熱膨張性樹脂組成物
最初に、本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物層を構成する熱膨張性樹脂組成物について説明する。
本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物は、樹脂成分100重量部、熱膨張性黒鉛3〜300重量部、無機充填材3〜200重量部および可塑剤20〜200重量部を含む。
熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー、ゴム、またはこれらの組み合わせから構成される。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、クロロプレン(CR)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル/エチレン−プロピレン−ジエン/スチレン共重合体(AES)等が挙げられる。熱可塑性樹脂の商品名としては三井化学の『ミラストマー(登録商標)』および三菱化学の『サーモラン(登録商標)』等が挙げられる。
硬化性樹脂の例としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
エラストマーの例としてはオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、および塩化ビニル系エラストマー等が挙げられる。
ゴムの例の例としては、天然ゴム、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、およびフッ素ゴム等が挙げられる。好ましい樹脂成分は、エポキシ樹脂;ブチルゴム;またはポリ塩化ビニル樹脂組成物、塩素化塩化ビニル樹脂組成物、EPDM、またはそれらの組み合わせである。熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分は、1種であってもよいし2種以上を組み合わせてもよい。
例えば、熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分としてエポキシ樹脂;ブチルゴム;またはポリ塩化ビニル樹脂組成物、塩素化塩化ビニル樹脂組成物等の一種もしくは二種以上を選択した場合には、得られる建材用熱膨張性多層パッキンが耐火性、強度に優れ、樹脂成分が熱可塑性樹脂の場合は気密性ならびに水密性等の気密性、および柔軟性にも優れる。
塩素化ポリ塩化ビニル樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂の塩素化物である。樹脂成分が塩素化ポリ塩化ビニルおよびEPDMの少なくとも一方である場合、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂の塩素含有量は少なくなると耐熱性が低下し、多くなると溶融押出成形が困難となるので塩素含有量が60〜72重量%の範囲であることが好ましい。
ポリ塩化ビニル樹脂は特に限定されず、従来公知の任意のポリ塩化ビニル樹脂を使用することができる。ポリ塩化ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーと塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体、塩化ビニルモノマー以外の重合体または塩化ビニルモノマー以外の共重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。ポリ塩化ビニル樹脂は一種もしくは二種以上を使用することができる。
塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、塩化ビニルモノマーと共重合可能であれば特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類、酢酸ビニル、フロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、 ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類などが挙げられる。塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーは一種もしくは二種以上を使用することができる。
塩化ビニルモノマー以外の重合体または塩化ビニルモノマー以外の共重合体としては、塩化ビニルをグラフト重合するものまたはグラフト共重合するものであれば特に限定されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられる。これらは一種もしくは二種以上を使用することができる。
ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は特に限定されるものではないが、小さくなると成形体の機械的物性が低下し、大きくなると溶融粘度が高くなって溶融押出成形が困難になる。このためポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は600〜1500の範囲であることが好ましい。
またEPDMは、エチレン、プロピレンおよび架橋用ジエンモノマーとの三元共重合体である。
EPDMに用いられる架橋用ジエンモノマーとしては特に限定されず、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロピリデン−5−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン等の環状ジエン類、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,7−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン類等が挙げられる。
EPDMは、ムーニー粘度(ML1+41 25℃)が4〜30の範囲であることが好ましい。ムーニー粘度が4以上であると、柔軟性に優れる。またムーニー粘度が30以下の場合は硬くなりすぎるのを防止することができる。なお、上記ムーニー粘度は、EPDMのムーニー粘度計による粘度の尺度のことをいう。
EPDMは、架橋用ジエンモノマーの含有量が2.0重量%〜5.0重量%の範囲であることが好ましい。2.0重量%以上であれば、分子間の架橋が進むことから柔軟性に優れる、また5.0重量%以下の場合には耐候性に優れる。
熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とにより処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。生成された熱膨張性黒鉛は炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
本発明に使用される熱膨張性黒鉛は、酸処理して得られた熱膨張性黒鉛がアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和されたものを使用することもできる。
脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
熱膨張性黒鉛の具体例としては、例えば、日本化成社製「CA−60S」等が挙げられる。
熱膨張性黒鉛の粒度は特に限定されないが、細かくなりすぎると黒鉛の膨張度が小さく、発泡性が低下する傾向がある。また大きくなりすぎると膨張度が大きいという点では効果があるが、樹脂と混練する際に、分散性が悪く成形性が低下し、得られた押出成形体の機械的物性が低下する傾向がある。このため熱膨張性黒鉛の粒度は20〜200メッシュの範囲のものが好ましい。
熱膨張性黒鉛の添加量は、少なくなると耐火性能および発泡性が低下する傾向がある。また多くなると押出成形しにくくなり、得られた成形体の表面性が悪くなり、機械的物性が低下する傾向がある。このため塩素化ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対する熱膨張性黒鉛の添加量は、3〜300重量部の範囲である。熱膨張性黒鉛の添加量の範囲は、10〜200重量部の範囲であれば好ましい。
無機充填材は、一般にポリ塩化ビニル樹脂成形体を製造する際に使用されている無機充填材であれば、特に限定はない。具体的には、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイ力、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコニア鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。
中でも炭酸カルシウムおよび加熱時に脱水し、吸熱効果のある水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の含水無機物が好ましい。
また酸化アンチモンは難燃性向上の効果があるので好ましい。
無機充填材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
無機充填材の添加量は、少なくなると耐火性能が低下する傾向があり、多くなると押出成形しにくくなり、得られた成形体の表面性が悪くなり、機械的物性が低下する傾向がある。このため無機充填材の添加量は、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、3〜200重量部の範囲である。
無機充填材の添加量は、10〜150重量部の範囲であれば好ましい。
可塑剤は、一般にポリ塩化ビニル樹脂成形体を製造する際に使用されている可塑剤であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤;エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤;アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル可塑剤;トリー2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤;トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等の燐酸エステル可塑剤;鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。
可塑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
可塑剤の添加量は、少なくなると押出成形性が低下する傾向があり、多くなると得られた成形体が柔らかくなり過ぎる傾向がある。このため塩素化ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤の添加量は20〜200重量部の範囲である。
先に説明した通り、本発明に使用する塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物は、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、熱膨張性黒鉛、無機充填材および可塑剤を含む。塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物は燐酸エステル可塑剤を除くリン化合物を含有すると、押出成形性が低下する。このため好ましくは燐酸エステル可塑剤を除くリン化合物を含有するものではない。なお、先に説明した可塑剤である燐酸エステル可塑剤を含有することができる。
押出成形性を阻害するリン化合物は次の通りである:赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類; 下記化学式で表される化合物;等が挙げられる。
上記化学式中、R1およびR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を表す。
R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
化学式で表される化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
ポリリン酸アンモニウム類としては、特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
また本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、必要に応じて、一般に使用されている、リン化合物以外の熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤、架橋促進剤等が添加されてもよい。
