JP2021082578A - アイオノマコート触媒及びその製造方法、並びに、保護材被覆電極触媒及びその製造方法 - Google Patents

アイオノマコート触媒及びその製造方法、並びに、保護材被覆電極触媒及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アイオノマによる触媒被毒が少なく、かつ、低湿条件下での触媒利用率が高いアイオノマコート触媒及びその製造方法、並びに、保護材被覆電極触媒及びその製造方法を提供すること。【解決手段】アイオノマコート触媒の製造方法は、担体表面に触媒粒子が担持された電極触媒を準備する第1工程と、前記触媒粒子の表面を保護材でコートし、保護材被覆電極触媒を得る第2工程と、前記保護材被覆電極触媒の表面をアイオノマでさらにコートし、前駆体を得る第3工程と、前記前駆体から前記保護材を抽出する第4工程とを備えている。アイオノマコート触媒は、このような方法により得られたものからなる。【選択図】図1

Description

本発明は、アイオノマコート触媒及びその製造方法、並びに、保護材被覆電極触媒及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、触媒粒子の表面がアイオノマでコートされたアイオノマコート触媒及びその製造方法、並びに、触媒粒子の表面が保護材で被覆された保護材被覆電極触媒及びその製造方法に関する。
固体高分子形燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体(MEA)を基本単位とする。また、固体高分子形燃料電池において、電極は、一般に、拡散層と触媒層の二層構造をとる。拡散層は、触媒層に反応ガス及び電子を供給するためのものであり、カーボンペーパー、カーボンクロス等が用いられる。また、触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、一般に、白金等の電極触媒を担持したカーボンと固体高分子電解質(触媒層アイオノマ)との複合体からなる。
固体高分子形燃料電池に用いられる触媒層は、一般に、
(a)電極触媒及びアイオノマを含み、固形分濃度が約10%の触媒インクを作製し、
(b)種々の方法を用いて、触媒インクを基材表面に塗布し、塗膜中の溶媒を揮発させることにより基材表面に触媒層を形成し、
(c)基材表面の触媒層を電解質膜に転写する
ことにより製造されている。
また、基材の代わりに固体高分子電解質膜に触媒インクを直接塗布する方法もある。
基材表面への触媒インクの塗布方法としては、例えば、スプレー法、ドクターブレードやアプリケーターを用いたブレードコート法、ダイコート法、リバースロールコータ法、間欠ダイ塗工法などが知られている。いずれの方法を用いる場合であっても、触媒インクの性状は、触媒層の健全性や生産性に影響を与える。そのため、触媒層の健全性や生産性を向上させることを目的として、触媒層の製造方法に関して従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、
(a)高酸素透過アイオノマ及び白金担持カーボンを含む分散液を調製し、分散液から溶媒を蒸発させて乾燥粉とし、
(b)乾燥粉、及びナフィオン(登録商標)溶液を含む分散液を調整し、分散液をシート上に塗布する
ことにより得られる燃料電池用電極が開示されている。
同文献には、触媒層アイオノマを二層構造にすることにより、高酸素透過性材料の使用量が少量であっても酸素透過性が向上し、触媒使用量を低減できる点が記載されている。
特許文献2には、
(a)白金担持カーボン及び高酸素透過アイオノマを、水比率が0.8以上である溶媒に分散させて分散液とし、
(b)分散液を乾燥させて粉末とし、
(c)粉末を130℃以上200℃以下の熱処理温度で熱処理する
ことにより得られるアイオノマコート触媒が開示されている。
同文献には、このようなアイオノマコート触媒を用いると、低粘度、かつ、高固形分濃度の触媒インクを製造することができる点が記載されている。
特許文献3には、
(a)メソポーラスカーボンの内部に触媒金属を担持させた触媒を作製し、
(b)触媒と、溶媒と、アイオノマとを含む材料を混合して触媒インクを作製し、
(c)触媒インクを基材上に塗布する
ことにより得られる電極触媒層が開示されている。
同文献には、メソポーラスカーボンの内部に触媒金属を担持させると、アイオノマによる触媒金属の被毒を抑制することができる点が記載されている。
特許文献4には、中空状カーボン担体に白金が担持された担持触媒を含むカソード側触媒層が開示されている。
同文献には、
(A)アノード側は低電位であるため、アイオノマによる触媒被毒があまり問題とならないのに対し、カソード側は電位が高いため、アイオノマによる触媒被毒が問題となる点、及び、
(B)カソード側触媒として、中空状カーボン担体に白金が担持された担持触媒を用いると、アイオノマによる白金の被毒を低減することができる点
が記載されている。
特許文献5には、
(a)細孔を有するカーボン担体を水に分散させ、脱気することにより、細孔内部に水が侵入しているカーボン担体が分散している分散液を作製し、
(b)分散液に触媒金属の塩を加え、カーボン担体に触媒金属の塩を担持させ、
(c)触媒金属の塩を還元処理する
ことにより得られる燃料電池用電極触媒が開示されている。
同文献には、このような方法により、カーボン担体の細孔内に触媒金属が担持されている電極触媒が得られる点が記載されている。
特許文献6には、細孔径が2〜5nmであり、細孔容量が2.1〜2.4mL/gであるメソポーラスカーボンに貴金属を担持させた貴金属担持触媒が開示されている。
同文献には、所定の条件を満たすメソポーラスカーボンを使用することによって、ガス拡散性が向上し、それによって電圧性能が改善する点が記載されている。
特許文献7には、メソ孔の半径が1〜10nmであり、メソ孔のモード半径が2.5〜10nmである担体のメソ細孔内に白金合金微粒子を担持させた触媒が開示されている。
同文献には、メソ孔の大きさを制御することによって、白金合金微粒子を担体内部に担持することができる点が記載されている。
特許文献8には、
(a)002面の結晶子径Lcが1.5nm以下であるメソポーラスカーボンからなる担体を、1700℃以上かつ2300℃未満で熱処理し、
(b)熱処理された担体の少なくとも内部に触媒粒子を担持し、
(c)触媒粒子が担持された担体にアイオノマーを被覆する
燃料電池用電極の製造方法が開示されている。
同文献には、
(A)触媒担体としてカーボンブラックを用いる場合において、カーボンブラックの耐久性を向上させるためにカーボンブラックに対して熱処理を施すと、カーボンブラック内の細孔が潰れ、細孔内に触媒粒子を内包させることが難しくなる点、
(B)所定の条件を満たすメソポーラスカーボンを熱処理すると、メソポーラスカーボンの細孔は潰れることがなく、メソポーラスカーボンの耐久性が向上する点、及び、
(C)このような担体の細孔内に触媒を担持すると、細孔内にはアイオノマがほとんど入り込まないので、アイオノマよる触媒被毒を抑制できる点
が記載されている。
特許文献9には、アイオノマによる触媒被毒の抑制を目的とするものではないが、
(a)銅イオンを含み、かつ、白金担持カーボンが分散している酸水溶液に銅板を浸漬し、酸水溶液を攪拌する方法、及び、
