JP2021091211A - 熱伝導体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】実質的な熱伝導性に優れる熱伝導体を効率よく好適に製造することができる熱伝導体の製造方法を提供する。【解決手段】複数の熱伝導部と、各熱伝導部を接合する接合部20とを備える熱伝導体の製造方法であって、少なくとも一方の面に硬化性樹脂材料を含む組成物が付与された、熱伝導部の形成に用いる熱伝導部形成用シート10’を、ロールの周面に巻回し、筒状の巻回体を得る巻回工程と、巻回体を、ロールの軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体を得る切開工程と、切開体中に含まれる硬化性樹脂材料を硬化させる硬化工程とを有し、接合部は、柔軟性を有するものであることを特徴とする。【選択図】図8

Description

本発明は、熱伝導体の製造方法に関する。
近年、電子機器や車両用ヘッドライト、車載電池等の発熱部材に対する放熱対策が急務となっている。例えば、コンピューターの中央演算処理装置、画像処理用演算プロセッサ、スマートフォンのSoC、組み込み機器のDSPやマイコン、あるいはトランジスタ等の半導体素子、発光ダイオードやエレクトロルミネッセンス、液晶等の発光体といった電子部品の小型化、高集積化により、発熱量が大きくなる傾向にある。これらの電子部品の発熱による装置やシステムの寿命低下、誤作動が問題となってきており、電子部品の放熱対策への要求は、年々高まってきている。
このような発熱部材等の高温部材に対する対策として、空冷ファンを用いた強制冷却の他、金属製の放熱フィンやペルチェ素子等の放熱部材が使用されている。このような放熱部材は、発熱体と熱的に接続する面において、界面に断熱層となる空気層が形成されるのを防ぐために、グリスが塗布されてきた。しかしながら、一般的なグリスは熱伝導性が高くない。そのため、熱伝導率が比較的高いダイヤモンドを分散させたダイヤモンドグリスも用いられている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、ダイヤモンドグリスは、高価である。また、ダイヤモンドグリスを用いた場合でも、十分な熱伝導性を得ることは困難であった。
特表2017−530220号公報
本発明の目的は、実質的な熱伝導性に優れる熱伝導体を好適に製造することができる熱伝導体の製造方法を提供することにある。
本発明の熱伝導体の製造方法は、複数の熱伝導部と、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体の製造方法であって、少なくとも一方の面に硬化性樹脂材料を含む組成物が付与された、前記熱伝導部の形成に用いる熱伝導部形成用シートを、ロールの周面に巻回し、筒状の巻回体を得る巻回工程と、前記巻回体を、前記ロールの軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体を得る切開工程と、前記切開体中に含まれる前記硬化性樹脂材料を硬化させる硬化工程とを有し、前記接合部は、柔軟性を有するものであることを特徴とする。
本発明では、前記熱伝導部形成用シートは、黒鉛を含むシート材であることが好ましい。
本発明では、前記熱伝導部形成用シートは、金属材料で構成されたシート材であることが好ましい。
本発明では、前記金属材料は、Alを含むものであることが好ましい。
本発明では、前記熱伝導部形成用シートは、その厚さ方向に凹部が設けられたものであることが好ましい。
本発明では、前記凹部は、前記熱伝導部形成用シートの厚さ方向に貫通する孔部であることが好ましい。
本発明では、前記凹部の直径は、30μm以上500μm以下であることが好ましい。
本発明では、前記熱伝導部形成用シートに前記組成物を付与する際の当該組成物の粘度が500mPa・s以上50000mPa・s以下であることが好ましい。
本発明では、前記組成物は、前記硬化性樹脂材料に加えて、金属粒子を含むものであることが好ましい。
本発明では、前記硬化工程の後に、両面において、前記熱伝導部及び前記接合部が表出するシート状にスライスするスライス工程をさらに有することが好ましい。
本発明では、前記熱伝導部形成用シートの厚さは、5μm以上500μm以下であることが好ましい。
本発明では、前記硬化性樹脂材料は、環状分子と、直鎖状の分子構造を有し前記環状分子を串刺し状に包接する第1のポリマーと、前記第1のポリマーの両端付近に設けられた封鎖基とを有するポリロタキサン、及び、第2のポリマーを含み、前記環状分子を介して、前記ポリロタキサンと前記第2のポリマーとが結合しているものであることが好ましい。
本発明によれば、実質的な熱伝導性に優れる熱伝導体を効率よく好適に製造することができる熱伝導体の製造方法を提供することができる。
本発明の方法により製造される熱伝導体の一例を模式的に示す斜視図である。 本発明の方法により製造される熱伝導体の他の一例を模式的に示す斜視図である。 積層された熱伝導部及び接合部の部分を拡大して示す模式的な断面図である。 積層された複数の熱伝導部を分解して示す模式的な一部分解斜視図である。 接合部を構成する樹脂材料の一例の概念図である。 鱗片状黒鉛で構成された熱伝導部形成用シートを模式的に示す断面図である。 凹部が設けられた熱伝導部形成用シートに、接合部形成用組成物を付与した状態を模式的に示す断面図である。 接合部形成用組成物付与工程、巻回工程に用いる装置の一例を模式的に示す図である。 切開工程で得られた切開体を模式的に示す図である。 切開体を押圧して、切開体の平坦性をより高くした状態を模式的に示す図である。 スライス工程の様子を模式的に示す図である。 図1に示す熱伝導体の使用形態の一例を模式的に示す図である。 図2に示す熱伝導体の使用形態の一例を模式的に示す図である。 図2に示す熱伝導体の使用形態の一例を模式的に示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[1]熱伝導体
まず、本発明の熱伝導体の製造方法の具体的な説明に先立って、本発明の方法により製造される熱伝導体について説明する。
図1は、本発明の方法により製造される熱伝導体の一例を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明の方法により製造される熱伝導体の他の一例を模式的に示す斜視図である。図3は、積層された熱伝導部及び接合部の部分を拡大して示す模式的な断面図である。図4は、積層された複数の熱伝導部を分解して示す模式的な一部分解斜視図である。図5は、接合部を構成する樹脂材料の一例の概念図である。
なお、本明細書で参照する図面においては、各部材間の関係をわかりやすくするために、一部を縮小あるいは拡大して示している場合があり、図面に示す各部材間での大きさの比率は、実際の各部材間での大きさの比率を表しているものではない。
後に詳述するように、熱伝導体1は、所定の方向での熱伝導性に優れるものであり、例えば、熱伝導体1に冷却すべき部材等を接触させることにより用いられるものである。
熱伝導体1は、複数の熱伝導部10と、柔軟性を有する材料で構成され、各熱伝導部10を接合する接合部20とを備える。言い換えると、熱伝導体1は、複数の熱伝導部10と接合部20とを有する複合積層体である。
図1、図2に示すように、熱伝導体1において、熱伝導部10と接合部20とは交互に配されている。熱伝導部10及び接合部20は、これらの表面の少なくとも一部が、熱伝導体1の使用時において、熱伝導体1が適用される部材と接触可能な形態で配置されている。そして、このような熱伝導体1は、後に詳述する方法を用いて製造されたものである。
これにより、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との密着性を優れたものとすることができ、前記部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性を優れたものとすることができる。
熱伝導体1は、少なくとも1つの接合部20を備えていればよいが、図1、図2に示す例では、複数の熱伝導部10と複数の接合部20とを備えており、これらの積層方向の両端には熱伝導部10が配されている。
具体的には後述するが、このような熱伝導体1は、少なくとも一方の面に、接合部20の形成に用いる接合部形成用組成物20’が付与された、熱伝導部10の形成に用いる熱伝導部形成用シート10’を、巻取ロールR2の周面に巻回することで、熱伝導部10と接合部20とを交互に積層形成して製造される。
ここで、本明細書では、熱伝導体1において熱伝導部10と接合部20との積層方向を熱伝導体1の積層方向と定義するとともに、熱伝導部形成用シート10’の面内方向を熱伝導部10の面内方向と定義する。例えば、図1、図2に示す構成では、左右方向が熱伝導体1の積層方向であり、縦の奥行方向が熱伝導部10の面内方向である。また、後述する図6、図7中では、横の奥行方向が、熱伝導部形成用シート10’の面内方向、熱伝導部10の面内方向である。
図1に示す構成では、熱伝導体1は、シート状をなしている。
このように、熱伝導体1がシート状をなすものであると、熱伝導体1全体を好適に湾曲させることができ、例えば、熱伝導体1の体積を小さいものとしつつ、平面部や曲率が比較的小さい表面を有する部材に適用した場合の実質的な熱伝導性を特に優れたものとすることができる。なお、ここでの「平面部」は、微小な凹凸を有する面も含む概念である。また、熱伝導体1が適用される部材が表面に凹凸を有するもの等であっても、熱伝導体1が適用される表面全体にわたって、ミクロ的に、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1とをより好適に密着させることができる。言い換えると、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との微小領域における接触がより優れたものになる。このため、例えば、熱伝導体1が適用される部材が発熱部材である場合等における放熱性をより優れたものとすることができる。
熱伝導体1がシート状をなすものである場合、自然状態での熱伝導体1の厚さ、すなわち、図1中Tで示す長さは、0.2mm以上5mm以下であることが好ましく、0.3mm以上4mm以下であることがより好ましく、0.5mm以上3mm以下であることがさらに好ましい。
これにより、シート状の熱伝導体1が適用される部材の表面形状により好適に追従することができ、前述した効果がより顕著に発揮される。
図2に示す構成では、熱伝導体1は、ブロック状をなしている。このようなブロック状の熱伝導体1には、図示しないスリットや凹部等が設けられていてもよい。
このように、本発明において、熱伝導体1は、シート状のものに限定されず、いかなる形状のものであってもよい。
熱伝導体1がブロック状をなすものであると、例えば、熱伝導体1が適用される部材が複雑な表面形状を有するものである場合であっても、熱伝導体1と前記部材とを好適に密着させることができ、実質的な熱伝導性を特に優れたものとすることができる。また、熱伝導体1と熱伝導体1が適用される部材とを三次元的に好適に密着させることができるため、前記部材の熱伝導体1と接触させるべき領域が三次元方向の比較的広い領域にわたるものである場合であっても、好適に適用することができる。
なお、本明細書で参照する図では、熱伝導部10と接合部20との界面を明確に示しているが、例えば、熱伝導部10の一部が接合部20に侵入していること等により、熱伝導部10と接合部20との界面が不明確なものとなっていても構わない。
[1−1]熱伝導部
複数ある熱伝導部10は、熱伝導体1の全体における熱伝導性、特に、熱伝導部10の面内方向の熱伝導性に主に寄与する部分である。
