域R6は、この4つの側面で第四領域R4と反対側の側面とする。第六領域R6は、この4つの側面で第三領域R3と接する第四領域R4とは異なる側面ともいえる。第二領域R2への柄の記録は、第三領域R3及び第四領域R4に対して行われることとする。実施形態では、第三領域R3、第四領域R4、第五領域R5及び第六領域R6を区別しない場合、又はこれらを総称する場合、第二領域R2という。
インクジェット記録装置10は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のインクを用いて柄を記録する。但し、柄の記録には、これら各色のインクとは異なる色のインクを用いてもよい。インク色数は、3色以下又は5色以上としてもよい。図1〜3に示す次の模様は、記録済みの柄に対応する。前述の模様は、図1で第一領域R1の一部に示す模様と、図2で第三領域R3の一部に示す模様と、図3で第三領域R3の全面及び第四領域R4の一部に示す模様とである。
インクジェット記録装置10は、支持台20と、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kと、キャリッジ35と、走査機構40と、搬送機構50と、回転機構60と、移動機構70とを備える(図1〜3参照)。
支持台20は、記録媒体80を支持する。支持台20は、支持面21で記録媒体80の裏面と接する。支持面21には、吸込口22が設けられる(図4,5参照)。実施形態では、複数の吸込口22が支持面21に設けられる。吸込口22の数は、1つとしてもよい。支持面21における吸込口22の数及び配置は、諸条件を考慮して適宜決定される。
支持台20の内部には、内部流路が設けられる。内部流路は、複数の吸込口22に繋がる。複数の吸込口22は、内部流路を介して通じ合う。複数の吸込口22とは反対側となる内部流路の端には、吸引装置が設けられる。吸引装置は、複数の吸込口22からエアを吸い込む。記録媒体80が支持面21に載せ置かれた状態で吸引装置が動作することで、内部流路内の圧力が低下する。これに伴い、記録媒体80は、支持面21に吸着され、支持台20は、記録媒体80を支持する(図1〜3参照)。吸引装置の停止に伴い、支持台20は、記録媒体80の支持を解除する。図1〜6では、内部流路及び吸引装置の図示は、省略されている。支持台20は、吸着とは異なる方法で記録媒体80を支持してもよい。例えば、支持台20には、次の固定具を設けてもよい。前述の固定具は、支持面21に対して記録媒体80を機械的に固定する。
インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kは、第一領域R1及び第二領域R2に第一方向の第一側から第二側に向けてインクを吐出する。インクジェットヘッド30Yは、イエローインクを吐出し、イエローインクによって第一領域R1及び第二領域R2に柄を記録する。インクジェットヘッド30Mは、マゼンタインクを吐出し、マゼンタインクによって第一領域R1及び第二領域R2に柄を記録する。インクジェットヘッド30Cは、シアンインクを吐出し、シアンインクによって第一領域R1及び第二領域R2に柄を記録する。インクジェットヘッド30Kは、ブラックインクを吐出し、ブラックインクによって第一領域R1及び第二領域R2に柄を記録する。
実施形態では、第二領域R2への柄の記録は、第三領域R3及び第四領域R4に対して行われる。従って、上述した「第二領域R2に第一方向の第一側から第二側に向けてインクを吐出する」は、「第三領域R3に第一方向の第一側から第二側に向けてインクを吐出する」及び「第四領域R4に第一方向の第一側から第二側に向けてインクを吐出する」の一方又は両方に対応する。記録媒体80への柄の記録順は、第一領域R1及び第二領域R2の順としてもよい。第二領域R2への柄の記録順は、第三領域R3及び第四領域R4の順としてもよい。但し、このような柄の記録順は、例示である。記録媒体80に含まれる複数の領域への柄の記録順は、諸条件を考慮して適宜決定される。
インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kは、同様の構成を有する。インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kは、複数のノズルを有する。但し、図1〜3では、ノズルの図示は、省略されている。ノズルは、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kの第一方向の第二側の面に設けられる。実施形態では、ノズルが設けられるインクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kの第一方向の第二側の面を「吐出面31」という。複数のノズルは、吐出面31で第三方向に配列される。インクジェット記録装置10は、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kとして、公知のインクジェットヘッドを採用することができる。従って、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kに関するこの他の説明は、省略する。
キャリッジ35には、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kが搭載される。キャリッジ35上で、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kは、第二方向に隣り合う。第二方向におけるインクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kの配列順序は、図1〜3とは異なる順序としてもよい。これらの配列順序は、諸条件を考慮して適宜決定される。吐出面31の第一方向の位置は、キャリッジ35に搭載されたインクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kで全て同じとなる。
走査機構40は、キャリッジ35を第二方向に往復移動させる。走査機構40は、2個のプーリ41,42と、タイミングベルト43と、第三モータ44とを備える(図1〜3参照)。プーリ41は、第二方向の第三側に設けられる。プーリ42は、第二方向の第四側に設けられる。プーリ42は、回転自在に支持される。タイミングベルト43は、張力が作用した状態でプーリ41,42に架け渡される。タイミングベルト43には、キャリッジ35がステー36を介して取り付けられる。第三モータ44は、プーリ41に連結される。例えば、第三モータ44としては、エンコーダ付きのサーボモータが採用される。第三モータ44は、プーリ41を回転させる。図1でプーリ41の外周に示す右回りの矢印は、プーリ41が右回転していることを示す。図2,3でプーリ41の外周に示す左回りの矢印は、プーリ41が左回転していることを示す。
但し、上述のような走査機構40は、例示である。走査機構40は、プーリ41,42、タイミングベルト43及び第三モータ44とは異なる機構であってもよい。例えば、走査機構40は、リニアモータであってもよい。この場合、リニアモータの固定子は、プーリ41,42とタイミングベルト43との組み合わせと同様、第二方向に設けられる。リニアモータの可動子には、キャリッジ35が所定のステーを介して取り付けられる。
搬送機構50は、第三方向に支持台20とインクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kとを相対移動する。搬送機構50は、駆動機51と、ガイド55とを備える(図1〜3参照)。実施形態では、搬送機構50は、駆動機51としてリニアモータを採用し、ガイド55としてリニアガイドを採用する。但し、このような搬送機構50は、例示である。例えば、駆動機51は、リニアモータとは異なる直動機構としてもよい。リニアモータとは異なる直動機構の例としては、ボールねじとモータとの組み合わせが挙げられる。
搬送機構50は、インクジェット記録装置10の架台15に設けられる。即ち、駆動機51は、架台15の第一台座16上に設けられ、ガイド55は、架台15の第二台座17上に設けられる。第一台座16は、第二方向の第三側に設けられる。第二台座17は、第二方向の第四側に設けられる。第一台座16及び第二台座17は、第三方向に沿って設けられる。第二台座17は、第一台座16と所定の距離離間して第二方向に隣り合う。従って、ガイド55は、駆動機51と第二方向に並んで設けられる。第一台座16と第二台座17との間には、支持台20、回転機構60及び移動機構70が設けられる。
