JP2021126808A - 積層体 - Google Patents

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浩行 上林
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幸大 徳永
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【課題】低コストかつシンプルな構成でも高度なガスバリア性と優れた密着性を有する積層体の提供。【解決手段】基材1の少なくとも片側にA層2を有し、A層2はケイ素及び/又は金属元素、並びに酸素を含み、陽電子ビーム法によりA層2側から測定される平均寿命が0.935ns以下であり、クロスカット試験(JIS K5600−5−6、1999年)で剥離したマス数が全体の10%以下である、積層体。【選択図】図1

Description

本発明は、一例として高いガスバリア性が必要とされる食品、医薬品の包装材料や、太陽電池、電子ペーパー、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの電子部品の材料に使用される積層体に関する。
フィルム基材の表面に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD法)、または、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)等を利用して、無機物(無機酸化物を含む)の無機層を形成してなるガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素などの各種ガスの遮断を必要とする食品や医薬品などの包装材および電子ペーパー、太陽電池などの電子デバイス部材として用いられており、それらの部材において、水蒸気透過度で5.0×10−2g/m・24hr・atm以下の高いガスバリア性が求められている。
高いガスバリア性を満たす方法の1つとして、有機層と無機層を交互に多層積層させることで、穴埋め効果により欠陥の発生を防止したガスバリア性フィルム(特許文献1)や、ZnOとSiOを主成分とするターゲットを用いてスパッタリングすることで、ZnO−SiO系のような複合酸化物膜をフィルム基材上に形成した簡便な膜構成のガスバリア性フィルム(特許文献2)が提案されている。
特開2005−324406号公報 特開2013−147710号公報
しかしながら、特許文献1のように有機層と無機層を交互に多層積層させることにより、高いバリア性を発現させることは可能であるが、多層積層させることから膜の応力によって基材と無機層、有機層と無機層間での密着性低下や工程数が多くなることによるコストアップの問題点があった。また、特許文献2のように複合酸化物をスパッタリングにより形成する積層体は、特許文献1に比べると低コストで製造できるものの、製造方法の性質上、成膜速度の高速化に限界があること等から、低コスト化することが困難であった。
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、低コストかつシンプルな構成でも高度なガスバリア性と優れた密着性を有する積層体を提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、以下である。
基材の少なくとも片側にA層を有し、前記A層はケイ素及び/又は金属元素、並びに酸素を含み、陽電子ビーム法により前記A層側から測定される平均寿命が0.935ns以下であり、クロスカット試験(JIS K5600−5−6、1999年)で剥離したマス数が全体の10%以下である積層体。
本発明によれば、水蒸気に対する高度なガスバリア性、優れた密着性を有する積層体を、低コストにて提供することができる。
本発明の積層体の一例を示した断面図である。 本発明の積層体の他の一例を示した断面図である。 本発明の積層体の他の一例を示した断面図である。 本発明の積層体を製造するための巻き取り式蒸着装置を模式的に示す概略図である。 本発明の積層体を製造するための蒸着材料の配置を表す図である。
以下に本発明の詳細を説明する。
[積層体]
本発明の積層体は、基材の少なくとも片側にA層を有し、前記A層はケイ素及び/又は金属元素、並びに酸素を含み、陽電子ビーム法により前記A層側から測定される平均寿命が0.935ns以下であり、クロスカット試験(JIS K5600−5−6、1999年)で剥離したマス数が全体の10%以下である積層体である。
図1に本発明の積層体の一例の断面図を示す。本発明の積層体では、基材1の少なくとも片面にA層2が配されている。A層はケイ素及び/又は金属元素、並びに酸素を含み、陽電子ビーム法により前記A層側から測定される平均寿命が0.935ns以下であることにより、柔軟かつ高度なガスバリア性を有するものとなる。さらにA層はクロスカット試験(JIS K5600−5−6、1999年)で剥離したマス数が全体の10%以下であることにより、ハンドリングや高温、高湿の過酷環境においても密着性に優れ、安定した高度なガスバリア性を有するものとなる。
また、本発明の積層体の別の一例は図2に示すように、基材1と前記A層2との間にB層3を有し、前記B層は金属酸化物層であることによって、B層がA層の基材との密着性の弱い部分を補うことができ、より高い密着性とガスバリア性を発現する積層体となる。
また、本発明の積層体の別の一例は図3に示すように、基材1の片側において基材1とB層2との間にアンカーコート層4を有するものである。アンカーコート層4を有することによって、基材1の表面に突起や傷が存在しても、平坦化することができ、A層2が偏りなく均一に成長するため、より高いガスバリア性を発現する積層体となる。
本発明の積層体は、水蒸気透過度が5.0×10−2g/m/day未満であることが好ましい。比較的高いガスバリア性が要求される高級包装材料や電子デバイス用途に使用される観点から、本発明の積層体の水蒸気透過度は1.0×10−2g/m/day未満であることがより好ましい
[基材]
本発明に用いられる基材は、柔軟性を確保する観点からフィルム形態を有することが好ましい。フィルムの構成としては、単層フィルム、または2層以上の、例えば、共押し出し法で製膜したフィルムであってもよい。フィルムの種類としては、無延伸、一軸延伸あるいは二軸延伸フィルム等を使用してもよい。
本発明に用いられる基材の素材は特に限定されないが、有機高分子を主たる構成成分とするものであることが好ましい。本発明に好適に用いることができる有機高分子としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の結晶性ポリオレフィン、環状構造を有する非晶性環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール等の各種ポリマーなどを挙げることができる。これらの中でも、透明性や汎用性、機械特性に優れた非晶性環状ポリオレフィンまたはポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。また、前記有機高分子は、単独重合体、共重合体のいずれでもよいし、有機高分子として1種類のみを用いてもよいし、複数種類をブレンドして用いてもよい。
