以下に、本発明に係るタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
以下の説明では、本発明に係るタイヤの一例として、空気入りタイヤ1を用いて説明する。タイヤの一例である空気入りタイヤ1は、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
また、以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の要部を示す子午断面図である。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ子午断面で見た場合、タイヤ径方向における最も外側にトレッド部2が配置されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド踏面3として形成されている。トレッド踏面3には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝30が複数形成されており、複数の周方向主溝30は、タイヤ幅方向に並んで配置されている。本実施形態では、周方向主溝30は3本がタイヤ幅方向に並んで配置されている。また、トレッド踏面3には、タイヤ幅方向に並ぶ周方向主溝30によって複数の陸部20が区画されている。なお、ここでいう周方向主溝30は、タイヤ周方向に延在する縦溝になっており、摩耗末期を示すウェアインジケータ(スリップサイン)を内部に有する溝になっている。
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両端は、ショルダー部4として形成されており、ショルダー部4から、タイヤ径方向内側の所定の位置までは、サイドウォール部5が配置されている。つまり、サイドウォール部5は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に設けられている。
さらに、それぞれのサイドウォール部5のタイヤ径方向内側には、ビード部10が配置されており、ビード部10は、サイドウォール部5と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に設けられている。即ち、ビード部10は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に一対が配置されている。一対のビード部10のそれぞれにはビードコア11が配置されており、それぞれのビードコア11のタイヤ径方向外側にはビードフィラー15が配置されている。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー15は、後述するカーカス6のタイヤ幅方向端部がビードコア11の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
トレッド部2のタイヤ径方向内側には、ベルト層7が配置されている。ベルト層7は、例えば、4層のベルト7a,7b,7c,7dを積層した多層構造をなし、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成される。また、ベルト7a,7b,7c,7dは、タイヤ周方向に対するベルトコードのタイヤ幅方向の傾斜角として定義されるベルト角度が互いに異なっており、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成される。
ベルト層7のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部5のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス6が連続して設けられている。カーカス6は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設されるビードコア11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。詳しくは、カーカス6は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー15を包み込むようにビード部10でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外側に巻き返されている。このように配設されるカーカス6のカーカスプライは、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されている。
また、カーカス6の内側、或いは、当該カーカス6の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ8がカーカス6に沿って形成されている。
図2は、図1のA−A矢視図である。トレッド踏面3に形成される3本の周方向主溝30は、タイヤ幅方向における中央に配置される周方向主溝30をセンター主溝31と、センター主溝31のタイヤ幅方向両側に配置される周方向主溝30をショルダー主溝32とを有している。このうち、センター主溝31は、タイヤ赤道面CL上に配置されており、これにより、センター主溝31のタイヤ幅方向両側に配置される2本のショルダー主溝32は、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側に配置されている。また、センター主溝31とショルダー主溝32とは、いずれもタイヤ周方向に延びつつ、タイヤ幅方向に繰り返し屈曲している。即ち、センター主溝31とショルダー主溝32とは、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に振幅することにより、ジグザグ状に形成されている。
これらの周方向主溝30は、溝幅が10mm以上25mm以下の範囲内になっており、溝深さが10mm以上20mm以下の範囲内になっている。
また、トレッド踏面3には、周方向主溝30の他に、タイヤ幅方向に延びて少なくとも一端が周方向主溝30に開口するラグ溝40が複数形成されている。トレッド踏面3には、これらの複数の周方向主溝30とラグ溝40とにより、複数の陸部20が区画されている。
複数のラグ溝40のうち、センター主溝31とショルダー主溝32との間に配置されて両端が周方向主溝30に開口するラグ溝40は、センターラグ溝41になっている。即ち、センターラグ溝41は、タイヤ幅方向に延びて両端が周方向主溝30に開口して形成されている。また、複数のラグ溝40のうち、ショルダー主溝32のタイヤ幅方向外側に配置されて一端がショルダー主溝32に開口するラグ溝40は、ショルダーラグ溝42になっている。ショルダーラグ溝42は、ショルダー主溝32から、トレッド部2のタイヤ幅方向における端部(ショルダー部4)にかけて形成されている。
これらのラグ溝40のうち、センターラグ溝41は、溝幅がほぼ一定の幅になっている。一方、ショルダーラグ溝42は、トレッド部2のタイヤ幅方向における端部付近の位置に、溝幅が拡幅された拡幅部43を有しており、拡幅部43では、溝幅がショルダーラグ溝42においてショルダー主溝32に開口している部分よりも、溝幅が広くなっている。ショルダーラグ溝42における拡幅部43以外の部分の溝幅は、センターラグ溝41の溝幅よりも狭くなっている。換言すると、センターラグ溝41は、最小溝幅がショルダーラグ溝42の最小溝幅より広くなっている。詳しくは、センターラグ溝41の最小溝幅は、5mm以上13mm以下の範囲内になっており、ショルダーラグ溝42の最小溝幅は、3mm以上7mm以下の範囲内になっている。
また、複数の陸部20のうち、ショルダー主溝32のタイヤ幅方向内側に配置される陸部20は、センター陸部21になっており、ショルダー主溝32のタイヤ幅方向外側に配置される陸部20は、ショルダー陸部22になっている。詳しくは、センター陸部21は、センター主溝31とショルダー主溝32との間に配置されてタイヤ幅方向における両側がセンター主溝31とショルダー主溝32とにより区画され、タイヤ周方向における両側が、タイヤ周方向に隣り合うセンターラグ溝41により区画されている。また、ショルダー陸部22は、タイヤ幅方向における内側がショルダー主溝32により区画され、タイヤ幅方向における外側がトレッド部2のタイヤ幅方向における端部により区画されており、タイヤ周方向における両側が、タイヤ周方向に隣り合うショルダーラグ溝42により区画されている。センター陸部21とショルダー陸部22とは、これらのようにタイヤ周方向における両側がラグ溝40によって区画される、いわゆるブロック形状の陸部20になっている。
