以下、本発明に係る到来方向推定システム、及び到来方向推定方法の実施形態について図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る到来方向推定システム1の構成について図1ないし図5を参照して説明する。
本実施形態に係る到来方向推定システム1は、図1に示すように、アンテナ装置10、リファレンス用アンテナ装置20、受信装置30、外部制御装置40、を備えている。到来方向推定システム1は、周辺の無線装置60a、60bから送信される信号をアンテナ装置10に設けられる複数のアンテナ素子(アンテナ6:図2〜図5参照)で受信し、各アンテナ素子の受信信号を受信装置30及び外部制御装置40で信号処理することにより、電波の到来方向を推定するものである。
周辺の無線装置60a、60bのうち、無線装置60aは、例えば無線基地局であり、無線装置60bは、例えば無線基地局と通信可能な移動通信端末である。これら無線装置60a、60bは、例えば、ローカル5Gとして使用が検討されている4.6GHz〜4.8GHz及び28.2GHz〜29.1GHzの2つの帯域のうち、4.6GHz〜4.8GHzの周波数帯域の信号を用いるものである。すなわち、到来方向推定システム1においては、4.6GHz〜4.8GHzの周波数帯域の到来信号の到来方向を推定することが想定されている。
到来方向推定システム1において、アンテナ装置10は、図2に示すように、円柱形状を有する回転体5、回転体5よりも大径の円柱形状を有する回転台8、及び電波吸収体9を具備し、回転台8の上面に回転軸5a中心にして回動可能に回転体5が載置されるとともに、回転体5及び回転台8の外周全体が電波吸収体9で覆われた構造を有している。
回転体5は、図示しないステッピングモータ等の駆動源により、回転軸5aを中心に回転駆動可能なものであり、複数のアンテナ6と、各アンテナ6の受信信号を切り替える切替スイッチ7と、を有している。
本実施形態において、アンテナ6は、例えば3つ設けられている。図3に示すように、それぞれのアンテナ6−1、6−2、6−3は、回転軸5aを中心にして回転可能な回転体5に対して、同じく回転軸5aを中心点とする円C1の円周上に周方向に離間して配置されている。図3に示す例では、アンテナ6−1、6−2、6−3は、円C1の周方向へ互いに120°離間した位置に配置されている。
アンテナ6−1、6−2、6−3は、直交する3偏波のうちの互いに異なる1つの偏波をそれぞれ受信するようになっている。具体的に、図3の例では、アンテナ6−1、6−2、6−3は、それぞれ、X軸平行偏波アンテナ、Y軸平行偏波アンテナ、Z軸平行偏波アンテナとして用いられる構成となっている。
3つのアンテナ6−1、6−2、6−3の種別については、例えば、1つのスリーブアンテナと、2つのダイポールアンテナとを用いることが好ましい。図3に示す配置態様においては、X軸平行偏波アンテナ6−1及びY軸平行偏波アンテナ6−2としてダイポールアンテナが用いられ、Z軸平行偏波アンテナ6−3としてスリーブアンテナが用いられている。スリーブアンテナとしては、例えば、第2の実施形態で動作原理について説明している、同軸線を用いて作成されたスリーブアンテナ(図10参照)が適用できる。
3つのアンテナ6−1、6−2、6−3の図3に示す配置態様を実現するためのアンテナ取付態様としては、例えば、図4(a)及び(b)に示す態様がある。図4(a)は、図2の例と同様の取付態様であり、アンテナ6−1、6−2、6−3が、回転体5の回転軸5aと平行な周面5c上に、回転軸5aと直交する方向に放射状に突出した形態で取り付けられている。これに対し、図4(b)に取付態様では、アンテナ6−1、6−2、6−3が、回転体5の回転軸5aと直交する一方の端面5b上に、回転軸5aの方向に沿って突出した形態で取り付けられている。
アンテナ取付態様を図4(a)の態様とするか、図4(b)の態様とするかは、アンテナ6−1、6−2、6−3の受信信号から到来方向を推定する処理の形態を見据えて決めることができる。例えば、全方向からの受信電波を加味する必要がある場合には図4(b)に示す取付態様が望ましく、後方からの受信電波を加味する必要がない場合には図4(a)に示す取付態様でも対応できる。
図4(a)及び(b)に示す態様で回転体5に取り付けられた3つのアンテナ6−1、6−2、6−3は、回転体5の回転駆動により、互いの位置関係を保ったまま円C1の円周上をその周方向に移動可能であり、且つ、回転駆動の停止により円周上の任意の位置に停止させることができるようになっている。このような回転体5の駆動制御によれば、図4(a)及び(b)のいずれのアンテナ取付態様であっても、アンテナ6−1、6−2、6−3を、円C1の円周上を移動中に、該円周上の任意の一点(同位置:図中にP1で示す)で順次停止させることができる。これにより、回転体5を含むアンテナ装置10では、図4(c)に示すように、X軸平行偏波アンテナ6−1、Y軸平行偏波アンテナ6−2、及びZ軸平行偏波アンテナ6−3を用いて、XYZの3次元空間において位置(同位置)P1での直交3偏波の受信を実現可能となる。