基材のA層を形成する側の表面には、密着性や平滑性を良くするためにコロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、イオンボンバード処理、溶剤処理、有機物もしくは無機物またはそれらの混合物で構成されるアンカーコート層の形成処理、等の前処理が施されていてもよい。また、A層を形成する側の反対側には、基材の巻き取り時の滑り性の向上や基材の耐擦傷性を目的として、有機物や無機物あるいはこれらの混合物のコーティング層が積層されていてもよい。
本発明に使用する基材の厚みは特に限定されないが、柔軟性を確保する観点から500μm以下が好ましく、引張りや衝撃に対する強度を確保する観点から5μm以上が好ましい。さらに、フィルムの加工やハンドリングの容易性から基材の厚みは10μm以上、200μm以下がより好ましい。
[A層]
本発明の積層体は、A層を有し、A層はケイ素及び/又は金属元素、並びに酸素を含んでいる。A層に含まれる金属元素は、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)等が挙げられる。A層は、ケイ素及び金属元素並びに酸素を含むことで膜硬度の制御が可能となり、熱や外部からの応力に対してクラックが生じにくく高いガスバリア性を安定して発現することができる。ケイ素と組み合わせる金属元素は限定されないが、膜全体が微細粒子で形成された非結晶構造となり、より高いガスバリア性が得られる金属元素として、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)がより好ましく、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)がさらに好ましい。
好ましい一例として、A層がケイ素及びマグネシウム(Mg)、並びに酸素を含む場合において、膜全体が微細粒子で形成された非結晶構造となり、高いガスバリア性が発現する観点から、マグネシウム(Mg)原子濃度が5〜50atm%、ケイ素(Si)原子濃度が2〜30atom%、及び酸素(O)原子濃度が45〜70atom%であることが好ましい。
また、本発明の積層体のA層は、A層側から陽電子ビーム法(薄膜対応陽電子消滅寿命測定法)(「陽電子計測の科学」(日本アイソトープ協会)I章1節,V章2節参照)により測定される平均寿命が0.935ns以下である。陽電子ビーム法は、陽電子消滅寿命測定法の一つであり、陽電子が試料に入射してから消滅するまでの時間(数百ps〜数十nsオーダー)を測定し、その消滅寿命から約0.1〜10nmの空孔の大きさ、数濃度、さらには大きさの分布に関する情報を非破壊的に評価する手法である。陽電子線源として放射性同位体(22Na)の代わりに陽電子ビームを用いる点が、通常の陽電子消滅法と大きく異なり、シリコンや石英基板上に製膜された数百nm厚程度の薄膜の測定を可能とした手法である。得られた測定値から非線形最小二乗プログラムPOSITRONFITにより、平均細孔半径や細孔の数濃度を求めることが出来る。サブnmオーダーの細孔や基本骨格に対応するものは、第3成分および第4成分の平均寿命を解析することで得られる。なお、A層の表面にA層以外の無機層や樹脂層などが形成されている場合は、透過型電子顕微鏡による断面観察により測定された無機層や樹脂層の厚さ分をイオンエッチングにより除去した後、A層側から陽電子ビーム法によるA層の平気寿命を測定することができる。
ここで、第3成分とは、陽電子ビーム法による平均寿命の測定条件として3成分に対する解析を選択することにより得られた平均寿命をいい、第4成分とは、陽電子ビーム法による平均寿命の測定条件として4成分に対する解析を選択することにより得られた平均寿命をいう。POSITRONFITにより解析をする際には、逆ラプラス変換法に基づく分布解析プログラムCONTINを用いて算出した細孔半径分布曲線で得られたピーク数から、POSITRONFITの成分数を決定する。POSITRONFITから算出した平均細孔半径とCONTINの細孔半径分布曲線のピーク位置が一致していることで、解析が妥当であることを判断する。本発明でいう平均寿命は、第3成分の平均寿命のことを指す。
平均寿命が0.935nsより大きくなると、A層の緻密性が低下するため、ガスバリア性が発現しなくなる可能性がある。ガスバリア性の観点から、陽電子ビーム法により測定される平均寿命は0.912ns以下であることが好ましく、0.863ns以下であることがより好ましい。また、平均寿命の下限は特に限定されないが、0.542ns以上であることが好ましい。平均寿命が0.542nsよりも小さいと屈曲性が低下する場合がある。
本発明で規定する、A層の陽電子ビーム法により測定される平均寿命を0.935ns以下とするためには、例えばRaが10.0nm以下の基材上に、複合酸化物膜を適した組成比率で緻密に形成する方法や後述するA層に含まれる金属元素とケイ素の原子濃度の調整により達成される。ここでいう緻密に形成するとは、それぞれの酸化物が原子レベルで混ざり合い緻密なネットワークを形成している状態をいう。
本発明の積層体のA層は、非晶質膜であることが好ましい。非晶質とは、原子や分子が結晶のように長距離的に規則正しい秩序構造を取らず、不規則な構造であることを言う。結晶構造であると、結晶粒界が生じることから水蒸気透過経路となりガスバリア性の悪化や割れを生じやすくなることから、非晶質であることが好ましい。非晶質であるか否かは断面TEMやX線回折(XRD)などの分析方法によって確認することができる。断面TEMの場合、非晶質膜ではコントラストは均一となり、結晶粒界は見られない一方で、結晶膜では微結晶状態や柱状構造など結晶構造に応じた結晶粒界が観察される。
本発明の積層体のA層は、高度なガスバリア性が安定して発現する観点から、クロスカット試験(JIS K5600−5−6、1999年)で剥離したマス数が全体の10%以下であることが好ましい。さらに温度40℃以上、湿度90%RH以上の高温高湿環境でも長時間優れた密着性を有し、高度なガスバリア性を維持できる観点から、剥離したマス数が全体の5%以下であることがより好ましい。
本発明の積層体のA層は、金属元素の原子濃度をMa(atom%)、ケイ素の原子濃度をSia(atom%)としたとき、金属元素とケイ素の原子濃度の比率Ma/(Ma+Sia)が、0.45〜0.85であることが好ましい。緻密性、ガスバリア性の観点より、Ma/(Ma+Sia)は0.52〜0.82の範囲がより好ましく、0.55〜0.79であることがさらに好ましい。金属元素を複数含む場合には、複数の金属元素の原子濃度の総和をMaとし、ケイ素は除外する。例えば、A層中にZr 60(atom%)、Zn 10(atom%)、Si 30(atom%)を含んでいた場合は、M(Zr+Zn)=70(atom%)、Si=30(atom%)とし、Ma/(Ma+Si)=0.7となる。Ma/(Ma+Sia)が0.85より大きい場合、結晶膜になる可能性や緻密性が低下する可能性がある。また、Ma/(Ma+Sia)が0.45より小さい場合、膜質が不均一となり、バリア性が不安定となる可能性がある。
