以下、本発明の実施例について図面等を用いて詳細に説明する。
まず、本実施例における情報表示装置及び情報表示装置の周辺機器の概略構成について説明する。ここでは、その一例として、特に、自動車のフロントガラスに画像を投影する情報表示装置について説明する。図1(A)は情報表示装置の断面斜視図、図1(B)は周辺機器の概略構成ブロック図である。
図1(B)において、制御装置40は、ナビゲーションシステム60から、自車両が走行している現在位置に対応する道路の制限速度や車線数、ナビゲーションシステム60に設定された自車両の移動予定経路などの各種の情報を、前景情報(即ち、虚像により自車両の前方に表示する情報)として取得する。
運転支援ECU62は、周辺監視装置63での監視の結果として検出された障害物に従って駆動系や制御系を制御することで、運転支援制御を実現する制御装置であり、運転支援制御としては、例えば、クルーズコントロール、アダプティブクルーズコントロール、プリクラッシュセーフティ、レーンキーピングアシストなどの周知技術を含む。
周辺監視装置63は、自車両の周辺の状況を監視する装置であり、一例としては、自車両の周辺を撮影した画像に基づいて自車両の周辺に存在する物体を検出するカメラや、探査波を送受信した結果に基づいて自車両の周辺に存在する物体を検出する探査装置などである。
制御装置40は、このような運転支援ECU62からの情報(例えば、先行車両までの距離及び先行車両の方位、障害物や標識が存在する位置など)を前景情報として取得する。更に、制御装置40には、イグニッション(IG)信号、及び、自車状態情報が入力される。これらの情報の内、自車状態情報とは、車両情報として取得される情報であり、例えば、内燃機関の燃料の残量や冷却水の温度など、予め規定された異常状態となったことを表す警告情報を含んでいる。また、方向指示器の操作結果や自車両の走行速度、更には、シフトポジション情報なども含まれている。
以上述べた制御装置40からの映像信号は、自動車の状態及び周囲環境に対応した映像情報であり観視者の観ている遠方実景に虚像で重ねる第1の情報表示装置であるHUD装置100と、近景に実像で重ねる第2の情報表示装置である投写光学装置220、及び第3の情報表示装置である直視型のインスツルメントパネル42に適宜選択的に表示され、観視者である運転者が運転中に起こす視点移動を軽減する。なおこの制御装置40はイグニッション信号が入力されると起動する。以上が、本実施例における情報表示装置全体システムの構成である。
図1(A)において、45は車体であって、6は被投影部材であるフロントガラスであり、車体の縦断面のイメージ図である。HUD装置100は、運転者の視点8において自車両の前方に虚像を形成するため、被投影部材6(本実施例では、フロントガラスの内面)にて反射された各種情報を虚像(Virtual Image)として表示する装置である。なお、被投影部材6は、情報が投影される部材であればよく、前述したフロントガラスだけではなく、その他、コンバイナであっても良い。即ち、本実施例のHUD装置100では、運転者の視点8において自車両の前方に虚像を形成して運転者に視認させるものであればよく、虚像として表示する情報としては、例えば、車両情報や監視カメラやアラウンドビュアーなどのカメラ(図示せず)で撮影した前景情報も含む。
また、HUD装置100では、情報を表示する映像光を投射する映像表示装置4と、当該映像表示装置4に表示された映像を凹面ミラー1で虚像を形成する際に発生する歪や収差を補正するために補正用の光学素子であるレンズ2及び3が、映像表示装置4と凹面ミラー1の間に設けられている。
そして、HUD装置100は、上記映像表示装置4とバックライト光源10を制御する制御装置40とを備えている。なお、上記映像表示装置4とバックライト光源10などを含む光学部品は、以下に述べる虚像光学系であり、光を反射させる凹面形状の凹面ミラー1を含んでいる。また、この凹面ミラー1において反射した光は、フロントガラス6にて反射されて運転者の視点8(正しく観視することができる運転者の視点範囲いわゆるEyeboxでも良い)へと向かう。
上記の映像表示装置4としては、例えば、バックライトを有するLCD(Liquid Crystal Display)の他に自発光のVFD(Vacuum Fluorescent Display)などがある。
