以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。
(硬貨識別搬送装置1の全体構成)
本発明の一実施形態に係る硬貨識別搬送装置1の全体の概略構成を図1〜図9に示す。本実施形態の硬貨識別搬送装置1は、8種のユーロ硬貨(1セント、2セント、5セント、10セント、20セント、50セント、1ユーロ及び2ユーロ)の識別及び搬送を行うようになっている。したがって、搬送中にこれら8種の金種毎に振り分けられた硬貨Cは、図21及び図44に示したように、合計8つのホッパー(硬貨投出装置)、すなわち4つの後方ホッパー83及び4つの前方ホッパー84のいずれかに分別・貯留される。なお、硬貨識別搬送装置1は、例えば図21に示すように、後方ホッパー83及び前方ホッパー84が本体61の鉛直方向側に2列に並べられて配置されるように、ほぼ水平な面上に設置されて使用される。
本実施形態に係る硬貨識別搬送装置1は、図1に示すように、大きく分けて、硬貨貯留部10と、硬貨分離識別部20と、硬貨搬送振分部60とから構成されている。図12〜図13に明瞭に示しているように、硬貨分離識別部20と硬貨搬送振分部60の接続箇所には、第2引渡領域P2が設けられており、硬貨分離識別部20で硬貨分離と金種・真贋識別の処理が完了した硬貨Cは、第2引渡領域P2を通って硬貨搬送振分部60(の硬貨搬送路76)に移送されるようになっている。また、硬貨分離識別部20は、硬貨分離部(回転ディスク26を使用)と硬貨識別部(回転ワイパー27を使用)に分割されており、前記硬貨分離部と前記硬貨識別部の接続箇所には、第1引渡領域P1が設けられている。前記硬貨分離部で硬貨分離の処理が完了した硬貨Cは、第1引渡領域P1を通って前記硬貨識別部に移送されるようになっている。なお、前記硬貨識別部には、硬貨Cの金種と真贋を識別するための硬貨識別領域P3が設けられている。硬貨Cは、回転ワイパー27の回転に伴って回転移動している間に硬貨識別領域P3を通過し、硬貨識別領域P3に設けられた複数の識別センサ46によって金種識別と真贋識別が行われる。
硬貨搬送振分部60には、8種のユーロ硬貨の搬送及び振分を行うため、図4及び図21に示すように、図1に矢印で示した搬送方向に沿って硬貨搬送路76が設けられており、その硬貨搬送路76に沿って硬貨分離識別部20の側から順に、第1振分部D1、第2振分部D2、第3振分部D3及び第4振分部D4が設けられている。詳細は後述するが、第1振分部D1は、振分フラップ70とリジェクトフラップ71を含む硬貨搬送振分機構(図29、図31〜図38、図41〜図43参照)を有しており、所定の2金種とリジェクト金種の合計3金種の振り分けを行うようになっている。第2〜第4振分部D2〜D4の各々は、振分フラップ70のみを含む硬貨搬送振分機構(図30、図39〜図40参照)を有しており、所定の2金種の振り分けを行うようになっている。
(硬貨貯留部10の構成)
硬貨貯留部10は、硬貨分離識別部20のケーシング22の上部壁22a(図1及び図10参照)の表面に着脱可能に装着されたヘッド24によって形成されている。ヘッド24は湾曲された板状部材であり、ヘッド24の内面と上部壁22aの表面とで挟まれた凹状領域(そこでは回転ディスク26が露出している)が、硬貨Cを貯留する空間を形成している。
(硬貨分離識別部20の構成)
硬貨分離識別部20は、硬貨貯留部10に貯留された複数の硬貨Cを相互に分離して1枚ずつ所定の傾斜姿勢で送出する部分(前記硬貨分離部)と、その硬貨分離部から送出された個々の硬貨Cの金種及び真贋を識別して送出する部分(前記硬貨識別部)とを含んでいる。図9〜図11から分かるように、硬貨分離識別部20を構成する前記硬貨分離部と前記硬貨識別部は、本実施形態では、略直方体状のケーシング22の上部壁22aの上に並置されている。ケーシング22の上部壁22aは、水平面に対して約45度傾斜して設置されている。ケーシング22の底面は開放されていて、その内部は空洞になっている。ケーシング22の内部には、略矩形のベース板21が嵌合されていて、両者は一体化されている。
ケーシング22の上部壁22aには、第1凹部22b、第2凹部22c、透孔22d及び案内壁22eが形成されている(図3、図10参照)。第1凹部22bは、硬貨分離用の回転ディスク26を収容するためのものであるから、回転ディスク26より少し大きい直径を持つ円形で、回転ディスク26の全体が収容できる程度の深さを持っている。第2凹部22cは、金種・真贋識別用の回転ワイパー27を収容するためのものであるから、回転ワイパー27より少し大きい直径を持つ略円形で、回転ワイパー27の全体が収容できる程度の深さを持っているのは、第1凹部22bと同様である。しかし、第2凹部22cは、硬貨Cが回転ワイパー27によって回転移動している間に、その金種・真贋識別のための複数の識別センサ46の上を硬貨Cが通過するようにする必要があるために、円形からずれた形(例えば図3、図12参照)となっている。第2凹部22cは、さらに、前記硬貨分離部から前記硬貨識別部への硬貨Cの移動を確実にするために、回転ディスク26と回転ワイパー27の間に、三日月を半分に分割したような形状を持つ連結部を有している。したがって、第2凹部22cの全体形状は、略円形の回転ワイパー収容部と、三日月を半分に分割した形状の前記連結部とを組み合わせた形状となっている。複数の識別センサ46は、ケーシング22の内部において第2凹部22cの所定の識別領域P3に固定されている(図13〜図14参照)。透孔22dは、上部壁22aの上で金種・真贋識別が完了した硬貨Cがその裏側にある硬貨搬送路76の入口に到達できるようにするためのもので、第2凹部22cの上部(回転ワイパー27によって回転移動する硬貨Cが最上位に到達する箇所)に設けられている。処理対象の全金種の硬貨Cが上部壁22aを貫通する必要があるから、透孔22dの大きさは、処理対象の全金種の中で最大直径を持つ硬貨Cよりも大きく設定されている。案内壁22eは、第2凹部22cを画定すると共に、回転ワイパー27により回転せしめられながらその金種・真贋識別が行われる硬貨Cを案内するためのものである。
前記硬貨分離部に設けられた硬貨分離用の回転ディスク26は、図9、図10及び図12に明瞭に示すように、円板の表層部から3つの硬貨Cを係合させる部分をくり抜いた形状を持つ押動部26aと、そのくり抜きによって形成された3つの係合凹部26cにそれぞれ配置された合計3つの押出部材26bと、3つの押出部材26bの直下にそれぞれ配置された3つのダスト落下防止部材26dとを備えている。3つの係合凹部26cは、回転ディスク26の中心の周りに等間隔に形成されている。押動部26aは、回転ディスク26の回転に伴って、係合凹部26cに係合された硬貨Cを押動する。押出部材26bは、回転ディスク26の回転と共に回転中の硬貨Cが第1引渡領域P1を通過する直前に揺動して、当該硬貨Cを係合凹部26cから押し出し、硬貨識別部への移行がスムーズに行われるようにする。ダスト落下防止部材26dは、回転ディスク26の下方にダストが落下して不具合が生じるのを防止する。回転ディスク26の全厚は、特に制限はないが、押動部26aの厚みは、最薄の硬貨Cよりも大きくならないように設定されている、押動部26aの厚みが最薄の硬貨Cよりも大きく設定されると、設定した厚み以下の厚さを持つ硬貨Cが2枚以上、同時に押動されてしまうからである。
硬貨貯留部10に貯留された複数の硬貨Cは、ランダムに回転ディスク26の3つの係合凹部26cに入り込み、その回転に伴って移動しようとするが、第1凹部22bの近傍においてケーシング22の上部壁22aに硬貨払い落とし部材30が固定されているため、回転ディスク26の回転によって無駄に掻き上げられた硬貨Cが払い落とされ、その結果として、それらの硬貨Cは1枚ずつ各々の係合凹部26cに入り込み、回転ディスク26と共に回転せしめられる。このため、硬貨貯留部10に貯留された複数の硬貨Cは、1枚ずつ相互に分離されて係合凹部26cに入り込むことになる。こうして、硬貨貯留部10にある複数の硬貨Cが相互に分離してから前記硬貨識別部の回転ワイパー27に向かって送出され、「硬貨分離」が実行される。
上述した硬貨分離プロセスでは、回転ディスク26の係合凹部26cに入り込んだ硬貨Cを押動部26aが押動するが、第1引渡領域P1を通過する直前に、押出部材26bが硬貨Cを係合凹部26cから押し出すようになっているため、硬貨Cはスムーズに第1引渡領域P1を通過して前記硬貨識別部に移行することができる。押出部材26bのこの動作は、回転ディスク26の直下に設けられた溝カム28と、回転ディスク26の裏面に装着された3つのカムフォロア29とによって実現される。すなわち、図10及び図11に示すように、溝カム28はケーシング22の上部壁22aに形成されており、その溝カム28の溝に、回転ディスク26の裏面の3つのカムフォロア29のカムフォロアピン29aが係合されている(図12参照)。回転ディスク26が回転すると、各々のカムフォロアピン29aが溝カム28の溝に沿って移動するため、押出部材26bはその揺動軸29bの周りに外向きに揺動(ピボット運動)する。その結果、硬貨Cが第1引渡領域P1を通過する直前に、押出部材26bが硬貨Cを係合凹部26cから押し出すように移動し、それ以外の時は対応する押動部26aに近接した状態を維持する、という動作が実現される。
第1引渡領域P1の近傍には、移送方向規制部材31が設けられているため(図12、図13参照)、第1引渡領域P1を通過する硬貨Cは、確実に第2凹部22cの前記回転ワイパー収容部に送られる。移送方向規制部材31は、第1凹部22bの外周縁の第1引渡領域P1に隣接する位置において、ケーシング22の上部壁22aに固定されている。
前記硬貨識別部に設けられた金種・真贋識別用の回転ワイパー27は、図10、図11及び図12に明瞭に示すように、円板から3つの硬貨Cを係合させる部分をくり抜いた、放射状に延在する3つの腕部を持つシンプルな形状を持つ。3つのくりぬかれた前記部分は、回転ワイパー27の中心の周りに等間隔に形成されている。回転ワイパー27は、第1引渡領域P1を介して第2凹部22cの前記回転ワイパー収容部(前記硬貨識別部)に送られて来た硬貨Cに対して金種・真贋識別を行い、金種・真贋識別が完了すると、第2引渡領域P2を通って硬貨Cを硬貨搬送振分部60の硬貨搬送路76に送出する。このとき、硬貨Cは、回転ワイパー27の回転に伴って第2凹部22cの前記回転ワイパー収容部の内部を回転移動せしめられるため、金種・真贋識別は、前記回転ワイパー収容部に設けられた識別領域P3で行われるようになっている。ケーシング22の上部壁22aには、第2引渡領域P2に対応する箇所に透孔22dが形成されており、さらに、ケーシング22の直下にあるベース板21の、透孔22dと重なる箇所には、切欠部21aが形成されているため、金種・真贋識別が完了した硬貨Cは、第2引渡領域P2にある透孔22dと切欠部21aを通って、つまり、ケーシング22とベース板21を貫通して、硬貨搬送振分部60の硬貨搬送路76に到達することが可能である。回転ワイパー27の全厚(案内壁22eの高さ)は、処理対象の全金種の中で最大厚さを持つ硬貨Cのそれとほぼ同じである。