本発明のA層は、X線光電子分光により測定される酸素原子(O1s)のピークの半値幅が3.25eV以下であることが好ましい。半値幅は、ピークの最大値をFmaxとした場合、ピークの強度がFmax/2の時のピーク幅のことを言う。O1sのピークの半値幅が狭い方が均一な結合のネットワーク構造が形成されることから、緻密な膜となりやすい。結合の均一性、バリア性の観点より、3.00eV以下がより好ましく、2.75eV以下が更に好ましい。また、下限は特に限定されないが、1.65eV以上であることが好ましい。
A層の厚みは10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましい。層の厚みが10nmより薄くなると、十分にガスバリア性が確保できない箇所が発生しガスバリア性がばらつく場合がある。基材へのA層形成時の熱影響を極力小さくする観点から、A層の厚みは500nm以下とすることが好ましく、250nm以下がより好ましい。A層の厚みが500nmより厚くなると、層内に残留する応力が大きくなり、クラックや割れなどが発生する場合がある。
本発明におけるA層の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察で得ることができる。A層の組成は、X線光電子分光法(XPS法)で得ることができる。A層の上に後述する無機層や樹脂層が積層されている場合、透過型電子顕微鏡による断面観察により測定された無機層や樹脂層の厚み分をイオンエッチングや薬液処理により除去した後、上述した方法で分析することとする。
[B層]
本発明の積層体は、基材とA層との間にB層を有し、前記B層は金属酸化物層であることが好ましい。

本発明の積層体は、基材とA層との間にB層を有し、前記B層は金属酸化物層であることによって、B層がA層の基材との密着性の弱い部分を補うことができ、より優れた密着性とガスバリア性を発現することができる。金属酸化物層とは金属酸化物を含む層をいい、金属酸化物に含まれる金属元素としては、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)等が挙げられる。
B層は、金属元素およびケイ素を含むことが好ましく、B層は、ケイ素及び金属元素並びに酸素を含むことで膜硬度の制御が可能となり、熱や外部からの応力に対してクラックが生じにくく安定して優れた密着性を発現することができる。ケイ素と組み合わせる金属元素は限定されないが、膜全体が微細粒子で形成された非結晶構造となり、より優れた密着性と高いガスバリア性が得られる金属元素として、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)が好ましく、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)がより好ましい。
また、本発明におけるB層がケイ素化合物層であることが好ましく、ケイ素化合物として、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素炭化物、ケイ素酸窒化物または、それらの混合物を含んでいてもよい。特に、B層が、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素および酸窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1つのケイ素化合物を含むことが好ましい。
本発明のB層は、金属酸化物とケイ素化合物を含むことで、膜全体が微細粒子で形成された非結晶構造になりやすく、より高度なガスバリア性を有する積層体となる。金属酸化物とケイ素化合物とを含むことで膜硬度を制御することが可能となるため、ハンドリングや衝撃で基材とA層間に生じる応力をB層で緩和でき、A層への欠陥やクラックの発生が抑制され、高いガスバリア性が安定して発現すると考えている。
本発明の積層体のB層は、金属元素およびケイ素を含み、金属元素の原子濃度をMb(atom%)、ケイ素の原子濃度をSib(atom%)としたとき、金属元素とケイ素の原子濃度の比率Mb/(Mb+Sib)が、Mb/(Mb+Sib)<0.6またはMb/(Mb+Sib)>0.8であることが好ましい。B層に柔軟かつ高い密着性を付与する観点から、Mb/(Mb+Sib)<0.3またはMb/(Mb+Sib)>0.9であることがより好ましい。金属元素を複数含む場合には、複数の金属元素の原子濃度の総和をMbとし、ケイ素は除外する。例えば、B層中にAl 60(atom%)、Zr 10(atom%)、Si 30(atom%)を含んでいた場合は、Mb(Al+Zr)=70(atom%)、Si=30(atom%)とし、Mb/(Mb+Sib)=0.7となる。
B層の厚みは1nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましい。B層の厚みが1nm未満であると、基材とB層の密着が不足する場合がある。また、B層は300nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。B層の厚みが300nmより厚くなると、基材とB層間で発生する応力でB層の密着性が低下することやA層への欠陥の発生要因となり、十分にガスバリア性が確保できない場合がある。従って、B層の厚みは1nm以上、300nm以下が好ましく、3nm以上、100nm以下がより好ましい。
また、密着性とフレキシブル性の両立する観点からB層の厚みはA層の厚みに対して40%以下が好ましく、さらに低コストで形成可能な観点から25%以下が好ましく、スパッタリング法で高い密着性が発現する観点から0%より大きく、15%以下がより好ましい。
本発明におけるB層の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察で得ることができる。B層の組成は、X線光電子分光法(XPS法)で得ることができる。B層の上にA層や樹脂層が積層されている場合、透過型電子顕微鏡による断面観察により測定された無機層や樹脂層の厚み分をイオンエッチングや薬液処理により除去した後、上述した方法で分析することとする。
[A層の製造方法]
A層の形成方法については、特に限定はなく、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、原子層堆積法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。製造コスト、ガスバリア性等の観点から、真空蒸着法を用いることが好ましい。A層がケイ素および1つ以上の金属元素を含む化合物層または2つ以上の金属元素を含む化合物層である場合は、真空蒸着法の中でも電子線(EB)蒸着、イオンビームアシスト蒸着(IBAD)を用いることが好ましい。
巻き取り式蒸着装置図4によるA層の形成方法の一例を示す。電子線蒸着法により、基材1の表面にA層として、材料CとDの化合物薄膜を設ける。まず、蒸着材料として、2〜5mm程度の大きさの顆粒状の材料Cと材料Dを図5のように配置する。蒸着材料は顆粒に限らず、角形やタブレット型などの成形体などの形状のものを用いてもよい。また、蒸着源材料の配置として、図5では基材の幅方向に配置しているが、一つのハースライナー内に2材料を混合したり、長手方向に配置するなど他の並べ方をしても構わない。また、蒸着材料が吸湿していると材料中の水分がA層中に取り込まれ、所望の膜組成や物性が得られなくなる可能性があることから、材料を使用前に加熱による脱水処理を行うことが好ましい。巻き取り室6の中で、巻き出しロール7に前記基材1のA層を設ける側の面がハースライナー12に対向するようにセットする。次に、真空ポンプにより、蒸着装置5内を5.0×10−3Pa以下に減圧し、メインドラム11の温度は一例として、0℃以下に冷却する。次に、巻き出し、ガイドロール8,9,10を介して、メインドラム11に通す。このとき加熱源として一台の電子銃(以下、EB銃)14を用い、所望の膜組成比になるように材料C、D表面を加熱する。EB銃は形成するA層が狙いとする厚みになるように、加速電流、電圧とフィルム搬送速度を調整し、前記基材1の表面上にA層を形成する。その後、ガイドロール16,17,18を介して巻き取りロール19に巻き取る。
