JP2021081614A - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び、電子写真装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラズマCVD法によって堆積膜が形成された感光体の耐圧層の膜厚にバラツキが発生すると、耐圧層の膜厚が薄い部分においては、他の部分に比べて、印加される電界が強くなり、絶縁破壊が発生しやすい。【解決手段】円筒状の導電性基体上に、耐圧層と電荷注入阻止層と光導電層と表面保護層がこの順に積層され、前記耐圧層は、アモルファスシリコンナイトライドを有し、前記電荷注入阻止層と前記光導電層は、アモルファスシリコンを有し、前記表面保護層は、アモルファスカーボンまたはアモルファスシリコンカーバイドを有する電子写真感光体において、前記電子写真感光体の軸方向に前記耐圧層の膜厚が薄い領域と厚い領域とを有し、前記薄い領域のケイ素原子の原子数と窒素原子の原子数の和に対する窒素原子の原子数の比率が、前記厚い領域より多く、前記耐圧層の全域にわたって前記比率が0.15以上0.25以下である。【選択図】図1
Description
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び、電子写真装置に関する。
電子写真方法及びこれを利用した電子写真装置は、複写機、ファクシミリ装置、プリンタとして広く一般的に利用されている。そのような電子写真装置では、光導電層が設けられた電子写真感光体(以下、「感光体」とも記載する。)の表面を一様に帯電させ、画像情報に応じたレーザやLEDによって露光させることにより感光体の表面上に静電潜像を形成する。そして、形成された静電潜像にトナーを付着させることによって感光体の表面にトナー像を形成し、これを紙などの転写材へ転写させて画像形成が行なわれる。
このような電子写真装置に好適に用いることが可能な感光体として、ケイ素原子を主成分とする非単結晶材料で形成される光導電層を有する感光体(以下、a−Si感光体と略記する。)が挙げられる。a−Si感光体は、そのビッカース硬度が1000kgf/mm2以上と非常に硬く、耐久性、耐熱性、環境安定性に優れている。そのため、特に高信頼性が要求される高速機において好ましい。
このような電子写真装置に好適に用いることが可能な感光体として、ケイ素原子を主成分とする非単結晶材料で形成される光導電層を有する感光体(以下、a−Si感光体と略記する。)が挙げられる。a−Si感光体は、そのビッカース硬度が1000kgf/mm2以上と非常に硬く、耐久性、耐熱性、環境安定性に優れている。そのため、特に高信頼性が要求される高速機において好ましい。
近年、電子写真プロセスの高解像度化のために電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも記載する。)の膜厚を薄くする傾向がある。
これは、膜厚を薄くすることによって、感光体の静電容量を増加させて、感光体の表面に形成される静電潜像の潜像電界を強くして、感光体の解像度を向上させるために行われている。
しかしながら、電子写真プロセスでは現像プロセス等において感光体の帯電極性とは逆極性の電界が、感光体に印加される。そのため、感光体の膜厚を薄くした場合に感光体の絶縁破壊が生じる場合がある。
これは、膜厚を薄くすることによって、感光体の静電容量を増加させて、感光体の表面に形成される静電潜像の潜像電界を強くして、感光体の解像度を向上させるために行われている。
しかしながら、電子写真プロセスでは現像プロセス等において感光体の帯電極性とは逆極性の電界が、感光体に印加される。そのため、感光体の膜厚を薄くした場合に感光体の絶縁破壊が生じる場合がある。
そのような絶縁破壊の発生を抑制する手段として、導電性基体上に高抵抗層を設け、高抵抗層と、電荷注入阻止層と、光導電層と、表面保護層とを有するa−Si感光体を搭載した電子写真装置が知られている。(特許文献1)
特許文献1によれば、高抵抗層の膜厚を1〜4μmの範囲とし、感光層(高抵抗層、電荷注入阻止層、光導電層、表面保護層の合計)の膜厚を15〜25μmとし、かつ、感光層のソリッド明電位の絶対値を20〜100Vの範囲にする技術が開示されている。
上記技術によって、電子写真装置は、感光層の膜厚を薄膜化した場合であっても、高抵抗層が耐圧層としての機能するため、感光体の絶縁破壊の発生を抑制し、解像度に優れた画像を安定的に形成することができる、としている。
特許文献1によれば、高抵抗層の膜厚を1〜4μmの範囲とし、感光層(高抵抗層、電荷注入阻止層、光導電層、表面保護層の合計)の膜厚を15〜25μmとし、かつ、感光層のソリッド明電位の絶対値を20〜100Vの範囲にする技術が開示されている。
上記技術によって、電子写真装置は、感光層の膜厚を薄膜化した場合であっても、高抵抗層が耐圧層としての機能するため、感光体の絶縁破壊の発生を抑制し、解像度に優れた画像を安定的に形成することができる、としている。
a−Si感光体は、導電性基体上に所望の層構成となる堆積膜を形成することで作製される。堆積膜の形成方法としては、RF帯やVHF帯の高周波電力を印加したグロー放電により原料ガスを分解し、導電性基体上に堆積膜を形成するプラズマCVD法が広く知られている。
しかしながら、そのような堆積膜の形成方法では、感光体の特に軸方向に対して均一な膜厚で堆積膜を形成することは難しく、ある程度の膜厚バラツキが発生してしまう場合があった。特に、耐圧層(高抵抗層)の膜厚にバラツキが発生すると、耐圧層の膜厚が薄い部分においては、他の部分に比べて、印加される電界が強くなり、絶縁破壊が発生しやすい構造であることがわかり、改善の余地を有していた。
しかしながら、そのような堆積膜の形成方法では、感光体の特に軸方向に対して均一な膜厚で堆積膜を形成することは難しく、ある程度の膜厚バラツキが発生してしまう場合があった。特に、耐圧層(高抵抗層)の膜厚にバラツキが発生すると、耐圧層の膜厚が薄い部分においては、他の部分に比べて、印加される電界が強くなり、絶縁破壊が発生しやすい構造であることがわかり、改善の余地を有していた。
上述の課題を解決するため、本発明に係る電子写真感光体は、円筒状の導電性基体上に、耐圧層と電荷注入阻止層と光導電層と表面保護層とがこの順に積層され、前記耐圧層は、アモルファスシリコンナイトライドを有し、前記電荷注入阻止層と前記光導電層は、アモルファスシリコンを有し、前記表面保護層は、アモルファスカーボンまたはアモルファスシリコンカーバイドを有し、前記電荷注入阻止層は、周期表第13族に属する原子を含有する電子写真感光体において、
