JP2021095872A - 内燃機関の製造方法および内燃機関 - Google Patents

内燃機関の製造方法および内燃機関 Download PDF

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Abstract

【課題】内燃機関の燃焼室の壁面に、剥がれ等のない優れた品質の断熱層を容易に形成する。【解決手段】本発明の内燃機関の製造方法は、断熱層の材料である被膜材30Aを燃焼室壁面に塗布する塗布ステップと、被膜材30Aが未硬化の状態でピストン5、気筒形成部材(3,4)、および吸気通路20等を組み付ける組立ステップと、混合気を形成する混合気形成装置40を吸気通路20に接続する接続ステップと、混合気が燃焼する直前の燃焼室Cの圧力である燃焼直前圧力を代表する指標筒内圧が所定の閾値以上になると予測される場合に、筒内圧調整装置を燃焼直前圧力が低下する方向に作動させる筒内圧低下ステップと、この筒内圧調整装置の作動完了後に、混合気形成装置40により形成された混合気を燃焼室Cで燃焼させてピストン5を往復動させることにより、被膜材30Aを加熱して硬化させる焼成ステップとを含む。【選択図】図5

Description

本発明は、内側に気筒を形成する気筒形成部材と、気筒内に往復動可能に収容されたピストンと、気筒とピストンとにより画成された燃焼室に導入される吸気が流通する吸気通路と、燃焼室を規定する燃焼室壁面の少なくとも一部を覆いかつ当該燃焼室壁面よりも熱伝導率の低い断熱層とを備えた内燃機関およびその製造方法に関する。
内燃機関の熱効率を向上させること等を目的として、燃焼室の壁面を断熱層で覆うことが提案されている。例えば、下記特許文献1には、燃焼室を規定する基材の表面に、基材よりも熱伝導率の低い断熱層を形成した内燃機関が開示されている。
具体的に、特許文献1では、上記断熱層を形成する方法として、当該断熱層の材料である被膜材(Si系樹脂、中空粒子、希釈溶剤などの混合物)を基材の表面に塗布するとともに、その状態でエンジンを組み立てて燃焼試験(着火試験)を行うことが提案されている。被膜材が塗布されたエンジンを燃焼試験に供すれば、その燃焼熱によって上記被膜材の表面が酸化(硬化)し、これによって上記断熱層が形成される。
このような特許文献1の断熱層の形成方法によれば、断熱層を形成するための工程の一部をエンジンの組立後に通常行われる燃焼試験により代用できるので、断熱層の形成にかかる工数を削減できる等の利点がある。
特開2014−1718号公報
しかしながら、本願発明者等の研究によれば、上記特許文献1のように混合気の燃焼熱で被膜材を加熱する方法により断熱層を形成した場合、断熱層の品質が必ずしも安定せず、断熱層の一部に剥がれが生じるケースがあることが判明した。その原因を探ったところ、本願発明者等は、燃焼試験中にインジェクタから供給された燃料の一部が液滴のまま被膜材に付着することが有力な原因であることをつきとめた。すなわち、液滴状態の燃料が被膜材に付着すると、付着した燃料により被膜材が希釈もしくは溶解され(以下、単に希釈という)、この希釈された部分(燃料が付着した部分)において被膜材の粘度が低下する結果、当該部分の被膜材が燃焼試験時の燃焼圧力を受けて飛散し、上述した剥がれを招いているものと考えられる。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、剥がれ等のない優れた品質の断熱層を容易に形成することが可能な内燃機関の製造方法等を提供することを目的とする。
前記課題を解決するためのものとして、本発明は、内側に気筒を形成する気筒形成部材と、気筒内に往復動可能に収容されたピストンと、気筒とピストンとにより画成された燃焼室に導入される吸気が流通する吸気通路と、燃焼室を規定する燃焼室壁面の少なくとも一部を覆いかつ当該燃焼室壁面よりも熱伝導率の低い断熱層とを備えた内燃機関を製造する方法であって、前記断熱層の材料である被膜材を前記燃焼室壁面に塗布する塗布ステップと、前記被膜材が未硬化の状態で前記気筒形成部材に前記ピストンを組み付けるとともに前記吸気通路を前記気筒形成部材に組み付ける組立ステップと、燃料と空気とが混合した混合気を形成する混合気形成装置を前記吸気通路に接続する接続ステップと、混合気が燃焼する直前の前記燃焼室の圧力である燃焼直前圧力を代表する指標筒内圧を求める取得ステップと、求めた前記指標筒内圧が所定の閾値以上である場合に、前記指標筒内圧が前記閾値未満である場合に比べて前記燃焼直前圧力が低下するように、当該燃焼直前圧力を調整可能な筒内圧調整装置を作動させる筒内圧低下ステップと、前記筒内圧低下ステップによる前記筒内圧調整装置の作動完了後に、前記混合気形成装置により形成された混合気を前記燃焼室で燃焼させて前記ピストンを往復動させることにより、前記被膜材を加熱して硬化させる焼成ステップとを含む、ことを特徴とするものである(請求項1)。
なお、本発明における指標筒内圧、つまり混合気が燃焼する直前の燃焼室の圧力(燃焼直前圧力)を代表する値としては、燃焼直前圧力に密接に関連(比例)する種々の時期の筒内圧を採用することが可能である。例えば、圧縮上死点でのモータリング圧力(混合気が燃焼しないまま圧縮上死点まで達したときの圧力)を指標筒内圧として求めてもよいし、燃焼直前圧力そのもの(火花点火式エンジンの場合であれば点火プラグの点火時期における筒内圧)を指標筒内圧として求めてもよい。さらには、吸気弁の閉時期以降の特定のクランク角における筒内圧を指標筒内圧として求めてもよい。
本発明によれば、燃焼室壁面に塗布された被膜材が、ピストンおよび気筒形成部材を含む主要部品の組み立て後に実施される運転時の燃焼熱を利用して焼成(硬化処理)されるので、例えば当該焼成のための運転(焼成ステップ)を、内燃機関の製造過程で通常行われる試験運転(燃焼試験)と兼ねることにより、被膜材の焼成つまり断熱層の形成にかかる工数および費用を削減することができる。
また、焼成ステップでは混合気形成装置で形成された混合気が吸気通路を通じて燃焼室に供給されるとともに、当該焼成ステップの前の筒内圧低下ステップにより燃焼直前圧力を低下させる操作が行われるので、混合気中の燃料が凝縮して燃焼室壁面の被膜材に付着するのを効果的に抑制することができる。
すなわち、内燃機関に付属の燃料噴射装置(後述するインジェクタ)から燃焼室に燃料を噴射するよりも、混合気形成装置で形成された混合気を吸気通路を通じて燃焼室に供給した方が、燃焼室壁面の被膜材に燃料が液滴のまま付着する可能性は低くなる。これは、混合気形成装置から燃焼室に至るまでの間に燃料の気化が十分に進行することが期待されるからである。ただし、燃焼直前圧力を代表する指標筒内圧が高くなる条件のときは、燃焼が始まるよりも前に筒内圧が燃料の凝縮(液滴化)が起きるような圧力(飽和圧力)にまで上昇することがあり、このような圧力条件では、燃焼室に導入された混合気中の燃料が凝縮して被膜材に液滴のまま付着するおそれがある。これに対し、本発明では、指標筒内圧が閾値以上になると予測される場合に、燃焼直前圧力を低下させる操作が先に行われた状態で混合気形成装置から燃焼室に混合気が供給されるので、燃焼直前圧力が飽和圧力に達する確率を低減でき、前記のような燃料の凝縮ひいては被膜材への燃料の付着を効果的に抑制することができる。このことは、付着した燃料(特に燃料に含まれるトルエン)によって未硬化の被膜材が希釈される可能性が低減されることを意味する。したがって、混合気の燃焼による大きな圧力(燃焼圧)が被膜材に作用したとしても、被膜材に生じる形状変化を最小限に抑えることができ、硬化後の被膜材からなる断熱層の品質を良好に確保することができる。