[B層の製造方法]
B層の形成方法については、特に限定はなく、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、原子層堆積法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。B層がケイ素および1つ以上の金属元素を含む化合物層または2つ以上の金属元素を含む化合物層である場合は、目的とする組成になるように調整された混合焼結材料を使用して、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によってB層を形成することが好ましい。これの中でも基材とB層が優れた密着性を発現する方法として、スパッタリング法がより好ましい。
次に巻き取り式蒸着装置図4によるB層の形成方法の一例を示す。スパッタリング法により基材1の表面にB層として、材料EとFの化合物薄膜を設ける。まず、材料EとFを目的とする組成比率で焼結したスパッタターゲット材料20をスパッタ電極21に取り付ける。巻き取り室6の中で、巻き出しロール7に前記基材1のB層を設ける側の面がスパッタ電極21に対向するようにセットする。次に、真空ポンプにより、蒸着装置5内を5.0×10−3Pa以下に減圧し、メインドラム11の温度は一例として、0℃以下に冷却する。次に、巻き出し、ガイドロール8,9,10を介して、メインドラム11に通す。このときアルゴンガスおよび酸素ガスを導入し、スパッタ電極21に電源から投入電力を印加することにより、アルゴン・酸素ガスプラズマを発生させ、B層の狙いとする厚みになるように、スパッタ電極21の電力とフィルム搬送速度を調整し、前記基材1の表面上にB層を形成する。その後、ガイドロール16,17,18を介して巻き取りロール19に巻き取る。
B層とA層を連続で形成する場合は、基材1の表面にB層を形成後、上述したA層の製造方法でB層上にA層を形成し、その後ガイドロール16,17,18を介して巻き取りロール19に巻き取ることで可能である。
[アンカーコート層]
本発明の積層体は、アンカーコート層を有し、前記アンカーコート層は、一方の面が前記基材と接し、他方の面が前記A層またはB層と接していることが好ましい。さらにアンカーコート層は、芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を架橋して得られる構造を含んでいることがより好ましい。基材上に突起や傷などの欠点が存在する場合、前記欠点を起点に基材上に積層するA層、B層にもピンホールやクラックが発生してガスバリア性や耐屈曲性が損なわれる場合があるため、アンカーコート層を設けることが好ましい。また、基材とA層との熱寸法安定性差が大きい場合もガスバリア性や屈曲性が低下する場合があるため、アンカーコート層を設けることが好ましい。また、本発明に用いられるアンカーコート層は、熱寸法安定性、耐屈曲性の観点から芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を架橋して得られる構造を含有することが好ましく、さらに、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤、有機ケイ素化合物および/または無機ケイ素化合物を含有することがより好ましい。
本発明の積層体のアンカーコート層に用いられる芳香族環構造を有するポリウレタン化合物は、主鎖あるいは側鎖に芳香族環およびウレタン結合を有するものであり、例えば、分子内に水酸基と芳香族環とを有するエポキシ(メタ)アクリレート、ジオール化合物、ジイソシアネート化合物とを重合させて得ることができる。
分子内に水酸基と芳香族環とを有するエポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールF型、レゾルシン、ヒドロキノン等の芳香族グリコールのジエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸誘導体とを反応させて得ることができる。
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビスジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、ビスフェノールAなどを用いることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート等の脂環族系イソシアネート化合物、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族系イソシアネート化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
前記分子内に水酸基と芳香族環とを有するエポキシ(メタ)アクリレート、ジオール化合物、ジイソシアネート化合物の成分比率は所望の重量平均分子量になる範囲であれば特に限定されない。本発明における芳香族環構造を有するポリウレタン化合物の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜100,000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が5,000〜100,000であれば、得られる硬化皮膜の熱寸法安定性、耐屈曲性が優れるため好ましい。なお、本発明における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用いて測定され標準ポリスチレンで換算された値である。
エチレン性不飽和化合物としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールS型エポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシアクリレート等を挙げられる。これらの中でも、熱寸法安定性、表面保護性能に優れた多官能(メタ)アクリレートが好ましい。また、これらは単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。
エチレン性不飽和化合物の含有量は特に限定されないが、熱寸法安定性、表面保護性能の観点から、芳香族環構造を有するポリウレタン化合物との合計量100質量%中、5〜90質量%の範囲であることが好ましく、10〜80質量%の範囲であることがより好ましい。
