以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態である回転電機10の径方向に沿った断面図である。本実施形態に係る回転電機10は、図示しないケーシングに固定されたステータ12と、ステータ12と所定の空隙を空けて対向配置されステータ12に対し回転可能なロータ14とを備える。図1では、ステータ12とロータ14とが回転軸15と直交する径方向において対向配置されたラジアル型の回転電機の例を示しており、ロータ14がステータ12の径方向内側に配置されている。
ステータ12は、ステータコア16と、ステータコア16に配設されたステータ巻線18とを含む。ステータコア16には、径方向内側へ(ロータ14へ向けて)突出した複数のティース20が回転軸15まわりの周方向に沿って互いに間隔をおいて配列されており、各ティース20間にスロット22が形成されている。つまり、ステータコア16には、複数のスロット22が周方向に互いに間隔をおいて形成されている。
ステータ巻線18は、U相、V相及びW相の三相ステータ巻線18u,18v、18wを含む。各相のステータ巻線18u,18v,18wは、スロット22を通ってティース20に分布巻で巻装されている。本実施形態では、周方向に隣接する2つのスロット22にU相ステータ巻線18uを構成する導線が配置される。このU相ステータ巻線18uに周方向に隣接する2つのスロット22に、V相ステータ巻線18vを構成する導線が配置される。また、このV相ステータ巻線18vに周方向に隣接する2つのスロット22に、W相ステータ巻線18wを構成する導線が配置されている。このようにステータ12には、周方向において隣接する2つのスロット22ごとにU相、V相、及び、W相のステータ巻線18u,18v,18wが順次に全周にわたって配設されている。
このように構成される三相のステータ巻線18u,18v,18wに三相交流電流が通電されると、ティース20が周方向に順次磁化し、周方向に回転する回転磁界をティース20に形成することができる。ティース20に形成された回転磁界は、その先端面からロータ14に作用してロータ14に回転トルクを生じさせる。
ロータ14は、回転軸15と、回転軸15の外周に固定されたロータコア24とを備える。ロータコア24は、例えば、円盤状に打ち抜き加工された磁性鋼板を軸方向に積層して一体に連結することにより構成される。
ロータ14は、永久磁石を起磁力とする第1磁極部26と、界磁巻線32に流れる直流電流を起磁力とする第2磁極部28とを有している。ロータ14は、第1磁極部26及び第2磁極部28がロータ周方向に交互に配置される。
第1磁極部26は、ロータコア24に固定された永久磁石によって構成される。永久磁石は、周方向外側の極性がN極の永久磁石26nと、周方向外側の極性がS極の永久磁石26sとを含む。永久磁石26nと永久磁石26sとは、ロータ周方向に等間隔で交互に配置されている。本実施形態では、8つの永久磁石26n,26sが設けられており、周方向に隣り合う各1つの永久磁石26n,26sによって1つの磁極対が構成される。したがって、本実施形態におけるロータ14は、4つの磁極対を含んで構成される。なお、各永久磁石26n,26sは、ロータコア24の外周面に露出した状態で設けられてもよいし、あるいは、ロータコア24の外周近傍の内部に埋め込まれていてもよい。
ロータ14の第2磁極部28は、ロータコア24の外周であって各永久磁石26n,26sの間に形成された突極部30に界磁巻線32が巻装されて構成される。本実施形態では、各磁極対ごとに2つの第2磁極部28、合計で8つの第2磁極部28が設けられた例が示される。第2磁極部28の界磁巻線32には、回転電機10の外部からブラシおよびスリップリング(いずれも図示せず)を介して界磁電流を供給することができる。ここで、界磁巻線32に流れる界磁電流は直流電流である。
このように本実施形態のロータ14では、第1磁極部26と第2磁極部28は周方向に交互に配置されて、位相差が付けられている。具体的には、第1磁極部26と第2磁極部28とは、電気角90度に相当する位相差がある。
