本実施形態の炉況判断方法では、複数種類の操業管理指標のそれぞれについて炉況の不安定の判断要素となる個別不安定スコアを算出し、これらの個別不安定スコアから算出される総合不安定スコアに基づいて炉況が不安定であるか否かを判断する。操業管理指標、個別不安定スコア及び総合不安定スコアの詳細は後述するが、総合不安定スコアに基づいて炉況が不安定であるか否かを判断することにより、オペレータの能力や経験等に依存することなく炉況を判断することができる。また、炉況の不安定の判断において、複数種類の操業管理指標を踏まえた総合不安定スコアを用いているため、熟練したオペレータの総合的な判断に沿った炉況判断を行うことができる。
まず、本実施形態の炉況判断方法を実行する炉況判断装置の構成について、図1を用いて説明する。
炉況判断装置1は、取得部10と、算出部20と、判断部30とを有する。取得部10は、操業管理指標のデータ(以下、指標データという)を取得する。指標データの詳細については、後述する。取得部10には、高炉BFに設置され、指標データを測定するセンサ11と、センサ11によって測定された測定データから指標データを演算する演算部12とが含まれる。取得部10は、センサ11のみによって構成されていてもよいし、センサ11及び演算部12によって構成されていてもよい。
算出部20は、各操業管理指標における複数の指標データに基づいて、個別不安定スコアSnを算出する。個別不安定スコアSnの算出方法については、後述する。判断部30は、個別不安定スコアSnから総合不安定スコアStを算出し、この総合不安定スコアStに基づいて炉況が不安定であるか否かを判断する。総合不安定スコアStの算出方法や、炉況が不安定であるか否かの判断方法については、後述する。
以下、本実施形態の炉況判断方法について、図2に示すフローチャートを用いて説明する。
ステップS101では、取得部10において、複数種類の操業管理指標のそれぞれについて、指標データを所定周期で取得する。所定周期は、適宜決めることができる。操業管理指標の測定間隔は、操業管理指標の種類毎に異なる場合が有るが、測定間隔が短い操業管理指標については、所定周期の間で測定された複数の測定データの平均値を指標データとして、他の操業管理指標と所定周期内の指標データの数を揃えることができる。また、測定間隔が長い操業管理指標については、直近に測定された値を、次に更新されるまでの間に継続して用いることにより、他の操業管理指標と所定周期内の指標データの数を揃えることができる。所定周期は、例えば、10〜60分のうちの任意の時間とすることができ、例えば30分とすることができる。
操業管理指標は、炉況の判断に用いられる指標であり、例えば、下記表1に示す指標が挙げられる。下記表1に示す通り、操業管理指標には、炉頂で取得される指標、炉内又は炉壁で取得される指標、羽口又は出銑口で取得される指標がある。
ステップS101で取得される操業管理指標は、上記表1に挙げたすべての指標である必要は無く、上記表1に挙げた指標のうち、炉況を判断する上で重要度の高い一部(複数)の指標だけであってもよい。上記表1から分かるように、指標データには、高炉に設置されたセンサによって測定されたデータ(測定データという)や、この測定データを用いた演算によって得られたデータ(演算データという)が含まれる。
上記表1に示す各操業管理指標の内容について以下に説明する。なお、以下に説明する各操業管理指標の測定方法又は演算方法は公知であるため、詳細な説明は省略する。
「日内装入回数」とは、装入物(コークスや鉱石)を高炉に装入するときにおいて、1日あたりに装入されるチャージの回数(総数)である。「片持ちゾンデ温度」とは、炉口部に設置された片持ちゾンデによって測定される炉内ガス温度[℃]である。「炉頂平均温度」とは、炉頂部の上昇管で測定される炉頂ガス温度の平均値[℃]である。「差指降下異常回数」とは、高炉内における装入物の降下異常現象(いわゆるスリップやドロップ等)の発生回数である。「着床時装入深度」とは、サウンジングが装入物に着床したときの深度[m]である。「巻き上げ時装入深度」とは、サウンジングの巻き上げ時の装入物の深度[m]である。「サウンジング降下速度」とは、サウンジングによって測定される装入物の降下速度[mm/min]である。「差指層厚比」とは、サウンジングによって測定される鉱石とコークスの層厚比[%]である。
