JP2019013886A - 複合分離膜 - Google Patents

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Azusa Yamanaka
あずさ 山中
泰孝 栗下
Yasutaka Kurishita
泰孝 栗下
ひとみ 大橋
Hitomi Ohashi
ひとみ 大橋
美河 正人
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正人 美河
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三樹彦 中村
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Toshihiko Ohashi
寿彦 大橋
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Abstract

【課題】ゲル膜のような分離活性層を有する複合分離膜同士の接着を防ぎ、高い分離性能を保持することができる複合分離膜の提供。【解決手段】基材膜上に分離活性層を有する複合分離膜であって、該分離活性層の表面は凹凸構造を有し、該凹凸の平均間隔Smは0.2μm以上5μm以下であり、かつ、該凹凸の10点平均粗さRZJISは0.2μm以上2μm以下であることを特徴とする複合分離膜、及びこれを用いた気体分離システム。【選択図】図2

Description

本発明は、膜同士の接着が抑制された高い分離性能を有する複合分離膜に関する。より詳しくは、本発明は、基材膜上に分離活性層を有する複合分離膜であって、該分離活性層の表面に所定の凹凸構造を有する複合分離膜に関する。
近年、分離濃縮分野において膜技術はエネルギー効率及び分離性の観点から有効な手段として広まりつつある。
気体分離膜による気体の分離濃縮は、蒸留法、高圧吸着法等と比べ、エネルギー効率に優れ、かつ、安全性の高い方法である。その先駆的な実用例としては、例えば、アンモニア製造プロセスにおける水素分離等が挙げられる。以下の特許文献1、2、3に記載されるように、最近では、気体分離膜を用いて、合成ガス、天然ガス等から温室効果ガスである二酸化炭素を除去回収する方法についても、盛んに検討が行われている。
気体分離膜の一般的な形態は、基材膜の表面上に分離活性層を形成したものである。この形態は、膜にある程度の強度を付与しつつ、気体の透過量を多く持たせることに有効である。
オレフィン分離膜は、2種類以上の混合ガスからエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、ブタジエン等のオレフィン成分を分離する膜である。この混合ガスはオレフィンに加え、主としてエタン、プロパン、ブタン、イソブタン等のパラフィンを含む。混合ガス中のオレフィンとパラフィンは分子サイズが近いため、一般に、溶解拡散分離機構での分離係数は小さくなる。他方、オレフィンは、銀イオン、銅イオン等と親和性を有し、錯形成をするため、その錯形成を利用した促進輸送透過機構により、オレフィンが混合ガスから分離できることが知られている。
促進輸送透過機構とは、目的のガスと膜との親和性を利用する分離機構を指す。膜自体がガスとの親和性を有していてもよく、膜にガスとの親和性を有する成分がドープされていてもよい。
促進輸送透過機構では、一般に、溶解拡散分離機構よりも高い分離係数が得られる。オレフィン分離のための促進輸送透過機構では、オレフィンとの高い親和性を得るため、金属種がイオンである必要がある。そのため、分離活性層に水、イオン液体等を含む必要があり、通常、分離活性層は、ゲル膜の形態を有している。
オレフィン分離膜と類似の促進輸送透過機構により、二酸化炭素分離膜を分離する技術(二酸化炭素分離膜)が知られている。二酸化炭素は、一般にアミノ基と親和性を有するので、その親和性を利用した分離技術である。この二酸化炭素分離膜においても、水、イオン液体等を膜中に含み、分離活性層はゲル膜の形態をしていることが多い。
特に分離活性層がゲル膜である場合、運搬時や実運転時に分離膜同士が接着しモジュール内での実質の膜面積が減少すること、さらに接着した分離膜が離れる際に欠陥が生じることで分離性能が下がるという問題がある。
国際公開第2014/157069号 特開2011―161387号公報 特開平9―898号公報
このような背景から、本発明が解決しようとする課題は、ゲル膜のような分離活性層を有する分離膜の膜同士の接着を防ぎ、高い分離性能を保てる分離膜を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、分離活性層が形成された複合分離膜表面の表面粗さを制御すること又は複合分離膜にクリンプを形成することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]基材膜上に分離活性層を有する複合分離膜であって、該分離活性層の表面は凹凸構造を有し、該凹凸の平均間隔Sは0.2μm以上5μm以下であり、かつ、該凹凸の10点平均粗さRZJISは0.2μm以上2μm以下であることを特徴とする複合分離膜。
[2]前記凹凸の平均間隔Sが1μm以上3μm以下である、前記[1]に記載の複合分離膜。
[3]前記凹凸の10点平均粗さRZJISが0.3μm以上1μm以下である、前記[1]又は[2]に記載の複合分離膜。
[4]前記複合分離膜が中空糸の形態である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の複合分離膜。
[5]前記複合分離膜がクリンプ形状を呈する、前記[4]に記載の複合分離膜。
[6]基材膜上に分離活性層を有する複合分離膜であって、該複合分離膜は、中空糸の形態であり、かつ、クリンプ形状を呈すること特徴とする複合分離膜。
[7]前記クリンプ形状の振幅が3mm以上30mm以下である、前記[5]又は[6]に記載の複合分離膜。
[8]前記クリンプ形状の振幅が5mm以上20mm以下である、前記[7]に記載の複合分離膜。
