JP2021106543A - 温度応答性細胞培養用マイクロキャリア - Google Patents

温度応答性細胞培養用マイクロキャリア Download PDF

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美子 茂原
礼奈 森安
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礼奈 森安
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Satoru Hagita
悟 波北
正道 森田
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正道 森田
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Abstract

【課題】細胞本来の細胞接着性を損なわずに、高い細胞剥離性を示す新たな温度応答性細胞培養用マイクロキャリアの提供。【解決手段】温度応答性層を有する温度応答性細胞培養用マイクロキャリアであって、前記温度応答性層が、デンドリティックポリマーの末端に温度応答性のブロックが結合したブロックポリマーを含む温度応答性ポリマーを含み、前記温度応答性層に含まれる、分子量Mの常用対数(logM)が3.0以上である前記温度応答性ポリマーの合計のうち、logMが5.0以上である前記温度応答性ポリマーの合計が、45%以上である、温度応答性細胞培養用マイクロキャリア。【選択図】なし

Description

本開示は、温度応答性細胞培養用マイクロキャリアに関する。
細胞培養用マイクロキャリアとして、比重が1.2以下の材質からなる粒体表面に、電荷を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーが固定化されていることを特徴とする温度応答性細胞培養用ビーズが提案されている(特許文献1)。
特開2017−01217号公報
本開示は、細胞本来の細胞接着性を損なわずに、高い細胞剥離性を示す新たな温度応答性細胞培養用マイクロキャリアを提供することを課題とする。
項1.
温度応答性層(A)を有する温度応答性細胞培養用マイクロキャリアであって、
前記温度応答性層(A)が、デンドリティックポリマーの末端に温度応答性のブロックが結合したブロックポリマーを含む温度応答性ポリマーを含み、
前記温度応答性層(A)に含まれる、分子量Mの常用対数(logM)が3.0以上である前記温度応答性ポリマーの合計のうち、logMが5.0以上である前記温度応答性ポリマーの合計が、45%以上である、
温度応答性細胞培養用マイクロキャリア。
項2.
前記温度応答性層(A)に含まれる、分子量Mの常用対数(logM)が3.0以上である前記温度応答性ポリマーの合計のうち、logMが5.5以上である前記温度応答性ポリマーの合計が、10%以上である、
項1記載の温度応答性細胞培養用マイクロキャリア。
項3.
前記温度応答性層(A)が、前記温度応答性ポリマーを、温度応答性領域換算で1.0〜6.0μg/cm含む、項1又は2に記載の温度応答性細胞培養用マイクロキャリア。
項4.
平均粒子径が20〜200μmである、項1〜3のいずれか一項に記載の温度応答性細胞培養用マイクロキャリア。
本開示によれば、新たな温度応答性細胞培養用マイクロキャリアを提供できる。
本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアにおいて、前記温度応答性層(A)に含まれる、分子量Mの常用対数(logM)が3.0以上である成分のうち、logMが5.0以上である成分の割合[B/(A+B)*100(%)]の求め方を示した模式図である。
本開示は、以下の実施形態を含む。
1.温度応答性細胞培養用マイクロキャリア
本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアは、
温度応答性層(A)を有する温度応答性細胞培養用マイクロキャリアであって、
前記温度応答性層(A)が、デンドリティックポリマーの末端に温度応答性のブロックが結合したブロックポリマーを含む温度応答性ポリマーを含み、
前記温度応答性層(A)に含まれる、分子量Mの常用対数(logM)が3.0以上である前記温度応答性ポリマーの合計のうち、logMが5.0以上である前記温度応答性ポリマーの合計が、45%以上である、
温度応答性細胞培養用マイクロキャリアである。
1.1 温度応答層(A)
温度応答層(A)は、少なくとも温度応答性ポリマーを含み、表面が温度応答性を示す。本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアにおいては、この温度応答性を示す表面が、細胞培養を行う面として使用される。
本開示において、用語「温度応答性ポリマー」には、全体が温度応答性領域となっているポリマーが含まれるほか、さらに、温度応答性領域と、温度応答性を示さない領域とを有するポリマーも含まれる。後者のことを必要に応じて「部分的温度応答性ポリマー」と称することがある。
上記において、「温度応答性領域」は、一種のポリマーのみで構成されていてもよいし、二種以上のポリマーのブロックをそれぞれ有するブロックポリマーで構成されていてもよい。
部分的温度応答性ポリマーの具体例として、以下が挙げられる。
P[NIPAM/B(M)A]−b−P(Styrene)
P[NIPAM/F(M)A]−b−P(Styrene)
NIPAM:N−イソプロピルアクリルアミド
B(M)A:ブチル(メタ)アクリレート
F(M)A:フルオロアルキル(メタ)アクリレート
なお、上記において、P[NIPAM/B(M)A]等とあるのは、NIPAMとB(M)Aとの共重合体を意味し、−b−は、その記号の両端のポリマーのブロックをそれぞれ有するブロックポリマーを意味する。上記において、P[NIPAM/B(M)A]とP[NIPAM/F(M)A]とがいずれも温度応答性領域に相当し、P(Styrene)(ポリスチレン)が非温度応答性領域に相当する。
温度応答層(A)は、温度応答性ポリマーを少なくとも一種含む。
前記温度応答性ポリマーは、デンドリティックポリマーの末端に温度応答性のブロックが結合したブロックポリマーを含む。
温度応答時の細胞剥離性が優れており、及び/又は温度応答性ポリマーの溶出が抑制される特徴を有する本開示の態様においては、温度応答層(A)は、温度応答性ポリマーを、部分的温度応答性ポリマーの形態で含んでいる。
温度応答性層(A)に含まれる分子量Mの常用対数(logM)が3.0以上である、温度応答性ポリマーの合計のうち、分子量Mの常用対数(logM)が5.0以上である、温度応答性ポリマーの合計が、45%以上である。本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアは、温度応答層(A)が上記の特性を有していることにより、温度応答時に優れた細胞剥離性を有する。これらの効果は、上記割合が、45〜100%の範囲内にあるときに得られる。細胞剥離性がより優れる点で、50〜100%が好ましく、55〜100%が特に好ましい。
温度応答時にさらに優れた細胞剥離性を有する点で、温度応答性層(A)に含まれる分子量Mの常用対数(logM)が3.0以上である、温度応答性ポリマーの合計のうち、分子量Mの常用対数(logM)が5.5以上である、温度応答性ポリマーの合計が、10%〜100%であることが好ましく、15〜100%であることがより好ましい。
