JP2021109933A - 樹脂フィルム、テープ、中空糸膜、絶縁電線及びフィルターエレメント - Google Patents

樹脂フィルム、テープ、中空糸膜、絶縁電線及びフィルターエレメント Download PDF

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Abstract

【課題】本開示は、張力に対する寸法安定性に優れる樹脂フィルムを提供する。【解決手段】本開示に係る樹脂フィルムは、ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする長手方向及び短手方向への二軸延伸材であり、厚さT[μm]と気孔比率Pとの関係が下記式(1)で表される。0.5μm≦T×(1−P)≦4.5μm ・・・(1)【選択図】なし

Description

本開示は、樹脂フィルム、テープ、中空糸膜、絶縁電線及びフィルターエレメントに関する。
ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEともいう。)は、耐薬品性、耐熱性等の優れた特徴により、エンジニアリングプラスチック、電子部品、医療用材料等に用いられている。特に、PTFEを素材とする多孔質フィルムは、その均一で微細な多孔質構造であることを利用したガス分離膜、液体分離膜等の中空子膜やフィルター等に広く使用されている。
例えば上記中空糸膜としては、ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔質延伸チューブを支持層とし、この支持層の外表面に濾過層を備えるものが提案されている(特許文献1参照)。上記特許文献1の中空糸膜は、ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔質延伸チューブ(支持層)の外表面に帯状の多孔質樹脂フィルム(濾過層)を螺旋状に巻回することで形成される。
特開2004−141753号公報
本開示の一態様に係る樹脂フィルムは、ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする長手方向及び短手方向への二軸延伸材であり、厚さT[μm]と気孔比率Pとの関係が下記式(1)で表される。
0.5μm≦T×(1−P)≦4.5μm ・・・(1)
図1は、本開示の一実施形態に係る樹脂フィルムを示す模式的斜視図である。 図2は、図1の樹脂フィルムにおける引張試験の試験片を示す模式的平面図である。 図3は、図2の試験片の引張試験後の状態を示す模式的平面図である。 図4は、図1の樹脂フィルムの製造方法を示すフロー図である。 図5は、図4の製造方法の延伸する工程の詳細を示すフロー図である。 図6は、図4の製造方法の延伸する工程後における樹脂フィルムの状態を示す模式的平面図である。 図7は、本開示の一実施形態に係る中空糸膜を示す模式的斜視図である。
[本開示が解決しようとする課題]
上記中空糸膜においては、上記支持層に濾過層に用いる帯状のラッピング膜を長手方向に張力をかけながら巻き付けていくことにより、濾過層が形成される。しかしながら、ラッピング膜の長手方向に張力をかけると短手方向(幅方向)に収縮し、支持層上でラッピング膜間に隙間が生じる結果、濾過性能が低下するおそれがある。このような、ラッピング膜に張力をかけることによる横軸方向の収縮は、対象物に張力をかけながら樹脂テープを巻き付けていくその他の製品の製造工程においても生じやすい。
本開示は、このような事情に基づいてなされたものであり、張力に対する寸法安定性に優れる樹脂フィルムを提供することを目的とする。
[本開示の効果]
本開示の一態様に係る樹脂フィルムは張力に対する寸法安定性に優れる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係る樹脂フィルムは、ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする長手方向及び短手方向への二軸延伸材であり、厚さT[μm]と気孔比率Pとの関係が下記式(1)で表される。