[9]前記クリンプ形状の波長が10mm以上150mm以下である、前記[5]〜[8]のいずれかに記載の複合分離膜。
[10]前記クリンプ形状の波長が20mm以上100mm以下である、前記[9]に記載の複合分離膜。
[11]前記クリンプ形状の波長が50mm以上80mm以下である、前記[10]に記載の複合分離膜。
[12]前記分離活性層が、アミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基、インドリル基、ヒドロキシル基、フェノール基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオール基、チオエーテル基、スルホン基、スルホニル基及び下記式:
{式中、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。}で表される基からなる群から選択される1種類以上の官能基を含む重合体を含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の複合分離膜。
[13]前記分離活性層がアミノ基、ヒドロキシル基、及びスルホン基からなる群から選択される1種類以上の官能基を含む重合体を含有する、前記[12]に記載の複合分離膜。
[14]前記重合体がポリアミンである、前記[13]に記載の複合分離膜。
[15]前記ポリアミンがキトサンである、前記[14]に記載の複合分離膜。
[16]前記分離活性層が、Ag及びCuからなる群から選ばれる金属イオンの塩含有する、前記[1]〜[15]のいずれかに記載の複合分離膜。
[17]前記基材膜がフッ素系樹脂を含有する、前記[1]〜[16]のいずれかに記載の複合分離膜。
[18]前記フッ素系樹脂がPVDFである、前記[17]に記載の複合分離膜。
[19]前記[1]〜[18]のいずれかに記載の複合分離膜を用いた気体分離システム。
[20]供給側ガスとして、プロパン40質量%及びプロピレン60質量%からなる混合ガスを用い、加湿雰囲気下、供給側ガス流量を190ml/min、透過側ガス流量を50ml/minとするとき、加湿雰囲気下等圧式によって30℃において測定されるプロピレンガスの透過速度Qが5GPU以上2,500GPU以下であり、かつ、プロピレン/プロパンの分離係数αが50以上2,000以下である、前記[19]に記載の気体分離システム。
本発明に係る複合分離膜は、ゲル膜のような分離活性層を有する分離膜の膜同士の接着が抑制されるため、長期的に高い分離性能を有することができる。
本実施形態の第一の形態(凹凸)の模式図である。 本実施形態の第二の形態(クリンプ)の模式図である。 表面凹凸の説明図である。 クリンプの説明図である。 実施例1の複合分離膜の表面粗さを示すグラフである。 実施例4の複合分離膜の表面粗さを示すグラフである。 比較例1の複合分離膜の表面粗さを示すグラフである。 実施例1の複合分離膜表面のSEM像である。
以下、本発明の実施形態(以下「本実施形態」ともいう。)を詳細に説明する。
本実施形態の分離膜は、基材膜上に分離活性層を有する複合分離膜であって、該分離活性層の表面は凹凸構造を有し、該凹凸の平均間隔Sは0.2μm以上5μm以下であり、かつ、該凹凸の10点平均粗さRZJISは0.2μm以上2μm以下であることを特徴とする。
図1に、本実施形態の第一の実施形態の複合分離膜の構造を示す。第一の実施形態の複合分離膜は、基材膜上に分離活性層が配置されており、凹凸の平均間隔Sが0.2μm以上5μm以下であり、かつ、凹凸の10点平均表面粗さRZJISが0.2μm以上2μm以下である表面粗さを有している。
図2に、本実施形態の第二の実施形態の複合分離膜の構造を示す。第二の実施形態の複合分離膜は、中空糸状基材膜上に分離活性層が配置されており、基材膜である中空糸がクリンプ形状を有している。
[複合分離膜]
<基材膜>
本実施形態の複合分離膜の基材膜は、膜の表裏を貫通する微細な孔を多数有する膜である。基材膜において、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した表面平均孔径は、0.05μm以上0.5μm以下であることが好ましい。
基材膜の材質は、原料流体に対する十分な耐薬品性と、操作温度及び操作圧力における十分な耐久性とを有していれば特に限定されないが、有機材料を用いることが好ましい。基材膜を構成する有機材料としては、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール等のホモポリマー又はこれらのコポリマー等が好ましく、これらのうちのいずれか単独又はこれらの混合物から形成されるものが好ましい。特に、フッ素系樹脂は炭化水素雰囲気における耐久性が高く、得られる基材膜の加工性が良好である。これらの観点から、PVDFが最も好ましい。
基材膜の形状は、平膜状でも中空糸状でも構わない。基材膜が中空糸である場合、モジュールの単位体積当たりの膜面積を大きくできるため好ましい。
基材膜が中空糸である場合、その内径は、原料流体の処理量により適宜選択される、中空糸支持体の内径は、一般的には、0.1mm以上20mm以下の間で選択される。原料流体中に含まれる目的の分離成分との接触性をより高くするためには、中空糸基材膜の内径は、0.2mm〜15mmであることが好ましい。中空糸基材膜の外径は、特に限定されないが、中空糸内外の圧力差に耐え得る厚みを確保するとの観点から、中空糸基材膜の内径を考慮して適宜選択することができる。
<分離活性層>
分離活性層には原料流体から分離成分を分離する機能を有する素材を使用することが好ましい。すなわち、官能基としてアミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基、インドリル基、ヒドロキシル基、フェノール基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオール基、チオエーテル基、スルホン基、若しくはスルホニル基、又は下記式:
