JP2015029927A - 中空糸膜及びその製造方法、並びに、中空糸膜モジュール - Google Patents

中空糸膜及びその製造方法、並びに、中空糸膜モジュール Download PDF

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規孝 柴田
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Abstract

【課題】簡便に安定してクリンプが付与され、滞留部の発生を抑制しつつ被処理液の流れを乱流状態としやすく、良好な処理効率が得られる中空糸膜、及び該中空糸膜を用いた中空糸膜モジュールを提供する。
【解決手段】軸方向に垂直な断面形状が外周の中心に対して非対称になっていることを特徴とする中空糸膜10。また、加熱処理によってクリンプが付与された中空糸膜10。また、ハウジングケースと、該ハウジングケース内で膜の内部側と外部側が隔離されるように固定された、クリンプが付与された中空糸膜10を含む中空糸膜束とを有し、該中空糸膜束の全膜面積に対する前記クリンプが付与された中空糸膜10の膜面積の割合が30%以上である、中空糸膜モジュール。
【選択図】図1

Description

本発明は、中空糸膜及びその製造方法、並びに、該中空糸膜を用いた中空糸膜モジュールに関する。
例えば、浄水器や濾過モジュール等に用いられる濾過膜、脱気モジュールに用いられる脱気膜等としては、ユニット体積あたりの膜面積が大きく、小型ユニットでも被処理液の処理効率が高いことから、中空糸膜が広く使用されている。
中空糸膜モジュールとしては、例えば、ハウジングケースと、該ハウジングケース内で膜の内部側と外部側が隔離されるように固定された中空糸膜束とを有し、中空糸膜の外部側に被処理液を流し、中空糸膜の内部側を減圧して該被処理液中の溶存気体を脱気するものが知られている。
このような中空糸膜モジュールでは、ハウジングケース内に充填する中空糸膜の本数を増やすことでより高性能化し、モジュールをより小型化することが試みられている。しかしながら、ハウジングケース内の中空糸膜の充填率を高めると、中空糸膜同士が密着することより、有効膜面積の低下や、偏流の発生によるモジュール内での被処理液の拡散性能の低下が引き起こされる。
被処理液の拡散性能を高める方法としては、被処理液の流速を高めて乱流状態とする方法がある。しかし、該方法ではモジュール内に滞留部が生じて脱気効率が低下しやすい。また、中空糸膜を1本ずつ又は数本ずつスダレ状に編んだ中空糸膜シートを用いることで、滞留部の発生を抑制しつつ乱流効果を生じさせる方法もある。しかし、該方法は加工精度やコストが増大する問題がある。
また、有効膜面積の低下、モジュール内の被処理液の拡散性能の低下を抑制して処理効率を高める方法としては、例えば、中空糸膜の周囲に繊維を螺旋状に巻き回し、中空糸膜同士の密着を抑制する方法が提案されている(特許文献1)。
しかし、該方法では、製造工程が複雑となり、コストが増大する。また、巻き回す繊維の配置によってはモジュール内の中空糸膜の充填率が大きく低下する。そのため、この場合、処理効率を維持するにはモジュールサイズが大きくなる問題がある。
また、中空糸膜に波状のクリンプ(捲縮)を付与することが提案されている。中空糸膜にクリンプを付与することで、中空糸膜の充填率を高めても中空糸膜同士が密着し難くなり、また乱流が促進されて被処理液の拡散性が良好になる。具体的には、例えば、噛み合い歯を持つ一対のギア間に中空糸膜を通し、熱処理する方法により、中空糸膜の潰れや扁平を抑制しつつクリンプを付与することが知られている(特許文献2)。
しかし、前記方法では、得られた中空糸膜が波状の形状を保ち難く、中空糸膜にクリンプを安定して付与することが難しい。
また、糸条にクリンプを付与する方法としては、多数のローラー等によって連続糸条を蛇行させながら搬送し、熱処理することでクリンプを付与する方法が知られている(特許文献3)。しかし、中空糸膜にクリンプを付与する方法として該方法を採用しても、中空糸膜にクリンプを安定して付与することは難しい。
特公昭59−18084号公報 特開平9−21024号公報 特開平6−212520号公報
本発明は、簡便に安定してクリンプが付与され、かつ滞留部の発生を抑制しつつ被処理液の流れを乱流状態としやすく、良好な処理効率が得られる中空糸膜、及び該中空糸膜を用いた中空糸膜モジュールを提供する。
前記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]中空糸膜の軸方向に垂直な断面形状が外周の中心に対して非対称になっていることを特徴とする中空糸膜。
[2]内部に中空部が形成された断面形状の筒部と、該筒部の表面から突き出るように、軸方向に延在する突条部と、を有し、
前記突条部が前記筒部の表面の周方向において偏在し、中空糸膜の軸方向に垂直な断面形状が外周の中心に対して非対称になっている、[1]に記載の中空糸膜。
[3]前記筒部の周方向において、全周に対して1/3以下の範囲内に前記突条部が偏在する、[2]に記載の中空糸膜。
[4]前記突条部の高さが前記筒部の表面から5μm以上である、[2]又は[3]に記載の中空糸膜。
[5]前記突条部の幅が前記筒部の表面と接する部分において5μm以上である、[4]に記載の中空糸膜。
[6]前記突条部を前記筒部における該突条部が形成された表面に投影した投影面積の総和の割合が、前記筒部における該突条部が形成された表面の総面積に対して1〜20%である、[2]〜[5]のいずれかに記載の中空糸膜。
[7]前記突条部が、前記筒部の内表面に形成された内部側突条部である、[2]〜[6]のいずれかに記載の中空糸膜。
[8]クリンプが付与された、[1]〜[7]のいずれかに記載の中空糸膜。
[9]支持層及び均質層を有する複合中空糸膜である、[1]〜[8]のいずれかに記載の中空糸膜。
[10]中空糸膜を形成するポリマーを、吐出口の内部側の一部に突起部又は溝を形成したノズルにより吐出した後に加熱処理する、中空糸膜の製造方法。
[11]加熱延伸によりクリンプを付与する、[10]に記載の中空糸膜の製造方法。
[12]ノズルから吐出した2〜32本の中空糸膜前駆体を合糸した状態で前記加熱処理を行う、[10]に記載の中空糸膜の製造方法。
[13]ハウジングケースと、該ハウジングケース内で膜の内部側と外部側が隔離されるように固定された、[8]又は[9]に記載の中空糸膜を含む中空糸膜束とを有し、該中空糸膜束の全膜面積に対する、クリンプが付与された中空糸膜の膜面積の総和の割合が30%以上である、中空糸膜モジュール。
[14]前記ハウジングケース内における中空糸膜の外部側に被処理液が供給される、[13]に記載の中空糸膜モジュール。
[15]中空糸膜の充填率が20〜55%である、[13]又は[14]に記載の中空糸膜モジュール。
本発明の中空糸膜は、簡便に安定してクリンプが付与され、また滞留部の発生を抑制しつつ被処理液の流れを乱流状態としやすいため、良好な処理効率が得られる。
本発明の中空糸膜モジュールは、滞留部の発生を抑制しつつ被処理液の流れを乱流状態としやすいため、良好な処理効率が得られる。
本発明の中空糸膜の一例を示した断面図である。 図1の中空糸膜における内部側突条部の近傍を拡大した拡大断面図である。 本発明の中空糸膜の他の例を示した断面図である。 本発明の中空糸膜の他の例を示した断面図である。 本発明の中空糸膜の他の例を示した断面図である。 本発明の中空糸膜の他の例を示した断面図である。 本発明のクリンプが付与された中空糸膜の一例を示した平面図である。 本発明の中空糸膜モジュールの一例を示した断面図である。
