JP2021104990A - イミダゾールジペプチドの製造方法 - Google Patents

イミダゾールジペプチドの製造方法 Download PDF

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明 米山
宏樹 仲西
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Chiaki Sano
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Abstract

【課題】従来技術に比して溶出処理の負荷及び時間が軽減されており、さらにクレアチニンの混入量が少なく純度の高いイミダゾールジペプチドを得ることを可能とする、イミダゾールジペプチドの製造方法を提供する。【解決手段】以下の工程(1)及び(2)を含む、高純度イミダゾールジペプチドの製造方法。(1)イミダゾールジペプチド及びクレアチニンを含有する動物性エキスを、所定のpHにて、イオン交換基がアルカリ金属塩型である強酸性陽イオン交換樹脂へ接触させるイオン吸着処理に供することにより、イミダゾールジペプチドを強酸性陽イオン交換樹脂へ吸着する工程(2)イミダゾールジペプチドが吸着した強酸性陽イオン交換樹脂を、所定のpHにて、アルカリ性水溶液を用いた溶出処理に供することにより、高純度イミダゾールジペプチドを得る工程【選択図】図3

Description

本発明は、イミダゾールジペプチドの製造方法に関する。
イミダゾールジペプチドは、イミダゾール基を有するヒスチジン又はヒスチジン誘導体とアミノ酸とが結合したジペプチドであり、アンセリン(β−アラニル−1−メチルヒスチジン)、カルノシン(β−アラニルヒスチジン)、バレニン(β−アラニル−3−メチルヒスチジン)、ホモカルノシン(γ−アミノブチリル−L−ヒスチジン)などが具体例として挙げられる。イミダゾールジペプチドには、抗疲労作用、血糖値降下作用などの生理作用があることが知られており、機能性成分として注目されている。
イミダゾールジペプチドの製造方法としては、化学合成や酵素合成による方法以外にも、イミダゾールジペプチドを含む、マグロ、カツオ、サケなどの魚類、ウシ、ブタなどの哺乳類、ニワトリなどの鳥類といった動物のエキスから取得する方法がある。
動物性エキスからイミダゾールジペプチドを製造する方法として、イオン交換処理を利用した方法がある。例えば、特許文献1には、魚介類のエキスを脱塩処理して得られた脱塩処理液をH型弱酸性陽イオン交換樹脂に通液してイミダゾールジペプチドを吸着し、次いで水洗後に塩酸及び/又は食塩水でイミダゾールジペプチドを溶出する方法が記載されている。
また、特許文献2には、動物性エキスをH型の強酸性陽イオン交換樹脂に接触させてイミダゾールジペプチド、遊離アミノ酸を含む動物エキス中のカチオン性物質を吸着し、次いで強酸性陽イオン交換樹脂を撹拌しながら、第1の塩基性溶媒を添加してpHを4.5〜7.5とすることにより夾雑物を除去し、次いで第2の塩基性溶媒を添加してpHを7.5以上になるようにしてイミダゾールジペプチドを溶出する方法が記載されている。
特許文献3には、動物性エキスと同じ電気伝導度範囲(10±2mS/cm)及びpH範囲(5.0±0.5)に調整された緩衝液を用いて予めH型に平衡化した強酸性陽イオン交換樹脂に、動物性エキスを接触して、イミダゾールジペプチドを吸着し、次いで緩衝液及び純水で洗浄した後、pH8〜pH12の範囲のアルカリ溶液を通液又は混合することによってイミダゾールジペプチドを溶出する方法が記載されている。
特許第4612549号 特許第5512995号 特許第5142126号
特許文献1に記載の方法は、H型弱酸性イオン交換樹脂を用いる方法であり、動物性エキスに含まれるカリウムイオンなどの塩分によって、イミダゾールジペプチドの弱酸性イオン交換樹脂への吸着が阻害される。また、弱酸性イオン交換樹脂はH型から他のイオン型に変わった際に急激な体積変化が生じ、樹脂を充填したカラム内で通液圧損失が増大し、カラムが破損する場合があるという問題がある。また、弱酸性イオン交換樹脂は、比重が小さく、逆洗による樹脂のほぐしなどが実施し難いために、工業的規模での採用に不適であるという問題がある。
それに対して、特許文献2及び3に記載の方法は、強酸性イオン交換樹脂を用いる方法であり、塩分による、イミダゾールジペプチドのイオン交換樹脂への吸着の阻害は緩和される。しかし、特許文献2に記載の方法は、2種類の溶出溶媒を用いて、pHを2段階に分けて溶出することによりイミダゾールジペプチドの溶出効率を上げる方法であり、溶出処理の負担及び時間が増大し、経済性が劣り、収率低下の可能性がある方法である。
また、特許文献2に記載の方法は、魚介類エキスに多く含まれるヒ素化合物であるアルセノベタインの除去を目的とした方法であり、特許文献2にはクレアチニンに関する記載はない。実際、本発明者らが調べたところによれば、チキンエキスをH型強酸性陽イオン交換樹脂で吸着し、アルカリ性水溶液で溶離すると、イミダゾールジペプチドに対するクレアチニンの含有量は33.4質量%であった。このことは、特許文献3の図1及び図2にも示されている。したがって、特許文献2に記載の方法では、クレアチニンを除去することはほとんどできない。
また、ニワトリ胸肉抽出エキスなどのイミダゾールジペプチドを多く含む動物性エキスは、イミダゾールジペプチドに加えて、タンパク質、遊離アミノ酸、無機塩類などを多量に含み、とりわけニワトリ胸肉抽出エキスはクレアチニンをイミダゾールジペプチドと同モル程度で含む。クレアチニンは動物体内で筋肉のエネルギー源であるクレアチンリン酸の代謝産物として生成され、腎臓の機能により体外へ排出される老廃物である。したがって、イミダゾールジペプチドを動物性エキスから抽出する際、混入するクレアチニンは不純物となる。
特許文献3に記載の方法は、特許文献3に記載のGPC−HPLCクロマトグラムが示すとおり、イミダゾールジペプチドに対するクレアチニンのピーク高さの比は、原料中(図1)に比べて、陽イオン交換体処理液中(図2)で増加傾向となり、イミダゾールジペプチドと共存するクレアチニンの除去効率は非常に低い。したがって、特許文献3に記載の方法では、イミダゾールジペプチドと共に夾雑成分が吸着及び溶出し、純度の高いイミダゾールジペプチドを得ることができない。
