JP2021119211A - 蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】光遮断時に、白色等、従来の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物では実現し得なかった色調に発光する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、少なくとも2種の蓄光材(B)を0.8〜20質量部含有する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。蓄光材(B)としては、赤色発光蓄光材(B1)、青色発光蓄光材(B2)、緑色発光蓄光材(B3)から選ばれる少なくとも2種を含むことが好ましい。さらにアルキルアシッドホスフェート、アルケニルアシッドホスフェート及びこれらの金属塩より選ばれる1種又は2種以上のホスフェート系安定剤(C)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜1質量部含有することが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品に係り、詳しくは、2種以上の蓄光材を含み、光遮断時に、白色等、従来にない様々な色調に発光する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物と、この蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品に関する。
太陽光や人工光などに含まれる紫外線や可視光などの光が照射されるとその光を吸収して蓄え、光照射を停止した後でも、即ち暗所においても、放光という形で所定の時間発光し続ける蓄光材を配合したポリカーボネート樹脂組成物が、道路標識や看板などの蓄光発光部材の成形材料として種々提案され、またその改良についての検討がなされている。
従来提供されている蓄光顔料は、緑、青緑、青、紫に発光するものが主流であり、ポリカーボネート樹脂に配合できる赤色蓄光顔料は提供されていなかった。また、異なる色に発光する蓄光顔料を2種以上混合して用いることも従来は行われておらず、用いた蓄光顔料本来の発光色に発光する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物しか提供されていないのが実情である。
特許文献1には、ポリカーボネート樹脂に蓄光材を配合したポリカーボネート樹脂組成物の溶融混練時ないしは成形時に起こる黒ずみの問題を改善するために、安定剤であるアルキルアシッドホスフェート及び/又はアルキルアシッドホスフェート金属塩と、離型剤である脂肪酸エステル化合物を所定の割合で併用して配合することが提案され、蓄光材を2種以上用いてもよいとの記載もあるが、赤色発光蓄光材の例示はなく、また、実際に2種以上の蓄光材を混合して配合した実施例の記載もない。
特開2016−28111号公報
本発明は、光遮断時に、白色等、従来の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物では実現し得なかった色調に発光する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物と、この蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、異なる色に発光する蓄光材を2種以上配合することで、光遮断時に、白色等、従来の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物では実現し得なかった色調に発光する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を提供することができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、少なくとも2種の蓄光材(B)を0.8〜20質量部含有することを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[2] 前記蓄光材(B)が、赤色発光蓄光材(B1)、青色発光蓄光材(B2)、及び緑色発光蓄光材(B3)から選ばれる少なくとも2種である[1]に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[3] 前記蓄光材(B)が、赤色発光蓄光材(B1)、青色発光蓄光材(B2)、及び緑色発光蓄光材(B3)から選ばれる少なくとも2種であり、そのうちの1種が赤色発光蓄光材(B1)である[2]に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[4] 前記蓄光材(B)が、赤色発光蓄光材(B1)、青色発光蓄光材(B2)、及び緑色発光蓄光材(B3)の3種を含有することを特徴とする[3]に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[5] 前記蓄光材(B)において、赤色発光蓄光材(B1)の含有量が蓄光材(B)全体量のうちの45質量%以上である[3]又は[4]に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[6] 前記蓄光材(B)において、赤色発光蓄光材(B1)の含有量が蓄光材(B)全体量のうちの45質量%以上90質量%以下である[5]に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[7] 前記赤色発光蓄光材(B1)が、ユウロピウムマグネシウムチタン付活酸硫化イットリウム(YS:Eu,Mg,Ti)である[2]ないし[6]のいずれかに記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[8] 前記青色発光蓄光材(B2)が、ジスプロシウムユーロピウム付活ケイ酸ストロンチウム・マグネシウム(SrMgSi:Eu,Dy)である[2]ないし[7]のいずれかに記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[9] 前記緑色発光蓄光材(B3)が、ジスプロシウムユーロピウム付活アルミン酸ストロンチウム(SrO・aAl:Eu,Dy、0.8<a<3)である[2]ないし[8]のいずれかに記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[10] さらにアルキルアシッドホスフェート、アルケニルアシッドホスフェート及びこれらの金属塩より選ばれる1種又は2種以上のホスフェート系安定剤(C)を、前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜1質量部含有することを特徴とする[1]ないし[9]のいずれかに記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[11] 前記ホスフェート系安定剤(C)が、下記式(I)で表されることを特徴とする[10]に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
O=P(OH)(OR)3−n …(I)
(式(I)中、Rは炭素数9〜30のアルキル基又はアルケニル基であり、nは1又は2の整数を表す。nが1の場合、2つのRは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
