JP2021098661A - ハロゲン化芳香族アシル化化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハロゲン化芳香族化合物から塩化アルミニウムを用いる反応において、ハロゲン化芳香族アシル誘導体を高反応収率で生成物を得る製造方法を提供する。【解決手段】ハロゲン化芳香族化合物から塩化アルミニウムを用いる反応において、回文式反応器で得るにあたり、反応温度を85℃以下で実施することを特徴とするハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。【選択図】 なし
Description
本発明は、医農薬中間体として有用なハロゲン化芳香族アシル化化合物の製造に関するものである。
芳香族アシル化化合物は、医農薬品の中間体として有用な有機化合物であり、特に農薬分野においては、この化合物を出発原料として合成されるものが多い。
芳香族アシル化化合物は、ルイス酸の存在下、芳香族化合物に対し、塩化アシル基や酸無水物などの求電子剤と反応するフリーデルクラフツ反応が一般的に用いられる(式1)。
ハロゲン化芳香族化合物は、ハロゲン元素の電気陰性度の高さから、芳香環上の電子密度が下がるため、フリーデルクラフツ反応が進行しにくいことが知られており、反応活性を高めるために、ほとんどの場合、強いルイス酸性を有する塩化アルミニウムが触媒として使用される(特許文献1〜3)。
近年の地球環境への意識の高まりから、化学品製造における排水が問題視されており、フリーデルクラフツ反応においても、塩化アルミニウムを用いることで発生する水酸化アルミニウムの削減への取り組みや代替手法の提案(非特許文献1)が進められている。
水酸化アルミニウムの削減に向けては、反応効率の向上が本質的な課題であるが、反応蒸留法を用いた収率の改善なども提案されている(特許文献4)。
Synlett,2000,3,403−405
本発明では、反応性の低いハロゲン化芳香族化合物に対し、塩化アルミニウムを用いるフリーデルクラフツ反応において、収率低下を及ぼしている要因を明らかにし、工業的に汎用的に用いられる回分式反応装置による、ハロゲン化芳香族アシル化反応の収率の改善を図ることを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、フリーデルクラフツ反応を実施する際の反応温度が高すぎると、生成物を分解し、収率が低下することがあることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]ハロゲン化芳香族化合物から塩化アルミニウムを用いてハロゲン化芳香族アシル誘導体を回分式反応器で得るにあたり、反応温度を85℃以下で実施することを特徴とするハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。
[2]ハロゲン化芳香族化合物が、塩素化芳香族化合物であることを特徴とする[1]記載のハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。
[3]ハロゲン化芳香族化合物が、多塩素化芳香族化合物であることを特徴とする[1]または[2]記載のハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。
[4]ハロゲン化芳香族化合物が、ジクロロベンゼンであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか記載のハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。
[5]ハロゲン化芳香族化合物が、m−ジクロロベンゼンであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか記載のハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。
[1]ハロゲン化芳香族化合物から塩化アルミニウムを用いてハロゲン化芳香族アシル誘導体を回分式反応器で得るにあたり、反応温度を85℃以下で実施することを特徴とするハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。
[2]ハロゲン化芳香族化合物が、塩素化芳香族化合物であることを特徴とする[1]記載のハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。
[3]ハロゲン化芳香族化合物が、多塩素化芳香族化合物であることを特徴とする[1]または[2]記載のハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。
[4]ハロゲン化芳香族化合物が、ジクロロベンゼンであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか記載のハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。
[5]ハロゲン化芳香族化合物が、m−ジクロロベンゼンであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか記載のハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。
従来の方法では収率が低く、生産性が悪かったり、分離精製が難しかったり、不純物が多くなったりするなど、生産上の課題があったが、本発明によれば、生産プロセスの改善につながり、ハロゲン化芳香族アシル化誘導体を効率よく製造することができる。
以下に、本発明のハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法について、詳細に説明する。
本発明におけるハロゲン化芳香族化合物とは、式2に示す化合物のことを言う。
ここでXnとはハロゲン置換基を表す。nは置換基の数であり、1〜5である。ハロゲン置換基とは、具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のことを指す。
本発明におけるハロゲン化芳香族化合物では、ハロゲン置換基は2以上あって良い。具体的には、ジフルオロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジヨードベンゼン、トリフルオロベンゼン、トリクロロベンゼン、トリブロモベンゼン、トリヨードベンゼンなどが挙げられる。中でも、ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼン、トリクロロベンゼンが好ましい。なお、ここで挙げた化合物は、全ての位置異性体を含む。
