JP2021084824A - セラミックス焼結体、及びセラミックス工具 - Google Patents

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淳 茂木
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義博 黒木
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Abstract

【課題】セラミックス工具の切削効率を高める。【解決手段】セラミックス焼結体1は、酸化ジルコニウム(ZrO2)と、炭化タングステン(WC)と、酸化ジルコニウム及び炭化タングステンのいずれとも相違する異種成分からなる。セラミックス焼結体1を鏡面研磨加工後、鏡面研磨された面をSEM(走査型透過電子顕微鏡)にて観察し、16μm×23μmの範囲のSEM画像について、酸化ジルコニウムの結晶粒子P1と、炭化タングステンの結晶粒子P2と、の粒界の長さX1(μm)と、異種成分の結晶粒子P3と、酸化ジルコニウムの結晶粒子P1と、の粒界の長さX2(μm)と、を求める。X1+X2に対するX1の比であるX1/(X1+X2)が下記式(1)を満たすことを特徴とする。0.55≦X1/(X1+X2)≦0.90 …式(1)【選択図】図2

Description

本発明は、セラミックス焼結体、及びセラミックス工具に関する。
炭化タングステンは高剛性・高硬度な成分であり、超硬合金をはじめ各種工具材料に用いられている。この炭化タングステンに対して、耐反応性に優れる酸化物を複合化させることで、より幅広い用途として活用できるようになってきた。例えば、酸化ジルコニウムと酸化アルミニウムを複合化させた特許文献1の従来技術では、高強度・高硬度なセラミックス焼結体をセラミックス工具として活用でき、鋳鉄や難加工材料として知られるInconel718などの耐熱合金の切削に用いることができる。こうした優れた特性は炭化タングステンの特性に依るところが大きい。
国際公開第2014/002743号公報
ところで、近年の航空機需要の高まりから、耐熱合金の多く用いられるエンジン加工の分野においては、より効率的な切削が求められている。また、他の分野においても、より効率的な切削が求められる場合がある。切削を効率的にする一つの技術として、より切削時の切込みを大きくして単位時間当たりの加工量を多くする事が検討されている。
しかし、これまでに検討された技術を適用しても、切削効率は必ずしも十分とは言えず、例えば、工具の耐欠損性を高めて切削効率を向上させる新たな技術が切望されていた。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、切削効率を高めることを目的とする。本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
〔1〕酸化ジルコニウムと、炭化タングステンと、前記酸化ジルコニウム及び前記炭化タングステンのいずれとも相違する異種成分からなるセラミックス焼結体であって、
セラミックス焼結体を鏡面研磨加工後、鏡面研磨された面をSEMにて観察し、16μm×23μmの範囲のSEM画像を得て、前記SEM画像について、
前記酸化ジルコニウムの結晶粒子と、前記炭化タングステンの結晶粒子と、の粒界の長さX1(μm)と、
前記異種成分の結晶粒子と、前記酸化ジルコニウムの結晶粒子と、の粒界の長さX2(μm)と、を求めて、
X1+X2に対するX1の比であるX1/(X1+X2)が下記式(1)を満たすことを特徴とする、セラミックス焼結体。

0.55≦X1/(X1+X2)≦0.90 …式(1)
〔2〕前記異種成分は、酸化アルミニウムであることを特徴とする、〔1〕に記載のセラミックス焼結体。
〔3〕前記酸化ジルコニウムの含有量が、1体積%以上20体積%以下であり、
前記酸化アルミニウムの含有量が、40体積%以上65体積%以下であり、
前記炭化タングステンの含有量が、30体積%以上55体積%以下であることを特徴とする、〔2〕に記載のセラミックス焼結体。
〔4〕〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の前記セラミックス焼結体から構成されたことを特徴とする、セラミックス工具。