そこで、本発明は、特許文献2に記載の方法に比して溶出処理の負荷及び時間が軽減されており、さらに特許文献3に記載の方法に比してクレアチニンの混入量が少なく純度の高いイミダゾールジペプチドを得ることを可能とするイミダゾールジペプチドの製造方法を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、イミダゾールジペプチドの分離精製にH型強酸性陽イオン交換樹脂を用いる場合、動物性エキス中のイミダゾールジペプチド及び無機塩類が樹脂へ吸着する際に、プロトンが放出され、pHが低下することにより、動物性エキス中のクレアチニン、タンパク質、色素などの弱電解質が正電荷を有し樹脂へ吸着し易くなり、結果として溶出物として得られるイミダゾールジペプチドの純度が低下するのではないかと考えた。そこで、H型ではなく、Na型などのアルカリ金属塩型とした強酸性陽イオン交換樹脂へイミダゾールジペプチドを含有する動物性エキスを接触させたところ、平衡吸着時のpH低下によるクレアチニン吸着を防止し、かつイミダゾールジペプチドが樹脂に効率的に吸着されるようになることを見出した。また、アルカリ金属塩型の場合、H型よりも吸着イオン選択性が高く、かつ吸着時pHが中性付近に保たれるため、吸着時には動物性エキス中に存在する夾雑成分のカチオンの排除に有効である。
また、本発明者らは、強酸性陽イオン交換樹脂への吸着において、吸着平衡時のpH(解離定数)の差異から、イミダゾールジペプチドとクレアチニンとを分離できる可能性を模索した。そして、イミダゾールジペプチド及びクレアチニンの電荷状態に着目し、イミダゾールジペプチドが正電荷を有し、かつクレアチニンの正電荷が弱まるpHを実験的に確認し、その条件で吸着平衡させることでクレアチニンの排他性を高め、純度の高いイミダゾールジペプチドを得ることが可能であることを見出した。特に、アルカリ金属塩型の強酸性陽イオン交換樹脂を用いると、所定のpHの範囲において、イミダゾールジペプチドがクレアチニンに対して優位性を持って吸着されることを見出した。
これらの知見をもとに、動物性エキスのpHを所定の範囲に設定し、イオン交換基がアルカリ金属塩型である強酸性陽イオン交換樹脂を用いてイオン吸着処理を実施したところ、驚くべきことに、特許文献2に記載の方法のように段階的に溶出処理を実施しなくとも、回収率を維持して、クレアチニンの含有量が低減された純度の高いイミダゾールジペプチドが得られることを見出した。さらに驚くべきことに、得られたイミダゾールジペプチドは、特許文献3に記載の方法によって得られるものと比べて、クレアチニンの混入量が少なく、さらに色味が改善され、苦味が低減されており、嗜好性の高いものであった。
このような知見に基づいて、本発明者らは、遂に、動物性エキスを、所定のpH範囲にて、イオン交換基がアルカリ金属塩型である強酸性陽イオン交換樹脂を用いたイオン吸着処理に供することにより、イミダゾールジペプチドを優先的に吸着させること、及び吸着したイミダゾールジペプチドを、アルカリ性水溶液を用いた溶出処理に供することにより、高純度のイミダゾールジペプチドを得ることを含む、高純度イミダゾールジペプチドの製造方法を創作することに成功した。本発明はこのような知見や成功例に基づいて完成された発明である。
したがって、本発明の一態様によれば、以下の[1]〜[9]に示す方法が提供される。
[1]以下の工程(1)及び(2)を含む、高純度イミダゾールジペプチドの製造方法。
(1)イミダゾールジペプチド及びクレアチニンを含有する動物性エキスを、イミダゾールジペプチドが正電荷を有するようになり、かつイミダゾールジペプチドの正電荷に対するクレアチニンの正電荷の割合が20%以下になるpHにて、イオン交換基がアルカリ金属塩型である強酸性陽イオン交換樹脂へ接触させるイオン吸着処理に供することにより、イミダゾールジペプチドを強酸性陽イオン交換樹脂へ吸着する工程
(2)イミダゾールジペプチドが吸着した強酸性陽イオン交換樹脂を、イミダゾールジペプチドがゼロ電荷又は負電荷を有するようになるpHにて、アルカリ性水溶液を用いた溶出処理に供することにより、高純度イミダゾールジペプチドを得る工程
[2]前記工程(1)は、イミダゾールジペプチド及びクレアチニンを含有する動物性エキスを、イミダゾールジペプチドが正電荷を有するようになり、かつイミダゾールジペプチドの正電荷に対するクレアチニンの正電荷の割合が20%以下になるpHにて、イオン交換基がアルカリ金属塩型である強酸性陽イオン交換樹脂へ接触させるイオン吸着処理に供した後、強酸性陽イオン交換樹脂を水を用いた洗浄処理に供することにより、イミダゾールジペプチドを強酸性陽イオン交換樹脂へ吸着する工程である、[1]に記載の方法。
[3]前記工程(1)のpHは5.6〜8.2であり、及び/又は前記工程(2)のpHは8.5〜15.0である、[1]〜[2]のいずれか1項に記載の方法。
[4]前記強酸性陽イオン交換樹脂は、酸水溶液及びアルカリ金属塩水溶液を順に通液することによりイオン交換基をアルカリ金属塩型に変換した強酸性陽イオン交換樹脂である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5]前記アルカリ性水溶液は、アルカリ金属水和物水溶液である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6]前記アルカリ性水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法。
[7]前記アルカリ金属塩は、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属塩である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8]前記動物性エキスは、脱塩処理に供した動物性エキスである、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9]前記動物性エキスは、チキンエキス、ウシエキス、ブタエキス、サケエキス、カツオエキス及びマグロエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種の動物性エキスである、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の方法。
本発明の一態様の方法によれば、強酸性陽イオン交換樹脂を用いることで、複雑な設備、装置、操作などがなくとも、負荷及び時間をかけずに溶出処理が可能であり、それでいてクレアチニンの混入を低減した純度の高いイミダゾールジペプチドを得ることができる。したがって、本発明の一態様の方法は、簡便かつ経済性に優れた、工業的規模での実施が可能である方法である。
また、本発明の一態様の方法によれば、動物性エキスから、特許文献3に記載の方法と同じか、又はそれ以上のイミダゾールジペプチドを回収することができる。したがって、本発明の一態様の方法は、特許文献3に記載の方法と比べて、イミダゾールジペプチドに対するクレアチニンの割合(クレアチニン/イミダゾールジペプチド)を小さくすることができる。さらに、本発明の一態様の方法によれば、色味が改善され、苦味が低減された、嗜好性の高いイミダゾールジペプチドを得ることが可能である。