前記電子写真感光体の軸方向に前記耐圧層の膜厚が薄い領域と厚い領域とを有し、
前記薄い領域のケイ素原子の原子数(Si)と窒素原子の原子数(N)との和に対する窒素原子の原子数の比率(N/(Si+N))が、前記厚い領域の比率より多く、
前記耐圧層の全域にわたって前記比率(N/(Si+N))が0.15以上0.25以下であることを特徴とする。
以降、アモルファスシリコンナイトライドを「a−SiN」、アモルファスカーボンを「a−C」、アモルファスシリコンカーバイドを「a−SiC」とも表記する。
前記電子写真感光体の軸方向に前記耐圧層の膜厚が薄い領域と厚い領域とを有し、
前記薄い領域のケイ素原子の原子数(Si)と窒素原子の原子数(N)との和に対する窒素原子の原子数の比率(N/(Si+N))が、前記厚い領域の比率より多く、
前記耐圧層の全域にわたって前記比率(N/(Si+N))が0.15以上0.25以下であることを特徴とする。
以降、アモルファスシリコンナイトライドを「a−SiN」、アモルファスカーボンを「a−C」、アモルファスシリコンカーバイドを「a−SiC」とも表記する。
また、上述した目的を達成するため、本発明に係る電子写真装置は、前記電子写真感光体、ならびに、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を備えることを特徴とする。
さらに、本発明に係るプロセスカートリッジは、前記の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置の本体に着脱自在であることを特徴とする。
さらに、本発明に係るプロセスカートリッジは、前記の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置の本体に着脱自在であることを特徴とする。
本発明によれば、耐圧層の、膜厚の薄い領域の窒素原子の含有量を、膜厚の厚い領域の窒素原子の含有量より多くしたことによって、膜厚の薄い領域の絶縁耐力を高めることができる。このため、耐圧層の膜厚に分布が発生した場合でも、絶縁破壊が生じにくい感光体を提供することができる。さらに、このような電子写真感光体を有する電子写真装置およびプロセスカートリッジを提供することが可能となる。
以下に、本発明の実施の形態を例示的に詳細に説明する。ただし、この実施の形態に関する記載は、本発明の範囲を以下の実施の形態に限定するものではない。
(感光体)
図2は、本発明を適用したa−Si感光体の層構成の一例を示した模式図である。
図2に示す感光体200は、導電性基体201上に、耐圧層202と、電荷注入阻止層203と、光導電層204と、表面保護層205とを有している。
耐圧層202はa−SiNで構成され、電荷注入阻止層203と光導電層204はa−Siで構成され、表面保護層205は、a−Cまたはa−SiCで構成される。
電荷注入阻止層203には周期表第13族に属する原子を含有する。
ここで、耐圧層の膜厚の分布と窒素原子の含有による作用について説明する。
(感光体)
図2は、本発明を適用したa−Si感光体の層構成の一例を示した模式図である。
図2に示す感光体200は、導電性基体201上に、耐圧層202と、電荷注入阻止層203と、光導電層204と、表面保護層205とを有している。
耐圧層202はa−SiNで構成され、電荷注入阻止層203と光導電層204はa−Siで構成され、表面保護層205は、a−Cまたはa−SiCで構成される。
電荷注入阻止層203には周期表第13族に属する原子を含有する。
ここで、耐圧層の膜厚の分布と窒素原子の含有による作用について説明する。
図1(a1)および(b1)は、本発明に係る感光体の軸方向における、耐圧層の膜厚の分布の一例を模式的に表したグラフである。
図1(a2)は、感光体の軸方向における、耐圧層の膜厚の分布が図1(a1)に示すような分布である場合の、窒素原子の含有量の分布の一例を模式的に表したグラフである。
図1(b2)は、感光体の軸方向における、耐圧層の膜厚の分布が図1(b1)に示すような分布である場合の、窒素原子の含有量の分布の一例を模式的に表したグラフである。
図1(a2)および(b2)中の窒素原子の含有量とは耐圧層中のケイ素原子の原子数(Si)と窒素原子の原子数(N)との和に対する窒素原子の原子数の比率(N/(Si+N))を意味する。
図1(a1)および(b1)に示したように、本発明の感光体は、感光体の軸方向において、耐圧層の膜厚が薄い領域と厚い領域とを有している。そして、耐圧層の膜厚が薄い領域における窒素原子の含有量が、厚い領域における含有量より、多いことを特徴とする。
図1(a2)は、感光体の軸方向における、耐圧層の膜厚の分布が図1(a1)に示すような分布である場合の、窒素原子の含有量の分布の一例を模式的に表したグラフである。
図1(b2)は、感光体の軸方向における、耐圧層の膜厚の分布が図1(b1)に示すような分布である場合の、窒素原子の含有量の分布の一例を模式的に表したグラフである。
図1(a2)および(b2)中の窒素原子の含有量とは耐圧層中のケイ素原子の原子数(Si)と窒素原子の原子数(N)との和に対する窒素原子の原子数の比率(N/(Si+N))を意味する。
図1(a1)および(b1)に示したように、本発明の感光体は、感光体の軸方向において、耐圧層の膜厚が薄い領域と厚い領域とを有している。そして、耐圧層の膜厚が薄い領域における窒素原子の含有量が、厚い領域における含有量より、多いことを特徴とする。
導電性基体上に、耐圧層と電荷注入阻止層と光導電層と表面保護層がこの順に積層された感光体の表面側に負電荷を与えた場合、
与えられた負電荷の多くは表面保護層および光導電層を通過し電荷注入阻止層で保持され、導電性基体側に誘導された正電荷の多くは導電性基体と耐圧層との接合部で保持される。
つまり、電荷注入阻止層と耐圧層との間で電圧が維持される。このため、耐圧層の膜厚が薄い領域では、印加される電界が強くなり、絶縁破壊が発生し易い領域であることがわかってきた。
与えられた負電荷の多くは表面保護層および光導電層を通過し電荷注入阻止層で保持され、導電性基体側に誘導された正電荷の多くは導電性基体と耐圧層との接合部で保持される。
