JP6428161B2 - 蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品に係り、詳しくは、ポリカーボネート樹脂に蓄光材を配合した蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物の黒ずみの問題を改善した蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物と、この蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品に関する。
太陽光や人工光などに含まれる紫外線や可視光などの光が照射されるとその光を吸収して蓄え、光照射を停止した後でも、即ち暗所においても、放光という形で所定の時間発光し続ける蓄光材を配合したポリカーボネート樹脂組成物が、道路標識や看板などの蓄光発光部材の成形材料として種々提案されている。
しかし、ポリカーボネート樹脂に蓄光材を配合して溶融混練して得られるポリカーボネート樹脂組成物は黒ずみを生じ、更にこれを成形する際にも黒ずみが増し、得られる成形品は灰色〜濃灰色となって美観が損なわれ、商品価値が著しく低下するという問題があった。
また、樹脂組成物が黒ずみ、成形品が濃灰色を帯びると、光の吸収効率や放光効率も低下するため、蓄光材の配合量に見合う蓄光性能(発光輝度や残光時間)を得ることができなくなるという問題もある。
この問題を解決するために、特許文献1では、特定の粒度分布のアルミン酸塩系の蓄光性蛍光体粒子を用い、加工時の樹脂の分子量や色相の安定化を図るために、亜リン酸エステルを配合することが提案されているが、黒ずみの改良効果は未だ十分とはいえない。また、特許文献2,3には、有機シラン化合物及び/又はシリコーン化合物を配合することが提案されているが、シロキサン系の熱安定剤は、黒ずみを抑制することはできるが、白濁やシルバーの発生で外観が損なわれることが課題として残る。
ポリカーボネート樹脂の加工温度を下げることで加熱によるポリカーボネート樹脂の分解を抑制するために、樹脂成分としてABS樹脂を併用してアロイ化することも検討されているが、この場合には、基材樹脂が不透明となるため、黒ずみは抑えられても、蓄光材による発光輝度が低下してしまう。
特開2005−82647号公報 特開2009−215415号公報 特開2010−159319号公報
本発明は、ポリカーボネート樹脂に蓄光材を配合した蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物の黒ずみの問題を改善し、色相が良好で、蓄光性に優れた成形品を与える蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、安定剤であるアルキルアシッドホスフェート及び/又はアルキルアシッドホスフェート金属塩と、離型剤である脂肪酸エステル化合物を所定の割合で併用して配合することにより、黒ずみのない良好な樹脂組成物を得ることができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、蓄光材1〜30質量部と、アルキルアシッドホスフェート及び/又はアルキルアシッドホスフェート金属塩0.01〜1質量部と、脂肪酸エステル化合物0.1〜2質量部とを含有することを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[2] [1]において、前記蓄光材がSrAl:Eu,Dy、SrAl1425:Eu,Dy、及びCaAl:Eu,Ndよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[3] [1]又は[2]において、前記アルキルアシッドホスフェートが、下記式(I)で表されることを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
O=P(OH)(OR)3−n …(I)
(式(I)中、Rはアルキル基であり、nは1又は2の整数を表す。nが1の場合、2つのRは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
[4] [3]において、前記アルキルアシッドホスフェートが、下記式(II)で表され、式(II)におけるn=1のジステアリルアシッドホスフェートとn=2のモノステアリルアシッドホスフェートとの混合物であることを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
O=P(OH)(OC18373−n …(II)
[5] [1]又は[2]において、アルキルアシッドホスフェート金属塩が、下記式(IIIa)で表されるジステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩と、下記式(IIIb)で表されるモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩との混合物であることを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
Figure 0006428161
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、前記脂肪酸エステル化合物が、ペンタエリスリトールテトラステアリレート及び/又はステアリルステアリレートであることを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[7] [1]ないし[6]のいずれかにおいて、さらに有機蛍光体を、前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対し0.001〜0.1質量部含有することを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[8] [7]において、前記有機蛍光体がナフタレン系化合物、ペリレン系化合物、キノリン系化合物、クマリン系化合物、ベンゾオキサゾール誘導体及び希土類錯体化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[9] [1]ないし[8]のいずれかに記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂に蓄光材を配合した樹脂組成物の黒ずみを改善して色相が良好で美観に優れ、蓄光材の配合による本来の蓄光性能を十分に発揮し得る、商品価値の高い成形品を提供することができる。
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、色相及び蓄光性能に優れ、機械的強度、耐熱性等にも優れたものとすることができるため、電飾看板、商品ディスプレイ、液晶バックライト、照明ディスプレイ、照明器具カバー、交通標識、安全標識、夜間視認性向上部材、サインボード、スクリーン、反射板やメーター部品等の自動車部品、娯楽施設の遊具や玩具、ノートパソコン、携帯電話などのモバイル機器をはじめ、自動車室内や建物内の標示ボタン、時計の文字盤、アクセサリー類、文具類、スポーツ用品、各種の電気・電子・OA機器等の分野における筐体やスイッチ、ボタン類などと幅広い用途に用いることができる。
実施例1と比較例1の試験片の光照射時とUV遮断時の外観を示す写真である。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