一方、上述した映像表示装置4の代わりに、投写装置によりスクリーンに映像を表示して、前述の凹面ミラー1で虚像とし被投影部材であるフロントガラス6で反射して運転者の視点8と向かわせても良い。このようなスクリーンとしては、例えば、マイクロレンズを2次元状に配置したマイクロレンズアレイにより構成してもよい。
より具体的には、虚像の歪みを低減するために凹面ミラー1の形状は、図1(A)に示す上部(相対的に運転者の視点との距離が短いフロントガラス6の下方で光線が反射する領域)では、拡大率が大きくなるように相対的に曲率半径が小さく、他方、下部(相対的に運転者の視点との距離が長いフロントガラス6の上方で光線が反射する領域)では、拡大率が小さくなるように相対的に曲率半径が大きくなる形状とすると良い。また、映像表示装置4を凹面ミラーの光軸に対して傾斜させることで上述した虚像倍率の違いを補正して発生する歪みそのものを低減することによっても、更に良好な補正が実現できる。
図2は、本実施例における情報表示装置とフロントガラスと運転者の視点位置を示す概略断面構成図である。
また、図3は、本実施例における映像表示位置の概略説明図である。図3は、運転席からフロントガラス6を見た概略図である。
図2、図3に示すように、本実施例においては、ステアリング43の前面のフロントガラス6の中央部近辺の画像表示領域1(a)とフロントガラス6の下部の画像表示領域2(a)とインスツルメントパネル42上の画像表示領域3(a)を有している。
本実施例における情報表示装置は、上述したHUD装置100によりフロントガラス6の中央部近辺の図2、図3に示す画像表示領域1(a)を反射面として観視者に虚像距離8mで40インチ以上の虚像を提供し観視者が運転中に見ている実景に重ねることで視点移動を抑えることができる。
発明者は、市街地走行時の運転者の視点位置変化を計測し、虚像距離の最大値を30mとすれば視点移動を90%抑えられることを実測により求め、高速走行では虚像距離を70m以上にすれば同様に視点移動を抑えることができることを実験により求めた。この時必要な虚像の大きさは350インチ相当になる。
以上述べたように、観視者の視点が遠方の領域には、虚像を表示するHUD装置100を用い図2及び図3に示した画像表示領域1(a)に表示し、他方、図2及び図3に示した画像表示領域2(a)においては、観視者である運転者が実際に見る近景に映像を重畳するためにフロントガラス下部に特定偏波の光束をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子でスキャンする投写光学装置220を用いて実像を映し出す。ここで、MEMSによる映像表示は、基本的にフォーカスフリーであるために、曲率をもつフロントガラス6への投写には有利である。
また、映像を映し出すフロントガラス下部には、後に詳細に説明する特定の偏波に対する反射率が他方の偏波に対して異なる特性を有する部材を含有又は車内のガラス面に塗布又は接着又は粘着することで映像光を効率よく反射させ実像を観視者に向ける。ここで、HUD装置100によるフロントガラス6上の画像表示領域1(a)の水平方向表示寸法は、フロントガラス前方の遠方に虚像として焦点を結ぶために、投写光学装置220による実像表示の水平方向表示寸法より小さくなる。
また、上述した画像表示領域の分割に替えて、図4に示したように、HUD装置を用いて虚像を表示する遠方の画像表示領域1(b)の一部または全部と、近景に映像を重畳する画像表示領域2(b)を重ねて表示することで、擬似的に立体表示を行なうことが出来ることを実験により実証した。より良好な表示とするために、虚像の奥行き方向の表示位置と実像の奥行き方向の表示位置を一部重ねると良好な効果が得られた。また、上述した2つの画像表示領域を重ねて表示することで表示画像の連続性が得られ視点移動がスムーズに行なわれるなど新しい効果も得られた。
上述したフロントガラス中央部付近に映し出す虚像の表示位置、表示色、表示間隔は観視者の状態を観視する観視用カメラ210により適宜選択され、自動走行状態で制御された自動車が次に行う動作、例えば右左折、停止、加速などの情報を映像表示するだけでなく運転者の健康状態や眠気などをセンシングしこれらの情報により注意喚起の映像表示などを行なう。なお、これらの情報は常に表示する必要がなく、運転者の目線の動きを観視用カメラ210で追尾し必要に応じて必要な場所に表示することが望ましい。