回転ディスク26によって前記硬貨分離部から前記硬貨識別部(の第2凹部22c)に送られた硬貨Cは、その一側面が上部壁22aの傾斜した表面に支持された姿勢を保ったまま、回転ワイパー27の前記係合孔のいずれかに入り込んで回転ワイパー27と係合し、回転ワイパー27の回転に伴って案内壁22eに沿って移動する。前記硬貨識別部(の第2凹部22c)における硬貨Cの移動経路は、第1引渡領域P1から第2引渡領域P2までであるが、その途中に識別領域P3が設けられているため、当該移動経路を硬貨Cが移動するだけで自動的に金種・真贋識別が行われる。案内壁22eの形状(当該移動経路の形状)は、識別領域P3において所望の金種・真贋識別が実行されるように決定されている。このため、回転ワイパー27によって硬貨Cを案内壁22eに沿って移動するだけで、前記硬貨分離部から前記硬貨識別部に引き渡された硬貨Cの「金種・真贋識別」が実行される。
上述した動作を行う回転ディスク26と回転ワイパー27の回転駆動は、単一の電気モータ41の回転駆動力を用いて、次のようにして行われる。
電気モータ41は、ベース板21の裏面に固定されており、その回転軸は、ベース板21を貫通してその表面に突出している(図10及び図11参照)。電気モータ41の回転軸には、ベース板21の表面において駆動ギヤ42が接続されている。駆動ギヤ42の回転は、それに近接してベース板21の表面に回転可能に支持された被動ギヤ43、44及び45にこの順に伝達される。回転ディスク26の回転軸は駆動ギヤ42の回転軸に直結されているため、回転ディスク26は駆動ギヤ42と同じ回転数で回転駆動される。回転ワイパー27の回転軸は被動ギヤ45の回転軸に直結されているため、回転ワイパー27は被動ギヤ45と同じ回転数で回転駆動される。回転ディスク26と回転ワイパー27の1分当たり回転数が同じになるように被動ギヤ43、44及び45の歯数が設定されているため、回転ディスク26と回転ワイパー27は同じ回転速度で互いに逆向きに回転する。つまり、図12の矢印で示すように、回転ディスク26は反時計回りに回転し、回転ワイパー27は時計回りに回転する。
複数の識別センサ46は、識別領域P3の内部において、ベース板21の表面に固定されている。識別センサ46としては、公知のセンサが使用可能であるから、その詳細な説明は省略する。なお、図11において、符合46aは識別センサ46が装着された部分(識別センサ装着部)を示す。
ベース板21の表面には、回転ワイパー27が所定の回転数で回転を継続しているかどうかを検知するために、ワイパー回転検知センサ47が設けられている(図10、図14参照)。ワイパー回転検知センサ47は、本実施形態では、被動ギヤ44の回転を光学的に検知するようになっている。すなわち、図14に示すように、被動ギヤ44にはその中心の周りに円周方向に沿って等間隔で複数の小孔が形成されており、被動ギヤ44の裏側には設置された公知の発光素子が発する光をワイパー回転検知センサ47で検知するようになっている。被動ギヤ44の回転に伴って被動ギヤ44の表側では光が点滅するため、それをワイパー回転検知センサ47で検知することにより、容易に回転ワイパー27の回転状況を知ることができる。
ヘッド24の側面に装着された残量検知センサ25は、硬貨貯留部10の内部に処理待ちで滞留している硬貨Cの数(残量)を検知するために設けられている(図10参照)。ヘッド24は、基板ボックス23とは一体化されてはいない。なお、ヘッド24は可動部24aを有しており、ユーザーのイジェクト操作に応じて、硬貨貯留部10に貯留された硬貨Cが返却されるようになっている。通常は、図20(a)に示すように、可動部24aが閉じているが、イジェクト操作がされると、図20(b)に示すように、可動部24aが開いてそこから硬貨Cが落下し、返却される。可動部24aの開閉は、ヘッド24に内蔵されている開閉検知センサ(図示せず)によって検知される。
ベース板21の表面に突出形成されたリンク部48は、ベース板21の裏面側のソレノイド部40と、ヘッド24の可動部24aとを連携(リンク)させる部材である(図10参照)。すなわち、ソレノイド部40が励起又は消磁されると、ソレノイド部40のプランジャ(可動鉄心)の出没動作に応じてリンク部48が動き、リンク部48のこの動きに応じて可動部24aが開閉するようになっている。よって、リンク部48は、ヘッド24の可動部24aの開閉状態に関係なく、可動部24aとソレノイド部40とを連携動作させていることになる。
(硬貨搬送振分部60の構成)
次に、図1〜図11及び図21〜図30を参照しながら、硬貨搬送振分部60の構成について説明する。
本実施形態では、硬貨搬送振分部60には、図21に示すように、処理対象としての上述した8金種の硬貨Cに対応して、硬貨分離識別部20の側から順に第1振分部D1、第2振分部D2、第3振分部D3及び第4振分部D4が並設されている。硬貨搬送振分部60の直下には、さらに、8金種の硬貨Cを個別に貯留する合計8つのホッパー(硬貨投出装置)83、84が設けられている。硬貨搬送振分部60において図1に矢印で示した搬送方向(すなわち硬貨搬送路76の長軸方向)に搬送される硬貨Cは、第1〜第4振分部D1〜D4のいずれかにおいて金種毎に分別されてから、4つの後方ホッパー83と4つの前方ホッパー84のいずれかに送られて貯留される。なお、処理対象の8金種ではないと判断された硬貨(非対象硬貨)Cは、リジェクト金種(リジェクト硬貨)と認定される。リジェクト金種と認定された硬貨Cは、これらのホッパー83、84には収容されることなく、第1振分部D1によって振り分けられて出金トレイ(図示せず)に送られる、すなわち、硬貨識別搬送装置1の外部に排出されるのである。
硬貨搬送振分部60は、図1、図4及び図21に示すように、直線状に延在する本体61を有している。本体61は、後側にある相対的に背の高い無端ベルト収容部と、前側にある相対的に背の低いセンサ・ソレノイド設置部とに分けられている。本体61の無端ベルト収容部には、所定間隔をあけて配置された一対の被動ギヤ64、65と、それら被動ギヤ64、65の間に架け渡された無端ベルト63と、後方に配置された振分フラップ駆動用ソレノイド72とが収容されており(図4参照)、無端ベルト収容部の上面の開口部は後方カバー77によって覆われている(図1、図21参照)。後方カバー77の前面部分には、傾斜部77aが形成されており、その傾斜部77aの下端部の近傍には、ガイドレール66が設置されている。ガイドレール66は、傾斜部77aの下端部に沿って、第2引渡領域P2の近傍からオーバーフロー通路75まで略J字状に延在している(図4、図9参照)。ガイドレール66にはガイドレールの開口部66aが4つ設けられており、これらの開口部66aはそれぞれ、硬貨搬送路76の開口部(ゲート)76を形成している。本体61のセンサ・ソレノイド設置部には、導入硬貨センサ67と、搬送硬貨センサ68と、落下硬貨センサ69と、前方に配置された振分フラップ駆動用ソレノイド72と、リジェクトフラップ駆動用ソレノイド73とが設置されており、センサ・ソレノイド設置部の上面の開口部は前方カバー78によって覆われている。前方カバー78の後面部分には、傾斜部78aが形成されており、その傾斜部78aは、所定間隔をあけて後方カバー77の傾斜部77aと重なり合っている(図1参照)。こうして、重なり合った二つの傾斜部77a及び78aと、傾斜部77aの下端部に配置されたガイドレール66とにより、硬貨Cを垂直面に対して少し傾斜した立位状態で搬送するための硬貨搬送路76が形成されている。したがって、硬貨搬送路76の断面は略U字状となっている。硬貨搬送路76は、ガイドレール66と同様に、第2引渡領域P2の近傍からオーバーフロー通路75まで略J字状に延在している。ここでは、後方カバー77の傾斜部77aと前方カバー78の傾斜部78aの本体61の底面に対する傾斜角度は約45度であり、本体61の終端側端部(硬貨分離識別部20とは反対側の端部)の傾斜エッジ61aの傾斜角度は約30度である。したがって、硬貨識別搬送装置1(の硬貨搬送振分部60)が水平に設置されると、硬貨Cは、水平面に対して約45度だけ傾斜した状態で硬貨搬送路76を搬送されることになる。
上述したように、ガイドレール66は、硬貨搬送路76の底部を形成していて硬貨Cの外周を支持し、後方カバー77の傾斜部77aは、硬貨搬送路76の背面部を形成していて硬貨Cの背面側の側面を支持し、前方カバー78の傾斜部78aは、硬貨搬送路76の前面部を形成していて硬貨Cの前面側の側面を覆うようになっている(図21参照)。このため、硬貨Cは、少し後方に傾斜した立位状態でガイドレール66(の始端部)上に載せられるので、第2引渡領域P2を通って硬貨分離識別部20から送出されて来た硬貨Cは、その背面側の側面を後方カバー77の傾斜部77aによって支持されながらガイドレール66上を移動することで、図1の矢印で示した搬送方向に搬送可能となる。ガイドレール66に隣接し且つそれに沿って走行する無端ベルト63には、等間隔で複数のピン63aが装着されているため(例えば図4参照)、また、これらのピン63aは、後方カバー77の傾斜部77aの下端部近傍に設けられた隙間を介して、傾斜部77aの前方に突出しているため、ガイドレール66上に載せられた硬貨Cは、これらのピン63aのいずれかに係止されて図1の搬送方向に押圧される。その結果、当該硬貨Cはガイドレール66すなわち硬貨搬送路76上を順次搬送されるのである。なお、ガイドレール66の前面側の側面は、前方カバー78の傾斜部78aで覆われているため、硬貨Cは、二つの傾斜部77a及び78aによって両側面をサンドイッチされた状態で、ガイドレール66(硬貨搬送路76)上を移動する。このため、搬送中に振動等が加わっても、硬貨Cがガイドレール66(硬貨搬送路76)から落下(脱落)する恐れはない。
第1〜第4振分部D1〜D4の各々の内部では、硬貨搬送路76の底部(ガイドレール66の上端面)に、該当する2金種又は3金種の硬貨Cを下方に落下させるための開口部(ゲート)76aが形成されている(図29〜図32、図35、図36、図39〜図43参照)。したがって、硬貨搬送路76の底部には、合計4つの開口部(ゲート)76aが設けられていることになる。また、第1振分部D1内にある硬貨搬送路76の開口部76aの直下には、図29及び図31〜図43に示すように、その開口部76aに近接して、第1ゲート部材としての振分フラップ70と、第2ゲート部材としてのリジェクトフラップ71とが設けられている。これとは異なり、第2振分部D2、第3振分部D3及び第4振分部D4の各々の内部にある硬貨搬送路76の開口部76aの直下には、図30及び図39〜図40に示すように、その開口部76aに近接して、第1ゲート部材としての振分フラップ70のみが設けられている。第2〜第4振分部D2〜D4にリジェクトフラップ71が設けられていないのは、第2〜第4振分部D2〜D4ではリジェクト硬貨の排出は行われないからである。