つまり、電荷注入阻止層と耐圧層との間で電圧が維持される。このため、耐圧層の膜厚が薄い領域では、印加される電界が強くなり、絶縁破壊が発生し易い領域であることがわかってきた。
これに対し、本発明に係る感光体では、耐圧層の膜厚の薄い領域における窒素原子の含有量(含有率)を、厚い領域の含有量より多くし、これによって耐圧層の膜厚の薄い領域における膜の抵抗率を高くし、負帯電に対する膜自身の耐電圧特性を高めている。この結果、耐圧層の膜厚が軸方向に分布を有していても、負帯電に対する耐電圧特性は均一化されるため、絶縁破壊の発生を低減できる。
耐圧層の膜厚の分布は、プラズマCVD装置の設備的な特性や処方等によるものであり、プラズマCVD装置の構成や、成膜処方が一定であれば、概ね同じ分布となる。また、窒素原子の含有率は、窒素原子供給用の原料ガスを成膜炉内に導入するときの供給量で概ねコントロールすることができる。このため、膜厚の分布に合わせて、窒素原子供給用の原料ガスも分布させて導入することで、膜厚の薄くなる領域の窒素含有量を増やすことができることがわかり、本発明の完成に至った。
次に、前述した層構成の感光体を構成する導電性基体および各層について説明する。
(導電性基体)
導電性基体の材料は、導電性基体表面に直接形成される耐圧層とショットキー接合を形成する材質であることが好ましい。耐圧層の材料にa−SiNを適用する本発明においては、アルミニウムを主成分とした合金が適した材料として挙げられる。
(導電性基体)
導電性基体の材料は、導電性基体表面に直接形成される耐圧層とショットキー接合を形成する材質であることが好ましい。耐圧層の材料にa−SiNを適用する本発明においては、アルミニウムを主成分とした合金が適した材料として挙げられる。
(耐圧層)
本発明においては、耐圧層の材料としてアモルファスシリコンナイトライドを用いる。前述したように、電子写真プロセスでは現像工程や転写工程等において感光体の帯電極性とは逆極性の電圧が印加される場合がある。耐圧層は、感光体の帯電極性とは逆極性の電圧が印加された際に感光体が絶縁破壊するのを抑制する層である。
本発明の感光体に適用する耐圧層を構成するa−SiNに関し、ケイ素原子の原子数(Si)と窒素原子の原子数(N)との和に対する窒素原子の原子数(N)の比率(N/(Si+N))は前記耐圧層の全域にわたって0.15以上0.25以下の範囲となる。
本発明では耐圧層に用いるa−SiNをa−SiのNドープとして十分に機能させ、かつ耐圧層の抵抗を制御するうえで(N/(Si+N))は0.15以上0.25以下とした。
本発明においては、耐圧層の材料としてアモルファスシリコンナイトライドを用いる。前述したように、電子写真プロセスでは現像工程や転写工程等において感光体の帯電極性とは逆極性の電圧が印加される場合がある。耐圧層は、感光体の帯電極性とは逆極性の電圧が印加された際に感光体が絶縁破壊するのを抑制する層である。
本発明の感光体に適用する耐圧層を構成するa−SiNに関し、ケイ素原子の原子数(Si)と窒素原子の原子数(N)との和に対する窒素原子の原子数(N)の比率(N/(Si+N))は前記耐圧層の全域にわたって0.15以上0.25以下の範囲となる。
本発明では耐圧層に用いるa−SiNをa−SiのNドープとして十分に機能させ、かつ耐圧層の抵抗を制御するうえで(N/(Si+N))は0.15以上0.25以下とした。
(電荷注入阻止層)
電荷注入阻止層は、感光体の表面が正帯電された際に、導電性基体側から光導電層への電子が光導電層へ注入するのを阻止する機能を有している。電荷注入阻止層の材料は、光導電層を構成する材料をベースとした上で、伝導性を制御するための原子を光導電層に比べて比較的多く含有させる。本発明の感光体では電子の伝導性を制御するために電荷注入阻止層に含有させる原子は、周期表第13族に属する原子が用いられる。周期表第13族に属する原子の中でも、ホウ素原子(B)、アルミニウム原子(Al)、ガリウム原子(Ga)が好ましい。電荷注入阻止層に含有される周期表第13族に属する原子の含有量は、電荷注入阻止層に含有されるケイ素原子(Si)の含有量に対して1×102ppm以上3×103ppm以下であることが好ましい。
電荷注入阻止層は、感光体の表面が正帯電された際に、導電性基体側から光導電層への電子が光導電層へ注入するのを阻止する機能を有している。電荷注入阻止層の材料は、光導電層を構成する材料をベースとした上で、伝導性を制御するための原子を光導電層に比べて比較的多く含有させる。本発明の感光体では電子の伝導性を制御するために電荷注入阻止層に含有させる原子は、周期表第13族に属する原子が用いられる。周期表第13族に属する原子の中でも、ホウ素原子(B)、アルミニウム原子(Al)、ガリウム原子(Ga)が好ましい。電荷注入阻止層に含有される周期表第13族に属する原子の含有量は、電荷注入阻止層に含有されるケイ素原子(Si)の含有量に対して1×102ppm以上3×103ppm以下であることが好ましい。
周期表第13族に属する原子は電荷注入阻止層中にまんべんなく均一に分布した状態で含有されていてもよいし、膜厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。いずれの場合においても、伝導性を制御するための原子が基体の表面に対して平行面内方向に均一な分布で電荷注入阻止層に含有されることが、特性の均一化を図る上からも好ましい。
さらに、電荷注入阻止層には、炭素原子、窒素原子および酸素原子のうち少なくとも1種の原子を含有させることにより、電荷注入阻止層と耐圧層との間の密着性を向上させることができる。
さらに、電荷注入阻止層には、炭素原子、窒素原子および酸素原子のうち少なくとも1種の原子を含有させることにより、電荷注入阻止層と耐圧層との間の密着性を向上させることができる。
(光導電層)
本発明の感光体は光導電層の材料としてa−Si(アモルファスシリコン)を用いる。a−Si中の未結合手を補償するため、水素原子および/またはハロゲン原子を含有させる。
ケイ素原子の原子数(Si)と水素原子の原子数(H)とハロゲン原子の原子数(X)との和(Si+H+X)に対する水素原子およびハロゲン原子の含有量の合計(H+X)の比率((H+X)/(Si+H+X))は、
0.10以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。一方、0.30以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましい。
