JP2021102756A - 樹脂組成物、及び成形体 - Google Patents

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清水 宏明
Hiroaki Shimizu
宏明 清水
啓介 増子
Keisuke Masuko
啓介 増子
三上 譲司
Joshi Mikami
譲司 三上
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Abstract

【課題】270℃以上の溶融混錬に耐える耐熱性を有し、良好な不可視性を有する成形体を形成できる樹脂組成物を提供する。【解決手段】下記一般式(1)および(2)の少なくとも一方の化合物である近赤外線吸収色素(A)、ならびに熱可塑性樹脂(B)の溶融混錬物である、樹脂組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、近赤外線吸収色素を含む樹脂組成物、及び成形体に関する。
近年、近赤外線(700nm〜1000nm)を吸収する材料の各種用途が提案され、より高性能のものが強く望まれている。主な用途として、近赤外線カットフィルタがあり、例えば、省エネルギー用に熱線を遮断する近赤外線吸収フィルムや近赤外線吸収板、太陽光の選択的な利用を目的とする農業用近赤外線吸収フィルム、近赤外線の吸収熱を利用する記録媒体、保護めがね、眼鏡、サングラス、熱線遮断フィルム、電子写真感光体、レーザー溶着用材料、レーザーマーキング用材料、近赤外線を吸収・カットする機能を有する半導体受光素子用の光学フィルタ、電子機器用近赤外線カットフィルタ、写真用近赤外線フィルタなどがある。
これらの用途に使用する材料は、近赤外線吸収色素および樹脂を含む組成物をガラス基材や樹脂基材に塗工して使用していた。しかし、これら材料を薄膜化するため基材自体に近赤外線吸収色素を配合して樹脂成形体(以下、成形体という)とする場合がある。成形体は、熱可塑性樹脂および近赤外線吸収色素を高温で溶融混錬して形成する必要があるため、近赤外線吸収色素には耐熱性が必要である。
そこで特許文献1には、近赤外線吸収色素としてジイモニウム化合物を含む、樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、近赤外線吸収色素として6ホウ化物を含む樹脂組成物が開示されている。また、特許文献3には、近赤外線吸収色素としてビピロロイソキノリン化合物を含む樹脂組成物が開示されている。また、特許文献4には、近赤外線吸収色素としてフタロシアニン化合物を含む樹脂組成物が開示されている。
特開2001−133624号公報 特開2003−227922号公報 特開2012−131862号公報 特開2013−88486号公報
しかし、従来の樹脂組成物で使用された化合物のうち、ジイモニウム色素は耐熱性が低く、高融点または高軟化点の熱可塑性樹脂(例えば、エンジニアリングプラチック)の成形体に使用できない問題があった。また、6ホウ化物は、単位重量あたりの吸光係数が低く、成形体の厚みを厚くする必要があり薄膜化に適していなかった。また、フタロシアニン化合物は、耐熱性はあるが、フタロシアニン化合物を使用した被膜は、可視光領域にsoret帯と呼ばれる構造由来の吸収があるため透明性・不可視性が低い問題があった。ビピロロイソキノリン化合物も同様に耐熱性はあるが、不可視性が低い問題があった。なお、不可視性とは、近赤外線カットフィルタについて、近赤外線を吸収しながら可視光での着色が少なく、肉眼では近赤外線を吸収していることが分かりにくい特性を意味する。不可視性が高い場合、近赤外線の吸収性に対し可視光の吸収性が低く、近赤外線を十分に吸収していながら可視光の着色が減少する。
本発明は、270℃以上の溶融混錬に耐える耐熱性を有し、良好な不可視性を有する成形体を形成できる樹脂組成物に関する。
本発明の樹脂組成物は、下記一般式(1)および一般式(2)の少なくとも一方の化合物である近赤外線吸収色素(A)、ならびに熱可塑性樹脂(B)の溶融混錬物である樹脂組成物であって、
熱可塑性樹脂(B)は、融点200℃以上の結晶性樹脂、またはガラス転移温度120℃以上の非晶性樹脂を含む。
Figure 2021102756
一般式(1)中、X101〜X110は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、スルホ基、−SONR101102、−COOR101、−CONR101102、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。R101、R102は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基を表す。X101〜X110は、置換基同士が結合して環を形成してもよい。
一般式(2)中、Q、Q、Q及びQは、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。Q、Q、Q又はQが窒素原子の場合、X201、X204、X205又はX208はないものとする。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、スルホ基、−SO 又はハロゲン原子を表す。Mは無機又は有機のカチオンを表す。
201〜X208は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、−NR、スルホ基、−SONR、−COOR10、−CONR1112、ニトロ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。X201〜X208は、互いに結合して環を形成してもよい。
〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアシル基又は置換基を有してもよいピリジニル基を表す。RとR、RとR9、11とR12は、互いに結合して環を形成してもよい。
上記の本発明によれば、本発明は、270℃以上の溶融混錬に耐える耐熱性を有し、良
好な不可視性を有する成形体を形成できる樹脂組成物、および成形体を提供できる。
本発明の樹脂組成物は、下記一般式(1)および一般式(2)の少なくとも一方の化合物である近赤外線吸収色素(A)、ならびに熱可塑性樹脂(B)の溶融混錬物である樹脂組成物であって、
熱可塑性樹脂(B)は、融点200℃以上の結晶性樹脂、またはガラス転移温度120℃以上の非晶性樹脂を含む。
Figure 2021102756
一般式(1)中、X101〜X110は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、スルホ基、−SONR101102、−COOR101、−CONR101102、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。R101、R102は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基を表す。X101〜X110は、置換基同士が結合して環を形成してもよい。
一般式(2)中、Q、Q、Q及びQは、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。Q、Q、Q又はQが窒素原子の場合、X201、X204、X205又はX208はないものとする。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、スルホ基、−SO 又はハロゲン原子を表す。Mは無機又は有機のカチオンを表す。
201〜X208は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、−NR、スルホ基、−SONR、−COOR10、−CONR1112、ニトロ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。X201〜X208は、互いに結合して環を形成してもよい。
〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアシル基又は置換基を有してもよいピリジニル基を表す。RとR、RとR9、11とR12は、互いに結合して環を形成してもよい。
本明細書の樹脂組成物が含む近赤外線吸収色素(A)は、通常は、耐熱性が低いシアニ
ン色素に包含されるスクアリリウム色素であるところ、一般式(1)および一般式(2)の少なくとも一方の化合物であることで270℃以上の溶融混錬に耐える耐熱性を有している。本明細書の樹脂組成物を使用して成形体を作製することが好ましい。成形体は、例えば、省エネルギー用に熱線を遮断する近赤外線吸収フィルムや近赤外線吸収板、太陽光の選択的な利用を目的とする農業用近赤外線吸収フィルム、近赤外線の吸収熱を利用する記録媒体、保護めがね、眼鏡、サングラス、熱線遮断フィルム、電子写真感光体、レーザー溶着用材料、レーザーマーキング用材料、近赤外線を吸収・カットする機能を有する半導体受光素子用の光学フィルタ、電子機器用近赤外線カットフィルタ、写真用近赤外線フィルタなどさまざまな用途に対し、使用環境や製造工程が高温であっても劣化することのない樹脂成形物を得ることができる。また、成形体は、光学フィルタとして使用することが好ましい
<近赤外線吸収色素(A)>
近赤外線吸収色素(A)は、上記一般式(1)および一般式(2)の少なくとも一方の化合物である。通常は、シアニン色素に包含されるスクアリリウム色素は耐熱性が低いが、一般式(1)および一般式(2)の少なくとも一方の化合物は、270℃以上の溶融混錬に耐える耐熱性を有している。
(一般式(1)で示す化合物)
一般式(1)で示す化合物は、一般式(1)中、X101〜X110は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、スルホ基、−SONR101102、−COOR101、−CONR101102、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。R101、R102は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基を表す。X101〜X110は、置換基同士が結合して環を形成してもよい。