乗用車のフロントガラス6は、図5に示すように、垂直方向の曲率半径Rvと水平方向の曲率半径Rhが異なり、一般には、Rh>Rvの関係にある。このため、図5に示すように、反射面としてフロントガラス6を捉えると、凹面ミラーのトロイダル面となる。このため、本実施例のHUD装置100では、凹面ミラー1の形状はフロントガラス6の形状による虚像倍率を補正するように、即ち、フロントガラスの垂直方向と水平方向の曲率半径の違いを補正するように水平方向と垂直方向で異なる平均曲率半径とすれば良い。この時、凹面ミラー1の形状は、光軸に対称な球面または非球面(以下に式(2)で示す)形状では光軸からの距離hの関数であり、離れた場所の水平断面と垂直断面形状を個別に制御できないことから、以下に式(1)で示す自由曲面としてミラー面の光軸からの面の座標(x,y)の関数として補正することが好ましい。
ここで、zは面を定義する軸を基準とした座標(x,y)におけるサグ量、cは面を定義する軸の原点における曲率、Kはコーニック定数、Cjは係数である。
再び、図1(A)に戻り、さらに、映像表示装置4と凹面ミラー1の間に透過型の光学部品として、例えば光学素子2及び光学素子3を配置し、もって、凹面ミラーへの光線の出射方向を制御することで凹面ミラーの形状と合わせて歪曲収差の補正を行なうと同時に、前述したフロントガラス6の水平方向の曲率半径と垂直方向の曲率半径の違いによって生じる非点収差を含めた虚像の収差補正を実現する。
一方、図1(A)及び図2に示すように太陽50からの光束はフロントガラスでS偏波の殆どが反射され車内に入射する光束はP偏波が殆どとなるため、近景に映像を重畳するためにフロントガラス下部に映像を投写するにはS偏波の光束をMEMS素子に入射させスキャンする投写光学装置220を用いる。この時映像表示にはS偏光を用いる他の理由は、フロントガラスの傾斜角度が40度以上と大きくこの反射率は図6に示すようにS偏波が高いためである。
また、自動車のフロントガラスは、図5に示すように水平方向の曲率半径Rhと垂直方向の曲率半径Rvが異なることと、図7に示すように観視者である運転者の位置(図7ではステアリング43の位置)が水平方向の曲率中心に対して映像の中心が異なるためである。
これに対して、上述した投写光学装置220はレーザ光源を用いMEMSにより垂直及び水平方向にスキャンすることでフロントガラス上に映像を映し出すが、図2及び図3に示すフロントガラス下部の画像表示領域2(a)にはS偏波に対する反射率がP偏波に対して異なる特性を有する部材を含有又は車内のガラス面に塗布又は接着又は粘着することで映像光を効率よく反射させ実像を観視者に向ける。具体的には図8に示すようにS偏波のレーザ光の可視光範囲(380nm〜780nm)での反射率が特性(1)に示すように平均で10%程度のものから特性(2)に示す20%程度のものが良く、ウインドガラスの室内に接した反射面で反射して観視者である運転者の方向に映像光を反射させるようにする。
より具体的には上述した特性を有する光学多層膜を積層したシートまたは、屈折率の異なる複数のシートを積層して同様の効果を持たせても良く、ウインドガラス水平方向に対する拡散特性を垂直方向に対する拡散特性に比べて大きくするためにシート表面に凹凸形状を設けても良い。
また、上述したシートの反射率が、紫外線領域(380nmより小)及び近赤外線領域(780nmより大)で高く設定することで、車内への紫外線及び近赤外線の入射を抑え、より快適な環境を実現するためである。
以上のように、本実施例は、乗り物に情報を表示する情報表示装置であって、乗り物のフロントガラスに反射させ虚像の映像情報を表示する第1の情報表示装置と、レーザ光をMEMS素子でフロントガラスにスキャンして実像を得る第2の情報表示装置と、乗り物のインストルメントパネルを用いた第3の情報表示装置とを備え、第1の情報表示装置は、映像情報を表示する映像表示装置から出射された光をフロントガラスで反射させることで虚像を乗り物の前方に表示させる虚像光学系を備えており、第2の情報表示装置は、走査型ミラー素子でレーザ光をスキャンしてフロントガラスに実像を表示する実像光学系を備えており、第3の情報表示装置はインストルメントパネルとして直視型の映像表示装置を備え、第1の情報表示装置の映像表示位置がフロントガラスの中央付近で、第2の情報表示装置の映像表示位置がフロントガラスの下部であるように構成する。