〔5〕〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の前記セラミックス焼結体を基材とし、該基材の表面には、チタン、ジルコニウム、及びアルミニウムの炭化物、窒化物、酸化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、及び炭窒酸化物より選択される少なくとも1種の化合物からなる表面被覆層が形成されていることを特徴とする、セラミックス工具。
本発明のセラミックス焼結体は、微細組織が特定の構造を有することにより、セラミックス工具として用いた場合の耐欠損性に優れる。よって、切削効率を高めることができる。
異種成分が、酸化アルミニウムである場合には、耐欠損性に優れる。よって、切削効率を高めることができる。
酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、及び炭化タングステンの含有量が特定の範囲であると、耐欠損性に優れる。よって、切削効率を高めることができる。
本発明のセラミックス焼結体から構成されたセラミックス工具は、耐欠損性に優れるから、切削効率を高めることができる。
本発明のセラミックス焼結体を基材とし、特定の表面被覆層が形成されている場合には、さらに耐摩耗性が向上する。
セラミックス焼結体(セラミックス工具)の一例の斜視図である。 セラミックス焼結体のSEM画像を模式的に示した図である。 セラミックス焼結体の製造工程における原料粒子の態様を模式的に示す説明図である。 セラミックス焼結体の製造工程における原料粒子の態様を模式的に示す説明図である。 セラミックス工具の一例を示す断面図である。
以下、本発明を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「〜」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10〜20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10〜20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
1.セラミックス焼結体1
(1)セラミックス焼結体1の構成
セラミックス焼結体1は、酸化ジルコニウム(ZrO)と、炭化タングステン(WC)と、酸化ジルコニウム及び炭化タングステンのいずれとも相違する異種成分からなる。
セラミックス焼結体1を鏡面研磨加工後、鏡面研磨された面をSEM(Scanning Electron Microscope,走査型透過電子顕微鏡)にて観察し、16μm×23μmの範囲のSEM画像を得て、このSEM画像について、酸化ジルコニウムの結晶粒子P1と、炭化タングステンの結晶粒子P2と、の粒界の長さX1(μm)と、異種成分の結晶粒子P3と、酸化ジルコニウムの結晶粒子P1と、の粒界の長さX2(μm)と、を求めると、X1+X2に対するX1の比であるX1/(X1+X2)は下記式(1)を満たす。

0.55≦X1/(X1+X2)≦0.90 …式(1)
図2は、セラミックス焼結体1のSEM画像を模式的に示した図である。但し、図2は、セラミックス焼結体1のSEM画像を概念的に示したものであり、実際のSEM画像を正確に示したものではない。図2は、16μm×23μmの範囲のSEM画像のうちの2.5μm×3.5μmの部分を示す図である。このSEM画像では、酸化ジルコニウムの結晶粒子P1、炭化タングステンの結晶粒子P2、異種成分の結晶粒子P3が存在する様子が示されている。異種成分としては、酸化アルミニウムが好適に例示されるが、必ずしもこれに限られるものではない。また、異種成分とは、酸化ジルコニウムと炭化タングステンとは異なる特定の一成分を指すものではなく、これら2つの成分とは異なる全ての成分を指す。酸化ジルコニウムの結晶粒子P1と、炭化タングステンの結晶粒子P2と、の粒界は、実線L1で示されている。異種成分の結晶粒子P3と、酸化ジルコニウムの結晶粒子P1と、の粒界は、破線L2で示されている。
16μm×23μmの範囲のSEM画像に存在する実線L1の長さの合計がX1(μm)であり、破線L2の長さの合計がX2(μm)である。上記式(1)は、セラミックス焼結体1の鏡面研磨された面における16μm×23μmの範囲のSEM画像を5枚観察して、各SEM画像におけるX1/(X1+X2)の平均値が満たされていればよい。