101〜X110において「置換基を有してもよいアルキル基」は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、2−エチルヘキシル基、ステアリル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2−メトキシエチル基、2−クロロエチル基、2−ニトロエチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基が、耐久性付与および合成難易度の観点で好ましく、特にメチル基が好ましい。
101〜X110において「置換基を有してもよいアルケニル基」は、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基等が挙げられる。これらの中でもビニル基、アリル基が、耐久性付与および合成難易度の観点で好ましい。
101〜X110において「置換基を有してもよいアリール基」は、例えば、フェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−ジエチルアミノフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−シアノフェニル基等が挙げられる。これらの中でもフェニル基、4−メチルフェニル基が、耐久性付与および合成難易度の観点で好ましい。
101〜X110において「置換基を有してもよいアラルキル基」は、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。これらの中でもベンジル基が、耐久性付与および合成難易度の観点で好ましい。
101〜X110において「置換基を有してもアルコキシ基」は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基等が挙げられる。これらの中でもメトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメトキシ基が、耐久性付与および合成難易度の観点で好ましい。
101〜X110において「置換基を有してもよいアリールオキシ基」は、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、4−メチルフェニルオキシ基、3,5−クロロフェニルオキシ基、4−クロロ−2−メチルフェニルオキシ基、4−tert− ブチルフェニ
ルオキシ基、4−メトキシフェニルオキシ基、4−ジエチルアミノフェニルオキシ基、4−ニトロフェニルオキシ基等が挙げられる。これらの中でもフェノキシ基、ナフチルオキシ基が、耐久性付与および合成難易度の観点で好ましい。
101〜X110において「置換アミノ基」は、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ステアリルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、4−tert−ブチルフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N−フェニル−N−エチルアミノ基等が挙げられる。これらの中でもジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基が、耐久性付与および合成難易度の観点で好ましい。
101〜X110において「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素が挙げられる。
101〜X110は、置換基同士が結合して環を形成できる。前記環は、例えば、以下の構造が挙げられるが、これらに限定されない
Figure 2021102756

101、R102において「置換基を有してもよいアルキル基」は、例えば、X〜X10と同様の意義である。
101〜X110は、無置換のアルキル基を含むことが好ましく、X103、X104、X107およびX8108の少なくとも一つは、無置換のアルキル基がより好ましく、X103およびX107は無置換のアルキル基がさらに好ましい。無置換のアルキル基は、例えばメチル基が好ましい。
(一般式(1)で示す化合物の製造方法)
一般式(1)で示す化合物は、例えば、1,8−ジアミノナフタレンと、下記一般式(3)で示すシクロヘキサノン類とを、触媒とともに溶媒中で加熱還流して縮合させた後、下記化学式(4)で示す3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオンを加えてさらに加熱還流させて縮合して合成できる。なお、合成が前記方法に限定されないことはいうまでもない。
Figure 2021102756
(一般式(2)で示す化合物)
一般式(2)で示す化合物は、一般式(2)中、Q、Q、Q及びQは、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。Q、Q、Q又はQが窒素原子の場合、X201、X204、X205又はX108は、置換基または原子を有さない。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、スルホ基、−SO 又はハロゲン原子を表す。Mは無機又は有機のカチオンを表す。
201〜X208は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、−NR、スルホ基、−SONR、−COOR10、−CONR1112、ニトロ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。X201〜X208は、互いに結合して環を形成してもよい。
〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアシル基又は置換基を有してもよいピ
リジニル基を表す。RとR、RとR9、11とR12は、互いに結合して環を形成してもよい。]
、Q、Q及びQは、例えば、炭素原子がより好ましい。
〜Rにおいて「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素が挙げられる。
〜RにおいてMの「無機又は有機のカチオン」は、例えば、公知のものが制限なく採用でき、有機のカチオンの場合、低分子タイプと高分子タイプのどちらでも良い。具体的には、金属原子、アンモニウム化合物、ピリジニウム化合物、イミダゾリウム化合物、ホスホニウム化合物、スルホニウム化合物等を挙げることができる。高分子タイプの場合、例えば、「4級アンモニウム塩基を有する樹脂」などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの中でも3価の金属原子、アンモニウム化合物、4級アンモニウム塩基を有する樹脂が、耐熱性の観点で好ましい。
〜Rは、耐性付与の観点から、全て水素原子であるか、若しくはR〜Rのうち4つが水素原子であり、1つがスルホ基、−SO 又はハロゲン原子であることが好ましい。これらの中でも、全て水素原子であるか、又はR〜Rのうち4つが水素原子であり、1つがスルホ基、又はハロゲン原子であることが特に好ましい。
201〜X208において「置換基を有してもよいアルキル基」は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、イソブチル基、tert−アミル基、2−エチルヘキシル基、ステアリル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2−メトキシエチル基、2−クロロエチル基、2−ニトロエチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でもメチル基、エチル基が、合成難易度の観点で好ましい。
201〜X208において「置換基を有してもよいアルケニル基」は、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基等が挙げられる。これらの中でもビニル基、アリル基が、合成難易度の観点で好ましい。
201〜X208において「置換基を有してもよいアリール基」は、例えば、フェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−ジエチルアミノフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−シアノフェニル基等が挙げられる。これらの中でもフェニル基、4−メチルフェニル基が、合成難易度の観点で好ましい。
201〜X208において「置換基を有してもよいアラルキル基」は、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。これらの中でもベンジル基が、合成難易度の観点で好ましい。
201〜X208において「置換基を有してもアルコキシ基」は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、2−(ジエチルアミノ)エトキシ基等が挙げられる。これらの中でもメトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2−(ジエチルアミノ)エ
トキシ基が、合成難易度の観点で好ましい。
201〜X208において「置換基を有してもよいアリールオキシ基」は、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、4−メチルフェニルオキシ基、3,5−クロロフェニルオキシ基、4−クロロ−2−メチルフェニルオキシ基、4−tert− ブチルフェニ
ルオキシ基、4−メトキシフェニルオキシ基、4−ジエチルアミノフェニルオキシ基、4−ニトロフェニルオキシ基等が挙げられる。これらの中でもフェノキシ基、ナフチルオキシ基が、合成難易度の観点で好ましい。
201〜X208において「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素が挙げられる。
