JP2021102769A - 耐火樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐火性のバラつきが少なく、かつ、表面仕上がり、強度にも優れる耐火樹脂組成物を提供。【解決手段】樹脂、エラストマー、ゴム、またはこれらの組み合わせであるマトリックス成分、熱膨張性黒鉛および無機充填剤を含有する耐火性樹脂組成物において、ポリメチルメタクリレート、変性ポリメチルメタクリレートおよび塩素化ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種を熱膨張性黒鉛1質量部に対して0.02〜1の質量部の割合で含むことを特徴とする耐火性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、耐火樹脂組成物に関する。
建築分野において使用する耐火性能を付与した樹脂材料として、熱膨張性黒鉛を含有する樹脂材料が提案されている(特許文献1〜4)。
しかし、熱膨張黒鉛を含む耐火材は、加工時間を短くしないと熱膨張黒鉛内の成分が抜けてしまい、膨張倍率が低下してしまうため、加工時間を短くする必要がある。一方で、耐火材は熱膨張黒鉛と併せて、無機充填剤や難燃材を多く含むことが多く、これらをバインダー樹脂に混ぜ込む為にはしっかり混練する必要があり、混練が不十分であると耐火材が脆くなる、表面が汚くなる(粉を吹く・黒くなる)、ハンドリングに支障をきたすとの問題を生じる。また、耐火材のサンプリング位置により耐火性能のバラつきが生じる場合がある。
混練が不十分であっても、不織布で挟む等の積層により問題を解決することが提案されているが、コストアップ、シワ等の発生により、必ずしも満足いくものではなかった。
特開平9−227716 特開平9−227747 特開平10−95887 特開2000−143941
本発明は、耐火性のバラつきが少なく、かつ、表面仕上がり、強度にも優れる耐火樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の目的を達成すべく、耐火性樹脂組成物において、塩素化ポリオレフィンおよびアクリル系重合体から選択される少なくとも1種の物質を熱膨張性黒鉛1質量部に対して0.02〜1質量部の割合で含むことで、上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の態様を包含する。
項1.樹脂、エラストマー、ゴム、またはこれらの組み合わせであるマトリックス成分、熱膨張性黒鉛および無機充填剤を含有する耐火性樹脂組成物において、
ポリメチルメタクリレート、変性ポリメチルメタクリレートおよび塩素化ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種を熱膨張性黒鉛1質量部に対して0.02〜1質量部の割合で含むことを特徴とする耐火性樹脂組成物。
項2.上記物質が塩素化ポリエチレン、メタクリル酸エステル共重合物、およびメタクリル酸エステル共重合の変性物からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする項1に記載の耐火性樹脂組成物。
項3.上記物質の重量平均分子量が10万以上であることを特徴とする項1または2に記載の耐火性樹脂組成物。
項4.前記無機充填剤として亜リン酸塩を含むことを特徴とする項1〜3のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
項5.ポリリン酸塩をさらに含むことを特徴とする項1〜4のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
項6.可塑剤をさらに含むことを特徴とする項1〜5のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
項7.マトリックス成分が塩化ビニル系樹脂であることを特徴とする項1〜6のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
項8.項1〜7のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物よりなる耐火樹脂成形体。
項9.項8に記載の耐火樹脂成形体を備えた建具。
本発明によれば、耐火性のバラつきが少なく、かつ、表面仕上がり、強度にも優れる耐火樹脂組成物が提供される。
本発明の耐火樹脂組成物からなる耐火樹脂成形体をサッシ枠に設けた耐火窓を示す略正面図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
マトリックス成分は、樹脂、エラストマー、およびゴムのいずれであってもよい。樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が含まれる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体樹脂、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂はいずれも、樹脂組成物としての耐火性能を阻害しない範囲で、架橋、変性して用いてもよい。樹脂の架橋方法についても、特に限定はなく、熱可塑性樹脂の通常の架橋方法、例えば、各種架橋剤、過酸化物を使用する架橋、電子線照射による架橋等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル
樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂が好ましい。