本発明の感光体は光導電層の材料としてa−Si(アモルファスシリコン)を用いる。a−Si中の未結合手を補償するため、水素原子および/またはハロゲン原子を含有させる。
ケイ素原子の原子数(Si)と水素原子の原子数(H)とハロゲン原子の原子数(X)との和(Si+H+X)に対する水素原子およびハロゲン原子の含有量の合計(H+X)の比率((H+X)/(Si+H+X))は、
0.10以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。一方、0.30以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましい。
本発明において、光導電層には必要に応じて伝導性を制御するための原子を含有させることが好ましい。伝導性を制御するための原子は、光導電層中にまんべんなく均一に分布した状態で含有されていてもよいし、また、膜厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。
伝導性を制御するための原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができる。すなわち、p型伝導性を与える周期表第13族に属する原子またはn型伝導性を与える周期表第15族に属する原子を用いることができる。周期表第13族に属する原子としては、ホウ素原子(B)、アルミニウム原子(Al)、ガリウム原子(Ga)が好ましい。周期表第15族に属する原子としては、リン原子(P)、ヒ素原子(As)が好ましい。
伝導性を制御するための原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができる。すなわち、p型伝導性を与える周期表第13族に属する原子またはn型伝導性を与える周期表第15族に属する原子を用いることができる。周期表第13族に属する原子としては、ホウ素原子(B)、アルミニウム原子(Al)、ガリウム原子(Ga)が好ましい。周期表第15族に属する原子としては、リン原子(P)、ヒ素原子(As)が好ましい。
光導電層に含有される伝導性を制御するための原子の含有量は、ケイ素原子(Si)に対して1×10−2原子ppm以上であることが好ましい。一方、1×10原子ppm以下であることが好ましい。
なお、光導電層は、単一の層で構成されてもよいし、複数の層(例えば、電荷発生層と電荷輸送層)で構成されてもよい。
なお、光導電層は、単一の層で構成されてもよいし、複数の層(例えば、電荷発生層と電荷輸送層)で構成されてもよい。
(表面保護層)
表面保護層は、耐久性に優れるという観点からa−C(アモルファスカーボン)またはa−SiC(アモルファスシリコンカーバイド)で形成されている。
前述の層構成の正帯電用の感光体では、表面保護層は帯電電荷である正孔が光導電層に注入することを防止する電荷注入阻止機能も有している。
表面保護層をa−SiCで形成する場合、ケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比率(C/(Si+C))は0.50以上が好ましい範囲である。a−SiCは、C/(Si+C)が約0.60の時に光学的バンドギャップが大きくなることが知られており、露光光を効率的に光導電層に透過させるためには効果的である。一方、C/(Si+C)を高くすると表面保護層は酸化されにくい傾向がある。
表面保護層は、耐久性に優れるという観点からa−C(アモルファスカーボン)またはa−SiC(アモルファスシリコンカーバイド)で形成されている。
前述の層構成の正帯電用の感光体では、表面保護層は帯電電荷である正孔が光導電層に注入することを防止する電荷注入阻止機能も有している。
表面保護層をa−SiCで形成する場合、ケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比率(C/(Si+C))は0.50以上が好ましい範囲である。a−SiCは、C/(Si+C)が約0.60の時に光学的バンドギャップが大きくなることが知られており、露光光を効率的に光導電層に透過させるためには効果的である。一方、C/(Si+C)を高くすると表面保護層は酸化されにくい傾向がある。
また、表面保護層をa−Cまたはa−SiCのいずれで形成する場合も、光導電層に用いるa−Siと同様に、未結合手を補償するため、水素原子および/またはハロゲン原子を含有させる。
ケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)と水素原子の原子数(H)とハロゲン原子の原子数(X)との和(Si+C+H+X)に対する水素原子およびハロゲン原子の原子数の和の比率((H+X)/(Si+C+H+X))は、
0.20以上0.50以下であることが好ましく、0.30以上0.40以下がより好ましい。
ケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)と水素原子の原子数(H)とハロゲン原子の原子数(X)との和(Si+C+H+X)に対する水素原子およびハロゲン原子の原子数の和の比率((H+X)/(Si+C+H+X))は、
0.20以上0.50以下であることが好ましく、0.30以上0.40以下がより好ましい。
〈本発明の感光体を適用した電子写真装置〉
図3を用いてa−Si感光体を用いた電子写真装置による画像形成方法を説明する。
まず、感光体301を回転させ、感光体301の表面を帯電器302により均一に帯電させる。その後、画像露光手段303により感光体301の表面に画像露光光を照射し、感光体301の表面に静電潜像を形成した後、現像器304より供給されるトナーを用いて現像を行う。この結果、感光体301の表面にトナー像が形成される。そして、このトナー像を中間転写体305に転写し、中間転写体305から転写材(不図示)に2次転写して、定着手段(不図示)によりトナー像を転写材に定着させる。
一方、トナー像が転写された後に感光体301の表面に残留するトナーをクリーナー(クリーニング手段)306により除去し、その後、感光体301の表面を前露光器307により露光することにより感光体301を除電する。この一連のプロセスを繰り返すことで連続して画像形成が行われる。
図3を用いてa−Si感光体を用いた電子写真装置による画像形成方法を説明する。
