以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各距離の比率等は現実のものとは相違している。
図1は、図4の空気入りタイヤの加硫金型(以下、「タイヤ加硫用モールド」ともいう)2によって成形された空気入りタイヤ100および成型に使用された後述する下モールド22のタイヤ子午線方向における半断面図であり、タイヤ赤道線CLに対して一方側のみを示している。図1では、タイヤ幅方向が符号TWで示され、タイヤ径方向が符号TRで示されている。
空気入りタイヤ100は、トレッド面102aを有するトレッド部102と、トレッド部102のタイヤ幅方向外側の両外端部102bに連なってタイヤ径方向内側に延びる一対のサイド部103と、各サイド部103の内径端に位置する一対のビード部104とを備えている。トレッド部102及びサイド部103の内側には、一対のビード部104の間に架け渡されるようにカーカスプライ105が配設されている。
トレッド部102のカーカスプライ105のタイヤ径方向外側には、ベルト層106とベルト補強層107とが順に配設されており、この更に外側にトレッドゴム110が配設されている。カーカスプライ105の内面側には、空気圧を保持するためのインナープライ108が配設されている。
ビード部104は、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア104aと、ビードコア104aに連設されてタイヤ径方向外側に延びる断面三角形状の環状のビードフィラー104bとを有する。
サイド部103の表面には、文字、図形、及び、記号等からなる標章112と、標章112に隣接するとともに標章112のタイヤ周方向両側及びタイヤ径方向外側を取り囲むプロテクタ130とが設けられている。標章112及びプロテクタ130の詳細については後述する。
サイド部103のカーカスプライ105のタイヤ幅方向外側には、サイドゴム120が配設されている。なお、本実施形態の空気入りタイヤ100は、サイドゴム120がトレッド部102の外端部102bにタイヤ幅方向外側から配設された、いわゆるサイドオントレッド(SWOT)構造とされている。
図2は、図1の標章112周辺を矢印IIから見た拡大平面図である。図3は、図1のIIIの部分の拡大図である。図2及び図3を合わせて参照して、標章112は、所定の標章に対応した凸形状を有する。本実施形態では、標章112において、「T」、「O」、及び「Y」の文字が形成されている。
標章112は、サイド部103の最大幅位置Wよりもタイヤ径方向外側の部分に配置されている。標章112は、サイド部103の基本面103a(図1参照)からタイヤ幅方向外側に突出している。標章112のサイド部103の基本面103aからの突出量H1は、0.4mm以上後述のプロテクタ130のサイド部103の基本面103aからの突出量H2以下(例えば、0.7mm)である。
プロテクタ130は、標章112のタイヤ周方向両側に位置するプロテクタ130の周方向部としての第1プロテクタ131と、標章112のタイヤ径方向外側に位置するプロテクタ130の外側部としての第2プロテクタ132とを備える。第1プロテクタ131及び第2プロテクタ132のサイド部103の基本面103aからの突出量H2は、0.4mm以上3mm以下(例えば、2mm)である。
本実施形態においては、第1プロテクタ131及び第2プロテクタ132は、いずれも標章112よりもタイヤ幅方向外側に突出している。より詳しくは、第1プロテクタ131及び第2プロテクタ132の突出量H2は、標章112の突出量H1より大きく、例えば、H1×1≦H2≦H1×4の関係を有している。各プロテクタ131,132の突出量H2が標章112の突出量H1未満の場合、標章112の外傷からの保護が期待できなくなる。各プロテクタ131,132の突出量H2が標章112の突出量H1×4よりも大きい場合、各プロテクタ131,132と標章112との高さ差が大きくなり文字ベアが発生する。
図2に示すように、第1プロテクタ131は、周方向に連続する環状の一部が切り欠かれたC字状に形成されている。なお、第1プロテクタ131は連続していなくてもよく、周方向に分断された複数のブロックで形成されていてもよい。第1プロテクタ131の標章112側の一対の側辺部131c,131cには、後述する下モールド22に設けられた空気抜きのための径方向に延びるソーカット溝(図示せず)によって形成された径方向突条部131d,131dが備えられている。なお、径方向突条部131d,131dは、断面半円状、台形状等で形成されてもよい。