201〜X208は、置換基同士が結合して環を形成してもよい。以下、好ましい環を例示する。なお、環は、これらに限定されない。
Figure 2021102756

201〜X208は、分散性、保存安定性及び合成難易度の観点から、全て水素原子であることが特に好ましい。
〜R12において「置換基を有してもよいアルキル基」は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−アミル基、2−エチルヘキシル基、ステアリル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2−メトキシエチル基、2−クロロエチル基、2−ニトロエチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でもメチル基、エチル基が、合成難易度の観点で好ましい。
〜R12において「置換基を有してもよいアリール基」は、例えば、フェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、ペンタフルオロフェ
ニル基、4−ブロモフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−ジエチルアミノフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−シアノフェニル基等が挙げられる。これらの中でもフェニル基、4−メチルフェニル基が、合成難易度の観点で好ましい。
〜R12において「置換基を有してもよいアシル基」は、例えば、アセチル基、プロピオイル基、ベンゾイル基、アクリリル基、トリフルオロアセチル基等が挙げられる。これらの中でもアセチル基が、合成難易度の観点で好ましい。
〜R12において「置換基を有してもよいピリジニル基」は、例えば、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、2−メチル−4−ピリジニル基等が挙げられる。これらの中でも4−ピリジニル基が、合成難易度の観点で好ましい。
とR、RとR9、11とR12は、置換基同士が結合して環を形成してもよい。
(一般式(2)で示す化合物の製造方法)
一般式(2)で示す化合物は、例えば、下記の反応図で説明できる。まず、1,8−ジアミノナフタレン類と、フルオレノン類とを、触媒とともに溶媒中で加熱還流して縮合させた後、3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオンを加えてさらに加熱
還流させて縮合して合成できる。なお、R〜Rのうち少なくとも1つがSO である場合、スルホ基で置換された色素のスルホ基の水素イオンと、目的のカチオンを有する化合物とのカウンターイオン交換により、SO で置換された色素が得られる。なお、合成が前記方法に限定されないことはいうまでもない。
Figure 2021102756
近赤外線吸収色素(A)の含有量は、樹脂組成物100質量%中に0.001〜5質量%が好ましく、0.005〜1質量%がより好ましい。
<熱可塑性樹脂(B)>
熱可塑性樹脂(B)は、融点200℃以上の結晶性樹脂、またはガラス転移温度120℃以上の非晶性樹脂である。なお、結晶性樹脂の融点は、220℃以上が好ましい。また、前記融点は、500℃以下が好ましい。非晶性樹脂のガラス転移温度は、130℃以上が好ましい。また、前記ガラス転移温度は、300℃以下が好ましい。融点、ガラス転移温度ともに、示差走査熱量計や熱重量示差熱分析装置等で測定できる。
融点200℃以上の結晶性樹脂は、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられる。
ガラス転移温度120℃以上の非晶性樹脂は、例えば、シクロオレフィン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカードネート樹脂等が挙げられる。
(ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂は、結晶性樹脂であり、例えば、カルボン酸成分と、アミノ基を2個以上有する化合物(Am)とを脱水縮合反応させて合成できる。
カルボン酸成分は、例えば、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。なお、カルボン酸成分は、3以上のカルボキシル基を有する化合物を使用できる。
アミノ基を2個以上有する化合物(Am)は、例えば、公知のものを使用することができ、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂環式ポリアミンを含む脂肪族ポリアミン;フェニレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン;1,3−ジアミノ−2−プロパノール、1,4−ジアミノ−2−ブタノール、1−アミノ−3−(アミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン−1−オール、4−(2−アミノエチル)−4,7,10−トリアザデカン−2−オール、3−(2−ヒドロキシプロピル)−o−キシレン−α,α’−ジアミン等のジアミノアルコールが挙げられる。
ポリアミド樹脂の市販品は、例えば、6ナイロン(東レ社製)、66ナイロン(東レ社製)、610ナイロン等が挙げられる。
(ポリカーボネート樹脂)
ポリカーボネート樹脂は、非晶性樹脂であり、芳香族ジヒドロキシ化合物に、ホスゲン或いは炭酸ジエステル等のカーボネート前駆体を反応させて合成する。ホスゲンを用いる合成反応の場合は、例えば、界面法が好ましい。また、炭酸ジエステルを用いる合成反応の場合、溶融状で反応させるエステル交換法が好ましい。
芳香族ジヒドロキシ化合物は、例えば、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。また、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´−ジヒドロキシジフェニル類を混合して使用してもよい。
前記カーボネート前駆体は、例えば、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、15,000〜30,000が好ましく、16,000〜27,000がより好ましい。なお、本明細書における粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算される値である。
ポリカーボネート樹脂の市販品は、例えば、ユーピロンH−4000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量16,000)ユーピロンS−3000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量23,000)、ユーピロンE−2000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量27,000)等が挙げられる。
(シクロオレフィン樹脂)
シクロオレフィン樹脂は、主鎖および又は側鎖に脂環構造を有する非晶性樹脂である。脂環構造の種類は、例えば、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、およびビニル脂環式炭化水素重合体、ならびにこれらの水素化物等が挙げられる。これらの中でも成形性と透明性に優れることから、ノルボルネン重合体が好ましい。ノルボルネン単量体は、例えば、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)等が挙げられる。
シクロオレフィン樹脂の市販品は、例えば、トパス(ポリプラスチックス社製)、アペル(三井化学社製)が挙げられる。
(ポリエーテルイミド樹脂)
ポリエーテルイミド樹脂は、ガラス転移温度が180℃超の非晶性樹脂であり、透明性良好で高強度、高耐熱性、高弾性率および広範な耐薬品性を有している。そのため自動車、遠隔通信、航空宇宙、電気/電子、輸送およびヘルスケアなどの多様な用途で広範に使用されている。
ポリエーテルイミド樹脂の製造プロセスの1つは、ビスフェノールA二ナトリウム塩(BPA・Na2)などのジヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩とビス(ハロフタルイミド)との重合によるものである。得られたポリエーテルイミド樹脂の分子量は2つの方法で制御できる。第1の方法は、ジヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩に対して、モル過剰のビス(ハロフタルイミド)を使用することである。第2の方法は、末端キャッピング剤を形成する無水フタル酸などの単官能性化合物の存在下でビス(無水ハロフタル酸)を調製することである。無水フタル酸は、有機ジアミンの一部と反応してモノハロ−ビス(フタルイミド)を形成する。モノハロ−ビス(フタルイミド)は、成長中のポリマー鎖におけるフェノキシド末端基との反応による重合ステップにおいて、末端−キャッピング剤として働く。
ポリエーテルイミド樹脂の市販品は、ULTEM(サウジ基礎産業公社製)が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、近赤外線吸収色素(A)、および熱可塑性樹脂(B)以外に添加剤を含有できる。添加剤は、例えば紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、成形体用途において公知の化合物を用いることができる。
紫外線吸収剤は、成形品に紫外線耐性を付与するために使用する。紫外線吸収剤は、例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系などが挙げられる。紫外線吸収剤の含有量は、樹脂組成物100質量%中に0.01〜5質量%が好ましい。
光安定剤は、成形品に紫外線耐性を付与するために使用し、紫外線吸収剤と併用することが好ましい。光安定剤は、例えば、ヒンダードアミン光安定剤が好ましい。光安定剤の含有量は、樹脂組成物100質量%中に0.01〜5質量%が好ましい。