好ましくは、前記筒内圧調整装置は、前記吸気通路と前記燃焼室とを連通する吸気ポートを開閉する吸気弁の作動タイミングを変更可能なバルブ可変機構を含み、前記筒内圧低下ステップでは、前記吸気弁の作動タイミングを、前記指標筒内圧が前記閾値未満である場合の作動タイミングに比べて、前記気筒の有効圧縮比が低下する方向に変更する(請求項2)。
この態様では、バルブ可変機構を用いて有効圧縮比を低下させることにより、燃焼直前圧力を低下させて燃料の凝縮を抑制することができる。
前記筒内圧調整装置は、前記吸気通路に開閉可能に設けられたスロットル弁を含むものであってもよい。この場合、前記筒内圧低下ステップでは、前記スロットル弁の開度を、前記指標筒内圧が前記閾値未満である場合の開度に比べて低下させるとよい(請求項3)。
この態様では、燃焼室に導入される吸気量をスロットル弁を用いて減らすことにより、燃焼直前圧力を低下させて燃料の凝縮を抑制することができる。
本製造方法は、前記焼成ステップの後、前記筒内圧調整装置を前記燃焼直前圧力が増大する方向に作動させる筒内圧増大ステップと、前記筒内圧増大ステップによる前記筒内圧調整装置の作動完了後に、前記燃焼室で混合気を燃焼させる後段焼成ステップとをさらに含むことが好ましい(請求項4)。
このように、焼成ステップから後段焼成ステップへの移行時に燃焼直前圧力を増大させるようにした場合には、剥がれ等の不具合を抑制する上述した効果を担保しながら、被膜材の内部の硬化(焼成)を促進することができ、断熱層の形成に要する工数を削減することができる。すなわち、被膜材の硬化は内部よりも表面で速く進行する。一方で、被膜材の表面が十分に硬化すれば(内部は未硬化であっても)、燃料の付着による被膜材の希釈は起こらず、燃焼圧により被膜材の一部が飛散するような事態は避けられると考えられる。この態様では、後段焼成ステップへの移行時に燃焼直前圧力が増大されるので、被膜材の表面が十分に硬化したタイミングで後段焼成ステップに移行することにより、被膜材の一部が飛散する前記のような事態を避けながら、燃焼中の筒内圧の増大によって燃焼ガスから被膜材への熱伝達率を高めることができ、未硬化である被膜材の内部の硬化速度を速めることができる。これにより、被膜材を全体的に硬化させるのに要する時間を短縮することができ、断熱層の品質を担保しつつその形成を効率化することができる。
前記後段焼成ステップでは、前記焼成ステップのときよりも多くの混合気を前記燃焼室で燃焼させることが好ましい(請求項5)。
この態様では、上述した焼成ステップにおいて供給される混合気の量(換言すれば燃料の量)が、その後に実施される後段焼成ステップのときよりも減らされるので、未硬化である被膜材の表面に凝縮した燃料が付着する可能性をより低減することができ、断熱層に剥がれ等の不具合が生じるのを高い確率で回避することができる。
逆に、後段焼成ステップでは燃料の噴射量が増やされるので、当該噴射量の増大によって燃焼熱(加熱能力)を高めることができる。このことは、上述した有効圧縮比の増大と相俟って、未硬化である被膜材の内部の硬化速度をより速めることにつながる。これにより、被膜材を全体的に硬化させるのに要する時間をより短縮でき、断熱層の形成を十分に効率化することができる。
前記焼成ステップおよび前記後段焼成ステップでは、理論空燃比の混合気が形成されるように燃料の噴射量を調整することが好ましい(請求項6)。
この態様では、焼成ステップおよび後段焼成ステップにおいて燃焼ガスの温度が可及的に高められるので、上述した被膜材の硬化をより促進することができる。
好ましくは、前記内燃機関は、前記燃焼室に燃料を供給可能なインジェクタを備え、前記後段焼成ステップでは、前記吸気通路から前記混合気形成装置を取り外した状態で、前記インジェクタから噴射された燃料と空気とが混合された混合気を前記燃焼室で燃焼させる(請求項7)。
このように、後段焼成ステップにおける混合気の燃焼を混合気形成装置を取り外した状態で(内燃機関に付属のインジェクタを用いて)行うようにした場合には、取り外した混合気形成装置を製造中の他の同種の内燃機関の吸気通路に接続することにより、被膜材を焼成するための運転を複数の内燃機関について並列的に行うことができる。このため、混合気形成装置の数を特段に増やさなくても、多数の同種の内燃機関を効率よく製造することができる。
好ましくは、前記内燃機関は、前記燃焼室内の混合気に点火する点火プラグを備え、前記後段焼成ステップでは、前記焼成ステップのときよりも前記点火プラグによる点火時期を進角させる(請求項8)。
この態様では、後段焼成ステップよりも前の焼成ステップにおいて混合気への点火時期が遅角されるので、モータリング圧力(燃焼がなかった場合の燃焼室の圧力)が最大となる圧縮上死点よりも遅れた時期に混合気を燃焼させ始めることができ、燃焼圧の最大値(最大筒内圧)を低く抑えることができる。これにより、表面が未硬化の被膜材が燃焼圧により変形するような事態をより高い確率で回避することができ、断熱層の品質を良好に確保することができる。
好ましくは、前記後段焼成ステップは、前記焼成ステップの開始からの経過時間が予め定められた所定時間に達したときに開始される(請求項9)。
この態様では、焼成ステップから後段焼成ステップへの移行を簡単な方法で決定することができる。
本製造方法は、前記焼成ステップにより焼成される前記被膜材の表面の硬化度合いを判定する判定ステップをさらに含んでいてもよい。この場合、前記判定ステップで前記被膜材の表面の硬化が完了したと判定されたときに、前記焼成ステップから前記後段焼成ステップに移行することが好ましい(請求項10)。
被膜材の表面の硬化が完了すれば、仮に燃料が付着しても被膜材の希釈は起きないので、焼成ステップにより被膜材の燃料の付着を抑制する必要性は薄れる。この態様では、被膜材の表面の硬化が完了したタイミングが判定され、判定されたタイミングで焼成ステップから後段焼成ステップへの移行が行われるので、燃焼圧による被膜材の飛散を回避する上述した効果を担保しつつ、燃料噴射の態様を適切に切り替えることができる。なお、被膜材の表面の硬化が完了したタイミングは、例えば排気ガス中の希釈剤の含有量を検出するといった直接的な方法で判定してもよいし、予め実験的に求めた期間が経過したことを確認するという間接的な方法で判定してもよい。
また、本発明は、上述した製造方法により製造された内燃機関を提供するものである(請求項11)。
以上説明したように、本発明によれば、内燃機関の燃焼室の壁面に、剥がれ等のない優れた品質の断熱層を容易に形成することができる。
本発明の一実施形態にかかる製造方法により製造される内燃機関の概略構成を示すシステム図である。 上記内燃機関の主要部の断面図である。 上記内燃機関の製造方法の具体的手順を示すフローチャートである。 ピストン冠面に被膜材を塗布する様子を説明する説明図である。 上記被膜材を焼成するための運転時におけるエンジンの構成を示す概略システム図である。 上記被膜材を焼成するための運転時における各種パラメータの時間変化を示すタイムチャートである。 上記実施形態の変形例を説明するための図6対応図である。
[エンジンの全体構成]