(b)酸水溶液の攪拌を行っている際に、酸水溶液中にPt線(作用極)を浸漬し、Pt線の電位が銅の標準酸化還元電位になるまでに要する時間を計測する工程と、計測終了後にPt線の表面に析出した銅層を除去する工程とを繰り返す方法
が開示されている。
同文献には、
(A)酸水溶液中に分散している白金担持カーボンが銅板に接触すると、ほぼ瞬間的にアンダーポテンシャルデポジション(UPD)が起こり、白金粒子の表面に1原子層の銅層が形成される点、
(B)Pt線の電位が銅の標準酸化還元電位になるまでに要する時間の経時変化を計測することにより、白金担持カーボンに含まれる白金粒子の表面が銅層で完全に覆われたか否かを判定できる点、及び、
(C)白金粒子の表面に析出した銅単原子層を金でガルバニック置換すると、白金粒子の表面が金で修飾された触媒を得ることができ、これによって、白金粒子の酸化及び溶出を抑制することができる点
が記載されている。
さらに、非特許文献1には、燃料電池用電極触媒の製造を目的とするものではないが、プラスチックなどの不導体表面を金属化する無電解銅めっきを行うためのめっき浴の組成が開示されている。
白金触媒表面がアイオノマで被覆されると、アイオノマ中のアニオン(スルホン酸基やイミド酸基等)により白金が被毒され、酸素還元活性が低下することが知られている(例えば、非特許文献2、3参照)。そのため、高効率な燃料電池を構築するためには、アイオノマによる触媒の被毒を低減させることが必要である。
この問題を解決するために、特許文献3〜8には、多孔質の担体を用い、担体の細孔内に触媒粒子を担持させることが提案されている。しかし、多孔質の担体は、一般に、カーボンブラックなどの中実担体に比べて高価である。
また、多孔質カーボン担体内部にはアイオノマが存在しないため、カーボンの吸着水で多孔質担体内部へプロトンが供給される。しかし、低湿度条件ではその吸着水が減少するため、触媒にプロトンが届きにくくなり、内部の白金利用率が低下するという問題がある。
アイオノマによる触媒被毒を低減し、かつ、低湿度条件での触媒利用率を向上させるためには、触媒粒子を被毒しない程度にアイオノマが触媒粒子から離れており、かつ、プロトンが供給できる程度にアイオノマが触媒粒子の近くに存在するのが望ましい。
しかしながら、このような条件を満たす電極触媒が提案された例は、従来にはない。特に、低コストな中実担体を用いた電極触媒において、アイオノマ被毒を低減する方法が提案された例は、従来にはない。
特開2014−216157号公報 特開2018−152333号公報 特開2018−181838号公報 特開2018−163843号公報 特開2018−098198号公報 特開2018−098196号公報 国際公開第2014/175106号 国際公開第2014/185498号 特開2012−240002号公報
藤波 知之、「無電解銅めっき」、表面技術、Vol.50、No.2(1999)、p129-134 Ram Sbbaraman et al., "Oxygen Reduction Reaction at Three-Phase Interface," ChemPhysChem 2010, 11, 2825-2833 Kazuma Shinozaki et al., "Suppression of oxygen reduction reaction activity on Pt-based electrocatalysts from ionomer incorporation," Journal of Power Sources, 2016, 325, 745-751
本発明が解決しようとする課題は、アイオノマによる触媒被毒が少なく、かつ、低湿条件下での触媒利用率が高いアイオノマコート触媒及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このようなアイオノマコート触媒の製造に用いられる保護材被覆電極触媒及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るアイオノマコート触媒の製造方法は、
担体表面に触媒粒子が担持された電極触媒を準備する第1工程と、
前記触媒粒子の表面を保護材でコートし、保護材被覆電極触媒を得る第2工程と、
前記保護材被覆電極触媒の表面をアイオノマでさらにコートし、前駆体を得る第3工程と、
前記前駆体から前記保護材を抽出する第4工程と
を備えている。
本発明に係るアイオノマコート触媒は、本発明に係る方法により得られたものからなる。
本発明に係る保護材被覆電極触媒の製造方法は、
担体表面に触媒粒子が担持された電極触媒を準備する第1工程と、
前記触媒粒子の表面を保護材でコートし、保護材被覆電極触媒を得る第2工程と
を備えている。
さらに、本発明に係る保護材被覆電極触媒は、
担体表面に触媒粒子が担持された電極触媒と、
前記触媒粒子の表面を被覆する保護材と
を備えている。
担体表面に触媒粒子を担持し、触媒粒子の表面を保護材でコートし、さらに保護材の表面をアイオノマーでコートした後、保護材を抽出すると、担体として中実担体を用いた場合であっても、アイオノマによる触媒被毒が少なく、かつ、低湿条件での触媒利用率が高いアイオノマコート触媒が得られる。
これは、保護材のコート及び抽出を行うことによって、触媒粒子の周囲にアイオノマが近接して配置されると同時に、アイオノマと触媒粒子との間に適度な大きさの空間が形成されるためと考えられる。換言すれば、触媒粒子が被毒しない程度にアイオノマと触媒粒子とが離れており、かつ、低湿度環境下でもプロトン供給が可能となる程度にアイオノマと触媒粒子とが近接しているためと考えられる。
本発明に係るアイオノマコート触媒の製造方法の模式図である。 実施例1及び比較例1〜2で得られたアイオノマコート触媒の酸素還元活性維持率である。 実施例2で得られた保護材被覆電極触媒の元素分布マッピング(図3(A):銅、図3(B):白金)、及び透過電子顕微鏡像(図3(C))である。 Pt/C(比較例3)、Naf/Pt/C(比較例4)、及びNaf/(Cu除去)/Pt/C(実施例2)の比活性(SA)の対数と電位との関係を示す図である。 Naf/Pt/C(比較例4)、及びNaf/(Cu除去)/Pt/C(実施例2)の0.9Vにおける酸素還元活性維持率である。 0.9Vにおける酸素還元活性維持率のI/C依存性を示す図である。 0.9Vにおける酸素還元活性維持率のアイオノマ被覆厚依存性を示す図である。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. アイオノマコート触媒の製造方法]
本発明に係るアイオノマコート触媒の製造方法は、
担体表面に触媒粒子が担持された電極触媒を準備する第1工程と、
前記触媒粒子の表面を保護材でコートし、保護材被覆電極触媒を得る第2工程と、
前記保護材被覆電極触媒の表面をアイオノマでさらにコートし、前駆体を得る第3工程と、
前記前駆体から前記保護材を抽出する第4工程と
を備えている。
[1.1. 第1工程]
まず、担体表面に触媒粒子が担持された電極触媒を準備する(第1工程)。
[1.1.1. 担体]