第1振分部D1に設けられた振分フラップ70(図29参照)は、必要に応じて駆動(揺動)せしめられて第1振分部D1内にある硬貨搬送路76の開口部76aを開放し、もって硬貨搬送路76を搬送中の2つの該当金種と1つのリジェクト金種の合計3金種の硬貨Cを、開口部76aから後方カバー76の傾斜部76aに沿って選択的に自然落下させる。この時の硬貨Cの落下方向は、後方カバー76の傾斜部76aと同じ方向、すなわち、水平面に対して約45度傾斜した斜め前下方である。(a)開口部76aから落下した硬貨Cが上述した2つの該当金種の一方であるときは、振分フラップ70がそのデフォルト位置から上向きに揺動されてその第1切換位置に変位し、当該硬貨Cの落下進路を塞ぐため、当該硬貨Cは振分フラップ70に当接して落下方向が斜め前下方から斜め後下方に変更される。その後、本体61の内部において振分フラップ70の下方に設けられた第1シュート80により案内されて後方に送られ、本体61の直下に設けられた後方ホッパー83に貯留される(図31〜図34参照)。この時、振分フラップ70は、当該硬貨Cの落下方向を変更するガイドの役目を果たすことになる。(b)開口部76aから落下した硬貨Cが上述した2つの該当金種の他方であるときは、振分フラップ70がそのデフォルト位置から下向きに揺動されてその第2切換位置に変位し、当該硬貨Cの進路を塞がない状態になるため、当該硬貨Cは落下方向が変更されず振分フラップ70に支持されながら斜め前下方に移動可能になる。この場合、リジェクトフラップ71は、そのデフォルト位置にあって、本体61の内部においてリジェクトフラップ71の下方に設けられた第3シュート82の入口を閉鎖して通過不能状態にすると同時に、振分フラップ70と同様に斜め前下方に傾斜するため、当該硬貨Cは振分フラップ70とそれに繋がったリジェクトフラップ71の上を通って前方に送られ、本体61の斜め前下方に設けられた前方ホッパー84に貯留される(図35〜図38参照)。この時は、振分フラップ70とリジェクトフラップ71の双方が、当該硬貨Cを前方ホッパー84へ案内するガイドの役目を果たすことになる。(c)開口部76aから落下した硬貨Cが上述したリジェクト金種であるときは、前記開口部76aから落下した硬貨Cが上述した2つの該当金種の他方であるときと同様に、振分フラップ70がそのデフォルト位置から下向きに揺動されてその第2切換位置に変位し、当該硬貨Cの進路を塞がない状態になるため、当該硬貨Cは落下方向が変更されず振分フラップ70に支持されながら斜め前下方に移動可能になる。しかし、この時には、リジェクトフラップ71がそのデフォルト位置から上向きに揺動されてその切換位置に変位し、第3シュート82の入口を開放して通過可能状態にするため、当該硬貨Cは振分フラップ70に支持されながら斜め前下方に移動した後、リジェクトフラップ71上に載ることなく、第3シュート82に送られる。そして、第3シュート82により案内されてほぼ垂直方向に落下し、第3シュート82の直下にある出金ベルト(図示せず)上に到達する(図41〜図42参照)。こうして出金ベルト上に載置されたリジェクト金種の硬貨Cは、出金ベルトの走行に伴って硬貨識別搬送装置1の外部、例えば出金トレイ(図示せず)に排出される。この時、振分フラップ70と第3シュート82が、当該硬貨Cを出金ベルトへ案内するガイドの役目を果たすことになる。(d)硬貨搬送路76を搬送中の硬貨Cが、上述した2つの該当金種及び1つのリジェクト金種のいずれでもないときは、開口部76aは振分フラップ70によって閉鎖状態に保持される。このため、硬貨搬送路76を搬送中の硬貨Cは、開口部76aを通って落下することなく、開口部76aをそのまま通過(素通り)する。
第2振分部D2、第3振分部D3及び第4振分部D4の各々に設けられた振分フラップ70(図30参照)は、必要に応じて駆動(揺動)せしめられて第2〜第4振分部D2〜D4の各々の内部にある硬貨搬送路76の開口部76aを開放し、もって硬貨搬送路76を搬送中の2つの該当金種の硬貨Cを、開口部76aから選択的に自然落下させる。この時の硬貨Cの落下方向は、第1振分部D1の場合と同じ方向、すなわち、水平面に対して約45度傾斜した斜め前下方である。(e)開口部76aから落下したその硬貨Cが上述した2つの該当金種の一方であるときは、振分フラップ70がそのデフォルト位置から上向きに揺動されてその第1切換位置に変位し、当該硬貨Cの落下進路を塞ぐため、当該硬貨Cは振分フラップ70に当接して落下方向が斜め前下方から斜め後下方に変更される。その後、本体61の内部において振分フラップ70の下方に設けられた第1シュート80により案内されて後方に送られ、本体61の直下に設けられた後方ホッパー83に貯留される(図39参照)。この時、振分フラップ70は、当該硬貨Cの落下方向を変更するガイドの役目を果たすことになる。(f)開口部76aから落下した硬貨Cが上述した2つの該当金種の他方であるときは、振分フラップ70がそのデフォルト位置から下向きに揺動されてその第2切換位置に変位し、当該硬貨Cの落下進路を塞がない状態になるため、当該硬貨Cは落下方向が変更されず振分フラップ70に支持されながら斜め前下方に移動可能になる。第2〜第4振分部D2〜D4の各々では、第1振分部D1のリジェクトフラップ71の位置に、リジェクトフラップ71に代えて、第3シュート82の入口を閉鎖した状態(デフォルト位置)のリジェクトフラップ71と同様の、斜め前下方に傾斜した第2シュート81が設けられているため、当該硬貨Cは振分フラップ70と第2シュート81の上を通って前方に送られ、本体61の斜め前下に設けられた前方ホッパー84に貯留される(図40参照)。この時、振分フラップ70と第2シュート81は、当該硬貨Cを前方ホッパー84へ案内するガイドの役目を果たすことになる。(g)硬貨搬送路76を搬送中の硬貨Cが、上述した2つの該当金種のいずれでもないときは、開口部76aは振分フラップ70によって閉鎖状態に保持される。このため、硬貨搬送路76を搬送中の硬貨Cは、開口部76aを通って落下することなく、開口部76aをそのまま通過(素通り)する。
第1〜第4振分部D1〜D4にそれぞれ設けられた振分フラップ70は、いずれも同じ構成であり、その駆動機構も同じである。これら振分フラップ70とその駆動機構の一例を、図22〜図25に示す。
図22〜図25から明らかなように、振分フラップ70は、略矩形の板状であり、その両側に第1側面70aと第2側面70bとを有している。第1側面70aには、凹状湾曲面が形成されている。この凹状湾曲面は、上下方向に延在する部分円筒面状とされている。これは、第1振分部D1では、図35〜図38に示すようにして硬貨Cを前方ホッパー84に向けて送る場合に、重力により硬貨Cが第1側面70aの上を斜め前下方にスライドして、隣接するリジェクトフラップ71の表面71bまで移動する間、当該硬貨Cがその移動方向からずれないように案内するためである。また、第2〜第4振分部D2〜D4の各々では、図40に示すようにして硬貨Cを前方ホッパー84に向けて送る場合に、重力により硬貨Cが第1側面70aの上を斜め前下方にスライドして、隣接する第2シュート81の表面まで移動する間、当該硬貨Cがその移動方向からずれないように案内するためである。第2側面70bには、下端が開口した窪みが形成されている。これは、第1〜第4振分部D1〜D4の各々において、図31〜図34及び図39に示すようにして硬貨Cを後方ホッパー83に向けて送る場合に、重力により斜め前下方に落下中の硬貨Cの先端部を第2側面70bの前記窪みの内面で受けて、当該硬貨Cの移動方向が確実に斜め後下方に変換されるようにするためである。このように、振分フラップ70は、硬貨Cの振り分け部材としての役割と、硬貨Cのガイド部材としての役割を果たす。なお、振分フラップ70の上端部70cは、第1〜第4振分部D1〜D4の各々において硬貨搬送路76の対応する開口部76aを閉鎖するために使用される。
振分フラップ70の位置切換装置としての振分フラップ70の駆動機構(振分フラップ駆動機構)は、2つの振分フラップ駆動用ソレノイド72と、それら2つの振分フラップ駆動用ソレノイド72の間に配置された駆動部材86と、振分フラップ70を駆動部材86にリンク(連携)させるためのリンク部材87と、振分フラップ70を揺動可能に支持する一対の揺動軸88とを備えている。各揺動軸88の一端は、振分フラップ70の対向する端部にそれぞれ固定され、他端は本体61の内部の所定箇所に揺動可能に支持されている。一対の揺動軸88は、本体61の内部において本体61の底面に対して平行に保持されているため、硬貨識別搬送装置1を水平面に設置することで、振分フラップ70はほぼ水平な揺動軸88の周りに揺動することが可能である。一対の揺動軸88は、水平面内にあって硬貨Cの搬送方向に対して平行である。
駆動部材86は、上壁と前壁が除去された中空の略直方体状であり、その左右側壁にそれぞれ形成された略U字状の係合部86aが、対応する振分フラップ駆動用ソレノイド72のプランジャ(可動鉄心)72aの先端に形成された円形の係合溝72aaに係合されている。この係合構成により、2つのプランジャ72aの出没動作によって駆動部材86に所望の直線運動(往復運動)をさせることができる。
リンク部材87は、一端に円形透孔が形成され、他端に突起87aが形成された略直線状の棒材から形成されている。リンク部材87の一端の円形透孔には、一方の揺動軸88が回転可能に係合され、その他端の突起87aには駆動部材86の後壁にある円形透孔が回転可能に係合されている。このように揺動軸88と駆動部材86に合されたリンク部材87は、振分フラップ駆動用ソレノイド72によって生じる駆動部材86の水平直線運動を、揺動軸88(つまり振分フラップ70)の揺動運動に変換する「クランク機構」を構成している。
一方の振分フラップ駆動用ソレノイド72は、本体61のセンサ・ソレノイド設置部に設置され、他方の振分フラップ駆動用ソレノイド72は、本体61の無端ベルト収容部内で無端ベルト63とガイドレール66の下方に設置されている(図4、図21参照)。これら2つの振分フラップ駆動用ソレノイド72は、いずれも、そのプランジャ72aが水平面内で搬送方向に対して直交しており、「中立(中央)位置」、「突出位置」、「没入位置」の3つの位置をとり得る構成を持っている。すなわち、各々の振分フラップ駆動用ソレノイド72に正電圧が印加されて励磁されると、そのプランジャ72aが振分フラップ70の側に移動(突出)して「突出位置」に位置決めされ、負電圧が印加されて励磁されると、そのプランジャ72aが振分フラップ70から離れる側に移動(没入)して「没入位置」に位置決めされる。各々の振分フラップ駆動用ソレノイド72に正電圧も負電圧も印加されない、つまり、消磁されているときは、それらのプランジャ72aは共に「中立(中央)位置」に保持される。2つの振分フラップ駆動用ソレノイド72への印加電圧の極性は、一方のソレノイド72が「突出位置」に位置するときには、必ず、他方のソレノイド72が「没入位置」に位置するようにして、駆動部材86が確実に「デフォルト位置」から「第1切換位置」または「第2切換位置」に変位するように制御される。例えば、一方の振分フラップ駆動用ソレノイド72に正電圧が印加されるときは、必ず、他方の振分フラップ駆動用ソレノイド72に負電圧が印加されるようにすればよい。また、一方の振分フラップ駆動用ソレノイド72に電圧が印加されない(消磁される)ときは、必ず、他方の振分フラップ駆動用ソレノイド72にも電圧が印加されない(消磁される)ようにすればよい。このように、2つの振分フラップ駆動用ソレノイド72への印加電圧の極性を交互に変えながら2つの振分フラップ駆動用ソレノイド72を同期して励磁又は消磁することで、振分フラップ70の状態(姿勢)を図23に示した「デフォルト位置A0」、図24に示した「第1切換位置A1」、及び、図25に示した「第2切換位置A2」のいずれか1つに選択的に設定(位置決め)することが可能である。