図1は、本発明の一実施形態にかかる製造方法により製造される内燃機関の概略構成を示すシステム図であり、図2は、内燃機関の主要部の断面図である。本図に示される内燃機関(以下、単にエンジンという)は、自動車等の車両に動力源として搭載される4サイクルの火花点火式ガソリンエンジンであって、エンジン本体1と、エンジン本体1に導入される吸気が流通する吸気通路20と、エンジン本体1から排出される排気ガスが流通する排気通路27とを備えている。
エンジン本体1は、シリンダブロック3、シリンダヘッド4、およびピストン5を備えている。シリンダブロック3およびシリンダヘッド4は、円筒状の気筒2を内部に形成する部材であり、請求項にいう「気筒形成部材」に相当する。すなわち、シリンダブロック3は、気筒2の周面を規定する壁面(シリンダーライナ)を有しており、シリンダヘッド4は、気筒2を上から閉塞するようにシリンダブロック3の上面に取り付けられている。ピストン5は、シリンダブロック3の内周面(シリンダーライナ)と摺動可能な外周面を有する円筒形の部材であり、気筒2の内部に往復動可能に収容されている。当実施形態において、エンジン本体1は、図1の紙面に直交する方向に並ぶ複数(例えば4つ)の気筒を有する多気筒型のものであるが、ここでは簡略化のため、基本的に1つの気筒2のみに着目して説明を進める。
ピストン5の下方には、エンジンの出力軸であるクランク軸7が設けられており、クランク軸7とピストン5とがコネクティングロッド9を介して連結されている。
ピストン5の上方には燃焼室Cが画成されている。すなわち、燃焼室Cは、気筒2の周面を規定する壁面(シリンダブロック3の内周面)と、気筒2の上面を規定する壁面(シリンダヘッド4の下面)と、ピストン5の冠面5a(上面)とにより画成された空間である。
シリンダブロック3には、シリンダブロック3およびシリンダヘッド4の内部を流通する冷却水(エンジン冷却水)の温度を検出する水温センサ19が設けられている。
シリンダヘッド4には、インジェクタ11および点火プラグ12が配設されている。インジェクタ11は、燃焼室Cに燃料(ガソリンを主成分とする燃料)を噴射する噴射弁である。点火プラグ12は、燃焼室C内の混合気、つまりインジェクタ11から噴射された燃料が燃焼室C内で空気と混合された混合気に点火するプラグである。
点火プラグ12の点火により混合気が燃焼すると、当該燃焼による膨張力を受けてピストン5が上下方向に往復動する。このピストン5の往復動は、コネクティングロッド9を介してクランク軸7に伝達され、クランク軸7を回転させる。
インジェクタ11は、その先端部が燃焼室Cの天井面C1の中央に位置するように、気筒2の中心軸Zに沿って配置されている(特に図2参照)。インジェクタ11は、その先端部に複数の噴孔を有しており、当該噴孔からピストン5の冠面5aに向けて放射状に燃料を噴射する。なお、図2における符号Fは、インジェクタ11から噴射された燃料の噴霧を表している。
点火プラグ12は、その先端部が燃焼室Cの天井面C1の中央付近に位置するように、気筒2の中心軸Zに対し傾いた姿勢でインジェクタ11に隣接して取り付けられている。なお、点火プラグ12の先端部には、燃焼室Cに火花を放電するための電極が設けられている。
図1に示すように、シリンダヘッド4には、燃焼室Cに連通する吸気ポート13および排気ポート14が形成されている。吸気ポート13は、燃焼室Cに吸気を導入するためのポートであり、排気ポート14は、燃焼室Cから排気ガスを導出するためのポートである。シリンダヘッド4には、吸気ポート13の燃焼室C側の開口を開閉する吸気弁15と、排気ポート14の燃焼室C側の開口を開閉する排気弁16とが組み付けられている。
吸気弁15および排気弁16は、クランク軸7の回転に連動して作動するカム軸等を含む動弁機構により開閉駆動される。吸気弁15用の動弁機構には、吸気弁15の作動タイミングを変更可能なバルブ可変機構17が組み込まれている。バルブ可変機構17は、少なくとも吸気弁15の閉時期を変更可能な可変機構である。このようなバルブ可変機構17としては、例えば吸気弁15の開時期および閉時期を同量ずつ変更する位相式の可変機構を用いることができる。ただし、バルブ可変機構17は少なくとも吸気弁15の閉時期を変更できればよく、例えば吸気弁15の開時期を固定しつつ開弁期間(開から閉までの期間)を変更することで吸気弁15の閉時期を変更するタイプの可変機構であってもよいし、吸気弁15の作動タイミングに加えて吸気弁15のリフト量を変更するタイプの可変機構であってもよい。
上記のようなバルブ可変機構17が組み込まれた当実施形態のエンジンは、吸気弁15の閉時期により定まる有効圧縮比を可変的に設定することが可能である。すなわち、エンジン(気筒)の有効圧縮比は、ピストン15が上死点にあるときの燃焼室Cの容積と、ピストン5による圧縮が実質的に始まる吸気弁15の閉時期における燃焼室Cの容積との比である。したがって、バルブ可変機構17により吸気弁15の閉時期が変更されることは、有効圧縮比が変更されることを意味する。
吸気通路20は、燃焼室Cに導入される吸気が流通する通路であり、吸気ポート13に連通する状態でシリンダヘッド4の一側面に接続されている。排気通路27は、燃焼室Cから導出された排気ガスが流通する通路であり、排気ポート14に連通する状態でシリンダヘッド4の他側面に接続されている。
吸気通路20は、吸気マニホールド21と、サージタンク22と、吸気管23とを備えている。吸気マニホールド21は、エンジン本体1における複数の気筒2の各燃焼室Cとサージタンク22とを連通する分岐管である。すなわち、吸気マニホールド21は、共通のサージタンク22から分岐しかつ各気筒2の燃焼室Cに連通するようにシリンダヘッド4に接続された複数の独立した配管(図1の紙面に直交する方向に並んだ複数の配管)を有している。吸気管23は、サージタンク22から上流側(エンジン本体1から離れる側)に延びる単管状の配管であり、締結部材等を介して同軸に接続される第1吸気管23aおよび第2吸気管23bを有している。第1吸気管23aは第2吸気管23bよりも下流側(エンジン本体1に近い側)に設けられている。
吸気管23(第1吸気管23a)の途中部にはスロットル弁25が設けられている。スロットル弁25は、吸気通路20を流通する(エンジン本体1に導入される)吸気の流量を調整する開閉可能なバルブである。
[ピストン冠面の構造]
図2に示すように、ピストン5の冠面5a(以下、単にピストン冠面5aともいう)には、断熱層30が形成されている。断熱層30は、ピストン5よりも熱伝導率の低い樹脂材料により構成されている。すなわち、ピストン5がアルミニウム合金等の金属材料により構成されているのに対し、断熱層30は、ピストン5を構成する金属材料(母材)よりも熱伝導率が大幅に低い樹脂材料により構成されている。
具体的に、当実施形態における断熱層30は、耐熱性のシリコン系樹脂により構成されている。シリコン系樹脂としては、メチルシリコーン樹脂やメチルフェニルシリコーン樹脂に代表される、分岐度の高い3次元ポリマーからなるシリコン樹脂を例示することができる。なお、断熱層30にはシラスバルーン等の中空粒子が含有されていてもよい。詳しくは後述するが、断熱層30は、ピストン冠面5aに塗布されるペースト状の樹脂材料(後述する被膜材30A)を焼成することでピストン冠面5aに固着される。
上記のような性質の断熱層30をピストン冠面5aに形成することは、冷却損失の低減、ひいてはエンジンの燃費性能の改善につながる。すなわち、断熱層30は、燃焼室Cで燃焼した混合気の燃焼エネルギーがピストン冠面5aを通じて外部に放出されることを抑制するので、当該熱エネルギーの放出により生じる損失つまり冷却損失が低減される。これにより、熱エネルギーが仕事に変換される割合である熱効率の向上、換言すればエンジンの燃費性能の改善が見込まれる。
