JP4740434B2 - ポリアミン含有組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳又は乳素材からポリアミン含有組成物を製造する方法に関する。
本発明の方法によると、一般的に行われている工業的規模の各種乳素材の製造工程において、ポリアミン吸着用の樹脂塔を増設するだけで、乳素材の製造に何ら影響を与えることなく、ポリアミン含有組成物を簡便かつ効率的に製造することができる。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミンは、第一級アミノ基を2つ以上もつ直鎖状の脂肪族炭化水素の総称であり、代表的なポリアミンとして、プトレッシン、スペルミジン及びスペルミンを挙げることができる。ポリアミンの生理作用としては、(1) 細胞増殖作用、(2) 細胞分化促進作用、(3) 免疫必須因子、(4) 抗アレルギー作用、(5) タンパク質合成促進作用、(6) 核酸との相互作用による構造の安定化、(7) 酵素活性調節作用等が知られている。最近では、経口摂取したポリアミンが消化管粘膜細胞の増殖や分化を促進するという効果について多くの報告がなされている。
これらの報告を例示すると、以下の通りである。
【0003】
O.Peulen et al., Arch. Physiol. Biochem., vol.106, pp.46-55, 1998; W.P.Deloyer et al., Arch. Physiol. Biochem., vol.104, pp.163-172, 1996; M.Kaouass et al., Dig. Dis. Sci., vol.41, pp.1437-1444, 1996; E.Harada et al., Comp. Biochem. Physiol., vol.109A, pp.667-673, 1994; G.Capano et al., J. Pediatr. Gastroenterol. Nutr., vol.19, pp.34-42, 1994; G.E.Wild et al., Biol. Neonate, vol.63, pp.246-257, 1993; Buts J.-P. et al., Dig. Dis. and Sci., vol.38, p.1091, 1993; Dufour,C. et al., Gastroenterology, vol.95, p.112, 1998。
【0004】
これらの報告では、スペルミジンやスペルミンの生理効果について調べられており、消化管成熟促進作用が明らかにされている。このように、ポリアミンが持つ種々の効果が明らかになるにつれて、ポリアミン含量の少ない栄養組成物にポリアミンを強化することは、栄養学的観点からも望ましいと考えられるようになってきた。実際、ポリアミンの効果を利用し、例えば、タンパク質の吸収を促進させて良好な発育及び健康状態を保たせるポリアミン配合栄養組成物(特開平6-305956号公報)、胃酸分泌を阻止する方法及び胃酸分泌阻止用摂取用組成物(特開昭 58-131914号公報)、免疫賦活剤(特開昭59-98015号公報、特開平2-223514号公報)等が考案されている。また、育児用粉乳等の栄養組成物についても、スペルミジンやスペルミンを強化することにより、母乳に近づけることができる。そして、特に、消化管成熟化効果を発揮させるためには、スペルミジンやスペルミンの含量を高めた風味の良好なポリアミン含有組成物を素材として供給することが重要となる。
【0005】
しかし、従来、ポリアミンは化学合成により製造されたものが試薬として提供されているのみで、天然物に由来するポリアミンの製造は実用化されていなかった。なお、天然物に由来するポリアミンの製造方法としては、白子を原料としたポリアミンの製造方法(特開平8-238094号公報)、動物臓器を原料としたポリアミンの製造方法(特開平9-206025号公報)、酵母菌体からのポリアミンの製造方法(特開平10-52291号公報)等が知られている。しかし、これらの製造方法は、白子、動物臓器、酵母を原料とするものであり、魚臭、獣臭、酵母臭等の臭気の問題があり、風味は必ずしも好ましくなかった。また、乳や乳素材を原料としたポリアミンの製造方法 (特開平6-305956号公報) も知られている。乳や乳素材を原料としたポリアミンは、好ましい風味を有するが、原料中のポリアミン含量が固形100g当たり5〜 2,000μg と、他の原料に比べて 1/100以下であるので、原料を大量に調達しなければならないという問題があった。