より好ましい化合物としては、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、p−ジブロモベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼンであり、さらに好ましくは、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼンである。
ハロゲン化芳香族アシル誘導体とは、式3に示す化合物のことを言う。
ここでXnとはハロゲン置換基を表す。nは置換基の数であり、1〜5である。ハロゲン置換基とは、具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のことを指す。Yは、炭素数1〜8の炭化水素基である。好ましくは、炭素数1〜4であり、より好ましくは炭素数1または2であり、特に好ましくはメチル基である。
本発明におけるアシル化剤としては、酸無水物、酸ハロゲン化物、などが挙げられる。具体的には、酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ブタン酸、無水ペンタン酸、無水ヘキサン酸、無水ヘプタン酸、無水オクタン酸、無水安息香酸などが挙げられ、酸ハロゲン化物としては、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、ブタン酸クロライド、ペンタン酸クロライド、ヘキサン酸クロライド、ヘプタン酸クロライド、オクタン酸クロライド、安息香酸クロライドなどが挙げられる。
本発明では、ルイス酸を触媒に用いるが、中でも塩化アルミニウムを用いることを特徴とする。
本発明では、反応の媒体として、溶媒を用いることができる。反応に用いる溶媒としては、具体的に例示するならば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−トリデカン、テトラデカン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル等のエステル系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、ヘキサフルオロイソプロパノール等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トリメチルリン酸、Nーメチルー2ーピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等のカルボン酸溶媒、アニソール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジグライム、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒の中から少なくとも1種類から選ばれる溶媒などが挙げられる。
また、反応基質、即ちハロゲン化芳香族化合物を溶媒として兼ねて使用しても良い。
本発明の製造方法では、プロセスの簡便性や、汎用性の観点から、回分式反応法、いわゆるバッチ式の反応方式を用いる。
反応を行うにあたっては、上記の原料、ルイス酸触媒および溶媒を反応容器内に加え、反応させる。反応容器への添加順序には特に制限はない。
好ましくは、反応容器内に、ハロゲン化芳香族化合物、ルイス酸、溶媒を加えておき、それに対して、アシル化剤を加えるのが良い。この際、加える方法としては、一括添加でも、逐次添加でも良いが、副生成物生成による目的物収率の低下を防ぐ効果が期待できることから、逐次添加の方が良い。
反応系は、副生成物を抑制するために、不活性ガス下で行うのが良い。不活性ガスの具体例としては、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素であり、好ましくは、窒素、アルゴンである。
逐次添加時の速度に制限はないが、全量投入にかける時間として例示するならば、1分〜10時間の範囲である。下限としては、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、さらに好ましくは1時間以上、特に好ましくは2時間以上である。上限としては、好ましくは8時間以下であり、より好ましくは5時間以下であり、さらに好ましくは、3時間以下である。
本発明において、滴下時の温度としては、85℃以下であることが必要である。好ましくは80℃以下であり、より好ましくは70℃以下であり、さらに好ましくは60℃以下である。なお、その下限としては0℃以上であり、好ましくは20℃以上であり、より好ましくは40℃以上である。
本発明において、滴下終了後、反応を完結させるために、反応容器内の温度を上げる。本発明においては、この温度を反応温度とするが最も重要な点が反応温度である。特許文献1〜3などで開示されているように、90℃以上まで反応温度を上げると、反応収率が低下する傾向にある。このことから、反応完結のために、その反応温度は85℃以下にするのが良い。
上限としては、好ましくは80℃以下であり、より好ましくは70℃以下であり、さらに好ましくは60℃以下である。なお、その下限としては0℃以上であり、好ましくは20℃以上であり、より好ましくは40℃以上である。
反応を完結させるための時間は、反応温度にもよるが、完結させるための温度に到達後、1分以上であり、好ましくは5分以上であり、より好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは20分以上であり、特に好ましくは30分以上であり、著しく好ましくは1時間以上である。その上限としては特に制限はないが、50時間以内であり、好ましくは20時間以内であり、より好ましくは10時間以内である。
攪拌羽としては、具体的には、プロペラ型、パドル型、フラットパドル型、タービン型、ダブルコーン型、シングルコーン型、シングルリボン型、ダブルリボン型、スクリュー型およびヘリカルリボン型などが挙げられるが、系に対して十分に剪断力をかけられるものであれば、これらに限定されるものではない。さらに、効率的な攪拌を行うために、槽内に邪魔板等を設置することができる。
特に、攪拌羽による攪拌の場合、攪拌羽の形状にもよるが、攪拌速度は、好ましくは50rpm〜1,200rpmであり、より好ましくは60rpm〜500rpmであり、さらに好ましくは70rpm〜300rpmである。
