JP2021084244A - 液体吐出装置 - Google Patents

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誠之 福岡
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敬詞 渡邊
拓 畠山
Hiroshi Hatakeyama
拓 畠山
祐太 森脇
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祐太 森脇
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Junji Yamamoto
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Abstract

【課題】ノズル形成面を払拭した後の払拭部材であっても良好に液体を吸液でき、ノズル形成面や装置内部の汚染度を低減でき、払拭部材の交換頻度が少ない液体吐出装置を提供することを目的とする。【解決手段】グリコールエーテル化合物及び顔料を含む液体と、複数のノズルからなるノズル列が形成されたノズル形成面を有し、前記液体を記録媒体に吐出する吐出手段と、前記ノズル形成面に対して相対移動可能であり、前記ノズル形成面を払拭する払拭部材を有する払拭手段と、を備え、前記払拭部材はセルロース繊維を含み、前記吐出手段は、前記払拭部材における前記ノズル形成面を払拭した領域に前記液体を吐出することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、液体吐出装置に関する。
インクジェットプリンタに代表される液体吐出装置は、インクなどの液体をノズルから吐出して画像を形成することが知られている。このような画像形成においては、インク成分や埃などの異物がノズル周辺に付着することにより、吐出不良などの不具合が生じる場合がある。
そのため、不織布や織布に代表されるシート状の払拭部材を用い、ノズル形成面をクリーニングする方法や、キャップなどの液体受容部材に対して画像形成に関与しない液体を吐出する予備吐出を行い、クリーニングする方法が知られている。従来より、払拭部材と液体受容部材の両方を備えた装置が提案されている。
しかしながら、払拭部材や液体受容部材の両方を備える場合、装置の大型化やコスト高につながる。これに対して、払拭部材と液体受容部材の両方の機能を備えた部材を用い、払拭かつ液体受容を同一の部材で行うことにより、装置の小型化を狙えると考えられる。例えば特許文献1には、シート状の払拭部材に対して予備吐出を行う装置が開示されている。
しかしながら、予備吐出時の液体受容部が十分な吸液性能を有さない場合、液体の跳ね返りなどに伴う飛び散りが発生し、装置内部やノズル形成面の汚染につながることがある。また、顔料などの固体成分を含む液体を吐出する場合、ノズル形成面を払拭した払拭部材の領域では、払拭部材表層に固体が堆積し、液体受容機能の低下が発生しやすい。そのため、ノズル形成面を払拭した後の領域に対して予備吐出を行うと、十分に吸液できず、装置内部やノズル形成面の汚染につながりやすい。
このような汚染を防ぐためには、払拭部材における払拭に使用していない領域に対して予備吐出を行う必要があるが、払拭部材の交換頻度が高くなってしまう。そのため、払拭と液体受容の両方の機能を備える払拭部材に対して予備吐出を行う場合、払拭部材の吸液性の低下を抑え、ノズル形成面や装置内部の汚染度を低減することが求められる。
そこで本発明は、ノズル形成面を払拭した後の払拭部材であっても良好に液体を吸液でき、ノズル形成面や装置内部の汚染度を低減でき、払拭部材の交換頻度が少ない液体吐出装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の液体吐出装置は、グリコールエーテル化合物及び顔料を含む液体と、複数のノズルからなるノズル列が形成されたノズル形成面を有し、前記液体を記録媒体に吐出する吐出手段と、前記ノズル形成面に対して相対移動可能であり、前記ノズル形成面を払拭する払拭部材を有する払拭手段と、を備え、前記払拭部材はセルロース繊維を含み、前記吐出手段は、前記払拭部材における前記ノズル形成面を払拭した領域に前記液体を吐出する。
本発明によれば、ノズル形成面を払拭した後の払拭部材であっても良好に液体を吸液でき、ノズル形成面や装置内部の汚染度を低減でき、払拭部材の交換頻度が少ない液体吐出装置を提供することができる。
払拭装置を組み込んだ画像形成装置の一例を模式的に表した図である。 吐出ヘッドのノズル面の一例を模式的に表した図である。 払拭動作の一例を模式的に表した図である。 予備吐出動作の一例を模式的に表した図である。 予備吐出動作の一例を説明するためのフローである。 シート状の払拭部材の断面の一例を模式的に表した図である。 セルロースで測定される赤外吸収スペクトルの一例である。
以下、本発明に係る液体吐出装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
(液体吐出装置)
本実施形態の液体吐出装置は、グリコールエーテル化合物及び顔料を含む液体と、複数のノズルからなるノズル列が形成されたノズル形成面を有し、前記液体を記録媒体に吐出する吐出手段と、前記ノズル形成面に対して相対移動可能であり、前記ノズル形成面を払拭する払拭部材を有する払拭手段と、を備え、前記払拭部材はセルロース繊維を含み、前記吐出手段は、前記払拭部材における前記ノズル形成面を払拭した領域に前記液体を吐出する。以下、詳細を説明する。なお、液体を吐出液体とも称する。
本実施形態において「払拭」とは、払拭部材とノズル形成面を接触させつつ、払拭部材及びノズル形成面のうち少なくとも一方を移動させることを表す。払拭部材を用いてノズル形成面を払拭することにより、ノズル形成面で吐出液体が乾燥して付着した固着物をノズル形成面から除去することができる。
本実施形態では、液体吐出方法が提供され、本実施形態における液体吐出方法は、例えば、吐出手段により液体を記録媒体に吐出する吐出工程と、払拭手段により吐出手段のノズル形成面を払拭する払拭工程と、を含み、必要に応じてその他の工程を含む。
図1から図4を用いて、液体吐出装置の一例である画像形成装置を例に、本実施形態について説明する。図1は、払拭手段を備えた画像形成装置の一例を模式的に表した図である。図2は、吐出ヘッド(吐出手段)のノズル形成面の一例を模式的に表した図である。図3及び図4は、払拭手段の一例を模式的に表した図である。図3は払拭部材がノズル形成面を払拭する場合の模式図であり、図4は吐出手段が払拭部材に対して液体を吐出する場合の模式図である。
図1に示す画像形成装置は、シリアル型の液体吐出装置である。画像形成装置は、左右の側板に横架した主ガイド部材1及び従ガイド部材でキャリッジ3を移動可能に保持している。そして、キャリッジ3は、主走査モータ5によって、駆動プーリ6と従動プーリ7との間に架け渡したタイミングベルト8を介して主走査方向(キャリッジ移動方向)に往復移動する。
このキャリッジ3には、吐出ヘッドの一例である吐出ヘッド4a、4b(区別しないときは「吐出ヘッド4」という。)を搭載している。吐出ヘッド4は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)、ホワイト(W)等の各色のインク滴を吐出し、必要に応じて、例えば、シルバーインク(S)等のインク滴を吐出する。また、吐出ヘッド4は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、滴吐出方向を下方に向けて装着している。