3つのアンテナ6−1、6−2、6−3とともに回転体5を構成する切替スイッチ7は、アンテナ6−1、6−2、6−3の各受信信号を入力し、そのうちの1つ受信信号を選択的に出力するものであり、例えば、3対1切替スイッチで構成されている。切替スイッチ7の一端側には配管7aが連結されている。配管7aは、回転体5及び回転台8を通って連続的に延び、さらに回転台8の底面に沿って側面外方へと導出されている。配管7aには、アンテナ6及び切替スイッチ7と外部制御装置40とを電気的に接続するために同軸ケーブルが挿通されている。同軸ケーブルは、外部制御装置40から切替スイッチ7に対して切り換え制御信号を送る制御線と、切替スイッチ7により切り換えられた各アンテナ6の受信信号を外部制御装置40へと送信する信号線とを有する構造となっている。
回転台8は、その上面に、回転体5を回転可能に載置している。回転台8は、回転体5との間に、例えば、配管7aを内包するロータリージョイントが設けられ、一端面上で回転体5が回転駆動された場合でも、ロータリージョイントがそれに連動して回らないような構造を有している。これにより、配管7a内の同軸ケーブルによって、各アンテナ6及び切替スイッチ7と外部制御装置40との電気的接続を保つことが可能になっている。
電波吸収体9は、回転体5、及び回転台8に対する外部からの電磁波をシールドするためのものである。回転体5の端面5b及びアンテナ6の両端部を残して回転体5及び回転台8全体を覆う電波吸収材で構成されている。電波吸収材としては、例えば、誘電性塗料を含浸させた発泡ウレタン等が用いられる。
リファレンス用アンテナ装置20は、3偏波プローブ21a、21b、21c、切替器22を有する。リファレンス用アンテナ装置20は、固定位置に設置された3偏波プローブ21a、21b、21cの各受信信号を切替器22で順次切り換えて受信装置30に出力する。3偏波プローブ21a、21b、21cによる各受信信号は、アンテナ装置10の3偏波にそれぞれ対応する3つのアンテナ6−1、6−2、6−3の各受信信号と同様、周辺の無線装置60a、60bから送信された信号である。
受信装置30は、アンテナ6−1、6−2、6−3によりそれぞれ受信された各偏波の信号と、3偏波プローブ21a、21b、21cの受信信号とを入力し、周辺の無線装置60a、60bから到来する信号の到来方向を推定する処理を行う装置である。到来方向推定処理において、受信装置30は、リファレンス用アンテナ装置20から入力される3偏波プローブ21の受信信号から位相情報を生成し、アンテナ6−1、6−2、6−3の受信信号と位相情報とに基づいて電波到来方向の推定処理を実行するようになっている。
外部制御装置40は、アンテナ装置10、リファレンス用アンテナ装置20、受信装置30などの被制御装置に例えばネットワークを介して接続され、被制御装置の動作を統括的に制御するものである。外部制御装置40は、例えば、アンテナ装置10のアンテナ6−1、6−2、6−3の移動に係る制御、アンテナ6−1、6−2、6−3の受信信号及び3偏波プローブ21a、21b、21cの受信信号の取得に係る制御、受信装置30で3偏波プローブ21a、21b、21cの受信信号に基づいて位相情報を検出させ、該位相情報とアンテナ6−1、6−2、6−3の受信信号とに基づいて電波到来方向を推定させる信号処理を実行させる制御などの制御機能を有している。
次に、本実施形態に係る到来方向推定システム1の制御系の構成について図5を参照して説明する。なお、図5においては、便宜的に、アンテナ装置10が図4(b)に示すアンテナ取付態様を有する場合を例示しているが、図4(a)に示すアンテナ取付態様を有する場合も同様の制御系で対応できるものである。
図5に示すように、到来方向推定システム1において、受信装置30は、信号入力部31、信号処理部32、制御部33を有する。信号入力部31は、アンテナ装置10に配置された3つのアンテナ6のそれぞれの受信信号を入力し、信号処理部33に送出する。信号処理部32は、各アンテナ6の受信信号に基づき、周辺の無線装置60a、60b(図1参照)から到来する信号の到来方向を推測するための信号処理を行う。この信号処理において、信号処理部32は、リファレンス用アンテナ装置20から、3偏波プローブ21a、21b、21cの各受信信号を入力し、位相を検出する処理も実行する。制御部33は、信号入力部31及び信号処理部32の制御をはじめとして、受信装置30全体の制御を行うものである。制御部33は、データ処理部33aを設け、該データ処理部33aで各アンテナ6の受信信号と3偏波プローブ21a、21b、21cの各受信信号に基づいて到来方向推定処理を実行する構成、あるいは外部制御装置40からデータ処理部33aを制御し、到来方向推定処理を実行させる構成であってもよい。
外部制御装置40は、例えば、PC(パーソナル・コンピュータ)等のコンピュータ装置により構成され、制御部42、記憶部43、外部インターフェース(I/F)部44を有する制御装置本体部41と、操作部45及び表示部46を有している。
制御部42は、アンテナ移動制御部42a、到来方向推定処理部42bを有している。アンテナ移動制御部42aは、駆動源(例えば、ステッピングモータ)を駆動して回転体5を回転駆動し、各アンテナ6を、互いの位置関係を保ったまま、回転体5の回転方向(円C1の周方向)へ移動させるとともに、周方向の任意の位置P1で停止させる制御を行う。