熱安定剤としては、例えば、三塩基性硫酸鉛、三塩基性亜硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛等の鉛熱安定剤;有機錫メルカプト、有機錫マレート、有機錫ラウレート、ジブチル錫マレート等の有機錫熱安定剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸熱安定剤;等が挙げられる。
熱安定剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
滑剤としては、例えば、ポリエチレン、パラフィン、モンタン酸等のワックス類、各種エステルワックス類;ステアリン酸、リシノール酸等の有機酸類;ステアリルアルコール等の有機アルコール類;ジメチルビスアミド等のアミド化合物類;等が挙げられる。
滑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
加工助剤としては、例えば、塩素化ポリエチレン、メチルメタクリレートーエチルアクリレート共重合体、高分子量のポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、p,p−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール化合物等が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、アミノ化合物等が挙げられる。
顔料としては、例えば、アゾ類、フタロシアニン類、スレン類、染料レーキ類等の有機顔料、酸化物類、クロム酸モリブデン類、硫化物・セレン化物類、フェロシアニン化物類などの無機顔料等が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、硫黄等が挙げられる。また架橋促進剤としては、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、N,N,N',N'−テトラエチルチウラムジスルフィド、ジエチルジチオカルバミン酸ベンジル等が挙げられる。
本発明に使用される熱膨張性樹脂組成物の具体例は次の通りである。
(I)樹脂成分、熱膨張性黒鉛部、無機充填材部および可塑剤を含む樹脂組成物
(II)上記(I)の樹脂組成物に対し、熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤および架橋促進剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを添加してなる樹脂組成物
樹脂組成物
次に、本発明に使用する樹脂組成物層を構成する樹脂組成物について説明する。
樹脂組成物層を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー、ゴムなどが挙げられる。なかでも、押出成形しやすいことから熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、クロロプレン(CR)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル/エチレン−プロピレン−ジエン/スチレン共重合体(AES)等が挙げられる。熱可塑性樹脂の商品名としては三井化学の『ミラストマー(登録商標)』および三菱化学の『サーモラン(登録商標)』等が挙げられる。
ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、およびEPDMとしては、先の熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分として使用するポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、およびEPDMの場合と同様のものを使用することができる。
熱硬化性樹脂の例としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。好ましくは熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂である。
エラストマーの例としてはオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、および塩化ビニル系エラストマー等が挙げられる。
ゴムの例の例としては、天然ゴム、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、およびフッ素ゴム等が挙げられる。好ましくはゴムは加硫ゴムであり、EPDMゴム、クロロプレンゴム、またはブチルゴムである。
樹脂組成物層の樹脂組成物の樹脂成分は、1種であってもよいし2種以上を組み合わせてもよい。
樹脂組成物層の樹脂組成物に含まれる樹脂成分に対し、熱膨張性樹脂組成物の成分として先に説明した無機充填材、可塑剤を添加することにより、本発明に使用する樹脂組成物を得ることができる。
本発明に使用する樹脂組成物層を構成する樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、必要に応じて、押出成形の際に一般に使用されている、熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料等が添加されてもよい。これらの具体例については熱膨張性樹脂組成物の成分として先に例示したものと同様である。
本発明に使用される樹脂組成物層を構成する樹脂組成物の具体例は次の通りである。
(i)樹脂成分、および無機充填材を含む樹脂組成物
(ii)樹脂成分、可塑剤および無機充填材を含む樹脂組成物
(iii)上記(i)の樹脂組成物に対し、熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤および架橋促進剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを添加してなる樹脂組成物
(iv)上記(ii)の樹脂組成物に対し、熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤および架橋促進剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを添加してなる樹脂組成物