図1に示す界磁巻線32において、○の中に黒丸(・)を示す記号は界磁巻線32を構成する導線に紙面奥側から手前方向に界磁電流が流れることを表しており、○の中に×を示す記号は界磁巻線32を構成する導線に紙面手前方向から奥側に界磁電流が流れることを表している。図1では、周方向に永久磁石26n又は26sを挟んで隣り合う2つの第2磁極部28において界磁電流の流れ方向が逆方向になるように構成される。そのため、界磁巻線32に界磁電流が流れることによって突極部30が電磁石となり、突極部30の外周側端部が周方向で交互にN極とS極に磁化される。これにより、第1磁極部26の永久磁石26n,26sからの磁束に、電磁石となった第2突極部28から生じる磁束が加わることで、磁束量および磁束密度が増加する。その結果、ステータ12によって生成される回転磁界との吸引および反発で生じる回転トルクが増大させることができる。また、界磁巻線32に流れる界磁電流の値を制御することで、回転トルクの増大量を調整することが可能である。このように本実施形態の回転電機10では、ステータ12による回転磁界と、界磁巻線32に流れる界磁電流(直流電流)によって生じる界磁との相互作用によってロータ14に回転トルクが発生する。その結果、ロータ14が回転する。
図2は、比較例の回転電機10Aの径方向断面図である。以下において、比較例の回転電機10Aの構成は、第2磁極部の有無を除いて、上述した本実施形態の回転電機10と同様である。したがって、下記では、回転電機10Aの構成のうち上記回転電機10と同一構成には同一符号を付して、重複することになる説明を適宜に省略する。
図2に示すように、回転電機10Aのロータ14Aは、ロータコア24の外周に8つの永久磁石26n,26sが周方向で交互に配置されており、この点は上記回転電機10におけるロータ14と同じである。一方、ロータ14Aには、界磁巻線が設けられておらず、周方向に隣り合う2つの永久磁石26n,26sの間にはロータコア24の外周に形成された突極部30aが配置されている。このような構成を有するロータ14Aを備えた回転電機10Aでは、突極部30aがリラクタンス磁極となり、ステータ12で生成された回転磁界によって吸引力が作用して、リラクタンストルクが発生する。したがって、この場合には永久磁石26n,26sによって構成される磁石磁極がステータ12の回転磁界に対して吸引及び反発することで生じる磁石トルクと上記リラクタンストルクとの和である総トルクがロータ14Aに発生する回転トルクとなる。
また、図2に示すように、回転電機10Aでは、ロータ14Aにおいて突極部30aの周方向中央位置を通る径方向(d軸方向)線を電気角0度とした場合、これに周方向で隣接する永久磁石26s(または26n)の周方向中央位置を通る径方向(q軸方向)線は電気角90度に相当する。なお、この点は、第1磁極部26と第2磁極部28とで電気角90度に相当する位相差が存在する本実施形態の回転電機10と同様である。
図3は、図2の回転電機10Aにおけるステータ巻線18の電流進角とトルクとの関係を示すグラフである。図3において、横軸は、ステータ巻線18に流れる交流電流の電流進角を表し、縦軸が回転トルクを表している。図3において、ステータ12による回転磁界が永久磁石26n,26sと吸引及び反発することによって生成される磁石トルクが破線で示され、ステータ12による回転磁界が永久磁石26n,26s間の突極部30aに作用する吸引力によって生成されるリラクタンストルクが一点鎖線で示され、これらの磁石トルクとリラクタンストルクの和である総トルクが実線で示されている。
図3に示すように、磁石トルクは電流進角0度の正の最大値から次第に小さくなり、電流進角90度で0になり、電流進角180度で負の最小値となる。リラクタンストルクは、電流進角0度から次第に大きくなり、電流進角45度で正の最大値となり、そこから次第に小さくなって電流進角90度で0となる。そして、リラクタンストルクは、電流進角135度で負の最小値となり、そこから次第に大きくなって電流進角180度で0となる。また、磁石トルクとリラクタンストルクの和である総トルクは、電流進角0度から次第に大きくなり、電流進角30度付近で正の最大値となる。そこから、総トルクは、次第に小さくなり、電流進角90度で0になり、電流進角150度付近で負の最小値となり、そこから次第に大きくなる。
図3から明らかなように、ロータ14Aに作用する回転トルクである総トルクは、電流進角90度で0になる。ステータ巻線18に供給される三相交流電流のうち、例えば断線やインバータ故障等が原因で或る一相(例えば、V相)のステータ巻線18に交流電流を供給できず、残りの二相のステータ巻線18にしか交流電流が供給されない事態が生じた場合には、ステータ12によって発生される磁界は回転磁界とはならず、電流位相角90度の向きにおいて磁束流れ方向が変わる交番磁界が生じるだけになる。そのため、このような場合には、電流進角90度で総トルクが0になることからロータ14Aに回転トルクを発生することができなくなる。