到来方向推定処理部42bは、3偏波の測定位置として予め設定された円C1(図4参照)の円周上の任意の位置P1での各アンテナ6によるそれぞれの偏波の受信信号と、リファレンス用アンテナ装置20から送られてくる3偏波プローブ21a、21b、21cの受信信号から生成して位相情報とに基づき、周辺から到来する信号の到来方向を推定する処理を行う。この到来方向推定処理は、到来方向推定処理部42bで実行する構成に限らず、例えば、受信装置30の制御部33のデータ処理部33aを外部制御装置40から制御することで実行させる構成としてもよい。
記憶部43は、回転体5を回転駆動するための制御プログラム、到来方向推定処理を実行させるための制御プログラムなどの各種制御プログラム、その他の種々の情報を記憶している。
外部I/F部44は、アンテナ装置10、リファレンス用アンテナ装置20、受信装置30に対して電源や制御信号を供給するためのインターフェース機能を有している。
操作部45は、到来方向推定処理に係る設定パラメータや、処理の開始、あるいは終了コマンドなど各種情報を入力するための機能部であり、表示部46は、設定パラメータやコマンドなどを入力するための各種画面、到来方向推定結果などの各種情報を表示する機能部である。
上述した構成を有する到来方向推定システム1では、アンテナ装置10のアンテナ6−1、6−2、6−3で受信された信号が同軸ケーブルで切替スイッチ7に入力され、該切替スイッチ7で選択された信号がロータリージョイントを介して同軸ケーブルで外部に出力される。この出力信号が受信装置30で受信されると、該受信装置30では、同時にリファレンス用アンテナ装置20から入力される3偏波プローブ21a、21b、21cによる受信信号との差分がとられ、位相情報が取得される。その後、外部制御装置40では、受信装置30から取得した信号を任意のアルゴリズムで解析することにより、到来方向の探査を行うようになっている。
次に、本実施形態に係る到来方向推定システム1の到来方向推定処理動作について図6に示すフローチャートを参照して説明する。この説明においては、図3に示すアンテナ配置態様において、アンテナ6−1、6−2、6−3は、それぞれ、ダイポールアンテナ、ダイポールアンテナ、スリーブアンテナであり、かつ、アンテナ6−1がX軸平行偏波を受信し、アンテナ6−2がY軸平行偏波を受信し、アンテナ6−3がZ軸平行偏波を受信することを前提としている。また、アンテナ6−1、6−2、6−3を、それぞれ、第1のアンテナ、第2のアンテナ、第3のアンテナと呼称するものとする。
この到来方向推定処理が開始するためには、回転体5の3偏波に対応するアンテナ6を載置したアンテナ装置10を有する到来方向推定システム1をまず用意する(ステップS0)。
次いで、例えば、外部制御装置40の操作部45で本到来方向推定処理の開始操作行われると、外部制御装置40のアンテナ移動制御部42aが、アンテナ装置10における回転体5の駆動源を駆動して回転体5を回転させ、第1のアンテナ6−1を信号測定位置として予め設定されている位置P1(図3参照)に移動させる(ステップS1)。
次いで、到来方向推定処理部42bは、第1のアンテナ6−1の受信信号(X軸平行偏波信号)を受信装置30で受信させ、信号処理部32で信号処理させたうえで、該信号処理後の受信信号を記憶部34の所定記憶領域に一時的に記憶させるように制御する(ステップS2)。
引き続き外部制御装置40では、アンテナ移動制御部42aが、アンテナ装置10における回転体5の駆動源を駆動して回転体5をさらに回転させ、第2のアンテナ6−2を上記位置P1に移動させる(ステップS3)。
次いで、到来方向推定処理部42bは、第2のアンテナ6−2の受信信号(Y軸平行偏波信号)を受信装置30で受信させ、信号処理部32で信号処理させたうえで、該信号処理後の受信信号を記憶部34の所定記憶領域に一時的に記憶させるように制御する(ステップS4)。
引き続き外部制御装置40では、アンテナ移動制御部42aが、アンテナ装置10における回転体5の駆動源を駆動して回転体5をさらに回転させ、第3のアンテナ6−3を上記位置P1に移動させる(ステップS5)。
次いで、到来方向推定処理部42bは、第3のアンテナ6−3の受信信号(Z軸平行偏波信号)を受信装置30で受信させ、信号処理部32で信号処理させたうえで、該信号処理後の受信信号を記憶部34の所定記憶領域に一時的に記憶させるように制御する(ステップS6)。
さらに外部制御装置40では、到来方向推定処理部42bが、それまでに記憶しておいた第1のアンテナ6−1、第2のアンテナ6−2、及び第3のアンテナ6−3のそれぞれの受信信号を合成して電界強度を算出する(ステップS7)。
図6に示す一連の処理によって、直交3偏波を同じ位置P1で受信することが可能となり、正確な電界強度算出することができる。このとき、周辺から受信される信号の偏波が直線偏波であると仮定できる場合には、アンテナ6−1、6−2、6−3の1つを円偏波とすることで2回の測定により電界強度を決定することも可能である。さらに、位相情報が必要な場合は、別途用意したリファレンス用アンテナ装置20から3偏波プローブ21a、21b、21cの受信信号を取得し、差分をとることで位相情報を決定する方法の他、同期信号を送信器から入力する方法もある。