吐出ヘッド4は、図2に示すように、ノズル形成面41に、複数のノズル4nを配列した2つのノズル列Na、Nbを有する。吐出ヘッド4の構成としては、例えば、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いてインクの膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータを用いることができる。
また、図1に示す画像形成装置は、用紙10を搬送するために、用紙を静電吸着して吐出ヘッド4に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト12を備えている。この搬送ベルト12は、無端状ベルトであり、搬送ローラ13とテンションローラ14との間に掛け渡されている。そして、搬送ベルト12は、副走査モータ16によって、タイミングベルト17及びタイミングプーリ18を介して搬送ローラ13が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。この搬送ベルト12は、周回移動しながら帯電ローラによって帯電(電荷付与)される。
さらに、キャリッジ3の主走査方向の一方側には搬送ベルト12の側方に吐出ヘッド4の維持回復を行う維持回復機構20が配置され、他方側には搬送ベルト12の側方に吐出ヘッド4から空吐出を行う空吐出受け21がそれぞれ配置されている。維持回復機構20は、例えば吐出ヘッド4のノズル面(ノズルが形成された面)を覆ってキャッピングするキャップ20a、ノズル面を払拭する維持回復機構20b、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出受けなどで構成されている。
また、画像形成装置は、キャリッジ3の主走査方向に沿って両側板間に、所定のパターンを形成したエンコーダスケール23を張装している。また、キャリッジ3にはエンコーダスケール23のパターンを読み取る透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ24が設けられている。これらのエンコーダスケール23とエンコーダセンサ24によってキャリッジ3の移動を検知するリニアエンコーダ(主走査エンコーダ)を構成している。
また、搬送ローラ13の軸にはコードホイール25が取り付けられており、このコードホイール25に形成したパターンを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ26も設けられている。これらのコードホイール25とエンコーダセンサ26によって搬送ベルト12の移動量及び移動位置を検出するロータリエンコーダ(副走査エンコーダ)が構成されている。
このように構成された画像形成装置において、用紙10が帯電された搬送ベルト12上に給紙されることで吸着され、搬送ベルト12の周回移動によって用紙10が副走査方向に搬送される。そこで、キャリッジ3を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて吐出ヘッド4を駆動することにより、停止している用紙10にインク滴を吐出して1行分を記録する。そして、用紙10を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙10の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙10を排紙トレイに排紙する。
また、吐出ヘッド4のクリーニングを行う場合は、例えば印字(記録)待機中にキャリッジ3を維持回復機構20に移動させ、維持回復機構20により清掃を実施する。また、吐出ヘッド4は移動せず、維持回復機構20が移動してヘッドを清掃するようにしてもよい。
ノズル形成面を払拭する維持回復機構20bは払拭手段の一例である。維持回復機構20bは、図3に側面図として示すように、払拭部材の一例であって払拭液を含浸するシート状払拭部材320と、シート状払拭部材320を送り出す送り出しローラ410と、シート状払拭部材320をノズル面に押し当てる押し当てローラ400と、払拭に使われたシート状払拭部材320を回収する巻き取りローラ420と、シート状払拭部材320を保持する保持ローラ430と、を有する。なお、詳細は後述するが、本実施形態におけるシート状払拭部材320はセルロース繊維を含む。
押し当てローラ400は例えばバネを用いて、シート状払拭部材320とノズル形成面の距離を調整することで、押し当て力を調整することができる。押し当て部材はローラに限られず、固定された樹脂やゴム等の部材であっても良い。シート状払拭部材320は、小型化の観点から図3に示すようにロール状に巻き取られた状態で収納されていることが好ましいが、これに限られず、例えば折り畳んで収納されている状態であってもよい。
本実施形態における払拭工程の一例としては、払拭液を含浸するシート状払拭部材320及びノズル形成面を接触させつつ、維持回復機構20b及び吐出ヘッド4のうち少なくとも一方を移動させることでノズル形成面に付着した異物500を払拭する工程である。例えば、図3の矢印Dに示す方向(図2の矢印Dに示す方向)に維持回復機構20bを移動させることでノズル面に付着した異物500を払拭する。
ノズル形成面に付着する異物500としては、ノズルからインクを吐出した際に発生するミストインクや、クリーニング等でノズルからインクを吸引したときに付着するインク、ミストインクやキャップ部材に付着したインクがノズル面で乾燥した固着インクなどが挙げられる。
吐出手段が払拭部材に対して液体を吐出する場合の模式図を図4に示す。本実施形態において、吐出手段が払拭部材に対して液体を吐出することを予備吐出と称することがあり、予備吐出を行う工程を予備吐出工程と称することがある。予備吐出を行うことにより、ノズルの周辺に付着した異物を排出することができ、吐出異常を抑制することができる。
本実施形態における予備吐出としては、払拭部材におけるノズル形成面を払拭した領域に液体を吐出する。図3及び図4に基づいて換言すると、本実施形態における予備吐出工程の一例としては、シート状払拭部材320におけるノズル形成面を払拭した領域に吐出ヘッド4の予備吐出を行う。
このように、本実施形態における予備吐出は、払拭部材におけるノズル形成面を払拭した領域に液体を吐出する。本実施形態における払拭部材は、セルロース繊維を含んでいるため、吐出される液体に対して高い吸液性を有し、予備吐出時の液体中の固形分が払拭部材の表面に堆積することを抑制できる。そのため、ノズル形成面を払拭した領域に液体を吐出した場合であっても、装置内の汚染やノズル形成面の汚染を抑制することができる。
また、従来技術においては、予備吐出を行う際に、汚染を避ける目的でノズル形成面を払拭していない領域に対して液体を吐出するが、この場合、払拭部材の消耗が大きくなり交換頻度が増えてしまう。一方、本実施形態によれば、ノズル形成面を払拭した領域に液体を吐出するため、払拭部材の交換頻度を減らすことができる。
本実施形態において、払拭部材がノズル形成面に対して相対移動し、吐出手段は、払拭部材におけるノズル形成面を払拭した領域が、ノズルから吐出される液体の吐出方向に位置するとき、ノズルから前記領域に対して液体を吐出することが好ましい。払拭部材とノズル形成面を相対移動させることで、吐出した液体が払拭部材に対してより着弾しやすくなる位置に移動させることができる。このため、液体が装置中に舞い散ることをより防ぐことができ、装置内部の汚染をより防ぐことができる。