さらに、工業的にポリアミンを製造するに際して、解決しなければならない問題は多い。例えば、イオン交換法によりポリアミンを製造する場合、イオン交換樹脂に吸着したポリアミンを5N以上の高濃度の酸で溶出する必要がある。また、この酸を中和するのに多量のアルカリが必要であり、さらに、中和により生成した多量の塩を除去する必要もある。そのため、製造装置の材質は腐食に強いものが求められ、かつランニングコストも高くなるという問題がある。
【0006】
また、ゲル濾過法によりポリアミンを製造する場合、充填剤の強度を考慮するとカラムを大きくすることは困難であり、ポリアミンの分離に多量の溶離液と時間を必要とするという問題がある。
さらに、n−ブタノール溶媒抽出法によりポリアミンを製造する場合、医薬成分として利用できるが、食品素材として利用できないという問題がある。
一方、乳素材は、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニア等、世界の多くの地域で工業的に製造されており、原料乳換算で数百トン規模の乳製品を製造する工場も多数存在している現状にある。そこで、この乳素材の製品特性に影響を与えないような状態で、原料乳からポリアミンを選択的に分離、回収することができれば、乳由来のポリアミンを大量に供給することが可能となる。しかし、現在のところ、そのようなポリアミンの分離、回収方法は知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、乳由来のポリアミンを大量に分離、回収して、ポリアミンを高純度に含有するポリアミン含有組成物を製造する方法を開発するべく、鋭意研究を行ってきた結果、乳素材に含まれるタンパク質、ミネラル、乳糖等の一般成分には影響を与えず、ポリアミンを特異的に吸着し、かつ2N以下の低濃度の酸で簡単にポリアミンを溶離する吸着剤を見出した。そして、この吸着剤を使用して、乳や乳素材から分離、回収したポリアミン溶出液については、アニオン交換樹脂処理、電気透析(ED)処理、ナノフィルトレーション(NF)膜処理等を行うことにより、容易に脱酸及び脱塩を行うことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
したがって、本発明は、乳又は乳素材から風味の良好なポリアミン含有組成物を廉価に工業的規模で大量に製造する方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明では、乳や乳素材を、ポリアミンを特異的に吸着する吸着剤と接触させて、吸着剤にポリアミンを吸着させた後、吸着剤に吸着したポリアミンを溶出させることにより、スペルミジン及びスペルミン含量の高いポリアミン含有組成物を製造する。
本発明で使用する乳としては、牛乳、山羊乳、羊乳等の哺乳動物全ての乳を挙げることができる。また、本発明で使用する乳素材としては、遠心分離、酸凝固、膜、樹脂等で上記した乳を処理したものを挙げることができ、ポリアミンを微量でも含有したものであれば全て使用することができる。例えば、酸カゼイン、酸ホエー、チーズホエー、ホエータンパク濃縮物(WPC)、ホエータンパク分離物(WPI)、脱脂乳、バターミルク、乳糖母液等の乳素材、あるいはこれらの乳素材を製造する際に排出されるUF膜透過液等である。
【0009】
