JP2021114518A - 圧粉磁心の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】軟磁性粒子と、シリコーン樹脂と、ガラス成分とを含有する原料粉末に対して、温間成形を行って、圧粉磁心を製造する際に、あらかじめ加熱しておいた金型に成形原料を接触させても、成形工程の正常な実施が妨げられにくい圧粉磁心の製造方法を提供する。【解決手段】軟磁性粒子11と、シリコーン樹脂12と、ガラス成分13とを含有する原料粉末1を、予備成形金型に充填して、成形を行い、予備成形体2を得る予備成形工程と、予備成形体2を、予備成形工程における温度よりも高温に加熱して、予備成形体2中に含まれるシリコーン樹脂12を硬化させる硬化工程と、予備成形工程における予備成形金型以上の温度に加熱した本成形金型に、予備成形体2を配置して、温間成形を行い、本成形体3を得る本成形工程と、本成形体3に対して歪み取り焼鈍を行う歪み取り焼鈍工程と、をこの順に実行する、圧粉磁心の製造方法とする。【選択図】図1
Description
本発明は、圧粉磁心の製造方法に関し、さらに詳しくは、軟磁性粒子を含む材料を用いて、圧粉磁心を製造する方法に関する。
変圧器や発電機、電動機等、電磁誘導を利用する電気機器には、軟磁性材料よりなる磁心(コア)が設けられることが多い。それらの電気機器の高性能化や小型化に伴い、磁心には、鉄損が小さいこと等、高い磁気特性を有することが求められるようになっている。例えば、変圧器の一種であるリアクトルが、電気自動車等に搭載されて用いられるが、電気自動車に用いられる交流の高周波数化に伴って、従来よりも、鉄損が小さく、高周波特性に優れた磁心が、求められるようになっている。
従来、電気機器の磁心は、電磁鋼板を用いて製造されてきたが、高周波特性に優れた軟磁性粒子を含む粉末材料を加圧成形して、磁心を製造することが、試みられている。このような磁心は、圧粉磁心と称される。例えば、下記の特許文献1に、Fe−Si合金粒子に代表される軟磁性粒子と、加熱硬化型のシリコーン樹脂からなり該軟磁性粒子の表面を被覆する第1被覆層と、該軟磁性粒子の焼鈍温度よりも低い軟化点を有する低軟化点ガラスからなり該第1被覆層の表面を被覆する第2被覆層と、からなる圧粉磁心が開示されている。ここでは、各軟磁性粒子が、第1被覆層および第2被覆層の二重の高絶縁性層によって被覆された状態となるので、圧粉磁心が非常に高い比抵抗を安定的に示すとされている。また、焼鈍時に軟化さらには溶融したガラスが、隣接する軟磁性粒子間でバインダーの役割も果たすとされている。特許文献1では、圧粉磁心の製造は、軟磁性粒子と、シリコーン樹脂からなり該軟磁性粒子の表面を被覆する樹脂層と、該樹脂層上に付着したガラス微粒子と、からなる磁心用粉末を金型に充填する充填工程と、該金型内の磁心用粉末を加圧成形する成形工程と、該成形工程後に得られた成形体を焼鈍する焼鈍工程とを経て、行われている。
圧粉磁心において、低損失化をさらに進める観点から、原料の軟磁性粒子として、種々の合金材料を用いることが検討されている。例えば、特許文献1では、圧粉磁心を構成する軟磁性粒子として、Fe−Si合金よりなるものが用いられており、実施例では、Fe−3SiやFe−1Siの組成を有する軟磁性粒子が用いられているのに対し、Siの含有量をさらに高めた軟磁性粒子を用いることで、低損失化を進めることが、検討されている。しかし、Fe−Si合金において、Siの含有量を高めると、粉末硬度が高くなり、室温等、冷間での成形を行うとすれば、十分に材料密度を高めるためには、高面圧を印加する必要が生じる。一方、成形歪みを抑制するためには、所望の形状への成形を、高温で行うことが必要となる。そこで、冷間での成形ではなく、温間成形を行うようにすれば、粉末硬度の高い軟磁性粒子でも、変型抵抗が低下し、成形が行いやすくなるので、面圧を小さく抑えても、材料密度を高めながら、所望の形状への成形を行うことができると期待される。
原料粉末を成形するに際し、所定の成形温度に金型を加熱した状態で、金型に原料粉末を充填すれば、成形を高効率で進めることができる。しかし、特許文献1に記載されるように、軟磁性粒子に加えて、シリコーン樹脂やガラス成分を含有する原料粉末を、高温に加熱した金型に充填して成形しようとすると、成形を正常に行えない場合が生じうる。例えば、硬度の高い軟磁性粒子に対して、変形抵抗を低減する必要性等により、温間成形を行う場合に、高温に加熱した金型に、シリコーン樹脂を含有する原料粉末を充填するとすれば、充填中にシリコーン樹脂が硬化を起こす場合がある。すると、シリコーン樹脂が粗大な塊を形成して硬化する事態や、金型の辺縁部や狭窄部等をはじめとして、原料粉末が十分に行き渡らない箇所が生じる事態等が起こり、原料粉末の充填に支障が生じうる。その結果、金型内に原料粉末を、均一性高く、また高密度に充填して成形を行うことが、難しくなる可能性がある。このような事態が発生すると、所望の形状および特性を有する磁心が得られない場合が生じうる。
