JP2021084496A - 車両の衝撃吸収部材 - Google Patents
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Abstract
Description
図1に示す車両2では、後述する適宜の位置に衝撃吸収部材4が配設され、車両衝突時などに車両が受けた衝撃荷重(以下、単に荷重Fと呼ぶ)を吸収することが可能となっている。そして衝撃吸収部材4は、図2及び図5に示すように、木材6と、一対の拘束部材10,12と、複数の連結部21〜24と、一対の補強部31,32を有している(各構成の詳細は後述)。この衝撃吸収部材4では、車両2が受けた荷重Fを、木材6が荷重入力方向である左方に向けて圧壊することで吸収する。また一対の拘束部材10,12は、木材6を上下から挟み付けて拘束しつつ、これらの前端側と後端側に位置する連結部21〜24で部分的に連結されている。
ここで図1の車両2に対する衝撃吸収部材4の配設位置は、荷重Fの入力が想定される車両2の適宜の位置に設定できる。例えば車両2は、車両の前後方向に対向している前部2a及び後部2bと、車幅方向である左右方向に対向している右側部2c及び左側部2dとを有している。そして衝撃吸収部材4は、車両2の各部2a〜2dの適宜の位置に配設することが可能であり、必要に応じて車両2の内部に配設することもできる。例えば本実施形態では、車両側突時の荷重Fを衝撃吸収部材4で吸収する場合を想定し、衝撃吸収部材4を車両2の右側部2cと左側部2dに配設しておく(図1では、便宜上、右側部の衝撃吸収部材のみ図示する)。そして車両2の右側部2c等には、車両ボディの一部をなす金属製のボディ3が配置されており、このボディ3の右側に衝撃吸収部材4が取付けられている。なお車両2に対する衝撃吸収部材4の取付け手法は特に限定しないが、典型的には締結や溶接などの手法を例示できる。例えば本実施形態では、衝撃吸収部材4の周縁側に図示しないボルト材を挿設するとともに、これらボルト材を介して衝撃吸収部材4をボディ3等に締結して取付けている。
木材6は、図2〜図4を参照して、衝撃吸収部材4の芯部となる部材であり、車両側突時の荷重Fによって変形することができる。この木材6は、図1の車両2に配設された状態において、図4に示すように年輪の軸心方向Aが荷重Fの入力方向(各図の左右方向)とほぼ一致するように配置されている。このため衝撃吸収部材4では、車両側突時の荷重Fを、木材6が年輪の軸心方向Aに圧縮しつつ潰れる(圧壊する)ことで良好に吸収することが可能となっている。なお木材6は、スギやヒノキやマツなどの針葉樹、ケヤキやブナなどの広葉樹から採取することが可能であり、特に相対的に年輪がはっきりしている針葉樹から採取することが望ましい。
一対の拘束部材(上側拘束部材10,下側拘束部材12)は、図2〜図4を参照して、それぞれ木材6を拘束するための部材である。これら上側拘束部材10と下側拘束部材12は、いずれも略矩形状の板材(同形同寸)で構成されており、これらの外形は、木材6の上下の各面8a,8bの外形に概ね一致している。そして各拘束部材10,12は、木材6よりも硬い素材で形成されているとともに、荷重Fの入力によって塑性変形することができる。この種の素材として、塑性変形可能な各種の素材を用いることができ、相対的に硬く且つ強度性に優れる金属(合金を含む)を用いることができる。なお金属の種類は、塑性変形可能である限り特に限定しないが、アルミニウムや鉄や鋼やステンレスなどの各種金属を例示でき、なかでも軽量なアルミニウムを素材として用いることが望ましい。
そして図2を参照して、一対の拘束部材10,12は、複数の連結部(一対の右連結部21,22,一対の左連結部23,24)を介して連結された状態で木材6に取付けられている。すなわち各連結部21〜24は、一対の拘束部材10,12同士を連結するとともに、各拘束部材10,12を木材6に取付けている部材である。なお各連結部21〜24の素材は、適度な強度を備えていれば特に限定しないが、典型的には拘束部材で例示の素材を用いることができる。そして各連結部21〜24は、いずれも上下方向に長尺なボルト状の部材であり、概ね同一の基本構成を有している。例えば図4に示す前側の右連結部21は、上下に延びる軸状の部材であって、上側の端部には相対的に径大とされた頭部HMが設けられ、さらに下側の端部にはナットNTを螺合できる。
そして図3を参照して、各右連結部21,22の間の各拘束部材10,12には、木材6の入力端側において連結部にて連結されていない非連結領域50が形成される。この非連結領域50は、各右連結部21,22が存在しない領域であり、本実施形態ではこれらの連結力が作用する領域(右連結部の近傍)を除くように設定している。そして非連結領域50は、各右連結部21,22が存在しないため、各右連結部21,22によって木材6のスムーズな圧壊が過度に邪魔されるといった事態が極力回避されている。そこで本実施形態では、各拘束部材10,12に大きな非連結領域50を意図的に設け、一対の拘束部材10,12で木材6を適度に拘束することにより、木材6のスムーズな圧壊を確保することが可能となっている。さらに衝撃吸収部材4では、非連結領域50を大きくすることで、連結部の配設数を極力抑えることができ、軽量化と製造コストの低減に資する構成となっている。