熱伝導部10は、熱伝導性を有していれば、特に限定されるものではないが、熱伝導部10を構成する材料としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ等のセラミックス材料、黒鉛、金属材料等が挙げられるが、黒鉛、金属材料が好ましい。
これにより、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の製造コストを抑制することができる。
また、熱伝導部10がセラミックス材料で構成されている場合、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の発塵性をより低くすることができ、例えば、電子回路の電気的なショート等の問題の発生をより効果的に防止することができる。特に、窒化アルミニウム等の窒化物系セラミックス、アルミナ等の酸化物系セラミックスは、それら自体が絶縁性の高い材料であるため、万が一、発塵等により熱伝導部10の一部が熱伝導体1から脱落した場合でも、上記のような問題を効果的に防止することができる。
[1−1−1]黒鉛
特に、熱伝導部10が、黒鉛を含む熱伝導部形成用シート10’により形成されたものであると、前述した効果に加え、さらに、以下のような効果が得られる。すなわち、熱伝導体1のしなやかさ、柔軟性をより優れたものとすることができ、例えば、熱伝導体1が折れ曲がった時の復元力、さらには内部の空隙によるクッション性、過熱部と接触したときの適度な変形による接触性の向上等をより優れたものとすることができる。
熱伝導部10を構成する黒鉛としては、鱗片状黒鉛を用いることが好ましい。
鱗片状黒鉛を用いることで、後述するような方法により、鱗片状黒鉛を熱伝導部10の面内方向に好適に配向させることができ、熱伝導部10の面内方向への熱伝導性を特に優れたものとすることができる。
[1−1−2]金属材料
また、熱伝導部10が金属材料で構成された熱伝導部形成用シート10’により形成されたものであると、前述した効果に加え、さらに、以下のような効果が得られる。すなわち、金属材料内部の結合力の強さから熱伝導体1の発塵性をより低くすることができる。また、熱伝導体1に、比較的大きな荷重を加えた場合であっても、座屈等による熱伝導体1の崩壊等、熱伝導体1の不可逆的な変形がより効果的に防止される。
熱伝導部10を構成する金属材料としては、各種の単体金属や合金等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。より具体的には、熱伝導部10を構成する金属材料としては、例えば、Al、Cu、Ag、Au、Mg及びZnよりなる群から選択される1種又は2種以上を含むもの等が挙げられるが、Alを含むものであることが好ましい。
これにより、熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。
前記群を構成する金属元素を含む合金としては、例えば、Al、Cu及びMgを含むアルミニウム合金であるジュラルミン等が挙げられる。
熱伝導部10は、実質的に単一成分で構成されていることが好ましい。
これにより、熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。また、一般に、熱伝導体1の製造コストを抑制する上でも有利である。
なお、「実質的に単一成分から構成される」とは、対象となる部位での主成分の割合が、95重量%以上であることをいうものとする。主成分の割合は97重量%以上であることが好ましく、99重量%以上であることがより好ましい。
ただし、熱伝導部10中に、空気等のガスが含まれる場合は、当該ガスの含有量は無視することとする。また、熱伝導部10が金属材料から構成される場合、その表面には不動態膜のような、熱伝導部10を構成する金属の酸化被膜が形成されていても構わない。このような酸化被膜が形成されている場合も、「実質的に単一成分から構成される」ものとして取り扱うものとする。後に詳述する熱伝導部形成用シート10’についても同様である。
20℃における熱伝導部10の面内方向の熱伝導率は、7W/(m・K)以上2500W/(m・K)以下であることが好ましく、10W/(m・K)以上200W/(m・K)以下であることがより好ましく、15W/(m・K)以上180W/(m・K)以下であることがさらに好ましい。
なお、熱伝導率の値は、レーザーフラッシュ法に準拠した、非定常熱線法により測定により求めることができる。
図1、図2中のt10で示す熱伝導部10の積層方向についての厚さは、5μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上200μm以下であることがより好ましく、20μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合を十分に高いものとしつつ、熱伝導体1全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、より確実に、上述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。
図3に示すように、熱伝導体1において、熱伝導部10は、その厚さ方向に凹部11が設けられたものであることが好ましい。
これにより、熱伝導体1において熱伝導部10と接合部20との接合をより強固にすることができ、熱伝導体1が適用される部材、例えば、冷却すべき部材等の表面形状への形状適合性や熱伝導体1の耐久性をより良好なものとすることができる。例えば、積層方向に折り曲げられても、熱伝導部10と接合部20とがより強固に接合されているため、熱伝導部10同士が剥がれてしまうことが好適に防止され、積層方向に高い柔軟性を有し、熱伝導体1が適用される部材、例えば、冷却すべき部材等の表面形状への形状適合性が優れたものとなる。
凹部11の深さは、熱伝導部10の厚みt10の1/3以上であることが好ましく、1/2以上であることがより好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
特に、凹部11は、熱伝導部10の厚さ方向に貫通する孔部であることが好ましい。
これにより、熱伝導部10の表裏に貫通するように、接合部20の構成材料である樹脂材料21が侵入した状態とすることができ、熱伝導体1において熱伝導部10と接合部20との接合をさらに強固にすることができ、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
図4に示すように、熱伝導部10を接合部20との積層方向から観察した際に、複数の熱伝導部10で、重なり合わない孔部が存在していることが好ましい。
複数の熱伝導部10で、重なり合う孔部が存在していると、当該重なり合う孔部に侵入した接合部20の樹脂材料21は、複数の熱伝導部10を貫通した串刺し状になる。このような場合、樹脂材料21が孔部からすり抜けてしまい、熱伝導部10同士の接合が不十分になる可能性がある。
これに対し、熱伝導部10を接合部20との積層方向から観察した際に、複数の熱伝導部10で、重なり合わない孔部が存在していることで、孔部に侵入した接合部20の樹脂材料21のすり抜けが防止され、熱伝導部10同士の接合をより強固なものとすることができる。
なお、図4では、熱伝導部10の部分のみを抜き出して示しており、接合部20は省略している。
凹部11が有底のものである場合、凹部11は、熱伝導部10の一方の面に設けられたものであってもよいし、両面に設けられたものであってもよい。
凹部11の形状は、特に限定されるものではなく、熱伝導部10を平面視した際の凹部11の形状、熱伝導部10についての凹部11の横断面形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形等が挙げられる。また、熱伝導部10についての縦断面形状としては、例えば、凹部11の深さ方向に一定の幅を有するものであってもよいし、凹部11の深さ方向で幅が変化する部位を有するものであってもよい。
熱伝導部10を平面視した際の凹部11の形状、熱伝導部10についての凹部11の横断面形状が円形である場合、当該凹部11の直径は、30μm以上500μm以下であることが好ましく、40μm以上300μm以下であることがより好ましく、50μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
なお、凹部11の大きさ(直径)は、熱伝導部10の厚さ方向で一定であってもよいし、一定でなくてもよい。熱伝導部10の厚さ方向で凹部11の大きさ(直径)の異なる部位を有する場合、凹部11の直径が最大となる部位での直径の値が、前記範囲内の値であるのが好ましい。
単一の熱伝導部10に凹部11が複数個設けられている場合、当該熱伝導部10の面内方向での隣り合う凹部11の間隔は、300μm以上1000μm以下であることが好ましく、400μm以上800μm以下であることがより好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
ここで、本明細書において、「凹部11の間隔」は、隣り合う凹部11の中心間の距離のことをいう。
熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合は、30体積%以上90体積%以下であることが好ましく、40体積%以上85体積%以下であることがより好ましく、50体積%以上82体積%以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
熱伝導体1中(ただし、空隙部を除く実体部)に占める熱伝導部10の割合は、熱伝導体1の積層方向における断面での面積比で、30%以上90%以下であることが好ましく、40%以上85%以下であることがより好ましく、50%以上82%以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
[1−2]接合部
接合部20は、隣り合う2つの熱伝導部10の間に配されて、熱伝導部10同士を接合するものであり、柔軟性を有する樹脂材料21を含んで構成される。樹脂材料21は、後述する硬化性樹脂材料21’の硬化物である。
接合部20が柔軟性を有する樹脂材料21を含むことで、熱伝導体1は、熱伝導体1が適用される部材、例えば、冷却すべき部材等の表面形状への形状適合性に優れたものとなる。
また、接合部20が柔軟性を有する樹脂材料21を含むことで、熱伝導体1が変形した際に、熱伝導体1が破損することを好適に防止することができる。
[1−2−1]樹脂材料
接合部20を構成する樹脂材料21としては、柔軟性を有するものであれば特に限定されず、例えば、柔軟性エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられるが、樹脂材料21は、図5に示すように、環状分子51と、直鎖状の分子構造を有し環状分子51を串刺し状に包接する第1のポリマー52と、第1のポリマー52の両端付近に設けられた封鎖基53とを有するポリロタキサン50、及び、第2のポリマー60を含み、環状分子51を介して、ポリロタキサン50と第2のポリマー60とが結合しているものであることが好ましい。
これにより、熱伝導体1における熱伝導部10と接合部20との接合強度等をより優れたものとすることができ、熱伝導体1の耐久性をより優れたものとすることができる。また、熱伝導体1の柔軟性、耐熱性等を特に優れたものとすることができる。
特に、図5(A)に示すような状態の樹脂材料21に、矢印方向の応力が付加された場合、樹脂材料21は、図5(B)に示すような形態を採ることができる。すなわち、樹脂材料21では、環状分子51が第1のポリマー52に沿って移動可能であるため、すなわち、第1のポリマー52が環状分子51内を移動可能であるため、変形の応力を樹脂材料21中で効率よく吸収することができる。したがって、ひねり変形力等の大きな外力が加わった場合であっても、接合部20が破壊されたり、熱伝導部10同士の接合が破壊されてしまったりすることが効果的に防止される。