このような方法で得たハロゲン化芳香族アシル化化合物は、通常公知の方法による精製方法、例えば、晶析、蒸留などを経ることで、目的物を得る。
本発明は、医農薬中間体として有用なハロゲン化芳香族アシル化化合物の製造時の効率を向上させることができ、極めて有用な技術である。
次に、本発明であるハロゲン化芳香族アシル化化合物の製造方法について実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[分析方法]
反応系の生成物の定量分析には、高速液体クロマトグラフィー法を用いた。高速液体クロマトグラフィーの分析条件を以下に示す。
カラム:InertSustain(R) C18 150mm?3.0mmID粒子径5μm
オーブン温度:40℃
移動相:0.1%H3PO4(pH2.28)/MeOH :30/70(v/v) アイソクラティック
移動相流速:1ml/min
検出波長:220nm,254nm
注入量:10μl。
反応系の生成物の定量分析には、高速液体クロマトグラフィー法を用いた。高速液体クロマトグラフィーの分析条件を以下に示す。
カラム:InertSustain(R) C18 150mm?3.0mmID粒子径5μm
オーブン温度:40℃
移動相:0.1%H3PO4(pH2.28)/MeOH :30/70(v/v) アイソクラティック
移動相流速:1ml/min
検出波長:220nm,254nm
注入量:10μl。
[実施例1]
30ml二ツ口フラスコに、無水塩化アルミニウム 5.00g(37.5mmol)、m-ジクロロベンゼン 4.41g(30mmol)を加え、懸濁し、撹拌下(撹拌子Φ6mm×30mm)、55℃に加熱し、次いで30minかけて無水酢酸2.81g(27.5mmol)をチューブポンプにて定量滴下した。続いて系内の温度を、2℃/minの昇温速度で85℃まで昇温し、さらに3hr撹拌して反応を行った。得られた反応液を氷水(氷30g/水20g)に滴下し、析出する水酸化アルミニウムを、濃塩酸(1.4ml)を加えて溶解した。反応容器等をジクロロメタン、イオン交換水にて洗浄し、200ml分液漏斗にて有機層を分取した。分液した水層をジクロロメタン30mlで再抽出し、有機層と合わせた後、イオン交換水 50gを加えて水洗した。有機層を分液し、得られた有機層に炭酸カリウムを加えて脱水した。脱水後、エバポレーター(25℃、400hPa)にて、ジクロロメタンを留去した。得られた濃縮サンプルの一部を採取し、メタノールで希釈して高速液体クロマトグラフィーにて定量分析を行った。結果を表1に示す。
30ml二ツ口フラスコに、無水塩化アルミニウム 5.00g(37.5mmol)、m-ジクロロベンゼン 4.41g(30mmol)を加え、懸濁し、撹拌下(撹拌子Φ6mm×30mm)、55℃に加熱し、次いで30minかけて無水酢酸2.81g(27.5mmol)をチューブポンプにて定量滴下した。続いて系内の温度を、2℃/minの昇温速度で85℃まで昇温し、さらに3hr撹拌して反応を行った。得られた反応液を氷水(氷30g/水20g)に滴下し、析出する水酸化アルミニウムを、濃塩酸(1.4ml)を加えて溶解した。反応容器等をジクロロメタン、イオン交換水にて洗浄し、200ml分液漏斗にて有機層を分取した。分液した水層をジクロロメタン30mlで再抽出し、有機層と合わせた後、イオン交換水 50gを加えて水洗した。有機層を分液し、得られた有機層に炭酸カリウムを加えて脱水した。脱水後、エバポレーター(25℃、400hPa)にて、ジクロロメタンを留去した。得られた濃縮サンプルの一部を採取し、メタノールで希釈して高速液体クロマトグラフィーにて定量分析を行った。結果を表1に示す。
[実施例2〜3]
実施例1の最終到達温度を69℃、55℃とした以外は、同様の手法で反応を実施した。結果を表1に示す。実施例1〜3、比較例1との結果から、ハロゲン化芳香族アシル化反応の反応温度を85℃以下で実施するのが良いことがわかる。
実施例1の最終到達温度を69℃、55℃とした以外は、同様の手法で反応を実施した。結果を表1に示す。実施例1〜3、比較例1との結果から、ハロゲン化芳香族アシル化反応の反応温度を85℃以下で実施するのが良いことがわかる。
[比較例1]
実施例1の最終到達温度を95℃とした以外は、同様の手法で反応を実施した。結果を表1に示す。また、反応系における生成物の経時の影響を評価した(図1)。図に示す通り、95℃においては時間が経過するにしたがって、副生成物発生などに起因する収率が低下することがわかる。
実施例1の最終到達温度を95℃とした以外は、同様の手法で反応を実施した。結果を表1に示す。また、反応系における生成物の経時の影響を評価した(図1)。図に示す通り、95℃においては時間が経過するにしたがって、副生成物発生などに起因する収率が低下することがわかる。
Claims (5)
- ハロゲン化芳香族化合物から塩化アルミニウムを用いてハロゲン化芳香族アシル誘導体を回分式反応器で得るにあたり、反応温度を85℃以下で実施することを特徴とするハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。
- ハロゲン化芳香族化合物が、塩素化芳香族化合物であることを特徴とする請求項1記載のハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。
- ハロゲン化芳香族化合物が、多塩素化芳香族化合物であることを特徴とする請求項1または2記載のハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。
- ハロゲン化芳香族化合物が、ジクロロベンゼンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。
- ハロゲン化芳香族化合物が、m−ジクロロベンゼンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のハロゲン化芳香族アシル化誘導体の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019230478A JP2021098661A (ja) | 2019-12-20 | 2019-12-20 | ハロゲン化芳香族アシル化化合物の製造方法 |
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