図1は、後述する実施例に示すとおりの、アンセリン、カルノシン及びクレアチニンのpHと実効電荷との関係をグラフ化した図である。 図2は、後述する実施例に示すとおりの、pHとクレアチニンのイミダゾールジペプチドに対する正電荷比率との関係をグラフ化した図である。 図3は、後述する実施例に示すとおりの、吸着時pHと負荷量に対する樹脂への吸着率との関係をグラフ化した図である。 図4は、後述する実施例に示すとおりの、チキンエキスの通液量に対して、pH、Brix及びイミダゾールジペプチド量の推移をグラフ化した図である。 図5Aは、後述する実施例に示すとおりの、原料であるチキンエキス及び本発明の一態様の方法に供して得られたイオン交換溶離液におけるイミダゾールジペプチド及びクレアチニンの存在量を示すGPC−HPLCの測定結果を示す図である。 図5Bは、特許文献3の図1及び図2に相当する図である。 図6は、後述する実施例に示すとおりの、原料であるサケエキス及び本発明の一態様の方法に供して得られたイオン交換溶離液におけるイミダゾールジペプチド及びクレアチニンの存在量を示すGPC−HPLCの測定結果を示す図である。
以下、本発明の一態様である方法の詳細について説明するが、本項目の事項によってのみに限定されるものではなく、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている推測及び理論は、本発明者らのこれまでの知見及び経験によってなされたものであることから、本発明はこのような推測及び理論のみによって拘泥されるものではない。
「RV」は、樹脂量に対する溶媒の流量倍数を表し、例えば、樹脂量に対して2倍の動物性エキスを通液する場合は、RVは2となる。
「SV」は、空間速度(Space Velocity)を表し、1時間当たりに樹脂量(体積)を通過した液量(体積)の樹脂量に対する比率を表す。例えば、1mの樹脂に1時間当たり5mの液量が通過した場合、SVは5となる。
「及び/又は」は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
数値範囲の「〜」は、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0質量%〜100質量%」は、0質量%以上であり、かつ、100質量%以下である範囲を意味する。
「含む」は、含まれるものとして明示されている要素以外の要素を付加できることを意味する(「少なくとも含む」と同義である)が、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。すなわち、「含む」は、明示されている要素及び任意の1種若しくは2種以上の要素を含み、明示されている要素からなり、又は明示されている要素から本質的になることを意味し得る。要素としては、成分、工程、条件、パラメーター等の制限事項等が挙げられる。
整数値の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、1の有効数字は1桁であり、10の有効数字は2桁である。また、小数値は小数点以降の桁数と有効数字の桁数は一致する。例えば、0.1の有効数字は1桁であり、0.10の有効数字は2桁である。
[本発明の一態様の方法の概要]
本発明の一態様の方法は、動物性エキスから、イオン交換処理により、イミダゾールジペプチドを製造する方法に関する。本発明の一態様の方法は、以下の工程(1)及び(2)を含む。
(1)イミダゾールジペプチド及びクレアチニンを含有する動物性エキスを、イミダゾールジペプチドが正電荷を有するようになり、かつイミダゾールジペプチドの正電荷に対するクレアチニンの正電荷の割合が20%以下になるpHにて、イオン交換基がアルカリ金属塩型である強酸性陽イオン交換樹脂へ接触させるイオン吸着処理に供することにより、イミダゾールジペプチドを強酸性陽イオン交換樹脂へ吸着する工程
(2)イミダゾールジペプチドが吸着した強酸性陽イオン交換樹脂を、イミダゾールジペプチドがゼロ電荷又は負電荷を有するようになるpHにて、アルカリ性水溶液を用いた溶出処理に供することにより、高純度イミダゾールジペプチドを得る工程
イミダゾールジペプチドは、通常知られているとおりのものであれば特に限定されず、例えば、イミダゾール基を有するヒスチジン又はヒスチジン誘導体とアミノ酸とが結合したジペプチドであるということができる。イミダゾールジペプチドの具体例としては、アンセリン(β−アラニル−1−メチルヒスチジン)、カルノシン(β−アラニルヒスチジン)、バレニン(β−アラニル−3−メチルヒスチジン)、ホモカルノシン(γ−アミノブチリル−L−ヒスチジン)などが挙げられる。
動物性エキスは、魚類、鳥類、哺乳類などの動物の肉などの部位に含まれる成分を、抽出媒体に溶かし出して得られたものであればよい。動物の種類は、肉などの部位にイミダゾールジペプチドを含む動物であれば特に限定されないが、例えば、アンセリンを多く含むカツオ、マグロ、サケ、ウナギ、サメ、ウシ、ニワトリ;カルノシンを多く含むブタ;バレニンを多く含むクジラなどが挙げられる。動物性エキスは、イミダゾールジペプチドの含有量が大きく、資源量として豊富であり、又は飼育が容易であることから、ニワトリ、ウシ、ブタなどの畜肉及びサケ、カツオ、マグロなどの魚類の筋肉が好ましい。
動物性エキスの取得方法は特に限定されず、イミダゾールジペプチドが含まれる動物の部位を、水抽出、熱水抽出、アルコール抽出、超臨界抽出などの公知の抽出方法に供して得られる抽出物でも、市販されているものでも、いずれのものも利用できる。動物性エキスは、上記抽出物を、固液分離処理、濃縮処理、乾燥処理、希釈処理などの加工処理に供したものであってもよい。また、動物性エキスは、含まれる不溶性固形物及び脂肪分によって、イミダゾールジペプチドの強酸性陽イオン交換樹脂への吸着を妨げること、強酸性陽イオン交換樹脂の劣化をもたらすことといった問題が生じる可能性があることから、上記した加工処理などを利用することによりこれらを除去したものであることが好ましい。
動物性エキスは、後段のイオン交換処理において、ロス率が下がって樹脂あたりのイミダゾールジペプチドの吸着量が向上し、結果としてイミダゾールジペプチドの純度が向上することから、脱塩処理に供することが好ましい。動物性エキスの脱塩処理は、例えば、陽イオン交換膜/陰イオン交換膜としてCMV−N/AMV−Nを備えた電気透析脱塩機「DW−3E2型」(AGCエンジニアリング社製)を用いて、イミダゾールジペプチド1質量%あたり目標伝導度は2mS/cm〜14mS/cm、好ましくは5mS/cm程度の条件で実施することが好ましい。
[工程(1):吸着処理工程]
工程(1)では、動物性エキスを、所定のpHにて、イオン交換基がアルカリ金属塩型である強酸性陽イオン交換樹脂へ接触させて、イミダゾールジペプチドを強酸性陽イオン交換樹脂へ吸着する。
陽イオン交換樹脂は、カチオン性のイオン交換基を有するイオン交換樹脂である。陽イオン交換樹脂は、スルホン酸基などの強酸性のイオン交換基を有する強酸性陽イオン交換樹脂と、カルボン酸基などの弱酸性のイオン交換基を有する弱酸性陽イオン交換樹脂とに大別される。このうち、工程(1)では、強酸性陽イオン交換樹脂を用い、イオン交換基としてスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