本発明が解決しようとする課題は、軟磁性粒子と、シリコーン樹脂と、ガラス成分とを含有する原料粉末に対して、温間成形を行って、圧粉磁心を製造する際に、あらかじめ加熱しておいた金型に成形原料を接触させても、成形工程の正常な実施が妨げられにくい圧粉磁心の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明にかかる圧粉磁心の製造方法は、軟磁性粒子と、シリコーン樹脂と、ガラス成分とを含有する原料粉末を、予備成形金型に充填して、成形を行い、予備成形体を得る予備成形工程と、前記予備成形体を、前記予備成形工程における温度よりも高温に加熱して、前記予備成形体中に含まれる前記シリコーン樹脂を硬化させる硬化工程と、前記予備成形工程における前記予備成形金型以上の温度に加熱した本成形金型に、前記予備成形体を配置して、温間成形を行い、本成形体を得る本成形工程と、前記本成形体に対して歪み取り焼鈍を行う歪み取り焼鈍工程と、をこの順に実行するものである。
ここで、前記予備成形工程は、80℃以下の温度で実施し、前記硬化工程および前記本成形工程は、150℃以上の温度で実施するとよい。
前記硬化工程の後、前記予備成形体の表面に、潤滑剤を配置する潤滑工程を実行し、前記潤滑工程の後に、前記本成形工程を実行するとよい。
前記軟磁性粒子は、Siを4質量%以上含有するFe基合金よりなるとよい。
前記本成形工程において、前記本成形金型を150℃以上900℃以下の温度に加熱して成形を行うとよい。
上記発明にかかる圧粉磁心の製造方法においては、原料粉末を予備成形金型に充填して予備成形工程を実施した後で、硬化工程において、予備成形体を予備成形時よりも高温に加熱して、予備成形体中のシリコーン樹脂を硬化させる。そのうえで、予備成形時の予備成形金型以上の温度に加熱した本成形金型に、得られた予備成形体を配置して、温間成形によって、本成形工程を実施する。温間成形を行うために、予め加熱した金型に、直接原料粉末を充填するのではなく、硬化工程によって、既にシリコーン樹脂を硬化させて固形状とした予備成形体を配置するので、シリコーン樹脂が粗大な塊を形成したり、原料粉末が十分に行き渡らない箇所が本成形金型内に生じたりといった、高温の金型に粉末状の成形原料が接触した場合に起こりうる、シリコーン樹脂の硬化によって生じる事象を、抑制することができる。このように、予備成形工程と硬化工程を経ることで、本成形工程での温間成形を、円滑に進めることができる。
本成形工程を、温間成形工程として実施することにより、軟磁性粒子の粉末硬度が高い場合でも、軟磁性粒子の変形抵抗を低下させた状態で本成形工程を実施することができ、高い相対密度を有する成形体を得ることができる。また、本成形に必要な面圧を小さく抑えることができるため、成形歪みが小さく抑えられる。相対密度の向上および成形歪みの低減により、高い磁気特性を有する圧粉磁心が得られやすくなる。
ここで、予備成形工程を、80℃以下の温度で実施し、硬化工程および本成形工程を、150℃以上の温度で実施する場合には、シリコーン樹脂の硬化の影響を回避しながら、低温で原料粉末を予備成形金型に充填して予備成形を行ったうえで、硬化工程において、シリコーン樹脂の硬化によって、予備成形体の取り扱い性を効果的に高めることができる。さらに本成形工程において、相対密度を向上させながら、成形を行いやすくなる。
ここで、硬化工程の後、本成形金型または予備成形体の表面に、潤滑剤を配置する潤滑工程を実行し、潤滑工程の後に、本成形工程を実行する場合において、予備成形体の表面に潤滑剤を配置しておく態様は、本成形金型の表面に潤滑剤を配置する必要がなくなるため、好ましい。潤滑剤を、本成形金型の表面に配置する場合よりも、予備成形体の表面に配置する場合の方が、簡便に、各箇所に偏りなく潤滑剤を配置しやすい。硬化工程において、予備成形体中のシリコーン樹脂を硬化させておくことで、予備成形体の取り扱い性が高くなっており、予備成形体の表面への潤滑剤の配置も行いやすい。
軟磁性粒子が、Siを4質量%以上含有するFe基合金よりなる場合には、低損失で磁気特性に優れた圧粉磁心を製造することができる。Siを高濃度で含有することで、軟磁性粒子の硬度が高くなり、成形が困難になるが、予備成形工程を経ることで、高温に加熱した本成形金型を用いて本成形工程を実行することができるため、高面圧の印加による成形歪みの増大を避けながら、所望の形状を有し、相対密度の高くなった圧粉磁心を得ることができる。
本成形工程において、本成形金型を150℃以上900℃以下の温度に加熱して成形を行う場合には、150℃以上に加熱して、軟磁性粒子の変形抵抗を低下させた状態で本成形工程を実施することになり、高い相対密度を有する成形体を得ることができる。また、本成形に必要な面圧を小さく抑えることができるため、成形歪みが小さく抑えられる。相対密度の向上および成形歪みの低減により、高い磁気特性を有する圧粉磁心が得られやすくなる。一方、本成形時の温度を900℃以下に抑えておくことで、高温によるシリコーン樹脂の変性を抑制することができる。