駆動機51は、固定子52と、可動子53とを備える。固定子52は、第一台座16の第一方向の第一側に第三方向に沿って設けられる。可動子53は、固定子52との間で可動子53に作用する推進力によって固定子52上を第三方向に往復移動する。ガイド55は、ガイドレール56と、ガイドブロック57とを備える。ガイドレール56は、第二台座17の第一方向の第一側に第三方向に沿って設けられる。ガイドブロック57は、ガイドブロック57に作用する第三方向の外力に従ってガイドレール56上を第三方向に往復移動する。リニアモータ及びリニアガイドは、公知の機械部品である。そのため、駆動機51及びガイド55に関するこの他の説明は、省略する。
実施形態では、搬送機構50は、走査機構40の第二方向の第三側を支持し、走査機構40の第二方向の第四側を支持する。そのため、搬送機構50は、可動子53の第一方向の第一側に第一部品54を備え、ガイドブロック57の第一方向の第一側に第二部品58を備える。第一部品54は、プーリ41の回転軸を回転自在に支持する。第一部品54には、第三モータ44が設けられる。第二部品58は、プーリ42の回転軸を回転自在に支持する。駆動機51は、可動子53の第三方向への移動に伴い走査機構40を第三方向に移動させる。ガイド55は、この走査機構40の第三方向への移動をガイドする。搬送機構50は、走査機構40を第三方向に移動することで、タイミングベルト43に取り付けられたキャリッジ35と共にインクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kを第三方向に移動する。即ち、搬送機構50による走査機構40の第三方向への移動は、搬送機構50によるインクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kの第三方向への移動を含む。
回転機構60は、第一軸心L1及び第二軸心L2を中心として支持台20を回転させる。これにより、回転機構60は、支持台20を第一状態及び第二状態とする。第一軸心L1は、第二方向に沿って設けられる。第二軸心L2は、第一軸心L1に直交する。第一状態では、支持面21は、第一方向に垂直となる(図4上段及び図6(A)参照)。従って、第一状態では、支持台20に支持された記録媒体80の第一領域R1は、第一方向に垂直となる(図1及び図6(A)参照)。第二状態では、支持面21は、第一方向に沿う(図4下段、図5及び図6(B),(C)参照)。従って、第二状態では、支持台20に支持された記録媒体80の第二領域R2は、第一方向に垂直となる(図2,3及び図6(B),(C)参照)。
第二状態は、次の第三状態(図2及び図6(B)参照)と、次の第四状態(図3及び図6(C)参照)とを含む。第三状態では、支持台20に支持された記録媒体80の第三領域R3が第一方向に垂直となる。第三状態では、支持台20に支持された記録媒体80の第四領域R4が第一方向に垂直となる。第三状態及び第四状態を区別しない場合、又はこれらを総称する場合、第二状態という。更に、実施形態とは異なり、柄が第五領域R5に記録される場合、第二状態は、支持台20に支持された記録媒体80の第五領域R5が第一方向に垂直となる状態を含み、柄が第六領域R6に記録される場合、第二状態は、支持台20に支持された記録媒体80の第六領域R6が第一方向に垂直となる状態を含む。
回転機構60は、第一回転軸61と、第一モータ64と、第二回転軸65と、第二モータ66と、フレーム67とを備える(図4,5参照)。第一回転軸61は、第一軸心L1を軸心とする。第一回転軸61は、フレーム67に設けられる。第一回転軸61は、フレーム67の第一部分68及び第二部分69に回転自在に支持される。第一部分68は、第二方向の第三側に設けられる。第二部分69は、第二方向の第四側に設けられる。
第一モータ64は、第一回転軸61に連結される。第一モータ64は、第一回転軸61を回転させる。これに伴い、支持台20は、第一軸心L1を中心として第一回転軸61と同じ方向に同じ量だけ回転する。実施形態では、第一モータ64は、第二部分69に設けられ、第一回転軸61の第二方向の第四側端に連結される。但し、第一モータ64は、第一部分68に設けてもよい。この場合、第一モータ64は、第一回転軸61の第二方向の第三側端に連結される。
第一モータ64は、支持台20を第一状態から第二状態とする場合、第一回転軸61をA1方向に1/4周回転させる(図4上段・下段参照)。第一モータ64は、支持台20を第二状態から第一状態とする場合、第一回転軸61をA2方向に1/4周回転させる(図4下段・上段参照)。A1方向及びA2方向は、図4で第一軸心L1の外周に示す矢印の通りである。