「炉頂ガスCO分析値」、「炉頂ガスCO2分析値」、「炉頂ガスH2分析値」、「炉頂ガスN2分析値」及び「炉頂ガスCH4分析値」とは、炉頂部で測定される、炉頂ガスに含まれる各ガス成分(CO、CO2、H2、N2、CH4)の組成[mоl%]である。「炉頂ガス流量」とは、炉頂部で測定される炉頂ガスの流量[Nm3/min]である。「炉口ガス流速」とは、炉頂ガス流量を炉口断面積で除算して求められる炉頂ガスの流速[m/sec]である。「炉頂散水流量」とは、炉頂温度を調整するために炉内で散水される冷却水の流量[t/h]である。
「炉内平均ガス流速」とは、炉頂部におけるガス量とボッシュガス量の平均を炉内平均断面積で除算して、さらに羽口先と炉頂部の平均温度と圧力で補正した平均ガス流速[m/sec]である。「シャフト圧力」とは、シャフト部に設置された圧力センサによって測定された圧力[kPa]である。「シャフト圧力変動時間」とは、シャフト部の炉円周方向に設置された複数の圧力センサによってそれぞれ測定された圧力が各レベルで定められた所定値以上であるときの時間[sec]である。「ステーブ温度」とは、炉壁部のステーブで測定される温度[℃]である。
「K値(全体)」とは、下記式(1)によって算出される高炉全体での通気抵抗指数[−]である。
上記式(1)において、Pblastは送風圧[kg/cm2]、Ptоpは炉頂圧[kg/cm2]、Vはボッシュガス量[Nm3/min]である。上記表1に示すK値(上部・中部・下部)は、炉高方向で互いに異なる位置(上部、中部及び下部)に設置された圧力センサのそれぞれによって測定された圧力を用いて、上記式(1)の応用式(炉頂圧Ptоpを上部、中部及び下部のそれぞれの圧力に置き換えた式)から算出される通気抵抗指数である。
「SLC量」とは、羽口先の送風条件と炉頂ガス条件から算出される高炉内でのソリューションロスカーボン量[kg/t−p]である。「総合熱負荷」とは、ステーブの冷却水の入側温度及び出側温度、水の比熱、冷却水の流量から算出される熱負荷を高炉全体において合計した値[MW]である。「送風圧力」とは、環状管前で測定される熱風の圧力[kPa]である。「羽口先微粉炭比」とは、銑鉄1トンあたりの微粉炭の吹込み量[kg/t−p]である。「PCI吹込み量」とは、送風量あたりの微粉炭の吹込み量(実績値)[g/Nm3]である。「InputH2」とは、銑鉄1トンあたりの水素投入量[kg/t−p]である。
「羽口先銑鉄生成量」とは、羽口先に降下した原料から算出される1日あたり銑鉄生成量[t/D]である。「羽口先スラグ生成量」とは、羽口先に降下した原料から算出される1日あたりのスラグ生成量[t/D]である。「PC置換率」とは、微粉炭及びコークス中の炭素分から算出される微粉炭とコークスの置換率[−]である。「溶銑温度」とは、溶銑樋で温度センサによって測定される溶銑の温度[℃]である。
上記表1に示す操業管理指標の中には、炉況について同様の傾向を示す、同一種類の操業管理指標がある。この場合、同一種類の操業管理指標についてはまとめて個別不安定スコアを算出することが好ましく、その方法については後述する。
上記表1に示す操業管理指標の中には、高炉の互いに異なる複数の位置(炉周方向や炉高方向において互いに異なる複数の位置)で取得される複数の指標データを含む操業管理指標がある。この場合には、操業管理指標の指標データとして、複数の指標データの平均値を用いることができる。例えば、着床時装入深度の指標データとして、炉周方向の複数の位置における着床時装入深度の平均値を用いることができ、巻き上げ時装入深度の指標データとして、炉周方向の複数の位置における巻き上げ時装入深度の平均値を用いることができる。また、シャフト圧力、シャフト圧力変動時間、ステーブ温度といった操業管理指標の指標データは、炉周方向及び炉高方向における複数の位置で測定されることがあるため、この場合には、各操業管理指標の指標データとして、複数の位置における指標データの平均値を用いることができる。
