以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
[ドアロックシステムの全体構成]
図1は、本発明に係るドアロック装置(車両用駆動装置の一例)が搭載された車両のドアロックシステムを示すブロック図である。このドアロックシステム1は、図外の車両に備えられる複数のドアのロック状態(施鍵)/アンロック状態(解鍵)の切り替えを制御するためのシステムである。当例では、前記車両は、左右のフロントドア、左右のリアドア及びバックドア(リアゲート)の合計5つのドアを備えたハッチバックタイプの車両である。
ドアロックシステム1は、前記車両の右フロントドアに備えられるFRドアロック装置2Aと、左フロントドアに備えられるFLドアロック装置2Bと、右リアドアに備えられるRRドアロック装置2Cと、左リアドアに備えられるRLドアロック装置2Dと、バックドアに備えられるBドアロック装置2Eと、これらドアロック装置2A〜2Eを統括的に制御するドアロック制御装置4と、ドライバ(乗員)が携帯するリモコンキー6とを含む。
ドアロック制御装置4(本発明の「制御装置」に相当する)は、各ドアロック装置2A〜2Eの後記モータ16の作動を制御するモータ制御部5Aと、タイマー5Bとを含む。モータ制御部5Aは、リモコンキー6の操作、すなわちロック操作(施鍵操作)及びアンロック操作(解鍵操作)に応じて、各ドアロック装置2A〜2Eのモータ16に対する給電を制御することにより、全てのドアのロック状態とアンロック状態との切り替えを同時に行う。なお、各ドアロック装置2A〜2Eは、タイマー5Bによる計時時間(予め設定された時間)だけモータ16に電流を供給して後記ロック機構15を作動させるように構成された、いわゆるタイマー制御型のドアロック装置である。以下、この点について各ドアロック装置2A〜2Eの構成と共に説明する。
[ドアロック装置の構成とその制御]
上記ドアロック装置2A〜2Eの基本的な構成は共通しており、ここでは、右フロントドアのFRドアロック装置2Aを例にその構成について説明する。
図2は、アンロック状態のFRドアロック装置2A(以下、ドアロック装置2Aと略す)の主要部を示す斜視図である。ドアロック装置2Aは、ラッチ機構11とロック機構15とを備えている。ラッチ機構11は、車体に取り付けられた図外のストライカを係脱可能に係止するものであり、ロック機構15は、ラッチ機構11によるストライカの係止状態を解除することが可能なアンロック状態と、ラッチ機構11によるストライカの係止状態を解除することが不可能なロック状態との切り替えを行うものである。
つまり、ロック機構15がアンロック状態で、右フロントドアに備えられたドアハンドル(インナハンドル又はアウタハンドル)が開操作されると、ラッチ機構11によるストライカの係止状態が解除されて右フロントドアが開く。一方、ロック機構15がロック状態のままでドアハンドルが開操作されても、ラッチ機構11によるストライカの係止状態は解除されず、これにより右フロントドアは閉止状態に維持される。
ロック機構15のアンロック状態とロック状態との切り替えは、車内に配置された図外のロックノブの操作、車外からのキーを用いた図外のキーシリンダの操作、またはリモコンキー6の操作による後記モータ16の駆動によって可能となるが、ここでは、リモコンキー6の操作による場合について説明する。
ラッチ機構11は、ストライカを受け入れる係止溝12aを有したフォーク12と、このフォーク12を係止するためのクロー13とを有する。
フォーク12は、係止溝12aを左方に向けた開放位置と、ストライカを受け入れることにより係止溝12aを下方に向けた閉鎖位置(図2に示す位置)とに亘って支持軸Ax1回りに回動可能に支持されている。開放位置では、フォーク12によるストライカの係止が解除され、閉鎖位置ではフォーク12によりストライカが係止される。従って、図2に示すラッチ機構11の状態は、右フロントドアが閉じられて、フォーク12によりストライカが係止された状態を示している。
クロー13は、閉鎖位置に配置されたフォーク12の先端(係止部12b)に係合することにより当該フォーク12を閉鎖位置に係止する係止受部13aと、係止部12bと係止受部13aとの係合を解除するための操作受部13bとを有している。
クロー13は、支持軸Ax1と平行な支持軸A2回りに回動可能に支持されており、フォーク12が閉鎖位置に係止された状態において操作受部13bに上向きの操作力が入力されると、支持軸Ax2回りに回転して、前記係止部12bと係止受部13aとの係合状態を解除する。このように係止部12bと係止受部13aとの係合状態が解除されると、図外のばねの弾発力によりフォーク12が開放位置に変位する。
ロック機構15は、モータ16と、このモータ16により回転駆動されるカム部材18(本発明の「可動部材」に相当する)と、このカム部材18の回転に伴い揺動するノブレバー20と、このノブレバー20の右方に配置されるリンク部材21と、ノブレバー20及びリンク部材21の一端(上端)が各々連結されるロックプレート23と、リンク部材21の他端(下端)に連結されるアウタレバー22とを備えている。
カム部材18は、支持軸Ax1と直交する方向に延びる支持軸Ax3に回転自在に支持された円盤状の部材で、一端面(右端面)に円形凹部18aを有し、他端面(左端面)に図外のカム溝を有している。カム部材18の外周面には、ウォームホイール部18bが備えられており、前記モータ16の出力軸に取り付けられたウォーム17が、このウォームホイール部18bに噛合している。