<中空糸膜>
本発明の中空糸膜は、軸方向に垂直な断面形状が外周の中心に対して非対称になっていることを特徴とする。すなわち、本発明の中空糸膜は、軸方向に垂直な断面形状が、当該中空糸膜の外周の中心に対して点対称になっていないことを特徴とする。
中空糸膜の軸方向に垂直な断面形状が外周の中心に対して非対称になっていることで、後述するように加熱処理によってクリンプが付与される。本発明において、クリンプが付与されるとは、波状、螺旋状等の曲線形状が付与されることを意味する。
なお、中空糸膜の外周の中心とは、中空糸膜の外表面に外部側突条部が形成されている場合は、該外部突条部がないときの外周の中心を意味するものとする。
以下、本発明の中空糸膜の一例を示して説明する。図1は、本発明の中空糸膜の一例である中空糸膜10を軸方向に垂直な方向に切断した断面図である。
中空糸膜10は、内部に中空部16が形成された円筒状の筒部12と、筒部12の内表面12aから突き出るように、軸方向に延在する3つの内部側突条部14とを有する。これら3つの内部側突条部14は、筒部12の内表面12aにおける周方向において偏在している。
中空糸膜10は、内部側突条部14が筒部12の周方向において偏在していることで、中空糸膜10の軸方向に垂直な断面形状が外周の中心Lに対して非対称になっている。
内部側突条部14は、筒部12の内表面12aの周方向において、筒部12の全周(内周)に対して1/3以下の範囲内に偏在していることが好ましい。すなわち、3つの内部側突条部14のいずれもが、筒部12の内表面12aの周方向において、筒部12の全周(内周)に対して1/3以下の範囲内にまとまって形成されていることが好ましい。
内部側突条部14が前記範囲内に偏在していることで、中空糸膜10の断面形状の非対称性がより大きくなり、加熱処理によってクリンプが安定して付与されやすくなる。
内部側突条部14を軸方向に対して垂直に切断した断面形状は、この例では台形状であるが、台形状には限定されず、例えば、三角形状、長方形状、正方形状、半円形状、長半円形状等であってもよい。
内部側突条部14の断面形状としては、内部側突条部14の根元部から先端にかけて幅が同じ形状、又は根元部から先端に向けて幅が縮減していく形状が好ましい。これにより、筒部12の内表面12a及び内部側突条部14の表面に付着物が堆積した場合に、該付着物を物理洗浄によって剥離させ、排出することが容易になる。
内部側突条部14の高さD1(図2)は、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。内部側突条部14の高さD1が下限値以上であれば、中空糸膜10の断面形状の非対称性がより大きくなり、加熱処理によってクリンプが安定して付与されやすくなる。また、中空糸膜10の内部側に被処理液を流す場合には、膜表面における乱流摩擦係数を小さくしやすい。
また、内部側突条部14の高さD1は、その根元部分の幅D2(図2)の3倍以下が好ましく、2倍以下がより好ましい。内部側突条部14の高さD1が上限値以下であれば、中空糸膜10の揺動や相互の衝突によって内部側突条部14に変形や破損が発生することを抑制しやすい。また、中空糸膜製造時における内部側突条部14の形状が安定し、中空糸膜10の生産性がより良好になる。
内部側突条部14の高さD1とは、図2に示すように、内部側突条部14が形成された部分における、当該内部側突条部14が存在しない場合の筒部12の内表面12aの位置から内部側突条部14の先端までの距離をいう。
内部側突条部14の幅D2(図2)は、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。内部側突条部14の幅D2が下限値以上であれば、中空糸膜10の断面形状の非対称性がより大きくなり、加熱処理によってクリンプが安定して付与されやすくなる。また、処理中における中空糸膜10の揺動によって内部側突条部14に変形や破損が発生し難くなる。また、内部側突条部14の幅D2は、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましい。内部側突条部14の幅D2が上限値以下であれば、脱気性能等の処理性能がより良好になる。
内部側突条部14の幅D2とは、図2に示すように、当該内部側突条部14が筒部12の内表面12aと接する部分おける、当該内部側突条部14の幅をいう。
内部側突条部14は、中空糸膜10の断面形状の非対称性がより大きくなり、加熱処理によってクリンプが安定して付与されやすくなる点から、高さD1が5μm以上で、かつ幅D2が5μm以上であることが好ましい。
内部側突条部14の断面形状、高さD1及び幅D2は、中空糸膜を製造する際のノズルに、内部側突条部14を形成するために設ける溝の形状を調節すること等により制御できる。
内部側突条部14を筒部12における内部側突条部14が形成された内表面12aに投影した投影面積の総和の割合は、筒部12における内部側突条部14が形成された内表面12aの総面積に対して、1〜20%が好ましく、5〜15%がより好ましい。前記投影面積の割合が前記範囲内であれば、加熱処理によってクリンプが安定して付与されやすくなる。
中空糸膜10を構成するポリマーとしては、特に限定されず、浄水器や濾過モジュール等に用いられる濾過膜、脱気モジュールに用いられる脱気膜等として用いられる公知の中空糸膜を構成するポリマーを用いることができる。
中空糸膜10を構成するポリマーとしては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンが好ましい。
中空糸膜10を構成するポリマーは、1種でもよく、2種以上でもよい。
中空糸膜10には、本発明の目的を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、着色剤、難燃化剤等の添加物が添加されていてもよい。
中空糸膜10としては、筒部12が、多孔質である支持層と非多孔質である均質層とを有する積層構造である複合中空糸膜が好ましく、筒部12が、均質層が2つの支持層に挟まれた積層構造である三層複合中空糸膜がより好ましい。
なお、中空糸膜10は、筒部12が、多孔質である支持層のみからなるものであってもよい。
支持層の空孔率は、支持層全体(100体積%)に対して、30〜80体積%が好ましい。空孔率が30体積%以上であれば、優れた気体透過性が得られやすい。空孔率が80体積%以下であれば、耐圧性等の機械的強度がより良好になる。
支持層の微孔の大きさは、特に限定されず、気体透過性、機械的強度等を考慮して適宜決定すればよい。
中空糸膜10の内径は、10〜500μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。中空糸膜10の内径が下限値以上であれば、被処理液の処理を行う際の圧力損失を低減しやすい。中空糸膜10の内径が上限値以下であれば、膜外径をより小さくできるので充分な有効膜面積を確保しやすい。
なお、中空糸膜の内径とは、筒部における内部側突条部が形成されていない部分の内径である。
中空糸膜10の外径は、100〜2000μmが好ましく、100〜300μmがより好ましい。中空糸膜10の外径が下限値以上であれば、モジュールの製造時に中空糸膜間に隙間を設けやすく、中空糸膜間にポッティング材を侵入させやすい。中空糸膜10の外径が上限値以下であれば、多数本の中空糸膜を用いたモジュールを製造したときにも、モジュール全体のサイズを小さくしやすい。これにより、ポッティング部の容積も小さくなるため、ポッティング加工時のポッティング材の収縮による寸法精度の低下が抑制されやすい。