以下に、本発明の一実施形態にかかる圧粉磁心の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の一実施形態にかかる圧粉磁心の製造方法の概略を、図1に示す。本実施形態にかかる圧粉磁心の製造方法においては、(1)原料準備工程、(2)予備成形工程、(3)硬化工程を実施し、さらに、(4)潤滑工程を任意に経た後、(5)本成形工程、(6)歪み取り焼鈍工程を実施する。これらの各工程を経ることで、原料粉末を所望の形状に成形し、圧粉磁心を製造することができる。以下、各工程について、順に説明する。
(1)原料準備工程
原料準備工程においては、圧粉磁心の原料となる原料粉末1を準備する。原料粉末1は、軟磁性粒子11と、シリコーン樹脂12と、ガラス成分13とを含有するものである。ここで、各成分について、簡単に説明する。
原料準備工程においては、圧粉磁心の原料となる原料粉末1を準備する。原料粉末1は、軟磁性粒子11と、シリコーン樹脂12と、ガラス成分13とを含有するものである。ここで、各成分について、簡単に説明する。
軟磁性粒子11は、軟磁性を示す金属材料よりなるものであれば、具体的な合金組成を限定されるものではないが、圧粉磁心の鉄損を小さく抑える等の観点から、Fe−Si合金(Siを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる合金)をはじめとして、Siを含有するFe基合金を用いることが好ましい。中でも、それらFe基合金において、Siの含有量を、4質量%以上としておけば、鉄損がとりわけ小さく抑えられ、磁気特性に優れた圧粉磁心を製造することができる。なお、磁気特性向上効果の飽和や、粉末硬度の過度の上昇を避ける観点から、Siの含有量は、7質量%以下程度に抑えておくとよい。軟磁性粒子11の粒径も、特に限定されるものではないが、圧粉磁心の鉄損を効果的に抑制する等の観点から、ふるい法による平均粒径で、10μm以上、また100μm以下の粒径を有するものを、好適に利用することができる。軟磁性粒子11は、例えばガスアトマイズ法により、好適に製造することができる。
シリコーン樹脂12は、製造される圧粉磁心において、軟磁性粒子11の表面を被覆し、各軟磁性粒子11を絶縁する役割を果たす。その結果、軟磁性粒子11の比抵抗が大きくなり、渦電流損失が小さく抑えられることになる。シリコーン樹脂12は、室温硬化型のものであっても、室温以上の温度での加熱により硬化する、加熱硬化型(ミラブル型)のものであってもよいが、加熱硬化型のものであることが、より好ましい。
シリコーン樹脂12の具体的な種類は、続く予備成形工程および硬化工程を経て、予備成形金型から取り出しても崩れることなく取り扱える予備成形体を与えるものであれば、特に限定されるものではない。つまり、予備成形工程を実施する際の温度では、予備成形工程の実施に影響を与えるような変態(硬化や液状化)を起こさない一方、硬化工程を実施する際の温度では、硬化を起こすものであればよい。例えば、特許文献1で使用されているのと同様のシリコーン樹脂を、適用することができ、レジン系、シラン化合物系、ゴム系等、公知のシリコーン樹脂から適宜選択すればよい。好適なシリコーン樹脂として、信越化学工業株式会社製「KR−220LP」等を例示することができる。シリコーン樹脂の中には、硬化を起こすよりも前に(硬化よりも低温で)、液状化(軟化)を起こすものもあり、上記「KR−220LP」も、そのような樹脂である。本実施形態にかかる製造方法においては、本成形工程に先立って、予備成形工程および硬化工程を実施することの意義を高める観点から、シリコーン樹脂12として、そのように、液状化を経て硬化を起こすものを用いることが、特に好ましい。
原料粉末1中で、シリコーン樹脂12は、どのような形態をとっていてもよい。例えば、軟磁性粒子11およびガラス成分の粒子13とは独立した粒子の形態で混合されていてもよいが、図1に示すように、シリコーン樹脂12が、層状に、軟磁性粒子11の表面に付着している形態が好ましい。このように、シリコーン樹脂12が軟磁性粒子11の表面に付着した複合粒子は、例えば、粒子状のシリコーン樹脂12を、アルコールやケトン等の溶剤に溶解または懸濁させて、シリコーン原料液を調製し、そのシリコーン原料液中に軟磁性粒子11を分散させた後、適宜乾燥させて溶剤を除去することで、形成することができる。
原料粉末1中におけるシリコーン樹脂12の含有量は、特に限定されるものではないが、軟磁性粒子11に対する絶縁効果を十分に高める観点から、原料粉末1全体を100質量%として、3質量%以上、さらには5質量%以上であることが好ましい。一方、圧粉磁心における軟磁性粒子11の密度を十分に確保する等の観点から、原料粉末1におけるシリコーン樹脂12の含有量は、7質量%以下程度に抑えておくことが好ましい。
ガラス成分13は、製造される圧粉磁心において、軟磁性粒子11同士を結着させ、圧粉磁心の機械強度を高めるものとなる。さらに、ガラス成分13は、圧粉磁心において、シリコーン樹脂12とともに、原料粉末1の表面を絶縁して、渦電流損失を低減する効果をさらに高める役割を果たす。ガラス成分13を構成する具体的なガラスの種類は、後の歪み取り焼鈍工程における加熱温度よりも低い軟化温度を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、ホウケイ酸塩系ガラス、酸化バナジウム系ガラス、リン酸塩系ガラス等、特許文献1に列挙されている各種の低融点ガラスを用いることができる。また、ガラス成分13としては、ガラス系バインダやガラス潤滑剤として市販されている、ガラス粒子、またはガラス粒子を含んだ組成物を用いることができる。