ノブレバー20は、上下方向に延在しており、支持軸Ax3と平行な支持軸Ax4に回転可能に支持されている。ノブレバー20は、前記カム溝に係合可能な図外のカム受部を有しており、カム部材18の回転に連動して支持軸Ax4回りに揺動するように、当該カム部材18に連結されている。
このノブレバー20の右方に、上下方向に延在する前記リンク部材21が配置され、さらにこのリンク部材21の右方に、左右方向に延在する前記アウタレバー22が配置されている。アウタレバー22は、その中間部分が支持軸Ax1と平行な支持軸Ax6回りに回動可能に支持されており、このアウタレバー22の一端(左端)に前記リンク部材21の下端部が回動可能に連結されている。アウタレバー22の他端(右端)には、アウタハンドル接続部22aが設けられており、右フロントドアのアウタハンドルが開操作されると、このアウタハンドル接続部22aが押し下げられるようになっている。
ノブレバー20及びリンク部材21の上方に前記ロックプレート23が配置されている。ロックプレート23は、支持軸Ax3、Ax4と平行な支持軸Ax5に揺動自在に支持されており、その左右両端に設けられた連結部23a、23bを介してノブレバー20及びリンク部材21の各々上端部と連結されている。ノブレバー20と連結部23aとは相対的な回転が可能に連結されており、リンク部材21と連結部23bとは相対的な回転に加えて上下動が可能に連結されている。
図2に示すロック機構15の状態は、右フロンドアの開閉を可能とするアンロック状態である。前記リンク部材21の中間部には、このアンロック状態において前記クロー13の操作受部13bの下方に位置する操作部21aが設けられている。つまり、このアンロック状態において、アウタハンドルの開操作によりアウタハンドル接続部22aが押し下げられると、リンク部材21が上方に変位し、操作部21aを介してクロー13の操作受部13bが押し上げられる。このように操作受部13bに上向きの操作力が入力されることで、クロー13が支持軸Ax2回りに回転して、閉鎖位置に係止されているフォーク12の係止状態が解除される。
そして、このアンロック状態において、モータ16の駆動によりカム部材18が正転(図2中の矢印A方向に回転)すると、上端部が前方に変位するように当該ノブレバー20が支持軸Ax4回りに揺動する。ノブレバー20が揺動すると、これに連動してロックプレート23が揺動するとともに、リンク部材21がその下端部を支点として揺動し、その結果、ロック機構15が、図3に示すようなロック状態に切り替わる。すなわち、リンク部材21の操作部21aがクロー13の操作受部13bの下方から前方に移動した状態となる。このロック状態では、アウタハンドルの開操作によりアウタハンドル接続部22aが押し下げられ、これによりリンク部材21が上方に変位しても、操作部21aはクロー13の操作受部13bを押し上げることができず、これにより、フォーク12が閉鎖位置に係止された状態が維持される。
なお、前記カム部材18の円形凹部18aには、当該カム部材18には、当該カム部材18と共に支持軸Ax3回りに一体に回転する当り部19が設けられるとともに、カム部材18の回転に伴い当り部19に当接することにより、当該カム部材18の回転を規制(阻止)する断面円弧形状のストッパ25が配置されている。ストッパ25は、例えばドアロック装置2Aのケーシング(筐体)等に一体に形成されており、カム部材18の一端側(右側)から円形凹部18aに挿入されている。
カム部材18は、図外のばね部材により図2に示す中立位置に保持されている。つまり、アンロック状態(図2の状態)からロック状態(図3の状態)への切り替え時には、モータ16に電流が供給されて当該モータ16が正転駆動され、当り部材19がストッパ25の一端に当接する位置まで、カム部材18が中立位置から正転方向(矢印A方向)に回転する。これにより、ロック機構15がアンロック状態からロック状態に切り替わる。そして、モータ16に対する給電がオフされると、ばね部材の付勢力によりカム部材18が中立位置に復帰する。
また、ロック状態からアンロック状態への切り替え時には、モータ16が逆転駆動され、当り部材19がストッパ25の他端に当接する位置まで、カム部材18が中立位置から逆転方向(矢印B方向)に回転する。これにより、ロック機構15がロック状態からアンロック状態に切り替わる。そして、モータ16に対する給電がオフされると、ばね部材の付勢力によりカム部材18が中立位置に復帰する。
なお、当例では、当り部材19がストッパ25の一端に当接するときのカム部材18の位置が本発明の「施鍵位置」に相当し、当り部材19がストッパ25の他端に当接するときのカム部材18の位置が本発明の「解鍵位置」に相当する。
ロック状態とアンロック状態との切り替え時のモータ16に対する給電時間は、前記タイマー5Bにより管理される。すなわち、このドアロック装置2Aは、モータ16の停止位置での当該モータ16に対する給電オフがタイマー5Bで制御されるタイマー制御型のドアロック装置であると言える。タイマー5Bの設定時間は、ロック状態及びアンロック状態の切り替えの確実性の観点から、実際に当該切り替えが完了する時間、つまり、カム部材18が中立位置から回転を開始してからストッパ25に当り部材19が当接するまでの時間よりも若干長く設定されている。