酸化防止剤は、成形品が自然光又は人口光源を浴びて高温になるときに、成形品の劣化を低減するために使用する。酸化防止剤は、例えばモノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系、硫黄系、燐酸系などが好ましい。酸化防止剤の含有量は、樹脂組成物100質量%中に0.01〜5質量%が好ましい。
分散剤は、成形品に近赤外線吸収色素をより均一に分散させるために使用する。分散剤は、例えば、ポリオレフィンワックス、脂肪酸ワックス、脂肪酸エステルワックス、部分ケン化脂肪酸エステルワックス、ケン化脂肪酸ワックスなどが好ましい。分散剤の含有量は、赤外線吸収色素(A)100質量部に対して、50〜250質量部が好ましい。
<樹脂組成物の作製>
本明細書で樹脂組成物の製造方法は、一般式(1)および一般式(2)の少なくとも一方の化合物である近赤外線吸収色素(A)、ならびに熱可塑性樹脂(B)を270℃以上で溶融混錬する樹脂組成物の製造方法であって、熱可塑性樹脂(B)は、融点200℃以上の結晶性樹脂、またはガラス転移温度120℃以上の非晶性樹脂である。なお、溶融混錬後、冷却することが好ましい。また、溶融混錬温度は、300℃以上がより好ましい。溶融混錬温度の上限は、熱可塑性樹脂(B)の種類により異なるため限定されない。前記上限は、強いてあげれば500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましい。また、前記上限は、近赤外線吸収色素(A)の昇華温度未満、または分解温度未満である必要がある。
溶融混錬装置は、例えば、例えば、単軸混練押出機、二軸混練押出機、タンデム式二軸混練押出機等が挙げられる。
樹脂組成物は、いわゆるマスターバッチとして作製することが好ましい。マスターバッチを作製し、次いで、希釈樹脂(熱可塑性樹脂(B))とともに溶融混錬して成形体を作製すると、マスターバッチを経ず作製した成形体と比較して、近赤外線吸収色素(A)を成形体中に均一に分散し易く、近赤外線吸収色素(A)の凝集を抑制できる。これにより成形体の透明性が向上する。マスターバッチの作製は、前記溶融混錬後にペレタイザーを使用してペレット状に成形することが好ましい。
マスターバッチとして作製する場合、近赤外線吸収色素(A)の含有量は、樹脂組成物100質量%中に0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜2質量%がより好ましい。
<液状マスターバッチ組成物(E)>
樹脂組成物は、液状マスターバッチ組成物(E)を作製し、次いで、希釈樹脂(熱可塑性樹脂(B))とともに溶融混錬して成形体を作製することがより好ましい。
(液体樹脂(B))
本発明の液体樹脂(B)は、液状マスターバッチ組成物(E)を作製するうえでの近赤外線吸収色素(A)を分散する分散媒の役割である。
液体樹脂(B)は、25℃における粘度が8,000mPa・s以下が好ましく、10〜5,000mPa・sがより好ましく、100〜3,000mPa・sがさらに好ましい。上記範囲内であると、帯電防止性の点で好ましい。本明細書における粘度はJIS K7117−1:1999に従ってB型粘度計を用いて25℃で測定した値である。
液体樹脂(B)の含有量は、液状マスターバッチ組成物(E)100質量%中、液体樹脂(B)を50質量%以上が好ましく、60〜95質量%がより好ましく、70〜90質量%がさらに好ましい。適量含有すると製造時の撹拌および分散工程で流動性を維持でき、マスターバッチ製造適性に優れ、分散性が向上する。また、成形体の透明性も向上する。
液体樹脂(B)の数平均分子量(Mn)は、100〜3000が好ましく、200〜2000がより好ましく、500〜1500がさらに好ましく、1000〜1500が特に好ましい。Mnが200以上であることによりフィルム製造適性と透明性の点で好ましく、Mnが2000以下であることにより、分散性と帯電防止性の点で好ましい。
液体樹脂(B)は、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ系樹脂、脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、またはアセチルクエン酸トリブチル等が挙げられる。これらの中でも耐熱性が高く、帯電防止性も優れる点で、脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、またはアセチルクエン酸トリブチルが好ましい。
[脂肪酸ポリエステル樹脂]
脂肪族多価カルボン酸と多価アルコールとの反応生成物のポリエステル樹脂である。
前記脂肪族多価カルボン酸は、カルボキシル基を2つ以上有する脂肪族カルボン酸である。脂肪族多価カルボン酸は、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、トリカルバリル酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、1,3,5−ヘキサントリカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
前記多価アルコールは、水酸基を2つ以上有するアルコールである。多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等の脂肪族グリコール及びジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。
脂肪酸ポリエステル樹脂の凝固点は、−5℃以下が好ましく、−50℃〜−10℃がより好ましい。
脂肪酸ポリエステル樹脂の市販品は「、アデカサイザーPN‐170(ADEKA社
製、25℃での粘度800mPa・s、凝固点−15℃、アジピン酸ポリエステル樹脂)、アデカサイザーP−200(ADEKA社製、25℃での粘度2,600mPa・s、凝固点−20℃、アジピン酸ポリエステル樹脂)、アデカサイザーPN−250(ADEKA社製、25℃での粘度4,500mPa・s、凝固点−20℃、アジピン酸ポリエステル樹脂)等が挙げられる。
脂肪酸ポリエステル樹脂の原料は、それぞれ単独または2種類以上を併用できる。
[ポリアルキレングリコール樹脂]
ポリアルキレングリコール樹脂は、炭素数が1〜6の繰り返し単位を有するアルキレングリコールが好ましく、相溶性、吸水性の観点から、炭素数が2〜4の繰り返し単位を有するポリアルキレングリコール樹脂がより好ましい。なお、所定の粘度特性を満たせば上記以外の樹脂を使用できることはいうまでもない。
ポリアルキレングリコール樹脂は、例えば、いずれも繰り返し単位中の炭素数が2であるポリエチレングリコールや、いずれも繰り返し単位中の炭素数が3であるポリトリメチレングリコールおよびポリプロピレングリコールや、いずれも繰り返し単位中の炭素数が4であるポリテトラメチレングリコールおよびポリブチレングリコール等が挙げられる。
[ポリエーテルエステル樹脂]
ポリエーテルエステル樹脂は、上記脂肪族多価カルボン酸と上記アルキレングリコールをエステル化した樹脂である。
ポリエーテルエステル樹脂の市販品は、アデカサイザーRS‐107(ADEKA社製、25℃での粘度20mPa・s、凝固点−47℃、アジピン酸エーテルエステル系樹脂)、アデカサイザーRS−700(ADEKA社製、25℃での粘度30mPa・s、凝固点−53℃、ポリエーテルエステル系樹脂)等が挙げられる。
液体樹脂(B)の凝固点は、−5℃以下が好ましく、−50℃〜−10℃がより好ましい。
一般に、色素や機能材を含有する成形用樹脂組成物は、色素や機能材を熱可塑性樹脂に高濃度で含有させたマスターバッチを作製することが好ましい。マスターバッチを作製し、次いで、希釈樹脂とともに溶融混錬して成形体を作製すると、マスターバッチを経ず作製した成形体と比較して、色素や機能材を成形体中に均一に分散し易く、色素や機能材の凝集を抑制できる。これにより成形体の透明性が向上する。マスターバッチの作製は、前記溶融混錬後にペレタイザーを使用してペレット状に成形することが好ましく、通常、マスターバッチは固形である。
しかし、光学フィルタなど高い透明性が必要な用途は、上記固形マスターバッチでは透明性が不足する場合がある。これは、特に溶融温度でも流動性が低いエンジニアリングプラスチックを使用すると顕著になる。
液状マスターバッチ組成物(E)は、液状樹脂(B)を含み、液状であるため、成形体作製時の溶融混錬において高い流動性を有し、近赤外線吸収色素(A)が非常に均一に分散するため、得られる成形体は非常に高い透明性を有する。
本発明の液状マスターバッチ組成物(E)中の近赤外線吸収色素(A)の含有量は、液状マスターバッチ組成物100質量%中に1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましい。
(樹脂型分散剤(F))
液状マスターバッチ組成物(E)は樹脂型分散剤(F)を含むことが好ましい。これにより、液状マスターバッチ組成物中で、近赤外線吸収色素(A)がより均一に分散され、得られる成形体はさらに高い透明性を有する。また、樹脂型分散剤(F)を含むことで、液状マスターバッチの保存安定性が向上する。
樹脂型分散剤(F)は、例えは、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩等の油性分散剤、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、リン酸エステル系等が挙げられる。
樹脂型分散剤(F)は、近赤外線吸収色素(A)に対して5〜200質量%程度使用することが好ましく、成膜性の観点から10〜100質量%程度使用することがより好ましい。
