JP2021111682A - 放熱部材、放熱部材の製造方法、及び電子機器 - Google Patents

放熱部材、放熱部材の製造方法、及び電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】軽量であり実質的な放熱性に優れる放熱部材、該放熱部材を好適に製造することができる熱伝導体の製造方法及び該放熱部材を備える電子機器を提供する。【解決手段】放熱部材100は、複数の熱伝導部10と、柔軟性を有する材料で構成され、各熱伝導部を接合する接合部20と、を備える、三次元形状を有する熱伝導体を有し、熱伝導体の少なくとも表面の一部に凹凸110が形成される。【選択図】図1

Description

本発明は、放熱部材、放熱部材の製造方法、及び電子機器に関する。
近年、電子機器や車両用ヘッドライト、車載電池等の発熱部材に対する放熱対策が急務となっている。例えば、コンピューターの中央演算処理装置、画像処理用演算プロセッサ、スマートフォンのSoC、組み込み機器のDSPやマイコン、あるいはトランジスタ等の半導体素子、発光ダイオードやエレクトロルミネッセンス、液晶等の発光体といった電子部品の小型化、高集積化により、発熱量が大きくなる傾向にある。これらの電子部品の発熱による装置やシステムの寿命低下、誤作動が問題となってきており、電子部品の放熱対策への要求は、年々高まってきている。
このような発熱部材等の高温部材に対する対策として、空冷ファンを用いた強制冷却の他、放熱フィンを備えたヒートシンク等の放熱部材が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
このような放熱部材は、発熱体と熱的に接続する面において、界面に断熱層となる空気層が形成されるのを防ぐために、グリスが塗布されてきた。しかしながら、一般的なグリスは熱伝導性が高くない。そのため、熱伝導率が比較的高いダイヤモンドを分散させたダイヤモンドグリスも用いられている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、ダイヤモンドグリスは、高価である。また、ダイヤモンドグリスを用いた場合でも、十分な熱伝導性を得ることは困難であった。
また、特許文献3には、高温部材の表面に、スパイラル状に巻回しながら進行する形状の熱伝導シートを備え、高温部材の種々の形態に順応可能な放熱構造体が提案されている。
このような、放熱フィンや熱伝導シートには、通常、熱伝導性に優れたアルミニウム、銅、ステンレス鋼等の金属材料が用いられている。
ところで、電子部品を備えた電子機器においては小型化、軽量化が進んでおり、放熱部材についても更なる軽量化が求められている。
しかしながら、上述したような金属材料は比重が大きい。このように、軽量で実質的な放熱性に優れる放熱部材の実現は困難であった。
特開2007−129104号公報 特表2017−530220号公報 特開2019−125665号公報
本発明の目的は、軽量であり実質的な放熱性に優れる放熱部材、軽量であり実質的な放熱性に優れる放熱部材を好適に製造することができる熱伝導体の製造方法、及び軽量であり実質的な放熱性に優れる放熱部材を備える電子機器を提供することにある。
本発明の放熱部材は、複数の熱伝導部と、柔軟性を有する材料で構成され、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える、三次元形状を有する熱伝導体を有し、
前記熱伝導体の少なくとも表面の一部に凹凸が形成されていることを特徴とする。
本発明では、前記熱伝導部は、シート状をなすものであることが好ましい。
本発明では、前記熱伝導体のうち前記熱伝導部及び前記接合部が表出している側の面に前記凹凸が形成されていることが好ましい。
本発明では、前記凹凸は、縦断面視で櫛歯状に形成されていることが好ましい。
本発明では、前記熱伝導部と前記接合部との積層方向が、前記凹凸の幅方向と非平行になるように該凹凸が形成されていることが好ましい。
本発明では、前記凹凸において凸部の幅をw[mm]とし、凹部の幅をw[mm]としたとき、w/wが0.5以上2.0以下であることが好ましい。
本発明では、前記熱伝導体の全体の厚さをT[mm]とし、前記凹凸における凹部の深さをT[mm]としたとき、T/Tが0.2以上0.9以下であることが好ましい。
本発明では、前記熱伝導部と前記接合部との積層方向における前記熱伝導部の幅が5μm以上500μm以下であることが好ましい。
本発明では、前記熱伝導部と前記接合部との積層方向における前記接合部の幅が0.1μm以上1000μm以下であることが好ましい。
本発明では、前記熱伝導体の密度が0.7g/cm以上2.5g/cm以下であることが好ましい。
本発明では、前記放熱部材は、高温部材に対向する面とは反対の面側に、前記凹凸が形成されていることが好ましい。
本発明では、前記放熱部材は、複数個の高温部材に跨るようにして配置して利用されるものであり、当該複数個の高温部材に対向する面側に、当該複数個の高温部材の表面を含む面形状に対応する段差加工が施されていることが好ましい。
本発明では、前記高温部材は電子部品であることが好ましい。
本発明の放熱部材の製造方法は、複数の熱伝導層と、前記各熱伝導層を接合する接合層とを有する積層体を製造する積層体製造工程と、
前記積層体を所定の形状に加工する成形工程とを有し、
前記熱伝導層により形成された複数の熱伝導部と、前記接合層により形成され、柔軟性を有する材料で構成された接合部とを備え、少なくとも表面の一部に凹凸が形成された三次元形状を有する熱伝導体を有する放熱部材を得ることを特徴とする。
本発明では、少なくとも一方の面に前記接合部の形成に用いる硬化性樹脂材料を含む組成物が付与された、前記熱伝導部の形成に用いる熱伝導部形成用シートを、ロールの周面に巻回し、筒状の巻回体を得る巻回工程を有する方法を用いて、前記積層体を製造することが好ましい。
本発明では、前記巻回工程の後に、前記巻回体を、前記ロールの軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体を得る切開工程と、
前記切開体中に含まれる前記硬化性樹脂材料を硬化させる硬化工程とを有することが好ましい。
本発明では、前記硬化工程の後に、前記積層体の少なくとも表面の一部に凹部を形成する凹部形成工程を有することが好ましい。
本発明の電子機器は、電子部品と、前記放熱部材とを有することを特徴とする。
本発明では、前記放熱部材は、高温部材に対向する面とは反対の面側に、前記凹凸が形成されていることが好ましい。
本発明では、高温部材と前記放熱部材との間に挟まれるように、電気絶縁性シートが配されていることが好ましい。
本発明によれば、軽量であり実質的な放熱性に優れる放熱部材、軽量であり実質的な放熱性に優れる放熱部材を好適に製造することができる熱伝導体の製造方法、及び軽量であり実質的な放熱性に優れる放熱部材を備える電子機器を提供することができる。
本発明の放熱部材の一例を模式的に示す斜視図である。 本発明の放熱部材の他の一例を模式的に示す斜視図である。 本発明の放熱部材の他の一例を模式的に示す斜視図である。 積層された熱伝導部及び接合部の部分を拡大して示す模式的な断面図である。 積層された複数の熱伝導部を分解して示す模式的な一部分解斜視図である。 接合部を構成する樹脂材料の一例の概念図である。 本発明の放熱部材の一例を示す写真である。 本発明の放熱部材の一例を示す写真である。 本発明の放熱部材の一例を示す写真である。 図1に示す放熱部材の使用形態の一例を模式的に示す図である。 図2に示す放熱部材の使用形態の一例を模式的に示す図である。 図3に示す放熱部材の使用形態の一例を模式的に示す図である。 図3に示す放熱部材の使用形態の他の一例を模式的に示す図である。 鱗片状黒鉛で構成された熱伝導部形成用シートの一例を模式的に示す断面図である。 凹部が設けられた熱伝導部形成用シートに、接合部形成用組成物を付与した状態の一例を模式的に示す断面図である。 接合部形成用組成物付与工程、巻回工程に用いる装置の一例を模式的に示す図である。 切開工程で得られた切開体の一例を模式的に示す図である。 切開体を押圧して、切開体の平坦性をより高くした状態の一例を模式的に示す図である。 カット工程の様子の一例を模式的に示す図である。 凹部形成工程の様子の一例を模式的に示す図である。 本発明の電子機器の一例としてのドローンを模式的に示す斜視図である。 図21に示すドローンが有する制御部の一例を模式的に示す平面図である。 図21に示すドローンが有する制御部の一例を模式的に示す一部破断断面図である。 図21に示すドローンが有する制御部の他の一例を模式的に示す一部破断断面図である。
以下、本発明を実施するための実施の形態について詳細に説明する。
[1]放熱部材
まず、本発明の放熱部材について説明する。
図1は、本発明の放熱部材の一例を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明の放熱部材の他の一例を模式的に示す斜視図である。図3は、本発明の放熱部材の他の一例を模式的に示す斜視図である。
なお、図3中においては、熱伝導体1の少なくとも表面の一部に設けられた凹凸110の図示を省略している(後述する図12、図13についても同様である)。また、本明細書で参照する図面においては、各部材間の関係をわかりやすくするために、一部を縮小あるいは拡大して示している場合があり、図面に示す各部材間での大きさの比率は、実際の各部材間での大きさの比率を表しているものではない。
放熱部材(伝熱部材)100は、当該放熱部材100が適用される高温部材からの放熱を促進する機能を有する部材である。
放熱部材100は、複数の熱伝導部10と、柔軟性を有する材料で構成され、各熱伝導部10を接合する接合部20とを備える、三次元形状を有する熱伝導体1を有する。そして、熱伝導体1の少なくとも表面の一部に凹凸110が形成されている。
放熱部材100(熱伝導体1)が、所定の位置関係で設けられた複数の熱伝導部10と接合部20とを有することにより、熱伝導体1全体としての柔軟性が優れたものとなり、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との密着性を優れたものとすることができ、前記部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性を優れたものとすることができる。
また、熱伝導体1が三次元形状を有するものであることにより、例えば、放熱部材100が適用される部材、すなわち、高温部材が複雑な表面形状を有するものである場合であっても、放熱部材100と前記高温部材とを好適に密着させることができ、実質的な熱伝導性を特に優れたものとすることができる。また、熱伝導体1と熱伝導体1が適用される部材とを三次元的に好適に密着させることができるため、前記部材の熱伝導体1と接触させるべき領域が三次元方向の比較的広い領域にわたるものである場合であっても、好適に適用することができる。また、例えば、放熱部材が適用される部材(高温部材)が、装置の深部に設置されており、高温部材が設置された部位近傍に、冷却のための気体(例えば、空気等)や液体(例えば、冷却水等)を供給することが困難な場合でも、熱伝導体1が三次元形状を有するものであることにより、放熱部材100を介して、高温部材が設置された部位から遠位まで好適に伝熱することができ、放熱部材100のうち高温部材から遠位の部位を冷却することにより、高温部材を効率よく冷却することができる。また、例えば、放熱部材100と放熱部材が適用される部材(高温部材)とを三次元的に好適に密着させることができるため、前記高温部材の放熱部材100と接触させるべき領域が三次元方向の比較的広い領域にわたるものである場合であっても、好適に適用することができる。
そして、本発明の放熱部材100は、熱伝導体1の少なくとも表面の一部に凹凸110が形成されている。
表面に凹凸110が形成されていることにより、熱伝導体1の表面積が増大する。特に、凹凸110からの放熱効率を効果的に高めることができ、全体としての放熱効率を優れたものとすることができる。
以上のようなことから、本発明では、軽量であり実質的な放熱性に優れる放熱部材100を提供することができる。
本発明において「三次元形状を有する」とは、「極端に薄いシート状のもの」や「極端に長い糸状や紐状のもの」を除外する趣旨であり、実用上、所定の厚さを有する立体形状のもの、例えば、ブロック状のもの等を意味する。
より具体的には、熱伝導体1を投影面積が最大となる方向から観察した際の面積をS1[cm]、当該方向に直交する方向のうち投影面積が最小となる方向から観察した際の面積をS2[cm]としたとき、S1/S2は、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
また、熱伝導体1を投影面積が最大となる方向から観察した際の熱伝導体1の最大長さをL1[cm]、当該方向に直交する方向のうち投影面積が最小となる方向から観察した際の熱伝導体1の最大長さをL2[cm]としたとき、L1/L2は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
これにより、上述した効果をさらに顕著なものとすることができる。
また、熱伝導体1の厚さTは、2mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましい。
これにより、上述した効果を特に顕著なものとすることができる。
なお、本明細書で参照する図では、熱伝導部10と接合部20との界面を明確に示しているが、例えば、熱伝導部10の一部が接合部20に侵入していること等により、熱伝導部10と接合部20との界面が不明確なものとなっていても構わない。
[1−1]熱伝導体
まず、本発明の放熱部材が有する熱伝導体について説明する。
図4は、熱伝導体において積層された熱伝導部及び接合部の部分を拡大して示す模式的な断面図である。図5は、積層された複数の熱伝導部を分解して示す模式的な一部分解斜視図である。図6は、接合部を構成する樹脂材料の一例の概念図である。