0.5μm≦T×(1−P)≦4.5μm ・・・(1)
当該樹脂フィルムは、ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする長手方向及び短手方向への二軸延伸材であり、厚さTと気孔比率Pとの関係を上記式(1)で表される所定の範囲とすることで、張力をかけた時の収縮幅を一定の範囲内に制御できる。従って、当該樹脂フィルムは、張力に対する寸法安定性に優れ、良好なラッピング性能を有する。なお、「主成分」とは、質量換算で最も含有量の大きい成分をいい、例えば含有量が50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上の成分をいう。
当該樹脂フィルムは、上記長手方向150mm、上記短手方向10mm、厚さ方向26μmの直方体形状の試験片を用いた上記長手方向への2.6N/mmの引張試験における上記短手方向の平均最大収縮長さD[mm]と、上記気孔比率Pとの関係が下記式(2)で表されることが好ましい。
D×(1−P)≦0.8mm ・・・(2)
当該樹脂フィルムは、上記試験片を用いた上記長手方向への2.6N/mmの引張試験における平均最大収縮長さDと、上記気孔比率Pとの関係が上記式(2)で表される所定の範囲であることで、張力に対する寸法安定性がより優れる。
また、本開示の他の一態様に係るテープは、当該樹脂フィルムから構成され、幅が6mm以上20mm以下の帯状の形状を有する。当該テープは、当該樹脂フィルムから構成され、幅が上記範囲であることで、張力に対する寸法安定性に優れる。これにより、当該テープは、ラッピング性能に優れ、過不足なく対象物に巻き付けることができる。
また、本開示の他の一態様に係る中空糸膜は、多孔性を有する筒状の支持層と、当該テープから構成され、上記支持層に螺旋状に巻き付けられている濾過層とを備える。これにより、当該中空糸膜においては、支持層に過不足なく巻き付けられた当該テープにより上記濾過層が構成される。従って、当該中空糸膜の濾過性能を向上できるとともに、コストダウンを図ることができる。
また、本開示の他の一態様に係る絶縁電線は、複数の素線を撚り合わせた導体と、当該テープから構成され、上記導体の外周に螺旋状に巻き付けられている絶縁層とを備える。これにより、当該絶縁電線においては、導体に過不足なく巻き付けられた当該テープにより上記絶縁層が構成される。従って、当該絶縁電線の絶縁性能を向上できるとともに、コストダウンを図ることができる。
また、本開示の他の一態様は、当該樹脂フィルムを用いたフィルターエレメントである。近年、表面積が大きく濾過効率が良好なプリーツ加工フィルターが用いられている。上記プリーツ加工フィルターは、濾過モジュールのシール時に張力がかかることで、収縮しやすくなる。当該フィルターエレメントは、当該樹脂フィルムを用いているので、プリーツ加工された場合においても、シール時の加熱による収縮を抑制できる。また、一般に、上記プリーツ加工フィルターを備える濾過モジュールの製造工程においては、上記プリーツ加工フィルターに不織布を重ね合わせる工程を備えているが、当該フィルターエレメントが当該樹脂フィルムを用いることで、上記不織布を重ね合わせる工程における張力による収縮の緩和を図ることができる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
<樹脂フィルム>
図1は、本開示の一実施形態に係る樹脂フィルムを示す模式的斜視図である。当該樹脂フィルム20は、ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする長手方向及び短手方向への二軸延伸材である。ここで、二軸延伸とは、樹脂フィルムを長手方向(搬送(MD)方向)及び短手方向(長手方向に対して垂直な圧延ロールの軸方向)に延伸することをいう。また、二軸延伸材とは、二軸延伸が実施された材料をいう。