強酸性陽イオン交換樹脂は、公知の方法により製造したものでも、市販されているものでも、どちらでもよい。市販されている強酸性陽イオン交換樹脂としては、「ダイヤイオン」(三菱ケミカル社)、「アンバーライト」(オルガノ社)、「ダウエックス」、「Muromac」、「レバチット」(それぞれ室町ケミカル社)などのブランド名で市販されているものを挙げることができ、具体的には、「ダイヤイオン SK1B」(架橋度 8%)、「アンバーライト IR−120B」、「ダウエックス HCR−S」、「Muromac C101」、「レバチット S1668」などが挙げられる。
動物性エキスと接触する前に、強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換基をアルカリ金属塩型にしておく。すでにイオン交換基がアルカリ金属塩型であればそのまま用いることができるが、H型などの場合はアルカリ金属塩型に変換する。イオン交換基のアルカリ金属塩型への変換方法は特に限定されないが、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂を酸によってH型に変換し、次いでアルカリ金属塩を含む溶液に浸漬又は通液してアルカリ金属塩型に変換する方法などが挙げられる。
アルカリ金属塩型の種類は特に限定されないが、例えば、Na型、K型、Li型などが挙げられるが、容易かつ経済的優位にアルカリ金属塩型が得られることからNa型及びK型であることが好ましい。アルカリ金属塩型がNa型又はK型である強酸性陽イオン交換樹脂を得るためには、中性塩として塩化ナトリウム、塩化カリウム;水酸化物として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどを用いればよい。ただし、得られる高純度イミダゾールジペプチドを食品用途として使用する場合は、アルカリ金属塩型はNa型であることが好ましい。Na型への変換には、一般的かつ経済性から、食塩、水酸化ナトリウム及びそれらの混合物の水溶液を利用することが好ましい。
例えば、強酸性陽イオン交換樹脂のNa型への変換は、強酸性陽イオン交換樹脂の交換容量が2eq/Lであるので、まず強酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラムに0.5N〜2Nの塩酸水溶液を1RV〜4RVで通液してH型へ変換し、次いで0.5N〜2Nの水酸化ナトリウム水溶を1RV〜4RVで、又は3質量%〜12質量%の塩化ナトリウム溶液を1RV〜4RVで通液することによりNa型へ変換することにより達成できる。
強酸性陽イオン交換樹脂のアルカリ金属塩型への変換に際して、動物性エキスを予め脱塩処理すること、大量にアルカリ金属塩水溶液を通液することなどによって、事前にH型にすることなく、Na型に変換することができる場合がある。
動物性エキスが粉末状などの固形状にある場合又は濃縮状態にある場合は、動物性エキスを水に溶解又は希釈して、水溶液とする。動物性エキスがすでに水溶液である場合は、そのまま用いればよい。動物性エキスは、夾雑成分によるイミダゾールジペプチドの強酸性陽イオン交換樹脂への吸着に対する影響を低減するために、イミダゾールジペプチド1質量%あたり、Brixが6.0%〜8.0%であることが好ましく、Brixが約7.5%であることがより好ましく;電気伝導率が5mS/cm〜15mS/cmであることが好ましく、電気伝導率が13mS/cm以下であることがより好ましい。
動物性エキスと強酸性陽イオン交換樹脂とを接触する方法は特に限定されず、これらが接触することにより動物性エキス中のイミダゾールジペプチドが強酸性陽イオン交換樹脂へ吸着されるようにすればよく、強酸性陽イオン交換樹脂を動物性エキスに浸漬するバッチ方式でも、強酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラムに動物性エキスを通液するカラム方式でもいずれの方式も採用できる。以下では、具体例として、カラム方式を利用した動物性エキスと強酸性陽イオン交換樹脂との接触について説明するが、本発明の一態様の方法はこれに限定されない。
動物性エキスと強酸性陽イオン交換樹脂との接触は、イミダゾールジペプチドが正電荷を有するようになり、かつイミダゾールジペプチドの正電荷に対するクレアチニンの正電荷の割合が20%以下になるpHになるように実施する。すなわち、強酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラムへ動物性エキスを通液して、カラム内のpHが速やかにイミダゾールジペプチドが正電荷を有するようになり、かつイミダゾールジペプチドの正電荷に対するクレアチニンの正電荷の割合が20%以下になるpHになるように実施する。
図1に示すとおり、アンセリン、カルノシンといったイミダゾールジペプチドが正電荷を有するpHは約8.2までである。また、図2に示すとおり、イミダゾールジペプチドの正電荷に対するクレアチニンの正電荷の割合が20%以下になるpHは約5.6以上である。そこで、動物性エキスと強酸性陽イオン交換樹脂との接触は、pHが5.6〜8.2にて実施することが好ましい。例えば、pHが5.6〜8.2、好ましくは6.0〜7.0の動物性エキスを通液すれば、カラム内のpHが5.6〜8.2付近になり、イミダゾールジペプチドの強酸性陽イオン交換樹脂への吸着を促進しつつ、クレアチニンの強酸性陽イオン交換樹脂への吸着を抑制することができる。なお、「イミダゾールジペプチドの正電荷に対するクレアチニンの正電荷の割合が20%以下になる」とは、正電荷を有するイミダゾールジペプチドのモル量を1とした場合、正電荷を有するクレアチニンのモル量が0.2以下になる場合をいう。
動物性エキスにおけるイミダゾールジペプチド及びクレアチニンの含有量、動物性エキスの強酸性陽イオン交換樹脂への負荷量、吸着温度などのその他の吸着条件は、動物性エキスの製造方法、動物性エキスにおける塩分濃度、イオン交換樹脂の種類などにより異なり、イオン交換樹脂の吸着容量の範囲内で適宜設定すればよい。強酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラムに動物性エキスを通液する場合において、動物性エキスの強酸性陽イオン交換樹脂への接触速度は、動物性エキス中のイミダゾールジペプチドが強酸性陽イオン交換樹脂に吸着される限り特に限定されないが、例えば、SVが0.5〜8、好ましくは1〜3となる流速であることが好ましい。
例えば、イミダゾールジペプチド 30gを樹脂1Lに吸着すると想定すると、イミダゾールジペプチドの含有量が0.1質量%以上、好ましくは0.1質量%〜1.0質量%である動物性エキスの3RV〜30RVの量を、SV1.0〜SV3.0の流速で、10℃〜60℃、好ましくは室温(25℃)にて、強酸性陽イオン交換樹脂と接触させることにより、イミダゾールジペプチドを強酸性陽イオン交換樹脂へ吸着することができる。