原料粉末1中に、ガラス成分13は、どのような状態で含有されていてもよいが、図1中に示すように、粒子を形成していることが好ましい。さらに、このガラス成分の粒子13は、シリコーン樹脂12が軟磁性粒子11の表面に付着した複合粒子の表面に付着していることが好ましい。この付着状態は、例えば、シリコーン樹脂12を軟磁性粒子11の表面に付着させる際に使用されるシリコーン原料液に、軟磁性粒子11とともに、ガラス成分の粒子13を、必要に応じて水等の分散媒に分散させた状態で、添加して混合し、乾燥させることで、形成することができる。
ガラス成分13の粒子径は、特に限定されるものではないが、後の歪み取り焼鈍工程における軟化または溶融を経て、圧粉磁心中で、軟磁性粒子11の表面や粒子間の空間に均一性高く広がりやすいように、軟磁性粒子11の粒径よりも小さいことが好ましい。さらに、ガラス成分13の粒子径は、空気透過法による平均粒径で、0.1μm以上また10μm以下であることが好ましい。原料粉末1におけるガラス成分13の含有量も、特に限定されるものではないが、軟磁性粒子11に対する結着および絶縁の効果を十分に高める観点から、原料粉末1全体を100質量%として、1質量%以上、さらには5質量%以上であることが好ましい。一方、圧粉磁心における軟磁性粒子11の密度を十分に確保する等の観点から、原料粉末1におけるガラス成分13の含有量は、10質量%以下程度に抑えておくことが好ましい。
(2)予備成形工程
予備成形工程においては、上記原料準備工程で準備した原料粉末1を、予備成形金型に充填したうえで、加圧を行って成形し、予備成形体2を得る。
予備成形工程においては、上記原料準備工程で準備した原料粉末1を、予備成形金型に充填したうえで、加圧を行って成形し、予備成形体2を得る。
予備成形工程においては、後の本成形工程よりも小さな面圧、また本成形工程よりも小さな圧縮率で、成形を行う。予備成形金型の形状によって定まる予備成形体2の形状は、最終的に所望される本成形体3の形状とは異なっており、本成形工程において用いる本成形金型のキャビティに収容可能な形状とされる。
予備成形工程において、最初に予備成形金型に原料粉末1を充填するが、充填を行う間の予備成形金型の温度は、続く硬化工程および本成形工程における金型温度よりも、低くしておく。これにより、予備成形工程および次の硬化工程を実施せず、高温に加熱した金型に直接原料粉末1を充填して温間成形を行う場合と比較して、シリコーン樹脂12が粗大な塊を形成する事態や、金型の中の一部の箇所に原料粉末1が十分に行き渡らなくなる事態等、シリコーン樹脂12の硬化が起こった場合に想定される原料粉末1の充填や成形への影響を、低減することができる。好ましくは、予備成形金型の温度は、原料粉末1に含まれるシリコーン樹脂12が変態(硬化や液状化)を起こす温度よりも低い温度としておくとよい。
原料粉末1を充填する際の予備成形金型の具体的な温度は、特に限定されるものではないが、80℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは室温(20〜30℃)としておくことが好ましい。予備成形工程の後、硬化工程を実施するサイクルを、材料を交換しながら何度も繰り返す場合には、ある回の予備成形工程および硬化工程の後、予備成形金型を上記の温度以下に放冷してから、次の回の原料粉末1の充填を行うとよい。
原料粉末1を予備成形金型に充填した後、原料粉末1を加圧して成形を行う際の温度は、特に限定されるものではなく、金型を加熱せずに成形を行っても、金型を加熱しながら成形を行ってもよい。ただし、続く硬化工程で、予備成形体に対して加熱を行うので、予備成形工程においては、あえて充填時の温度よりも高温まで加熱する必要はなく、原料粉末1を充填した状態のままで、成形を行えばよい。
(3)硬化工程
硬化工程においては、予備成形工程で得られた予備成形体2を加熱して、予備成形体2に含有されるシリコーン樹脂12を硬化させる。硬化工程は、予備成形体2を予備成形金型に収容したまま、予備成形金型を加熱することで、行うとよい。
硬化工程においては、予備成形工程で得られた予備成形体2を加熱して、予備成形体2に含有されるシリコーン樹脂12を硬化させる。硬化工程は、予備成形体2を予備成形金型に収容したまま、予備成形金型を加熱することで、行うとよい。
硬化工程において、予備成形体2を加熱する温度は、予備成形工程を実施している間の原料粉末1や予備成形体2の温度以上であり、かつ、シリコーン樹脂12を硬化させることができる温度とする。具体的な温度は特に限定されるものではないが、150℃以上としておけば、効果的にシリコーン樹脂12を硬化させ、予備成形体2の固形性を高めることができる。硬化工程において、予備成形体2を加熱する時間としては、シリコーン樹脂12が十分に硬化できるだけの時間を確保するとよい。また、硬化工程における加熱温度は、後の本成形工程における加熱温度における加熱温度以下としておくことが好ましい。
