JP2021116431A - ブロックイソシアネート組成物、ブロックイソシアネート組成物を含有する粉体組成物、ブロックイソシアネート組成物の製造方法、ブロックイソシアネート組成物を含有する粉体組成物の製造方法、及び、ブロックイソシアネート組成物を含有するパウダーコーティング剤 - Google Patents

ブロックイソシアネート組成物、ブロックイソシアネート組成物を含有する粉体組成物、ブロックイソシアネート組成物の製造方法、ブロックイソシアネート組成物を含有する粉体組成物の製造方法、及び、ブロックイソシアネート組成物を含有するパウダーコーティング剤 Download PDF

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Abstract

【課題】ブロック剤としてε−カプロラクタムを使用した場合のような問題を発生しないブロック剤を使用し、かつ、黄変の問題を発生しないポリイソシアネート成分を当該ブロック剤によりブロックしたブロックイソシアネートであっても固形化及び粉末化が可能となるようにする。【解決手段】ブロックイソシアネート組成物は、イソシアネート化合物と熱解離性ブロック剤とから合成されたブロックイソシアネート組成物であって、前記熱解離性ブロック剤が、アンモニアからなる第1のブロック剤と、前記第1のブロック剤と異なる第2のブロック剤とからなる。【選択図】図1

Description

本発明は、ブロックイソシアネート組成物、ブロックイソシアネート組成物を含有する粉体組成物、ブロックイソシアネート組成物の製造方法、ブロックイソシアネート組成物を含有する粉体組成物の製造方法、及び、ブロックイソシアネートを含有する粉体塗料組成物に関し、特に、粉体塗料を含む被覆材料(コーティング材料)や接着剤等の粉体材料に適用可能な、粉体状のブロックイソシアネート組成物、粉体状のブロックイソシアネート組成物を含有する粉体状の粉体組成物、粉体状のブロックイソシアネート組成物の製造方法、及び粉体状のブロックイソシアネート組成物を含有する粉体状の粉体組成物の製造方法、並びに、粉体状のブロックイソシアネートを含有する粉体塗料組成物等のパウダーコーティング剤に関する。
従来、ブロックイソシアネートを硬化剤として使用する塗料として、液体塗料の他、粉体塗料がある。このうち、液体塗料は、有機溶剤が環境中(大気中)に飛散し皮膜(コーティング層)を形成しない要素となり、無駄な要素となることに加え、近年のVOC(揮発性有機化合物)の排出に関する規制や環境配慮の観点から、有機溶剤を含まない粉体塗料が注目されている。
かかる粉体塗料については、例えば、特許文献1(特開昭54−40382号公報)、特許文献2(特開昭60−13862号公報)、特許文献3(特開昭57−78460号公報)、特許文献4(特開平6−179840号公報)、及び特許文献5(特表平3−504140号公報)に、それぞれ、関連する記載がある。
特許文献1には、ポリイソシアネート成分としてのイソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」ということがある。)を、ブロック剤としてのε−カプロラクタムでブロックしたブロックイソシアネートを硬化剤として使用した、粉末ポリウレタン塗料が開示されている。(同文献の「特許請求の範囲」及び第1頁参照。)
しかし、特許文献1に記載のように、IPDIをε−カプロラクタムでブロックしたブロックイソシアネートを硬化剤として使用した粉体塗料の場合、ブロック剤のε−カプロラクタムに起因する問題として、粉体塗料を被塗物(被着物)に塗布して加熱する焼き付け工程で、粉体塗料中のブロックイソシアネート成分からε−カプロラクタムが熱解離した後に、この熱解離後のε−カプロラクタムが相当量で発生して大気中に放出されることに起因する問題がある。例えば、通常、被塗物への粉体塗料の塗装作業は、製造プラントの容器(炉)の内部空間で実施されるが、粉体塗料の被塗物への塗布後の焼き付け工程で、上記のように粉体塗料から放出されたε−カプロラクタムが、製造プラントの容器内へ付着等してヤニとなり、そのヤニによる製造プラントの容器内の汚染等の問題を発生することがあった。
したがって、このような問題を防止すべく、ポリイソシアネート成分のブロック剤としてε−カプロラクタムのような問題を発生しないブロック剤を使用したブロックポリイソシアネートの開発が望まれる。
一方、粉体塗料は、被塗物への焼き付け塗装後に所望の色を発現するために、当該色を発現する所定の顔料を混合している。しかし、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」ということがある。)のように1分子中にベンゼン環を有するポリイソシアネートは、加熱によりそれ自身が黄変するため、そのようなポリイソシアネート成分からなるブロックポリイソシアネートを粉体塗料の硬化剤として使用した場合、ポリイソシアネート成分の黄変に起因して、粉体塗料が顔料による固有の色を発現することができないという問題が発生する。
したがって、粉体塗料の硬化剤のブロックポリイソシアネートを構成するポリイソシアネート成分としては、IPDIやHDIのように(1分子中にベンゼン環を有せず)加熱によって黄変しないポリイソシアネート成分、例えば、脂肪族ポリイソシアネート(例えば、HDI)や脂環式ポリイソシアネート(例えば、IPDI)等の無黄変性のポリイソシアネートを使用する必要がある。
特開昭54−40382号公報 特開昭60−13862号公報 特開昭57−78460号公報 特開平6−179840号公報 特表平3−504140号公報
しかし、IPDIに関しては、ブロック剤として上記のε−カプロラクタム以外のものを使用したブロック化IPDIの場合、IPDIをε−カプロラクタムによりブロックしたブロック化IPDIと同様の固形化が実現できないことが知られている。
また、HDIに関しては、特許文献2及び特許文献3に記載のように、HDI自体の性質に起因する問題により、ブロック化HDIの固形化(及び粉末化)が困難若しくは不可能であることが知られている。即ち、特許文献2及び特許文献3によれば、HDI及び/又はその付加物(HDIとIPDIとの混合三量体)をブロックした状態でポリウレタン粉末塗料に用いる試みがあるものの、HDIを単体で粉末硬化剤として用いることが不可能であることが確認されている。(特許文献2の第2頁左下欄第2行目−右下欄第6行目、並びに、特許文献3の第2頁右下欄第8行目−第3頁左上欄第1行目、特許文献3の第4頁右上欄第29行目−左下欄第3行目、及び、特許文献3の第7頁右下欄第7行目−第18行目参照。)
また、特許文献4には、(特許文献3と同様)HDIを粉体塗料の硬化剤であるブロックポリイソシアネートのポリイソシアネート成分として使用したポリウレタン粉末塗料が開示されているが、(HDIは、上記のように、単独で固形化できないことが知られているため、)HDIを単独で使用するものではなく、HDIとIPDIとの混合三量体を、ブロック剤としてのケトキシム(アセトンオキシム、ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム)でブロックしたブロックイソシアネートを硬化剤として使用している。(「要約」、及び、段落[0001]−[0004]、段落[0014]参照。)
なお、特許文献5には、テトラメチルキシレンジイソシアネート(以下、「TXMDI」ということがある。)をアセトンオキシムでブロックしたブロックポリイソシアネートを、粉体塗料や接着剤や高固形分焼き付け塗料の架橋剤(硬化剤)として使用することが開示されているが(請求の範囲の請求項1参照。)、TXMDIは、1分子中にベンゼン環を有するものであり、TMXDIからなるブロックポリイソシアネートを粉体塗料の硬化剤として使用すると、上記のように、TMXDIIに起因する黄変の問題がある。
以上のことを鑑み、本発明の課題は、ブロック剤としてε−カプロラクタムを使用した場合のような問題を発生しないブロック剤を使用し、かつ、黄変の問題を発生しないポリイソシアネート成分を当該ブロック剤によりブロックしたブロックイソシアネートであっても固形化及び粉末化することができるブロックイソシアネート組成物の提供、当該ブロックイソシアネート組成物を使用した粉体組成物の提供、当該ブロックイソシアネート組成物の製造方法、当該ブロックイソシアネート組成物を使用した粉体組成物の製造方法、及び、当該ブロックイソシアネート組成物を含有する粉体塗料組成物等のパウダーコーティング剤の提供にある。
請求項1に係るブロックイソシアネート組成物は、イソシアネート化合物と熱解離性ブロック剤とから合成されたブロックイソシアネート組成物であって、前記熱解離性ブロック剤が、アンモニアからなる第1のブロック剤と、前記第1のブロック剤と異なる第2のブロック剤とからなることを特徴とする。
請求項2に係るブロックイソシアネート組成物は、請求項1の構成において、前記第2のブロック剤が、アミン系ブロック剤であることを特徴とする。
請求項3に係るブロックイソシアネート組成物は、請求項1又は2の構成において、前記第2のブロック剤が、ジイソプロプルアミンであることを特徴とする。
請求項4に係るブロックイソシアネート組成物は、請求項1から3のいずれかの構成において、前記イソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする。
請求項5に係るブロックイソシアネート組成物は、請求項1から4のいずれかの構成において、前記第1のブロック剤と前記第2のブロック剤との比率が、10:90から60:40の範囲内にあることを特徴とする。
請求項6に係るブロックイソシアネート組成物は、イソシアネート化合物と熱解離性ブロック剤とから合成されたブロックイソシアネート組成物であって、前記イソシアネート化合物が、脂肪族イソシアネートからなり、前記熱解離性ブロック剤が、アンモニアからなる第1のブロック剤と、前記第1のブロック剤と異なる第2のブロック剤としてのアミン系ブロック剤又はオキシム系ブロック剤からなることを特徴とする。
請求項7に係るブロックイソシアネート組成物は、イソシアネート化合物と熱解離性ブロック剤とから合成されたブロックイソシアネート組成物であって、前記イソシアネート化合物が、複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物からなり、前記熱解離性ブロック剤が、アンモニアからなる第1のブロック剤と、前記第1のブロック剤と異なる第2のブロック剤とからなり、前記第2のブロック剤が、前記イソシアネート化合物の複数のイソシアネート基のうちの一部のイソシアネート基をブロックし、前記第1のブロック剤が、前記イソシアネート化合物の複数のイソシアネート基のうち前記第2のブロック剤がブロックしていない残部のイソシアネート基をブロックしていることを特徴とする。
請求項8に係るブロックイソシアネート組成物は、請求項6又は7の構成において、前記第2のブロック剤がアミン系ブロック剤であり、前記第1のブロック剤としてのアンモニアと前記第2のブロック剤としてのアミン系ブロック剤との比率が、10:90から60:40の範囲内にあることを特徴とする。
請求項9に係るブロックイソシアネート組成物は、請求項6又は7の構成において、前記第2のブロック剤がオキシム系ブロック剤であり、前記第1のブロック剤としてのアンモニアと前記第2のブロック剤としてのオキシム系ブロック剤との比率が、50:50〜60:40の範囲内にあることを特徴とする。
請求項10に係るブロックイソシアネート組成物は、請求項7の構成において、前記前記イソシアネート化合物が、イソシアネートのイソシアヌレート体であり、前記第2のブロック剤が、前記イソシアネート化合物の一分子中の3個のイソシアネート基のうちの2個のイソシアネート基をブロックし、前記第1のブロック剤が、前記イソシアネート化合物の3個のイソシアネート基のうち前記第2のブロック剤がブロックしていない残部の1個のイソシアネート基をブロックしていることを特徴とする。
本発明によれば、ブロックイソシアネート組成物、当該ブロックイソシアネート組成物を使用した粉体組成物、当該ブロックイソシアネート組成物の製造方法、及び当該粉体組成物の製造方法、並びに、当該ブロックイソシアネート組成物を含有する粉体塗料組成物等のパウダーコーティング剤において、ブロック剤としてε−カプロラクタムを使用した場合のような問題を発生しないブロック剤を使用することができ、かつ、黄変の問題を発生しないポリイソシアネート成分を当該ブロック剤によりブロックしたブロックイソシアネートであっても固形化することができる。