[エンジンの製造方法]
次に、以上のような構造を有する当実施形態のエンジンを製造する方法について説明する。図3は、当実施形態のエンジンの製造方法の具体的手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに示す製造方法は、主に断熱層30の形成に関するものである。このため、当該方法を実施する前提として、エンジンを構成する主要部品(シリンダブロック3、シリンダヘッド4、ピストン5等)は既に用意されているものとする。
図3の方法が開始されると、まず、図4に示される被膜材30Aをピストン冠面5aに塗布する(ステップS1)。被膜材30Aは、上述した断熱層30の材料であり、ペースト状の樹脂材料を希釈剤により希釈したものである。当実施形態では、被膜材30Aとして、ペースト状のシリコン系樹脂(メチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂等)をトルエンで希釈して粘度を低下させたものが用いられる。なお、断熱層30として中空粒子(シラスバルーン等)を含むものを形成する場合には、この中空粒子も被膜材30Aに含有させておく。さらに、被膜材30Aの硬化を促進させる硬化触媒として、白金イオン溶液等の微量の触媒を被膜材30Aに含有させてもよい。
図4に示すように、ピストン冠面5aへの被膜材30Aの塗布には、スプレーガンGが用いられる。すなわち、スプレーガンGから被膜材30Aをスプレー状に噴射することにより、当該被膜材30Aをまんべんなくピストン冠面5aに吹き付ける。これにより、略一定の厚みを有する被膜材30Aの層をピストン冠面5aに形成する。なお、被膜材30Aと塗布する際には、事前にピストン冠面5aに対し脱脂やサンドブラスト等の処理を施しておくことが望ましい。
次いで、ピストン冠面5aに塗布された被膜材30Aを自然乾燥させる(ステップS2)。なお、ここでの乾燥は、後述するエンジンの組み立て時にピストン5以外の部材(シリンダブロック3やシリンダヘッド4等)に被膜材30Aが容易に付着するといった事態を避けるための処理であり、少なくとも被膜材30Aの表面の粘度がある程度高くなればよい。このため、当該ステップS2での乾燥処理は、例えば、被膜材30A塗布後のピストン5を常温で所定時間置くといった程度の処理でよい。
次いで、被膜材30Aが塗布されたピストン5を含む複数の部品を組み合わせてエンジンを構築する(ステップS3)。ただし、ここで構築されるエンジンは、エンジンを構成する全ての部品を組み合わせたものではなく、燃焼室Cでの混合気の燃焼を可能とするために必要な部品(主要部品)を少なくとも組み合わせたものである(以下、これを完成前エンジンという)。具体的に、この完成前エンジンには、エンジン本体1を構成する全部または大多数の部品(シリンダブロック3、シリンダヘッド4、ピストン5、インジェクタ11、点火プラグ12、吸気弁15、排気弁16、およびバルブ可変機構17を含む動弁機構等)と、吸気通路20における下流側の一部の部品とが含まれる。ここでいう吸気通路20の下流側の一部の部品とは、第1吸気管23aおよびこれより下流側の部品群(スロットル弁25、サージタンク22、および吸気マニホールド21等)のことである。なお、先のステップS2による自然乾燥を経ただけでは被膜材30Aに含まれる希釈剤は完全に揮発していない。このため、このステップS3で完成前エンジンが組み立てられた段階で、被膜材30Aは未硬化状態にある。
次いで、上記完成前エンジンに対し、図5に示される混合気形成装置40を接続する(ステップS4)。混合気形成装置40は、完成前エンジンの第1吸気管23aに接続されるハウジング41と、ハウジング41内に燃料を噴射する燃料噴射弁42とを備えている。なお、図5ではエンジン本体1をより簡略化した状態で示している。
ハウジング41は、吸気取込部41aと接続部41bとを有している。吸気取込部41aは、ハウジング41の内部に導入される吸気の入口となる部分である。接続部41bは、第1吸気管23aの上流端に締結部材等を介して着脱可能に結合される部分である。
次いで、圧縮上死点での燃焼室Cの圧力であるTDC圧力を算出する(ステップS5)。具体的には、上記完成前エンジンのバルブタイミングおよびスロットル開度と、外気温と、エンジン水温とに基づいて、上記TDC圧力を算出する。この場合に、バルブタイミングは、後述するステップS17(前段通常モード)での運転時にバルブ可変機構17により設定されることが決まっている吸気弁15の作動タイミングのことであり、スロットル開度は、同じくステップS17での運転時に設定されることが決まっているスロットル弁25の開度のことである。外気温は、エンジンの製造設備の雰囲気温度のことであり、例えば当該製造設備に備わる室温センサから取得することができる。エンジン水温は、エンジン冷却水(シリンダブロック3およびシリンダヘッド4の内部を流通する冷却水)の温度のことであり、エンジンに付属の水温センサ19から取得することができる。上記ステップS5では、これら既知のバルブタイミングおよびスロットル開度と、検出された外気温およびエンジン水温とに基づいて、圧縮上死点での燃焼室Cの圧力であるTDC圧力を算出する。ただし、上記TDC圧力は、圧縮上死点の時点では混合気の燃焼が始まっていないことを前提に算出される。言い換えると、TDC圧力は、混合気の燃焼がなかった場合の燃焼室Cの圧力であるモータリング圧力の最大値である。このようなTDC圧力は、混合気が燃焼する直前の燃焼室Cの圧力(燃焼直前圧力)を代表する値であり、請求項にいう「指標筒内圧」の一例に該当する。なお、以下では、燃焼室Cの圧力のことを筒内圧ということがある。
上記ステップS5において、TDC圧力は、吸気弁15の作動タイミング(閉時期)から定まる有効圧縮比とスロットル開度とに比例し、かつ外気温およびエンジン水温に反比例するように算出される。すなわち、TDC圧力は、有効圧縮比が高いほど大きくなり、かつスロットル開度が高いほど大きくなるように算出される。また、TDC圧力は、外気温が高いほど小さくなり、かつエンジン水温が高いほど小さくなるように算出される。これは、エンジン水温または外気温が高いほど燃焼室Cに導入される吸気の温度が高くなり、これによって吸気(空気)の密度が低下するからである。なお、外気温に代えて、もしくは外気温に加えて、吸気通路20に設けられる図外の吸気温センサにより検出される吸気の温度を用いてTDC圧力を算出するようにしてもよい。
次いで、上記ステップS5で算出したTDC圧力が予め定められた閾値X以上であるか否かを判定する(ステップS6)。
上記ステップS6の判定がYESの場合、つまりTDC圧力が閾値X以上であることが確認された場合には、有効圧縮比が低下する方向にバルブ可変機構17を作動させる(ステップS7)。すなわち、吸気弁15の閉時期から定まる有効圧縮比が、仮にTDC圧力が閾値X未満であった場合に設定される有効圧縮比(デフォルト値)よりも小さくなるように、バルブ可変機構17を作動させる。当実施形態のエンジンでは、吸気弁15の閉時期が標準的に吸気下死点よりもやや遅角側に設定される。このため、上記ステップS7では、吸気弁15の閉時期の吸気下死点に対する遅角量が拡大する方向にバルブ可変機構17を作動させることにより、有効圧縮比をデフォルト値よりも低下させる。
次いで、混合気形成装置40を用いて上記完成前エンジンを運転する操作を行う(ステップS9)。