図22に示すように、振分フラップ70がデフォルト位置A0(図23参照)にあるときには、振分フラップ70の中心面は、ほぼ水平状態にある揺動軸88に対して所定角度傾斜している(図22の位置A0を参照)。デフォルト位置A0では、第1〜第4振分部D1〜D4の各々において、振分フラップ70の上端部70cが硬貨搬送路76の対応する開口部(ゲート)76aと重なり合うことでこれを閉鎖するようになっているため、硬貨搬送路76を搬送される硬貨Cは開口部76aから落下することなく通過する。振分フラップ70がデフォルト位置から第1切換位置A1(図24)に変位すると、振分フラップ70の中心面は、揺動軸88の周りにデフォルト位置A0から上方に角度θ1だけ揺動して、第1切換位置A1に変位する。このとき、振分フラップ70の上端部70cは、開口部76aから角度θ1だけ上方にずれることで開口部76aを開放するため、硬貨搬送路76を搬送される硬貨Cは開口部76aから後方カバー76の傾斜部76aに沿って斜め前下方に落下するが、その際に振分フラップ70の第2側面70bに当接して斜め後下方に落下方向が変換される。その後、当該硬貨Cは、第1シュート80によって対応する後方ホッパー83に送られ、貯留される。これに対し、振分フラップ70がデフォルト位置A0から第2切換位置A2(図25)に変位すると、振分フラップ70の中心面は、揺動軸88の周りにデフォルト位置から下方に角度θ2だけ揺動して、第2切換位置A2に変位する。このとき、振分フラップ70の上端部70cは、開口部76aから角度θ2だけ下方にずれることで開口部76aを開放するため、硬貨搬送路76を搬送される硬貨Cは開口部76aから後方カバー76の傾斜部76aに沿って斜め前下方に落下するが、その際に振分フラップ70の第1側面70aに支持されながら斜め前下方に移動する。その後、当該硬貨Cは、デフォルト位置にあるリジェクトフラップ71(第1振分部D1の場合)または第2シュート81(第2〜第4振分部D2〜D4の場合)によって、対応する前方ホッパー84に送られ、貯留される。
振分フラップ70とその駆動機構の構成は、ここで述べたものに限定されず、これ以外の構成としてもよいことは言うまでもない。また、振分フラップ駆動用ソレノイド72に代えて他の駆動装置、例えば電動モータを使用してもよい。駆動機構も、駆動部材86とリンク部材87を用いたものに限定されず、これ以外の構成としてもよい。要は、必要に応じて、振分フラップ70を「デフォルト位置A0」、「第1切換位置A1」及び「第2換位置A2」という3つの位置のいずれか1つに選択的に位置決めできるものであれば、任意の構成のものが使用できる。
第1振分部D1に設けられたリジェクトフラップ71とその駆動機構の一例を、図26〜図28に示す。
図26〜図28から明らかなように、リジェクトフラップ71は、略矩形の板状であり、その先端部71aがテーパー状になっている。テーパー状の先端部71aは、第3シュート82の上端部に当接せしめられて第3シュート82の入口を閉鎖した際(デフォルト位置)に、第1振分部D1にある硬貨搬送路76の開口部76aを通って斜め前下方に落下して振分フラップ70の第1側面70a上を移動してくる硬貨Cが、滑らかにリジェクトフラップ71の表面71bに載って前方にスライドするようにするために、設けられている。この時、リジェクトフラップ71の表面71bは、当該硬貨Cを対応する前方ホッパー84に送るガイドとして機能する。
リジェクトフラップ71の位置切換装置としてのリジェクトフラップ71の駆動機構(リジェクトフラップ駆動機構)は、1つのリジェクトフラップ駆動用ソレノイド73と、そのリジェクトフラップ駆動用ソレノイド73のプランジャ(可動鉄心)73aに係合された駆動部材89と、リジェクトフラップ71を駆動部材89にリンク(連携)させるためのリンク部材90と、リジェクトフラップ71を揺動可能に支持する一対の揺動軸91とを備えている。各揺動軸91の一端は、リジェクトフラップ71の両端にそれぞれ固定され、他端は本体61のセンサ・ソレノイド設置部内の所定箇所に揺動可能に支持されている。一対の揺動軸91は、本体61の底面に対して平行に保持されているため、硬貨識別搬送装置1を水平面に設置することで、リジェクトフラップ71はほぼ水平な揺動軸91の周りに揺動することが可能である。一対の揺動軸91は、水平面内にあって搬送方向に対して平行である。
駆動部材89は、略直線状の棒状体であり、その基端部に形成された略U字状の係合部89aが、リジェクトフラップ駆動用ソレノイド73のプランジャ73aの先端に形成された円形の係合溝73aaに係合されている。この係合構成により、プランジャ73aのほぼ水平方向の出没動作に伴って駆動部材89に所望の直線運動(往復運動)をさせることができる。
リンク部材90は、一端に円形透孔が形成され、他端に突起90aが形成された略直線状の棒材から形成されている。リンク部材90の一端の円形透孔には、一方の揺動軸91が回転可能に係合され、その他端の突起90aには駆動部材89の端部にある円形透孔が回転可能に係合されている。このように揺動軸91と駆動部材89に係合されたリンク部材90は、リジェクトフラップ駆動用ソレノイド73のプランジャ73aによって生じる駆動部材89の水平直線運動を、揺動軸91(つまりリジェクトフラップ71)の揺動運動に変換する「クランク機構」を構成している。
リジェクトフラップ駆動用ソレノイド73は、本体61のセンサ・ソレノイド設置部の外部前方に設置されている(図21参照)。このリジェクトフラップ駆動用ソレノイド73は、そのプランジャ73aが水平面内で搬送方向に対して直交しており、「没入位置」と「突出位置」の2つの位置をとる。すなわち、リジェクトフラップ駆動用ソレノイド73に正電圧(または負電圧)が印加されて励磁されると、そのプランジャ73aが突出して「突出位置」に位置決めされ、リジェクトフラップ駆動用ソレノイド73に正電圧(または負電圧)が印加されない、つまり、消磁されているときは、そのプランジャ73aは「没入位置」に保持される。その結果、リジェクトフラップ駆動用ソレノイド73を所定の極性で励磁又は消磁することで、リジェクトフラップ71の状態(姿勢)を図27に示した「デフォルト位置B0」、及び、図28に示した「切換位置B1」のいずれか1つに選択的に設定することが可能である。
図26に示すように、リジェクトフラップ71がデフォルト位置B0(図27参照)にあるときには、リジェクトフラップ71の中心面は、ほぼ水平状態にある揺動軸91に対して所定角度傾斜している(図26参照)。デフォルト位置B0では、リジェクトフラップ71が第3シュート82の入口を閉鎖(使用不能)状態にするようになっているため、第1振分部D1内にある硬貨搬送路76の開口部76aを通って斜め前下方に落下して来た硬貨Cは、第2切換位置A2にある振分フラップ70の第1側面70aと、デフォルト位置B0にあるリジェクトフラップ71の表面71bとを通って対応する前方ホッパー84に送られ、貯留される。リジェクトフラップ駆動用ソレノイド73の動作によりリジェクトフラップ71がデフォルト位置B0から切換位置B1(図28)に変位すると、リジェクトフラップ71の中心面は、揺動軸91の周りにデフォルト位置B0から上方に角度φだけ揺動する(図26参照)。このとき、リジェクトフラップ71は、第3シュート82の入口を開放(使用可能)状態にするため、開口部76aから落下して第2切換位置A2にある振分フラップ70の第1側面70a上を移動して来た硬貨Cは、対応する前方ホッパー84には送られず、第3シュート82によって案内されて直下にある出金ベルト(図示せず)上に落下する。
リジェクトフラップ71とその駆動機構の構成は、ここで述べたものに限定されず、これ以外の構成としてもよいことは言うまでもない。また、リジェクトフラップ駆動用ソレノイド73に代えて他の駆動装置、例えば電動モータを使用してもよい。駆動機構も、駆動部材89とリンク部材90を用いたものに限定されず、これ以外の構成としてもよい。要は、必要に応じて、リジェクトフラップ71を「デフォルト位置B0」及び「切換位置B1」という2つの位置のいずれか1つに選択的に位置決めできるものであれば、任意の構成のものが使用できる。
次に、硬貨搬送振分部60の本体61、ガイドレール66及び第1〜第4振分部D1〜D4以外の構成要素について説明する。
本体61の無端ベルト収容部に収容された無端ベルト63は、歯付きであり、所定の間隔をあけて固定された2つの被動ギヤ64及び65に架け渡されている。被動ギヤ64及び65は、それぞれ、回転軸62a及び62bによって支持されており、回転軸62a及び62bの周りに回転する。無端ベルト63はほぼ水平に設置されている。硬貨分離識別部20側にある被動ギヤ64は、その下位に直結された連結ギヤ64a(図19参照)を介して硬貨分離識別部20の被動ギヤ45と連結されているため、硬貨分離識別部20に設けられた電気モータ41によって回転駆動される。このため、無端ベルト63も、回転ディスク26及び回転ワイパー27と同様に、電気モータ41によって回転駆動されることになる。被動ギヤ64は、硬貨分離識別部20に設けられた電気モータ41とは別の電気モータによって回転駆動するようにしてもよい。図9に示すように、無端ベルト63には、所定間隔で複数のピン63aが装着されており、それらのピン63aに硬貨Cをそれぞれ係合させることによって、無端ベルト63の移動に伴ってそれらの係合された硬貨Cを搬送するようになっている。無端ベルト収容部は、後方カバー77によって覆われているので、内部の無端ベルト63と被動ギヤ64及び65は外部からは見えない。
本体61のセンサ・ソレノイド設置部に設置されたセンサとしては、導入硬貨センサ67と搬送硬貨センサ68と落下硬貨センサ69がある(図9参照)。これらのセンサ67、68及び69は、発光素子と受講素子を備えてなる光学式センサであり、発光素子から発せられる照射光が硬貨Cによって一時的に遮断されて、前記照射光を受光素子で検知できなくなるのを感知することで、硬貨Cの到着や通過の有無を検知するものである。これらのセンサ67、68及び69として、光学センサ以外のセンサも使用可能であることは、言うまでもない。これらのセンサ67、68及び69は、いずれも、前方カバー78の表面に設置されている(図1参照)。前方カバー78が省略された図4、図8〜図11、図21、図29〜図44では、センサ67、68及び69の設置状態を明示するために、センサ67、68及び69が宙に浮いた状態で描かれている。
導入硬貨センサ67は、前方カバー78(の傾斜部78a)上において、ガイドレール66及び硬貨搬送路76の始端部(第1振分部D1の直前)に1つ設置されており、硬貨搬送路76への硬貨Cの導入の有無と、導入有りの場合の導入タイミングを検知する。導入硬貨センサ67の出力信号によって、硬貨分離識別部20の基板ボックス23内にある制御基板32(図16参照)に搭載された、硬貨識別搬送装置1の制御装置(制御プログラム)は、硬貨搬送路76への硬貨Cの導入の有無と、導入有りの場合の導入タイミングを知ることができる。