このようなことは図1を参照して説明した本実施形態の回転電機10でも起こり得る。しかし、本実施形態の回転電機10では、ロータ14に、界磁巻線32に流れる直流電流を起磁力とする第2磁極部28が第1磁極部26に対して周方向に隣接して設けられている。したがって、界磁巻線32に流れる界磁電流を流れ方向を図1に示す状態から反対方向に切り替えることで、電流進角90度の場合にもロータ14に回転トルクを作用させることが可能になる。
図4は、図1の回転電機10において界磁巻線32に界磁電流が図1とは反対方向に流れる状態を示す図である。図4に示すように、界磁巻線32において界磁電流の流れ方向を示す記号が、○中に黒丸(・)の記号から○中に×の記号に、または、これとは逆に変わっている。このような界磁電流の流れ方向の変更は、回転電機10の外部からブラシおよびスリップリングを介して直流電流が供給される場合、回転電機10の外部に設けられるスイッチ手段(図示せず)を切り替えることによって実現できる。このように界磁電流の流れ方向が反対方向になることで、第2磁極部28において突極部30の外周側端部の極性が、例えば、N極からS極に、又は、S極からN極に切り替わることになる。
図5Aは、図1に示す方向に界磁電流が流れるときのステータ巻線18の電流進角とトルクとの関係を示すグラフである。図5Bは、図4に示す方向に界磁電流が流れるときのステータ巻線18の電流進角とトルクとの関係を示すグラフである。図5A及び図5Bの各グラフにおいて、横軸は、ステータ巻線18に流れる交流電流の電流進角を表し、縦軸が回転トルクを表している。また、図5A及び図5Bの各グラフにおいて、ステータ12による回転磁界がロータ14の第1磁極部26と吸引及び反発することによって生成される磁石トルクが破線で示され、ステータ12による回転磁界がロータ14の第2磁極部28と吸引及び反発することによって生成される電磁石トルクが一点鎖線で示され、これらの磁石トルクと電磁石トルクの和である総トルクが実線で示されている。
ロータ14の界磁巻線32に図1に示した方向に界磁電流が流れるとき、回転電機10のロータ14に作用する回転トルクは図5Aに示すようになる。すなわち、磁石トルクは、電流進角0度における正の最大値から次第に小さくなって電流進角90度で0になり、そして、そこから更に小さくなって電流進角180度で負の最小値となる。一方、電磁石トルクは、電流進角0度で0であり、そこから次第に大きくなって電流進角90度で正の最大値となる。そして、電磁石トルクは、そこから次第に小さくなって電流進角180度で0になる。その結果として、総トルクは、電流進角0度から次第に大きくなって電流進角30度辺りで正の最大値となる。そして、総トルクは、次第に小さくなって電流進角120度辺りで0になり、そこから更に小さくなって負の値になっていく。
このように総トルクが変化する状態において、ステータ巻線18に供給される三相交流電流のうち、例えば断線やインバータ故障等が原因で或る一相のステータ巻線18に交流電流を供給できず、残りの二相のステータ巻線18にしか交流電流が供給されない事態が生じた場合には、ステータ12によって発生される磁界は回転磁界とはならず、電流位相角120度の向きにおいて磁束流れ方向が変わる交番磁界が生じることが生じ得る。このような場合には、電流進角120度で総トルクが0になることからロータ14に回転トルクを発生させることができなくなる。なお、ステータ巻線18に供給される三相交流電流は電流進角がそれぞれ120度ずつずれた例えば正弦波状の交流電流であり、各相の交流電流は電流センサによって検出され制御装置において監視されている。したがって、三相交流電流のうち或る一相の交流電流が流れない状態になったことは電流センサによる検出値に基づいて制御装置が判定することができる。
このように一相の交流電流が流れなくなって残り二相の交流電圧によって生成される磁界が電流進角120度辺りで交番する交番磁界になったとき、制御装置から指令に応じてスイッチ手段を切り替えることによって界磁巻線32における界磁電流の流れ方向を反対方向に変更する。すなわち、界磁電流は図1に示す流れ方向から図4に示す流れ方向に切り替えられる。これにより、回転電機10においてロータ14に作用する回転トルクは、図5Bのグラフに示す状態になる。