具体的に、上記ステップS9では、混合気形成装置40の燃料噴射弁42を作動させてハウジング41内に燃料を噴射することにより、この噴射された燃料とハウジング41内の空気(吸気)とが混合した混合気を形成するとともに、当該混合気を吸気通路20を通じて燃焼室Cに導入する。そして、点火プラグ12を作動させて燃焼室C内の混合気に点火することにより、当該混合気を燃焼させてピストン5を往復動させる。
ここで、上記ステップS9での運転が行われる前提として、先のステップS7により有効圧縮比がデフォルト値よりも既に低くされている。つまり、上記ステップS9での運転は、バルブ可変機構17による有効圧縮比の低下操作(ステップS7)が完了した状態で行われる。このため、上記ステップS9での運転の開始時に見込まれるTDC圧力は相対的に低くなる。以下では、このようにTDC圧力(筒内圧)を低下させつつ完成前エンジンを運転する上記ステップS9での運転モードのことを、前段低圧モードという。また、この前段低圧モードと別条件のとき(TDC圧力の低下が不要なとき)に実施される後述するステップS17での運転モードのことを、前段通常モードという。さらに、これら前段低圧モードまたは前段通常モードの後に実施される後述するステップS13での運転モードのことを、後段本格モードという。これら前段低圧モード、前段通常モード、および後段本格モードによる運転は、エンジンが支障なく動作することを確認するための試験運転(燃焼試験)を兼ねている。
図6は、上記ステップS9(前段低圧モード)と後述するステップS13(後段本格モード)での運転の詳細を示すタイムチャートである。具体的に、この図6において、チャート(a)は被膜材30Aの硬化度合いを、チャート(b)は有効圧縮比を、チャート(c)は点火プラグ12による点火時期を、チャート(d)は燃料の噴射量を、チャート(e)はスロットル弁25の開度(スロットル開度)をそれぞれ示している。また、横軸の時点t1はTDC圧力の算出が開始された時点を示し、時点t2は算出されたTDC圧力に基づいて運転モードが決定された時点(換言すれば前段低圧モードの開始時点)を示し、時点t3は前段低圧モードから後段本格モードへの切り替え時点を示し、時点t4は後段本格モードの終了時点を示している。時点t2からt3までの期間が前段低圧モードによる運転期間である第1期間T1であり、時点t3からt4までの期間が後段本格モードによる運転期間である第2期間T2である。なお、詳細は後述するが、後段本格モードによる運転は混合気形成装置40を取り外した状態で行われる。このため、前段低圧モードから後段本格モードへの移行時には混合気形成装置40を取り外す作業を行う必要があるが、図6では便宜上、この取り外し作業に要する時間を省略し、第1期間T1と第2期間T2とを連続した期間として表記している。
図6のチャート(b)〜(d)に示すように、前段低圧モードによる運転が開始される時点t2において、有効圧縮比はデフォルト値(符号Yを付した破線の値)よりも低下している。前段低圧モードでは、このように有効圧縮比が低下した状態で、混合気形成装置40の燃料噴射弁42から所定量の燃料が噴射されるとともに、点火プラグ12による点火が所定時期に行われる。これにより、燃料噴射弁42から噴射された燃料と吸気とが混合された混合気が燃焼室Cに供給されるとともに、供給された混合気が点火プラグ12により点火されて燃焼する。ただしここでは、インジェクタ11から噴射される燃料の噴射量が後の(時点t3以降の)後段本格モードのときよりも減らされるとともに、点火プラグ12による点火時期が遅角される。具体的に、前段低圧モードでの点火時期は、後段本格モードのときの点火時期よりも遅角側でかつ圧縮上死点よりも遅角側の時期に設定される。
また、前段低圧モードでは、混合気の空燃比(A/F)が理論空燃比(約14.7)に設定される。上述したように、前段低圧モードでは後の後段本格モードのときよりも燃料の噴射量が少ないので、この燃料量に対応する理論空燃比相当の空気量も少なくなる。このため、前段低圧モードのときのスロットル弁25の開度は、チャート(e)に示すように、後段本格モードのときよりも低減される。
上記のようにして前段低圧モードによる運転が開始された後は、その運転開始からの経過時間が上述した第1期間T1に達するまで、当該前段低圧モードによる運転を継続する(ステップS10)。すなわち、タイマーを用いて運転開始からの経過時間をカウントし、そのカウント値が第1期間T1に達したか否かを判定し、第1期間T1に達するまで上記前段低圧モードによる運転を継続する。
上記前段低圧モードによる運転期間である第1期間T1は、図6のチャート(a)に示すように、被膜材30Aの表面の硬化がほぼ完了するような期間に設定される。すなわち、被膜材30Aは、混合気の燃焼熱により加熱されて徐々に硬化するが、燃焼ガスに直接晒される被膜材30Aの表面の方が、燃焼ガスに直接晒されない被膜材30Aの内部よりも高温になるため、硬化速度は被膜材30Aの表面の方が速くなる。上記チャート(a)における第1期間T1の間、被膜材30Aの表面の硬化度合いを表す破線の波形の傾きの方が、被膜材30Aの内部の硬化度合いを表す一点鎖線の波形の傾きよりも大きいのはこのためである。すなわち、目標とする被膜材30Aの硬化度合いをQとしたとき、硬化度合いが当該目標値Qに達する(つまり硬化が完了する)のは、被膜材30Aの表面の方が被膜材30Aの内部よりも早くなる。このことを前提に、上記前段低圧モードによる運転期間である第1期間T1は、その終了時において被膜材30Aの表面の硬化がほぼ完了する(硬化度合いがほぼ目標値Qに達する)ような期間に設定される。したがって、この第1期間T1が経過したとき(つまり前段低圧モードによる運転が終了した時点t3において)、被膜材30Aの表面の硬化はほぼ完了しているが、被膜材30Aの内部の硬化は不十分なままである。なお、このような被膜材30Aの状態を得るための上記第1期間T1は、実験的に予め求めておくことが可能である。
上記前段低圧モードによる運転が第1期間T1に亘って実施された後は、有効圧縮比が増大する方向にバルブ可変機構17を作動させる(ステップS11)。すなわち、上記ステップS7において吸気下死点からの遅角量が増大するように変更された吸気弁15の閉時期を、遅角量の増大をキャンセルする方向にシフトさせることにより、有効圧縮比を前段低圧モードのときよりも増大させる。
図3に示すように、混合気形成装置40を用いた完成前エンジンの運転は、上記ステップS6の判定がNOであった場合、つまりTDC圧力が閾値X未満の場合にも同様に実施される(ステップS17)。ただし、このステップS17よりも前に有効圧縮比を低下させる操作は行われていない。すなわち、TDC圧力が閾値X未満であった場合は、前段通常モードとして、有効圧縮比をデフォルト値に維持した状態で混合気形成装置40から供給される混合気を燃焼室Cで燃焼させる操作が行われる。なお、この前段通常モードによる運転は、有効圧縮比が異なること以外は、基本的に上述した前段低圧モードのときと同様である。例えば、燃料の噴射量は、後の後段本格モードのときよりも少量とされ、スロットル弁25の開度も低減される。
上記のようにして前段通常モードによる運転が開始された後は、その運転開始からの経過時間が予め定められた第1期間T1に達するまで、当該前段通常モードによる運転を継続する(ステップS18)。この第1期間T1は、上述した前段低圧モードのときと同様、被膜材30Aの表面の硬化がほぼ完了するような期間に設定される。このため、前段通常モードの期間であるステップS18の第1期間T1は、前段低圧モードの期間であるステップS10の第1期間T1と基本的に同一である。ただし、条件によっては両期間を異なるものとしてもよい。