本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアにおける、温度応答性ポリマーについての上記の分子量分布は、具体的には次のようにして求める。すなわち、温度応答性層(A)を4℃に冷却した純水中に浸漬した状態で24時間振とうし、純水中に抽出された温度応答性ポリマーを、温度応答性層(A)に含まれる、温度応答性ポリマーとして計算する。これらのポリマーは、GPC測定(カラム:TSKgel SuperAWM−H(東ソー)、溶離液:50mM LiBr in DMF、標準:ポリスチレン)により分子量分布測定を行う。
logMが3.0以上である、温度応答性ポリマーの合計のうち、logMがx以上である、温度応答性ポリマーの合計は以下のようにして求める。横軸に分子量の対数(LogM)、縦軸に微分分布値(dW/dLogM)をプロットした分子量分布曲線(図1)を用意する。微分分布値とは、単位LogM当たりの重量分率のことを指す。すなわち、分子量分布図の数値の解釈は横軸の範囲M〜M+ΔMと分布曲線で囲まれる面積で行なうことができる。温度応答性ポリマーの合計について、LogM=x未満の分子量分布の面積Aと、LogM=x以上の分子量分布曲線の面積Bとをそれぞれ算出する。それらの面積値を用いて、式(1)によりLogM≧xの高分子の含有率(%)を算出する。
B/(A+B)×100(%) ・・・(1)
温度応答性層(A)は、分子量Mの常用対数(logM)が2.0以下である、温度応答性ポリマーを含まないことが好ましい。また、温度応答性層(A)は、分子量Mの常用対数(logM)が2.5以下である、温度応答性ポリマーを含まないことがより好ましい。さらに、温度応答性層(A)は、分子量Mの常用対数(logM)が3.0未満である、温度応答性ポリマーを含まないことが特に好ましい。
温度応答性層(A)は、分子量Mの常用対数(logM)が8.0以上である、温度応答性ポリマーを含まないことが好ましい。
上記の分子量分布を有する温度応答性ポリマーを得る方法は特に限定されず、幅広く採用することができる。一例として、温度応答性ポリマーをアセトン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)などの良溶媒に溶解させ、ヘキサン、水などの貧溶媒中で析出させる再沈殿操作を行うことにより、分画する方法が挙げられる。水を使用する場合、40〜60℃の水を使用することが好ましい。また、GPC(Gel permeation chromatography)によって分画する方法等も挙げられる。
温度応答時の細胞剥離性を向上させるためには、温度応答性層(A)に含まれる成分のうち、温度応答性ポリマーの合計の占める割合が、総量で、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがさらにより好ましい。
本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアは、温度応答性ポリマーが、温度応答性領域換算でマイクロキャリア表面に0.1μg/cm以上、好ましくは0.5μg/cm以上、より好ましくは1.0μg/cm以上マイクロキャリア表面に固定化されていることが好ましい。本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアは、温度応答性ポリマーの固定化量が上記以上であると、温度を変えても当該ポリマー上の培養細胞が剥離し難くなるということがない。
本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアは、温度応答性ポリマーの合計が、温度応答性領域換算で、10μg/cm以下、好ましくは5μg/cm以下、より好ましくは4μg/cm以下、マイクロキャリア表面に固定化されていれば、温度応答前の状態で細胞が表面に付着し易く、細胞を十分に付着させることが容易となる。
総合すると、本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアは、温度応答性ポリマーの合計が、温度応答性領域換算で、0.5〜10μg/cm、表面に固定化されていることが好ましく、1.0〜5.0μg/cm、表面に固定化されていることがより好ましく、1.5〜4.0μg/cm、表面に固定化されていることがさらに好ましい。
本開示において、マイクロキャリア表面への温度応答性ポリマーの固定化量は、マイクロキャリア表面に適用した温度応答性ポリマーの量から計算できる。ただし、必要に応じて、温度応答性ポリマーの固定化量を常法に従って測定することもできる。そのような測定方法としては、例えばフーリエ変換赤外分光全反射減衰法(FT-IR-ATR法)、元素分析法及びXPS法等が挙げられる。測定結果にバラつきが生じない限り、いずれの測定法を選択してもよいが、バラつきが生じる場合は、本開示においてはFT-IR-ATR法による測定結果を採用する。
FT-IR-ATR法での測定は、具体的には以下のようにして行う。基材としてポリスチレン製マイクロキャリアを、温度応答性ポリマーとしてPNIPAMをそれぞれ用いる場合を一例として説明するが、他の基材及び/又はポリマーを用いる場合も以下の例を応用することにより同様にして測定できる。
ポリスチレン製マイクロキャリアを基材とし、温度応答性ポリマーとしてPNIPAMを固定化させた、温度応答性細胞培養基材を用意する。同基材をFT−IR−ATR測定すると、次式(5)にて表される、ポリスチレンに由来するベンゼン環伸縮(1600cm−1)の吸収強度に対する、PNIPAMに由来するアミド伸縮(1650cm−1)の吸収強度の比率を得ることができる。
(5) 吸収強度比率=I1650/I1600
既知量のPNIPAM(1〜10μg/cm)をポリスチレン基材に塗布し、式(5)により得られる吸収強度比率から検量線を予め作成しておくことにより、ポリスチレン基材上に固定化された未知のPNIPAMの量を求めることができる。(参考文献:Langmuir 2004,20,5506−5511)。
1.2 温度応答性領域を構成するポリマー
温度応答性領域を構成するポリマーは、特に限定されず、幅広く選択することができる。温度応答性領域を構成するポリマーは、具体的には、下限臨界溶解温度(LCST)を有するポリマー、又は上限臨界溶解温度[Upper Critical Solution emperature(UCST)]を有するポリマーが挙げられ、ブロックポリマーであってもよい。ブロックポリマーは、一種の温度応答性ブロックを含んでいてもよいし、複数種の温度応答性ブロックを含んでいてもよい。
温度応答性領域を構成するポリマーとしては、例えば、特公平06−104061号公報に記載されているポリマーが挙げられる。具体的には、例えば、以下のモノマーの少なくとも一種に基づく構成単位を有するポリマーが挙げられる。モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体及びビニルエーテル誘導体等が挙げられる。
温度応答性領域を構成するポリマーとしては、ポリビニルアルコール部分酢化物及び含窒素環状ポリマー等も例示できる。
温度応答性領域を構成するポリマーとしては、アルキル置換セルロース誘導体、ポリアルキレンオキサイドブロック共重合体及びポリアルキレンオキサイドブロック共重合体等も例示できる。