担体は、触媒粒子を担持するためのものである。本発明において、担体は、触媒粒子を担持することができ、かつ、電極反応に必要な電子を触媒粒子に供給することが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。
担体は、
(a)その内部に触媒粒子を担持することが可能な細孔を持つ多孔質担体、又は、
(b)このような細孔を持たない中実担体
のいずれであっても良い。
担体として多孔質担体を用いた場合、細孔内に担持された触媒粒子は、アイオノマにより被毒されにくくなる。しかし、細孔を持つ多孔質担体は、一般に高価である。一方、中実担体は、多孔質担体に比べて安価である。しかし、担体として中実担体を用いた場合、一般に、触媒粒子がアイオノマにより被毒されやすい。
これに対し、中実担体に対して本発明を適用すると、従来の方法を用いて多孔質担体に触媒粒子を担持させた場合と同等以上の性能を持つ電極触媒が得られる。
多孔質担体としては、例えば、エスカーボン(登録商標)などのメソポーラスカーボン、ナノデンドライト(MCND)、クノーベル(登録商標)などがある。
中実担体としては、例えば、デンカブラック(登録商標)などのアセチレンブラック、Vulcan(登録商標)、VGCF(登録商標)、カーボンナノチューブなどがある。
担体の平均粒径は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な平均粒径を選択することができる。また、担体の材質はカーボンに限定されるものではなく、導電性の金属酸化物(TiOx、SnO2)も用いることができる。
[1.1.2. 触媒粒子]
触媒粒子の材料は、酸素還元反応活性又は水素酸化反応活性を示す材料である限りにおいて、特に限定されない。
触媒粒子の材料としては、例えば、
(a)貴金属(Pt、Au、Ag、Pd、Rh、Ir、Ru、Os)、
(b)2種以上の貴金属元素を含む合金、
(c)1種又は2種以上の貴金属元素と、1種又は2種以上の卑金属元素(例えば、Fe、Co、Ni、Cr、V、Tiなど)とを含む合金、
(d)金属酸窒化物、
(e)カーボンアロイ
などがある。
[1.1.3. 電極触媒の調製]
電極触媒は、市販のものをそのまま用いても良く、あるいは、担体表面に触媒粒子が担持された電極触媒を作製しても良い。電極触媒の作製は、通常、
(a)触媒粒子前駆体を溶解させた溶液に担体を分散させ、溶媒中で触媒粒子前駆体を担体表面に吸着させること、あるいは、分散液から溶媒を揮発させることにより、担体表面に触媒粒子前駆体が担持された電極触媒前駆体を形成し、
(b)触媒粒子前駆体を還元処理する
ことにより行われる。
[1.2. 第2工程]
次に、触媒粒子の表面を保護材でコートする。(第2工程)。これにより、少なくとも触媒粒子の表面が保護材でコートされた電極触媒(以下、これを「保護材被覆電極触媒」ともいう)が得られる。
[1.2.1. 保護材]
「保護材」とは、触媒粒子とアイオノマとの間に適度な大きさの空間(アイオノマによる触媒被毒を低減することができ、かつ、低湿度環境下においてもアイオノマから触媒粒子にプロトンを供給することが可能な程度の大きさの空間)を形成するために、触媒粒子の表面を一時的に被覆するためのものをいう。保護材は、触媒粒子の表面に加えて、担体の表面を被覆するものでも良い。
そのためには、保護材は、
(a)少なくとも触媒粒子の表面を被覆することが可能であり、かつ、
(b)保護材で被覆された触媒粒子を含む電極触媒の表面をさらにアイオノマで被覆した後、保護材のみを選択的に抽出することが可能なもの
である必要がある。
保護材は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。
保護材としては、例えば、
(a)触媒粒子に含まれる主要な金属元素の内、最も貴な金属元素よりも卑な金属、
(b)炭素数が5以上である炭化水素鎖に、ホスホン酸基(−PO3 2-)、スルホン酸基(−SO3 -)、スルファミル基(−SH)、カルボン酸基(−COO-)、アンモニウム基(−NR3 +)、ピリジニウム基(−N+55)、及び、イミダゾリウム基(−N22 +32)(但し、Rは、アルキル基又はH)からなる群から選ばれるいずれか1以上の官能基が結合している有機化合物、
(c)アイオノマが溶解しない溶媒に可溶なポリマ、又は、
(d)触媒粒子及びアイオノマが溶解しない酸又はアルカリで溶解可能な無機化合物
などがある。
[A. 金属]
保護材の第1の具体例は、触媒粒子に含まれる主要な金属元素の内、最も貴な金属元素よりも卑な金属からなる。
ここで、「主要な金属元素」とは、触媒粒子中の含有量が1mass%以上である金属元素をいう。保護材の選択的な抽出を容易化するためには、保護材は、
(a)主要な金属元素の内、最も貴な金属元素よりも卑であり、かつ、触媒粒子中の含有量が最大である金属元素より卑な金属元素、あるいは、
(b)触媒粒子に含まれるすべての主要な金属元素よりも卑な金属
が好ましい。
保護材が金属からなる場合、保護材の材料は、触媒粒子の組成に応じて最適なものを選択する。例えば、触媒粒子が白金又は白金合金からなる場合、保護材は、Cu、Ag、Sb、Bi、Pd、Zn、Cr、Fe、Cd、Co、Ni、Sn、又は、Pbが好ましい。保護材は、これらのいずれか1種の金属元素を含む純金属であっても良く、あるいは、2種以上の金属元素含む合金又は混合物であっても良い。
[B. 吸着性官能基を有する有機化合物]
保護材の第2の具体例は、吸着性官能基を有する有機化合物からなる。
ここで、「吸着性官能基」とは、触媒粒子の表面に吸着しやすい性質を持つ官能基であって、ホスホン酸基(−PO3 2-)、スルホン酸基(−SO3 -)、スルファミル基(−SH)、カルボン酸基(−COO-)、アンモニウム基(−NR3 +)、ピリジニウム基(−N+55)、又は、イミダゾリウム基(−N22 +32)(但し、Rは、アルキル基又はH)をいう。
「吸着性官能基を有する有機化合物」とは、炭素数が5以上である炭化水素鎖に、1又は2以上の吸着性官能基が結合している有機化合物をいう。
吸着性官能基を持つ有機化合物は、微粒子表面への吸着力が強いため、微粒子の分散剤として用いられている。このような分散剤は、触媒粒子表面に一時的に吸着させるための保護材として機能する。
炭化水素鎖の炭素数が少ないと、保護材が抽出された後に残る空間が狭くなる。その結果、アイオノマと触媒粒子との間の距離が過度に短くなり、触媒粒子がアイオノマにより被毒されやすくなる。従って、炭化水素鎖の炭素数は、5以上が好ましい。炭素数は、好ましくは、10以上、さらに好ましくは、20以上である。
表1〜3に、保護材として使用可能な有機化合物(分散剤)の一例を示す(参考文献1より引用)。保護材は、これらのいずれか1種からなるものでも良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
[参考文献1]J. Jpn. Soc. Colour Mater., 78(3), 141-148(2005)
Figure 2021082578
Figure 2021082578
Figure 2021082578
[C. ポリマ]
保護材の第3の具体例は、アイオノマが溶解しない溶媒に可溶なポリマからなる。
触媒粒子の表面をポリマ及びアイオノマで被覆した後、ポリマのみを溶解させる溶媒に浸漬すると、ポリマを優先的に溶解させることができる。
このようなポリマとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアクリロニトリル(PAN)などがある。保護材は、これらのいずれか1種からなるものでも良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
[D. 無機化合物]
保護材の第4の具体例は、触媒粒子及びアイオノマが溶解しない酸又はアルカリで溶解可能な無機化合物からなる。
触媒粒子の表面を無機化合物及びアイオノマで被覆した後、無機化合物のみを溶解させる酸又はアルカリに浸漬すると、無機化合物を優先的に溶解させることができる。
このような無機化合物としては、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタルなどがある。保護材は、これらのいずれか1種からなるものでも良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
[1.2.2. コート方法]
保護材のコート方法は、保護材の種類に応じて、最適な方法を選択する。
例えば、保護材が金属である場合、コート方法としては、電析(電解めっき)、無電解めっき、蒸着、スパッタなどがある。
保護材が吸着性官能基を備えた有機化合物である場合、コート方法としては、例えば、有機化合物を溶解又は分散させた溶液中に電極触媒を分散させ、溶媒を揮発させる方法がある。
なお、保護材が吸着性官能基を備えた有機化合物である場合、保護材のコート(第2工程)と、アイオノマのコート(第3工程)とを個別に行っても良く、あるいは、同時に行っても良い。保護材とアイオノマの双方を含む溶液中に電極触媒を分散させると、溶液中の平衡反応により、触媒粒子の表面を有機化合物でコートすることができる。
保護材がポリマである場合、コート方法としては、
(a)ポリマを溶解又は分散させた溶液中に電極触媒を分散させ、溶媒を揮発させる方法、
(b)ポリマが溶解しにくい溶媒に電極触媒を分散させ、ポリマを溶解又は分散させた溶液をその中に投入・分散させてポリマを触媒粒子に吸着させ、ろ過する方法、
などがある。
さらに、保護材が無機材料である場合、コート方法としては、
(a)テトラアルコキシシランなどの金属アルコキシドを含む溶液に電極触媒を加えて混合し、金属アルコキシドを加水分解する方法、
(b)スパッタ法、
などがある。
[1.2.3. 保護材の厚さ]
触媒粒子の表面を保護材でコートする場合において、保護材の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さを選択する。一般に、保護材の厚さが薄くなりすぎると、保護材を抽出した後において、アイオノマが触媒粒子に過度に近接し、触媒粒子がアイオノマにより被毒されやすくなる。従って、保護材の厚さは、1nm以上が好ましい。厚さは、好ましくは、3nm以上、さらに好ましくは、5nm以上である。
一方、保護材の厚さが厚くなりすぎると、アイオノマから触媒へプロトンが供給されにくくなる。従って、保護材の厚さは、20nm以下が好ましい。厚さは、好ましくは、10nm以下、さらに好ましくは、8nm以下である。
[1.3. 第3工程]
次に、触媒粒子の表面が保護材でコートされた電極触媒の表面を、アイオノマでさらにコートする(第3工程)。これにより、保護材及びアイオノマでコートされた触媒粒子を含む電極触媒(以下、これを「前駆体」ともいう)が得られる。
[1.3.1. アイオノマ]
アイオノマは、触媒粒子表面にプロトンを供給するためのものである。アイオノマは、保護材で被覆された触媒粒子の表面のみを被覆するものでも良く、あるいは、これに加えて担体の表面を被覆するものでも良い。
アイオノマは、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。アイオノマとしては、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマ、高酸素透過アイオノマなどがある。アイオノマは、これらのいずれか1種からなるものでも良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
「パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマ」とは、フッ化スルホニルビニルエーテルモノマに基づく繰り返し単位を含む含フッ素イオン交換樹脂をいう。パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマとしては、例えば、ナフィオン(登録商標)、フレミオン(登録商標)、アクイヴィオン(登録商標)、アシプレックス(登録商標)などがある。
「高酸素透過アイオノマ」とは、その分子構造内に酸基及び環状構造を含む高分子化合物をいう。高酸素透過アイオノマは、その分子構造内に環状構造を含むために、酸素透過係数が高い。そのため、これをアイオノマとして用いた時に、触媒との界面における酸素移動抵抗が相対的に小さくなる。
換言すれば、「高酸素透過アイオノマ」とは、酸素透過係数がナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマよりも高いアイオノマをいう。
一般に、燃料電池の性能は、触媒表面への酸素の拡散が律速となる。これに対し、電極触媒の表面を高酸素透過アイオノマで被覆すると、触媒層の酸素透過性が向上し、燃料電池の性能が向上する。
高酸素透過アイオノマの分子構造は、相対的に小さい酸素移動抵抗を示す限りにおいて、特に限定されない。特に、その分子構造内に環状構造(脂肪族環構造)を含むアイオノマは、環状構造を含まないアイオノマに比べて酸素移動抵抗が小さいので、電極触媒の表面を被覆するアイオノマとして好適である。
高酸素透過アイオノマとしては、例えば、
(a)脂肪族環構造を有するパーフルオロカーボンユニットと、パーフルオロスルホン酸を側鎖に持つ酸基ユニットとを含む電解質ポリマー、
(b)脂肪族環構造を有するパーフルオロカーボンユニットと、パーフルオロイミドを側鎖に持つ酸基ユニットとを含む電解質ポリマー、
(c)脂肪族環構造を有するパーフルオロカーボンに直接、パーフルオロスルホン酸が結合したユニットを含む電解質ポリマー、
などがある(参考文献2〜5参照)。
[参考文献2]特開2003−036856号公報
[参考文献3]国際公開第2012/088166号
[参考文献4]特開2013−216811号公報
[参考文献5]特開2006−152249号公報
[1.3.2. コート方法]
アイオノマのコートは、アイオノマを溶解又は分散させた溶液中に電極触媒を分散させ、溶媒を揮発させることにより行うことができる。
アイオノマを溶解又は分散させるための溶媒は、保護材を溶解させることなく、アイオノマのみを溶解又は分散させることが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。保護材の溶解を防ぐために、必要に応じて、雰囲気(例えば、窒素雰囲気)や、溶液のpHを調整するのが好ましい。
[1.3.3. アイオノマ/担体比]