硬化工程において、予備成形体2を予備成形工程における温度以上に加熱して、予備成形体2中のシリコーン樹脂12を硬化させることで、シリコーン樹脂12が、軟磁性粒子11を相互に結着させる一種のバインダとしての役割を発揮し、予備成形体全体が安定した固形体となるため、予備成形体2の取り扱い性が、顕著に向上されるようになる。その状態で、予備成形体2を予備成形金型から取り出せば、取り出しを行いやすい。また、次の潤滑工程において、本成形金型または予備成形体2の表面に潤滑剤4を噴霧、塗布等する段階や、本成形工程において予備成形体2を本成形金型に配置する段階を、予備成形体2の欠損や崩落等を避けて、実行しやすくなる。硬化工程において、予備成形体2に含有されるシリコーン樹脂12を加熱によって硬化させるが、原料粉末1を粉末状で高温の金型に充填する場合とは異なり、低温の予備成形金型に原料粉末1を充填したうえで、予備成形工程によって予備成形体2としてから、硬化工程によって加熱を行うため、シリコーン樹脂12の硬化は、予備成形金型からの予備成形体2の取り出し等、硬化工程およびその後の工程において、妨げとなりにくい。
硬化工程でのシリコーン樹脂12の硬化が完了すると、適宜、予備成形金型の加熱を停止したうえで、予備成形体2を予備成形金型から取り出せばよい。得られた予備成形体2は、そのまま本成形工程に供してもよいが、次に説明する潤滑工程を経たうえで、本成形工程を実施することが好ましい。
(4)潤滑工程
硬化工程の後、潤滑工程を実施することが好ましい。潤滑工程においては、本成形金型または予備成形体2の表面に、潤滑剤4を配置する。
硬化工程の後、潤滑工程を実施することが好ましい。潤滑工程においては、本成形金型または予備成形体2の表面に、潤滑剤4を配置する。
潤滑剤4としては、金属材料の成形において、金型と金属材料との間に配置される潤滑剤として汎用されているものを用いればよい。具体的には、黒鉛等の炭素材料、モリブデン化合物等の金属系潤滑剤、BN等の窒化物、SiO2等の酸化物を例示することができる。本成形金型または予備成形体2の表面に潤滑剤4を配置する方法としては、粉末状でのスプレー噴霧、ペースト状での塗布等を挙げることができる。
潤滑工程において、本成形金型または予備成形体2の表面に配置された潤滑剤4は、次の本成形工程において、本成形金型と予備成形体2の間に介在され、成形時や、製造された本成形体3の取り出し時に、摩擦抵抗を低減する役割を果たす。潤滑工程において、予備成形体2の表面に潤滑剤4を配置する態様は、本成形金型の表面に、潤滑剤4を配置する必要がなくなるため、好ましい。予備成形体2は、硬化工程を経て、取り扱い性の高い固形体となっており、本成形金型の内側に潤滑剤4を配置する態様と比較して、予備成形体2の外表面に潤滑剤4を配置する態様の方が、簡便に実施することができ、さらに、潤滑剤4を各位置に偏りなく配置して、潤滑効果を発揮させやすくなる。特に、本成形金型が複雑な形状を有している場合には、それらの効果が大きくなる。
(5)本成形工程
硬化工程の後、適宜潤滑工程を経て、温間成形によって、本成形工程を実施する。本成形工程においては、予備成形体2を本成形金型に配置して加圧し、成形を行う。
硬化工程の後、適宜潤滑工程を経て、温間成形によって、本成形工程を実施する。本成形工程においては、予備成形体2を本成形金型に配置して加圧し、成形を行う。
本成形工程は、磁心を製造するための最終的な成形工程であり、本成形金型は、最終的に所望される本成形体3に対応する形状を有している。また、本成形工程は、予備成形工程よりも高い面圧を適用して、高い圧縮率で行われる。
先の予備成形工程においては、予備成形金型を低温に保ったまま、成形原料たる原料粉末1の充填を行ったが、本成形工程においては、あらかじめ、本成形金型を、予備成形工程における予備成形金型以上の温度に加熱した状態で、本成形金型に、成形原料たる予備成形体2を配置する。そして、金型を加熱した状態を維持したまま、予備成形体2に対する成形を行う。好ましくは、予備成形体2の配置および成形を、同じ温度に金型を加熱した状態で行うとよい。予備成形体2を配置する前から、本成形金型をあらかじめ加熱しておくことで、多数の予備成形体2に対する成形を連続して行う場合等に、本成形工程を効率的に実施することができる。
本成形工程における本成形金型の温度は、予備成形体2を配置する際に、予備成形工程において予備成形金型が有していた温度以上となっており、かつ本成形工程を温間成形として実施することができる温度であれば、特に限定されるものではないが、硬化工程における温度と同じか、それよりも高くしておくことが好ましい。温間成形は、おおむね150℃以上の温度で成形を行う工程であり、本成形工程における本成形金型の温度も、150℃以上としておくことが好ましい。150℃以上の温度で成形を行うことで、軟磁性粒子11の変形抵抗を十分に低減し、密度を高めながら、所望の形状への成形を行いやすくなる。本成形金型の温度は、さらには250℃以上とすることが好ましく、400℃以上とすることがより好ましい。一方、高温によるシリコーン樹脂12の変性を抑制する等の観点から、成形温度は、900℃以下、さらには850℃以下としておくことが好ましい。本成形工程を経た本成形体3における軟磁性粒子11の密度は、相対密度で、75%以上、さらには80%以上となることが好ましい。
