JP6428161B2 - 蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents
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Description
また、樹脂組成物が黒ずみ、成形品が濃灰色を帯びると、光の吸収効率や放光効率も低下するため、蓄光材の配合量に見合う蓄光性能(発光輝度や残光時間)を得ることができなくなるという問題もある。
O=P(OH)n(OR)3−n …(I)
(式(I)中、Rはアルキル基であり、nは1又は2の整数を表す。nが1の場合、2つのRは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
O=P(OH)n(OC18H37)3−n …(II)
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」と称す場合がある。)は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、蓄光材1〜30質量部と、アルキルアシッドホスフェート及び/又はアルキルアシッドホスフェート金属塩(以下「アルキルアシッドホスフェート(金属塩)」と記載する場合がある。)0.01〜1質量部と、脂肪酸エステル化合物0.1〜2質量部とを含有することを特徴とする。
本発明者らは、ポリカーボネート樹脂に蓄光材を配合した樹脂組成物が溶融混練時及び成形時に黒ずみを発生するのは、蓄光材粒子の硬度が高いために、押出機で溶融混練する際にはバレルやスクリュー表面を摩耗させ、この摩耗により発生した金属片が樹脂に混入すること、蓄光材の構成成分である希土類元素が、高温条件下でポリカーボネート樹脂を分解させること、が原因であると考え、これらの2つの要素を低減するために種々検討を重ね、熱安定剤としてアルキルアシッドホスフェート(金属塩)を用い、離型剤として脂肪酸エステル化合物を用い、これらを所定の割合で併用して配合することにより、黒ずみを防止することができることを見出した。
従来において、蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物に配合する熱安定剤としては、亜リン酸エステル(特許文献1)や、シロキサン系のもの(特許文献2,3)が用いられているが、亜リン酸エステルでは、蓄光材によるポリカーボネート樹脂の分解を十分に防止し得ない。また、シロキサン系のものは、白濁やシルバーの問題がある上に、ポリカーボネート樹脂の分解を抑制し得ない。
これに対して、アルキルアシッドホスフェート(金属塩)であれば、白濁やシルバーの問題を引き起こすことなく、蓄光材によるポリカーボネート樹脂の分解を抑制することができる。
また、離型剤としては、数多くのものが提案されているが、本願発明者らは、従来の離型剤の中でも、特に脂肪酸エステル化合物を用い、これをアルキルアシッドホスフェート(金属塩)と併用した場合に、白濁やシルバーによる外観不良を引き起こすことなく、良好な黒ずみ防止効果が得られることを見出した。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂としては、透明性、耐衝撃性、耐熱性等の面から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。また、溶融法を用いた場合には、末端基のOH基量を調整した芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することができる。
蓄光材は、太陽光や人工光などに含まれる紫外線や可視光などの光が照射されるとその光を吸収して蓄え、光照射を停止した後でも、即ち暗所においても、放光という形で所定の時間発光し続けるものである。蓄光材は、光励起終了後は、数分〜数十時間程度の残光持続性を持ち、光照射を停止した後速やかに発光が減衰する一般の蛍光増白剤などとは区別される。
本発明で用いるアルキルアシッドホスフェート(金属塩)のアルキルアシッドホスフェートは、下記式(I)で表されるものであることが好ましい。即ち、アルキルアシッドホスフェートは、下記式(I)で表され、アルキルアシッドホスフェート金属塩は下記式(I)で表されるアルキルアシッドホスフェートの亜鉛塩、アルミニウム塩等の金属塩であることが好ましい。
O=P(OH)n(OR)3−n …(I)
(式(I)中、Rはアルキル基であり、nは1又は2の整数を表す。nが1の場合、2つのRは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
O=P(OH)n(OC18H37)3−n …(II)
本発明で用いる脂肪酸エステル化合物、即ち、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル化合物を構成する脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸を挙げることができる。本明細書では、脂肪族カルボン酸の用語は、脂環式カルボン酸も包含する意味で用いる。脂肪族カルボン酸の中でも、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がより好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物は、さらに有機蛍光体を含有することができる。本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物においては、蓄光材による黒ずみを改善したことにより、蓄光材と共に有機蛍光体を配合した場合により鮮やかな外観を得ることができる。
これらの蛍光体は1種を単独で用いても良く、同色系ないしは異なる色調に発光するものの2種以上を併用しても良い。
さらに、最大励起波長の上限値は630nmが好ましく、600nmがより好ましく、570nmがさらに好ましく、550nmが特に好ましい。なお、最大励起波長の下限値は特に限定はないが、400nmが好ましい。
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、種々の添加剤から選ばれる1種又は2種以上やポリカーボネート樹脂以外の樹脂成分を含有していてもよい。このような添加剤としては、難燃剤、滴下防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光散乱成分などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、難燃性を得るために難燃剤を含有していてもよい。難燃剤としては、ポリカーボネート樹脂の透明性を維持して組成物の難燃性を向上させるものであれば特に限定されないが、リン酸エステル化合物及び有機スルホン酸金属塩が好適である。