樹脂組成物層の樹脂組成物に使用する樹脂成分を選択することにより、本発明の建材用熱膨張性多層パッキンに多様な機能を付与することができる。
例えば、樹脂組成物層の樹脂組成物の樹脂成分として塩化ビニル樹脂、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン、EPDM、CR等の一種もしくは二種以上を選択した場合には、得られる建材用熱膨張性多層パッキンが柔軟性、気密性、水密性、強度に優れる。
樹脂組成物層の樹脂組成物に使用するポリ塩化ビニル樹脂組成物は従来公知であり、例えば日本工業規格(JIS)に規定されるものを使用することができる。
ポリ塩化ビニル樹脂組成物には、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物と硬質ポリ塩化ビニル樹脂組成物がある。
通常軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物は可塑剤を含むものであり、硬質ポリ塩化ビニル樹脂組成物は可塑剤を含まないものである。可塑剤としては、先に説明した可塑剤と同じものを使用することができる。
また軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物としては、例えば日本工業規格に定める軟質ポリ塩化ビニルコンパウンド(JIS K6723)等を使用することができる。
硬質ポリ塩化ビニル樹脂組成物としては、例えば日本工業規格に定める無可塑ポリ塩化ビニル成形用および押出用材料(JIS K6740−1〜2)等を使用することができる。
建材用熱膨張性多層パッキン
本発明に使用する樹脂組成物、つまり熱膨張性樹脂組成物層の熱膨張性樹脂組成物および樹脂組成物層の樹脂組成物は、押出成形用に好ましく使用することができる。樹脂組成物を使用して、常法に従い、一軸押出機、二軸押出機等の押出機で100〜250℃で溶融させて同時共押出するか、または各層の押出成形後に組み合わせることにより熱膨張性樹脂組成物層と樹脂組成物層とを含む多層構造の長尺の建材用熱膨張性多層パッキンを得ることができる。
長尺の建材用熱膨張性多層パッキンを用途に応じて適切な長さに切断することにより、本発明の建材用熱膨張性多層パッキンが得られる。
本発明の建材用熱膨張性多層パッキンは、熱膨張性樹脂組成物層と樹脂組成物層との対向面において、熱膨張性樹脂組成物層および樹脂組成物層の一方の表面に該表面から突出する突出部が設けられ、熱膨張性樹脂組成物層および樹脂組成物層の他方の表面に、突出部と嵌合する凹部が設けられている。突出部と凹部は、熱膨張性樹脂組成物層および樹脂組成物層をそれぞれ製造するときに、突出部および凹部を有するように公知の成形方法により成形し得る。
熱膨張性樹脂組成物層と樹脂組成物層を重ね合わせるときに、熱膨張性樹脂組成物層および樹脂組成物層の一方の表面から突出する突出部と、熱膨張性樹脂組成物層および樹脂組成物層の他方の表面に設けられた凹部とを嵌合することにより、熱膨張性樹脂組成物層と樹脂組成物層はより強固に接続され、密着する。このため、熱膨張性樹脂組成物層の樹脂成分と樹脂組成物層の樹脂成分の相溶性が悪くても、パッキンの一体性が保たれる。熱膨張性樹脂組成物層と樹脂組成物層とが物理的に嵌合しているため、火災時や、パッキンに外力が繰り返し加わったときにも互いに引っ掛かって一体性が保たれ、優れた耐火性および気密性ならびに水密性等の密封性を発揮する。本発明によれば、熱膨張性樹脂組成物層の樹脂成分と樹脂組成物層の樹脂成分の種類が異なっていてもパッキンとしての一体性が保たれるため、熱膨張性樹脂組成物層の樹脂成分と樹脂組成物層の樹脂成分は、各層に求められる性能を発揮できるよう選択することが可能である。
本発明の建材用熱膨張性多層パッキンとしては、例えば、窓、扉等の建材に使用されるものが挙げられる。建材用熱膨張性多層パッキンの具体例としては、例えば、タイト材、グレージングチャンネル、ガスケット、およびグレージングビード材等が挙げられる。
以下に図面を参照しつつ実施例により本発明を詳細に説明する。なお本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
図1は実施例1に係るタイト材を説明するための模式断面図であり、実施例1に係るタイト材の長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。図2は実施例1に係るタイト材を説明するための模式部分分解斜視図、図3は突出部と凹部の関係を示す拡大部分断面図である。また図4および図5は実施例1に係るタイト材と扉との関係を説明するための模式部分断面図である。
実施例1に係るタイト材100は、熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10と、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物により形成された樹脂組成物層からなる突起部20とを有する。本体部10は、互いに連続する固定部11および筒部12を有する。本体部10の内部には、固定部11および筒部12により囲まれた空間13が区画形成されている。本体部10における突起部20と向かい合う表面14には、互いに離間する3つの凹部15が設けられている。
突起部20は、半円筒状の湾曲部21を有する。突起部20の内部には、湾曲部21により囲まれた空間22が区画形成されている。突起部20における本体部10と向かい合う表面24からは、互いに離間する3つの突出部25が延出している。
図2を参照すると、凹部15は本体部15の長手方向に沿って延びる溝として設けられており、突出部25も凹部15に対応するようタイト材100の長手方向に沿って設けられている。図3を参照すると、突出部25は、突起部20の表面24から延び、突出部25の延出方向と垂直な断面方向において第1の最大長さL1を有する基端部分25aと、基端部分25aより先端側で、延出方向と垂直な断面方向において第1の最大長さL1と同一またはそれよりも大きな第2の最大長さL2を有する先端部分25bとを有する。凹部15も、本体部10の表面15から延び、延出方向と垂直な断面方向において第1の最大長さL3を有する基端部分15aと、基端部分15aより先端側で、延出方向と垂直な断面方向において第1の最大長さL3と同一またはそれよりも大きな第2の最大長さL4を有する先端部分15bとを有し、突出部25を凹部15を嵌合させたとき、突出部25の基端部分25aは本体部10の基端部分15aに、突出部25の先端部分25bは本体部10の先端部分15bに適合する。