[12] 前記式(I)におけるRが炭素数13,18,24のいずれかのアルキル基又はアルケニル基であることを特徴とする[11]に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[13] 前記ホスフェート系安定剤(C)が、下記式(II)で表され、式(II)におけるn=1のジステアリルアシッドホスフェートとn=2のモノステアリルアシッドホスフェートとの混合物であることを特徴とする[12]に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
O=P(OH)(OC18373−n …(II)
[14] 以下の方法(X)で測定したL*値が65以上であることを特徴とする[1]ないし[13]のいずれかに記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
方法(X):シリンダー温度300℃、金型温度120℃、成形サイクル45秒の条件で、該蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物の射出成形により得られた試験片(50mm(幅)×90mm(長さ)で厚みが1mm、2mm、及び3mmの3段プレート)の3mm厚みの部分について、JIS Z8722に基づいて色差計を用いて下記条件でL*値を測定する。
反射測定:D65光源10度視野
測定口:30φ
試料押さえ:白
[15] [1]ないし[14]のいずれかに記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
[16] 前記蓄光材(B)が、赤色発光蓄光材(B1)、青色発光蓄光材(B2)、及び緑色発光蓄光材(B3)の3種を含有する成形品であって、該成形品に光照射して光を遮断した後の残光色が白色であることを特徴とする[15]に記載の成形品。
本発明によれば、光遮断時に、白色等、従来の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物では実現し得なかった色調に発光する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供することができる。
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、異色の蓄光発光を示し、電飾看板、商品ディスプレイ、液晶バックライト、照明ディスプレイ、照明器具カバー、交通標識、安全標識、夜間視認性向上部材、サインボード、スクリーン、反射板やメーター部品等の自動車部品、娯楽施設の遊具や玩具、ノートパソコン、携帯電話などのモバイル機器をはじめ、自動車室内や建物内の標示ボタン、時計の文字盤、アクセサリー類、文具類、スポーツ用品、各種の電気・電子・OA機器等の分野における筐体やスイッチ、ボタン類などと幅広い用途に用いることができる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
〔蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物〕
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」と称す場合がある。)は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、少なくとも2種の蓄光材(B)を0.8〜20質量部含有することを特徴とする。
[メカニズム]
本発明によれば、2種以上の蓄光材(B)、例えば赤色発光蓄光材(B1)、青色発光蓄光材(B2)及び緑色発光蓄光材(B3)のうちの2種以上を組み合わせてポリカーボネート樹脂(A)に配合することで、従来にない様々な色に発光する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物とすることができる。特に、光の三原色である赤色発光蓄光材(B1)、青色発光蓄光材(B2)及び緑色発光蓄光材(B3)の3種を組み合わせてポリカーボネート樹脂(A)に配合することで、光遮断時に白色に発光する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物とすることができる。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)としては、透明性、耐衝撃性、耐熱性等の面から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。また、溶融法を用いた場合には、末端基のOH基量を調整した芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することができる。
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、上述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を、以下の分岐剤、即ち、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物や、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等の化合物で置換すればよい。これら置換する化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、又は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。
上述した芳香族ポリカーボネート樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、この一価の芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、m−及びp−メルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は用途により任意であり、適宜選択して決定すればよいが、粘度平均分子量(Mv)で、好ましくは20,000〜50,000である。粘度平均分子量が20,000より小さいと、得られる成形品の耐衝撃性等の機械的強度が低下し、50,000より大きいと、流動性が悪くなり、成形性に問題が生じる。芳香族ポリカーボネート樹脂のより好ましい粘度平均分子量は20,000〜40,000であり、さらに好ましくは21,000〜30,000である。なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
なお、粘度平均分子量(Mv)とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度(η)(単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83、から算出される値を意味する。また極限粘度(η)とは、各溶液濃度(C)(g/dl)での比粘度(ηsp)を測定し、下記式により算出した値である。
Figure 2021119211
[蓄光材(B)]
蓄光材は、太陽光や人工光などに含まれる紫外線や可視光などの光が照射されるとその光を吸収して蓄え、光照射を停止した後でも、即ち暗所においても、放光という形で所定の時間発光し続けるものである。蓄光材は、光励起終了後は、数分〜数十時間程度の残光持続性を持ち、光照射を停止した後速やかに発光が減衰する一般の蛍光増白剤などとは区別される。