これにより、遠景に虚像を重ねるHUD装置と近景に重ねる実像を表示する実像表示装置及びインストルメントパネルの表示を組み合わせることで運転者の視点移動を軽減し安全運転の支援に寄与する情報表示装置を提供することが可能となる。
本実施例は、上述した情報表示装置の虚像光学系を有するHUD装置のより具体的な光学的な構成について説明する。
図9は本実施例におけるHUD装置100の全体構成図である。図9において、上述したように、下流側から順に、フロントガラス6を介して虚像を形成する映像光を投射する凹面(自由曲面)ミラー1、その際に発生する歪や収差を補正するための補正用のレンズ群2、映像表示装置4、バックライトを構成するバックライト光源10が設けられている。なお、7は筐体である。更に、HUD装置100の内部に侵入する太陽光のP波成分を抑制するため、その一例として、レンズ群2と映像表示装置4の間には、P波成分を抑制するための光学素子3が設けられている。
まず、本実施例では、映像光を投射する凹面(自由曲面)ミラー1には、可視光(波長:略400〜700nm)を反射すると同時に、特に、各種の波長スペクトルを含む太陽光から、情報表示装置には不要で装置にダメージを与える、例えば、赤外線(IR)や紫外線(UV)などを除去する機能を持たせることが好ましい。この時、可視光の反射率を95%以上とすると光利用効率が高い虚像光学系が実現できる。
しかしながら、その反面、フロントガラスを透して直接凹面(自由曲面)ミラー1を見た場合に、外光が反射して眩しく見え自動車の品位の低下や、太陽光や夜間の対向車のヘッドライトなどの強い光が凹面ミラー1に反射し一部の光線が液晶パネルに戻ることでコントラスト性能など情報表示装置として得られる画像(虚像)の画質低下を招くと共に、映像表示装置4を構成する偏光板や液晶パネルにダメージを与えることになる。このため、凹面(自由曲面)ミラー1の反射率を意図的に低減し90%以下望ましくは85%以下とすることで、上述した問題点を解決できる。
凹面(自由曲面)ミラー1の基材である凹面ミラー支持部1aは、上述した太陽光のうち反射しない波長成分の光を基材が吸収しないように透明性が高いものを選択する。プラスチック製基材であって透明度が高い基材としては、(1)日本ゼオン(株)のZEONEX、(2)ポリカーボネイト、(3)アクリル等がある。吸水率がほぼ0%で熱変形温度が高い、(1)ZEONEXが最適であるが価格が高いため、熱変形温度が同等で吸水率が0.2%程度のポリカーボネイトを工夫して使用すると良い。成形性が最も高く安価なアクリルについては吸湿率が最大であるため防湿膜と反射膜を設けることが必須となる。
凹面(自由曲面)ミラー1の基材が吸湿するのを防止するために反射面に成膜する反射膜に併せて、反対側の面に防湿膜としてSiN(窒化シリコン)を成膜して防湿膜を設けると良い。防湿膜であるSiNは太陽光を通過させるため基材での光吸収が発生せず熱変形を押さえることができる。この結果、ポリカーボネイトやアクリルで成形された凹面(自由曲面)ミラーにおいても吸湿による形状変化を防止することが出来る。
更に、ここでは図示しないが、上述したIRやUVを抑制/除去する機能を備えた凹面(自由曲面)ミラー1に加え、又は、それに代えて、HUD装置100の上部に形成される開口部41に、IRやUVを除去する機能を備えた透光板を設けてもよい。なお、その場合には、IRやUVの抑制機能に加え、外部の塵がHUD装置100内部に侵入することを防止することが可能となる。
このように、上述した凹面ミラー1によれば、開口部41からHUD装置100の内部に侵入する多数のスペクトル成分を含む太陽光のうち、当該HUD装置では不要な成分を除去し、主に可視光成分を選択的に取り出すことが可能となる。
一方、HUD装置の画質を低下させる要因として、映像表示装置4から凹面ミラー1に向かって出射する映像光線が途中に配置された光学素子2の表面で反射して映像表示装置に戻り、再度反射して本来の映像光に重畳されて、画質を低下させることが知られている。このため、本実施例では、光学素子2の表面に反射防止膜を成膜して反射を抑えるだけでなく、光学素子2の映像光入射面と出射面のいずれか一方、若しくは、両方のレンズ面形状を上述した反射光が映像表示装置4の一部分に極端に集光しないような形状の制約を持たせて設計することが好ましい。