特許文献1に記載される形態等、従来、軟磁性粒子とシリコーン樹脂12を含む原料粉末1の成形を行う場合には、予備成形工程を経ることなく、原料粉末1を直接金型に充填し、本成形工程に相当する最終形状への成形を行っていた。この場合に、あらかじめ高温に加熱した金型に、原料粉末1を充填するとすれば、充填を進める途中に、シリコーン樹脂12が集合して、当初の粒径よりも大きな塊を形成した状態で硬化することや、硬化したシリコーン樹脂12が金型の表面に固着すること等により、金型の辺縁部や狭窄部のように、他の箇所と比べて狭くなった箇所や複雑な形状を有する箇所に、原料粉末1が十分に行き渡らなくなる可能性がある。すると、金型の各位置に、原料粉末1を、均一性高く、また高密度に充填することが難しくなる。その結果、正常に成形を行えなくなる事態や、成形を行えたとしても、十分に均一性高く、また高密度に軟磁性粒子11が圧縮された圧粉磁心が得られなくなる事態が起こりうる。すると、所望の形状および密度を有し、高い磁気特性を発揮する圧粉磁心を製造することが難しくなる。
これに対し、本実施形態にかかる製造方法においては、予備成形工程によって、あらかじめ固形状の予備成形体2を形成し、さらに硬化工程において予備成形体2の固形性を高めておいたうえで、本成形工程においては、原料粉末1ではなく、その予備成形体2を、加熱した本成形金型に配置する。予備成形体2が、既にシリコーン樹脂12が硬化した固形体となっていることにより、予備成形体2を本成形金型に配置する操作を、簡便に行うことができる。また、成形原料を金型に配置する際に、シリコーン樹脂12の硬化によって生じる影響が、低減される。つまり、既に固形状となった予備成形体2を本成形金型に配置することで、加熱された本成形金型に接触して硬化するシリコーン樹脂12が、少量に抑えられる。また、一部のシリコーン樹脂12が金型表面で硬化して固着することや、粗大な塊を形成することがあったとしても、既に全ての成形原料が、予備成形体2として、本成形金型のキャビティに収容された状態にあるので、その固着や粗大粒の形成によって、成形原料の充填が妨げられるという事態は、起こりにくい。
このように、高温での本成形工程を、予備成形工程および硬化工程を経てから実施することで、シリコーン樹脂12の金型表面への固着や粗大粒の形成による原料粉末1の充填の不均一化等、シリコーン樹脂12の硬化に起因して、成形原料の充填およびそれに続く成形工程の円滑な実施が妨げられる可能性を、低減することができる。特に、シリコーン樹脂12が、液状化を経て硬化を起こす種類のものである場合には、原料粉末1の状態で加熱を受けると、液状体が集合することで、粗大粒の形成が起こりやすいので、本成形工程に先立って、予備成形工程および硬化工程を実施することの効果が、特に大きくなる。
予備成形工程および硬化工程を経ることで、本成形工程でのシリコーン樹脂12の硬化による影響を軽減できることにより、本成形工程を、温間成形工程として実施することが可能となる。すると、例えば、軟磁性粒子11の粉末硬度が高い場合でも、加熱によって軟磁性粒子11の変形抵抗を低下させることができる。その結果、印加する面圧を過度に高めなくても、軟磁性粒子11の密度を十分に高めて、所望の形状への成形を行うことが可能となる。例えば、軟磁性粒子11として、Fe−Si合金を用いる場合、特に合金におけるSiの含有量を4質量%以上とする場合には、軟磁性粒子11の硬度が高くなり、室温等、低温での成形では、高密度に成形することが難しい。しかし、温間成形によって本成形工程を実施すること、例えば、150℃以上、好ましくは250℃以上、より好ましくは400℃以上の高温で本成形工程を実施することで、軟磁性粒子11が高密度で充填され、低損失等、高い磁気特性を発揮しうる圧粉磁心を製造することができる。
(6)歪み取り焼鈍工程
最後に、本成形工程を経て得られた本成形体3を加熱することで、歪み取り焼鈍工程を実施する。これにより、本成形工程を経て本成形体3に印加された成形歪みを緩和することができる。同時に、本成形体3中のガラス成分13を軟化、あるいはさらに溶融させ、シリコーン樹脂12の層に被覆された軟磁性粒子11の表面や、粒子間の空隙に、均一性高く分布させることができる。
最後に、本成形工程を経て得られた本成形体3を加熱することで、歪み取り焼鈍工程を実施する。これにより、本成形工程を経て本成形体3に印加された成形歪みを緩和することができる。同時に、本成形体3中のガラス成分13を軟化、あるいはさらに溶融させ、シリコーン樹脂12の層に被覆された軟磁性粒子11の表面や、粒子間の空隙に、均一性高く分布させることができる。
歪み取り焼鈍工程における加熱温度は、成形歪みの除去を達成することができ、かつ、ガラス成分13の軟化点以上の温度とすればよい。加熱温度として、600℃以上、また900℃以下の温度を例示することができる。