以下、ポリロタキサン50と第2のポリマー60とを含む樹脂材料21について詳細に説明する。
ポリロタキサン50を構成する環状分子51は、第1のポリマー52に沿って移動可能なものであればよいが、置換されていてもよいシクロデキストリン分子であることが好ましく、該シクロデキストリン分子がα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン、並びにその誘導体からなる群から選択されるものであることが特に好ましい。
ポリロタキサン50中の環状分子51の少なくとも一部は、上述のように、第2のポリマー60の少なくとも一部と結合する。
環状分子51が有する官能基(第2のポリマー60と結合する官能基)としては、例えば、−OH基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基等が挙げられる。なお、光架橋基としては、例えば、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩、スチリルキノリウム塩等が挙げられる。
環状分子51が第1のポリマー52により串刺し状に包接される際に環状分子51が最大限に包接される量を1とした場合、第1のポリマー52に串刺し状に包接されている環状分子51の量は、0.001以上0.6以下であることが好ましく、0.01以上0.5以下であることがより好ましく、0.05以上0.4以下であることがさらに好ましい。なお、異なる2種以上の環状分子51を用いてもよい。
ポリロタキサン50を構成する第1のポリマー52としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/又はこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びその他オレフィン系単量体との共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロン等のポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、並びにこれらの誘導体が挙げられ、特にポリエチレングリコールであることが好ましい。
第1のポリマー52の重量平均分子量は、1万以上であることが好ましく、2万以上であることがより好ましく、3.5万以上であることがさらに好ましい。なお、異なる2種以上の第1のポリマー52を用いてもよい。
環状分子51と第1のポリマー52との組み合わせとしては、環状分子51が置換されていてもよいα−シクロデキストリンであり、第1のポリマー52がポリエチレングリコールであることが好ましい。
ポリロタキサン50を構成する封鎖基53は、環状分子51が第1のポリマー52から脱離することを防止する機能を有する基であれば特に限定されないが、例えば、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニル等が挙げられる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類、ステロイド類等が挙げられる。
置換ベンゼン類、置換多核芳香族類を構成する置換基としては、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニル等が挙げられる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。なお、異なる2つ以上の封鎖基53を用いてもよい。
樹脂材料21中において、少なくとも一部のポリロタキサン50が、環状分子51を介して、第2のポリマー60と結合しているが、樹脂材料21中には、第2のポリマー60と結合していないポリロタキサン50が含まれていてもよいし、ポリロタキサン50同士が結合していてもよい。
第2のポリマー60は、環状分子51を介して、ポリロタキサン50と結合するものである。第2のポリマー60が有する環状分子51と結合する官能基としては、例えば、−OH基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、ビニル基、チオール基、光架橋基等が挙げられる。なお、光架橋基としては、例えば、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩、スチリルキノリウム塩等が挙げられる。
第2のポリマー60としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/又はこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びその他オレフィン系単量体との共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロン等のポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類の各種樹脂の骨格を有し、前述した官能基を有するものが挙げられる。
また、第2のポリマー60と環状分子51とは、架橋剤により化学結合されていてもよい。
架橋剤の分子量は、2000未満であることが好ましく、1000未満であることがより好ましく、600未満であることがさらに好ましく、400未満であることが最も好ましい。
架橋剤としては、例えば、塩化シアヌル、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、フェニレンジイソシアネート、ジイソシアン酸トリレイン、ジビニルスルホン、1,1’−カルボニルジイミダゾール、アルコキシシラン類等が挙げられる。なお、異なる2種以上の架橋剤を用いてもよい。
また、第2のポリマー60は、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。樹脂材料21中において、少なくとも一部の第2のポリマー60が、環状分子51を介して、ポリロタキサン50と結合しているが、樹脂材料21中、ポリロタキサン50と結合していない第2のポリマー60が含まれていてもよいし、第2のポリマー60同士が結合していてもよい。なお、異なる2種以上の第2のポリマー60を用いてもよい。
樹脂材料21中における第2のポリマー60の含有量に対するポリロタキサン50の含有量の比率は、重量比で、1/1000以上であることが好ましい。
[1−2−2]金属粒子
接合部20は、樹脂材料21に加えて、図示しない金属粒子を含んでいてもよい。
前述したように、熱伝導部10の面内方向の熱伝導性に主に寄与する部分は、熱伝導部10であるが、金属粒子は、一般に、接合部20を構成する樹脂材料21よりも高い熱伝導性を有しているため、接合部20中に金属粒子が含まれることにより、接合部20についての熱伝導性を向上させることができ、熱伝導体1全体としての熱伝導性のさらなる向上を図ることができる。
特に、接合部20に含まれる1個又は複数個の金属粒子により、隣り合う熱伝導部10が接続されている場合、該金属粒子が熱伝導部10間を熱的につなぐ「熱パス」となり、熱伝導体1の全体としての熱伝導性をさらに向上させることができる。
さらに、電磁波シールド性を有する金属材料で構成された金属粒子を含むことで、熱伝導体1に電磁波シールド機能も付与することができる。特に、例えば、第5世代移動通信で用いられるような高周波の電磁波に対するシールド機能を好適に付与することができる。
金属粒子としては、Fe、Ag、Pt、Cu、Sn、Al及びNiよりなる群から選択される1種又は2種以上を含むものであることが好ましく、Feを含むものであることがより好ましい。
金属粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状が好ましく、真球状がより好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
より具体的には、金属粒子の形状係数SF−2は、100以上150以下であることが好ましく、100以上125以下であることがより好ましく、100以上120以下であることがさらに好ましい。
形状係数SF−2は、粒子の投影周囲長を2乗した値を当該粒子の投影面積で割った値を4πで除し、さらに100倍して得られる数値であり、粒子の形状が球に近いほど100に近い値になる。
形状係数SF−2は、例えば、以下のような測定により求めることができる。
すなわち、例えば、FE−SEMを用いた観察で、金属粒子100個について、投影面積S[μm]及び投影周囲長L[μm]を求め、下記式より算出される値を形状係数SF−2とする。そして、各金属粒子についての形状係数SF−2の平均値を、金属粒子の形状係数SF−2として採用する。
SF−2=((L/S)/4π)×100
金属粒子の平均粒径は、特に限定されるものではないが、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3.0μm以下であることがより好ましい。
これにより、上述した効果をさらに顕著なものとすることができる。
なお、本明細書において、平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される重量基準の粒度分布において、小径側から累積50%になるときの粒径のことを言う。
金属粒子としては、鉄粒子が好ましい。
鉄粒子としては、例えば、Fe(CO)を熱分解することにより製造される鉄粒子が挙げられる。
このような鉄粒子は、非常に高純度であり、前述したような真球状をなすものであり、平均粒径も微細であることから、上述した効果を特に顕著なものとすることができる。
接合部20中における金属粒子の含有率は、1体積%以上50体積%以下であることが好ましく、10体積%以上30体積%以下であることがより好ましい。
これにより、上述したような樹脂材料21を含むことによる効果と金属粒子を含むことによる効果とをバランスよく発揮することができる。
[1−2−3]セラミックス粒子
接合部20は、上記の材料に加えて、図示しないセラミックス粒子を含んでいてもよい。
これにより、接合部20の組織を安定化、均一化させることができ、接合部20中の空隙の割合や大きさも安定化できる。その結果、熱伝導体1の各部位での特性の不本意なばらつきをより効果的に防止することができる。
セラミックス粒子の構成材料としては、各種セラミックスが挙げられるが、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物系セラミックス、炭化ケイ素等の炭化物系セラミックス、アルミナ等の酸化物系セラミックス等のセラミックス材料を用いた場合、熱伝導体1全体としての熱伝導性のさらなる向上を図ることができる。特に、接合部20に含まれる1個又は複数個のセラミックス粒子により、隣り合う熱伝導部10が接続されている場合、該セラミックス粒子が熱伝導部10間を熱的につなぐ「熱パス」となり、熱伝導体1の全体としての熱伝導性をさらに向上させることができる。
接合部20がセラミックス粒子に加え、前述した金属粒子を含んでいる場合、前記熱パスは、セラミックス粒子及び金属粒子で形成されていてもよい。
なお、セラミックス粒子は、シリカで構成されたものであってもよい。これにより、熱伝導体1の生産コストを抑制しつつ、前述した接合部20の組織の安定化、均一化等の効果が得られる。
セラミックス粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状が好ましく、真球状がより好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