本実施形態において、ノズル形成面にはノズル列が複数形成され、吐出手段は、払拭部材におけるノズル形成面を払拭した領域に液体を吐出する際に、ノズル列の一端から他端へ順に液体を吐出することが好ましい。ノズル列の一端から他端へ順に液体を吐出することで、各ノズルにおける吐出ごとの払拭部材の位置の調整や、吐出波形の調整がしやすくなる。このため、吐出した液体が払拭部材に対してより着弾しやすくなる位置に移動させることができる。これにより、液体が装置中に舞い散ることをより防ぐことができ、装置内部の汚染をより防ぐことができる。
本実施形態において、吐出手段がノズル列の一端から他端へ順に液体を吐出する際には、払拭部材における同一の箇所に対して液体を吐出することが好ましい。同一の箇所に対して液体を吐出することで、払拭部材の消費量を減らすことができ、払拭部材の交換頻度を減らすことができる。なお、払拭部材とノズル形成面が相対移動するため、予備吐出において払拭部材の同一の箇所に対して液体を吐出することができる。
上述のように、本実施形態における払拭手段の一例としては、払拭部材を繰り出す繰り出し部(送り出しローラ410)と、払拭部材を巻き取る巻き取り部(巻き取りローラ420)と、払拭部材をノズル形成面に押圧する押圧部(押し当てローラ400)とを有している。この場合、予備吐出を行う際には、ノズル列の一端から他端へ相対移動する間、払拭部材を繰り出さず、かつ、払拭部材を巻き取らないことが好ましい。また、予備吐出を行う際、ノズル列の一端から他端へ順に液体を吐出するときに、払拭部材をノズル形成面に当接させたまま、又は払拭部材によりノズル形成面を払拭したまま吐出を実施することが好ましい。これらの場合、払拭部材の消費量を減らすことができ、払拭部材の交換頻度を更に低減させることができる。
本実施形態における、予備吐出の一例を説明するためのフローを図5に示す。
払拭部材とノズル形成面とを相対移動させる(S100)。
次いで、払拭部材がノズルの吐出方向に位置しているかの判定を行う(S101)。判定の方法としては、特に制限されるものではなく、適宜変更することができる。予備吐出を行うノズルの位置や移動距離と、払拭部材の位置や移動距離とを算出して判定するようにしてもよい。払拭部材がノズルの吐出方向に位置していない場合、後続の処理を行わず、相対移動の処理を行う。なお、ノズルの吐出方向としては例えば鉛直の下方向である。
次いで、払拭部材がノズルの吐出方向に位置している場合、ノズル列の一端から他端へ順に液体を吐出するかどうかの判定を行う(S102)。ノズル列の一端から他端へ順に液体を吐出する場合、払拭部材の同一の箇所に吐出するかの判定を行う(S103)。払拭部材の同一の箇所に吐出する場合、吐出手段は、ノズル列の一端から他端へ順に、払拭部材の同一の箇所に吐出する(S104)。払拭部材の同一の箇所に吐出しない場合、吐出手段は、ノズル列の一端から他端へ順に、払拭部材のそれぞれ他の箇所に吐出する(S105)。
S102において、ノズル列の一端から他端へ順に液体を吐出しない場合、すべてのノズル列から同時に吐出する(S106)。なお、この他にも、ノズル列の一端から他端へ順に液体を吐出しない場合、任意のノズル列から吐出するようにしてもよい。
また、予備吐出において、払拭部材におけるノズル形成面を払拭した領域に液体を吐出するとき、払拭部材をノズル形成面に当接させて予備吐出させてもよい。この場合、液滴の分裂や払拭部材への衝突によるミストを更に低減できる。
なお、当接させるとき、払拭しながら予備吐出させてもよい。ノズル形成面にインク固着物がある場合に、インクを含んだ払拭部材でノズル形成面を払拭することで、インク固着物を払拭しやすくなる。インク固着物はインクの固体成分であるためインクと親和性がよいためである。
さらに、予備吐出において、払拭部材におけるノズル形成面を払拭した領域に液体を吐出するとき、払拭部材をノズル形成面に当接または払拭部材でノズル形成を払拭しながら予備吐出したとき、その後にノズル形成を再度払拭部材を用いて払拭することが好ましい。払拭部材をノズル形成面に当接または払拭部材でノズル形成を払拭しながら予備吐出した場合、ノズル形成面が吐出したインクで汚れることがあるため、付着した汚れを取り除くことができる。そのため、このときは払拭部材を巻取り及び繰り出しを行い、インクが付着していない領域で払拭することが好ましい。
(払拭部材)
次に、払拭部材について図6を用いて説明する。図6は払拭部材の一例の断面を模式的に表した図である。図6に示す払拭部材700は、一例として、1層の不織布からなる構造を有するが、2層以上の不織布からなる構造を有していてもよい。これ以外にも、例えば、吸収した液体の裏写り防止や払拭部材の強度向上を目的としてフィルムを裏打ちした構造であってもよい。また、払拭部材は払拭によって含侵されていることが好ましい。
本実施形態における払拭部材はセルロース繊維を含む。セルロース繊維としては、植物繊維であることが好ましい。植物繊維としては、例えば、綿(コットン)、カポック等の種子毛繊維、亜麻(リネン)、苧麻(ラミー)、大麻(ヘンプ)、黄麻(ジュート)等のじん皮繊維、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻(ロープーマ)等の葉脈繊維、やし等の果実繊維、いぐさ、麦わら等のその他繊維などが挙げられる。
払拭部材を構成する材料にセルロースを用いた場合、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)などを用いた場合に比べて、払拭部材の硬度を低くすることができる。これにより、払拭部材でノズル形成面を払拭した際に、ノズル近傍の撥水膜が削られることを防ぎ、撥水膜が削られることで生じる吐出不良を防ぎ、異常画像の発生を抑制することができる。
また、払拭部材を構成する材料がセルロース繊維であることで、払拭部材はPETなどと比較して高い吸液性を持つことができる。これにより、予備吐出時の液体中の固形分が払拭部材の表面へ堆積することを抑制できる。
なお、払拭部材を構成する材料がセルロースであることを確認する方法としては、特に限定されないが、例えば、ATR法(Attenuated total reflection method)を用いる方法等が挙げられる。ATR法による測定は、JIS L 1030−1(6.8c)に準拠する方法であることが好ましい。セルロースで測定される赤外吸収スペクトルの一例を図7に示す。
払拭部材に含まれるセルロース繊維の割合としては、例えば、重量換算で50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
払拭部材の構成としては、例えば不織布が挙げられ、不織布のほかに、織布や編布、多孔質体などが挙げられる。特に、厚さと空隙率のコントロールが比較的容易であり、様々な種類の繊維の配合も容易である不織布を用いることが好ましい。
払拭部材の製造方法の一例として、払拭部材が不織布である場合について説明する。不織布の形成方法としては、例えば、湿式、乾式、スパンボンド、メルトブローン、フラッシュ紡糸などの方法が挙げられる。また、不織布を結合させて2層以上の構造とする方法としては、例えば、スパンレース、ニードルパンチ、サーマルボンド、ケミカルボンドなどの方法が挙げられる。スパンレース法とは、堆積された繊維上にジェット水流を噴射し、その圧力によって繊維同士を絡み合わせてシート状に結合させる製法である。ニードルパンチ法とは、堆積された繊維をバーブと呼ばれる突起のついた針を数10回以上突き刺すことにより繊維同士を機械的に絡ませて不織布に加工する製法である。
下記式により計算される払拭部材の空隙率は、0.80以上0.99以下であることが好ましい。空隙率がこの範囲であることで、予備吐出において、液体を十分に受容することができるとともに、固着物の払拭性も向上させることができる。また、払拭部材に払拭液を保持させる場合において、払拭液を十分に保持させることができる。
Figure 2021084244