当該樹脂フィルム20は、厚さT[μm]と気孔比率Pとの関係が下記式(1)で表される。
0.5μm≦T×(1−P)≦4.5μm ・・・(1)
当該樹脂フィルム20は、ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする長手方向及び短手方向への二軸延伸材であり、厚さTと気孔比率Pとの関係を上記式(1)で表される所定の範囲とすることで、張力をかけた時の収縮幅を一定の範囲内に制御できる。従って、当該樹脂フィルム20は、張力に対する寸法安定性に優れ、良好なラッピング性能を有する。
当該樹脂フィルム20は、上記長手方向150mm、上記短手方向10mm、厚さ方向26μmの直方体形状の試験片を用いた上記長手方向への2.6N/mmの引張試験における上記短手方向の平均最大収縮長さD[mm]と、上記気孔比率Pとの関係が下記式(2)で表されることが好ましい。
D×(1−P)≦0.8mm ・・・(2)
当該樹脂フィルム20は、上記試験片を用いた上記長手方向への2.6N/mmの引張試験における平均最大収縮長さDと、上記気孔比率Pとの関係が上記式(2)で表される所定の範囲であることで、張力に対する寸法安定性がより優れる。
図2は、図1の樹脂フィルム20における引張試験の試験片5を示す模式的平面図である。また、図3は、図2の試験片5の引張試験後の状態を示す模式的平面図である。上記樹脂フィルム20の引張試験方法は、図1及び図2に示すように、樹脂フィルム20から上記長手方向の長さLが150mm、上記短手方向の長さ(幅)Wが10mm、厚さ方向26μmの直方体形状の試験片5を打ち抜いて用いる。引張試験は、9つの試験片5により実施し、試験片5の長手方向への力Fが、2.6N/mmの引張試験の上記短手方向における最大収縮長さD[mm]を求める。最大収縮長さDは、図3に示すように試験片5の両端部それぞれの最大収縮長さX1と最大収縮長さX2との和から求めることができる。そして、9つの試験片5の最大収縮長さD[mm]の平均値を求める。
当該樹脂フィルム20の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましい。一方、当該樹脂フィルム20の平均厚さの上限としては、特に限定されないが、例えば100μmが好ましい。上記平均厚さが上記範囲であることで、ネッキングに対する抑制効果を良好にできる。
当該樹脂フィルムは、PTFEの他、支持層1と同様に本開示の所望の効果を害しない範囲で他のフッ素樹脂や添加剤を含有していてもよい。
[樹脂フィルムの製造方法]
次に、図4及び図5を参照して、当該樹脂フィルムの製造方法の一例について説明する。当該樹脂フィルムの製造方法は、例えばPTFEを主成分とする濾過層形成用組成物をフィルム状に押出す工程(S11)と、上記押出す工程で押し出された成形体を延伸する工程(S12)と、熱固定する工程(S13)とを備える。
(押出す工程)
上記押出す工程(S11)では、始めにPTFEファインパウダーにナフサ等の液状潤滑剤をブレンドしたフィルム形成用組成物を圧縮成形して1次成形体に予備成形する。予備成形は、フィルム形成用組成物を例えば10kPaから500kPa程度の圧力で圧縮成形して、ブロック、ロッド、チューブ、シート状等の1次成形体にする。予備成形で得られる成形体をペースト押出機により押出し、またはカレンダーロールなどにより圧延し、あるいは押出した後、圧延するなどして延伸処理し得る形状であるフィルム状の成形体を製造する。
次に押出機にて1次成形体をフィルム状に押し出す。上記押出す工程では、通常、PTFE樹脂100質量部に対して液状潤滑剤を10質量部から40質量部、好ましくは16質量部から25質量部の割合で混合し、押出成形を行う。