セラミックス粒子の平均粒径は、特に限定されるものではないが、5μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましく、20μm以上70μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した効果をさらに顕著なものとすることができる。
接合部20中におけるセラミックス粒子の含有率は、1体積%以上50体積%以下であることが好ましく、10体積%以上30体積%以下であることがより好ましい。
これにより、上述したような樹脂材料21を含むことによる効果とセラミックス粒子を含むことによる効果とをバランスよく発揮することができる。
[1−2−4]その他の成分
接合部20は、上述した成分以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、改質剤、防錆剤、充填剤、フェライト等の電磁波吸収材、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、プライマー、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、老化防止剤、難燃剤、加水分解防止剤、腐食防止剤等が挙げられる。
ただし、接合部20中におけるこれらの成分の含有率は、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。
図1中、図2中、t20で示す熱伝導体1の積層方向についての接合部20の厚さは、0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、1.0μm以上100μm以下であることがより好ましく、5.0μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
熱伝導体1中に占める接合部20の割合は、10体積%以上70体積%以下であることが好ましく、15体積%以上60体積%以下であることがより好ましく、18体積%以上50体積%以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
熱伝導体1中(ただし、空隙部を除く実体部)に占める接合部20の割合は、熱伝導体1の積層方向における断面での面積比で、10%以上70%以下であることが好ましく、15%以上60%以下であることがより好ましく、18%以上50%以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
[2]熱伝導体の製造方法
次に、本発明の熱伝導体の製造方法について説明する。
図6は、鱗片状黒鉛で構成された熱伝導部形成用シートを模式的に示す断面図である。図7は、凹部が設けられた熱伝導部形成用シートに、接合部形成用組成物を付与した状態を模式的に示す断面図である。図8は、接合部形成用組成物付与工程、巻回工程に用いる装置の一例を模式的に示す図である。図9は、切開工程で得られた切開体を模式的に示す図である。図10は、切開体を押圧して、切開体の平坦性をより高くした状態を模式的に示す図である。図11は、スライス工程の様子を模式的に示す図である。
本発明の熱伝導体の製造方法は、複数の熱伝導部10と、各熱伝導部10を接合し柔軟性を有する接合部20とを備える熱伝導体1の製造方法であって、少なくとも一方の面に硬化性樹脂材料21’を含む組成物である接合部形成用組成物20’が付与された、熱伝導部10の形成に用いる熱伝導部形成用シート10’を、巻取ロールR2の周面に巻回し、筒状の巻回体30を得る巻回工程と、巻回体30を、ロールの軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体40を得る切開工程と、切開体40中に含まれる硬化性樹脂材料21’を硬化させる硬化工程とを有する。
本発明では、接合部形成用組成物20’が付与された熱伝導部形成用シート10’を、ロールの周面に巻回することで、例えば、枚葉のシート状原料を用いる場合等に比べて、熱伝導体1を効率よく製造することができる。また、本発明では、巻回体30を切開した後で硬化性樹脂材料21’を硬化させることにより、硬化性樹脂材料21’の硬化物である樹脂材料21を含む接合部20に比べて、より柔らかい状態で切開することができる。このため、巻回により発生するひずみを好適に矯正することができ、巻回体30よりも平坦性の高い切開体40とするのに際し、熱伝導部10に対応する部位である熱伝導部形成用シート10’と、接合部20に対応する部位である接合部形成用組成物20’との間での剥離や密着性の低下等が生じることを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる熱伝導体1を、ひずみが好適に除去されるとともに、熱伝導部10と接合部20との間での剥離や密着性の低下、接合部20の破壊、熱伝導部10同士の接合の破壊等が効果的に防止され、熱伝導部10と接合部20とが強固に密着したものとすることができる。
これにより、実質的な熱伝導性に優れる熱伝導体1を好適に製造することができる。
また、本実施形態の熱伝導体の製造方法は、巻回工程に先立って、熱伝導部形成用シート10’に接合部形成用組成物20’を付与する接合部形成用組成物付与工程を有している。
[2−1]熱伝導部形成用シート
接合部形成用組成物付与工程で用いる熱伝導部形成用シート10’は、熱伝導体1において、熱伝導部10となるべきものである。
熱伝導部形成用シート10’としては、通常、形成すべき熱伝導部10に対応する材料で構成されたシート材を用いる。
熱伝導部形成用シート10’は、実質的に単一成分から構成されることが好ましい。
これにより、形成される熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。また、一般に、熱伝導体1の製造コストを抑制する上でも有利である。
熱伝導部形成用シート10’として黒鉛を含むシート材を用いることにより、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の製造コストを抑制することができる。また、熱伝導体1のしなやかさ、柔軟性をより優れたものとすることができ、例えば、熱伝導体1が折れ曲がった時の復元力、さらには内部の空隙によるクッション性、過熱部と接触したときの適度な変形による接触性の向上等をより優れたものとすることができる。以下、黒鉛を含むシート材を「黒鉛シート材」とも言う。
また、熱伝導部形成用シート10’として金属材料で構成されたシート材を用いることにより、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の製造コストを抑制することができる。また、金属材料内部の結合力の強さから熱伝導体1の発塵性をより低くすることができる。また、熱伝導体1に、比較的大きな荷重を加えた場合であっても、座屈等による熱伝導体1の崩壊等、熱伝導体1の不可逆的な変形がより効果的に防止される。以下、金属材料で構成されたシート材を「金属シート材」とも言う。
[2−1−1]黒鉛シート材
黒鉛シート材としては、黒鉛に加えて、黒鉛以外の成分、例えば、バインダーや樹脂繊維を含むものを用いることもできるが、実質的に黒鉛のみで構成されるもの、すなわち、実質的に単一成分から構成されるものであることが好ましい。
このような黒鉛シート材は、例えば、粉末状の黒鉛をシート状に押し固めることにより製造することができる。
黒鉛は、鱗片状黒鉛であることが好ましい。
これにより、鱗片状黒鉛を熱伝導部10の面内方向に好適に配向させることができ、熱伝導部10の面内方向への熱伝導性を特に優れたものとすることができる。
より具体的には、鱗片状黒鉛をシート状に押し固めた場合、図6に示すように、鱗片状黒鉛FGはシートの面内方向に配向される。すなわち、鱗片状黒鉛FGの厚さ方向がシートの厚さ方向に沿って、好適に配向する。そして、熱伝導体1とされた場合には熱伝導部10の面内方向への熱伝導性を特に優れたものとすることができる。
黒鉛シート材は、例えば、黒鉛を加圧してシート状に成形する加圧工程と、シート状に形成した黒鉛を乾燥する乾燥工程と、シート状に形成した黒鉛を加熱加圧(熱プレス)する加熱加圧工程とを有する方法により製造されることが好ましい。
加圧工程では、黒鉛を加圧してシート状に成形する。加圧工程は、例えば、10℃以上35℃以下で好適に行うことができる。このときのプレス圧力は、例えば、1MPa以上30MPa以下とすることができる。このとき、成形に用いる組成物は、黒鉛に加えて、水分やバインダー等を含んでいてもよい。
乾燥工程では、シート状に成形した黒鉛に乾燥処理を施す。これにより、余分な水分等の揮発成分を除去することができ、取り扱い性が向上する。また、黒鉛シート材の形状の安定性、強度が向上する。
乾燥工程は、減圧、加熱、自然乾燥により行うことができる。加熱により行う場合、加熱温度は、40℃以上100℃以下とすることができる。
加熱加圧工程では、シート状に成形した黒鉛を、シートの厚さ方向に、加熱加圧処理を施す。これにより、鱗片状黒鉛をより好適に配向させることができる。また、黒鉛シート材の形状の安定性、強度が向上する。
加熱加圧工程における加熱温度は、例えば、100℃以上400℃以下とすることができる。これにより、最終的に得られる黒鉛シート材中に、水分やバインダー等が不本意に残存することをより効果的に防止することができる。また、加熱加圧工程におけるプレス圧力は、例えば、10MPa以上40MPa以下とすることができる。
なお、図6に示すように、鱗片状黒鉛FGを押し固めてシート状とした場合、黒鉛シート材の表面付近では、鱗片状黒鉛FGが緻密に押し固められて固くなっている一方で、黒鉛シート材の厚さ方向の中心部付近では鱗片状黒鉛FGは粗く固められ比較的柔らかく、空隙部を有するものとなっている。言い換えると、熱伝導部形成用シート10’としての黒鉛シート材及び当該熱伝導部形成用シート10’により形成される熱伝導部10は、凹部11としての孔部が設けられていない場合には、黒鉛シート材、熱伝導部10の一方の面から他方の面に貫通する空隙部を有していない。また、熱伝導部形成用シート10’としての黒鉛シート材及び当該熱伝導部形成用シート10’により形成される熱伝導部10は、凹部11としての孔部が設けられている場合には、当該孔部のみが一方の面から他方の面に貫通しており、それ以外の部位においては、黒鉛シート材、熱伝導部10の一方の面から他方の面に貫通する空隙部を有していない。
このように、熱伝導部形成用シート10’が内部、特に、厚さ方向の中心部付近に空隙部を有していると、凹部11内だけでなく、熱伝導部形成用シート10’内部の前記空隙部にも硬化性樹脂材料21’を侵入させることができ、製造される熱伝導体1における熱伝導部10と接合部20との密着性、熱伝導体1の耐久性等をさらに優れたものとすることができる。
また、密度についても、黒鉛シート材の表面付近では密度が比較的高く、黒鉛シート材の内部では密度が比較的低いものとなっている。
黒鉛シート材全体としての密度は、0.3g/cm以上1.6g/cm以下であることが好ましく、0.4g/cm以上1.4g/cm以下であることがより好ましく、0.5g/cm以上1.3g/cm以下であることがさらに好ましい。
これにより、黒鉛シート材単独での面方向での熱伝導性や強度を特に優れたものとしつつ、黒鉛シート材の厚さ方向の中心部付近により好適な空隙部を有するものとすることができ、前述したような効果がより顕著に発揮される。
このような条件を満足する黒鉛シート材としては、例えば、グラフォイル(NeoGraf社製)、PERMA FOIL(東洋炭素社製)、カーボンシート(東京窯業社製)、PGSグラファイトシート(パナソニック社製)、グラフィニティ(カネカ社製)等が挙げられる。
[2−1−2]金属シート材