上述した方法で得られた信号に対して、さらに到来方向推定処理部42bは、ステップS7で算出された電界強度に基づいて電波の到来方向の探査を行う。探査のアルゴリズムとしては、例えば、周知のビームフォーマ法、MUSIC法、ESPRIT法などを用いることができる。到来方向の探査は、偏波ごとに行っても良いし、3偏波で受信された信号を合成して行ってもよい。
図6に示す到来方向推定処理では、アンテナ6−1、6−2、6−3を、順次、測定位置に設定されている位置P1まで移動させて、各受信信号を、順次、取得した段階で到来方向を探査する手順を繰り返す例について述べたが、これに限らず、アンテナ6−1、6−2、6−3の各受信信号を切替スイッチ7で切り替えつつまず取得しておき、その後、各受信信号を同じ位置P1で測定したものとしてデータ処理する方法を適用することも可能である。
上述したように、本実施形態に係る到来方向推定システム1は、同一の円C1の円周上に配置され、直交する3偏波のうちの互いに異なる偏波を受信可能な複数のアンテナ6を載置した回転体5と、回転体5を回転駆動し、各アンテナ6を、円の円周上を周方向に移動させるアンテナ移動制御部42aと、円周上の任意の位置P1での各アンテナ6によるそれぞれの偏波の受信信号に基づき、周辺から到来する信号の到来方向を推定する処理を行う到来方向推定処理部42bと、を有する構成である。
この構成により、本実施形態に係る到来方向推定システム1は、同位置で直交する3偏波の信号を受信することができ、同位置での3偏波の受信信号に基づいて到来方向を推定することで推定精度を向上させることができる。
また、本実施形態に係る到来方向推定システム1において、回転体5は、円の中心を通り周方向と直交する回転軸5aを有し、各アンテナ6は、回転体5の回転軸5aと直交する端面5bに、回転軸5a方向に突出して設けられる構成である。
この構成により本実施形態に係る到来方向推定システム1は、各アンテナ6により全ての偏波の信号を確実に受信させることができ、到来方向の推定精度を向上させることができる。
また、本実施形態に係る到来方向推定システム1において、回転体5は、回転軸5aと並行な周面5cに、回転軸5aに直交する方向へ突出して設けられる構成としてもよい。この構成により、本実施形態に係る到来方向推定システム1は、各アンテナ6の受信信号を取り込んで到来方向を推定するデータ処理部33aや、到来方向推定処理部42bでの処理方式に応じて、到来方向の推定精度が許容可能な範囲内で当該アンテナ配置態様、つまりアンテナ6を周面から突出させた配置態様を選択することができる。
また、本実施形態に係る到来方向推定システム1は、アンテナ6は3つ設けられ、当該各アンテナ6は、周方向に120度ずつ離間して配置される構成である。この構成により、本実施形態に係る到来方向推定システム1は、最少のアンテナ数で同位置での3偏波の受信ができ、信号処理が簡単で、かつ、低コストが図れる。
また、本実施形態に係る到来方向推定システム1において、3つのアンテナは、2つのダイポールアンテナと、1つのスリーブアンテナとで構成される。この構成により、本実施形態に係る到来方向推定システム1は、最少のアンテナ数でありながら、同位置での3偏波を確実かつ効率的に受信させることができる。
また、本実施形態に係る到来方向推定システム1において、3つのアンテナは、4.6GHz〜4.8GHzの周波数帯の信号を受信する構成である。この構成により、本実施形態に係る到来方向推定システム1、ローカル5Gとして使用が検討されている帯域のうち、低帯域側を対象として電波の到来方向の推定精度を向上させることができる。
また、本実施形態に係る到来方向推定方法は、同一の円C1の円周上に配置され、直交する3偏波のうちの互いに異なる偏波を受信可能な複数のアンテナ6を載置した回転体5を用意するステップ(S0)と、回転体5を回転駆動し、各アンテナ6を、円周上の任意の位置P1で停止可能に周方向に移動させる移動制御ステップ(S1、S3、S5)と、任意の位置P1での各アンテナ6によるそれぞれの偏波の受信信号に基づき、周辺から到来する信号の到来方向を推定する処理を行う到来方向推定処理ステップ(S2、S4、S6、S7)と、を含む構成を有している。
この構成により、本実施形態に係る到来方向推定方法は、複数のアンテナ6を載置した回転体5を用いて、同位置で直交する3偏波の信号を受信させることができ、同位置での3偏波の受信信号に基づいて到来方向を推定することで推定精度を向上させることができる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る到来方向推定システム1Aの構成について図7ないし図18を参照して説明する。本実施形態においては、第1の実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、重複した説明を割愛している。以下、第2の実施形態に特徴的な部分を主体に説明する。
本実施形態に係る到来方向推定システム1Aは、第1の実施形態に係る到来方向推定システム1のアンテナ装置10に代えて、図7に示す構成を有するアンテナ装置10Aを備えている。到来方向推定システム1Aは、アンテナ装置10A以外の構成としては、第1の実施形態に係る到来方向推定システム1と同等のリファレンス用アンテナ装置20、受信装置30、外部制御装置40(図1参照)を備えている。
図7に示すように、本実施形態に係る到来方向推定システム1Aにおいて、アンテナ装置10Aは、アンテナ部11、アンテナ駆動部15を具備している。