市販の樹脂型分散剤は、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk−101、103、107、108、110、111、116、130、140、154、161、162、163、164、165、166、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155またはAnti−Terra−U、203、204、またはBYK−P104、P104S、220S、6919、またはLactimon、Lactimon−WSまたはBykumen等、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE−3000、9000、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、33500、32600、34750、35100、36600、38500、41000、41090、53095、55000、76500等、チバ・ジャパン社製のEFKA−46、47、48、452、4008、4009、4010、4015、4020、4047、4050、4055、4060、4080、4400、4401、4402、4403、4406、4408、4300、4310、4320、4330、4340、450、451、453、4540、4550、4560、4800、5010、5065、5066、5070、7500、7554、1101、120、150、1501、1502、1503、等、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPA111、PB711、PB821、PB822、PB824等が挙げられる。
樹脂型分散剤(F)を有機溶剤に溶解して使用する場合、液体樹脂(C)を添加し、減圧して加熱し、溶媒を留去することが好ましい。
<液状マスターバッチ組成物(E)の製造方法>
液状マスターバッチ(E)は、一般式(1)および一般式(2)の少なくとも一方の化合物である近赤外線吸収色素(A)、液体樹脂(C)、および樹脂型分散剤(D)を撹拌混合、または分散処理することで得られる。得られた液状マスターバッチ組成物(E)は、熱可塑性樹脂(B)とともに270℃以上で溶融混錬を行い樹脂組成物が作製できる。なお、熱可塑性樹脂(B)は、融点200℃以上の結晶性樹脂、またはガラス転移温度120℃以上の非晶性樹脂が好ましい。
前記分散処理は、例えば、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、またはアトライター等の各種分散手段を用いて微細に分散する。
本明細書の成形体は、樹脂組成物を成形して作製することが好ましい。樹脂組成物を、そのまま成形して成形体を作製できる。また、マスターバッチを作製したうえで、希釈樹脂(熱可塑性樹脂(B))とともに溶融混錬し、次いで成形することでも成形体を作製できる。
この場合、マスターバッチ(X)と希釈樹脂(Y)との質量比は、X/Y=1/5〜1/500が好ましい。この範囲にすると成形品は、良好な光特性が得やすい。
特に、マスターバッチとして液状マスターバッチ組成物(E)を用いる場合は、樹脂組成物(成形体)100質量%中に液状マスターバッチ組成物(E)を0.1〜5質量%を含有することがより好ましい。
<用途>
成形体の用途は、例えば、以下の通りである。
(熱線吸収材)
本発明の成形体は、熱線吸収材として使用できる。太陽光には、700〜2000nmの近赤外線が含まれており、その中でも特に700〜1000nmの近赤外線の強度が強い。近赤外線は物質の温度を上昇させる性質があり、熱線と言われている。その中でも、特に強度の強い700〜1000nmの近赤外線を吸収し遮断することで、物質の温度上昇を抑えることができる。
熱線吸収材は、建物や車の窓に、成形フィルムを貼ることで、太陽光による部屋や車内の温度上昇を抑える効果がある。また、農業用のビニールハウスなどにも上記のフィルムが使用でき、ビニールハウス内の温度上昇を抑える効果がある。また、保護めがね、眼鏡、サングラスについても同様であり、熱線を遮断する効果で使用できる。
(光記録媒体)
本発明の成形体は、光記録媒体として使用できる。成形体に近赤外線を照射することで、色素の結晶状態が変化し、樹脂成形物の屈折率が変わる現象が起きる。この原理は、光ディスクなどの記録媒体に用いられている。本発明の樹脂組成物は、上記の光記録媒体の用途に使用できる。
(レーザー溶着材・レーザーマーキング材)
本発明の成形体は、レーザー溶着材またはレーザーマーキング材として使用できる。
成形体に、近赤外線吸収色素(A)が吸収する波長のレーザーを照射すると、色素がレーザー光を吸収し発熱することで樹脂が溶融・炭化する現象がある。溶融する場合に、他の樹脂と溶着させることができ、この原理を用いたのがレーザー溶着である。また、炭化して黒くなることを用いたのが、レーザーマーキングである。
レーザー溶着の場合、通常はカーボン等を含有させて溶着を行うが、近赤外線吸収色素を場合、透明樹脂に含有させて近赤外線のレーザーを照射することで、透明樹脂どうしが溶着する現象が起きる。これは、近赤外線吸収色素を含有しても可視領域には吸収がないため透明樹脂であり、近赤外線を照射することで発熱して溶着する。
レーザーマーキングも同様に、透明樹脂にマーキングすることができる。
(光学フィルタ)
本発明の成形体は、光学フィルタとして使用できる。例えば、デジタルカメラは、撮像する際に受光する光を赤、緑、青のフィルタで分解し、光を電気信号に変えるフォトダイオードに送ることで、色を認識する。しかしながら、フォトダイオードは近赤外線にも反応して電気信号に変えてしまうので、これを遮断するフィルタが必要である。成形体は、この近赤外線を遮断するフィルタとして使用することができる。しかし、近赤外線吸収色素に加え可視領域にも吸収があると、色の認識に悪影響が出る。本発明の近赤外線吸収色素(A)は不可視性が高いため、フォトダイオードの色の認識に対する悪影響が少ない。また、最近、850nmや900nm、940nm等の波長のLEDが普及し、自動運転における距離測定や顔認証、さまざまなセンサーにおける光検出に使用されている。しかし、大気中には紫外線、可視光、近赤外線等あらゆる波長の光線が存在するため、検出する波長の光以外を遮断するフィルタが必要になる。そのため700〜1000nmの光を吸収する近赤外線吸収色素と可視光を吸収する色素、紫外線吸収剤等と組み合わせることにより、近赤外線吸収色素の吸収波長より長波長の光のみ透過させ、それ光より短波長の光は遮断させることができる。色素と顔料の組み合わせは、例えば、近赤外線吸収色素、青色色素、黄色色素、および赤色色素が挙げられる。 青色顔料はPigment.Blue.15:3、黄色色素はPigment.Yellow.147、赤色色素はSolvent.Red.52が好ましい。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。なお、「質量部」は、「部」、「質量%」は「%」と記載する。
<近赤外線吸収色素(A)の製造方法>
(近赤外線吸収色素(A1−1)の製造)
トルエン400部に、1,8−ジアミノナフタレン40.0部、シクロヘキサノン25.1部、p−トルエンスルホン酸一水和物0.087部を混合し、窒素ガスの雰囲気中で加熱攪拌し、3時間還流させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により反応系中から除去した。反応終了後、トルエンを蒸留して得られた暗茶色固体をアセトンで抽出し、アセトンとエタノールの混合溶媒から再結晶することにより精製した。得られた茶色固体を、トルエン240部とn−ブタノール160部の混合溶媒に溶解させ、3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン13.8部を加えて、窒素ガスの雰囲気中で加熱撹拌し、8時間還流反応させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により反応系中から除去した。
反応終了後、溶媒を蒸留し、得られた反応混合物を攪拌しながら、ヘキサン200部を加えた。得られた黒茶色沈殿物を濾別した後、順次ヘキサン、エタノールおよびアセトンで洗浄を行い、減圧下で乾燥させ、近赤外線吸収色素(A1−1)61.9部(収率:92%)を得た。TOF−MS(飛行時間型質量分析計)による質量分析の結果、近赤外線吸収色素(A1−1)であることを同定した。
(近赤外線吸収色素(A1−2)の製造)
近赤外線吸収色素(A1−1)の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、2,6−ジメチルシクロヘキサノン32.2部を使用した以外は、近赤外線吸収色素[A−1]の製造と同様の操作を行い、近赤外線吸収色素(A1−2)71.9部(収率:97%)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、近赤外線吸収色素(A1−2)であることを同定した。
(近赤外線吸収色素(A1−3)の製造)
近赤外線吸収色素(A1−1)の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、3,5−ジメチルシクロヘキサノン32.2部を使用した以外は、近赤外線吸収色素[A−1]の製造と同様の操作を行い、近赤外線吸収色素(A1−3)72.6部(収率:98%)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、近赤外線吸収色素(A1−3)であることを同定した。
(近赤外線吸収色素(A1−4)の製造)
近赤外線吸収色素(A1−1)の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、4−メチルシクロヘキサノン28.6部を使用した以外は、近赤外線吸収色素[A−1]の製造と同様の操作を行い、近赤外線吸収色素(A1−4)67.2部(収率:95%)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、近赤外線吸収色素(A1−4)であることを同定した。
(近赤外線吸収色素(A1−5)の製造)
近赤外線吸収色素(A1−1)の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、3,5−ジエチルシクロヘキサノン39.4部を使用した以外は、近赤外線吸収色素(A1−1)の製造と同様の操作を行い、近赤外線吸収色素(A1−5)76.9部(収率:95%)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、近赤外線吸収色素(A1−5)であることを同定した。