また、陸部20には、タイヤ幅方向に延びて少なくとも一端が周方向主溝30に開口する細浅溝50が形成されており、センター陸部21には、細浅溝50としてセンター細浅溝51が形成され、ショルダー陸部22には、細浅溝50としてショルダー細浅溝52が形成されている。このうち、センター細浅溝51は、タイヤ幅方向に延びて両端が周方向主溝30に開口する細浅溝50になっている。また、ショルダー細浅溝52は、タイヤ幅方向に延びて一端がショルダー主溝32に開口し、他端がショルダー陸部22内で終端する細浅溝50になっている。
これらの細浅溝50は、タイヤ周方向に隣り合うラグ溝40同士の間に1本が配置されている。つまり、センター細浅溝51は、タイヤ周方向に隣り合うセンターラグ溝41同士の間に1本が配置されており、ショルダー細浅溝52は、タイヤ周方向に隣り合うショルダーラグ溝42同士の間に1本が配置されている。このため、センターラグ溝41とセンター細浅溝51とは、タイヤ周方向に交互に配置されており、ショルダーラグ溝42とショルダー細浅溝52とは、タイヤ周方向に交互に配置されている。また、細浅溝50は、溝幅が1.0mm以上3.0mm以下の範囲内になっており、各細浅溝50は、タイヤ幅方向に延びつつ、3箇所以上で屈曲するジグザグ形状で形成されている。なお、細浅溝50は、3箇所以上10箇所以下の範囲内で屈曲するのが好ましい。
図3は、図2のB部詳細図である。センター主溝31のタイヤ幅方向両側にそれぞれ配置されるセンターラグ溝41は、タイヤ周方向における位置が互いに異なる位置に配置されている。つまり、センターラグ溝41は、センター主溝31のタイヤ幅方向両側に配置されるセンターラグ溝41同士で、タイヤ周方向に互いにオフセットして配置されている。詳しくは、センターラグ溝41は、タイヤ幅方向に繰り返し屈曲しながらタイヤ周方向に延びるセンター主溝31に対して、屈曲部分における屈曲の優角側にそれぞれ接続されている。このため、センターラグ溝41は、タイヤ幅方向に屈曲するセンター主溝31における屈曲している位置から、タイヤ幅方向において屈曲の凸となる方向にタイヤ幅方向外側に延びている。これにより、センター主溝31のタイヤ幅方向両側に配置されるセンターラグ溝41は、タイヤ周方向に沿って見た際に、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し屈曲するセンター主溝31の複数の屈曲部分の屈曲の方向に合わせて、タイヤ幅方向両側で交互に配置されている。
また、センターラグ溝41は、ショルダー主溝32に対しても、タイヤ幅方向に繰り返し屈曲しながらタイヤ周方向に延びるショルダー主溝32の屈曲部分における、屈曲の優角側にそれぞれ接続されている。このため、センターラグ溝41は、タイヤ幅方向に屈曲するショルダー主溝32における屈曲している位置から、タイヤ幅方向において屈曲の凸となる方向にタイヤ幅方向内側に延びている。
このように、それぞれ屈曲部分にセンターラグ溝41が接続されるセンター主溝31とショルダー主溝32とは、それぞれの屈曲部分の優角側同士と劣角側同士とがタイヤ幅方向に対向する位置に近い位置となって形成されている。詳しくは、センター主溝31とショルダー主溝32とは、屈曲のタイヤ周方向におけるピッチ、即ち、振幅のタイヤ周方向におけるピッチがほぼ同じ大きさになっており、振幅の位相が、それぞれの屈曲部分の優角側同士と劣角側同士とがタイヤ幅方向に対向する位置からわずかにタイヤ周方向に互いにずれている。また、センター主溝31のタイヤ幅方向両側に位置するショルダー主溝32同士では、センター主溝31に対して振幅の位相がタイヤ周方向にずれる方向が、タイヤ周方向において互いに反対方向になっている。
センター主溝31の振幅の位相とショルダー主溝32の振幅の位相とがタイヤ周方向にずれていることにより、一端がセンター主溝31の屈曲の優角側に接続され、他端がショルダー主溝32の屈曲の優角側に接続されるセンターラグ溝41は、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜している。また、センター主溝31のタイヤ幅方向両側のショルダー主溝32同士で、センター主溝31に対して振幅の位相がずれる方向が互いに反対方向になっていることにより、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向へのセンターラグ溝41の傾斜の方向は、センター主溝31のタイヤ幅方向両側に配置されるセンターラグ溝41同士で同じ方向になっている。
詳しくは、センターラグ溝41は、タイヤ幅方向における両端付近の2箇所に屈曲部41aを有しており、屈曲部41a同士の間で、センターラグ溝41はタイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜して形成されている。一方、センターラグ溝41は、屈曲部41aとセンターラグ溝41の端部との間では、ほぼタイヤ幅方向に延びて形成されている。即ち、センターラグ溝41における、センター主溝31寄りの屈曲部41aとセンター主溝31との間の部分、及びショルダー主溝32寄りの屈曲部41aとショルダー主溝32との間の部分では、実質的にタイヤ幅方向に延びて形成されている。
また、センター陸部21は、センターラグ溝41がセンター主溝31のタイヤ幅方向両側で互いにオフセットして配置されるのに伴い、センター主溝31のタイヤ幅方向両側に配置されるセンター陸部21同士も、タイヤ周方向に互いにオフセットして配置されている。これにより、センター陸部21に形成されるセンター細浅溝51は、センター主溝31に対して開口する位置が、センター主溝31を挟んで反対側に位置するセンターラグ溝41が当該センター主溝31に対して開口する位置と、タイヤ周方向における位置がほぼ同じ位置になっている。
詳しくは、センター陸部21に形成されるセンター細浅溝51は、両端が周方向主溝30に開口しており、センター主溝31に対しては、センター主溝31の屈曲部分における屈曲の劣角側に接続されている。つまり、センター細浅溝51は、センターラグ溝41がセンター主溝31に対してセンター主溝31の屈曲部分における屈曲の優角側に接続されるのとは反対に、センター主溝31に対して、センター主溝31における屈曲の劣角側に接続されている。このため、センター主溝31に開口するセンターラグ溝41とセンター細浅溝51とは、いずれもセンター主溝31におけるジグザグの屈曲部分に開口しており、同じセンター主溝31の屈曲部分に接続されるセンターラグ溝41とセンター細浅溝51とは、センター主溝31の溝幅方向における互いに対向する位置に開口している。
また、両端が周方向主溝30に開口するセンター細浅溝51は、ショルダー主溝32に対しても、ショルダー主溝32の屈曲部分における屈曲の劣角側に接続されている。このため、センター細浅溝51は、センター陸部21のタイヤ周方向の両側を区画するセンターラグ溝41と略平行に形成されている。つまり、センター細浅溝51は、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向へ傾斜して形成されており、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が、当該センター細浅溝51が形成されるセンター陸部21を区画するセンターラグ溝41のタイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向と同じ方向になっている。
図4は、図3のC部詳細図である。細浅溝50は、周方向主溝30に開口する切欠きである細浅溝切欠き部60に接続されることにより、細浅溝切欠き部60を介して周方向主溝30に開口している。つまり、陸部20には、細浅溝50のタイヤ幅方向における端部付近に周方向主溝30に開口する細浅溝切欠き部60が形成されており、細浅溝50は、タイヤ幅方向において、細浅溝切欠き部60における周方向主溝30に開口している側の反対側から細浅溝切欠き部60に接続されている。これにより、細浅溝50は、周方向主溝30に開口する細浅溝切欠き部60を介して、周方向主溝30に開口している。
例えば、センター陸部21には、センター細浅溝51のタイヤ幅方向におけるセンター主溝31側の端部付近に、センター主溝31に開口する細浅溝切欠き部60が形成されており、タイヤ幅方向におけるショルダー主溝32側の端部付近に、ショルダー主溝32に開口する細浅溝切欠き部60が形成されている。センター細浅溝51は、センター主溝31に対しては、センター主溝31に開口する細浅溝切欠き部60におけるセンター主溝31に開口している側のタイヤ幅方向の反対側から細浅溝切欠き部60に接続されることにより、細浅溝切欠き部60を介してセンター主溝31に開口している。同様に、センター細浅溝51は、ショルダー主溝32に対しては、ショルダー主溝32に開口する細浅溝切欠き部60におけるショルダー主溝32に開口している側のタイヤ幅方向の反対側から細浅溝切欠き部60に接続されることにより、細浅溝切欠き部60を介してショルダー主溝32に開口している。