後に詳述するように、熱伝導体1は、所定の方向での熱伝導性に優れるものであり、例えば、熱伝導体1に冷却すべき部材等を接触させることにより用いられるものである。
熱伝導体1は、複数の熱伝導部10と、柔軟性を有する材料で構成され、各熱伝導部10を接合する接合部20とを備える。言い換えると、熱伝導体1は、複数の熱伝導部10と接合部20とを有する複合積層体である。
熱伝導体1は、少なくとも1つの接合部20を備えていればよいが、図1〜図3に示す例では、複数の熱伝導部10と複数の接合部20とを備えており、熱伝導部10と接合部20とは交互に配されている。熱伝導部10及び接合部20は、これらの表面の少なくとも一部が、熱伝導体1の使用時において、熱伝導体1が適用される部材と接触可能な形態で配置されている。そして、このような熱伝導体1は、後に詳述する方法を用いて好適に製造することができる。
これにより、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との密着性を特に優れたものとすることができ、前記部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性を特に優れたものとすることができる。
図1〜図3に示す例では、複数の熱伝導部10と複数の接合部20とを備えており、これらの積層方向の両端には熱伝導部10が配されている。
具体的には後述するが、上記のような熱伝導体1は、例えば、少なくとも一方の面に、接合部20の形成に用いる接合部形成用組成物20’が付与された、熱伝導部10の形成に用いる熱伝導部形成用シート10’を、巻取ロールR2の周面に巻回して、熱伝導部10と接合部20とを交互に積層形成することで、好適に製造することができる。
ここで、本明細書では、熱伝導体1において熱伝導部10と接合部20との積層方向を熱伝導体1の積層方向と定義するとともに、熱伝導部形成用シート10’の面内方向を熱伝導部10の面内方向と定義する。例えば、図1〜図4に示す構成では、左右方向が熱伝導体1の積層方向であり、縦の奥行方向が熱伝導部10の面内方向である。また、後述する図14、図15中では、横の奥行方向が、熱伝導部形成用シート10’の面内方向、熱伝導部10の面内方向である。
図1に示す構成では、熱伝導体1の一方の主面側に凹凸110が設けられており、熱伝導体1は、全体としてシート状をなしている。また、図2に示す構成では、熱伝導体1の一方の主面側に凹凸110が設けられるとともに、他方の主面側に段差140が設けられており、熱伝導体1は、全体としてシート状をなしている。また、図3に示す構成では、熱伝導体1は、熱伝導部10と接合部20との積層方向を深さ方向とする凹部150を備えている。図3に示す構成では、凹部150は円形をなしているが、凹部150の形状は、例えば、楕円形、多角形等、いかなる形状であってもよい。図3に示す構成では、凹凸110の図示を省略している。図3に示す構成では、図示しない凹凸110は、凹部150内に設けられていてもよいし、熱伝導体1の外表面に設けられていてもよい。また、図3に示す構成では、凹部150は、例えば、有底凹部であっても、図中左側の面や下側の面に貫通する孔部であってもよい。
[1−1−1]熱伝導部
複数ある熱伝導部10は、熱伝導体1の全体における熱伝導性、特に、熱伝導部10の面内方向の熱伝導性に主に寄与する部分である。
熱伝導部10は、熱伝導性を有していれば、特に限定されるものではないが、熱伝導部10を構成する材料としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ等のセラミックス材料、黒鉛、金属材料等が挙げられるが、黒鉛、金属材料が好ましい。
これにより、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の製造コストを抑制することができる。
また、熱伝導部10がセラミックス材料で構成されている場合、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の発塵性をより低くすることができ、例えば、電子回路の電気的なショート等の問題の発生をより効果的に防止することができる。特に、窒化アルミニウム等の窒化物系セラミックス、アルミナ等の酸化物系セラミックスは、それら自体が絶縁性の高い材料であるため、万が一、発塵等により熱伝導部10の一部が熱伝導体1から脱落した場合でも、上記のような問題を効果的に防止することができる。
熱伝導部10は、シート状をなすものであることが好ましい。
熱伝導部10がシート状をなすものであることにより、熱伝導体1、放熱部材100の製造がより容易になるとともに、熱伝導体1、放熱部材100の各部位での熱伝導部10及び接合部20の存在割合の不本意なばらつきを効果的に防止することができ、熱伝導体1、放熱部材100全体としての熱伝導性のさらなる向上を図ることができる。
なお、後に詳述するように、熱伝導体1の製造において、熱伝導部形成用シート10’を用いることで、シート状の熱伝導部10を好適に形成することができる。
[1−1−1−1]黒鉛
特に、熱伝導部10が、黒鉛を含む熱伝導部形成用シート10’により形成されたものであると、前述した効果に加え、さらに、以下のような効果が得られる。すなわち、熱伝導体1のしなやかさ、柔軟性をより優れたものとすることができ、例えば、熱伝導体1が折れ曲がった時の復元力、さらには内部の空隙によるクッション性、過熱部と接触したときの適度な変形による接触性の向上等をより優れたものとすることができる。
熱伝導部10を構成する黒鉛としては、鱗片状黒鉛を用いることが好ましい。
鱗片状黒鉛を用いることで、後述するような方法により、鱗片状黒鉛を熱伝導部10の面内方向に好適に配向させることができ、熱伝導部10の面内方向への熱伝導性を特に優れたものとすることができる。また、熱伝導部10に後述する凹部11が形成されている場合、鱗片状黒鉛を用いることで、熱伝導部10の凹部11以外の部位、特に熱伝導部10の面内方向の法線方向である熱伝導部10の厚さ方向の中心部付近の部位に、後述するような空隙部を好適に設けることができ、後述するような効果を得ることができる。
[1−1−1−2]金属材料
また、熱伝導部10が金属材料で構成された熱伝導部形成用シート10’により形成されたものであると、前述した効果に加え、さらに、以下のような効果が得られる。すなわち、金属材料内部の結合力の強さから熱伝導体1の発塵性をより低くすることができる。また、熱伝導体1に、比較的大きな荷重を加えた場合であっても、座屈等による熱伝導体1の崩壊等、熱伝導体1の不可逆的な変形がより効果的に防止される。
熱伝導部10を構成する金属材料としては、各種の単体金属や合金等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、Al、Cu、Ag、Au、Mg及びZnよりなる群から選択される1種又は2種以上を含むものであることが好ましい。
これにより、熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。
前記群を構成する金属元素を含む合金としては、例えば、Al、Cu及びMgを含むアルミニウム合金であるジュラルミン等が挙げられる。
熱伝導部10は、実質的に単一成分で構成されていることが好ましい。
これにより、熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。また、一般に、熱伝導体1の製造コストを抑制する上でも有利である。
なお、「実質的に単一成分から構成される」とは、対象となる部位での主成分の割合が、95重量%以上であることをいうものとする。主成分の割合は97重量%以上であることが好ましく、99重量%以上であることがより好ましい。
ただし、熱伝導部10中に、空気等のガスが含まれる場合は、当該ガスの含有量は無視することとする。また、熱伝導部10が金属材料から構成される場合、その表面には不動態膜のような、熱伝導部10を構成する金属の酸化被膜が形成されていても構わない。このような酸化被膜が形成されている場合も、「実質的に単一成分から構成される」ものとして取り扱うものとする。後に詳述する熱伝導部形成用シート10’についても同様である。
20℃における熱伝導部10の面内方向の熱伝導率は、7W/(m・K)以上2500W/(m・K)以下であることが好ましく、10W/(m・K)以上1200W/(m・K)以下であることがより好ましく、15W/(m・K)以上800W/(m・K)以下であることがさらに好ましい。
なお、熱伝導率の値は、レーザーフラッシュ法に準拠した、非定常熱線法での測定により求めることができる。
熱伝導部10と接合部20との積層方向における熱伝導部10の幅(熱伝導部10の厚さ)は、5μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上200μm以下であることがより好ましい。
これにより、熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合を十分に高いものとしつつ、熱伝導体1全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、より確実に、上述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。
ただし、ここで、熱伝導部10が後述するような凹部11を有するものである場合、熱伝導部10の厚さとは、凹部11が設けられていない部位における厚さのことを言う。
図4に示すように、熱伝導体1において、熱伝導部10は、その厚さ方向に凹部11が設けられたものであることが好ましい。
これにより、熱伝導体1において熱伝導部10と接合部20との接合をより強固にすることができ、熱伝導体1が適用される部材、例えば、冷却すべき部材等の表面形状への形状適合性や熱伝導体1の耐久性をより良好なものとすることができる。例えば、積層方向に折り曲げられても、熱伝導部10と接合部20とがより強固に接合されているため、熱伝導部10同士が剥がれてしまうことが好適に防止され、積層方向に高い柔軟性を有し、熱伝導体1が適用される部材、例えば、冷却すべき部材等の表面形状への形状適合性が優れたものとなる。
凹部11の深さは、図1〜図3中、t10で示す熱伝導部10の厚さの1/3以上であることが好ましく、1/2以上であることがより好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
特に、凹部11は、熱伝導部10の厚さ方向に貫通する孔部であることが好ましい。
これにより、熱伝導部10の表裏に貫通するように、接合部20の構成材料である樹脂材料21が侵入した状態とすることができ、熱伝導体1において熱伝導部10と接合部20との接合をさらに強固にすることができ、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
図5に示すように、熱伝導部10を接合部20との積層方向から観察した際に、複数の熱伝導部10で、重なり合わない孔部が存在していることが好ましい。
複数の熱伝導部10で、重なり合う孔部が存在していると、当該重なり合う孔部に侵入した接合部20の樹脂材料21は、複数の熱伝導部10を貫通した串刺し状になる。このような場合、樹脂材料21が孔部からすり抜けてしまい、熱伝導部10同士の接合が不十分になる可能性がある。
これに対し、熱伝導部10を接合部20との積層方向から観察した際に、複数の熱伝導部10で、重なり合わない孔部が存在していることで、孔部に侵入した接合部20の樹脂材料21のすり抜けが防止され、熱伝導部10同士の接合をより強固なものとすることができる。
なお、図5では、熱伝導部10の部分のみを抜き出して示しており、接合部20は省略している。
凹部11が有底のものである場合、凹部11は、熱伝導部10の一方の面に設けられたものであってもよいし、両面に設けられたものであってもよい。
凹部11の形状は、特に限定されるものではなく、熱伝導部10を平面視した際の凹部11の形状、熱伝導部10についての凹部11の横断面形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形等が挙げられる。また、熱伝導部10についての縦断面形状としては、例えば、凹部11の深さ方向に一定の幅を有するものであってもよいし、凹部11の深さ方向で幅が変化する部位を有するものであってもよい。
熱伝導部10を平面視した際の凹部11の形状、熱伝導部10についての凹部11の横断面形状が円形である場合、当該凹部11の直径は、30μm以上500μm以下であることが好ましく、40μm以上300μm以下であることがより好ましく、50μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
また、熱伝導部10の厚さ方向(法線方向)と、凹部11の深さ方向(侵入方向)とのなす角(侵入角度)は、0°以上45°以下であるのが好ましい。
単一の熱伝導部10に凹部11が複数個設けられている場合、当該熱伝導部10の面内方向での隣り合う凹部11の間隔は、300μm以上1000μm以下であることが好ましく、400μm以上800μm以下であることがより好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
ここで、本明細書において、「凹部11の間隔」は、隣り合う凹部11の中心間の距離のことをいう。
熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合は、30体積%以上90体積%以下であることが好ましく、40体積%以上85体積%以下であることがより好ましく、50体積%以上82体積%以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
熱伝導体1中(ただし、空隙部を除く実体部)に占める熱伝導部10の割合は、熱伝導体1の積層方向における断面での面積比で、30%以上90%以下であることが好ましく、40%以上85%以下であることがより好ましく、50%以上82%以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
[1−1−2]接合部