図5Bを参照すると、磁石トルクは変化していないが、電磁石トルクは図5Aに示す状態から反転した状態に変化している。すなわち、電磁石トルクは、電流進角0度で0であり、そこから次第に小さくなって電流進角90度で負の最小値となり、そこから次第に大きくなって電流進角180度で0になる。その結果として、磁石トルクと電磁石トルクの和である総トルクは、電流進角0度から次第に小さくなって電流進角70辺りで0になり、そこから更に小さくなって電流進角150度辺りで負の最小値となる。
このように界磁電流の流れ方向が逆方向になって総トルクが0になる不動角が電流進角約120度から約70度に変化する。これにより、電流進角120度で不動状態にあったロータ14に回転トルクを作用させることができる。その結果、回転電機10が搭載された車両を例えば路肩に移動させる退避走行を行うことが可能になる。
なお、上記においては界磁巻線32に流れる界磁電流の流れ方向を回転電機10の外部のスイッチング手段により変更すると説明したが、これに限定されない。例えば、界磁巻線32に一方向に界磁電流を流すのを許容する第1のダイオードと、反対方向に界磁電流を流すのを許容する第2のダイオードとを並列に接続し、これらの第1及び第2のダイオードにスイッチ手段をそれぞれ直列接続した回路構成としてもよい。この場合、ステータによる回転磁界に含まれる高調波成分の作用によって界磁巻線に誘起電流が流れることになる。したがって、第1及び第2のダイオードに直列に接続されている各スイッチ手段を切り替え制御することで、界磁巻線に流れる界磁電流の流れ方向を変更することができる。
<第2実施形態>
次に、図6ないし図12Bを参照して第2実施形態の回転電機10Bについて説明する。図6は、第2実施形態の回転電機10Bの軸方向に沿った断面図である。図7は、図6に示す回転電機10Bを構成するロータ14Bの斜視図である。図8は、図7中のG−G断面図である。図9は、図6に示す回転電機10Bを構成するステータ12Bの斜視図である。図10は、図6に示す回転電機10Bにおいて、強め界磁制御を行う場合を説明するための図7のE−E断面相当図である。図11は、図6に示す回転電機10Bにおいて、弱め界磁制御を行う場合を説明するための図7のF−F断面相当図である。
図6に示すように、回転電機10Bは、ロータ14Bと、ロータ14Bの外径側に配置されたステータ12Bとを含む。ロータ14Bは、非磁性の回転軸15を介してケーシング40に対し軸受により回転可能に支持される。
ロータ14Bは、ラジアルロータ42と、2つのアキシャルロータ44,46とを有する。ラジアルロータ42は、ロータ14Bの軸方向中間部に形成され、ステータ12Bと空隙(エアギャップ)を介して半径方向に対向する。2つのアキシャルロータ44,46は、ロータ14Bの軸方向両端部に形成され、ステータ12Bの軸方向両端とロータ回転軸線と平行方向である軸方向に対向する。ラジアルロータ42及びアキシャルロータ44,46は、機械的かつ磁気的に連結されている。
ラジアルロータ42は、円筒状のラジアルコア部48の外周部において周方向等間隔の複数位置に配置された複数のラジアル磁石50を含む。ラジアル磁石50は、永久磁石により構成される。ラジアル磁石50は、半径方向に互いに同方向に着磁され、各ラジアル磁石50の表面は、同じ極性(例えばN極)に着磁される。また、ラジアルコア部48の外周部において、隣り合うラジアル磁石50の間には、半径方向外側に突出するラジアル突極部52が形成される。このようにラジアルコア部48は、ラジアル磁石50とラジアル突極部52とを含むコンシクエントポール構造を備えている。本実施形態では、ラジアル磁石50が第1磁極部に相当し、ラジアル突極部52が第2磁極部に相当する。
図7及び図8に示すように、ラジアル磁石50とラジアル突極部52との間には溝状の空隙53が設けられている。本実施形態において、空隙53は、ラジアル突極部52に対し時計回り方向側に接して形成されている。この場合、1つのラジアル磁石50の周方向幅と1つのラジアル突極部52の周方向幅の和は電気角180度よりも小さくなるように設定されている。また、この場合、ラジアル突極部52の周方向幅は、ラジアル磁石50の周方向幅よりも小さくなっている。空隙53は、ラジアル突極部52に比べて磁気抵抗が大きい。そのため、空隙53が設けられることで、ラジアル突極部52の周方向位置の位相が、空隙53が設けられていない場合よりも反時計回り方向へずれることになる。つまり、ロータ14Bでは、ロータ14Bを構成するラジアルコア部48と空隙53との磁気抵抗差を用いてラジアル突極部52の周方向の位相がずらされている。その結果、後述するように界磁巻線62,64に流れる界磁電流の流れ方向を反転させると、ロータ14Bに作用する回転トルクが0になるステータ巻線66の電流進角をずらすことが可能になる。