このように凹部15と突出部25の形状が適合しているため、図1におけるように表面14,24を重ね合わせると、凹部15と突出部25が嵌合し、かつ熱膨張性樹脂組成物層と樹脂組成物層の表面14,24が、凹部15と突出部25の嵌合部の周囲において平坦な面をなして接触する。したがって、熱膨張性樹脂組成物層と樹脂組成物層は互いに強固に一体化される。実施例1のタイト材100は一体性が高く、耐火性および密封性に優れている。
図4および図5に示す扉500は、枠体502に対して開閉することができる。扉500を枠体502に接触させると、扉500はタイト材100の突起部20の湾曲部21に接触する。
またタイト材100の本体部10の固定部11は、枠体502の溝部504の内部に挿入されている。固定部22が溝部504に挿入されることにより、タイト材100を枠体502に固定することができる。
タイト材100の突起部20は柔軟性を有する。このため扉500を枠体502に接触させると、タイト材100の空間22が変形して、扉500と枠体504との隙間を閉塞することができる。
突起部20の成形に軟質ポリ塩化ビニルを含むポリ塩化樹脂組成物を使用し、本体部10の成形に、塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物を使用して、実施例1の場合と同様の同時共押出成形により前記タイト材100を製造することができる。
具体的には、表1に示した所定量の塩素化塩化ビニル樹脂(徳山積水社製、「HA−53K」重合度1000、塩素含有量67.3重量%、以下「CPVC−1」と言う。)、塩化ビニル樹脂(徳山積水社製「TS−1000R」、重合度1000、以下「PVC」と言う。)、中和処理された熱膨張性黒鉛(東ソ一社製「GREP−EG」)、炭酸カルシウム(白石カルシウム社製「ホワイトンBF300」)、ジイソデシルフタレート(ジェイ・プラス社製「DID P」、以下「DIDP」と言う。)、Ca−Zn複合安定剤(水沢化学社製「NT−231」)、ステアリン酸カルシウム(堺化学社製「SC−100」)、塩素化ポリエチレン(威海金弘社製「135A」)およびポリメチルメタクリレート(三菱レーヨン社製「P−530A」)からなる塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物、ならびに、PVC、炭酸カルシウム(白石カウシウム社製「ホワイトンBF300」)、ジイソデシルフタレート(「DIDP」)、Ca−Zn複合安定剤(水沢化学社製「NT−231」)、ステアリン酸カルシウム(堺化学社製「SC−100」)、塩素化ポリエチレン(威海金弘社製「135A」)およびポリメチルメタクリレート(三菱レーヨン社製「P−530A」)からなるポリ塩化ビニル樹脂組成物を一軸押出機(池貝機販社製、65mm押出機)に供給し、150tで同時共押出を行うことにより、図1に示される断面形状の長尺異型成形体を1m/hrの速度で同時共押出成形することができる。
得られる長尺異型成形体を、前記長尺異型成形体の長手方向に対して垂直方向に切断することにより、実施例1に係るタイト材100が得られる。
図4および図5に示すタイト材100は、樹脂組成物層からなる突起部20と、熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10とを有する。
前記熱膨張性樹脂組成物層は火災等の熱により膨張することから耐火性の機能を担う。また前記樹脂組成物層は柔軟性を有することから、扉500と枠体504との隙間を閉塞する気密の機能も担う。
一方、前記熱膨張性樹脂組成物層は、前記扉500が閉じた状態でも前記突起部20を支えることのできる強度を有する。
このため前記本体部10はタイト材100全体の強度の機能を担う。
この様に実施例1に係るタイト材100は機能の異なる樹脂組成物層を二以上有することから一つのタイト材100に対し全く異なる複数の機能を付与することが可能となる。
また図4および図5に示すタイト材100を備えた扉500および枠体504が火災等の熱にさらされた場合、前記熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10は膨張する。この膨張により生じた膨張残渣が、扉500と枠体504との隙間を閉塞する。この膨張残渣により、火災により生じた炎、煙等が扉500と枠体504との隙間を通って、火災の生じていない側に侵入することを遅延させることができる。
上述の通り、実施例1に係るタイト材100を備えた扉500および枠体504は耐火性および密封性に優れる。
実施例2
図6は実施例2に係るタイト材を説明するための模式断面図であり、実施例2に係るタイト材の長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。以下、実施例1と同じ部材については説明を省略する。
実施例2に係るタイト材110は、熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10と軟質ポリ塩化ビニルを含む樹脂組成物層からなる突起部20とを有するが、突起部20が空間22を有しない点と、固定部11が軟質ポリ塩化ビニルを含む樹脂組成物層からなる点が、実施例1と異なる。
実施例2に係るタイト材110も、本体部10の表面14に設けられた凹部15および突起部20の表面24から延出する突出部25を有し、一体性が高く、耐火性および密封性に優れている。
実施例2に係るタイト材110も実施例1に係るタイト材100の場合と同様に、同時共押出により成形することができる。
得られるタイト材110は、実施例1に係るタイト材100の場合と同様、扉と枠体とを備える建材に応用することができる。
実施例3
図7は実施例3に係るタイト材を説明するための模式断面図であり、実施例3に係るタイト材の長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。以下、実施例1と同じ部材については説明を省略する。
先の実施例1,2に係るタイト材100,110は、熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10と軟質ポリ塩化ビニルを含む樹脂組成物層からなる突起部20とを有していて、突起部20は半円筒状(断面半円状)であった。