本発明で用いる蓄光材(B)の組み合わせには特に制限はないが、本発明では特に赤色発光蓄光材(B1)と青色発光蓄光材(B2)と緑色発光蓄光材(B3)のうちの少なくとも2種を併用することが、光遮断時に従来にない様々な色調に発光する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物とすることができることから好ましい。
例えば、赤色発光蓄光材(B1)と青色発光蓄光材(B2)とを混合して用いることで、光遮断時に赤紫に発光する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物とすることができる。また、青色発光蓄光材(B2)と緑色発光蓄光材(B3)とを混合して用いることで、光遮断時に緑味の青色に発光する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物とすることができる。また、赤色発光蓄光材(B1)と緑色発光蓄光材(B3)とを混合して用いることで、光遮断時に青緑色に発光する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物とすることができる。更には、これらの混合割合を調整することで、発光色の濃淡や明度を調整することもできる。
特に、本発明では、2種以上の蓄光材(B)のうちの1種として赤色発光蓄光材(B1)を用いること、即ち、赤色発光蓄光材(B1)と青色発光蓄光材(B2)及び/又は緑色発光蓄光材(B3)とを用いると、光遮断時に各種用途に適する色調に発光する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を得ることができ、好ましい。
とりわけ、赤色発光蓄光材(B1)と青色発光蓄光材(B2)と緑色発光蓄光材(B3)とを混合して用いることで、光遮断時に白色に発光する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物とすることができ、従来にない意匠性でその適用分野の拡大を図ることができる。
本発明で用いる赤色発光蓄光材(B1)、青色発光蓄光材(B2)、緑色発光蓄光材(B3)としては特に制限はないが、赤色発光蓄光材(B1)としてはユウロピウムマグネシウムチタン付活酸硫化イットリウム(YS:Eu,Mg,Ti)を、青色発光蓄光材(B2)としてはジスプロシウムユーロピウム付活ケイ酸ストロンチウム・マグネシウム(SrMgSi:Eu,Dy)を、緑色発光蓄光材(B3)としてはジスプロシウムユーロピウムで付活したアルミン酸ストロンチウム(SrO・aAl:Eu,Dy、0.8<a<3)を用いることが好ましい。
蓄光材(B)の平均粒径D50は、好ましくは1μm以上100μm未満であり、より好ましくは5〜70μm、さらに好ましくは10〜50μmである。蓄光材(B)の粒径が大き過ぎると、得られる成形品の引張破断伸び、衝撃強度、外観等が低下する問題があるため、平均粒径D50は100μm未満であることが好ましい。一方で、蓄光材(B)は一般に粒径が小さ過ぎると発光特性が低下する傾向があるため、平均粒径D50は1μm以上であることが好ましい。
なお、本発明における平均粒径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定されるメジアン径D50をいい、例えば、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100」を用いて測定されるが、市販品についてはカタログ値を採用することができる。
蓄光材(B)の配合量は、その合計量として、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して下限は0.8質量部以上、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、特に好ましくは8質量部以上であり、上限は20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは13質量部以下である。蓄光材(B)の配合量が上記下限よりも少ないと、蓄光材(B)を配合したことによる蓄光効果を十分に得ることができない。蓄光材(B)の配合量は多い程、蓄光効果の面で好ましいが、多過ぎると成形性、熱安定性や成形品の機械的強度等が損なわれる。
前述の通り、本発明では、2種以上の蓄光材(B)のうちの1種として赤色発光蓄光材(B1)を用いること、即ち、赤色発光蓄光材(B1)と青色発光蓄光材(B2)及び/又は緑色発光蓄光材(B3)とを用いることが好ましいが、その場合、蓄光材(B)全体量に占める赤色発光蓄光材(B1)の割合は45質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることが特に好ましい。赤色発光蓄光材(B1)の割合が上記下限以上であれば、赤色発光蓄光材(B1)を用いることによる各種用途に適する色調の発光を得ることができる。一方で、赤色発光蓄光材(B1)以外の蓄光材(B)の量を確保して、2種以上の蓄光材(B)を組み合わせて用いることによる本発明の効果を確実に得る上で、蓄光材(B)全体量に占める赤色発光蓄光材(B1)の割合は、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが好ましい。
また、赤色発光蓄光材(B1)と青色発光蓄光材(B2)と緑色発光蓄光材(B3)とを混合して用いる場合、美観に優れた白色発光を得る上で、蓄光材(B)全体量に対して、赤色発光蓄光材(B1)を50〜70質量%、青色発光蓄光材(B2)を15〜45質量%、緑色発光蓄光材(B3)を5〜15質量%用いることが好ましく、赤色発光蓄光材(B1)を55〜65質量%、青色発光蓄光材(B2)を22.5〜37.5質量%、緑色発光蓄光材(B3)を7.5〜12.5質量%用いることがより好ましい。
[ホスフェート系安定剤(C)]
本発明の樹脂組成物は、更にアルキルアシッドホスフェート、アルケニルアシッドホスフェート及びこれらの金属塩より選ばれる1種又は2種以上のホスフェート系安定剤(C)を含有することが、蓄光材(B)を配合したことによる黄み、黒ずみを抑制すると共に、ポリカーボネート樹脂(A)の分解を抑制して高温滞留成形でのポリカーボネート樹脂(A)の分子量低下を抑制する上で好ましい。
本発明で用いるホスフェート系安定剤(C)のアルキルアシッドホスフェート又はアルケニルアシッドホスフェートは、下記式(I)で表されるものであることが好ましい。即ち、アルキルアシッドホスフェート又はアルケニルアシッドホスフェートは、下記式(I)で表され、アルキルアシッドホスフェート金属塩又はアルケニルアシッドホスフェート金属塩は下記式(I)で表されるアルキルアシッドホスフェート又はアルケニルアシッドホスフェートの亜鉛塩、アルミニウム塩等の金属塩であることが好ましい。
O=P(OH)(OR)3−n …(I)
(式(I)中、Rは炭素数9〜30のアルキル基又はアルケニル基であり、nは1又は2の整数を表す。nが1の場合、2つのRは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