次に、映像表示装置4として、上述した光学素子2からの反射光を吸収させるために偏光板を配置した液晶パネルとすれば、画質の低下を軽減できる。また、液晶パネルのバックライト光源10は、映像表示装置4に入射する光の入射方向を凹面ミラー1の入射瞳に効率よく入射するように制御される。更に、光源としては、製品寿命が長い固体光源を採用すると良く、更には、周囲温度の変動に対する光出力変化が少ないLED(Light Emitting Diode)として光の発散角を低減する光学手段を設けたPBS(Polarizing Beam Splitter)を用いて偏光変換を行なうことが好ましい。
液晶パネルのバックライト光源10側(光入射面)と光学素子2側(光出射面)には偏光板を配置して、映像光のコントラスト比を高めている。バックライト光源10側(光入射面)に設ける偏光板には、偏光度が高いヨウ素系のものを採用すれば、高いコントラスト比が得られる。一方、光学素子2側(光出射面)には染料系の偏光板を用いることで、外光が入射した場合や環境温度が高い場合でも、高い信頼性を得ることが可能となる。
映像表示装置4として液晶パネルを用いる場合、特に、運転者が偏光サングラスを着用している場合には、特定の偏波が遮蔽されて映像が見えない不具合が発生する。これを防ぐために、液晶パネルの光学素子2側に配置した偏光板の光学素子側にλ/4板を配置し、もって、特定の偏光方向に揃った映像光を円偏光に変換することが好ましい。
本実施例は、上述した情報表示装置の実像光学系を有する投写光学装置のより具体的な光学的な構成について説明する。
図10は、本実施例における、レーザ光をMEMSによりスキャンして実像を得る投写光学装置220の基本構成図である。図10において、投写光学装置220は、画像信号に応じて光強度変調(以下、「変調」という)されたレーザ光を二次元方向に走査する光走査装置を搭載し、その光走査装置によりレーザ光を被照射体(例えばフロントガラス)上で走査させて画像を描画する走査型の画像表示装置である。すなわち、回動軸を有する走査ミラー61により光源部64(64a,64b)からのレーザ光を反射させることによって、レーザ光を走査させることができる。概念的には、変調された各画素201が、表示面20のレーザ光の走査軌跡202に沿って、像面上で二次元状に走査される。
以下、本実施例における走査ミラー61での二次元状の偏向作用の詳細について説明する。
図11は本実施例における2軸駆動のMEMS素子である走査ミラー61の概略構成図である。図11において、レーザ光を反射角度で偏向する走査ミラー面61aは、同軸上に走査ミラー面61aを挟んで対向して配置された第1のトーションバネ61bに連結されている。さらに、トーションバネ61bは保持部材61cに連結され、次に、保持部材61cは第2のトーションバネ61dに連結されている。第2のトーションバネ61dはフレーム61eに連結されている。そして、それぞれのトーションバネ61bと61dに関して略対称な位置に、図示しないが永久磁石とコイルを配置している。コイルは走査ミラー61の走査ミラー面61aに略平行に形成されており、走査ミラー61の走査ミラー面61aが静止した状態にあるときに、走査ミラー面61aと略平行な磁界を生じさせる。コイルに電流を流すと、フレミングの左手の法則によって、走査ミラー面61aと略垂直なローレンツ力が発生する。
走査ミラー面61aは、ローレンツ力と、トーションバネ61bと61dの復元力がつりあう位置まで回動する。トーションバネ61bに対しては、走査ミラー面61aが持つ共振周波数でコイルに交流電流を供給することによって、走査ミラー面61aは共振動作を行う。同様に、トーションバネ61dに対しては、走査ミラー面61aと保持部材61cを合わせた共振周波数でコイルに交流電流を供給することによって、走査ミラー面61aとトーションバネ61bと保持部材61cは共振動作を行う。これによって、2方向について、異なる共振周波数による共振動作が可能としている。
図12において、光走査部の反射面である走査ミラー61の回動角をβ/2とすれば、反射光線の角度である走査角はその2倍でβ変化する。ここで、走査ミラー61と表示面20の間になんら光学要素を配置しない場合は、走査角βは表示面20での入射角αに等しくなる。従って、ある投射距離に対する走査像の大きさは走査ミラー61の回動角β/2で決まってしまう。このため、短い距離で大画面を得るために、本実施例においては、図10に示す走査ミラー61から投写面であるフロントガラスまでの間に光学系(凹レンズ又は凸面鏡)を設ける(図示せず)ことで上述した振幅を大きくする。