第2プロテクタ132は、第1プロテクタ131の側辺部131c間で、周方向に分断された複数のブロック132A,132Bによって構成されている。各ブロック132A,132Bのタイヤ周方向の両端の側辺部132a…132aには、後述する下モールド22に設けられた空気抜きのための径方向に延びるソーカット溝(図示せず)によって形成された径方向突条部132b…132bが備えられている。なお、径方向突条部132b…132bは、断面半円状、台形状等で形成されてもよい。第2プロテクタ132は、周方向に連続する1つのブロックで形成されていてもよい。
第2プロテクタ132のタイヤ径方向内側の内壁面132cは、タイヤ径方向外側に向かってサイド部103の基本面103aからの距離が増加する斜面である。本実施形態においては、第2プロテクタ132の内壁面132cは、タイヤ子午線断面において、タイヤ径方向内側に凹となる曲線で構成されている。第2プロテクタ132の内壁面132cは、タイヤ子午線断面において直線で構成されていてもよい。
内壁面132cのサイド部103の基本面103aに対する傾斜角度θ1は、20度以上40度以下で形成されている。20°未満では、内壁面132cの基本面103aに対する接続が平坦(フラット)になりすぎてゴム流れを良くするための効果が小さくなる。40°より大きい場合は、内壁面132cと基本面103aとの接続が滑らかではなくなり(勾配が高くなり)、段差が大きくなるため文字ベアが発生する。なお、傾斜角度θ1は、内壁面132cが位置するサイド部103の基本面103a接線と、内壁面132cのタイヤ幅方向内側の端点と外側の端点とを結ぶ直線と、がなす角である。
本実施形態においては、第1プロテクタ131と、第2プロテクタ132とは、周方向に分断されているが、第1プロテクタ131と第2プロテクタ132とは周方向に連続するように、一体であってもよい。
ここで、標章112と、第1プロテクタ131及び第2プロテクタ132と、の関係について説明する。
本実施形態においては、第1プロテクタ131は、標章112よりもタイヤ径方向内側から、標章112よりもタイヤ径方向外側まで延びている。より詳しくは、第1プロテクタ131のタイヤ径方向内側の内端部131aは、サイド部103の最大幅位置Wよりもタイヤ径方向外側、かつ、標章112のタイヤ径方向内側の内端部112aを含んだ位置よりもタイヤ径方向内側に配置されている。第1プロテクタ131のタイヤ径方向外側の外端部131bは、標章112のタイヤ径方向外側の外端部112bよりもタイヤ径方向外側まで延びている。第2プロテクタ132は、標章112よりもタイヤ径方向外側に位置し、第1プロテクタ131よりもタイヤ径方向長さが短く形成されている。
これにより、第1プロテクタ131と第2プロテクタ132とによって、タイヤ径方向外側に凹む凹部Sが形成される。標章112は、凹部S内に収容されている。
第1プロテクタ131と、標章112とのタイヤ周方向の最短距離(より詳しくは、第1プロテクタ131の標章112側の側辺部131cと、標章112の第1プロテクタ131側の端部112cとの最短距離)W1は、2mm以上30mm以下(例えば、16mm)である。2mm未満の場合、標章112と第1プロテクタ131とが隣接し、段差が生じることによって文字ベアが発生し、30mmより大きい場合、標章112に対する第1プロテクタ131が離間しすぎるため、耐外傷性と視認性の確保が期待できなくなる。
第2プロテクタ132の頂面132dと、標章112とのタイヤ径方向の最短距離(より詳しくは、第2プロテクタ132の頂面132dのタイヤ径方向内側の内端部132eと、標章112のタイヤ径方向外側の外端部112bとの最短距離)R1とは、正の相関を有するように設定されている。
標章112のタイヤ径方向内側には、後述するタイヤの加硫時にタイヤと金型との間にたまった空気を排出するためのソーカット溝22hによって形成されるタイヤ周方向に延びる周方向突条部133が環状に設けられている。なお、周方向突条部133は、断面半円状に形成されているが、台形状でもよい。