動物性エキスと接触させた後の強酸性陽イオン交換樹脂には、動物性エキス中の夾雑成分が付着している場合がある。そこで、夾雑成分を除去するために、動物性エキスと接触後の強酸性陽イオン交換樹脂を、水などの溶媒を用いた洗浄処理に供することが好ましい。洗浄処理の条件は特に限定されないが、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラムに動物性エキスを通液した場合は、0.5RV〜3RVとなる量の水を、10℃〜60℃、好ましくは25℃にて通液して強酸性陽イオン交換樹脂を洗浄することができる。
[工程(2):溶出処理工程]
工程(2)では、強酸性陽イオン交換樹脂に吸着したイミダゾールジペプチドを、所定のpHにて、アルカリ性水溶液を用いた溶出処理に供することにより、高純度イミダゾールジペプチドを得る。
工程(1)により、強酸性陽イオン交換樹脂への吸着量は、イミダゾールジペプチドは多く、クレアチニンは少ない。したがって、イミダゾールジペプチドを溶離するのに適した条件で工程(2)を実施すれば、クレアチニンの含有量の少ない、高純度のイミダゾールジペプチドが得られる。
溶出処理に使用するアルカリ性水溶液は、強酸性陽イオン交換樹脂からイミダゾールジペプチドを溶離することができれば、すなわち、強酸性陽イオン交換樹脂の周囲のpHをイミダゾールジペプチドの実効電荷がゼロ以下になるpHにできるようなものであれば、その種類、濃度及び使用量は特に限定されず、強酸性陽イオン交換樹脂の種類及び量、強酸性陽イオン交換樹脂を充填又は容れるカラム及びタンクなどの容器の種類及び容量、イミダゾールジペプチドの種類及び吸着量などに応じて、適宜選択すればよい。
アルカリ性水溶液の具体例としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液などの無機アルカリ性水溶液などが挙げられるが、イミダゾールジペプチドの溶離と並行してアルカリ金属塩型へ変換することができることから、好ましくはアルカリ金属水和物水溶液であり、より好ましくは強酸性陽イオン交換樹脂をNa型へ変換するために水酸化ナトリウム水溶液であり、更に好ましくは0.1N〜1.0N 水酸化ナトリウム水溶液であり、なお更に好ましくは0.3N〜0.5N 水酸化ナトリウム水溶液である。水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合、アンモニア水を用いる場合に比べて、アルカリ度の違いから溶離効率が上がり、イミダゾールジペプチドの回収率が向上する傾向にある。
本発明者らが調べたところによれば、カルノシン及びアンセリンの等電点(pI)は7.9〜8.1、pKは9.06〜9.44である。そこで、アルカリ性水溶液は、強酸性陽イオン交換樹脂の周囲のpHを8.5以上、好ましくは8.5〜15.0にするものを用いることが好ましい。例えば、強酸性陽イオン交換樹脂 500Lを充填したカラムに、pHが6付近の動物性エキスを通液した場合、室温下で、0.3N〜0.5N 水酸化ナトリウム水溶液 500L〜1,000L(1RV〜3RV)をSV1.0〜3.0で通液すれば、カラム内のpHが9.0〜12.0程度になり、強酸性陽イオン交換樹脂に吸着したイミダゾールジペプチドを効率良く溶出することができる。
強酸性陽イオン交換樹脂にアルカリ性水溶液を撹拌しながら添加することにより溶出処理を行えば、樹脂の量が多くても、作業性よく、強酸性陽イオン交換樹脂の周囲のpHを均一かつ早期に8.5以上にすることができるので、より効率よくイミダゾールジペプチドを溶出することができる。例えば、カラム内に強酸性陽イオン交換樹脂が充填及び保持された状態で、撹拌機により、又は気体を吹き込むことにより、強酸性陽イオン交換樹脂を撹拌しつつ、アルカリ性水溶液を徐々に加えていくことで撹拌することができる。
工程(1)及び工程(2)を経由することにより、イミダゾールジペプチドに対して、クレアチニンの混入が抑えられた高純度イミダゾールジペプチドが得られる。高純度イミダゾールジペプチドは、工程(1)及び工程(2)を経由して得られるものであれば、イミダゾールジペプチド及びクレアチニンの含有量は特に限定されないが、例えば、動物性エキスとしてニワトリ胸肉の熱水抽出物を用いた場合は、イミダゾールジペプチドの含有量は、高純度イミダゾールジペプチドの乾燥質量(固形分)あたり、70質量%以上であり、好ましくは80質量%以上であり;及び、クレアチニンの含有量は、イミダゾールジペプチドの質量あたり、10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下である。高純度イミダゾールジペプチドにおけるイミダゾールジペプチドの含有量の上限及びクレアチニンの含有量の下限は特に限定されないが、典型的にはそれぞれ100質量%及び0質量%である。イミダゾールジペプチド及びクレアチニンの含有量は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
工程(1)及び工程(2)を経て得られた高純度イミダゾールジペプチドは、食品素材として用いるために、pH調整処理、脱色処理、脱臭処理、固液分離処理、脱塩処理、濃縮処理、無菌処理などの各処理に供することが好ましい。例えば、工程(2)で得られた高純度イミダゾールジペプチドを、塩酸などの酸を用いてpH6〜8、好ましくは7付近に調整するpH調整処理に供すること、活性炭及び強塩基性イオン交換樹脂などの着色成分及び/又は臭気成分を吸着する材料を用いた脱色処理及び/又は脱臭処理に供すること、セラミックフィルターを用いたろ過処理などの固液分離処理に供すること、電気透析膜又はナノろ過膜を用いた脱塩処理に供すること、エバポレーターなどを用いた濃縮処理に供すること、メンブレンフィルターなどを用いた無菌処理に供すること、及びこれらの2種以上の処理を順次行うことなどが挙げられる。各処理は、イミダゾールジペプチドの損失が大きくならない限り、その条件、手順などの方法については特に限定されず、公知の方法を採用できる。
例えば、高純度イミダゾールジペプチドの脱塩処理は、pH8.0以下の条件で、分画分子量が500以下である、及び/又は食塩阻止率(食塩が膜上に保持される率)が50%以下であるナノろ過膜を用いて実施できる。このようなナノろ過膜については、特許文献3の表3に記載がある。高純度イミダゾールジペプチドを脱塩処理に供する場合、脱塩後の塩濃度は、例えば、イミダゾールジペプチドの質量あたり、ナトリウム量として、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
本発明の一態様の方法は、本発明の課題を解決し得る限り、上記した工程の前段若しくは後段又は工程途中に、種々の工程や操作を加入することができる。ただし、本発明の一態様の方法は、イオン交換処理として、(1)イミダゾールジペプチド及びクレアチニンを含有する動物性エキスを、イミダゾールジペプチドが正電荷を有するようになり、かつイミダゾールジペプチドの正電荷に対するクレアチニンの正電荷の割合が20%以下になるpHにて、イオン交換基がアルカリ金属塩型である強酸性陽イオン交換樹脂へ接触させるイオン吸着処理に供した後、強酸性陽イオン交換樹脂を水を用いた洗浄処理に供することにより、イミダゾールジペプチドを強酸性陽イオン交換樹脂へ吸着する工程と、(2)イミダゾールジペプチドが吸着した強酸性陽イオン交換樹脂を、イミダゾールジペプチドがゼロ電荷又は負電荷を有するようになるpHにて、アルカリ性水溶液を用いた溶出処理に供することにより、高純度イミダゾールジペプチドを得る工程とからなることが好ましい。