上記式(I)中のRで示されるアルキル基は直鎖アルキル基であってもよく、分岐を有していてもよい。Rのアルキル基としては、具体的には、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル(ステアリル)、エイコシル、テトラコシル基等が挙げられる。また、Rで示されるアルケニル基についても直鎖アルケニル基であってもよく、分岐を有していてもよい。Rのアルケニル基としては、具体的には、オレイル基等が挙げられる。nは、1又は2であり、その混合物であっても良い。
上記式(I)中のRで示されるアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、13,18,24のいずれかであることがより好ましく、アルキルアシッドホスフェートとしては、特に、下記式(II)で表され、式(II)におけるn=1のジステアリルアシッドホスフェートとn=2のモノステアリルアシッドホスフェートとの混合物であるものが好ましい。
O=P(OH)(OC18373−n …(II)
また、アルキルアシッドホスフェートの金属塩としては、下記式(IIIa)で表されるジステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩と、下記式(IIIb)で表されるモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩との混合物が好ましい。
Figure 2021119211
これらのホスフェート系安定剤(C)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ホスフェート系安定剤(C)の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.02〜0.5質量部、さらに好ましくは0.03〜0.1質量部である。ホスフェート系安定剤(C)の配合量が上記下限よりも少ないと、ホスフェート系安定剤(C)を配合したことによるポリカーボネート樹脂(A)の分解抑制効果を十分に得ることができず、ホスフェート系安定剤(C)の配合量が上記上限よりも多いと、耐衝撃性が低下し、また、成形品の外観が損なわれるおそれがある。
[離型剤(D)]
本発明の樹脂組成物は、離型性を高め、成形品の表面平滑性を高めるために、離型剤(D)を含有していてもよい。
好ましい離型剤(D)は、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、及び数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物から選ばれる化合物である。中でも、脂肪族カルボン酸、及び脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる化合物が好ましく用いられる。
脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸を挙げることができる。本明細書では、脂肪族カルボン酸の用語は、脂環式カルボン酸も包含する意味で用いる。脂肪族カルボン酸の中でも、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がより好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和又は不飽和の1価アルコール、飽和又は不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していても良い。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していても良く、複数の化合物の混合物であっても良い。脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
これらの離型剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
本発明の樹脂組成物が離型剤(D)を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜1質量部であることが好ましい。離型剤(D)の含有量が上記範囲であると、耐加水分解性の低下がなく、離型効果が得られるので好ましい。
[紫外線吸収剤(E)]
本発明の樹脂組成物は、紫外線吸収剤(E)を含有していてもよい。
樹脂成形品は、太陽光や蛍光灯のような光線下に長期間曝されると、紫外線によって黄色味を帯びる傾向があるが、紫外線吸収剤(E)を添加することで、このような黄変を防止又は遅延させることができる。紫外線吸収剤(E)としては、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド紫外線吸収剤、特にマロン酸エステル系紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
<マロン酸エステル系紫外線吸収剤>
マロン酸エステル系紫外線吸収剤としては、従来公知の任意の、マロン酸エステル系化合物を使用できるが、中でも2−(アルキリデン)マロン酸エステル類、特に2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類が樹脂組成物の初期色相の点から好ましい。本発明に使用する2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類としては、中でも下記式(A)で示されるものが好ましい。
Figure 2021119211
(式(A)中、Qは、水素原子、置換基を有していてもよい、炭素数1〜8の、アルキル基、アルコキシ基、または炭素数2〜10のアルケニル基を示し、R11およびR12はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
式(A)中、Qとしては、水素原子、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4の、アルキル基、アルコキシ基、またはアルケニル基であることが好ましい。Qで表される、アルキル基またはアルコキシ基におけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。
また、アルケニル基としては、置換基としてエステル基を有するものが好ましく、その炭素数は置換基における炭素数も含めて3〜10、好ましくは4〜8である。中でもQ自体が、上述の式(A)のマロン酸エステル部分である、2−(アルキリデン)マロン酸エステル類であるものが好ましく、中でも、式(A)のベンゼン環を中心として、同じマロン酸エステル類残基を有するもの、特にこれらをパラ位に有するものが好ましい。
式(A)中、R11およびR12としては、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。R11およびR12で表されるアルキル基は、それぞれ直鎖状であっても分岐状であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。R11およびR12は、それぞれメチル基であることが好ましい。
このようなマロン酸エステル系紫外線吸収剤の市販品としては、下記構造式で表される、クラリアント社製「Hostavin B−CAP」(テトラエチル−2,2−(1,4−フェニレンジメチリデン)−ビスマロネート、分子量:418,融点:137〜139℃)や、同「Hostavin PR−25」(p−メトキシベンジリデンマロン酸ジメチルエステル、分子量:250,融点:55〜59℃)が挙げられる。