周方向突条部133は、サイド部103の最大幅位置Wよりもタイヤ径方向内側に配置されている。周方向突条部133と、標章112とのタイヤ径方向の最短距離(より詳しくは、周方向突条部133と、標章112のタイヤ径方向内側の内端部112aとのタイヤ径方向の最短距離)R2は、2mm以上30mm以下である。最短距離R2が、2mm未満の場合、標章の視認性が確保されず、30mmより大きい場合、標章112と周方向突条部133が離間しすぎてしまい、標章112のエアが抜けなくなり、文字ベアが発生する。
周方向突条部133は、標章112に対応する位置にのみ設けられていてもよい。例えば、第1プロテクタ131の両側辺部131c,131cをタイヤ径方向内側に延長した両方の仮想直線L1,L1間に設けられてもよい。
本実施形態においては、周方向突条部133のタイヤ径方向内側の部位には、第2の周方向突条部134がタイヤ周方向に延びるように設けられている。周方向突条部133と第2の周方向突条部134との間には、径方向に延びる複数の径方向突条部135…135が設けられている。周方向突条部133及び第2の周方向突条部134と、複数の径方向突条部135…135とが交差する部位には、空気抜きのためのベントホール(図示せず)によって形成されるベントスピューあるいはベントスピュー跡136…136が形成されている。
第1プロテクタ131の側辺部131cに沿って径方向に延びる一対の仮想直線L1,L1と、第2プロテクタ132の内壁面132cに沿って一対の仮想直線L1間で周方向に延びる外側仮想円弧a1と、周方向突条部133に沿って一対の仮想直線L1,L1間でタイヤ周方向に延びる内側仮想円弧a2と、によって囲まれる破線で示す領域の周長Aに対して、該周長A上に設けられる斜面(内壁面)132cと、周方向突条部133と、第1プロテクタ131の径方向突条部131d,131dとの和が占める割合が3割以上(例えば、7割)であればよい。
図4は、図1の空気入りタイヤ100の成型に使用された加硫成形機1及びタイヤ加硫用モールド2の部分断面図であり、加硫成形機1に本実施形態に係るタイヤ加硫用モールド2を装着した状態を示す。加硫成形機1の上プラテン4と、下プラテン5との間に、コンテナ6を介してタイヤ加硫用モールド2が取り付けられている。
上プラテン4は昇降シリンダ7の下端部に固定されている。上プラテン4の下端部には上プレート3が固定されている。昇降シリンダ7の中心には昇降ロッド8が配置されている。昇降ロッド8の下端部には上コンテナプレート16が固定されている。昇降シリンダ7と昇降ロッド8は図示しない駆動装置によって昇降される。上コンテナプレート16と上プラテン4は、独立して昇降可能に構成されている。上プラテン4の内部には、流路4aが形成されている。流路4a内を熱交換媒体(例えば、オイル)が流動することによりタイヤ加硫用モールド2を温度調整できる。
下プラテン5の内部には、上プラテン4と同様に熱交換媒体が流動する流路5aが形成されている。そして、熱交換媒体の温度を調整することにより、上プラテン4及び下プラテン5を介してタイヤ加硫用モールド2を所望の加硫温度にすることができる。下プラテン5のタイヤ径方向中心にはブラダユニット9が配置されている。
ブラダユニット9は、昇降可能な支軸10に固定した上クランプ11及び下クランプ12にブラダ13を取り付けたものである。上クランプ11、下クランプ12、及びブラダ13によって囲まれた空間内には、図示しない給排気装置によって空気が供給及び排出される。ブラダ13は、空気が供給されて外周側に膨らみ、グリーンタイヤ200を内側から支持する。ここで、グリーンタイヤ200は、加硫成形前の生タイヤのことを示す。
コンテナ6は、セグメント14、ジャケットリング15、上コンテナプレート16、及び下コンテナプレート17等で構成されている。
セグメント14は、後述するタイヤ加硫用モールド2の各セクターモールド20にそれぞれねじ止めされている。本実施形態では、セグメント14は9個で構成されており、セグメント14に対応してセクターモールド20も9個で構成されている。各セグメント14の内面はセクターモールド20の外面に沿っており、外面は下方に向かうに従って徐々に外径側に膨らむ傾斜面(外周側円錐面)で構成されている。各セグメント14は上スライド18によって径方向に往復移動可能に支持されている。