なお、中空糸膜の外径とは、筒部における外部側突条部が形成されていない部分の外径である。
中空糸膜10は、軸方向に垂直な断面形状が外周の中心Lに対して非対称になっているため、加熱処理によってクリンプが付与される。具体的には、中空糸膜10においては、内部側突条部14が形成されて肉厚となっている側が、内部側突条部14が形成されていない肉薄な側に比べて、加熱処理による収縮が大きくなる。このように、中空糸膜10において、内部側突条部14が形成されている側と形成されていない側との間に、加熱処理において収縮斑が生じることで、中空糸膜10にクリンプが付与される。
クリンプが付与された中空糸膜10としては、波状のクリンプが付与された中空糸膜が好ましい。また、モジュール内における被処理液の流れがより均一になりやすい点から、波高及び波長が一定の波が繰り返す波状のクリンプが付与された中空糸膜がより好ましい。なお、波高及び波長が一定の波とは、波高及び波長の変化率が、それらの平均値からプラスマイナス10%の範囲内であることを意味するものとする。
波状のクリンプが付与された中空糸膜10におけるクリンプの波長d1(図7)は、1つの山の頂点aから次の山の頂点bまでの距離である。また、クリンプの波高d2(図7)は、隣り合う谷の底を結んだ直線kと、それら谷の間に位置する山の頂点bとの距離である。
クリンプの波長d1及び波高d2は、実施例に記載の方法で測定される。
中空糸膜10に付与される波状のクリンプの波長d1は、15mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましい。波長d1が下限値以上であれば、モジュール内において被処理液が円滑に流れやすくなる。
また、前記クリンプの波長d1は、40mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましい。波長d1が上限値以下であれば、中空糸膜の充填率を高めてもモジュール内において被処理液の偏流が生じ難くなり、良好な処理性能が得られやすい。そのため、中空糸膜の充填率を高めてモジュールを小型化することがより容易になり、コストを低減しやすい。
中空糸膜10に付与される波状のクリンプの波高d2は、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましい。波高d2が下限値以上であれば、中空糸膜同士が密着し難くなり、充分な有効膜面積を確保しやすくなる。
また、前記クリンプの波高d2は、4mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。波高d2が上限値以下であれば、中空糸膜束の束径が大きくなりすぎることを抑制しやすく、モジュールを小型化することが容易になる。
また、本発明の中空糸膜は、加熱処理によって螺旋状のクリンプが付与された中空糸膜であってもよい。本発明において中空糸膜に付与されるクリンプの形状は、熱処理条件により制御できる。例えば、波状のクリンプを付与する場合は、弱く熱収縮させることで発現する。また、螺旋状のクリンプを付与する場合は、強く熱収縮(具体的には、前記に比べ高い熱処理温度を用いる)させることで発現する。
中空糸膜にクリンプを付与する際の加熱処理の温度は、中空糸膜に安定してクリンプが付与される温度であればよく、中空糸膜を構成するポリマーの融点をT’としたとき、T’−30(℃)以上が好ましく、T’−30(℃)以上T’(℃)以下がより好ましい。
また、中空糸膜が支持層及び均質層を有する複合中空糸膜である場合、加熱処理の温度は、支持層の融点と均質層の融点の低い方をTとしたとき、T−30(℃)以上が好ましく、T−30(℃)以上T(℃)以下が好ましい。
クリンプを付与する加熱処理を行う際の中空糸膜の合糸数は、2〜32本が好ましく、4〜24本がより好ましく、8〜16本がさらに好ましい。前記中空糸膜の合糸数が下限値以上であれば、生産性がより高くなるうえ、加熱処理に用いる装置がより小さくて済むため、コストを低減できる。前記中空糸膜の合糸数が上限値以下であれば、より安定してクリンプが付与される。また、中空糸膜同士の擦れにより帯電量が大きくなって糸乱れが発生することを抑制しやすい。
本発明において、後述するように加熱延伸を行う場合、延伸時の加熱によってクリンプが付与され得る。中空糸膜の製造における延伸時に充分なクリンプが付与される場合、延伸後には改めてクリンプを付与するための加熱処理を行わなくてもよい。
本発明において中空糸膜にクリンプを付与する際には、加熱処理に加えて、ギア等を用いた従来のクリンプ付与方法を組み合わせてもよい。例えば、ギア等を用いてクリンプを付与した後にさらに加熱処理によってクリンプを付与してもよく、加熱処理によってクリンプを付与した後に、さらにギア等を用いてクリンプを付与してもよい。
中空糸膜10は、恒久親水化処理によって、膜の外表面に親水性共重合体が被覆されていてもよい。
親水性共重合体としては、エチレンに由来する重合単位の20モル%以上と、親水性モノマーに由来する重合単位の10モル%以上とを有する共重合体が好ましい。エチレンに由来する重合単位の割合が20モル%以上であれば、親水性共重合体の中空糸膜への親和性が高くなり、該親水性共重合体を中空糸膜の表面に被覆することが容易になる。
前記親水性モノマーとしては、例えば、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸及びその塩、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ビニルピロリドン、アクリルアミド等のビニル化合物が挙げられる。なかでも、親水性モノマーとしては、ビニルアルコールが好ましい。
親水性モノマーは、1種でもよく、2種以上でもよい。
また、前記親水性共重合体は、エチレンに由来する重合単位及び前記親水性モノマーに由来する重合単位に加えて、エチレン及び前記親水性モノマー以外の他のモノマーに由来する重合単位を有していてもよい。
前記他のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルアルコール脂肪酸エステル、ビニルアルコールのフォルマール化物もしくはブチラール化物等が挙げられる。
親水性共重合体は、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー等のいずれのタイプの共重合体であってもよい。
中空糸膜10に恒久親水化処理を施す場合、親水性共重合体の被覆量は、処理後の中空糸膜の総質量に対して、1〜30質量%が好ましく、7〜15質量%がより好ましい。親水性共重合体の被覆量が下限値以上であれば、中空糸膜の水との親和性が良好になり、中空糸膜の通水性がより良好になる。親水性共重合体の被覆量が上限値以下であれば、中空糸膜の微孔が閉塞される等の不具合が起こり難く、良好な透水性能が得られやすい。
[中空糸膜の製造方法]
以下、本発明の中空糸膜の製造方法の一例として、中空糸膜10の製造方法について説明する。中空糸膜10の製造方法としては、例えば、下記紡糸工程、延伸工程及び恒久親水化処理工程を有する方法が挙げられる。
紡糸工程:中空糸膜10を構成するポリマーを用いて紡糸を行い、未延伸状態の中空糸膜前駆体を得る。