培養細胞の剥離は、通常、5℃〜50℃の範囲で行うことが好ましいため、LCST又はUCSTがこの範囲内であるポリマーが、温度応答性領域を構成するポリマーとして好ましい。そのような温度応答性を有する、ポリ(N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体を重合して得られるポリマー(ポリ(N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド))の具体例としては、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド(下限臨界溶解温度21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド(同27℃)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(同32℃)、ポリ−N−イソプロピルメタクリルアミド(同43℃)、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド(同45℃)、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド(同約35℃)、ポリ−N−エトキシエチルメタクリルアミド(同約45℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(同約28℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(同約35℃)、ポリ−N,N−エチルメチルアクリルアミド(同56℃)、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(同32℃)、ポリ(N−エチルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N−シクロプロピルアクリルアミド)及びポリ(N−シクロプロピルメタクリルアミド)等が挙げられる。
上記と同様の範囲のLCST又はUCSTを有する具体的なポリマーとしては、他にも、以下のものを例示できる。ポリビニルエーテルとして、例えば、ポリメチルビニルエーテル等が挙げられる。含窒素環状ポリマーとして、例えば、ポリ(N−アクリロイルピロリジン)及びポリ(N−アクリロイルピペリジン)等が挙げられる。アルキル置換セルロース誘導体として、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。ポリアルキレンオキサイドブロック共重合体としては、例えば、ポリポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドとのブロック共重合体等が挙げられる。
温度応答性領域を構成するポリマーとしては、ホモポリマーが温度応答性を示す上記モノマーの少なくとも一種と、上記モノマー以外の少なくとも一種のモノマーとの共重合体を用いることもできる。そのような他のモノマーとして、例えば、荷電を有するモノマー及び/又は疎水性モノマーを使用できる。
荷電を有するモノマーとして、例えばアミノ基を有するモノマー、アンモニウム塩を有するモノマー、カルボキシル基を有するモノマー、及びスルホン酸基を有するモノマー等が挙げられる。
アミノ基を有するモノマーとしては、例えば、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノスチレン、アミノアルキルスチレン、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
アンモニウム塩を有するモノマーとしては、例えば、[2−(2−メチルアクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム塩、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩である3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
また、スルホン酸を有するモノマーとしては、(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸等が挙げられる。
疎水性モノマーとしては、アルキルアクリレート、アルキルメタアクリレート等が挙げられる。アルキルアクリレートとしては、例えば、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート等が挙げられる。アルキルメタアクリレートとしては、例えば、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート等が挙げられる。疎水性モノマーとしては、以下に挙げる含フッ素モノマーも使用できる。
含フッ素モノマーとして、例えば、カルボキシル基に対して直接又は2価の有機基を介してエステル結合又はアミド結合したフルオロアルキル基を有し、α位に置換基を有することのあるアクリル酸エステル(以下、「フルオロアルキル基含有アクリル酸エステル」と略記することがある。)、又は「フルオロアルキル基含有アクリルアミド」等が挙げられる。
フルオロアルキル基含有アクリル酸エステル又はフルオロアルキル基含有アクリルアミドの好ましい具体例としては、下記一般式(1):
CH=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf (1)
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状又は分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX基(但し、X及びXは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基、置換若しくは非置換のベンジル基又は置換若しくは非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−又は−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基若しくは環状脂肪族基、
−CHCHN(R)SO−基(但し、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。
)、−CHCH(OZ))CH−基(但し、Zは水素原子又はアセチル基である。)、−(CH−SO−(CH−基、−(CH−S−(CH−基(但し、mは1〜10、nは0〜10である。)又は−(CH−COO−基(mは1〜10である。)であり;
Rfは、ヘテロ原子を有していてもよい、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である。]で表されるアクリル酸エステル及びアクリルアミドを例示できる。
上記一般式(1)において、Rfで表されるフルオロアルキル基は、少なくとも一個の水素原子がフッ素原子で置換された、ヘテロ原子を有していてもよいアルキル基であり、全ての水素原子がフッ素原子で置換された、ヘテロ原子を有していてもよいパーフルオロアルキル基も包含するものである。
上記一般式(1)で表されるアクリル酸エステル及びアクリルアミドでは、Rfが炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基であることが好ましく、特に、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。近年、EPA(米国環境保護庁)により、炭素数が8以上のフルオロアルキル基を有する化合物は、環境、生体中で分解して蓄積するおそれがある環境負荷が高い化合物であることが指摘されているが、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル及びアクリルアミドにおいてRfが炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である場合には、この様な環境問題が指摘されていないためである。
上記式(1)において、Rf基の例として、−CF、−CFCF、−CFCFH、−CFCFCF、−CFCFHCF、−CF(CF、−CFCFCFCF、−CFCF(CF、−C(CF、−(CFCF、−(CFCF(CF、−CFC(CF、−CF(CF)CFCFCF、−(CFCF、−(CFCF(CF等が挙げられる。