なお、本実施形態では、ラジアル突極部52の時計回り方向側に空隙53を設けてラジアル突極部52の周方向の位相を反時計回り方向側へずらした場合を例示したが、これに限定されない。ラジアル突極部52の反時計回り方向側に空隙を設けて、ラジアル突極部52の周方向の位相を時計回り方向側へずらしてもよい。また、上記では空隙53を設けることによりラジアル突極部52の周方向幅をラジアル磁石50の周方向幅よりも小さくする例について説明したが、これに限定されない。空隙を設けることによりラジアル磁石50の周方向幅をラジアル突極部52よりも小さくなるようにして、ラジアル磁石50の周方向の位相をずらしてもよい。
図6及び図7に示すように、アキシャルロータ44,46は、円板状のアキシャルコア部54において、ステータ12Bと回転軸方向に対向する内側面に配置された複数のアキシャル磁石56を含む。アキシャル磁石56は、永久磁石により構成される。複数のアキシャル磁石56は、アキシャルコア部54の内側面において、周方向等間隔の複数位置に配置される。アキシャル磁石56は、回転軸方向に互いに同方向に着磁され、各アキシャル磁石56の表面は、同じ極性(例えばS極)に着磁される。また、アキシャルコア部54の外周部において、隣り合うアキシャル磁石56の間には、回転軸方向において、ステータ12B側に突出するアキシャル突極部58が形成される。このようにアキシャルコア部54は、それぞれ複数のアキシャル磁石56とアキシャル突極部58とを含むコンシクエントポール構造を備えている。本実施形態では、アキシャル磁石56が第1磁極部に相当し、アキシャル突極部58が第2磁極部に相当する。
ラジアル磁石50は、各アキシャルロータ44,46のアキシャル磁石56と同数で設けられ、ラジアル突極部52も、各アキシャルロータ44,46のアキシャル突極部58と同数で設けられる。アキシャル磁石56は、ラジアル磁石50に対して周方向に関する位置をずらして配置され、アキシャル突極部58も、ラジアル突極部52に対して周方向に関する位置をずらして配置される。そして、アキシャル磁石56とラジアル突極部52とが、周方向に関して同じ位置に配置される。また、アキシャル突極部58とラジアル磁石50とが、周方向に関して同じ位置に配置される。また、各アキシャル磁石56の表面(ステータ12Bと対向する磁極面)は、各ラジアル磁石50の表面(ステータ12Bと対向する磁極面)と逆の極性に着磁される。例えば、各ラジアル磁石50の表面がN極に着磁される場合、各アキシャル磁石56の表面はS極に着磁される。なお、各ラジアル磁石50の表面がS極に着磁され、各アキシャル磁石56の表面がN極に着磁されてもよい。
図示していないが、図8を参照して説明したラジアルコア部48の場合と同様に、アキシャルコア部54においても、空隙を設けることによってアキシャル突極部58又はアキシャル磁石56の周方向の位相をずらしてもよい。
図6及び図9に示すように、回転電機10Bのステータ12Bは、環状のコア部60と、2つの界磁巻線62,64と、三相のステータ巻線66とを含んで構成される。コア部60は、内周面の周方向等間隔の複数位置において、半径方向内側に突出するように複数のラジアルティース60aが形成される。また、コア部60の軸方向両端部において、周方向に関してラジアルティース60aと同位置には、複数のアキシャルティース60bが回転軸方向外側に突出するように形成される。三相のステータ巻線66は、ラジアルティース60a間のスロット及びアキシャルティース60b間のスロットを通って(例えば分布巻等で)トロイダル巻きされる。環状のコア部60、ラジアルティース60a、及びアキシャルティース60bを含むステータ12Bの鉄心部分は、磁性材製の粉末が樹脂等のバインダで一体化されたものでもよい。以下において、ステータ巻線を三相コイルということがある。