本実施例では観視者が観る近景に映像を重ねるために観視者から映像までの距離が短いため、垂直方向に対して水平方向の映像表示領域を大きくとる必要がある。そこで、発明者等は観視者である運転者とフロントガラス下部までの距離を1.2mで固定し映像表示幅の最適値を実測により求めた。運転する自動車が左右に曲がることをステアリングの回転角度に併せて矢印で表示するためには水平方向の表示範囲を30インチ以上とする必要があり、40インチを超える表示が出来れば更に良好な映像表示が可能であることが判った。
一方、垂直方向の表示範囲は10インチあれば明確な表示が可能であることを見出した。更に表示の視認性を上げるには20インチ程度まで表示範囲を拡大する必要があるが、MEMSの駆動では垂直方向の振幅を大きくすると水平方向の振幅を小さくする必要があり上限を15インチとすれば実用上十分な映像が得られることを確認した。
次に、本実施例における像面上を走査するレーザ光の第1の走査状態について説明する。
図13は、本実施例における光走査部からのレーザ光の第1の走査状態を示す。上述したように、本実施例における光走査部のスキャンの範囲(振幅)は水平方向の振幅角度を垂直方向の振幅角度に対して2倍以上とし水平方向の映像表示範囲を垂直方向に対して大きくする。フロントガラス上でのレーザ光のサイズを一画素とし水平方向にレーザ光301を左から右方向にスキャンし、一画素分下がって右から左に向かってスキャンする。302は第1の走査部の走査軌跡である。画像が切り替わるフレームレートは、自動車の走行速度が40km/時の場合は1/60Hzで良いが、走行速度が100km/時ではフレームレートを1/120Hzとすることで自動車の走行速度に応じて表示画像の書き換え速度を速めて最適表示を可能にした。
この時、本実施例における光走査部は式(3)に示すようにフレーム周波数Fと水平偏向周波数fhと垂直偏向周波数fvの積はほぼ一定値Aとなる。このため、図1(B)に示した運転支援ECU62からの自動車の走行速度情報によりフレームレートを変更し、式(3)により水平の偏向周波数を小さくすると同時に偏向角度も比例して小さくする。
この結果、映像表範囲として映像表示である水平方向サイズが小さくなるが走行速度が高くなると運転者の視野が狭くなるため、使用に際しては違和感のない情報表示装置を得ることが出来る。
本実施例における第1の走査状態では図14に示す3色(赤色(635nm),緑色(532nm),青色(460nm))の単色レーザ光を用いた。これらを組み合わせて得られる単色の光及び合成した場合の色度を図15に示す色度図上の座標に変換した結果を図16に示すが、単色の色純度がそれぞれ優れているために、NTSC方式の表示色範囲をカバーしながら十分な明るさが得られた。
更にそれぞれ単色の発光時に他の色光を混ぜること、例えば、青色レーザ光を100%発光させた時、緑色レーザ光を最大発光に対して10%発光させ同時に赤色レーザ光を最大発光に対して5%発光させると混色光は青色相当色で明るさは2倍以上となった。以上述べたように、本願方式の走査部ではレーザ単色光ではなく他色レーザ光を混色させることで擬似的な単色光の明るさを更に向上できることも見出した。
次に、本実施例における像面上を走査するレーザ光の第2の走査状態について説明する。
図17は、本実施例における光走査部からのレーザ光の第2の走査状態を示す。第1の走査状態との違いは光走査部を複数、すなわち、図17では第1の走査部と第2の走査部の2個、としている点である。第1の走査部によるスキャンの範囲(振幅)は水平方向の振幅角度を垂直方向の振幅角度に対して2倍以上とし水平方向の映像表示範囲を垂直方向に対して大きくする。フロントガラス上でのレーザ光301のサイズを一画素とし水平方向にビームをスキャン、すなわち、図17の実線で示す軌跡で左から右方向へスキャンし、一画素分下がって右から左に向かってスキャンする。302は第1の走査部の走査軌跡である。