図1は本発明の実施の形態に係るブロックイソシアネート組成物の使用方法(使用例)を示す説明図である。 図2は本発明の一実施例に係るブロックイソシアネート組成物の硬化特性を示すグラフである。 図3は本発明の一実施例に係るブロックイソシアネート組成物の特性を、比較例のブロックイソシアネート組成物の特性と対比して示す表である。 図4は本発明の一実施例に係るブロックイソシアネート組成物を硬化剤として含有する粉体組成物の最適触媒量を示すグラフである。 図5は本発明の一実施例に係るブロックイソシアネート組成物のBL−イソシアネート残存率(補正済)を、比較例のブロックイソシアネート組成物のBL−イソシアネート残存率(補正済)と対比して示すグラフである。 図6は本発明の一実施例に係るブロックイソシアネート組成物のゲル分率100%時の特性を、比較例のブロックイソシアネート組成物のゲル分率100%時の特性と対比して示すグラフである。 図7は本発明の実施の形態に係るブロックイソシアネート組成物のHDI−DiPAブロック部分(HDIをジイソピルアミンでブロックしたもの)の分子構造を示す説明図である。 図8は本発明の実施の形態に係るブロックイソシアネート組成物のHDI−アンモニアブロック部分(HDIをアンモニアでブロックしたもの)の分子構造を示す説明図である。 図9は本発明の実施の形態に係るブロックイソシアネート組成物のHDI−ブロック部分(HDIの3個のNCO基について、そのうちの2個のNCO基を第2のブロック剤としてのイソプロピルアミンによりブロックし、残りの1個のNCO基を第1のブロック剤としてのアンモニアに由来する1級アミンからなる末端ウレア構造によりブロックしたもの)の分子構造を示す説明図である。 図10は本発明の実施例1−4に係るブロックイソシアネート組成物の特性を、比較例のブロックイソシアネート組成物の特性と対比して示す表である。 図11は本発明の一実施例に係るブロックイソシアネート組成物のDSCチャートを示すグラフである。 図12は本発明の実施の形態に係るブロックイソシアネート組成物のアンモニアブロック部分(HDIをアンモニアに由来する1級アミンからなる末端ウレア構造でブロックしたもの)の分子構造を示す説明図である。 図13は本発明の実施の形態に係るブロックイソシアネート組成物のアンモニアに起因する自己重合化反応を説明するための説明図である。
[概説]
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)を説明する。なお、本願書類中では、イソシアネート化合物と高い反応性を有する化合物(代表的に、グリコール等のポリオール)の意味で、「イソシアネート反応性化合物」との用語を使用しているが、「イソシアネート反応性化合物」との用語は、イソシアネート基と反応する活性水素を一分子中に二個以上有する化合物である「活性水素化合物」(ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸等)との用語に相当する意味で使用している。
本発明に係るブロックイソシアネート組成物は、粉体塗料組成物等のパウダーコーティング剤(微粉体コーティング剤)の硬化剤に適用することができる。本発明に係るブロックイソシアネート組成物は、高いNCO含有率(高いイソシアネート基濃度(高NCO%(質量%)、以下、単に、「高NCO」ということがある。)を維持しながら、HDI等の所定のポリイソシアネート成分を、2種類のブロック剤(第1のブロック剤としてのアンモニア、及び、第2のブロック剤としてのアミン等のブロック剤)でブロックし、このブロック化HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)等のブロック化イソシアネート化合物を固形化及び粉末化したものである。ここで、上記の発明の課題に関連して述べたとおり、本発明のブロックイソシアネート組成物は、粉体塗料組成物を含むパウダーコーティング剤等、被塗物への塗布後(コーティング後)の塗布色(コーティング色)が意図しない色とならないことが要求されるブロックイソシアネート組成物として具体化される場合、イソシアネート化合物としては、(上記背景技術の説明で述べた黄変等の問題を生じない)HDIやIPDI等の無黄変性のイソシアネート化合物を使用し、MDI等の黄変性のイソシアネート化合物は使用しない。なお、本願書類中では、HDIやIPDI等の無黄変性のイソシアネート化合物を、説明の便宜上、「無黄変性イソシアネート化合物」と称することがある。一般に、このような無黄変性イソシアネート化合物は、HDIのような脂肪族イソシアネート化合物、又は、IPDIのような脂環族イソシアネート化合物からなる。ここで、本発明では、アンモニアをイソシアネート化合物のNCO基をブロックするブロック剤として使用しているが、アンモニアをイソシアネート用のブロック剤として使用したブロックイソシアネート組成物(以下、単に、「アンモニアブロックイソシアネート」と称することがある。)は、一般的なものではなく、あくまで、本発明者らの独自の知見と鋭意の研究開発に基づくものである。なお、アンモニアをイソシアネート用のブロック剤として使用したブロックイソシアネート組成物については、本発明者らの発明に係る(及び、本願出願人の所有に係る)特許第6188576号公報に、その構成や作用効果を含め、詳細な説明があり、必要に応じて参照することができる。
本発明に係るブロックイソシアネート組成物は、粉体塗料組成物等のパウダーコーティング剤の硬化剤に適用した場合、中低温度域(例えば、120℃程度の中低温度域)での硬化促進を可能にし、かつ、ヤニの発生を抑制することが可能である。なお、ここで使用する「中低温度域」との用語は、低温度域を100℃〜150℃と定義し、中温度域を150℃〜200℃と定義した場合における、「低温度域」における中程度の温度域の意味で使用している。
[粉体組成物]
本発明に係るブロックイソシアネート組成物は、所定のポリオール及び所定の触媒(有機金属触媒)と混合されて、本発明に係る粉体組成物を構成する。
[粉体塗料組成物]
本発明に係るブロックイソシアネート組成物は、所定のポリオールと混合されて、本発明に係る粉体組成物を構成するが、この粉体組成物は、所定の顔料やワックスやレベリング剤(及び他の任意の成分)を添加混合することで、本発明に係る粉体塗料組成物を構成する。また、本発明に係るブロックイソシアネート組成物は、所定のポリオールと混合されて、本発明に係る粉体組成物を構成するが、この粉体組成物は、所定のワックスやレベリング剤(及び他の任意の成分)を添加混合することで、本発明に係るパウダーコーティング剤を構成する。
[実施の形態の説明]
次に、本発明の実施の形態に係るブロックイソシアネート組成物について説明する。
[実施の形態1]
<ブロックイソシアネート組成物>
実施の形態1に係るブロックイソシアネート組成物は、イソシアネート化合物(イソシアネート成分)と熱解離性ブロック剤とから合成されたブロックイソシアネート組成物であって、前記熱解離性ブロック剤が、アンモニアからなる第1のブロック剤と、前記第1のブロック剤と異なる第2のブロック剤とからなる。実施の形態1に係るブロックイソシアネート組成物は、一部のイソシアネート成分の末端イソシアネート基(NCO基)を、第1のブロック剤としてのアンモニアが保護(ブロック)してなる第1のブロックイソシアネート成分と、他部のイソシアネート成分の末端イソシアネート基(NCO基)を、第2のブロック剤が保護(ブロック)してなる第2のブロックイソシアネート成分とからなる。
[イソシアネート成分]
実施の形態1に係るブロックイソシアネート組成物のイソシアネート成分(イソシアネート化合物)としては、脂肪族イソシアネート、及び/又は、脂環式(脂環族)イソシアネートを好適に使用することができる。特に、実施の形態1に係るブロックイソシアネート組成物を、粉体塗料等、イソシアネート成分の黄変による影響を避ける必要のある組成物の硬化剤として使用する場合、イソシアネート成分としては、脂肪族イソシアネート、及び/又は、脂環式(脂環族)イソシアネート等、黄変の問題を発生しない非黄変性イソシアネートを使用することが必要である。
ここで、脂肪族イソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート)、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプエート等の脂肪族ジイソシアネートを使用することができる。
また、脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロジイソシアネート、即ち、IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’−、2,4’−または2,2’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans−体、Trans,Cis−体、Cis,Cis−体、もしくはその混合物)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)等の脂環族ジイソシアネートを使用することができる。
また、イソシアネート化合物としては、例えば、前記脂肪族ポリイソシアネート。及び/又は、脂環族ポリイソシアネートの誘導体を使用することもできる。前記脂肪族ポリイソシアネート。及び/又は、脂環族ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、前記イソシアネート化合物の多量体(例えば、ウレトジオン変性体などの2量体、イソシアヌレート変性体またはイミノオキサジアジンジオン変性体などの3量体等)、アロファネート変性体(例えば、前記ポリイソシアネートと、アルコール類との反応より生成するアロファネート変性体等)、ウレタン変性体(例えば、ポリイソシアネートとポリオールとの反応により生成するウレタン変性体など)、ビウレット変性体(例えば、前記ポリイソシアネートと、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体等)、ウレア変性体(例えば、前記ポリイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア変性体等)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、前記ポリイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオン等)、カルボジイミド変性体(前記ポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体等)、ウレトンイミン変性体等を使用することができる。
ここで、イソシアネート化合物の誘導体としては、好ましくは、イソシアネート化合物の3量体を使用することができ、より好ましくは、イソシアヌレート変性体を使用することができる。
また、実施の形態1に係るブロックイソシアネート組成物を、粉体塗料等、イソシアネート成分の黄変による影響を避ける必要がない組成物(接着剤等)の硬化剤として使用する場合、イソシアネート成分としては、脂肪族イソシアネート、及び/又は、脂環式(脂環族)イソシアネート等以外に、黄変性イソシアネートを使用することもできる。例えば、このようなイソシアネート化合物としては、ベンゼン環を有するイソシアネート化合物を使用することができ、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート等を使用することができる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(以下、「TDI」ということがある。)、フェニレンジイソシアネート(m−、p−フェニレンジイソシアネート若しくはその混合物)、4,4´−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(以下、「NDI」ということがある。)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4´−、2,4´−または2,2´−ジフェニルメタンジイソシネート若しくはその混合物)(以下、「MDI」ということがある。)、4,4´−トルイジンジイソシアネート(以下、「TODI」ということがある。)、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートを使用することができる。
また、芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(以下、「XDI」ということがある。)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(以下、「TMXDI」ということがある。)、ω,ω′−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネートを使用することができる。
また、イソシアネート化合物としては、例えば、前記芳香族ポリイソシアネート、及び/又は、芳香脂肪族ポリイソシアネートの誘導体を使用することもできる。
前記イソシアネート化合物の誘導体としては、例えば、前記イソシアネート化合物の多量体、アロファネート変性体、ウレタン変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体等を使用することができる。
なお、上記したイソシアネート化合物は、単独で使用したり、或いは、2種類以上を併用したりすることができる。
[2種類のブロック剤]
本発明に係るブロックイソシアネート組成物のブロック剤は、2種類のブロック剤からなり、第1のブロック剤としてのアンモニアと、第2のブロック剤としての、アンモニア以外のブロック剤からなる。第2のブロック剤としては、アンモニアよりもイソシアネート基(NCO基)に対する反応性(活性)が低いブロック剤を使用することができる。
[第1のブロック剤]
本発明に係るブロックイソシアネート組成物の第1のブロック剤としては、アンモニアを使用する。
[第2のブロック剤]
第2のブロック剤としては、アミン系のブロック剤(以下、「アミン系ブロック剤」ということがある。)を好適に使用することができる。アミン系のブロック剤としては、ジフェニルアミン、カルバゾール、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミンを使用することができる。