(2)切削効率(耐欠損性)が高まる推測理由
X1及びX2が上記式(1)を満たすと、セラミックス焼結体1をセラミックス工具2として用いた場合の切削効率が高まる推測理由を説明する。炭化タングステンの熱膨張係数は、4.5ppm/Kであり、酸化ジルコニウムの熱膨張係数は、10.5ppm/Kである。このように、炭化タングステンと酸化ジルコニウムとでは熱膨張係数差が大きい。X1及びX2が上記式(1)を満たすと、炭化タングステンと酸化ジルコニウムの熱膨張係数差に起因する圧縮残留応力が効果的に炭化タングステンの結晶粒子P2に作用し、セラミックス焼結体1の耐欠損性が向上すると考えられる。その結果、セラミックス焼結体1をセラミックス工具2として用いた場合に、切削時の切込みを大きくできるので切削効率が高まると推測される。圧縮残留応力は、亀裂の進展を抑制すると共に、材料強度を高める。特に、本セラミックス焼結体1においては、炭化タングステンの結晶粒子P2内を亀裂が進展し易いため、炭化タングステンの結晶粒子P2に圧縮応力を付与することは、効果的であると考えられる。
X1/(X1+X2)は、炭化タングステンに対し十分な圧縮残留応力を付与する観点から、下限値に関して、0.55以上であり、0.59以上が好ましく、0.66以上がより好ましい。また、X1/(X1+X2)は、酸化ジルコニウムに付与される引張残留応力が大きくなり過ぎて、耐欠損性が低下することを防止する観点から、上限値に関して、0.90以下であり、0.83以下が好ましく、0.77以下がより好ましい。よって、X1/(X1+X2)は、0.55以上0.90以下であり、0.59以上0.83以下が好ましく、0.66以上0.77以下がより好ましい。
(3)セラミックス焼結体1に含まれる成分、及び各成分の含有量
セラミックス焼結体1は、酸化ジルコニウムと、炭化タングステンと、酸化ジルコニウム及び炭化タングステンのいずれとも相違する異種成分からなる。
酸化ジルコニウムが安定化材を含むことによって、高靭性であり、耐欠損性も良好となる。また、酸化ジルコニウムは、炭化タングステンとの熱膨張係数差が大きいため、炭化タングステンに圧縮残留応力を付与しやすい特徴を有する。安定化材は、特に限定されないが、希土類酸化物が好適に用いられる。希土類酸化物として、酸化イットリウム(Y)、酸化セリウム(CeO)、酸化マグネシウム(MgO)、及び酸化カルシウム(CaO)から選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。安定化材の固溶量は特に限定されないが、その固溶量は、安定化された酸化ジルコニウム100mol%に対して1mol%以上15mol%以下が好ましく、2mol%以上10mol%以下がより好ましい。
炭化タングステンは、強度及び硬度が高く、セラミックス焼結体1をセラミックス工具2として用いた場合の性能を確保するために必要である。
異種成分は、耐反応性が高く、セラミックス焼結体1の耐摩耗性に寄与する。
異種成分としては、酸化アルミニウムが好ましい。酸化アルミニウムは、耐反応性が高く、セラミックス焼結体1の耐摩耗性に寄与する。
但し、酸化アルミニウムの熱膨張係数は、7.2ppm/Kであり、酸化アルミニウムと炭化タングステンとの熱膨張係数差(2.7ppm/K)は、酸化ジルコニウムと炭化タングステンとの熱膨張係数差(6.0ppm/K)より小さい。よって、酸化アルミニウムは、炭化タングステンに残留応力をほとんど付与しないと考えられる。
異種成分として酸化アルミニウムを用いた場合の各成分の好ましい含有量について説明する。以下の含有量は、セラミックス焼結体1の全体を100体積%としたときの量である。
酸化ジルコニウムの含有量は、特に限定されない。酸化ジルコニウムの含有量は、硬度や焼結性の観点から、1体積%以上20体積%以下が好ましい。
酸化アルミニウムの含有量は、特に限定されない。酸化アルミニウムの含有量は、硬度や耐反応性の観点から、40体積%以上65体積%以下が好ましい。
炭化タングステンの含有量は、特に限定されない。炭化タングステンの含有量は、硬度や焼結性の観点から、30体積%以上55体積%以下が好ましい。