アンテナ部11は、回転体12と、複数のアンテナ13と、電波吸収体14を有している。回転体12は、回転軸12aを中心に回転駆動可能であって、本実施形態では例えば、図7、図8に示すように、円盤形状の部材で構成されている。
本実施形態において、複数のアンテナ13は、図8に示す配置態様で回転体12の盤面12b上に回転軸12aに沿って突出した形状で設けられている。図8に示すように、アンテナ13は、直交する3偏波をそれぞれ受信可能な3つのアンテナ13−1、13−2、13−3を一組として複数組設けられている。複数組の3つのアンテナ13−1、13−2、13−3は、回転体12の盤面12bにおいて、回転軸12aに一致する中心を有する円C2の円周上に、該円C2の周方向に均等な角度ずつ離間して配置されている。
各組のアンテナ13−1、13−2、13−3は、例えば、それぞれ、X軸平行偏波アンテナ、Y軸平行偏波アンテナ、Z軸平行偏波アンテナとして用いられるようになっている。アンテナ13−1、13−2、13−3の種別については、例えば、1つのスリーブアンテナと、2つのダイポールアンテナとを用いることが好ましい。図8に示す配置態様においては、X軸平行偏波アンテナ13−1及びY軸平行偏波アンテナ13−2としてダイポールアンテナが用いられ、Z軸平行偏波アンテナ13−3としてスリーブアンテナが用いられている。
但し、本実施形態でアンテナ13−1、13−2、13−3として用いられるダイポールアンテナ、スリーブアンテナは、それぞれがプリント基板で実現されたプリント基板ダイポールアンテナ(図17参照)、プリント基板スリーブアンテナ(図15参照)である。
本実施形態に係るアンテナ装置10Aは、図8に示すアンテナ配置態様を有することで、回転体12の回転駆動により、各アンテナ13を、互いの位置関係を保ったまま円C2の円周上をその周方向に移動可能であり、且つ、回転駆動の停止により円周上の任意の位置に停止させることができるようになっている。これにより、本実施形態においても、第1の実施形態と同様、各組ごとにアンテナ13−1、13−2、13−3を用いて、XYZの3次元空間において任意の位置P1での直交3偏波の受信を行うことができる。
アンテナ部11において、電波吸収体14は、アンテナ13によって外部からの電磁波が受信されることを防止する(電磁波をシールドする)ためのものである。電波吸収体14は、回転体12の盤面12b上に、アンテナ13と同等以上の高さを有する電波吸収材を、全てのアンテナ13の配置領域を外側から覆うように周回させた構造となっている。
アンテナ装置10Aにおいて、アンテナ駆動部15は、中空駆動テーブル16、ロータリージョイント17、台座部18を有する。中空駆動テーブル16は、中空部16aを有し、図示しないステッピングモータ等の駆動源により回転軸12aを中心にして回転駆動可能な円筒形部材によって構成されている。中空駆動テーブル16は回転体12と一体化して回転駆動し得る構造となっている。中空駆動テーブル16は、例えば、中空ロータリーアクチュエータにより実現可能である。
ロータリージョイント17は、アンテナ部11と受信装置30及び外部制御装置40との間を電気的に接続するための機構部である。ロータリージョイント17は、例えば、図10に示すように、長さ方向の少なくとも一部分が円筒体形状(円筒形状部分17a)を有し、長手方向に沿って両端部間を貫く配管17bが埋設された円筒体部材によって構成されている。
ロータリージョイント17は、アンテナ駆動部15としての組立時には、図7、図9に示すように、円筒形状部分17aが中空駆動テーブル16の中空部16a内に中空駆動テーブル16の回転を妨げないように嵌装される構造となっている。ここでロータリージョイント17は、中空部16a内に嵌装された円筒形状部分17aが、回転軸12aに沿って、例えばアンテナ部11における回転体12上方の所定位置に設けられる電線集線位置12cまで到達する長さを有するものとなっている。
電線集線位置12cは、アンテナ部11における各アンテナ13から受信信号を送る信号線の端部と、各アンテナ13の受信信号を切り換える切替スイッチ(図示せず)の切り換え動作を制御する制御線の端部等が一箇所に集約された位置を指している。一方で、ロータリージョイント17の2つの配管17bには、上述した信号線の端部、及び制御線の端部にそれぞれ一端が接続された同軸ケーブル17c、17dが挿通されている。同軸ケーブル17cは、例えば、アンテナ13が受信した信号(RF信号)を受信装置30に取り込むためのチャネル(チャネル1)として用いられるようになっている。同軸ケーブル17dは、例えば、外部制御装置40からアンテナ13に対して切替スイッチの電源と制御信号を供給するためのチャネル(チャネル2)として用いられるようになっている。
上述した構造により、ロータリージョイント17は、円筒形状部分17aが中空駆動テーブル16の中空部16a内に嵌装されている状態で回転体12、中空駆動テーブル16が回転駆動されても、それに連動して同軸ケーブル17c、17dが回らないようになっている。