電極触媒の表面をアイオノマでコートする場合において、アイオノマ/担体比(質量比)は、アイオノマコート触媒の性能に影響を与える。アイオノマ/担体比が小さくなりすぎると、酸素還元反応に必要なプロトンが供給されにくくなる。従って、アイオノマ/担体比は、0.1以上が好ましい。アイオノマ/担体比は、好ましくは、0.2以上、さらに好ましくは、0.4以上である。
一方、アイオノマ/担体比が大きくなりすぎると、アイオノマによって触媒層中の空隙率が減少し、ガスの拡散性が阻害される。従って、アイオノマ/担体比は、1.5以下が好ましい。アイオノマ/担体比は、好ましくは、1.2以下、さらに好ましくは、1.0以下である。
[1.3.4. アイオノマ被覆厚]
「アイオノマ被覆厚」とは、アイオノマコート触媒に含まれるアイオノマの乾燥状態の体積を、電極触媒の表面積で除した値をいう。
「電極触媒の表面積」とは、酸素還元活性を有する触媒粒子の表面積と担体の表面積の和であって、BET法で測定した値をいう。
アイオノマ被覆厚は、電極触媒の比表面積(特に、担体の比表面積)による影響を強く受ける。すなわち、同じアイオノマ量であっても、高比表面積の電極触媒を用いた場合のアイオノマ被覆厚は、低比表面積の触媒を用いた場合のそれよりも薄くなる。一般に、アイオノマ被覆厚が薄くなるほど、保護材を除去した後に、アイオノマが白金などの活性種に吸着する確率が低くなる。そのため、第3工程は、アイオノマ被覆厚が所定の値となるように、保護材被覆電極触媒の表面をアイオノマでさらにコートするものが好ましい。
アイオノマ被毒による酸素還元活性の低下を抑制するためには、アイオノマ被覆厚は、2.5nm以下が好ましい。アイオノマ被覆厚は、好ましくは、2.3nm以下、さらに好ましくは、2.0nm以下である。
一方、アイオノマ被覆厚が薄くなりすぎると、酸素還元反応に必要なプロトンが供給されにくくなる。従って、アイオノマ被覆厚は、0.2nm以上が好ましい。アイオノマ被覆厚は、さらに好ましくは、0.8nm以上である。
[1.4. 第4工程]
次に、前駆体から保護材を抽出する(第4工程)。これにより、本発明に係るアイオノマコート触媒が得られる。
保護材の抽出方法は、保護材の種類に応じて最適な方法を選択する。
例えば、保護材が金属からなる場合、保護材の抽出は、触媒粒子の表面を保護材及びアイオノマで被覆した後、保護材を溶解可能な溶液(例えば、希硝酸水溶液)に前駆体を浸漬することにより行う。この時、保護材が触媒粒子に比べて卑な金属である時には、保護材を優先的に溶解させることができる。
保護材が有機化合物からなる場合、保護材の抽出方法としては、
(a)前駆体を熱水に浸漬する方法、
(b)前駆体を用いて燃料電池にした後に、高電位に制御することにより保護材を酸化分解させる方法、
(c)前駆体を用いて燃料電池にした後、発電による生成水により保護材を洗い流す方法、
などがある。
保護材がポリマからなる場合、保護材の抽出は、アイオノマが溶解せず、かつ、ポリマを溶解する溶媒に前駆体を浸漬することにより行う。例えば、保護材がPBTである場合、PBTは、ナフィオン(登録商標)溶液の溶媒である水/アルコールの混合溶媒には溶解しないが、オクトクロロフェノールには溶解する。一方、ナフィオン(登録商標)は、オクトクロロフェノールには溶解しない。そのため、前駆体をオクトクロロフェノールに浸漬すると、PBTのみを選択的に溶解することができる。
さらに、保護材が無機化合物からなる場合、保護材の抽出は、アイオノマが溶解せず、かつ、保護材を溶解させることが可能な溶媒に前駆体を浸漬することにより行う。例えば、保護材がシリカである場合、フッ化水素酸、強塩基性水溶液(KOH、NaOHなど)などによりシリカを除去することができる。
[2. アイオノマコート触媒]
図1に、本発明に係るアイオノマコート触媒の製造方法の模式図を示す。なお、図1においては、担体が中実カーボン粒子からなり、触媒粒子がPtからなり、保護材がCuからなる例が示されているが、上述したように、担体、触媒粒子、及び保護材の材料は、これらに限定されない。
まず、担体の表面に触媒粒子が担持された電極触媒(例えば、白金担持カーボン)を準備する。次いで、触媒粒子の表面を保護材でコートする(図1の左図)。電解めっき法を用いて、白金担持カーボンの表面にCuを析出させる場合、カーボン担体表面にもCuは析出すると考えられる。しかし、カーボン担体表面に析出する速度よりもPt表面に析出する速度の方が速いので、電解めっき条件を最適化すると、主としてPt表面にCuを析出させることができる。
次に、電極触媒の表面をアイオノマでさらにコートする(図1の中図)。アイオノマは、保護材の表面に加えて、担体の表面を被覆するものでも良い。
さらに、アイオノマコートされた保護材付き電極触媒(すなわち、前駆体)を、Cuのみを溶解可能な溶液(例えば、希硝酸水溶液)に浸漬すると、Cuのみが抽出される(図1の右図)。これにより、本発明に係るアイオノマコート触媒が得られる。
本発明に係るアイオノマコート触媒は、上述のような方法により得られるものであるため、図1に示すように、触媒粒子の周囲にアイオノマが近接して配置されると同時に、触媒粒子とアイオノマとの間には、適度な大きさの空間が形成されていると考えられる。その結果、低湿度環境下でもプロトン供給が可能となり、かつ、アイオノマによる触媒被毒が抑制されると考えられる。
このような触媒とアイオノマの位置関係は、三次元TEMと元素分析を組み合わせた方法で観察することが考えられる。しかし、アイオノマは電子線によるダメージを受けやすいため、これらの位置関係を定量的に解析することは難しい。すなわち、本願の出願時において、このような空間の有無及びその大きさを直接、観測する手段はない。しかし、本発明に係る方法により得られたアイオノマコート触媒の性能(例えば、後述する酸素還元活性維持率)と、従来の方法を用いて作製された同一組成の触媒のそれとを対比することにより、触媒粒子周辺における適度な大きさの空間の有無を間接的に確認することができる。
具体的には、担体が中実担体からなる場合において、製造条件を最適化すると、次の式(1)及び式(2)の関係を満たすアイオノマコート触媒が得られる。
0.1≦x≦1.5 …(1)
7.5758x2−28.03x+100≦y≦100 …(2)
但し、
xは、前記アイオノマコート触媒のアイオノマ/担体比(質量比)、
yは、前記アイオノマコート触媒の酸素還元活性維持率(%)。
電極触媒の表面を直接、アイオノマーでコートした場合、アイオノマ/担体比が0〜0.5の領域内では酸素還元活性維持率が急激に低下する。また、アイオノマ/担体比が0.5を超える領域内では、酸素還元活性維持率は、ほぼ一定の値を取るか、あるいは、アイオノマ/担体比の増加に伴い、酸素還元活性維持率が漸減する。
これに対し、電極触媒とアイオノマの間に適度な空間を形成すると、アイオノマ/担体比が0〜0.5の領域内で酸素還元活性維持率が急激に低下することがなく、100%近い値を維持する。また、アイオノマ/担体比が0.5〜2.0の領域内において、酸素還元活性維持率は、アイオノマ/担体比に依存して変化する。具体的には、アイオノマ/担体比が小さくなるほど、酸素還元活性維持率が高くなる。製造条件を最適化すると、アイオノマ/担体比が0.5〜1.0の領域において、酸素還元活性維持率が90%以上であるアイオノマコート触媒が得られる。