本発明の樹脂組成物には、燃焼時の滴下防止を目的として、滴下防止剤を添加してもよい。滴下防止剤の好ましい例として、フッ素樹脂が挙げられる。より具体的には、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体等のフルオロエチレン構造を含む重合体及び共重合体である。中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。その平均分子量は、500,000以上であるのが好ましく、500,000〜10,000,000であるのがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を含有していてもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が好ましく、より具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、及び3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,6]ウンデカン等が挙げられる。中でも、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好ましい。
これらの酸化防止剤は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
本発明の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有していてもよい。樹脂成形品は、太陽光や蛍光灯のような光線下に長期間曝されると、紫外線によって黄色味を帯びる傾向があるが、紫外線吸収剤を添加することで、このような黄変を防止又は遅延させることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、ヒンダードアミン系、マロン酸エステル系などが挙げられる。
ヒンダードアミン系紫外線吸収剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等が挙げられる。
光散乱成分とは、光を散乱させて得られる成形品の白色度を高めるためのものであり、例えばマトリックスのポリカーボネート樹脂と非相溶性で、かつポリカーボネート樹脂よりも屈折率が0.01〜0.2程度小さい透明ないし半透明材料が挙げられる。
光散乱成分として好適な樹脂材料としては、以下のようなものが挙げられる。なお、以下において、カッコ内の数値は当該樹脂の代表的な屈折率を示す。樹脂微粒子、無機材料微粒子の例示においても同様である。
ポリエチレン樹脂(1.53)、ポリプロピレン樹脂(1.49)等のオレフィン系樹脂ポリスチレン樹脂(1.59)、AS樹脂(1.57)、ABS樹脂(1.53)、MS樹脂(1.58)、MBS樹脂(1.54)、AES樹脂(1.53)等のスチレン系樹脂
PMMA樹脂(1.49)等のメタクリル系樹脂
ポリアミド6(1.53)、ポリアミド66(1.53)等のポリアミド系樹脂
ARTON(商品名:1.51)、ZEONEX(商品名:1.53)、APEL(商品名:1.54)、等のシクロオレフィン系樹脂
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(1.58)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(1.58)等のポリエステル系樹脂
これらのうち、特に好ましくは、非晶性樹脂である、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂、MBS樹脂、MS樹脂、PMMA樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
光散乱成分として好適な樹脂微粒子としては、アクリル系微粒子(1.49)、シリコーン系微粒子(1.45)、スチレン系微粒子(1.59)、エポキシ系微粒子(1.60)、ウレタン系微粒子(1.60)、メラミン系微粒子(1.59)等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、アクリル系微粒子、シリコーン系微粒子であり、架橋された構造のものが特に好ましい。
これらの樹脂微粒子は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
光散乱成分として好適な無機材料微粒子としては、ガラスビーズ(1.51)、シリカビーズ(1.45)等が挙げられる。
これらのうち、入手が容易で安価なガラスビーズを好適に用いることができる。
これらの無機材料微粒子は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
本発明の樹脂組成物には、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂成分が含まれていてもよく、その場合、他の樹脂成分としては、例えば、光散乱成分以外のポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、水添ポリスチレン樹脂、ポリアクリルスチレン樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SMA樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、(メタ)アクリレート共重合体、ポリメタクリルメタクリレート樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、非晶性ポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、非晶性ポリアミド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、環状ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙られる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ただし、ポリカーボネート樹脂本来の優れた特性を発揮させると共に、ポリカーボネート樹脂に蓄光材を配合した場合の黒ずみの問題を解決するという本発明の効果が顕著に得られる点において、これらの他の樹脂成分を配合する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して50質量部以下であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、上記成分のほかに、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、着色剤、可塑剤、分散剤、防菌剤などを配合することができる。
これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
本発明の樹脂組成物は、従来から知られている方法で各成分を混合し、溶融混練することにより製造することができる。具体的な混合方法としては、ポリカーボネート樹脂、蓄光材、アルキルアシッドホスフェート(金属塩)、脂肪酸エステル化合物及び必要に応じて配合されるその他の添加成分を所定量秤量し、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用いて混合した後、バンバリーミキサー、ロール、プラペンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどを用いて溶融混練する方法が挙げられる。
本発明の成形品は、上述のような本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるものである。
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品を製造する場合の成形方法としては、熱可塑性樹脂材料から成形品を成形する従来から知られている方法が、制限なく適用できる。具体的には、一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシストなどの中空成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、インモールドコーティング(IMC)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、アルキルアシッドホスフェート(金属塩)及び脂肪酸エステル化合物を併用することによる黒ずみ防止効果で、良好な色相を呈する。その色相は、樹脂組成物中の蓄光材の配合量によっても異なるが、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される3mm厚みの成形品についてのL*値が62以上、中でも63以上という良好な明度を示し、その色調は、ほぼ白色に近い美麗で清潔感のある外観を呈する。
本発明の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、色相、蓄光性能に優れることから、従来の蓄光性樹脂組成物の一般的な用途である道路標識や看板類だけではなく、娯楽施設の遊具や玩具、ノートパソコン、携帯電話などのモバイル機器をはじめ、商品ディスプレイ、自動車室内や建物内の標示ボタン、時計の文字盤、アクセサリー類、文具類、スポーツ用品、更には、各種の電気・電子・OA機器等の分野において、筐体やスイッチ、ボタン類として幅広い用途に適用することができる。
なお、以下の実施例及び比較例において使用した樹脂組成物の構成成分は、以下の通りである。
三菱エンジニアリングプラスチックス社製 芳香族ポリカーボネート樹脂「ユーピロンS−3000F」(粘度平均分子量=21500)
G−300M:根本特殊化学社製 蓄光材「G−300M」(化学組成=SrAl2O4:Eu,Dy、D50=30μm、発光色=黄緑色、発光ピーク波長=520nm)
BG−300M:根本特殊化学社製 蓄光材「BG−300M」(化学組成=Sr4Al14O25:Eu,Dy、D50=30μm、発光色=青緑色、発光ピーク波長=490nm)
V−300M:根本特殊化学社製 蓄光材「V−300M」(化学組成=CaAl2O4:Eu,Nd、D50=25μm、発光色=紫色、発光ピーク波長=430nm)
PB−025:菱晃社製 蓄光材「クライトブライトPB−025」(化学組成=Sr4Al14O25:Eu,Dy、D50=25μm、発光色=青緑色、発光ピーク波長=510nm)
P170:化成オプトニクス社製 蓄光材「P170」(化学組成=Sr2MgSi2O7:Eu,Dy、D50=31μm、発光色=青色、発光ピーク波長=480nm)
AX−71:ADEKA社製「アデカスタブAX−71」(前記式(II)で表されるモノステアリルアシッドホスフェートとジステアリルアシッドホスフェートとの混合物)
JP−518Zn:城北化学社製「JP−518Zn」(前記式(IIIa)と(IIIb)で表されるジステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩とモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩の混合物)
ADK2112:ADEKA社製「アデカスタブ2112」(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)
SH1107:東レ・ダウコーニング社製「DOW CORNING TORAY SH1107 FLUID」(メチル水素シロキサン)
VPG861:エメリーオレオケミカルズジャパン社製「ロキシオールVPG861」(ペンタエリスリトールテトラステアリレート)
M−9676:日油社製「ユニスターM−9676」(ステアリルステアリレート)
PE520:クラリアントジャパン社製「リコワックスPE520」(ポリエチレンワックス)
Lumogen Orange 240:BASF社製 ペリレン系有機蛍光体「Lumogen Orange 240」(最大吸収波長=524nm、最大励起波長=539nm)
Lumogen Yellow 083:BASF社製 ペリレン系有機蛍光体「Lumogen Yellow 083」(最大吸収波長=476nm、最大励起波長=490nm)
Lumogen Red 305:BASF社製 ペリレン系有機蛍光体「Lumogen Red 305」(最大吸収波長=578nm、最大励起波長=613nm)
B−CAP:クラリアントジャパン社製「Hostavin B−CAP」(テトラエチル−2,2−(1,4−フェニレンジメチリデン)ビスマロネート)
TSR9003:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製「TSR9003」(ポリメチルシルセスキオキサン シリコーン系微粒子、粒径D50=2μm)
ポリカーボネート樹脂及び各種添加剤を表1〜4に示す割合で配合し、タンブラーで20分混合後、スクリュー径40mmのベント付き単軸押出機(田辺プラスチック社製「VS−40」)により、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数54rpmで混練し、押出されたストランドを切断してペレットを作製した。