光重合開始剤としては、本発明の積層体のガスバリア性および耐屈曲性を保持することができれば素材は特に限定されない。本発明に好適に用いることができる光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルーケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン系光重合開始剤、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]等オキシムエステル構造を持つ光重合開始剤等が挙げられる。
これらの中でも、硬化性、表面保護性能の観点から、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルーケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドから選ばれる光重合開始剤が好ましい。また、これらは単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。
光重合開始剤の含有量は特に限定されないが、硬化性、表面保護性能の観点から、重合性成分の合計量中、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
有機ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらの中でも、硬化性、活性エネルギー線照射による重合活性の観点から、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1つの有機ケイ素化合物が好ましい。また、これらは単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。
有機ケイ素化合物の含有量は特に限定されないが、硬化性、表面保護性能の観点から、重合性成分の合計量中、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
無機ケイ素化合物としては、表面保護性能、透明性の観点からシリカ粒子が好ましく、さらにシリカ粒子の一次粒子径が1〜300nmの範囲であることが好ましく、5〜80nmの範囲であることがより好ましい。なお、ここでいう一次粒子径とは、ガス吸着法により求めた比表面積sを下記の式(1)に適用することで求められる粒子直径dを指す。
d=6/ρs ・・・ (1)
ρ:密度。
アンカーコート層の厚みは、200nm以上、4,000nm以下が好ましく、300nm以上、2,000nm以下がより好ましく、500nm以上、1,000nm以下がさらに好ましい。アンカーコート層の厚みが200nmより薄くなると、基材上に存在する突起や傷などの欠点の悪影響を抑制できない場合がある。アンカーコート層の厚みが4,000nmより厚くなると、アンカーコート層の平滑性が低下して前記アンカーコート層上に積層するA層表面の凹凸形状も大きくなり、積層される蒸着膜が緻密になりにくく、ガスバリア性の向上効果が得られにくくなる場合がある。ここでアンカーコート層の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察画像から測定することが可能である。
アンカーコート層の算術平均粗さRaは、10nm以下であることが好ましい。Raを10nm以下にすると、アンカーコート層上に均質なA層を形成しやすくなり、ガスバリア性の繰り返し再現性が向上するため好ましい。アンカーコート層の表面のRaが10nmより大きくなると、アンカーコート層上のA層表面の凹凸形状も大きくなり、蒸着膜が緻密になりにくく、ガスバリア性の向上効果が得られにくくなる場合があり、また、凹凸が多い部分で応力集中によるクラックが発生し易いため、ガスバリア性の繰り返し再現性が低下する原因となる場合がある。従って、本発明においては、アンカーコート層のRaを10nm以下にすることが好ましく、より好ましくは5nm以下である。本発明におけるアンカーコート層のRaは、原子間力顕微鏡(AFM)などを用いて測定することができる。
本発明の積層体にアンカーコート層を適用する場合、アンカーコート層を形成する樹脂を含む塗液の塗布手段としては、まず基材上に芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を含む塗料を乾燥後の厚みが所望の厚みになるよう固形分濃度を調整し、例えばリバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、スピンコート法などにより塗布することが好ましい。また、本発明においては、塗工適性の観点から有機溶剤を用いて芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を含む塗料を希釈することが好ましい。
具体的には、キシレン、トルエン、メチルシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサンなどの炭化水素系溶剤、ジブチルエーテル、エチルブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤などを用いて、固形分濃度を10質量%以下に希釈して使用することが好ましい。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。また、アンカーコート層を形成する塗料には、各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、触媒、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤などを用いることができる。
次いで、塗布後の塗膜を乾燥させて希釈溶剤を除去することが好ましい。ここで、乾燥に用いられる熱源としては特に制限は無く、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターなど任意の熱源を用いることができる。なお、ガスバリア性向上のため、加熱温度は50〜150℃で行うことが好ましい。また、加熱処理時間は数秒〜1時間行うことが好ましい。さらに、加熱処理中は温度が一定であってもよく、徐々に温度を変化させてもよい。また、乾燥処理中は湿度を相対湿度で20〜90%RHの範囲で調整しながら加熱処理してもよい。前記加熱処理は、大気中もしくは不活性ガスを封入しながら行ってもよい。
次に、乾燥後の芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を含む塗膜に活性エネルギー線照射処理を施して前記塗膜を架橋させて、アンカーコート層を形成することが好ましい。
かかる場合に適用する活性エネルギー線としては、アンカーコート層を硬化させることができれば特に制限はないが、汎用性、効率の観点から紫外線処理を用いることが好ましい。紫外線発生源としては、高圧水銀ランプメタルハライドランプ、マイクロ波方式無電極ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ等、既知のものを用いることができる。また、活性エネルギー線は、硬化効率の観点から窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で用いることが好ましい。紫外線処理としては、大気圧下または減圧下のどちらでも構わないが、汎用性、生産効率の観点から本発明では大気圧下にて紫外線処理を行うことが好ましい。前記紫外線処理を行う際の酸素濃度は、アンカーコート層の架橋度制御の観点から酸素ガス分圧は1.0%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。相対湿度は任意でよい。