搬送硬貨センサ68は、前方カバー78(の傾斜部78a)上において、硬貨搬送路76に沿って所定間隔(ここでは等間隔)をおいて4つ設置されているが、それらは硬貨搬送路76に沿って設けられた第1〜第4振分部D1〜D4の合計4つの開口部76aの直後にそれぞれ配置されている。搬送硬貨センサ68は、硬貨搬送路76を搬送されている硬貨Cの対応する開口部76aの直前位置への到達の有無と、到達有りの場合の到達タイミングを検知する。搬送硬貨センサ68の出力信号によって、硬貨識別搬送装置1の制御装置(制御プログラム)(制御基板32上に搭載)は、硬貨搬送路76を搬送中の硬貨Cが対応する開口部76a(第1〜第4振分部D1〜D4のいずれか)の直後位置への到達の有無と、到達有りの場合の到達タイミングを知ることができる。
落下硬貨センサ69は、前方カバー78(の平坦部)上において、硬貨搬送路76から少し離れた位置において、硬貨搬送路76に沿って所定間隔(ここでは等間隔)をおいて4つ設置されているが、それらは対応する開口部76a(第1〜第4振分部D1〜D4のいずれか)に通じる振分通路79a、79b(図4及び図5参照)の直上にある。落下硬貨センサ69は、硬貨搬送路76に設けられた4つの開口部76aが開放された時に当該開口部76aを通じて落下する硬貨Cの有無と、落下有りの場合の落下数を検知する。落下硬貨センサ69の出力信号によって、硬貨識別搬送装置1の制御装置(制御プログラム)(制御基板32上に搭載)は、対応する開口部76aからの硬貨Cの落下の有無と、落下有りの場合の落下個数を知ることができる。
オーバーフロー通路75は、硬貨搬送路76の終端部に設けられており(図1参照)、オーバーフローした、つまり、振分通路79の下方に配置された8つのホッパー83、84のそれぞれで貯留限界に達した硬貨Cを回収するために使用される。オーバーフロー通路75は、硬貨搬送振分部60(無端ベルト収容部)の下面に開口しているため(図4参照)、オーバーフローした硬貨Cは速やかに、オーバーフロー硬貨収容容器85に収容される。オーバーフローしたか否かの判断と、オーバーフローしたと判断した際の硬貨排出処理は、第1〜第4振分部D1〜D4における硬貨Cの振分処理と共に、本実施形態に係る硬貨識別搬送装置1が組み込まれる本体装置(例えば硬貨入出金装置)に搭載された制御装置(制御プログラム)が制御する。これに対し、本実施形態に係る硬貨識別搬送装置1の基板ボックス23内の制御基板32に搭載されている制御装置(制御プログラム)は、硬貨分離識別部20の処理(硬貨分離識別処理)のみを制御する。
硬貨搬送路76の始端部の近傍には、図10及び図18示すように、板状の方向変換部材74が設けられている。方向変換部材74は、硬貨分離識別部20から第2引渡領域P2を通って硬貨搬送路76に向かって送出された硬貨Cが、確実且つスムーズに硬貨搬送路76の始端部に到達して硬貨搬送路76に入り込めるように、第2引渡領域P2を通過して硬貨分離識別部20の外に投出された硬貨Cの移動方向を変えるための部材である。方向変換部材74は、次のような点を考慮して設けられている。すなわち、ガイドレール66と後方カバー77の傾斜部77aと前方カバー78の傾斜部78aによって形成される硬貨搬送路76は、水平面内で図9のY方向に延在しているのに対し、硬貨分離識別部20は水平面に対して約45度傾斜した状態で図9のX方向に延在しているから、硬貨搬送路76の始端部の開口方向と硬貨分離識別部20の延在方向とは、互いに90度だけずれている。他方、硬貨分離識別部20の第2引渡領域P2の出口において、硬貨Cは、回転ワイパー27の回転駆動力と重力によって、硬貨分離識別部20(具体的には上部壁22a及びベース板21)から遠ざかるように、換言すれば、硬貨搬送路76の始端部に向かって、斜め前下方に投出される。こうして投出された硬貨Cは,重力によって、硬貨分離識別部20のベース板21の裏面の近傍を斜め前下方に徐々に落下して、ベース板21の裏面から徐々に離れていくと同時に、硬貨搬送路76の始端部に徐々に近づく。しかし、硬貨搬送路76の始端部の近傍においても、硬貨Cの移動方向は、硬貨搬送路76の始端部の開口方向に対して大きく(例えば約45〜50度)ずれたままであるため、当該硬貨Cを硬貨搬送路76の始端部に送り込むことは困難である。そこで、第2引渡領域P2の出口と硬貨搬送路76の始端部との間の部分(接続部分)において、第2引渡領域P2の出口から斜め前下方に投出された硬貨Cの移動経路内の適当な位置に、図10及び図18に示すような方向変換部材74を設置し、当該硬貨Cが硬貨搬送路76の始端部に近づく前に方向変換部材74に衝突してその移動方向を強制的に変化させることで、図18に矢印で示したように、当該硬貨Cの移動方向を硬貨搬送路76の始端部の開口方向に整合させているのである。こうすることにより、第2引渡領域P2から投出された硬貨Cは、硬貨搬送路76の始端部にスムーズ且つ確実に入り込むようになり、したがって、当該硬貨Cの無端ベルト63による継続的な搬送が可能となる。
(硬貨分離識別部20と硬貨搬送振分部60の硬貨移動方向の関係)
次に、硬貨分離識別部20と硬貨搬送振分部60における硬貨Cの移動方向の関係について説明する。
上述したところから明らかなように、硬貨分離識別部20、すなわち、回転ディスク26を備えた前記硬貨分離部と回転ワイパー27を備えた前記硬貨識別部とは、いずれも、ケーシング22の平坦な上部壁22aの上に設置されている。そして、前記硬貨分離部では、硬貨Cは回転ディスク26によって回転されながら相互に1枚ずつに分離され、その後、所定の姿勢、すなわち上部壁22aに沿って傾斜した立位状態で、第1引渡部P1を通過して前記硬貨識別部に引き渡される。前記硬貨識別部では、硬貨Cは回転ワイパー27によって回転されながら、金種識別と真贋識別が実行され、その後、第2引渡部P2を通過して硬貨搬送振分部60に引き渡される。したがって、これら2つの処理はいずれも、平坦な上部壁22aの上で硬貨Cを回転させながら実行されることが明らかである。しかも、第1引渡部P1を介する前記硬貨分離部から前記硬貨識別部への硬貨Cの引渡は、上部壁22aに沿って行われることも明らかである。したがって、硬貨分離識別部20での処理では、硬貨Cは、平坦な上部壁22aを含む平面に沿って移動されながら処理が実行されることが分かる。ここで、硬貨識別搬送装置1が水平に設置されているとして、硬貨分離識別部20での硬貨Cの巨視的な移動状況(流れ)を上方から見たとき、つまり平面視では、硬貨分離識別部20での処理は、上部壁22aに平行な平面内で、図9に示した矢印X(これは水平面内にある)の方向に硬貨Cを移動させながら実行される、換言すれば、硬貨分離識別部20での処理に伴う硬貨Cの巨視的な移動方向は、前記X方向である、と言うことができる。
これに対し、硬貨識別搬送装置1が水平に設置されているから、硬貨搬送振分部60では、細長い帯状の本体61にガイドレール66と後方カバー77と前方10カバー78を用いて構築された硬貨搬送路76は、ほぼ水平な面内で、本体61の長軸方向に沿って延在している。硬貨Cは、硬貨搬送路76を搬送されながら、金種毎の振り分けとリジェクトされるべき(不適当な)硬貨Cの排除とが行われ、それらの処理が完了した硬貨Cは硬貨搬送路76から8つのホッパー83、84に送られて貯留される。よって、硬貨搬送振分部60での硬貨Cの巨視的な移動状況(流れ)を上方から見たとき、つまり平面視では、硬貨搬送振分部60での処理は、図9に示した矢印Yの方向(これも水平面内にある)に硬貨Cを移動させながら実行される、換言すれば、硬貨搬送振分部60での処理に伴う硬貨Cの巨視的な移動方向は、前記Y方向である、と言うことができる。
平面視では、図9に示すように、前記X方向及び前記Y方向は水平面内で相互に直交しているから、硬貨分離識別部20での巨視的な硬貨Cの移動方向(前記X方向)と、硬貨搬送振分部60での巨視的な硬貨Cの移動方向(前記Y方向)とは、相互に直交関係にある。その結果、硬貨搬送振分部60での硬貨Cの巨視的な移動方向が硬貨分離識別部20での硬貨Cの巨視的な移動方向と同じである、上記特許文献1に記載の従来構成に比べて、硬貨識別搬送装置1全体の前記Y方向の長さ(全長)を短くすることができる、という利点が得られる。これは次のような理由による。
すなわち、硬貨分離識別部20では、硬貨分離のために回転ディスク26が使用され、金種識別のために回転ワイパー27が使用されており、しかも、硬貨分離部の処理面と金種識別部の処理面とを相互に隣接して配置させているから、硬貨分離識別部20の前記X方向の長さLx20は、大略、回転ディスク26の直径D26と回転ワイパー27の直径D27の和になる。すなわち、Lx20≒D26+D27と表せる。これに対し、硬貨分離識別部20の前記Y方向の長さLy20は、回転ディスク26も回転ワイパー27も平板状であって水平面に対して約45度傾斜して設置されていること、そして、回転ワイパー27の直径D27が回転ディスク26の直径D26より少し大きいことから、大略、回転ワイパー27の直径D27の(1/1.4)≒0.7倍である。すなわち、Ly20≒0.7×D27と表せる。したがって、硬貨分離識別部20は、前記X方向の長さLx20がその前記Y方向の長さLy20より2倍以上大きい、換言すれば、前記Y方向の長さLy20がその前記X向の長さLx20の(1/2)より小さい、という寸法関係を有しているのである。よって、硬貨分離識別部20と硬貨搬送振分部60における巨視的な硬貨Cの移動方向が直交する本実施形態の硬貨識別搬送装置1では、硬貨分離識別部20と硬貨搬送振分部60における巨視的な硬貨Cの移動方向が同じである上記特許文献1の従来構成に比べて、前記Y方向の長さ(全長)Ly1をかなり短くできることが明らかである。これは、硬貨識別搬送装置1の小型化(省スペース化)に貢献する。
なお、本実施形態に係る硬貨識別搬送装置1では、硬貨分離識別部20と硬貨搬送振分部60における巨視的な硬貨Cの移動方向が同じである上記特許文献1の従来構成に比べて、硬貨分離識別部20の前記X方向の長さLx20が少し大きくなるため、硬貨識別搬送装置1の前記X方向の長さLx1も少し大きくなるが、硬貨識別搬送装置1が組み込まれる本体装置(例えば硬貨入出金装置)の方で容易に対処できるため、これにより問題は生じない。
(硬貨識別搬送装置1の動作)
次に、上述したような構成及び機能を持つ本発明の一実施形態に係る硬貨識別搬送装置1の動作について、図15A〜図15Oと図31〜図45を参照しながら説明する。
図15A〜図15Oは、硬貨分離識別部20の硬貨送り動作を示す要部説明図である。
まず、図15Aに示すように、3枚の硬貨Cが硬貨分離識別部20の前記硬貨分離部に導入された状態を仮定する。前記硬貨分離部は、硬貨貯留部10に貯留された多数の硬貨Cが、1枚ずつ、前記硬貨分離部の回転ディスク26の反時計回りの回転によって3つの係合凹部26cに入り込むように構成されているので、このような状態は容易に実現する。
回転ディスク26が図15Aの状態からさらに回転して、1番目の硬貨Cが最上位を少し越えた位置に来ると、隣接する押出部材26bが対応する揺動軸29bの周りに揺動して、当該硬貨Cを係合凹部26cから押し出す。図15Bはこの状態を示している。