得られたペレットを、120℃で5時間乾燥後、射出成形機(ファナック社製「S−2000i150B」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形を行って、各種の試験片を作製した。
得られたペレット又は試験片について、以下の評価を行い、結果を表1〜4に示した。
また、実施例1と比較例1の調色用試験片の光(UV)照射時とUV遮断時のカラー写真を図1に示す。
JIS K7210付属書Cに記載の方法にてペレットの流れ値(Q値)を評価した。測定は島津製作所社製「フローテスターCFD500D」を用いて、穴径1.0mmφ、長さ10mmのダイを用い、試験温度278℃、試験力160kg/cm2、余熱時間420secの条件で排出された溶融樹脂量(単位:cc/sec)を測定した。
ASTM D256に準拠して、ノッチ付きIzod衝撃試験片(厚さ3.2mm)について、23℃の温度でIzod衝撃強度(単位:J/m)を測定した。
ASTM多目的試験片(厚さ3.2mm)を用い、ASTM D638規格に準拠して引張破壊強度(単位:MPa)を測定した。
ASTM多目的試験片(厚さ3.2mm)を用い、ASTM D638規格に準拠して引張破壊点歪(単位:%)を測定した。
上記の射出成形とは別に、同じ射出成形機でシリンダー温度320℃、通常サイクルタイム(30秒)で4ショットの成形(通常成形)を行った後、樹脂組成物をシリンダー内に20分間放置し、その後成形(滞留成形)を再開した1ショット目をサンプリングし、通常成形時のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量と滞留成形時のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量をそれぞれ測定した。
また、分子量の低下量を通常成形時の粘度平均分子量と滞留成形時の粘度平均分子量の差で算出した。この値が小さいほど、成形時の分子量低下が少なく、滞留熱安定性が良好である。
反射測定:C光源2度視野
試料押さえ:白
上記の調色用試験片について、目視にてシルバーや濁りの有無を確認した。
安定剤も離型剤も用いていない比較例1,10では、黒ずみでL*値が低く、分子量低下も大きく、機械物性も若干劣る。
離型剤として脂肪酸エステル化合物を用いても、安定剤としてシロキサン化合物を用い、アルキルアシッドホスフェート(金属塩)を用いていない比較例2では、L*値が高く、黒ずみの問題はないが、シルバーや白濁で外観不良となり、分子量低下も大きい。
比較例3は、離型剤として脂肪酸エステル化合物を用い、安定剤として亜リン酸エステル系のものを用いたものであるが、L*値が低く黒ずみの問題があり、また分子量低下も大きい。
安定剤としてアルキルアシッドホスフェート(金属塩)を用いても、離型剤としてポリエチレンワックスを用いた比較例4では、L*値が高く、黒ずみは抑えられ、また分子量低下も小さいが、シルバーや白濁による外観不良の問題がある。
また、安定剤としてアルキルアシッドホスフェート(金属塩)を用い、離型剤を用いていない比較例5では、L*値が低く、黒ずみの問題がある。
離型剤として脂肪酸エステル化合物を用い、安定剤を用いていない比較例6〜9では、いずれもL*値が低く、黒ずみの問題があり、また分子量低下も大きく、比較例8,9では機械物性の低下も大きい。
なお、実施例8は、蓄光材の配合量が比較的少ないため、機械物性に優れるが、蓄光材の配合量が少ないことから、蓄光効果は他の実施例に比べて低い。
実施例9は、蓄光材の配合量が比較的多いために、L*値が他の実施例に比べて低く、また分子量低下も大きく、機械物性も劣る結果となるが、蓄光性は良好である。
実施例13は、紫外線吸収剤と光散乱成分を配合したものであり、L*値がより高く、白色度に優れる。
また、黄色および橙色の有機蛍光体を含有する実施例15〜22についても、いずれもL*値が高く、黒ずみの問題はなく、分子量低下も抑えられている。
赤色の有機蛍光体を含有する実施例23〜26については、L*値は低いものの、黒ずみの問題はなく、分子量低下も抑えられている。
Claims (6)
- ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、蓄光材1〜30質量部と、アルキルアシッドホスフェート及び/又はアルキルアシッドホスフェート金属塩0.01〜1質量部と、脂肪酸エステル化合物0.1〜2質量部とを含有するポリカーボネート樹脂組成物であって、
前記アルキルアシッドホスフェートが、下記式(II)で表され、式(II)におけるn=1のジステアリルアシッドホスフェートとn=2のモノステアリルアシッドホスフェートとの混合物であり、
前記アルキルアシッドホスフェート金属塩が、下記式(IIIa)で表されるジステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩と、下記式(IIIb)で表されるモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩との混合物であることを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
O=P(OH) n (OC 18 H 37 ) 3−n …(II)
- 請求項1において、前記蓄光材がSrAl2O4:Eu,Dy、Sr4Al14O25:Eu,Dy、及びCaAl2O4:Eu,Ndよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1又は2において、前記脂肪酸エステル化合物が、ペンタエリスリトールテトラステアリレート及び/又はステアリルステアリレートであることを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、さらに有機蛍光体を、前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対し0.001〜0.1質量部含有することを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項4において、前記有機蛍光体がナフタレン系化合物、ペリレン系化合物、キノリン系化合物、クマリン系化合物、ベンゾオキサゾール誘導体及び希土類錯体化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の蓄光性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
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