また、本発明で使用するポリアミンを特異的に吸着する吸着剤としては、弱酸性カチオン交換樹脂、ポリスチレンやポリビニールを母体とした合成吸着剤等を挙げることができる。例えば、ダイヤイオンWK11、ダイヤイオンWK40、ダイヤイオン HP2MG、セパビーズ SP207(三菱化学社製)、CMトヨパール、SPトヨパール(東ソー社製)、ダウエックス MAC-3(ザ・ダウケミカル社製)、アンバーライト IRC50、アンバーライト IRC76(オルガノ社製)等が市販されている。これらの吸着剤は1ml当たり 370μg ものポリアミンを吸着することができ、かつ吸着剤に吸着したポリアミンを1〜2N 程度の低濃度の酸で簡単に溶出することができる。なお、強酸性カチオン交換樹脂も、同等にポリアミンを吸着することができるが、吸着したポリアミンを2N以下の低濃度の酸で溶出することはできない。なお、ポリアミンを溶出する際に使用する酸としては、塩酸や硫酸等の無機酸を挙げることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明によると、乳や乳素材を、ポリアミンを特異的に吸着する吸着剤と接触させて、吸着剤にポリアミンを吸着させた後、吸着剤に吸着したポリアミンを溶出させて、スペルミジン及びスペルミン含量の高いポリアミン含有組成物を製造することができる。
本発明では、まず、原料となる乳や乳素材を、ポリアミンを特異的に吸着する吸着剤と接触させて、乳や乳素材中に含まれるポリアミンを吸着剤に吸着させるに際して、例えばカラムを利用する場合、吸着剤 1 l当たり5〜 15 l/時の通液速度で、望ましくはポリアミンの吸着量が飽和量に達するまで、乳や乳素材を通液すれば良い。また、カラムに充填した吸着剤が圧損を受けたときには、エア撹拌や脱イオン水による逆洗を行えば良い。
なお、カラムに充填した吸着剤の圧損上昇を防止し、かつ回収されるポリアミンの純度を高めるには、不溶解物やタンパク質等を含まないUF膜透過液を原料として使用することが望ましく、特にpH 5.5以下の乳素材から得られるUF膜透過液は、スペルミジン及びスペルミン等のポリアミン濃度が高いので望ましい。
【0011】
次に、ポリアミンを吸着した吸着剤を脱イオン水等で充分に洗浄して不純物を除去した後、1〜2N の低濃度の酸を3〜4倍量通液し、ポリアミンを溶出して回収する。また、溶出温度が高いほど溶出効率は高くなるが、溶出温度を20℃以上に設定すれば、1Nの低濃度の酸でも十分ポリアミンを溶出することができる。なお、吸着剤として弱酸性カチオン交換樹脂を使用する場合、ポリアミンの溶出に硫酸を使用すると硫化物の沈澱が生成するので、塩酸を使用することが望ましい。また、ポリアミンの溶出に使用した酸をEDやNF膜等で処理して再利用する場合には、塩酸を使用する必要がある。
本発明では、吸着剤に吸着したポリアミンを酸で溶出することにより、同時に吸着剤が再生するので、引き続き、その吸着剤をそのまま使用して、ポリアミン含有組成物を製造することができる。
上記のようにして得られたポリアミンを含有する溶出液は、タンパク質、有機酸、乳糖等の乳成分を殆ど含有せず、ポリアミンの濃度が70倍以上に濃縮されたものとなっている。なお、必要に応じて、アニオン交換樹脂処理、ED処理、NF膜処理等を行うことにより、溶出液に残存している酸やミネラル等を除去することができ、簡便にポリアミン含有組成物のポリアミン純度を97%以上に高めることができる。
【0012】
なお、ED処理やNF膜処理については、一般的に使用されている装置を使用し、常法に従って行えば良い。そして、ED処理やNF膜処理して脱酸及び脱塩することにより、酸及びミネラルを回収することができるので、これをポリアミンの溶出に再利用することができるようになる。
また、アニオン交換樹脂処理については、市販されている一般的なアニオン交換樹脂を使用すれば良いが、アニオン交換樹脂 1 l当たり3イオン当量以上の交換能力が必要となるため、望ましくは弱塩基性アニオン交換樹脂を利用した方がランニングコストを低くすることができる。
このようにして得られたポリアミン含有組成物については、必要に応じて濃縮や乾燥を行い、ポリアミン素材として飲食品や飼料、医薬品等の製造に使用することができる。また、脱脂乳やホエー等の乳素材と混合することにより、ポリアミン含量の高い乳素材とすることもできる。
【0013】
ところで、本発明の方法によると、ポリアミンを分離、回収した後も、原料として使用した乳や乳素材の一般成分は殆ど変化せず、風味等も良好であるので、これらの乳や乳素材を本来の目的で使用することができるという大きな利点がある。つまり、ホエータンパク濃縮物(WPC)、脱塩ホエー、乳糖結晶母液等の乳素材を製造する従来の工程に、ポリアミンを分離する工程を加えるのみで、効率的にポリアミン含有組成物を製造することができ、これにより、大量かつ安価にポリアミン素材を供給することができる。