上記前段低圧モードまたは前段通常モードによる運転が第1期間T1に亘って実施された後は、吸気通路20から混合気形成装置40を取り外す(ステップS12)。すなわち、吸気通路20の第1吸気管23aと混合気形成装置40のハウジング41とを結合している締結部材等をリリースすることにより、吸気通路20から混合気形成装置40を取り外す。なお、取り外した混合気形成装置40は、別のエンジンの試験運転のために使用される。
次いで、運転モードを後段本格モードに切り替え、上記完成前エンジンをインジェクタ11を用いて運転する操作を行う(ステップS13)。すなわち、完成前エンジンのシリンダヘッド4に備わるインジェクタ11を作動させて燃焼室Cに直接燃料を噴射することにより、この噴射された燃料と燃焼室Cに導入された空気(吸気)とが混合した混合気を燃焼室Cに形成する。そして、点火プラグ12を作動させて燃焼室C内の混合気に点火することにより、当該混合気を燃焼させてピストン5を往復動させる。
具体的に、上記後段本格モードによる運転時は、図6に示すように、燃料の噴射量が上記前段低圧モード(もしくは前段通常モード)のときよりも増やされる。また、混合気の空燃比を理論空燃比に設定するため、スロットル弁25の開度が高められて吸気量が増やされる。点火プラグ12による点火時期については、前段低圧モードのときよりも進角され、圧縮上死点付近もしくはこれよりもやや進角側の時期に設定される。なお、インジェクタ11からの燃料の噴射時期は適宜設定可能であるが、例えば吸気行程中に全ての(もしくは大部分の)の燃料が噴射されるような時期に設定される。
上記のようにして後段本格モードによる運転が開始された後は、その運転開始からの経過時間が上述した第2期間T2に達するまで、当該後段本格モードによる運転を継続する(ステップS14)。すなわち、タイマーを用いて運転開始からの経過時間をカウントし、そのカウント値が第2期間T2に達したか否かを判定し、第2期間T2に達するまで上記後段本格モードによる運転を継続する。
後段本格モードにおいて燃焼室Cに供給される燃料の量(混合気の量)を増やすことは、燃焼による熱発生量を増大させ、ピストン冠面5aの被膜材30Aの硬化(焼成)を促進することにつながる。すなわち、熱発生量が多い後段本格モードでは、被膜材30Aの内部の温度が先の前段低圧モード(もしくは前段通常モード)のときよりも上昇するので、被膜材30Aの内部の硬化速度が速まる。図6のチャート(a)において、第2期間T2(後段本格モード)のときの被膜材30Aの内部の硬化速度の方が、第1期間T1(前段低圧モード)のときの硬化速度よりも速いのはこのためである。なお、被膜材30Aの表面については、前段低圧モードの終了時(後段本格モードの開始時)である時点t3において既に硬化が完了しているので、本格モードに移行してもその硬化度合いはほとんど変わらない。
上記後段本格モードによる運転期間である第2期間T2は、上記チャート(a)に示すように、被膜材30Aの内部の硬化がほぼ完了するような期間に設定される。すなわち、第2期間T2に亘って上記後段本格モードによる運転が継続されることで、被膜材30Aの内部の硬化度合いがほぼ目標値Qまで上昇する。これにより、被膜材30Aの表面だけでなく内部も十分に硬化し、被膜材30Aの焼成(断熱層30の形成)が完了する。言い換えると、被膜材30Aから希釈剤(トルエン)がほぼ全て揮発するなどして被膜材30Aが全体的に固形化し、この固形化した被膜材30Aが断熱層30(図2)としてピストン冠面5aに形成される。なお、このように被膜材30Aの内部の硬化を完了させるための上記第2期間T2は、実験的に予め求めておくことが可能である。
上記のようにして断熱層30の形成が完了すると、インジェクタ11からの燃料噴射を停止し、混合気の燃焼によるエンジンの運転を終了する(ステップS15)。その後、上記ステップS3で組み立てられた完成前エンジンに含まれていなかった部品(例えば第2吸気管23bおよびこれより上流側の部品群)を組み付け、エンジンの製造が完了する。
なお、以上のようなエンジンの製造方法において、ステップS1は請求項にいう「塗布ステップ」に相当し、ステップS3は請求項にいう「組立ステップ」に相当し、ステップS4は請求項にいう「接続ステップ」に相当し、ステップS5は請求項にいう「取得ステップ」に相当し、ステップS7は請求項にいう「筒内圧低下ステップ」に相当し、ステップS9は請求項にいう「焼成ステップ」に相当し、ステップS10は請求項にいう「判定ステップ」に相当し、ステップS11は請求項にいう「筒内圧増大ステップ」に相当し、ステップS13は請求項にいう「後段焼成ステップ」に相当する。
[作用効果]
以上説明したように、当実施形態では、ペースト状の被膜材30Aをピストン冠面5aに塗布するステップ(S1)と、塗布後のピストン5を含む主要部品を互いに組み付けて完成前エンジンを構築するステップ(S3)と、TDC圧力の算出値(予測値)が閾値X以上のときにバルブ可変機構17を有効圧縮比が低下する方向に作動させるステップ(S7)と、有効圧縮比が低下した状態で混合気形成装置40から供給される混合気を燃焼させる前段低圧モードによる運転を実施するステップ(S9)と、混合気形成装置40を取り外した状態でエンジン付属のインジェクタ11から噴射された燃料を含む混合気を燃焼させる後段本格モードによる運転を実施するステップ(S13)とを含む方法により、ピストン冠面5aに断熱層30が形成される。このような構成によれば、断熱層30の品質を良好に確保しつつその形成を容易化できるという利点がある。
すなわち、上記実施形態では、ピストン冠面5aに塗布された被膜材30Aが、ピストン5を含む主要部品の組み立て後に実施される運転時の燃焼熱を利用して焼成(硬化処理)されるので、例えば当該焼成のための運転を、エンジンの製造過程で通常行われる試験運転(燃焼試験)と兼ねることにより、被膜材30Aの焼成つまり断熱層30の形成にかかる工数および費用を削減することができる。例えば、ピストン冠面5aに塗布された被膜材30Aを加熱炉等を用いた加熱により焼成した場合には、当該焼成のための工数と試験運転のための工数とが別々にかかる上に、加熱炉等の設備を新たに設ける必要がある。これに対し、上記実施形態のように混合気の燃焼熱により被膜材30Aを焼成するようにした場合には、当該焼成のための設備を新たに設けることが不要になる上、断熱層30を形成するための工程の一部をエンジンの試験運転により代用できるので、断熱層30を有する熱効率に優れたエンジンを低コストかつ短時間で製造することが可能になる。
また、TDC圧力の算出値(予測値)が比較的低いときの被膜材30A焼成のための運転として、前段低圧モード(S9)による運転と後段本格モード(S13)による運転とがこの順に実施されるとともに、前段低圧モードによる運転時には、有効圧縮比が低下した状態で混合気形成装置40から供給される混合気が燃焼させられるので、混合気中の燃料が凝縮してピストン冠面5aの被膜材30Aに付着するのを効果的に抑制することができる。