なお、「体積%」とは、セラミックス焼結体1に含まれる全物質の体積の総量を100%としたときの、各物質の割合を意味する。セラミックス焼結体1における各物質の含有量は、蛍光X線分析法等により各元素の量を求めることで算出できる。
(4)各成分の平均粒径は、特に限定されない。
2.セラミックス焼結体1の製造方法
セラミックス焼結体1の製造方法は特に限定されない。セラミックス焼結体1の製造方法の一例を以下に示す。
(1)原料
原料として次の原料粉末を使用する。
・酸化ジルコニウム粉末(ZrO粉末)
・所定の酸化物で部分安定化された酸化ジルコニウム粉末(ZrO粉末)
但し、所定の酸化物は、酸化イットリウム(Y)、酸化セリウム(CeO)、酸化マグネシウム(MgO)、及び酸化カルシウム(CaO)から選択される1種以上である。
・酸化アルミニウム粉末(Al粉末)
・炭化タングステン粉末(WC粉末)
(2)焼成用粉末の準備
(2.1)酸化ジルコニウム粉末(ZrO粉末)と炭化タングステン粉末(WC粉末)を所定の配合割合になる様に秤量する。容器(例えば樹脂ポット等)の中に、酸化ジルコニウム粉末、炭化タングステン粉末、球石(例えばZrO球石)、及びアルコール(例えばエタノール)を入れて混合粉砕する。得られたスラリーは湯煎乾燥にて処理し、乾燥混合粉Aを得る。
(2.2)容器(例えば樹脂ポット等)の中に、乾燥混合粉A、球石(例えばZrO球石)、及びイオン交換水を入れて混合してスラリーBが得られる。この際、スラリーBのpHは塩酸を添加することにより、6以下になるように調整する。このイオン交換水を用いたスラリーB中では炭化タングステン粒子(WC粒子)の表面はわずかに酸化されWOに変化する。WOの表面電位は、pH6以下では負である。よって、図3に模式的に示されるように炭化タングステン粒子(WC粒子)は、表面電位が負(マイナス)になる。他方、酸化ジルコニウム粒子(ZrO粒子)は、表面電位が正(プラス)になる。従って、図3に示されるように、炭化タングステン粒子と、酸化ジルコニウム粒子とは、お互いに引き合い、凝集して凝集体を形成する。
(2.3)容器(例えば樹脂ポット等)の中に、酸化アルミニウム粉末(Al粉末)、球石(例えばZrO球石)、及びアルコール(例えばエタノール)を入れて混合粉砕する。得られたスラリーは湯煎乾燥にて処理し、乾燥粉Cを得る。
(2.4)所定時間混合後のスラリーBに乾燥粉Cを投入後、更に所定時間混合する。この際、スラリーのpHは塩酸を添加することにより6以下に調整する。このように調製することで、図4に模式的に示す状態になる。すなわち、炭化タングステン粒子と酸化ジルコニウム粒子は凝集したままの凝集体として維持される。この凝集体は、表面電位が酸化ジルコニウム粒子により正(プラス)となっている。他方、酸化アルミニウム粒子は、表面電位は正(プラス)である。よって、凝集体と酸化アルミニウム粒子とは反発し合い、分散した状態となる。
得られたスラリーは、スプレードライ法により乾燥させ、乾燥粉Dとする。
(3)焼成
乾燥粉Dをカーボン冶具に投入し、ホットプレス焼成する。焼成は還元雰囲気で行い、焼成炉中の炭素の作用により、炭化タングステン粒子の表面のWOは還元され、WCに変化する。また、この焼成の際に、凝集体のシェル部に位置する酸化ジルコニウムが、凝集体のコア部に位置する炭化タングステンに圧縮残留応力を付与する。
3.セラミックス工具2
セラミックス工具2は、上記セラミックス焼結体1から構成されたことを特徴とする。セラミックス工具2として、切削工具、摩擦攪拌接合用工具が好適に例示される。セラミックス工具2の形状は、特に限定されない。
セラミックス焼結体1は、切削、研削、及び研磨の少なくとも1つの加工法によって形状や表面の仕上げを行って、セラミックス工具2とすることができる。もちろん、これらの仕上げが不要であれば、セラミックス焼結体1をそのままセラミックス工具2として用いてもよい。
セラミックス工具2は、図5に示されるように、セラミックス焼結体1を基材5とし、基材5の表面に、チタン、ジルコニウム、及びアルミニウムの炭化物、窒化物、酸化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、及び炭窒酸化物より選択される少なくとも1種の化合物からなる表面被覆層7が形成されていてもよい。