カム部材18の前記カム溝は、図2に示すアンロック状態においては、カム部材18が中立位置から正転(矢印A方向の回転)する場合にのみノブレバー20(カム受部)と係合し、図3に示すロック状態においては、カム部材18が中立位置から逆転(矢印B方向の回転)する場合にのみノブレバー20と係合するように形成されている。従って、モータ16に対する給電オフによりカム部材18が中立位置に復帰する際には、カム部材18とノブレバー20(カム受部)とが係合することはなく、ノブレバー20は切り替え後の位置(図2又は図3に示す位置)に維持される。
なお、ここではFRドアロック装置2Aの構成について説明したが、他のドアロック装置2B〜2Eも、細部の構成等、具体的な構成は多少異なるが、基本的な構成はFRドアロック装置2Aと同様である。
図4は、前記ドアロック制御装置4によるロック状態(施鍵)/アンロック状態(解鍵)の切替制御を説明するフローチャートである。
このフローチャートがスタートすると、モータ制御部5Aは、リモコンキー6かの信号入力を待ち(ステップS1)、信号入力があると、さらに当該信号がロック信号であるか、すなわち各ドアロック装置2A〜2E(ロック機構15)をアンロック状態からロック状態に切り替えるための信号か否かを判定する(ステップS3)。なお、図示を省略が、リモコンキー6にはロックボタンとアンロックボタンとが備えられており、ロックボタンが押圧操作を受けると、リモコンキー6から前記ロック信号が送信され、アンロックボタンが押圧操作を受けると、リモコンキー6から後記アンロック信号が送信される。
ステップS3でリモコンキー6からの出力信号がロック信号であると判定されると、モータ制御部5Aは、図外の駆動回路に制御信号(ロック動作指令)を出力するとこにより、各ロック機構15のモータ16への給電を開始するとともに前記タイマー5Bを作動させる(ステップS5、S7)。これにより、図2に示す状態において、各ロック機構15のカム部材18が中立位置から正転(矢印A方向への回転)を開始し、各ドアロック装置2A〜2Eにおけるアンロック状態からロック状態への切り替えが同時に開始される。
そして、タイマー5Bが設定時間を計時すると、モータ制御部5Aから駆動回路への制御信号の出力が自動的に遮断され(ロック動作指令終了)、これにより、各ドアロック装置2A〜2Eのアンロック状態からロック状態への切り替えが完了する(ステップS9)。
一方、ステップS3でNoと判定すると、すなわちリモコンキー6からの出力信号が、各ドアロック装置2A〜2Eをロック状態からアンロック状態に切り替えるためのアンロック信号であると判定すると、モータ制御部5Aは、前記駆動回路に制御信号(アンロック動作指令)を出力するとこにより、各ロック機構15のモータ16への給電を開始するとともに前記タイマー5Bを作動させる(ステップS11、S13)。これにより、図3に示す状態において、各ロック機構15のカム部材18が中立位置から反転(矢印B方向への回転)を開始し、各ドアロック装置2A〜2Eにおけるロック状態からアンロック状態への切り替えが同時に開始される。
そして、タイマー5Bが設定時間を計時すると、モータ制御部5Aから駆動回路への制御信号の出力が自動的に遮断され(アンロック動作指令終了)、これにより、各ドアロック装置2A〜2Eのロック状態からアンロック状態への切り替えが完了する(ステップS15)。
[モータの構造]
各ドアロック装置2A〜2Eのロック機構15に備えられる前記モータ16は、小型モータであり、より詳しくはブラシ付きDCモータであり、後に詳述する通り、タイマー制御型の上記各ドアロック装置2A〜2Eに適した構造を有している。
以下、このモータ16の構造について説明する。図5は、各ドアロック装置2A〜2Eのロック機構15に備えられた前記モータ16の内部構造の概略図である。
モータ16は、2つの界磁マグネット31、32を備えた2極のブラシ付きDCモータである。このモータ16は、所定間隔を隔てて対向する前記界磁マグネット31、32を有するステータ30と、前記2つの界磁マグネット31、32の間に回転自在に配置されたロータ36と、このロータ36の回転方向に180°の角度差を隔てて配置された一対のブラシ42a、42bとを備える。
前記2つの界磁マグネット31、32は、図5に示すように、互いに離反するように湾曲する断面円弧形状を有しており、図外のケーシング(筐体)の内側面に固定されている。各界磁マグネット31、32の対向面の極性は異なり、図5の例では、左側の界磁マグネット32の対向面の極性はN極であり、右側の磁極マグネット31の対向面の極性はS極である。図5では、界磁マグネット31、32の極性を各対向面の極性で示している。
ロータ34は、回転軸35と、この回転軸35を中心に備え、外周にティース(磁極ティース)を備え、当該回転軸35と共に回転するコア36と、このコア36に装着された複数のコイル38と、回転軸35に固定されて当該回転軸35と共に回転するコミテータ(整流子)40とを含み、回転軸35及び図外の軸受を介して前記ケーシングに回転自在に支持されている。なお、回転軸35は、ウォーム17が装着される前記出力軸である。
コア36は、回転軸35を中心として周方向に等間隔で並ぶ4つ以上の偶数個のティースを備えており、当例では、図5に丸付き数字で示すように、第1〜第6の6個のティース37a〜37fを備えている。各ティース37a〜37fは、当該コア36の中心部から各々放射状に延びる胴部と、胴部の先端から周方向に均等に延びる鍔部とを備えた断面略T字型の形状を有している。