さらに、含フッ素モノマーは、非テロマーであることが好ましく、この点で、Rf基としては、炭素数1〜2のフルオロアルキル基、又はヘテロ原子によって介在された二以上の炭素数1〜3のフルオロアルキル基が好ましい。具体例としては、COCF(CF)CFOCF(CF)−、(CFNC2p−(p=1〜6)等が挙げられる。
上記した一般式(1)で表されるアクリル酸エステル及びアクリルアミドの具体例は、次の通りである。
CH=C(−H)−C(=O)−O−(CH−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−C−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−(CHN(−CH)SO−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−(CHN(−C)SO−Rf CH=C(−H)−C(=O)−O−CHCH(−OH)CH−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−CHCH(−OCOCH)CH−Rf CH=C(−H)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf CH=C(−H)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CH−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−C−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CHN(−CH)SO−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CHN(−C)SO−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−CHCH(−OH)CH−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−CHCH(−OCOCH)CH−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf CH=C(−F)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf CH=C(−F)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
[上記式中、Rfは、炭素数1〜6、好ましくは、1〜3のフルオロアルキル基である。]
OCF(CF)CFO−CF(CF)CH−MAc
OCF(CF)CFO−CF(CF)CH−Ac
(CFCH−Ac
CH−MAc
CH−Ac
[上記式中において、Acはアクリレート、MAcはメタクリレートを、それぞれ表す。
上記したフルオロアルキル基含有アクリル酸エステル及びフルオロアルキル基含有アクリルアミドは、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
温度応答性領域を構成するポリマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−(若しくはN,N−ジ)置換(メタ)アクリルアミド及びビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも一種を少なくとも含むモノマー組成物を重合することにより得られうるポリマー、又はポリビニルアルコール部分酢化物が好ましい。
また、前記した温度応答性領域を構成するポリマーをセグメントとして有するブロックポリマーを用いてもよい。また、ポリマー本来の性質を損なわない範囲で、温度応答性領域を構成するポリマー同士を架橋したものを用いてもよい。その際利用される架橋性モノマーとしては特に限定されず、幅広く選択できる。例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
1.3 デンドリティックブロックコポリマー
本開示においては、温度応答層(A)が、デンドリティックポリマーの末端に、前記温度応答性領域を構成するポリマーが結合したブロックポリマー(本明細書において、「デンドリティックブロックコポリマー」という)を含有する。これにより、より優れた細胞剥離性を有し、及び/又は使用中の温度応答性ポリマーの溶出が抑制された温度応答性細胞培養用マイクロキャリアが得られやすくなる。
特に、温度応答性領域を除いた、コアとなるデンドリティックポリマー部分(本明細書において、この部分のことを、デンドリティックブロックコポリマー全体と峻別するために、単に「デンドリティックポリマー」と呼ぶことがある)が、スチレン骨格又はシロキサン骨格のデンドリティックポリマーであることが好ましい。本開示者らの検討によれば、このような骨格を有していることにより、デンドリティックポリマー部分が、マイクロキャリア表面に規則的に配置されやすくなり、これにより安定的にマイクロキャリア表面に固定化される結果、細胞培養のときだけでなく、温度応答により細胞を剥離させるときにおいても遊離しにくいという効果が得られる。
また、スチレン骨格のデンドリティックポリマーの末端に前記温度応答性領域を構成するポリマーが結合したデンドリティックブロックコポリマーは、水不溶性のスチレン骨格のデンドリティックポリマー部分と、水に親和性を有する温度応答性領域とが結合したものである。したがって、このデンドリティックブロックコポリマーでマイクロキャリア表面を被覆し、乾燥させることにより、マイクロキャリア表面に微細な相分離構造が形成されることが期待される。細胞がマイクロキャリア表面に付着する際に、基材表面に相分離構造があると細胞の変性を抑えることが可能となるため好ましい。
デンドリティックポリマーとしては、末端数15以上のデンドリティックポリマーが好ましい。末端数が15以上であることにより、末端に結合する温度応答性領域を構成するポリマーの単位体積当たり密度を好ましい範囲とすることができ、このことが、温度応答時の細胞剥離性の向上に寄与する。この点において、スチレン骨格のデンドリティックポリマーの末端数は、15以上であれば好ましく、20以上であればより好ましい。
また、このデンドリティックポリマーの末端数は、温度応答性領域を構成するポリマーを付加させる反応の時間を短縮できるという点において、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。
以上を総合すると、デンドリティックポリマーの末端数の好ましい範囲としては、15〜50が挙げられ、その中においても20〜50が好ましく、30〜50がより好ましい。
デンドリティックポリマーの重量平均分子量(Mw)は特に限定されず、幅広い範囲から選択することができる。特に、デンドリティックポリマーのMwが2,000以上であれば、マイクロキャリアにデンドリティックブロックコポリマーが固定化されやすくなり、培地等に溶出する可能性が低減される。この点で、デンドリティックポリマーのMwは、3,000以上が好ましく、4,000以上がより好ましく、5,000以上が最も好ましい。
本開示においてデンドリティックポリマーのMwは、GPCにより以下の条件で測定する。
なお、以下に挙げる装置及び試薬等に換えて、それらと同等のものを使用してもよい。
装置 :特に限定されない。
検出器 :示差屈折率検出器RI
カラム:TSKgel SuperAWH−H
溶媒 :50mMのLiBrを含むDMF
流速 :0.5ml/min
カラム温度 :25℃
標準試料:ポリスチレン