紫外線発生源としては、高圧水銀ランプメタルハライドランプ、マイクロ波方式無電極ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ等、既知のものを用いることができる。
紫外線照射の積算光量は0.1〜1.0J/cmであることが好ましく、0.2〜0.6J/cmがより好ましい。前記積算光量が0.1J/cm以上であれば所望のアンカーコート層の架橋度が得られるため好ましい。また、前記積算光量が1.0J/cm以下であれば基材へのダメージを少なくすることができるため好ましい。
[その他の層]
本発明の積層体の最表面の上、つまりA層の上には、ガスバリア性が低下しない範囲で耐擦傷性や耐薬品性、印刷性等の向上を目的としたオーバーコート層を形成してもよいし、素子等に貼合するための有機高分子化合物からなる粘着層やフィルムをラミネートした積層構成としてもよい。また、光学特性を向上させるための低屈折率層を形成してもよい。なお、ここでいう最表面とは、基材上にA層が積層された後の、A層の表面をいう。
[積層体の用途]
本発明の積層体は高いガスバリア性を有するため、ガスバリア性フィルムとして好適に用いることができる。また、本発明の積層体は、様々な電子デバイスに用いることができる。例えば、太陽電池やフレキシブル回路基材、有機EL照明、フレキシブル有機ELディスプレイ、シンチレータのような電子デバイスに好適に用いることができる。また、高いバリア性を活かして、リチウムイオン電池の外装材や医薬品の包装材等としても好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
(1)各層の厚み
断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム((株)日立製作所製 FB−2000A)を使用してFIB法により(具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118〜119に記載の方法に基づいて)作製した。透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製 H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、積層体のA層、B層、アンカーコート層の厚みを測定した。
(2)A層の組成、B層の組成、酸素原子(O1s)ピークの半値幅
積層体のA層、B層の組成分析は、X線光電子分光法(XPS法)により行った。各層の最表面から3nmをアルゴンイオンエッチングにより層を除去して下記の条件で各元素の含有比率を測定した。なお、各層の上に他の層が積層されている場合は、各層の最表面まで下記条件のアルゴンイオンエッチングを繰り返した。XPS法の測定条件は下記の通りとした。
・装置 :PHI5000VersaProbe2II(アルバックファイ社製)
・励起X線 :monochromatic AlKα
・分析範囲 :φ100μm
・光電子脱出角度 :45°
・Arイオンエッチング :2.0kV、ラスターサイズ 2×2、エッチング時間 1min。
酸素原子(O1s)ピークの半値幅は、測定装置付帯の解析ソフトMultipakにより算出される値とした。
(3)水蒸気透過度(g/m/day)
積層体の水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RH、測定面積50cmの条件で、英国、テクノロックス(Technolox)社製の水蒸気透過率測定装置(機種名:DELTAPERM(登録商標))を使用して測定した。サンプル数は水準当たり2サンプル行った。2サンプルの測定を行い得たデータを平均し、小数点第2位を四捨五入し、当該水準における平均値を求め、その値を水蒸気透過度(g/m/day)とした。
(4)陽電子寿命及び細孔半径分布
陽電子寿命及び細孔半径分布は、陽電子ビーム法(薄膜対応陽電子消滅寿命測定法)により測定を行った。測定するサンプルを15mm×15mm角のSiウェハに貼り付けて室温で真空脱気した後、A層側から陽電子線を照射して測定を行った。測定条件は下記のとおりである。
・装置 :フジ・インバック製小型陽電子ビーム発生装置PALS200A
・陽電子線源 :22Naベースの陽電子ビーム
・γ線検出器 :BaF製シンチレータ+光電子増倍管
・装置定数 :255〜278ps,24.55ps/ch
・ビーム強度 :1keV
・測定深さ :0〜100nm付近(推定)
・測定温度 :室温
・測定雰囲気 :真空
・測定カウント数 :約5,000,000カウント
測定結果について、非線形最小二乗プログラムPOSITRONFITにより、3成分あるいは4成分解析を行った。
(5)密着性
クロスカット試験法(JIS K5600−5−6、1999年)に従い、積層体のA層側から1mm間隔で碁盤目のクロスカットを100マス形成した。次に幅24mmのセロハンテープ(ニチバン製)をA層の表面に貼り付け、剥離角度90°で剥離した。積層体のA層側から観察し、A層またはB層が剥離したマス数を数え、100マス中の剥離したマス数の割合を算出した。なお、試験は温度23℃±2℃、相対湿度50%±5%の環境下で行った。1つのサンプルにつき、5カ所のクロスカット試験を行い、剥離したマス数の割合の平均値を算出した。A層上に他の層が積層されている場合は、A層の最表面まで上述した条件のアルゴンイオンエッチングで他の層を取り除いた後、密着性を測定した。
(実施例1)
(芳香族環構造を有するポリウレタン化合物の合成)
5リットルの4つ口フラスコに、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(共栄社化学社製、商品名:エポキシエステル3000A)を300質量部、酢酸エチル710質量部を入れ、内温60℃になるよう加温した。合成触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.2質量部を添加し、攪拌しながらジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート(東京化成工業社製)200質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後2時間反応を続行し、続いてジエチレングリコール(和光純薬工業社製)25質量部を1時間かけて滴下した。滴下後5時間反応を続行し、重量平均分子量20,000の芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を得た。
(アンカーコート層の形成)
基材として、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製“ルミラー”(登録商標)U48)を用いた。