Figure 2021119211
これらのマロン酸エステル系紫外線吸収剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
<シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤>
シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤としては、従来公知の任意のシュウ酸アニリド系化合物を使用でき、その具体例としては、2−エトキシ−2’−エチルシュウ酸ビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル-2’−エチルシュウ酸ビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルシュウ酸ビスアニリド等が挙げられ、好ましくは2−エトキシ−2’−エチルシュウ酸ビスアニリドである。
このようなシュウ酸アニリド系紫外線吸収剤の市販品としては、下記構造式で表されるクラリアント社製「Hostavin VSU」(2−エトキシ−2’−エチルシュウ酸ビスアニリド、分子量:312,融点:123〜127℃)が挙げられる。
Figure 2021119211
これらのシュウ酸アニリド系紫外線吸収剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
また、マロン酸エステル系紫外線吸収剤の1種又は2種以上と、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤の1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の樹脂組成物が上記の紫外線吸収剤(E)を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.001〜1質量部であることが好ましく、0.005〜0.8質量部であることがより好ましく、0.01〜0.5質量部であることがさらに好ましい。紫外線吸収剤(E)の含有量が上記範囲であると、蓄光材(B)による蓄光性の低下が生じず、且つ成形品表面にブリードアウト等を発生させずに、耐候性を改善できるので好ましい。
[フェノール系酸化防止剤(F)]
本発明の樹脂組成物は、所望により更にフェノール系酸化防止剤(F)を含有していてもよく、フェノール系酸化防止剤(F)を含有することで、色相劣化や、熱滞留時の機械物性の低下を抑制することができる。
フェノール系酸化防止剤(F)しては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤の市販品としては、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−60」、「アデカスタブAO−50」等が挙げられる。
これらのフェノール系酸化防止剤(F)は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
本発明の樹脂組成物がフェノール系酸化防止剤(F)を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して通常0.02〜3質量部、特に0.03〜1質量部、とりわけ0.04〜0.5質量部であることが好ましい。フェノール系酸化防止剤(F)の配合量が上記下限値以上であることにより、フェノール系酸化防止剤(F)を配合することによる上記の効果を有効に得ることができる。ただし、フェノール系酸化防止剤(F)の配合量は多過ぎてもその効果は頭打ちとなり、経済的でないので上記上限以下とする。
[その他の配合成分]
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、種々の添加剤から選ばれる1種又は2種以上を含有していてもよい。このような添加剤としては、着色剤、離型剤、難燃剤、前述のマロン酸エステル系紫外線吸収剤及びシュウ酸アニリド系紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤(以下、「その他の紫外線吸収剤」と称す。)などが挙げられる。また、本発明の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)以外の他の樹脂を含有していてもよい。
<着色剤>
本発明の樹脂組成物は、所望によって着色剤として各種の染顔料を含有していてもよい。染顔料を含有することで、本発明の樹脂組成物の隠蔽性、耐候性を向上できるほか、本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形品のデザイン性を向上させることができる。
染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
有機顔料及び有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。
これらの中では、熱安定性の点から、酸化チタン、カーボンブラック、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系化合物などが好ましい。
上記の着色剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
また、着色剤は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、ポリカーボネート樹脂(A)や他の樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
本発明の樹脂組成物が着色剤を含有する場合、その含有量は、必要な意匠性に応じて適宜選択すればよいが、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常3質量部以下、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。着色剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、着色効果が十分に得られない可能性があり、着色剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。
<難燃剤>
本発明の樹脂組成物は、難燃性を得るために難燃剤を含有していてもよい。難燃剤としては、ポリカーボネート樹脂(A)の透明性を維持して組成物の難燃性を向上させるものであれば特に限定されないが、有機スルホン酸金属塩、シリコーン化合物が好適である。
難燃剤用の有機スルホン酸金属塩としては、好ましくは脂肪族スルホン酸金属塩及び芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられ、これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。有機スルホン酸金属塩を構成する金属としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられ、アルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸塩としては、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩、より好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩が挙げられる。フルオロアルカン−スルホン酸金属塩としては、好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられ、より好ましくは、炭素数4〜8のフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。フルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸カリウムなどが挙げられる。