このように形成される細浅溝切欠き部60は、大部分で幅が細浅溝50の溝幅より広くなっており、細浅溝切欠き部60の幅は、細浅溝50側から周方向主溝30側に向かうに従って広くなっている。つまり、細浅溝切欠き部60は、タイヤ幅方向における細浅溝50が接続される側の端部付近では、細浅溝50の溝幅方向、或いは、タイヤ周方向における幅が、細浅溝50と同程度になっており、周方向主溝30が位置する側に向かうに従って、細浅溝50の溝幅方向、或いは、タイヤ周方向における幅が広くなっている。
細浅溝切欠き部60は、陸部20のエッジ25のタイヤ周方向における長さLBと、細浅溝切欠き部60の開口部61の幅中心Pの位置からエッジ25のタイヤ周方向における端部25aまでのタイヤ周方向における長さLeとの関係が、0.3≦(Le/LB)≦0.7の範囲内になっている。
この場合における陸部20のエッジ25は、陸部20における、細浅溝切欠き部60が開口する周方向主溝30により形成されるエッジ25になっている。つまり、センター主溝31側の細浅溝切欠き部60では、対象となるエッジ25は、センター陸部21における当該センター主溝31側の細浅溝切欠き部60が開口する周方向主溝30であるセンター主溝31により形成されるエッジ25になっている。同様に、ショルダー主溝32側の細浅溝切欠き部60では、対象となるエッジ25は、センター陸部21における当該ショルダー主溝32側の細浅溝切欠き部60が開口する周方向主溝30であるショルダー主溝32により形成されるエッジ25になっている。また、細浅溝切欠き部60の開口部61の幅中心Pの位置は、細浅溝切欠き部60における周方向主溝30に対する開口部61の幅中心Pの位置になっている。
センター陸部21に形成されるセンター細浅溝51は、長さ方向における両側の端部51a同士を結んだ直線Lnのタイヤ周方向に対する角度βが、60°≦β≦120°の範囲内になっている。この場合における直線Lnは、センター細浅溝51の長さ方向における両側の端部51aにおける溝幅中心同士を結んだ仮想の直線Lnになっている。タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜して形成されるセンター細浅溝51は、この直線Lnの、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度βが、60°≦β≦120°の範囲内になっている。
図5は、図4のF−F断面図である。センター細浅溝51は、溝深さDnが1.0mm以上3.0mm以下の範囲内になっている。また、センター細浅溝51は、溝深さDnが周方向主溝30の溝深さDmと比較して大幅に浅くなっており、センター細浅溝51の溝深さDnは、周方向主溝30の溝深さDmに対して、0.1≦(Dn/Dm)≦0.4の範囲内になっている。
また、細浅溝切欠き部60は、細浅溝50側から周方向主溝30側に向かうに従って、深さが深くなって形成されている。つまり、細浅溝切欠き部60は、タイヤ幅方向における細浅溝50が接続される側の端部付近では、トレッド踏面3からの深さが、細浅溝50と同程度になっており、周方向主溝30が位置する側に向かうに従って、トレッド踏面3からの深さが深くなっている。
図6は、図4のG部詳細図である。センター細浅溝51は、互いに異なる長さで形成される長尺部55と短尺部56とをそれぞれ複数有しており、長尺部55と短尺部56とが交互に接続されることにより、タイヤ幅方向に延びつつ屈曲するジグザグ形状で形成されている。長尺部55と短尺部56とは、相対的な長さが互いに異なっており、長尺部55の方が、短尺部56よりも長さが長くなっている。また、長尺部55と短尺部56とは、延在方向が互いに異なる向きで配置されている。センター細浅溝51は、互いに長さが異なり延在方向が互いに異なる長尺部55と短尺部56とが、交互に接続されているため、センター細浅溝51は、長尺部55と短尺部56との接続部分が屈曲部57となっている。センター細浅溝51は、長尺部55と短尺部56との接続部分をなす屈曲部57が3箇所以上10箇所以下の範囲内で複数有しており、これによりセンター細浅溝51は、屈曲部57で屈曲するジグザグ形状になっている。
本実施形態では、長尺部55はタイヤ幅方向に延び、短尺部56はタイヤ周方向に延びつつ、タイヤ周方向に対してタイヤ幅方向に傾斜している。また、1つの長尺部55の両端に接続される2つの短尺部56は、タイヤ周方向において長尺部55から延びる方向が互いに反対方向になっている。換言すると、1つの短尺部56の両端に接続される2つの長尺部55は、タイヤ幅方向において短尺部56から延びる方向が互いに反対方向になっている。これにより、センター細浅溝51は、全体としてタイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜して形成されている。なお、本実施形態では、センター細浅溝51の長さ方向における両端には長尺部55が配置されており、センター細浅溝51が接続される細浅溝切欠き部60には、センター細浅溝51の長さ方向における両端に位置する長尺部55が接続されている。
図7は、図6のJ部詳細図である。センター細浅溝51は、長尺部55のタイヤ幅方向における長さL1と、互いに接続される長尺部55と短尺部56とを合わせたタイヤ幅方向における長さL0との関係が、0.5<(L1/L0)≦0.9の範囲内になっている。この場合における、長尺部55と短尺部56とを合わせたタイヤ幅方向における長さL0は、長尺部55のタイヤ幅方向における長さL1と、当該長尺部55に接続される短尺部56のタイヤ幅方向における長さL2とを足した長さになっており、L0=L1+L2により算出される長さになっている。
また、長尺部55のタイヤ幅方向における長さL1と、短尺部56のタイヤ幅方向における長さL2とは、いずれもセンター細浅溝51の溝幅の中心線51cの長さになっている。即ち、長尺部55のタイヤ幅方向における長さL1と短尺部56のタイヤ幅方向における長さL2とは、いずれも長尺部55の溝幅の中心線51cと短尺部56の溝幅の中心線51cとが交差する部分同士のタイヤ幅方向における長さになっている。
センター細浅溝51が有する複数の長尺部55と短尺部56とは、(L1/L0)で算出される値が、一定の大きさになっている。つまり、センター細浅溝51は、複数の長尺部55の長さL1がそれぞれ一定の大きさになっており、複数の短尺部56の長さL2がそれぞれ一定の大きさになっている。このため、センター細浅溝51は、(L1/L0)で算出される値も一定の大きさになっている。
なお、センター細浅溝51が有する複数の長尺部55のうち、センター細浅溝51の長さ方向における両端に配置されて細浅溝切欠き部60に接続される長尺部55は、他の長尺部55とは、タイヤ幅方向における長さL1が異なっている。これにより、センター細浅溝51の両端に位置する長尺部55に関する(L1/L0)の値も、センター細浅溝51の両端以外の長尺部55に関する(L1/L0)の値とは異なっている。このため、センター細浅溝51は、長さ方向における両端の長尺部55以外の長尺部55と短尺部56との、(L1/L0)で算出される値が、一定の大きさになっている。具体的には、センター細浅溝51は、長さ方向における両端の長尺部55以外の長尺部55と短尺部56との(L1/L0)で算出される値のうち、最も小さくなる値が、最も大きくなる値に対して10%以上100%以下の範囲内になっている。
また、センター細浅溝51は、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量ALが、1.0mm≦AL≦3.0mmの範囲内になっている。つまり、本実施形態では、センター細浅溝51の長尺部55は、タイヤ幅方向に延びて形成されているため、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量ALは、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のタイヤ周方向における距離になっている。また、この場合における長尺部55同士のオフセット量ALは、例えば、双方の長尺部55の中心線51c同士のオフセット量ALになっている。また、センター細浅溝51が有する複数の長尺部55は、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量ALが、一定の大きさになっている。具体的には、センター細浅溝51は、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量ALの最小値が、オフセット量ALの最大値に対して、10%以上100%以下の範囲内になっている。
また、センター細浅溝51は、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量ALが、センター細浅溝51が形成される陸部20であるセンター陸部21のタイヤ周方向における長さLC(図4参照)に対して、0.01≦(AL/LC)≦0.05の範囲内になっている。