アミン系のブロック剤としては、上記以外に、例えば、ジブチルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)アミン、イソプロピルエチルアミン、2,2,4−、又は、2,2,5−トリメチルヘキサメチレンアミン、N−イソプロピルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ビス(3,5,5−トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、(ジメチルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン、6−メチル−2−ピペリジン、6−アミノカプロン酸等を使用することができる。
また、第2のブロック剤としては、アミン系のブロック剤以外にも、フェノール系のブロック剤、ラクタム系のブロック剤、アルコール系のブロック剤、オキシム系のブロック剤、活性メチレン系のブロック剤、イミダゾール系のブロック剤、トリアゾール系のブロック剤、ピラゾール系のブロック剤、亜硫酸水素系のブロック剤を使用することができる。
フェノール系のブロック剤としては、フェノール、n−プロピルフェノール、n−ノニフェノール、ジ−n−プロピルフェノールを使用することができる。
フェノール系のブロック剤としては、上記以外に、例えば、クレゾール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、s−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−s−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール、ニトロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、フルオロフェノール、ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、メチルサリチラート、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシル、4−[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4−[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、ピリジノール、2−または8−ヒドロキシキノリン、2−クロロ−3−ピリジノール、ピリジン−2−チオール等を使用することができる。
ラクタム系のブロック剤としては、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタムを使用することができる。
アルコール系のブロック剤としては、エタノール、n−プロピルフェノール、n−ノニフェノール、ジ−n−プロピルフェノールを使用することができる。
アルコール系のブロック剤としては、上記以外にも、例えば、メタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、1−または2−オクタノール、シクロへキシルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,2−トリクロロエタノール、2−(ヒドロキシメチル)フラン、2−メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2−エトキシエタノール、n−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエトキシエタノール、2−エトキシブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、2−エチルヘキシルオキシエタノール、2−ブトキシエチルエタノール、2−ブトキシエトキシエタノール、N,N−ジブチル−2−ヒドロキシアセトアミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−モルホリンエタノール、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール、3−オキサゾリジンエタノール、2−ヒドロキシメチルピリジン、フルフリルアルコール、12−ヒドロキシステアリン酸、トリフェニルシラノール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等を使用することができる。
オキシム系のブロック剤としては、ホルムアキドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム(アセトンオキシム)、メチルエチルケトキシム(メチルエチルケトンオキシム)、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムを使用することができる。このうち、オキシム系のブロック剤としては、メチルエチルケトキシム(MEKO)を好適に使用することができる。
オキシム系のブロック剤としては、上記以外にも、例えば、2,2,6,6−テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルt−ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4−ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3−エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n−アミルケトンオキシム、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’−ジメトキシベンゾフェノンオキシム、2−ヘプタノンオキシム等を使用することができる。
活性メチレン系のブロック剤としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンを使用することができる。
活性メチレン系のブロック剤としては、上記以外にも、例えば、メルドラム酸、マロン酸ジアルキル(例えば、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジ−t−ブチル、マロン酸ジ2−エチルヘキシル、マロン酸メチルn−ブチル、マロン酸エチルn−ブチル、マロン酸メチルs−ブチル、マロン酸エチルs−ブチル、マロン酸メチルt−ブチル、マロン酸エチルt−ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t−ブチルフェニル、イソプロピリデンマロネートなど)、アセト酢酸アルキル(例えば、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなど)、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、シアノ酢酸エチル等を使用することができる。
イミダゾール系のブロック剤としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾールを使用することができる。
イミダゾール系のブロック剤としては、上記以外に、例えば、ベンズイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール等を使用することができる。
トリアゾール系のブロック剤としては、トリアゾールを使用することができる。
トリアゾール系のブロック剤としては、上記以外に、例えば、1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール等を使用することができる。
ピラゾール系のブロック剤としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾールを使用することができる。
ピラゾール系のブロック剤としては、上記以外に、例えば、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等を使用することができる。
亜硫酸水素系のブロック剤としては、亜硫酸水素ナトリウムを使用することができる。
第2のブロック剤としては、上記以外に、イミン系ブロック剤、カルバミン酸系ブロック剤、尿素系ブロック剤、酸イミド系ブロック剤等を使用することができる。
イミン系ブロック剤としては、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、グアニジン等を使用することができる。
カルバミン酸系ブロック剤としては、例えば、N−フェニルカルバミン酸フェニル等を使用することができる。
尿素系ブロック剤としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等を使用することができる。
酸イミド系ブロック剤としては、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタルイミド等を使用することができる。
第2のブロック剤は、上記ブロック剤を単独で使用したり、又は、上記ブロック剤を2種類以上併用したりすることができる。
本実施の形態に係るブロックイソシアネート組成物は、まず、第2のブロック剤が、イソシアネート成分のうちの一部のイソシアネート成分のイソシアネート基(NCO基)をブロックし、また、第1のブロック剤としてのアンモニアが、イソシアネート成分のうちの残りの部分のイソシアネート成分のイソシアネート基(NCO基)をブロックすることで、全体として、2種類のブロック剤(第1のブロック剤及び第2のブロック剤)が、イソシアネート成分のイソシアネート基をブロックしている。特に、本実施の形態に係るブロックイソシアネート組成物は、イソシアネート化合物に第1のブロック剤及び第2のブロック剤を混合してイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロックするときに、第2のブロック剤を第1のブロック剤(アンモニア)に先立って混合することにより、まず、第2のブロック剤が、イソシアネート成分のうちのイソシアネート成分の一部のイソシアネート基(NCO基)をブロックし、次に(即ち、第2のブロック剤によるブロックの後に)、第1のブロック剤としてのアンモニアが、イソシアネート成分の残りのイソシアネート基(NCO基)をブロックすることで、全体として、2種類のブロック剤(第1のブロック剤及び第2のブロック剤)が、イソシアネート成分のイソシアネート基をブロックすることを、好適な実施の形態の一つとしている。また、第1のブロック剤及び第2のブロック剤は、それぞれ、固有の熱解離温度等の特性を有しており、本実施の形態に係るブロックイソシアネート組成物が加熱されると、それぞれの固有の熱解離温度でイソシアネート成分のイソシアネート基から解離する。また、前記第1のブロック剤及び第2のブロック剤によりイソシアネート成分のイソシアネート基をブロックした本実施の形態に係るブロックイソシアネート組成物は、主に第1のブロック剤であるアンモニアの特性により、HDI等の従来は固形化が困難であったイソシアネートをイソシアネート成分として使用した場合でも、そのイソシアネート成分を固形化することができることを、本発明者らは実際に確認している(実施例参照)。
詳細には、従来、HDI等の黄変しにくいイソシアネート化合物は、(ε−カプロラクタムブロックIPDIを除き)上記のとおり固形化が困難である。なお、イソシアネート化合物のイソシアネート基に水(HO)を付加することで、イソシアネート化合物を水により固形化することは知られているが、この場合、水を付加したイソシアネート化合物のNCO率が減少する。粉体塗料組成物は、高NCOであることが望まれるため、イソシアネート化合物水により固形化することは、この観点から実用性が低い。一方、本発明に係るイソシアネート化合物は、上記のとおり、第1のブロック剤及び第2のブロック剤によりイソシアネート成分をブロックすることで、高NCOを維持することができる。
また、本実施の形態に係るブロックイソシアネート組成物では、第2のブロック剤としてアミン系ブロック剤を使用した場合(特に、アミン系ブロック剤としてジイソプロピルアミンを使用した場合)、ブロックイソシアネート組成物の溶融温度が、比較的低温度域の溶融温度となる。したがって、本実施の形態に係るブロックイソシアネート組成物を硬化剤として粉体塗料等の粉体組成物を調製するときに、ブロックイソシアネート組成物を比較的低温度域に溶融温度があるポリオール成分等の所定のイソシアネート反応性化合物と円滑に混合することができる。特に、イソシアネート反応性化合物としてのポリエステルポリオールを使用する場合、ポリエステルポリオールの溶融温度に合せて、ブロックイソシアネート組成物の溶融温度も対応する低温度域とする必要があるが、本実施の形態に係るポリイソシアネート組成物の溶融温度は、第2のブロック剤としてアミン系ブロック剤を使用した場合(特に、アミン系ブロック剤としてジイソプロピルアミンを使用した場合)、上記のとおり、ポリエステルポリオールの溶融温度と同等の低温度域にあるため、本実施の形態に係るポリイソシアネート組成物は、ポリエステルポリオールと円滑に相溶する。なお、ポリオールとの相溶性を確保するため、第2のブロック剤として、アミン系ブロック剤以外のブロック剤を使用する場合も、使用するポリオールの溶融温度と同等の温度域の溶融温度を有するブロック剤を使用することが望ましい。