延伸工程:前記中空糸膜前駆体を加熱延伸しつつクリンプを付与して中空糸膜10を得る。
恒久親水化処理工程:得られた中空糸膜10の表面に親水性共重合体を被覆する。
(紡糸工程)
中空糸膜10を構成するポリマーを溶融状態としてノズルから押し出し、押出速度と巻取速度を適宜調節しつつ未延伸状態で冷却固化して未延伸中空糸膜を得る。
ノズルとしては、例えば、同心円状に配置された円管によって形成される吐出口における内側の円管に、内部側突条部14の形状と相補的な形状の溝が形成されたノズルを用いる。
ポリマーの吐出温度は、該ポリマーが充分に溶融して紡糸できる範囲であればよい。
(延伸工程)
紡糸工程で得られた未延伸状態の中空糸膜前駆体は、延伸前にポリマーの融点以下で定長熱処理(アニール処理)することが好ましい。
定長熱処理は、ポリエチレンの場合、105〜140℃で8〜16時間行うことが好しい。定長熱処理の温度が105℃以上であれば、品質の良好な中空糸膜が得られやすい。定長熱処理の温度が140℃以下であれば、充分な伸度が得られやすく、延伸時の安定性が向上し、高倍率での延伸が容易になる。また、処理時間が8時間以上であれば、品質の良好な中空糸膜が得られやすい。
未延伸状態の中空糸膜前駆体を、下記(i)及び(ii)の要件を満たす条件で延伸し、中空糸膜10を得る。
(i)延伸温度T(℃)と、ポリマーの融点Tm’(℃)との関係が、Tm’−20≦T≦Tm’である。
(ii)延伸温度Tが、ポリマーのビカット軟化点以下である。
なお、ポリマーの融点は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、JIS K 7121に準拠した方法により測定される。ポリマーのビカット軟化点は、JIS K7206に準拠した方法により測定される。
延伸温度Tが、Tm’−20(℃)以上であれば、膜の多孔質化が容易になり、優れた気体透過性を有する中空糸膜10が得られやすい。延伸温度TがTm’(℃)以下であれば、ポリマー分子に乱れが生じてピンホール等の欠陥が生じることを抑制しやすい。なお、支持層と均質層を有する複合中空糸膜とする場合は、支持層の融点と均質層の融点のうち低い方の融点Tを基準とする。
また、延伸温度Tがポリマーのビカット軟化点以下であれば、膜の多孔質化が容易になり、優れた気体透過性を有する中空糸膜10が得られやすい。
延伸工程では、前記延伸温度Tで行う延伸(加熱延伸)の前に、冷延伸を行うことが好ましい。具体的には、冷延伸に引き続いて加熱延伸を行う2段延伸、又は冷延伸に引き続いて加熱延伸を2段以上の多段に分割して行う多段延伸が好ましい。
冷延伸は、比較的低い温度下で膜の構造破壊を起させ、ミクロなクラッキングを発生させる延伸である。冷延伸の温度は、0℃から、Tm−20(℃)よりも低い温度までの範囲内が好ましい。
延伸倍率は、用いるポリマーの種類によっても異なるが、未延伸状態の中空糸膜前駆体に対する最終的な倍率(総延伸倍率)を2〜5倍とすることが好ましい。総延伸倍率が2倍以上であれば、空孔率が高くなりやすく、優れた気体透過性が得られやすい。総延伸倍率が5倍以下であれば、中空糸膜10の破断伸度が高くなりやすい。
さらに、延伸により得られた中空糸膜10に対しては、中空糸膜の寸法安定性を向上させるため、中空糸膜10を定長の状態、又は、定長に対して40%以下の範囲内で少し弛緩させた状態で熱セットを行うことが好ましい。
熱セットを効果的に行うためには、熱セット温度は、延伸温度T以上、ポリマー融点以下が好ましい。
本発明では、ノズルから吐出した中空糸膜前駆体を2〜32本合糸した状態で加熱処理を行うことが好ましい。また加熱処理の際の中空糸膜前駆体の合糸数は、4〜24本がより好ましく、8〜16本がさらに好ましい。前記中空糸膜前駆体の合糸数が下限値以上であれば、生産性がより高くなるうえ、加熱処理に用いる装置がより小さくて済むため、コストを低減できる。前記中空糸膜前駆体の合糸数が上限値以下であれば、より安定してクリンプを付与できる。また、中空糸膜同士の擦れにより帯電量が大きくなって糸乱れが発生することを抑制しやすい。
前記加熱延伸によって延伸と同時に加熱処理を行って中空糸膜が充分に加熱されれば、延伸工程において延伸されると同時に中空糸膜にクリンプが付与される。加熱延伸における加熱温度がクリンプの付与に不充分な場合は、延伸工程の後に別途中空糸膜を加熱処理する工程を設けてクリンプを付与すればよい。
中空糸膜を加熱処理する方法としては、特に限定されず、加熱炉を用いる方法等が挙げられる。
(恒久親水化処理工程)
親水性共重合体を含む親水性共重合体溶液中に中空糸膜10を浸漬し、乾燥して中空糸膜10の表面に親水性共重合体を被覆する。
親水性共重合体溶液に用いる溶媒としては、親水性共重合体の溶解性が優れる点から、水と水混和性有機溶剤の混合液が好ましい。なお、溶媒として水混和性有機溶剤を単独で用いてもよい。
水混和性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、N−プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。なかでも、水混和性有機溶剤としては、蒸気圧が低く、後述する乾燥前の処理時の雰囲気を形成しやすい点、及び人体に対する毒性が低い点から、沸点が100℃未満のアルコール類が好ましく、メタノール、エタノール、イロプロピルアルコールがより好ましい。
水混和性有機溶剤と水との混合割合は、親水性共重合体が充分に溶解し、中空糸膜への親水性共重合体の浸透性を阻害しない範囲であればよく、用いる親水性共重合体の種類によって適宜調整すればよい。
水混和性有機溶剤としてエタノールを用いる場合、エタノール/水の割合は、体積比で90/10〜30/70が好ましい。
親水性共重合体溶液中の親水性共重合体の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。親水性共重合体の含有量が下限値以上であれば、親水性共重合体を均一に被覆しやすい。親水性共重合体の含有量が上限値以下であれば、溶液粘度が大きくなり過ぎず、中空糸膜の微孔が親水性共重合体で閉塞されることを抑制しやすい。
親水性共重合体溶液への中空糸膜の浸漬は、1回でもよく、2回以上でもよい。
親水性共重合体溶液に2回以上中空糸膜を浸漬する場合、同じ濃度の親水性共重合体溶液に2回以上浸漬してもよく、濃度の異なる親水性共重合体溶液にそれぞれ浸漬してもよい。
浸漬処理を行う際の親水性共重合体溶液の温度は、高いほど粘度が低くなって中空糸膜への溶液の浸透性が向上するため好ましい。また、作業性の点からは、親水性共重合体溶液の温度は該溶液の沸点以下が好ましい。
中空糸膜の浸漬処理時間は、中空糸膜の膜厚、孔径、空孔率により異なるが、数秒〜数分の範囲が好ましい。
中空糸膜を親水性共重合体溶液に浸漬した後は、乾燥処理を行う前に、水混和性有機溶剤の蒸気が3体積%以上含まれ、かつ温度が60℃から該水混和性有機溶剤の沸点以下の範囲にある雰囲気下に中空糸膜を立ち上げ、該雰囲気下に30秒以上中空糸膜を滞在させる。
この処理工程の目的は、中空糸膜を構成するミクロフィブリルとスタックドラメラとの結節部の表面に親水性共重合体の被膜が形成されることによる微孔の閉塞を防止することにある。また、ミクロフィブリルを結束させてスリット状の微孔を大孔径化して楕円状の微孔を作り、透水量の増大を図ると共に、被処理水との親和性を高めることにある。