第二回転軸65は、第二軸心L2を軸心とする。第二回転軸65は、一方側端で支持台20と繋がり、他方側端で第二モータ66と繋がる。第二回転軸65の一方側は、支持台20が第一状態である場合に第一方向の第一側となり、支持台20が第二状態である場合に第三方向の第五側となる。第二回転軸65の他方側は、支持台20が第一状態である場合に第一方向の第二側となり、支持台20が第二状態である場合に第三方向の第六側となる。
第二モータ66は、取付ブロック62に取り付けられる。第二モータ66は、第二回転軸65に連結される。第二モータ66は、第二回転軸65を回転させる。これに伴い、支持台20は、第二軸心L2を中心として第二回転軸65と同じ方向に同じ量だけ回転する。実施形態では、第一回転軸61は、取付ブロック62を含む。第二モータ66は、取付ブロック62に取り付けられる。取付ブロック62には、貫通孔63が設けられる。貫通孔63は、第二軸心L2に沿った方向に取付ブロック62を貫通する。第二回転軸65は、貫通孔63を通過する。
第二モータ66は、第二状態の支持台20を第三状態から第四状態とする場合、第二回転軸65をB1方向に1/4周回転させる(図5上段・下段参照)。第二モータ66は、支持台20を第四状態から第三状態とする場合、第二回転軸65をB2方向に1/4周回転させる(図5下段・上段参照)。B1方向及びB2方向は、図4下段及び図5で第二軸心L2の外周に示す矢印の通りである。
移動機構70は、支持台20を第一方向に移動させる(図1〜3,6参照)。移動機構70は、支持台20が第一状態である場合、第一間隔G1が第一距離となる位置に支持台20を配置する(図6(A)参照)。第一間隔G1は、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kの吐出面31と支持台20に支持された記録媒体80の第一領域R1との間の第一方向の距離である。移動機構70は、支持台20が第二状態である場合、第二間隔G2が第二距離となる位置に支持台20を配置する(図6(B),(C)参照)。第二間隔G2は、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kの吐出面31と支持台20に支持された記録媒体80の第二領域R2との間の第一方向の距離である。
第一間隔G1と第二間隔G2との関係について、第二距離は、第一距離以上とすることが好ましい。第二距離は、第一距離と等しくすることがより好ましい(図6参照)。第三状態での第二距離は、第四状態での第二距離と等しくすることが好ましい(図6(B),(C)参照)。但し、第三状態での第二距離は、第四状態での第二距離と等しくなくてもよい。
第一領域R1に対して第二領域R2より高品質の柄が要求されることがある。この場合、第一間隔G1は、高品質な柄の記録に最適な第一距離に設定される。例えば、インクの飛翔距離が長くなる場合、記録媒体80の表面に着弾するインクの位置精度が低下し易く、柄の品質が低下することがある。インクの飛翔距離は、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kから吐出されたインクが記録媒体80に着弾するまでに飛翔する距離である。従って、この飛翔距離は、吐出面31と支持台20に支持された記録媒体80の表面との間の第一方向の距離に一致する。
移動機構70としては、公知の直動機構を含む装置を採用することができる。例えば、直動機構の例としては、アクチュエータとガイドとの組み合わせが挙げられる。アクチュエータの例としては、電動アクチュエータ、油圧シリンダ及びエアシリンダが挙げられる。電動アクチュエータは、電動シリンダを含む。この他、電動アクチュエータの例としては、ボールねじとモータとの組み合わせが挙げられる。モータの例としては、サーボモータが挙げられる。ガイドの例としては、リニアシャフトとリニアブッシュとの組み合わせが挙げられる。これら電気部品及び機械部品は、公知である。従って、これらに関する説明は、省略する。第一方向が鉛直方向である場合、移動機構70としては、公知の昇降機構を採用することができる。昇降機構は、前述したような公知の部品を含む。
インクジェット記録装置10は、インクジェット記録方法を実行する。インクジェット記録方法は、記録工程と、回転工程と、移動工程とを含む。インクジェット記録方法では、第一領域R1及び第二領域R2への柄の記録は、次のように行われる。支持台20が第一状態ではない場合、回転機構60は、支持台20を第一状態とする。記録媒体80が支持台20にセットされる。記録媒体80は、吸引装置の動作に伴い支持面21に吸着される。