また、センター陸部21には、周方向主溝30に開口する切欠きである補助切欠き部65(図4参照)が複数形成されている。補助切欠き部65は、センター陸部21における、センター主溝31により形成されるエッジ25側でセンター主溝31に開口する補助切欠き部65と、ショルダー主溝32により形成されるエッジ25側でショルダー主溝32に開口する補助切欠き部65とが形成されている。
また、補助切欠き部65は、センター陸部21における周方向主溝30により形成されるエッジ25の、センター細浅溝51のタイヤ周方向における両側に形成されている。このため、1つのセンター陸部21に形成される補助切欠き部65は、タイヤ幅方向における両側のエッジ25のそれぞれに2つずつが形成されることになり、1つのセンター陸部21には、合計4つの補助切欠き部65が形成されている。各補助切欠き部65は、センター陸部21のタイヤ周方向における端部を区画するセンターラグ溝41における周方向主溝30への開口部と、センター細浅溝51における周方向主溝30への開口部との間の中央付近に配置されている。
このように、センター陸部21に形成される補助切欠き部65は、補助切欠き部65における周方向主溝30に対して開口する開口部66側から、補助切欠き部65における開口部66の反対側に位置する端部67側に向かうに従って、幅が狭くなって形成されている。換言すると、補助切欠き部65は、平面視において、端部67側から開口部66側に向かうに従って幅が大きくなる、略三角形の形状で形成されている。
また、補助切欠き部65は、センター陸部21における周方向主溝30により形成されるエッジ25に対して、垂直方向に切り欠かれる向きで形成されている。詳しくは、補助切欠き部65は、補助切欠き部65の端部67を通り、センター陸部21のエッジ25に沿った直線25bに対して直交する垂線65cが、補助切欠き部65の開口部66を通る形状で形成されている。この場合におけるセンター陸部21のエッジ25は、センター陸部21における補助切欠き部65が開口する周方向主溝30により形成されるエッジ25になっており、直線25bは、当該エッジ25に沿って補助切欠き部65の開口部66内で延びる仮想の直線になっている。
1つのセンター陸部21に形成される4つの補助切欠き部65は、いずれもこれらのように、補助切欠き部65の端部67を通り、センター陸部21のエッジ25に沿った直線25bに対して直交する垂線65cが、開口部66を通る形状で形成されている。センター陸部21のエッジ25を形成するセンター主溝31は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に振幅するジグザグ状に形成されているため、センター陸部21のエッジ25における、4つの補助切欠き部65が開口している部分は、延在方向が全て異なる方向になっている。このため、センター陸部21のエッジ25に対して、垂直方向に切り欠かれる向きで形成される4つの補助切欠き部65は、切り欠かれる向きが互いに異なる向きになっている。
図8は、図4のK−K断面図である。補助切欠き部65は、端部67側から開口部66側に向かうに従って、トレッド踏面3からの深さが深くなって形成されている。即ち、補助切欠き部65は、端部67側から開口部66側に向かうに従って幅が広くなると共に、深さも深くなって形成されている。このように、トレッド踏面3からの深さが変化して形成される補助切欠き部65は、最大深さDaが、2mm以上5mm以下の範囲内になっている。また、補助切欠き部65の最大深さDaは、周方向主溝30の溝深さDmに対して、0.1≦(Da/Dm)≦0.4の範囲内になっている。
タイヤ幅方向における両側がセンター主溝31とショルダー主溝32とにより区画され、タイヤ周方向における両側がセンターラグ溝41により区画されるセンター陸部21は、タイヤ幅方向における幅Wc(図4参照)が、トレッド部2の展開幅TW(図2参照)の15%以上20%以下の範囲内になっている。この場合におけるセンター陸部21のタイヤ幅方向における幅Wcは、センター細浅溝51が形成されるセンター陸部21のタイヤ幅方向における最大幅になっている。
なお、トレッド部2の展開幅TWは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した無負荷の条件での、タイヤ幅方向における両側に位置する2つのショルダー陸部22のトレッド踏面3の、タイヤ幅方向外側の端部同士のタイヤ幅方向における直線距離をいう。正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
図9は、図2のM部詳細図である。ショルダー陸部22に形成される細浅溝50であるショルダー細浅溝52は、一端が周方向主溝30に開口し、他端がショルダー陸部22内で終端している。詳しくは、ショルダー陸部22に形成されるショルダー細浅溝52は、タイヤ幅方向における内側の端部がショルダー主溝32に開口しており、ショルダー主溝32の屈曲部分における屈曲の劣角側に接続されている。
一方で、ショルダー主溝32の溝幅方向におけるショルダー細浅溝52が接続される側の反対側からショルダー主溝32に接続されるセンターラグ溝41は、ショルダー主溝32に対して、ショルダー主溝32の屈曲部分における屈曲の優角側に接続されている。このため、ショルダー主溝32に開口するセンターラグ溝41とショルダー細浅溝52とは、いずれもショルダー主溝32におけるジグザグの屈曲部分に開口しており、同じショルダー主溝32の屈曲部分に接続されるセンターラグ溝41とショルダー細浅溝52とは、ショルダー主溝32の溝幅方向における互いに対向する位置に開口している。
また、ショルダー陸部22のタイヤ周方向における端部を区画するショルダーラグ溝42は、タイヤ幅方向における内側の端部が、ショルダー主溝32の屈曲部分における屈曲の優角側に接続されている。ショルダー主溝32の溝幅方向におけるショルダーラグ溝42が接続される側の反対側からショルダー主溝32に接続されるセンター細浅溝51は、ショルダー主溝32に対して、ショルダー主溝32の屈曲部分における屈曲の劣角側に接続されている。このため、ショルダー主溝32に開口するショルダーラグ溝42とセンター細浅溝51とは、いずれもショルダー主溝32におけるジグザグの屈曲部分に開口しており、同じショルダー主溝32の屈曲部分に接続されるショルダーラグ溝42とセンター細浅溝51とは、ショルダー主溝32の溝幅方向における互いに対向する位置に開口している。
また、ショルダー主溝32を介して隣り合うセンター陸部21とショルダー陸部22とに形成される細浅溝50同士は、タイヤ周方向における位置が同じ位置となる部分を有することなく、タイヤ周方向にずらして配置されている。つまり、ショルダー主溝32に対して互いに溝幅方向の反対側から、ショルダー主溝32の屈曲の劣角側に接続されるセンター細浅溝51とショルダー細浅溝52とは、タイヤ周方向に互いにオフセットして配置されている。このため、センター陸部21に形成されるセンター細浅溝51と、ショルダー陸部22に形成されるショルダー細浅溝52とは、タイヤ周方向における位置が同じ位置となる部分を有することなく、タイヤ周方向に互いにずれて配置されている。
なお、センター陸部21に形成されるセンター細浅溝51と、ショルダー陸部22に形成されるショルダー細浅溝52とは、タイヤ周方向に隣り合うセンター陸部21同士のタイヤ周方向におけるピッチ、またはタイヤ周方向に隣り合うショルダー陸部22同士のタイヤ周方向におけるピッチの、1/2の大きさでタイヤ周方向にずれて配置されるのが好ましい。
また、ショルダー主溝32に開口するショルダーラグ溝42とショルダー細浅溝52とは、ジグザグ形状で形成されるショルダー主溝32に対して、ショルダーラグ溝42が屈曲部分における屈曲の優角側に接続され、ショルダー細浅溝52が屈曲部分における屈曲の劣角側に接続されることにより、タイヤ周方向に交互に配置されている。さらに、これらのショルダーラグ溝42とショルダー細浅溝52とは、センターラグ溝41やセンター細浅溝51がタイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜する方向とは反対方向に、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜している。つまり、ショルダー細浅溝52は、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が、ショルダー細浅溝52が形成される陸部20であるショルダー陸部22を区画するショルダーラグ溝42のタイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向と同じ方向になっている。