金属シート材としては、金属材料に加えて、金属材料以外の成分、例えば、バインダーや樹脂繊維を含むものを用いることもできるが、実質的に金属材料のみで構成されるもの、すなわち、実質的に単一成分から構成されるものであることが好ましい。
金属シート材としては、例えば、金属材料をシート状に圧延した金属箔を好ましく用いることができる。
金属シート材を構成する金属材料としては、各種の単体金属や合金等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。より具体的には、金属シート材を構成する金属材料としては、例えば、Al、Cu、Ag、Au、Mg及びZnよりなる群から選択される1種又は2種以上を含むもの等が挙げられるが、Alを含むものであることが好ましい。
これにより、形成される熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。
熱伝導部形成用シート10’の厚さは、5μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上200μm以下であることがより好ましく、20μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合を十分に高いものとしつつ、熱伝導体1全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、より確実に、上述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。
熱伝導部形成用シート10’は、その厚さ方向に凹部11が設けられたものであることが好ましい。
これにより、熱伝導体1において熱伝導部10と接合部20との接合をより強固にすることができ、熱伝導体1が適用される部材、例えば、冷却すべき部材等の表面形状への形状適合性や熱伝導体1の耐久性をより良好なものとすることができる。例えば、積層方向に折り曲げられても、熱伝導部10と接合部20とがより強固に接合されているため、熱伝導部10同士が剥がれてしまうことが好適に防止され、積層方向に高い柔軟性を有し、熱伝導体1が適用される部材、例えば、冷却すべき部材等の表面形状への形状適合性が優れたものとなる。
熱伝導部形成用シート10’が凹部11を有するものである場合、当該凹部11は、前述した熱伝導部10が有する凹部11の説明で記載したのと同様の条件を満足するものとすることができる。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
特に、熱伝導部形成用シート10’が有する凹部11が、熱伝導部形成用シート10’の厚さ方向に貫通する孔部であると、前述したのと同様の効果が得られるとともに、以下のような効果も得られる。すなわち、後述する接合部形成用組成物付与工程において、熱伝導部形成用シート10’に接合部形成用組成物20’を付与する際に、熱伝導部形成用シート10’と接合部形成用組成物20’との間に、空気等のガスが巻き込まれ、最終的に得られる熱伝導体1において、熱伝導部10と接合部20との密着性が低下すること等をより確実に防止することができる。このような効果が得られるのは、接合部形成用組成物付与工程において、熱伝導部形成用シート10’に接合部形成用組成物20’を付与する際に、凹部11内への接合部形成用組成物20’の侵入とともに、熱伝導部形成用シート10’の凹部11内にもともと存在していたガスを、凹部11の外部へと効率よく排出することができるためであると考えられる。
熱伝導部形成用シート10’に凹部11を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、周面に凹部11に相当する突起が複数形成されたロール体を、熱伝導部形成用シート10’の表面に所定の力で押し当てつつ回転させることにより、凹部11を効率よく形成することができる。
[2−2]接合部形成用組成物
接合部形成用組成物付与工程で用いる接合部形成用組成物20’は、熱伝導体1において、接合部20となるべきものであり、硬化性樹脂材料21’を含む組成物である。
硬化性樹脂材料21’としては、当該硬化性樹脂材料21’を硬化させて得られる樹脂材料21が柔軟性を有するものであれば特に限定されず、前述した樹脂材料21の前駆体、例えば、未硬化物、半硬化物を用いることができる。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
接合部形成用組成物20’は、硬化性樹脂材料21’に加えて、金属粒子を含むことが好ましい。
これにより、金属粒子を含む接合部20を形成することができ、前述したような接合部20が金属粒子を含むことによる効果が効果的に発揮される。
接合部形成用組成物20’中に含まれる金属粒子は、前述した接合部20を構成する金属材料の説明で記載したのと同様の条件を満足するものとすることができる。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
接合部形成用組成物20’は、上述した成分以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、改質剤、防錆剤、充填剤、フェライト等の電磁波吸収材、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、プライマー、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、老化防止剤、難燃剤、加水分解防止剤、腐食防止剤等が挙げられる。
ただし、接合部形成用組成物20’中におけるこれらの成分の含有率は、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。
また、接合部形成用組成物20’は、溶媒成分を含んでいないことが好ましい。これにより、最終的に得られる熱伝導体1中に、溶媒成分が不本意に残存することを防止することができ、熱伝導体1の信頼性をより優れたものとすることができる。
[2−3]接合部形成用組成物付与工程
接合部形成用組成物付与工程では、熱伝導部形成用シート10’の少なくとも一方の面に、硬化性樹脂材料21’を含む接合部形成用組成物20’を付与する。
接合部形成用組成物20’を熱伝導部形成用シート10’の表面に付与する方法としては、例えば、バーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、キスコーター、ロッドコーター、ディップコーター、スプレーコーターのいずれかを用いて塗布する方法等が挙げられる。
これにより、熱伝導部形成用シート10’の表面に、接合部形成用組成物20’を連続的に適切に付与することができ、製造される熱伝導体1の信頼性、熱伝導体1の生産性を向上させるうえで有利である。
接合部形成用組成物20’は、熱伝導部形成用シート10’の一方の面側のみに付与してもよいし、両面に付与してもよいが、熱伝導部形成用シート10’に凹部11としての孔部が設けられている場合には、図7に示すように、接合部形成用組成物20’は、熱伝導部形成用シート10’の一方の面側から付与することが好ましい。
これにより、孔部の内部に、硬化性樹脂材料21’を好適に侵入させることができる。より具体的には、熱伝導部形成用シート10’の一方の面側から接合部形成用組成物20’を付与することで、孔部に存在する空気を熱伝導部形成用シート10’の他方の面側に押し出すことができ、孔部に、硬化性樹脂材料21’をより好適に侵入させることができる。また、熱伝導部形成用シート10’が孔部に加えて、前述した空隙部を有するものであると、孔部を介して熱伝導部形成用シート10’の内部にも、硬化性樹脂材料21’を好適に侵入させることができる。
このとき、接合部形成用組成物20’は、キスコーターを用いて付与することが好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
なお、図7では、熱伝導部形成用シート10’として、鱗片状黒鉛FGで構成された黒鉛シート材を示しているが、これ以外の熱伝導部形成用シート10’であっても、上記のような効果が得られる。
ただし、熱伝導部形成用シート10’として上記のような黒鉛シート材を用いることにより、さらに、以下のような効果も得られる。すなわち、熱伝導部形成用シート10’が上記のような黒鉛シート材である場合、黒鉛シート材の表面付近では、鱗片状黒鉛FGが緻密に押し固められて固くなっている一方で、黒鉛シート材の厚さ方向の中心部付近では鱗片状黒鉛FGは粗く固められ比較的柔らかく、空隙部を有するものとなっている。このため、硬化性樹脂材料21’は、凹部11を介して、熱伝導部形成用シート10’の内部の前記空隙部にも好適に侵入することができる。これにより、製造される熱伝導体1における熱伝導部10と接合部20との密着性、熱伝導体1の耐久性等をさらに優れたものとすることができる。
本工程は、例えば、図8に示す装置を用いて行うことができる。より具体的には、予め作製された熱伝導部形成用シート10’をロール状に巻き取った原反ロールR1を準備しておく。そして熱伝導部形成用シート10’の一端を原反ロールR1から引き出して、キスコーターM10を用いて、熱伝導部形成用シート10’の一方の面側から、接合部形成用組成物20’を付与する。
キスコーターM10とは、1本又は数本のロールを用いてシートに塗工を行う装置であり、塗工ロールM11とシートが接触している部分においてのみ塗工を行うことが可能である。
キスコーターM10は、図示しないモーターにより矢印方向に回転駆動する塗工ロールM11と、接合部形成用組成物20’を溜めた液受けパンM12と、塗工ロールM11の表面に、先端を接触させることで、ロール表面の接合部形成用組成物20’の膜厚を一定に保つスキージーM13とを含んで構成され、塗工ロールM11の略下半分が液受けパンM12の接合部形成用組成物20’中に浸漬される。また、熱伝導部形成用シート10’は、ガイドロールM14,M14によりガイドされて搬送されることにより、接合部形成用組成物20’の塗布時には塗工ロールM11の上面に接触して搬送される。これにより、塗工ロールM11が回転すると、その回転により液受けパンM12内の接合部形成用組成物20’が塗工ロールM11に同伴して汲み上げられ、スキージーM13により所定の塗布量に調整された後、熱伝導部形成用シート10’の表面に塗布される。液受けパンM12には、図示しない供給タンクからポンプによって接合部形成用組成物20’が供給され、液受けパンM12内の接合部形成用組成物20’の高さが一定に保持されるように制御される。
キスコーターM10を用いることによって、熱伝導部形成用シート10’を、接合部形成用組成物20’に浸漬させることなく、接合部形成用組成物20’を付与することができるため、付与する工程において、連続して一定量の接合部形成用組成物20’を効率よく付与することが可能となる。
本工程は、接合部形成用組成物20’の粘度が、室温(20℃)での粘度より低くなるように、加熱された接合部形成用組成物20’を用いて行うことが好ましい。
これにより、本工程終了後、例えば、巻回工程において、熱伝導部形成用シート10’に付与された接合部形成用組成物20’が冷却され、接合部形成用組成物20’の粘度を、本工程での粘度よりも低いものとすることができる。その結果、接合部形成用組成物付与工程よりも後の工程で、熱伝導部形成用シート10’に付与された接合部形成用組成物20’が不本意に流失することをより効果的に防止することができる。
本工程での接合部形成用組成物20’の加熱温度は、特に限定されないが、接合部形成用組成物20’の粘度が以下の条件を満足するように設定することが好ましい。