すなわち、エンジン付属のインジェクタ11から直接燃焼室Cに燃料を噴射するよりも、混合気形成装置40で形成された混合気を吸気通路20を通じて燃焼室Cに供給した方が、ピストン冠面5aの被膜材30Aに燃料が液滴のまま付着する可能性は低くなる。これは、混合気形成装置40から燃焼室Cに至るまでの間に燃料の気化が十分に進行することが期待されるからである。ただし、TDC圧力が高くなる条件のときは、燃焼が始まるよりも前に筒内圧が燃料の凝縮(液滴化)が起きるような圧力(飽和圧力)にまで上昇することがあり、このような圧力条件では、燃焼室Cに導入された混合気中の燃料が凝縮してピストン冠面5aの被膜材30Aに液滴のまま付着するおそれがある。これに対し、上記実施形態では、TDC圧力が閾値X以上になると予測される場合に、有効圧縮比が低下する方向にバルブ可変機構17が作動した状態(有効圧縮比の低下操作が完了した状態)で混合気形成装置40から燃焼室6に混合気が供給されるので、混合気が燃焼する直前の筒内圧(燃焼直前圧力)を低下させることができ、上記のような燃料の凝縮ひいては被膜材30Aへの燃料の付着を効果的に抑制することができる。このことは、付着した燃料(特に燃料に含まれるトルエン)によって未硬化の被膜材30Aが希釈される可能性が低減されることを意味する。したがって、混合気の燃焼による大きな圧力(燃焼圧)が被膜材30Aに作用したとしても、被膜材30Aに生じる形状変化を最小限に抑えることができ、硬化後の被膜材30Aからなる断熱層30の品質を良好に確保することができる。
例えば、仮に燃料の付着によって被膜材30Aが希釈された場合には、この希釈された部分(燃料が付着した部分)において、被膜材30Aの粘度が低下し、高い燃焼圧が作用したときに被膜材30Aが飛散するおそれがある。これに対し、上記実施形態では、有効圧縮比の低下により燃料が付着する可能性が低減されるので、上記のような事情で生じる被膜材30Aの飛散を効果的に抑制することができる。その結果、断熱層30に剥がれ等の不具合が生じる可能性を十分に低減でき、断熱層30の品質を良好に確保することができる。
逆に、前段低圧モードに続く後段本格モードでは有効圧縮比が増大されるので、剥がれ等の不具合を抑制する上述した効果を担保しながら、被膜材30Aの内部の硬化(焼成)を促進することができ、断熱層30の形成に要する工数を削減することができる。すなわち、被膜材30Aの硬化は内部よりも表面で速く進行する。一方で、被膜材30Aの表面が十分に硬化すれば(内部は未硬化であっても)、燃料の付着による被膜材30Aの希釈は起こらず、燃焼圧により被膜材30Aの一部が飛散するような事態は避けられると考えられる。上記実施形態では、前段低圧モードから後段本格モードへの移行に応じて有効圧縮比が増大される(有効圧縮比の増大操作が完了した後に後段本格モードが開始される)ので、被膜材30Aの表面が十分に硬化したタイミングで後段本格モードに移行することにより、被膜材30Aの一部が飛散する上記のような事態を避けながら、燃焼中の筒内圧の増大によって燃焼ガスから被膜材30Aへの熱伝達率を高めることができ、未硬化である被膜材30Aの内部の硬化速度を速めることができる。これにより、被膜材30Aを全体的に硬化させるのに要する時間を短縮することができ、断熱層30の品質を担保しつつその形成を効率化することができる。
また、上記実施形態では、前段低圧モードによる運転時に、後の後段本格モードのときよりも燃料の噴射量が減らされるので、混合気形成装置40から燃焼室Cに供給される混合気の量を減らすことができ、当該混合気中の燃料が燃焼室Cで凝縮する可能性をより低減することができる。これにより、燃料が液滴のまま被膜材30Aに付着することがより起こり難くなるので、当該付着に起因して生じる剥がれ等の不具合を高い確率で回避することができる。
逆に、前段低圧モードに続く後段本格モードでは燃料の噴射量(混合気の量)が増やされるので、当該噴射量の増大によって燃焼熱(加熱能力)を高めることができる。このことは、上述した有効圧縮比の増大と相俟って、未硬化である被膜材の内部の硬化速度をより速めることにつながる。これにより、被膜材を全体的に硬化させるのに要する時間をより短縮でき、断熱層の形成を十分に効率化することができる。
また、上記実施形態では、前段低圧モードおよび後段本格モードによる運転時に、理論空燃比の混合気が形成されるように燃料の噴射量が調整されるので、混合気が燃焼した燃焼ガスの温度を可及的に高めることができ、被膜材30Aの硬化をより促進することができる。
また、上記実施形態では、前段低圧モードが終了すると混合気形成装置40が吸気通路20から取り外されて、その状態で後段本格モードに移行してエンジン付属のインジェクタ11から噴射される燃料を燃焼させる運転が行われるので、取り外した混合気形成装置40を製造中の他の同種のエンジンの吸気通路に接続することにより、被膜材30Aを焼成するための運転(試験運転を兼ねた運転)を複数のエンジンについて並列的に行うことができる。このため、混合気形成装置40の数を特段に増やさなくても、多数の同種のエンジンを効率よく製造することができる。
また、上記実施形態では、前段低圧モードのときの点火時期が、後段本格モードのときよりも遅角側(かつ圧縮上死点よりも遅角側)に設定されるので、モータリング圧力(燃焼がなかった場合の燃焼室6の圧力)が最大となる圧縮上死点よりも遅れた時期に混合気を燃焼させ始めることができ、燃焼圧の最大値(最大筒内圧)を低く抑えることができる。これにより、表面が未硬化の被膜材30Aが燃焼圧により変形するような事態をより高い確率で回避することができ、断熱層30の品質を良好に確保することができる。
[変形例]
上記実施形態では、圧縮上死点での燃焼室Cの圧力であるTDC圧力が閾値X以上であるときに、エンジン(気筒)の有効圧縮比を低下させた状態で混合気形成装置40から供給される混合気を燃焼させる前段低圧モードを実施するようにしたが、この前段低圧モードによる運転の要否を決めるパラメータは上記TDC圧力に限られない。すなわち、前段低圧モードによる運転の要否を決めるパラメータは、混合気が燃焼する直前の燃焼室Cの圧力(燃焼直前圧力)を代表する値、言い換えると燃焼直前圧力に密接に関連(比例)する値であればよい。この値を指標筒内圧としたとき、当該指標筒内圧は、燃焼直前圧力そのもの(例えば点火プラグ12の点火時期における筒内圧)であってもよいし、上記実施形態のように圧縮上死点でのモータリング圧力(TDC圧力)であってもよい。さらには、吸気弁15の閉時期以降の特定のクランク角における筒内圧であってもよい。
上記実施形態では、吸気弁15の作動タイミングを変更可能なバルブ可変機構17をエンジンに設け、前段低圧モードのとき(TDC圧力が閾値X以上のとき)にこのバルブ可変機構17を作動させて有効圧縮比を低下させるようにしたが、前段低圧モードのときは燃焼直前圧力(混合気が燃焼する直前の燃焼室Cの圧力)を低下させればよく、その方法はバルブ可変機構を用いた方法(有効圧縮比を低下させる方法)に限られない。例えば、図7に示すように、前段低圧モードの期間である第1期間T1(時点t2〜t3)において、スロットル弁25の開度(スロットル開度)をデフォルト値(符号Vを付した破線の値)よりも低下させることにより、上記燃焼直前圧力を低下させるようにしてもよい。なお、図7の例では、混合気の空燃比を理論空燃比に維持するために、第1期間T1亘って燃料の噴射量がデフォルト値(符号Wを付した破線の値)よりも減らされている。