さらにまた、上述した差指降下異常回数における降下異常現象は、炉周方向における複数の位置で発生することがあるところ、差指降下異常回数の指標データとして、炉周方向における複数の位置(例えば4方位)での差指降下異常回数の合計値を用いることができる。
図2に示すステップS102では、各操業管理指標について、所定期間t1内においてステップS101の処理で取得した複数の指標データの平均値D_ave1と基準値D_refとに基づいて、後述する個別不安定スコアSnを算出する。この処理は、算出部20(図1参照)によって行われる。所定期間t1は、ステップS101で説明した指標データを取得する周期よりも長い期間であることが好ましく、例えば、2時間とすることができる。このとき、所定期間t1内では、複数の指標データが取得される。
所定期間t1は、ステップS101で説明した指標データを取得する周期と同じであってもよいが、以下では、所定期間t1内で複数の指標データが取得され、平均値D_ave1が算出される場合について説明する。
平均値D_ave1の算出では、現在時刻を基準とし、現在時刻よりも所定期間t1だけ前(過去)の時刻から現在時刻までの間に取得された複数の指標データを平均化することにより、平均値D_ave1が算出される。そして、時間の経過に応じてステップS101の処理で指標データを取得するたびに、平均値D_ave1が更新される。ここで、平均値D_ave1を算出するために、少なくとも所定期間t1が経過するまでは、ステップS101の処理で取得された複数の指標データがメモリに記憶される。
個別不安定スコアSnとは、各操業管理指標に着目して炉況が不安定であるか否かを判断するためのスコアである。本実施形態では、個別不安定スコアSnが大きいほど、炉況が不安定であることを意味し、言い換えれば、個別不安定スコアSnが小さいほど、炉況が安定である(不安定ではない)ことを意味する。ここで、個別不安定スコアSnの添え字nは、各操業管理指標の種類の別を意味する。本実施形態では、0〜1の範囲内において、個別不安定スコアSnを設定している。
個別不安定スコアSnを算出する方法としては、以下に説明する3つの方法(第1の算出方法、第2の算出方法、第3の算出方法)が挙げられる。各個別不安定スコアSnは、各操業管理指標について同じ算出方法で算出されることが好ましいが、各操業管理指標について異なる算出方法で算出されてもよい。各操業管理指標について異なる算出方法を用いる場合であっても、炉況が不安定であるほど個別不安定スコアSnを大きくするか、炉況が不安定であるほど個別不安定スコアSnを小さくするか、のいずれかに統一しておくようにする。
(第1の算出方法)
第1の算出方法では、平均値D_ave1と基準値D_refを比較することにより、個別不安定スコアSnを算出する。基準値D_refは、操業管理指標毎に、高炉の過去の操業実績に基づいて予め定めることができる。ここで、操業管理指標に応じて、平均値D_ave1が基準値D_ref以上であるときに炉況が不安定であるものと、平均値D_ave1が基準値D_ref以下であるときに炉況が不安定であるものとがある。
平均値D_ave1が基準値D_ref以上であるときに炉況が不安定である操業管理指標としては、例えば、K値(全体)、K値(上部・中部・下部)、SLC量、総合熱負荷、シャフト圧力変動時間がある。この操業管理指標について、ステップS102の処理では、平均値D_ave1が基準値D_ref以上であるか否かを判断する。そして、平均値D_ave1が基準値D_ref未満であるときには、個別不安定スコアSnを0とする。また、平均値D_ave1が基準値D_ref以上であるときには、平均値D_ave1及び基準値D_refの差に応じた個別不安定スコアSnを算出する。