{式中、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。}で表される基を含む重合体からなることが好ましい。
上記官能基が含まれる重合体を分離活性層とすることにより、該分離活性層中に任意的に含有される金属塩を高濃度で分散することができる。
分離活性層はゲル性高分子であることが好ましい。ここで、ゲル性高分子とは、水により膨潤する高分子を意味する。
上記官能基を含むゲル性高分子としては、例えば、ポリアミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリ1−ヒドロキシ−2−プロピルアクリレート、ポリアリルスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ポリエチレンイミン、ゼラチン、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリアルギニン等が挙げられる。特にポリアミンは、分離活性層に任意的に含有される金属塩を高濃度で分散できるため好ましい。ポリアミンとしては、例えば、ポリアリルアミン誘導体、ポリエチレンイミン誘導体、ポリアミドアミンデンドリマー誘導体等が挙げられる。
更に、ポリアミンは、結晶性高分子であることが好ましい。このことにより、得られる分離膜における分離活性層の耐久性が向上する。
本実施形態において好適に使用されるポリアミンとしては、例えば、キトサンが挙げられる。ここで、キトサンとは、繰返し単位として少なくともβ−1,4−N−グルコサミンを含み、全繰り返し単位におけるβ−1,4−N−グルコサミンの割合が70モル%以上のものを指す。キトサンは、繰り返し単位としてβ−1,4−N−アセチルグルコサミンを含んでいてもよい。キトサンの繰り返し単位におけるβ−1,4−N−アセチルグルコサミンの割合の上限値は、好ましくは30モル%以下である。
ポリアミンは、官能基によって化学修飾されていても構わない。この官能基としては、例えば、イミダゾリル基、イソブチル基、及びグリセリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましい。
ポリアミンの数平均分子量は、10万以上300万以下であることが好ましく、30万以上150万以下であることがより好ましい。この数平均分子量は、プルランを標準物質とし、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定して得られた値である。
分離活性層には、分離成分との親和性を向上させるために、金属塩を含有することが好ましい。この金属塩は、分離活性層中に分散されて含有されることが好ましい。金属塩としては、1価の銀イオン(Ag)及び1価の銅イオン(Cu)からなる群から選択される1種以上の金属イオンを含む塩を挙げることができる。より具体的には、上記金属塩としては、Ag、Cu、及びこれらの錯イオンからなる群より選ばれるカチオンと、F、Cl、Br、I、CN、NO 、SCN、ClO 、CFSO 、BF 、及びPF 、並びにこれらの混合物からなる群より選ばれるアニオンと、からなる塩が好ましい。これらのうち、入手の容易性及び製品コストの観点から、特に好ましくはAg(NO)である。
分離活性層における金属塩の濃度は、10質量%以上70質量%以下が好ましく、30質量%以上70質量%以下がより好ましく、50質量%以上70質量%以下が更に好ましい。金属塩の濃度が低すぎると、気体分離性能の向上効果が得られない場合がある。金属塩濃度が高すぎると、製造コストが高くなるという不都合が生じる場合がある。
基材膜上に形成される分離活性層の厚みは、薄い方が好ましく、一般的には、0.01μm〜100μmの間で選択される。原料流体中に含まれる目的の分離成分の回収速度を向上させるためには、分離活性層の厚みは0.01μm〜10μmであることが好ましい。また、分離活性層は基材膜に一部浸み込んでいてもよい。
<表面粗さ>
本実施形態の複合分離膜は、分離活性層が形成された膜表面に凹凸があることを特徴とする。凹凸の平均間隔Sは、十分な接着抑制の効果を得る観点から、0.2μm以上であり、好ましくは1μm以上である。他方、凹凸の平均間隔は5μm以下であり、好ましくは3μm以下である。平均間隔Sは大きすぎても特に凸の箇所で接着しやすくなってしまい十分な接着抑制の効果が得られない。尚、これらの下限と上限は任意に組み合わせであることができる。
凹凸の10点平均表面粗さRZJISは、十分な接着抑制効果を得る観点から、0.2μm以上であり、好ましくは0.3μm以上である。他方、欠陥抑止の観点から、2μm以下であり、好ましくは1μm以下である。尚、これらの下限と上限は任意に組み合わせであることができる。
凹凸構造の平均間隔S及び10点平均表面粗さRZJISは、例えば、株式会社キーエンス製の超深度カラー3D形状測定顕微鏡(VK−9500)や原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて、複合分離膜の任意の表面を観察することにより測定可能である。
ここで、凹凸構造の平均間隔S及び10点平均表面粗さRZJISは、任意の表面から抽出した任意の10μmの間に存在する凹部又は凸部の間隔及び表面粗さの平均値とする。
図3を参照して、表面凹凸を説明する。前記装置等を用いて10μmの凹凸構造の情報を取得し、平均高さを0とした粗さ曲線を作成する。粗さ曲線と平均高さ0線が交差する山谷周期の間隔を10μm分(図3ではS〜Sに相当する)測長し、それらの平均値を凹凸構造の平均間隔Sとする。また、粗さ曲線の山および谷の内、高さ変化が大きいものから順に5つの高さを測長し(図3ではRp〜Rp、及びRv〜Rv)、山の5点平均値と谷の5点平均値の和を10点平均表面粗さRZJISとする。
凹凸構造は、分離活性層のみで形成されてもよいし、基材膜内部まで分離活性層が浸み込み基材膜自身の持つ凹凸に追従する形で形成されてもよいし、平滑な分離活性層表面に凹凸を付与するフィラー等を付与してもよい。