なお、上記のイソシアネート化合物の一例として挙げたMDIに関しては、モノメリックMDIは、どのようなブロック剤を付加しても固形化するが、ポリメリックMDIについては固形化するかどうか不明である。しかし、モノメリックMDIを所定のブロック剤でブロックしたブロック化MDIは、溶融温度(軟化点)が約140℃となるため、ポリエステルポリオールのような低温度域の溶融温度を有するポリオールの溶融温度(軟化点)との温度差が大きく(高温度域側に大きく離れているため)、そのようなポリオールとの相溶性がなく、そのようなポリオールと混合して粉体塗料組成物を調製する必要がある場合でも、そのような粉体塗料組成物の調製が困難又は不可能となる。
また、上記のように、イソシアネート化合物を水により固形化した場合、イソシアネートのイソシアネート基に付加した水分子は、加熱してもイソシアネート基から解離することはなく、ウレア結合を形成するため、イソシアネート組成物の高NCOを維持することが不可能である。一方、本発明に係るブロックイソシアネート組成物では、第1のブロック剤として使用するアンモニアは、加熱によりブロックイソシアネート組成物が所定の温度以上となると、イソシアネート基から円滑に解離するため、イソシアネート組成物の高NCOを維持することが可能である。
[第1のブロック剤と第2のブロック剤の比率]
第1のブロック剤としてのアンモニアと、第2のブロック剤(代表的にはアミン系のブロック剤)は、例えば、モル比で、30:70とすることができ、極端な場合、99:1(アンモニアが99に対してアミン系ブロック剤が1)から1:99(アンモニアが1に対してアミン系ブロック剤が99)の範囲とすることもできる。しかし、本発明のブロックイソシアネート組成物は、ブロック剤として第2のブロック剤のみを使用した場合(即ち、ブロック剤として、第2のブロック剤を100%とし、第1のブロック剤のアンモニアを0%とした場合)、固形化することが困難又は不可能であることを、本発明者らは、実際に確認している。即ち、本発明のブロックイソシアネート組成物は、第1のブロック剤としてのアンモニアが必須であり、かつ、第1のブロック剤を第2のブロック剤と併用したことを特徴とする。
また、本発明のブロックイソシアネート組成物は、ブロック剤として、第1のブロック剤としてのアンモニアの相対的含有量を増加するほど(即ち、第1のブロック剤としてのアンモニア及び第2のブロック剤(アミン系ブロック剤等)の総量における第1のブロック剤としてのアンモニアの比率を増加するほど)、その固形が容易かつ確実となることを本発明者らは実際に確認している。例えば、本発明のブロックイソシアネート組成物は、ブロック剤として第1のブロック剤(アンモニアからなるブロック剤)及び第2のブロック剤(アミン系ブロック剤等)を併用した場合において、そのブロック剤の総量に対し、第1のブロック剤(アンモニア)の含有量(即ち、第1のブロック剤及び第2のブロック剤の合計量であるブロック剤の総量に対する比率)を100%に近づけるほど、非常に強固な固形化が可能となる。しかし、その場合、得られるブロックイソシアネート組成物は非常に溶融しにくくなる。
一方、本発明者らは、イソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を使用し、かつ、ブロック剤として、アンモニアからなる第1のブロック剤(アンモニアからなるブロック剤)と第2のブロック剤(例えば、アミン系ブロック剤)とを併用した場合は、アンモニアを少量でも含有している限り、ブロックイソシアネート組成物は固形化して固体となる(即ち、固体化する)ことを確認している。一方、本発明者らは、イソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を使用し、かつ、ブロック剤として、アンモニアからなるブロック剤を併用せず、例えばアミン系ブロック剤を単体で使用した場合(即ち、アンモニアからなるブロック剤を全く含有しない場合)、ブロックイソシアネート組成物は固形化することなく液体状となる(即ち、固体化しない)ことを確認している。更に、本発明者らの知見によれば、本発明のブロックイソシアネート組成物は、ブロック剤中、第1のブロック剤(アンモニア)の含有量を増加して100%に近づけるほど、ポリオールとの反応性が悪くなると共に、イソシアネート化合物(HDI等)のイソシアネート基(NCO基)から第1のブロック剤としてのアンモニアのブロックが外れた後に、アンモニアの反応によってイソシアネート化合物が自己重合しやすくなる。
したがって、本発明のブロックイソシアネート組成物は、ポリオールとの十分な反応性を確保するため、第1のブロック剤としてのアンモニアの含有率を(100%から)少なくして、第2のブロック剤としてのアミン系ブロック剤等を併用することを必須の構成としている。なお、後述するように、本発明のブロックイソシアネート組成物は、完全な「固体化」を実現するために、第1及び第2のブロック剤として併用するアンモニアとアミンの比率を、所定の比率(アンモニア:アミン=10:90〜60:40の範囲内の任意の比率、好ましくは、アンモニア:アミン=30:70又はアンモニア:アミン=20:80(或いは、アンモニア:アミン=30:70〜20:80内の任意の比率))としている。
また、本発明のブロックイソシアネート組成物は、固形化した後、混合対象の粉体組成物に要求される粒度となるよう、粉砕工程により微粉末状又はパウダー状に粉砕できる必要があるが、この微粉砕等のためには、本発明のブロックイソシアネート組成物は、その硬度を一定以上に確保する必要がある。よって、本発明のブロックイソシアネート組成物は、この観点から、第2のブロック剤(アミン系ブロック剤)の含有率を、60%以上としている。本発明のブロックイソシアネート組成物は、この観点から、第2のブロック剤(アミン系ブロック剤)の含有率は、60%〜80%することが好ましいが、80%以上とすることもでき、90%とすることもできる。一方、本発明のブロックイソシアネート組成物は、この観点から、第2のブロック剤(アミン系ブロック剤)の含有率を60%未満、例えば、50%又は50%以下とすると、結果的に、第1のブロック剤のアンモニアの含有率が50%又は50%以上に増加するため、ブロックイソシアネート組成物が、ブロック剤の熱解離後に自己重合しやすくなる。
本発明の実施例1−3に係るブロックイソシアネート組成物の硬化時の減量(減量率)は、例えば、28%となる。
上記のとおり、本発明のブロックイソシアネート組成物は、第1のブロック剤及び第2のブロック剤を併用することにより、イソシアネート成分としてHDIを使用した場合でも、ポリオール成分と円滑に混合でき、かつ、加熱後に確実に固形化して粉末化が可能なブロックイソシアネート組成物となる。ここで、本発明のブロックイソシアネート組成物は、イソシアネート成分として、IPDI以外のイソシアネート化合物であれば、いずれのイソシアネート化合物を使用しても、固形化が可能である。なお、モノメリックMDIについては、上記のとおり、ブロック剤としてアンモニアを使用しない場合でも固形化が可能であるが、黄変の問題がある。
ここで、本発明のブロックイソシアネート組成物の固形化の機序は、結晶化によるものと考えることもできるが、凝集及び/又は析出によるものと考えることもできる。この点について詳細に後述する。
[固体化(結晶化)]
本発明のブロックイソシアネート組成物は、上記のとおり、イソシアネート化合物として、従来は固体化が困難であったHDI等のイソシアネート化合物を使用した場合でも、第1のブロック剤としてのアンモニアと第2のブロック剤としてのアミン系ブロック剤等を併用することで、最終的に調製したブロックイソシアネート組成物としての固形化及び固体化を実現することができるが、この固形化及び固体化の機序は、以下のようなものであると考察される。なお、本発明における「固体化」とは、最終製品又は最終生産物として、常温(例えば、約25℃近辺の雰囲気温度、或いは、日本工業規格(JIS Z 8703)によれば20℃±15℃(5〜35℃)の雰囲気温度)で、微粉砕機等の粉砕手段により所望のオーダーまで粉砕又は微粉砕可能な状態の「固体化」をいい、よって、本発明における「固体化」したブロックイソシアネート組成物(本願書類中で、「固体化ブロックイソシアネート組成物」ということがある。)とは、最終製品又は最終生成物として、常温で、微粉砕機等の粉砕手段により所望のオーダーまで粉砕又は微粉砕可能な状態に固体化されたブロックイソシアネート組成物のことをいう。即ち、ワックス(蝋)やゴム等、一般に固体として把握されている物質(物体)であっても、常温で、微粉砕機等の粉砕手段により粉砕又は微粉砕することが不可能又は困難なものの固体化は、本発明の「固体化」に含まない。
ここで、本発明の固体化ブロックイソシアネート組成物は、最終的に、単体で(或いは、固体状のポリオールと混合した状態でも)、粉砕機により所定の粒度に粉砕することができるよう、上記のような「固体化」の状態とされる。よって、このような本発明のブロックイソシアネート組成物の固体化(粉砕可能な固体としての固体化)のためには、最終生成物における硬度、結晶化、及びガラス転移点(Tg)の3要素の存在が必要であり、ワックスやゴムは、この点で、本発明の「固体化」の条件を満足しない。また、本発明のブロックイソシアネート組成物の固体化において、ガラス転移点(Tg)は、常温より高い温度域にある必要がある。
また、本発明に係るブロックイソシアネート組成物を使用してパウダーコーティング剤等を製造する場合に、ポリオールとして、例えば、ポリエステルポリオールを使用する場合、上記のように、ポリエステルポリオールの融点は120℃弱であり、本発明に係る固体化ブロックイソシアネート組成物を粉砕したもの(以下、「粉体状ブロックイソシアネート組成物」ということがある。)は、ポリエステルポリオールに対し、ポリエステルポリオールが軟化する温度に合せた温度で混合することになり、約120℃近辺の温度で混合することになる。ここで、本発明に係る粉体状ブロックイソシアネート組成物は、上記のように、ポリエステルポリオールの溶融温度(融点)に対応する(具体的には、後述する実施例で示すように、ポリエステルポリオールの融点よりも相当程度低い)低温度域の溶融温度(融点)を有するため、ポリエステルポリオールの融点である120℃近辺の温度域では、問題なく溶融し、円滑にポリエステルポリオールと混合することができる。
そして、本発明に係るブロックイソシアネート組成物は、上記の固形化によってできる固体であるが、この点に関し、この固形化及び固体化は、ブロックイソシアネート組成物の凝集化又は結晶化のいずれかによるものと考えることができるが、本発明者らが行った各種の実験結果によれば、この固形化及び固体化は、ブロックイソシアネート組成物の結晶化によるものと考えることができる。即ち、本発明者らが行った各種の実験結果によれば、本発明に係るブロックイソシアネート組成物は、最終的に固形化及び固体化されたときに、(実際に結晶化しているか否かは分かり難いが)構造が規則化して堅固に固体化していることが確認でき、かつ、ガラス転移点(Tg)が実際に出ているため、結晶化していると考えることができ、この結晶化により、(上記の意味の)固体化が実現されていると考えることができる。即ち、この場合の固体化ブロックイソシアネート組成物におけるTg(ガラス転移点)は、固体化ブロックイソシアネート組成物の軟化点とほぼ同様に考えることができるため、固体化ブロックイソシアネート組成物にTg(ガラス転移点)が出るということは、固体化ブロックイソシアネート組成物に(融点は分からないが)Tg(ガラス転移点)が生じて軟化点がある状態であり、凝集の場合だとTg(ガラス転移点)が出ないため、本発明に係る固体化ブロックイソシアネート組成物は、結晶化して固体化していると考えることができる。
[ガラス転移点と結晶化]
上記のような本発明に係るブロックイソシアネート組成物の結晶化による固体化について、本発明者らは、DSC(示唆往査熱量測定)を使用した実験により確認している。即ち、図11に示すように、実験で得たDSCチャートによれば、本発明に係る固体化ブロックイソシアネート組成物(典型的には、後述する実施例の固体化ブロックイソシアネート組成物)のガラス転移点(Tg)は、65.9℃であり、融点(mp)は73.0℃であった。即ち、本発明に係る固体化ブロックイソシアネート組成物は、DSCによりガラス転移点(Tg)を明らかに測定することができたため、本発明に係る固体化ブロックイソシアネート組成物は、結晶化しており、この結晶化により固体化しているということができる。
本発明のブロックイソシアネート組成物は、上記のとおり、例えば、イソシアネートのヌレート体(イソシアヌレート体)、及び/又は、イソシアネートのアダクト体となっている。
[製造方法(調製方法)]
本発明のブロックイソシアネート組成物は、所定の溶剤に、所定のイソシアネート化合物を入れ、次に、第2のブロック剤(例えば、アミン系ブロック剤)を入れ、次に、第1のブロック剤(アンモニア)を入れることで、イソシアネート成分が溶剤中に析出して(又は結晶化して)固形化する。よって、その後、この溶剤中に固形物が析出等したものを、溶剤を揮発させることで、固形化ブロックイソシアネート組成物(即ち、上記の固体化ブロックイソシアネート組成物)を得ることができる。その後、この固形化ブロックイソシアネート組成物を所望の粒径まで粉砕することで、所望の粉体状ブロックイソシアネート組成物を得ることができる。