接合部20は、隣り合う2つの熱伝導部10の間に配されて、熱伝導部10同士を接合するものであり、柔軟性を有する樹脂材料21を含んで構成される。特に、本実施形態では、樹脂材料21は、後述する硬化性樹脂材料21’の硬化物である。なお、接合部20は、各熱伝導部10を接合するものであり、かつ、柔軟性を有する材料で構成されたものであれば、いかなる材料で構成されたものであってもよい。
接合部20が柔軟性を有する樹脂材料21を含むことで、熱伝導体1は、熱伝導体1が適用される部材、例えば、冷却すべき部材等の表面形状への形状適合性に優れたものとなる。
また、接合部20が柔軟性を有する樹脂材料21を含むことで、熱伝導体1が変形した際に、熱伝導体1が破損することを好適に防止することができる。
[1−1−2−1]樹脂材料
接合部20を構成する樹脂材料21としては、柔軟性を有するものであれば特に限定されず、例えば、柔軟性エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられるが、樹脂材料21は、図6に示すように、環状分子51と、直鎖状の分子構造を有し環状分子51を串刺し状に包接する第1のポリマー52と、第1のポリマー52の両端付近に設けられた封鎖基53とを有するポリロタキサン50、及び、第2のポリマー60を含み、環状分子51を介して、ポリロタキサン50と第2のポリマー60とが結合しているものであることが好ましい。
これにより、熱伝導体1における熱伝導部10と接合部20との接合強度等をより優れたものとすることができ、熱伝導体1の耐久性をより優れたものとすることができる。また、熱伝導体1の柔軟性、耐熱性等を特に優れたものとすることができる。
特に、図6(A)に示すような状態の樹脂材料21に、矢印方向の応力が付加された場合、樹脂材料21は、図6(B)に示すような形態を採ることができる。すなわち、樹脂材料21では、環状分子51が第1のポリマー52に沿って移動可能であるため、すなわち、第1のポリマー52が環状分子51内を移動可能であるため、変形の応力を樹脂材料21中で効率よく吸収することができる。したがって、ひねり変形力等の大きな外力が加わった場合であっても、接合部20が破壊されたり、熱伝導部10同士の接合が破壊されてしまったりすることが効果的に防止される。
以下、ポリロタキサン50と第2のポリマー60とを含む樹脂材料21について詳細に説明する。
ポリロタキサン50を構成する環状分子51は、第1のポリマー52に沿って移動可能なものであればよいが、置換されていてもよいシクロデキストリン分子であることが好ましく、該シクロデキストリン分子がα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン、並びにその誘導体からなる群から選択されるものであることが特に好ましい。
ポリロタキサン50中の環状分子51の少なくとも一部は、上述のように、第2のポリマー60の少なくとも一部と結合する。
環状分子51が有する官能基(第2のポリマー60と結合する官能基)としては、例えば、−OH基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基等が挙げられる。なお、光架橋基としては、例えば、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩、スチリルキノリウム塩等が挙げられる。
環状分子51が第1のポリマー52により串刺し状に包接される際に環状分子51が最大限に包接される量を1とした場合、第1のポリマー52に串刺し状に包接されている環状分子51の量は、0.001以上0.6以下であることが好ましく、0.01以上0.5以下であることがより好ましく、0.05以上0.4以下であることがさらに好ましい。なお、異なる2種以上の環状分子51を用いてもよい。
ポリロタキサン50を構成する第1のポリマー52としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/又はこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びその他オレフィン系単量体との共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロン等のポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、並びにこれらの誘導体が挙げられ、特にポリエチレングリコールであることが好ましい。
第1のポリマー52の重量平均分子量は、1万以上であることが好ましく、2万以上であることがより好ましく、3.5万以上であることがさらに好ましい。なお、異なる2種以上の第1のポリマー52を用いてもよい。
環状分子51と第1のポリマー52との組み合わせとしては、環状分子51が置換されていてもよいα−シクロデキストリンであり、第1のポリマー52がポリエチレングリコールであることが好ましい。
ポリロタキサン50を構成する封鎖基53は、環状分子51が第1のポリマー52から脱離することを防止する機能を有する基であれば特に限定されないが、例えば、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニル等が挙げられる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類、ステロイド類等が挙げられる。
置換ベンゼン類、置換多核芳香族類を構成する置換基としては、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニル等が挙げられる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。なお、異なる2つ以上の封鎖基53を用いてもよい。
樹脂材料21中において、少なくとも一部のポリロタキサン50が、環状分子51を介して、第2のポリマー60と結合しているが、樹脂材料21中には、第2のポリマー60と結合していないポリロタキサン50が含まれていてもよいし、ポリロタキサン50同士が結合していてもよい。
第2のポリマー60は、環状分子51を介して、ポリロタキサン50と結合するものである。第2のポリマー60が有する環状分子51と結合する官能基としては、例えば、−OH基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、ビニル基、チオール基、光架橋基等が挙げられる。なお、光架橋基としては、例えば、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩、スチリルキノリウム塩等が挙げられる。
第2のポリマー60としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/又はこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びその他オレフィン系単量体との共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロン等のポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類の各種樹脂の骨格を有し、前述した官能基を有するものが挙げられる。
また、第2のポリマー60と環状分子51とは、架橋剤により化学結合されていてもよい。
架橋剤の分子量は、2000未満であることが好ましく、1000未満であることがより好ましく、600未満であることがさらに好ましく、400未満であることが最も好ましい。
架橋剤としては、例えば、塩化シアヌル、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、フェニレンジイソシアネート、ジイソシアン酸トリレイン、ジビニルスルホン、1,1’−カルボニルジイミダゾール、アルコキシシラン類等が挙げられる。なお、異なる2種以上の架橋剤を用いてもよい。
また、第2のポリマー60は、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。樹脂材料21中において、少なくとも一部の第2のポリマー60が、環状分子51を介して、ポリロタキサン50と結合しているが、樹脂材料21中、ポリロタキサン50と結合していない第2のポリマー60が含まれていてもよいし、第2のポリマー60同士が結合していてもよい。なお、異なる2種以上の第2のポリマー60を用いてもよい。
樹脂材料21中における第2のポリマー60の含有量に対するポリロタキサン50の含有量の比率は、重量比で、1/1000以上であることが好ましい。
[1−1−2−2]金属粒子
接合部20は、樹脂材料21に加えて、図示しない金属粒子を含んでいてもよい。
前述したように、熱伝導部10の面内方向の熱伝導性に主に寄与する部分は、熱伝導部10であるが、金属粒子は、一般に、接合部20を構成する樹脂材料21よりも高い熱伝導性を有しているため、接合部20中に金属粒子が含まれることにより、接合部20についての熱伝導性を向上させることができ、熱伝導体1、放熱部材100全体としての熱伝導性のさらなる向上を図ることができる。
特に、接合部20に含まれる1個又は複数個の金属粒子により、隣り合う熱伝導部10が接続されている場合、該金属粒子が熱伝導部10間を熱的につなぐ「熱パス」となり、熱伝導体1、放熱部材100全体としての熱伝導性をさらに向上させることができる。
さらに、電磁波シールド性を有する金属材料で構成された金属粒子を含むことで、熱伝導体1に電磁波シールド機能も付与することができる。特に、例えば、第5世代移動通信で用いられるような高周波の電磁波に対するシールド機能を好適に付与することができる。
金属粒子としては、Fe、Ag、Pt、Cu、Sn、Al及びNiよりなる群から選択される1種又は2種以上を含むものであることが好ましく、Feを含むものであることがより好ましい。
金属粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状が好ましく、真球状がより好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
より具体的には、金属粒子の形状係数SF−2は、100以上150以下であることが好ましく、100以上125以下であることがより好ましく、100以上120以下であることがさらに好ましい。
形状係数SF−2は、粒子の投影周囲長を2乗した値を当該粒子の投影面積で割った値を4πで除し、さらに100倍して得られる数値であり、粒子の形状が球に近いほど100に近い値になる。
形状係数SF−2は、例えば、以下のような測定により求めることができる。
すなわち、例えば、FE−SEMを用いた観察で、金属粒子100個について、投影面積S[μm]及び投影周囲長L[μm]を求め、下記式より算出される値を形状係数SF−2とする。そして、各金属粒子についての形状係数SF−2の平均値を、金属粒子の形状係数SF−2として採用する。
SF−2=((L/S)/4π)×100
金属粒子の平均粒径は、特に限定されるものではないが、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3.0μm以下であることがより好ましい。
これにより、上述した効果をさらに顕著なものとすることができる。
なお、本明細書において、平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される重量基準の粒度分布において、小径側から累積50%になるときの粒径のことを言う。
金属粒子としては、鉄粒子が好ましい。
鉄粒子としては、例えば、Fe(CO)を熱分解することにより製造される鉄粒子が挙げられる。
このような鉄粒子は、非常に高純度であり、前述したような真球状をなすものであり、平均粒径も微細であることから、上述した効果を特に顕著なものとすることができる。
接合部20中における金属粒子の含有率は、1体積%以上50体積%以下であることが好ましく、10体積%以上30体積%以下であることがより好ましい。
これにより、上述したような樹脂材料21を含むことによる効果と金属粒子を含むことによる効果とをバランスよく発揮することができる。
[1−1−2−3]セラミックス粒子
接合部20は、上記の材料に加えて、図示しないセラミックス粒子を含んでいてもよい。
これにより、接合部20の組織を安定化、均一化させることができ、接合部20中の空隙の割合や大きさも安定化できる。その結果、熱伝導体1の各部位での特性の不本意なばらつきをより効果的に防止することができる。
セラミックス粒子の構成材料としては、各種セラミックスが挙げられるが、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物系セラミックス、炭化ケイ素等の炭化物系セラミックス、アルミナ等の酸化物系セラミックス等のセラミックス材料を用いた場合、熱伝導体1、放熱部材100全体としての熱伝導性のさらなる向上を図ることができる。特に、接合部20に含まれる1個又は複数個のセラミックス粒子により、隣り合う熱伝導部10が接続されている場合、該セラミックス粒子が熱伝導部10間を熱的につなぐ「熱パス」となり、熱伝導体1、放熱部材100全体としての熱伝導性をさらに向上させることができる。
接合部20がセラミックス粒子に加え、前述した金属粒子を含んでいる場合、前記熱パスは、セラミックス粒子及び金属粒子で形成されていてもよい。
なお、セラミックス粒子は、シリカで構成されたものであってもよい。これにより、熱伝導体1の生産コストを抑制しつつ、前述した接合部20の組織の安定化、均一化等の効果が得られる。
セラミックス粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状が好ましく、真球状がより好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
セラミックス粒子の平均粒径は、特に限定されるものではないが、5μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましく、20μm以上70μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した効果をさらに顕著なものとすることができる。