平均値D_ave1が基準値D_ref以下であるときに炉況が不安定である操業管理指標としては、例えば、溶銑温度がある。この操業管理指標について、ステップS102の処理では、平均値D_ave1が基準値D_ref以下であるか否かを判断する。そして、平均値D_ave1が基準値D_refよりも大きいときには、個別不安定スコアSnを0とする。また、平均値D_ave1が基準値D_ref以下であるときには、平均値D_ave1及び基準値D_refの差に応じた個別不安定スコアSnを算出する。
以下、個別不安定スコアSnの算出方法の一例について説明する。まず、個別不安定スコアSnの算出においては、所定期間t2内で周期的に取得した複数の指標データに基づいて、後述する平均値D_ave2、上限値D_max及び下限値D_minを設定する。ここでの複数の指標データは、ステップS101の処理と同様に所定周期で取得される。
所定期間t2は、上述した所定期間t1よりも長い期間であり、適宜決めることができる。例えば、所定期間t1が2時間であるとき、所定期間t2を1年とすることができる。所定期間t2の間、各操業管理指標の指標データを周期的に取得し続け、所定期間t2内の複数の指標データを平均化することにより、平均値D_ave2を算出することができる。
平均値D_ave2の算出では、現在時刻を基準とし、現在時刻よりも所定期間t2だけ前(過去)の時刻から現在時刻までの間に取得された複数の指標データを平均化することにより、平均値D_ave2が算出される。そして、時間の経過に応じてステップS101の処理で指標データを取得するたびに、平均値D_ave2が更新される。ここで、平均値D_ave2を算出するために、少なくとも所定期間t2が経過するまでは、ステップS101の処理で取得された複数の指標データがメモリに記憶される。
上限値D_maxは、基準値D_refよりも大きい値であり、所定期間t2内における複数の指標データの標準偏差σをN倍した値を、平均値D_ave2に加算した値とする。下限値D_minは、基準値D_refよりも小さい値であり、平均値D_aveから、所定期間t2内における複数の指標データの標準偏差σをN倍した値を減算した値とする。すなわち、上限値D_max及び下限値D_minは、下記式(2),(3)によってそれぞれ表される。ここで、Nは、正の値であり、例えば、3とすることができる。
平均値D_ave1が基準値D_ref以上であり、平均値D_ave1及び基準値D_refの差に応じた個別不安定スコアSnを算出するときには、例えば、下記式(4)に基づいて個別不安定スコアSnを算出することができる。
上記式(4)は、平均値D_ave1が基準値D_ref以上であって、かつ上限値D_max未満であるときに適用される。上記式(4)によれば、平均値D_ave1が大きいほど、個別不安定スコアSnは、1よりも小さい範囲内で大きくなる。言い換えれば、平均値D_ave1が上限値D_maxに近づくほど、個別不安定スコアSnが1に近づく。
一方、平均値D_ave1が上限値D_max以上であるときには、個別不安定スコアSnを一律に1とする。平均値D_ave1が上限値D_max以上であるとき、上記式(4)から算出される個別不安定スコアSnは1以上の値となる。本実施形態では、個別不安定スコアSnを0〜1の範囲内の値としているため、上記式(4)から算出される個別不安定スコアSnが1以上の値となるときには、個別不安定スコアSnを一律に1とする。