[1] 蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」と称す場合がある。)は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、蓄光材1〜30質量部と、アルキルアシッドホスフェート及び/又はアルキルアシッドホスフェート金属塩(以下「アルキルアシッドホスフェート(金属塩)」と記載する場合がある。)0.01〜1質量部と、脂肪酸エステル化合物0.1〜2質量部とを含有することを特徴とする。
[作用機構]
本発明者らは、ポリカーボネート樹脂に蓄光材を配合した樹脂組成物が溶融混練時及び成形時に黒ずみを発生するのは、蓄光材粒子の硬度が高いために、押出機で溶融混練する際にはバレルやスクリュー表面を摩耗させ、この摩耗により発生した金属片が樹脂に混入すること、蓄光材の構成成分である希土類元素が、高温条件下でポリカーボネート樹脂を分解させること、が原因であると考え、これらの2つの要素を低減するために種々検討を重ね、熱安定剤としてアルキルアシッドホスフェート(金属塩)を用い、離型剤として脂肪酸エステル化合物を用い、これらを所定の割合で併用して配合することにより、黒ずみを防止することができることを見出した。
即ち、アルキルアシッドホスフェート(金属塩)により、蓄光材に起因するポリカーボネート樹脂の分解を防止し、脂肪酸エステル化合物により、樹脂組成物と押出機のバレルやスクリュー表面、成形機内面との摩擦を低減し、金属類の混入を防止することで黒ずみを防止する。
従来において、蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物に配合する熱安定剤としては、亜リン酸エステル(特許文献1)や、シロキサン系のもの(特許文献2,3)が用いられているが、亜リン酸エステルでは、蓄光材によるポリカーボネート樹脂の分解を十分に防止し得ない。また、シロキサン系のものは、白濁やシルバーの問題がある上に、ポリカーボネート樹脂の分解を抑制し得ない。
これに対して、アルキルアシッドホスフェート(金属塩)であれば、白濁やシルバーの問題を引き起こすことなく、蓄光材によるポリカーボネート樹脂の分解を抑制することができる。
また、離型剤としては、数多くのものが提案されているが、本願発明者らは、従来の離型剤の中でも、特に脂肪酸エステル化合物を用い、これをアルキルアシッドホスフェート(金属塩)と併用した場合に、白濁やシルバーによる外観不良を引き起こすことなく、良好な黒ずみ防止効果が得られることを見出した。
本発明では、このように、安定剤の中でもアルキルアシッドホスフェート(金属塩)を用い、また離型剤の中でも脂肪酸エステル化合物を用い、これらを所定の割合で併用することにより、良好な黒ずみ防止効果で色相に優れ、蓄光性能に優れた蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供する。
[ポリカーボネート樹脂]
本発明で用いるポリカーボネート樹脂としては、透明性、耐衝撃性、耐熱性等の面から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。また、溶融法を用いた場合には、末端基のOH基量を調整した芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することができる。
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、上述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を、以下の分岐剤、即ち、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物や、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等の化合物で置換すればよい。これら置換する化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、又は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。
上述した芳香族ポリカーボネート樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、この一価の芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は用途により任意であり、適宜選択して決定すればよいが、成形性、強度等の点から芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、好ましくは14,000〜30,000、より好ましくは15,000〜28,000である。粘度平均分子量がこの範囲であると、一般に成形性が良く、且つ機械的強度の高い成形品を与える樹脂組成物が得られる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、中でも16,000〜26,000であることが好ましい。また粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記好適範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよい。この場合、混合物の粘度平均分子量は上記範囲となることが望ましい。
[蓄光材]
蓄光材は、太陽光や人工光などに含まれる紫外線や可視光などの光が照射されるとその光を吸収して蓄え、光照射を停止した後でも、即ち暗所においても、放光という形で所定の時間発光し続けるものである。蓄光材は、光励起終了後は、数分〜数十時間程度の残光持続性を持ち、光照射を停止した後速やかに発光が減衰する一般の蛍光増白剤などとは区別される。
本発明で使用される蓄光材は、上記の特性を有するものであればよく、特に制限はないが、CaS:Bi、CaSrS:Bi、ZnCdS:Cuなどの硫化物系蓄光材、ZnS:Cuなどの硫化亜鉛系蓄光材、SrMgSi:Eu,Dyなどのケイ酸系蓄光材、MAl:X(Mはカルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種以上の金属元素。Xは、賦活剤であり、ユウロピウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテニウム、マンガン、スズ、ビスマスから選ばれる1種以上の元素。Xの含有量は、Mで表される金属元素に対して通常10モル%以下、例えば0.001〜10モル%。)で表されるアルミン酸系化合物などが挙げられる。好ましくは、耐加水分解性、残光特性の観点から、MAl:Xで表されるアルミン酸系化合物であり、アルミン酸系化合物としては、例えば、GMgAl1627:Eu、GMgAl1627:Eu,Mn、GMgAl1017:Eu、GMgAl1017:Eu,Mn(ここでGはSrまたはBaであり、これらを組み合わせてもよい)、SrAl:Eu、SrAl:Eu,Dy、SrAl1425:Eu、SrAl1425:Eu,Dy、CaAl:Eu,Ndなどが挙げられるが、これらのうち、特に、SrAl:Eu,Dy、SrAl1425:Eu,Dy、CaAl:Eu,Ndが好ましい。