アンカーコート層形成用の塗液として、前記ポリウレタン化合物を150質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学社製、商品名:ライトアクリレートDPE−6A)を20質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルーケトン(BASFジャパン社製、商品名:「IRGACURE」(登録商標) 184)を5質量部、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製、商品名:KBM−503)を3質量部、酢酸エチルを170質量部、トルエンを350質量部、シクロヘキサノンを170質量部配合して塗液を調整した。次いで、塗液を基材上にマイクログラビアコーター(グラビア線番150UR、グラビア回転比100%)で塗布、100℃で1分間乾燥し、乾燥後、下記条件にて紫外線処理を施して厚み1μmのアンカーコート層を設けた。
紫外線処理装置:LH10−10Q−G(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製)
導入ガス:N(窒素イナートBOX)
紫外線発生源:マイクロ波方式無電極ランプ
積算光量:400mJ/cm
試料温調:室温。
(B層の形成)
図4に示す巻き取り式蒸着装置を使用し、電子線(EB)蒸着法により、基材のアンカーコート層表面に、B層として厚み50nmのMgO+SiO層を設けた。
具体的な操作は以下の通りである。まず、蒸着材料として、2〜5mmの大きさの顆粒状の酸化マグネシウムMgO(純度99.9%)と二酸化ケイ素SiO(純度99.99%)を事前にそれぞれ100℃、8時間加熱を行った。続いて、それぞれの材料を図5のようにカーボン製ハースライナー12にセットした。巻き取り室6の中で、巻き出しロール7に前記基材1のB層を設ける側(アンカーコート層が形成された側)の面がハースライナー12に対向するようにセットし、巻き出し、ガイドロール8,9,10介して、メインドラム11に通した。このとき、メインドラムは温度−15℃に制御した。次に、真空ポンプにより、蒸着装置5内を5.0×10−3Pa以下に減圧した。次に、加熱源として一台の電子銃(以下、EB銃)14を用い、Mg:Si=1:2(atom%)程度の組成比となるようにMgOとSiOの加熱比率を制御した。形成するB層の厚みが15nmとなるように、加速電流とフィルム搬送速度を調整し、前記アンカーコート層の表面上にB層を形成した。その後、ガイドロール15,16,17を介して巻き取りロール18に巻き取った。
(A層の形成)
図4に示す巻き取り式蒸着装置を使用し、電子線(EB)蒸着法により、上述したB層表面に、A層として厚み150nmのMgO+SiO層を設けた。
具体的な操作は以下の通りである。まず、蒸着材料として、2〜5mmの大きさの顆粒状の酸化マグネシウムMgO(純度99.9%)と二酸化ケイ素SiO(純度99.99%)を事前にそれぞれ100℃、8時間加熱を行った。続いて、それぞれの材料を図5のようにカーボン製ハースライナー12にセットした。巻き取り室6の中で、巻き出しロール7に前記基材1のA層を設ける側(B層が形成された側)の面がハースライナー12に対向するようにセットした。次に、真空ポンプにより、蒸着装置5内を5.0×10−3Pa以下に減圧し、メインドラムは温度−15℃に制御した。次に、巻き出し、ガイドロール8,9,10を介して、メインドラム11に通した。次に、加熱源として一台の電子銃(以下、EB銃)14を用い、Mg:Si=2:1(atom%)程度の組成比となるようにMgOとSiOの加熱比率を制御した。形成するA層の厚みが150nmとなるように、加速電流とフィルム搬送速度を調整し、前記B層の表面上にA層を形成した。その後、ガイドロール16,17,18を介して巻き取りロール19に巻き取った。
続いて、得られた積層体から試験片を切り出し、各種評価を実施した。結果を表1〜3に示す。
(実施例2)
基材として、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚みが50μmの環状オレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン(株)製ZF14−050)を使用し、アンカーコート層を形成しない以外は実施例1と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(実施例3)
B層であるMgO+SiO層の形成において、Mg:Si=1:1(atom%)程度の組成比となるように組成を制御した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(実施例4)
B層であるMgO+SiO層の形成において、Mg:Si=7:1(atom%)程度の組成比となるように組成を制御した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(実施例5)
B層を下記に示す方法で形成した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(B層の形成)
図4に示す巻き取り式蒸着装置を使用し、スパッタリング法により、基材のアンカーコート層表面に、B層として厚み10nmのAl層を設けた。
具体的な操作は以下の通りである。まず、酸化アルミニウムAl(純度99.9%)のスパッタターゲット材料20をスパッタ電極21に取り付けた。巻き取り室6の中で、巻き出しロール7に前記基材1のB層を設ける側の面がスパッタ電極21に対向するようにセットした。次に、真空ポンプにより、蒸着装置5内を5.0×10−3Pa以下に減圧し、メインドラム11の温度を0℃に制御した。次に、巻き出し、ガイドロール8,9,10を介して、メインドラム11に通した。このときアルゴンガスおよび酸素ガスを導入し、スパッタ電極21に高周波電源を使用して投入電力1000Wを印加することにより、アルゴン・酸素ガスプラズマを発生させ、B層が厚み10nmになるように、スパッタ電極21の電力とフィルム搬送速度を調整し、前記アンカーコート層の表面上にB層を形成した。その後、ガイドロール16,17,18を介して巻き取りロール19に巻き取った。
(実施例6)
A層であるMgO+SiO層の形成において、Mg:Si=2.5:1(atom%)程度の組成比となるように組成を制御した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(実施例7)
A層であるMgO+SiO層の形成において、Mg:Si=3:1(atom%)程度の組成比となるように組成を制御した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(実施例8)
実施例5のスパッタターゲット材料である酸化アルミニウムの代わりに酸化ジルコニウムZrO(純度99.9%)を使用する以外は、実施例5と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(実施例9)
実施例5のスパッタターゲット材料である酸化アルミニウムの代わりに二酸化ケイ素SiO(純度99.9%)を使用する以外は、実施例5と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(実施例10)