上記液状潤滑剤としては、公知の各種潤滑剤を使用することができる。例えば、ソルベント・ナフサ、ホワイトオイルなどの石油系溶剤、ウンデカン等の炭化水素油、トルオール、キシロールなどの芳香族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、シリコーンオイル、フルオロクロロカーボンオイル、これらの溶剤にポリイソブチレン、ポリイソプレンなどのポリマーを溶かした溶液、あるいは、これらの混合物及び界面活性剤を含む水又は水溶液などが挙げられる。なお、液状潤滑剤の他に目的に応じて、他の物質を添加してもよい。
上記押出す工程は、通常は室温付近で行われる。押出成形を行った後に成形体から液状潤滑剤を除去する。液状潤滑剤は後述する熱固定する工程前に除去すればよく、延伸する工程後に除去してもよいが、延伸する工程前に除去しておくことがより好ましい。液状潤滑剤の除去は、加熱、抽出または溶解などにより行っており、加熱により行うことが好ましい。
(延伸する工程)
上記延伸する工程(S12)では、上記押出す工程で得られた成形体を長手方向(搬送(MD)方向)及び短手方向(長手方向に対して垂直な圧延ロールの軸方向)に高倍率で延伸してフィルム状の延伸体にする。延伸は、通常の方法により、シートを機械的に引き伸ばして行うことができる。上記延伸する工程(S12)では、二軸延伸がおこなわれる。上記延伸する工程(S12)は、図5に示すように、縦軸延伸する工程(S121)及び横軸延伸する工程(S122)を有する。具体的には、上記延伸する工程(S12)では、上記押出す工程(S11)で押し出された成形体を、長手方向(搬送(MD)方向)に縦軸延伸した後に短手方向に横軸延伸する。
〈縦軸延伸する工程〉
上記縦軸延伸する工程(S121)では、加熱雰囲気下で縦軸延伸することが好ましい。上記縦軸延伸する工程では、例えば延伸ロールの速度差により、100℃から300℃の加熱雰囲気下で縦軸延伸が行われる。上記縦軸伸する工程では、上記長手方向の最大延伸倍率を10倍以上40倍以下とすることが好ましい。長手方向の最大延伸倍率を上記範囲とすることで、当該樹脂フィルムの張力に対する寸法安定性をより向上できる。
〈横軸延伸する工程〉
次に、上記縦軸延伸する工程により得られた延伸体を短手方向に横軸延伸する。例えば上記横軸延伸する工程(S122)では、上記延伸体をその短手方向の両端部をクリップで把持しつつ、熱風による加熱雰囲気下で横軸延伸することが好ましい。具体的には、横軸延伸する工程は炉の内部で70℃から200℃の高温雰囲気下で行う。具体的には、図6に示すように、横軸延伸により、縦軸延伸後の延伸体の短手方向の長さ(幅)Hから横軸延伸後の延伸体の短手方向の最大長さ(最大幅)Hまで延伸される。
上記横軸延伸する工程では、上記短手方向の最大延伸倍率を20倍以上60倍以下とすることが好ましい。短手方向の最大延伸倍率を上記範囲とすることで、当該樹脂フィルムの張力に対する寸法安定性をより向上できる。なお、上記範囲の延伸倍率を達成するために、縦方向と横方向の延伸はそれぞれ1段の延伸により行ってもよいし、2段以上の延伸により行ってもよい。
(熱固定する工程)
上記熱固定する工程(S13)は、延伸後の樹脂フィルムの収縮を抑制するために行う。熱固定する工程は、横軸延伸する工程直後に行なうことが好ましく、2段以上の延伸を行う場合には各段の延伸後に行うことが好ましい。上記熱固定は、通常、延伸フィルムの両端を固定するなど緊張下に保って、雰囲気温度300℃から400℃で1分間から4分間保持することにより行う。
また、この熱固定する工程では、加熱と同時に延伸体を一定程度短手方向に収縮させる。具体的には上記熱固定する工程では、上記短手方向の延伸倍率を徐々に減少させながら熱固定する。具体的には、本工程により延伸体の短手方向の長さ(幅)は、図6に示すように横軸延伸後の延伸体の短手方向の最大長さ(最大幅)Hから延伸体の短手方向の最終長さ(最終幅)Hまで延伸倍率を減少する。すなわち、H>Hとなる。
上記熱固定する工程における短手方向の延伸倍率の緩和率としては、10%以上20%以下であることが好ましい。上記延伸倍率の緩和率を上記範囲とすることで、当該樹脂フィルムの張力に対する寸法安定性をより向上できる。ここで、延伸倍率緩和率K[%]は、下記式(3)により求められる。