蓄光材の平均粒径D50については特に制限はないが、10〜300μm、特に15〜100μm、とりわけ20〜50μmであることが好ましい。蓄光材の粒径が大き過ぎると、得られる成形品の引張破断伸び、衝撃強度、外観等が低下する問題があるため、平均粒径D50は上記上限以下であることが好ましい。一方で、蓄光材は一般に粒径が小さ過ぎると発光特性が低下する傾向があるため、平均粒径D50は上記下限以上であることが好ましい。
なお、本発明における平均粒径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定されるメジアン径D50をいい、例えば、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100」を用いて測定されるが、市販品についてはカタログ値を採用することができる。
本発明においては、蓄光材の1種を単独で用いてもよく、化学組成や粒径の異なるものの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
蓄光材の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して1〜30質量部、好ましくは2〜25質量部、より好ましくは3〜20質量部である。蓄光材の配合量が上記下限よりも少ないと、蓄光材を配合したことによる蓄光効果を十分に得ることができない。蓄光材の配合量は多い程、蓄光効果の面で好ましいが、多過ぎると成形性、熱安定性や成形品の機械的強度等が損なわれる。
[アルキルアシッドホスフェート(金属塩)]
本発明で用いるアルキルアシッドホスフェート(金属塩)のアルキルアシッドホスフェートは、下記式(I)で表されるものであることが好ましい。即ち、アルキルアシッドホスフェートは、下記式(I)で表され、アルキルアシッドホスフェート金属塩は下記式(I)で表されるアルキルアシッドホスフェートの亜鉛塩、アルミニウム塩等の金属塩であることが好ましい。
O=P(OH)(OR)3−n …(I)
(式(I)中、Rはアルキル基であり、nは1又は2の整数を表す。nが1の場合、2つのRは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
上記式(I)中のRで示されるアルキル基は直鎖アルキル基であってもよく、分岐を有していてもよいが、炭素数8以上、30以下が好ましく、具体的には、オクチル、2−エチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル(ステアリル)、エイコシル基等が挙げられる。nは、1又は2であり、その混合物であっても良い。
アルキルアシッドホスフェートとしては、特に、下記式(II)で表され、式(II)におけるn=1のジステアリルアシッドホスフェートとn=2のモノステアリルアシッドホスフェートとの混合物であるものが好ましい。
O=P(OH)(OC18373−n …(II)
また、アルキルアシッドホスフェートの金属塩としては、下記式(IIIa)で表されるジステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩と、下記式(IIIb)で表されるモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩との混合物が好ましい。
Figure 0006428161
これらのアルキルアシッドホスフェート(金属塩)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
アルキルアシッドホスフェート(金属塩)の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01〜1質量部、好ましくは0.02〜0.5質量部、より好ましくは0.03〜0.1質量部である。アルキルアシッドホスフェート(金属塩)の配合量が上記下限よりも少ないと、アルキルアシッドホスフェート(金属塩)を配合したことによる黒ずみ防止効果を十分に得ることができず、アルキルアシッドホスフェート(金属塩)の配合量が上記上限よりも多いと、耐衝撃性が低下し、また、成形品の外観が損なわれるおそれがある。
[脂肪酸エステル化合物]
本発明で用いる脂肪酸エステル化合物、即ち、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル化合物を構成する脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸を挙げることができる。本明細書では、脂肪族カルボン酸の用語は、脂環式カルボン酸も包含する意味で用いる。脂肪族カルボン酸の中でも、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がより好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
一方、脂肪酸エステル化合物を構成するアルコール成分としては、飽和又は不飽和の1価アルコール、飽和又は不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していても良い。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。
脂肪酸エステル化合物は、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していても良く、複数の化合物の混合物であっても良い。
脂肪酸エステル化合物の具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘレート、オクチルドデシルベヘレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができるが、黒ずみ防止効果の面でペンタエリスリトールテトラステアリレート及び/又はステアリルステアリレートを用いることが好ましい。
これらの脂肪酸エステル化合物は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
脂肪酸エステル化合物の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.1〜2質量部、好ましくは0.2〜1.5質量部、より好ましくは0.3〜1質量部である。脂肪酸エステル化合物の配合量が上記範囲内であると、耐加水分解性の低下がなく、黒ずみ防止効果が得られるので好ましい。
[有機蛍光体]
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物は、さらに有機蛍光体を含有することができる。本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物においては、蓄光材による黒ずみを改善したことにより、蓄光材と共に有機蛍光体を配合した場合により鮮やかな外観を得ることができる。
本発明で用いる有機蛍光体としては、紫外線の照射で蛍光発光する蛍光体であって、得られる成形体の透明性を維持し得るものが好ましく、例えば、ナフタレン系化合物、ペリレン系化合物、キノリン系化合物、クマリン系化合物、ベンゾオキサゾール誘導体及び希土類錯体化合物が好ましい。