表面被覆層7が形成されると、セラミックス工具2の表面硬度が増加すると共に、被加工物との反応・溶着による摩耗進行が抑制される。その結果、セラミックス工具2の耐摩耗性が向上する。
チタン、ジルコニウム、及びアルミニウムの炭化物、窒化物、酸化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、及び炭窒酸化物より選択される少なくとも1種の化合物としては、特に限定されないが、TiN、TiAlN、TiAlCrN、AlCrNが好適な例として挙げられる。
表面被覆層7の厚みは、特に限定されない。表面被覆層7の厚みは、耐摩耗性の観点から、0.02μm以上30μm以下が好ましい。
以下の実験では、実施例1〜16、比較例1〜4の各セラミックス焼結体を作製し、これらの各セラミックス焼結体を加工して、実施例1〜16、比較例1〜4の各セラミックス切削工具とした。
1.セラミックス焼結体の作製
1.1 実施例1〜16
(1)原料粉末
以下に示す原料粉末を用いた。
(1.1)酸化ジルコニウム粉末(ZrO粉末)
次のいずれかの酸化ジルコニウム粉末を用いた。
・3mol%酸化イットリウム(Y)で部分安定化された平均粒径0.1μmの酸化ジルコニウム粉末(表1において、ZrOのうち「Yで部分安定化」と記載されたもの)
・5mol%酸化セリウム(CeO)で部分安定化された平均粒径0.1μmの酸化ジルコニウム粉末(表1において、ZrOのうち「CeOで部分安定化」と記載されたもの)
・10mol%酸化マグネシウム(MgO)で部分安定化された平均粒径0.1μmの酸化ジルコニウム粉末(表1において、ZrOのうち「MgOで部分安定化」と記載されたもの)
・10mol%酸化カルシウム(CaO)で部分安定化された平均粒径0.1μmの酸化ジルコニウム粉末(表1において、ZrOのうち「CaOで部分安定化」と記載されたもの)
(1.2)炭化タングステン粉末(WC粉末)
平均粒径0.6μmの炭化タングステン粉末を用いた。
(1.3)酸化アルミニウム粉末(Al粉末)
平均粒径0.5μmの酸化アルミニウム粉末を用いた。
(2)焼成用粉末の準備
(2.1)酸化ジルコニウム粉末(ZrO粉末)と炭化タングステン粉末(WC粉末)を下記表1の配合割合になる様に秤量した。樹脂ポットの中に、酸化ジルコニウム粉末、炭化タングステン粉末、ZrO球石、及びエタノールを入れて混合粉砕した。得られたスラリーは湯煎乾燥にて処理し、乾燥混合粉Aを得た。
Figure 2021084824
(2.2)樹脂ポットの中に、乾燥混合粉A、ZrO球石、及び水(イオン交換水)を入れて混合してスラリーBを得た。この際、スラリーBのpHは塩酸を添加することにより、6以下になるように調整した。このイオン交換水を用いたスラリーB中では炭化タングステン粒子(WC粒子)の表面はわずかに酸化されWOに変化している。WOの表面電位は、pH6以下では負である。よって、炭化タングステン粒子(WC粒子)は、表面電位が負(マイナス)になる。他方、酸化ジルコニウム粒子(ZrO粒子)は、表面電位が正(プラス)になる。従って、炭化タングステン粒子と、酸化ジルコニウム粒子とは、お互いに引き合い、凝集して凝集体を形成した。
(2.3)樹脂ポットの中に、酸化アルミニウム粉末(Al粉末)、ZrO球石、及びエタノールを入れて混合粉砕した。得られたスラリーは湯煎乾燥にて処理し、乾燥粉Cを得た。
(2.4)得られた乾燥粉Cを、3時間混合後のスラリーBに投入後、更に3時間混合した。なお、乾燥粉Cの投入量は、表1中の各実施例の配合比に合うようにした。実際には、乾燥粉Cの投入量は、乾燥混合粉Aの量から計算して求めた。この際、スラリーのpHは塩酸を添加することにより6以下に調整した。例えば、実施例1では、pH4.0に調製した。このように調製することで、炭化タングステン粒子と酸化ジルコニウム粒子は凝集したままの凝集体とで維持される。この凝集体は、表面電位が酸化ジルコニウム粒子により正(プラス)となっている。他方、酸化アルミニウム粒子は、表面電位は正(プラス)である。よって、凝集体と酸化アルミニウム粒子とは反発し合い、分散した。
得られたスラリーは、スプレードライ法により乾燥させ、乾燥粉Dとした。
(3)焼成