なお、本実施形態では、上記式(4)に基づいて個別不安定スコアSnを算出しているが、これに限るものではない。例えば、平均値D_ave1が基準値D_ref以上であるとき、個別不安定スコアSnを一律に1とすることができる。この場合には、平均値D_ave1が基準値D_ref以上であるか、又は平均値D_ave1が基準値D_ref未満であるかに応じて、個別不安定スコアSnは1又は0になる。ただし、上記式(4)に基づいて個別不安定スコアSnを算出することにより、個別不安定スコアSnを1又は0だけとする場合に比べて、操業管理指標の指標データを反映した個別不安定スコアSnを得やすくなる。
一方、平均値D_ave1が基準値D_ref以下であり、平均値D_ave1及び基準値D_refの差に応じた個別不安定スコアSnを算出するときには、例えば、下記式(5)に基づいて個別不安定スコアSnを算出することができる。
上記式(5)は、平均値D_ave1が基準値D_ref以下であって、かつ下限値D_minよりも大きいときに適用される。上記式(5)によれば、平均値D_ave1が小さいほど、個別不安定スコアSnは、1よりも小さい範囲内で大きくなる。言い換えれば、平均値D_ave1が下限値D_minに近づくほど、個別不安定スコアSnが1に近づく。
一方、平均値D_ave1が下限値D_min以下であるときには、個別不安定スコアSnを一律に1とする。平均値D_ave1が下限値D_min以下であるとき、上記式(5)から算出される個別不安定スコアSnは1以上の値となる。本実施形態では、個別不安定スコアSnを0〜1の範囲内の値としているため、上記式(5)から算出される個別不安定スコアSnが1以上の値となるときには、個別不安定スコアSnを一律に1とする。
なお、本実施形態では、上記式(5)に基づいて個別不安定スコアSnを算出しているが、これに限るものではない。例えば、平均値D_ave1が基準値D_ref以下であるとき、個別不安定スコアSnを一律に1とすることができる。この場合には、平均値D_ave1が基準値D_ref以下であるか、又は平均値D_ave1が基準値D_refよりも大きいかに応じて、個別不安定スコアSnは1又は0になる。ただし、上記式(5)に基づいて個別不安定スコアSnを算出することにより、個別不安定スコアSnを1又は0だけとする場合に比べて、操業管理指標の指標データを反映した個別不安定スコアSnを得やすくなる。
(第2の算出方法)
第2の算出方法では、平均値D_ave1及び個別不安定スコアSnの関係式を用いて、個別不安定スコアSnを算出する。ここで、操業管理指標に応じて、平均値D_ave1が大きいほど、炉況が不安定になりやすくなるものと、平均値D_ave1が小さいほど、炉況が不安定になりやすくなるものとがある。
平均値D_ave1が大きいほど、炉況が不安定になりやすい操業管理指標としては、例えば、K値(全体)、K値(上部・中部・下部)、SLC量、総合熱負荷がある。この操業管理指標について、ステップS102の処理では、下記式(6)に基づいて個別不安定スコアSnを算出する。
上記式(6)において、Snは個別不安定スコア、D_refは各操業管理指標の基準値、D_ave1は複数の指標データの平均値、σは所定期間t2内における複数の指標データの標準偏差である。基準値D_ref、平均値D_ave1及び所定期間t2は、上述したとおりである。
上記式(6)は、シグモイド関数であり、図3に示す曲線(一例)で表される。図3は、個別不安定スコアSn及び平均値D_ave1の関係を示し、平均値D_ave1が基準値D_refであるときに、個別不安定スコアSnが0.5となる。図3から分かるように、上記式(6)によれば、平均値D_ave1が連続的に増加(図3の右方向に変化)することに応じて、個別不安定スコアSnが単調増加する。言い換えれば、平均値D_ave1が連続的に減少(図3の左方向に変化)することに応じて、個別不安定スコアSnが単調減少する。なお、上記式(6)では、平均値D_ave1が基準値D_refであるときに、個別不安定スコアSnが0.5となるが、これに限るものではない。
一方、平均値D_ave1が小さいほど、炉況が不安定になりやすい操業管理指標としては、例えば、溶銑温度がある。この操業管理指標について、ステップS102の処理では、下記式(7)に基づいて個別不安定スコアSnを算出する。