第一領域R1に柄を記録する場合、回転機構60は、支持台20を第一状態とし(回転工程 図4上段参照)、移動機構70は、第一間隔G1が第一距離となる位置に支持台20を配置する(移動工程 図6(A)参照)。第二領域R2に柄を記録する場合、回転機構60は、支持台20を第二状態とし(回転工程 図4下段及び図5参照)、移動機構70は、第二間隔G2が第二距離となる位置に支持台20を配置する(移動工程 図6(B),(C)参照)。即ち、第三領域R3に柄を記録する場合、回転機構60は、支持台20を第三状態とし(回転工程 図4下段及び図5上段参照)、移動機構70は、第二間隔G2が第二距離となる位置に支持台20を配置する(移動工程 図6(B)参照)。第四領域R4に柄を記録する場合、回転機構60は、支持台20を第四状態とし(回転工程 図5下段参照)、移動機構70は、第二間隔G2が第二距離となる位置に支持台20を配置する(移動工程 図6(C)参照)。
搬送機構50は、走査機構40を第三方向の次の位置に移動する。前述の位置は、柄の記録開始位置として第一状態又は第二状態の支持台20に対して予め設定された第三方向の位置である。第二状態での柄の記録開始位置は、第三状態又は第四状態の支持台20に対して第三方向の位置が予め定められる。
走査機構40では、第三モータ44が時計回り及び反時計回りに往復して回転する。第三モータ44の回転に伴い、プーリ41が左右両側に往復して回転する。プーリ41が左回転すると、タイミングベルト43も左回転する。プーリ42は、左回転するタイミングベルト43に従動して回転する。これに伴い、キャリッジ35は、第二方向の第四側から第三側に移動する。キャリッジ35が第二方向の第三側の移動端に到達すると、第三モータ44の回転方向は反転し、プーリ41は、右回転する。プーリ41が右回転すると、タイミングベルト43も右回転する。プーリ42は、右回転するタイミングベルト43に従動して回転する。これに伴い、キャリッジ35は、第二方向の第三側から第四側に移動する。キャリッジ35が第二方向の第四側の移動端に到達すると、第三モータ44の回転方向は再度反転し、プーリ41は、再度左回転する。
搬送機構50は、キャリッジ35の第二方向の第四側から第三側への移動と、キャリッジ35の第二方向の第三側から第四側への移動とに対応させて走査機構40を第三方向に移動する。即ち、搬送機構50による走査機構40の移動は、キャリッジ35の第二方向の第三側の移動端への到達と、キャリッジ35の第二方向の第四側の移動端への到達とに応じて間欠的に行われる。搬送機構50による走査機構40の移動は、例えば、第三方向の第五側から第六側に行われる。但し、この移動は、例えば、第三方向の第六側から第五側に行われてもよい。
この他、搬送機構50による走査機構40の移動は、支持台20が第一状態である場合と、支持台20が第二状態である場合とで逆向きとしてもよい。搬送機構50による走査機構40の移動は、支持台20が第三状態である場合と、支持台20が第四状態である場合とで逆向きとしてもよい。例えば、搬送機構50は、支持台20が第一状態である場合、走査機構40を第三方向の第五側から第六側に移動し、支持台20が第三状態である場合、走査機構40を第三方向の第六側から第五側に移動し、支持台20が第四状態である場合、走査機構40を第三方向の第五側から第六側に移動する。
インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kは、上述したキャリッジ35の第二方向への移動中、次のように動作する。即ち、支持台20が第一状態である場合、インクジェットヘッド30Yは、第一領域R1にイエローインクを吐出し、インクジェットヘッド30Mは、第一領域R1にマゼンタインクを吐出し、インクジェットヘッド30Cは、第一領域R1にシアンインクを吐出し、インクジェットヘッド30Kは、第一領域R1にブラックインクを吐出する(記録工程 図1参照)。各色のインクは、第一領域R1に着弾する。これに伴い、第一領域R1に柄が記録される。