なお、コア36の構成について換言すると、当該コア36は、回転軸35を中心として周方向に等間隔で並ぶ6個のスロット(溝)を備えているとも言える。従って、モータ16は、2極6スロット型のブラシ付きDCモータと言うことができる。
周方向に隣接する2個のティースには、これらに亘ってコイルが装着されており、これにより、コア36には、ティース37a〜37fと同数の合計6個のコイル38a〜38fが備えられている。具体的には、第6と第1の両ティース37f、37aに亘って第1コイル38aが、第1と第2の両ティース37a、37bに亘って第2コイル38bが、第2と第3の両ティース37b、37cに亘って第3コイル38cが、第3と第4の両ティース37c、37dに亘って第4コイル38dが、第4と第5の両ティース37d、37eに亘って第5コイル38eが、第5と第6の両ティース37e、37fに亘って第6コイル38fが、各々装着されている。
これら6個のコイル38a〜38fは、何れも巻回数が同じであるが、周方向に隣接するもの同士は巻回方向、つまり、電線の巻き付け方向が異なっている。換言すれば、時計回りに電線が巻回されたコイルと、反時計回りに電線が巻回されたコイルとが周方向に交互に配列されている。当例では、回転軸35と直交する方向に径方向外側から視たときに、第1、第3、第5の各コイル38a、38c、38eは、時計回り(CW;Clockwise)に電線が巻回されており、第2、第4、第6の各コイル38b、38d、38fは、反時計回り(CCW;Counterclockwise)に電線が巻回されている。なお、図5を含む各図中には、理解補助のためにコイル38a〜38fの巻回方向を示す文字「CW」、「CCW」を表記している。また、以下の説明では、適宜、第1、第3、第5の各コイル38a、38c、38eをCWのコイル38a、38c、38eと称し、第2、第4、第6の各コイル38b、38d、38fを、CCWのコイル38b、38d、38fと称する場合がある。
ロータ34は、上記のように、電線の巻回方向が異なるコイルが周方向に交互に配列されることにより、図5に示すように、回転軸35を挟んで互いに対向する位置に、巻回方向が互いに異なるコイルが配置された構造となっている。
前記コミテータ40は、コア36に隣接する位置で回転軸35に固定されている。コミテータ40は、回転軸35の周りに微小隙間を隔てて等間隔(中心角で120°)で配列される第1〜第3の3つのセグメント41a〜41cで構成されている。第1セグメント41aは、コア36の第1ティース37aと第6ティース37fとに対応する領域に配置され、第2セグメント41bは、第2ティース37bと第3ティース37cとに対応する領域に配置され、第3セグメント41cは、第4ティース37dと第5ティースeとに対応する領域に配置されている。
各セグメント41a〜41cには、図9〜図12に示すように、前記コイル38a〜38fが接続されている。
図5に示すように、第1〜第6のコイル38a〜38fのうち、回転軸35を挟んで互いに対向する位置のコイル同士は直列に接続されている。具体的には、第1コイル38aと第4コイル38d、第2コイル38bと第5コイル38e、第3コイル38cと第6コイル38fが、各々、直列に接続されている。
そして、互いに直列に接続された第1、第4のコイル38a、38dからなるコイル対39A(第1コイル対39Aという)のうち、第1コイル38a側の端部が第3セグメント41cに、第4コイル38d側の端部が第2セグメント41bに各々接続されている。また、互いに直列に接続された第2、第5のコイル38b、38eからなるコイル対39B(第2コイル対39Bという)のうち、第2コイル38b側の端部が第1セグメント41aに、第5コイル38e側の端部が第2セグメント41bに各々接続されている。また、互いに直列に接続された第3、第6のコイル38c、38fからなるコイル対39C(第3コイル対39Cという)のうち、第3コイル38c側の端部が第1セグメント41aに、第6コイル38f側の端部が第3セグメント41cに各々接続されている。つまり、1つのセグメントには1つのコイル対の端部と他のコイル対の端部が接続されており、これにより、3つのコイル対39A〜39Cが3つのセグメント41a〜41cを介して環状に連結(接続)されている。なお、回転軸35を挟んで互いに対向する位置のコイル同士は、途中でコミテータのセグメントを介する構成としてもよい。この場合、各コイルの両端がそれぞれコミテータの異なるセグメントに接続される構造となるため、セグメントは6つ、つまりティースやコイルの数と同数必要となる。
前記一対のブラシ(第1ブラシ42a、第2ブラシ42b)は、前記コミテータ40(セグメント41a〜41c)の外周面に摺接するように当該コミテータ40の外周に近接して配置されている。
これらブラシ42a、42bは、上記の通り、ロータ34の回転方向に180°の角度差を隔てて配置されている。当例では、各ブラシ42a、42bは、図5に示すように、前記2つの界磁マグネット31、32の各々中心を通る直線La上に対向して配置されており、S極の界磁マグネット31側に第1ブラシ42aが、N極の界磁マグネット32側に第2ブラシ42bが各々配置されている。各ブラシ42a、42bは、図外の前記ケーシングにブラシプレートを介して支持されており、外部電源から供給される電流を、コミテータ40(セグメント41a〜41c)を介してコア36(コイル38a〜38f)に供給するようになっている。
[コアの各ティースの磁化状態の変化とロータの回転]