このような有機蛍光体としては、市販品を用いることができ、例えば、黄色系の発光蛍光体としては、BASF社製「Lumogen Yellow 083」、Limogen Yellow 170」、「Lumogen Orange 240」が、赤色系の発光蛍光体としてはBASF社製「Lumogen Pink 285」、「Lumogen Red 305」が、青色〜紫色系の発光蛍光体としてはBASF社製「Lumogen Violet 570」、「Lumogen Blue 650」が、緑色発光蛍光体としては、BASF社製「Lumogen Green 850」などを用いることができる。
これらの蛍光体は1種を単独で用いても良く、同色系ないしは異なる色調に発光するものの2種以上を併用しても良い。
本発明に用いられる有機蛍光体は、最大吸収波長が蓄光材の発光ピーク波長と近い蛍光体が好ましい。蓄光材の発光ピーク波長と蛍光体の最大吸収波長を近づけることにより、例えば、蓄光材の発光ピーク波長と有機蛍光体の最大吸収波長との差の絶対値が100nm以下、好ましくは50nm以下であることにより、紫外線照射時に、本来の発光色とは異なる色に発光させることができる。例えば、Lumogen Orange 240(最大吸収波長524nm)を、発光ピーク波長が520nm(黄緑色)あるいは510nm(青緑色)の蓄光材と組み合わせて用いた場合には、紫外線照射時に白色に発光する。なお、上記の組み合せの場合、黄緑色蓄光材の発光ピーク波長の方が青緑色蓄光材の発光ピーク波長よりも蛍光体の最大吸収波長に近いので、より白く発光する。
本発明に用いられる有機蛍光体の最大吸収波長の上限値は600nmが好ましく、550nmがより好ましく、530nmがさらに好ましい。なお、最大吸収波長の下限値は特に限定はないが、350nmが好ましい。
さらに、最大励起波長の上限値は630nmが好ましく、600nmがより好ましく、570nmがさらに好ましく、550nmが特に好ましい。なお、最大励起波長の下限値は特に限定はないが、400nmが好ましい。
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物において、有機蛍光体の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.001〜0.1質量部、好ましくは0.002〜0.05質量部、より好ましくは0.005〜0.02質量部である。有機蛍光体の配合量が少な過ぎると十分な蛍光発光特性を得ることができず、多過ぎると透明性が損なわれる場合があり、また、ポリカーボネート樹脂の分子量低下や熱安定性低下の原因となる。
[その他の成分]
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、種々の添加剤から選ばれる1種又は2種以上やポリカーボネート樹脂以外の樹脂成分を含有していてもよい。このような添加剤としては、難燃剤、滴下防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光散乱成分などが挙げられる。
<難燃剤>
本発明の樹脂組成物は、難燃性を得るために難燃剤を含有していてもよい。難燃剤としては、ポリカーボネート樹脂の透明性を維持して組成物の難燃性を向上させるものであれば特に限定されないが、リン酸エステル化合物及び有機スルホン酸金属塩が好適である。
リン酸エステル化合物としては、例えば、下記式(IV)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006428161
(式(IV)中、R、R、R及びRは互いに独立して、置換されていてもよいアリール基を示し、Qは置換基を有していても良い2価の芳香族基を示す。mは0〜5の数を示す。)
上記式(IV)においてR〜Rで示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。またQで示される2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基や、ビスフェノールから誘導される基等が挙げられる。これらの置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。mが0の場合はリン酸エステルであり、mが0より大きい場合は縮合リン酸エステル(混合物を含む)である。
具体的には、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、レゾルシノール−ジフェニルホスフェート、あるいはこれらの置換体、縮合体などを例示できる。かかる成分として好適に用いることができる市販品としては、例えば、大八化学工業(株)より、「CR733S」(レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート))、「CR741」(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))、旭電化工業(株)より「FP500」(レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート))といった商品名で販売されているものが挙げられる。
本発明の樹脂組成物が難燃剤としてのリン酸エステル化合物を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し1〜50質量部であるのが好ましく、3〜40質量部であるのがより好ましく、5〜30質量部であるのがさらに好ましい。難燃剤用リン酸エステル化合物の含有量が上記範囲であると、難燃性があり、且つ耐熱性も良好な樹脂組成物となるので好ましい。
難燃剤用の有機スルホン酸金属塩としては、好ましくは脂肪族スルホン酸金属塩及び芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩を構成する金属としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられ、アルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩は、2種以上の塩を混合して使用することもできる。
脂肪族スルホン酸塩としては、好ましくは、フルオロアルカンスルホン酸金属塩、より好ましくは、パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩が挙げられる。フルオロアルカンスルホン酸金属塩としては、好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられ、より好ましくは、炭素数4〜8のフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。フルオロアルカンスルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウムなどが挙げられる。