これに対し、実施例3に係るタイト材120は、突起部20を形成するヒレ部30の形状が、内部に空間のない略三日月状となっており、本体部10の端部に設置されている点が異なる。
ここで略三日月状とは、曲面を異なる曲面で切り取ることにより得られる形状のことをいい、外側に向かって滑らかに突き出る曲線と、内側に向かって滑らかに突き出る曲線とを含む外周を備えるものである。
なお本体部10に対する突起部20の設置場所は本体部10の端部に限定されることはなく、適宜設定することができる。
実施例3に係るタイト材120も、本体部10の表面14に設けられた凹部15および突起部20の表面24から延出する突出部25を有し、一体性が高く、耐火性および密封性に優れている。
実施例2に係るタイト材110も実施例1に係るタイト材100の場合と同様に、同時共押出により成形することができる。
実施例1,2の場合と同様、タイト材120の本体部10を嵌めることのできる溝部を有する枠体を使用して、枠体にタイト材120を固定することができる。
実施例3に係るタイト材120も実施例1,2に係るタイト材100,110の場合と同様の同時共押出により成形することができる。
得られるタイト材120は、実施例1,2に係るタイト材100,110の場合と同様、扉と枠体とを備える建材に応用することができる。
実施例4
図8は実施例4に係るタイト材を説明するための模式断面図であり、実施例4に係るタイト材の長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。
実施例4に係るタイト材130は、本体部10が、熱膨張性樹脂組成物層からなる筒部11、筒部11と連続し熱膨張性樹脂組成物層からなる支持部16、タイト材130の長手方向に垂直な方向(図面において左右方向)に支持部16の両側から延びる、軟質ポリ塩化ビニルを含む樹脂組成物層からなる第1の固定部17,17、ならびに第1の固定部17,17と離間して第1の固定部17,17と平行に延びる第2の固定部18,18を有する。
突起部20を形成するヒレ部30の形状が、内部に空間のない略三日月状となっており、2つのヒレ部30が設けられている。
実施例4に係るタイト材130も、本体部10の表面14に設けられた凹部15および突起部20の表面24から延出する突出部25を有し、一体性が高く、耐火性および密封性に優れている。
実施例1〜3の場合と同様、タイト材130の本体部10を嵌めることのできる溝部を有する枠体を使用して、枠体にタイト材130を固定することができる。
実施例4に係るタイト材130も実施例1〜3に係るタイト材100,110,120の場合と同様に、同時共押出により成形することができる。
得られるタイト材130は、実施例1〜3に係るタイト材100,110,120の場合と同様、扉と枠体とを備える建材に応用することができる。
実施例5
図9は実施例5に係るタイト材を説明するための模式断面図であり、実施例5に係るタイト材の長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。
実施例5に係るタイト材140は、本体部10と、樹脂組成物層からなる突起部20とを有し、本体部10が、ポリプロピレン(PP)からなる第1の樹脂組成物層からなる本体上部31と、上部31と連続し熱膨張性樹脂組成物層からなる本体下部32と、本体下部32に連続し熱膨張性樹脂組成物層からなる支持部16と、タイト材130の長手方向に垂直な方向(図面において左右方向)に支持部16の両側から支持部16に連続して延びる、熱膨張性樹脂組成物層からなる固定部11とを備えている。
なお、本実施例では本体部10の本体上部31をPPより形成しているが、他の熱可塑性樹脂(たとえばポリエチレン(PE))等の樹脂が用いられてもよく、突起部20がやわらかい素材である場合は、本体部10はPEなどの硬い素材である場合が好ましい。
突起部20を形成するヒレ部33の形状は、突起部20の先端に行くほど先が細くなるテーパ形状となっており、2つのヒレ部33が設けられている。
実施例5に係るタイト材140も、樹脂組成物層からなる本体上部31の表面36から延出する突出部125および熱膨張性樹脂組成物層からなる本体下部32の表面34に設けられた凹部115を有し、一体性が高く、耐火性および密封性に優れている。
実施例1〜4の場合と同様、タイト材140の本体部10を嵌めることのできる溝部を有する枠体を使用して、枠体にタイト材140を固定することができる。
実施例5に係るタイト材140も実施例1〜4に係るタイト材100,110,120,130の場合と同様に、同時共押出により成形することができる。
得られるタイト材140は、実施例1〜4に係るタイト材100,110,120,140の場合と同様、扉と枠体とを備える建材に応用することができる。
実施例6
図10は実施例6に係るグレージングチャンネルを説明するための模式断面図であり、実施例6に係るグレージングチャンネル200の長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。図11は実施例6に係るグレージングチャンネル200を説明するための模式部分斜視図である。また図12は実施例6に係るグレージングチャンネル200がガラスパネルに装着された状態を説明するための模式部分断面図である。以下、実施例1と同じ部材については説明を省略する。
実施例6に係るグレージングチャンネル200は、二以上のガラス板を重ねて形成されるガラスパネル600の周縁部610に装着される。前記グレージングチャンネル200は、前記ガラスパネル600の端面601に対向する底壁部1と、前記底壁部1の両側に設けられて前記ガラスパネル端面601の長手方向に沿ってガラスパネル周縁部610を覆う側壁部2とを有する。前記底壁部1と前記側壁部2とは、前記グレージングチャンネル200の本体部10を形成する。
前記グレージングチャンネル200に含まれる前記底壁部1および側壁部2は、硬質塩化ビニル樹脂組成物により形成されている。
前記側壁部2の上部には突起部20が設けられている。前記突起部20は、内側、すなわちガラスパネル600側に向かって突き出た外ヒレ部21a,21aおよび内ヒレ部21b,21bを有する。
また前記突起部20は、外側、すなわちガラスパネル600側とは反対側に、溝部21c,21cを有する。サッシ620の端部を前記溝部21c,21cに挿入することにより、サッシ620に前記グレージングチャンネル200を固定することができる。