乾燥粉Dをカーボン冶具に投入し、ホットプレス焼成してセラミックス焼結体を得た。焼成時間は1時間、圧力は30MPa、雰囲気ガスはアルゴン(Ar)とした。この焼成は、還元雰囲気であり、焼成炉中の炭素の作用により、炭化タングステン粒子の表面のWOは還元され、WCに変化した。
1.2 比較例1〜3
比較例1〜3では、上記の「(2)焼成用粉末の準備」において、溶媒として、水を用いずにエタノールのみを用いて原料粉末を粉砕混合したこと以外は、実施例1〜16と同様にして、セラミックス焼結体を得た。なお、本製造方法は、従来の製造方法である。
すなわち、次のようにしてセラミックス焼結体を得た。
酸化ジルコニウム粉末(ZrO粉末)と炭化タングステン粉末(WC粉末)を上記表1の配合割合になる様に秤量した。樹脂ポットの中に、酸化ジルコニウム粉末、炭化タングステン粉末、ZrO球石、及びエタノールを入れて混合粉砕してスラリーEを得た。
樹脂ポットの中に、酸化アルミニウム粉末(Al粉末)、ZrO球石、及びエタノールを入れて混合粉砕した。得られたスラリーは湯煎乾燥にて処理し、乾燥粉Fを得た。
得られた乾燥粉Fを、3時間混合後のスラリーEに投入後、更に3時間混合した。なお、乾燥粉Fの投入量は、表1中の各比較例の配合比に合うようにした。得られたスラリーは、スプレードライ法により乾燥させ、乾燥粉Gとした。
乾燥粉Gをカーボン冶具に投入し、ホットプレス焼成してセラミックス焼結体を得た。焼成時間は1時間、圧力は30MPa、雰囲気ガスはアルゴン(Ar)とした。
1.3 比較例4
比較例4では、上記の「(2)焼成用粉末の準備」において、溶媒として、イオン交換水を用いた際のスラリーBのpHを7に調整したこと以外は、実施例1〜16と同様にして、セラミックス焼結体を得た。水には、アンモニア水を用いた。
すなわち、次のようにしてセラミックス焼結体を得た。
酸化ジルコニウム粉末(ZrO粉末)と炭化タングステン粉末(WC粉末)を上記表1の配合割合になる様に秤量した。樹脂ポットの中に、酸化ジルコニウム粉末、炭化タングステン粉末、ZrO球石、及びエタノールを入れて混合粉砕した。得られたスラリーは湯煎乾燥にて処理し、乾燥混合粉Aを得た。
樹脂ポットの中に、乾燥混合粉A、ZrO球石、及びアンモニア水を入れて混合してスラリーB’を得た。この際、スラリーB’のpHは7とした。
樹脂ポットの中に、酸化アルミニウム粉末(Al粉末)、ZrO球石、及びエタノールを入れて混合粉砕した。得られたスラリーは湯煎乾燥にて処理し、乾燥粉Cを得た。
得られた乾燥粉Cを、3時間混合後のスラリーB’に投入後、更に3時間混合した。なお、乾燥粉Cの投入量は、表1中の比較例4の配合比に合うようにした。得られたスラリーは、スプレードライ法により乾燥させ、乾燥粉D’とした。
乾燥粉D’をカーボン冶具に投入し、ホットプレス焼成してセラミックス焼結体を得た。焼成時間は1時間、圧力は30MPa、雰囲気ガスはアルゴン(Ar)とした。
2.粒界長さの測定
セラミックス焼結体を鏡面研磨加工後、SEM観察を行い、各セラミックス焼結体に対して、5枚のSEM画像(5000倍)を得た。
各SEM画像について、それぞれ16μm×23μmの範囲をとり、WinRoof(画像解析・計測ソフトウェア 三谷商事株式会社)にて、酸化ジルコニウムの結晶粒子P1と、炭化タングステンの結晶粒子P2と、の粒界の長さX1(μm)と、異種成分(酸化アルミニウム)の結晶粒子P3と、酸化ジルコニウムの結晶粒子P1と、の粒界の長さX2(μm)と、を求めた。X1+X2に対するX1の比であるX1/(X1+X2)を各SEM画像について求めて、その平均値を算出した。
3.セラミックス切削工具の作製
実施例1〜16及び比較例1〜4のセラミックス焼結体を、工具形状(RCGX120700T01020)に加工した。
なお、表1には、上述のようにセラミックス焼結体の原料粉末の組成(配合)が示されているが、この組成は焼成の前後で実質的に変化しないから、各セラミックス焼結体の組成と同等である。そして、焼成後の各セラミックス焼結体を機械加工して、セラミックス切削工具としているのであるから、結局、原料粉末の組成はセラミックス切削工具の組成と同等である。
4.切削試験
(1)試験方法
各セラミックス切削工具を用いて、切削試験を行った。試験条件は下記の通りである。
・被削材:耐熱合金インコネル718
・切削速度:240m/min
・切込み量:1.0mm〜
・送り量:0.2mm/rev.