上記モータ16では、回転軸35に取り付けられたコミテータ40により、各コイル対39A〜39C(コイル38a〜38f)に供給される電流の流れ方向が切り替えられることにより、ロータ34(回転軸35)に回転力が発生する。ここで、この時のコア36の各ティース37a〜37fの磁化状態の変化について、図5〜図8及び図9〜図12を用いて説明する。
まず、図5に示すように、コミテータ40の第1セグメント41aにのみ第1ブラシ42aが、第3セグメントにのみ第2ブラシが各々接触した状態で、第1ブラシがプラス電極に、第2ブラシがマイナス電極に接続された状態を想定する。
この状態では、図9中に矢印で示すように、第1ブラシ42aから第3コイル対39C(第3コイル38c、第6コイル38f)を介して第2ブラシ42bに電流が流れるとともに、第1ブラシ42aから第2コイル対39B(第2コイル38b、第5コイル38e)及び第1コイル対39A(第4コイル38d、第1コイル38a)を介して第2ブラシ42bに電流が流れる。従って、図5に示すように、コア36のうち、第2、第3のコイル38b、38cが装着された第2、第3のティース37b、37cがS極に磁化されとともに、第5、第6のコイル38e、38fが装着された第5、第6のティース37e、37fがN極に磁化される。これにより、磁化された第2、第3、第5、第6の各ティース37b、37c、37e、37fと界磁マグネット31、32との吸引及び反発により、ロータ34が図5中の矢印で示す方向(時計回り)の力を受けてその方向に回転する。
なお、第1ティース37aについては、これに装着された第1、第2のコイル38a、38bの径方向外側から視たときの巻回方向が互いに反対向きであり、電流が流れる向きが同一であるため、これらのコイルが生じさせる磁極の極性が異なるため磁界が相殺される。第4ティースについても同様である。そのため、図5に示す状態では、第1、第4の各ティース37a、37dは磁化されない。
ロータ34が回転し、図5に示す状態から図6に示す状態に移行すると、第1ブラシ42aが第1セグメント41aにのみ接触した状態を維持しながら、第2ブラシ42bが第2セグメント41bと第3セグメント41cの両方に接触した状態(ブラシ跨ぎ状態という)となる。この状態では、図10中に矢印で示すように、第1コイル対39A対が第2、第3のセグメント41b、41cを介してマイナス電極に接続された第2ブラシ42bに短絡する。そのため、第1コイル対39Aには電流が流れず、第3コイル対39C及び第2コイル対39Bを各々介して第1ブラシ42aから第2ブラシ42bに電流が流れる。
そのため、図6に示すように、第2、第3のティース37b、37cがS極に磁化された状態、および第5、第6のティース37e、37fがN極に磁化された状態が各々維持される。一方、第1コイル対39A(第1コイル38a、第4コイル38d)に電流が流れないことで、第1コイル38aが装着された第1ティース37aがS極に、第4コイル38dが装着された第4ティース37dがN極に各々磁化される。
これにより、磁化された第1〜第6の各ティース37a〜37fと界磁マグネット31、32との吸引及び反発により、ロータ34が図5中の矢印で示す方向(時計回り)の力を受けてその方向に回転する。
ロータ34がさらに回転し、図6に示す状態から図7に示す状態に移行すると、第1セグメント41aにのみ第1ブラシ42aが接触した状態を維持しながら、第2セグメント41bにのみ第2ブラシ42bが接触した状態となる。この状態では、図11中に矢印で示すように、第1ブラシ42aから第3コイル対39C及び第1コイル対39Aを介して第2ブラシ42bに電流が流れるとともに、第1ブラシ42から第2コイル対39Bを介して第2ブラシ42bに電流が流れる。
そのため、図7に示すように、第1、第2のティース37a、37bがS極に磁化された状態、及び第4、第5のティース37d、37eがN極に磁化された状態が各々維持される。一方、第1コイル対39Aに第3コイル対39Cと同方向の電流が流れることで、第3ティース37cについては、これに装着された第3、第4のコイル38c、38dの径方向外側から視たときの巻回方向が互いに反対向きであり、電流が流れる向きが同一であるため、これらのコイルが生じさせる磁極の極性が異なるため磁界が相殺される。第6ティース37fについても同様である。そのため、図7に示す状態では、第3、第6のティース37c、37fは磁化されない。
これにより、磁化された第1、第2、第4、第5の各ティース37a、37b、37d、37eと界磁マグネット31、32との吸引及び反発により、ロータ34が図7中の矢印で示す方向(時計回り)の力を受けてその方向に回転する。
ロータ34がさらに回転し、図7に示す状態から図8に示す状態に移行すると、第2ブラシ42bが第2セグメント41bにのみ接触した状態を維持しながら、第1ブラシ42aが第1セグメント41aと第3セグメント41cの両方に接触した状態(ブラシ跨ぎ状態)となる。この状態では、図12中に矢印で示すように、第3コイル対39Cの両端が第1、第3のセグメント41a、41cを介して共にプラス電極に接続された第1ブラシ42aに短絡する。そのため、第3コイル対39Cには電流が流れず、第1コイル対39A及び第2コイル対39Bを各々介して第1ブラシ42aから第2ブラシ42bに電流が流れる。