前記突起部20は、表1に示す配合比を有する塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物により形成されている。前記塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物は可塑剤が含まれていることから柔軟性を有する。
実施例1の場合と同様、同時共押出し成形により実施例6に係るグレージングチャンネル200を得ることができる。
図10に示すグレージングチャンネル200は、熱膨張性樹脂組成物層からなる突起部20と、樹脂組成物層からなる本体部10とを有する。熱膨張性樹脂組成物層は火災等の熱により膨張することから耐火性の機能を担う。一方、前記樹脂組成物層は、ガラスパネル600を外部からの衝撃から守る保護層の機能を担う。
この様に実施例6に係るグレージングチャンネル200は機能の異なる樹脂組成物層を二以上有することから一つのグレージングチャンネル200に対し全く異なる複数の機能を付与することが可能となる。
また、本体部10における突起部20と向かい合う表面14には、互いに離間する2つの凹部15が設けられ、突起部20における本体部10と向かい合う表面24からは突出部25が延出し、このように凹部215と突出部225の形状が適合しているため、図10におけるように表面14,24を重ね合わせると、凹部215と突出部225が嵌合し、かつ熱膨張性樹脂組成物層と樹脂組成物層の表面14,24が、凹部215と突出部225の嵌合部の周囲において平坦面をなして接触する。したがって、熱膨張性樹脂組成物層と樹脂組成物層は互いに強固に一体化される。実施例6のグレージングチャンネル200は一体性が高く、耐火性および密封性に優れている。
図12に示すグレージングチャンネル200およびガラスパネル600を備えたサッシ620が火災等の熱にさらされた場合、前記熱膨張性樹脂組成物層からなる突起部20は膨張する。この膨張により生じた膨張残渣が、ガラスパネル600とサッシ620との隙間を閉塞する。
この膨張残渣により、火災により生じた炎、煙等がガラスパネル600とサッシ620との隙間を通って、火災の生じていない側に侵入することを遅延させることができる。
実施例7
図13は実施例7に係るグレージングチャンネルを説明するための模式断面図である。実施例6に係るグレージングチャンネル210は、前記突起部20が熱膨張性樹脂組成物層であり、前記本体部10がポリ塩化ビニル樹脂組成物の樹脂組成物層であった。
これに対し実施例7に係るグレージングチャンネル210は、前記突起部20および前記本体部10がポリ塩化ビニル樹脂組成物の樹脂組成物層であり、前記本体部10に接する外底壁部5が熱膨張性樹脂組成物層である点が異なる。前記外底壁部5は、底壁部1および側壁部2に接して設置されている。
実施例7のポリ塩化ビニル樹脂組成物の樹脂組成物層に使用したポリ塩化ビニル樹脂組成物は、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物であり、実施例6に使用したものと同じである。
実施例7に係るグレージングチャンネル210は、前記突起部20および本体部10の成形にポリ塩化ビニル樹脂を使用し、前記外底壁部5の成形に実施例1に用いた塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物を使用して、実施例1の場合と同様の同時共押出成形により製造することができる。
図13に示すグレージングチャンネル210は、樹脂組成物層からなる突起部20および本体部10と、熱膨張性樹脂組成物層からなる外底壁部5とを有する。
本体部10の外底壁部5の表面6には、互いに離間する3つの凹部215が設けられている。底壁部1の表面7からは、互いに離間する3つの突出部225が延出している。このように凹部15と突出部25の形状が適合しているため、図13におけるように表面6,7を重ね合わせると、凹部215と突出部225が嵌合し、かつ熱膨張性樹脂組成物層と樹脂組成物層の表面6,7が、凹部215と突出部225の嵌合部の周囲において平坦な面をなして接触する。したがって、熱膨張性樹脂組成物層と樹脂組成物層は互いに強固に一体化される。実施例7のグレージングチャンネル210は一体性が高く、耐火性および密封性に優れている。
前記熱膨張性樹脂組成物層は火災等の熱により膨張することから耐火性の機能を担う。また、前記樹脂組成物層は、軟質ポリ塩化ビニルを含むポリ塩化ビニル樹脂組成物から形成されているため、前記グレージングチャンネル210の突起部20および本体部10は柔軟性を有し、前記ガラスパネル600と密着させて簡単に取りつけることができる。
このため前記突起部20はガラスパネル600に結露した水等がサッシの内部等に浸入することを防止できることから水密の機能を担う。
この様に実施例7に係るグレージングチャンネル210は機能の異なる樹脂組成物層を二以上有することから一つのグレージングチャンネル210に対し全く異なる複数の機能を付与することが可能となる。
実施例8
図14は実施例8に係るガスケットを説明するための模式断面図であり、実施例8に係るガスケットの長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。図15は実施例8に係るガスケットを説明するための模式部分斜視図である。また図16は実施例8に係るガスケットと壁との関係を説明するための模式部分断面図である。
実施例8に係るガスケット300は、熱膨張性樹脂組成物層および軟質ポリ塩化ビニル樹脂を含む樹脂組成物層を有する本体部10と、軟質ポリ塩化ビニル樹脂を含む樹脂組成物層からなる突起部20とを有する。
前記本体部10は、支持部55および前記支持部55から互いに反対方向に延びる第1の固定部57,57と、第1の固定部57,57と離間して第1の固定部57,57と平行に延びる第2の固定部58,58とを有する。支持部55は熱膨張性樹脂組成物層からなり、固定部57,57および58,58はそれぞれ軟質ポリ塩化ビニル樹脂を含む樹脂組成物層からなる。
また突起部20は、中空で断面略楕円状の湾曲部59を有する。前記湾曲部59は軟質ポリ塩化ビニル樹脂を含む樹脂組成物層からなる。突起部20の内部には、前記湾曲部59により囲まれた空間60が区画形成されている。
図16に示す外壁700,700の目地702に、実施例8に係るガスケット300を挿入することができる。前記ガスケット300を前記目地702に挿入すると、前記ガスケット300の固定部57,57,58,58および前記突起部20が外壁700,700にはさまれて、前記ガスケット300を前記目地702内部に固定することができる。