また、芳香族スルホン酸金属塩としては、好ましくは、芳香族スルホンスルホン酸、芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。その具体例としては、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4′−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4′−ジブロモフェニル−スルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4−クロロ−4′−ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸のジカリウム塩などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物がこれらの有機スルホン酸金属塩を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.01〜5質量部であるのが好ましく、0.02〜3質量部であるのがより好ましく、0.03〜2質量部であるのがさらに好ましい。難燃剤用有機スルホン酸金属塩の含有量が上記範囲であると、難燃性があり、且つ熱安定性が良好な樹脂組成物となるので好ましい。
<滴下防止剤>
本発明の樹脂組成物には、燃焼時の滴下防止を目的として、滴下防止剤を添加してもよい。滴下防止剤の好ましい例として、フッ素樹脂が挙げられる。より具体的には、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体等のフルオロエチレン構造を含む重合体及び共重合体である。中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。その平均分子量は、500,000以上であるのが好ましく、500,000〜10,000,000であるのがより好ましい。
なお、ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに高い溶融滴下防止性を付与することができる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には特に制限はないが、例えば、ASTN規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具体例としては、テフロン(登録商標)6−J(三井・デュポンフロロケミカル(株)製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業(株)製)、CD076(旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製)等が挙げられる。また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えばアルゴフロンF5(モンテフルオス(株)製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100(ダイキン工業(株)製)等が挙げられる。これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、1〜100psiの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得られる。
本発明の樹脂組成物が滴下防止剤を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.05〜2質量部であるのが好ましく、0.1〜1質量部であるのがより好ましい。滴下防止剤の含有量が上記範囲であると、成形品の外観を損なうことなく、滴下防止性が良好となるので好ましい。
<酸化防止剤>
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を含有していてもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が好ましく、より具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、及び3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,6]ウンデカン等が挙げられる。中でも、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好ましい。
これらの酸化防止剤は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
本発明の樹脂組成物が酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.02〜0.5質量部であることが好ましい。この範囲であると、本発明の効果を阻害せずに、酸化防止性を改善できるので好ましい。
<紫外線吸収剤>
本発明の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有していてもよい。樹脂成形品は、太陽光や蛍光灯のような光線下に長期間曝されると、紫外線によって黄色味を帯びる傾向があるが、紫外線吸収剤を添加することで、このような黄変を防止又は遅延させることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、ヒンダードアミン系、マロン酸エステル系などが挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール]等が挙げられる。
サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤の具体例としては、フェニルサルチレート、2,4−ジターシャリ−ブチルフェニル−3,5−ジターシャリ−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
ヒンダードアミン系紫外線吸収剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等が挙げられる。
マロン酸エステル系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(p−メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル−2,2−(1,4−フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、2−(p−メトキシベンジリデン)−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル4−ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
本発明の樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.001〜1質量部であることが好ましく、0.005〜0.8質量部であることがより好ましく、0.01〜0.5質量部であることがさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲であると、励起光吸収による蓄光性発光輝度の低下が生じず、且つ成形品表面にブリードアウト等を発生させずに、耐候性を改善できるので好ましい。
<光散乱成分>
光散乱成分とは、光を散乱させて得られる成形品の白色度を高めるためのものであり、例えばマトリックスのポリカーボネート樹脂と非相溶性で、かつポリカーボネート樹脂よりも屈折率が0.01〜0.2程度小さい透明ないし半透明材料が挙げられる。
ここで、ポリカーボネート樹脂と「非相溶性」とは、ポリカーボネート樹脂と溶融混練した際に、単一の融点のみを示す混合物とならないようなものをさす。
また、「透明ないし半透明」とは、当該材料のみを用いて、厚さ1mmの平板を成形し、JIS K−7105に準じて、濁度計で測定した全光線透過率が30%以上、好ましくは50%以上であるものをさす。