上記のようにして得られる本発明のブロックイソシアネート組成物は、上記のとおり、イソシアネート成分(イソシアネート化合物)の末端イソシアネート基(NCO基)の一部(上記のように、第2のブロック剤によりブロックされたNCO基以外の残部のNCO基)を、第1のブロック剤としてのアンモニアが保護(ブロック)してなる第1の末端構造と、イソシアネート成分(イソシアネート化合物)の末端イソシアネート基(NCO基)の一部(上記のように、第1のブロック剤によりブロックする前に第2のブロック剤がブロックしたNCO基)を、第2のブロック剤が保護(ブロック)してなる第2の末端構造とからなる。
即ち、本発明のブロックイソシアネート組成物の製造方法によれば、所定の溶剤に、所定のイソシアネート化合物を入れてイソシアネート化合物の溶液(以下、「イソシアネート溶液」という。)を調製し、次に、そのイソシアネート溶液に第2のブロック剤(例えば、アミン系ブロック剤)を入れて混合することで、第2のブロック剤によりイソシアネート溶液中のイソシアネート化合物のNCO基の一部をブロックし、次に、そのイソシアネート溶液に第1のブロック剤(アンモニア)を入れて混合することで、第1のブロック剤によりイソシアネート溶液中のイソシアネート化合物のNCO基の残部(第2のブロック剤によりブロックされていないNCO基)をブロックする。
<ブロック化の反応順序>
この場合のイソシアネート化合物のNCO基と第1のブロック剤及び第2のブロック剤との反応順序について説明すると、以下のような反応順序となる。即ち、本発明のブロックイソシアネート組成物の製造方法では、まず、イソシアネート溶液に、第2のブロック剤を先に入れて混合するが、このとき、例えば、イソシアネート化合物としてイソシアネートのイソシアヌレート体(3量体)を使用し、第2のブロック剤としてアミン系ブロック剤を混合した場合について説明する。なお、アミン系ブロック剤は、説明の便宜上、単に、「アミン」ということがある。この場合、アミン系ブロック剤の1つのアミンが、イソシアネート溶液中で、まず、各一分子としてのイソシアネート化合物(3量体)の3個のNCO基の1つに付加して(即ち、一分子のイソシアネート化合物にそれぞれ1個ずつ付加して)そのNCO基をブロックする。このとき、イソシアネート化合物(3量体)の一分子中では、アミンが付いているところ(アミンが付加してブロックしている1個のNCO基)と、アミンが付いていないところ(アミンがブロックしていない2個のNCO基)がある。即ち、このとき、3量体のイソシアネート化合物の場合、一分子について、3個のNCO基のうちの1個のNCO基はアミンによりブロックされているが、残りの2個のNCO基はブロックされていない状態である。
次に、イソシアネート溶液中で、イソシアネート化合物の3量体に対するアミンの反応が進むと、イソシアネート化合物(3量体の)の一分子中でブロックされていない2個のNCO基(ブロックされずに余っているNCO基)に対し、2個目のアミンが付加してそのNCO基をブロックする。このとき、イソシアネート化合物(3量体)の一分子中では、アミンが付いているところ(アミンが付加してブロックしている2個のNCO基)と、アミンが付いていないところ(アミンがブロックしていない1個のNCO基)がある。即ち、このとき、3量体のイソシアネート化合物の場合、一分子について、3個のNCO基のうちの2個のNCO基はアミンによりブロックされているが、残りの1個のNCO基はブロックされていない状態である。
なお、このとき、イソシアネート溶液中で、イソシアネート化合物の3量体に対するアミンの反応が更に進み、イソシアネート化合物(3量体の)の一分子中でブロックされていない最後の1個のNCO基に対し、3個目のアミンが付加してそのNCO基をブロックすることもある。即ち、この場合は、イソシアネート化合物(3量体)の一分子中では、3個のNCO基の全てにアミンが付加してブロックしていることになる。この場合、イソシアネート溶液に最初にアミン系ブロック剤を混合すると、イソシアネート化合物の全体としては、イソシアネート化合物の一分子中において3個のNCO基のうちの2個のNCO基にアミンが付加してブロックしているもの(即ち、1個のNCO基がアミンによりブロックされていない状態にあるイソシアネート化合物の一分子)と、イソシアネート化合物の一分子中において3個のNCO基の全てにアミンが付加してブロックしているもの(即ち、3個のNCO基が全てアミンによりブロックされ、ブロックされていないNCO基が存在しない状態にあるイソシアネート化合物の一分子)とが混在する。
次に、そのイソシアネート溶液に、第1のブロック剤としてのアンモニアを入れて混合すると、上記のように2個のNCO基がアミンによりブロックされた(即ち、1個のNCO基はブロックされていない状態にある)イソシアネート化合物(3量体)の残りの1個のNCO基に対してアンモニアが反応して付加し、1級アミン(NH)となってNCO基をウレア末端構造によりブロックすることで、その残りの1個のNCO基をブロックする。
このとき、上記のように、イソシアネート化合物(3量体)の一分子中で、3個のNCO基のうちの2個のNCO基をアミンが付加してブロックしている場合、3個目のNCO基をアンモニアが付加して(1級アミンによるウレア末端構造で)ブロックすることになり、そのイソシアネート化合物の一分子については、3個のNCO基のうちの2個のNCO基はアミンによりブロックされると共に、残りの1個のNCO基はアンモニア(1級アミンによるウレア末端構造)によりブロックされた状態である。
即ち、この場合、一分子のイソシアネート化合物の3個のNCO基のうち、2/3のNCO基にアミンが付いてブロックし(即ち、何も付いていない状態の一分子のイソシアネート化合物のNCO基の2/3をアミンがブロックし)、残りの1/3のNCO基にアンモニア(1級アミンによるウレア末端構造)が付いてブロックする(即ち、残りの1/3のNCO基をアンモニア(1級アミンによるウレア末端構造)がブロックする)ことになる。
また、上記のように、イソシアネート溶液にアンモニアを混合した段階で、イソシアネート化合物の全体としては、各一分子のイソシアネート化合物の3個のNCO基のうち、3個目のNCO基にもアミンが付加してブロックしているものと、3個目のNCO基にアミンが付加せずに、3個目のNCO基が余っているものとがある場合は、この段階で余っているイソシアネート化合物の3個目のNCO基に(アミンの後に入れた)アンモニア(1級アミンによるウレア末端構造)が付加してブロックすることになる。
<アンモニアの添加と固体化との関係>
ここで、本発明のブロックイソシアネート組成物の製造方法において、まず、イソシアネート溶液にアミンを先に入れると、アミンがイソシアネート化合物のNCO基に万遍なく付き(NCO基を万遍なくブロックし)、その後に、そのイソシアネート溶液にアンモニアを入れることで、アンモニア(アンモニアに起因する1級アミンによるウレア末端構造)が(アミンが付かずに)残っているNCO基に付く(ブロックする)ことで、上記のように、ブロックイソシアネート組成物において結晶構造が生成される(即ち、ブロックイソシアネート組成物固形化して固体化ブロックイソシアネート組成物となる)。
このアンモニアの添加段階では、イソシアネート溶液に対して吹込みによりアンモニアガスを過剰に入れることで、アンモニアを(アミンが付いていない)イソシアネート化合物のNCO基と完全に反応させるようにする。なお、このとき、アンモニアガスは、イソシアネート化合物のNCO基に付かないものは揮散するが、アンモニアの添加に先立って添加するアミンの添加量がアンモニアの添加量に対して過剰になりすぎると、このときにアンモニアが揮散しないことが確認されている。(なお、アミンとアンモニアの比率については、後述する。)この観点から、本発明では、イソシアネート溶液に添加するアンモニアの添加量は、アンモニアの添加の際に残っているイソシアネート化合物のNCO基をアンモニアでブロックするのに必要な計算上の添加量(以下、「必要添加量」)ではなく、当該必要添加量よりも過剰な量(以下、「過剰添加量」)としている。このように、イソシアネート溶液に添加するアンモニアの添加量を過剰添加量とすることで、アンモニアを添加したときに残っているイソシアネート化合物のNCO基の全てをアンモニア(1級アミンによるウレア末端構造)でブロックすることができる。このとき、イソシアネート化合物のNCO基のブロックに寄与せずに余ったアンモニアは、揮散する。
また、本発明のブロックイソシアネート組成物の製造方法によれば、このアンモニアを添加してイソシアネート化合物の残りのNCO基をブロックするときに、ブロック化イソシアネート化合物に結晶構造が積層される。そして、この積層化した結晶構造により、上記のように、固体化ブロックイソシアネート組成物が生成される。
[アミンとアンモニアの比率]
本発明のブロックイソシアネート組成物に関しては、イソシアネート溶液に混合するアミンの(アンモニアの添加量に対する)相対的添加量、即ち、第1のブロック剤としてのアンモニアと第2のブロック剤としてのアミンとの比率に応じて、アミンが付くイソシアネート化合物のNCO基の量が決まる(即ち、アミンが付かない余りのNCO基の量も決まる)。したがって、本発明では、第1のブロック剤としてのアンモニアと第2のブロック剤としてのアミンとの比率を、以下のように設定している。
即ち、好ましくは、アンモニアとアミンの比率は、アンモニア:アミン=30:70、又は、アンモニア:アミン=20:80、とする。或いは、好ましくは、アンモニアとアミンの比率は、アンモニア:アミン=30:70〜20:80の範囲内の任意の比率とする。なお、ブロックイソシアネート組成物を調製するだけなら、アンモニアの比率を99%とする(即ち、アンモニア:アミン=99:1として、アミンの比率を1%として最小化する)ことも可能であるが、このようなブロックイソシアネート組成物では、ポリオールと反応しない。一方、アンモニアとアミンの比率を、アンモニア:アミン=10:90とすると(即ち、アミンの比率を最大化すると)、ブロックイソシアネート組成物の固形化に時間がかかることにあるが、最終的に固形化することはできる。よって、本発明のブロックイソシアネート組成物の場合、アンモニアとアミンの比率の実用範囲としては、アンモニア:アミン=10:90〜60:40の範囲内の任意の比率となる。
[自己重合化]
次に、上記のアンモニアに起因する自己重合化の機序について詳細に説明すると、図12に示すように、本発明のブロックイソシアネート組成物は、イソシアネート溶液に第1のブロック剤としてのアンモニアを(アンモニアガスとして)吹き込むと、イソシアネート化合物は、図12に示すように、末端NHの(即ち、末端ウレア構造の)ブロックイソシアネートになる。このことは、本願出願人の所有に係る特許第6158776号で説明したとおりである。
即ち、この段階では、イソシアネート化合物(ブロック化イソシアネート化合物)の末端が1級のアミンであるため、図13に示すように、そのイソシアネート化合物を加熱してNCO基から1級アミンのブロックが外れ、NCO基(イソシアネート基)が復活したときに、そのブロックが外れたNCO基を有するイソシアネートが、まだNCO基からブロックが外れていないイソシアネートの1級アミンと反応して自己重合化が進むことになる。1級アミンとイソシアネート(NCO基)との反応は、ヒドロキシル基とイソシアネートとの反応よりもはるかに速いため、ヒドロキシル基がまわりに存在していたとしても、自己重合が優先的に反応すると考えられる。この場合の反応乃至機序について、図13に模式的に図示する。
また、本発明のブロックイソシアネート組成物は、上記のとおり、イソシアネート成分として、イソシアネートのヌレート体の他にイソシアネートのアダクト体も使用することができ、例えば、このブロックイソシアネート組成物をポリオールと混合したときに、イソシアネートのヌレート体がポリオールと化学結合するよう構成することができる。
[第2のブロック剤としてオキシム系ブロック剤を使用した場合]
本発明のブロックイソシアネート組成物において、第2のブロック剤としてオキシム系ブロック剤を使用する場合、オキシムは結晶化を起しにくいブロック剤であるので、第1のブロック剤としてのアンモニアを50%以上となるよう添加しないと、最終的に得たブロック化イソシアネート組成物が十分に固形化しないと考えられる。よって、本発明のブロックイソシアネート組成物において、第2のブロック剤としてオキシム系ブロック剤を使用する場合、実用範囲としては、アンモニア:オキシム=50:50〜60:40の範囲となる。なお、(十分な固形化を考えずに)ブロック化イソシアネート組成物を調製するのであれば、アンモニア:オキシム=90:10でも可能である。なお、本発明のブロックイソシアネート組成物において、第2のブロック剤としてオキシム系ブロック剤を使用する場合については、後述の実施例の説明で(実施例5として)述べる。
[アミン系ブロック剤の具体例]
アミン系ブロック剤としては、以下のものを好適に使用することができる。即ち、第2のブロック剤としてのアミン系ブロック剤としては、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)アミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン、2,2,4−または2,2,5−トリメチルヘキサメチレンアミン、N−イソプロピルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ビス(3,5,5−トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、t−ブチルメチルアミン、t−ブチルエチルアミン、t−ブチルプロピルアミン、t−ブチルイソプロピルアミン、t−ブチルブチルアミン、t−ブチルベンジルアミン、t−ブチルフェニルアミン、2,2,6−トリメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オン、(ジメチルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、6−メチル−2−ピペリジン、6−アミノカプロン酸、等々を好適に使用することができる。