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、特に限定されないが、基本的にはエポキシ基をもつモノマーと硬化剤とを反応させることにより得られる。上記エポキシ基をもつモノマーとしては、例えば、2官能のグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、多官能のグリシジルエーテル型等のモノマーが例示される。
これらのエポキシ基をもつモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化剤としては、重付加型または触媒型のものが用いられる。重付加型の硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が例示される。また、上記触媒型の硬化剤としては、例えば、3級アミン、イミダゾール類、ルイス酸錯体等が例示される。エポキシ樹脂の硬化方法は、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。
エラストマーの例としてはオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、これらの組み合わせ等が挙げられる。
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。なかでも、ブチルゴムが好ましい。
これらの樹脂、エラストマー、および/またはゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
これらの樹脂、エラストマー、および/またはゴム物質の中でも、膨張黒鉛のマトリクス樹脂への分散性の観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂やポリオレフィン樹脂(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体)が好ましい。
熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、加熱時に膨張する特性を有する。天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。
熱膨張性黒鉛の粒度(粒径)が大きい程、膨張性能が大きくなり、耐火性が好ましくなる。ただし、粒度が大きくなるほどマトリックスに分散し難く、混練する時間が必要になる。膨張倍率の観点から、熱膨張性黒鉛の粒度は100μm以上が好ましく、さらに、好ましくは400μm以上が好ましい。粒度は市販の熱膨張性黒鉛を所定のふるいにより、分級したものを用いることで制御できる。
熱膨張性黒鉛の含有量は特に限定されないが、マトリックス成分100質量部に対して10〜500質量部であることが好ましく、マトリックス成分100質量部に対して50
〜300質量部であることがより好ましい。含有量が10質量部以上であると、体積膨張率が大きくサッシ等の構造体が焼失した部分を十分埋めきる防火性能が発揮され、500質量部以下であると機械的強度が維持される。
無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩等が挙げられる。
また、無機充填剤としては、これらの他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
一つの実施形態では、無機充填剤は金属酸化物、含水無機物、金属炭酸塩、シリカ、およびこれらの組み合わせから選択される。含水無機物は、アルカリ土類金属水酸化物を含む。
無機充填剤として、リン化合物などの難燃性を有する化合物(難燃剤)を添加してもよい。リン化合物の添加により、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上する。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2021102769
化学式(1)中、R1およびR3、水素、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16
の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用
いられる。
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
または、低級リン酸である、第一リン酸、第二リン酸、第三リン酸、メタリン酸、亜リン酸、次亜リン酸の塩等であってもよい。本明細書において、塩はナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩などのその他の金属塩;アンモニウム塩などを包含する。
無機充填剤の粒径としては、0.5〜200μmが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm以上であると、分散性が良好である。添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましいが、100μm以下の粒径が成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性の点で望ましい。
また、所望の粒径にするために、凝集した無機充填剤を壊細、溶剤等により分散した後に投入、ふるい等で制御することも可能である。
無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムでは、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