光散乱成分とポリカーボネート樹脂との屈折率差が0.01未満では、この光散乱成分を配合することによる光の散乱効果を十分に得ることができず、また屈折率差が0.2を超えると、光線透過率が著しく低下するため、成形品表面で認識しうる蓄光材の発光輝度が低下する。光散乱成分は、特にポリカーボネート樹脂に対して屈折率が0.05〜0.12小さいものであることが好ましい。
光散乱成分としては、ポリカーボネート樹脂と非相溶性で、屈折率差が上記範囲にあり、かつ透明ないし半透明のものであれば良く、その材料としては、有機材料、無機材料、有機−無機複合材料等、いずれでも良く、特に制限はないが、例えば、以下のような樹脂材料、樹脂微粒子、ガラス等の無機材料微粒子などが挙げられる。
(樹脂材料)
光散乱成分として好適な樹脂材料としては、以下のようなものが挙げられる。なお、以下において、カッコ内の数値は当該樹脂の代表的な屈折率を示す。樹脂微粒子、無機材料微粒子の例示においても同様である。
ポリエチレン樹脂(1.53)、ポリプロピレン樹脂(1.49)等のオレフィン系樹脂ポリスチレン樹脂(1.59)、AS樹脂(1.57)、ABS樹脂(1.53)、MS樹脂(1.58)、MBS樹脂(1.54)、AES樹脂(1.53)等のスチレン系樹脂
PMMA樹脂(1.49)等のメタクリル系樹脂
ポリアミド6(1.53)、ポリアミド66(1.53)等のポリアミド系樹脂
ARTON(商品名:1.51)、ZEONEX(商品名:1.53)、APEL(商品名:1.54)、等のシクロオレフィン系樹脂
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(1.58)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(1.58)等のポリエステル系樹脂
これらのうち、特に好ましくは、非晶性樹脂である、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂、MBS樹脂、MS樹脂、PMMA樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
(樹脂微粒子)
光散乱成分として好適な樹脂微粒子としては、アクリル系微粒子(1.49)、シリコーン系微粒子(1.45)、スチレン系微粒子(1.59)、エポキシ系微粒子(1.60)、ウレタン系微粒子(1.60)、メラミン系微粒子(1.59)等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、アクリル系微粒子、シリコーン系微粒子であり、架橋された構造のものが特に好ましい。
これらの樹脂微粒子は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
(無機材料微粒子)
光散乱成分として好適な無機材料微粒子としては、ガラスビーズ(1.51)、シリカビーズ(1.45)等が挙げられる。
これらのうち、入手が容易で安価なガラスビーズを好適に用いることができる。
これらの無機材料微粒子は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
光散乱成分としては、上記の樹脂材料、樹脂微粒子、及び無機材料微粒子の2種以上を併用しても良い。
なお、光散乱成分として微粒子状のものを用いる場合、その粒径が過度に小さいと取り扱い性が悪く、また、透過性が良すぎて白色に見せることが困難である。逆にその粒径が過度に大きいと成形性が損なわれ、成形品の表面外観に劣る恐れがある。従って、光散乱成分の微粒子の粒径は、平均粒径D50で0.1〜30μm、特に0.5〜20μmであることが好ましい。
本発明の樹脂組成物が光散乱成分を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.1〜100質量部であるのが好ましく、0.5〜50質量部であるのがより好ましく、1〜30重量部であるのがさらに好ましい。光散乱成分の含有量が上記範囲よりも少ないと、光散乱成分を配合したことによる白色度の向上効果を十分に得ることができず、多過ぎると散乱効果が大きく、蓄光作用の発現を阻害するため発光輝度が低下する。
<他の樹脂成分>
本発明の樹脂組成物には、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂成分が含まれていてもよく、その場合、他の樹脂成分としては、例えば、光散乱成分以外のポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、水添ポリスチレン樹脂、ポリアクリルスチレン樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SMA樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、(メタ)アクリレート共重合体、ポリメタクリルメタクリレート樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、非晶性ポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、非晶性ポリアミド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、環状ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙られる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ただし、ポリカーボネート樹脂本来の優れた特性を発揮させると共に、ポリカーボネート樹脂に蓄光材を配合した場合の黒ずみの問題を解決するという本発明の効果が顕著に得られる点において、これらの他の樹脂成分を配合する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して50質量部以下であることが好ましい。
<その他>
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、上記成分のほかに、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、着色剤、可塑剤、分散剤、防菌剤などを配合することができる。
これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
[製造方法]
本発明の樹脂組成物は、従来から知られている方法で各成分を混合し、溶融混練することにより製造することができる。具体的な混合方法としては、ポリカーボネート樹脂、蓄光材、アルキルアシッドホスフェート(金属塩)、脂肪酸エステル化合物及び必要に応じて配合されるその他の添加成分を所定量秤量し、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用いて混合した後、バンバリーミキサー、ロール、プラペンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどを用いて溶融混練する方法が挙げられる。
[2] 成形品
本発明の成形品は、上述のような本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるものである。