そのため、第1、第2のティース37a、37bがS極に磁化された状態、及び第4、第5のティース37d、37eがN極に磁化された状態が各々維持される。一方、第3コイル対39C(第3コイル38c、第6コイル38f)に電流が流れないことで、第3コイル38cが装着された第3ティース37cがN極に、第6コイル38fが装着された第6ティース37fがS極に磁化される。
これにより、磁化された第1〜第6の各ティース37a〜37fと界磁マグネット31、32との吸引及び反発により、ロータ34が図8中の矢印で示す方向(時計回り)の力を受けてその方向に回転する。
以上のように、上記モータ16では、第1ブラシ42aがプラス電極に、第2ブラシ42bがマイナス電極に接続された状態では、図5〜図8において2つの界磁マグネット31、32の各々中心を通る直線Laよりも上側に位置するティースは、S極の界磁マグネット31に向かう方向(同図では右側に向かう方向)の力を連続的に受ける一方、直線Laよりも下側に位置するティースはN極の界磁マグネット32に向かう方向(同図では左側に向かう方向)の力を連続的に受ける。これにより、ロータ34は、図5〜図8中に矢印で示す方向(時計回り)に継続的に回転することとなる。
なお、前記モータ制御部5Aによる制御により、第1ブラシ42aがマイナス電極に、第2ブラシ42bがプラス電極に接続された場合には、各コイル38a〜38fにより生じる磁界の極性が上記説明とは逆になるため、各コイル38a〜38fが装着された各ティース37a〜37fに加わる力が図5〜図8の例とは反対向きとなり、従って、ロータ34は、図5〜図8中に示す矢印とは逆方向(反時計回り)に継続的に回転することとなる。
[作用効果]
上記ドアロックシステム1の各ドアロック装置2A〜2E(ロック機構15)は、上述した通り、カム部材18の位置をストッパ25により機械的に規制するようにした上で、予め設定された時間(タイマー時間)だけモータ16に電流を供給してカム部材18を作動させるように構成されたタイマー制御型のドアロック装置である。このようなドアロック装置2A〜2Eでは、ストッパ25によりカム部材18の位置が規制された後も、依然として(タイマー時間が経過するまで)モータ16に電流が供給される期間が生じる。そのため、モータ16として、一般的な従来型のブラシ付きDCモータが適用されている場合には異音が発生する場合がある。この異音は、コイルに流れる電流値が変化することにより生じるいわゆる「コイル鳴き」を音源として、モータのケーシング(筐体)等が振動することにより生じるものであるが、当例では、上述したような構造を有するモータ16が適用されていことにより、そのような異音の発生が効果的に抑制される。以下、この点について詳細に説明する。
まず、従来の一般的なブラシ付きDCモータの構造について説明すると共に上記「コイル鳴き」の発生メカニズムについて、図13〜図18を用いて説明する。
図13は、従来のブラシ付きDCモータの内部構造の概略図である。同図に示す従来のブラシ付きモータ100(以下、モータ100と略す)は、2極3スロット型のブラシ付きモータである。このモータ100は、2つの界磁マグネット71、72を有するステータ70と、ロータ74と、一対のブラシ82a、82bとを備える。
ロータ74は、回転軸75と、外周に第1〜第3(図中に丸付き数字で示す)のティース77a〜77cを等間隔で備えたコア76と、第1〜第3のティース77a〜77cに各々装着される第1〜第3のコイル78a〜78cと、周方向に並ぶ3つのセグメント81a〜81cからなるコミテータ80とを含む。
コミテータ80の3つのセグメント81a〜81cは、隣接するティース間に対応する位置に設けられている。具体的には、第1ティース77aと第2ティース77bとの間に第2セグメント81bが、第2ティース77bと第3ティース77cとの間に第3セグメント81cが、第3ティース77cと第1ティース77aとの間に第1セグメント81aが設けられている。各ティース77a〜77cに装着される第1〜第3のコイル78a〜78cの巻回数及び巻回方向は同じであり、回転軸75に直交する方向に径方向外側から視たときに、各コイル78a〜78cは、何れも電線が反時計回り(CCW)に巻回されている。
前記一対のブラシ(第1ブラシ82a、第2ブラシ82b)は2つの界磁マグネット71、72の各々中心を通る直線Lb上に各々対向して配置されている。
以上のような従来のモータ100において、図13に示すように、コミテータ80の第3セグメント81cにのみ第2ブラシ82bが接触し、第2セグメント81bにのみ第2ブラシ82bが接触した状態で、第1ブラシ82aがプラス電極に、第2ブラシ82bがマイナス電極に接続された状態を想定する。
この状態で、図16(a)に示すように、コア76の第1ティース77aに装着された第1コイル78aの両端は、第1セグメント81aと第2セグメント81bとに接続され、第2ティース77bに装着された第2コイル78bの両端は、第2セグメント81bと第3セグメント81cとに接続され、第3ティース77cに装着された第3コイル78cの両端は、第3セグメント81cと第1セグメント81aとに接続されている。また、同図中に矢印で示すように、第1ブラシ82aから第2コイル78bを介して第2ブラシ82bに電流が流れるとともに、第1ブラシ82aから第3コイル78c及び第1コイル78aを介して第2ブラシ82bに電流が流れる。従って、図13に示すように、前記コア76のうち、第2コイル78bが装着された第2ティース77bがN極に磁化されとともに、第1、第3のコイル78a、78cが装着された第1、第3のティース77a、77cがS極に磁化される。これにより、磁化された第1〜第3の各ティース77a〜77cと界磁マグネット71、72との吸引及び反発により、ロータ74が図13中の矢印で示す方向(時計回り)の力を受けてその方向に回転する。