また前記ガスケット300の固定部58,58および前記突起部20は柔軟性を有する。このため前記ガスケット300を前記目地702に挿入すると、前記ガスケット300の固定部57,57,58,58および前記突起部20により前記目地702を閉塞することができる。
実施例8に係るガスケット300の製造方法は実施例1の場合と同様である。
前記突起部20の成形に実施例1に用いた軟質ポリ塩化ビニルを含むポリ塩化樹脂組成物を使用し、前記本体部10の成形に、実施例1に用いた軟質ポリ塩化ビニルを含むポリ塩化樹脂組成物および塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物を使用して、実施例1の場合と同様の同時共押出成形により前記ガスケット300を製造することができる。得られるガスケット300は一体性が高く、耐火性および密封性に優れている。
図16に示すガスケット300は、樹脂組成物層からなる突起部20と、熱膨張性樹脂組成物層を内部に含む樹脂組成物層からなる本体部10とを有する。
前記熱膨張性樹脂組成物層は火災等の熱により膨張することから耐火性の機能を担う。
また前記樹脂組成物層は柔軟性を有することから、外壁700,700との目地441を閉塞する気密の機能も担う。
この様に実施例8に係るガスケット300は機能の異なる樹脂組成物層を二以上有することから一つのガスケット300に対し全く異なる複数の機能を付与することが可能となる。
また、本体部10における突起部20と向かい合う支持部55の表面56には、互いに離間する2つの凹部315が設けられ、突起部20における本体部10と向かい合う表面61からは突出部325が延出し、このように凹部315と突出部325の形状が適合しているため、図14におけるように表面56,61を重ね合わせると、凹部315と突出部325が嵌合し、かつ熱膨張性樹脂組成物層と樹脂組成物層の表面56,61が、凹部315と突出部325の嵌合部の周囲において平坦面をなして接触する。したがって、熱膨張性樹脂組成物層と樹脂組成物層は互いに強固に一体化される。実施例8のガスケット300は一体性が高く、耐火性および密封性に優れている。
また図16に示すガスケット300を備えた外壁700,700が火災等の熱にさらされた場合、前記熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10は膨張する。この膨張により生じた膨張残渣が、外壁700,700との目地702を閉塞する。
この膨張残渣により、火災により生じた炎、煙等が外壁700,700との目地702を通って、火災の生じていない側に侵入することを遅延させることができる。
上述の通り、実施例8に係るガスケット300を備えた外壁700,700の目地702は耐火性および密封性に優れる。
なお、実施例1〜10のタイト材、グレージングチャンネル、およびガスケットの製造に使用する樹脂組成物の配合の例は、表1に示した通りである。
ここまで、本発明を実施例1〜10を例にとって説明してきたが、本発明はこれに限られず、以下のような種々の変形が可能である。
なお、実施例1の構成は以下のように変更されてもよい。
○実施例1〜8において、凹部15,115,215,315および突出部25,125,225,325の数は限定されず、1個または図面に示された以外の複数個の凹部15,115,215,315および突出部25,125,225,325が設けられてもよい。
○実施例1〜8において、本体部10に突出部25,125,225,325が設けられ、突起部20に凹部15,115,215,315が設けられてもよい。
○実施例1〜8において、本体部10を構成する樹脂組成物と、突起部20を構成する樹脂組成物が逆であってもよい。例えば、実施例1の場合、本体部10が樹脂組成物層からなり、突起部20が熱膨張性樹脂組成物層からなってもよい。
○実施例1〜8において、凹部15,115,215,315および突出部25,125,225,325が嵌合したとき、熱膨張性樹脂組成物層と樹脂組成物層の表面は、平坦面の代わりに、曲面をなして接触していてもよい。
○実施例2(図6)の筒部12と固定部11の間、および実施例4(図8)の支持部16と固定部17,18の少なくともいずれか一つとの間に、凹部15および突出部25からなる嵌合部が設けられてもよい。この場合、本体部10における一体性が高まり、タイト材の密封性がさらに向上する。
○実施例5(図9)において、ヒレ部33と本体上部31は同じ樹脂組成物から連続的に形成されてもよい。
○実施例5(図9)において、本体上部31とヒレ部33は連続する単一の樹脂組成物層から構成されてもよい。
○実施例5(図9)において、タイト材140は、本体下部32を樹脂組成物層と、熱膨張性樹脂組成物層とからなる構成としてもよい。例えば、本体下部32の本体上部31と接する側を樹脂組成物層とし、本体下部32の下側部分、支持部16および固定部11、または固定部11を熱膨張性樹脂組成物層としてもよい。本体上部31と接する側の樹脂組成物層としては、熱膨張性樹脂組成物層と易接着な樹脂(たとえば、塩化ビニル樹脂)が好ましい。
○実施例7(図13)において、熱膨張性樹脂組成物層は、外底壁部5の代わりに、底壁部1の上側に、および/または側壁部2の内側もしくは外側に設けられてもよい。
○実施例7(図13)において、突起部20は熱膨張性樹脂組成物層であってもよい。
○凹部15,115,215,315および突出部25,125,225,325からなる嵌合部の実施形態は、図3に示した例に限られない。例えば、図17(a)に示すように、突起部20の基端部分25aより先端側の先端部分25bの形状が、先端に頂点を有する断面略三角形の形状であってもよいし、図17(b)に示すように、先端部分25bの形状が、突出部25の延出方向と垂直な断面方向における先端部分25bの最大長さL4が先端部分25bの他の部分の長さよりも長い断面長円の形状であってもよい。図(c)に示すように先端部分25bは基端部分よりも長さが大きい拡張部分が複数連なった形状であってもよい。なお、突起部25は基端部分が一つで先端部分を複数有する枝分かれを持った形状であってもよい。また、図17(a)の突起部25の先端部分25は矢尻状の返しがついていてもよい。
○本発明のパッキンは、グレージングチャンネル、タイト材、またはガスケット以外に、グレージングビード等の他の態様に具現化してもよい。