・切削環境:冷却水あり
具体的には、各実施例・比較例ごとに切込み量を1mmで切削を行い、欠けが無い場合は、同試料を用いて切込み量を0.1mm大きくして、同様の切削を行う。この様に、0.1mmずつ切込み量を大きくしていき、欠損が生じた時の切込み量を調べた。なお、本試験においては切込み量2.0mm以上で欠損しなかった場合において、良好な結果とみなす。欠損が生じた時の切込み量が大きいほど、耐欠損性が高く、切削効率が高いことを意味する。
(2)試験結果
試験結果を表1に示す。X1/(X1+X2)が0.55以上0.90以下である実施例1〜16のセラミックス切削工具は、欠損時の切込み量が2.0mm以上であり、優れた耐欠損性を示した。他方、X1/(X1+X2)が0.55未満の比較例1〜4のセラミックス切削工具は、欠損時の切込み量が2.0mm未満であり、耐欠損性が低かった。
実施例1〜16のセラミックス切削工具の中でも、酸化ジルコニウムの含有量が、1体積%以上20体積%以下であり、酸化アルミニウムの含有量が、40体積%以上65体積%以下であり、炭化タングステンの含有量が、30体積%以上55体積%以下である実施例3〜8、10〜16のセラミックス切削工具は、特に優れた耐欠損性を示した。
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形又は変更が可能である。例えば、セラミックス工具2は摩擦撹拌接合用工具であってもよい。摩擦撹拌接合用工具を用いた摩擦撹拌接合の具体的な態様は特に限定されない。摩擦撹拌接合は、例えば次のように行われる。摩擦撹拌接合用工具の突起部(プローブ部)を回転させながら被接合部材に押し込み、摩擦熱によって被接合部材の一部を軟化させる。そして、軟化した部分を突起部によって撹拌して被接合部材同士を接合する。
1 …セラミックス焼結体
2 …セラミックス工具
5 …基材
7 …表面被覆層
P1…酸化ジルコニウムの結晶粒子
P2…炭化タングステンの結晶粒子
P3…異種成分の結晶粒子
L1…酸化ジルコニウムの結晶粒子P1と、炭化タングステンの結晶粒子P2との粒界
L2…異種成分の結晶粒子P3と、酸化ジルコニウムの結晶粒子P1との粒界

Claims (5)

  1. 酸化ジルコニウムと、炭化タングステンと、前記酸化ジルコニウム及び前記炭化タングステンのいずれとも相違する異種成分からなるセラミックス焼結体であって、
    セラミックス焼結体を鏡面研磨加工後、鏡面研磨された面をSEMにて観察し、16μm×23μmの範囲のSEM画像を得て、前記SEM画像について、
    前記酸化ジルコニウムの結晶粒子と、前記炭化タングステンの結晶粒子と、の粒界の長さX1(μm)と、
    前記異種成分の結晶粒子と、前記酸化ジルコニウムの結晶粒子と、の粒界の長さX2(μm)と、を求めて、
    X1+X2に対するX1の比であるX1/(X1+X2)が下記式(1)を満たすことを特徴とする、セラミックス焼結体。

    0.55≦X1/(X1+X2)≦0.90 …式(1)
  2. 前記異種成分は、酸化アルミニウムであることを特徴とする、請求項1に記載のセラミックス焼結体。
  3. 前記酸化ジルコニウムの含有量が、1体積%以上20体積%以下であり、
    前記酸化アルミニウムの含有量が、40体積%以上65体積%以下であり、
    前記炭化タングステンの含有量が、30体積%以上55体積%以下であることを特徴とする、請求項2に記載のセラミックス焼結体。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の前記セラミックス焼結体から構成されたことを特徴とする、セラミックス工具。
  5. 請求項1から3のいずれか一項に記載の前記セラミックス焼結体を基材とし、該基材の表面には、チタン、ジルコニウム、及びアルミニウムの炭化物、窒化物、酸化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、及び炭窒酸化物より選択される少なくとも1種の化合物からなる表面被覆層が形成されていることを特徴とする、セラミックス工具。
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