上記式(7)に示す記号は、上記式(6)で説明した記号と同じである。上記式(7)は、シグモイド関数であり、図4に示す曲線(一例)で表される。図4は、個別不安定スコアSn及び平均値D_ave1の関係を示し、平均値D_ave1が基準値D_refであるときに、個別不安定スコアSnが0.5となる。図4から分かるように、上記式(7)によれば、平均値D_ave1が連続的に減少(図4の左方向に変化)することに応じて、個別不安定スコアSnが単調増加する。言い換えれば、平均値D_ave1が連続的に増加(図4の右方向に変化)することに応じて、個別不安定スコアSnが単調減少する。なお、上記式(7)では、平均値D_ave1が基準値D_refであるときに、個別不安定スコアSnが0.5となるが、これに限るものではない。
(第3の算出方法)
第3の算出方法では、平均値D_ave1を標準化した値N(D_ave1)と後述する中央値D_medを標準化した値N(D_med)の差に基づいて、個別不安定スコアSnを算出する。具体的には、下記式(8)に基づいて個別不安定スコアSnを算出する。
上記式(8)において、Snは個別不安定スコアである。D_ave1は、上述したように、所定期間t1内で取得された複数の指標データの平均値であり、標準化値N(D_ave1)は、所定期間t2内で取得された複数の指標データの上限値及び下限値に基づいて、平均値D_ave1を標準化した値(0〜1の範囲内の値)である。D_medは、所定期間t2内で取得された複数の指標データの中央値であり、標準化値N(D_med)は、所定期間内t2内で取得された複数の指標データの上限値及び下限値に基づいて、中央値D_medを標準化した値(0〜1の範囲内の値)であり、本発明における基準値に相当する。上記式(8)によって算出される個別不安定スコアは、0〜1の範囲内の値となる。所定期間t1及び所定期間t2は、上述したとおりである。
上述したように、操業管理指標に応じて、平均値D_ave1が大きいほど、炉況が不安定になりやすくなるものと、平均値D_ave1が小さいほど、炉況が不安定になりやすくなるものとがある。ここで、上記式(8)では、標準化値N(D_ave1)及び標準化値N(D_med)の差分を二乗しているため、平均値D_ave1が大きいほど、炉況が不安定になりやすくなるものと、平均値D_ave1が小さいほど、炉況が不安定になりやすくなるものとを区別する必要は無い。
上述した第1〜第3の算出方法において、同一種類の複数の操業管理指標について、複数の個別不安定スコアSnがそれぞれ算出されたとき、当該複数の個別不安定スコアの平均値を、同一種類の操業管理指標に関する1つの個別不安定スコアSnとして扱うことができる。例えば、K値(全体)及びK値(上部)については、K値(全体)及びK値(上部)のそれぞれについて個別不安定スコアSnを算出し、2つの個別不安定スコアSnの平均値(個別不安定スコアSnの合計値を2で除算した値)をK値の個別不安定スコアSnとすることができる。ステーブ温度、シャフト圧力及びシャフト圧力変動時間などについても、上述したK値と同様に高炉の位置に応じた複数の操業管理指標を規定した場合には、同一種類の操業管理指標について、1つにまとめられた個別不安定スコアSnを算出してもよい。
ステップS103では、判断部30(図1参照)において、各操業管理指標の個別不安定スコアSnに基づいて、総合不安定スコアStを算出する。総合不安定スコアStは、複数種類の操業管理指標の個別不安定スコアSnを合算した合計値であってもよいし、複数種類の操業管理指標の個別不安定スコアSnを平均化した値(算術平均値)であってもよいし、複数種類の操業管理指標の個別不安定スコアSnを加重平均した値(加重平均値)であってもよい。総合不安定スコアStとして算術平均値を用いる場合には、すべての個別不安定スコアSnの合計値を、個別不安定スコアSnを算出した操業管理指標の総数で除算することにより、算術平均値を求めることができる。総合不安定スコアStとして加重平均値を用いる場合には、炉況の不安定に対する各操業管理指標の影響度を考慮して、各操業管理指標の重み付けを予め決めておくことができる。ここで、炉況の不安定に対する各操業管理指標の影響度が高いほど、重み付けの値を大きくすることができる。