また、芳香族スルホン酸金属塩としては、好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホン酸金属塩の具体例としては、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4’−ジブロモフェニル−スルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4−クロロ−4’−ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジカリウム塩などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物がこれらの有機スルホン酸金属塩を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜3質量部であることが好ましく、0.02〜2質量部であることがより好ましく、0.03〜1質量部であることがさらに好ましい。難燃剤としての有機スルホン酸金属塩の含有量が上記範囲であると、難燃性があり、且つ熱安定性が良好な樹脂組成物となるので好ましい。有機スルホン酸金属塩の含有量が上記範囲より多いと、樹脂組成物の透明性を損なうことがあり、少ないと十分な難燃性を得ることができない。
難燃剤用のシリコーン化合物としては、特開2006−169451公報に記載の、直鎖状もしくは分岐状の構造を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。該ポリオルガノシロキサンが有する有機基は、炭素数が1〜20のアルキル基及び置換アルキル基のような炭化水素又はビニル及びアルケニル基、シクロアルキル基、ならびにフェニル、ベンジルのような芳香族炭化水素基などの中から選ばれる。
該ポリジオルガノシロキサンは、官能基を含有していなくても、官能基を含有していても良い。官能基を含有しているポリジオルガノシロキサンの場合、官能基はメタクリル基、アルコキシ基又はエポキシ基であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物がこれらの難燃剤用シリコーン化合物を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.5〜10質量部であることが好ましい。難燃剤としてのシリコーン化合物の含有量が上記範囲であると、透明性、外観及び弾性率等を損なうことなく、難燃性が良好となるので好ましい。
なお、上記有機スルホン酸金属塩とシリコーン化合物を併用しても良い。
<その他の紫外線吸収剤>
本発明の樹脂組成物は、前述のマロン酸エステル系紫外線吸収剤及びシュウ酸アニリド系紫外線吸収剤以外のその他の紫外線吸収剤を含有してもよい。その他の紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール]等が挙げられる。
サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤の具体例としては、フェニルサルチレート、2,4−ジターシャリ−ブチルフェニル−3,5−ジターシャリ−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
ヒンダードアミン系紫外線吸収剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
本発明の樹脂組成物がこれらのその他の紫外線吸収剤を含有する場合、その含有量は、前述の紫外線吸収剤におけると同様の理由から、前述のマロン酸エステル系紫外線吸収剤及びシュウ酸エステル系紫外線吸収剤との合計で、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.001〜1質量部であることが好ましく、0.005〜0.8質量部であることがより好ましく、0.01〜0.5質量部であることがさらに好ましい。
<他の樹脂成分>
本発明の樹脂組成物には、ポリカーボネート樹脂(A)以外の樹脂成分が含まれていてもよく、その場合、他の樹脂成分としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、水添ポリスチレン樹脂、ポリアクリルスチレン樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SMA樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、(メタ)アクリレート共重合体、ポリメタクリルメタクリレート樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、非晶性ポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、非晶性ポリアミド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、環状ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙られる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ただし、ポリカーボネート樹脂(A)本来の優れた特性を発揮させると共に、蓄光材(B)を配合することによる本発明の効果を顕著に得る点において、これらの他の樹脂成分を配合する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して50質量部以下であることが好ましい。
<その他>
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、上記成分のほかに、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤などを配合することができる。
これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
[製造方法]
本発明の樹脂組成物は、従来から知られている方法で各成分を混合し、溶融混練することにより製造することができる。具体的な混合方法としては、ポリカーボネート樹脂(A)、蓄光材(B)、必要に応じて配合されるホスフェート系安定剤(C)やその他の添加成分を所定量秤量し、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用いて混合した後、バンバリーミキサー、ロール、プラペンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどを用いて溶融混練する方法が挙げられる。
[色相]