ジャケットリング15は中空円筒状である。ジャケットリング15の上端面は上プレート3に固定されており、ジャケットリング15は昇降シリンダ7の昇降動作に従って昇降する。ジャケットリング15の内面は、下端側に向かうに従って徐々に外径側に傾斜する内周側円錐面で構成されている。ジャケットリング15の内周側円錐面と各セグメント14の外周側円錐面とは、その円錐面に沿ってスライドし、(例えば、ほぞと蟻溝のような構成により)互いに離れないようになっている。これにより、ジャケットリング15が降下すれば、その内周側円錐面で各セグメント14の外周側円錐面を押圧し、外径側に広がった状態のセグメント14を、内径側で環状に連なった状態へと移動させることができる。
上コンテナプレート16には、外周側下面に上スライド18が固定され、内周側下面に後述する上モールド21が固定されている。上コンテナプレート16自体は昇降ロッド8の下端に固定されている。これにより、昇降ロッド8が昇降すれば、上コンテナプレート16と共に、上モールド21及びセグメント14(セグメント14に固定されたセクターモールド20を含む)が昇降することになる。
下コンテナプレート17には、外周側上面に下スライド19が固定され、内周側上面には後述する下モールド22が固定されている。下スライド19には、型締め時にセグメント14が載置され、径方向にスライド可能に支持する。下コンテナプレート17自体は下プラテン5の上面に固定されている。
タイヤ加硫用モールド2は、セクターモールド20、上モールド(サイドモールド)21、及び下モールド(サイドモールド)22から構成されている。
セクターモールド20は、グリーンタイヤ200のトレッド部を所定形状に加硫成形するための金型である。セクターモールド20はアルミ合金からなり、タイヤ周方向に複数に分割され(ここでは、9分割)、内径側に移動した状態で環状に連なる。
上モールド21および下モールド22は、グリーンタイヤ200のサイド部を所定形状に加硫成形するための金型である。
上モールド21は環状に形成されており、内周部には上ビードリング23が固定されている。上モールド21は上コンテナプレート16に固定されており、昇降ロッド8の昇降動作に伴って昇降する。降下する際、上ビードリング23でグリーンタイヤ200のビード部を押さえることができるようになっている。これにより、上モールド21の下内面と、上ビードリング23の下面とで、タイヤのサイド部とビード部とが形成される。
下モールド22は、上モールド21と同様に環状に形成されており、内周部には下ビードリング24が固定されている。下モールド22の詳細な形状は、成形される空気入りタイヤ100の構造を含めて後述する。
図5(a)〜図5(f)は、本実施形態のタイヤ加硫用モールド2の型締め動作を示す部分断面図である。本実施形態では、前述の構成からなるタイヤ加硫用モールド2を装着された加硫成形機1にグリーンタイヤ200をセットし、金型を閉じた後、型締めしてグリーンタイヤ200の加硫成形を行う。なお、図5(a)〜図5(f)では、図示を明瞭にするためタイヤ加硫用モールド2の詳細形状については省略している場合がある。
図5(a)に示す型開き状態では、グリーンタイヤ200をその軸心方向が上下に向かうようにして下モールド22上に載置する。このとき、下方側に位置するビード部を下ビードリング24に対して位置合わせする。
図5(b)に示すように、続いて、ブラダ13内に空気を供給して膨張させ、その外面でグリーンタイヤ200の内側面を保持する。これにより、グリーンタイヤ200は、下ビードリング24とブラダ13によって支持され、下モールド22とは非接触状態となる。
図5(c)に示すように、続いて、昇降ロッド8及び昇降シリンダ7によって上モールド21及びセクターモールド20を降下させる。そして、上ビードリング23がグリーンタイヤ200の上方側に位置するビード部に当接する。
図5(d)および図5(e)に示すように、続いて、ビード部を介してグリーンタイヤ200が押圧されて変形した後、上モールド21がグリーンタイヤ200に当接する。上モールド21が型締め完了位置まで降下すると、グリーンタイヤ200は上モールド21と下モールド22とによって挟持された状態となる。