詳しくは、ショルダーラグ溝42は、タイヤ幅方向内側の端部付近に屈曲部42aを有しており、屈曲部42aと拡幅部43との間の部分で、ショルダーラグ溝42はタイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜して形成されている。一方、ショルダーラグ溝42は、屈曲部42aとショルダーラグ溝42の端部との間では、ほぼタイヤ幅方向に延びて形成されている。即ち、ショルダーラグ溝42は、屈曲部42aとショルダー主溝32との間の部分では、実質的にタイヤ幅方向に延びて形成されている。ショルダー細浅溝52は、ショルダーラグ溝42における、屈曲部42aと拡幅部43との間でタイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜して形成される部分の傾斜方向と、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が同じ方向になっている。
図10は、図9のQ部詳細図である。ショルダー陸部22に形成されるショルダー細浅溝52も、センター細浅溝51と同様に、細浅溝切欠き部60に接続されることにより、細浅溝切欠き部60を介して周方向主溝30に開口している。つまり、ショルダー陸部22には、ショルダー細浅溝52のタイヤ幅方向におけるショルダー主溝32側の端部付近に、ショルダー主溝32に開口する細浅溝切欠き部60が形成されており、タイヤ幅方向におけるショルダー主溝32側の端部付近に、ショルダー主溝32に開口する細浅溝切欠き部60が形成されている。ショルダー細浅溝52は、ショルダー主溝32に対しては、ショルダー主溝32に開口する細浅溝切欠き部60におけるショルダー主溝32に開口している側のタイヤ幅方向の反対側から細浅溝切欠き部60に接続されることにより、細浅溝切欠き部60を介してショルダー主溝32に開口している。
ショルダー陸部22に形成される細浅溝切欠き部60も、センター陸部21に形成される細浅溝切欠き部60と同様に、細浅溝50側から周方向主溝30側に向かうに従って幅が広くなっており、深さが深くなって形成されている。また、ショルダー陸部22に形成される細浅溝切欠き部60も、センター陸部21に形成される細浅溝切欠き部60と同様に、ショルダー陸部22のエッジ25のタイヤ周方向における長さLBと、細浅溝切欠き部60の開口部61の幅中心Pの位置からエッジ25の端部25aまでのタイヤ周方向における長さLeとの関係が、0.3≦(Le/LB)≦0.7の範囲内になっている。また、ショルダー細浅溝52もセンター細浅溝51と同様に、溝深さが1.0mm以上3.0mm以下の範囲内になっている。
また、ショルダー細浅溝52もセンター細浅溝51と同様に、互いに異なる長さで形成される長尺部55と短尺部56とをそれぞれ複数有しており、長尺部55と短尺部56とが交互に接続されることにより、タイヤ幅方向に延びつつ屈曲するジグザグ形状で形成されている。即ち、ショルダー細浅溝52は、長尺部55と短尺部56とが交互に接続され、長尺部55と短尺部56との接続部分をなす屈曲部57が3箇所以上10箇所以下の範囲内となるジグザグ形状で形成されている。
また、ショルダー細浅溝52も、長尺部55のタイヤ幅方向における長さL1(図7参照)と、互いに接続される長尺部55と短尺部56とを合わせたタイヤ幅方向における長さL0(図7参照)との関係が、0.5<(L1/L0)≦0.9の範囲内になっており、細浅溝切欠き部60に接続される長尺部55以外の長尺部55と短尺部56との、(L1/L0)で算出される値が、一定の大きさになっている。また、ショルダー細浅溝52も、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量AL(図7参照)が、1.0mm≦AL≦3.0mmの範囲内になっており、複数の長尺部55は、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量ALが、一定の大きさになっている。
また、ショルダー陸部22に形成されるショルダー細浅溝52は、タイヤ幅方向における長さLsが、ショルダー陸部22のタイヤ幅方向における幅Wsの40%以上70%以下の範囲内になっている。また、ショルダー陸部22のタイヤ幅方向における幅Wsは、トレッド部2の展開幅TW(図2参照)の20%以上25%以下の範囲内になっている。
なお、この場合におけるショルダー細浅溝52のタイヤ幅方向における長さLsは、ショルダー細浅溝52が接続される細浅溝切欠き部60も含んだ長さになっており、ショルダー細浅溝52と細浅溝切欠き部60とを合わせたタイヤ幅方向における長さになっている。つまり、ショルダー細浅溝52のタイヤ幅方向における長さLsは、ショルダー細浅溝52が接続される細浅溝切欠き部60におけるショルダー主溝32への開口部と、ショルダー細浅溝52におけるショルダー陸部22内で終端する側の端部とのタイヤ幅方向における距離になっている。また、ショルダー陸部22のタイヤ幅方向における幅Wsは、ショルダー細浅溝52が形成されるショルダー陸部22のタイヤ幅方向における最大幅になっている。また、ショルダー細浅溝52のタイヤ幅方向における長さLsは、ショルダー陸部22のタイヤ幅方向における幅Wsの50%以上60%以下の範囲内であるのが好ましい。
図11は、図2のR−R断面図である。図12は、図2のU−U断面図である。センターラグ溝41とショルダーラグ溝42とは、溝深さがセンターラグ溝41よりもショルダーラグ溝42の方が浅くなっており、周方向主溝30と比較すると、センターラグ溝41は、溝深さDcが、周方向主溝30の溝深さDmに対して0.50≦(Dc/Dm)≦0.90の範囲内になっている。一方、ショルダーラグ溝42は、溝深さDsが、周方向主溝30の溝深さDmに対して0.05≦(Ds/Dm)≦0.15の範囲内になっている。具体的には、センターラグ溝41の溝深さDcは、6mm以上11mm以下の範囲内になっており、ショルダーラグ溝42の溝深さDsは、2mm以上5mm以下の範囲内になっている。
また、周方向主溝30は、センター主溝31とショルダー主溝32とのいずれも、トレッド踏面3への開口部35側よりも溝底37側の方が溝幅が狭くなっており、開口部35側から溝底37側に向かうに従って、概ね溝幅が狭くなっている。詳しくは、センター主溝31は、溝壁36における開口部35と溝底37との間に位置する部分に段部31aが形成されており、センター主溝31の溝幅は、段部31aの位置で急激に変化している。即ち、センター主溝31の溝幅は、溝底37から段部31aの位置までの範囲ではほぼ一定になっていると共に、段部31aの位置で急激に溝幅が大きくなっており、段部31aの位置から開口部35側に向かうに従って、溝幅は徐々に大きくなっている。また、ショルダー主溝32は、溝壁36における開口部35と溝底37との間に位置する部分に屈曲部32aが形成されており、屈曲部32aの位置で溝壁36の傾斜角が変化することにより、ショルダー主溝32の溝幅も屈曲部32aの位置で変化している。即ち、ショルダー主溝32の溝幅は、溝底37から屈曲部32aの位置までの範囲ではほぼ一定になっており、屈曲部32aの位置から開口部35側に向かうに従って、溝幅は徐々に大きくなっている。
センター主溝31とショルダー主溝32とは、いずれも開口部35側よりも溝底37側の方が溝幅が狭くなっているため、それぞれの周方向主溝30の延在方向に見た断面視における、溝深さの1/2の位置Hを境界とする溝底37側の断面積SLが、トレッド踏面3側の断面積SUより小さくなっている。具体的には、周方向主溝30は、周方向主溝30の延在方向に見た断面視における断面積が、周方向主溝30の溝深さの1/2の位置Hを境界とする周方向主溝30の溝底37側の断面積SLと、トレッド踏面3側の断面積SUとで、(SL/SU)<0.5の関係を満たしている。
図13は、図1のA−A矢視図であり、溝面積比率についての説明図である。トレッド部2は、タイヤ幅方向におけるショルダー主溝32の外側と内側とで、溝面積比率が異なっており、タイヤ幅方向におけるショルダー主溝32の外側よりも、タイヤ幅方向におけるショルダー主溝32の内側の方が、溝面積比率が大きくなっている。詳しくは、トレッド部2は、タイヤ幅方向両側のショルダー主溝32の中心線CS同士の間の範囲Acの溝面積比率が、ショルダー主溝32の中心線CSのタイヤ幅方向外側の範囲Asの溝面積比率に対して2倍以上になっている。この場合におけるショルダー主溝32の中心線CSは、ショルダー主溝32の溝幅方向における中心線になっており、ジグザグ状に形成されるショルダー主溝32に沿って、ショルダー主溝32の中心線CSもジグザグ状になっている。また、ショルダー主溝32の中心線CSのタイヤ幅方向外側の範囲Asは、ショルダー主溝32の中心線CSからショルダー部4の位置までの範囲になっている。