[その他の第2のブロック剤]
ブロックイソシアネート組成物のブロック剤としては、カプロ系ブロック剤やフェノール系ブロック剤も例示することができるが、本発明のブロックイソシアネート組成物においては、第2のブロック剤としては、上記のアミン系ブロック剤やオキシム系ブロック剤等、カプロ系ブロック剤やフェノール系ブロック剤以外のものを使用することが好ましい。
以下、本発明の実施例に係るブロックイソシアネート組成物の製造方法(製造例)及びブロックイソシアネート組成物を含有する粉体組成物の製造方法(製造例)、並びに、比較例に係るブロックイソシアネート組成物の製造方法(製造例)及びブロックイソシアネート組成物を含有する粉体組成物の製造方法(製造例)をそれぞれ示し、本発明の実施例に係るブロックイソシアネート組成物及びブロックイソシアネートを含有する粉体組成物を、比較例に係るブロックイソシアネート組成物及びブロックイソシアネート組成物を含有する粉体組成物と対比して、その特有の作用効果と共に具体的に説明する。なお、以下において、「部」及び「%」は、特記しない限り、「重量部」及び「重量%」である。
[実施例1]
a) 第1の工程
まず、還流冷却器付きセパラブルフラスコに、イソシアネート成分としてのHDIヌレート(旭化成株式会社製のDURANATE TKA100)68.5gを入れ、溶剤としてのテトラヒドロフラン(以下、「THF」ということがある。)68.5gに溶解し、第1の溶液(イソシアネート溶液)を調製した(溶解工程)。
b) 第2の工程
次に、この第1の溶液を、温度50℃にて攪拌するが、このとき、撹拌機の回転数は500rpmとし(攪拌工程)、この攪拌状態の第1の溶液中に、第2のブロック剤であるアミン系ブロック剤としてのジイソプロピルアミン(DiPA)(東京化成工業株式会社製)8.2gを徐々に滴下して、10分間(10min)攪拌し(攪拌滴下工程)、これにより、ジイソプロピルアミンによってHDIからなるイソシアネート成分の一部のイソシアネート成分のNCO基をブロックし、結果、第1のブロックイソシアネート溶液を得た(第1のブロック工程)。
この第1のイソシアネート溶液では、上記のように、イソシアネート成分(イソシアネート化合物としてのHDI)の全体中、一分子のHDIにおいて、3個のNCO基のうちの2個のNCO基がジイソプロピルアミンによってブロックされている。また、このとき、上記のように、イソシアネート化合物としてのHDIの全体中、一分子のHDIにおいて、3個のNCO基の全てがジイソプロピルアミンによってブロックされているものもあると考えられる。
即ち、このとき、上記の第1のブロック剤(アンモニア)に対する第2のブロック剤(DiPA)の比率に応じた比率で、イソシアネート成分(イソシアネート化合物としてのHDI)の全体中、各一分子としてのHDIにおいては、その3個のNCO基のうちの2個のNCO基がジイソプロピルアミンによってブロックされている。一方、イソシアネート化合物としてのHDIの全体中、各一分子としてのHDIにおいては、その3個のNCO基のうちの1個のNCO基は、ジイソプロピルアミンによってブロックされずに残っている。例えば、第1のブロック剤(アンモニア)と第2のブロック剤(DiPA)との比率を30:70又は20:80とすると、イソシアネート化合物としてのHDIの全体中、各一分子としてのHDIにおいては、その3個のNCO基のうちの2個のNCO基が、ジイソプロピルアミンによってブロックされる一方、その3個のNCO基のうちの1個のNCO基は、ジイソプロピルアミンによってブロックされずに残っている。
そして、このようにして得た第1のブロックイソシアネート溶液のNCO値を測定した(第1のNCO測定工程)。
c) 第3の工程
その後、第1のブロックイソシアネート溶液に、第1のブロック剤としてのアンモニアを添加すべく、アンモニアガスを吹き込み、これにより、アンモニアによって、イソシアネート化合物としてのHDIの全体中、各一分子としてのHDIにおいて、ジイソプロピルアミンによりブロックされなかった残りのNCO基(残りの1個のNCO基)を(1級アミンによるウレア末端構造で)ブロックし、結果、第2ブロックイソシアネート溶液を得た(第2のブロック工程)。
この第2のイソシアネート溶液では、上記のように、イソシアネート成分(イソシアネート化合物としてのHDI)の全体中、一分子のHDIにおいて、3個のNCO基のうちの2個のNCO基がジイソプロピルアミンによってブロックされ、かつ、3個のNCO基の残りの1個がアンモニア(アンモニアに起因する1級アミンによるウレア末端構造)によってブロックされている。
即ち、このとき、上記の第1のブロック剤(アンモニア)に対する第2のブロック剤(DiPA)の比率に応じた比率で、イソシアネート成分(イソシアネート化合物としてのHDI)の全体中、各一分子としてのHDIにおいては、その3個のNCO基のうちの2個のNCO基がジイソプロピルアミンによってブロックされると共に、その3個のNCO基のうちの残りの1個のNCO基が、アンモニア(アンモニアに起因する1級アミンによるウレア末端構造)によってブロックされている。例えば、第1のブロック剤(アンモニア)と第2のブロック剤(DiPA)との比率を30:70又は20:80とすると、イソシアネート化合物としてのHDIの全体中、各一分子としてのHDIにおいては、その3個のNCO基のうちの2個のNCO基が、ジイソプロピルアミンによってブロックされる一方、その3個のNCO基のうちの1個のNCO基は、アンモニア(アンモニアに起因する1級アミンによるウレア末端構造)によってブロックされている。
そして、このようにして得たブロックイソシアネート溶液のNCO値を測定し(第2のNCO測定工程)、NCO測定値が「0(ゼロ)」であることを確認した(残存NCO確認工程)。
d) 第4の工程
その後、攪拌を停止し、静置した。(即ち、ブロックイソシアネート溶液のNCO値が「0(ゼロ)」となるまで、アンモニアを添加して攪拌を継続した。すると、ブロックイソシアネート溶液中に、ブロック化HDIからなるブロックイソシアネートが析出した(析出工程)。
e) 第5の工程
その後、このブロックイソシアネート溶液を、フィルターろ過により固液分離して、ブロックイソシアネートの固形物(第1の固形物)を得た(固形化工程)。この第1の固形物は、内部に、一定量の溶剤を含有するものである。次に、常温真空乾燥によって、このブロックイソシアネートの固形物からTHFを飛ばし、固体のブロックイソシアネートを得た(固体化工程)。
f) 第6の工程
その後、この固体のブロックイソシアネートを、ハンマーミルなどの小型粉砕機で粉砕し、所定粒径の粉体(粉体状ブロックイソシアネート組成物)を得た(粉砕工程)。
[特性の測定]
この粉体状ブロックイソシアネート組成物の融点、ガラス転移点を、DSC(示唆走査熱量計、株式会社パーキンエルマージャパン製)を使用して測定した。その測定結果を図10に示す。
次に、得られた粉体状ブロックイソシアネートと、ポリオール(ポリエステルオリオール)としてユピカコートGV110(日本ユピカ株式会社製)とを、1:4の割合で混合した混合物と、触媒としての全体の1%のDBTDL(ジラウリン酸ジブチルすず)とを、エクストルーダー(小型二軸押し出し機)に投入し、これらの混合物を120℃で混練及び押出して、棒状固体を得た(混錬押出工程)。この棒状固体は、本発明のブロックイソシアネート組成物を含有する粉体組成物の固体化物に相当する。
この棒状固体について、150℃で30分間(30min)の加熱条件下での熱処理後、ソックスレー型抽出器によりアセトン抽出を行い、特性値としてのゲル分率を測定した。この測定結果(測定値)を図10に示す。なお、その他の特性値(測定値)として、ブロックイソシアネート組成物のガラス転移点、融点、及び、ブロック剤解離温度も、あわせて図10に示す。
[実施例2−4]
実施例2〜4は、第2のブロック剤としてのジイソプロピルアミンの添加量のみ、実施例1と異なる。したがって、実施例2〜4では、実施例1の第1の工程−第3の工程に対応する工程のみ説明する。
[実施例2]
a) 第1の工程
まず、還流冷却器付きセパラブルフラスコに、イソシアネート成分としてのHDIヌレート(旭化成株式会社製のDURANATE TKA100)68.5gを入れ、溶剤としてのテトラヒドロフラン(以下、「THF」ということがある。)68.5gに溶解し、第1の溶液(イソシアネート溶液)を調製した(溶解工程)。
b) 第2の工程
次に、この第1の溶液を、温度50℃にて攪拌するが、このとき、撹拌機の回転数は500rpmとし(攪拌工程)、この攪拌状態の第1の溶液中に、第2のブロック剤であるアミン系ブロック剤としてのジイソプロピルアミン(DiPA)(東京化成工業株式会社製)16.4g(実施例1の2倍の量)を徐々に滴下して、10分間(10min)攪拌し(攪拌滴下工程)、これにより、ジイソプロピルアミンによってHDIからなるイソシアネート成分の一部のイソシアネート成分のNCO基をブロックし、結果、第1のブロックイソシアネート溶液を得た(第1のブロック工程)。
この第1のイソシアネート溶液には、実施例1で説明したように、イソシアネート成分(イソシアネート化合物としてのHDI)の全体中、一分子のHDIにおいて、3個のNCO基のうちの2個のNCO基がジイソプロピルアミンによってブロックされている。また、このとき、上記のように、イソシアネート化合物としてのHDIの全体中、一分子のHDIにおいて、3個のNCO基の全てがジイソプロピルアミンによってブロックされているものもあると考えられる。
そして、このようにして得た第1のブロックイソシアネート溶液のNCO値を測定した(第1のNCO測定工程)。このNCO値は、10分(10min)ほどで一定値となる。
c) 第3の工程
その後、第1のブロックイソシアネート溶液に、第1のブロック剤としてのアンモニアを添加すべく、アンモニアガスを吹き込み、これにより、アンモニアによって、ジイソプロピルアミンによりブロックされなかった残りのイソシアネート成分(非ブロックイソシアネート成分)のNCO基をブロックし、結果、第2ブロックイソシアネート溶液を得た(第2のブロック工程)。
この第2のイソシアネート溶液には、実施例1で説明したように、イソシアネート成分(イソシアネート化合物としてのHDI)の全体中、一分子のHDIにおいて、3個のNCO基のうちの2個のNCO基がジイソプロピルアミンによってブロックされ、かつ、3個のNCO基の残りの1個がアンモニア(アンモニアに起因する1級アミンによるウレア末端構造)によってブロックされている。
そして、このようにして得たブロックイソシアネート溶液のNCO値を測定し(第2のNCO測定工程)、NCO測定値が「0(ゼロ)」であることを確認した(残存NCO確認工程)。
[実施例3]
a) 第1の工程
まず、還流冷却器付きセパラブルフラスコに、イソシアネート成分としてのHDIヌレート(旭化成株式会社製のDURANATE TKA100)68.5gを入れ、溶剤としてのテトラヒドロフラン(以下、「THF」ということがある。)68.5gに溶解し、第1の溶液(イソシアネート溶液)を調製した(溶解工程)。
b) 第2の工程
次に、この第1の溶液を、温度50℃にて攪拌するが、このとき、撹拌機の回転数は500rpmとし(攪拌工程)、この攪拌状態の第1の溶液中に、第2のブロック剤であるアミン系ブロック剤としてのジイソプロピルアミン(DiPA)(東京化成工業株式会社製)25g(実施例1の約3倍の量)を徐々に滴下して、10分間(10min)攪拌し(攪拌滴下工程)、これにより、ジイソプロピルアミンによってHDIからなるイソシアネート成分の一部のイソシアネート成分のNCO基をブロックし、結果、第1のブロックイソシアネート溶液を得た(第1のブロック工程)。
この第1のイソシアネート溶液には、実施例1で説明したように、イソシアネート成分(イソシアネート化合物としてのHDI)の全体中、一分子のHDIにおいて、3個のNCO基のうちの2個のNCO基がジイソプロピルアミンによってブロックされている。また、このとき、上記のように、イソシアネート化合物としてのHDIの全体中、一分子のHDIにおいて、3個のNCO基の全てがジイソプロピルアミンによってブロックされているものもあると考えられる。
そして、このようにして得た第1のブロックイソシアネート溶液のNCO値を測定した(第1のNCO測定工程)。このNCO値は、10分(10min)ほどで一定値となる。
c) 第3の工程
その後、第1のブロックイソシアネート溶液に、第1のブロック剤としてのアンモニアを添加すべく、アンモニアガスを吹き込み、これにより、アンモニアによって、ジイソプロピルアミンによりブロックされなかった残りのイソシアネート成分(非ブロックイソシアネート成分)のNCO基をブロックし、結果、第2ブロックイソシアネート溶液を得た(第2のブロック工程)。
この第2のイソシアネート溶液には、実施例1で説明したように、イソシアネート成分(イソシアネート化合物としてのHDI)の全体中、一分子のHDIにおいて、3個のNCO基のうちの2個のNCO基がジイソプロピルアミンによってブロックされ、かつ、3個のNCO基の残りの1個がアンモニア(アンモニアに起因する1級アミンによるウレア末端構造)によってブロックされている。