歪み取り焼鈍工程を経た本成形体3は、適宜、機械加工や他の部材の取り付け等を経て、圧粉磁心とされる。製造された圧粉磁心は、車載用リアクトル等の変圧器をはじめとして、種々の電気機器に、好適に使用することができる。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。ここでは、予備成形工程および硬化工程の有無、および本成形工程における成形温度を変化させた複数の成形条件において、成形の可否、および得られる本成形体の密度を評価した。
[試験方法]
(試料の作製)
ガスアトマイズ法により、Fe−6.5Si合金(6.5質量%のSiを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる合金)よりなる軟磁性粒子を作製した。軟磁性粒子のふるい法による平均粒径は、30μmであった。さらに、シリコーン樹脂(信越化学工業株式会社製「KR−220LP」;軟化点67℃)をエタノールに溶解させ、その溶液の中に、軟磁性粒子を分散させるとともに、ガラス成分の粒子(AGC株式会社製「200GF」;軟化点648℃)を添加し、撹拌した。乾燥によって溶媒を除去して、成形用の原料粉末を得た。
(試料の作製)
ガスアトマイズ法により、Fe−6.5Si合金(6.5質量%のSiを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる合金)よりなる軟磁性粒子を作製した。軟磁性粒子のふるい法による平均粒径は、30μmであった。さらに、シリコーン樹脂(信越化学工業株式会社製「KR−220LP」;軟化点67℃)をエタノールに溶解させ、その溶液の中に、軟磁性粒子を分散させるとともに、ガラス成分の粒子(AGC株式会社製「200GF」;軟化点648℃)を添加し、撹拌した。乾燥によって溶媒を除去して、成形用の原料粉末を得た。
(成形工程の実施)
上記原料粉末を用いて、実施例1〜5および比較例1〜3の成形体を、表1に示した各条件で作製した。表1で「予備成形」の欄が「あり」となっている成形体については、原料粉末を用いて、まず、予備成形工程を実施した。予備成形工程には、外径φ38.5mm、内径φ30.5mmのリング状の金型を用いた。室温で金型に原料粉末を充填してから、室温にて、万力を用いて、リングの厚さ方向に加圧して、予備成形体を得た。
上記原料粉末を用いて、実施例1〜5および比較例1〜3の成形体を、表1に示した各条件で作製した。表1で「予備成形」の欄が「あり」となっている成形体については、原料粉末を用いて、まず、予備成形工程を実施した。予備成形工程には、外径φ38.5mm、内径φ30.5mmのリング状の金型を用いた。室温で金型に原料粉末を充填してから、室温にて、万力を用いて、リングの厚さ方向に加圧して、予備成形体を得た。
予備成形工程を経た各試料のうち、表1で「硬化」の欄が「あり」となっているものについては、予備成形体を金型に収容した状態のまま、300℃で加熱する硬化工程を実施してから、予備成形体を金型から取り出した。一方、表1で「硬化」の欄が「なし」となっているものについては、室温での予備成形の後、そのまま予備成形体を金型から取り出した。
予備成形工程を経た、あるいはさらに硬化工程を経た得た各予備成形体に対して、潤滑剤(住鉱潤滑剤株式会社製「モリドライ」)を表面にスプレー噴霧したうえで、本成形工程を実施した。本成形工程には、外径φ39mm、内径φ30mmのリング状の金型を用いた。金型を表1に記載した温度に保持した状態で、潤滑剤を噴霧した予備成形体を配置した。そして、金型温度をそのまま保持し、リングの厚さ方向に、最大面圧9ton/cm2にて加圧し、成形を行った。
表1で「予備成形」の欄が「なし」となっている成形体については、予備成形工程および硬化工程を経ることなく、本成形用金型の内側に潤滑剤を噴霧したうえで、原料粉末を用いて、上記本成形工程と同様に、成形を行った。この際、表1に記載した温度に金型を加熱したうえで、金型内に原料粉末を充填し、上記と同じ条件で、成形を行った。
本成形工程を経て得られた各本成形体に対して、歪み取り焼鈍工程を実施し、試験試料とした。歪み取り焼鈍工程における加熱温度は、750℃とした。
(密度の測定)
得られた試験試料に対して、密度の測定を行った。ここでは、成形体重量と、成形体寸法から算出した体積によって、試験試料の相対密度を評価した。おおむね、75%以上の相対密度が得られる場合に、正常に成形工程を実行できたと評価することができる。
得られた試験試料に対して、密度の測定を行った。ここでは、成形体重量と、成形体寸法から算出した体積によって、試験試料の相対密度を評価した。おおむね、75%以上の相対密度が得られる場合に、正常に成形工程を実行できたと評価することができる。
[試験結果]
下の表1に、実施例1〜5および比較例1〜3について、予備成形工程および硬化工程の有無および本成形の際の金型温度とともに、本成形工程における成形可否と、相対密度の測定結果を示す。比較例3では、金型内に十分な均一性をもって原料粉末を投入できなかったことにより、成形を実施することができなかった。試験試料が得られなかったことにより、相対密度の評価は行っていない。