図5(f)に示すように、上モールド21が型締め完了位置まで降下した後も昇降シリンダ7による降下を続行し、上プレート3と共にジャケットリング15を下方側へと移動させる。これにより、ジャケットリング15の内周側円錐面がセグメント14の外周側円錐面を押圧する。そして、セグメント14に固定されたセクターモールド20が内径側へと移動する。
図5(a)から図5(f)に示すようにして、型締めが完了した後、加硫成形が実行され、成形完了後にこれらの逆の動きによってタイヤ加硫用モールド2が開かれると、グリーンタイヤ200が製品である空気入りタイヤ100(図1参照)となっている。
ここで、図1及び図3を参照しながら、下モールド22について説明する。
図1及び図3に示すように、上述の空気入りタイヤ100の形状に対応して下モールド22(または上モールド21)が形成されている。具体的には、下モールド22は、空気入りタイヤ100の標章112を形成するための標章形成部22aと、標章形成部22aの外周側及び標章形成部22aの周方向両側に設けられ、プロテクタ130を形成するためのプロテクタ形成部22bとを有する。なお、図1では、下モールド22に標章形成部22aが形成されているため、下モールド22を例示して説明しているが、上モールド21に標章形成部が形成されてもよい。
標章形成部22aは、下モールド22のタイヤのサイド部103を成型するための成型面22Aを凹設して設けられている。プロテクタ形成部22bは、第1プロテクタ131を形成するための第1プロテクタ形成部22cと、第2プロテクタ132を形成するための第2プロテクタ形成部22dとを備える。第1プロテクタ形成部22c、及び、第2プロテクタ形成部22dは、標章形成部22a同様に、下モールド22のタイヤのサイド部103を成型するための成型面22Aを凹設して設けられている。
標章形成部22aの成型面22Aから底面22eまでの深さD1は、標章112のサイド部103の基本面103aからの突出量H1に対応させて設けられている。第1及び第2プロテクタ形成部22c,22dの成型面22Aから底面22fまでの深さD2は、第1及び第2プロテクタ131,312のサイド部103の基本面103aからの突出量H2に対応させて設けられている。
第2プロテクタ形成部22dの標章形成部22a側の側壁22gは、第2プロテクタ形成部22dの底面22fから成型面22A側に向かって立ち上がる斜面で形成されている。側壁22gの成型面22Aに対する傾斜角θ2は、内壁面132cのサイド部103の基本面103aに対する傾斜角度θ1と対応させて設けられている。
標章形成部22aのタイヤ径方向内側には、タイヤ周方向に延びる周方向ソーカット溝22hが設けられている。これにより、グリーンタイヤの加硫時におけるグリーンタイヤと成型面22Aとの間の空気を抜くことができる。周方向ソーカット溝22hは、空気入りタイヤ100の周方向突条部133に対応させて設けられている。
周方向ソーカット溝22hのタイヤ径方向内側には、空気入りタイヤ100の第2の周方向突条部134に対応したタイヤ周方向に延びる第2の周方向ソーカット溝22iが設けられている。
周方向ソーカット溝22hと第2の周方向ソーカット溝22iとの間には、空気入りタイヤ100の径方向突条部135…135に対応させた位置に、複数の径方向ソーカット溝22j…22jが設けられている。
周方向ソーカット溝22h及び第2の周方向ソーカット溝22iと、複数の径方向ソーカット溝22j…22jとが交差する部位には、複数のベントホール22k…22kが設けられている。複数のベントホール22k…22kは、空気入りタイヤ100のベントスピューまたはベントスピュー跡136…136に対応して設けられている。
周方向ソーカット溝22h,22i、複数の径方向ソーカット溝22j…22j、及び、ベントホール22k…22kを備えた下モールド22によって、グリーンタイヤの加硫成型時におけるグリーンタイヤ200と成型面22Aとの間に残留する空気が排出される。
次に、本実施形態の空気入りタイヤの特徴を説明する。
標章112のタイヤ周方向両側及びタイヤ径方向外側には、標章112よりもサイド部103の基本面103aから突出したプロテクタ130が位置しているので、標章112の耐外傷性を向上できる。標章112は、空気だまりの生じやすいサイド部103の最大幅位置Wよりもタイヤ径方向外側に配置されているので、標章112における文字ベアを抑制できる。