ロータ74が回転し、図13に示す状態から図14に示す状態に移行すると、第1ブラシ82aが第3セグメント81cにのみ接触した状態を維持しながら、第2ブラシ82bが第1セグメント81aと第2セグメント81bの両方に接触した状態(ブラシ跨ぎ状態)となる。この状態では、図17(a)中に矢印で示すように、第1コイル78aの両端が第1、第2のセグメント81a、81bを介してマイナス電極に接続された第2ブラシ82bに短絡する。そのため、第1コイル78aには電流が流れず、第2コイル78b及び第3コイル78cを各々介して第1ブラシ82aから第2ブラシ82bに電流が流れる。よって、第1ティース77aが磁化されることなく、第2ティース77bがN極に、第3ティース77cがS極に各々磁化された状態が維持される一方で、第1ティース77aが磁化されない状態となる。これにより、磁化された第2、第3のティース77b、77cと界磁マグネット71、72との吸引及び反発により、ロータ74が15中の矢印で示す方向(時計回り)の力を受けてその方向に回転する。
ロータ74がさらに回転し、図14に示す状態から図15に示す状態に移行すると、第3セグメント81cにのみ第1ブラシ82aが接触した状態を維持しながら、第1セグメント81aにのみ第2ブラシ82bが接触した状態となる。この状態では、図20(a)中に矢印で示すように、第1ブラシ82aから第2コイル78b及び第1コイル78aを介して第2ブラシ82bに電流が流れるとともに、第1ブラシ82aから第3コイル78cを介して第2ブラシ82bに電流が流れる。従って、図15に示すように、第2ティース77bがN極に、第3ティース77cがS極に各々磁化された状態が維持された状態で、第1コイル78aが装着された第1ティース77aがN極に磁化される。これにより、磁化された第1〜第3の各ティース77a〜77cと界磁マグネット71、72との吸引及び反発により、ロータ74が図15中の矢印で示す方向(時計回り)の力を受けてその方向に回転する。
このように、第1ブラシ82aがプラス電極に、第2ブラシ82bがマイナス電極に接続された状態では、図13〜図15において2つの界磁マグネット71、72の各々中心を通る直線Lbよりも上側に位置するティースは、S極の界磁マグネット71に向かう方向(同図では右側に向かう方向)の力を連続的に受ける一方、直線Lbよりも下側に位置するティースはN極の界磁マグネット72に向かう方向(同図では左側に向かう方向)の力を連続的に受ける。これにより、ロータ34は、図13〜図15中に矢印で示す方向(時計回り)に継続的に回転することとなる。
上記のように、周方向に等間隔で並んだ3つのティース77a〜77cにコイル78a〜78cが装着された従来のモータ100の構造では、ロータ74において、界磁マグネット71、73の中心部を通る直線Lbよりも上側に位置する部分に生じる磁力と直線Lbよりも下側に位置する部分に生じる磁力とがバランスし難い。例えば、図13、15に示す状態では、直線Lbを境にしてその両側に位置する磁化されたティースの数が異なるため、直線Lbを境としたロータ74の上下で磁力の不均衡が生じており、このような磁力の不均衡などに起因して、回転軸75には、これを回転させる方向の力とは別に、当該回転軸75と直交する方向の力が働き、その結果、回転軸75に軸振動が生じている。
このようなモータ100が上記FRドアロック装置2A(ロック機構15)に備えられている場合には、「コイル鳴き」や、当該「コイル鳴き」を音源とする「異音」が発生し得る。ストッパ25によりカム部材18の位置が規制された時点で、モータ100の回転軸75は一度止まるが、ストッパ25、カム部材18などの弾性力によりわずかに回転軸75は回転方向に押し戻される。回転軸75が一度止まった時点で、図15に示すように、第2ブラシ82bが第1セグメント81a及び第2セグメント81bの何れかにのみ接触した状態(非ブラシ跨ぎ状態)であって、セグメント間のスリット付近にあると、回転軸75が押し戻された時点で、図14に示す、モータ100において、第2ブラシ82bが第1セグメント81aと第2セグメント81bの両方に接触した状態(ブラシ跨ぎ状態)となる場合がある。
この場合、第1〜第3の各コイル78a〜78cは同一構造であるため、それらの抵抗値をRとすると、図17(b)に示すように、ブラシ跨ぎ状態におけるコイル78a〜78cの合成抵抗値は(1/2)Rであり、また、図16(b)、図18(b)に示すように、非ブラシ跨ぎ状態におけるコイル78a〜78cの合成抵抗値は(2/3)Rである。
つまり、ブラシ跨ぎ状態では、非ブラシ跨ぎ状態と比較して合成抵抗値が低く、入力電流が高いため、モータ100の回転力が増加する。このため、図15に示す非ブラシ跨ぎ状態に戻る場合がある。非ブラシ跨ぎ状態になるとモータ100の回転力は低下するとともに、ストッパ25などの弾性力により押し戻されて再び図14のブラシ跨ぎ状態になる場合がある。これらの現象が継続し、繰り返されることにより、接点部分でハンチング現象が発生する。ここで、前述したような磁力の不均衡などに起因した軸振動が生じている場合、コミテータ80には回転軸75と直交はする方向の力が働くため、ブラシ跨ぎ状態から非ブラシ跨ぎ状態、あるいは非ブラシ跨ぎ状態からブラシ跨ぎ状態へ遷移しやすくなり、接点部分(ブラシ、コミテータのセグメント)のハンチング現象を生じやすくなる。