支持台20が第二状態である場合、インクジェットヘッド30Yは、第二領域R2にイエローインクを吐出し、インクジェットヘッド30Mは、第二領域R2にマゼンタインクを吐出し、インクジェットヘッド30Cは、第二領域R2にシアンインクを吐出し、インクジェットヘッド30Kは、第二領域R2にブラックインクを吐出する(記録工程 図2,3参照)。各色のインクは、第二領域R2に着弾する。これに伴い、第二領域R2に柄が記録される。即ち、支持台20が第三状態である場合、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kは、第三領域R3にインクを吐出する(記録工程 図2参照)。各色のインクは、第三領域R3に着弾する。これに伴い、第三領域R3に柄が記録される。支持台20が第四状態である場合、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kは、第四領域R4にインクを吐出する(記録工程 図3参照)。各色のインクは、第四領域R4に着弾する。これに伴い、第四領域R4に柄が記録される。
走査機構40及び搬送機構50は、第一領域R1又は第二領域R2への柄の記録が終了するまで動作する。従って、走査機構40によるキャリッジ35の第二方向への往復移動及び搬送機構50による走査機構40の第三方向への移動は、第一領域R1又は第二領域R2への柄の記録が終了するまで繰り返される。例えば、キャリッジ35を第二方向の第四側から第三側に1回移動させることで、第三領域R3の全面に柄を記録することができるとする。この場合、第三領域R3への柄の記録は、この1回の移動によって終了する。第三領域R3への柄の記録中、搬送機構50による走査機構40の移動は、実施されない。キャリッジ35を第二方向の第四側から第三側に1回移動させることで、第四領域R4の全面に柄を記録することができるとする。この場合、第四領域R4への柄の記録は、この1回の移動によって終了する。第四領域R4への柄の記録中、搬送機構50による走査機構40の移動は、実施されない。
インクジェット記録装置10では、例えば、記録媒体80が第一状態の支持台20にセットされる。この場合、回転機構60は、支持台20が第二状態であれば、支持台20を第一状態とする(回転工程 図4下段又は図5下段、図4上段及び図6(A)参照)。移動機構70は、第一間隔G1が第一距離となる位置に支持台20を配置する(移動工程 図6(A)参照)。続けて、インクジェット記録装置10は、第一領域R1に柄を記録する(記録工程 図1参照)。次に、回転機構60は、支持台20を第二状態とする(回転工程 図4,5参照)。その後、インクジェット記録装置10は、移動工程(図6(B),(C)参照)を経て、第二領域R2に柄を記録する(記録工程 図2,3参照)。移動工程では、移動機構70は、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kの吐出面31と第二領域R2との間の第一方向の第二間隔G2が第二距離となる位置に支持台20を配置する。
例えば、回転機構60は、支持台20を第三状態とし(回転工程 図4上段・下段参照)、移動機構70は、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kの吐出面31と第三領域R3との間の第一方向の第二間隔G2(第三間隔G3)が第二距離となる位置に支持台20を配置する(移動工程 図6(B)参照)。このとき、移動機構70は、支持台20を第一方向の第一側に移動量D1だけ移動させる。これに伴い、移動機構70は、第三間隔G3を第一距離と等しい第二距離とする。続けて、インクジェット記録装置10は、第三領域R3に柄を記録する(記録工程 図2参照)。
次に、回転機構60は、支持台20を第四状態とし(回転工程 図5上段・下段参照)、移動機構70は、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kの吐出面31と第四領域R4との間の第一方向の第二間隔G2(第四間隔G4)が第二距離となる位置に支持台20を配置する(移動工程 図6(C)参照)。このとき、移動機構70は、支持台20を第一方向の第二側に移動量D2だけ移動させる。これに伴い、移動機構70は、第四間隔G4を第一距離と等しい第二距離とする。続けて、インクジェット記録装置10は、第四領域R4に柄を記録する(記録工程 図3参照)。実施形態では、第三間隔G3及び第四間隔G4を区別しない場合、又はこれらを総称する場合、第二間隔G2という。
第二領域R2(第四領域R4)への柄の記録後、回転機構60は、支持台20を第一状態としてもよい(回転工程 図5下段・上段及び図4上段)。支持台20を第一状態として、記録媒体80を支持台20にセットし、記録媒体80を支持台20から取り出すことで、前述の各作業を円滑に行うことができる。