前記処理工程において中空糸膜表面で親水性共重合体の被膜が形成されることを抑制するには、中空糸膜表面での急速な乾燥を防ぐ必要がある。そのため、親水性共重合体溶液の中空糸膜表面での蒸発速度を抑え、中空糸膜表面が溶媒で濡れている状態に保つために、前記処理工程における雰囲気において水混和性有機溶剤の蒸気を3体積%以上とする。
前記処理工程における中空糸膜からの溶媒の蒸発速度は極力遅いことが好ましく、前記処理工程の雰囲気中の水混和性有機溶剤の濃度は飽和蒸気濃度に近いことが好ましい。
また、前記処理工程では、中空糸膜表面での溶媒の蒸発速度を遅くする点では温度が低いほど有利であり、脱溶剤が容易な点では温度が高いほど有利である。これらのことから、前記処理工程における雰囲気の温度は前記範囲が好ましい。
前記処理工程において親水性共重合体溶液から前記雰囲気中に立ち上げる際の中空糸膜の立ち上げの角度は、水平方向に対して45°〜90°が好ましい。前記中空糸膜の立ち上げの角度が前記範囲内であれば、中空糸膜に付着した親水性共重合体溶液の一部が自重によって中空糸膜から流れ落ちて脱液されやすくなる。
前記処理工程における中空糸膜からの脱液量は、中空糸膜を立ち上げる速度、親水性共重合体溶液の粘度、親水性共重合体溶液の液面から中空糸膜までの高さ等により異なる。前記処理工程では、脱液効果を高めるために、ガイド、スリット等によって中空糸膜表面にある溶液の拭き取る手段を併用してもよい。
前記処理工程における前記雰囲気中の中空糸膜の滞在時間は、30秒以上である。この間に、中空糸膜からの溶剤の蒸発に伴う親水性共重合体溶液の濃縮と、膜のミクロフィブリルとスタックドラメラ表面でのマイグレーションによる均一化が行われる。特に、中空糸膜を連続的に親水性共重合体溶液にて処理する場合、前記滞在時間を30秒以上とすることが必須である。前記滞在時間が30秒未満であると、親水性共重合体溶液の濃縮が不充分となり、乾燥の際に親水性共重合体によって微孔の閉塞が生じやすくなる。また、親水性共重合体が膜構造内で均一に付着し難くなり、透水性能、分画性能の良好な中空糸膜が得られ難くなる。
前記処理工程では、前記滞在時間を30秒とした時の中空糸膜からの水混和性有機溶剤の蒸発量が、用いた親水性共重合体溶液に対して15〜30質量%であることが好ましい。
前記処理工程において中空糸膜からの水混和性有機溶剤の蒸発量を制御する方法としては、前記処理工程における雰囲気温度を調節する方法、該雰囲気中に空気や不活性ガス等の気体を送風する方法等が挙げられる。
中空糸膜を乾燥する方法は、特に限定されず、真空乾燥、熱風乾燥等の公知の乾燥方法を採用できる。
乾燥温度は、中空糸膜が熱によって変形しない温度であればよい。例えばポリエチレンにより形成した中空糸膜の場合、乾燥温度は120℃以下が好ましく、40〜70℃がより好ましい。
以上説明した本発明の中空糸膜は、軸方向に垂直な断面形状が外周の中心に対して非対称になっているため、加熱処理によって簡便に安定してクリンプが付与される。また、中空糸膜に安定してクリンプが付与されることで、膜の外部側又は内部側に供給される被処理液に滞留部が生じることを抑制しつつ、乱流を促進することができる。そのため、中空糸膜の膜表面において被処理液が更新されやすく、良好な処理効率が得られる。
また、中空糸膜に安定してクリンプが付与されるため、モジュール内で各々の中空糸膜を間隔を開けて配列しなくても、膜間に自然と隙間が形成される。そのため、中空糸膜の充填率を高めても、膜同士が密着して有効膜面積が低下することが抑制され、被処理液と中空糸膜との接触効率が高くなり、良好な処理効率が得られる。
なお、本発明の中空糸膜は、軸方向に垂直な断面形状が外周の中心に対して非対称になっているものであれば、前記中空糸膜10には限定されない。
例えば、筒部の内表面に内部側突条部を形成する場合、内部側突条部の数は、3つには限定されない。内部側突条部の数は、1つであっても2つであってもよく、4つ以上であってもよい。具体的には、図3に示すように、筒部12の内表面12aに内部側突条部14を1つだけ形成した中空糸膜10Aであってもよい。中空糸膜10Aにおいては、1つの内部側突条部14が筒部12の内表面12aの周方向において偏在しており、軸方向に垂直な断面形状が外周の中心Lに対して非対称になっている。
安定してクリンプを付与しやすい点では、内部側突条部の数は、前記内部側突条部の投影面積の割合が前記範囲内となるように調節することが好ましい。
内部側突条部の数が3つの場合以外であっても、内部側突条部の断面形状、高さ及び幅の好ましい態様は前記した好ましい態様と同じである。
また、内部側突条部の数にかかわらず、全ての内部側突条部が、筒部の内表面の周方向において、筒部の全周(内周)の1/3以下の範囲内に偏在していることが好ましい。
また、本発明の中空糸膜は、例えば、図4に例示した中空糸膜10Bであってもよい。
中空糸膜10Bは、内部に断面円形状の中空部16Bが形成された円筒状の筒部12Bを有する。中空糸膜10Bでは、中空部16Bが筒部12Bにおいて偏在するように形成されている。すなわち、中空糸膜10Bでは、軸方向に垂直な方向に切断した断面において、中空部16Bの中心が中空糸膜10Bの外周の中心Lに対して偏心するように、中空部16が偏って形成されている。
この中空糸膜10Bは、筒部12Bにおける中空部16Bが偏在している側の膜厚に比べてその反対側の膜厚が厚くなっており、軸方向に垂直な断面形状が外周の中心Lに対して非対称になっている。中空糸膜10Bも、中空糸膜10と同様に、肉厚な側が肉薄な側に比べて加熱処理による収縮が大きく、加熱処理によって簡便に安定してクリンプが付与される。
また、本発明の中空糸膜は、図5に例示した中空糸膜10Cであってもよい。中空糸膜10Cは、内部に断面欠円状の中空部16Cが形成された筒部12Cを有する。中空糸膜10Cは、軸方向に垂直な断面形状が外周の中心Lに対して非対称になっている。中空糸膜10Cも、中空糸膜10と同様に、中空部16Cの円が欠けている肉厚な側が肉薄な側に比べて加熱処理による収縮が大きく、加熱処理によって簡便に安定してクリンプが付与される。
中空糸膜10Cのように、断面欠円状の中空部が形成された筒部を有する中空糸膜とする場合、筒部における中空部の円が欠けている部分の割合が、筒部の全周に対して1/3以下となるようにすることが好ましい。これにより、加熱処理によって安定してクリンプが付与されやすくなる。
また、本発明の中空糸膜は、図6に例示した中空糸膜10Dであってもよい。
中空糸膜10Dは、内部に中空部16Dが形成された円筒状の筒部12と、筒部12の外表面12bから突き出るように、軸方向に延在する3つの外部側突条部18とを有する。これら3つの外部側突条部18は、筒部12の外表面12bにおける周方向において偏在している。中空糸膜10Dは、例えば、同心円状に配置された円管によって形成される吐出口における外側の円管に、外部側突条部18の形状と相補的な形状の溝が形成されたノズルを用いることで得られる。
中空糸膜10Dは、外部側突条部18が筒部12の周方向において偏在していることで、軸方向に垂直な断面形状が外周の中心Lに対して非対称になっている。
外部側突条部18は、筒部12の外表面12bの周方向において、筒部12の全周(外周)に対して1/3以下の範囲内に偏在していることが好ましい。すなわち、3つの外部側突条部18のいずれもが、筒部12の外表面12bの周方向において、筒部12の全周(外周)に対して1/3以下の範囲内にまとまって形成されていることが好ましい。