延伸倍率緩和率K[%]=(H−H)×100/H ・・・(3)
当該樹脂フィルムの製造方法は、上記熱固定する工程する工程で、延伸後の延伸体を上記加熱雰囲気下で一定程度収縮させることで、張力を受けた場合の収縮を抑制できる。このように、当該樹脂フィルムの製造方法は、張力に対する寸法安定性に優れる樹脂フィルムを製造することができる。
当該樹脂フィルム20によれば、ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする長手方向及び短手方向への二軸延伸材であり、厚さTと気孔比率Pとの関係を上記式(1)で表される所定の範囲とすることで、張力をかけた時の収縮幅を一定の範囲内に制御できる。従って、当該樹脂フィルムは、張力に対する寸法安定性に優れ、良好なラッピング性能を有する。
<テープ>
当該テープは、当該樹脂フィルムから構成され、幅が6mm以上20mm以下の帯状の形状を有する。後述する図7に示す当該テープ12は、当該樹脂フィルムから構成され、幅が上記範囲であることで、張力に対する寸法安定性に優れる。これにより、当該テープ12は、ラッピング性能に優れ、過不足なく対象物に巻き付けることができる。
当該テープの製造方法は、例えば上述の当該樹脂フィルムを長尺状(短冊状)に切断する工程を備える。
当該テープ12は、張力に対する寸法安定性に優れるので、特に、固液分離用の中空糸膜、絶縁電線のラッピング用途として好適に使用できる。
<中空糸膜>
当該中空糸膜は、多孔性を有する筒状の支持層と、上述の当該テープ12から構成され、上記支持層に螺旋状に巻き付けられている濾過層とを備える。これにより、当該中空糸膜においては、支持層に過不足なく巻き付けられた当該テープにより上記濾過層が構成される。従って、当該中空糸膜の濾過性能を向上できるとともに、コストダウンを図ることができる。
図7に示す中空糸膜10は、筒状の支持層1と、支持層1に積層されるフィルム状の濾過層2とを備える。支持層1及び濾過層2はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を主成分とする。
当該中空糸膜10の平均厚さの下限としては、0.4mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、当該中空糸膜10の平均厚さの上限としては、1.3mmが好ましく、1.0mmがより好ましい。さらに、当該中空糸膜10の強度及び濾過効率を両立させる観点からは、上記平均厚さとしては、0.4mm以上1.3mm以下が好ましく、0.5mm以上1.0mm以下がより好ましい。上記平均厚さが上記下限に満たないと、当該中空糸膜10の強度が不十分となるおそれがある。逆に、上記平均厚さが上記上限を超えると、当該中空糸膜10が不必要に厚くなり、濾過液を透過させる際の圧力損失が大きくなるおそれがある。
[支持層]
支持層1は、PTFEを含む支持層形成用組成物を押出成形して得られるチューブ体である。
支持層1の平均厚さの下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、支持層1の平均厚さの上限としては、1.2mmが好ましく、1.0mmがより好ましい。さらに、支持層1の機械的強度及び当該中空糸膜10の濾過効率を両立させる観点からは、上記平均厚さとしては、0.3mm以上1.2mm以下が好ましく、0.5mm以上1.0mm以下がより好ましい。上記平均厚さが上記下限に満たないと、支持層1の機械的強度が不十分となるおそれがある。逆に、上記平均厚さが上記上限を超えると、当該中空糸膜10が不必要に厚くなり、濾過液を透過させる際の圧力損失が大きくなるおそれがある。
支持層1は、PTFEの他、本開示の所望の効果を害しない範囲で他のフッ素樹脂や添加剤を含有していてもよい。上記添加剤としては、例えば着色のための顔料や、耐摩耗性改良、低温流れ防止、空孔生成容易化のための無機充填剤、金属粉、金属酸化物粉、金属硫化物粉等が挙げられる。
[濾過層]