接合部20中におけるセラミックス粒子の含有率は、1体積%以上50体積%以下であることが好ましく、10体積%以上30体積%以下であることがより好ましい。
これにより、上述したような樹脂材料21を含むことによる効果とセラミックス粒子を含むことによる効果とをバランスよく発揮することができる。
[1−1−2−4]その他の成分
接合部20は、上述した成分以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、改質剤、防錆剤、充填剤、フェライト等の電磁波吸収材、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、プライマー、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、老化防止剤、難燃剤、加水分解防止剤、腐食防止剤等が挙げられる。
ただし、接合部20中におけるこれらの成分の含有率は、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。
図1〜図3中、t20で示す熱伝導体1の積層方向についての接合部20の幅(接合部20の厚さ)は、0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、1.0μm以上100μm以下であることがより好ましい。
これにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
熱伝導体1中に占める接合部20の割合は、10体積%以上70体積%以下であることが好ましく、15体積%以上60体積%以下であることがより好ましく、18体積%以上50体積%以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
熱伝導体1中(ただし、空隙部を除く実体部)に占める接合部20の割合は、熱伝導体1の積層方向における断面での面積比で、10%以上70%以下であることが好ましく、15%以上60%以下であることがより好ましく、18%以上50%以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
[1−1−3]凹凸
放熱部材100を構成する三次元形状を有する熱伝導体1の少なくとも表面の一部には、凹凸110が設けられている。
少なくとも表面の一部に凹凸110が設けられていることにより、熱伝導体1の表面積が増大し、例えば、放熱部分として機能する部位(例えば、外気や冷却水等と接触する部位)の面積を増大させることができる。その結果、熱伝導体1、放熱部材100全体としての放熱効率を高めることができる。また、このとき、隣り合う凸部130の間の凹部120が冷却媒体としての流体(例えば、空気等の気体や、水等の液体)の流路となり前記流体の対流が起きることで、熱伝導体1の表面からの放熱をより効率よく行うことができる。
また、例えば、放熱部材100が適用される高温部材が表面に凹凸を有する場合において、放熱部材100の高温部材に接触する部位に凹凸110が設けられていることにより、放熱部材100と高温部材との密着性をより優れたものとすることができ、放熱部材100全体としての放熱効率を高めることができる。
以上のようなことから、軽量であり実質的な放熱性に優れる放熱部材100を提供することが可能になる。
凹凸110は、冷却フィンとして機能するものですることができ、例えば、羽形状を有するものとすることができる。
凹凸110の形成方法は、特に限定されないが、例えば、後に詳述するように、凹凸110を有していない以外は熱伝導体1と同様の構成を有する熱伝導体前駆体1’の表面を含む領域の一部を除去することにより凹部120を形成し、それ以外の部分が凸部130となるようにすることにより、熱伝導体1の表面に好適に凹凸110を形成することができる。
放熱部材100において、熱伝導体1の少なくとも表面の一部に形成される凹凸110の形状や大きさ(深さ)は、特に限定されるものではない。
例えば、熱伝導体1の凹凸110が形成された側の表面を平面視した際の凹部120及び凸部130の形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形等が挙げられる。
また、凹凸110の形成パターンも特に限定されず、規則的なものであってもよいし、不規則なものであってもよい。規則的な凹凸110の形成パターンとしては、直線状のみならず、例えば、同心円状、螺旋状、渦巻き状、波打ち形状等が挙げられる。
また、凹凸110の縦断面視形状、言い換えると、凹部120についての縦断面形状としては、例えば、凹部120の深さ方向に一定の幅を有するものであってもよいし、凹部120の深さ方向で幅が変化する部位を有するものであってもよい。
放熱部材100では、熱伝導体1のうち熱伝導部10及び接合部20が表出している側の面に凹凸110が形成されていることが好ましい。
これにより、熱伝導部10の面内方向への熱伝導性が特に優れたものとなり、熱伝導体1、放熱部材100全体としての熱伝導性、放熱効率をさらに高めることができる。
放熱部材100では、凹凸110は、縦断面視で櫛歯状に形成されていることが好ましい。
これにより、凹凸110の表面積をより効果的に大きくして、熱伝導体1、放熱部材100全体としての放熱効率をより優れたものとすることができる。
図1、図2に示す例では、熱伝導体1を平面視した際には帯状に凹部120と凸部130とが交互に配された場合を示している。
このように、帯状に凹部120と凸部130とが交互に配されていることにより、凹凸110の表面積をさらに効果的に大きくして、熱伝導体1、放熱部材100全体としての放熱効率をさらに優れたものとすることができる。また、凹凸110をより容易に形成することができる。
また、凹部120内において、熱伝導体1を構成する少なくとも一部の熱伝導部10について、その主面が表出していることが好ましい。
これにより、熱伝導体1、放熱部材100全体としての放熱効率をより優れたものとすることができる。
放熱部材100では、熱伝導部10と接合部20との積層方向と、凹凸110の幅方向とが、平行となるように凹凸110が形成されていてもよいが、図示の構成では、熱伝導部10と接合部20との積層方向が、凹凸110の幅方向と非平行になるように(特に、熱伝導部10と接合部20との積層方向が、凹凸110の幅方向と直交するように)凹凸110が形成されている。
これにより、凹部120の内壁面において、熱伝導部10をより確実に表出させることができ、放熱部材100の品質の安定性を高めることができるとともに、熱伝導部10の露出面積の割合を容易かつ確実に高めることができる。より具体的には、例えば、凹部120の形成時に、凹部120の形成に伴って形成される接合部20(または接合部形成用組成物20’)の表面の少なくとも一部を熱伝導部10(または熱伝導部形成用シート10’)が被覆するように引き延ばされて、熱伝導部10が露出している部位の面積率が高くなる。このようなことから、熱伝導体1、放熱部材100全体としての放熱効率をより優れたものとすることができる。
また、熱伝導体1の製造時に、熱伝導体前駆体1’に凹部120を形成する際の加工を好適に行うことができる。
放熱部材100において、熱伝導体1の全体の厚さや凹部120の深さ、凸部130及び凹部120の幅は、特に限定されるものではなく、放熱部材100の用途や、放熱部材100が適用される高温部材の形状や大きさに応じて、適宜選定される。また、熱伝導体1が、複数の凹部120、凸部130を有する場合、各凹部120、各凸部130で、上記のような条件は、異なっていてもよい。
例えば、図1に示すように、凹凸110において凸部130の幅をw[mm]とし、凹部120の幅をw[mm]としたとき、w/wは、0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.7以上1.5以下であることがより好ましい。
これにより、凹凸110の表面積をより効率よく大きくすることができ、例えば、凹凸110からの放熱効率をさらに効果的に高めることができ、全体としての放熱効率を特に優れたものとすることができる。
なお、凸部130の幅がその高さ方向で変化する場合には、wの値としては、その値(当該凸部130の幅)が最大となる高さでの凸部130の幅の値を採用するものとする。また、凹部120の幅がその深さ方向で変化する場合には、wの値としては、その値(当該凹部120の幅)が最大となる深さでの凹部120の幅の値を採用するものとする。
また、例えば、図1に示すように、熱伝導体1の全体の厚さをT[mm]とし、凹部120の深さをT[mm]としたとき、T/Tは、0.2以上0.9以下であることが好ましく、0.3以上0.8以下であることがより好ましい。
これにより、凹凸110の表面積をより効率よく大きくすることができ、例えば、凹凸110からの放熱効率をさらに効果的に高めることができ、全体としての放熱効率を特に優れたものとすることができる。
また、凹部120の深さTは、0.2mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。
これにより、凹凸110の表面積をより効率よく大きくすることができ、例えば、凹凸110からの放熱効率をさらに効果的に高めることができ、全体としての放熱効率を特に優れたものとすることができる。
なお、凹凸110の形成タイミング、言い換えると、凹部120の形成タイミングは、特に限定されない。例えば、凹部120は、熱伝導体1の製造過程において形成されるものであってもよいし、熱伝導体1の製造後において、ユーザー等により形成されるものであってもよい。
放熱部材100では、熱伝導体1の密度が0.7g/cm以上2.5g/cm以下であることが好ましく、0.9g/cm以上2.0g/cm以下であることがより好ましい。
従来の放熱部材、例えば、ヒートシンクに多く用いられているアルミニウムの密度は約2.7g/cmである。
放熱部材100では、熱伝導体1における熱伝導部10及び接合部20を構成する材料として、上述したような材料を用いることにより、全体としての密度を、従来の放熱部材よりも低くすることができる。
これにより、熱伝導体1、ひいては、放熱部材100を特に軽量なものとすることができる。そして、放熱部材100が電子機器等に搭載された場合に、該電子機器等の軽量化を妨げない。すなわち、電子機器等をより軽量なものとすることができる。
[1−2]その他の構成
放熱部材100は、熱伝導体1を有していればよく、熱伝導体1のみで構成されるものであってもよいが、熱伝導体1以外の構成をさらに有していてもよい。
このような構成としては、例えば、電気絶縁性シート、電気絶縁性熱伝導シート、フェイズチェンジマテリアル、両面接着テープ等が挙げられる。
ただし、放熱部材100が有する熱伝導体1以外の構成の厚さは、1mm以下であることが好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。
これにより、前述したような熱伝導体1が有する特長をより効果的に発揮させることができる。
上述したような条件を満足する本発明の放熱部材の一例の写真を図7〜図9に示す。
[2]放熱部材の使用形態
次に、放熱部材の使用形態について説明する。
図10は、図1に示す放熱部材の使用形態の一例を模式的に示す図である。図11は、図2に示す放熱部材の使用形態の一例を模式的に示す図である。図12は、図3に示す放熱部材の使用形態の一例を模式的に示す図である。図13は、図3に示す放熱部材の使用形態の他の一例を模式的に示す図である。
放熱部材100は、例えば、各種の高温部材に接触し、当該高温部材の熱を効率よく放熱させることができる。
以下の説明では、放熱部材が、発熱体である高温部材の表面の少なくとも一部に接触して用いられる場合について、中心的に説明する。
高温部材としては、周囲雰囲気よりも高温になるものであれば、特に限定されるものではないが、高温部材としては、例えば、電子部品が挙げられる。
電子部品としては、例えば、コンピューターの中央演算処理装置、画像処理用演算プロセッサ、FPGA、ASIC、スマートフォンのSoC、組み込み機器のDSPやマイコン、あるいはトランジスタ等の半導体素子、発光ダイオードやエレクトロルミネッセンス、液晶等の発光体、CCD、小型センサーモジュール等が挙げられる。
また、放熱部材100が適用される高温部材としては、上述した電子部品の他、例えば、モーター、リレー、バッテリー、変圧器、電源系ユニット、軸受け、電子銃、真空管、高周波発信器等を挙げることができる。
また、放熱部材100が適用される高温部材としては、内部に高温流体が存在する管体や容器等であってもよい。
高温部材としては、その表面の最高温度が40℃以上250℃以下のものが好ましく、50℃以上200℃以下のものがより好ましく、60℃以上180℃以下のものがさらに好ましい。
放熱部材100がこのような高温部材に適用される場合に、より好適に熱伝導、放熱することができる。
図10は、放熱部材を中央演算処理装置に適用した場合を示す。発熱体である高温部材としての中央演算処理装置200上に、放熱部材100が配され、熱的に結合されている。
前述したように、放熱部材100が備える三次元形状を有する熱伝導体1は、熱伝導性に優れる材料で構成されるとともに、柔軟性にも優れ、高温部材及び放熱部材100の表面への形状適合性に優れている。したがって、高温部材及び放熱部材100の表面に比較的大きな凹凸がある場合等であっても、放熱部材100は、これらの部材と好適に密着することができ、界面熱抵抗を低く抑え、高温部材から放熱部材100への実質的な熱伝導性を優れたものとすることができる。
さらに、本発明の放熱部材100では、熱伝導体1の表面に凹凸110が形成されていることにより、熱伝導体1の表面積が増大するため、高温部材から放熱部材100へ移動した熱は、この凹凸110で放熱される。これにより、高温部材をより効率よく冷却することができる。