外部側突条部18が前記範囲内に偏在していることで、中空糸膜10Dの断面形状の非対称性がより大きくなり、加熱処理によってクリンプが安定して付与されやすくなる。
外部側突条部18を軸方向に対して垂直に切断した断面形状は、この例では台形状であるが、台形状には限定されず、例えば、三角形状、長方形状、正方形状、半円形状、長半円形状等であってもよい。
外部側突条部18の断面形状としては、外部側突条部18の根元部から先端にかけて幅が同じ形状、又は根元部から先端に向けて幅が縮減していく形状が好ましい。これにより、筒部12の外表面12b及び外部側突条部18の表面に付着物が堆積した場合に、該付着物を物理洗浄によって剥離させ、排出することが容易になる。
外部側突条部18の高さD3(図6)は、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。外部側突条部18の高さD3が下限値以上であれば、中空糸膜10Dの断面形状の非対称性がより大きくなり、加熱処理によってクリンプが安定して付与されやすくなる。また、中空糸膜10Dの外部側に被処理液を流す場合には、膜表面における乱流摩擦係数を小さくしやすい。
また、外部側突条部18の高さD3は、その根元部分の幅D4(図6)の3倍以下が好ましく、2倍以下がより好ましい。外部側突条部18の高さD3が上限値以下であれば、中空糸膜10Dの揺動や相互の衝突によって外部側突条部18に変形や破損が発生することを抑制しやすい。また、中空糸膜製造時における外部側突条部18の形状が安定し、中空糸膜10Dの生産性がより良好になる。
外部側突条部18の高さD3とは、図6に示すように、外部側突条部18が形成された部分における、当該外部側突条部18が存在しない場合の筒部12の外表面12bの位置から外部側突条部18の先端までの距離をいう。
外部側突条部18の幅D4(図6)は、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。外部側突条部18の幅D4が下限値以上であれば、中空糸膜10Dの断面形状の非対称性がより大きくなり、加熱処理によってクリンプが安定して付与されやすくなる。また、処理中における中空糸膜10Dの揺動によって外部側突条部18に変形や破損が発生し難くなる。また、外部側突条部18の幅D4は、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましい。外部側突条部18の幅D4が上限値以下であれば、脱気性能等の処理性能がより良好になる。
外部側突条部18の幅D4とは、図6に示すように、当該外部側突条部18が筒部12の外表面12bにおける、当該外部側突条部18が占める部分の長さをいう。
外部側突条部18は、中空糸膜10Dの断面形状の非対称性がより大きくなり、加熱処理によってクリンプが安定して付与されやすくなる点から、高さD3が5μm以上で、かつ幅D4が5μm以上であることが好ましい。
外部側突条部18の断面形状、高さD3及び幅D4は、中空糸膜を製造する際のノズルに、外部側突条部18を形成するために設ける溝の形状を調節すること等により制御できる。
外部側突条部18を筒部12における外部側突条部18が形成された外表面12bに投影した投影面積の総和の割合は、筒部12における外部側突条部18が形成された外表面12bの総面積に対して、1〜20%が好ましく、5〜15%がより好ましい。前記投影面積の割合が前記範囲内であれば、加熱処理によってクリンプが安定して付与されやすくなる。
筒部の外表面に外部側突条部を形成する場合も、外部側突条部の数は、3つには限定されず、1つであっても2つであってもよく、4つ以上であってもよい。安定してクリンプを付与しやすい点では、外部側突条部の数は、前記外部側突条部の投影面積の割合が前記範囲内となるように調節することが好ましい。
外部側突条部の数が3つの場合以外であっても、外部側突条部の断面形状、高さ及び幅の好ましい態様は前記した好ましい態様と同じである。
また、外部側突条部の数にかかわらず、全ての外部側突条部が、筒部の外表面の周方向において、筒部の全周(外周)の1/3以下の範囲内に偏在していることが好ましい。
また、本発明の中空糸膜は、内部側突条部と外部側突条部の両方を有していてもよい。本発明の中空糸膜が内部側突条部と外部側突条部の両方を有する場合は、それら内部側突条部と外部側突条部は、筒部の周方向における同じ領域に偏在していることが好ましい。
本発明の中空糸膜としては、筒部に突条部を形成する場合、内部側突条部を形成することが好ましく、内部側突条部のみを形成することがより好ましい。これにより、モジュールにおける中空糸膜の充填率を高くしやすく、モジュールの小型化が容易になる。
本発明の中空糸膜において、波状のクリンプを付与する場合は、中空糸膜10、中空糸膜10Aが好ましい。
また、本発明の中空糸膜は、内周面及び外周面の少なくとも一方に、軸方向に凹条が形成されて、軸方向に垂直な断面形状が外周の中心に対して非対称になっている中空糸膜であってもよい。該中空糸膜は、例えば、同心円状に配置された円管によって形成される吐出口における一方又は両方の円管に、前記凹条の形状と相補的な形状の突起部が形成されたノズルを用いることで製造できる。
<中空糸膜モジュール>
本発明の中空糸膜モジュールは、本発明におけるクリンプが付与された中空糸膜を用いる以外は、公知の中空糸膜モジュールと同様の形態を採用できる。以下、本発明の中空糸膜モジュールの一例として、波状のクリンプが付与された中空糸膜10を有する、脱気用のモジュールについて説明する。
本実施形態の中空糸膜モジュール1(以下、「モジュール1」という。)は、図8に示すように、円筒状のハウジングケース20と、中空糸膜10を含む中空糸膜束22と、ハウジングケース20内で中空糸膜束22を固定するポッティング部24A,24Bと、を有する。
ハウジングケース20には、第1の端部に第1開口部26が形成され、第2の端部に第2開口部28が形成され、側部の第1の端部側に第3開口部30が形成され、側部の第2の端部側に第4開口部32が形成されている。
中空糸膜束22は、両端部がポッティング部24A,24Bによってハウジングケース20内に固定されている。
中空糸膜束22の第1開口部26側の端部を固定するポッティング部24Aは、ハウジングケース20における第1開口部26と第3開口部30の間に、ハウジングケース20の内部を第1開口部26側と第3開口部30側とに分けるように設けられる。また、中空糸膜束22の第2開口部28側の端部を固定するポッティング部24Bは、ハウジングケース20における第2開口部28と第4開口部32の間に、ハウジングケース20の内部を第2開口部28側と第4開口部32側とに分けるように設けられる。
ポッティング部24Aにおける第1開口部26側の端面には、中空糸膜束22の各々の中空糸膜10の第1の開口10aが露出している。また、ポッティング部24Bにおける第2開口部28側の端面には、中空糸膜束22の各々の中空糸膜10の第2の開口10bが露出している。
このように、モジュール1では、ハウジングケース20内において中空糸膜10の内部側と外部側が、ポッティング部24A,24Bによって隔離されている。
モジュール1内における中空糸膜束22を構成する中空糸膜の充填率は、20〜55%が好ましく、30〜45%がより好ましい。前記中空糸膜の充填率が下限値以上であれば、モジュールの小型化が容易になるうえ、モジュール内において被処理液の偏流が生じることを抑制しやすい。前記中空糸膜の充填率が上限値以下であれば、中空糸膜の充填が容易になり、充填の際に中空糸膜に損傷が生じることを抑制しやすい。