<クリンプ>
本明細書中、用語「クリンプ」とは直線に対する波形形状を言う。
図4に示すように、クリンプの振幅5は、山の頂点の凸側から谷の底部の凹側までの長さを表し、波長6は山の頂点から次の山の頂点までの長さを表す。振幅および波長は、複合分離膜モジュールから任意の複合分離膜を10本取り出し、任意の3箇所における振幅と波長を測定し、それらの平均値を分離膜の振幅、波長とする。
第二の実施形態の複合分離膜のクリンプの振幅は、糸同士の接着を抑制するという観点から、好ましくは3mm以上であり、より好ましくは5mm以上である。他方、振幅は、膜性能の保持、膜充填率確保の観点から、好ましくは30mm以下であり、より好ましくは20mm以下である。尚、これらの下限と上限は任意に組み合わせであることができる。
第二の実施形態の複合分離膜のクリンプの波長は、膜性能保持、中空糸充填率確保の観点から、好ましくは10mm以上であり、より好ましくは20mm以上、さらに好ましくは50mm以上である。他方、波長は、十分な流路を確保するという観点から、好ましくは150mm以下であり、より好ましくは100mm以下であり、さらに好ましくは80mm以下である。尚、これらの下限と上限は任意に組み合わせであることができる。
[分離膜モジュール]
次に、本実施形態の気体分離膜モジュールについて説明する。
本実施形態の分離膜モジュールは、上記に説明した本実施形態の複合分離膜を具備する。分離膜モジュールは、通常、ハウジング、及び複合分離膜をハウジング中に接着固定する接着部を有する。
<構造>
中空糸状の基材膜の場合、複合分離膜を編み込み、任意の大きさの糸束を製造する。1本のみを使用してもよく、複数本をまとめて使用してもよい。複数をまとめて使用する場合の使用本数としては、10本以上100,000本以下とすることが好ましく、10,000本以上50,000本以下とすることがより好ましい。本数が少なすぎる場合、分離膜モジュールの生産性低下を引き起こすという問題を生じる。糸束は、どのような構造、形状でも構わない。
このように製造された糸束を、ハウジングに内装した後、糸束の両方の端部に所定の接着剤を注入し、硬化させる。そして、接着剤が硬化した後に、各固定部の末端部を切断し、ヘッダ部を装着することにより、本実施形態の分離膜モジュールを得ることができる。
<接着部>
本実施形態の分離膜モジュールにおける接着部は、エポキシ樹脂系接着剤の硬化物及びウレタン樹脂系接着剤の硬化物から選択される1種以上を含有することが好ましい。
ここでのエポキシ樹脂系接着剤とは、エポキシ基を有する化合物から成る主剤と、硬化剤とから成る。これらを混合して硬化させることにより、本実施形態の分離膜モジュールにおける接着部とすることができる。このエポキシ樹脂系接着剤は、主題及び硬化剤の他に、硬化促進剤を更に含んでいてもよい。
ここでのウレタン樹脂系接着剤とは、水酸基を有する化合物から成る主剤と、イソシアネート類を有する化合物から成る硬化剤とから成る。これらを混合して硬化させることにより、本実施形態の分離膜モジュールにおける接着部とすることができる。
本実施形態の分離膜モジュールにおける接着部としては、エポキシ樹脂系接着剤の硬化物であることが特に好ましい。
本実施形態で使用される接着剤(本実施形態の分離膜モジュールにおける接着部)は、必要に応じて、充填剤、老化防止剤、補強剤等の種々の添加剤を更に含んでいても構わない。
[分離膜モジュールの製造方法]
本実施形態の分離用膜モジュールの製造方法について、中空糸状の基材膜を用いる場合を例として、以下により詳細に説明する。
(基材膜製造工程)
先ず、本実施形態に好ましく使用される基材膜の製造方法について記載する。
基材膜は、非溶媒誘起相分離法又は熱誘起相分離法により得ることができる。
以下、非溶媒誘起相分離法によってPVDFの中空糸膜を製造する場合について説明する。
先ず、PVDFを溶媒に溶解させ、PVDF溶液を準備する。本実施形態で使用されるPVDFの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算の数平均分子量として、好ましくは2,000以上100,000以下であり、より好ましくは10,000以上50,000以下である。これは、分子量が低すぎると、実用性の高い耐久性を示さない等の問題を生じる場合があり、逆に、分子量が大きすぎると、該基材膜の製造が困難になる等の問題を生じる場合があるためである。
本実施の形態において、上記PVDF溶液中のPVDFの濃度は、15質量%以上50質量%以下が好ましく、20質量%以上35質量%以下がより好ましい。これは、PVDFの濃度が低すぎると、実用性の高い耐久性を示さない等の問題を生じる場合があり、逆に、PVDFの濃度が高すぎると、該基材膜の製造が困難になる等の問題を生じる場合があるためである。
PVDF溶液の溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の良溶媒;グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ノニオン系界面活性剤等の貧溶媒が用いられる。PVDF溶液中の良溶媒/貧溶媒の質量比は、該PVDF溶液を紡糸原液として用いる場合の安定性を高めること、均質膜構造を得易くすること等を考慮して、97/3から40/60とするのが好ましい。
次いで、上記で得られたPVDF溶液を紡糸原液として用いて紡糸を行う。二重管状ノズルの外側スリットから該PVDF溶液を、中心孔から芯液を、それぞれ吐出する。芯液には、水や水と良溶媒の混合液を用いることができる。
芯液の吐出量は、紡糸原液であるPVDF溶液の吐出量に対して、0.1倍以上10倍以下とすることが好ましく、0.2倍以上8倍以下とすることがより好ましい。芯液の吐出量と、紡糸原液であるPVDF溶液の吐出量とを、上記範囲で適当に制御することにより、好ましい形状の基材膜を製造できる。