なお、払拭部材がシート状の不織布等である場合、上記の「真密度」はシートを形成する繊維の真密度であり、「見掛の密度」はシート状の材料の目付量と厚さから「目付量÷厚さ」で求めることができる。
払拭部材の厚さとしては、特に制限されるものではないが、0.1mm以上3.0mm以下が好ましい。厚さがこの範囲であることで、固着物の払拭性を向上させることができ、また、払拭部材が払拭液を十分に保持することができる。
払拭部材の平均繊維径としては、適宜変更することができるが、顔料の平均粒子径と払拭部材の平均繊維径との比(平均粒子径/平均繊維径)が0.005以上0.25以下であることが好ましく、0.01以上であることがより好ましく、0.02以上であることが更に好ましい。平均粒子径/平均繊維径がこの範囲であることで、毛管力により液体が払拭部材に吸液されやすくなるとともに、顔料が払拭部材の表面に堆積することによる液体を吸液する力の低下を抑えることができ、装置内部やノズル形成面の汚染をより抑制できる。これにより、払拭部材の交換頻度を更に低減することができる。
ただし、平均粒子径/平均繊維径を求めるにあたり、顔料の形状が鱗片状である場合、顔料の投影面積から求められる顔料の略平坦な面における円相当径の50%平均粒子径とする。平均粒子径の求め方については後述する。
払拭部材の平均繊維径の求め方としては、走査電子顕微鏡(SEM)などで撮影した観察画像に対して画像処理を行うことにより求める。
払拭部材は払拭液を含むことが好ましい。払拭液を含むことにより、ノズル形成面に付着した異物を除去しやすくなるとともに、吐出手段から吐出される液体の吸液性が向上する。
払拭液としては、適宜変更することが可能であり、例えば、有機溶剤、水、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴材、防錆材、pH調整剤などを含有する。なお、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴材、防錆材、pH調整剤については、液体含まれる材料と同様のものを用いることができるので、その説明は後述する。
払拭液にグリコールエーテル化合物が含まれる場合、払拭液と液体の親和性が高まり、液体が払拭部材中に浸透しやすくなるため好ましい。また、払拭液と液体とに含まれるグリコールエーテル化合物を同じものにすることで、より親和性が高まるため、より好ましい。
払拭部材は払拭液をあらかじめ含んでいることが好ましく、払拭部材は最初から払拭液に含浸されて液体吐出装置に搭載されていることがより好ましい。払拭液が払拭部材に含浸されて払拭装置に搭載されていることにより、液体吐出装置に払拭液付与手段等を設けることを省略することができ、装置の小型化を図ることができる。
払拭液は、液体吐出装置に払拭液付与手段を設け、払拭液付与手段から付与されるようにしてもよい。払拭液付与手段としては、例えば、払拭液を滴下する払拭液滴化装置、払拭液をローラで付与する払拭液付与ローラ、払拭液をスプレーで付与する払拭液付与スプレーなどが挙げられる。
また、払拭液を付与する方法は、結果として、払拭液を払拭部材に含浸させることができる方法であれば特に制限はない。すなわち、直接的に払拭液を払拭部材に付与する方法以外に、払拭液を付与されたノズル形成面を払拭部材で払拭することで、間接的に払拭液を払拭部材に付与する方法であってもよい。
(液体)
本実施形態における液体は、グリコールエーテル化合物及び顔料を含み、必要に応じて、有機溶剤、水、樹脂,界面活性剤、消泡剤、防腐防黴材、防錆材、及びpH調整剤などを含有する。上述のように、液体としては例えばインクが挙げられ、例えばイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)、ホワイト(W)、シルバー(S)等のインクが挙げられる。なお、液体は、液体収容容器に充填されて液体吐出装置に搭載されることが好ましい。
<顔料>
顔料としては、特に限定されず、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。メタリック顔料には、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などの単体金属、これらの金属化合物、これらの合金、これらの混合物等が用いられる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等が挙げられる。
液体における顔料の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば粒子状が挙げられ、粒子状としては、例えば鱗片状(平板状とも称する)、球形粒子状などの形状が挙げられる。鱗片状である場合、画像に金属光沢を付与することができる。
なお、「鱗片状」の顔料とは、平坦な面を有し、かつ、厚みが均一である粒子をいう。厚みが均一な場合とは、完全に均一でなくてもよく、例えば、一部の厚さが異なる場合や、緩やかに厚さが変化している場合等も含まれる。鱗片状の粒子は、例えば、金属蒸着膜を破砕して製造することができる。シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイトなどの色を呈する顔料においては、金属光沢を付与する目的で使用されないため、一般に、鱗片状の顔料は使用されない。
顔料の粒子径については、特に制限されるものではないが、顔料が払拭部材の表面に堆積するのを防ぎ、払拭部材内部まで浸透させることができる大きさであることが好ましい。このような観点から、顔料の形状が鱗片状である場合、投影面積から求められる顔料の平坦な面における円相当径(直径)の50%平均粒子径R50が0.2μm以上3μm以下であることが好ましい。また、顔料が球形粒子状又は球形粒子状に近い粒子状である場合、体積平均粒子径は0.02μm以上0.4μm以下であることが好ましい。
顔料が鱗片状である場合、平均粒子径は、粒子像分析装置(フロー式粒子像分析装置 FPIA-3000、シスメックス株式会社)で測定することができる。顔料が球形粒子状又は球形粒子状に近い粒子状である場合、平均粒子径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)等を用いて測定することができる。
また、上記の50%平均粒子径R50が、顔料の厚みに対して5倍以上であることが好ましい。顔料の厚みは、記録物または顔料を含む液体の固化物の断面SEM画像より求められる。
液体中の顔料の含有量は、液体に対して0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましい。この場合、顔料が払拭部材の表層に目詰まりして堆積するのを防ぎ、払拭部材内部まで浸透させやすくなる。なお、顔料の含有量を測定するときは、液体を撹拌して顔料をよく分散させた上で行う。
顔料を液体に分散させる場合、顔料に液体中の溶媒と親和性の高い官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法などを用いることができる。
顔料に官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、吐出液体に配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料が吐出液体中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
顔料に、有機溶剤などの材料を混合して液体を得ることも可能である。また、顔料と、有機溶剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤、その他添加剤などの材料を混合して液体を製造することも可能である。