上記実施形態では、前段低圧モード(または前段通常モード)による運転を予め定められた第1期間T1に亘って継続した後、後段本格モードによる運転に移行するようにしたが、モード切り替えのタイミングを決定する方法はこれに限られない。例えば、被膜材30Aの焼成のための運転(試験運転)中に排出される排気ガスに含まれるトルエン(希釈剤)の含有量をセンサにより検出すれば、被膜材30Aの硬化(焼成)がどの程度進行したかを判定できると考えられる。このため、上記センサを用いて排気ガス中のトルエンの含有量をモニターし、当該含有量が所定の閾値(被膜材30Aの表面が十分に硬化したとみなせる値)まで低下した時点で、運転モードを前段低圧モード(または前段通常モード)から後段本格モードに移行させるようにしてもよい。これにより、後段本格モードへの移行に適したタイミング、つまり被膜材30Aの表面が十分に硬化したタイミングを精度よく判定することが可能になる。ただし、被膜材30Aの表面を十分に硬化するのに要する期間は、実験的にある程度の精度で求めておくことが可能である。上記実施形態では、このことを利用して、前段低圧モード(または前段通常モード)と後段本格モードとを単純に時間で区切るようにした。これにより、特別な追加設備(センサ等)を設けることなく、燃焼熱を利用した被膜材30Aの焼成作業を適切に行うことが可能になる。
上記実施形態では、前段低圧モードのときに点火プラグ12による点火時期を後段本格モードのときよりも遅角させるようにしたが、バルブ可変機構17による有効圧縮比低下の効果によって燃料の凝縮が十分に抑制される場合には、前段低圧モードのときの点火時期を後段本格モードのときと同一に設定してもよい。
上記実施形態では、燃焼室Cの底面を規定するピストン冠面5aにのみ断熱層30を形成したが、同様の断熱層は、ピストン冠面5a以外の燃焼室Cの壁面にも適用することが可能である。例えば、燃焼室Cの天井面C1(シリンダヘッド4の下面)、吸・排気弁の傘部の下面、さらには気筒2の周面(シリンダーライナ)にも断熱層を形成することが可能である。いずれの面に形成される断熱層についても、上記実施形態の断熱層30と同様に、断熱層の材料であるペースト状の被膜材を混合気の燃焼熱により焼成するという方法で形成することができる。
上記実施形態では、燃焼室Cに直接燃料を噴射するインジェクタ11を燃焼室Cの天井面C1に配置したが、インジェクタは、燃焼室に燃料を供給可能なものであればよく、例えば吸気ポートに燃料を噴射するインジェクタを用いてもよい。
2 :気筒
3 :シリンダブロック(気筒形成部材)
4 :シリンダヘッド(気筒形成部材)
5 :ピストン
5a :(ピストンの)冠面
11 :インジェクタ
12 :点火プラグ
13 :吸気ポート
15 :吸気弁
17 :バルブ可変機構
20 :吸気通路
25 :スロットル弁
30 :断熱層
30A :被膜材
40 :混合気形成装置
C :燃焼室

Claims (11)

  1. 内側に気筒を形成する気筒形成部材と、気筒内に往復動可能に収容されたピストンと、気筒とピストンとにより画成された燃焼室に導入される吸気が流通する吸気通路と、燃焼室を規定する燃焼室壁面の少なくとも一部を覆いかつ当該燃焼室壁面よりも熱伝導率の低い断熱層とを備えた内燃機関を製造する方法であって、
    前記断熱層の材料である被膜材を前記燃焼室壁面に塗布する塗布ステップと、
    前記被膜材が未硬化の状態で前記気筒形成部材に前記ピストンを組み付けるとともに前記吸気通路を前記気筒形成部材に組み付ける組立ステップと、
    燃料と空気とが混合した混合気を形成する混合気形成装置を前記吸気通路に接続する接続ステップと、
    混合気が燃焼する直前の前記燃焼室の圧力である燃焼直前圧力を代表する指標筒内圧を求める取得ステップと、
    求めた前記指標筒内圧が所定の閾値以上である場合に、前記指標筒内圧が前記閾値未満である場合に比べて前記燃焼直前圧力が低下するように、当該燃焼直前圧力を調整可能な筒内圧調整装置を作動させる筒内圧低下ステップと、
    前記筒内圧低下ステップによる前記筒内圧調整装置の作動完了後に、前記混合気形成装置により形成された混合気を前記燃焼室で燃焼させて前記ピストンを往復動させることにより、前記被膜材を加熱して硬化させる焼成ステップとを含む、ことを特徴とする内燃機関の製造方法。
  2. 請求項1に記載の内燃機関の製造方法において、
    前記筒内圧調整装置は、前記吸気通路と前記燃焼室とを連通する吸気ポートを開閉する吸気弁の作動タイミングを変更可能なバルブ可変機構を含み、
    前記筒内圧低下ステップでは、前記吸気弁の作動タイミングを、前記指標筒内圧が前記閾値未満である場合の作動タイミングに比べて、前記気筒の有効圧縮比が低下する方向に変更する、ことを特徴とする内燃機関の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の内燃機関の製造方法において、
    前記筒内圧調整装置は、前記吸気通路に開閉可能に設けられたスロットル弁を含み、
    前記筒内圧低下ステップでは、前記スロットル弁の開度を、前記指標筒内圧が前記閾値未満である場合の開度に比べて低下させる、ことを特徴とする内燃機関の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の製造方法において、
    前記焼成ステップの後、前記筒内圧調整装置を前記燃焼直前圧力が増大する方向に作動させる筒内圧増大ステップと、
    前記筒内圧増大ステップによる前記筒内圧調整装置の作動完了後に、前記燃焼室で混合気を燃焼させる後段焼成ステップとをさらに含む、ことを特徴とする内燃機関の製造方法。
  5. 請求項4に記載の内燃機関の製造方法において、
    前記後段焼成ステップでは、前記焼成ステップのときよりも多くの混合気を前記燃焼室で燃焼させる、ことを特徴とする内燃機関の製造方法。
  6. 請求項4または5に記載の内燃機関の製造方法において、
    前記焼成ステップおよび前記後段焼成ステップでは、理論空燃比の混合気が形成されるように燃料の噴射量を調整する、ことを特徴とする内燃機関の製造方法。
  7. 請求項4〜6のいずれか1項に記載の内燃機関の製造方法において、
    前記内燃機関は、前記燃焼室に燃料を供給可能なインジェクタを備え、
    前記後段焼成ステップでは、前記吸気通路から前記混合気形成装置を取り外した状態で、前記インジェクタから噴射された燃料と空気とが混合された混合気を前記燃焼室で燃焼させる、ことを特徴とする内燃機関の製造方法。
  8. 請求項4〜7のいずれか1項に記載の内燃機関の製造方法において、
    前記内燃機関は、前記燃焼室内の混合気に点火する点火プラグを備え、
    前記後段焼成ステップでは、前記焼成ステップのときよりも前記点火プラグによる点火時期を進角させる、ことを特徴とする内燃機関の製造方法。
  9. 請求項4〜8のいずれか1項に記載の内燃機関の製造方法において、
    前記後段焼成ステップは、前記焼成ステップの開始からの経過時間が予め定められた所定時間に達したときに開始される、ことを特徴とする内燃機関の製造方法。
  10. 請求項4〜8のいずれか1項に記載の内燃機関の製造方法において、
    前記焼成ステップにより焼成される前記被膜材の表面の硬化度合いを判定する判定ステップをさらに含み、
    前記判定ステップで前記被膜材の表面の硬化が完了したと判定されたときに、前記焼成ステップから前記後段焼成ステップに移行する、ことを特徴とする内燃機関の製造方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法により製造された内燃機関。
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