まず、感光体301を回転させ、感光体301の表面を帯電器302により均一に帯電させる。その後、画像露光手段303により感光体301の表面に画像露光光を照射し、感光体301の表面に静電潜像を形成した後、現像器304より供給されるトナーを用いて現像を行う。この結果、感光体301の表面にトナー像が形成される。そして、このトナー像を中間転写体305に転写し、中間転写体305から転写材(不図示)に2次転写して、定着手段(不図示)によりトナー像を転写材に定着させる。
一方、トナー像が転写された後に感光体301の表面に残留するトナーをクリーナー(クリーニング手段)306により除去し、その後、感光体301の表面を前露光器307により露光することにより感光体301を除電する。この一連のプロセスを繰り返すことで連続して画像形成が行われる。
(プロセスカートリッジ)
本発明の感光体301を用いたプロセスカートリッジについて説明する。
感光体301と、帯電器302、画像露光手段303、現像器304、クリーナー(クリーニング手段)306および前露光器307からなる群より選択される少なくとも1つの装置とを一体に支持してプロセスカートリッジ(不図示)とすることができる。プロセスカートリッジは、電子写真装置本体のレールなどの案内手段(不図示)を用いることによって電子写真装置本体に着脱自在とすることができる。
本発明の感光体301を用いたプロセスカートリッジについて説明する。
感光体301と、帯電器302、画像露光手段303、現像器304、クリーナー(クリーニング手段)306および前露光器307からなる群より選択される少なくとも1つの装置とを一体に支持してプロセスカートリッジ(不図示)とすることができる。プロセスカートリッジは、電子写真装置本体のレールなどの案内手段(不図示)を用いることによって電子写真装置本体に着脱自在とすることができる。
〈本発明の感光体を製造するための製造装置および製造方法〉
本発明の感光体の製造方法は、前述した規定を満足する層を形成できるものであればいずれの方法であってもよい。具体的には、プラズマCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。これらの中でも、原料供給の容易さなどの点で、プラズマCVD法が好ましい。
以下に、プラズマCVD法を用いた製造装置および製造方法について説明する。
本発明の感光体の製造方法は、前述した規定を満足する層を形成できるものであればいずれの方法であってもよい。具体的には、プラズマCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。これらの中でも、原料供給の容易さなどの点で、プラズマCVD法が好ましい。
以下に、プラズマCVD法を用いた製造装置および製造方法について説明する。
図4は、本発明のa−Si感光体を作製するための高周波電源を用いたRFプラズマCVD法による電子写真感光体の堆積装置の一例を模式的に示した図である。
この堆積装置は、大別すると、反応容器4110を有する堆積装置4100、原料ガス供給装置4200、および、反応容器4110内を減圧するための排気装置(図示せず)から構成されている。
この堆積装置は、大別すると、反応容器4110を有する堆積装置4100、原料ガス供給装置4200、および、反応容器4110内を減圧するための排気装置(図示せず)から構成されている。
堆積装置4100中の反応容器4110内にはアースに接続された基体4112、基体加熱用ヒーター4113、および、原料ガス導入管4114が設置されている。さらにカソード電極4111には高周波マッチングボックス4115を介して高周波電源4120が接続されている。
原料ガス供給装置4200は、原料ガスボンベ4221〜4227、バルブ4231〜4237、圧力調整器4261〜4267、流入バルブ4241〜4247、流出バルブ4251〜4257で構成されている。さらに、マスフローコントローラ4211〜4217を具備する。各原料ガスを封入したガスのボンベは補助バルブ4260を介して反応容器4110内の原料ガス導入管4114に接続されている。4116はガス配管であり、4117はリークバルブであり、4121は絶縁材料である。
次に、この装置を使った堆積膜の形成方法について説明する。まず、あらかじめ脱脂洗浄した基体4112を反応容器4110に受け台4123を介して設置する。次に、排気装置(図示せず)を運転し、反応容器4110内を排気する。真空計4119の表示を見ながら、反応容器4110内の圧力が、例えば、1Pa以下の所定の圧力になったところで、基体加熱用ヒーター4113に電力の供給を開始し、基体4112を、例えば、50〜350℃の所定の温度に加熱する。このとき、ガス供給装置4200より、Ar、Heなどの不活性ガスを反応容器4110に供給して、不活性ガス雰囲気中で加熱を行うこともできる。
次に、ガス供給装置4200より堆積膜形成に用いるガスを反応容器4110に供給する。すなわち、必要に応じてバルブ4231〜4237、流入バルブ4241〜4247、流出バルブ4251〜4257を開き、マスフローコントローラ4211〜4217に流量設定を行う。各マスフローコントローラの流量が安定したところで、真空計4119の表示を見ながらメインバルブ4118を操作し、反応容器4110内の圧力が所望の圧力になるように調整する。所望の圧力が得られたところで高周波電源4120より高周波電力を印加すると同時に高周波マッチングボックス4115を操作し、反応容器4110内にプラズマ放電を生起する。その後、速やかに高周波電力を所望の電力に調整し、堆積膜の形成を行う。
所定の堆積膜の形成が終わったところで、高周波電力の印加を停止し、バルブ4231〜4237、流入バルブ4241〜4247、流出バルブ4251〜4257、および、補助バルブ4260を閉じ、原料ガスの供給を終える。同時に、メインバルブ4118を全開にし、反応容器4110内を1Pa以下の圧力まで排気する。
以上で、堆積膜の形成を終えるが、複数の堆積膜を形成する場合、再び上記の手順を繰り返してそれぞれの層を形成すればよい。原料ガス流量や、圧力などを光導電層形成用の条件に一定の時間で変化させて、接合領域の形成を行うこともできる。
すべての堆積膜形成が終わった後、メインバルブ4118を閉じ、反応容器4110内に不活性ガスを導入し大気圧に戻した後、基体4112を取り出す。
すべての堆積膜形成が終わった後、メインバルブ4118を閉じ、反応容器4110内に不活性ガスを導入し大気圧に戻した後、基体4112を取り出す。