無機充填剤の含有量は特に限定されないが、マトリックス成分100質量部に対して30〜500質量部であることが好ましい。含有量が30質量部以上であると、十分な防火性能が得られ、500質量部以下であると機械的強度が維持される。無機充填剤の含有量は、より好ましくは40〜350質量部である。
無機充填剤としてリン化合物を含有する場合、リン化合物の含有量は特に限定されないが、マトリックス成分100質量部に対して30〜300質量部であることが好ましい。配合量が30質量部以上であると、膨張断熱層の強度を向上させる効果が十分であり、300質量部以下であると、機械的強度が維持される。リン化合物の含有量は、より好ましくは40〜250質量部である。
無機充填剤のうち、水酸化アルミニウムの具体例としては、例えば、水酸化アルミニウムでは、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
本発明の耐火樹脂組成物の好ましい態様の一つにおいて、熱膨張性黒鉛の粒径と無機充填剤の粒径との粒径比は1〜1000である。好ましくは5〜50である。斯かる数値範囲とすることで、短時間で効率よく混練することができる。また、当該範囲外の粒径比であると、マトリックスへの膨張黒鉛の分散が不十分であり、表面汚れ等の問題が生じる。
また、本発明の耐火樹脂組成物の好ましい態様の一つにおいて、熱膨張性黒鉛と無機充填剤との合計の含有量が30質量%以上である。好ましくは50質量%以上である。斯かる数値範囲とすることで、優れた耐火性を発現することができる。
また、本発明の耐火樹脂組成物の好ましい態様の一つにおいて、熱膨張性黒鉛の含有量が15質量%以上であり、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上である。斯かる数値範囲とすることで、優れた耐火性を発現することができる。
本発明の耐火樹脂組成物は、塩素化ポリオレフィンおよびアクリル系重合体から選択される1種以上の物質(以下、「成分(A)」という場合がある)を含む。
成分Aを含有することで、成分(A)がマトリックス樹脂および熱膨張性黒鉛の双方に相互作用し、マトリックス樹脂内に短時間に効率よく熱膨張性黒鉛を分散させることが可能となると考えられる。
塩素化ポリオレフィンとしては、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化EVA等が挙げられる。マトリックス樹脂がポリ塩化ビニル系の樹脂の場合、塩素化ポリオレフィンによる分散性が特に好ましくなる。
アクリル系重合体は、アクリル酸,アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸n
−ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル、およびメタクリル酸エチル,メタクリル酸n−ブチル,メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステルのうちの少なくとも一方を主成分とした共重合体からなる一群の重合体である。
アクリル系重合体の中でも、分散効果という観点ではメタクリル酸エステル共重合体が望ましい。
メタクリル酸エステル共重合体としては、一般式、
(CH2C(CH3)COOCH3n-(CH2CHCOOR)
(式中、Rはアルキル基)

{CH2C(CH3)COOCH3)-(CH2CHCOOR)}n
(式中、Rはアルキル基)
が挙げられる。
前者は、α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体(三菱レイヨン社メタブレンH−605)、メチルメタクリレート-マレイミド共重合体(三菱レイヨン社メタブレンH
−630)等が挙げられ、後者(アクリル酸アルキル共重合体)は、三菱レイヨン社メタブレンP530、メタブレンP551等が挙げられる。
変性ポリメチルメタクリレートとしては、無水マレイン酸などによる酸変性のポリメチルメタクリレートが挙げられる。メタアクリレートポリテトラフルオロエチレン樹脂(三菱レイヨン社A−3000)等が挙げられる。
本発明では、成分(A)として、塩素化ポリエチレン、メタクリル酸エステル共重合物およびメタクリル酸エステル共重合の変性物からなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。
また、成分(A)の分子量は特に限定されないが、質量平均分子量が10万以上であることが好ましく、100万以上であることがより好ましい。
成分(A)と熱膨張性黒鉛の質量の割合は、熱膨張性黒鉛1質量部に対して、成分(A)を0.02〜1質量部である。下限値は、0.03質量部であることが好ましい。また、上限値は0.5質量部であることが好ましい。
また、成分(A)は2種以上を併用することが可能であり、その場合、さらに分散効果を向上させることが可能となる。
本発明を束縛するものではないが、本発明の耐火樹脂組成物は成分(A)が熱膨張性黒鉛の分散剤として機能することにより、短時間の混練であっても熱膨張性黒鉛の分散が不十分とならず、良好な表面仕上がりが達成できると考えられる。
成分(A)の態様として、重量平均分子量1,000,000以上のポリメチルメタクリレート
(PMMA)を用いることができる。重量平均分子量1,000,000以上のPMMAを用いることで、
疑似架橋点が増加し、耐火樹脂組成物から得られる成形体の強度が向上するため好ましい。
ポリメチルメタクリレートの一つの態様として、重量平均分子量1,000,000未満のPMMA
を用いることができる。重量平均分子量1,000,000未満のPMMAを用いることで、耐火樹脂
組成物のゲル化の速度が向上するため好ましい。