また、ステータ12Bのコア部60において、複数のラジアルティース60aの軸方向両端部であって、複数のアキシャルティース60bの半径方向内端部に位置する部分には、段部が形成される。また、コア部60の軸方向両端部には、複数の段部の内側に位置するように、円環状の界磁巻線62,64が配置される。これにより、界磁巻線62,64は、半径方向に関して各アキシャルティース60bよりもラジアルロータ42側(径方向内側)であって、回転軸方向に関して各ラジアルティース60aよりもアキシャルロータ44,46側(回転軸方向外側)に配置される。また、界磁巻線62,64は、ステータ12Bのコア部60の軸方向端部であってアキシャルコア部54に対向する位置でステータ周方向に沿って巻回されている。
また、界磁巻線62,64は、各ラジアルティース60a、各アキシャルティース60b、及び各ステータ巻線66と近接して配置される。界磁巻線62,64は、絶縁体によりステータ巻線66と電気的に絶縁される。また、界磁巻線62,64は、ステータ12Bに対し、例えば、図9に示すように、ステータ巻線66の上から繊維68等で縛ることで固定してもよいし、あるいは、ステータ全体を樹脂でモールドすることにより固定してもよい。
界磁巻線62,64に直流電流が流れることで、ロータ14Bに界磁を作り、ロータ14Bのラジアルロータ42のラジアルコア部48及びアキシャルロータ44,46のアキシャルコア部54が電磁石となる。その結果、ラジアルロータ42及びアキシャルロータ44,46と、ステータ12Bのコア部60とを通る界磁磁束が発生する。ステータ巻線66に交流電流が流れることでロータ14Bの界磁との相互作用により回転トルクを発生させる磁界を形成する。ラジアルロータ42では、界磁巻線62,64に直流電流が流れることでラジアル突極部52が電磁石となる。アキシャルロータ44,46では、界磁巻線62,64に直流電流が流れることで、アキシャル突極部58がラジアル突極部52とは逆の極性に磁化された電磁石となる。
例えば、図7に例示するロータ14Bを備えた回転電機10Bでは、ラジアル磁石50及びアキシャル磁石56による界磁磁束は、ラジアル磁石50→エアギャップ→ラジアルティース60a→コア部60の環状部分→アキシャルティース60b→エアギャップ→アキシャル磁石56に達する。そして、ラジアル磁石50及びアキシャル磁石56による界磁磁束は、アキシャル磁石56→アキシャルコア部54→ラジアルコア部48→ラジアル磁石50に達するように閉磁路を通る。
さらに、界磁巻線62,64に直流電流を流すことでロータ14Bのラジアルコア部48及びアキシャルコア部54が電磁石となって界磁磁束が発生する。この直流電流による界磁磁束は、ラジアル突極部52、ラジアルコア部48、アキシャルコア部54、アキシャル突極部58、エアギャップ、アキシャルティース60b、コア部60、ラジアルティース60a、エアギャップ、及び、ラジアル突極部52を順に通る。そして、この界磁磁束は、ステータ巻線66に交流電流を流すことでステータ12Bに発生する回転磁界と相互作用する。その際に、各ラジアル突極部52の表面は互いに同じ極性に磁化し、各アキシャル突極部58の表面は互いに同じ極性に磁化する。また、各アキシャル突極部58の表面は、各ラジアル突極部52の表面と逆の極性に磁化する。界磁巻線62,64による界磁磁束の方向は、界磁巻線62,64に流す直流電流の向きにより制御できる。
強め界磁制御を行う場合は、図10及び図11に示すように、各界磁巻線62,64に直流電流(界磁電流)を流す。図10及び図11において、白丸の中に黒丸(・)を付した部分は紙面の手前方向に電流が流れる場合を表し、白丸の内側に×を付した部分は紙面の奥側に電流が流れる場合を表す。このとき、各ラジアル突極部52の表面が各ラジアル磁石50の表面とは逆の極性(例えばS極)に磁化し、各アキシャル突極部58の表面が各アキシャル磁石56の表面とは逆の極性(例えばN極)に磁化する。これによって、界磁巻線62,64による界磁磁束は、アキシャル突極部58→エアギャップ→アキシャルティース60b→コア部60の環状部分→ラジアルティース60a→エアギャップ→ラジアル突極部52に達する。そして、この界磁磁束は、ラジアル突極部52→ラジアルコア部48→アキシャルコア部54→アキシャル突極部58に流れるように、閉磁路を通る。図10及び図11において、白丸内に「→E」を示す部分は断面E−E(図10)へ磁束が流れる場合を表し、白丸内に「E→」を示す部分は断面E−E(図10)から磁束が流れ込む場合を表す。白丸内に「→F」を示す部分は断面F−F(図11)へ磁束が流れる場合を表し、白丸内に「F→」を示す部分は断面F−F(図11)から磁束が流れ込む場合を表す。この場合には、界磁巻線62,64による界磁磁束とラジアル磁石50及びアキシャル磁石56による界磁磁束とが、コア部60の環状部分を周方向に通るときに互いに同方向となる。そのため、界磁巻線62,64に直流電流を流さない場合よりもステータ巻線66に鎖交する界磁磁束が増加する。したがって、強め界磁制御を行うことが可能である。