インクジェット記録方法の実行中、第一状態及び第二状態の支持台20の第一方向の位置は、次の通りとなる。第一状態の支持台20の第一方向の位置を基準位置とする(図6(A)参照)。第三状態の支持台20は、移動機構70によって基準位置より移動量D1だけ第一方向の第一側に配置される(図6(B)参照)。第四状態の支持台20は、移動機構70によって基準位置より移動量D3だけ第一方向の第二側に配置される(図6(C)参照)。
<実施形態の効果>
実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)インクジェット記録装置10は、支持台20と、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kと、回転機構60と、移動機構70とを備え、インクジェット記録方法を実行する(図1〜3,6参照)。支持台20は、記録媒体80を支持する。インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kは、記録媒体80の外面の第一領域R1及び第二領域R2に第一方向の第一側から第二側に向けてインクを吐出する(記録工程)。回転機構60は、第一軸心L1及び第二軸心L2を中心として支持台20を回転させる(回転工程)。移動機構70は、支持台20を第一方向に移動させる(移動工程)。
回転機構60は、支持台20を第一状態及び第二状態とする(回転工程)。第一状態では、支持台20に支持された記録媒体80の第一領域R1が第一方向に垂直となる(図1、図4上段及び図6(A)参照)。第二状態では、支持台20に支持された記録媒体80の第二領域R2が第一方向に垂直となる(図2,3、図4下段、図5及び図6(B),(C)参照)。
移動機構70は、支持台20が第一状態である場合、第一間隔G1が第一距離となる位置に支持台20を配置する(移動工程 図6(A)参照)。移動機構70は、支持台20が第二状態である場合、第二間隔G2が第一距離以上の第二距離となる位置に支持台20を配置する(移動工程 図6(B),(C)参照)。
インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kは、支持台20が第一状態で且つ第一間隔G1が第一距離となる位置に配置されている場合、第一領域R1にインクを吐出する(記録工程 図1及び図6(A)参照)。インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kは、支持台20が第二状態で且つ第二間隔G2が第二距離となる位置に配置されている場合、第二領域R2にインクを吐出する(記録工程 図2,3及び図6(B),(C)参照)。
そのため、記録媒体80を支持台20に支持したまま、柄を記録する記録媒体80の領域を、第一領域R1から第二領域R2とし又は第二領域R2から第一領域R1とすることができる。第一領域R1への柄の記録時、第一間隔G1が第一距離となる位置に支持台20を配置することができる。第二領域R2への柄の記録時、第二間隔G2が第一距離以上の第二距離となる位置に支持台20を配置することができる。第一領域R1への柄の記録時及び第二領域R2への柄の記録時の何れであっても、インクの吐出方向を第一方向の第一側から第二側とすることができる。記録媒体80の第一領域R1及び第二領域R2に柄を記録することができる。
第二領域R2への柄の記録について、記録媒体80を支持台20に支持したまま、柄を記録する記録媒体80の領域を、第三領域R3から第四領域R4とし又は第四領域R4から第三領域R3とすることができる。第三領域R3への柄の記録時及び第四領域R4への柄の記録時の何れであっても、第二間隔G2が第二距離となる位置に支持台20を配置し、インクの吐出方向を第一方向の第一側から第二側とすることができる。記録媒体80の第三領域R3及び第四領域R4に柄を記録することができる。
(2)移動機構70は、支持台20が第二状態である場合、第二間隔G2が第一距離と等しい第二距離となる位置に支持台20を配置することがより好ましい(図6参照)。これにより、第一領域R1及び第二領域R2に記録される柄の記録品質を同じとすることができる。支持台20が第二状態である場合、第三間隔G3及び第四間隔G4が共に第一距離と等しい第二距離となる位置に支持台20を配置することで、第一領域R1、第三領域R3及び第四領域R4に記録される柄の記録品質を全て同じとすることができる。
<変形例>