(近赤外線吸収色素(A1−6)の製造)
近赤外線吸収色素(A1−1)の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、2−ノルボルナノン28.1部を使用した以外は、近赤外線吸収色素(A1−1)の製造と同様の操作を行い、近赤外線吸収色素(A1−6)64.6部(収率:92%)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、近赤外線吸収色素(A1−6)であることを同定した。
上記の通り合成した近赤外線吸収色素の構造は、以下の通りである。
Figure 2021102756
(近赤外線吸収色素(A2−1)の製造)
トルエン400部に、1,8−ジアミノナフタレン40.0部、9−フルオレノン46.0部、p−トルエンスルホン酸一水和物0.087部を混合し、窒素ガスの雰囲気中で加熱攪拌し、3時間還流させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により反応系中から除去した。反応終了後、トルエンを蒸留して得られた暗茶色固体をアセトンで抽出し、アセトンとエタノールの混合溶媒から再結晶することにより精製した。得られた茶色固体を、トルエン240部とn−ブタノール160部の混合溶媒に溶解させ、3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン13.8部を加えて、窒素ガスの雰囲気中で加熱撹拌し、8時間還流反応させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により反応系中から除去した。反応終了後、溶媒を蒸留し、得られた反応混合物を攪拌しながら、ヘキサン200部を加えた。得られた黒茶色沈殿物を濾別した後、順次ヘキサン、エタノールおよびアセトンで洗浄を行い、減圧下で乾燥させ、近赤外線吸収色素(A2−1)84.6部(収率:97%)を得た。TOF−MSによる質量分析および元素分析の結果、近赤外線吸収色素[A−1]であることを同定した。
(近赤外線吸収色素(A2−2)の製造)
近赤外線吸収色素(A2−1)の製造で使用した9−フルオレノン46.0部の代わりに、2−メチル−9−フルオレノン49.6部を使用した以外は、近赤外線吸収色素(A2−1)の製造と同様の操作を行い、近赤外線吸収色素[A2−2]86.7部(収率:96%)を得た。TOF−MSによる質量分析および元素分析の結果、近赤外線吸収色素(A2−2)であることを同定した。
(近赤外線吸収色素(A2−3)の製造)
近赤外線吸収色素(A2−1)の製造で使用した9−フルオレノン46.0部の代わりに、3,6−ジエチル−9−フルオレノン60.3部を使用した以外は、近赤外線吸収色素(A2−1)の製造と同様の操作を行い、近赤外線吸収色素(A2−3)95.0部(収率:94%)を得た。TOF−MSによる質量分析および元素分析の結果、近赤外線吸収色素(A2−3)であることを同定した。
(近赤外線吸収色素(A2−4)の製造)
近赤外線吸収色素(A2−1)の製造で使用した9−フルオレノン46.0部の代わりに、2,7−ビス(トリフルオロメチル)−9−フルオレノン80.7部を使用した以外は、近赤外線吸収色素(A2−1)の製造と同様の操作を行い、近赤外線吸収色素(A2−4)109.8部(収率:91%)を得た。TOF−MSによる質量分析および元素分析の結果、近赤外線吸収色素(A2−4)であることを同定した。
(近赤外線吸収色素(A2−5)の製造)
近赤外線吸収色素(A2−1)の製造で使用した9−フルオレノン46.0部の代わりに、2−ヒドロキシ−9−フルオレノン50.1部を使用した以外は、近赤外線吸収色素(A2−1)の製造と同様の操作を行い、近赤外線吸収色素(A2−5)83.9部(収率:92%)を得た。TOF−MSによる質量分析および元素分析の結果、近赤外線吸収色素(A2−5)であることを同定した。
(近赤外線吸収色素(A2−6)の製造)
近赤外線吸収色素(A2−1)の製造で使用した9−フルオレノン46.0部の代わりに、13H−ベンゾ[g]インデノ[2,1−b]キノキサリン−13−オン72.1部を使用した以外は、近赤外線吸収色素(A2−1)の製造と同様の操作を行い、近赤外線吸収色素(A2−6)107.1部(収率:96%)を得た。TOF−MSによる質量分析および元素分析の結果、近赤外線吸収色素(A2−6)であることを同定した。
Figure 2021102756
<熱可塑性樹脂(B)>
(B−1)ポリエステルMA−2101M(ポリエステル樹脂、ユニチカ社製、結晶性樹脂、融点264℃)
(B−2)アミランCM3001−N(ポリアミド樹脂、東レ社製、結晶性樹脂、融点265℃)
(B−3)ユーピロンS−3000(ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチック社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度145℃)
(B−4)トパス6013M−07(シクロオレフィン樹脂、ポリプラスチックス社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度142℃)
(B−5)アペル(シクロオレフィン樹脂、三井化学社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度135℃)
(B−6)ULTEM(ポリエーテルイミド樹脂、サウジ基礎産業公社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度217℃)
<液体樹脂(C)>
(C−1):ユニオールD−1200(日油社製、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリプロピレングリコール樹脂、数平均分子量1200、粘度200mPa・s)
(C−2):PEG−400(三洋化成工業社製、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリプロピレングリコール樹脂、数平均分子量400、粘度90mPa・s)
(C−3):ユニオールD−400(日油社製、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリプロピレングリコール樹脂、数平均分子量400、粘度100mPa・s)
(C−4):アデカサイザーRS−107(ADEKA社製、エーテルエステル樹脂、アジピン酸エーテルエステル樹脂、数平均分子量430、粘度20mPa・s)
(C−5):アデカサイザーPN−6810(ADEKA社製、アセチルクエン酸トリブチル、数平均分子量190、粘度43mPa・s)
(C−6):アデカサイザーPN−250(ADEKA社製、脂肪酸ポリエステル樹脂、アジピン酸ポリエステル樹脂、数平均分子量2100、粘度4,500mPa・s)
(C−7):アデカサイザーPN−350(ADEKA社製、脂肪酸ポリエステル樹脂、アジピン酸ポリエステル樹脂、数平均分子量4500、粘度10,000mPa・s)
<樹脂型分散剤(F)>
(樹脂型分散剤溶液(F−1)の製造)
不揮発分60%であるビックケミー・ジャパン社製のBYK−LPN6919に、BYK−LPN6919と同量の液体樹脂(C−4)を加え、100℃に加熱し減圧して溶剤を留去することにより、BYK−LPN6919の固形分/液体樹脂(C−4)=1/1の塩基性樹脂型分散剤溶液(F−1)を得た。
(樹脂型分散剤溶液(F−2)の製造)
[エチレン性不飽和単量体(b−5)の合成]
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、メタクリル酸2−イソシアナトエチル60部、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン29部、テトラヒドロフラン(THF)120部を仕込み、室温で5時間撹拌した。FT−IRで反応が完結していることを確認したのち、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、淡黄色透明の液体として、下記のエチレン性不飽和単量体(b−5)を73部得た(収率82%)。得られた化合物の同定は、1H−NMRで実施した。
エチレン性不飽和単量体(b−5)
Figure 2021102756
[エチレン性不飽和単量体(b−9)の合成]
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、エチレン性不飽和単量体(b−5)の合成で得られた、エチレン性不飽和単量体(b−5)6.6部、イオン交換水5部を仕込み、室温で撹拌したのち、35%塩酸水溶液8部を滴下した。アミン価測定で反応が完結していることを確認し、淡黄色透明液体として、エチレン性不飽和単量体(b−9)水溶液を20部得た。得られた化合物の同定は、1H−NMRで実施した。
エチレン性不飽和単量体(b−9)
Figure 2021102756
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メチルメタクリレート17.7部、n−ブチルメタクリレート53.2部、テトラメチルエチレンジアミン13.2部を仕込み、窒素を流しながら50℃で1時間撹拌し、反応系内を窒素置換した。次に、ブロモイソ酪酸エチル2.6部、塩化第一銅5.6部、PGMAc(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)必要100部を仕込み、窒素気流下で、110℃まで昇温して第一ブロックの重合を開始した。4時間重合後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して重合転化率が98%以上であることを確認した。