本発明の樹脂組成物によれば、後掲の実施例の項に記載の方法で測定したL*値が好ましくは65以上、より好ましくは70以上、特に好ましくは75以上というような、反射光が明るく高い輝度を示す成形品を得ることができる。
〔成形品〕
本発明の成形品は、上述のような本発明の樹脂組成物を成形してなるものである。
本発明の樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品を製造する場合の成形方法としては、熱可塑性樹脂材料から成形品を成形する従来から知られている方法が、制限なく適用できる。具体的には、一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシストなどの中空成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、インモールドコーティング(IMC)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。
本発明によれば、蓄光材(B)として、赤色発光蓄光材(B1)、青色発光蓄光材(B2)、及び緑色発光蓄光材(B3)の3種を含有することで、光照射後、光を遮断した後、白色の残光色が得られる、従来にない色調に発光する成形品を実現することができる。
[用途]
本発明の樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、意匠性に優れたものであり、塗装を施すことなく製品化することができ、電気・電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、遊具、玩具やレジャー用品・スポーツ用品、化粧品、アクセサリー類、文具類等の雑貨類等の各種用途に適用することができる。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例において使用した樹脂組成物の構成成分は、以下の通りである。
<ポリカーボネート樹脂(A)>
S−3000F:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 芳香族ポリカーボネート樹脂「ユーピロンS−3000F」(粘度平均分子量:21500)
<赤色発光蓄光材(B1)>
R−300M:根本特殊化学(株)製 赤色発光蓄光材「ルミノーバ R−300M」(ユウロピウムマグネシウムチタン付活酸硫化イットリウム(YS:Eu,Mg,Ti)、平均粒径D50:15μm)
<青色発光蓄光材(B2)>
P−170:(株)菱晃製「クライトブライトP−170」(ジスプロシウムユーロピウム付活ケイ酸ストロンチウム・マグネシウム(SrMgSi:Eu,Dy)、平均粒径D50:25μm)
<緑色発光蓄光材(B3)>
YG−025:(株)菱晃製「クライトブライトYG−025」(ジスプロシウムユーロピウムで付活したアルミン酸ストロンチウム(SrO・aAl:Eu,Dy、0.8<a<3、SrO・aAl>99%、Eu<1%、Dy<1%)、平均粒径D50:25μm)
<ホスフェート系安定剤(C)>
AX−71:ADEKA社製「アデカスタブAX−71」(前記式(II)で表されるモノステアリルアシッドホスフェートとジステアリルアシッドホスフェートとの混合物)
<離型剤(D)>
VPG861:エメリーオレオケミカルズジャパン社製「ロキシオールVPG861」(ペンタエリスリトールテトラステアリレート)
<紫外線吸収剤(E)>
B−CAP:クラリアント社製「Hostavin B−CAP」(テトラエチル−2,2−(1,4−フェニレンジメチリデン)−ビスマロネート)
<フェノール系酸化防止剤(F)>
AO−60:(株)ADEKA製「アデカスタブ AO−60」(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
[実施例1〜16、比較例7]
ポリカーボネート樹脂及び各種添加剤を表1,2に示す割合で配合し、タンブラーで20分混合後、スクリュー径50mmのベント付き単軸押出機(田辺プラスチック社製「VS50−34V」)により、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数80rpmで混練し、押出されたストランドを切断してペレットを作製した。
得られたペレットを、120℃で5時間乾燥後、射出成形機(住友重機械工業社製「SE50DUZ」)にて、シリンダー温度300℃、金型温度120℃、成形サイクル45秒の条件で射出成形を行って、試験片(50mm(幅)×90mm(長さ)で厚みが1mm、2mm、及び3mmの3段プレート)を作製した。
得られたペレット又は試験片について、以下の評価を行い、結果を表1,2に示した。
(1) MVR
得られたペレットを用いて、ISO1133に準拠して、測定温度300℃、測定荷重1.20kgfでメルトボリュームレート(MVR)を測定した。MVRは8〜25cm/10minであることが好ましい。
(2) 初期色相
射出成形により得られた試験片(50mm(幅)×90mm(長さ)で厚みが1mm、2mm、及び3mmの3段プレート)の3mm厚みの部分について、色差計(日本電色工業社製「SE6000」)を用いてJIS Z8722に基づき下記条件でL*、b*、YI(E313)を測定した。YI(E313)はASTM E313に準拠して測定した値である。L*値が大きいほど反射光が明るく輝度が良好であることを示す。L*値は65以上であることが好ましく、70以上がさらに好ましく、75以上が特に好ましい。b*値は8〜20であることが好ましく、YI(E313)は40以下であることが好ましく、35以下がさらに好ましく、30以下が特に好ましい。
反射測定:D65光源10度視野
測定口:30φ
試料押さえ:白
(3) 残光輝度および発光色
上記初期色相の測定におけると同様の試験片の3mm厚みの部分について、24時間光を遮断後、D65光源で20分照射した(200Lx)。この光照射して光を遮断したした直後と、光照射してから光を遮断後30分経過後と60分経過後の残光輝度の状況(発光色と明るさの感覚)を外観の目視観察により調べ、下記基準で評価した。発光色は光照射して光を遮断した後の残光色である。
<評価基準>
A:非常に明るく、試験片の輪郭をはっきり確認することができる
A〜B:AランクとBランクの中間を示す
B:通常の明るさであり、試験片の輪郭を確認できる
B〜C:BランクとCランクの中間を示す
C:薄ぼやけるが、試験片の輪郭をわずかに確認することができる
C〜D:CランクとDランクの中間を示す
D:試験片の輪郭は殆ど確認できない
Figure 2021119211
Figure 2021119211
表1,2より次のことが分かる。
実施例1〜3及び実施例12〜14は、蓄光材(B1)、蓄光材(B2)及び蓄光材(B3)の3種を配合して白色に発光させたものである。このうち、実施例1〜3は、ホスフェート系安定剤(C)、離型剤(D)、紫外線吸収剤(E)、フェノール系酸化防止剤(F)の配合の有無を変えたものであるが、ホスフェート系安定剤(C)及び離型剤(D)の配合で残光輝度を向上させることができることが分かる。
実施例12〜14は、実施例2に対して、蓄光材(B1)、蓄光材(B2)及び蓄光材(B3)の配合量を変えたものであり、実施例2と実施例12〜14から、蓄光材(B)の配合量が多い程残光輝度が向上することが分かる。実施例12は、蓄光材(B)の配合量が他の実施例に比べて少ないため残光時間が短いが、照射20分後であれば、残光輝度を確認できる。