また、デンドリティックポリマーのMwが1,000,000以下であれば、温度応答性領域を構成するポリマーの導入率を好ましい範囲内に保つことができる。この点で、デンドリティックポリマーのMwは、500,000以下が好ましく、300,000以下がより好ましく、100,000以下が最も好ましい。
必要に応じて、デンドリティックブロックコポリマーの末端に水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルボニル基、アルデヒド基、スルホン酸基等の正又は負の荷電を有する基を付与してもよい。これらの基の付与は常法により行うことができる。
また、必要に応じて、温度応答性領域を構成するポリマーが結合した状態のデンドリティックブロックコポリマーにおいて、デンドリティックポリマー部分に水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルボニル基、アルデヒド基、スルホン酸基等の正又は負の荷電を有する基が残存していてもよい。温度応答性領域を構成するポリマー中または末端に、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルボニル基、アルデヒド基、スルホン酸基等の正又は負の荷電を有する基を付与させてもよい。
デンドリティックブロックコポリマーは、デンドリティックポリマーの末端に温度応答性領域を構成するポリマーが少なくとも一種結合しているが、少なくとも一種のその他のポリマーがさらに結合していてもよい。
デンドリティックブロックコポリマーは、末端数15以上のデンドリティックポリマーの末端に、Mw3000以上の温度応答性領域を構成するポリマーがデンドリティックブロックコポリマー全体に対して50〜99.5質量%結合しているものであれば好ましい。このデンドリティックブロックコポリマーは、温度応答性領域を構成するポリマーがデンドリティックポリマーの末端に十分量結合しているため、温度を変えても当該ポリマー上の培養細胞が剥離し難くなるということがない。この点において、本開示のデンドリティックブロックコポリマーは、温度応答性領域を構成するポリマーがデンドリティックポリマーの末端に、デンドリティックブロックコポリマー全体に対して70質量%以上結合していると好ましく、80質量%以上結合しているとより好ましい。
デンドリティックブロックコポリマーは、デンドリティックポリマーの末端に、温度応答性領域を構成するポリマーがデンドリティックブロックコポリマー全体に対して99.5質量%以下結合しているものであれば好ましい。この点において、デンドリティックブロックコポリマーは、デンドリティックポリマーの末端に、温度応答性領域を構成するポリマーがデンドリティックブロックコポリマー全体に対して98質量%以下結合していると好ましく、97質量%以下結合しているとより好ましい。
本開示のデンドリティックブロックコポリマーのMw(重量基準)は、550,000〜10,000,000であれば好ましい。測定されたMwが50,000未満の場合、温度応答性領域を構成するポリマーがデンドリティックポリマーの末端に導入されず、単にブレンドされている割合が多いため、細胞剥離性が低下する。
本開示のデンドリティックブロックコポリマーにおいて、デンドリティックポリマーの末端に温度応答性領域を構成するポリマーを結合させる方法は、特に限定されず、幅広く選択できる。
結合方法としては、デンドリティックポリマーの末端にRAFT剤を導入し、それを起点に各種モノマーを成長させる等の方法が挙げられる。
RAFT重合の開始剤は特に限定されず、幅広く選択できる。例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ‐2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)及び2,2’−アゾビス[(2−カルボキシエチル)−2−(メチルプロピオンアミジン)(V−057)等が挙げられる。
RAFT重合時に使用する溶媒については特に限定されず幅広く選択できる。例えば、ベンゼン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン及びジメチルホルムアルデヒド(DMF)等が好ましく、重合反応に使用するモノマー、RAFT剤及び重合開始剤の種類によって、適宜選択できる。重合時の開始剤濃度、RAFT剤量、反応温度及び反応時間等は特に限定されず、目的に応じて適宜設定できる。重合時、反応液は静置させても攪拌してもよい。
スチレン骨格デンドリティックポリマーの構造は、幅広く選択することができる。スチレン骨格デンドリティックポリマーの構造は、例えば、以下の一般式(2)により表わすことができる。
Figure 2021106543
上記式中、Rは、共有結合により温度応答性領域を構成するポリマーが導入されうる基である。nは重合度を表わす。
としては、特に限定されず、幅広く選択することができる。特に、可逆的付加−開裂連鎖移動(RAFT)剤として作用しうる基であれば、RAFT重合により温度応答性領域を構成するポリマーを導入できるため好ましい。このようなRAFT剤として作用しうる基としては、特に限定されず、幅広く選択できる。例えば、チオカルボニルチオ基等が挙げられる。
チオカルボニルチオ基としては、ジチオエステル基、ジチオカルバメート基、トリチオカーボネート基、キサンタート基及びジチオベンゾエート基等が挙げられる。
は、末端に、炭素数3〜12の、置換されていてもよい炭化水素基を有していてもよい。この炭化水素基は、分岐状炭化水素基であれば好ましい。このことにより、デンドリティックブロックコポリマー中の温度応答性部位に適度な立体障害を持たせることができ、より効果的にマイクロキャリア表面を被覆することができるという効果が得られる。このときのRの具体例として、以下のようなトリチオカーボネート基が挙げられる。
Figure 2021106543
上記式中、Rは、炭素数3〜12の、置換されていてもよい炭化水素基を指す。Rは、分岐状炭化水素基であれば好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、分岐プロピル基、ブチル基、分岐ブチル基、ヘキシル基、分岐ヘキシル基、ペンチル基、分岐ペンチル基、ヘプチル基、分岐ヘプチル基、オクチル基、分岐オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、分岐ノニル基、デシル基、分岐デシル基、ドデシル基、分岐ドデシル基があり、好ましくはイソプロピル基、エチルヘキシル基及びブチルオクチル基等が挙げられる。
スチレン骨格デンドリティックポリマーの製造方法は、特に限定されず、幅広く選択することができる。例えば、常法として行われているクロロベンゼン中、塩化銅存在下で原子移動ラジカル重合(ATRP)法によって得ることができる。あるいは、乾燥トルエン中、加熱下、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)存在下にてラジカル重合させることによっても得ることができる。
より詳細には、上記Rの導入の目的のために、官能基を有するスチレン誘導体を少なくともモノマーとして用いて重合することが好ましい。このようなスチレン誘導体としては、ハロゲン化メチルスチレン等が挙げられる。ハロゲン化メチルスチレンとしては、クロルメチルスチレン、ブロムメチルスチレン等が用いられる。スチレン誘導体は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