そして、このようにして得たブロックイソシアネート溶液のNCO値を測定し(第2のNCO測定工程)、NCO測定値が「0(ゼロ)」であることを確認した(残存NCO確認工程)。
[実施例4]
a) 第1の工程
まず、還流冷却器付きセパラブルフラスコに、イソシアネート成分としてのHDIヌレート(旭化成株式会社製のDURANATE TKA100)68.5gを入れ、溶剤としてのテトラヒドロフラン(以下、「THF」ということがある。)68.5gに溶解し、第1の溶液(イソシアネート溶液)を調製した(溶解工程)。
b) 第2の工程
次に、この第1の溶液を、温度50℃にて攪拌するが、このとき、撹拌機の回転数は500rpmとし(攪拌工程)、この攪拌状態の第1の溶液中に、第2のブロック剤であるアミン系ブロック剤としてのジイソプロピルアミン(DiPA)(東京化成工業株式会社製)32.8g(実施例1の4倍の量)を徐々に滴下して、10分間(10min)攪拌し(攪拌滴下工程)、これにより、ジイソプロピルアミンによってHDIからなるイソシアネート成分の一部のイソシアネート成分のNCO基をブロックし、結果、第1のブロックイソシアネート溶液を得た(第1のブロック工程)。
この第1のイソシアネート溶液には、実施例1で説明したように、イソシアネート成分(イソシアネート化合物としてのHDI)の全体中、一分子のHDIにおいて、3個のNCO基のうちの2個のNCO基がジイソプロピルアミンによってブロックされている。また、このとき、上記のように、イソシアネート化合物としてのHDIの全体中、一分子のHDIにおいて、3個のNCO基の全てがジイソプロピルアミンによってブロックされているものもあると考えられる。
そして、このようにして得た第1のブロックイソシアネート溶液のNCO値を測定した(第1のNCO測定工程)。このNCO値は、10分(10min)ほどで一定値となる。
c) 第3の工程
その後、第1のブロックイソシアネート溶液に、第1のブロック剤としてのアンモニアを添加すべく、アンモニアガスを吹き込み、これにより、アンモニアによって、ジイソプロピルアミンによりブロックされなかった残りのイソシアネート成分(非ブロックイソシアネート成分)のNCO基をブロックし、結果、第2ブロックイソシアネート溶液を得た(第2のブロック工程)。
この第2のイソシアネート溶液には、実施例1で説明したように、イソシアネート成分(イソシアネート化合物としてのHDI)の全体中、一分子のHDIにおいて、3個のNCO基のうちの2個のNCO基がジイソプロピルアミンによってブロックされ、かつ、3個のNCO基の残りの1個がアンモニア(アンモニアに起因する1級アミンによるウレア末端構造)によってブロックされている。
そして、このようにして得たブロックイソシアネート溶液のNCO値を測定し(第2のNCO測定工程)、NCO測定値が「0(ゼロ)」であることを確認した(残存NCO確認工程)。
[実施例5]
a) 第1の工程
まず、還流冷却器付きセパラブルフラスコに、イソシアネート成分としてのHDIヌレート(旭化成株式会社製のDURANATE TKA100)68.5gを入れ、溶剤としてのテトラヒドロフラン(以下、「THF」ということがある。)68.5gに溶解し、第1の溶液(イソシアネート溶液)を調製した(溶解工程)。
b) 第2の工程
次に、この第1の溶液を、温度50℃にて攪拌するが、このとき、撹拌機の回転数は500rpmとし(攪拌工程)、この攪拌状態の第1の溶液中に、第2のブロック剤であるオキシム系ブロック剤としてのメチルエチルケトオキシム(MEKO)15.4gを徐々に滴下して、10分間(10min)攪拌し(攪拌滴下工程)、これにより、メチルエチルケトオキシムによってHDIからなるイソシアネート成分の(一分子のイソシアネート化合物における)一部のNCO基をブロックし、結果、第1のブロックイソシアネート溶液を得た(第1のブロック工程)。
この第1のイソシアネート溶液には、イソシアネート成分(イソシアネート化合物としてのHDI)の全体中、一分子のHDIにおいて、3個のNCO基のうちの1個または2個のNCO基がMEKOによってブロックされていると考えられる。また、このとき、イソシアネート化合物としてのHDIの全体中、一分子のHDIにおいて、3個のNCO基の全てがMEKOによってブロックされているものもあると考えられる。
そして、このようにして得た第1のブロックイソシアネート溶液のNCO値を測定した(第1のNCO測定工程)。このNCO値は、10分(10min)ほどで一定値となる。
c) 第3の工程
その後、第1のブロックイソシアネート溶液に、第1のブロック剤としてのアンモニアを添加すべく、アンモニアガスを吹き込み、これにより、アンモニア(アンモニアに起因する1級アミンによるウレア末端構造)によって、MEKOによりブロックされなかった残りのイソシアネート成分(非ブロックイソシアネート成分)のNCO基をブロックし、結果、第2ブロックイソシアネート溶液を得た(第2のブロック工程)。このとき、アンモニアとMEKOの比率は、50:50とした。
この第2のイソシアネート溶液には、イソシアネート成分(イソシアネート化合物としてのHDI)の全体中、一分子のHDIにおいて、3個のNCO基のうちの1個又は2個のNCO基がMEKOによってブロックされ、かつ、3個のNCO基の残りの1個又は2個がアンモニア(アンモニアに起因する1級アミンによるウレア末端構造)によってブロックされていると考えられる。
そして、このようにして得たブロックイソシアネート溶液のNCO値を測定し(第2のNCO測定工程)、NCO測定値が「0(ゼロ)」であることを確認した(残存NCO確認工程)。
上記のようにして得たブロックイソシアネート溶液は、NCO含有率が、15.8%であり、ガラス転移点(Tg)が、45℃であり、融点が、70℃であり、ブロック剤の解離温度が、140℃であり、ゲル分率(150℃・30min)が、22%であり、ゲル分率(180℃・30min)が、72%であった。
[比較例]
a) 第1の工程
まず、還流冷却器付きセパラブルフラスコに、イソシアネート成分としてのIPDIヌレート(住化コベストロウレタン株式会社製のDesmodur Z 4470 BA)95.1gを入れ、溶剤としてのテトラヒドロフラン(以下、「THF」ということがある。)66.6gに溶解し、第1の溶液(イソシアネート溶液)を調製した(溶解工程)。
b) 第2の工程
次に、この第1の溶液を、温度50℃にて攪拌するが、このとき、撹拌機の回転数は500rpmとし(攪拌工程)、この攪拌状態の第1の溶液中に、ブロック剤としてのε−カプロラクタム(東京化成工業株式会社製)33.9gを徐々に加え、60分間(60min)攪拌し(攪拌工程)、これにより、ε−カプロラクタムによってIPDIからなるイソシアネート成分のNCO基をブロックし、結果、ブロックイソシアネート溶液を得た(ブロック工程)。
そして、このようにして得たブロックイソシアネート溶液のNCO値を測定し(NCO測定工程)、NCO測定値が「0(ゼロ)」であることを確認した(残存NCO確認工程)。
d) 第3の工程
その後、攪拌を停止し、50℃の真空乾燥によってブロックイソシアネート溶液から溶媒を飛ばし、固体のブロックイソシアネートを得た(固体化工程)。
f) 第4の工程
その後、この固体のブロックイソシアネートを、ハンマーミルなどの小型粉砕機で粉砕し、所定粒径の粉体(粉体状ブロックイソシアネート組成物)を得た(粉砕工程)。
[特性の測定]
この粉体状ブロックイソシアネート組成物の融点、ガラス転移点を、DSC(示唆走査熱量計、株式会社パーキンエルマージャパン製)を使用して測定した。その測定結果を図10に示す。
次に、得られた粉体状ブロックイソシアネートと、ポリオール(ポリエステルオリオール)としてユピカコートGV110(日本ユピカ株式会社製)とを、1:4の割合で混合した混合物と、触媒としての全体の1%のDBTDL(ジラウリン酸ジブチルすず)とを、エクストルーダー(小型二軸押し出し機)に投入し、これらの混合物を120℃で混練及び押出して、棒状固体を得た(混錬押出工程)。
この棒状固体について、150℃で30分間(30min)の加熱条件下での熱処理後、ソックスレー型抽出器によりアセトン抽出を行い、特性値としてのゲル分率を測定した。この測定結果(測定値)を図10に示す。なお、その他の特性値として、ブロックイソシアネート組成物のガラス転移点、融点、及び、ブロック剤解離温度も、あわせて図10に示す。
[特性の概要]
本発明の実施の形態(実施例1−4)に係るブロックイソシアネート組成物の特性は、以下のとおりである。即ち、本発明の実施の形態(実施例1−4)に係るブロックイソシアネート組成物は、成分が、アミンブロックポリイソシアネート(HDI)であり、性状が、白色固体であり、NCO含有率が、15.7%である。
[使用方法(使用例)]
図1に示すように、本発明に係るブロックイソシアネート組成物(図1中の「BL−IS組成物」)は、所定のポリオール、所定の顔料、所定の触媒(所定の有機金属触媒)等、他の成分と混合されて、本発明に係る粉体塗料組成物を構成し、被着物(被塗物)に所定の吹き付け方法(静電塗装等)でコーティングされた後(吹き付け工程)、所定の温度域で加熱して焼き付けされ(焼き付け工程)、その後、所定時間の冷却(常温での冷却)を経て(冷却工程)、対応する顔料の色を発現した塗装膜を被着物の表面に固定化(即ち、塗装)した塗装製品を構成することができる。
[硬化特性]
本発明に係るブロックイソシアネート組成物は、所定のポリオール及び所定の触媒(有機金属触媒)と混合されて、本発明に係る粉体組成物を構成した場合、図2に示すような硬化特性を有している。即ち、図2において、グレー色の範囲(図中の曲線より上側の塗りつぶし範囲で、「標準硬化条件」との記載がある領域)は、ポリオールとしてのGV−110(ポリエステルポリオール:日本ユピカ株式会社製)80重量部に、本発明に係るブロックイソシアネート組成物(実施例1−3のブロックイソシアネート組成物を20重量部、DBTDL(ジラウリン酸ジブチルすず)を1重量部混合し(即ち、80:20:1の割合で混合し)、その混合物のゲル分率が100%となる硬化条件とした場合の硬化特性を示す。
[貯蔵方法]
本発明に係る粉体組成物は、ブロック剤によるブロッキングを生じないよう、30℃以下の温度環境中に保存及び貯蔵される。
[特性の詳細(比較例との対比)]
図3に、本発明の実施例1〜実施例3に相当する実施例(以下の説明では、単に、「実施例」という。)に係るブロックイソシアネート組成物の特性を、比較例1及び比較例2のブロックイソシアネート組成物の特性と対比して示す。なお、図3を参照して説明する比較例1及び比較例2は、上記実施例1〜実施例4との対比で説明した比較例とはことなるものである。即ち、図3の試料(サンプル)中、「実施例」は、本発明の実施例1〜実施例3に係るブロックイソシアネート組成物(以下、「HDI/アミン・アンモニアブロックポリイソシアネート」ということがある。)に対応する。また、「比較例1」は、イソシアネート化合物としてHDIのイソシアヌレート体を使用し、ブロック剤としてイソプロピルアミン(以下、単に、「アミン」ということがある。)を単体で使用したものである。即ち、比較例1は、上記実施例1〜4とは異なり、アミンと異なる他のブロック剤としてのアンモニアを全く含有しないものである。以下、比較例2のブロックイソシアネート組成物を、単に、HDI/アミンブロックポリイソシアネート」ということがある。更に、「比較例2」は、IPDI/ε−カプロラクタムブロックのイソシアネート樹脂(クレアノバ社製)に係るブロックイソシアネート組成物(以下、「IPDI/ε−カプロラクタムブロックポリイソシアネート」ということがある。)に対応する。表中、「N」及び「NCO%」は、KOH換算である。
本発明の実施例1〜実施例4に係るブロックイソシアネート組成物を硬化剤として含有する粉体組成物の硬化物の特性について、更に説明すると、その硬化物は、上記の図3に示す本発明の実施例1〜実施例3(「実施例」)に係るブロックイソシアネート組成物を硬化剤として使用した、図2に示す粉体組成物の硬化物として具体化することができ、ポリオールとしてのGV−110と、本発明の実施例1−3のブロックイソシアネート組成物と、DBTDLとの混合比を、1:4:0.01の比率とした粉体組成物の硬化物として具体化することができる。この場合の硬化物の物性を測定したところ、鉛筆硬度が8Hであり、(5% NaOH rt/240hによる)アルカリ耐性が良好であり、(5% HSO rt/240hによる)酸耐性が良好であり、ガラス転移点(Tg)が58℃であることが確認されている。一方、この実施例に対応する比較例として、上記比較例1について同様の特性を測定したところ、鉛筆硬度が8Hであり、(5% NaOH rt/240hによる)アルカリ耐性が良好であり、(5% HSO rt/240hによる)酸耐性が良好であり、ガラス転移点(Tg)が64℃であることが確認されている。しかし、この比較例1に係るブロックイソシアネート組成物(HDI/アミンブロックポリイソシアネート)は、ブロック剤としてアミンを単体で使用するため、液状であり、固体化することができないことを、本発明者らは実験結果により確認している。しかし、比較例1のHDI/アミンブロックポリイソシアネートは、液状ではあるものの、物性の測定は、固体状の本発明のイソシアネート組成物(HDI/アミン・アンモニアブロックポリイソシアネート)と同様に可能であるため、上記のような物性を有することが確認されている。