濾過層2は、不純物の透過を防止しつつ、濾過液を厚さ方向に透過させる。濾過層2は支持層1の外周面を被覆する。濾過層2は筒状である。図7に示す濾過層2は、PTFEを主成分とする多孔質の当該テープ12をその両端部が重なり合うように、支持層1の外周面に巻き付けて形成される。濾過層2は、支持層1の外周面に当該テープ12を1重に巻き付けて形成したものであってもよく、多重に巻き付けて形成したものであってもよい。濾過層2が当該テープ12の1重巻きによって形成される場合、濾過層2は単層構造体となる。一方、濾過層2が当該テープ12の多重巻きによって形成される場合、濾過層2は多層体となる。
中空糸膜10の濾過層2に用いられるテープ12の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましい。一方、濾過層2に用いられるテープ12の平均厚さの上限としては、30μmが好ましい。上記平均厚さが上記下限に満たないと、濾過層2の機械的強度が不十分となるおそれがある。逆に、上記平均厚さが上記上限を超えると、当該中空糸膜10が不必要に厚くなるおそれがある。
[中空糸膜の製造方法]
当該中空糸膜の製造方法は、特に限定されないが、例えばポリテトラフルオロエチレン粉末を圧縮成形により円筒状の1次成形体に成形する工程と、上記1次成形体を押出成形により円筒状の支持層を形成する工程と、当該テープを支持層の外周面に螺旋状に巻き付けながら積層する工程とを備える。
(1次成形体に成形する工程)
本工程では、例えばPTFEファインパウダーにナフサ等の液状潤滑剤をブレンドした支持層形成用組成物を圧縮成形して1次成形体に成形する。
(支持層を形成する工程)
本工程では、押出成形機によって1次成形体を押出成形してチューブ状に成形する。この押出成形は、PTFEの融点より低い温度で行われ、一般的には常温で行われる。
次に、チューブ状体を加熱しつつ長手方向に延伸することによって、所望の径まで縮径するよう延伸することで、円筒状の支持層1を形成する。
(積層する工程)
上記積層する工程では、当該テープ12を支持層1の外周面に巻き付ける。さらに、上記積層する工程では、上記テープ12を支持層1の外周面に巻き付けた積層体を焼成する。この焼成によって、上記テープ12が支持層1に固着され、中空糸膜10が得られる。
<絶縁電線>
当該絶縁電線は、複数の素線を撚り合わせた導体と、上述の当該テープから構成され、上記導体の外周に螺旋状に巻き付けられている絶縁層とを備える。これにより、当該絶縁電線においては、導体に過不足なく巻き付けられた当該テープにより上記絶縁層が構成される。従って、当該絶縁電線の絶縁性能を向上できるとともに、コストダウンを図ることができる。さらに、当該テープは柔軟性のある多孔質膜であることから、絶縁層の形成が難しい極細電線においても好適である。
上記導体は、複数の素線を一定のピッチで撚り合せて構成される。この素線としては、特に限定されないが、例えば銅線、銅合金線、アルミニウム線、アルミニウム合金線等が挙げられる。また、導体は、複数の素線を撚り合せた撚素線を用い、複数の撚素線をさらに撚り合せた撚撚線であるとよい。撚り合せる撚素線は同じ本数の素線を撚ったものが好ましい。
導体の横断面における平均面積(素線間の空隙も含む)の下限としては、1.0mmが好ましく、1.5mmがより好ましく、1.8mmがさらに好ましく、2.0mmがさらに好ましい。一方、導体の横断面における平均面積の上限としては、3.0mmが好ましく、2.8mmがより好ましい。
絶縁層に用いられる当該テープは、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、反射付与剤、隠蔽剤、加工安定剤、可塑剤等の添加剤を含有していてもよい。
絶縁層に用いられる当該テープの平均厚さの下限としては、50μmが好ましく、60μmがより好ましい。一方、絶縁層に用いられる当該テープの平均厚さの上限としては、70μmが好ましい。上記平均厚さが上記下限に満たないと、絶縁層の機械的強度が不十分となるおそれがある。逆に、上記平均厚さが上記上限を超えると、当該絶縁電線が不必要に厚くなるおそれがある。