特に、本発明の放熱部材100を、高温部材である、上述したような電子部品等に適用することにより、電子部品を効率よく冷却することができ、例えば、電子部品の発熱による装置やシステムの寿命低下、誤作動等の問題を低減することができるため、特に好適である。
放熱部材100は、高温部材に対向する面とは反対の面側に、凹凸110が形成されているものであることが好ましい。
これにより、凹凸110からの放熱効率を効果的に高めることができ、放熱部材100全体としての放熱効率を優れたものとすることができる。
放熱部材100は、例えば、高温部材に対向する面側に、段差加工が施され、段差140が形成されたものであってもよい。
段差加工は、例えば、放熱部材100が適用される高温部材の表面形状に合わせて施されたものとすることができる。
これにより、放熱部材100を、例えば、複雑な表面形状を有している高温部材である部材に対しても、より確実に接触させることができ、このような部材の冷却に適用されるTIM(Thermal Interface Material)として好適に用いることができる。
複雑な表面形状を有している部材としては、例えば、CCD、LED、小型センサーモジュール等が挙げられる。
また、例えば、放熱部材100が、基板上に設置された複数個の高温部材(部材210)を冷却するものである場合(複数個の高温部材(部材210)に跨るようにして配置して利用されるものである場合)において、これらの高温部材に対向する面側に、当該複数個の高温部材の表面を含む面形状に対応する段差加工が施されていることが好ましい。
これにより、これらの複数個の高温部材を同時に好適に冷却することができる。
また、段差加工は、図11に示すように、放熱部材100が複数の部品を有する部材に適用される場合に、一部の部品、例えば、電子部品のような高温部材(部材210)には接触し、他の一部の部品、例えば、基板のような非高温部材には接触しないように、高低差を設けたものであってもよい。
段差加工、すなわち、段差140の形成タイミングは、特に限定されない。例えば、段差140は、熱伝導体1の製造過程において形成されるものであってもよいし、熱伝導体1の製造後において、ユーザー等により形成されるものであってもよい。
また、放熱部材100は、図3に示すように、熱伝導体1に凹部150が形成されたものであってもよく、この場合、例えば、凹部150内に、高温部材を設置して用いることができる。
凹部150の形成タイミングは、特に限定されない。例えば、凹部150は、熱伝導体1の製造過程において形成されるものであってもよいし、熱伝導体1の製造後において、ユーザー等により形成されるものであってもよい。
図3に示す構成では、高温部材が設置される凹部150は、その深さ方向が、熱伝導体1の積層方向と一致しているが、凹部150の方向は、これに限定されない。
図3に示す構成で、適用される高温部材としては、例えば、マイクロモーターや高輝度LEDユニット、センサー発熱部、CCDカメラユニット、バッテリー等が挙げられる。
熱伝導体1は、柔軟性に優れているため、凹部150の内面が変形して、凹部150内に設置された高温部材の表面形状により好適に追従し、密着性を十分に担保することができる。
凹部150の大きさは、特に限定されないが、凹部150に部材が設置されておらず、外力が付与されていない自然状態での凹部150の幅(凹部150が円形の場合にはその直径)は、凹部150に設置される部材の幅よりも小さいものとすることが好ましい。
これにより、放熱部材100と凹部150に設置される部材との密着性をより優れたものとすることができ、前述した効果がより顕著に発揮される。
なお、凹部150は、スリットであってもよく、特に、凹部150に部材が設置されておらず、外力が付与されていない自然状態においては、実質的に閉塞したものであってもよい。
また、例えば、図3に示す構成では、凹部150は、図中左側の面や下側の面に貫通する孔部であってもよく、このような場合、放熱部材100は、凹部150に高温部材を貫通するように挿入して用いられるものであってもよい。図12では、孔部である凹部150に、高温部材としての管体170を挿入して用いる構成を示している。
孔部である凹部150に、高温部材としての管体170を挿入して用いることにより、例えば、管体170の内部に、高温流体HFが存在する場合、管体170を冷却するだけでなく、管体170及び熱伝導体1を介して、高温流体HFも効率よく冷却することができる。すなわち、図12に示す構成では、冷却される高温部材は、管体170及び高温流体HFであると言うことができ、さらに言い換えると、放熱部材100と直接接触しない高温流体HFも、放熱部材100により効率よく冷却することができる。このような形態で放熱部材100を用いる場合、熱伝導体1の外表面に凹凸110が設けられていることが好ましい。
また、図13に示すように、凹部150を有する放熱部材100において、凹部150に高温部材を挿入するのではなく、高温部材(図13に示す例では、発熱体である中央演算処理装置200)上に放熱部材100を配して用いることもできる。
このような場合、放熱部材100の凹部150に管体170を挿入し、管体170の内部に、冷却水等の冷却用媒体CFを流すことにより、放熱部材100によって放熱されるとともに、管体170及び放熱部材100を介して冷却用媒体CFによって、高温部材をより効率よく冷却することができる。このような形態は、例えば、CPUの冷却システム等に好適に適用することができる。このような形態で放熱部材100を用いる場合、凹部150の内壁面に凹凸110が設けられていることが好ましい。
[3]放熱部材の製造方法
次に、本発明の放熱部材の製造方法について説明する。
本発明の放熱部材の製造方法は、複数の熱伝導層と、各熱伝導層を接合する接合層とを有する積層体を製造する積層体製造工程と、積層体を所定の形状に加工する成形工程とを有し、熱伝導層により形成された複数の熱伝導部と、接合層により形成され、柔軟性を有する材料で構成された接合部とを備え、少なくとも表面の一部に凹凸が形成された三次元形状を有する熱伝導体を有する放熱部材を得ることを特徴とする。
これにより、本発明によれば、軽量であり実質的な放熱性に優れる放熱部材を好適に製造することができる放熱部材の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の放熱部材の製造方法の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図14は、鱗片状黒鉛で構成された熱伝導部形成用シートの一例を模式的に示す断面図である。図15は、凹部が設けられた熱伝導部形成用シートに、接合部形成用組成物を付与した状態の一例を模式的に示す断面図である。図16は、接合部形成用組成物付与工程、巻回工程に用いる装置の一例を模式的に示す図である。図17は、切開工程で得られた切開体の一例を模式的に示す図である。図18は、切開体を押圧して、切開体の平坦性をより高くした状態の一例を模式的に示す図である。図19は、カット工程の様子の一例を模式的に示す図である。図20は、凹部形成工程の様子の一例を模式的に示す図である。
なお、本実施形態では、積層体製造工程として、接合部形成用組成物20’が付与された熱伝導部形成用シート10’を、ロール(巻取ロールR2)の周面に巻回することで、複数の熱伝導層と、各熱伝導層を接合する接合層とを有する積層体、言い換えると、巻回体30を製造する場合を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、枚葉の熱伝導部形成用シート10’をシート状原料として用い、熱伝導部形成用シート10’と接合部形成用組成物20’とを交互に積層していくことにより、積層体を製造するものであってもよい。
また、本実施形態では、積層体における熱伝導層は、熱伝導部形成用シート10’に対応する部位であり、接合層は、接合部形成用組成物20’に対応する部位である。
前述したように、本実施形態の放熱部材100の製造方法では、少なくとも一方の面に硬化性樹脂材料21’を含む組成物である接合部形成用組成物20’が付与された、熱伝導部10の形成に用いる熱伝導部形成用シート10’を、巻取ロールR2の周面に巻回し、筒状の巻回体30を得る巻回工程を有する方法を用いて、積層体を製造する。
さらに、本実施形態の放熱部材100の製造方法では、巻回工程の後に、巻回体30を、ロールの軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体40を得る切開工程と、切開体40中に含まれる硬化性樹脂材料21’を硬化させる硬化工程とを有する。
接合部形成用組成物20’が付与された熱伝導部形成用シート10’を、ロールの周面に巻回することで、例えば、枚葉のシート状原料を用いる場合等に比べて、熱伝導体1(放熱部材100)を効率よく製造することができる。また、巻回体30を切開した後で硬化性樹脂材料21’を硬化させることにより、硬化性樹脂材料21’の硬化物である樹脂材料21を含む接合部20に比べて、より柔らかい状態で切開することができる。このため、巻回により発生するひずみを好適に矯正することができ、巻回体30よりも平坦性の高い切開体40とするのに際し、熱伝導部10に対応する部位である熱伝導部形成用シート10’と、接合部20に対応する部位である接合部形成用組成物20’との間での剥離や密着性の低下等が生じることを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる熱伝導体1(放熱部材100)を、ひずみが好適に除去されるとともに、熱伝導部10と接合部20との間での剥離や密着性の低下、接合部20の破壊、熱伝導部10同士の接合の破壊等が効果的に防止され、熱伝導部10と接合部20とが強固に密着したものとすることができる。
これにより、実質的な熱伝導性に優れる熱伝導体1を有する放熱部材100を好適に製造することができる。
また、本実施形態の放熱部材100の製造方法は、巻回工程に先立って、熱伝導部形成用シート10’に接合部形成用組成物20’を付与する接合部形成用組成物付与工程を有している。
[3−1]熱伝導部形成用シート
接合部形成用組成物付与工程で用いる熱伝導部形成用シート10’は、熱伝導体1(放熱部材100)において、熱伝導部10となるべきものである。
熱伝導部形成用シート10’としては、通常、形成すべき熱伝導部10に対応する材料で構成されたシート材を用いる。
熱伝導部形成用シート10’は、実質的に単一成分から構成されることが好ましい。
これにより、形成される熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。また、一般に、熱伝導体1の製造コストを抑制する上でも有利である。
熱伝導部形成用シート10’として黒鉛を含むシート材を用いることにより、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の製造コストを抑制することができる。また、熱伝導体1のしなやかさ、柔軟性をより優れたものとすることができ、例えば、熱伝導体1が折れ曲がった時の復元力、さらには内部の空隙によるクッション性、過熱部と接触したときの適度な変形による接触性の向上等をより優れたものとすることができる。以下、黒鉛を含むシート材を「黒鉛シート材」とも言う。
また、熱伝導部形成用シート10’として金属材料で構成されたシート材を用いることにより、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の製造コストを抑制することができる。また、金属材料内部の結合力の強さから熱伝導体1の発塵性をより低くすることができる。また、熱伝導体1に、比較的大きな荷重を加えた場合であっても、座屈等による熱伝導体1の崩壊等、熱伝導体1の不可逆的な変形がより効果的に防止される。以下、金属材料で構成されたシート材を「金属シート材」とも言う。
[3−1−1]黒鉛シート材
黒鉛シート材としては、黒鉛に加えて、黒鉛以外の成分、例えば、バインダーや樹脂繊維を含むものを用いることもできるが、実質的に黒鉛のみで構成されるもの、すなわち、実質的に単一成分から構成されるものであることが好ましい。
黒鉛シート材は、例えば、粉末状の黒鉛を含む組成物をシート状に押し固めることにより製造することができる。
黒鉛シート材は、乾式法で製造されたものであってもよいし、湿式法で製造されたものであってもよい。
黒鉛は、鱗片状黒鉛であることが好ましい。
これにより、鱗片状黒鉛を熱伝導部10の面内方向に好適に配向させることができ、熱伝導部10の面内方向への熱伝導性を特に優れたものとすることができる。
より具体的には、鱗片状黒鉛をシート状に押し固めた場合、図14に示すように、鱗片状黒鉛FGはシートの面内方向に配向される。すなわち、鱗片状黒鉛FGの厚さ方向がシートの厚さ方向に沿って、好適に配向する。そして、熱伝導体1とされた場合には熱伝導部10の面内方向への熱伝導性を特に優れたものとすることができる。
なお、図14に示すように、鱗片状黒鉛FGを押し固めてシート状とした場合、黒鉛シート材の表面付近では、鱗片状黒鉛FGが緻密に押し固められて固くなっている一方で、黒鉛シート材の厚さ方向の中心部付近では鱗片状黒鉛FGは粗く固められ比較的柔らかく、空隙部を有するものとなっている。言い換えると、熱伝導部形成用シート10’としての黒鉛シート材及び当該熱伝導部形成用シート10’により形成される熱伝導部10は、凹部11としての孔部が設けられていない場合には、黒鉛シート材、熱伝導部10の一方の面から他方の面に貫通する空隙部を有していない。また、熱伝導部形成用シート10’としての黒鉛シート材及び当該熱伝導部形成用シート10’により形成される熱伝導部10は、凹部11としての孔部が設けられている場合には、当該孔部のみが一方の面から他方の面に貫通しており、それ以外の部位においては、黒鉛シート材、熱伝導部10の一方の面から他方の面に貫通する空隙部を有していない。
このように、熱伝導部形成用シート10’が内部、特に、厚さ方向の中心部付近に空隙部を有していると、凹部11内だけでなく、熱伝導部形成用シート10’内部の前記空隙部にも硬化性樹脂材料21’を侵入させることができ、製造される熱伝導体1における熱伝導部10と接合部20との密着性、熱伝導体1の耐久性等をさらに優れたものとすることができる。