次に、実施例を示し、本発明をさらに詳しく説明する。
なお、実施例におけるポリアミン含量の分析は、川上らの方法(日本小児栄養消化器病学会雑誌, vol.9, pp.115-121, 1995)に従って行った。
【0014】
【実施例1】
乳素材として、脱脂乳を使用し、ポリアミン含有組成物を製造した。すなわち、ミルクセパレーター(AMS-2000;岩井機械工業社製)で牛乳を分離して調製した脱脂乳 200 lを、合成吸着剤 (セパビーズSP207;三菱化学社製)100ml を充填したカラムに、4℃、合成吸着剤 1 l当たり 12 l/時の通液速度で通液して、合成吸着剤にポリアミンを吸着させた後、エア撹拌及び脱イオン水で充分に合成吸着剤を逆洗して不純物を除去し、次いで、1N塩酸 300mlを、合成吸着剤 1 l当たり4 l/時の通液速度で通液して、合成吸着剤に吸着したポリアミンを溶出した。そして、この溶出液を、弱塩基性アニオン交換樹脂(Dowex 66(OH形);ダウ・ケミカル日本社製) 200ml を充填したカラムに、合成吸着剤 1 l当たり2 l/時の通液速度で通液して中和した後、凍結乾燥して、ポリアミン含有組成物52mgを製造した。このポリアミン含有組成物のポリアミン純度は99%であり、スペルミジン16.8mg及びスペルミン34.2mgを含有していた。
なお、乳素材として使用した脱脂乳の合成吸着剤への通液前後の一般成分を分析したところ、表1に示した通り、一般成分に差は無いことが判った。また、風味についても特に問題はなく、ポリアミンを分離、回収した後も脱脂乳として使用できることが判った。
【0015】
【表1】
【0016】
【実施例2】
乳素材として、カッテージチーズホエーを使用し、ポリアミン含有組成物を製造した。すなわち、カッテージチーズ製造時に生成したホエー(pH4.3) 300 l を、合成吸着剤 (セパビーズSP207;三菱化学社製)100ml を充填したカラムに、36℃、合成吸着剤 1 l当たり 12 l/時の通液速度で通液して、合成吸着剤にポリアミンを吸着させた。なお、ホエーのファインカードのために、通液の途中でカラム内圧が上昇したが、その都度、エア撹拌及び脱イオン水で充分に合成吸着剤を逆洗してファインカードを除去し、ホエーを通液し続けた。次いで、エア撹拌及び脱イオン水で充分に合成吸着剤を逆洗して不純物を除去した後、1N塩酸 300mlを、合成吸着剤 1 l当たり4 l/時の通液速度で通液して、合成吸着剤に吸着したポリアミンを溶出した。そして、この溶出液を、弱塩基性アニオン交換樹脂(Dowex 66(OH形);ダウ・ケミカル日本社製) 200ml を充填したカラムに、合成吸着剤 1 l当たり2 l/時の通液速度で通液して中和した後、凍結乾燥して、ポリアミン含有組成物43mgを製造した。このポリアミン含有組成物のポリアミン純度は99%であり、スペルミジン14.9mg及びスペルミン27.7mgを含有していた。
なお、合成吸着剤へ通液したカッテージチーズホエーについては、強酸性カチオン交換樹脂 (IR120B(H形);オルガノ社製) 及び強塩基性アニオン交換樹脂(SA20AP(OH形);三菱化学社製) に通液して脱塩ホエーを製造し、その一般成分及びミネラル成分を分析したところ、表2に示した通り、通常の方法で製造した脱塩ホエーと差は無く、ポリアミンを分離、回収した後もカッテージチーズホエーとして使用できることが判った。
【0017】
【表2】
【0018】
【実施例3】