本発明の耐火樹脂組成物は、ポリリン酸塩をさらに含有してもよい。ポリリン酸塩は、難燃剤として機能し、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン等が含まれる。ポリリン酸アンモニウムの市販品としては、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、住友化学工業社製「スミセーフP」、チッソ社製「テラージュC60」が挙げられる。
好ましいポリリン酸アンモニウムは、表面被覆されたポリリン酸アンモニウム(被覆ポリリン酸アンモニウムとも称する)であり、被覆ポリリン酸アンモニウムのうち、メラミンで表面被覆されたメラミン被覆ポリリン酸アンモニウムについては特開平9-286875に記載されており、シランで表面被覆されたシラン被覆ポリリン酸アンモニウムについては特開2000-63562に記載されている。メラミン被覆ポリリン酸アンモニウムは、(a)粉末状ポリリン酸アンモニウム粒子表面にメラミンを付加および/または付着したメラミン被覆ポリリン酸アンモニウム、(b)前記メラミン被覆ポリリン酸アンモニウム粒子の被覆層に存在するメラミン分子中のアミノ基が持つ活性水素と、該活性水素と反応しうる官能基を有する化合物とによって該粒子表面が架橋された被覆ポリリン酸アンモニウム、および/または(c)粉末状ポリリン酸アンモニウムまたは前記メラミン被覆ポリリン酸アンモニウム粒子表面を熱硬化性樹脂で被覆した被覆ポリリン酸アンモニウムである。メラミン被覆ポリリン酸アンモニウム粒子の市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR
CROS 487」等が挙げられる。シラン被覆ポリリン酸アンモニウム粒子の市販品としては、例えば、Budenheim Iberica社製「FR CROS 486」が挙げられる。
被覆ポリリン酸アンモニウムの平均粒子径は好ましくは15〜35μmである。なお、被覆ポリリン酸アンモニウムの平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定にて測定できる。
本発明の耐火樹脂組成物は、可塑剤をさらに含有してもよい。可塑剤は、マトリックス成分、特に熱可塑性樹脂の溶融粘度を調整するために添加される。可塑剤は軟化剤と換言することもできる。可塑剤としては、下記に例示する1種または2種以上の可塑剤を組み合わせて使用し得る:
ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジウンデシルフタレート(DUP)、または炭素原子数10〜13程度の高級アルコールまたは混合アルコールのフタル酸エステル等のフタル酸エステル系可塑剤;
ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−n−オクチルアジペート、ジ−n−デシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;
トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリ−n−オクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、ジ−n−オクチル−n−デシルトリメリレート等のトリメリット酸エステル系可塑剤;
アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)およびアジピン酸ジイソデシル(DIDA)等のアジピン酸エステル系可塑剤;
セバシン酸ジブチル(DBS)およびセバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOS)等のセバシン酸エステル系可塑剤;
トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクロロエチルホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−2,3−ジクロロプロピルホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;
2,3,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸テトラヘプチルエステル等のビフェニルテトラカルボン酸テトラアルキルエステル系可塑剤;
ポリエステル系高分子可塑剤;
エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化綿実油、液状エポキシ樹脂等のエポキシ系可塑剤;
塩素化パラフィン;
五塩化ステアリン酸アルキルエステル等の塩素化脂肪酸エステル;および
パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどのプロセスオイル等。
耐火樹脂組成物中の可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100質量部に対して、25〜100質量部の範囲内であることが好ましい。
また、本発明の耐火樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料等が添加されてもよい。
熱安定剤としては、例えば、三塩基性硫酸鉛、三塩基性亜硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛等の鉛熱安定剤;有機錫メルカプト、有機錫マレート、有機錫ラウレート、ジブチル錫マレート等の有機錫熱安定剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸熱安定剤等が挙げられ、これらは単独で用いられもよいし、二種以上が併用されてもよい。