[成形方法]
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品を製造する場合の成形方法としては、熱可塑性樹脂材料から成形品を成形する従来から知られている方法が、制限なく適用できる。具体的には、一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシストなどの中空成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、インモールドコーティング(IMC)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。
[L*値及び分子量低下]
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、アルキルアシッドホスフェート(金属塩)及び脂肪酸エステル化合物を併用することによる黒ずみ防止効果で、良好な色相を呈する。その色相は、樹脂組成物中の蓄光材の配合量によっても異なるが、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される3mm厚みの成形品についてのL*値が62以上、中でも63以上という良好な明度を示し、その色調は、ほぼ白色に近い美麗で清潔感のある外観を呈する。
また、本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物は、アルキルアシッドホスフェート(金属塩)及び脂肪酸エステル化合物を併用することによるポリカーボネート樹脂の分解抑制効果で、成形時のポリカーボネート樹脂の分子量の低下を小さく抑えることができる。その分子量低下の程度は、樹脂組成物中の蓄光材の配合量によっても異なるが、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される通常成形時のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量と滞留成形時のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量との差を600以下、特に300以下に抑えることができ、分子量低下の抑制で、外観に優れると共に、優れた機械物性を得ることができる。
[用途]
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、色相、蓄光性能に優れることから、従来の蓄光性樹脂組成物の一般的な用途である道路標識や看板類だけではなく、娯楽施設の遊具や玩具、ノートパソコン、携帯電話などのモバイル機器をはじめ、商品ディスプレイ、自動車室内や建物内の標示ボタン、時計の文字盤、アクセサリー類、文具類、スポーツ用品、更には、各種の電気・電子・OA機器等の分野において、筐体やスイッチ、ボタン類として幅広い用途に適用することができる。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例において使用した樹脂組成物の構成成分は、以下の通りである。
<蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物>
三菱エンジニアリングプラスチックス社製 芳香族ポリカーボネート樹脂「ユーピロンS−3000F」(粘度平均分子量=21500)
<蓄光材>
G−300M:根本特殊化学社製 蓄光材「G−300M」(化学組成=SrAl:Eu,Dy、D50=30μm、発光色=黄緑色、発光ピーク波長=520nm)
BG−300M:根本特殊化学社製 蓄光材「BG−300M」(化学組成=SrAl1425:Eu,Dy、D50=30μm、発光色=青緑色、発光ピーク波長=490nm)
V−300M:根本特殊化学社製 蓄光材「V−300M」(化学組成=CaAl:Eu,Nd、D50=25μm、発光色=紫色、発光ピーク波長=430nm)
PB−025:菱晃社製 蓄光材「クライトブライトPB−025」(化学組成=SrAl1425:Eu,Dy、D50=25μm、発光色=青緑色、発光ピーク波長=510nm)
P170:化成オプトニクス社製 蓄光材「P170」(化学組成=SrMgSi:Eu,Dy、D50=31μm、発光色=青色、発光ピーク波長=480nm)
<安定剤>
AX−71:ADEKA社製「アデカスタブAX−71」(前記式(II)で表されるモノステアリルアシッドホスフェートとジステアリルアシッドホスフェートとの混合物)
JP−518Zn:城北化学社製「JP−518Zn」(前記式(IIIa)と(IIIb)で表されるジステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩とモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩の混合物)
ADK2112:ADEKA社製「アデカスタブ2112」(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)
SH1107:東レ・ダウコーニング社製「DOW CORNING TORAY SH1107 FLUID」(メチル水素シロキサン)
<離型剤>
VPG861:エメリーオレオケミカルズジャパン社製「ロキシオールVPG861」(ペンタエリスリトールテトラステアリレート)
M−9676:日油社製「ユニスターM−9676」(ステアリルステアリレート)
PE520:クラリアントジャパン社製「リコワックスPE520」(ポリエチレンワックス)
<有機蛍光体>
Lumogen Orange 240:BASF社製 ペリレン系有機蛍光体「Lumogen Orange 240」(最大吸収波長=524nm、最大励起波長=539nm)
Lumogen Yellow 083:BASF社製 ペリレン系有機蛍光体「Lumogen Yellow 083」(最大吸収波長=476nm、最大励起波長=490nm)
Lumogen Red 305:BASF社製 ペリレン系有機蛍光体「Lumogen Red 305」(最大吸収波長=578nm、最大励起波長=613nm)
<紫外線吸収剤>
B−CAP:クラリアントジャパン社製「Hostavin B−CAP」(テトラエチル−2,2−(1,4−フェニレンジメチリデン)ビスマロネート)
<光散乱成分>
TSR9003:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製「TSR9003」(ポリメチルシルセスキオキサン シリコーン系微粒子、粒径D50=2μm)
[実施例1〜26及び比較例1〜10]
ポリカーボネート樹脂及び各種添加剤を表1〜4に示す割合で配合し、タンブラーで20分混合後、スクリュー径40mmのベント付き単軸押出機(田辺プラスチック社製「VS−40」)により、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数54rpmで混練し、押出されたストランドを切断してペレットを作製した。
得られたペレットを、120℃で5時間乾燥後、射出成形機(ファナック社製「S−2000i150B」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形を行って、各種の試験片を作製した。
得られたペレット又は試験片について、以下の評価を行い、結果を表1〜4に示した。