下の表1に、実施例1〜5および比較例1〜3について、予備成形工程および硬化工程の有無および本成形の際の金型温度とともに、本成形工程における成形可否と、相対密度の測定結果を示す。比較例3では、金型内に十分な均一性をもって原料粉末を投入できなかったことにより、成形を実施することができなかった。試験試料が得られなかったことにより、相対密度の評価は行っていない。
表1によると、予備成形を経ずに、550℃に加熱した金型に、直接原料粉末を充填して成形を行っている比較例3においては、原料粉末を金型に、十分な均一性をもって投入することができず、本成形が「不可」となっている。これは、原料粉末に含まれるシリコーン樹脂が硬化して、金型の表面に固着することや、粗大な塊を形成することで、金型全体への原料粉末の充填を妨げたためであると考えられる。比較例2でも、予備成形は行っていないが、本成形工程を室温で実施しているため、シリコーン樹脂の硬化による成形性の低下が問題とならず、本成形の実施自体は、「可」となっている。しかし、得られた成形体の相対密度が、75%未満の低い値になっている。これは、本成形を室温で行っていることにより、軟磁性粒子の変形抵抗が高いまま成形を進めていることの結果であると考えらえる。
本成形の前に予備成形を行っている実施例1〜5および比較例1では、いずれも、成形可否の判定結果が「可」となっており、本成形工程を実施できている。これは、原料粉末そのものではなく、予備成形工程を経て固形状とした成形原料を、加熱した金型に配置していることの結果であると解釈される。
ただし、予備成形工程の後に、硬化工程を実施していない比較例1では、本成形は行えるものの、得られた本成形体の相対密度が75%未満に留まっている。一方で、予備成形工程の後に、硬化工程を実施した実施例1〜5においては、得られた本成形体の相対密度が、75%以上となっており、正常に成形が実施されたと判定することができる。硬化工程によって、あらかじめ予備成形体中のシリコーン樹脂を硬化させておくことで、本成形工程において、金型への予備成形体の配置および温間成形を、円滑に進めることができ、その結果として、本成形体の相対密度を十分に高めながら、温間成形を正常に行うことができているものと、解釈される。
さらに、実施例1〜5の中でも、本成形工程における成形温度が高くなるほど、得られる本成形体の相対密度が、高くなっている。これは、本成形を高温で実施するほど、軟磁性粒子の変形抵抗が小さくなり、軟磁性粒子を密に圧縮して成形できることによると考えられる。特に、成形温度が400℃以上である実施例2〜5においては、相対密度を80%以上に高めることができている。相対密度を向上させることで、製造される圧粉磁心において、高い磁気特性を得ることができる。
以上の試験結果から、本成形工程において、金型への成形原料の配置を、温間成形用に金型を高温に加熱した状態で行う場合に、その前に予備成形工程と硬化工程を実施し、原料粉末を固形状にしておくことで、成形性を高め、本成形を正常に進められることが確認された。また、本成形工程を高温で行うほど、成形体における相対密度を高められることが分かった。
以上、本発明の実施形態について説明した。本発明は、これらの実施形態に特に限定されることなく、種々の改変を行うことが可能である。
1 原料粉末
11 軟磁性粒子
12 シリコーン樹脂
13 ガラス成分(の粒子)
2 予備成形体
3 本成形体
4 潤滑剤
11 軟磁性粒子
12 シリコーン樹脂
13 ガラス成分(の粒子)
2 予備成形体
3 本成形体
4 潤滑剤
Claims (5)
- 軟磁性粒子と、シリコーン樹脂と、ガラス成分とを含有する原料粉末を、予備成形金型に充填して、成形を行い、予備成形体を得る予備成形工程と、
前記予備成形体を、前記予備成形工程における温度よりも高温に加熱して、前記予備成形体中に含まれる前記シリコーン樹脂を硬化させる硬化工程と、
前記予備成形工程における前記予備成形金型以上の温度に加熱した本成形金型に、前記予備成形体を配置して、温間成形を行い、本成形体を得る本成形工程と、
前記本成形体に対して歪み取り焼鈍を行う歪み取り焼鈍工程と、をこの順に実行する、圧粉磁心の製造方法。 - 前記予備成形工程は、80℃以下の温度で実施し、
前記硬化工程および前記本成形工程は、150℃以上の温度で実施する、請求項1に記載の圧粉磁心の製造方法。 - 前記硬化工程の後、前記予備成形体の表面に、潤滑剤を配置する潤滑工程を実行し、
前記潤滑工程の後に、前記本成形工程を実行する、請求項1または請求項2に記載の圧粉磁心の製造方法。 - 前記軟磁性粒子は、Siを4質量%以上含有するFe基合金よりなる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
- 前記本成形工程において、前記本成形金型を150℃以上900℃以下の温度に加熱して温間成形を行う、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
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