ノズルから吐出された紡糸原液は、空中走行部を通過させた後、凝固漕に浸漬させて、凝固及び相分離を行わせることにより、中空糸膜が形成される。凝固層中の凝固液としては、例えば、水を用いることができる。
凝固漕から引き上げられた湿潤状態の中空糸膜は、溶媒等を除去するために洗浄漕で洗浄した後、ドライヤーに通して乾燥させる。
上記のようにして、中空糸状の基材膜を得ることができる。
本実施形態における基材膜としては、市販の多孔性膜の中から好ましいものを選択して用いてもよい。
(含浸工程)
上記のように得られる基材膜は、これをそのまま次の塗工工程に供してもよいし、該基材膜を粘性水溶液中に含浸させる含浸工程を行ったうえで塗工工程に供してもよい。
本実施形態では、粘性水溶液の粘度は1cP以上200cP以下が好ましく、5cP以上150cP以下がより好ましく、10cP以上100cP以下が更に好ましい。これは、粘性水溶液の粘度が低すぎると、粘性水溶液を用いる効果が出ない等の問題を生じる場合があり、逆に、粘性水溶液の粘度が高すぎると、該粘性水溶液が基材膜に十分に含浸されない等の問題を生じる場合があるためである。
本実施形態における粘性水溶液の溶質としては、水と任意の割合で混合する物質を用いることができる。例えば、グリコール、グリコールエーテル等が好適に用いられる。グリコールとしては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が、グリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノール、エチレングリコールt−ブチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノール、3−メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等がそれぞれ挙げられる。好ましくは、グリセリン、エチレングリコール、及びプロピレングリコールから選択される1種以上である。これらの溶質は、単独で使用しても混合して使用してもよい。
粘性水溶液における溶質の濃度は、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上80質量%以下が好ましい。溶質をこの範囲で水と混合し、上記の粘度範囲に調整することにより、粘性水溶液を調製することができる。
粘性水溶液のpHとしては、4以上10以下が好ましく、5以上9以下がより好ましい。粘性水溶液のpHが低すぎても高すぎても、該粘性水溶液の基材膜への含浸が十分に起こらない場合があるためである。
基材膜を粘性水溶液に浸漬させる場合の浸漬温度は、0℃以上100℃以下とすることが好ましく、20℃以上80℃以下とすることがより好ましい。浸漬温度が低すぎると、粘性水溶液の基材膜への含浸が十分に起こらない等の問題を生じる場合があり、逆に、浸漬温度が高すぎると、浸漬中に粘性水溶液中の溶媒が過度に揮発する等のおそれがあるためである。
浸漬時間は、15分以上5時間以下とすることが好ましく、30分以上3時間以下とすることがより好ましい。浸漬時間が短すぎると、基材膜への含浸が十分に起こらない等の問題を生じるばあいがあり、逆に、浸漬時間が長すぎると、気体分離膜の製造効率が落ちる等の問題を生じる場合がある。
(塗工液製造工程)
基材膜上の被覆層(分離活性層)は、基材膜へ塗工液を接触させることにより、形成することができる。接触方法としては、例えば、ディップ塗工法(浸漬法)、ドクターブレード塗工法、グラビア塗工法、ダイ塗工法、噴霧塗工法等による塗工がある。
以下、ディップ塗工法によってキトサンを接触させ被覆層を形成する場合について説明する。
先ず、キトサン塗工液を調製する。キトサンを水性溶媒に溶解させてキトサン塗工液とする。キトサンの濃度は、0.2質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がより好ましい。キトサン濃度が0.2質量%未満であると、実用性の高い気体分離膜を得られない場合がある。本実施形態において用いるキトサンは、化学修飾されていても構わない。
キトサン塗工液には、溶媒の全量に対して80質量%以下の範囲で有機溶媒が含まれていても構わない。ここで使用される有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、アセニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の極性溶媒等が用いられる。これらの有機溶媒は単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
キトサン塗工液には、基材膜への濡れ性を向上させるため、溶液の全量に対して10質量%以下の界面活性剤が含まれていても構わない。界面活性剤は、促進輸送層を形成する素材と静電反発しないこと、酸性、中性、及び塩基性のいずれの水溶液にも均一に溶解すること、等の観点から、ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンの長鎖脂肪酸エステル、パーフルオロ基を有するフッ素界面活性剤等が挙げられる。その具体例としては、ポリオキシエチレンの長鎖脂肪酸エステルとして、例えば、Tween20(登録商標、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、Tween40(登録商標、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート)、Tween60(登録商標、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)、Tween80(登録商標、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)(以上、東京化成工業社製)、トリトン−X100(登録商用)、プルロニック−F68(登録商標)、プルロニック−F127(登録商標)等;パーフルオロ基を有するフッ素界面活性剤として、例えば、フッ素系界面活性剤FC−4430、FC−4432(以上、3M社製)、S−241、S−242、S−243(以上、AGCセイミケミカル社製)、F−444、F−477(以上、DIC社製)等;をそれぞれ挙げることができる。