続いて、図15Cに示すように、最上位を少し越えた位置で、押出部材26bの押出作用によって硬貨Cが係合凹部26cから押し出されると、当該硬貨Cは、ケーシング22の上部壁22aに固定された移送方向規制部材31に当接して、移送方向が前記硬貨識別部に向かう方向に規制される。その結果、当該硬貨Cは前記硬貨識別部の側に強制的に移動せしめられ、さらに重力により落下しようとするため、当該硬貨Cは、図15Dに示すように、回転ワイパー27の3つの腕部の中から最近接位置にあるものによって受け止められる。この時、当該硬貨Cは、該当する腕部の上流側エッジに当接する。当該硬貨Cは、このようにして、第1引渡部P1を介して、前記硬貨分離部から前記硬貨識別部に確実に引き渡される。
回転ワイパー27の最近接位置にある腕部によって受け止められた当該硬貨C(1番目の硬貨)は、回転ワイパー27の時計回りの回転に伴って、該当する腕部と共に下方に移動する。この状態を図15Eに示す。回転ワイパー27のさらなる回転に伴い、該当する腕部が上位に変位すると、当該硬貨Cは追従できないために該当する腕部から離れ、図15Fに示すように、案内壁22eの最下部に一時的に滞留する。
回転ワイパー27のさらなる回転に伴い、次の腕部(の下流側エッジ)が滞留状態にある硬貨Cに当接して上位に持ち上げようとするが、この時、図15Gに示すように、当該腕部(の上流側エッジ)には次の硬貨Cが当接・支持されている。回転ワイパー27のさらなる回転に伴い、図15Hに示すように、滞留していた硬貨Cは該当する腕部によって持ち上げられるが、その際に識別領域P3を通過するため、当該硬貨Cの金種・真贋識別が自動的に実行される。ここでは、金種識別と同時に真贋識別も実行される。この時、さらに次の(3番目の)硬貨Cが、1番目の硬貨Cと同様に、押出部材26bの押出作用によって対応する係合凹部26cから押し出される。
回転ワイパー27のさらなる回転に伴い、図15Iに示すように、金種識別が完了した硬貨Cが該当する腕部によってさらに持ち上げられるが、その時、次の硬貨Cが次の腕部によって持ち上げられて識別領域P3を通過する。また、さらに3番目の硬貨Cが、第1引渡領域P1を通過して、前記硬貨識別部に引き渡される。
回転ワイパー27のさらなる回転に伴い、図15Jに示すように、金種識別が完了した硬貨Cは、第2引渡領域P2に到達する。この時、2番目の硬貨Cは識別領域P3を通過して、金種識別と真贋識別が実行される。3番目の硬貨Cは、図15Eにおける1番目の硬貨Cと同じ状態にある。
回転ワイパー27のさらなる回転に伴い、図15Kに示すように、第2引渡領域P2に到達した1番目の硬貨Cは、第2引渡領域P2を通過して、つまり、ケーシング22の上部壁22aに形成された透孔22dと、ベース板21に形成された切欠部21aを通過して、その先行部分がベース板21(前記硬貨識別部)の裏側に出る。この時、2番目の硬貨Cは、識別領域P3で金種識別と真贋識別が完了していて、該当する腕部によって持ち上げられている。3番目の硬貨Cは、案内壁22eの最下部に一時的に滞留している。
回転ワイパー27のさらなる回転に伴い、図15Lに示すように、第2引渡領域P2を通貨して、その先行部分がベース板21(前記硬貨識別部)の裏側に出た1番目の硬貨Cは、重力によって少しずつ下向きに移動方向を変え始める。この時、1番目の硬貨Cは、硬貨搬送振分部60の硬貨搬送路76の始端部に設けられた方向変換部材74に衝突して、当該始端部に向かって移動する。金種識別が完了した2番目の硬貨Cは、該当する腕部によってさらに持ち上げられている。3番目の硬貨Cは、案内壁22eの最下部にまだ滞留している。
回転ワイパー27のさらなる回転に伴い、図15Mに示すように、その先行部分がベース板21(前記硬貨識別部)の裏側に出た1番目の硬貨Cは、重力と方向変換部材74によって移動方向を変えながら、硬貨搬送路76の始端部に向かって移動を続ける。この時、金種識別が完了した2番目の硬貨Cが第2引渡領域P2に近づく。3番目の硬貨Cは、案内壁22eの最下部にまだ滞留している。
回転ワイパー27のさらなる回転に伴い、図15Nに示すように、その先行部分がベース板21(前記硬貨識別部)の裏側に出た1番目の硬貨Cは、硬貨搬送路76の始端部に向かって移動を続ける。この時、金種識別と真贋識別が完了した2番目の硬貨Cが第2引渡領域P2に到達する。3番目の硬貨Cは、該当する腕部によって案内壁22eの最下部から持ち上げられている。
回転ワイパー27のさらなる回転に伴い、図15Oに示すように、1番目の硬貨Cは、その全体がベース板21の裏側(前記硬貨識別部の外側)に出て、その先行部分が硬貨搬送路76の始端部に入り込む。この時、金種識別と真贋識別が完了した2番目の硬貨Cが、第2引渡領域P2の通過を始める。3番目の硬貨Cは、該当する腕部によって案内壁22eの最下部から持ち上げられながら、識別領域P3で金種識別と真贋識別が実行される。
以上のようなプロセスを経て、回転ディスク26を持つ前記硬貨分離部で他の硬貨Cから分離された1番目の硬貨Cは、第1引渡領域P1を通って前記硬貨分離部から、回転ワイパー27を持つ前記硬貨識別部に引き渡される。さらに、前記硬貨識別部で所定の金種・真贋識別が完了すると、第2引渡領域P2を通って前記硬貨識別部から硬貨搬送振分部60に引き渡される。
硬貨搬送振分部60では、第2引渡領域P2を通って引き渡された硬貨Cは、無端ベルト63のピン63aによって直線状の硬貨搬送路76を搬送されるが、その間に、前記硬貨識別部で実行された金種識別及び真贋識別の結果に基づき、硬貨搬送路76(ガイドレール66)の第1〜第4振分部D1〜D4に設けられた開口部76aが必要に応じて開閉され、合計8金種の硬貨Cが該当する8つのホッパー83、84にそれぞれ区別して送られて貯留される。各開口部76aの開閉は、対応する振分フラップ駆動用ソレノイド72によって対応する振分フラップ70(第1ゲート部材)を駆動(揺動)することで実行される。また、硬貨搬送路76を搬送される間に、前記硬貨識別部で実行された真贋識別の結果に基づき、第1振分部D1に設けられた第3シュート82(リジェクト用ゲート)の入口を開閉することで、使用を拒絶(リジェクト)すべきと判断された硬貨C(例えば偽造硬貨)は、硬貨搬送路76から選択的に排除されて、リジェクト硬貨専用の貯留容器(図示せず)に貯留される。第3シュート82の入口の開閉は、リジェクトフラップ駆動用ソレノイド73でリジェクトフラップ71(第2ゲート部材)を駆動(揺動)することで実行される。第1〜第4振分部D1〜D4の各々における振分フラップ70と第1振分部D1におけるリジェクトフラップ71のこのような動作の制御は、硬貨識別搬送装置1の基板ボックス23内の制御基板32に搭載されている制御装置(制御プログラム)ではなく、硬貨識別搬送装置1が組み込まれる本体装置(例えば硬貨入出金装置)に搭載された制御装置(制御プログラム)が実行する。
次に、上述した第1〜第4振分部D1〜D4における振分動作(硬貨搬送振分機構の動作)を、図31〜図45を参照しながら詳細に説明する。
硬貨搬送路76にその始端部から送り込まれた硬貨Cは、最初に第1振分部D1の入口に到達する。これは、第1振分部D1の直前に設置された導入硬貨センサ67の作動により検知される。到達した硬貨Cが第1振分部D1の該当する3金種(例えば、1ユーロ硬貨、2ユーロ硬貨及び対象外硬貨)のいずれでもない場合は、第1振分部D1に設けられた振分フラップ70は図23のデフォルト位置A0に保持されるため、第1振分部D1内にある硬貨搬送路76の開口部76aは振分フラップ70の上端部70cによって閉鎖状態に保持される。このため、当該硬貨Cは開口部76aに落下せずそのまま通過(素通り)し、次の第2振分部D2に向かって搬送される。なお、当該硬貨Cが開口部76aを通って落下しなかったことは、第1振分部D1に設置された落下硬貨センサ69の非作動によって検知され、次の第2振分部D2に向かって搬送されたことは、第1振分部D1の直後に設置された搬送硬貨センサ68の作動によって検知されて、前記本体装置(例えば硬貨入出金装置)の制御装置(制御プログラム)に通知される。
当該硬貨Cが第1振分部D1の該当する3金種のうちの一つ(例えば、2ユーロ硬貨)である場合は、第1振分部D1に設けられた振分フラップ70は上向きに揺動せしめられて、図23のデフォルト位置A0から図24の第1切換位置A1に変位するため、図31に示すように、第1振分部D1内の開口部76aは開放される。このため、図32〜図34に示すように、当該硬貨Cは開口部76aを通って本体61の内部に落下し、振分フラップ70の第2側面70bとその下方にある第1シュート80によって案内されて、第1振分部D1に設けられた後方ホッパー83に貯留される。なお、当該硬貨Cが開口部76aを通って落下して第1シュート80を通過したことは、第1振分部D1に設置された落下硬貨センサ69の作動によって検知され、次の第2振分部D2に向かって搬送されなかったことは、第1振分部D1の直後に設置された搬送硬貨センサ68の非作動によって検知されて、前記本体装置(例えば硬貨入出金装置)の制御装置(制御プログラム)に通知される。
当該硬貨Cが第1振分部D1の該当する3金種のうちの他の一つ(例えば、1ユーロ硬貨)である場合は、第1振分部D1に設けられた振分フラップ70は下向きに揺動せしめられて、図23のデフォルト位置A0から図25の第2切換位置A2に変位するため、図35に示すように、第1振分部D1内の開口部76aは開放される。このとき、第1振分部D1に設けられたリジェクトフラップ71は、図27のデフォルト位置B0にあり、リジェクトフラップ71の先端部71aが第3シュート82の上端部に当接していて、第3シュート82への入口が閉鎖された状態にある。この状態では、リジェクトフラップ71は、第2〜第4振分部D2〜D4に設けられた第2シュート81と同じ役割を果たすことができる。その結果、図36〜図38に示すように、当該硬貨Cは開口部76aを通って本体61の内部に落下し、振分フラップ70の第1側面70aとリジェクトフラップ71の表面71bによって案内されて、第1振分部D1に設けられた前方ホッパー84に貯留される。なお、当該硬貨Cが開口部76aを通って落下してリジェクトフラップ71の表面71bを通過したことは、第1振分部D1に設置された落下硬貨センサ69の作動によって検知され、次の第2振分部D2に向かって搬送されなかったことは、第1振分部D1の直後に設置された搬送硬貨センサ68の非作動によって検知されて、前記本体装置(例えば硬貨入出金装置)の制御装置(制御プログラム)に通知される。
当該硬貨Cが第1振分部D1の該当する3金種のうちの残りの一つ(例えば、対象外硬貨)である場合は、第1振分部D1に設けられた振分フラップ70は下向きに揺動せしめられて、図23のデフォルト位置A0から図25の第2切換位置A2に変位するため、図41に示すように、第1振分部D1内の開口部76aは開放される。このとき、リジェクトフラップ71は、図28の切換位置B1に変位せしめられており、リジェクトフラップ71の先端部71aが第3シュート82から離隔していて、第3シュート82への入口が開放された状態にある。その結果、図41〜図43に示すように、当該硬貨Cは開口部76aを通って本体61の内部に落下し、振分フラップ70の第1側面70aと第3シュート82によって案内されて、第1振分部D1に設けられた前方ホッパー84と後方ホッパー83の間に設けられた出金ベルト(図示せず)上に落下して載置される。こうして出金ベルト上に載置された当該硬貨Cは、出金口(図示せず)に向かって搬送されて、当該出金口に返還される。なお、当該硬貨Cが開口部76aを通って落下して第3シュート82を通過したことは、第1振分部D1に設置された落下硬貨センサ69の作動によって検知され、次の第2振分部D2に向かって搬送されなかったことは、第1振分部D1の直後に設置された搬送硬貨センサ68の非作動によって検知されて、本体装置(例えば硬貨入出金装置)の制御装置(制御プログラム)に通知される。