熱伝導部形成用シート10’に接合部形成用組成物20’を付与する際の接合部形成用組成物20’の粘度は、500mPa・s以上50000mPa・s以下であることが好ましく、1500mPa・s以上45000mPa・s以下であることがより好ましく、2000mPa・s以上40000mPa・s以下であることがさらに好ましい。
これにより、接合部形成用組成物20’を、熱伝導部形成用シート10’に所定の厚さでより好適に付与することができる。特に、熱伝導部形成用シート10’に凹部11が設けられている場合に、当該凹部11に接合部形成用組成物20’をより好適に侵入させることができる。
なお、接合部形成用組成物20’の粘度は、JIS Z8803:2011に準じた測定により求めることができる。
[2−4]巻回工程
巻回工程では、接合部形成用組成物20’が付与された熱伝導部形成用シート10’を、巻取ロールR2の周面に巻回し、筒状の巻回体30を得る。
このようにして得られる巻回体30は、その中心から外周方向に向かって、熱伝導部形成用シート10’で構成された部分と、接合部形成用組成物20’で構成された部分とが、交互に配置された構造を有する。
なお、図8では、熱伝導部形成用シート10’を、ガイドロールM14,M14によりガイドして搬送する場合を示しているが、熱伝導部形成用シート10’は、ガイドロールM14,M14以外の、図示しないガイドロールによって搬送されてもよいし、また、必要に応じて、ガイドロールによって搬送方向を変えてもよい。
接合部形成用組成物20’が付与された熱伝導部形成用シート10’が巻回される巻取ロールR2の直径は、特に限定されないが、10cm以上100cm以下であることが好ましく、20cm以上60cm以下であることがより好ましい。
これにより、後工程の切開工程で巻回体30を切り開いて切開体40としたときに、巻回体30の内周と外周とでの曲率の差に起因するひずみを抑制しつつ、効率よく巻回体30を得ることができる。
なお、図示の構成では、接合部形成用組成物20’が付与された熱伝導部形成用シート10’を、断面が真円状の巻取ロールR2の周面に巻回しているが、これに限定されず、断面が楕円状や多角形状、トラック形状等のロールの周面に巻回してもよい。
[2−5]切開工程
切開工程では、巻回体30を、巻取ロールR2の軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体40を得る。
硬化性樹脂材料21’を硬化させる硬化工程より前に、巻回体30を切開することにより、硬化性樹脂材料21’の硬化物である樹脂材料21を含む接合部20に比べて、より柔らかい状態で切開することができる。
本工程では、円柱状の巻取ロールR2の軸方向に対して非垂直な方向であって、巻取ロールR2の軸方向の一方の端部から他方の端部にわたって、巻回体30の積層方向に切り込みを入れ、切り込み部分で巻回体30を開きつつ巻取ロールR2から取り外し、切開体40とする。
巻回体30を切り開く方向としては、巻取ロールR2の軸方向に対して非垂直な方向であれば、特に限定されず、例えば、巻取ロールR2の軸方向に対して略平行な方向であってもよいし、ロールの軸方向に対して斜め方向であってもよい。また、巻回体30を切り開く方向が異なる部位を有していてもよい。例えば、巻取ロールR2の軸方向に対して略平行な方向で切り開く部位と、ロールの軸方向に対して斜め方向に切り開く部位とを有していてもよい。
巻回体30の切開方法としては特に限定されるものではないが、例えば、バンドソー、のこぎり、カッター、トリミングカッター、レーザー、超音波カッター、ウォーターカッター等を用いる方法が挙げられる。
[2−6]硬化工程
硬化工程では、切開体40において、接合部形成用組成物20’に含まれる硬化性樹脂材料21’を硬化させる。
図9に示すように、巻回体30を切り開いて切開体40とした時点では、通常、切開体40は湾曲した状態である。巻回体30を切開する前に硬化性樹脂材料21’を硬化させた場合、湾曲した切開体40の平坦性を高めようとすると、切開体40の内周と外周とでの曲率の差に起因するひずみが生じてしまい、熱伝導部10と接合部20との間での剥離や密着性の低下、接合部20の破壊、熱伝導部10同士の接合の破壊等が生じやすい。これに対し、巻回体30を切開して平坦性を高めた切開体40に対して硬化性樹脂材料21’を硬化させる処理を施すことにより、上記のような問題の発生を効果的に防止することができる。
本工程は、例えば、切開体40の内周側及び外周側を、それぞれ、平面に接触させた状態で、硬化性樹脂材料21’を硬化させることにより行うことができる。
より具体的には、例えば、図10に示すように、切開体40を2枚の平板90の間に挟み込み、圧力をかけることで、熱伝導部10及び接合部20の平坦性を高めた状態で、硬化性樹脂材料21’を硬化させて樹脂材料21とすることができる。
このときの圧力としては、特に限定されるものではないが、0MPa超100MPa以下とすることが好ましく、1MPa以上80MPa以下とすることがより好ましく、10MPa以上50MPa以下とすることがさらに好ましい。
圧力が前記下限値未満であると、熱伝導部10及び接合部20の平坦性を十分に高めることが困難になる可能性がある。一方、圧力が前記上限値を超えると、隣り合う熱伝導部形成用シート10’間から、硬化性樹脂材料21’の流失が顕著となり、所望の厚さの接合部20を形成することが困難になる可能性がある。
また、切開体40を押圧しつつ硬化工程を行うことで、熱伝導部10と接合部20との間での剥離や密着性の低下、接合部20の破壊、熱伝導部10同士の接合の破壊等をより効果的に防止することができ、熱伝導体1の耐久性をより優れたものとすることができる。
硬化性樹脂材料21’が熱硬化性樹脂である場合、加熱温度は、硬化性樹脂材料21’の条件等により異なるが、90℃以上220℃以下であることが好ましく、110℃以上190℃以下であることがより好ましい。
これにより、硬化性樹脂材料21’を好適に硬化させることができる。
以上のような各工程を経て、必要に応じて、所定の形状に加工することにより、熱伝導体1が得られる。
[2−7]スライス工程
製造すべき熱伝導体1が、シート状をなすものである場合、前述した硬化工程の後に、両面において、熱伝導部10及び接合部20が表出するシート状にスライスするスライス工程を行う。
これにより、例えば、所望の厚さを有するシート状の熱伝導体1を得ることができる。
硬化工程の後に、例えば、図11中の切断線A−A’及び切断線B−B’に沿ってスライスすることで、厚さTのシート状の熱伝導体1を得ることができる。
ここで、製造すべきシート状の熱伝導体1の厚さTが比較的小さいものであっても、硬化工程を経て、硬化性樹脂材料21’が、形状の安定性がより高い樹脂材料21となっているため、容易に、熱伝導体1をスライスすることができる。
スライス方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、カッター、トリミングカッター、レーザー、超音波カッター、ウォーターカッター等を用いる方法が挙げられる。
スライス方向としては、積層方向に略平行でもよいし、積層方向に対して斜め方向であってもよい。図11では、切開体40を積層方向に略平行にスライスする様子を示している。
熱伝導体1の表面、特に、熱伝導部10及び接合部20が表出している面に対して、研磨処理を施してもよい。これにより、熱伝導体1の表面粗さを好適に調整することができる。
自然状態、すなわち、外力を加えていない状態での、熱伝導体1の表面粗さRaは、0.1μm以上80μm以下であることが好ましく、0.1μm以上30μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
なお、熱伝導体1の表面粗さRaは、例えば、JIS B 0601−2013に準拠した方法により測定することができる。
これにより、熱伝導体1が適用される部材の表面形状により好適に追従することができ、前記部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとすることができる。
[3]熱伝導体の使用形態
次に、熱伝導体1の使用形態について説明する。
図12は、図1に示す熱伝導体の使用形態の一例を模式的に示す図である。図13は、図2に示す熱伝導体の使用形態の一例を模式的に示す図である。図14は、図2に示す熱伝導体の使用形態の一例を模式的に示す図である。
熱伝導体1は、例えば、各種の放熱部材や、高温部材と放熱部材とに接触し、高温部材の熱を放熱部材に伝達し、放熱部材から効率よく放熱させるための伝熱部材、加熱されるべき加熱対象物と当該加熱対象物よりも温度の高い高温部材とに接触し、高温部材から熱エネルギーを加熱対象物に伝達し、加熱対象物を効率よく加熱させるための伝熱部材等として用いられる。
前述したように、熱伝導体1の形状は、特に限定されず、熱伝導体1の用途等に応じて、例えば、図1に示すようなシート状、図2に示すようなブロック状等にすることができる。
以下の説明では、熱伝導体1が、発熱体である高温部材の表面の少なくとも一部に接触して用いられる場合について、中心的に説明する。
高温部材としては、周囲雰囲気よりも高温になるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、コンピューターの中央演算処理装置、画像処理用演算プロセッサ、FPGA、ASIC、スマートフォンのSoC、組み込み機器のDSPやマイコン、あるいはトランジスタ等の半導体素子、発光ダイオードやエレクトロルミネッセンス、液晶等の発光体といった電子部品が挙げられる。
高温部材としては、その表面の最高温度が40℃以上250℃以下のものが好ましく、50℃以上200℃以下のものがより好ましく、60℃以上180℃以下のものがさらに好ましい。
熱伝導体1がこのような高温部材に適用される場合に、より好適に熱伝導、放熱することができる。
図12は、シート状の熱伝導体1を中央演算処理装置に適用した場合を示す。発熱体である高温部材としての中央演算処理装置100と、放熱部材である冷却フィン110との間に、シート状の熱伝導体1が配され、熱的に結合されている。
前述したように、熱伝導体1は、熱伝導性に優れる材料で構成されるとともに、柔軟性にも優れ、高温部材及び放熱部材の表面への形状適合性に優れている。したがって、高温部材及び放熱部材の表面に比較的大きな凹凸がある場合等であっても、熱伝導体1は、これらの部材と好適に密着することができ、界面熱抵抗を低く抑え、高温部材から放熱部材への実質的な熱伝導性を優れたものとすることができる。これにより、高温部材を効率よく冷却することができる。
また、熱伝導体1は、図13に示すように、有底凹部70を有するものであってもよく、この場合、例えば、有底凹部70内に、図示しない高温部材を設置して用いることができる。
有底凹部70の形成タイミングは、特に限定されない。例えば、有底凹部70は、熱伝導体1の製造過程において形成されるものであってもよいし、熱伝導体1の製造後において、ユーザー等により形成されるものであってもよい。
図13に示す構成では、高温部材が設置される有底凹部70は、その深さ方向が、熱伝導体1の積層方向と一致しているが、有底凹部70の方向は、これに限定されない。
図13に示す構成で、適用される高温部材としては、例えば、マイクロモーターや高輝度LEDユニット、センサー発熱部、CCDカメラユニット等が挙げられる。
熱伝導体1の外表面、特に、熱伝導部10と接合部20とが表出している面において、熱伝導体1を、図示しない放熱部材と接触させてもよい。言い換えると、熱伝導体1を、放熱部材としてではなく、高温部材と放熱部材とに接触し、高温部材の熱を放熱部材に伝達し、放熱部材から効率よく放熱させるための伝熱部材として用いてもよい。
これにより、高温部材からの放熱効率をより優れたものとすることができる。
熱伝導体1は、柔軟性に優れているため、有底凹部70の内面が変形して、有底凹部70内に設置された高温部材の表面形状により好適に追従し、密着性を十分に担保することができる。