耐圧層の形成は、ケイ素原子供給用の原料ガスとしては、例えば、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)などのシラン類が好適に使用できる。また、窒素原子供給用の原料ガスとしては、例えば、アンモニア(NH3)、窒素(N2)などが好適に使用できる。また、水素原子供給用の原料ガスとしては、上記原料ガスに加えて、例えば、水素(H2)が好適に使用できる。また、導電性基体との密着性を向上させるために、炭素原子などを電荷注入阻止層に含有させる場合には、含有させる原子を含むガス状または容易にガス化しうる物質を材料として適宜使用すればよい。
また、耐圧層の膜厚分布に合わせて、窒素原子の含有量を分布させるには、次に示す構成とすることで達成できる。すなわち、窒素原子供給用の原料ガスを、他の原料ガスとは別系統の原料ガス導入管(不図示)から導入できる構成としておき、窒素原子供給用の原料ガスのガス流量が所望の分布になるように原料ガス導入管のガス噴出穴の分布を調整すれば達成できる。
このような構成とすることで、窒素原子の含有量の軸方向における分布をある程度はコントロールすることができる。
このような構成とすることで、窒素原子の含有量の軸方向における分布をある程度はコントロールすることができる。
電荷注入阻止層の形成は、ケイ素原子供給用の原料ガスとしては、同様に、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)などのシラン類が好適に使用できる。また、第13族原子供給用の原料ガスとしては、例えば、ジボラン(B2H6)などが好適に使用できる。また、水素原子供給用の原料ガスとしては、上記原料ガスに加えて、例えば、水素(H2)も好適に使用できる。また、耐圧層との密着性を向上させるために、炭素原子、酸素原子、窒素原子などを電荷注入阻止層に含有させる場合には、それぞれの原子を含むガス状または容易にガス化しうる物質を材料として適宜使用すればよい。
光導電層の形成は、ケイ素原子供給用の原料ガスとしては、同様に、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)などのシラン類が好適に使用できる。また、水素原子供給用の原料ガスとしては、上記シラン類に加えて、例えば、水素(H2)も好適に使用できる。また、上述のハロゲン原子、伝導性を制御するための原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子など光導電層を含有させる場合には、それぞれの原子を含むガス状または容易にガス化しうる物質を材料として適宜使用すればよい。
表面保護層としてa−SiCを形成する場合には、ケイ素原子供給用の原料ガスとしては、同様に、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)などのシラン類が好適に使用できる。また、炭素原子供給用の原料ガスとしては、例えば、メタン(CH4)、アセチレン(C2H2)などのガスが好適に使用できる。それらの原料ガスの混合比を調整することによって、a−SiCのC/(Si+C)を調整できる。一方、表面保護層としてa−Cを形成する場合には、炭素原子供給用の原料ガスとしては、同様に、メタン(CH4)、アセチレン(C2H2)などのガスが好適に使用できる。また、どちらの材料であって、水素原子供給用の原料ガスとしては、例えば、水素(H2)も好適に使用できる。
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
〔実施例1〕
図4に示したプラズマCVD装置を用いて、アルミニウム製の円筒状の導電性基体(直径84mm、内径78mm、長さ381mm、肉厚3mm(=(外径−内径)/2))上に、表1に示す成膜条件で、図2の層構成となるように感光体を作製した。
〔実施例1〕
図4に示したプラズマCVD装置を用いて、アルミニウム製の円筒状の導電性基体(直径84mm、内径78mm、長さ381mm、肉厚3mm(=(外径−内径)/2))上に、表1に示す成膜条件で、図2の層構成となるように感光体を作製した。
本実施例においては、耐圧層202を形成する際に、基体加熱用ヒーター4113の温度分布を調整して、耐圧層の膜厚が図1(a1)に示したように、プラズマCVD装置内の下側の膜厚が厚くなるように耐圧層を形成した。
さらに、窒素原子供給用の原料ガスであるアンモニア(NH3)は、他の原料ガスとは別系統の原料ガス導入管から導入できる構成とした。そして、プラズマCVD装置内の上側のガス流量が多くなるように、アンモニア(NH3)の原料ガス導入管のガス噴出穴を調整したものを使用した。
さらに、窒素原子供給用の原料ガスであるアンモニア(NH3)は、他の原料ガスとは別系統の原料ガス導入管から導入できる構成とした。そして、プラズマCVD装置内の上側のガス流量が多くなるように、アンモニア(NH3)の原料ガス導入管のガス噴出穴を調整したものを使用した。
作製したa−Si感光体について、「耐圧層の膜厚」、「窒素原子の含有量」、「耐電圧特性」について以下に示す方法で評価を行った。評価結果を表2に示す。
「耐圧層の膜厚」
耐圧層の層厚の測定は、膜厚計(フィッシャーインストルメンツ社製、FISCHER SCOPE MMS)を用いて測定した。耐圧層の膜厚測定のために、円筒状基体上に同じ成膜条件にて耐圧層のみ形成したサンプルを作製した。
測定位置は感光体の軸方向については、中央を0mmとして、±50mm、±100mm、±150mmの7点と、周方向については、上述した各軸方向位置において周方向に90度間隔の4点とした。
測定箇所は合計28点である。各軸方向位置の感光体膜の膜厚は、周方向4点の算術平均値とした。
なお、軸方向のプラスマイナスの向きは、a−Si感光体の作製時のプラズマCVD装置内における上側がマイナス側、下側がプラス側とした。
耐圧層の層厚の測定は、膜厚計(フィッシャーインストルメンツ社製、FISCHER SCOPE MMS)を用いて測定した。耐圧層の膜厚測定のために、円筒状基体上に同じ成膜条件にて耐圧層のみ形成したサンプルを作製した。
測定位置は感光体の軸方向については、中央を0mmとして、±50mm、±100mm、±150mmの7点と、周方向については、上述した各軸方向位置において周方向に90度間隔の4点とした。