乳素材として、乳タンパク濃縮物(MPC)の製造過程で排出されるUF透過液を使用し、ポリアミン含有組成物を製造した。すなわち、ミルクセパレーター(AMS-2000;岩井機械工業社製)で牛乳を分離して調製した脱脂乳を、分画分子量10,000のUF膜(PW1812T;材質:ポリエーテルサルフォン、モジュール:スパイラル型、膜面積:0.55m2;DESALINATION社製)を用い、循環流量 10 l/分及び平均圧力4kg/cm2で8倍まで濃縮し、UF透過液を得た。このUF透過液 4,500 lを、弱酸性カチオン交換樹脂(ダイヤイオンWK40(H形);三菱化学社製) 1 l を充填したカラムに、36℃、弱酸性カチオン交換樹脂 1 l当たり 15 l/時の通液速度で通液して、弱酸性カチオン交換樹脂にポリアミンを吸着させた後、エア撹拌及び脱イオン水で充分に弱酸性カチオン交換樹脂を逆洗して不純物を除去し、次いで、1.5N塩酸 4 lを、弱酸性カチオン交換樹脂 1 l当たり4 l/時の通液速度で通液して、弱酸性カチオン交換樹脂に吸着したポリアミンを溶出した。そして、この溶出液を、ED脱塩装置(TS2;カチオン膜 (CMX)、アニオン膜 (AMX)、温度:36℃、濃縮液:1%塩化ナトリウム溶液;トクヤマ社製)を用い、電気伝導度が 500μS/cmになるまで脱塩した後、凍結乾燥して、ポリアミン含有組成物 680mgを製造した。このポリアミン含有組成物のポリアミン純度は97%であり、その中の90%がスペルミンであった。
なお、ポリアミンを含有する溶出液をED処理した際に得られた濃縮液は塩酸を含有しており、この濃縮液に0.25倍量の5N塩酸を添加することで、ポリアミンの溶出に再利用できることが判った。
【0019】
【実施例4】
乳素材として、乳糖結晶母液を使用し、ポリアミン含有組成物を製造した。すなわち、ホエーのUF透過液をエバポレーターで固形40%になるまで濃縮した後、シーディングによって生成した乳糖結晶を除去して乳糖結晶母液を得た。この乳糖結晶母液 7,000 lを弱酸性カチオン交換樹脂(ダイヤイオンWK40(H形);三菱化学社製) 10 lを充填したカラムに、36℃、弱酸性カチオン交換樹脂 1 l当たり 15 l/時の通液速度で通液して、弱酸性カチオン交換樹脂にポリアミンを吸着させた後、エア撹拌及び脱イオン水で充分に弱酸性カチオン交換樹脂を逆洗して不純物を除去し、次いで、1.5N塩酸 40 l を、弱酸性カチオン交換樹脂 1 l当たり4 l/時の通液速度で通液して、弱酸性カチオン交換樹脂に吸着したポリアミンを溶出した。そして、この溶出液を、食塩阻止率50%を有するNF膜(Desal-5;材質:ポリアミド、モジュール:スパイラル型、膜面積:0.55m2;DESALINATION社製) を用い、循環流量 10 l/分、平均圧力4kg/cm2で20倍まで濃縮し、ダイアフィルトレーション(DF)処理を3倍した後、脱塩ホエー 2 lと混合し、凍結乾燥して、ポリアミン強化脱塩ホエー粉 90gを製造した。このポリアミン強化脱塩ホエー粉の成分組成は、乳糖が 80.7%、脂肪が0.9%、タンパク質が 9.9% 、灰分0.7%及びポリアミン5.3%であり、通常の脱塩ホエー粉の10万倍量のポリアミンを含有していた。
【0020】
【発明の効果】
本発明によると、乳や乳素材から、スペルミジンやスペルミン等のポリアミン含量が高く、しかも風味が良好で、飲食品や飼料等に使用するポリアミン素材として最適のポリアミン含有組成物を簡便かつ効率的に製造することができる。
しかも、ポリアミンを分離、回収した後も、原料として使用した乳や乳素材の一般成分は殆ど変化せず、風味等も良好であるので、ホエータンパク濃縮物(WPC)、脱塩ホエー、乳糖結晶母液等の乳素材を製造する従来の工程に、ポリアミンを吸着する工程のみを加えることで、ポリアミン含有組成物を製造することができ、大量かつ安価にポリアミン素材を供給することができる。
Claims (3)
- 乳又は乳素材を、ポリアミンとしてスペルミン及びスペルミジンを特異的に吸着する弱酸性カチオン交換樹脂又は合成吸着剤である吸着剤と接触させて、吸着剤に上記ポリアミンを吸着させた後、吸着剤に吸着した上記ポリアミンを溶出させることを特徴とするポリアミン含有組成物の製造方法。
- 吸着剤に吸着したスペルミン及びスペルミジンの溶出を、塩酸、硫酸等の無機酸、又は、ナトリウム、カリウム、カルシウム等のカチオンを含有するこれらの無機酸で行う請求項1記載の製造方法。
- 吸着剤に吸着したスペルミン及びスペルミジンを溶出させた溶出液を、さらに、アニオン交換樹脂処理、電気透析処理、ナノフィルトレーション膜処理等を行うことにより脱酸及び脱塩する請求項1又は2記載の製造方法。
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