上記の通り重合反応によりスチレン骨格デンドリティックポリマーを製造する際、使用する総モノマー全体に対する、官能基を有するスチレン誘導体の割合は、5%以上であることが好ましい。官能基を有するスチレン誘導体の上記割合が5%以上であると、温度応答性領域を構成するポリマー鎖を導入する効率が良好となり、本開示で目標とする温度応答性領域を構成するポリマーの導入率を達成しやすくなる。この点で、官能基を有するスチレン誘導体の上記割合は、10%以上であればより好ましく、15%以上であればさらに好ましく、20%以上であれば最も好ましい。
官能基を有するスチレン誘導体の上記割合が90%以下であると、温度応答性領域を構成するポリマー鎖を導入する効率を良好な範囲に保ちつつ、得られるデンドリティックブロックコポリマーが水に溶けにくくなり、デンドリティックブロックコポリマーが培地等に溶出する可能性が低減される。この点で、官能基を有するスチレン誘導体の上記割合は、80%以下であればより好ましく、70%以下であればさらに好ましく、60%以下であれば最も好ましい。
総合すると、官能基を有するスチレン誘導体の上記割合としては、5%〜90%が好ましく、10%〜80%がより好ましく、15%〜70%がさらに好ましく、20%〜60%が最も好ましい。
シロキサン骨格デンドリティックポリマーは、幅広く選択することができる。シロキサン骨格デンドリティックポリマーは、例えば、ビス(ジメチルビニルシロキサン)メチルシラン、トリス(ジメチルビニルシロキサン)シラン、ビス(ジメチルアリルシロキサン)メチルシラン及びトリス(ジメチルアリルシロキサン)シランからなる群より選択される少なくとも一種のモノマーを重合することにより得られうるもの等が挙げられる。また、ビス(ジメチルシロキシ)メチルビニルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)ビニルシラン、ビス(ジメチルシロキシ)メチルアリルシラン及びトリス(ジメチルシロキシ)アリルシランからなる群より選択される少なくとも一種のモノマーを重合することにより得られうるもの等も挙げられる。このようなシロキサン骨格デンドリティックポリマーは、例えばWO2004/074177号パンフレット等に記載の方法により得ることができる。
1.4. マイクロキャリア表面への温度応答層(A)の配置方法
本開示の温度応答性細胞培養基材は、マイクロキャリアの少なくとも一部の表面に温度応答層(A)を配置することにより得られうる。具体的には、例えば、温度応答性領域を構成するポリマーを、マイクロキャリアの少なくとも一部の表面に直接的又は間接的に固定することにより、温度応答層(A)をマイクロキャリアの表面に配置できる。
温度応答層(A)は、互いに異なるUCST又はLCSTを有する二以上の領域を有し、それらの領域が二次元パターンを形成するように配列していてもよい。
温度応答層(A)は、マイクロキャリアの表面の少なくとも一部に配置されており、その領域と、温度応答しない領域とが、二次元パターンを形成するように配列していてもよい。
温度応答性領域を構成するポリマーのマイクロキャリアの表面への固定方法は、特に限定されず、幅広く選択できる。例えば、温度応答性領域を構成するポリマーを溶媒に溶解又は分散させてから、かかる分散液にマイクロキャリアを分散することにより直接的に固定することができる。
また、温度応答性領域を構成するポリマーを含む複合体を溶媒に溶解又は分散させてから、かかる分散液にマイクロキャリアを分散することにより、温度応答性領域を構成するポリマーを間接的に固定することもできる。そのような複合体としては、例えば上記1.3のデンドリティックブロックコポリマー等が挙げられる。
この場合、溶媒としては、温度応答性領域を構成するポリマー又はそれを含む複合体を溶解又は分散させるものであれば特に限定されず、幅広く選択できる。例えば、N、N−ジメチルアクリルアミド;イソプロピルアルコール;並びにアセトニトリル及びN、N−ジメチルホルムアミドの混合液等が挙げられる。
複数種の溶媒を混合して使用してもよい。この場合、混合比は特に限定されず、幅広く選択できる。テトラヒドロフランとメタノールとの混合溶媒の場合、例えば、テトラヒドロフラン:メタノール=0.5〜2:4とすることができる。アセトンとエタノールとの混合溶媒の場合、例えば、アセトン:エタノール=0.5〜1:4とすることができる。
ジオキサンとノルマルプロパノールとの混合溶媒の場合、例えば、ジオキサン:ノルマルプロパノール=0.5〜2:4とすることができる。トルエンとノルマルブタノールとの混合溶媒の場合、例えば、トルエン:ノルマルブタノール=0.5〜2:4とすることができる。アセトニトリルとN、N−ジメチルホルムアミドとの混合溶媒の場合、例えば、アセトニトリル:N、N−ジメチルホルムアミド=4:1〜6:1とすることができる。
溶媒としては、ポリスチレンの良溶媒と貧溶媒とを含む溶液が好ましい。このような溶媒を使用すると、特にマイクロキャリア表面がポリスチレンである場合、マイクロキャリア表面のポリスチレンを膨潤させつつ、上記1.3のスチレン骨格デンドリティックブロックコポリマー又はシロキサン骨格デンドリティックブロックコポリマーを固定化させることができ、結果的にスチレン骨格デンドリティックブロックコポリマー又はシロキサン骨格デンドリティックブロックコポリマーがマイクロキャリア表面に埋め込まれるような形となるため好ましい。この場合、前記良溶媒と前記貧溶媒とが、それぞれテトラヒドロフランとメタノールであれば好ましい。さらに、テトラヒドロフランとメタノールの混合溶媒中のテトラヒドロフラン含量が10〜35体積%であればより好ましい。
温度応答性領域を構成するポリマー又はそれを含む複合体のマイクロキャリア表面への固定化に際しては、温度応答性領域を構成するポリマー又はそれを含む複合体を含む溶液をマイクロキャリア表面へ均一に塗布することが好ましい。その方法は特に限定されず、幅広く選択できる。例えば、ディップ法、スプレー法等が挙げられる。
温度応答性領域を構成するポリマー又はそれを含む複合体を含む溶液をマイクロキャリア表面へ塗布した後、溶媒を除去することにより、本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアが得られる。溶媒の除去方法は特に限定されず、幅広く選択できる。例えば、室温にて、かつ大気中で時間をかけてゆっくり蒸発させる方法、室温にて、かつ溶媒飽和環境下で時間をかけてゆっくり蒸発させる方法、加熱下で蒸発させる方法、減圧下で蒸発させる方法等が挙げられる。特に、均一な温度応答層(A)の面が得られるという点で、室温にて、かつ溶媒飽和環境下で時間をかけてゆっくり蒸発させる方法が好ましい。具体的には、2時間以上、前記溶媒の蒸気下に置くことが好ましい。
均一な温度応答層(A)の面が得られるという点で、溶媒飽和環境下で時間をかけてゆっくり溶媒を蒸発させた後、いったん表面を水洗してから乾燥させることが好ましい。
2. マイクロキャリア
マイクロキャリア表面の材質は、特に限定されない。通常、細胞培養に用いられるものであればよく特に制限されない。例えば、ガラス、改質ガラス、各種樹脂等が挙げられる。また、これらの他にもさらに、一般に形態付与が可能とされる材質からなるものであってもよい。そのような材質は、特に限定されず、幅広く選択できる。例えば、樹脂、セラミックス及び金属類等が挙げられる。
樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリサルフォン及びポリフェニレンスルファイド等が挙げられる。
これらの中でも、特に、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等が好ましく用いられる。
マイクロキャリアの、温度応答層(A)が配置される表面は、必要に応じて表面処理がなされていてもよい。表面処理としては、例えば、UVオゾン処理、プラズマ処理及びコロナ処理等が挙げられる。
また、マイクロキャリアの、温度応答層(A)が配置される表面は、平滑であってもよいし、穴状、突起状又は壁状等の三次元構造が形成されていてもよい。