そして図3を参照して、上側拘束部材10の非連結領域50には上側補強部31が形成されており、下側拘束部材12の非連結領域50には下側補強部32が形成されている。これら各補強部31,32は、荷重入力の際において、木材6から離れる外側への変形を規制するように各拘束部材10,12を補強する部位であり、その結果として各拘束部材10,12の荷重入力方向への塑性変形を促す部位でもある。そして各拘束部材10,12には、概ね同一基本構成の補強部が形成されているため、以下に、専ら上側拘束部材10の上側補強部31を一例にその詳細を説明する。
ここで図6を参照して、上側補強部31の形成位置は、衝撃吸収部材4の衝撃吸収性に応じて設定でき、典型的には木材6の右端面8c(入力端面)に近い位置に設定できる。なお上側補強部31の形成位置の設定手法は特に限定しないが、例えば本実施形態では、木材6の左右の寸法を基準に当該形成位置を設定している。すなわち木材6の右端面8cから左端面8dまでの距離を基準距離H0とし、上側補強部31の形成可能な領域を、右端面8cからの距離(第一距離H1)で規定する。このとき第一距離H1を、基準距離H0の1/3以下、好ましくは1/3程度(H1≒1/3×H0)に設定することで、衝撃吸収部材4の衝撃吸収性を確保することができる。さらに図5及び図6に示す上側補強部31の突出寸法P(上外側面10bから天井壁31cまでの距離)も、上外側面10bの剛性(面外剛性)を確保できるならば特に限定しないが、典型的には上側拘束部材10の強度等に応じて設定できる。例えばアルミニウム製の上側拘束部材10(厚み寸法T)を用いる場合、上側補強部31の突出寸法Pを、厚み寸法Tの二倍以下(D≦2×T)に設定する。こうすることで、上外側面10bの剛性(面外剛性)を確保しつつ、さらに上側拘束部材10の適切な向きへの塑性変形をより確実に促すことが可能となる。
図1及び図2に示す衝撃吸収部材4によって、車両の衝突時などに車両の右側部2cに入力された荷重Fを吸収する。例えば本実施形態では、車両2の側突時において、図7及び図8を参照して、衝突物X(例えば電柱などの円筒状の物体)が衝突した場合を想定する。このとき衝撃吸収部材4では、衝突物Xとの衝突の際の荷重Fを、木材6が年輪の軸心方向Aに向けて圧壊することで吸収する。また木材6の年輪の軸心方向Aに沿って亀裂が入った場合、木材6を上下から挟み付けている一対の拘束部材10,12によって、木材6が極力割裂しないように拘束する。そして本実施形態では、木材6のスムーズな圧壊を確保するため、非連結領域50を意図的に大きくして木材6を適度に拘束している。この種の衝撃吸収部材4では、上述の非連結領域50に荷重Fが入力される場合、一対の右連結部21,22の間の各拘束部材10,12を、木材6を適度に拘束した状態で維持しつつ、適切な向きに塑性変形させることが望ましい。
ここで補強部の構成は、上述の構成のほか、各種の構成をとり得る。例えば図9に示す変形例1の衝撃吸収部材4Aでは、各拘束部材10,12が、実施形態1と概ね同一の基本構成を有しているが、各補強部31A(32A)が、各拘束部材の各外側面10b(12b)を部分的に肉盛りすることで形成されている点が実施形態1と異なっている。そして本変形例においても、肉盛りされて形成された補強部31A(32A)が、各拘束部材の各外側面10b(12b)から突出するリブとして機能し、外側への変形を規制するように各外側面10b(12b)の剛性を向上させている。また本変形例では、各拘束部材の内側面10a(12a)がそのままの状態で残っているため、木材6の対応する面8a(8b)に安定的に当接させておくことができ、優れた拘束性の確保に資する構成となっている。なお補強部31A(32A)の形成手法は特に限定しないが、鋳造や切削の過程で形成でき、肉盛溶接やロウ接などの手法で各拘束部材10,12に後付けすることも可能である。
また図10に示す変形例2の衝撃吸収部材4Bでは、拘束部材10,12とは別体の部材が後付けされ、この別体としての部材によって補強部31B(32B)が形成されている点が実施形態1と異なっている。ここで補強部31B(32B)を構成する部材は、適度な強度を有する板状又は柱状の部材(典型的に金属製)であり、溶接や締結などの手法によって各拘束部材10(12)に固定しておくことができる。そして本変形例では、補強部31B(32B)が各拘束部材の各外側面10b(12b)から突出する桟として機能し、外側への変形を規制するように各外側面10b(12b)の剛性を向上させている。なお本変形例では、必要に応じて剛性や突出寸法Pの異なる複数種類の補強部(別体としての部材)を用意しておくこともできる。そしてこれら複数種類の補強部の中から、衝撃吸収性や車両側の収容スペース等を考慮して使用すべき補強部31B(32B)を選択して各拘束部材10(12)に固定することができる。