実施例4〜6,15、実施例7〜8,16及び実施例9〜11は、2種の蓄光材(B)を配合したものである。
実施例4〜6より、蓄光材(B1)と蓄光材(B2)の配合割合を変えることで、発光色を青〜紫〜赤紫色に変えることができることが分かる。また、実施例5と実施例15から、2種の蓄光材(B)を配合した場合でも、蓄光材(B)の配合量が多い程、残光輝度が向上することが分かる。
同様に、実施例7,8、実施例9〜11からも、2種の蓄光材(B)の配合割合を変えることで、発光色を変化させることができることが分かる。また、実施例7と実施例16から、蓄光材(B)の配合量が多い程、残光輝度が向上することが分かる。
比較例7は、1種の蓄光材(B)のみを多量に含むものであり、青色の残光は得られるものの、初期色相のL*値が低く、十分な輝度は得られない。また、この比較例7では蓄光材(B)が多過ぎるため、成形性、熱安定性や成形品の機械的強度等が損なわれる。
[比較例1〜3]
蓄光材(B1、B2,B3)を配合しなかったこと以外はそれぞれ実施例1〜3と同配合で樹脂組成物のペレットと試験片を製造し、同様に残光輝度の評価を行ったが、いずれも光遮断直後の輝度は「D」であった。
[比較例4〜6]
蓄光材(B1)を0.36質量部、蓄光材(B2)を0.18質量部、蓄光材(B3)を0.06質量部(蓄光材(B)合計量は0.6質量部)にした以外はそれぞれ実施例1〜3と同配合で樹脂組成物のペレットと試験片を製造し、同様に残光輝度の評価を行った。いずれも光遮断直後の輝度は「C〜D」であった。
以上の結果から、本発明によれば、遮光時に、白色等、従来にない発光色に発光する蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物が提供されることが分かる。

Claims (16)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、少なくとも2種の蓄光材(B)を0.8〜20質量部含有することを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 前記蓄光材(B)が、赤色発光蓄光材(B1)、青色発光蓄光材(B2)、及び緑色発光蓄光材(B3)から選ばれる少なくとも2種である請求項1に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 前記蓄光材(B)が、赤色発光蓄光材(B1)、青色発光蓄光材(B2)、及び緑色発光蓄光材(B3)から選ばれる少なくとも2種であり、そのうちの1種が赤色発光蓄光材(B1)である請求項2に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 前記蓄光材(B)が、赤色発光蓄光材(B1)、青色発光蓄光材(B2)、及び緑色発光蓄光材(B3)の3種を含有することを特徴とする請求項3に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 前記蓄光材(B)において、赤色発光蓄光材(B1)の含有量が蓄光材(B)全体量のうちの45質量%以上である請求項3又は4に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 前記蓄光材(B)において、赤色発光蓄光材(B1)の含有量が蓄光材(B)全体量のうちの45質量%以上90質量%以下である請求項5に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  7. 前記赤色発光蓄光材(B1)が、ユウロピウムマグネシウムチタン付活酸硫化イットリウム(YS:Eu,Mg,Ti)である請求項2ないし6のいずれか1項に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  8. 前記青色発光蓄光材(B2)が、ジスプロシウムユーロピウム付活ケイ酸ストロンチウム・マグネシウム(SrMgSi:Eu,Dy)である請求項2ないし7のいずれか1項に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  9. 前記緑色発光蓄光材(B3)が、ジスプロシウムユーロピウム付活アルミン酸ストロンチウム(SrO・aAl:Eu,Dy、0.8<a<3)である請求項2ないし8のいずれか1項に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  10. さらにアルキルアシッドホスフェート、アルケニルアシッドホスフェート及びこれらの金属塩より選ばれる1種又は2種以上のホスフェート系安定剤(C)を、前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜1質量部含有することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  11. 前記ホスフェート系安定剤(C)が、下記式(I)で表されることを特徴とする請求項10に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
    O=P(OH)(OR)3−n …(I)
    (式(I)中、Rは炭素数9〜30のアルキル基又はアルケニル基であり、nは1又は2の整数を表す。nが1の場合、2つのRは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
  12. 前記式(I)におけるRが炭素数13,18,24のいずれかのアルキル基又はアルケニル基であることを特徴とする請求項11に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  13. 前記ホスフェート系安定剤(C)が、下記式(II)で表され、式(II)におけるn=1のジステアリルアシッドホスフェートとn=2のモノステアリルアシッドホスフェートとの混合物であることを特徴とする請求項12に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
    O=P(OH)(OC18373−n …(II)
  14. 以下の方法(X)で測定したL*値が65以上であることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
    方法(X):シリンダー温度300℃、金型温度120℃、成形サイクル45秒の条件で、該蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物の射出成形により得られた試験片(50mm(幅)×90mm(長さ)で厚みが1mm、2mm、及び3mmの3段プレート)の3mm厚みの部分について、JIS Z8722に基づいて色差計を用いて下記条件でL*値を測定する。
    反射測定:D65光源10度視野
    測定口:30φ
    試料押さえ:白
  15. 請求項1ないし14のいずれか1項に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
  16. 前記蓄光材(B)が、赤色発光蓄光材(B1)、青色発光蓄光材(B2)、及び緑色発光蓄光材(B3)の3種を含有する成形品であって、該成形品に光照射して光を遮断した後の残光色が白色であることを特徴とする請求項15に記載の成形品。
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