次に、この反応槽に、PGMAc20部、第二ブロックモノマーとしてエチレン性不飽和単量体(b−5)21.2部、エチレン性不飽和単量体(b−9)水溶液27部(不揮発分38%)を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、反応を継続した。2時間後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して第二ブロックの重合転化率が98%以上を確認し、反応溶液を室温まで冷却して重合を停止した。
先に合成したブロック共重合体溶液に不揮発分が40質量%になるようにPGMAcを添加した。このようにして、不揮発分当たりのアミン価が50mgKOH/g、4級アンモニウム塩価が20mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)9,800、不揮発分が40質量%の塩基性樹脂型分散剤溶液を得た。
さらに、この樹脂型分散剤溶液の固形分と同量の液体樹脂(C−4)を加え、100℃に加熱し減圧してPGMAcを留去することにより、この樹脂型分散剤溶液の固形分/液体樹脂(C−4)=1/1の樹脂型分散剤溶液(F−2)を得た。
(実施例1)
<マスターバッチの製造>
近赤外線吸収色素(A1−1)1部と熱可塑性樹脂(B−1)99部とを同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(日本製鋼所社製)に投入し、300℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(D−1)を作製した。
<フィルム成形>
希釈樹脂の熱可塑性樹脂(B−1)95部に対して、得られたマスターバッチ(D−1)5部を混合し、T−ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度300℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(X−1)を成形した。
(実施例2〜22、比較例1〜3)
実施例1と同様に、表1記載の材料を用いた以外は同様に行い、それぞれ厚さ250μmのフィルム(X−2)〜(X−22)、(XY−1)〜(XY−3)を成形した。なお、下記化合物を用いた。
(AY−1)シアニン色素
Figure 2021102756

(AY−2)ジイモニウム色素
(N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジエチルアミノフェニル)−p−ベンゾキノン−ビス(イモニウム)・ヘキサフルオロアンチモン酸塩
(AY−3)フタロシアニン色素
Figure 2021102756

(実施例23)
<液状マスターバッチ組成物(E)の製造>
近赤外線吸収色素(A1−1)10部と液体樹脂(C−1)90部とを2本ロールで混錬することにより、液状マスターバッチ組成物(E−1)を作製した。
<フィルム成形>
希釈樹脂の熱可塑性樹脂(B−3)99.5部に対して、得られた液状マスターバッチ組成物(E−1)0.5部を混合し、T−ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度300℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(X−23)を成形した。
(実施例24〜35)
実施例23と同様に、表1記載の材料を用いた以外は同様に行い、それぞれ厚さ250μmのフィルム(X−24)〜(X−35)を成形した。
(実施例36)
<液状マスターバッチ組成物(E)の製造>
近赤外線吸収色素(A1−1)10部、樹脂型分散剤(F−1)20部、液体樹脂(C−1)70部とをビーズミルで分散することにより、液状マスターバッチ組成物(E−14)を作製した。
<フィルム成形>
希釈樹脂の熱可塑性樹脂(B−3)99.5部に対して、得られた液状マスターバッチ組成物(E−14)0.5部を混合し、T−ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度300℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(X−36)を成形した。
(実施例37〜49)
実施例36と同様に、表1記載の材料を用いた以外は同様に行い、それぞれ厚さ250μmのフィルム(X−37)〜(X−49)を成形した。
Figure 2021102756
<近赤外線吸収性>
得られたフィルムに対し、分光光度計(U−4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて700〜1000nmの波長範囲の吸収スペクトルを測定し、極大吸収波長における吸光度により、近赤外線吸収能を下記基準で評価した。
○ :極大吸収波長における吸光度が1.0以上、1.5未満 良好
△ :極大吸収波長における吸光度が0.5以上、1.0未満 実用域
× :極大吸収波長における吸光度が0.5未満、0.1以上 実用不可
××:極大吸収波長における吸光度が0.1未満 実用不可
<不可視性>
前記近赤外線吸収性試験で得られた400〜1000nmの波長範囲の吸収スペクトルを使用して、700〜1000nmの極大吸収波長の吸光度を1に規格化した際の、「400〜700nmの平均吸光度」により、不可視性を下記基準で評価した。
○ :0.05未満
△ :0.05以上、0.1未満
× :0.1以上
<ヘーズ値>
得られたフィルムに対し、ヘーズメーター(NDH4000、日本電色工業社製)でヘーズ値を測定し、下記基準で評価した。
◎+:0.2未満 極めて良好
◎ :0.2以上0.5未満 非常に良好
〇 :0.5以上2未満 良好
△ :2以上5未満 良好
× :5以上 実用不可
<透明性>
得られたフィルムの透明性を目視で評価した。
〇: 全く濁りが認められない。
△: 若干濁りが認められる。
×: 明らかに濁りが認められる。
<耐光性>
近赤外線吸収性評価と同じ手順で試験用フィルムを作製し、耐光性試験機(TOYOSEIKI社製「SUNTEST CPS+」)に入れ、放射照度47mW/cm、30
0〜800nmの広帯の光を照射し、24時間放置した。次いで、試験用フィルムを取り出し、当該試験用フィルムの極大吸収波長における吸光度を測定し、光照射前の前記吸光度に対する残存比を求め、耐光性を、下記基準で評価した。なお、残存率の算出は、以下の式を用いて算出した。
残存率=(照射後の吸光度)÷(照射前の吸光度)×100
○ :残存率 が90%以上
△ :残存率 が85%以上90%未満
× :残存率 が85%未満、
<熱線吸収>
得られた試験用フィルムを10cm×10cmに裁断し、これより50cm離れた場所に50W/mの照度のキセノンランプを設置して照射し、反対側10cm離れた場所に10cm×10cmのガラス基板を置き、その中心の温度を測定する。測定は25℃の部屋で行い、照射1時間後のガラス基板の中心温度について、フィルムがある場合とない場合での温度差を測定する。
〇:3℃以上
△:0.5℃以上3℃未満
×:0.5℃未満
<レーザー溶着>
得られたフィルムに対し、10cm×2cmに2枚裁断し、10cm×1cm部分が重なるように配置し、重ね合わせた部分に、波長808nmの半導体レーザーを使用して、レーザー走査速度1cm/秒、レーザー出力30Wの条件でレーザー光を照射した。その結果、実施例1〜49で得たいずれのフィルムも溶着していることが確認された。
<レーザーマーキング>
得られたフィルムに対し、4cm×1cmに2枚裁断し、1cm×1cm部分が重なるように配置し、重ね合わせた部分の中心に、波長808nmの半導体レーザーを使用して、レーザー出力30Wで、1秒間レーザー光を照射した。その結果、実施例1〜49で得られたフィルムは、いずれも黒色化することが確認された。
Figure 2021102756
比較例1〜2では、AY−1〜AY−2が近赤外線吸収性の評価で700〜1000nmにおける吸光度が検出されなかったため、それ以外の試験は実施しなかった。300℃の溶融混錬で分解したと考えられる。
<近赤外線透過フィルタ>
(実施例50)
<マスターバッチの製造>
近赤外線吸収色素(A1−1)を1部、ピグメントブルー15:3を1部、ピグメントイエロー147を1部、ソルベントレッド52を1部、および熱可塑性樹脂(B−1)96とを同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(日本製鋼所社製)に投入し、300℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(DD−1)を作製した。
<フィルム成形>
希釈樹脂の熱可塑性樹脂(B−1)95部に対して、得られたマスターバッチ(DD−1)5部を混合し、T−ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度300℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(XX−1)を成形した。
(実施例51〜71、比較例4〜6)
実施例1と同様に、表1記載の材料を用いた以外は同様に行い、それぞれ厚さ250μmのフィルム(XX−2)〜(X−22)、(XXY−1)〜(XXY−3)を成形した。
(実施例72)
<液状マスターバッチ組成物(E)の製造>
近赤外線吸収色素(A1−1)を2.5部、ピグメントブルー15:3を2.5部、ピグメントイエロー147を2.5部、ソルベントレッド52を2.5部、液体樹脂(C−1)90部とを2本ロールで混錬することにより、液状マスターバッチ組成物(EE−1)を作製した。
<フィルム成形>
希釈樹脂の熱可塑性樹脂(B−3)98.0部に対して、得られた液状マスターバッチ組成物(E−1)2.0部を混合し、T−ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度300℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(XX−23)を成形した。
(実施例73〜84)
実施例73と同様に、表1記載の材料を用いた以外は同様に行い、それぞれ厚さ250μmのフィルム(XX−24)〜(XX−35)を成形した。
(実施例85)
<液状マスターバッチ組成物(E)の製造>