実施例5のスパッタターゲット材料である酸化アルミニウムの代わりに酸化マグネシウムMgO(純度99.9%)を使用する以外は、実施例5と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(実施例11)
実施例5のスパッタターゲット材料である酸化アルミニウムの代わりに酸化亜鉛ZnOと二酸化ケイ素SiOの混合焼結材料を使用する以外は、実施例5と同様にして積層体を得た。なお、混合焼結材料に含有するZnとSiの組成比は、Zn:Si=1:1(atom%)であった。結果を表1〜3に示す。
(実施例12)
A層の蒸着材料である酸化マグネシウムの代わりに酸化ジルコニウムZrO(純度99.9%)を使用する以外は実施例7と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(実施例13)
A層の蒸着材料である酸化マグネシウムの代わりに酸化スズSnO(純度99.9%)を使用する以外は実施例7と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(実施例14)
A層の蒸着材料である酸化マグネシウムの代わりに酸化亜鉛ZnO(純度99.9%)を使用する以外は実施例7と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(実施例15)
A層の蒸着材料である酸化マグネシウムの代わりに酸化アルミニウムAl(純度99.9%)を使用する以外は実施例7と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(比較例1)
実施例1のB層を形成せず、さらにA層形成時の蒸着材料である二酸化ケイ素を使用せず、酸化マグネシウムのみを使用して厚みが150nmのMgO層を形成する以外は実施例1と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(比較例2)
実施例1のB層を形成せず、さらにA層形成時の蒸着材料である酸化マグネシウムを使用せず、二酸化ケイ素のみを使用して厚みが150nmのSiO層を形成する以外は実施例1と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(比較例3)
実施例1のB層形成時の蒸着材料である酸化マグネシウムを酸化アルミニウムAl(純度99.9%)に代えて、Al:Si=3:1(atom%)程度の組成比となるように組成を制御して、厚みが50nmのAl+SiO層を設けた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(比較例4)
実施例1のB層を形成せず、さらにA層形成時の蒸着材料である酸化マグネシウムを酸化ジルコニウムZrO(純度99.9%)に代えて、Zr:Si=7:1(atom%)程度の組成比となるように組成を制御して、厚みが150nmのZrO+SiO層を設けた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(比較例5)
実施例1のB層形成時の蒸着材料である酸化マグネシウムを酸化ジルコニウムZrO(純度99.9%)に代えて、Zr:Si=3:1(atom%)程度の組成比となるように組成を制御して、厚みが50nmのZrO+SiO層を設けた。さらにA層であるMgO+SiO層の形成において、Mg:Si=3:1(atom%)程度の組成比となるように組成を制御した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(比較例6)
実施例1のB層を形成せず、さらにA層であるMgO+SiO層の形成において、Mg:Si=6:1(atom%)程度の組成比となるように組成を制御した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
(比較例7)
実施例1のB層を形成せず、さらにA層であるMgO+SiO層の形成において、Mg:Si=1:3(atom%)程度の組成比となるように組成を制御した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。結果を表1〜3に示す。
Figure 2021126808
Figure 2021126808
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本発明の積層体は、酸素ガス、水蒸気等に対するガスバリア性に優れているため、例えば、食品、医薬品などの包装材および有機ELテレビ、太陽電池などの電子デバイス用部材として有用に用いることができるが、用途がこれらに限定されるものではない。
1 基材
2 A層
3 B層
4 アンカーコート層
5 巻き取り式電子線(EB)蒸着装置
6 巻き取り室
7 巻き出しロール
8,9,10 巻き出し側ガイドロール
11 メインドラム
12 ハースライナー
13 蒸着材料
14 電子銃
15 電子線
16,17,18 巻き取り側ガイドロール
19 巻き取りロール
20 スパッタターゲット材
21 スパッタ電極
22 蒸着材料C
23 蒸着材料D

Claims (10)

  1. 基材の少なくとも片側にA層を有し、前記A層はケイ素及び/又は金属元素、並びに酸素を含み、陽電子ビーム法により前記A層側から測定される平均寿命が0.935ns以下であり、クロスカット試験(JIS K5600−5−6、1999年)で剥離したマス数が全体の10%以下である積層体。
  2. 前記基材と前記A層との間にB層を有し、前記B層は金属酸化物層である請求項1に記載の積層体。
  3. 前記B層の厚みは、A層の厚みに対して15%以下である請求項2に記載の積層体。
  4. 前記B層がスパッタリング法で形成した層である請求項2または3に記載の積層体。
  5. 前記B層がケイ素化合物層である請求項2〜4のいずれかに記載の積層体。
  6. 前記B層は、金属元素およびケイ素を含み、金属元素の原子濃度をMb(atom%)、ケイ素の原子濃度をSib(atom%)としたとき、金属元素とケイ素の原子濃度(atom%)の比率Mb/(Mb+Sib)が、Mb/(Mb+Sib)<0.6またはMb/(Mb+Sib)>0.8である請求項2〜5のいずれかに記載の積層体。
  7. 前記A層は、金属元素の原子濃度をMa(atom%)、ケイ素の原子濃度をSia(atom%)としたとき、金属元素とケイ素の原子濃度(atom%)の比率Ma/(Ma+Sia)が、0.45〜0.85である請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
  8. 前記A層は、X線光電子分光により測定される酸素原子(O1s)のピークの半値幅が3.25eV以下である請求項1〜7のいずれかに記載の積層体。
  9. アンカーコートを有し、前記アンカーコート層は、一方の面が前記基材と接し、他方の面が前記A層または前記B層と接している請求項1〜8のいずれかに記載の積層体
  10. 前記A層がマグネシウム及びケイ素を含み、X線光電子分光により測定されるマグネシウム原子濃度が5〜50atom%、ケイ素原子濃度が2〜30atom%、及び酸素原子濃度が45〜70atom%である請求項1〜9のいずれかに記載の積層体。
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