また、密度についても、黒鉛シート材の表面付近では密度が比較的高く、黒鉛シート材の内部では密度が比較的低いものとなっている。なお、上記のような黒鉛シート材の厚さ方向における粗密は、鱗片状黒鉛以外の黒鉛を用いた場合にも、生じさせることができる。
黒鉛シート材全体としての密度は、0.3g/cm以上2.25g/cm以下であることが好ましく、0.4g/cm以上2.2g/cm以下であることがより好ましく、0.5g/cm以上2.15g/cm以下であることがさらに好ましい。
これにより、黒鉛シート材単独での面方向での熱伝導性や強度を特に優れたものとしつつ、黒鉛シート材の厚さ方向の中心部付近により好適な空隙部を有するものとすることができ、前述したような効果がより顕著に発揮される。
このような条件を満足する黒鉛シート材としては、例えば、グラフォイル(NeoGraf社製)、PERMA FOIL(東洋炭素社製)、カーボンシート(東京窯業社製)、PGSグラファイトシート(パナソニック社製)、グラフィニティ(カネカ社製)等が挙げられる。
[3−1−2]金属シート材
金属シート材としては、金属材料に加えて、金属材料以外の成分、例えば、バインダーや樹脂繊維を含むものを用いることもできるが、実質的に金属材料のみで構成されるもの、すなわち、実質的に単一成分から構成されるものであることが好ましい。
金属シート材としては、例えば、金属材料をシート状に圧延した金属箔を好ましく用いることができる。
金属シート材を構成する金属材料としては、各種の単体金属や合金等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、Al、Cu、Ag、Au、Mg及びZnよりなる群から選択される1種又は2種以上を含むものであることが好ましい。
これにより、形成される熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。
熱伝導部形成用シート10’の厚さは、5μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上200μm以下であることがより好ましい。
これにより、熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合を十分に高いものとしつつ、熱伝導体1全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、より確実に、上述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。
熱伝導部形成用シート10’は、その厚さ方向に凹部11が設けられたものであることが好ましい。
これにより、熱伝導体1において熱伝導部10と接合部20との接合をより強固にすることができ、熱伝導体1が適用される部材、例えば、冷却すべき部材等の表面形状への形状適合性や熱伝導体1の耐久性をより良好なものとすることができる。例えば、積層方向に折り曲げられても、熱伝導部10と接合部20とがより強固に接合されているため、熱伝導部10同士が剥がれてしまうことが好適に防止され、積層方向に高い柔軟性を有し、熱伝導体1が適用される部材、例えば、冷却すべき部材等の表面形状への形状適合性が優れたものとなる。
熱伝導部形成用シート10’が凹部11を有するものである場合、当該凹部11は、前述した熱伝導部10が有する凹部11の説明で記載したのと同様の条件を満足するものとすることができる。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
特に、熱伝導部形成用シート10’が有する凹部11が、熱伝導部形成用シート10’の厚さ方向に貫通する孔部であると、前述したのと同様の効果が得られるとともに、以下のような効果も得られる。すなわち、後述する接合部形成用組成物付与工程において、熱伝導部形成用シート10’に接合部形成用組成物20’を付与する際に、熱伝導部形成用シート10’と接合部形成用組成物20’との間に、空気等のガスが巻き込まれ、最終的に得られる熱伝導体1において、熱伝導部10と接合部20との密着性が低下すること等をより確実に防止することができる。このような効果が得られるのは、接合部形成用組成物付与工程において、熱伝導部形成用シート10’に接合部形成用組成物20’を付与する際に、凹部11内への接合部形成用組成物20’の侵入とともに、熱伝導部形成用シート10’の凹部11内にもともと存在していたガスを、凹部11の外部へと効率よく排出することができるためであると考えられる。
熱伝導部形成用シート10’に凹部11を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、周面に凹部11に相当する突起が複数形成されたロール体を、熱伝導部形成用シート10’の表面に所定の力で押し当てつつ回転させることにより、凹部11を効率よく形成することができる。
[3−2]接合部形成用組成物
接合部形成用組成物付与工程で用いる接合部形成用組成物20’は、熱伝導体1において、接合部20となるべきものであり、硬化性樹脂材料21’を含む組成物である。
硬化性樹脂材料21’としては、当該硬化性樹脂材料21’を硬化させて得られる樹脂材料21が柔軟性を有するものであれば特に限定されず、前述した樹脂材料21の前駆体、例えば、未硬化物、半硬化物を用いることができる。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
接合部形成用組成物20’は、硬化性樹脂材料21’に加えて、金属粒子を含むことが好ましい。
これにより、金属粒子を含む接合部20を形成することができ、前述したような接合部20が金属粒子を含むことによる効果が効果的に発揮される。
接合部形成用組成物20’中に含まれる金属粒子は、前述した接合部20を構成する金属材料の説明で記載したのと同様の条件を満足するものとすることができる。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
接合部形成用組成物20’は、上述した成分以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、改質剤、防錆剤、充填剤、フェライト等の電磁波吸収材、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、プライマー、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、老化防止剤、難燃剤、加水分解防止剤、腐食防止剤等が挙げられる。
ただし、接合部形成用組成物20’中におけるこれらの成分の含有率は、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。
また、接合部形成用組成物20’は、溶媒成分を含んでいないことが好ましい。これにより、最終的に得られる熱伝導体1中に、溶媒成分が不本意に残存することを防止することができ、熱伝導体1の信頼性をより優れたものとすることができる。
[3−3]接合部形成用組成物付与工程
接合部形成用組成物付与工程では、熱伝導部形成用シート10’の少なくとも一方の面に、硬化性樹脂材料21’を含む接合部形成用組成物20’を付与する。
接合部形成用組成物20’を熱伝導部形成用シート10’の表面に付与する方法としては、例えば、バーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、キスコーター、ロッドコーター、ディップコーター、スプレーコーターのいずれかを用いて塗布する方法等が挙げられる。
これにより、熱伝導部形成用シート10’の表面に、接合部形成用組成物20’を連続的に適切に付与することができ、製造される熱伝導体1の信頼性、熱伝導体1の生産性を向上させるうえで有利である。
接合部形成用組成物20’は、熱伝導部形成用シート10’の一方の面側のみに付与してもよいし、両面に付与してもよいが、熱伝導部形成用シート10’に凹部11としての孔部が設けられている場合には、図15に示すように、接合部形成用組成物20’は、熱伝導部形成用シート10’の一方の面側から付与することが好ましい。
これにより、孔部の内部に、硬化性樹脂材料21’を好適に侵入させることができる。より具体的には、熱伝導部形成用シート10’の一方の面側から接合部形成用組成物20’を付与することで、孔部に存在する空気を熱伝導部形成用シート10’の他方の面側に押し出すことができ、孔部に、硬化性樹脂材料21’をより好適に侵入させることができる。また、熱伝導部形成用シート10’が孔部に加えて、前述した空隙部を有するものであると、孔部を介して熱伝導部形成用シート10’の内部にも、硬化性樹脂材料21’を好適に侵入させることができる。
このとき、接合部形成用組成物20’は、キスコーターを用いて付与することが好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
なお、図15では、熱伝導部形成用シート10’として、鱗片状黒鉛FGで構成された黒鉛シート材を示しているが、これ以外の熱伝導部形成用シート10’であっても、上記のような効果が得られる。
ただし、熱伝導部形成用シート10’として上記のような黒鉛シート材を用いることにより、さらに、以下のような効果も得られる。すなわち、熱伝導部形成用シート10’が上記のような黒鉛シート材である場合、黒鉛シート材の表面付近では、鱗片状黒鉛FGが緻密に押し固められて固くなっている一方で、黒鉛シート材の厚さ方向の中心部付近では鱗片状黒鉛FGは粗く固められ比較的柔らかく、空隙部を有するものとなっている。このため、硬化性樹脂材料21’は、凹部11を介して、熱伝導部形成用シート10’の内部の前記空隙部にも好適に侵入することができる。これにより、製造される熱伝導体1における熱伝導部10と接合部20との密着性、熱伝導体1の耐久性等をさらに優れたものとすることができる。
本工程は、例えば、図16に示す装置を用いて行うことができる。より具体的には、予め作製された熱伝導部形成用シート10’をロール状に巻き取った原反ロールR1を準備しておく。そして熱伝導部形成用シート10’の一端を原反ロールR1から引き出して、キスコーターM10を用いて、熱伝導部形成用シート10’の一方の面側から、接合部形成用組成物20’を付与する。
キスコーターM10とは、1本又は数本のロールを用いてシートに塗工を行う装置であり、塗工ロールM11とシートが接触している部分においてのみ塗工を行うことが可能である。
キスコーターM10は、図示しないモーターにより矢印方向に回転駆動する塗工ロールM11と、接合部形成用組成物20’を溜めた液受けパンM12と、塗工ロールM11の表面に、先端を接触させることで、ロール表面の接合部形成用組成物20’の膜厚を一定に保つスキージーM13とを含んで構成され、塗工ロールM11の略下半分が液受けパンM12の接合部形成用組成物20’中に浸漬される。また、熱伝導部形成用シート10’は、ガイドロールM14,M14によりガイドされて搬送されることにより、接合部形成用組成物20’の塗布時には塗工ロールM11の上面に接触して搬送される。これにより、塗工ロールM11が回転すると、その回転により液受けパンM12内の接合部形成用組成物20’が塗工ロールM11に同伴して汲み上げられ、スキージーM13により所定の塗布量に調整された後、熱伝導部形成用シート10’の表面に塗布される。液受けパンM12には、図示しない供給タンクからポンプによって接合部形成用組成物20’が供給され、液受けパンM12内の接合部形成用組成物20’の高さが一定に保持されるように制御される。
キスコーターM10を用いることによって、熱伝導部形成用シート10’を、接合部形成用組成物20’に浸漬させることなく、接合部形成用組成物20’を付与することができるため、付与する工程において、連続して一定量の接合部形成用組成物20’を効率よく付与することが可能となる。
本工程は、接合部形成用組成物20’の粘度が、室温(20℃)での粘度より低くなるように、加熱された接合部形成用組成物20’を用いて行うことが好ましい。
これにより、本工程終了後、例えば、巻回工程において、熱伝導部形成用シート10’に付与された接合部形成用組成物20’が冷却され、接合部形成用組成物20’の粘度を、本工程での粘度よりも低いものとすることができる。その結果、接合部形成用組成物付与工程よりも後の工程で、熱伝導部形成用シート10’に付与された接合部形成用組成物20’が不本意に流失することをより効果的に防止することができる。
本工程での接合部形成用組成物20’の加熱温度は、特に限定されないが、接合部形成用組成物20’の粘度が以下の条件を満足するように設定することが好ましい。
熱伝導部形成用シート10’に接合部形成用組成物20’を付与する際の接合部形成用組成物20’の粘度は、500mPa・s以上50000mPa・s以下であることが好ましく、1500mPa・s以上45000mPa・s以下であることがより好ましく、2000mPa・s以上40000mPa・s以下であることがさらに好ましい。
これにより、接合部形成用組成物20’を、熱伝導部形成用シート10’に所定の厚さでより好適に付与することができる。特に、熱伝導部形成用シート10’に凹部11が設けられている場合に、当該凹部11に接合部形成用組成物20’をより好適に侵入させることができる。
なお、接合部形成用組成物20’の粘度は、JIS Z8803:2011に準じた測定により求めることができる。
[3−4]巻回工程
巻回工程では、接合部形成用組成物20’が付与された熱伝導部形成用シート10’を、巻取ロールR2の周面に巻回し、筒状の巻回体30を得る。
このようにして得られる巻回体30は、その中心から外周方向に向かって、熱伝導部形成用シート10’で構成された部分と、接合部形成用組成物20’で構成された部分とが、交互に配置された構造を有する。
なお、図16では、熱伝導部形成用シート10’を、ガイドロールM14,M14によりガイドして搬送する場合を示しているが、熱伝導部形成用シート10’は、ガイドロールM14,M14以外の、図示しないガイドロールによって搬送されてもよいし、また、必要に応じて、ガイドロールによって搬送方向を変えてもよい。