温度応答層(A)は、マイクロキャリアの表面に、少なくとも一種のその他の層を介して配置されていてもよい。その他の層としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリサルフォン、ポリフェニレンスルファイド、セルロース、及びシクロデキストリン等が挙げられる。
マイクロキャリアは、平均粒子径が、20〜200μmであることが好ましい。本開示において、マイクロキャリアの平均粒子径は、具体的に以下のようにして測定する。
測定装置:FPIA3000(シスメックス株式会社製、フロー式粒子像分析装置)、
測定条件:粒子径が10μm以上であるため、LPFモードにて測定を行う。測定個数は5万個測定とする。そこで求められた体積平均粒子径を平均粒子径とする。またCV値は円相当径(個数基準)による解析値を用いる。
3. 温度応答性細胞培養用マイクロキャリアのその他の構成、特性及び用途等
本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアは、必要に応じて、温度応答層(A)に加えてさらにその他の層を有していてもよい。その他の層としては、例えば、形状保持の目的で使用される支持層が挙げられる。
本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアの形状は、特に限定されない。本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアは、少なくとも表面が多孔質であってもよい。本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアは、コアシェル構造であってもよい。
本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアは、細胞全般に対して使用できる。例えば、動物、昆虫、植物等の細胞、細菌類が挙げられる。動物細胞の由来の例として、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、ヌードマウス、マウス、モルモット、ブタ、ヒツジ、チャイニーズハムスター、ウシ、マーモセット及びアフリカミドリザル等が挙げられる。
本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアは、接着性細胞に対して好ましく使用できる。接着性細胞としては、幅広く選択することができ、例えば、内皮細胞、表皮細胞、上皮細胞、筋細胞、神経細胞、骨細胞及び脂肪細胞等のほか、樹状細胞及びマクロファージ等も挙げられる。内皮細胞としては、例えば、肝細胞、クッパー細胞、血管内皮細胞及び角膜内皮細胞等が挙げられる。表皮細胞としては、例えば、繊維芽細胞、骨芽細胞、砕骨細胞、歯根膜由来細胞及び表皮角化細胞等が挙げられる。上皮細胞としては、例えば、気管上皮細胞、消化管上皮細胞、子宮頸部上皮細胞及び角膜上皮細胞等が挙げられる。筋細胞としては、例えば、乳腺細胞、ペリサイト、平滑筋細胞及び心筋細胞等が挙げられる。神経細胞としては、例えば、腎細胞、膵ランゲルハンス島細胞、末梢神経細胞及び視神経細胞等が挙げられる。骨細胞としては、例えば、破骨細胞、軟骨細胞等が挙げられる。
接着性細胞としては、各種幹細胞も使用できる。接着性の幹細胞としては、胚性幹細胞(embryonic stem cells:ES細胞)、胚性生殖細胞(embryonic germ cells:EG細胞)、生殖細胞系列幹細胞(germline stem cells:GS細胞)、誘導多能性幹細胞(iPS細胞;induced pluripotent stem cell)等の多能性幹細胞、間葉系幹細胞、造血系幹細胞、神経系幹細胞等の複能性幹細胞、心筋前駆細胞、血管内皮前駆細胞、神経前駆細胞、脂肪前駆細胞、皮膚線維芽細胞、骨格筋筋芽細胞、骨芽細胞、象牙芽細胞等の単能性幹細胞(前駆細胞)等の幹細胞が挙げられる。
本開示の温度応答性細胞培養用マイクロキャリアにおいては、対象となる細胞を培養するために通常用いられる培地をそのまま使用できる。
本開示の細胞培養用温度応答性用マイクロキャリアの温度を、温度応答性領域を構成するポリマーのUCST以上若しくはLCST以下にすることによって、培養細胞を酵素処理することなく剥離させることができる。この温度変化による剥離は、培養液中において行ってもよいし、その他の等張液中等において行ってもよい。また、細胞をより早く、より高効率に剥離及び回収する目的で、マイクロキャリア分散液を軽く振とうしたり、攪拌したりすることができる。
本開示の細胞培養用温度応答性用マイクロキャリアは、温度応答性領域を構成するポリマーが表面に強固に固定されていることが好ましく、この場合、リユース用として用いることができる。特に、上記1.3のデンドリティックブロックコポリマーが固定化されている表面を有する細胞培養用温度応答性用マイクロキャリアは、特に温度応答性領域を構成するポリマーが表面に強固に固定されており、リユース用として好ましく用いることができる。
リユース用として用いる場合、本開示の細胞培養用温度応答性用マイクロキャリアを液体培地中に分散して細胞培養を行い、温度応答により細胞を剥離し、マイクロキャリア表面をリン酸緩衝生理食塩水等の適当な洗浄液で洗浄する、という一連の工程を一サイクルとして、同一の細胞培養用温度応答性用マイクロキャリアを二以上のサイクルにおいて使用する、すなわち、2回以上のリユースのために用いられる。本開示の細胞培養用温度応答性用マイクロキャリアは、好ましくは3回以上のリユースのために用いられる。
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
以下、本開示を具体的に説明するが、本開示は下記の例に限定されるものではない。
<製造例1>
[S−(4−ビニル)ベンジル S’−アルキルトリチオカーボネートの合成]
窒素置換下の100ml三ッ口フラスコ中へ、ナトリウムメトキシド(5.6ml, 0.028mol)、メタノール(MeOH,28ml)を入れ、2分間撹拌させた。そこへ、2−エチル−1−ヘキサンチオール(4.10g,0.028mol)をMeOH(22ml)に溶解させたものを添加し、室温にて2時間撹拌した。そこへCS(2.1ml, 0.035mol)を添加し、室温にて5時間撹拌した。さらに、4−ビニルベンジルクロリド(4.3ml, 0.028mol)を添加し、そのまま20時間室温にて撹拌した。反応後、水を添加し、ジクロロメタンにて抽出、有機層を飽和食塩水にて洗浄後、硫化マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。精製は、ヘキサンを展開溶媒にカラムクロマトグラフィーにて行った。オレンジ色液体の目的物が、5.6gの収率にて得られた(参考文献:Macromolecules 2011,44,2034−2049)
[デンドリティックポリマー1の合成]
窒素置換下の10ml枝管付フラスコ中へ、S−(4−ビニル)ベンジル S’−(2−エチル−1−ヘキシル)トリチオカーボネート(1.20g, 3.61×10-3mol)、脱水トルエン(1ml)を入れ、撹拌して溶解させた。さらに2,2’ −アゾジイソブチロニトリル(AIBN,0.0745g, 4.50×10-4mol)を添加し、80℃にて10時間撹拌した。反応後、トルエンを2ml追加し希釈した後、氷浴中で冷却したヘキサン中へ滴下・再沈させ、オレンジ色のオイル状のポリマーを0.58g回収した。
[デンドリティックブロックコポリマーHBP−0の合成]
窒素置換下の10ml枝管付フラスコ中へ、上述したデンドリティックポリマー1(0.028g)、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM,1g, 8.85×10-3mol)、脱水テトラヒドロフラン(THF,3ml)を入れ、撹拌して溶解させた。