また、この接点部分のハンチング現象によってコイル78a〜78cの合成抵抗値が変化し、これによりコイル78a〜78cに流れる電流値が変化することで、コイル鳴きが生じ、このコイル鳴きを音源としてモータ100のケーシング(筐体)等が振動することで異音が発生する。このような異音は、ストッパ25によりカム部材18の位置が規制された時点からタイマー5Bによる計時が終了してモータ100への給電が停止されるまで継続することとなる。
これが、従来の一般的なブラシ付きDCモータ(モータ100)を備えたドアロック装置(ロック機構)においてコイル鳴き、ひいては異音が発生するメカニズムである。
上述したモータ16を備える前記各ドアロック装置2A〜2E(ロック機構15)によると、このようなコイル鳴きや、当該コイル鳴きを音源とする異音の発生が効果的に抑制される。これは、上述したモータ16では、ロータ34における磁気バランスが、従来モータ100のロータ74に比べて良いためである。
すなわち、前記モータ16によると、ロータ34のうち、界磁マグネット31、32の中心部を通る直線Laよりも上側の部分と直線Laよりも下側の部分とが、ロータ34の回転角度位置に拘わらず、常に、回転軸25を中心とした互いに極性の異なる回転対称な構造となる(図5〜図8参照)。要するに、回転軸35を挟んで互いに対向する各ティースは、互いに逆の極性に磁化される。そのため、ロータ34のうち、直線Laよりも上側に位置する部分と直線Laよりも下側の部分の磁力とのバランスが常に確保される。これにより、回転軸35には、回転方向の力のみが働くこととなり、従来のモータ100で生じるような軸振動の発生が抑制されるのである。
従って、前記モータ16によれば、ストッパ25によりカム部材18の位置が規制された時点で、仮にモータ16が図5や図7に示すようなブラシ非跨ぎ状態で、ブラシがコミテータスリット付近で止まる状態となっていたとしても、従来のモータ100のようなハンチング現象が発生し難く、コイル鳴きや、当該コイル鳴きを音源とする異音の発生が効果的に抑制される。
このように、上記実施形態の各ドアロック装置2A〜2Eは、ブラシ付きDCモータからなる小型のモータ16を備えたタイマー制御型のドアロック装置であるが、上記の通り、コイル鳴きや、これを音源とする異音の発生を効果的に抑制することができる。従って、各ドアロック装置2A〜2Eのロック状態やアンロック状態への切り替えの際に、乗員に違和感や不快感を与えることを抑制することが可能となる。
特に、複数のドアロック装置を備えた車両では、各ドアロック装置のモータにおいてコイル鳴きや、当該コイル鳴きを音源とする異音の発生頻度が高くなる可能性があり、乗員に著しい違和感や不快感を与えかねことが予想されるが、上記実施形態の各ドアロック装置2A〜2Eによれば、そのような不都合を未然に回避することが可能となる。
なお、以上説明した各ドアロック装置2A〜2Fおよびこれらを含む上記ドアロックシステム1は、本発明に係る車両用駆動装置およびドアロックシステムの好ましい実施形態の例示であって、ドアロック装置(車両用駆動装置)やドアロックシステムの具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態のモータ16では、ロータ34が、6個のティース37a〜37fを有するコア36と、互いに隣接する2つのティースに亘って各々装着された、ティースと同数のコイル38a〜38fとを備えた構成である。しかし、ロータ34の構成は、これに限定されるものではない。例えば、コア36のティースの数は4個、又は8個以上であってもよい。要は、ロータ34は、周方向に等間隔で並ぶ4つ以上の偶数個のティースを備えており、互いに隣接する複数のティースに亘って各々装着された、ティースと同数のコイルを備える構成であれば、上記モータ16と同等の作用効果を享受することが可能である。なお、ティースの数が8個の場合、互いに隣接する3つのティースを跨ぐようにコイルが装着される。また、コミテータのセグメント数はティースの数と同数または半分である。但し、ティースが4個の場合には、界磁マグネット31、32に対する各ティース(コイル)の位置によっては、回転軸に回転方向の力が作用し難く、始動が困難となる場合があり、始動を考慮するとティースは6個以上が好適である。他方、ティースが8個以上の場合には、小型モータの場合、精度的にコア36の製造が難しくなる場合がある。従って、ティースの数は、上記実施形態のように6個であるのが好適である。
また、上記モータ16では、各ブラシ42a、42bは、界磁マグネット31、32の中心部を通る直線La上に配置されているが、これに限定されるものではない。各ブラシ42a、42bの位置は、回転軸35を中心として回転方向にずらして配置してもよく、例えば、前記直線Laと直交する直線上に配置されていてもよい。なお、その場合、ロータ34の各ティース(コイル)の励磁をモータ16と同じにする為、コミテータ40の各セグメント41a〜41cをロータ34に対して、各ブラシ42a、42bをずらした方向に、同角度ずらす必要がある。
また、上記実施形態では、本発明(車両用駆動装置)の適用例として車両のドアロック装置(2A〜2F)について説明したが、本発明は、車両のドアロック装置に限定されるものではなく、ドアミラー格納装置などの他の車両用駆動装置についても適用可能である。