また、実施例1と比較例1の調色用試験片の光(UV)照射時とUV遮断時のカラー写真を図1に示す。
(1) 流れ値(Q値)
JIS K7210付属書Cに記載の方法にてペレットの流れ値(Q値)を評価した。測定は島津製作所社製「フローテスターCFD500D」を用いて、穴径1.0mmφ、長さ10mmのダイを用い、試験温度278℃、試験力160kg/cm、余熱時間420secの条件で排出された溶融樹脂量(単位:cc/sec)を測定した。
(2) Izod衝撃強度
ASTM D256に準拠して、ノッチ付きIzod衝撃試験片(厚さ3.2mm)について、23℃の温度でIzod衝撃強度(単位:J/m)を測定した。
(3) 引張破壊強度
ASTM多目的試験片(厚さ3.2mm)を用い、ASTM D638規格に準拠して引張破壊強度(単位:MPa)を測定した。
(4) 引張破壊点歪
ASTM多目的試験片(厚さ3.2mm)を用い、ASTM D638規格に準拠して引張破壊点歪(単位:%)を測定した。
(5) 分子量測定
上記の射出成形とは別に、同じ射出成形機でシリンダー温度320℃、通常サイクルタイム(30秒)で4ショットの成形(通常成形)を行った後、樹脂組成物をシリンダー内に20分間放置し、その後成形(滞留成形)を再開した1ショット目をサンプリングし、通常成形時のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量と滞留成形時のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量をそれぞれ測定した。
また、分子量の低下量を通常成形時の粘度平均分子量と滞留成形時の粘度平均分子量の差で算出した。この値が小さいほど、成形時の分子量低下が少なく、滞留熱安定性が良好である。
(6) JIS K7105に準拠して、調色用試験片(50mm(幅)×90mm(長さ)で厚みが1mm、2mm、及び3mmの3段プレート)の3mm厚みの部分について、色差計(日本電色工業社製「SE6000」)を用いて下記条件でL*、a*、b*を測定した。L*値が高い程、黒ずみがないことを示す。
反射測定:C光源2度視野
試料押さえ:白
(7) 外観
上記の調色用試験片について、目視にてシルバーや濁りの有無を確認した。
Figure 0006428161
Figure 0006428161
Figure 0006428161
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表1〜4の結果から、次のことが分かる。
安定剤も離型剤も用いていない比較例1,10では、黒ずみでL*値が低く、分子量低下も大きく、機械物性も若干劣る。
離型剤として脂肪酸エステル化合物を用いても、安定剤としてシロキサン化合物を用い、アルキルアシッドホスフェート(金属塩)を用いていない比較例2では、L*値が高く、黒ずみの問題はないが、シルバーや白濁で外観不良となり、分子量低下も大きい。
比較例3は、離型剤として脂肪酸エステル化合物を用い、安定剤として亜リン酸エステル系のものを用いたものであるが、L*値が低く黒ずみの問題があり、また分子量低下も大きい。
安定剤としてアルキルアシッドホスフェート(金属塩)を用いても、離型剤としてポリエチレンワックスを用いた比較例4では、L*値が高く、黒ずみは抑えられ、また分子量低下も小さいが、シルバーや白濁による外観不良の問題がある。
また、安定剤としてアルキルアシッドホスフェート(金属塩)を用い、離型剤を用いていない比較例5では、L*値が低く、黒ずみの問題がある。
離型剤として脂肪酸エステル化合物を用い、安定剤を用いていない比較例6〜9では、いずれもL*値が低く、黒ずみの問題があり、また分子量低下も大きく、比較例8,9では機械物性の低下も大きい。
これに対して、安定剤としてアルキルアシッドホスフェート(金属塩)を用い、離型剤として脂肪酸エステル化合物を用いた実施例1〜14では、いずれもL*値が高く、黒ずみの問題はなく、分子量低下も抑えられている。
なお、実施例8は、蓄光材の配合量が比較的少ないため、機械物性に優れるが、蓄光材の配合量が少ないことから、蓄光効果は他の実施例に比べて低い。
実施例9は、蓄光材の配合量が比較的多いために、L*値が他の実施例に比べて低く、また分子量低下も大きく、機械物性も劣る結果となるが、蓄光性は良好である。
実施例13は、紫外線吸収剤と光散乱成分を配合したものであり、L*値がより高く、白色度に優れる。
また、黄色および橙色の有機蛍光体を含有する実施例15〜22についても、いずれもL*値が高く、黒ずみの問題はなく、分子量低下も抑えられている。
赤色の有機蛍光体を含有する実施例23〜26については、L*値は低いものの、黒ずみの問題はなく、分子量低下も抑えられている。
本発明品と従来品の色相の差異は、図1より明らかであり、比較例1の試験片に対して、実施例1の試験片は黒ずみが改善され、UV遮断時の蓄光性能にも優れることが分かる。

Claims (6)

  1. ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、蓄光材1〜30質量部と、アルキルアシッドホスフェート及び/又はアルキルアシッドホスフェート金属塩0.01〜1質量部と、脂肪酸エステル化合物0.1〜2質量部とを含有するポリカーボネート樹脂組成物であって、
    前記アルキルアシッドホスフェートが、下記式(II)で表され、式(II)におけるn=1のジステアリルアシッドホスフェートとn=2のモノステアリルアシッドホスフェートとの混合物であり、
    前記アルキルアシッドホスフェート金属塩が、下記式(IIIa)で表されるジステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩と、下記式(IIIb)で表されるモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩との混合物であることを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
    O=P(OH) (OC 18 37 3−n …(II)
    Figure 0006428161
  2. 請求項1において、前記蓄光材がSrAl:Eu,Dy、SrAl1425:Eu,Dy、及びCaAl:Eu,Ndよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2において、前記脂肪酸エステル化合物が、ペンタエリスリトールテトラステアリレート及び/又はステアリルステアリレートであることを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 請求項1ないしのいずれか1項において、さらに有機蛍光体を、前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対し0.001〜0.1質量部含有することを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 請求項において、前記有機蛍光体がナフタレン系化合物、ペリレン系化合物、キノリン系化合物、クマリン系化合物、ベンゾオキサゾール誘導体及び希土類錯体化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
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