また、溝面積比率は、溝面積/(溝面積+接地面積)の百分率により定義される。溝面積は、接地面(接地領域)における、算出の対象となる溝の開口面積の合計とする。接地面積は、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、正規内圧を充填すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて正規荷重に対応する負荷を加えられたときの空気入りタイヤ1と平板との接触面にて測定される。ここでいう正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、用途がトレーラー軸用タイヤになっている。トレーラー軸用タイヤは、トレーラー軸用タイヤであることを示す表示部(図示省略)を有しており、表示部は、例えば、空気入りタイヤ1のサイドウォール部5に付されたマークや凹凸により構成される。本実施形態に係る空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、リムホイールにリム組みしてインフレートした状態で装着する。リムホイールにリム組みした状態の空気入りタイヤ1は、主にトレーラー軸に装着して使用される。
空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド踏面3のうち下方に位置するトレッド踏面3が路面に接触しながら空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド踏面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド踏面3と路面との間の水が周方向主溝30やラグ溝40等に入り込み、これらの溝でトレッド踏面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、トレッド踏面3は路面に接地し易くなり、トレッド踏面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
また、雪上路面を走行する際には、トレッド踏面3に形成される溝のエッジ成分による雪上路面との摩擦抵抗も用いて、トレッド踏面3と雪上路面との間の摩擦力を向上させるが、トレッド踏面3には、周方向主溝30やラグ溝40の他に、細浅溝50が陸部20に形成されている。これにより、トレッド踏面3と雪上路面との間の摩擦力は、周方向主溝30やラグ溝40によるエッジ成分の他に、細浅溝50によるエッジ成分も用いて向上させることができるため、雪上路面の走行時における走行性能を向上させることができる。
その際に、細浅溝50は、少なくとも一端が周方向主溝30に開口しているため、細浅溝50内に雪を入り込ませ易くすることができ、エッジ成分によって摩擦力を向上させる効果であるエッジ効果を発揮し易くすることができる。さらに、細浅溝50は、長尺部55と短尺部56とが交互に接続されているため、エッジの長さを確保してエッジ成分を増加させることができ、また、エッジ成分の方向が複数の方向になるため、より多くの方向に対してエッジ効果を発揮することができる。
また、細浅溝50は、溝深さDnが周方向主溝30の溝深さDmに対して、0.1≦(Dn/Dm)≦0.4の範囲内であるため、雪上路面の走行時により確実にエッジ効果を発揮することができる。つまり、細浅溝50の溝深さDnが、周方向主溝30の溝深さDmに対して、(Dn/Dm)<0.1である場合は、細浅溝50の溝深さDnが浅過ぎるため、細浅溝50のエッジ成分によるエッジ効果を効果的に発揮し難くなる虞がある。即ち、細浅溝50のエッジ成分によるエッジ効果は、雪上路面の表層の雪が細浅溝50に入り込み、細浅溝50のエッジと雪との間で、エッジの延在方向に対して交差する方向の摩擦力が発生することにより発揮されるが、細浅溝50の溝深さDnが浅過ぎる場合、細浅溝50に雪が入り込み難くなるため、エッジ効果も発揮され難くなる虞がある。また、細浅溝50の溝深さDnが、周方向主溝30の溝深さDmに対して、(Dn/Dm)>0.4である場合は、細浅溝50の溝深さDnが深過ぎるため、細浅溝50が形成される陸部20が接地して、接地した際の荷重によって陸部20が変形した際に、細浅溝50が閉じてしまう虞がある。この場合、雪上路面の雪が細浅溝50に入り込み難くなるため、細浅溝50のエッジ成分によるエッジ効果を発揮し難くなる虞がある。
これに対し、細浅溝50の溝深さDnが、周方向主溝30の溝深さDmに対して、0.1≦(Dn/Dm)≦0.4の範囲内である場合は、細浅溝50が形成される陸部20の接地時においても細浅溝50が閉じてしまうことを抑制でき、雪上路面の走行時には、雪を細浅溝50に入り込ませて細浅溝50のエッジ成分によるエッジ効果を、より確実に発揮することができる。これにより、雪上路面の走行時における走行性能を、より確実に向上させることができる。
ここで、雪上路面の走行時における走行性能を向上させるための手法としては、溝容積を増加させることによって溝に入り込ませることのできる雪の量を増加させ、溝内の雪に対して作用する雪柱せん断力を増加させる手法が挙げられる。しかし、溝容積を増加させると、未舗装路を走行した際に路面上の石が溝の内部に入り込み易くなり、石が溝底に食い込んで溝底が損傷する、いわゆるストンドリリングが発生し易くなる。このように、雪上路面の走行時における走行性能を向上させることを目的として溝容積を増加させた場合、ストンドリリングが発生し易くなり、耐ストンドリリング性が低下し易くなる虞がある。
これに対し、本実施形態では、雪上路面の走行時における走行性能を向上させるための手法として、陸部20に細浅溝50を形成し、細浅溝50のエッジ成分によるエッジ効果を用いているため、未舗装路の走行時においても、路面上の石が入り込み易くなることを抑制することができる。これにより、雪上路面の走行時における走行性能を向上させる対策を施すことに起因して、ストンドリリングが発生し易くなることを抑制することができる。この結果、耐ストンドリリング性の低下を抑制しつつ、雪上性能を向上させることができる。
また、細浅溝50は、タイヤ周方向に隣り合うラグ溝40同士の間に1本が配置されるため、ストンドリリングの発生を抑えつつ、雪上路面での走行性能を向上させることができる。つまり、ラグ溝40は、雪上路面の走行時にはラグ溝40内に雪が入り込むことにより、雪柱せん断力を発揮させることができ、雪上路面の走行時における走行性能を向上させ易くなっているが、未舗装路の走行時には路面上の石も入り込み易くなっており、未舗装路の走行時にストンドリリングが発生し易くなる虞がある。一方、細浅溝50は、未舗装路の走行時においてもストンドリリングは発生させることなく、雪上路面での走行性能を向上させることができるが、細浅溝50は、ラグ溝40と比較すると雪が入り込み難いので、雪上路面での走行性能は、ラグ溝40と比較すると向上させ難くなっている。このため、タイヤ周方向に隣り合うラグ溝40同士の間に細浅溝50を1本配置した際には、ストンドリリングの発生を抑えつつ、雪上路面の走行時における走行性能を細浅溝50によって極力向上させることができる。この結果、より確実に耐ストンドリリング性の低下を抑制しつつ、雪上性能を向上させることができる。
また、細浅溝50は、長尺部55のタイヤ幅方向における長さL1と、長尺部55と短尺部56とを合わせたタイヤ幅方向における長さL0との関係が、0.5<(L1/L0)≦0.9の範囲内であるため、細浅溝50のエッジ成分をより確実に増加させると共に、より確実に多くの方向に対してエッジ効果を発揮することができる。つまり、細浅溝50の長尺部55の長さL1が、長尺部55と短尺部56とを合わせた長さL0に対して、(L1/L0)>0.9である場合は、長尺部55の長さL1が長過ぎるため、細浅溝50に長尺部55と短尺部56とを形成しても、細浅溝50のエッジ成分を増加させたり、多くの方向に対してエッジ効果を発揮したりし難くなる虞がある。
これに対し、細浅溝50の長尺部55の長さL1と、長尺部55と短尺部56とを合わせた長さL0との関係が、0.5<(L1/L0)≦0.9の範囲内である場合は、長尺部55の長さL1が長くなり過ぎることを抑制することができ、細浅溝50に長尺部55と短尺部56とを形成することによって、細浅溝50のエッジ成分をより確実に増加させると共に、より確実に多くの方向に対してエッジ効果を発揮することができる。この結果、より確実に雪上性能を向上させることができる。
また、細浅溝50が有する複数の長尺部55と短尺部56とは、長尺部55の長さL1と、長尺部55と短尺部56とを合わせた長さL0とより算出する(L1/L0)が一定の大きさであるため、陸部20における細浅溝50が形成される範囲の剛性の均一化を図ることができる。これにより、細浅溝50が形成される陸部20の接地時における接地荷重の均一化を図ることができ、接地荷重が不均一になることに起因する偏摩耗を抑制することができる。この結果、耐偏摩耗性を確保しつつ、雪上性能を向上させることができる。