前記顔料分散体は、顔料、顔料分散剤、有機溶剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については、顔料が鱗片状である場合、投影面積から求められる金属顔料の平坦な面における円相当径(直径)の50%平均粒子径R50が0.02μm以上3μm以下であることが好ましい。また、顔料が球形粒子状又は球形粒子状に近い粒子状である場合、体積平均粒子径は0.02μm以上0.4μm以下であることが好ましい。
顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、顔料の分散状態を安定に保ちやすいという観点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
金属顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気されていることが好ましい。
<グリコールエーテル化合物>
グリコールエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びジエチレングリコールエチルメチルエーテルから選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。液体がグリコールエーテル化合物を含むことで、払拭部材に対する液体の濡れ性が向上し、液体が払拭部材中に浸透しやすくなる。このため、液体中に含まれる固形分が払拭部材表層に堆積しにくくなり、払拭部材の吸液性能の低下を抑えることができ好ましい。
また、グリコールエーテル化合物は、PET繊維と比較して、セルロース繊維に濡れやすい傾向にあることから、払拭部材がセルロース繊維であることにより、払拭部材の吸液性能の低下を抑えることができるため好ましい。
払拭部材がセルロース繊維を含む場合には、PET繊維と比較して硬度が低いことから、ノズル形成面の撥水膜を破壊しにくい利点を有するが、払拭力が低い場合がある。これに対して、浸透しやすいグリコールエーテル化合物を含む液体であれば、払拭部材に浸透しやすく、セルロース繊維の払拭部材でも十分な払拭性能を示すことが可能となる。
このように、グリコールエーテル化合物を含む液体と、セルロース繊維を含む払拭部材とを組み合わせることで、その他の組み合わせと比較して、撥水膜の破壊や払拭部材の吸液性能の低下を抑制しつつ、ノズル形成面の払拭性能が向上する。
前記払拭液に含まれている有機溶剤が、同様にグリコールエーテル化合物を含む場合、更に親和性が高まる。また、液体がグリコールエーテル化合物としてジエチレングリコールジエチルエーテル及びジエチレングリコールエチルメチルエーテルから選ばれる少なくとも1つを含み、払拭液が有機溶剤として、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、及びペンタエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる少なくとも1つを含む場合、特に親和性が高まる。
グリコールエーテル化合物の含有量は、液体に対して50.0質量%以上であることが好ましく、53.0%以上であることがより好ましい。グリコールエーテル化合物の含有量が50.0質量%以上である場合、液体の払拭部材への浸透性が高まり、吸液性能の低下の防止につながるため、装置内部やノズル形成面の汚染が抑制される。なお、グリコールエーテル化合物の含有量の上限は、特に制限はないが、例えば、95.0質量%以下であってもよい。
グリコールエーテル化合物として、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びジエチレングリコールエチルメチルエーテルから選ばれる少なくとも1つを含む場合、これらの合計量は液体に対して40.0質量%以上であることが好ましく、45.0%以上であることがより好ましい。40.0質量%以上である場合、液体の払拭部材への浸透性が高まり、吸液性能の低下の防止につながるため、装置内部やノズル形成面の汚染が抑制される。なお、これらの含有量の上限は、特に制限はないが、例えば、95.0質量%以下であってもよい。
液体中におけるグリコールエーテル化合物の定性、定量方法としてはガスクロマトグラフィー質量分析法(GC−MS)を用いる。また検量線を作成することにより、絶対量を定量することが可能である。
<有機溶剤>
液体に含まれる有機溶剤としては特に制限されない。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチル−1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
有機溶剤の含有量は、液体に対してグリコールエーテル化合物との合計含有量として50.0質量%以上であることが好ましく、60.0質量%以上であることがより好ましく、70.0質量%以上であることが更に好ましく、80.0質量%以上であることが特に好ましい。有機溶剤の含有量が50.0質量%以上であることで、顔料を吐出液体中に均一分散させることができるため、液体中における顔料の沈降、凝集を抑制することができる。これにより、顔料によるノズル詰まり及びノズル面への顔料の固着、堆積を抑制することができる。なお、有機溶剤の含有量の上限は、特に制限はないが、例えば、95.0質量%以下であってもよい。
<水>
液体における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ただし、金属顔料を構成する材料としてアルミニウムやアルミニウム合金を用いる場合、アルミニウム等が水と反応して酸化物を生じ、経時で白色化することや、液体吐出装置中で水素が発生することを抑制することが好ましい。そのため、金属顔料を構成する材料としてアルミニウムやアルミニウム合金を用いる場合、液体中に水が実質的に含まれていないことが好ましい。水が実質的に含まれていない場合とは、例えば、液体中における水の含有量が1.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、検出限界以下であることが更に好ましく、含まれていないことが特に好ましい。
<樹脂>
液体中に含有される樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、アクリル系樹脂であることが好ましい。なお、アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル酸系モノマーに由来する構成単位を有する樹脂を意味する。
(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、特に限定されないが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸アルキル、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸系モノマー、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノアクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸系モノマー、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマー、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン等のヒンダードアミノ基を有する(メタ)アクリル系モノマー、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、ダイアセトンアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、4−メタクリルアミドエチルエチレンウレア等のアミド結合を有する(メタ)アクリル酸系モノマー、(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア等のウレア結合を有するメタ(アクリル)酸系モノマー、アクリル酸グリシジル、アクリル酸メチルグリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチルグリシジル、ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマー等が挙げられ、2種以上併用してもよい。