図4に、本発明の実施例1〜実施例3に係るブロックイソシアネート組成物を硬化剤として含有する粉体組成物の最適触媒量を示す。図4では、加熱条件が150℃で30分間であり、この場合、有効成分に対し、0.5−1.0%の触媒量が好適(最適)であることが分かる。
図5に、本発明の実施例1〜実施例3に係るブロックイソシアネート組成物のBL−イソシアネート残存率(補正済)を、比較例のブロックイソシアネート組成物のBL−イソシアネート残存率(補正済)と対比して示す。なお、図5を参照した説明では、「実施例」は、図3を参照して説明した「実施例」(HDI/アミン・アンモニアブロックポリイソシアネート)に相当し、「比較例1」及び「比較例2」は、それぞれ、図3を参照して説明した「比較例1」(HDI/アミンブロックポリイソシアネート)及び「比較例2」(IPDI/ε−カプロラクタムブロックポリイソシアネート)に相当する。即ち、図5では、2本の棒グラフを1組(1対)として、合計で3組のポリイソシアネート組成物に係るBL−イソシアネート残存率(補正済)を示す。図5では、左側の組の棒グラフが、本発明の実施例に係るHDI/アミン・アンモニアブロックポリイソシアネートのBL−イソシアネート残存率(補正済)を示し、中央の組の棒グラフが、比較例1としてのHDI/アミンブロックポリイソシアネートのBL−イソシアネート残存率(補正済)を示し、右側の組の棒グラフが、比較例2としてのIPDI/ε−カプロラクタムブロックポリイソシアネートのBL−イソシアネート残存率(補正済)を示す。また、本発明の実施例に係るHDI/アミン・アンモニアブロックポリイソシアネートの組中、左側の白抜のバーは、150℃で30分間の加熱条件下でのBL−イソシアネート残存率(補正済)を示し、右側のグレー色のバーは、150℃で60分間の加熱条件下でのBL−イソシアネート残存率(補正済)を示す。また、比較例1のHDI/アミンブロックポリイソシアネートの組中、左側の白抜のバーは、150℃で30分間の加熱条件下でのBL−イソシアネート残存率(補正済)を示し、右側のグレー色のバーは、150℃で60分間の加熱条件下でのBL−イソシアネート残存率(補正済)を示す。一方、比較例2のIPDI/ε−カプロラクタムブロックポリイソシアネートの組中、左側の白抜のバーは、180℃で30分間の加熱条件下でのBL−イソシアネート残存率(補正済)を示し、右側のグレー色のバーは、180℃で60分間の加熱条件下でのBL−イソシアネート残存率(補正済)を示す。
即ち、本発明の実施例に係るHDI/アミン・アンモニアブロックポリイソシアネート、及び、比較例1としてのHDI/アミンブロックポリイソシアネートに関しては、150℃の温度でブロック剤が解離するが、比較例2のIPDI/ε−カプロラクタムブロックポリイソシアネートに関しては、180℃でブロック剤が解離する(即ち、150℃では解離しない)。
このことから、本発明の実施例に係るHDI/アミン・アンモニアブロックポリイソシアネートでは、上記加熱条件で、NH−BL(アンモニアブロック)も解離し、硬化物の硬化に関与していることが分かる。一方、比較例2のIPDI/ε−カプロラクタムブロックポリイソシアネートに関しては、150℃ではεカプロラクタムは解離しないが、180℃であれば解離することが分かる。
図6に、本発明の実施例1〜実施例3に係るブロックイソシアネート組成物のゲル分率100%時の特性を、比較例のブロックイソシアネート組成物のゲル分率100%時の特性と対比して示す。なお、図6を参照した説明では、「実施例」は、図3を参照して説明した「実施例」(HDI/アミン・アンモニアブロックポリイソシアネート)に相当し、「比較例1」及び「比較例2」は、それぞれ、図3を参照して説明した「比較例1」(HDI/アミンブロックポリイソシアネート)及び「比較例2」(IPDI/ε−カプロラクタムブロックポリイソシアネート)に相当する。即ち、図6では、左側の2本の曲線のうちの上側の曲線(円形の点を結ぶ近似曲線)が、本発明の実施例に係るHDI/アミン・アンモニアブロックポリイソシアネートのゲル分率100%時の特性を示し、左側の2本の曲線のうちの下側の曲線(四角形の点を結ぶ近似曲線)が、比較例1としてのHDI/アミンブロックポリイソシアネートのゲル分率100%時の特性を示し、右側の1本の曲線(三角形の点を結ぶ近似曲線)が、比較例2のIPDI/ε−カプロラクタムブロックポリイソシアネートのゲル分率100%時の特性を示す。図6から、本発明の実施例に係るHDI/アミン・アンモニアブロックポリイソシアネートの場合、アンモニアは、短い時間では解離しにくいことが分かる。また、図6から、本発明の実施例に係るHDI/アミン・アンモニアブロックポリイソシアネートは、比較例2のIPDI/ε−カプロラクタムブロックポリイソシアネートに比べて、大幅は硬化時間の短縮が可能であることが分かる。
図7に、本発明の実施の形態に係るブロックイソシアネート組成物のHDI−DiPAブロック部分(HDIをジイソピルアミンでブロックしたもの)の分子構造を示す。
図8に、本発明の実施の形態に係るブロックイソシアネート組成物のHDI−アンモニアブロック部分(HDIをアンモニア(1級アミンによる末端ウレア構造)でブロックしたもの)の分子構造を示す。なお、図7では、HDIのイソシアヌレート体(3量体)の3個のNCO基の全てをジイソプロピルアミンがブロックした状態が描画されており、図8では、HDIのイソシアヌレート体(3量体)の3個のNCO基の全てをアンモニアに起因する1級アミンによる末端ウレア構造がブロックした状態が描画されているが、これは、あくまで説明の便宜上のものである。実際は、図9に示すように、基本的には、HDIのイソシアヌレート体(3量体)の3個のNCO基のうちの2個をジイソプロピルアミンがブロックし、残りの1個のNCO基をアンモニアに起因する1級アミンによる末端ウレア構造がブロックすることになる。
[特有の効果]
また、本発明によれば、ブロックイソシアネート組成物、当該ブロックイソシアネート組成物を使用した粉体組成物、当該ブロックイソシアネート組成物の製造方法、及び当該粉体組成物の製造方法、並びに、当該ブロックイソシアネート組成物を含有する粉体塗料組成物等のパウダーコーティング剤において、以下の特有の効果を発揮する。
常温で粉体である。
炉内を汚染しにくい。
高NCOである。
従来品と同等以上の効果性能を有する。
従来品と同等以上の物性を有する。
溶融温度が100℃以下である。
ポリエステルポリオールと相溶である。
上記のとおり、本発明者らは、ブロック剤としてアンモニア(第1のブロック剤)のみでHDIを固形化した場合には、得られるブロックイソシアネート組成物の融点(軟化点)が高くなるため、融点を特にポリエステルポリオールと相溶できる温度まで低下できるようにブロック剤を改良した(典型的には、アミン系のブロック剤を追加した)ブロックポリイソシアネートについて発明したものである。
[内容]
本発明に係るブロックイソシアネート組成物を要約すると、以下のとおりとなる。即ち、本発明に係るブロックイソシアネート組成物は、HDI等を2種類のブロック剤でブロックしたブロックイソシアネートである。また、本発明に係るブロックイソシアネート組成物は、アンモニアブロックとアミンブロックの比率が、例えば、30:70〜20:80である。また、本発明に係るブロックイソシアネート組成物は、イソシアネート成分(HDI等)のアミンブロックは、好ましくは、ジイソプロピルアミンによるブロックである。
[第1及び第2のブロック剤の添加順序]
前記第1のブロック剤(アンモニア)及び第2のブロック剤(アミン系ブロック剤等)のイソシアネート化合物への添加順序は、第2のブロック剤(アミン系ブロック剤等)を最初に添加し、第2のブロック剤によりイソシアネート成分のNCO基のうちの一部(第2のブロック剤の比率に応じた割合の部分)のNCO基をブロックした後、第1のブロック剤(アンモニア)を添加することが必須である。こうしないと、(即ち、第1のブロック剤であるアンモニアを先に添加すると)第1のブロック剤であるアンモニアが全てのイソシアネート成分のNCO基に付加してブロックすることになり、その後に第2のブロック剤を添加しても、第2のブロック剤によりイソシアネート成分のNCO基(少なくとも、一分子のイソシアネート成分中の一部のNCO基)がブロックされたブロックイソシアネート組成物を生成することができないことを、本発明者らは確認している。
<イソシアネート反応性化合物>
前記イソシアネート反応性化合物は、ポリオール、又は、ポリアミンからなり、詳細には、単糖、二糖類、少糖類、オリゴ糖、多糖類、及び多糖類の水性化されたもの、多価アルコール、芳香族系ポリオール、一級アミン化合物、二級アミン化合物、カルボン酸化合物、水、又はこれらの混合物である。単糖としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、リボース等がある。二糖類としては、マルトース、スクロース、トレハロース、ラクトース、セロビオース、イルマルトース、ゲンチオビース等がある。少糖類としては、ゲンチアノース、ラフィノース、パノース、メレジトース(以上三糖類)、スタキオース(四糖類)等があり、オリゴ糖としては、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ダイズオリゴ糖等がある。多糖類としては、澱粉、セルロース等があり、澱粉としては、タピオカ、馬鈴薯、コーン(とうもろこし)、小麦、甘藷、米、サゴ等がある。多糖類の水性化されたものとしては、デキストリン、アルファー澱粉等がある。好ましくは、本実施の形態のイソシアネート反応性化合物は、ポリオールとしてのポリビニルアルコール(PVA)やポリエステルポリオールからなる。
本発明のブロックイソシアネート組成物は、典型的には、粉体塗料等の粉体組成物に硬化剤として適用することができるが、接着剤や(塗料以外の)コーティング剤(好適には、パウダーコーティング剤)の硬化剤に適用することもできる。

Claims (10)

  1. イソシアネート化合物と熱解離性ブロック剤とから合成されたブロックイソシアネート組成物であって、
    前記熱解離性ブロック剤が、アンモニアからなる第1のブロック剤と、前記第1のブロック剤と異なる第2のブロック剤とからなることを特徴とするブロックイソシアネート組成物。
  2. 前記第2のブロック剤が、アミン系ブロック剤であることを特徴とする請求項1に記載のブロックイソシアネート組成物。
  3. 前記第2のブロック剤が、ジイソプロプルアミンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のブロックイソシアネート組成物。
  4. 前記イソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のブロックイソシアネート組成物。
  5. 前記第1のブロック剤と前記第2のブロック剤との比率が、10:90から60:40の範囲内にあることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のブロックイソシアネート組成物。
  6. イソシアネート化合物と熱解離性ブロック剤とから合成されたブロックイソシアネート組成物であって、
    前記イソシアネート化合物が、脂肪族イソシアネートからなり、
    前記熱解離性ブロック剤が、アンモニアからなる第1のブロック剤と、前記第1のブロック剤と異なる第2のブロック剤としてのアミン系ブロック剤又はオキシム系ブロック剤からなることを特徴とするブロックイソシアネート組成物。
  7. イソシアネート化合物と熱解離性ブロック剤とから合成されたブロックイソシアネート組成物であって、
    前記イソシアネート化合物が、複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物からなり、
    前記熱解離性ブロック剤が、アンモニアからなる第1のブロック剤と、前記第1のブロック剤と異なる第2のブロック剤とからなり、
    前記第2のブロック剤が、前記イソシアネート化合物の複数のイソシアネート基のうちの一部のイソシアネート基をブロックし、前記第1のブロック剤が、前記イソシアネート化合物の複数のイソシアネート基のうち前記第2のブロック剤がブロックしていない残部のイソシアネート基をブロックしていることを特徴とするブロックイソシアネート組成物。
  8. 前記第2のブロック剤がアミン系ブロック剤であり、前記第1のブロック剤としてのアンモニアと前記第2のブロック剤としてのアミン系ブロック剤との比率が、10:90から60:40の範囲内にあることを特徴とする請求項6又は7に記載のブロックイソシアネート組成物。
  9. 前記第2のブロック剤がオキシム系ブロック剤であり、前記第1のブロック剤としてのアンモニアと前記第2のブロック剤としてのオキシム系ブロック剤との比率が、50:50〜60:40の範囲内にあることを特徴とする請求項6又は7に記載のブロックイソシアネート組成物。
  10. 前記前記イソシアネート化合物が、イソシアネートのイソシアヌレート体であり、
    前記第2のブロック剤が、前記イソシアネート化合物の一分子中の3個のイソシアネート基のうちの2個のイソシアネート基をブロックし、前記第1のブロック剤が、前記イソシアネート化合物の3個のイソシアネート基のうち前記第2のブロック剤がブロックしていない残部の1個のイソシアネート基をブロックしていることを特徴とする請求項7に記載のブロックイソシアネート組成物。
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