また、細浅溝50は、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量ALが、1.0mm≦AL≦3.0mmの範囲内であるため、陸部20における細浅溝50が形成される範囲の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、細浅溝50のエッジ成分をより確実に増加させることができる。つまり、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量ALが、AL<1.0mmである場合は、長尺部55同士のオフセット量ALが小さ過ぎるため、細浅溝50に長尺部55と短尺部56とを形成しても、細浅溝50のエッジ成分を増加させたり、多くの方向に対してエッジ効果を発揮したりし難くなる虞がある。また、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量ALが、AL>3.0mmである場合は、長尺部55同士のオフセット量ALが大き過ぎるため、細浅溝50全体の長さが長くなり過ぎて、陸部20における細浅溝50が形成される範囲の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、陸部20の接地時における接地荷重が不均一になり易くなるため、偏摩耗が発生し易くなる虞がある。
これに対し、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量ALが、1.0mm≦AL≦3.0mmの範囲内である場合は、陸部20における細浅溝50が形成される範囲の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、細浅溝50のエッジ成分をより確実に増加させると共に、より確実に多くの方向に対してエッジ効果を発揮することができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を確保しつつ、雪上性能を向上させることができる。
また、細浅溝50は、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量ALが、陸部20のタイヤ周方向における長さLCに対して0.01≦(AL/LC)≦0.05の範囲内であるため、陸部20における細浅溝50が形成される範囲の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、細浅溝50のエッジ成分をより確実に増加させることができる。つまり、細浅溝50の長尺部55同士のオフセット量ALが、陸部20の長さLCに対して(AL/LC)<0.01である場合は、長尺部55同士のオフセット量ALが小さ過ぎるため、細浅溝50に長尺部55と短尺部56とを形成しても、細浅溝50のエッジ成分を増加させたり、多くの方向に対してエッジ効果を発揮したりし難くなる虞がある。また、細浅溝50の長尺部55同士のオフセット量ALが、陸部20の長さLCに対して(AL/LC)>0.05である場合は、長尺部55同士のオフセット量ALが大き過ぎるため、細浅溝50全体の長さが長くなり過ぎて、陸部20における細浅溝50が形成される範囲の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、陸部20の接地時における接地荷重が不均一になり易くなるため、偏摩耗が発生し易くなる虞がある。
これに対し、細浅溝50の長尺部55同士のオフセット量ALが、陸部20の長さLCに対して0.01≦(AL/LC)≦0.05の範囲内である場合は、陸部20における細浅溝50が形成される範囲の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、細浅溝50のエッジ成分をより確実に増加させると共に、より確実に多くの方向に対してエッジ効果を発揮することができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を確保しつつ、雪上性能を向上させることができる。
また、細浅溝50は、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量ALが一定の大きさであるため、陸部20における細浅溝50が形成される範囲内で剛性が不均一になることを抑制でき、細浅溝50が形成される範囲内の陸部20の剛性の均一化を図ることができる。これにより、陸部20の接地時における接地荷重が不均一になることを抑制でき、接地荷重が不均一になることに起因する偏摩耗の発生を抑制できる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を確保することができる。
また、細浅溝50は、長さ方向における両側の端部51a同士を結んだ直線Lnのタイヤ周方向に対する角度βが、60°≦β≦120°の範囲内であるため、雪上路面の走行時における制動性能や駆動性能を、細浅溝50によってより確実に向上させることができる。つまり、細浅溝50の両側の端部51a同士を結んだ直線Lnのタイヤ周方向に対する角度βが、β<60°であったり、β>120°であったりする場合は、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への細浅溝50全体の傾斜角度が大き過ぎる虞がある。この場合、細浅溝50のエッジ成分によるエッジ効果をタイヤ周方向に対して発揮させ難くなる虞があり、雪上路面の走行時における制動性能や駆動性能を細浅溝50によって向上させ難くなる虞がある。
これに対し、細浅溝50の両側の端部51a同士を結んだ直線Lnのタイヤ周方向に対する角度βが、60°≦β≦120°の範囲内である場合は、細浅溝50のエッジ成分によるエッジ効果をタイヤ周方向に対してより確実に発揮させることができる。これにより、雪上路面の走行時における制動性能や駆動性能を、細浅溝50によってより確実に向上させることができる。この結果、より確実に雪上性能を向上させることができる。
また、細浅溝50は、周方向主溝30に開口すると共に細浅溝50側から周方向主溝30側に向かうに従って幅が広くなり、深さが深くなって形成される細浅溝切欠き部60に接続されることにより、細浅溝切欠き部60を介して周方向主溝30に開口するため、雪柱せん断力を高めることができる。つまり、細浅溝50は、ラグ溝40と比較して溝幅が狭く、溝深さが浅いため、雪上路面の走行時に細浅溝50に入り込む雪の量は、ラグ溝40に入り込む雪の量より少なくなっている。このため、細浅溝50では、雪柱せん断力を発生し難くなっているが、細浅溝50を、細浅溝切欠き部60を介して周方向主溝30に開口させることにより、周方向主溝30に対する細浅溝50の開口部分に入り込む雪の量を増加させることができる。これにより、細浅溝50と周方向主溝30とが交差する部分での雪柱せん断力を高めることができ、雪上路面の走行時には、細浅溝50と周方向主溝30とが交差する部分での雪柱せん断力も用いて走行することができる。この結果、より確実に雪上性能を向上させることができる。
また、細浅溝切欠き部60は、陸部20のエッジ25のタイヤ周方向における長さLBと、細浅溝切欠き部60の開口部61の幅中心Pの位置から陸部20のエッジ25の端部25aまでのタイヤ周方向における長さLeとの関係が、0.3≦(Le/LB)≦0.7の範囲内であるため、陸部20の剛性差に起因する偏摩耗の発生を抑制することができる。つまり、細浅溝切欠き部60の開口部61の位置と陸部20のエッジ25のタイヤ周方向における長さLBとの関係が、(Le/LB)<0.3であったり、(Le/LB)>0.7であったりする場合は、細浅溝切欠き部60の開口部61の位置が、陸部20のエッジ25の端部25aに対して近くなり過ぎる虞がある。この場合、陸部20のエッジ25付近における細浅溝切欠き部60が接近している側の端部25a寄りの部分と、細浅溝切欠き部60が離れている側の端部25a寄りの部分とで剛性差が大きくなり易くなり、剛性差に起因して偏摩耗が発生し易くなる虞がある。
これに対し、細浅溝切欠き部60の開口部61の位置と陸部20のエッジ25のタイヤ周方向における長さLBとの関係が、0.3≦(Le/LB)≦0.7の範囲内である場合は、細浅溝切欠き部60が開口する陸部20のエッジ25付近における細浅溝切欠き部60のタイヤ周方向の両側で、剛性差が大きくなり過ぎることを抑制することができる。これにより、陸部20の剛性差に起因する偏摩耗の発生を抑制することができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を確保することができる。
また、陸部20には、周方向主溝30に開口する切欠きである補助切欠き部65が複数形成されているため、陸部20の接地時における陸部20のエッジ25付近への応力集中を緩和することができ、応力集中に起因する偏摩耗を抑制することができる。また、周方向主溝30はジグザグ状に形成されているため、周方向主溝30によって形成される陸部20のエッジ25は、位置によって延在方向が異なっているが、補助切欠き部65は、陸部20のエッジ25に対して、垂直方向に切り欠かれる向きで形成されている。これにより、補助切欠き部65は、陸部20のエッジ25の延在方向に関わらず、陸部20の接地時における陸部20のエッジ25付近への応力集中を緩和することができ、エッジ25の延在方向に関わらず、応力集中に起因する偏摩耗を抑制することができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を確保することができる。