なお、中空糸膜の充填率は、中空糸膜モジュールを中空糸膜束の軸方向に対して垂直に切断したときのハウジングケース内部の断面積に対する、充填された中空糸膜の断面積の総和の割合(%)を表わす。
中空糸膜束22を構成する中空糸膜には、クリンプが付与された中空糸膜10に加えて、クリンプが付与されていない中空糸膜が含まれていてもよい。
中空糸膜束22の全膜面積、すなわち中空糸膜束22を構成する全ての中空糸膜の膜面積の総和に対する、クリンプが付与された中空糸膜10の膜面積の総和の割合は、30%以上であり、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。前記割合が下限値以上であれば、滞留部の発生を抑制しつつ被処理液の流れを乱流状態としやすいため、良好な処理効率が得られる。前記割合の上限値は100%である。
ポッティング部24A,24Bを形成するポッティング材は、特に限定されず、中空糸膜モジュールに通常用いられる各種接着剤、シール材、ポッティング剤、ポリマー等を使用できる。ポッティング材としては、例えば、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤等が挙げられる。
ポッティング部24A,24Bの硬度が中空糸膜10に比べて高すぎると、ポッティング部24A,24Bにおける中空糸膜10の開口が露出した端面と反対側の端面24a,24bの近傍で中空糸膜10に亀裂が生じやすくなる。そのため、ポッティング材としては、硬化後の硬度があまり高くないウレタン系接着剤が好ましい。
ポッティング材を硬化させる手段は、二液混合反応、紫外線硬化、加熱硬化、溶媒抽出等、特に限定されない。ただし、中空糸膜自体に悪影響を及ぼさないようにすることは必要不可欠である。
モジュール1は、中空糸膜10の内部に被処理液が供給される内部還流型モジュールとしてもよく、ハウジングケース20内の中空糸膜10の外部側に被処理液が供給される外部還流型モジュールとしてもよい。
本発明の中空糸膜モジュールとしては、ハウジングケース内の中空糸膜の外部側に被処理液が供給される外部還流型モジュールが好ましい。
モジュール1を外部還流型モジュールとする場合は、例えば、第3開口部30から被処理液をハウジングケース20内の中空糸膜10の外部側に供給し、その被処理液が第4開口部32から排出されるようにする。また、第1開口部26と第2開口部28とを、減圧ポンプ等の減圧手段と接続し、中空糸膜10の内部側を減圧する。これにより、被処理液中の溶存気体が脱気される。
また、モジュール1を内部還流型モジュールとする場合は、例えば、第1開口部26から被処理液をハウジングケース20内の中空糸膜10の内部側に供給する。そして、第1の開口10aから中空糸膜10の内部に入り、第2の開口10bから抜け出た被処理液が第2開口部28から排出されるようにする。また、第3開口部30と第4開口部32とを、減圧ポンプ等の減圧手段と接続し、中空糸膜10の外部側を減圧する。これにより、被処理液中の溶存気体が脱気される。
本発明の中空糸膜モジュールの製造方法としては、本発明におけるクリンプが付与された中空糸膜を用いる以外は、公知の製造方法を採用できる。
以上説明した本発明の中空糸膜モジュールは、クリンプが付与された中空糸膜を用いているため、被処理液の流れが乱流状態となりやすく、また被処理液の偏流が生じることを抑制できるため、高い処理効率が得られる。また、本発明の中空糸膜モジュールは、中空糸膜の充填率を高めても充分な有効膜面積を確保しやすいため、モジュールを小型化しやすい。
なお、本発明の中空糸膜モジュールは、前記したモジュール1には限定されない。例えば、本発明の中空糸膜モジュールは、前記した中空糸膜10A〜10Dのいずれか1以上を有するものであってもよい。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[融点(Tm)]
融点(Tm)の測定には、示差走査型熱量計(DSC)を用いた。具体的には、約5mgの試料を200℃で5分間融解し、40℃まで10℃/分の速度で降温して結晶化し、その後更に10℃/分で200℃まで昇温して融解した時の融解終了温度を以て融点を求めた。
[メルトフローレート(MFRD)]
JIS K7210のコードDに準拠し、メルトインデクサを用いて190℃における2.16kg荷重での10分間にストランド状に押し出される樹脂の質量を測定してメルトフローレート(MFRD)(単位:g/10分)を求めた。
[密度]
JIS K7112に準拠して、190℃で2.16kg荷重における前記MFR測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、1時間かけて室温まで徐冷したサンプルについて、密度勾配管を用いて密度を測定した。
[クリンプの波高、波長]
ハウジングケースに組み込まれた200mm以上の中空糸膜束から、抜き取り時にクリンプ形状を変化させるような張力を付加しないように中空糸膜を取り出した。取り出した中空糸膜の中から無作為に10本を選択し、任意の部分18cmを黒い紙の上に、最も波高が大きくなるように配置し、張力を付加しないように注意しながら、その両端部(両端から0.5cm以内)をテープで固定した。
固定した中空糸膜において、図7のように、任意の位置における1ヶ所の山の頂点aから次の山の頂点bまでを線で結び、その長さを測定して波長d1とした。また、任意の位置における隣り合う2ヶ所の谷の底を直線で結び、その直線kと2ヶ所の谷に挟まれる山bの頂点との距離を測定して波高d2とした。
波長d1及び波高d2は、10本の中空糸膜についてそれぞれ測定を行い、平均値を求めた。
[親水性共重合体の被覆量]
親水性共重合体の被覆量は、以下の式により算出した。
Q=[(W2−W1)/W1]×100
ただし、Qは親水性共重合体の被覆量(質量%)であり、W1は親水化処理前の中空糸膜の乾燥質量(g)であり、W2は親水化処理後の中空糸膜の乾燥質量(g)である。
[透水性能(以下「W.F.」と略す。)]
有効膜面積70〜90cmのミニモジュールを作成し、差圧0.1MPaでイオン交換水を濾過し、その時の透水性能(m/m・hr・MPa)を測定した。
[バブルポイント(以下「B.P.」と略す。)]
有効膜面積約10cmの中空糸膜を有するモジュールを、中空糸膜の部分が完全に浸るように濃度95%以上のエタノール中に浸漬した。中空糸膜が内表面までエタノールで充分濡れるように、中空糸膜内部へとエタノールを100mL以上吸引した後、浸漬状態のままで中空糸膜内部に窒素を送り込み、10秒ごとに1kPaきざみで空気圧を昇圧した。気泡が中空糸膜のほぼ全表面から発生し、かつ気泡発生箇所の間隔が1mm以内になった時の窒素圧力をB.P.とした。
[空孔率]
中空糸膜の空孔率は、カルロエルバ社製水銀ポロシメーター221型を用いて測定した。
[製造例1]
中空糸膜を形成するポリマーとして、密度0.963g/cm、MFRD値1.3g/10分、融点135℃の高密度ポリエチレン(商品名「サンテック B161」、旭化成ケミカルズ株式会社製)を用いた。このポリマーは、チーグラー型触媒を用いて得られたものであった。また、中空糸製造用ノズルとしては、同心円状に配置された円管によって形成される吐出口の一部において、台形状の内部側突条部を1つ形成するようにノズル中子に溝を形成したノズルを用いた。