液体中における樹脂の形態は、特に制限はなく、樹脂粒子、溶解している樹脂等のいずれであってもよいが、樹脂粒子であることが好ましい。樹脂粒子として用いる場合、樹脂粒子を分散した樹脂エマルションの状態で、金属顔料や有機溶剤などの材料と混合して液体を得ることができる。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
樹脂の含有量は、液体に対して0.5質量%以上7.0質量%以下であることが好ましい。また、液体に対して0.6質量%以上であることがより好ましく、4.8質量%以下であることがより好ましい。また、3.0質量%以下であることが更に好ましく、1.1質量%以下であることが特に好ましい。
含有量が0.5質量%以上であることで、ノズル近傍に付着した樹脂の少なくとも一部が、払拭液に含まれる有機溶剤と接触することで溶けて増粘する。これにより、樹脂が顔料に対して潤滑性を付与し、払拭時に生じるノズル近傍の撥水膜へのダメージを抑制することができる。また、樹脂の増粘により吐出液体固着物が払拭部材に付着しやすくなり、顔料とともにかき取られやすくなる。これにより、顔料によるノズル詰まり、ノズル面への顔料の固着、堆積、異常画像の発生を抑制することができる。含有量が7.0質量%以下であることで、樹脂自体がノズルに詰まることや、樹脂自体がノズル面に固着、堆積することを抑制することができる。
なお、画像に金属光沢を付与するメタリック吐出液体において、液体中に含まれる樹脂の含有量は、吐出液体に対して0.5質量%未満であることが一般的である。これは、樹脂の含有量が多くなることによる金属光沢性の低下を抑制するためである。
一方で、本実施形態においては、液体がグリコールエーテル化合物を含むため、画像上の樹脂を軟化させて平滑な表面の樹脂膜を形成させ、金属光沢性の低下を抑制することができる。このような効果は、液体中にグリコールエーテル化合物が主溶媒(例えば、吐出液体に対して50.0質量%以上)として含有させることにより向上する。
液体中における樹脂の含有量を調べる方法としては、ダイナミックTG法により、加熱に伴う質量減衰を観測する方法を用いる。まず、吐出液体中の水、溶剤成分を先に全て蒸発させその減量を計測した後、固形分の加熱に伴う質量減量を再度測定することにより、樹脂の定量が可能である。ダイナミックTG法による測定において用いる装置としては、例えば、Thermo Plus EVO2(リガク社製)などが挙げられる。本装置を使用する場合は、ダイナミックTGのステップ等温制御(SIA)法を使用し、感度1、分解能1を設定する。
樹脂が樹脂粒子として用いられている場合、樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が更に好ましい。樹脂粒子の体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S−1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
Figure 2021084244
(但し、一般式(S−1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF−618、KF−642、KF−643(信越化学工業株式会社)、EMALEX−SS−5602、SS−1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ−2105、FZ−2118、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK−33、BYK−387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2〜16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4〜16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F−1)及び一般式(F−2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
Figure 2021084244
上記一般式(F−1)で表される化合物において、吐出液体中からの相分離を防ぐためにmは0〜10の整数が好ましく、nは0〜40の整数が好ましい。
Figure 2021084244
上記一般式(F−2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1〜6の整数、又はCHCH(OH)CH−C2m+1でmは4〜6の整数、又はC2p+1でpは1〜19の整数である。nは1〜6の整数である。aは4〜14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF−470、F−1405、F−474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR、キャプストーンFS−30、FS−31、FS−3100、FS−34、FS−35(いずれも、Chemours社製);FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF−136A,PF−156A、PF−151N、PF−154、PF−159(オムノバ社製)、ユニダインDSN−403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、Chemours社製のFS−3100、FS−34、FS−300、株式会社ネオス製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF−151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN−403Nが特に好ましい。
液体中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
<物性>
液体の物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
液体の25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE−80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
液体の表面張力としては、記録媒体上で好適に液体がレベリングされ、液体の乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
液体のpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7〜12が好ましく、8〜11がより好ましい。
(記録媒体)