キトサン塗工液には、被覆層の柔軟性を向上させるために、溶液の全量に対して20質量%以下の粘性溶質を添加しても構わない。粘性溶質としては、グリコール、グリコールエーテル等が好適に用いられる。グリコールとしては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が、グリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノール、エチレングリコールt−ブチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノール、3−メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等がそれぞれ挙げられる。好ましくは、グリセリン、エチレングリコール、及びプロピレングリコールから選択される1種以上である。これらの溶質は、単独で使用しても混合して使用してもよい。
(塗工工程)
基材膜と接触させる際の塗工液の温度は、0℃以上100℃以下とすることが好ましく、20℃以上80℃以下とすることがより好ましい。接触温度が低すぎると、塗工液が基材膜上に均一に塗工されない等の問題を生じる場合があり、他方、接触温度が高すぎると、接触中に塗工液の溶媒(例えば、水)が過度に揮発する等の問題を生じる場合がある。
接触を浸漬法による場合の接触時間(浸漬時間)は、15分以上5時間以下とすることが好ましく、30分以上3時間以下とすることがより好ましい。接触時間が短すぎると、基材膜への塗工が不十分になる等の問題を生じる場合があり、他方、接触時間が長すぎると、気体分離膜の製造効率が落ちる等の問題を生じる場合がある。
(乾燥工程)
上記塗工工程の後、任意的に乾燥工程(溶媒除去工程)を設けてもよい。この乾燥工程は、塗工後の基材膜を、好ましくは80℃以上160℃以下、より好ましくは120℃以上160℃以下の環境下に、好ましくは5分以上5時間以下、より好ましくは10分以上3時間以下、例えば、静置する方法により行うことができる。これは、乾燥温度が過度に低い場合若しくは乾燥時間が過度に短い場合又はこれらの双方である場合には、溶媒を十分に乾燥除去することができない等の問題を生じる場合があり、逆に、乾燥温度が過度に高い場合若しくは乾燥時間が過度に長い場合又はこれらの双方である場合には、製造コストの増加、製造効率の低下等の問題を生じる場合があるためである。
塗工時に基材膜内部にまで分離活性層を浸み込ませるために圧力をかけてもよい。圧力は基材膜と塗工液との濡れ性によって大きく異なるが、中空糸の場合には基材膜自身の耐圧性未満の圧力且つ、中空部まで塗工液が浸み込まない圧力に設定することが好ましい。
(クリンプ工程)
クリンプ工程は、分離活性層の塗工前、塗工後いずれに設けてもよい。クリンプは一対のクリンパロール間に中空糸を通過させることにより形成できる。
中空糸膜にクリンプを与える際、クリンプを与える直前に中空糸を加熱し、クリンパロールを通過させ、クリンプ形状を付与し、その後室温に冷却してクリンプを固定化する。
加熱温度は基材膜素材により異なるが、低すぎると十分なクリンプ形状を付与することができず、膜のガラス転移点以上に加熱すると、膜素材自体の変質が起こり、膜性能が低下するので好ましくない。従って、通常、60℃以上ガラス転移点以下の範囲にするのが好ましい。例えば、PVDF中空糸の場合は60℃〜120℃が好ましく、より好ましくは70℃〜110℃である。また、温度によってクリンプの振幅が変化するため、一定の温度にコントロールすることが好ましい。
(接着工程)
塗工工程の後、分離膜を複数本まとめて端部を接着剤で固定する。使用本数としては、10本以上100,000本以下とすることが好ましく、10,000本以上50,000本以下とすることがより好ましい。本数が少なすぎる場合、分離膜モジュールの生産性低下を引き起こし得る。中空糸束は、どのような構造、及び形状であっても構わない。
上記のように製造された中空糸又は中空糸束を、使用するハウジング径に合わせた接着剤硬化用モールドに収納した後、糸束の両方の端部に接着剤の所定量を注入し、硬化して接着部を形成する。
[気体分離システム]
本実施形態における気体分離システムは、前記分離膜モジュールを後述するハウジング内に内装し、混合気体から目的の気体を分離するための装置である。気体分離性能を向上させるためには、分離膜モジュールの前段に加湿機構(加湿手段)を設置することが好ましく、分離膜モジュールの後段に脱水機構(脱水手段)を設置することが好ましい。また、使用時の品質管理を目的に精製ガスのガス検知システムを設けることが好ましい。
(ハウジング)
本実施形態の気体分離システムのハウジングは、少なくとも複合分離膜を内装することができ、接着部によって分離膜モジュールをハウジングに固定することができ、更に、接着部によって複合分離膜の表面側(外側)が属する空間と複合分離膜の裏面側(内側)が属する空間とを分離することができるものであれば、どのような構造及び形状であっても構わない。例えば、円筒状、筐体状等の形状が可能である。
ハウジングは、接着部によって分離される、複合分離膜の表面側が属する空間と複合分離膜の裏面側が属する空間に、それぞれ、混合気体と分離気体を流通させるための流路を有することが好ましい。
ハウジングを構成する材料としては、分離対象物に対して十分な耐薬品性を有し、稼働温度及び稼働圧力において十分な耐久性を有していれば、特に限定されずに選択使用することができる。そのような材料として、例えば、金属、合成樹脂等を例示することができる。ハウジングのサイズは、これに内装される分離膜モジュールのサイズ、分離処理能力等に応じて、適宜に設定することができる。
(加湿機構)