<フィルターエレメント>
当該フィルターエレメントは、上述の当該樹脂フィルムを用いている。プリーツ加工フィルターは、濾過モジュールへのシール時に張力がかかることで、収縮しやすくなる。当該フィルターエレメントは、当該樹脂フィルムを用いているので、プリーツ加工された場合においても、シール時の収縮を抑制できる。従って、当該フィルターエレメントの濾過性能を向上できる。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例]
[No.1]
PTFEファインパウダー(旭硝子製の「CD−123」)にナフサをブレンドしたフィルム形成用組成物を押出機にてフィルム状に押し出し、フィルム状の押出体を形成した。この押出体を200℃のロールの速度差により長手方向に延伸倍率400%で縦軸延伸した後、短手方向の両端部をクリップで把持しつつ、熱風による400℃の加熱雰囲気下で短手方向に延伸倍率1500%で横軸延伸した。続いて、熱固定を行った。熱固定の条件としては、400℃以下で3分間保持した。短手方向の延伸倍率の緩和率は20%とし、No1の樹脂フィルムを製造した。No.1の樹脂フィルムの厚さは26μmであり、気孔比率は0.83であった。
[No.2〜No.4]
延伸倍率緩和率K、厚さT及び気孔比率Pを表1に記載のように変更した以外はNo.1の樹脂フィルムと同様に、No.2〜No.4の樹脂フィルムを製造した。
<平均最大収縮長さ>
No.1〜No.4の樹脂フィルムについて、上述の方法にて平均最大収縮長さを測定した。
表1に、平均最大収縮長さ、厚さと気孔比率との関係並びに平均最大収縮長さと気孔比率との関係を示す。
Figure 2021109933
表1に示すように、厚さT[μm]と気孔比率Pとの関係が0.5μm≦T×(1−P)≦4.5μmであるNo.1からNo.3の樹脂フィルムの平均最大収縮長さは、上記関係を満たさないNo.4と比べて抑制されていた。
以上のように、当該樹脂フィルムは、張力に対する寸法安定性に優れることがわかる。
1 支持層
2 濾過層
5 試験片
10 中空糸膜
12 テープ
20 樹脂フィルム
MD 長手方向(搬送方向)
L 試験片の長手方向の長さ
W 試験片の短手方向の長さ(幅)
F 引張試験の荷重
X1、X2 試験片の端部の最大収縮長さ
縦軸延伸後の延伸体の短手方向の長さ
横軸延伸後の延伸体の短手方向の最大長さ
延伸体の短手方向の最終長さ

Claims (6)

  1. ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする長手方向及び短手方向への二軸延伸材であり、
    厚さT[μm]と気孔比率Pとの関係が下記式(1)で表される樹脂フィルム。
    0.5μm≦T×(1−P)≦4.5μm ・・・(1)
  2. 上記長手方向150mm、上記短手方向10mm、厚さ方向26μmの直方体形状の試験片を用いた上記長手方向への2.6N/mmの引張試験における上記短手方向の平均最大収縮長さD[mm]と、上記気孔比率Pとの関係が下記式(2)で表される請求項1に記載の樹脂フィルム。
    D×(1−P)≦0.8mm ・・・(2)
  3. 請求項1又は請求項2の樹脂フィルムから構成され、
    幅が6mm以上20mm以下の帯状の形状を有するテープ。
  4. 多孔性を有する筒状の支持層と、
    請求項3のテープから構成され、上記支持層に螺旋状に巻き付けられている濾過層と
    を備える中空糸膜。
  5. 複数の素線を撚り合わせた導体と、
    請求項3のテープから構成され、上記導体の外周に螺旋状に巻き付けられている絶縁層と
    を備える絶縁電線。
  6. 請求項1又は請求項2の樹脂フィルムを用いたフィルターエレメント。
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