また、製造条件を最適化すると、アイオノマ被覆厚が0.2nm以上2.5nm以下であるアイオノマコート触媒が得られる。アイオノマ被覆厚の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[3. 保護材被覆電極触媒の製造方法]
本発明に係る保護材被覆電極触媒の製造方法は、
担体表面に触媒粒子が担持された電極触媒を準備する第1工程と、
前記触媒粒子の表面を保護材でコートし、保護材被覆電極触媒を得る第2工程と
を備えている。
[3.1. 第1工程]
まず、担体表面に触媒粒子が担持された電極触媒を準備する(第1工程)。第1工程の詳細については上述した通りであるので、説明を省略する。
[3.2. 第2工程]
次に、触媒粒子の表面を保護材でコートする(第2工程)。これにより、本発明に係る保護材被覆電極触媒が得られる。第2工程は、保護材の厚さが1nm以上20nm以下となるように、触媒粒子の表面に前記保護材をコートするものが好ましい。第2工程に関するその他の点については上述した通りであるので、説明を省略する。
[4. 保護材被覆電極触媒]
担体表面に触媒粒子が担持された電極触媒と、
前記触媒粒子の表面を被覆する保護材と
を備えている。
[4.1. 担体]
担体は、触媒粒子を担持するためのものである。担体の詳細については上述した通りであるので、説明を省略する。
[4.2. 触媒粒子]
触媒粒子の材料は、酸素還元反応活性又は水素酸化反応活性を示す材料である限りにおいて、特に限定されない。触媒粒子の詳細については上述した通りであるので、説明を省略する。
[4.3. 保護材]
「保護材」とは、触媒粒子とアイオノマとの間に適度な大きさの空間(アイオノマによる触媒被毒を低減することができ、かつ、低湿度環境下においてもアイオノマから触媒粒子にプロトンを供給することが可能な程度の大きさの空間)を形成するために、触媒粒子の表面を一時的に被覆するためのものをいう。保護材は、触媒粒子の表面に加えて、担体の表面を被覆するものでも良い。
保護材の厚さは、1nm以上20nm以下が好ましい。また、保護材は、Cu、Niなどの金属が好ましい。
保護材に関するその他の点については上述した通りであるので、説明を省略する。
[5. 作用]
担体として多孔質担体を用い、細孔内に触媒粒子を担持させると、アイオノマによる触媒被毒を低減することができる。しかし、多孔質担体は、一般に高価である。また、多孔質担体の内部にはアイオノマが存在しないため、低湿度条件下では、細孔内に担持された触媒粒子にプロトンが供給されにくくなる。そのため、低湿度条件下では、触媒利用率が低下する。
これに対し、担体表面に触媒粒子を担持し、触媒粒子の表面を保護材でコートし、さらに電極触媒の表面をアイオノマーでコートした後、保護材を抽出すると、担体として中実担体を用いた場合であっても、アイオノマによる触媒被毒が少なく、かつ、低湿条件での触媒利用率が高いアイオノマコート触媒が得られる。
これは、保護材のコート及び抽出を行うことによって、触媒粒子の周囲にアイオノマが近接して配置されると同時に、アイオノマと触媒粒子との間に適度な大きさの空間が形成されるためと考えられる。換言すれば、触媒粒子が被毒しない程度にアイオノマと触媒粒子とが離れており、かつ、低湿度環境下でもプロトン供給が可能となる程度にアイオノマと触媒粒子とが近接しているためと考えられる。
(実施例1、比較例1〜2)
[1. 試料の作製]
[1.1. 基準電極]
電極触媒には、29mass%Pt/C(田中貴金属工業(株)製、TEC10V30E、カーボン種:Vulcan(登録商標)XC−72)を用いた。電極触媒:16.4mgと、水:1gと、1−プロパノール:7.23gとを混合し、超音波ホモジナイザーを用いて分散させた。研磨した5.5mmφのグラッシーカーボン(GC)ロッド上に、上記分散液を5μL滴下し、80℃で乾燥させ、薄い触媒層を形成した。以下、Pt/Cのみからなる触媒を「基準触媒」ともいい、基準触媒のみを担持したGCロッドを「基準電極」ともいう。
[1.2. 実施例1]
3極式のセルにめっき液を入れ、基準電極をめっき液に浸漬した。めっき液には、0.01mol/Lの硫酸銅を含む0.1mol/L硫酸水溶液を用いた。次いで、基準電極を陰極として、不活性雰囲気下において0.3V vs. RHEで5分間保持し、Pt表面にCuを析出させ、Cuコート電極を得た。Cuコート電極を硫酸水溶液から引き上げた後、すぐに超純水ですすぎ、自然乾燥させた。
次に、Cuコート電極の表面に0.15mass%のナフィオン(登録商標)溶液(I/C=1.0相当)を滴下し、80℃で乾燥させ、Cu・アイオノマコート電極を得た。
さらに、3極式のセルに電解液を入れ、Cu・アイオノマコート電極を電解液に浸漬した。電解液には、0.1mol/Lの過塩素酸を用いた。次いで、Cu・アイオノマコート電極を作用極として、0.3Vから1.0V(vs. RHE)まで電位掃引し、Cuのみを溶出させ、アイオノマコート触媒を得た。
[1.3. 比較例1]
基準電極の表面に、直接、0.15mass%のナフィオン(登録商標)溶液(I/C=1.0相当)を滴下し、80℃で乾燥させた。
[1.4. 比較例2]
電極触媒には、29mass%Pt/C(田中貴金属工業(株)製、TEC10V30E、カーボン種:Vulcan(登録商標)XC−72)を用いた。アイオノマ溶液には、ナフィオン(登録商標)溶液(D2020)を用いた。
電極触媒:16.4mgと、水:0.98gと、1−プロパノール:7.23gと、アイオノマ溶液:50mgとを混合し、超音波ホモジナイザーを用いて分散させた。研磨した5.5mmφのグラッシーカーボンロッド上に、上記分散液を5μL滴下し、80℃で乾燥させ、薄い触媒層を形成した。
[2. 試験方法]
[2.1. ECSA]
0.1mol/Lの過塩素酸水溶液中において、不活性雰囲気下でボルタモグラムを測定した。水素吸脱着波から白金の電気化学的有効表面積(ECSA)を算出した。
[2.2. 酸素還元活性維持率]
回転電極法(400rpm)を用いて、酸素(1atm)雰囲気下、30℃、0.9V(vs. RHE)での酸素還元電流を測定した。電解液には、0.1mol/Lの過塩素酸水溶液を用いた。0.9Vでの酸素還元電流をECSAで規格化することにより、酸素還元活性@0.9V(vs. RHE)(すなわち、酸素還元反応の比活性(SA))を算出した。
さらに、得られた酸素還元活性@0.9V(vs. RHE)を用いて、次の式(3)により酸素還元活性維持率を算出した。
酸素還元活性維持率(%)=ORRx×100/ORR0 …(3)
但し、
ORRxは、アイオノマコート触媒の酸素還元活性@0.9V vs. RHE、
ORR0は、基準触媒(アイオノマでコートされていない以外はアイオノマコート触媒と同一組成を有する触媒)の酸素還元活性@0.9V vs. RHE。
[3. 結果]
図2に、実施例1及び比較例1〜2で得られたアイオノマコート触媒の酸素還元活性維持率を示す。図2より、実施例1は、比較例1、2に比べて、酸素還元活性維持率が高いことがわかる。これは、Pt表面へのCuの析出、アイオノマによる被覆、及びCuの抽出という工程を経ているために、Ptとアイオノマとの間に、適度な空間が形成されたためと考えられる。
(実施例2、比較例3〜4)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例2]
[1.1.1. 保護材被覆電極触媒の作製]