気体分離システムは加湿機構を備えることが好ましい。加湿機構は分離膜モジュール前段又は分離用膜モジュール内部に置かれることが好ましい。分離膜モジュール前段に置かれる加湿機構としては、例えば、バブラーが挙げられる。原料ガスを水中にバブリングすることで、バブラー温度に準じた水分がガス中に同伴される。気体分離膜モジュール内部に置かれる加湿機構としては、分離膜の被覆層側に水溶液を満たす手法や、ハウジングにミストシャワーを供給するスプレーノズルを設ける手法などが挙げられる。加湿機構を備えることで、原料ガス中の無機不純物を水中に溶解させることができる。
(脱水機構)
気体分離システムは分離膜モジュール後段に脱水機構を備えることが好ましい。脱水機構としては、例えば、ミストセパレーターや、アルミナ、ゼオライト等の吸着剤を利用する手段が挙げられる。脱水機構を備えることで、水中に溶け込んだ無機不純物を水とともに除去できる。
(ガス純度検知システム)
気体分離システムではシステム内にオンラインで精製ガス純度を測定できるガス純度検知システムを備えることが好ましい。ガス純度検知システムとしては、ガスクロマトグラフ質量分析計、ガスクロマトグラフ水素炎イオン化検出器、ガスクロマトグラフ熱伝導度検出器、ガスクロマトグラフフレーム光度検出器、イオンクロマトグラフィーなどが挙げられる。
(気体分離システムの性能)
本実施形態の気体分離システムは、例えば、オレフィンとパラフィンとの分離に好適に用いることができる。具体的には、例えば、膜面積2cmの分離膜モジュールに対し、供給側ガスとして、プロパン40質量%及びプロピレン60質量%から成る混合ガスを用い、加湿雰囲気下、供給側ガス流量を190ml/min、透過側ガス流量を50ml/minとし、加湿雰囲気下等圧式によって30℃において測定されたプロピレンガスの透過速度Qは、好ましくは5GPU以上2,500GPU以下であり、より好ましくは30GPU以上2,500GPU以下である。プロピレン/プロパンの分離係数αは、好ましくは50以上2,000以下であり、より好ましくは70以上2,000以下であり、さらに好ましくは100以上2,000以下である。
これらの値はプロピレン分圧1.5気圧以下の条件で測定される。
以下、本発明を具体的に説明する。本発明は実施例等に何ら限定されるものではない。
(分離膜モジュール)
10本の分離膜を充填率が50%になるように密に束ね両端とハウジングを接着剤で固定したモジュールを作製した。得られたモジュールに7M硝酸銀水溶液を充填し、24時間浸漬させた後に硝酸銀水溶液を抜出し、分離活性層に銀イオンを含むゲル状の分離膜としてガス透過性能を評価した。
(ガス透過性能評価)
ジーティーアールテック社製、型式名「等圧式ガス透過率測定装置(GTR20FMAK)」を用いて、供給側にプロパン及びプロピレンからなる混合ガス(プロパン:プロピレン=40:60(質量比))を、透過側にヘリウムを、それぞれ用い、供給側ガス流量を190ml/min、透過側ガス流量を50ml/minとして、測定温度30℃において加湿雰囲気下等圧式(200kPa加圧条件)にて、各試験ガスの透過速度Q(1GPU=1×10−6[cm(STP)/cm/s/cmHgである。])を測定した。
更に、以下の式:
選択性α=プロピレン透過速度(Q)/プロパン透過速度(Q)×100
により選択性αを求めた。
[実施例1]
基材膜として、以下の表2に記載のポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の孔径0.24μm、外径1.2mm、内径0.7mmの中空糸を用いた。
上記の基材膜を、25cm長さにしたうえで両端をヒートシールで封止し、以下の表1に示す組成の塗工液A(液温25℃)中に、浸漬させ、基材膜全部が上記水溶液中に没した状態で50kPaに加圧し、15秒間静置した後、1cm/secの速度で引上げ、120℃において10分加熱することにより、中空糸状の分離膜を製造し、分離膜モジュールを製造した。評価結果を以下の表2に示す。
[実施例2]
表2に示す塗工圧力で塗工した他は、実施例1と同様にして中空糸状の分離膜を製造した。得られた分離膜を100℃に20分間加熱し、クリンパーで挟んで30分間室温まで冷却しクリンプ形状を固定化して分離膜モジュールを製造した。評価結果を以下の表2に示す。
[実施例3、4、及び6]
以下の表1に示す塗工液を用い、表2に示す基材膜及び塗工圧力で塗工した他は、実施例1、2と同様にして中空糸状の分離膜と分離膜モジュールを製造した。クリンプの波長と振幅は、使用するクリンパーのクリンパロールの外径とピッチを調整することで所望の値とした。評価結果を以下の表2に示す。
[実施例5]
基材膜として、以下の表2に記載のポリエーテルスルホン(PES)製の孔径0.09μm、外径0.9mm、内径0.5mmの中空糸を用いた。
上記の基材膜を、25cm長さにしたうえで両端をヒートシールで封止し、塗工液A(液温25℃)中に、浸漬させ、基材膜全部が上記水溶液中に没した状態で100kPaに加圧し、15秒間静置した後、1cm/secの速度で引上げ、120℃において10分加熱することにより、中空糸状の分離膜を製造し、分離膜モジュールを製造した。評価結果を以下の表2に示す。
[実施例7]
基材膜として、以下の表2に記載のポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の孔径0.06μm、外径1.2mm、内径0.7mmの中空糸を用いた。
上記の基材膜を、25cm長さにしたうえで両端をヒートシールで封止し、以下の表1に示す塗工液D(液温25℃)中に、浸漬させ、基材膜全部が上記水溶液中に没した状態で、15秒間静置した後、1cm/secの速度で引上げ、120℃において15分加熱することにより、中空糸状の分離膜を製造し、分離膜モジュールを製造した。
10質量%Nafion(登録商標)分散水溶液(シグマアルドリッチ社製)を5質量%水溶液に希釈し塗工液Dとした。評価結果を以下の表2に示す。
[比較例1]