有底凹部70の大きさは、特に限定されないが、有底凹部70に部材が設置されておらず、外力が付与されていない自然状態での有底凹部70の幅(有底凹部70が円形の場合にはその直径)は、有底凹部70に設置される部材の幅よりも小さいものとすることが好ましい。
これにより、熱伝導体1と有底凹部70に設置される部材との密着性をより優れたものとすることができ、前述した効果がより顕著に発揮される。
なお、有底凹部70は、スリットであってもよく、特に、有底凹部70に部材が設置されておらず、外力が付与されていない自然状態においては、実質的に閉塞したものであってもよい。
また、熱伝導体1は、図14に示すように、貫通する凹部である孔部80を有するものであってもよく、この場合、例えば、孔部80に、高温部材を挿入して用いることができる。図14では、孔部80に、高温部材としての管体130を挿入して用いる構成を示している。
孔部80に、高温部材としての管体130を挿入して用いることにより、例えば、管体130の内部に、高温流体HFが存在する場合、管体130を冷却するだけでなく、管体130及び熱伝導体1を介して、高温流体HFも効率よく冷却することができる。すなわち、図14に示す構成では、冷却される高温部材は、管体130及び高温流体HFであると言うことができ、さらに言い換えると、熱伝導体1と直接接触しない高温流体HFも、熱伝導体1により効率よく冷却することができる。
孔部80の形成タイミングは、特に限定されない。例えば、孔部80は、熱伝導体1の製造過程において形成されるものであってもよいし、熱伝導体1の製造後において、ユーザー等により形成されるものであってもよい。
図14に示す構成では、高温部材が挿入される孔部80は、熱伝導体1の積層方向と一致するように設けられているが、孔部80の方向は、これに限定されない。
熱伝導体1の外表面、特に、熱伝導部10と接合部20とが表出している面において、熱伝導体1を、図示しない放熱部材と接触させてもよい。言い換えると、熱伝導体1を、放熱部材としてではなく、高温部材と放熱部材とに接触し、高温部材の熱を放熱部材に伝達し、放熱部材から効率よく放熱させるための伝熱部材として用いてもよい。
これにより、高温部材からの放熱効率をより優れたものとすることができる。
熱伝導体1は、柔軟性に優れているため、孔部80の内周面が変形して、孔部80に通された管体130の表面形状により好適に追従し、密着性を十分に担保することができる。
孔部80の大きさは、特に限定されないが、孔部80に部材が挿入されておらず、外力が付与されていない自然状態での孔部80の幅(孔部80が円形の場合にはその直径)は、孔部80に挿入される部材の幅(当該部材が円筒形又は円柱形のものの場合にはその外径)よりも小さいものとすることが好ましい。
これにより、熱伝導体1と孔部80に挿入される部材との密着性をより優れたものとすることができ、前述した効果がより顕著に発揮される。
なお、孔部80は、スリットであってもよく、特に、孔部80に部材が挿入されておらず、外力が付与されていない自然状態においては、実質的に閉塞したものであってもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、熱伝導体の製造方法においては、前述した工程に加え、他の工程(前処理工程、中間処理工程、後処理工程等)をさらに有していてもよい。
また、凹部が設けられた熱伝導部を備える熱伝導体を製造する場合、凹部の形成は、熱伝導部形成用シートを原反ロールから引き出した後に行ってもよい。より具体的には、例えば、凹部が形成されていない熱伝導部形成用シートを、原反ロールから引き出した後であって接合部形成用組成物を付与する前のタイミングで、熱伝導部形成用シートに凹部を形成してもよいし、凹部が形成されていない熱伝導部形成用シートに接合部形成用組成物を付与するのと同じタイミングで、熱伝導部形成用シートに凹部を形成してもよい。
また、上述した説明では、熱伝導体を平面矩形状とした場合を例に挙げて説明したが、熱伝導体と接触する部材の形状等に応じて、熱伝導体の形状を適宜設定することができる。
また、上述した説明では、熱伝導体を構成する熱伝導部及び接合部が平面状のものである場合について代表的に説明したが、熱伝導体を構成する熱伝導部、接合部のうちの少なくとも一部は、非平面状をなすもの、例えば、湾曲面状のもの、屈曲面状のもの等であってもよい。
前述した実施形態では、熱伝導体の形状として、表面の平坦性が比較的高いシート状、ブロック状について、代表的に説明したが、熱伝導体は、例えば、表面に段差加工が施されたシート状のものであってもよい。このような熱伝導体は、例えば、複雑な表面形状を有している部材、例えば、CCD、LED、小型センサーモジュール等の冷却に適用されるTIMシートとして好適に用いることができる。
また、熱伝導体は、前述した熱伝導部、接合部以外の構成を有するものであってもよい。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、特に温度条件を示していない処理については、20℃で行った。
各実施例及び各比較例の熱伝導体を以下のようにして製造した。
(実施例1)
まず、熱伝導部形成用シートとして、市販の黒鉛シート材であるグラフォイル(NeoGraf社製)を用意するとともに、接合部形成用組成物として、無溶媒一液型のエラストマー生地であるセルム・エラストマー(アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社)を用意した。
本実施例で用いた黒鉛シート材は、厚さが127μmであり、鱗片状黒鉛が、当該黒鉛シート材の厚さ方向に沿うように配向したものであった。また、黒鉛シート材の表面付近では、鱗片状黒鉛が緻密に押し固められた状態となっており、黒鉛シート材の厚さ方向の中心部付近には、比較的多くの空隙部を有するものとなっていた。また、黒鉛シート材の厚さ方向に貫通する空隙部は存在していなかった。また、黒鉛シート材の密度は、1.1g/cmであった。また、JIS R 2616−2000に準拠した非定常熱線法により測定された20℃における黒鉛シート材の面内方向の熱伝導率は、140W/(m・K)であった。
本実施例で用いた接合部形成用組成物としてのセルム・エラストマーは、環状分子と、直鎖状の分子構造を有し環状分子を串刺し状に包接する第1のポリマーと、第1のポリマーの両端付近に設けられた封鎖基とを有するポリロタキサン、及び、第2のポリマーを含み、環状分子を介して、ポリロタキサンと第2のポリマーとが結合しているものである。
次に、図8に示すような装置を用いて、キスコーターにより、接合部形成用組成物を熱伝導部形成用シートの一方の面側から付与し、その後、接合部形成用組成物が付与された熱伝導部形成用シートを、直径20cmの巻取りロールに、2m/分の速度で巻き取ることにより、巻回体を得た。熱伝導部形成用シートに付与する接合部形成用組成物は、80℃に加温した状態とし、粘度が10000mPa・sとなるように調整した。
次に、カッターを用いて、巻取りロールの軸方向と平行に切り込みを入れて巻回体を切り開くとともに、巻取りロールから取り外すことにより、切開体を得た。得られた切開体は、自然状態では湾曲している状態であったが、切開体の内周面、すなわち、巻取りロールと接触していた面の曲率は、巻取りロールと接触していたときよりも小さく、切開体は、巻回体よりも平坦性の高いものであった。
次に、得られた切開体を2枚の平板の間に挟み、20MPaで押圧した。このとき、巻回体の外周面に相当する部位全体が一方の平板に接触するようにして、巻回体の内周面に相当する部位全体が他方の平板に接触するようにした。
次に、この状態で、切開体を押圧した状態で、170℃で3時間の加熱処理を行い、接合部形成用組成物を構成する硬化性樹脂材料を硬化させて、熱伝導体を得た。このようにして得られた熱伝導体は、加圧状態から解放した後も、平板と接触していた2つの面は、いずれも平坦面で、これらの面は平行になっていた。
次に、熱伝導体を積層方向に沿って1.0mmの厚さに切断した後、4.0cm角の正方形状に切断し、さらに両主面を紙やすりで研磨することにより、図1に示すようなシート状の熱伝導体を得た。
このようにして得られたシート状の熱伝導体は、図1に示すように、複数の熱伝導部と接合部とが交互に配置されたものであり、両主面において、熱伝導部及び接合部が表出したものであった。そして、熱伝導部は、鱗片状をなす黒鉛で構成され、接合部は、柔軟性を有する樹脂材料で構成されたものであった。熱伝導部において、黒鉛はその厚さ方向が、前記熱伝導部の厚さ方向に沿うように配向していた。
熱伝導体において、熱伝導部形成用シートにより得られた熱伝導部の厚さは127μmであり、樹脂材料で構成された接合部の厚さは100μmであった。また、熱伝導体の両主面の表面粗さRaは1.5μmであった。
(実施例2)
接合部形成用組成物を付与する前に、熱伝導部形成用シートに凹部を形成した以外は、前記実施例1と同様にしてシート状の熱伝導体を製造した。
凹部の形成は以下のようにして行った。すなわち、凹部に相当する複数個の突起が千鳥状の配置で形成されたロール体を、熱伝導部形成用シートの表面に押し当てることにより、熱伝導部形成用シートに複数の凹部を形成した。このようにして形成された凹部は、直径200μmの円形状をなすものであり、熱伝導部形成用シートの厚さ方向に貫通する孔部であった。隣り合う凹部の中心間距離は700μmであった。
熱伝導部形成用シートに接合部形成用組成物を付与した際に、当該接合部形成用組成物は、凹部の内部に侵入するとともに、凹部を通じて熱伝導部形成用シートの厚さ方向の中心部付近に設けられた空隙部内にも侵入した。
また、本実施例で得られた熱伝導体では、熱伝導部と接合部との積層方向から観察した際に、複数の熱伝導部で凹部が重なり合わないように存在していた。
(実施例3)
熱伝導部形成用シートとして、日本国製の市販の高熱伝導黒鉛シートを用いるとともに、巻取りロールの巻き取り速度および接合部形成用組成物の付与量を調整することにより、接合部の厚さが10μmとなるようにした以外は、前記実施例2と同様にしてシート状の熱伝導体を製造した。
本実施例で用いた黒鉛シート材は、厚さが25μmであり、薄片状黒鉛が、当該黒鉛シート材の厚さ方向に沿うように配向したものであった。また、黒鉛シート材の表面付近では、薄片状黒鉛が緻密に押し固められた状態となっており、黒鉛シート材の厚さ方向の中心部付近には、比較的多くの空隙部を有するものとなっていた。また、黒鉛シート材の厚さ方向に貫通する空隙部は存在していなかった。また、黒鉛シート材の密度は、2.0g/cmであった。また、JIS R 2616−2000に準拠した非定常熱線法により測定された20℃における黒鉛シート材の面内方向の熱伝導率は、1500W/(m・K)であった。
(実施例4)
熱伝導部形成用シートとして、日本国製の市販の高熱伝導黒鉛シートを用いるとともに、巻取りロールの巻き取り速度および接合部形成用組成物の付与量を調整することにより、接合部の厚さが10μmとなるようにした以外は、前記実施例2と同様にしてシート状の熱伝導体を製造した。
本実施例で用いた黒鉛シート材は、厚さが40μmであり、薄片状黒鉛が、当該黒鉛シート材の厚さ方向に沿うように配向したものであった。また、黒鉛シート材の表面付近では、薄片状黒鉛が緻密に押し固められた状態となっており、黒鉛シート材の厚さ方向の中心部付近には、比較的多くの空隙部を有するものとなっていた。また、黒鉛シート材の厚さ方向に貫通する空隙部は存在していなかった。また、黒鉛シート材の密度は、2.0g/cmであった。また、JIS R 2616−2000に準拠した非定常熱線法により測定された20℃における黒鉛シート材の面内方向の熱伝導率は、1500W/(m・K)であった。