測定箇所は合計28点である。各軸方向位置の感光体膜の膜厚は、周方向4点の算術平均値とした。
なお、軸方向のプラスマイナスの向きは、a−Si感光体の作製時のプラズマCVD装置内における上側がマイナス側、下側がプラス側とした。
「窒素原子の含有量」
感光体の中央を0mmとして、±50mm、±100mm、±150mmの7箇所において、約12mm×12mmの大きさに切り出した分析用サンプルを作製した。分析用サンプルの表面保護層、光導電層および電荷注入阻止層をSIMSによりスパッタエッチングした。その後、耐圧層のXPS分析を行った。分析用サンプルをXPS分析装置(PHI社製、Quantum 2000 Scaning ESCA)に設置し、ケイ素原子と窒素原子と酸素原子の各原子数を測定し、窒素原子の含有量[%]を得た。
感光体の中央を0mmとして、±50mm、±100mm、±150mmの7箇所において、約12mm×12mmの大きさに切り出した分析用サンプルを作製した。分析用サンプルの表面保護層、光導電層および電荷注入阻止層をSIMSによりスパッタエッチングした。その後、耐圧層のXPS分析を行った。分析用サンプルをXPS分析装置(PHI社製、Quantum 2000 Scaning ESCA)に設置し、ケイ素原子と窒素原子と酸素原子の各原子数を測定し、窒素原子の含有量[%]を得た。
「耐電圧特性」
感光体の耐電圧は接触式針耐圧法にて測定した。
先端径0.5mmの針電極の先端を感光体の表面保護層に接触させ、電圧を10Vずつ増加して電流が流れだす直前の電圧を耐電圧とした。なお、正の電圧を印加して測定される正耐電圧と、負の電圧を印加して測定される負耐電圧とを測定した。
測定位置は感光体の軸方向については、耐圧層の膜厚の測定位置と同様に、中央を0mmとして、±50mm、±100mm、±150mmの7箇所とした。
感光体の耐電圧は接触式針耐圧法にて測定した。
先端径0.5mmの針電極の先端を感光体の表面保護層に接触させ、電圧を10Vずつ増加して電流が流れだす直前の電圧を耐電圧とした。なお、正の電圧を印加して測定される正耐電圧と、負の電圧を印加して測定される負耐電圧とを測定した。
測定位置は感光体の軸方向については、耐圧層の膜厚の測定位置と同様に、中央を0mmとして、±50mm、±100mm、±150mmの7箇所とした。
評価基準に関しては、直流電圧Vdcと交流電圧Vppとを重畳した電圧が感光体に印加されることを想定し、より具体的には、印加電圧の直流成分Vdcが400V、交流成分のVppが1600Vの電圧が印加されることを想定した。
評価基準は、想定される印加電圧の最大値と最小値の2倍となる、2400Vと−800Vを基準として、以下の評価基準で判定した。
A・・・正耐電圧が2400V以上、かつ、負耐電圧が−800V以下
B・・・正耐電圧が2300V以上、かつ、負耐電圧が−700V以下
C・・・正耐電圧が2300V未満、かつ、負耐電圧が−700V未満
評価基準は、想定される印加電圧の最大値と最小値の2倍となる、2400Vと−800Vを基準として、以下の評価基準で判定した。
A・・・正耐電圧が2400V以上、かつ、負耐電圧が−800V以下
B・・・正耐電圧が2300V以上、かつ、負耐電圧が−700V以下
C・・・正耐電圧が2300V未満、かつ、負耐電圧が−700V未満
また、測定した7箇所の耐電圧特性値のうち、最大値と最小値の差分によって、耐電圧特性の均一性(バラツキ)について、以下の評価基準で判定した。
A・・・耐電圧の最大値と最小値の差分が50V未満
B・・・耐電圧の最大値と最小値の差分が50V以上、150V未満
C・・・耐電圧の最大値と最小値の差分が150V以上
A・・・耐電圧の最大値と最小値の差分が50V未満
B・・・耐電圧の最大値と最小値の差分が50V以上、150V未満
C・・・耐電圧の最大値と最小値の差分が150V以上
「総合評価」
総合評価は、耐電圧特性、耐電圧特性の均一性の各評価項目のうち、もっとも低い評価値を用いた。なお、総合評価がB以上で本発明の効果が得られていると判断できる。
総合評価は、耐電圧特性、耐電圧特性の均一性の各評価項目のうち、もっとも低い評価値を用いた。なお、総合評価がB以上で本発明の効果が得られていると判断できる。
〔比較例1〕
比較例1では、実施例1と同様の条件で、感光体を作製した。耐圧層202を形成する際の窒素原子供給用の原料ガスであるアンモニア(NH3)は、実施例1とは異なり、他の原料ガスと同じ原料ガス導入菅から導入する構成とした。このため、アンモニア(NH3)の軸方向におけるガス流量の分布は概ね均一になるようにした。この点以外はすべて実施例1と同様の条件にて、a−Si感光体を製作した。
作製したa−Si感光体について、「耐圧層の膜厚」、「窒素原子の含有量」、「耐電圧特性」について、実施例1と同様の方法・基準で評価を行った。評価結果を表2に示す。
比較例1では、実施例1と同様の条件で、感光体を作製した。耐圧層202を形成する際の窒素原子供給用の原料ガスであるアンモニア(NH3)は、実施例1とは異なり、他の原料ガスと同じ原料ガス導入菅から導入する構成とした。このため、アンモニア(NH3)の軸方向におけるガス流量の分布は概ね均一になるようにした。この点以外はすべて実施例1と同様の条件にて、a−Si感光体を製作した。
作製したa−Si感光体について、「耐圧層の膜厚」、「窒素原子の含有量」、「耐電圧特性」について、実施例1と同様の方法・基準で評価を行った。評価結果を表2に示す。
〔実施例2〕
実施例2では、実施例1と同様の条件で、感光体を作製した。ただし、耐圧層202を形成する際の基体加熱用ヒーターの温度分布を、実施例1より均一になるようにさらに調整し、耐圧層の膜厚の分布が実施例1より小さくなるようにした。この点以外はすべて実施例1と同様の条件にて、a−Si感光体を製作した。
作製したa−Si感光体について、「耐圧層の膜厚」、「窒素原子の含有量」、「耐電圧特性」について、実施例1と同様の方法・基準で評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例2では、実施例1と同様の条件で、感光体を作製した。ただし、耐圧層202を形成する際の基体加熱用ヒーターの温度分布を、実施例1より均一になるようにさらに調整し、耐圧層の膜厚の分布が実施例1より小さくなるようにした。この点以外はすべて実施例1と同様の条件にて、a−Si感光体を製作した。