第2プロテクタ132のタイヤ径方向内側の内壁面132cが斜面で形成されているので、第2プロテクタ形成部22dに対するゴム流れの悪化が緩和されて、第2プロテクタ132のベアを抑制できる。
第2プロテクタ132のタイヤ径方向内側の内壁面132cが斜面で形成されているので、標章形成部22aに対するゴム流れの悪化が緩和されて、文字ベアを抑制できる。
以上により、空気入りタイヤ100のサイド部103に設けられた標章112に対する耐外傷性を確保しながらサイド部103のベアを抑制できる。
前述のように、第2プロテクタ132の突出量H2と、標章112と第2プロテクタ132とのタイヤ径方向の最短距離R1とは、正の相関を有するように設定されている。これにより、第2プロテクタ形成部22dに対するゴム流れの悪化が抑制され、サイド部103のベアを抑制できる。
前述のように、第2プロテクタ132の頂面132dのタイヤ径方向内側の内端部132eと、標章112のタイヤ径方向外側の外端部112bとの最短距離R1が、2mm以上30mm以下で設けられているので、タイヤの加硫時において、標章形成部22a及び第2プロテクタ形成部22dに対するゴム流れの悪化が抑制されて、サイド部103のベアが抑制できる。2mm未満では、標章112と第2プロテクタ132とが隣接し、段差が生じることによる文字ベアが発生する。30mmより大きい場合は、標章112に対する第2プロテクタ132が離間しすぎるため、耐外傷性と視認性との確保が期待できない。
前述のように、標章112のタイヤ周方向両側の端部112c,112cと、第1プロテクタ131の標章112側の側辺部131c,131cとの最短距離W1は、2mm以上30mm以下で設けられていているので、タイヤの加硫成型時に、標章112周りの空気を効果的に抜くことができて、標章112の文字ベアを抑制できる。2mm未満では、標章112と第1プロテクタ131とが隣接し、段差が生じることによる文字ベアが発生する。30mmより大きい場合は、標章に対する第1プロテクタ131が離間しすぎるため、耐外傷性と視認性の確保が期待できない。
前述のように、サイド部103における標章112のタイヤ径方向内側に、タイヤの加硫時にタイヤと金型との間にたまった空気を排出するための周方向ソーカット溝22hによって、形成されるタイヤ周方向に延びる周方向突条部133が配置されているので、タイヤの加硫成型時に、周方向ソーカット溝22hによって、標章112周りの空気を効果的に抜くことができ、標章112の文字ベアを抑制できる。
前述のように、第1プロテクタ131の周方向部の標章112側の両側辺部131c,131cに、タイヤ加硫時にタイヤと金型との間にたまった空気を排出するためのソーカット溝によって形成されるタイヤ径方向に延びる径方向突条部131d,131dが配置されているので、タイヤの加硫成型時に、標章112周りの空気を効果的に抜くことができ、標章112の文字ベアを抑制できる。
前述のように、標章112は、標章112よりもタイヤ径方向内側から外側にかけて延びるとともに周方向に連続して設けられた第1プロテクタ131と、第1プロテクタ131よりもタイヤ径方向長さが短く周方向に連接して設けられた第2プロテクタ132とによって形成される凹部Sに収容されている。これにより、標章112の耐外傷性を向上させることができる。
前述のように、第2プロテクタ132のタイヤ径方向に延びる側辺部132aに、タイヤ加硫時にタイヤと金型との間にたまった空気を排出するためのソーカット溝によって形成されるタイヤ径方向に延びる他の径方向突条部が配置されているので、タイヤの加硫成型時に、標章112周りの空気を効果的に抜くことができ、標章112の文字ベアを抑制できる。
前述のように、第1プロテクタ131の側辺部131c,131cに沿ってタイヤ径方向に延びる一対の仮想直線L1,L1と、第2プロテクタ132の内壁面132cに沿って一対の仮想直線L1,L1間で周方向に延びる外側仮想円弧a1と、周方向突条部133に沿って一対の仮想直線L1,L1間でタイヤ周方向に延びる内側仮想円弧a2と、によって囲まれる領域の周長Aに対して、該周長A上に設けられる内壁面132cと、周方向突条部133と、第1プロテクタ131の径方向突条部131d,131dとの和が占める割合が3割以上設けられている。これにより、タイヤの加硫成型時に、標章112周りの空気を効果的に抜くことができるので、標章112の文字ベアを抑制することができる。