硬貨搬送路76上で第1振分部D1を素通りした硬貨Cは、次に第2振分部D2の入口に到達する。これは、第2振分部D2の直前に設置された搬送硬貨センサ68の作動により検知される。到達した硬貨Cが第2振分部D2の該当する2金種(例えば、50セント硬貨及び20セント硬貨)のいずれでもない場合は、第2振分部D2に設けられた振分フラップ70は図23のデフォルト位置A0に保持されるため、第2振分部D2内にある硬貨搬送路76の開口部76aは振分フラップ70の上端部70cによって閉鎖状態に保持される。このため、当該硬貨Cは開口部76aを通って落下せずそのまま通過(素通り)し、次の第3振分部D3に向かって搬送される。なお、当該硬貨Cが開口部76aを通って落下しなかったことは、第2振分部D2に設置された落下硬貨センサ69の非作動によって検知され、次の第3振分部D3に向かって搬送されたことは、第2振分部D2の直後に設置された搬送硬貨センサ68の作動によって検知されて、前記本体装置(例えば硬貨入出金装置)の制御装置(制御プログラム)に通知される。
当該硬貨Cが第2振分部D2の該当する2金種のうちの一つ(例えば、20セント硬貨)である場合は、第2振分部D2に設けられた振分フラップ70は上向きに揺動せしめられて、図23のデフォルト位置A0から図24の第1切換位置A1に変位するため、図39に示すように、第2振分部D2内の開口部76aは開放される。このため、当該硬貨Cは開口部76aを通って本体61の内部に落下し、振分フラップ70の第2側面70bとその下方にある第1シュート80によって案内されて、第2振分部D2に設けられた後方ホッパー83に貯留される。なお、当該硬貨Cが開口部76aを通って落下して第1シュート80を通過したことは、第2振分部D2に設置された落下硬貨センサ69の作動によって検知され、次の第3振分部D3に向かって搬送されなかったことは、第2振分部D2の直後に設置された搬送硬貨センサ68の非作動によって検知されて、前記本体装置(例えば硬貨入出金装置)の制御装置(制御プログラム)に通知される。
当該硬貨Cが第2振分部D2の該当する2金種のうちの他の一つ(例えば、50セント硬貨)である場合は、第2振分部D2に設けられた振分フラップ70は下向きに揺動せしめられて、図23のデフォルト位置A0から図25の第2切換位置A2に変位するため、図40に示すように、第2振分部D2内の開口部76aは開放される。このため、当該硬貨Cは開口部76aを通って本体61の内部に落下し、振分フラップ70の第1側面70aとその下方にある第2シュート81によって案内されて、第2振分部D2に設けられた前方ホッパー84に貯留される。なお、当該硬貨Cが開口部76aを通って落下して第2シュート81を通過したことは、第2振分部D2に設置された落下硬貨センサ69の作動によって検知され、次の第3振分部D3に向かって搬送されなかったことは、第2振分部D2の直後に設置された搬送硬貨センサ68の非作動によって検知されて、前記本体装置(例えば硬貨入出金装置)の制御装置(制御プログラム)に通知される。
硬貨搬送路76上で第2振分部D2を素通りした硬貨Cは、次に第3振分部D3の入口に到達する。これは、第3振分部D3の直前に設置された搬送硬貨センサ68の作動により検知される。到達した硬貨Cが第3振分部D3の該当する2金種(例えば、5セント硬貨及び10セント硬貨)のいずれでもない場合は、第3振分部D3に設けられた振分フラップ70は図23のデフォルト位置A0に保持されるため、第3振分部D3内にある硬貨搬送路76の開口部76aは振分フラップ70の上端部70cによって閉鎖状態に保持される。このため、当該硬貨Cは開口部76aを通って落下せずそのまま通過(素通り)し、次の第4振分部D4に向かって搬送される。なお、当該硬貨Cが開口部76aを通って落下しなかったことは、第3振分部D3に設置された落下硬貨センサ69の非作動によって検知され、次の第4振分部D4に向かって搬送されたことは、第3振分部D3の直後に設置された搬送硬貨センサ68の作動によって検知されて、前記本体装置(例えば硬貨入出金装置)の制御装置(制御プログラム)に通知される。
当該硬貨Cが第3振分部D3の該当する2金種のうちの一つ(例えば、10セント硬貨)である場合は、第3振分部D3に設けられた振分フラップ70は上向きに揺動せしめられて、図23のデフォルト位置A0から図24の第1切換位置A1に変位するため、図39に示すように、第3振分部D3内の開口部76aは開放される。このため、当該硬貨Cは開口部76aを通って本体61の内部に落下し、振分フラップ70の第2側面70bとその下方にある第1シュート80によって案内されて、第3振分部D3に設けられた後方ホッパー83に貯留される。なお、当該硬貨Cが開口部76aを通って落下して第1シュート80を通過したことは、第3振分部D3に設置された落下硬貨センサ69の作動によって検知され、次の第4振分部D4に向かって搬送されなかったことは、第3振分部D3の直後に設置された搬送硬貨センサ68の非作動によって検知されて、前記本体装置(例えば硬貨入出金装置)の制御装置(制御プログラム)に通知される。
当該硬貨Cが第3振分部D3の該当する2金種のうちの他の一つ(例えば、5セント硬貨)である場合は、第3振分部D3に設けられた振分フラップ70は下向きに揺動せしめられて、図23のデフォルト位置A0から図25の第2切換位置A2に変位するため、図40に示すように、第3振分部D3内の開口部76aは開放される。このため、当該硬貨Cは開口部76aを通って本体61の内部に落下し、振分フラップ70の第1側面70aとその下方にある第2シュート81によって案内されて、第3振分部D3に設けられた前方ホッパー84に貯留される。なお、当該硬貨Cが開口部76aを通って落下して第2シュート81を通過したことは、第3振分部D3に設置された落下硬貨センサ69の作動によって検知され、次の第4振分部D4に向かって搬送されなかったことは、第3振分部D3の直後に設置された搬送硬貨センサ68の非作動によって検知されて、前記本体装置(例えば硬貨入出金装置)の制御装置(制御プログラム)に通知される。
硬貨搬送路76上で第3振分部D2を素通りした硬貨Cは、次に第4振分部D4の入口に到達する。これは、第4振分部D4の直前に設置された搬送硬貨センサ68の作動により検知される。到達した硬貨Cは、残った2金種(例えば、1セント硬貨及び2セント硬貨)のいずれかである。
当該硬貨Cが第4振分部D4の該当する2金種、すなわち残った2金種のうちの一つ(例えば、2セント硬貨)である場合は、第4振分部D4に設けられた振分フラップ70は上向きに揺動せしめられて、図23のデフォルト位置A0から図24の第1切換位置A1に変位するため、図39に示すように、第4振分部D4内の開口部76aは開放される。このため、当該硬貨Cは開口部76aを通って本体61の内部に落下し、振分フラップ70の第2側面70bとその下方にある第1シュート80によって案内されて、第4振分部D4に設けられた後方ホッパー83に貯留される。なお、当該硬貨Cが開口部76aを通って落下して第1シュート80を通過したことは、第4振分部D4に設置された落下硬貨センサ69の作動によって検知され、次のオーバーフロー通路75に向かって搬送されなかったことは、第4振分部D4の直後に設置された搬送硬貨センサ68の非作動によって検知されて、前記本体装置(例えば硬貨入出金装置)の制御装置(制御プログラム)に通知される。
当該硬貨Cが残った2金種のうちの他の一つ(例えば、1セント硬貨)である場合は、第4振分部D4に設けられた振分フラップ70は下向きに揺動せしめられて、図23のデフォルト位置A0から図24の第2切換位置A2に変位するため、図40に示すように、第4振分部D4内の開口部76aは開放される。このため、当該硬貨Cは開口部76aを通って本体61の内部に落下し、振分フラップ70の第1側面70aとその下方にある第2シュート81によって案内されて、第4振分部D4に設けられた前方ホッパー84に貯留される。なお、当該硬貨Cが開口部76aを通って落下して第2シュート81を通過したことは、第4振分部D4に設置された落下硬貨センサ69の作動によって検知され、次のオーバーフロー通路75に向かって搬送されなかったことは、第4振分部D4の直後に設置された搬送硬貨センサ68の非作動によって検知されて、前記本体装置(例えば硬貨入出金装置)の制御装置(制御プログラム)に通知される。
硬貨識別搬送装置1に投入された硬貨Cがその処理可能量(処理限度)を超えた場合は、オーバーフロー状態と判断される。この場合、前記処理可能量への到達時より後に硬貨搬送振分部60に到達する硬貨(オーバーフロー硬貨)Cについては、硬貨搬送振分部60の第1〜第4振分部D1〜D4の内部にある開口部76aがすべて、対応する振分フラップ70の上端部70cによって閉鎖状態に保持される。このため、オーバーフロー硬貨Cは第1〜第4振分部D1〜D4内の前記開口部76aを通って落下せずそのまま通過し、図44に示すように、硬貨搬送路76の終端部に設けられたオーバーフロー通路75まで搬送される。その後、図45に示すように、オーバーフロー通路75の直下に装着されたオーバーフロー硬貨収容容器85に落下して貯留される。なお、オーバーフロー硬貨Cが第4振分部D4の開口部76aを通って落下せずに通過したことは、第4振分部D4に設置された落下硬貨センサ69の非作動によって検知され、次のオーバーフロー通路75に向かって搬送されたことは、第4振分部D4の直後に設置された搬送硬貨センサ68の作動によって検知されて、前記本体装置(例えば硬貨入出金機)の制御装置(制御プログラム)に通知される。
(硬貨識別搬送装置1の効果)
以上、詳細に述べたように、本発明の一実施形態に係る硬貨識別搬送装置1では、硬貨分離識別部20が、硬貨貯留部10に貯留された複数の硬貨Cを相互に分離して所定の姿勢で送出する前記硬貨分離部と、透孔22d(開口部)を持つケーシング22の上部壁22a(支持部材)上に設置された、前記硬貨分離部から送出された複数の硬貨Cの金種と真贋を識別して送出する前記硬貨識別部とを含んでいる。また、硬貨搬送振分部60は、前記硬貨識別部で金種・真贋識別が行われた複数の硬貨Cを搬送しながら該当する金種毎に振り分ける動作を実行する。そして、前記硬貨分離部で相互に分離された複数の硬貨Cは、第1引渡領域P1を介して図9のX方向(第1方向)に沿って移動して前記硬貨識別部に引き渡され、前記硬貨識別部で金種が識別された複数の硬貨Cは、第2引渡領域P2を介して前記X方向に対して直交する図9のY方向(第2方向)に方向変換されてから硬貨搬送振分部60に引き渡される。