台座部18は、ベース部材18aと、ベース部材18aの上面に形成され、例えば円筒形状の中空部18cを有する台座部材18bと、を有する。台座部材18bは、上端面が中空駆動テーブル16の下端面に全周に渡って当接し、該上端面によって中空駆動テーブル16を摺動可能に支えるとともに、円筒形状部分17aが中空駆動テーブル16の中空部16aに嵌装されている状態のロータリージョイント17の他端部を中空部18c内に収容するようになっている。
次に、アンテナ装置10Aに用いるアンテナ素子の選定について図10〜図14を参照して説明する。本実施形態に係る到来方向推定システム1Aのアンテナ装置10Aは、図7に示すように、アンテナ素子の下方から給電線路を伸ばし、ある程度の高さにアンテナ素子を配置する構造である。この構造から、水平方向に一様な指向性を持つためには、給電方向に対して平行なアンテナ素子であるスリーブアンテナを採用することがまず考えられる。
図10に同軸線を用いて作成するスリーブアンテナの原理図を示す。スリーブアンテナは、図10(a)に外観構造、図10(b)に断面構造を示すように、同軸線の誘電体が一部取り除かれ、片側の導体として中心導体を露出させた構造であり、同軸線の外導体を折り返すように加工することでもう片側の導体を作成する。この時、L1とL2を1/4波長程度とすることで、半波長ダイポールと同様な構造を作り出すことができる。同軸線(図7、図9における同軸ケーブル17c、17d参照)は不平衡な線路であり、ダイポール型のアンテナに給電するためには,平衡不平衡変換器(バラン)を介す必要がある。しかしながら、スリーブアンテナでは、外導体を折り返した部分と同軸線の外導体の間が、チョーク構造となることから同軸線外導体に流れる電流が抑制され、バランを必要とせずにアンテナ素子に給電することが可能である。
このような観点から、図10に示すスリーブアンテナは、第1の実施形態に係るアンテナ装置10のアンテナ6として用いるには好適である。
一方、本実施形態に係る到来方向推定システム1Aでは、到来方向の推定に係る電波の測定時間を短縮することが想定されており、例えば、図8に示すように、アンテナ装置10Aでのアンテナ素子間の離間距離を極力小さくし、より多くのアンテナ素子を配列できることが望まれている。
さらには、到来方向推定システム1の使用周波数帯域として、ローカル5Gとして使用が検討されている4.6GHz〜4.8GHz及び28.2GHz〜29.1GHzの2つの帯域のうち、28.2GHz〜29.1GHzの帯域が想定されていることを加味すると、本実施形態においては、加工精度や量産性の観点からも、同軸線を加工したスリーブアンテナ(図10参照)を用いることは困難であるため、当該スリーブアンテナをプリント基板で実現することが検討された。
まず始めに、本件発明者らは、本実施形態に係るアンテナ装置10Aで使用することを想定し、各アンテナ素子の満たすべき条件を次のように規定した。
A)半波長以下の間隔でアンテナ基板を配置可能であること(29.1GHzでは約5.2mm以下の間隔)。
B)別に設置したアンテナの指向性を妨げないため、金属パターンの面積を可能な限り削減すること。
C)アンテナ素子は、プリント基板の下端より100mm程度上方に設置すること。
D)別に設置したアンテナへの影響を低減するため、プリント基板の材料は高誘電率の基板ではないこと。
E)同軸コネクタにより給電可能であること。
同軸線路で作成したスリーブアンテナをプリント基板上で実現する場合、図11(a)のように線路形状が同軸線路と同様に中心導体と外部導体により構成されるコプレーナ線路(CPW : Coplanar Waveguide)を用いることが想定される。しかしながら、CPWは外部導体を同電位とするため図11(b)のようなGNDパターンを用いた形状にする場合が多く、B)の条件を満たすことが困難である。また、マイクロストリップライン(MSL:Micro Strip Line)を用いる場合も同様にGNDパターンを必要とするためB)の条件を満たすことは困難である。
この点を解決し、A)〜E)の条件を満たすアンテナとして、平行平板線路(PPL: Parallel Plate Line)を用いたスリーブアンテナの検討に入った。平行平板線路131aは、図12に示すように基板の上下をストリップラインで挟む構成であり、平衡給電が可能な線路である。GNDパターンを必要としないため、B)の条件を満たすことができる。また、平衡給電を行うため、ダイポール型のアンテナの給電線路として適している。
しかしながら、E)の条件からアンテナへの給電は、同軸コネクタを介して行うため、不平衡な線路である同軸線から平衡な線路であるPPLへ変換するバランが別途必要となる。このため、次にバランについて検討した。
(テーパバラン)
バランには、集中定数回路によって作成されるものや、給電線路長を変更して作成するものなどが存在する。提案スリーブアンテナでは、B)の条件より、給電線路長が長いことからテーパバランを採用する。テーパバランは、図13に示すようにMSLとPPLの間でGNDパターンを滑らかに狭めて接続することにより作成するバランであり、ある程度の線路長が必要となるものの、広帯域に平衡不平衡変換を行うことができる。MSLと同軸コネクタの接続は容易であるため、E)の条件を満たすことができる。
(アンテナ素子)
図14にアンテナ素子の金属パターンを示している。図14に示した同軸線によるスリーブアンテナの断面図と同様な形状を作成するため、平行平板線路131aの片面を延長し、もう片面の線路に折り返すように曲げた形状の線路を装荷した。このパターンのL1とL2を1/4波長程度とすることでスリーブアンテナとして動作させることができる。