前記ポリマーを用いて、前記中空糸製造用ノズルにより吐出温度180℃、巻取速度120m/分にて溶融紡糸を行った。さらに、ノズルから吐出された糸の周囲に、温度20℃、風速0.5m/秒の冷却風を均一に流しながら該糸をボビンに巻き取り、内部側突条部が1つ形成された未延伸中空糸膜を得た。内部側突条部の高さは20μm、幅は10μmであった。
得られた未延伸中空糸膜をボビンに巻いたまま、115℃に加熱した空気中で16時間アニール処理した。アニール処理後の未延伸中空糸膜を、30℃に保たれた一対のローラー間で1.5倍に冷延伸し、引き続いて117℃に加熱された加熱炉中で最大延伸量が6.0倍になるように一対のローラー間で熱延伸した後、118℃に加熱した加熱炉中で20%の緩和を行うことで、巻取り時の総延伸倍率が5倍の中空糸膜を得た。得られた中空糸膜は、延伸時の熱処理によってクリンプが付与されていた。
次に、70℃のエタノール/水=40/60体積%の混合溶液に、エチレン含有量32モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名「ソアノールDC3203」、日本合成化学株式会社製)を1.5質量%となるように溶解して親水性共重合体溶液を調製した。得られた中空糸膜を該親水性共重合体溶液中に30秒間浸漬した後、中空糸膜を引き上げ、ガイドにより該中空糸膜の表面に過剰に付着した親水性共重合体溶液の一部を絞り落とした。引き続き、エタノール蒸気濃度40体積%、60℃の雰囲気中に、中空糸膜を立上げ角度90°で立上げ、80秒間滞在させて中空糸膜の微孔の内表面にも親水性共重合体溶液を均一に付着させた。その後、70℃の熱風にて乾燥を行い、中空糸膜Aを得た。
得られた中空糸膜Aを走査型電子顕微鏡にて観察したところ、該中空糸膜Aの内外表面及び微孔内表面はエチレン−ビニルアルコール共重合体の薄膜で均一に覆われていた。
中空糸膜Aにおける親水性共重合体の被覆量、クリンプの波長d1及び波高d2、孔径を示すB.P.、空孔率並びにW.F.を表1に示す。
[製造例2]
中空糸膜を形成するポリマーとして、密度0.964g/cm、MFRD値5.2g/10分、融点135℃の高密度ポリエチレン(商品名「Hizex2200J」、株式会社プライムポリマー製)を用いた。このポリマーは、チーグラー型触媒を用いた重合により得られたものであった。また、中空糸製造用ノズルとしては、同心円状に配置された円管により形成された吐出口が、図5に例示したような、筒部の全周に対して1/3の領域が肉厚となる断面欠円状の中空部が形成される形状となっているノズルを用いた。
前記ポリマーを用いて、前記中空糸製造用ノズルにより吐出温度160℃、巻取速度180m/分にて溶融紡糸を行った。さらに、ノズルから吐出された糸の周囲に、温度20℃、風速3.0m/秒の冷却風を均一に流しながら該糸をボビンに巻き取り、未延伸中空糸膜を得た。
得られた未延伸中空糸膜に対して、製造例1と同様にして延伸を行って中空糸膜を得た。得られた中空糸膜は、延伸時の熱処理によってクリンプが付与されていた。さらに製造例1と同様にして親水化処理を行い、中空糸膜Bを得た。
中空糸膜Bにおける親水性共重合体の被覆量、クリンプの波長d1及び波高d2、孔径を示すB.P.、空孔率並びにW.F.を表1に示す。
[製造例3]
内部側突条部を形成しない以外は製造例1と同様にして中空糸膜Cを得た。
中空糸膜Cにおける親水性共重合体の被覆量、孔径を示すB.P.、空孔率並びにW.F.を表1に示す。
Figure 2015029927
[実施例1]
製造例1で得られた中空糸膜Aを用いて、有効膜面積20mで有効膜長70cmの中空糸膜モジュールを作製した。該中空糸膜モジュールにおける中空糸膜の外部側に超純水を流し、送液量3.4m/時間の時のモジュールの圧力損失を測定した。
[実施例2]
製造例2で得られた中空糸膜Bと製造例3で得られた中空糸膜Cとを、膜面積の比率が30:70となるように用いた以外は、実施例1と同様にして中空糸膜モジュールを作製し、圧力損失を測定した。
[比較例1]
製造例3で得られた中空糸膜Cを用いた以外は、実施例1と同様にして中空糸膜モジュールを作製し、圧力損失を測定した。
実施例及び比較例における圧力損失の測定結果を表2に示す。
Figure 2015029927
表1に示すように、クリンプが付与された中空糸膜A、Bを膜面積の比率で30%以上用いた実施例1、2では、クリンプが付与されていない中空糸膜Cのみを用いた比較例1に比べて圧力損失が低く、処理効率が良好であった。
1 中空糸膜モジュール
10,10A〜10D 中空糸膜
12,12B,12C 筒部
12a 内表面
12b 外表面
14 内部側突条部
16,16B,16C 中空部
18 外部側突条部
20 ハウジングケース
22 中空糸膜束
24A,24B ポッティング部

Claims (15)

  1. 中空糸膜の軸方向に垂直な断面形状が外周の中心に対して非対称になっていることを特徴とする中空糸膜。
  2. 内部に中空部が形成された断面形状の筒部と、該筒部の表面から突き出るように、軸方向に延在する突条部と、を有し、
    前記突条部が前記筒部の表面の周方向において偏在し、中空糸膜の軸方向に垂直な断面形状が外周の中心に対して非対称になっている、請求項1に記載の中空糸膜。
  3. 前記筒部の周方向において、全周に対して1/3以下の範囲内に前記突条部が偏在する、請求項2に記載の中空糸膜。
  4. 前記突条部の高さが前記筒部の表面から5μm以上である、請求項2又は3に記載の中空糸膜。
  5. 前記突条部の幅が前記筒部の表面と接する部分において5μm以上である、請求項4に記載の中空糸膜。
  6. 前記突条部を前記筒部における該突条部が形成された表面に投影した投影面積の総和の割合が、前記筒部における該突条部が形成された表面の総面積に対して1〜20%である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の中空糸膜。
  7. 前記突条部が、前記筒部の内表面に形成された内部側突条部である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の中空糸膜。
  8. クリンプが付与された、請求項1〜7のいずれか一項に記載の中空糸膜。
  9. 支持層及び均質層を有する複合中空糸膜である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の中空糸膜。
  10. 中空糸膜を形成するポリマーを、吐出口の内部側の一部に突起部又は溝を形成したノズルにより吐出した後に加熱処理する、中空糸膜の製造方法。
  11. 加熱延伸によりクリンプを付与する、請求項10に記載の中空糸膜の製造方法。
  12. ノズルから吐出した2〜32本の中空糸膜前駆体を合糸した状態で前記加熱処理を行う、請求項10に記載の中空糸膜の製造方法。
  13. ハウジングケースと、該ハウジングケース内で膜の内部側と外部側が隔離されるように固定された、請求項8又は9に記載の中空糸膜を含む中空糸膜束とを有し、該中空糸膜束の全膜面積に対する、クリンプが付与された中空糸膜の膜面積の総和の割合が30%以上である、中空糸膜モジュール。
  14. 前記ハウジングケース内における中空糸膜の外部側に被処理液が供給される、請求項13に記載の中空糸膜モジュール。
  15. 中空糸膜の充填率が20〜55%である、請求項13又は14に記載の中空糸膜モジュール。
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