硬貨搬送振分部60では、第2〜第4振分部D2〜D4の各々が、振分フラップ駆動用ソレノイド72により駆動される単一のゲート部材としての振分フラップ70により、所定の2金種の振り分けを行う構成を有しているので、2つのゲート部材を用いて所定の2金種の振り分けを行う構成を持つ、上述した特許文献3及び4に記載の従来の振分部に比べて、サイズが小さい。また、第1振分部D1は、振分フラップ駆動用ソレノイド72により駆動される振分フラップ70に加えて、リジェクトフラップ駆動用ソレノイド73により駆動されるリジェクトフラップ71を備えていて、振分フラップ70とリジェクトフラップ71とにより所定の3金種の振り分けを行う構成を有しているので、第2〜第4振分部D2〜D4の各々よりもサイズが大きいが、それでも、上述した特許文献3及び4に記載の従来の振分部にリジェクトフラップ駆動用ソレノイド73により駆動されるリジェクトフラップ71を追加した構成に比べれば、サイズが小さい。したがって、以上の構成及び機能を持つ第1〜第4振分部D1〜D4を備えた硬貨搬送振分部60の前記X方向の長さLx60と前記Y方向の長さLy60は、上述した特許文献1及び2に記載の、各振分部で1金種のみの振分を行う従来構成よりも、小さくすることができ、また、上述した特許文献3及び4に記載の、各振分部で2つのゲート部材により2金種の振分を行う従来構成よりも、小さくすることができる。よって、硬貨搬送振分部60の全体サイズの低減を通じて、硬貨識別搬送装置1の全体サイズ(すなわち前記X方向の長さLx1と前記Y方向の長さLy1)をこれら従来構成よりも小型化することができ、その結果、近年の小型化(省スペース化)の要請に容易に対応することが可能となる。
また、本実施形態に係る硬貨識別搬送装置1では、上述した「硬貨分離識別部20と硬貨搬送振分部60の硬貨移動方向の関係」の項で述べたように、硬貨分離識別部20の前記X方向の長さLx20が、大略、回転ディスク26の直径D26と回転ワイパー27の直径D27を用いて、Lx20≒D26+D27と表せるのに対し、硬貨分離識別部20の前記Y方向の長さLy20が、大略、Ly20≒0.7×D2と表せる。したがって、硬貨分離識別部20は、前記Y方向の長さLy20がその前記X向の長さLx20の(1/2)より小さくなっている。よって、本実施形態の硬貨識別搬送装置1では、硬貨分離識別部20と硬貨搬送振分部60における巨視的な硬貨Cの移動方向が同じである上記特許文献1の従来構成に比べて、硬貨分離識別部20の前記Y方向の長さLy20をかなり短くすることが可能である。よって、硬貨搬送振分部60の全体サイズの低減に加えて、硬貨分離識別部20前記Y方向の長さLy20の短縮も可能であるから、硬貨識別搬送装置1の全体サイズ(前記X方向の長さLx1と前記Y方向の長さLy1)のいっそうの小型化(省スペース化)が可能である、という利点がある。
しかも、前記組み合わせ体である硬貨分離識別部20に対して硬貨搬送振分部60を前記Y方向に延在するように配置するために実現する必要があるのは、第2引渡領域P2において、前記硬貨識別部を支持するケーシング22の上部壁22aの透孔22dとベース板21の切欠部21aとを介して、複数の硬貨Cの移送方向が前記X方向から前記Y方向に変換させることと、前記硬貨識別部と硬貨搬送振分部60の接続箇所に方向変換部材74を追加することだけであるから、前記硬貨識別部の基本的な構成を変更する必要がなくしたがって、上述した小型化(省スペース化)はシンプル且つ低コストの構成で実現することが可能である。
なお、本実施形態に係る硬貨識別搬送装置1では、硬貨分離識別部20の前記X方向の長さLx20が、硬貨分離識別部20と硬貨搬送振分部60の双方を前記X方向に延在するように配置してなる場合に比べて、少し大きくなるため、硬貨識別搬送装置1の前記X方向の長さLx1も少し大きくなるが、硬貨識別搬送装置1が組み込まれる本体装置(例えば硬貨入出金装置)の方で容易に対処できるため、これにより問題は生じない。
(第1〜第4振分部D1〜D4の硬貨搬送振分機構の効果)
続いて、本実施形態に係る硬貨識別搬送装置1において、硬貨搬送振分部60内の第1〜第4振分部D1〜D4の各々に設置されている硬貨搬送振分機構の効果について説明する。
上述した第1〜第4振分部D1〜D4に各々に設置されている硬貨搬送振分機構は、開口部(ゲート)76aを有する硬貨搬送路76と、開口部76aの下方において硬貨搬送路76に近接して配置された、揺動軸88の周りに揺動可能な振分フラップ70(第1ゲート部材)と、揺動軸88の周りに振分フラップ70を揺動させることで振分フラップ70の位置を切り換える位置切換装置としての、振分フラップ駆動用ソレノイド72を含む振分フラップ駆動機構とを備えている。そして、振分フラップ70は、硬貨搬送路76を搬送される硬貨Cの金種に応じて、(i)開口部76aを閉鎖するデフォルト位置A0、(ii)開口部76aを開放すると共に、開口部76aを通って硬貨搬送路76から落下する硬貨を後方ホッパー83に向かう方向(第1方向)に移動させる第1切換位置A1、及び、(iii)開口部76aを開放すると共に、開口部76aを通って硬貨搬送路76から落下する硬貨Cを前方ホッパー84に向かう方向(第2方向)に移動させる第2切換位置A2の間で切り換えが可能である。
また、振分フラップ駆動用ソレノイド72は、(a)硬貨搬送路76を搬送されて開口部76aに到着しようとする硬貨Cが該当2金種の一方(第1金種)であるときは、振分フラップ駆動用ソレノイド72により振分フラップ70が揺動せしめられて第1切換位置A1に位置決めされ、もって開口部76aから落下する硬貨Cを後方ホッパー83に向かう方向に移動させるようにし、(b)硬貨搬送路76を搬送されて開口部76aに到着しようとする硬貨Cが該当2金種の他方(第2金種)であるときは、振分フラップ駆動用ソレノイド72により振分フラップ70が揺動せしめられて第2切換位置A2に位置決めされ、もって開口部76aから落下する硬貨Cを前方ホッパー83に向かう方向に移動させるようにし、(c)硬貨搬送路76を搬送されて開口部76aに到着しようとする硬貨Cが該当2金種でない(第1金種でも第2金種でもない)ときは、振分フラップ70がデフォルト位置A0に保持され、もって硬貨Cが開口部76aを落下することなく通過するようにする。
このように、本実施形態に係る硬貨搬送振分機構では、硬貨搬送路76に設けられた開口部76aの下方において、硬貨搬送路76に近接して振分フラップ70が設けられていて、その位置は、振分フラップ駆動用ソレノイド72によって、デフォルト位置A0、第1切換位置A1及び第2切換位置A2の間で切り換え可能とされている。したがって、振分フラップ70(第1ゲート部材)という単一の部材を用いてその位置を所望金種に応じて切り換えることで、硬貨搬送路76を搬送されて開口部76aに到着しようとする硬貨Cを開口部76aから落下させて後方ホッパー83に向かう方向に移動させたり、開口部76aから落下させて前方ホッパー84に向かう方向に移動させたり、開口部76aから落下させることなく通過させたりすることができる。
よって、振分フラップ70という単一のゲート部材を設けてその位置を金種に応じて切り換えることで、所望の2金種の硬貨を振り分けることが可能である。これは、所望の2金種の硬貨を振り分けて異なる方向に振り分けるために2つのゲート部材を用いていた上記特許文献3及び4に記載の従来の硬貨搬送振分機構と同一の機能が、振分フラップ70という単一のゲート部材を用いて実現されることを意味している。
さらに、振分フラップ70という単一のゲート部材を用いることで、2金種の硬貨を振り分けて異なる方向に移動させるという機能が実現されるため、2つのゲート部材を用いて所望の2金種の硬貨を振り分ける従来の硬貨搬送振分機構よりも、機械的構成及び駆動機構がシンプルであると共に、それらの製造コストの低減及びメンテナンスの容易化が容易であり、しかも、位置切換手段(振分フラップ駆動機構)に含まれる振分フラップ駆動用ソレノイド72の制御に使用する制御プログラムの制作及びバージョンアップも容易である。
さらに言えば、上述した第1振分部D1に設置されている硬貨搬送振分機構は、揺動軸88の周りに揺動可能な振分フラップ70(第1ゲート部材)に加えて、揺動軸91の周りに揺動可能なリジェクトフラップ71(第2ゲート部材)が、振分フラップ70の近傍に設けられており、また、リジェクトフラップ71は、振分フラップ70が第2切換位置A2にあるときに開放された開口部76aを通って落下した硬貨Cを、その金種に応じて、後方ホッパー83に向かう第1方向や前方ホッパー84に向かう第2方向とは異なる第3方向(すなわち出金ベルトに向かう方向)に移動させることが可能である。このため、該当する2金種とリジェクト金種との合計3金種の振り分けが可能である、という効果がさらに得られる。なお、第3の金種は、リジェクト金種に限定されず、リジェクトする必要のない金種、例えば処理対象金種以外の正規金種としてもよいことは言うまでもない。この場合、処理対象金種が一つ増加して合計9金種の振り分けが可能になる。
(変形例)
上述した実施形態は、本発明を具体化した例を示すものである。したがって、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を外れることなく種々の変形が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、硬貨分離識別部20において、前記硬貨分離部で回転ディスク26を使用し、前記硬貨識別部で回転ワイパー27を使用しているが、本発明はこれに限定されない。前記硬貨分離部では、硬貨Cの分離ができるものであれば、これ以外の任意の構成を使用できるし、前記硬貨識別部でも、硬貨Cの金種と真贋の識別ができるものであれば、これ以外の任意の構成を使用できる。
また、上述した実施形態では、硬貨搬送振分部60において、ガイドレール66と後方カバー77の傾斜部77aと前方カバー78の傾斜部78aとによって形成した硬貨搬送路76と、複数のピン63aが装着された無端ベルト63と、硬貨搬送路76の途中に設けられた複数の開口部(ゲート)76aとを使用しているが、本発明はこれに限定されない。硬貨Cを搬送しながら所望の振分ができるものであれば、これ以外の任意の構成を使用できる。
また、上述した実施形態では、硬貨搬送振分部60の第1〜第4振分部D1〜D4の各々に設置された硬貨搬送振分機構において、第1ゲート部材が、揺動軸88の周りに揺動可能な振分フラップ70とされ、当該振分フラップ70を振分フラップ駆動用ソレノイド72によって駆動するようにしているが、本発明はこれに限定されない。第1ゲート部材としての機能を果たすものであれば、振分フラップ70とは異なる形状や構造の部材を第1ゲート部材として使用可能であるし、それに応じて第1ゲート部材の駆動手段も任意に変更が可能であることは言うまでもない。
また、上述した実施形態では、硬貨搬送振分部60の第1振分部D1に設置された硬貨搬送振分機構において、第2ゲート部材が、揺動軸91の周りに揺動可能なリジェクトフラップ71とされ、当該リジェクトフラップ71をリジェクトフラップ駆動用ソレノイド73によって駆動するようにしているが、本発明はこれに限定されない。第2ゲート部材としての機能を果たすものであれば、リジェクトフラップ71とは異なる形状や構造の部材を第2ゲート部材として使用可能であるし、それに応じて第2ゲート部材の駆動手段も任意に変更が可能であることは言うまでもない。