一方、弱め界磁制御を行う場合には、図10及び図11に示す場合とは、界磁巻線62,64に逆方向の直流電流を流す。この場合には、界磁巻線62,64による界磁磁束とラジアル磁石50及びアキシャル磁石56による界磁磁束とが、コア部60の環状部分を周方向に通るときに互いに逆方向となる。そのため、界磁巻線62,64に直流電流を流さない場合よりもステータ巻線66に鎖交する界磁磁束が減少する。したがって、弱め界磁制御を行うことが可能である。
図12Aは、図6に示す回転電機10Bにおいて強め界磁制御を行った場合の界磁巻線62,64を流れる交流電流の電流進角とトルクとの関係を示すグラフである。図12Bは、図6に示す回転電機10Bにおいて弱め界磁制御を行った場合の界磁巻線62,64を流れる交流電流の電流進角とトルクとの関係を示すグラフである。図12A及び図12Bの各グラフに示される横軸、縦軸、及び各曲は図5A及び図5Bと同様である。
回転電機10Bにおいて強め界磁制御が行われる場合、ロータ14Bに作用する回転トルクは図12Aに示すようになる。具体的には、磁石トルクは、電流進角0度で正の最大値となり、そこから次第に小さくなって電流進角90度で0となる。それから、磁石トルクは、さらに次第に小さくなって、電流進角180度で負の最小値となる。また、電磁石トルクは、磁石トルクに比べて正の最大値および負の最小値がそれぞれ1/2になるが、電流進角との関係はほぼ同様であり、電流進角90度で0となる。したがって、磁石トルクと電磁石トルクの和である総トルクもまた、電流進角0度で正の最大値となり、そこから次第に小さくなって電流進角90度で0となり、それからさらに次第に小さくなって電流進角180度で負の最小値となる。
本実施形態において、ステータ巻線66に供給される三相交流電流のうち、例えば断線やインバータ故障等が原因で或る一相のステータ巻線66に交流電流を供給できず、残りの二相のステータ巻線66にしか交流電流が供給されない事態が生じた場合には、ステータ12Bによって発生される磁界は回転磁界とはならず、電流進角90度の向きにおいて磁束流れ方向が変わる交番磁界が生じることが生じ得る。このような場合には、電流進角90度で総トルクが0になることからロータ14Bに回転トルクを発生することができなくなる。なお、本実施形態においても、三相交流電流のうち或る一相の交流電流が流れない状態になったことは電流センサによる検出値に基づいて制御装置が判定することができる。
このように一相の交流電流が流れなくなって残り二相の交流電流によって生成される磁界が電流進角90度で交番する交番磁界になったとき、制御装置から指令に応じてスイッチ手段を切り替えることによって界磁巻線62,64における界磁電流の流れ方向を反対方向に変更する。すなわち、回転電機10Bにおいて、強め界磁制御から弱め界磁制御に切り替えられる。これにより、回転電機10Bにおいてロータ14Bに作用する回転トルクは、図12Bのグラフに示す状態になる。
図12Bを参照すると、磁石トルクは変化していないが、電磁石トルクは図12Aに示す状態から反転した状態に変化している。すなわち、電磁石トルクは、電流進角0度から次第に大きくなって電流進角80度付近で0となり、そこから更に次第に大きくなって電流進角170度付近で正の最大値となる。その結果として、磁石トルクと電磁石トルクの和である総トルクが0になる電機進角は、90度から100度付近に変更される。このように界磁電流の流れ方向が逆方向になって総トルクが0になる不動角が電流進角約90度から約100度に変化する。これにより、電流進角90度で不動状態にあったロータ14Bに回転トルクを作用させることができる。その結果、回転電機10Bが搭載された車両を例えば路肩に移動させる退避走行を行うことが可能になる。
なお、本発明に係る回転電機は、上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。