また、周方向主溝30は、周方向主溝30の溝深さの1/2の位置Hを境界とする周方向主溝30の溝底37側の断面積SLと、トレッド踏面3側の断面積SUとで、(SL/SU)<0.5の関係を満たすため、周方向主溝30への雪の入り易さは確保しつつ、周方向主溝30に入り込んだ石が溝底37に到達することを抑制することができる。つまり、周方向主溝30の溝底37側の断面積SLと、トレッド踏面3側の断面積SUとの関係が(SL/SU)≧0.5である場合は、溝底37側の断面積SLが大き過ぎることにより、周方向主溝30に入り込んだ石が溝底37に到達し易くなり、ストンドリリングを抑制し難くなる虞がある。または、周方向主溝30の溝底37側の断面積SLと、トレッド踏面3側の断面積SUとの関係が(SL/SU)≧0.5である場合は、トレッド踏面3側の断面積SUが小さ過ぎることにより、雪上路面の走行時に雪が周方向主溝30に入り難くなり、雪上路面の走行時における走行性能を向上させ難くなる虞がある。
これに対し、周方向主溝30の溝底37側の断面積SLと、トレッド踏面3側の断面積SUとが、(SL/SU)<0.5の関係を満たす場合は、周方向主溝30への雪の入り易さは確保しつつ、周方向主溝30に入り込んだ石が溝底37に到達することを抑制することができる。この結果、より確実に耐ストンドリリング性の低下を抑制しつつ、雪上性能を向上させることができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態では、長尺部55と短尺部56とをそれぞれ複数有する細浅溝50は、(L1/L0)で算出される値が一定の大きさになっているが、細浅溝50は、(L1/L0)が複数の大きさで形成されていてもよい。つまり、細浅溝50は、長尺部55のタイヤ幅方向における長さL1と、互いに接続される長尺部55と短尺部56とを合わせたタイヤ幅方向における長さL0とを用いて算出される(L1/L0)の値が、1つの細浅溝50で複数の大きさを有する形状であってもよい。
また、上述した実施形態では、細浅溝50は、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量ALが一定の大きさになっているが、細浅溝50は、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量ALが複数の大きさで形成される形状であってもよい。細浅溝50は、細浅溝50が形成される陸部20の形状やトレッド部2における陸部20の配置、陸部20内での細浅溝50の配置位置等に応じて、長尺部55や短尺部56の長さを適宜設定するのが好ましい。これらに応じて、長尺部55や短尺部56の長さを設定して細浅溝50を形成することにより、雪上路面の走行時におけるエッジ効果を、長尺部55や短尺部56の長さが適正化された細浅溝50のエッジ成分によってより確実に発揮することができ、また、細浅溝50に作用する荷重による応力集中を適切に抑制することができる。この結果、耐偏摩耗性を確保しつつ、雪上性能を向上させることができる。
また、上述した実施形態では、細浅溝50は、1つの長尺部55の両端に接続される2つの短尺部56が長尺部55からタイヤ周方向において延びる方向が、互いに反対方向になっているが、細浅溝50は、これ以外の形状で形成されていてもよい。図14は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、細浅溝50が振幅する形態で形成される場合の説明図である。細浅溝50は、例えば、図14に示すように、1つの長尺部55の両端に接続される2つの短尺部56が長尺部55からタイヤ周方向において延びる方向が、互いに同じ方向になって形成されていてもよい。つまり、細浅溝50は、長尺部55に沿った方向に延びつつ屈曲部57で屈曲し、短尺部56によって繰り返し振幅する形状で形成されていてもよい。細浅溝50は、長尺部55と短尺部56とが交互に接続されていれば、その形状は問わない。
また、細浅溝50の屈曲部57は、長尺部55と短尺部56とが直線状のまま接続されることにより屈曲部57は角状に形成されていてもよく、長尺部55と短尺部56とが小さな円弧を介して接続されることにより、屈曲部57は円弧状に形成されていてもよい。
また、上述した実施形態では、周方向主溝30は、3本が配置されているが、周方向主溝30は3本以外であってもよい。周方向主溝30は、例えば、4本以上であってもよい。また、陸部20に形成される細浅溝50は、全ての陸部20に形成されていなくてもよい。細浅溝50は、耐ストンドリリング性と雪上性能とを考慮して、効果を期待できる陸部20に形成するのが好ましい。
また、上述した実施形態では、本発明に係るタイヤの一例として空気入りタイヤ1を用いて説明したが、本発明に係るタイヤは、空気入りタイヤ1以外であってもよい。本発明に係るタイヤは、例えば、気体を充填することなく使用することができる、いわゆるエアレスタイヤであってもよい。
[実施例]
図15A、図15Bは、タイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記のタイヤについて、従来例のタイヤと、本発明に係るタイヤと、本発明に係るタイヤと比較する比較例のタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、雪上路面での走行性能である雪上性能と、ストンドリリングの発生のし難さである耐ストンドリリング性とについての試験を行った。
性能評価試験は、空気を充填して使用する空気入りタイヤを用いて行い、JATMAで規定されるタイヤの呼びが265/70R19.5サイズのタイヤをJATMAで規定される正規リムのリムホイールにリム組みし、空気圧をJATMAで規定される最大空気圧に調整したものを用いて行った。
各試験項目の評価方法は、雪上性能については、ECE R117−02(ECE Regulation No.117 Revision 2)に準拠して行われ、雪上路面における規定の初速度から終端速度までの加速に要する距離を測定して加速度を算出し、算出した加速度を、後述する従来例を100とする指数で表すことにより評価した。数値が大きいほど雪上路面での加速性能に優れ、雪上性能が高いことを示している。
また、耐ストンドリリング性については、試験タイヤを装着した試験車両で悪路を30km以上走行後、トレッド部に形成される溝の溝底に到達している石の個数を数え、溝底に到達している石の個数の逆数を、後述する従来例を100とする指数で表すことにより評価した。数値が大きいほど溝の溝底に到達している石の個数が少なく、耐ストンドリリング性が高いことを示している。
性能評価試験は、従来のタイヤの一例である従来例のタイヤと、本発明に係るタイヤの一例である実施例1〜20と、本発明に係るタイヤと比較するタイヤの一例である比較例1、2との23種類のタイヤについて行った。このうち、従来例、及び比較例1、2のタイヤは、陸部にジグザグ形状の細溝が形成されるものの、細溝の溝深さDnが周方向主溝の溝深さDmに対して0.1≦(Dn/Dm)≦0.4の範囲内になっていない。
これに対し、本発明に係るタイヤの一例である実施例1〜20は、陸部20に形成される細浅溝50の溝深さDnが、全て周方向主溝の溝深さDmに対して0.1≦(Dn/Dm)≦0.4の範囲内になっている。さらに、実施例1〜20に係るタイヤは、タイヤ周方向に隣り合うラグ溝40同士の間に配置される細浅溝50の本数や、互いに接続される長尺部55と短尺部56とを合わせた長さL0に対する長尺部55の長さL1の比率(L1/L0)、(L1/L0)が一定の大きさであるか否か、短尺部56を介して隣り合う長尺部55同士のオフセット量AL、陸部20の長さLCに対する長尺部55同士のオフセット量ALの比率(AL/LC)、長尺部55同士のオフセット量ALが一定であるか否か、細浅溝50の長さ方向における両側の端部同士を結んだ直線Lnのタイヤ周方向に対する角度β、細浅溝切欠き部60の有無、陸部20のエッジ25の長さLBに対するエッジ25の端部25aから細浅溝切欠き部60の開口部61の幅中心Pの位置までの長さLeの比率(Le/LB)、補助切欠き部65の有無が、それぞれ異なっている。
これらのタイヤを用いて性能評価試験を行った結果、図15A、図15Bに示すように、実施例1〜20に係るタイヤは、従来例や比較例1、2に対して、耐ストンドリリング性を低下させることなく、雪上性能を向上させることができることが分かった。つまり、実施例1〜20に係るタイヤは、耐ストンドリリング性の低下を抑制しつつ、雪上性能を向上させることができる。