滑剤としては、例えば、ポリエチレン、パラフィン、モンタン酸等のワックス類;各種エステルワックス類;ステアリン酸、リシノール酸等の有機酸類;ステアリルアルコール等の有機アルコール類;ジメチルビスアミド等のアミド化合物等が挙げられ、これらは単独で用いられもよいし、二種以上が併用されてもよい。
加工助剤としては、例えば、塩素化ポリエチレン、メチルメタクリレート−エチルアクリレート共重合体、高分子量のポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、p,p−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。
本発明の耐火樹脂組成物は、常法に従って、一軸押出機、二軸押出機等の押出機で溶融押出することにより耐火樹脂成形体を得ることができる。溶融温度は、マトリックス成分によって異なり、特に限定されないが、例えばポリ塩化ビニル樹脂の場合130〜170℃である。
本発明の耐火樹脂組成物または耐火樹脂成形体は、窓、障子、扉(すなわちドア)、戸、ふすま、および欄間等の建具;船舶;並びにエレベータ等の構造体に耐火性を付与するために使用され得る。本発明の耐火樹脂組成物は成形性が優れているので、構造体の複雑な形状に適合させた異型成形体を容易に得ることができる。図1は、建具としての窓1のサッシ枠に本発明の耐火樹脂成形体4を付与した例である。この例では、サッシ枠は2つの内枠2と、内枠2を包囲する1つの外枠3とを有し、内枠2および外枠3の枠本体の各辺に沿って、内枠2および外枠3の内部に耐火樹脂成形体3が取り付けられている。このようにして、本発明の耐火樹脂成形体3を設けることにより、窓1に耐火性を付与することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.耐火シートの作成
[実施例1]
表1に示した配合量で、合成樹脂(マトリックス成分)としてポリ塩化ビニル100質量部、ポリメチルメタクリレート(PMMA)6質量部、可塑剤としてジイソデシルフタレート(DIDP)80質量部、熱膨張性黒鉛100質量部、ポリリン酸アンモニウム50質量部、および無機充填剤として炭酸カルシウム50質量部をニーダーにて混合した後、その混合物をカレンダーロールにてシート化に成型し、幅150mm、厚み1.5mm、長さ5mの耐火性樹脂成形体としての耐火シートを得た。また、ニーダーでの混練時間は黒鉛を投入後、5分に統一して試験を行った。
[実施例2〜36、比較例1〜2]
実施例2〜36および比較例1〜2についても、表1に示した配合量で成分を混合および押出成形し、耐火シートを得た。
2.耐火性(膨張倍率)の測定
得られた耐火シートから、長さ方向における最初の部分(一端を0mとして0〜1m)、中央の部分(長さ方向における2.5m)、4〜5mの部分をサンプリングし、作製した試験片(長さ100mm、幅100mm、厚さ1.5mm)を所定のホルダーに入れ、電気炉に供給し、600℃で30分間加熱した後、各試験片の厚さを測定し、(加熱後の
試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)を膨張倍率として算出した。3箇所から作製したサンプルの最小値と最大値の差が3箇所の膨張倍率の平均値の5%以内のものをバラつき◎、10%以内であるものを○、10%を超えるのものを×とした。
3.耐火シートの表面仕上がり性評価
得られた耐火シートの表面仕上がり性を、表面の表面荒れ(皹(ひび)の有無)、を目視での確認により評価した。皹の定義は大きさ3mm以上と定義した。作成した幅15cm×500cmのシート中に、皹が4箇所以内であれば○、5箇所以上であれば×とした。
○:作成シートの表面に皹が存在しないまたは3mm以上の皹が4箇所以内
×:作成シートの表面に3mm以上の皹が5箇所以上
4.強度の評価
得られた耐火シートの破断強度を測定した、測定方法はJIS K 7161に準拠して測定し、ロールの流れ方向の引張強度を測定した。ひずみが110%の時点でしていないものを○、破断しているものを×とした。
Figure 2021102769

Claims (9)

  1. 樹脂、エラストマー、ゴム、またはこれらの組み合わせであるマトリックス成分、熱膨張性黒鉛および無機充填剤を含有する耐火性樹脂組成物において、塩素化ポリオレフィンおよびアクリル系重合体から選択される少なくとも1種の物質を熱膨張性黒鉛1質量部に対して0.02〜1質量部の割合で含むことを特徴とする耐火性樹脂組成物。
  2. 前記物質が塩素化ポリエチレン、メタクリル酸エステル共重合物、およびメタクリル酸エステル共重合の変性物からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐火性樹脂組成物。
  3. 前記物質の重量平均分子量が10万以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐火性樹脂組成物。
  4. 前記無機充填剤として亜リン酸塩を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
  5. ポリリン酸塩をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
  6. 可塑剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
  7. マトリックス成分が塩化ビニル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物よりなる耐火樹脂成形体。
  9. 請求項8に記載の耐火樹脂成形体を備えた建具。
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