(実施例5)
接合部形成用組成物を付与する前に、熱伝導部形成用シートに形成する凹部を、熱伝導部形成用シートの厚さ方向に貫通する孔部ではなく、有底の凹部とした以外は、前記実施例2と同様にしてシート状の熱伝導体を製造した。凹部の深さは、50μmであった。
(実施例6)
接合部形成用組成物として、前述したセルム・エラストマーと金属粒子である鉄粒子との混合物を用いた以外は、前記実施例2と同様にしてシート状の熱伝導体を製造した。接合部形成用組成物としては、接合部中における金属粒子の含有率が20体積%となるように、セルム・エラストマーと鉄粒子とを混合した混合物を用いた。
金属粒子としては、Fe(CO)を熱分解することにより製造された鉄粒子を用いた。この鉄粒子は、形状係数SF−2が110である真球状をなすものであり、その平均粒子径は3μmであった。
(実施例7)
熱伝導部形成用シートとして、黒鉛シートの代わりに、金属材料からなる金属シート材を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてシート状の熱伝導体を製造した。
前記金属シート材としては、厚さ60μmのアルミニウム箔を用いた。また、JIS R 2616−2000に準拠した非定常熱線法により測定された20℃における熱アルミニウム箔の面内方向の熱伝導率は、204W/(m・K)であった。
(実施例8)
接合部形成用組成物を付与する前に、熱伝導部形成用シートに凹部を形成した以外は、前記実施例7と同様にしてシート状の熱伝導体を製造した。
凹部の形成は以下のようにして行った。すなわち、凹部に相当する複数個の突起が千鳥状の配置で形成されたロール体を、熱伝導部形成用シートの表面に押し当てることにより、熱伝導部形成用シートに複数の凹部を形成した。このようにして形成された凹部は、直径200μmの円形状をなすものであり、熱伝導部形成用シートの厚さ方向に貫通する孔部であった。隣り合う凹部の中心間距離は700μmであった。
熱伝導部形成用シートに接合部形成用組成物を付与した際に、当該接合部形成用組成物は、凹部の内部に侵入した。
また、本実施例で得られた熱伝導体では、熱伝導部と接合部との積層方向から観察した際に、複数の熱伝導部で凹部が重なり合わないように存在していた。
(実施例9)
接合部形成用組成物を付与する前に、熱伝導部形成用シートに形成する凹部を、熱伝導部形成用シートの厚さ方向に貫通する孔部ではなく、有底の凹部とした以外は、前記実施例8と同様にしてシート状の熱伝導体を製造した。凹部の深さは、50μmであった。
(実施例10)
接合部形成用組成物として、前述したセルム・エラストマーと金属粒子である鉄粒子との混合物を用いた以外は、前記実施例8と同様にしてシート状の熱伝導体を製造した。接合部形成用組成物としては、接合部中における金属粒子の含有率が20体積%となるように、セルム・エラストマーと鉄粒子とを混合した混合物を用いた。
金属粒子としては、Fe(CO)を熱分解することにより製造された鉄粒子を用いた。この鉄粒子は、形状係数SF−2が110である真球状をなすものであり、その平均粒子径は3μmであった。
(比較例1)
切開工程の前に硬化工程を行った以外は、前記実施例1と同様にしてシート状の熱伝導体を製造した。
すなわち、巻回体を切開して巻取りロールから取り外す前に、巻回体に対し170℃で3時間の加熱処理を行い、接合部形成用組成物を構成する硬化性樹脂材料を硬化させ、その後、カッターを用いて、硬化性樹脂材料が硬化した巻回体に対し、巻取りロールの軸方向と平行に切り込みを入れて、当該巻回体を切り開くとともに、巻取りロールから取り外して、熱伝導体としての切開体を得た。
次に、得られた切開体を2枚の平板の間に挟み、40MPaで押圧して、切開体の平坦化を試みたところ、熱伝導部形成用シートで構成された部位と接合部形成用組成物の硬化物で構成された部位との間での剥離や、接合部形成用組成物の硬化物で構成された部位の内部破壊が生じ、接合部を介した隣り合う熱伝導部同士の密着状態を維持することができなかった。
このような熱伝導体では、加圧状態から解放すると、平板と接触していた2つの面は、平坦状態を維持することができず、比較的大きな曲率で湾曲してしまった。
(比較例2)
本比較例では、前記実施例1で用いた熱伝導部形成用シートを、そのままシート状の熱伝導体とした。
すなわち、本比較例の熱伝導体は、接合部を有さないものであった。
前記各実施例及び各比較例の熱伝導体の製造条件を表1にまとめて示す。
Figure 2021091211
上記のようにして得られたシート状の熱伝導体を用いて以下の評価を行った。
まず、市販のパーソナルコンピューター(富士通社製、FMVD13002)のマザーボード上の中央演算処理装置上に、グリスを介して固定された冷却フィンを取り外し、中央演算処理装置上のグリスを丁寧に拭き取った。
次に、中央演算処理装置上に、その大きさに切り取った前記実施例1に係るシート状の熱伝導体を設置し、当該熱伝導体に冷却フィンを固定し直した。
その後、20℃に温度管理された室内で、パーソナルコンピューターを起動し、所定の処理を行わせた際の中央演算処理装置の温度を、Speccy(Piriform Ltd社製)により測定した。
前記実施例2〜10及び各比較例に係るシート状の熱伝導体についても同様の測定を行った。
上記測定を行った際の、前記所定の処理を開始してから30分後の中央演算処理装置の温度を、以下の基準に従い評価した。CPUコアの温度が低いほど、熱伝導体の実質的な熱伝導性に優れていると言える。
A:中央演算処理装置の温度が35℃未満である。
B:中央演算処理装置の温度が35℃以上45℃未満である。
C:中央演算処理装置の温度が45℃以上55℃未満である。
D:中央演算処理装置の温度が55℃以上65℃未満である。
E:中央演算処理装置の温度が65℃以上75℃未満である。
F:中央演算処理装置の温度が75℃以上である。
これらの結果を表2に示す。
Figure 2021091211
表2から明らかなように、各実施例に係る熱伝導体、すなわち、本発明に係る熱伝導体は、いずれも、実質的な熱伝導性に優れていた。これに対し、各比較例に係る熱伝導体では満足のいく結果が得られなかった。これは、以下のような理由によると考えられる。
すなわち、各実施例に係る熱伝導体、すなわち、本発明に係る熱伝導体では、熱伝導性が比較的低い成分である樹脂材料を含んでいるものの、熱伝導性に優れた材料で構成された複数の熱伝導部とともに、各熱伝導部を接合する柔軟性に優れ、熱伝導部との密着性に優れた接合部を有しているため、熱伝導体が適用される高温部材等の部材に対する密着性を非常に優れたものとすることができ、熱伝導体全体としての実質的な熱伝導性を優れたものとすることができている。特に、所定の工程を所定の順番で行うことにより得られたものであることにより、熱伝導部と接合部との間での剥離や密着性の低下、接合部の破壊、熱伝導部同士の接合の破壊等が効果的に防止されており、熱伝導部と接合部との密着性、接合部を介した隣り合う熱伝導部の密着性を優れたものとすることができ、確実に、実質的な熱伝導性を優れたものとすることができている。これに対し、比較例1に係る熱伝導体は、本発明に係る熱伝導体と同様に、複数の熱伝導部とともに、各熱伝導部を接合する接合部を有しているものの、本発明とは異なる方法で製造されたものであるため、熱伝導部と接合部との間での剥離や密着性の低下、接合部の破壊、熱伝導部同士の接合の破壊等により、前述したような優れた効果が得られていない。また、比較例2に係る熱伝導体は、非常に熱伝導性が高い材料のみで構成されたものであり、理論的な熱伝導率は高いものであるが、柔軟性に優れた接合部を有していないため、熱伝導体が適用される高温部材等の部材に対する密着性が低く、界面熱抵抗が大きくなり、熱伝導体全体としての実質的な熱伝導性を十分に優れたものとすることができていない。
1 :熱伝導体
10 :熱伝導部
10’ :熱伝導部形成用シート
11 :凹部
20 :接合部
20’ :接合部形成用組成物
21 :樹脂材料
21’ :硬化性樹脂材料
30 :巻回体
40 :切開体
50 :ポリロタキサン
51 :環状分子
52 :第1のポリマー
53 :封鎖基
60 :第2のポリマー
70 :有底凹部
80 :孔部
90 :平板
100 :中央演算処理装置
110 :冷却フィン
130 :管体
FG :鱗片状黒鉛
HF :高温流体
M10 :キスコーター
M11 :塗工ロール
M12 :液受けパン
M13 :スキージー
M14 :ガイドロール
R1 :原反ロール
R2 :巻取ロール
10 :厚さ
20 :厚さ
:厚さ
:厚さ

Claims (12)

  1. 複数の熱伝導部と、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体の製造方法であって、
    少なくとも一方の面に硬化性樹脂材料を含む組成物が付与された、前記熱伝導部の形成に用いる熱伝導部形成用シートを、ロールの周面に巻回し、筒状の巻回体を得る巻回工程と、
    前記巻回体を、前記ロールの軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体を得る切開工程と、
    前記切開体中に含まれる前記硬化性樹脂材料を硬化させる硬化工程とを有し、
    前記接合部は、柔軟性を有するものであることを特徴とする熱伝導体の製造方法。
  2. 前記熱伝導部形成用シートは、黒鉛を含むシート材である請求項1に記載の熱伝導体の製造方法。
  3. 前記熱伝導部形成用シートは、金属材料で構成されたシート材である請求項1に記載の熱伝導体の製造方法。
  4. 前記金属材料は、Alを含むものである請求項3に記載の熱伝導体の製造方法。
  5. 前記熱伝導部形成用シートは、その厚さ方向に凹部が設けられたものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱伝導体の製造方法。
  6. 前記凹部は、前記熱伝導部形成用シートの厚さ方向に貫通する孔部である、請求項5に記載の熱伝導体の製造方法。
  7. 前記凹部の直径は、30μm以上500μm以下である請求項5又は6に記載の熱伝導体の製造方法。
  8. 前記熱伝導部形成用シートに前記組成物を付与する際の当該組成物の粘度が500mPa・s以上50000mPa・s以下である請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱伝導体の製造方法。
  9. 前記組成物は、前記硬化性樹脂材料に加えて、金属粒子を含むものである請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱伝導体の製造方法。
  10. 前記硬化工程の後に、両面において、前記熱伝導部及び前記接合部が表出するシート状にスライスするスライス工程をさらに有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱伝導体の製造方法。
  11. 前記熱伝導部形成用シートの厚さは、5μm以上500μm以下である請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱伝導体の製造方法。
  12. 前記硬化性樹脂材料は、環状分子と、直鎖状の分子構造を有し前記環状分子を串刺し状に包接する第1のポリマーと、前記第1のポリマーの両端付近に設けられた封鎖基とを有するポリロタキサン、及び、第2のポリマーを含み、前記環状分子を介して、前記ポリロタキサンと前記第2のポリマーとが結合しているものである請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱伝導体の製造方法。

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