接合部形成用組成物20’が付与された熱伝導部形成用シート10’が巻回される巻取ロールR2の直径は、特に限定されないが、10cm以上100cm以下であることが好ましく、20cm以上60cm以下であることがより好ましい。
これにより、後工程の切開工程で巻回体30を切り開いて切開体40としたときに、巻回体30の内周と外周とでの曲率の差に起因するひずみを抑制しつつ、効率よく巻回体30を得ることができる。
なお、図示の構成では、接合部形成用組成物20’が付与された熱伝導部形成用シート10’を、断面が真円状の巻取ロールR2の周面に巻回しているが、これに限定されず、断面が楕円状や多角形状、トラック形状等のロールの周面に巻回してもよい。
[3−5]切開工程
切開工程では、巻回体30を、巻取ロールR2の軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体40を得る。
硬化性樹脂材料21’を硬化させる硬化工程より前に、巻回体30を切開することにより、硬化性樹脂材料21’の硬化物である樹脂材料21を含む接合部20に比べて、より柔らかい状態で切開することができる。
本工程では、円柱状の巻取ロールR2の軸方向に対して非垂直な方向であって、巻取ロールR2の軸方向の一方の端部から他方の端部にわたって、巻回体30の積層方向に切り込みを入れ、切り込み部分で巻回体30を開きつつ巻取ロールR2から取り外し、切開体40とする。
巻回体30を切り開く方向としては、巻取ロールR2の軸方向に対して非垂直な方向であれば、特に限定されず、例えば、巻取ロールR2の軸方向に対して略平行な方向であってもよいし、ロールの軸方向に対して斜め方向であってもよい。また、巻回体30を切り開く方向が異なる部位を有していてもよい。例えば、巻取ロールR2の軸方向に対して略平行な方向で切り開く部位と、ロールの軸方向に対して斜め方向に切り開く部位とを有していてもよい。
巻回体30の切開方法としては特に限定されるものではないが、例えば、バンドソー、のこぎり、カッター、トリミングカッター、レーザー、超音波カッター、ウォーターカッター等を用いる方法が挙げられる。
[3−6]硬化工程
硬化工程では、切開体40において、接合部形成用組成物20’に含まれる硬化性樹脂材料21’を硬化させる。
図17に示すように、巻回体30を切り開いて切開体40とした時点では、通常、切開体40は湾曲した状態である。巻回体30を切開する前に硬化性樹脂材料21’を硬化させた場合、湾曲した切開体40の平坦性を高めようとすると、切開体40の内周と外周とでの曲率の差に起因するひずみが生じてしまい、熱伝導部10と接合部20との間での剥離や密着性の低下、接合部20の破壊、熱伝導部10同士の接合の破壊等が生じやすい。これに対し、巻回体30を切開して平坦性を高めた切開体40に対して硬化性樹脂材料21’を硬化させる処理を施すことにより、上記のような問題の発生を効果的に防止することができる。
本工程は、例えば、切開体40の内周側及び外周側を、それぞれ、平面に接触させた状態で、硬化性樹脂材料21’を硬化させることにより行うことができる。
より具体的には、例えば、図18に示すように、切開体40を2枚の平板90の間に挟み込み、圧力をかけることで、熱伝導部10及び接合部20の平坦性を高めた状態で、硬化性樹脂材料21’を硬化させて樹脂材料21とすることができる。
このときの圧力としては、特に限定されるものではないが、0MPa超100MPa以下とすることが好ましく、1MPa以上80MPa以下とすることがより好ましく、10MPa以上50MPa以下とすることがさらに好ましい。
圧力が前記下限値未満であると、熱伝導部10及び接合部20の平坦性を十分に高めることが困難になる可能性がある。一方、圧力が前記上限値を超えると、隣り合う熱伝導部形成用シート10’間から、硬化性樹脂材料21’の流失が顕著となり、所望の厚さの接合部20を形成することが困難になる可能性がある。
また、切開体40を押圧しつつ硬化工程を行うことで、熱伝導部10と接合部20との間での剥離や密着性の低下、接合部20の破壊、熱伝導部10同士の接合の破壊等をより効果的に防止することができ、熱伝導体1の耐久性をより優れたものとすることができる。
硬化性樹脂材料21’が熱硬化性樹脂である場合、加熱温度は、硬化性樹脂材料21’の条件等により異なるが、90℃以上220℃以下であることが好ましく、110℃以上190℃以下であることがより好ましい。
これにより、硬化性樹脂材料21’を好適に硬化させることができる。
[3−7]カット工程
前述した硬化工程の後に、硬化性樹脂材料21’が硬化して樹脂材料21となった切開体40(積層体)の両面において、熱伝導部10及び接合部20が表出するように、所定の大きさ、形状となるように、当該切開体40(積層体)を切断(カット)するカット工程を行う。
これにより、熱伝導体前駆体1’が得られる。
硬化工程の後に、例えば、図19中の切断線A−A’及び切断線B−B’に沿ってカットすることで、厚さTの熱伝導体前駆体1’を得ることができる。
ここで、製造すべき熱伝導体前駆体1’(熱伝導体1)の厚さTが比較的小さいものであっても、硬化工程を経て、硬化性樹脂材料21’が、形状の安定性がより高い樹脂材料21となっているため、容易に、切開体40(積層体)をカットすることができる。
カット方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、カッター、トリミングカッター、レーザー、超音波カッター、ウォーターカッター等を用いる方法が挙げられる。
カット方向としては、積層方向に略平行でもよいし、積層方向に対して斜め方向であってもよい。図19では、切開体40を積層方向に略平行にカットする様子を示している。
[3−8]凹部形成工程
硬化工程の後に、積層体である熱伝導体前駆体1’の少なくとも表面の一部に凹部120を形成する凹部形成工程を行う。
硬化工程の後に、例えば、図20中の切断線C−C’に沿って、積層体である熱伝導体前駆体1’の表面の一部を切り取ることで、凹部120が形成される。
これにより、少なくとも表面の一部に凹凸110が形成された三次元形状を有する熱伝導体1を有する放熱部材100を好適に製造することができる。特に、硬化工程の後に凹部形成工程を行うことにより、凹凸110の形状をより容易に、かつ、より確実に制御することができる。
凹部120の形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、カッター、トリミングカッター、レーザー、超音波カッター、ウォーターカッター等を用いる方法が挙げられる。
凹部120の形成方向は、熱伝導部10と接合部20との積層方向に略平行でもよいし、積層方向に対して斜め方向でもよい。図20では、積層方向が凹部120の幅方向になるように凹部120を形成する様子を示している。
以上のような各工程を経て、必要に応じて、所定の形状に加工することにより、放熱部材100が得られる。
放熱部材100の表面、特に、熱伝導部10及び接合部20が表出している面に対して、研磨処理を施してもよい。これにより、熱伝導体1の表面粗さを好適に調整することができる。
自然状態、すなわち、外力を加えていない状態での、放熱部材100の表面粗さRaは、0.1μm以上80μm以下であることが好ましく、0.1μm以上30μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
なお、放熱部材100の表面粗さRaは、例えば、JIS B 0601−2013に準拠した方法により測定することができる。
これにより、放熱部材100が適用される部材の表面形状により好適に追従することができ、前記部材と放熱部材100との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとすることができる。
[4]電子機器
次に、本発明の電子機器について説明する。
本発明の電子機器は、電子部品と、前述した本発明の放熱部材とを有することを特徴とする。
本発明の電子機器は、前述したような軽量であり実質的な放熱性に優れた本発明の放熱部材を備えているので、発熱部材である電子部品からの熱をより効率よく放熱することができ、装置やシステムの寿命低下、誤作動等のリスクをより効果的に低減することができる。また、電子機器の小型化、軽量化にも寄与する。
以下の説明では、電子機器の一例ドローンを挙げ、また、本発明の放熱部材が適用される高温部材である電子部品がトランジスタである場合について代表的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、本明細書において、ドローンとは、遠隔操作又は自動操縦により無人で飛行する小型の航空機のことをいい、飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船等を含む概念であり、その質量は特に限定されない。
回転翼航空機は、回転翼によって必要な揚力及び推力の全部又は一部を得て飛行する航空機であり、例えば、ヘリコプター、オートジャイロ等が挙げられる。
ドローンの操縦者は、プロポーショナル式送信機を用いて、無線通信により、ドローンの遠隔操作を行う。
以下の説明では、ドローンとして、ヘリコプターの一種であり、4つの姿勢制御用ローターを備えたマルチコプター、いわゆる、クアドコプターを例に挙げて説明する。
図21は、本発明の電子機器の一例としてのドローンを模式的に示す斜視図である。図22は、図21に示すドローンが有する制御部の一例を模式的に示す平面図である。図23は、図21に示すドローンが有する制御部の一例を模式的に示す一部破断断面図である。図24は、図21に示すドローンが有す制御部の他の一例を模式的に示す一部破断断面図である。なお、図22では、スピードコントローラーの上面を示している。
ドローン300は、ドローン本体310に組み込まれた受信機によって、操縦者の指示を受信すると、ドローン本体310に組み込まれた制御部350の制御により、指示に従った飛行を行う。
ドローン本体310は、図21に示すように、フレーム320から放射状に延びる4本のリンクアーム330と一体化されたフレーム320を有している。各リンクアーム330は、その遠位端部に、プロペラ341を駆動して回転させるモーターを含む推進ユニット340を備える。
ドローン本体310に組み込まれた制御部350は、機体の飛行の制御や、送信機や他の端末との情報の送受信等の機能を有するフライトコントローラー(FC)351と、フライトコントローラー351からの信号を増幅して、モーターを回転させる出力に高める機能を有するスピードコントローラー(ESC)352とを備えている。
フライトコントローラー351は、プログラマブルプロセッサ、例えば、中央演算処理装置等を有することができ、各種センサー等から得た情報をもとに演算処理を行い、モーターの回転速度を変化させることによる機体の飛行の制御や、送信機や他の端末との情報の送受信等を行う。
フライトコントローラー351に搭載されるセンサーとしては、例えば、ジャイロセンサー、加速度センサー、気圧センサー、磁気コンパス、超音波センサー、ビジョンセンサー(例えば、カメラ)、GPS受信機等が挙げられる。
図示の構成では、フライトコントローラー351は、基板3511と、基板3511上に実装されたジャイロセンサー3512とを有している。
スピードコントローラー352では、基板3521であるMOSFETトランジスタアレイ基板上に、トランジスタ3522、コンデンサ3523等の電子部品、電極部3524等が実装されている。電極部3524には、リンクアーム330先端部の推進ユニット340のモーターに伝達するためのケーブル342が接続される。
スピードコントローラー352の上方には、所定の高さのスペーサー355を介してフライトコントローラー351が配されている。
そして、本実施形態のドローン300では、スピードコントローラー352に実装された電子部品のうち、特に発熱量の大きいトランジスタ3522上に、本発明の放熱部材100が配されている。
これにより、高温部材であるトランジスタ3522からの熱を効果的に放熱することができ、熱によるトランジスタ3522の故障やシステムの誤作動といった不具合の発生を抑制することができ、ドローン300の製品寿命をより長いものとすることができる。
なお、図22、図23、図24に示す例では、スピードコントローラー352の平面視での形状は、略矩形状である。スピードコントローラー352の平面視での大きさは、特に限定されないが、一辺の長さを、例えば、20mm以上100mm以下とすることができる。
そして、放熱部材100において全体の厚さTは、例えば、1mm以上5mm以下とすることができ、凹部120の深さT2は、例えば、0.5mm以上3mm以下とすることができる。また、凹凸110において凸部130の幅wは、例えば、0.5mm以上3mm以下とすることができ、凹部120の幅wは、例えば、0.5mm以上3mm以下とすることができる。
フライトコントローラー351とスピードコントローラー352とはスペーサー355を貫通するボルト358によって固定されている。図に示す例では、スペーサー355及びボルト358は、スピードコントローラー352の4隅にそれぞれ配されている。
そして、トランジスタ3522、放熱部材100、後述する電気絶縁性シート360及び断熱部材361等を含めて、フライトコントローラー351とスピードコントローラー352との間隔は、例えば、1.5mm以上10mm以下とすることができる。
フライトコントローラー351とスピードコントローラー352との間の高さを調整するために、追加のスペーサー355’を配してもよい。
ドローン本体310において、フレーム320及び制御部350が外部に対して完全に閉じた構造ではないため、飛行によって空気が制御部350内部に流れこむことにより、空気の対流がより効果的に発生し、放熱効率をさらに良好なものとすることができる。
また、本発明の放熱部材100は、アルミニウム製のヒートシンクのような従来の放熱部材よりも軽量であるため、ドローン300の重量を大幅に増大させることはなく、好適な飛行をより確実に確保することができる。