実施形態は、次のようにすることもできる。以下に示す変形例のうちの幾つかの構成は、適宜組み合わせて採用することもできる。以下では、上記とは異なる点を説明することとし、同様の点についての説明は、適宜省略する。
(1)インクジェット記録装置を、走査機構40を備えるシリアル型のインクジェット記録装置10とした(図1〜3参照)。インクジェット記録装置としては、インクジェット記録装置10とは異なるタイプの装置が実用化されている。この異なるタイプのインクジェット記録装置は、ライン型と称されるインクジェットヘッドを備える。支持台20、回転機構60及び移動機構70の組み合わせは、ライン型のインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置に採用することもできる。このインクジェット記録装置は、柄の記録に用いる色数分のインクジェットヘッドを備える。ライン型のインクジェットヘッドでは、複数のノズルは、第二方向に配列される。各色のインクジェットヘッドは、キャリッジに第三方向に並んで搭載される。走査機構40は、省略される。搬送機構50は、キャリッジの第二方向の第三側を可動子53で支持し、キャリッジの第二方向の第四側をガイドブロック57で支持する。搬送機構50は、柄の記録時、キャリッジを第三方向に連続的に移動する。換言すれば、搬送機構50は、柄の記録時、各色のライン型のインクジェットヘッドを第三方向に連続的に移動する。ライン型のインクジェットヘッド及びこれを備えるインクジェット記録装置は、既に実用化された公知の構成である。従って、これらに関するこの他の説明は、省略する。
(2)搬送機構50は、支持台20に対してインクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kを第三方向に移動する(図1〜3参照)。搬送機構は、インクジェットヘッド30Y,30M,30C,30Kに対して支持台20、回転機構60及び移動機構70を第三方向に移動してもよい。搬送機構による移動は、上述のインクジェット記録装置10と同様、キャリッジ35の第二方向の第三側の移動端への到達と、キャリッジ35の第二方向の第四側の移動端への到達とに応じて間欠的に行われる。このようなインクジェット記録装置では、搬送機構として、公知の搬送装置を採用することができる。搬送機構として採用する搬送装置は、諸条件を考慮して適宜決定される。例えば、搬送機構として、駆動機51と同様、リニアモータを採用してもよい。リニアモータの固定子は、第三方向に沿って設けられる。可動子は、固定子上を第三方向に往復移動する。可動子上には、移動機構70及び回転機構60が設けられる。支持台20は、上記同様、回転機構60に設けられ、記録媒体80を支持する。可動子は、回転機構60及び移動機構70と共に第一状態又は第二状態の支持台20を第三方向の第五側から第六側又は第三方向の第六側から第五側に移動する。これに伴い、記録媒体80は、支持台20と同じ方向に搬送される。
(3)記録媒体80として、直方体形状を有する平板を例示した(図1〜3参照)。記録媒体80の表面を第一領域R1とし、記録媒体80の側面を第二領域R2とした。第二領域R2は、第三領域R3と、第四領域R4と、第五領域R5と、第六領域R6とを含む。記録媒体は、外面の一部に曲面を有する部材であってもよく、又は外面の全部が曲面である部材であってもよい。外面の全部が曲面である部材の例としては、球、長球及び楕円体が挙げられる。外面の一部に曲面を有し又は外面の全部が曲面である記録媒体では、第二領域は、第一領域を含む曲面内の第一領域とは異なる領域であってもよく、又は第一領域を含む曲面とは異なる平面又は曲面であってもよい。第一領域及び第二領域が曲面である場合、第一状態及び第二状態を定義する「第一方向に垂直」は、曲面の接線を基準とする。第一領域及び第二領域は、記録媒体の外面を形成する所定の面の一部又は全部の何れであってもよい。
(4)第二方向の第三側及び第四側は、上述した実施形態とは反対であってもよい。即ち、第二方向の第三側として設定した第二方向の一方側は、第二方向の第四側であってもよく、第二方向の第四側として設定した第二方向の他方側は、第二方向の第三側であってもよい。第三方向の第五側及び第六側は、上述した実施形態とは反対であってもよい。即ち、第三方向の第五側として設定した第三方向の一方側は、第三方向の第六側であってもよく、第三方向の第六側として設定した第三方向の他方側は、第三方向の第五側であってもよい。