作製したa−Si感光体について、「耐圧層の膜厚」、「窒素原子の含有量」、「耐電圧特性」について、実施例1と同様の方法・基準で評価を行った。評価結果を表2に示す。
表2より実施例1は耐電圧特性、耐電圧特性の均一性の総合評価において本発明の効果が得られていることがわかる。実施例1では耐圧層の膜厚は、最も薄いところ(感光体軸位置−150mm)は4.5μm(最小値)であり、最も厚いところ(感光体軸位置150mm)は6.2μm(最大値)であった。そして、その最大値と最小値の差(=1.7μm)はその最大値と最小値の平均値(=5.35μm)に対して約31%(=(1.7/5.35)×100)であった。
耐圧層の膜厚が最も薄いところの窒素原子の含有量は25.0%であり、一番多くなっていることが確認できた。
実施例1では、測定された感光体の軸方向全域において正耐電圧は2400V以上、負耐電圧は−800V以下の耐電圧を有しており、良好な耐電圧特性を有していることがわかる。
耐圧層の膜厚が最も薄いところの窒素原子の含有量は25.0%であり、一番多くなっていることが確認できた。
実施例1では、測定された感光体の軸方向全域において正耐電圧は2400V以上、負耐電圧は−800V以下の耐電圧を有しており、良好な耐電圧特性を有していることがわかる。
比較例1では耐圧層の膜厚は、最も薄いところ(感光体軸位置−150mm)は4.5μm(最小値)であり、最も厚いところ(感光体軸位置150mm)は6.3μm(最大値)であり、実施例1と概ね同様の分布を有していた。これに対し、窒素原子の含有量は概ね均一(19.0%〜19.2%)となった。
そして、耐圧層の膜厚が薄くなっている測定箇所の耐電圧が低いことがわかる。
そして、耐圧層の膜厚が薄くなっている測定箇所の耐電圧が低いことがわかる。
実施例2は耐電圧特性、耐電圧特性の均一性の総合評価において本発明の効果が得られていることがわかる。
実施例2では耐圧層の膜厚は、最も薄いところは4.9μm(最小値)であり、最も厚いところは5.9μm(最大値)であった。そして、その最大値と最小値の差(=1.0μm)はその最大値と最小値の平均値(=5.4μm)に対して約18%(=(1.0/5.4)×100)であった。
耐圧層の膜厚が最も薄いところの窒素原子の含有量は24.9%であった。
実施例2ではすべての測定箇所で、正耐電圧は2400V以上、負耐電圧は−800V以下の耐電圧を有しており、良好な耐電圧特性を有していることが確認できた。
実施例2では耐圧層の膜厚は、最も薄いところは4.9μm(最小値)であり、最も厚いところは5.9μm(最大値)であった。そして、その最大値と最小値の差(=1.0μm)はその最大値と最小値の平均値(=5.4μm)に対して約18%(=(1.0/5.4)×100)であった。
耐圧層の膜厚が最も薄いところの窒素原子の含有量は24.9%であった。
実施例2ではすべての測定箇所で、正耐電圧は2400V以上、負耐電圧は−800V以下の耐電圧を有しており、良好な耐電圧特性を有していることが確認できた。
それに加えて、正耐電圧における最大値2480[V]、最小値2460[V]であった。また負耐電圧における最大値−860[V]、最小値−840[V]であった。つまり、正耐電圧、負耐電圧とも最大値と最小値との差が50V以下となっており、耐電圧特性の均一性という観点においては、実施例1よりもさらに良い結果となった。
これより、耐圧層の膜厚の最大値と最小値との差を、最大値と最小値との平均値に対して20%以下とすることで、耐電圧特性の均一性に関しては、より好適な結果が得られることが確認できた。
以上の結果より耐圧層の膜厚が薄い領域においても、窒素原子の含有量を多くすることで、膜の抵抗が上がり、耐電圧特性が高めることができたと考えられる。
これより、耐圧層の膜厚の最大値と最小値との差を、最大値と最小値との平均値に対して20%以下とすることで、耐電圧特性の均一性に関しては、より好適な結果が得られることが確認できた。
以上の結果より耐圧層の膜厚が薄い領域においても、窒素原子の含有量を多くすることで、膜の抵抗が上がり、耐電圧特性が高めることができたと考えられる。
200・・・感光体
201・・・導電性基体
202・・・耐圧層
203・・・電荷注入阻止層
204・・・光導電層
205・・・表面保護層
301・・・感光体
302・・・帯電器
303・・・画像露光手段
304・・・現像器
305・・・中間転写体
306・・・クリーナー
307・・・前露光器
201・・・導電性基体
202・・・耐圧層
203・・・電荷注入阻止層
204・・・光導電層
205・・・表面保護層
301・・・感光体
302・・・帯電器
303・・・画像露光手段
304・・・現像器
305・・・中間転写体
306・・・クリーナー
307・・・前露光器
Claims (4)
- 円筒状の導電性基体上に、耐圧層と電荷注入阻止層と光導電層と表面保護層とがこの順に積層され、前記耐圧層は、アモルファスシリコンナイトライドを有し、前記電荷注入阻止層と前記光導電層は、アモルファスシリコンを有し、前記表面保護層は、アモルファスカーボンまたはアモルファスシリコンカーバイドを有し、前記電荷注入阻止層は、周期表第13族に属する原子を含有する電子写真感光体において、
前記電子写真感光体の軸方向に前記耐圧層の膜厚が薄い領域と厚い領域とを有し、
前記薄い領域のケイ素原子の原子数(Si)と窒素原子の原子数(N)との和に対する窒素原子の原子数の比率(N/(Si+N))が、前記厚い領域の比率より多く、
前記耐圧層の全域にわたって前記比率(N/(Si+N))が0.15以上0.25以下であることを特徴とする電子写真感光体。 - 前記耐圧層の膜厚の最大値と最小値との差が、前記最大値と前記最小値との平均値に対して20%以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
- 請求項1または2に記載の電子写真感光体、ならびに、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を備えることを特徴とする電子写真装置。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置の本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
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