以下に、本発明の一態様の方法の具体的態様を説明するが、本発明の製造方法は以下のものに限定されない。
強酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラムに、酸を通液して樹脂のイオン交換基をH型とした後、水を通液し、さらにアルカリ金属塩水溶液を通液して、樹脂のイオン交換基をNa型に変換する。次いで、水を通液して、余分なアルカリ金属塩水溶液を洗浄する。
イミダゾールジペプチド及びクレアチニンを含有する動物の部位を水に加えたものを、80℃〜95℃にて、数十分間〜数時間の熱水抽出処理に供する。得られた熱水抽出物をそのまま、又は電気透析膜又はナノろ過膜を用いた脱塩処理に供した後に、濃縮処理及び固液分離処理に供して、イミダゾールジペプチドが0.1質量%〜1.0質量%であり、Brixが1.0%〜10.0%であり、かつpHが5.6〜8.0である動物性エキスを得る。
動物性エキスを、3〜30RV、SV1〜3でNa型に変換した強酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラムへ通液し、次いでRV0.5〜2.0の水を通液して、動物性エキス中のイミダゾールジペプチドを強酸性陽イオン交換樹脂へ吸着する。この吸着処理後のカラム内のpHは5.6〜8.0である。
次いで0.1N〜1.0Nアルカリ金属塩水酸化物水溶液をSV1.0〜3.0、1.0〜2.0RVでカラムへ通液して、溶出液として高純度イミダゾールジペプチドを得る。溶出処理後のカラム内のpHは8.5〜14.0である。
溶出液を、酸を用いて中性付近に調整するpH調整処理、電気透析膜又はナノろ過膜を用いた脱塩処理、エバポレーターを用いた濃縮処理、及び孔径0.20μm〜0.45μmのメンブレンフィルターを用いた無菌ろ過処理に順次供して、イミダゾールジペプチド製品を得る。
本発明の一態様の方法によって得られる高純度イミダゾールジペプチドの剤形は特に限定されず、液体状であっても、固体状であっても、どちらでもよい。長期の保存に適したものとするために、液体状の高純度イミダゾールジペプチドを、風乾、減圧乾燥、凍結乾燥、スプレードライなどの乾燥処理に供して、粉末状とすることが好ましい。
本発明の一態様の方法で得られた高純度イミダゾールジペプチドの用途は特に限定されない。高純度イミダゾールジペプチドは、イミダゾールジペプチドの含有量が大きく、かつクレアチニンの含有量が小さい。さらに、高純度イミダゾールジペプチドは、低塩化、脱色及び/又は脱臭されたものとすることができる。そこで、高純度イミダゾールジペプチドは、イミダゾールジペプチドが有する抗疲労作用、血糖値降下作用などの生理活性を期待して、飲食品、医薬品といった経口用組成物、化粧品といった外用組成物などの各組成物の原料又は該組成物そのものとして利用することができる。
飲食品及び化粧品における高純度イミダゾールジペプチドの含有量は特に限定されないが、例えば、飲食品及び化粧品の全量に対し、イミダゾールジペプチドが乾燥質量として0.001質量%以上となるような量であることが好ましく、0.1質量%〜99質量%となるような量であることがより好ましい。
飲食品の剤形は特に限定されないが、例えば、液剤、散剤、錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、ゼリー、チュアブル、ペーストなどが挙げられる。
飲食品の具体的な形態としては、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、果実飲料、野菜ジュース、乳酸菌飲料、乳飲料、豆乳、ミネラルウォーター、茶系飲料、コーヒー飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、ゼリー飲料などの飲料類;トマトピューレ、キノコ缶詰、乾燥野菜、漬物などの野菜加工品;乾燥果実、ジャム、フルーツピューレ、果実缶詰などの果実加工品;カレー粉、わさび、ショウガ、スパイスブレンド、シーズニング粉などの香辛料;パスタ、うどん、そば、ラーメン、マカロニなどの麺類(生麺、乾燥麺含む);食パン、菓子パン、調理パン、ドーナツなどのパン類;アルファー化米、オートミール、麩、バッター粉などの粉類製品;焼菓子、ビスケット、米菓子、キャンデー、チョコレート、チューイングガム、スナック菓子、冷菓、砂糖漬け菓子、和生菓子、洋生菓子、半生菓子、プリン、アイスクリームなどの菓子類;小豆、豆腐、納豆、きな粉、湯葉、煮豆、ピーナッツなどの豆類製品、;蜂蜜、ローヤルゼリーなどの加工食品;ハム、ソーセージ、ベーコンなどの肉製品;ヨーグルト、プリン、練乳、チーズ、発酵乳、バター、アイスクリームなどの酪農製品;加工卵製品;干物、蒲鉾、ちくわ、魚肉ソーセージなどの加工魚;乾燥わかめ、昆布、佃煮などの加工海藻;タラコ、数の子、イクラ、からすみなどの加工魚卵;だしの素、醤油、酢、みりん、コンソメベース、中華ベース、濃縮出汁、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、味噌などの調味料;サラダ油、ゴマ油、リノール油、ジアシルグリセロール、べにばな油などの食用油脂;スープ(粉末、液体含む)、惣菜、レトルト食品、チルド食品、半調理食品(例えば、炊き込みご飯の素、カニ玉の素)などの調理済み食品などが挙げられるが、これらに限定されない。
化粧品に配合して使用する場合は、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、パック剤などの様々な形態で使用することが可能である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
[例1.イミダゾールジペプチド及びクレアチニンの強酸性陽イオン交換樹脂に対する吸着挙動の評価]
アンセリン、カルノシンといったイミダゾールジペプチドとクレアチニンとの強酸性陽イオン交換樹脂に対する吸着挙動の差に着目し、実験的にそれぞれのpHによる電気的解離挙動を以下のとおりに滴定法により測定した。なお、pKは解離定数、pIは等電点をそれぞれ示す。
L−アンセリン、L−カルノシン及びクレアチニンの0.1M水溶液を調製し、0.1N硫酸及び0.1N水酸化ナトリウムを用いて常法にしたがって滴定曲線を作成した。各々の滴定曲線からpK、pK及びpKを求めた。結果を、表1に示す。
Figure 2021104990
表1において、アンセリン及びカルノシンのpKはカルボキシル基の解離、pKはイミダゾール基の解離及びpKはアミノ基の解離を示す。クレアチニンのpKはイミダゾール基の解離を示す。