また図11に示す変形例3の衝撃吸収部材4Cは、木材6(実施形態と同一構成)と、一対の拘束部材10,12(実施形態と同一構成)と、一対の連結部21A〜24Aとを有している。そして本変形例では、各連結部21A〜24Aが、概ねコ字状の板材で構成され且つ木材6を貫通していない点が実施形態1と異なっている。
図12及び図13に示す実施形態2の衝撃吸収部材4Dでは、実施形態1の衝撃吸収部材とほぼ同一の基本構成を備える構成については、対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。実施形態2の衝撃吸収部材4Dは、木材6(実施形態1と同一構成)と、一対の拘束部材10,12と、複数の連結部21〜24(実施形態1と同一構成)とを有している。そして本実施形態では、各補強部(上側補強部31D,下側補強部32D)が、対応する拘束部材10,12の右端側に設けられたフランジ状の部位である点が実施形態1と異なっている。
ここで図13を参照して、各補強部31D(32D)の突出寸法P1は、各外側面10b(12b)の剛性を確保できるならば特に限定しないが、木材6の右端面8cに対する荷重Fの入力が可能なように設定することが望ましい。例えば本実施形態のように各補強部31D,32Dを対称形状とした場合、各補強部31D,32Dの突出寸法P1を、各拘束部材10,12の間の離間寸法D1の二倍以下に設定することが望ましい。なお各補強部31D,32Dの突出寸法を異ならせてこれらを非対称形状とすることもでき、この場合においても、これらを分断させておくことが望ましい。
4X 公知技術の衝撃吸収部材
6X 公知技術の木材
10X,12X 公知技術の拘束部材
BM 公知技術の連結部
2 車両
2a 車両の前部
2b 車両の後部
2c 車両の右側部
2d 車両の左側部
3 ボディ
4 衝撃吸収部材
6 木材
6H 連結部用の貫通孔
8a 木材の上面
8b 木材の下面
8c 木材の右端面
8d 木材の左端面
8e 木材の前端面
8f 木材の後端面
10 上側拘束部材
10a 上側拘束部材の下内側面
10b 上側拘束部材の上外側面
10c 上側拘束部材の右端
10d 上側拘束部材の左端
10H 連結部用の貫通孔
12 下側拘束部材
12a 下側拘束部材の上内側面
12b 下側拘束部材の下外側面
12c 下側拘束部材の右端
12d 下側拘束部材の左端
12H 連結部用の貫通孔
21 前側の右連結部
22 後側の右連結部
23 前側の左連結部
24 後側の左連結部
HM 頭部
NT ナット
31 上側補強部
31a 上側補強部の上側壁
31b 上側補強部の下側壁
31c 上側補強部の天井壁
32 下側補強部
32a 下側補強部の上側壁
32b 下側補強部の下側壁
32c 下側補強部の天井壁
50 非連結領域
4A 変形例1の衝撃吸収部材
31A,32A 変形例1の補強部
4B 変形例2の衝撃吸収部材
31B,32B 変形例2の補強部
4C 変形例3の衝撃吸収部材
21A 変形例3の前側の右連結部
22A 変形例3の後側の右連結部
23A 変形例3の前側の左連結部
24A 変形例3の後側の左連結部
4D 実施形態2の衝撃吸収部材
31D 実施形態2の上側補強部
32D 実施形態2の下側補強部
F 荷重(衝撃荷重)
X 衝突物
Claims (5)
- 木材と、前記木材よりも硬い一対の拘束部材と、前記一対の拘束部材同士を連結し且つ各拘束部材を前記木材に取付けている連結部とを備え、
前記木材は、年輪の軸心方向が荷重の入力方向に沿うように配置されるとともに、荷重入力側に位置する入力端部を有し、
前記一対の拘束部材は、前記木材の入力端部側における平面視において、前記木材の入力端部を挟み付けるように対向して配置された状態で、両拘束部材の間に橋渡された一対の連結部で連結されている車両の衝撃吸収部材において、
前記一対の連結部が、前記平面視において橋渡し方向と直交する方向に離間して配置されることで、前記一対の連結部の間に位置する前記各拘束部材に、連結部にて連結されていない非連結領域が形成されており、
前記非連結領域には、荷重入力の際に前記木材から離れる外側への変形を規制するように前記各拘束部材を補強してその荷重入力方向への塑性変形を促す補強部が設けられている車両の衝撃吸収部材。 - 前記各拘束部材は、各々、前記木材を臨む内側面と、前記内側面とは反対の外側面とを有し、前記補強部は、前記内側面と前記外側面の少なくとも一方から突出している請求項1に記載の車両の衝撃吸収部材。
- 前記補強部は、前記内側面と前記外側面の少なくとも一方を部分的に隆起させるように前記各拘束部材を突出方向に曲げ形成してなる部位である請求項2に記載の車両の衝撃吸収部材。
- 前記補強部は、前記一対の連結部の一方から他方に向けて連続的に形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の衝撃吸収部材。
- 衝撃吸収部材の外形が所定の方向に長尺な柱形状又は板形状とされており、
前記一対の拘束部材は、長尺方向における各端側に位置する各連結部にて連結されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両の衝撃吸収部材。
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