液体が付与される記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材をいう。
非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下「部」とあるのは「質量部」を表し、「%」とあるのは「質量%」を表す。
(顔料分散体の調製)
<アルミニウム分散液>
ステンレス容器内に、ジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤社製)97質量部、セルロースアセテートブチレート(ブチル化率35〜39%、関東化学社製)3.0質量部を投入し、高速ディスパーにて十分混合させた。これをPETフィルム上に均一にバーコートし、70℃で10分間乾燥させた。次に、真空蒸着装置(真空デバイス社製VE−1010型真空蒸着装置)を用いて、上記のセルロースアセテートブチレート樹脂1質量部に対し、16質量部となるように設定した後、アルミニウム蒸着を行った。この積層物を、ジエチレングリコールジエチルエーテル中、VS−150超音波分散機(アズワン社製)を用いて14時間剥離、微細化、分散させた。得られた溶液にBYK−323(ビックケミー社製)、ジエチレングリコールジエチルエーテルを用いて濃度調整し、アルミニウムを20質量%、セルロースアセテートブチレート樹脂を1.3質量%、BYK−323を0.8質量%、ジエチレングリコールジエチルエーテルを78.7質量%含む表1に示すアルミニウム顔料粒子径を有する[アルミニウム分散液1]を得た。
前記アルミニウム分散液作製方法のうち、PETフィルム上での乾燥時間と、分散時間とを変更し、顔料粒子径を変更した[アルミニウム分散液2]および[アルミニウム分散液3]を得た。
<シアン分散液>
シアン顔料(ピグメントブルー15:3、LIONOGEN BLUE 7919 74160、トーヨーカラー社製)10質量%、Solsperse37500(LUBRIZOL社製)10質量%、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(東京化成工業社製)80質量%をステンレス容器内に投入し、ホモジナイザーを用いて予備分散を行い、予備分散液を得た。その後、前記予備分散液に対して、直径0.3mmのジルコニアビーズを用いてビーズミルによる分散処理を行い、表1に示すシアン顔料粒子径を有する[シアン分散液1]を得た。
前記シアン分散液作製方法のうち、分散時間と顔料粒子径を変更した[シアン分散液2]を得た。
シアン顔料(ピグメントブルー15:3、LIONOGEN BLUE 7919 74160、トーヨーカラー社製)10質量%、BYKJET-9151(ビックケミー社製)5質量%、プロピレングリコール40質量%、イオン交換水40質量%をステンレス容器内に投入し、ホモジナイザーを用いて予備分散を行い、予備分散液を得た。その後、前記予備分散液に対して、直径0.3mmのジルコニアビーズを用いてビーズミルによる分散処理を行い、[シアン分散液3]を得た。
(インクの調製)
表1に記載の処方で調製した混合液を撹拌し、5μmのPTFE製メンブレンフィルターを用いてろ過することで[インク1〜6]を得た。[インク1〜6]の処方を表1に示す。また、[インク1〜6]における顔料を表2に示す。
Figure 2021084244
なお、表1において、各材料の商品名及び製造会社名については以下の通りである。
・メタクリル樹脂(商品名:パラペットG-1000P、製造元:クラレ社製)
・防腐防黴剤(商品名:プロキセルLV、製造元:アビシア社製)
Figure 2021084244
なお、表2において、[インク1〜3]は鱗片状のアルミニウム粒子であるため、粒子像分析装置(フロー式粒子像分析装置FPIA-3000、シスメックス株式会社)で測定を行った。また、[インク4〜6]は球形粒子であるため、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)で測定を行った。
(払拭部材の準備)
<払拭液の調合>
2−フェニル−2−プロパノール1質量%、トリエチレングリコールモノブチルエーテル1質量%、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル1質量%、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル85質量%、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテル12質量%の処方で調整した混合液を攪拌して払拭液を得た。
<払拭部材の作製>
表3に示す空隙率を有し、セルロースを含有するシート状の部材1に対して、前記払拭液を含侵させ[払拭部材1]を得た。
表3に示す空隙率を有し、セルロースを含有するシート状の部材1に対して、一定時間加圧することにより、表3に示す空隙率を有するように調整したシート状の部材2および3に対して、前記払拭液を含侵させ[払拭部材2]および[払拭部材3]を得た。
表3に示す空隙率を有し、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を含有するシート状の部材4に対して、前記払拭液を含侵させ[払拭部材4]を得た。
なお、シート状の部材1としてベンリーゼ(旭化成社製)を、シート状の部材4としてボランス4211N/VN-210(東洋紡社製)を用いた。
Figure 2021084244
(液体吐出装置の準備)
<実施例1>
液体吐出装置としてインクジェットプリンタ(リコー社製、IPSiO GXe5500)を用意し、外装を外して背面マルチ手差しフィーダーを取り付け、更に払拭液を含浸した[払拭部材1]を有し、吐出ヘッドに対して相対移動可能な払拭機構(払拭手段)を取り付け、インクジェットプリンタ改造機を作製した。次に、吐出ヘッドを含めたインク供給経路に、調製した[インク1]を通液させることで洗浄し、その洗浄作業を全部で6回繰り返した後、洗浄に用いたインクを抜ききった。
その後、インクジェットプリンタ改造機の吐出ヘッドのノズル形成面を、シャーレに入れた[インク1]に浸漬させ、10秒後に引き上げ、その状態で15時間放置し、ノズル形成面に[インク1]を固着させた。次に、払拭液を含浸した[払拭部材1]を有する払拭機構を作動させてノズル面を拭き取った。拭き取る際の条件は、押し当て力3N、拭き取り速度50mm/s、ふき取り回数は払拭部材の接触箇所を変えない状態で3往復とした。これを、ノズル形成面の間隔ごとに繰り返し、全面が払拭後領域となる払拭部材を作製した。なお、ノズル形成面以外に固着した着色が無くなるまで十分にふき取りを行った。
インクジェットプリンタ改造機に充填する[インク1]については、5Pa〜10Paの減圧条件で30分間攪拌することで[インク1]中の気体を脱気してからインクカートリッジ内のインク収容袋に注入して用いた。また、[インク1]で印刷する際は、プリンタ添付のドライバで光沢紙きれいモードを選択し、ユーザー設定でカラーマッチングoffを印刷モードとし、ベタ画像のインク付着量が20g/mとなるように吐出ヘッドの駆動電圧を調整した。
<実施例2〜10、比較例1〜2>
実施例1において、[インク1]及び[払拭部材1]の代わりに表4に示すインク及び払拭部材を用いた以外は実施例1と同様にして実施例2〜10、比較例1〜2の液体吐出装置の準備を行った。
<比較例3>
液体吐出手段としてインクジェットプリンタ(リコー社製、IPSiO GXe5500)を用意し、外装を外して背面マルチ手差しフィーダーを取り付け、更に払拭液を含浸した[払拭部材1]を有し、吐出ヘッドに対して相対移動可能な払拭機構(払拭手段)を取り付け、インクジェットプリンタ改造機を作製した。次に、吐出ヘッドを含めたインク供給経路に、調製した[インク1]を通液させることで洗浄し、その洗浄作業を全部で6回繰り返した後、洗浄に用いたインクを抜ききった。