得られた測定結果をもとに、アンセリン、カルノシン及びクレアチニンの各pHにおける電荷の状態を図1に示す。図1から、イミダゾールジペプチドのアンセリン及びカルノシンは、pH5では1価の正電荷を有し、pH7では0.5価の正電荷を有し、pH8では0.1価の正電荷を有するので、これらのpHで陽イオン交換樹脂に吸着可能であることがわかった。一方、クレアチニンは、pH5では0.5価の正電荷を有し、pH5.6では0.2価の正電荷を有し、pH6では0.1価の正電荷を有するが、pH7以上では正電荷を有さなくなることがわかった。
また、これらの結果は、これまでに発表されている文献のデータによく合致する。例えば、ベイト−スミスの文献(Bate−Smith,E.C.,J.Physiol.(London) 92,336(1938))にはカルノシンのpKが6.83であり、ダッチらの文献(Deutsch,A.,Eggleton,P.,Biochem.J.32,209(1938))にはアンセリンのpKが7.04であることが記載されている。これらの文献のpKはイミダゾール基の解離定数であり、表2におけるpKrに相当する。また、エディーらの文献(Geoge S.Eadie and Andrew Hunter,J.Biol.Chem.1926, 67:237−244)にはクレアチニンのpKbは9.20であることが記載されている。これをpKで表すと、4.8となる。このように、表2におけるアンセリン、カルノシン及びクレアチニンのpKは、過去の文献に記載のデータとよく一致することがわかった。
以上の結果を基に、アンセリン及びカルノシンの解離定数とクレアチニンの解離定数の差異に着目して、イミダゾールジペプチドは吸着して、クレアチニンは吸着しないようなpHを検証することとした。クレアチニンの正電荷とイミダゾールジペプチドの正電荷との比をpHに対してプロットした結果を図2に示す。図2に示すとおり、pH5.6〜pH8.2のクレアチニンのイミダゾールジペプチドに対する正電荷比率は0.2以下となる。したがって、このpH範囲内では、クレアチニンに対して、イミダゾールジペプチドがより強酸性陽イオン交換樹脂に吸着することがわかった。また、これらの結果より、吸着平衡時のpHにより強酸性陽イオン交換樹脂への吸着において、イミダゾールジペプチドとクレアチニンとが分離できる可能性を見出した。
[例2.イミダゾールジペプチド及びクレアチニンの共存系におけるバッチ吸着評価]
例1で得られた結果より、pH4〜pH8.5の各段階でのイミダゾールジペプチド及びクレアチニンの共存系におけるバッチでの吸着テストを実施して確認した。なお、以下では、イミダゾールジペプチドのうち、アンセリン及びカルノシンの混合物を「AC」と表記し、クレアチニンを「Cre」と表記することがある。
ニワトリの胸肉を熱水抽出して得られたチキンエキスを珪藻土ろ過で清澄化し、水で希釈して、イミダゾールジペプチドが0.56質量%であり、かつクレアチニンが0.21質量%であるろ液を調製した。ろ液に塩酸又は水酸化ナトリウムを添加して、25℃でpH3〜pH9の範囲で段階的にチキンエキス水溶液を調整した。予めNa型に平衡化している強酸性陽イオン交換樹脂(「ダイヤイオン SK1B」;三菱ケミカル社製)10mlが入った100mL容ビーカーに、イミダゾールジペプチド添加量が0.20gとなるようにチキンエキス水溶液を加えて、さらに水を加えて100mLにメスアップした。ビーカー中の溶液をマグネットスターラーにより25℃にて2時間撹拌した後、遠心分離に供した。得られた上清をGPC−HPCLで分析し、各pHのチキンエキス水溶液を用いた場合のイミダゾールジペプチド及びクレアチニンの吸着量を測定した。ここで、樹脂へのイミダゾールジペプチド及びクレアチニンの吸着量は、負荷量と非吸着液(上清)中の含有量との差より求めた。GPC−HPLCは、カラムとして「TSKgel2500PWXL(粒子径6μm、φ7.8mm×300mm)」(東ソー社製)を用い、展開溶媒として0.1%トリフルオロ酢酸添加45%アセトニトリルを用い、HPLCとして「PU−2089」(日本分光社製;流速0.5ml/min、検出器波長210nm)を用いた。
測定結果を図3に示す。図3に示すとおり、クレアチニンの吸着量はpHが4〜6.5まで上昇するにつれて減少し、それ以降pH7〜pH8.5にほとんどみられなくなった。一方、イミダゾールジペプチドはpH4〜pH6.5の間で吸着量はほとんど下がらず、pH6.5以降はpH上昇と共に吸着量は低下するが、pH8.5程度まで吸着されることがわかった。
これらの結果から、Na型強酸性陽イオン交換樹脂を用いると、弱酸性〜弱アルカリ性の領域、すなわち、pHが5.6〜8.2付近において、イミダゾールジペプチドがクレアチニンに対して優位性を持って吸着されることがわかった。
[例3.イミダゾールジペプチド含有物の製造方法(1)]
強酸性陽イオン交換樹脂(「ダイヤイオン SK1B」;三菱ケミカル社製)500Lをカラムに充填した。樹脂充填後のカラムに、2RVの1N塩酸を通液してH型とした後、1RVのRO水で水押しし、次いで2RVの1N水酸化ナトリウムを通液し、さらに1RVのRO水で水押しして、カラム中の樹脂をNa型に変換した。なお、カラム内のpHは10〜11程度であった。
ニワトリ胸肉 2,000kg(イミダゾールジペプチド 約15kg含有)に対して、市水3,000kgを加えて、90℃にて60分間熱水抽出し、次いでエバポレーターを用いて減圧濃縮して、イミダゾールジペプチドが0.47質量%であり、かつイミダゾールジペプチドに対してクレアチニンを質量比で30%(30質量%)含むチキン粗抽出物を得た。得られたチキン粗抽出物を、pH調整せずに、Brixが5.8%になり、かつイミダゾールジペプチドが0.6質量%になるように減圧濃縮し、珪藻土ろ過して、チキンエキスを得た。チキンエキスのpHは約6.2であった。
得られたチキンエキスを、4.5RVで、SV2.0にてNa型樹脂充填カラムに通液し、次いで1RVのRO水で水押しする吸着処理に供した。吸着処理後のカラム内のpHは7.5〜8程度であった。
次いで0.4N水酸化ナトリウムをSV2.0、1.5RVでカラムに通液して、溶出液として高純度イミダゾールジペプチドを得た。溶出処理後のカラム内のpHは8.5〜12.0程度であった。得られた高純度イミダゾールジペプチドは、イミダゾールジペプチドの含有量が約80質量%であり、かつクレアチニン含有量がイミダゾールジペプチドに対して5質量%であった。
溶出液 750Lを、塩酸を用いてpH7.0程度に調整し、活性炭で脱色した後、セラミックフィルターでろ過した後に、ナノろ過膜(「DRA−4510」; ダイセン・メンブレンシステムズ社製;塩化ナトリウム阻止率 45%;ろ過膜面積 約7.5m)を用いて脱塩濃縮し、孔径0.45μmのメンブレンフィルターを用いて無菌ろ過して、イミダゾールジペプチド10%含有液体製品を150kg得た。