近赤外線吸収色素(A1−1)を2.5部、ピグメントブルー15:3を2.5部、ピグメントイエロー147を2.5部、ソルベントレッド52を2.5部、樹脂型分散剤(F−1)と液体樹脂(C−1)80部とをビーズミルで分散することにより、液状マスターバッチ組成物(EE−14)を作製した。
<フィルム成形>
希釈樹脂の熱可塑性樹脂(B−3)98.0部に対して、得られた液状マスターバッチ組成物(EE−14)2.0部を混合し、T−ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度300℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(XX−36)を成形した。
(実施例86〜98)
実施例85と同様に、表1記載の材料を用用いた以外は同様に行い、それぞれ、厚さ250μmのフィルム(XX−37)〜(XX−49)を成形した。
Figure 2021102756
得られたフィルムに対し、近赤外線フィルタの適性有無を評価した。フィルタの機能は、例えば、近赤外線の透過が可能か否か、およびそれ以外の波長領域の光線をカットできるか否かである。
以下、900nm、および940nmの透過率、ならびに400〜800nmの波長域の吸収性を評価した。
<400〜800nm吸収性>
得られたフィルムに対し、分光光度計(U−4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて400〜800nmの波長範囲の透過スペクトルを測定した。
○:400〜800nm全領域において、透過率が2%未満
△:400〜800nmの一部領域において、透過率が2%以上
×:400〜800nm全領域において、透過率が2%以上
<900nm透過性>
得られたフィルムに対し、分光光度計(U−4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて900nmの透過率を測定した。
○ :80%以上
△ :40%以上80%未満
× :40%未満
<940nm透過性>
得られたフィルムに対し、分光光度計(U−4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて940nmの透過率を測定した。
○ :80%以上
△ :40%以上80%未満
× :40%未満
<透明性>
得られたフィルムの透明性を目視で評価した。
〇: 全く濁りが認められない。
△: 若干濁りが認められる。
×: 明らかに濁りが認められる。
<ヘーズ値>
得られたフィルムに対し、ヘーズメーターでヘーズ値を測定し、下記基準で評価した。
◎+:0.2未満 極めて良好
◎ :0.2以上0.5未満 非常に良好
〇 :0.5以上2未満 良好
△ :2以上5未満 良好
× :5以上 実用不可
<耐光性>
得られたフィルムを、耐光性試験機(TOYOSEIKI社製「SUNTEST CP
S+」)に入れ、24時間放置した。この際、放射照度47mW/cm2、300〜800nmの広帯の光にて試験を実施した。その後、分光光度計(U−4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて400〜800nmの波長範囲の透過スペクトルを測定した。
○:400〜800nm全領域において、透過率が2%未満
△:400〜800nmの一部領域において、透過率が2%以上
×:400〜800nm全領域において、透過率が2%以上
Figure 2021102756
表2および表4の結果から近赤外線吸収色素(A1−1〜A1−6)、および(A2−1〜A2−6)は、700〜800nmの波長域の近赤外線を吸収し900nm及び940nmの近赤外線を透過させる。実施例23〜44で得られたフィルムは、上記近赤外線吸収色素と400〜700nmの可視光に吸収のある色素を共に含むため、400〜800nm全領域の光を吸収し、900nm及び940nmの近赤外線を透過させる。なお、比較例6は、表4の結果は良好であったが、表2で同じAY−3を使用した比較例3は不可視性が得られなかった。

Claims (10)

  1. 下記一般式(1)および一般式(2)の少なくとも一方の化合物である近赤外線吸収色素(A)、ならびに熱可塑性樹脂(B)の溶融混錬物である樹脂組成物であって、
    熱可塑性樹脂(B)は、融点200℃以上の結晶性樹脂、またはガラス転移温度120℃以上の非晶性樹脂を含む、樹脂組成物。
    Figure 2021102756
    [一般式(1)中、X101〜X110は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、スルホ基、−SONR101102、−COOR101、−CONR101102、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。R101、R102は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基を表す。X101〜X110は、置換基同士が結合して環を形成してもよい。
    一般式(2)中、Q、Q、Q及びQは、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。Q、Q、Q又はQが窒素原子の場合、X201、X204、X205又はX208はないものとする。
    〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、スルホ基、−SO 又はハロゲン原子を表す。Mは無機又は有機のカチオンを表す。
    201〜X208は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、−NR、スルホ基、−SONR、−COOR10、−CONR1112、ニトロ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。X201〜X208は、互いに結合して環を形成してもよい。
    〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアシル基又は置換基を有してもよいピリジニル基を表す。RとR、RとR9、11とR12は、互いに結合して環を形成してもよい。]
  2. 樹脂組成物中に近赤外線吸収色素(A)を0.001〜5質量%含有する、請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 一般式(1)および一般式(2)の少なくとも一方の化合物である近赤外線吸収色素(A)、および25℃における粘度が8,000mPa・s未満である液体樹脂(C)を含有する液状マスターバッチ組成物(E)、ならびに熱可塑性樹脂(B)の溶融混錬物を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 液状マスターバッチ組成物(E)が、さらに樹脂型分散剤(F)を含む、請求項3記載の樹脂組成物。
  5. 液状マスターバッチ組成物(E)100質量%中、液体樹脂(C)を50質量%以上含む、請求項3または4に記載の樹脂組成物。
  6. 液体樹脂(C)の数平均分子量が200〜2,000である、請求項3〜5いずれか1項記載の樹脂組成物。
  7. 液体樹脂(C)が、脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、およびアセチルクエン酸トリブチルからなる群より選ばれる1種以上である、請求項3〜6いずれか1項記載の樹脂組成物。
  8. 樹脂組成物100重量部中に液状マスターバッチ組成物(E)を0.1〜5質量%を含有する、請求項3〜7いずれか1項記載の樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8いずれか1項記載の樹脂組成物を成形してなる、成形体。
  10. 下記一般式(1)および一般式(2)の少なくとも一方の化合物である近赤外線吸収色素(A)、ならびに熱可塑性樹脂(B)を270℃以上で溶融混錬する樹脂組成物の製造方法であって、熱可塑性樹脂(B)は、融点200℃以上の結晶性樹脂、またはガラス転移温度120℃以上の非晶性樹脂である、樹脂組成物の製造方法。
    Figure 2021102756
    [一般式(1)中、X101〜X110は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、スルホ基、−SONR101102、−COOR101、−CONR101102、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。R101、R102は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基を表す。X101〜X110は、置換基同士が結合して環を形成してもよい。
    一般式(2)中、Q、Q、Q及びQは、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。Q、Q、Q又はQが窒素原子の場合、X201、X204、X205又はX208はないものとする。
    〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、スルホ基、−SO 又はハロゲン原子を表す。Mは無機又は有機のカチオンを表す。
    201〜X208は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、−NR、スルホ基、−SONR、−COOR10、−CONR1112、ニトロ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。X201〜X208は、互いに結合して環を形成してもよい。
    〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアシル基又は置換基を有してもよいピリジニル基を表す。RとR、RとR9、11とR12は、互いに結合して環を形成してもよい。]
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