基材膜として、以下の表2に記載のポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の孔径0.06μm、外径1.1mm、内径0.7mmの中空糸を用いた。
上記の基材膜を、25cm長さにしたうえで両端をヒートシールで封止し、塗工液A(液温25℃)中に、浸漬させ、基材膜全部が上記水溶液中に没した状態で、15秒間静置した後、1cm/secの速度で引上げ、120℃において10分加熱することにより、中空糸状の分離膜を製造し、分離膜モジュールを製造した。評価結果を以下の表2に示す。
[比較例2]
基材膜として、以下の表2に記載のポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の孔径0.06μm、外径1.1mm、内径0.7mmの中空糸を用いた。
上記の基材膜を、25cm長さにしたうえで両端をヒートシールで封止し、塗工液A(液温25℃)中に、浸漬させ、基材膜全部が上記水溶液中に没した状態で、15秒間静置した後、0.5cm/secの速度で引上げ、120℃において10分加熱することにより、中空糸状の分離膜を製造し、分離膜モジュールを製造した。評価結果を以下の表2に示す。
[比較例3]
比較例1と同様にして中空糸状の分離膜を製造した。得られた分離膜を100℃に20分間加熱し、クリンパーで挟んで30分間室温まで冷却しクリンプ形状を固定化して分離膜モジュールを製造した。評価結果を以下の表2に示す。
表2から、実施例1〜7は、比較例1〜3と比べて、高いプロピレン透過速度Q、及び高いプロピレン選択性αが得られることが分かる。
以上に示したように、複合分離膜の分離活性層側の表面粗さを制御するか又は複合分離膜にクリンプ形状を施すことにより、高いガス選択性を有する複合分離膜が得られることが検証された。
本発明に係る複合分離膜は、分離活性層を有する膜表面の表面粗さを制御するか又はクリンプ形状を形成することによって、膜同士の接着を防げるため、高い分離性能を要する各種分離に好適に利用可能である。
1 基材膜
2 分離活性層
3 分離膜
4 接着部
5 振幅
6 波長

Claims (20)

  1. 基材膜上に分離活性層を有する複合分離膜であって、該分離活性層の表面は凹凸構造を有し、該凹凸の平均間隔Sは0.2μm以上5μm以下であり、かつ、該凹凸の10点平均粗さRZJISは0.2μm以上2μm以下であることを特徴とする複合分離膜。
  2. 前記凹凸の平均間隔Sが1μm以上3μm以下である、請求項1に記載の複合分離膜。
  3. 前記凹凸の10点平均粗さRZJISが0.3μm以上1μm以下である、請求項1又は2に記載の複合分離膜。
  4. 前記複合分離膜が中空糸の形態である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合分離膜。
  5. 前記複合分離膜がクリンプ形状を呈する、請求項4に記載の複合分離膜。
  6. 基材膜上に分離活性層を有する複合分離膜であって、該複合分離膜は、中空糸の形態であり、かつ、クリンプ形状を呈すること特徴とする複合分離膜。
  7. 前記クリンプ形状の振幅が3mm以上30mm以下である、請求項5又は6に記載の複合分離膜。
  8. 前記クリンプ形状の振幅が5mm以上20mm以下である、請求項7に記載の複合分離膜。
  9. 前記クリンプ形状の波長が10mm以上150mm以下である、請求項5〜8のいずれか1項に記載の複合分離膜。
  10. 前記クリンプ形状の波長が20mm以上100mm以下である、請求項9に記載の複合分離膜。
  11. 前記クリンプ形状の波長が50mm以上80mm以下である、請求項10に記載の複合分離膜。
  12. 前記分離活性層が、アミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基、インドリル基、ヒドロキシル基、フェノール基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオール基、チオエーテル基、スルホン基、スルホニル基及び下記式:
    {式中、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。}で表される基からなる群から選択される1種類以上の官能基を含む重合体を含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の複合分離膜。
  13. 前記分離活性層がアミノ基、ヒドロキシル基、及びスルホン基からなる群から選択される1種類以上の官能基を含む重合体を含有する、請求項12に記載の複合分離膜。
  14. 前記重合体がポリアミンである、請求項13に記載の複合分離膜。
  15. 前記ポリアミンがキトサンである、請求項14に記載の複合分離膜。
  16. 前記分離活性層が、Ag及びCuからなる群から選ばれる金属イオンの塩を含有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の複合分離膜。
  17. 前記基材膜がフッ素系樹脂を含有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の複合分離膜。
  18. 前記フッ素系樹脂がPVDFである、請求項17に記載の複合分離膜。
  19. 請求項1〜18のいずれか1項に記載の複合分離膜を用いた気体分離システム。
  20. 供給側ガスとして、プロパン40質量%及びプロピレン60質量%からなる混合ガスを用い、加湿雰囲気下、供給側ガス流量を190ml/min、透過側ガス流量を50ml/minとするとき、加湿雰囲気下等圧式によって30℃において測定されるプロピレンガスの透過速度Qが5GPU以上2,500GPU以下であり、かつ、プロピレン/プロパンの分離係数αが50以上2,000以下である、請求項19に記載の気体分離システム。
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