さらに、AIBN (4.0×10-3g, 4.6×10-6mol)を添加し、70℃にて10時間撹拌した。反応後、THFを3ml添加し希釈した後、ヘキサン中へ滴下・再沈させ、卵色固体を回収した。再度THF5mlに溶解させ、ヘキサン中へ再沈を行い、白色の粉末状固体HBP−0を0.706g得た。
[デンドリティックブロックコポリマーの分画]
前項で得られたブロックポリマーHBP−0をGPCの溶出時間の差により分画し、異なる分子量分布を有するポリマーHBP−1、2を得た。これらのポリマーは、GPC測定(カラム:TSKgel SuperAWM−H(東ソー)、溶離液:50mM LiBr in DMF、標準:ポリスチレン)により分子量分布測定を行った。
分画前後のポリマーHBP−0〜2の重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
また、それぞれのポリマーの、横軸に分子量の対数(LogM)、縦軸に微分分布値(dW/dLogM)をプロットした分子量分布曲線において、LogM=5.5未満の分子量分布の面積Aと、LogM=5.5以上の分子量分布曲線の面積Bとをそれぞれ算出した。それらの面積値を用いて、式(1)によりLogM>5.5の高分子の含有率(%)を算出した。
B/(A+B)×100(%) ・・・(1)
LogM>5.0の高分子含有率についても同様に求め、LogM>5.5の高分子含有率と併せて表1に示した。
<実施例1>
[コーティング溶液の調製]
製造例1にて合成したポリマーHBP−0についてそれぞれ10mgを、THF/MeOH=1/4(v/v)の混合溶媒(4ml)へ溶解させた。これを、母液と称する。この母液を、ポリスチレン製マイクロキャリアに塗布加工した時の、PNIPAM塗布量が3.5μg/cmとなるよう、THF/MeOH=1/4(v/v)の混合溶媒でさらに希釈した。
[ポリスチレン製基材に対するポリマーの固定化]
上記方法で得られたコーティング溶液を、ポリスチレン製マイクロキャリア(コーニング製No.3779)に塗布加工し、温度応答性細胞培養用マイクロキャリアを得た。
<実施例2>
コーティング溶液の調製に使用するポリマーをHBP−1とした他は、実施例1と同様にして温度応答性細胞培養用マイクロキャリアを得た(表1)。
<比較例1>
コーティング溶液の調製に使用するポリマーを分画前のHBP−2とした他は、実施例1と同様にして温度応答性細胞培養用マイクロキャリアを得た。
<比較例2>
未処理のポリスチレン製のマイクロキャリア(コーニング製No.3779)を用意した。
<比較例3>
コーティング溶液の調製に使用するポリマーをPNIPAMのホモポリマー(SigmaAldrich、Mn:85,000)とした他は、実施例1と同様にして温度応答性細胞培養用マイクロキャリアを得た。
[細胞接着評価]
(1)培養条件
培地:10%FBS(fetal bovine serum)、および1%ペニシリン(Penicillin−Streptomycin)含有DMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)−high glucose (ナカライテスク) 2ml
(2)評価用の細胞懸濁液の調製方法
予め、細胞培養容器内で3T3マウス線維芽細胞を培養し、細胞を回収後に細胞数を数え、培地に対し5×10cells/mLになるように細胞懸濁液を用意した。
分画前のHBP−0を塗布したマイクロキャリアを実施例1、分画後のHBP−1を塗布したマイクロキャリアを実施例2、分画後のHBP−2を塗布したマイクロキャリアを比較例1、未処理のマイクロキャリア(No.3779)を比較例2、PNIPAMのホモポリマーを塗布したマイクロキャリアを比較例3とした。比較例と実施例で作製したマイクロキャリア0.5gを、それぞれ37mlの細胞懸濁液に添加し、COインキュベーター(37℃、5%CO)中で2日間培養を行った。
(3)細胞回収率の測定
温度応答性マイクロキャリアからの細胞回収は、2日間培養後、培養液をチューブに移し20分間静置した後、上澄みを捨て、未接着の浮遊細胞および細胞凝集体を除いた。そこへ培地を10ml添加後、20℃のインキュベーターで2時間インキュベートし、ピペッティングを行った。マイクロキャリアをろ過により除去し、トリプシン−EDTA溶液処理後の細胞懸濁液を用いて、血球計算盤を用いて細胞数Cを計測した。また、ろ過したマイクロキャリアに対し、トリプシン−EDTA溶液処理を行い、温度変化で剥離しなかった細胞数Dも、上述と同様に血球計算盤を用いて計測した。これらの値を用いて、式(2)により、細胞回収率を算出した。
C/(C+D)×100(%) ・・・(2)
実施例1、2並びに比較例1〜3についてそれぞれ評価した結果を表1に示す。各実施例においてそれぞれn=3での評価を行い、平均を求めた。比較例2の未処理のポリスチレン製マイクロキャリアは、温度応答性ポリマーを処理していないため、細胞は剥離しなかった。また、比較例3の市販のPNIPAMを塗布加工したマイクロキャリアを用いた場合においても、細胞は剥離しなかった。これは、PNIPAMが固定されていないため、培地に入れた時点で溶出し、細胞接着性を示すポリスチレン表面が露出していると考えられる。HBP−2を用いた比較例1では、高分子量領域のHBPの含有量が3.8%と低いため、細胞回収率が50%以下となった。一方、logMが5.0以上である温度応答性ポリマーの含有量が60%以上である実施例1、2で作製したマイクロキャリアは、高剥離性であるため、高い細胞回収率を示した。これにより、細胞の剥離性と温度応答性ポリマーの分子量に相関があることが明らかとなった。
Figure 2021106543

Claims (4)

  1. 温度応答性層(A)を有する温度応答性細胞培養用マイクロキャリアであって、
    前記温度応答性層(A)が、デンドリティックポリマーの末端に温度応答性のブロックが結合したブロックポリマーを含む温度応答性ポリマーを含み、
    前記温度応答性層(A)に含まれる、分子量Mの常用対数(logM)が3.0以上である前記温度応答性ポリマーの合計のうち、logMが5.0以上である前記温度応答性ポリマーの合計が、45%以上である、
    温度応答性細胞培養用マイクロキャリア。
  2. 前記温度応答性層(A)に含まれる、分子量Mの常用対数(logM)が3.0以上である前記温度応答性ポリマーの合計のうち、logMが5.5以上である前記温度応答性ポリマーの合計が、10%以上である、
    請求項1記載の温度応答性細胞培養用マイクロキャリア。
  3. 前記温度応答性層(A)が、前記温度応答性ポリマーを、温度応答性領域換算で1.0〜6.0μg/cm含む、請求項1又は2に記載の温度応答性細胞培養用マイクロキャリア。
  4. 平均粒子径が20〜200μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の温度応答性細胞培養用マイクロキャリア。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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シスメックス FPIA-3000 粒子形状・粒子径分析装置:粒子計測のマルバーン | 製品サポート | MALVERN PANAL, JPN6023032470, 25 June 2022 (2022-06-25), ISSN: 0005123772 *

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