1Lビーカーに超純水:480gを量り取り、これに
(a)銅の供給源として硫酸銅五水和物を3.59g、
(b)錯化剤としてロッセル塩(酒石酸カリウムナトリウム4水和物;KOOCCH(OH)CH(OH)COONa・4H2O)を7.66g、及び
(c)還元剤として37%ホルムアルデヒド水溶液を13.0g
を加えて混合し、溶液を得た。
この溶液にPt/C(田中貴金属工業(株)製、TEC10V30E、カーボン種:Valcan(登録商標)XC−72)を1g投入し、懸濁させた。さらにこの懸濁液をマグネチックスターラーで攪拌しながら、水酸化ナトリウム:7.85gを徐々に添加した。それぞれの試薬の投入量から求まる濃度は、CuSO4・5H2O;0.03mol/L、ロッセル塩;16g/L、ホルムアルデヒド;0.25mol/Lであった。また、反応は室温で行った。
銅を析出させた後、減圧濾過を行い、水で複数回洗浄し、銅を析出させた白金担持カーボンを得た。以下、これを「Cu/Pt/C」と表記する。
なお、溶液に投入された銅がすべてPt/Cに担持されたと仮定した場合、Cu/Pt/Cの組成は、銅が47.7mass%、白金が15.0mass%と見積もられた。また、投入された銅がすべてPt粒子表面を均一に被覆していると仮定した場合、銅層の厚さ(保護材の厚さ)は、約10nmと見積もられた。
[1.1.2. 評価用電極の作製]
Cu/Pt/C:127mgを量り取った。これに水:6.29g及び2−プロパノール:25.15gをこの順に加えて混合し、触媒分散液を得た。
これとは別に、ナフィオン(登録商標)溶液(ケマーズ(株)製、D2020)を2−プロパノール(富士フイルム和光純薬製(株)製、精密分析用)で希釈し、濃度5.5mass%のアイオノマ溶液を得た。アイオノマ溶液:0.34gを触媒分散液に加え、ホーン型超音波ホモジナイザー((株)SMT製、MODELUH−600)で6分間分散処理を行い、アイオノマ・触媒分散液を得た。
次に、調製したアイオノマ・触媒分散液を超音波式スプレーノズル(ソニア社製、WS130K50ST)を用いて電極上に塗布した。電極には、表面をアルミナ粒子(1μm、0.3μm、及び0.05μm)で研磨した5.5mmφのGC電極を用いた。スプレー条件は、超音波出力:70%、送液速度:100μL/min、窒素ガス流量:6L/min、ノズルと電極との間の距離:10cm、塗布時間:5分とした。
塗布後、GC電極を80℃の恒温槽中に入れて10分間乾燥させ、アイオノマでコートされたCu/Pt/Cを担持したGC電極を得た。以下、アイオノマでコートされたCu/Pt/Cを「Naf/Cu/Pt/C」と表記する。カーボンに対するアイオノマの質量比(I/C)は、0.4とした。
[1.1.3. Cuの除去]
Naf/Cu/Pt/Cを担持したGC電極を回転電極ホルダーにセットした。この状態で、GC電極を0.5mol/Lの硝酸水溶液に5分間浸漬し、銅を溶出させた。以下、Naf/Cu/Pt/CからCuを除去した触媒を「Naf/(Cu除去)/Pt/C」と表記する。
[1.2. 比較例3]
アイオノマでコートされていないPt/CをGC電極上に担持させた。すなわち、Pt/C:67mgを量り取った。これに水:6.29g及び2−プロパノール:25.15gをこの順に加えて混合し、触媒分散液を得た。調製した触媒分散液をGC電極上に塗布した。塗布の方法及び条件は、実施例2と同一とした。
[1.3. 比較例4]
銅を析出させずに、アイオノマをコートした白金担持カーボン(Naf/Pt/C)をGC電極上に担持させた。すなわち、Pt/C:66mgを量り取った。これに水:6.29g及び2−プロパノール:25.15gをこの順に加えて混合し、触媒分散液を得た。これとは別に、実施例2と同様にして濃度5.5mass%のアイオノマ溶液を作製した。アイオノマ溶液:0.34gを触媒分散液に加えて分散処理を行い、アイオノマ・触媒分散液を得た。さらに、調製したアイオノマ・触媒分散液をGC電極上に塗布した。分散及び塗布の方法及び条件は、実施例2と同一とした。
[2. 試験方法]
[2.1. 保護材被覆電極触媒の評価]
実施例2については、銅を析出させた後、減圧濾過により得られた最初の濾液に含まれる銅イオン濃度を測定した。銅イオン濃度は、パックテスト(登録商標)((株)共立理化学研究所製、銅イオン分析用、WAK−Cu)を用いた比色分析により測定した。
また、保護材被覆電極触媒を透過型電子顕微鏡で観察した。
[2.2. 酸素還元活性の評価]
得られた評価用電極を回転電極ホルダーに挿入し、作用極とした。以下、実施例1と同様にして、白金の電気化学的有効表面積(ECSA)、比活性(SA)、及び酸素還元活性維持率を求めた。
[3. 結果]
[3.1. 保護材被覆電極触媒の評価]
硫酸銅、ロッセル塩、ホルムアルデヒドの混合溶液にPt/Cを加えて混合し、さらに攪拌しながら水酸化ナトリウムを徐々に加えていくと、気泡が生じた。これは次の式(4)で表される銅イオンの還元とホルムアルデヒドの酸化によって、銅の析出と水素の発生が生じたためと考えられる。
Cu2++2HCHO+4OH- → Cu+2HCOO-+H2+2H2O …(4)
また、反応終了後に濾過洗浄を行った際の濾液は、無色透明であった。この濾液の銅イオン濃度をパックテスト(登録商標)で簡易的に測定したところ、0.1mg/Lであった。試薬投入量から計算される還元反応前の銅イオンの濃度は1.9g/Lであることから、ほぼすべての銅イオンが還元され、銅がPt/C上に析出したと考えられる。
この銅イオンの還元反応は、無電解めっき技術の知見から、貴金属表面又は析出した銅の表面の触媒作用によって進行することが知られている。このため、銅が析出している場所は、カーボン担体上ではなく、図1のように白金上であると考えられる。
図3に、実施例2で得られた保護材被覆電極触媒の元素分布マッピング(図3(A):銅、図3(B):白金)、及び透過電子顕微鏡像(図3(C))を示す。図3より、銅と白金が同じ場所に存在し、カーボン上には銅が少ないことが確認できる。
[2.2. 酸素還元活性の評価]
図4に、Pt/C(比較例3)、Naf/Pt/C(比較例4)、及びNaf/(Cu除去)/Pt/C(実施例2)の比活性(SA)の対数と電位との関係(Tafelプロット)を示す。図4より、Naf/(Cu除去)/Pt/CのSAは、Pt/CのSAとほぼ同じであることが分かる。他方、Naf/Pt/CのSAは、Pt/CのSAより低下していることが分かる。
このSAの0.9Vでの値を用いて、式(3)から酸素還元活性維持率を求めた。図5に、Naf/Pt/C(比較例4)、及びNaf/(Cu除去)/Pt/C(実施例2)の0.9Vにおける酸素還元活性維持率を示す。Pt/Cにアイオノマを被覆した場合、その酸素還元活性維持率は51%と半減した。一方、Naf/(Cu除去)/Pt/Cの酸素還元活性維持率は、93%を示した。図5より、銅の析出及び除去を行うことにより、アイオノマ被毒が低減されていることが分かる。
(実施例4、比較例5)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例4]
[1.1.1. 基準電極の作製]