一方、第2の走査部によるスキャンの範囲(振幅)は第1の走査部と同様に水平方向の振幅角度を垂直方向の振幅角度に対して2倍以上とし水平方向の映像表示範囲を垂直方向に対して大きくする。フロントガラス上でのレーザ光303のサイズを一画素とし水平方向にビームをスキャン、すなわち、図17の破線で示す軌跡で左から右方向へスキャンし、一画素分上がって右から左に向かってスキャンする。なお、図17ではレーザ光303が最下段の最終画素に来た状態を示している。また、第2の走査部によるスキャンは上から下方向でも良いし、下から上方向でも良い。304は第2の走査部の走査軌跡である。この時、第1の走査部が表示するフレーム画像の次のフレームの表示をほぼ1/2フレーム分ずらして次のフレームの映像を表示する。
この結果、擬似的にフレームレートを2倍にできることを確認した。更に、第2の走査状態での第1の走査部では図18に示す3色の、赤色(635nm),緑色(532nm),青色(460nm)の単色レーザ光を用いた。また第2の走査部では図18に示す3色の、赤色(645nm),緑色(515nm),青色(450nm)の単色レーザ光を用いることでスペックルも低減でき、これらを組み合わせて得られる単色の光及び合成した場合の色度は図19に示すように、2つの走査部を構成するレーザ光源の単色の色純度がそれぞれ優れているために、NTSC方式の表示色範囲をカバーしながら十分な明るさが得られた。
更に第1の走査部(以降(1)と記載)、第2の走査部(以降(2)と記載する)それぞれ単色の発光時に他の色光を混ぜること、例えば、2走査部の青色レーザ光(1)及び(2)を100%発光させた時、緑色レーザ光(1)を最大発光に対して5%発光させ同時に緑色レーザ光(2)を最大発光に対して10%発光させ、赤色レーザ光(1)を最大発光に対して5%発光させると混色光は青色相当色で明るさは2倍以上となった。
以上述べたように、本実施例によればの複数の走査部を重ねて用いてもレーザ単色光ではなく他色レーザ光を混色させることで擬似的な単色光の明るさを更に向上できることも見出した。本実施例では2つの走査部を同時に使用した場合の効果について述べたが、3つ以上の走査部を同時に使用すれば、擬似的にフレームレートを速めることができることは言うまでもなく、異なる波長のレーザ光をそれぞれの走査部に用いて重ねることでスペックルノイズの大幅な軽減も出来る。明るさについても上述したように単色の色度を損なうことなく向上できる。
本実施例は、上述した情報表示装置のインストルメントパネルによる表示のより具体的な構成について説明する。
図1(A)に示すインスツルメントパネル42はステアリング43の内径部分に配置されるため、その表示される映像は、観視者である運転者からの視点移動が最も大きくなる。このため、自動車が自動運転モードによる自動運転中以外は緊急度の低い情報を表示する。運転者の視点を、前述した観視用カメラ210でセンシングし、表示映像を変更すると多くの映像情報を有効に運転者に表示できる。
インストルメントパネルとしては装置の薄型化のために液晶パネルを使用する。自動車の内装デザインを重視して曲面形状とすると良い。また、表示速度をフレームレート(60Hz)の2倍の120Hz又は4倍の240Hzとして表示内容の切り替えを高速で行なうことで、車外の観視カメラからの映像情報をリアルタイムに表示可能となる。
以上述べた情報表示装置は、図3に示すような3種類の情報表示位置として、画像表示領域1(a),画像表示領域2(a)、画像表示領域3(a)を有する。これに対して、観視者である運転者の視点移動を感知するセンサとして、例えば図1(A)や図2で示した観視用カメラ210を用い、観視者の視点移動の情報と自動車の速度に対応して、3種類の情報表示位置に表示されるそれぞれの映像表示を最適な位置、時間、表示内容として組み合せて表示することで安全運転支援に有効な情報表示装置を提供することが出来る。例えば、旋回時の観視者の視点移動に応じて、情報表示位置を旋回方向に変更する等の制御を行う。
また、上述した3つの情報表示位置は、ステアリングの回転中心軸を含む直線近傍を表示の中心とすることで、観視者である運転者の水平方向の視点移動が左右均等になるため運転時の疲労を抑える効果と視点移動を最小にする効果がある。
以上、本発明の種々の実施例になる情報表示装置について述べた。しかしながら、本発明は、上述した実施例のみに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するためにシステム全体を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。