本件発明者らは、上述した検討結果より、シミュレータを用いてスリーブアンテナの設計を行った結果、アンテナ装置10Aに実装するためのアンテナ素子として、図15に示すプリント基板アンテナ13A、図17に示すプリント基板アンテナ13Bを開発するに至った。プリント基板アンテナ13A、13Bは、それぞれ、本発明のプリント基板スリーブアンテナ、プリント基板ダイポールアンテナを構成している。
図15に示すように、プリント基板アンテナ13Aは、長尺のプリント基板130の表裏両面にPPLを構成する配線パターン(金属パターン)131が形成されたものである。図15(a)はプリント基板130の表面側の配線パターン131を示し、図15(b)は同じく裏面側の配線パターン131を示している。
配線パターン131は、プリント基板130の基端側から長手方向へ順番に、MSL領域132、バラン領域133、アンテナ素子領域134が連続して形成されている。バラン領域133には、上述した検討段階で好ましいとされたテーパー形状のバランに対応する配線パターンが形成されている。
また、アンテナ素子領域134には、図16に示すように、上述した検討段階で好ましい形状とされたアンテナ素子に対応する配線パターン131が形成されている。なお、図15に示すプリント基板アンテナ13Aは、アンテナ素子領域134がスリーブアンテナの機能を果たす構成を有している。
図16(a)は図15(a)に示すプリント基板130表面側のアンテナ素子の配線パターン131を拡大して示す図であり、図16(b)は図15(b)に示すプリント基板130裏面側のアンテナ素子の配線パターン131を拡大して示す図である。プリント基板130の表面側と裏面側の配線パターン131はスルーホール137により電気的に接続されている。ここで図16(a)と図16(b)とは、プリント基板130の表裏両面を裏返した状態ではなく、便宜的に、一方から他方を透視して見た状態を示している。この関係は、図18(a)と図18(b)に示すプリント基板ダイポールアンテナの表裏両面の配線パターン131についても同様である。
図16(a)及び(b)に示すように、プリント基板アンテナ13Aは、同軸線によるスリーブアンテナ(図10参照)の断面図と同様な形状を作成するため、平行平板線路131aの片面を延長し、もう片面の線路に折り返すように曲げた形状の線路を装荷した構造を有している。このパターンのL1とL2を1/4波長程度とすることでスリーブアンテナとして動作させることができる。
プリント基板130の基端側には、MSL領域132の反対側方向へ延設された取付部材135と、MSL領域132の配線パターンに電気的に接続された同軸コネクタ136と、が設けられている。取付部材135は、当該プリント基板アンテナ13Aを回転体12のアンテナ取付部に取り付けるための取付具の機能を果たす。同軸コネクタ136は、ロータリージョイント17内の配管7aを通って配線される同軸ケーブル17c、17dの先端部(相手側同軸コネクタ)に電気的に接合可能な構造を有している。
同様にして、本件発明者らは、上述した検討結果より、シミュレータを用いてダイポールアンテナの設計を行った結果、図17に示す形態を有するプリント基板ダイポールアンテナとしてのプリント基板アンテナ13Bを開発するに至った。プリント基板アンテナ13Bは、アンテナ素子領域134がダイポールアンテナの機能を果たす構成である。
図17(a)はプリント基板アンテナ13Bにおけるプリント基板130の表面側の配線パターン131を示し、図17(b)は同じく裏面側の配線パターン131を示している。図18(a)は図17(a)に示すプリント基板130表面側のアンテナ素子の配線パターンを拡大して示す図であり、図18(b)は図17(b)に示すプリント基板130裏面側のアンテナ素子の配線パターンを拡大して示す図である。プリント基板130の表面側と裏面側の配線パターン131はスルーホール137により電気的に接続されている。図18(a)及び(b)に示すように、プリント基板アンテナ13Bは、ダイポールアンテナとしての作動を可能にすべく、平行平板線路131aの片面の線路ともう片面の線路の端部を互いに反対方向に曲げた形状の線路を装荷した構造を有している。
次に、本実施形態に係る到来方向推定システム1Aの到来方向推定処理動作について図5に示すフローチャートを援用して説明する。この説明においては、アンテナ装置10Aでのアンテナ配置態様(図7参照)において、各組において、アンテナ13−1、13−2としてはプリント基板ダイポールが用いられ、アンテナ13−3としてはプリント基板スリーブアンテナが用いられているものとする。また、アンテナ13−1がアンテナ13−3に対して直交する偏波(X軸平行偏波)を受信し、アンテナ13−2がアンテナ13−1に対して直交する偏波(Y軸平行偏波)を受信し、アンテナ13−3がアンテナ13−2に対して直交する偏波(Z軸平行偏波)を受信することを前提としている。