得られたイミダゾールジペプチド製品におけるイミダゾールジペプチド含有量は、製品の乾燥質量あたり、約80質量%であり;クレアチニン含有量は、イミダゾールジペプチドの乾燥質量あたり、2質量%であり;かつ塩分は、イミダゾールジペプチドの乾燥質量あたり、ナトリウム量として1質量%であった。
以上の結果をまとめたものとして、吸着処理及び溶出処理を通じて、チキンエキスの通液量に対して、pH、Brix及びイミダゾールジペプチド量の推移を表したものを図4とした。
[例4.イミダゾールジペプチドの純度評価]
例3のチキンエキス及び溶出液(イオン交換溶離液)におけるアンセリン、カルノシン及びクレアチニンをGPC−HPLCにより測定した。結果を図5Aに示す。また、参考例として、特許文献3に記載の図1及び図2をまとめて図5Bに示す。また、これらの結果をまとめたものを表2に示す。
Figure 2021104990
図5A及び図5B並びに表2が示すとおり、例3の方法ではイオン交換処理によりクレアチニンの大部分が排除され、原料中の量と比べるとイオン交換溶離液中のイミダゾールジペプチドに対するクレアチニンの量は非常に少ないことが確認された。
以上の結果より、本方法によって、クレアチニンの混入量が少なく純度の高いイミダゾールジペプチドを工業的規模で得ることができた。したがって、本方法は、高純度イミダゾールジペプチドを大量に得るための優れた方法であることがわかった。
[例5.イミダゾールジペプチド含有物の製造方法(2)]
頭及び内臓を除去した白鮭 2500kg(イミダゾールジペプチドとして約12kg含有)に対して、市水3,000kgを加えて、90℃にて20分間熱水抽出し、Brixが3.2%であり、イミダゾールジペプチドが0.35質量%であり、かつイミダゾールジペプチドに対してクレアチニンを質量比で20%(20質量%)含むサケ抽出物を得た。得られたサケ抽出物を、pH調整せずに、珪藻土ろ過して、サケエキスを得た。サケエキスのpHは6.0であった。
得られたサケエキスを、6.5RVで、SV2.0にてNa型樹脂充填カラムに通液し、次いで1RVのRO水で水押しする吸着処理に供した。吸着処理後のカラム内のpHは7.5〜8程度であった。
次いで例3と同様の溶出処理に供して、溶出液として高純度イミダゾールジペプチドを得た。溶出処理後のカラム内のpHは8.5〜12.0程度であった。得られた高純度イミダゾールジペプチドは、イミダゾールジペプチドの含有量が約75質量%であり、かつクレアチニン含有量がイミダゾールジペプチドに対して7質量%であった。
得られた溶出液について、例3と同様に、pH調整処理、活性炭を用いた脱色処理、セラミックフィルターを用いたろ過処理、ナノろ過膜を用いた脱塩処理、メンブレンフィルターを用いた無菌ろ過処理に順次供して、イミダゾールジペプチド10%含有液体製品を100kg得た。
得られたイミダゾールジペプチド製品におけるイミダゾールジペプチド含有量は、製品の乾燥質量あたり、約75質量%であり;クレアチニン含有量は、イミダゾールジペプチドの乾燥質量あたり、5質量%であり;かつ塩分は、イミダゾールジペプチドの乾燥質量あたり、ナトリウム量として1質量%であった。
また、例4と同様に、サケエキス及び溶出液(イオン交換溶離液)におけるアンセリン、カルノシン及びクレアチニンをGPC−HPLCにより測定した。結果を図6に示す。図6が示すとおり、本方法では、イオン交換処理によりクレアチニンの大部分が排除され、原料中の量と比べるとイオン交換溶離液中のイミダゾールジペプチドに対するクレアチニンの量は非常に少ないことが確認された。
本発明は、飲食品、医薬品、化粧品、医薬部外品などの分野で有用であり、特に抗疲労用組成物、血糖値降下用組成物又はこれらの組成物の原料を製造できる点で有用である。


Claims (9)

  1. 以下の工程(1)及び(2)を含む、高純度イミダゾールジペプチドの製造方法。
    (1)イミダゾールジペプチド及びクレアチニンを含有する動物性エキスを、イミダゾールジペプチドが正電荷を有するようになり、かつイミダゾールジペプチドの正電荷に対するクレアチニンの正電荷の割合が20%以下になるpHにて、イオン交換基がアルカリ金属塩型である強酸性陽イオン交換樹脂へ接触させるイオン吸着処理に供することにより、イミダゾールジペプチドを強酸性陽イオン交換樹脂へ吸着する工程
    (2)イミダゾールジペプチドが吸着した強酸性陽イオン交換樹脂を、イミダゾールジペプチドがゼロ電荷又は負電荷を有するようになるpHにて、アルカリ性水溶液を用いた溶出処理に供することにより、高純度イミダゾールジペプチドを得る工程
  2. 前記工程(1)は、イミダゾールジペプチド及びクレアチニンを含有する動物性エキスを、イミダゾールジペプチドが正電荷を有するようになり、かつイミダゾールジペプチドの正電荷に対するクレアチニンの正電荷の割合が20%以下になるpHにて、イオン交換基がアルカリ金属塩型である強酸性陽イオン交換樹脂へ接触させるイオン吸着処理に供した後、強酸性陽イオン交換樹脂を水を用いた洗浄処理に供することにより、イミダゾールジペプチドを強酸性陽イオン交換樹脂へ吸着する工程である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程(1)のpHは5.6〜8.2であり、及び/又は前記工程(2)のpHは8.5〜15.0である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
  4. 前記強酸性陽イオン交換樹脂は、酸水溶液及びアルカリ金属塩水溶液を順に通液することによりイオン交換基をアルカリ金属塩型に変換した強酸性陽イオン交換樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記アルカリ性水溶液は、アルカリ金属水和物水溶液である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記アルカリ性水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記アルカリ金属塩は、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属塩である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記動物性エキスは、脱塩処理に供した動物性エキスである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記動物性エキスは、チキンエキス、ウシエキス、ブタエキス、サケエキス、カツオエキス及びマグロエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種の動物性エキスである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。


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