図23、図24に示すように、放熱部材100は、高温部材であるトランジスタ3522に対向する面とは反対の面側に、凹凸110が形成されていることが好ましい。
トランジスタ3522に対向する側の面が平らであることにより、トランジスタ3522との接触面積を広くして、より多くの熱を伝熱させ、反対の面側に形成された表面積の大きな凹凸110から放熱することにより、より効率よく放熱することができる。
図示の構成では、放熱部材100のトランジスタ3522(高温部材)に対向する面側に、電気絶縁性シート360が配されている。言い換えると、高温部材であるトランジスタ3522と、放熱部材100との間に挟まれるように、電気絶縁性シート360が配されている。
これにより、放熱部材100に起因する、電子回路の電気的なショート等の問題の発生をより確実に防止することができる。
特に、スピードコントローラー352において剥き出しになっている電極部3524を被覆するように電気絶縁性シート360が配されることにより、電子回路の電気的なショートをさらに効果的に防止することができる。電気絶縁性シート360としては、電気絶縁性熱伝導シートを用いてもよい。
電気絶縁性シート360は、放熱部材100とトランジスタ3522との間に配され、例えば、両面テープ等の固定手段により固定されていてもよい。
電気絶縁性シート360は、熱伝導性に優れたものであることが好ましい。これにより、高温部材と放熱部材100との間での熱伝導を阻害せず、放熱部材100による放熱機能を十分に発揮することができる。
なお、電気絶縁性シート360は、放熱部材100の一部であってもよいし、放熱部材100とは別体をなすものであってもよい。
このような電気絶縁性シート360は、電気絶縁性を有するシート材であればよく、その構成材料は、特に限定されないが、ゴム、プラスチック、窒化物セラミックス等が挙げられる。また、電気絶縁性シート360は、不織布であってもよい。
電気絶縁性シート360に用いられるプラスチックとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類や、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、アラミド、ナイロン等の高分子プラスチック等が挙げられる。
なお、電気絶縁性シート360の材質としては、少なくとも高温部材の表面温度範囲において耐熱性を有するものであることは言うまでもない。
また、電気絶縁性シート360は、単層でもよく、2層以上の積層体でもよい。
図23に示すように、放熱部材100とフライトコントローラー351との間には、さらに、電気絶縁性で、柔軟性のある、例えば、ゲル状の断熱部材361が配されていてもよい。
これにより、放熱部材100とフライトコントローラー351との間に隙間が確保され、放熱部材100からの熱を好適に逃がすことができる。また、放熱部材100が放熱した熱がフライトコントローラー351上のセンサー等に伝熱されることを好適に防止することができ、熱によるセンサーの誤作動等の影響をより効果的に抑制することができる。
また、図24に示すように、放熱部材100上にアルミシート362を配し、放熱部材100からの熱を、アルミシート362を通じて外部に放熱してもよい。これにより、熱をさらに効率よく外部に放出することができ、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
本発明の放熱部材100は、従来の放熱部材よりも軽量であるため、電子機器として、軽量化がより求められる、ドローン、言い換えれば、小型無人航空機に好適に適用することができる。
このような小型無人航空機としては、機体重量が数百g(例えば、約200g)と非常に軽量なものが多く、部品の数gといった重量の違いでも飛行に影響を与える場合がある。本発明の放熱部材100は、アルミニウム製のヒートシンクのような従来の放熱部材に比べて軽量であるため、機体重量をより軽くすることができ、好適な飛行をより確実に確保することができる。
なお、上述した説明では、電子機器としてドローン、具体的には、ローターの数が4つのクアドコプターを例に挙げて説明したが、本発明の電子機器としては、これに限定されるものではない。
例えば、ドローンとしては、上述したクアドコプター以外にも、ローターの数が3つのトライコプター、6つのヘキサコプター、8つのオクトコプター等のマルチコプター、ヘリコプターであってもよい。また、マルチコプター、ヘリコプター以外の小型無人航空機、例えば、飛行機、滑空機、飛行船等であってもよい。
本発明の放熱部材100が適用される、ドローン以外の電子機器として、例えば、小型電子機器等が挙げられる。
これにより、本発明による効果を顕著なものとすることができる。
小型電子機器としては、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯通信端末機器、携帯電話、スマートフォン、携帯音楽プレーヤー、携帯ラジオ、携帯テレビ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯型ゲーム機器、電子書籍端末、携帯型医療機器等が挙げられる。
このような電子機器は、軽量であり実質的な放熱性に優れた放熱部材を備えているので、発熱部材である電子部品からの熱をより効率よく放熱することができ、装置やシステムの寿命低下、誤作動等のリスクをより効果的に低減することができる。また、これら電子機器の小型化、軽量化にも寄与する。
特に、より高周波の電磁波を用いた第5世代移動通信に対応した携帯通信端末機器においては、電子部品の更なる高集積化及び高速化により、発熱量が大きくなる傾向にあるため、本発明の放熱部材を好適に適用することができる。これにより、上述した効果を特に顕著なものとすることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、放熱部材の製造方法においては、前述した工程に加え、他の工程(前処理工程、中間処理工程、後処理工程等)をさらに有していてもよい。
より具体的には、例えば、前述した実施形態では、カット工程で得られた各熱伝導体前駆体から、それぞれ、熱伝導体(放熱部材)を製造していたが、複数個の熱伝導体前駆体を接合して、1個の熱伝導体(放熱部材)を製造してもよい。
また、放熱部材の製造方法においては、前述した工程の順序の少なくとも一部を入れ替えてもよい。
より具体的には、例えば、凹部形成工程を硬化工程より前に行ってもよい。接合部形成用組成物が硬化する前の、より柔軟な状態で凹部を形成することで、凹部の形成を、より容易に行うことができる。
また、例えば、上述した説明では、切開体を所定の厚さにカットした後に凹部を形成する場合について説明したが、凹部の形成は、切開体をカットする前に行ってもよい。
また、凹部が設けられた熱伝導部を備える熱伝導体を製造する場合、凹部の形成は、熱伝導部形成用シートを原反ロールから引き出した後に行ってもよい。より具体的には、例えば、凹部が形成されていない熱伝導部形成用シートを、原反ロールから引き出した後であって接合部形成用組成物を付与する前のタイミングで、熱伝導部形成用シートに凹部を形成してもよいし、凹部が形成されていない熱伝導部形成用シートに接合部形成用組成物を付与するのと同じタイミングで、熱伝導部形成用シートに凹部を形成してもよい。
また、上述した説明では、熱伝導体を構成する熱伝導部及び接合部が平面状のものである場合について代表的に説明したが、熱伝導体を構成する熱伝導部、接合部のうちの少なくとも一部は、非平面状をなすもの、例えば、湾曲面状のもの、屈曲面状のもの等であってもよい。
また、熱伝導体は、前述した熱伝導部、接合部以外の構成を有するものであってもよい。
また、前述した実施形態では、放熱部材を、高温部材の冷却の目的で使用する場合について中心的に説明したが、本発明において、放熱部材は、低温部材の加温の目的で使用するものであってもよい。言い換えると、本発明において、放熱部材は、外界(例えば、相対的に高温である雰囲気)や他の部材から加温すべき部材である低温部材への放熱に用いるものであってもよい。
この場合、低温部材としては、その表面の最低温度が−40℃以上30℃以下のものが好ましく、−30℃以上25℃以下のものがより好ましく、−20℃以上20℃以下のものがさらに好ましい。
これにより、熱伝導の効果をより顕著に発揮することができる。また、前述したような接合部を構成する樹脂材料の劣化等をより効果的に防止することができ、より長期間にわたって、放熱部材の特性を安定的に発揮させることができる。
1 :熱伝導体
1’ :熱伝導体前駆体
10 :熱伝導部
10’ :熱伝導部形成用シート
11 :凹部
20 :接合部
20’ :接合部形成用組成物
21 :樹脂材料
21’ :硬化性樹脂材料
30 :巻回体
40 :切開体
50 :ポリロタキサン
51 :環状分子
52 :第1のポリマー
53 :封鎖基
60 :第2のポリマー
90 :平板
100 :放熱部材(伝熱部材)
110 :凹凸
120 :凹部
130 :凸部
140 :段差
150 :凹部
170 :管体
200 :中央演算処理装置
210 :部材
300 :ドローン
310 :ドローン本体
320 :フレーム
330 :リンクアーム
340 :推進ユニット
341 :プロペラ
342 :ケーブル
350 :制御部
351 :フライトコントローラー(FC)
3511 :基板
3512 :ジャイロセンサー
352 :スピードコントローラー(ESC)
3521 :基板
3522 :トランジスタ
3523 :コンデンサ
3524 :電極部
355 :スペーサー
355’ :スペーサー
358 :ボルト
360 :電気絶縁性シート
361 :断熱部材
362 :アルミシート
FG :鱗片状黒鉛
HF :高温流体
CF :冷却用流体
M10 :キスコーター
M11 :塗工ロール
M12 :液受けパン
M13 :スキージー
M14 :ガイドロール
R1 :原反ロール
R2 :巻取ロール
:厚さ
:深さ
10 :厚さ
20 :厚さ
:凸部の幅
:凹部の幅

Claims (20)

  1. 複数の熱伝導部と、柔軟性を有する材料で構成され、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える、三次元形状を有する熱伝導体を有し、
    前記熱伝導体の少なくとも表面の一部に凹凸が形成されていることを特徴とする放熱部材。
  2. 前記熱伝導部は、シート状をなすものである請求項1に記載の放熱部材。
  3. 前記熱伝導体のうち前記熱伝導部及び前記接合部が表出している側の面に前記凹凸が形成されている請求項1又は2に記載の放熱部材。
  4. 前記凹凸は、縦断面視で櫛歯状に形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の放熱部材。
  5. 前記熱伝導部と前記接合部との積層方向が、前記凹凸の幅方向と非平行になるように該凹凸が形成されている請求項4に記載の放熱部材。
  6. 前記凹凸において凸部の幅をw[mm]とし、凹部の幅をw[mm]としたとき、w/wが0.5以上2.0以下である請求項4又は5に記載の放熱部材。
  7. 前記熱伝導体の全体の厚さをT[mm]とし、前記凹凸における凹部の深さをT[mm]としたとき、T/Tが0.2以上0.9以下である請求項4〜6のいずれか一項に記載の放熱部材。
  8. 前記熱伝導部と前記接合部との積層方向における前記熱伝導部の幅が5μm以上500μm以下である請求項1〜7のいずれか一項に記載の放熱部材。
  9. 前記熱伝導部と前記接合部との積層方向における前記接合部の幅が0.1μm以上1000μm以下である請求項1〜8のいずれか一項に記載の放熱部材。
  10. 前記熱伝導体の密度が0.7g/cm以上2.5g/cm以下である請求項1〜9のいずれか一項に記載の放熱部材。
  11. 前記放熱部材は、高温部材に対向する面とは反対の面側に、前記凹凸が形成されている請求項1〜10のいずれか一項に記載の放熱部材。
  12. 前記放熱部材は、複数個の高温部材に跨るようにして配置して利用されるものであり、当該複数個の高温部材に対向する面側に、当該複数個の高温部材の表面を含む面形状に対応する段差加工が施されている請求項1〜11のいずれか一項に記載の放熱部材。
  13. 前記高温部材は電子部品である請求項11又は12に記載の放熱部材。
  14. 複数の熱伝導層と、前記各熱伝導層を接合する接合層とを有する積層体を製造する積層体製造工程と、
    前記積層体を所定の形状に加工する成形工程とを有し、
    前記熱伝導層により形成された複数の熱伝導部と、前記接合層により形成され、柔軟性を有する材料で構成された接合部とを備え、少なくとも表面の一部に凹凸が形成された三次元形状を有する熱伝導体を有する放熱部材を得ることを特徴とする放熱部材の製造方法。
  15. 少なくとも一方の面に前記接合部の形成に用いる硬化性樹脂材料を含む組成物が付与された、前記熱伝導部の形成に用いる熱伝導部形成用シートを、ロールの周面に巻回し、筒状の巻回体を得る巻回工程を有する方法を用いて、前記積層体を製造する請求項14に記載の放熱部材の製造方法。
  16. 前記巻回工程の後に、前記巻回体を、前記ロールの軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体を得る切開工程と、
    前記切開体中に含まれる前記硬化性樹脂材料を硬化させる硬化工程とを有する請求項15に記載の放熱部材の製造方法。
  17. 前記硬化工程の後に、前記積層体の少なくとも表面の一部に凹部を形成する凹部形成工程を有する請求項16に記載の放熱部材の製造方法。
  18. 電子部品と、請求項1〜13のいずれか一項に記載の放熱部材とを有することを特徴とする電子機器。
  19. 前記放熱部材は、高温部材に対向する面とは反対の面側に、前記凹凸が形成されている請求項18に記載の電子機器。
  20. 高温部材と前記放熱部材との間に挟まれるように、電気絶縁性シートが配されている請求項18又は19に記載の電子機器。

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