本実施形態に係る到来方向推定システム1Aでは、3偏波をそれぞれ受信可能な1つのアンテナ13−1、13−2、13−3を一組とする複数組のアンテナ13が載置されたアンテナ装置10Aを有する到来方向推定システム1Aが用意され(図6のステップS0参照)、到来方向推定処理が開始されると、外部制御装置40によって受信装置30を制御することで、最初の一組のアンテナ13−1、13−2、13−3を対象に、順次、同じ位置P1(図8参照)まで移動させ、当該位置P1でアンテナ13−1、13−2、13−3のそれぞれの受信信号を信号処理部32で信号処理して記憶させる処理が実施される。この処理は、例えば、図6に示すステップS1〜S6の処理によって実現できる。
次に、外部制御装置40では、到来方向推定処理部42bが、それまでに記憶した各組のアンテナ13−1、アンテナ13−2、及びアンテナ13−3のそれぞれの受信信号に基づいて到来方向推定処理部42bが電界強度を測定する処理を実行する。この処理は、例えば、図6に示すステップS7の処理によって実現できる。
上述した1組のアンテナ13−1、13−2、13−3を移動させつつそれぞれの受信信号を記憶させる処理と、これらアンテナ13−1、13−2、13−3の受信信号に基づく電界強度測定処理とを、全ての組について実施することにより、電界強度の算出と到来方向推定処理が行える。なお、本実施形態においても、各組のアンテナ13−1、13−2、13−3の各受信信号を切替スイッチで切り替えつつまず取得しておき、その後、各受信信号を位置P1で測定したものとしてデータ処理する方法を適用することが可能である。また、電波の到来方向の探査のアルゴリズムとしては、第1の実施形態と同様、ビームフォーマ法、MUSIC法、ESPRIT法などが適用可能であることはいうまでもない。
本実施形態に係る到来方向推定システム1Aでは、アンテナ装置10Aにおけるアンテナ13の配置態様を図8に示すような態様としたため、回転体12を1回転させずに全周囲のデータを受信することができ、到来方向推定処理の高速化が図れる。
上述したように、本実施形態に係る到来方向推定システム1Aは、同一の円C2の円周上に配置され、直交する3偏波のうちの互いに異なる偏波を受信可能な複数のアンテナ13を載置した回転体12と、回転体12を回転駆動し、各アンテナ13を、円C2の円周上を周方向に移動させるアンテナ移動制御部42aと、円周上の任意の位置P1での各アンテナ13によるそれぞれの偏波の受信信号に基づき、周辺から到来する信号の到来方向を推定する処理を行う到来方向推定処理部42bと、有し、アンテナ13は、3偏波をそれぞれ受信可能な3つのアンテナ13−1、13−2、13−3を一組として複数組設けられ、周方向に均等な角度ずつ離間して配置される構成である。
この構成により、本実施形態に係る到来方向推定システム1Aは、回転体12を1回転させることなく全周囲の偏波(3偏波)を受信でき、到来方向の推定処理の高速化を図ることができる。
また、本実施形態に係る到来方向推定システム1Aにおいて、アンテナ13は、プリント基板130の表面側のアンテナ配線パターン131と裏面側の配線パターン131とによって平行平板線路131aが形成されたアンテナ素子領域134を有するプリント基板アンテナ13A、13Bが用いられる構成を有する。
この構成により、本実施形態に係る到来方向推定システム1Aは、アンテナ13が小型、安価で済み、しかも量産性に優れるため、アンテナ装置10Aの限られたスペースに多数配置が可能となり、推定処理の高速化に加え、アンテナ装置10Aの小型化、低コスト化も図れる。
また、本実施形態に係る到来方向推定システム1Aにおいて、プリント基板アンテナ13A、13Bは、アンテナ素子領域134からアンテナ長手方向に連続的形成され、同軸線から平行平板線路への変換を行うバラン領域133がさらに設けられている。
この構成により、本実施形態に係る到来方向推定システム1Aは、プリント基板アンテナ13A、13Bを同軸ケーブル17c、17dに接続する場合に広帯域に平衡不平衡変換を行うことができ、プリント基板アンテナ13A、13Bを複数組用いるアンテナ装置10Aを容易に実現できる。
また、本実施形態に係る到来方向推定システム1Aにおいて、プリント基板アンテナ13A、13Bは、アンテナ素子領域134がスリーブアンテナの機能を果たすプリント基板スリーブアンテナと、アンテナ素子領域134がダイポールアンテナの機能を果たすプリント基板ダイポールアンテナが用いられている。
この構成により、本実施形態に係る到来方向推定システム1Aは、各組ごとにプリント基板スリーブアンテナとプリント基板ダイポールアンテナを混在して配置することで、処理速度の高速化を図りながら、推定精度を向上させることがきる。
また、本実施形態に係る到来方向推定システム1Aにおいて、一組のアンテナ13は、2つのプリント基板ダイポールアンテナと、1つのプリント基板スリーブアンテナで構成されている。
この構成により、本実施形態に係る到来方向推定システム1Aは、複数組のアンテナ13を装備しながら、それぞれの組において各アンテナ13が同位置での3偏波を確実かつ効率的に受信させることができる。
また、本実施形態に係る到来方向推定システム1Aにおいて、各組のアンテナ13は、28.2GHz〜29.1GHzの周波数帯の信号を受信する構成である。この構成により、本実施形態に係る到来方向推定システム1Aは、ローカル5Gとして使用が検討されている帯域のうち、高帯域側を対象として電波の到来方向の推定精度を向上させることができる。