電極触媒には、29mass%Pt/C(田中貴金属工業(株)製、TEC10V30E、カーボン種:Vulcan(登録商標)XC−72)を用いた。Pt/C:66.2mgを量り取った。これに超純水:6.29g及び2−プロパノール:25.15gをこの順に加えて混合し、ホーン型超音波ホモジナイザーで6分間分散処理し、触媒分散液を得た。調製した触媒分散液を超音波式スプレーノズル(ソニア社製、WS130K50ST)を用いて、研磨した5.5mmφのGC電極上に塗布した。
[1.1.2. 評価用電極の作製]
I/Cが0.5、1.0、1.5、又は2.0となるように、アイオノマ溶液の濃度(0.1〜0.15mass%)及び滴下量(4〜9μL)を調整した以外は、実施例1と同様にして、Cuの電析、アイオノマコート、及びCuの除去を行い、アイオノマコート触媒(Naf/(Cu除去)/Pt/C)を担持した評価用電極を得た。
[1.2. 比較例5]
Cuの電析及びCuの除去を行わなかった以外は、実施例4と同様にして、Cuを析出させていない電極触媒(Naf/Pt/C)を担持した評価用電極を作製した。
[2. 試験方法]
得られた評価用電極を回転電極ホルダーに挿入し、作用極とした。以下、実施例1と同様にして、白金の電気化学的有効表面積(ECSA)、比活性(SA)、及び酸素還元活性維持率を求めた。
[3. 結果]
[3.1. 酸素還元活性維持率のI/C依存性]
図6に、0.9Vにおける酸素還元活性維持率のI/C依存性を示す。Naf/Pt/Cでは、I/Cによらず、酸素還元活性維持率は0.75でほぼ一定であった。これは、どのI/CでもアイオノマによってPtが被毒されているためと考えられる。
他方、Naf/(Cu除去)/Pt/Cでは、I/Cが0.5の時に酸素還元活性維持率は約100%となり、I/Cの増加とともに酸素還元活性維持率は低下した。また、I/Cが1.5〜2.0の時には、Naf/(Cu除去)/Pt/Cの酸素還元活性維持率は、Naf/Pt/Cと同程度の値となった。図6より、アイオノマによる触媒被毒を低減するためには、I/Cは1.0以下が好ましいことが分かる。
[3.2. 酸素還元活性維持率のアイオノマ被覆厚依存性]
保護材を除去した後のアイオノマの吸着の程度は、コートしたアイオノマの質量だけでなく、アイオノマ被覆厚にも影響を受けると考えられる。このアイオノマ被覆厚は、電極触媒(活性種と担体を含む)の比表面積による影響を強く受ける。すなわち、同じアイオノマ量であっても、高比表面積の電極触媒を用いた場合のアイオノマ被覆厚は、低比表面積の電極触媒を用いた場合のそれよりも薄くなる。
図7に、0.9Vにおける酸素還元活性維持率のアイオノマ被覆厚依存性を示す。図7より、アイオノマ被覆厚が2.5nm以下になると、酸素還元活性維持率が85%以上になることが分かる。これは、アイオノマ被覆厚が薄くなるほど、保護材を除去した後にアイオノマが移動しにくくなり、アイオノマが白金などの活性種に吸着する確率が下がるためと考えられる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係るアイオノマコート触媒は、固体高分子形燃料電池の空気極の電極触媒として用いることができる。

Claims (14)

  1. 担体表面に触媒粒子が担持された電極触媒を準備する第1工程と、
    前記触媒粒子の表面を保護材でコートし、保護材被覆電極触媒を得る第2工程と、
    前記保護材被覆電極触媒の表面をアイオノマでさらにコートし、前駆体を得る第3工程と、
    前記前駆体から前記保護材を抽出する第4工程と
    を備えたアイオノマコート触媒の製造方法。
  2. 前記担体は、中実担体である請求項1に記載のアイオノマコート触媒の製造方法。
  3. 前記保護材は、
    (a)前記触媒粒子に含まれる主要な金属元素の内、最も貴な金属元素よりも卑な金属、
    (b)炭素数が5以上である炭化水素鎖に、ホスホン酸基(−PO3 2-)、スルホン酸基(−SO3 -)、スルファミル基(−SH)、カルボン酸基(−COO-)、アンモニウム基(−NR3 +)、ピリジニウム基(−N+55)、及び、イミダゾリウム基(−N22 +32)(但し、Rは、アルキル基又はH)からなる群から選ばれるいずれか1以上の官能基が結合している有機化合物、
    (c)前記アイオノマが溶解しない溶媒に可溶なポリマ、又は、
    (d)前記触媒粒子及び前記アイオノマが溶解しない酸又はアルカリで溶解可能な無機化合物
    からなる請求項1又は2に記載のアイオノマコート触媒の製造方法。
  4. 前記触媒粒子は、白金又は白金合金からなり、
    前記保護材は、Cu、Ag、Sb、Bi、Pd、Zn、Cr、Fe、Cd、Co、Ni、Sn、及び、Pbからなる群から選ばれるいずれか1以上を含む金属又は合金からなる請求項1から3までのいずれか1項に記載のアイオノマコート触媒の製造方法。
  5. 前記第2工程は、前記保護材の厚さが1nm以上20nm以下となるように、前記触媒粒子の表面に前記保護材をコートするものからなる請求項1から4までのいずれか1項に記載のアイオノマコート触媒の製造方法。
  6. 前記アイオノマは、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマ、及び/又は、高酸素透過アイオノマからなる請求項1から5までのいずれか1項に記載のアイオノマコート触媒の製造方法。
  7. 前記第3工程は、アイオノマ/担体比(質量比)が0.1以上1.5以下となるように、前記電極触媒の表面を前記アイオノマでさらにコートするものからなる請求項1から6までのいずれか1項に記載のアイオノマコート触媒の製造方法。
  8. 前記第3工程は、アイオノマ被覆厚が0.2nm以上2.5nm以下となるように、前記保護材被覆電極触媒の表面を前記アイオノマでさらにコートするものからなる請求項1から7までのいずれか1項に記載のアイオノマコート触媒の製造方法。
  9. 請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法により得られるアイオノマコート触媒。
  10. 担体表面に触媒粒子が担持された電極触媒と、
    前記電極触媒の表面を被覆するアイオノマと
    を備え、
    前記触媒粒子と前記アイオノマとの間には空間があるアイオノマコート触媒。
  11. 前記担体は、中実担体からなり、
    次の式(1)及び式(2)の関係を満たす請求項10に記載のアイオノマコート触媒。
    0.1≦x≦1.5 …(1)
    7.5758x2−28.03x+100≦y≦100 …(2)
    但し、
    xは、前記アイオノマコート触媒のアイオノマ/担体比(質量比)、
    yは、前記アイオノマコート触媒の酸素還元活性維持率(%)。
  12. アイオノマ被覆厚が0.2nm以上2.5nm以下である請求項10又は11に記載のアイオノマコート触媒。
  13. 担体表面に触媒粒子が担持された電極触媒を準備する第1工程と、
    前記触媒粒子の表面を保護材でコートし、保護材被覆電極触媒を得る第2工程と
    を備えた保護材被覆電極触媒の製造方法。
  14. 担体表面に触媒粒子が担持された電極触媒と、
    前記触媒粒子の表面を被覆する保護材と
    を備えた保護材被覆電極触媒。
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