前述のように、標章112のタイヤ径方向内側の内端部1121と、周方向突条部133との最短距離R2は、2mm以上30mm以下で離間して設けられているので、タイヤの加硫時において、標章112周りの空気を効果的に抜くことができて、標章112の文字ベアを抑制できる。2mm未満では、標章の視認性が確保されず、30mmより大きい場合は、標章112と周方向突条部133とが離間しすぎてしまい、標章112のエアが抜けなくなり、文字ベアが発生する。
前述のように、下モールド22は、グリーンタイヤ200のサイド部103の基本面103aから突出する標章112を形成するための凹状の標章形成部22aと、標章形成部22aのタイヤ幅方向両側に位置し、サイド部103の基本面103aから突出する第1プロテクタ131を形成するための凹状の第1プロテクタ形成部22cと、標章形成部22aのタイヤ径方向外側に位置し、サイド部103の基本面103aから突出する第2プロテクタ132を形成するための凹状の第2プロテクタ形成部22dとを有するプロテクタ形成部22bと、を備える。これにより、標章112よりもサイド部103の基本面103aからタイヤ径方向外側に突出するプロテクタが設けられた空気入りタイヤが形成される。その結果、空気入りタイヤの標章112の耐外傷性を向上できる。
前述のように、第2プロテクタ形成部22dのタイヤ径方向内側の側壁22gが、第2プロテクタ形成部22dの底面22fから成型面22A側に立ち上がる斜面で形成されているので、下モールド22の第2プロテクタ形成部22dに加硫されるゴムに対して作用する第2プロテクタ形成部22dの底面22fから金型の成型面22A側に向かう張力が緩和される。これにより、第2プロテクタ形成部22dに対するゴム流れの悪化が緩和されて、第2プロテクタ132のベアが抑制できる。
前述のように、標章形成部22aのタイヤ径方向内側に設けられたタイヤ周方向に延びるソーカット溝22hによって、グリーンタイヤ200の加硫時におけるグリーンタイヤ200と成型面22Aとの間の空気を排出することができる。これにより、標章112の文字ベア及びサイド部のベアが抑制された空気入りタイヤが形成される。
上記各実施形態では、標章112を3文字で形成するように構成したが、これに限らない。すなわち、標章112は、1文字、2文字、及び、4文字以上であってもよいし、を採用してもよい。
また、上記各実施形態では、標章形成部22aが下モールド22に形成されているが、上モールド21に形成されていてもよいし、両方に形成されていてもよい。
本実施形態においては、プロテクタ130のサイド部103の基本面103aからの突出量H2は、標章112のサイド部103の基本面103aからの突出量H1よりも大きく形成される構成について説明したが、プロテクタ130の少なくとも一部におけるサイド部103の基本面103aからの突出量H2は、標章112のサイド部103の基本面103aからの突出量H1と一致するように形成されてもよい。なお、ここでいうプロテクタ130の突出量H2と標章112の突出量H1とは、幾何学的に厳密な意味で一致する必要はなく、両突出量間の段差による加硫成型時のゴム流れの悪化を抑制する効果が得られる限り、ある程度は突出量間に段差があってもよい。
これにより、標章112のサイド部103の基本面103aからの突出量H1に合わせてプロテクタ130の突出量H2を低減することで、標章112とプロテクタ130との間の段差が緩和される。その結果、タイヤ加硫成型時におけるゴム流れが阻害され難く、サイド部103のベアが抑制できる。
また、上記実施形態では、サイドゴム120がトレッド部102の上側に配設されるSWOT構造に適用したが、これに限らない。すなわち、トレッド部がサイドゴムにタイヤ幅方向外側から配設されるトレッドオンサイド(TOS)構造においても、本発明を好適に実施できる。
以上より、本発明の具体的な実施形態やその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。