インクジェットプリンタ改造機に充填する[インク1]については、5Pa〜10Paの減圧条件で30分間攪拌することで[インク1]中の気体を脱気してからインクカートリッジ内のインク収容袋に注入して用いた。また、[インク1]で印刷する際は、プリンタ添付のドライバで光沢紙きれいモードを選択し、ユーザー設定でカラーマッチングoffを印刷モードとし、ベタ画像のインク付着量が20g/mとなるように吐出ヘッドの駆動電圧を調整した。
(予備吐出の実施)
<実施例1〜4、8〜10、比較例1、2>
表4に記載のインクと払拭部材との組み合わせで前記ノズル形成面を払拭した払拭部材の領域に対して、ノズル形成面のすべてのノズルから同時に(一斉に)予備吐出を行った。その後、装置を解体せず、ノズル形成面と装置内の汚染度合いの評価を行った。また、前記評価後に、予備吐出を行った払拭部材の同一の部分に対して、装置内汚染度の評価がFとなるまで繰り返し予備吐出を行い、その繰り返し回数をカウントした。
<実施例5>
表4に記載のインクと払拭部材との組み合わせで、ノズル形成面を払拭した払拭部材の領域に対して、ノズル列の一端から他端まで順次予備吐出を行った。また、前記評価後に、予備吐出を行った払拭部材の同一の部分に対して、装置内汚染度の評価がFとなるまで繰り返し予備吐出を行い、その繰り返し回数をカウントした。
<実施例6>
表4に記載のインクと払拭部材との組み合わせで前記ノズル形成面を払拭した払拭部材の領域の同一の部分に対して、払拭部材の繰り出しによって相対移動させることにより、前記ノズル列の一端から他端まで順次予備吐出を行った。また、前記評価後に、予備吐出を行った払拭部材の同一の部分に対して、装置内汚染度の評価がFとなるまで繰り返し予備吐出を行い、その繰り返し回数をカウントした。
<実施例7>
表4に記載のインクと払拭部材との組み合わせで前記ノズル形成面を払拭した払拭部材の領域の同一の部分に対して、払拭部材を繰り出さずに払拭部材を吐出ヘッドに対して相対移動させることにより、前記ノズル列の一端から他端まで順次予備吐出を行った。また、前記評価後に、予備吐出を行った払拭部材の同一の部分に対して、装置内汚染度の評価がFとなるまで繰り返し予備吐出を行い、その繰り返し回数をカウントした。
<比較例3>
表4に記載のインクと払拭部材との組み合わせで、払拭部材におけるノズル形成面を払拭していない領域に対して、ノズル形成面のすべてのノズルから同時に予備吐出を行った。
Figure 2021084244
(評価)
<ノズル形成面の汚染度合いの評価>
予備吐出後のノズル形成面に対して、二値化による画像処理を行い、
汚染率=汚染部分面積/ノズル形成面面積
を算出し、汚染率によってノズル形成面における汚染度合いを下記の基準に従って評価した。評価結果を表5に示した。
[評価基準]
A:汚染率3%未満
B:汚染率3%以上5%未満
C:汚染率5%以上10%未満
F:汚染率10%以上
<装置内の汚染度合いの評価>
予備吐出後の装置内の一定区画に対して、二値化による画像処理を行い、
汚染率=汚染部分面積/装置内の評価区画の面積
を算出し、汚染率によって装置内の汚染度合いを下記の基準に従って評価した。評価結果を表5に示した。
[評価基準]
A:汚染率1%未満
B:汚染率1%以上3%未満
C:汚染率3%以上5%未満
F:汚染率5%以上
<払拭部材の交換頻度の評価>
払拭部材の同一の部分に対して予備吐出を繰り返し行った際に、装置内汚染度のランクがFとなるまでの繰り返し回数を、繰り返し使用時の払拭部材の吸液性能を示す指標として以下の基準をもとに評価した。評価ランクが高いと同一部分を繰り返し使用でき、払拭部材の交換頻度を低減できる。ランクZでは、同一部分の繰り返し使用を行わないため、必然的に必要な払拭材部分が多くなり、払拭材の交換頻度が増加する。評価結果を表5に示した。
[評価基準]
A:10回以上
B:5回以上10回未満
C:2回以上5回未満
F:1回
Z:評価ランク外(繰り返し評価を行わない)
Figure 2021084244
3 キャリッジ
4、4a、4b 吐出ヘッド
4n ノズル
10 用紙
20 維持回復機構
20a キャップ
20b 維持回復機構
21 空吐出受け
41 ノズル形成面
320 シート状払拭部材
400 押し当てローラ
410 送り出しローラ
420 巻き取りローラ
430 保持ローラ
500 異物
特開2012−51191号公報

Claims (8)

  1. グリコールエーテル化合物及び顔料を含む液体と、
    複数のノズルからなるノズル列が形成されたノズル形成面を有し、前記液体を記録媒体に吐出する吐出手段と、
    前記ノズル形成面に対して相対移動可能であり、前記ノズル形成面を払拭する払拭部材を有する払拭手段と、を備え、
    前記払拭部材はセルロース繊維を含み、
    前記吐出手段は、前記払拭部材における前記ノズル形成面を払拭した領域に前記液体を吐出することを特徴とする液体吐出装置。
  2. 前記払拭部材の空隙率が0.80以上であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
  3. 前記払拭部材は、前記ノズル形成面に対して相対移動し、
    前記吐出手段は、前記払拭部材における前記ノズル形成面を払拭した領域が、前記ノズルから吐出される前記液体の吐出方向に位置するとき、前記ノズルから前記領域に対して前記液体を吐出することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
  4. 前記ノズル形成面には前記ノズル列が複数形成され、
    前記吐出手段は、前記払拭部材における前記ノズル形成面を払拭した領域に前記液体を吐出する際に、前記ノズル列の一端から他端へ順に前記液体を吐出することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
  5. 前記吐出手段は、前記払拭部材における同一の箇所に対して前記液体を吐出することを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
  6. 前記払拭手段は、前記払拭部材を繰り出す繰り出し部と、前記払拭部材を巻き取る巻き取り部と、前記払拭部材を前記ノズル形成面に押圧する押圧部と、を有し、前記ノズル列の一端から他端へ相対移動する間、前記払拭部材を繰り出さず、かつ、前記払拭部材を巻き取らないことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
  7. 前記払拭部材における前記ノズル形成面を払拭した領域に前記液体を吐出する際に、前記ノズル列の一端から他端へ順に前記液体を吐出するときに、前記払拭部材を前記ノズル形成面に当接させたまま、又は前記払拭部材により前記ノズル形成面を払拭したまま吐出を実施することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の液体吐出装置。
  8. 前記顔料の平均粒子径と前記払拭部材の平均繊維径との比(平均粒子径/平均繊維径)が0.005以上0.25以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液体吐出装置。
    ただし、前記平均粒子径は、前記顔料の形状が鱗片状である場合、前記顔料の投影面積から求められる前記顔料の略平坦な面における円相当径の50%平均粒子径とする。
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