ステップS104では、判断部30(図1参照)において、ステップS103の処理で算出した総合不安定スコアStが所定スコアSth以上であるか否か、言い換えれば、総合不安定スコアStが所定スコアSthによって規定される所定範囲内に入るか否かを判別する。ここで、総合不安定スコアStが所定スコアSth以上であるとき、ステップS105において、炉況が不安定であると判断する。また、総合不安定スコアStが所定スコアSth未満であるとき、言い換えれば、総合不安定スコアStが所定スコアSthによって規定される所定範囲から外れているとき、ステップS106において、炉況が不安定ではないと判断する。
所定スコアSthは、過去の操業実績に基づいて炉況が不安定であると判断するときの総合不安定スコアStの下限値であり、総合不安定スコアStの内容(合計値又は平均値)に応じて予め決められる。総合不安定スコアStが上述した平均値であるときには、例えば、所定スコアSthを0.3、0.4又は0.8とすることができる。総合不安定スコアStが上述した合計値であるときには、所定スコアSthは、総合不安定スコアStの算出に用いられた操業管理指標の総数に応じて異なる。
図2に示す炉況判断方法によって炉況が不安定であると判断したときには、高炉操業の操作因子を適切に調整する操業アクションを行うことにより、炉況の不安定を解消させることができる。ここで、高炉操業の操作因子としては、例えば、羽口からの送風条件、炉頂からの原料(コークスや鉱石)の装入条件、原料の性状が挙げられる。
なお、上記表1に示す溶銑温度は、他の操業管理指標と同程度の短い間隔で測定することが難しい。すなわち、溶銑温度は1タップの出銑中に複数回測定されるが、この測定間隔は、他の操業管理指標の測定間隔よりも長く、測定間隔がずれやすい。そこで、1タップの出銑中に複数回測定された溶銑温度の平均値を所定周期毎の溶銑温度として用いることができる。さらに、所定周期毎の溶銑温度に基づいて平均値D_ave1を算出することもできる。
また、シャフト圧力変動時間については、上述した平均値D_ave1の代わりに、指標データを取得する所定周期内におけるシャフト圧力変動時間の合計値とすることができる。高炉には、炉高方向及び炉周方向において互いに異なる位置に複数の圧力センサが設置されているため、各圧力センサの測定値から算出されるシャフト圧力変動時間の合計値を、平均値D_ave1の代わりに用いることができる。
一方、上記表1に示す差指降下異常回数については、装入物の降下異常現象の発生回数に基づいて個別不安定スコアSnを算出しているが、これに限るものではない。例えば、装入物の降下状態の大きさに応じて個別不安定スコアSnを算出することができる。具体的には、装入物の降下状態を複数に区分しておき、区分毎に個別不安定スコアを算出した後、これらの個別不安定スコアの合計値(または平均値)を、差指降下異常回数に関する個別不安定スコアとすることができる。
装入物の降下状態の区分としては、例えば、大スリップ、中スリップ、小スリップ、ドロップ、突っ込み、滑りなどに区分することができ、それらは、装入物の降下距離に応じて区分することができる。上述した第1の算出方法においては、降下状態を区分するための境界を上述した基準値D_refとして用いることができる。区分毎の個別不安定スコアとしては、装入物の降下が大きいほど、個別不安定スコアを大きくすることができる。例えば、装入物の降下状態が大スリップであるときには個別不安定スコアを1とし、装入物の降下状態が中スリップであるときには個別不安定スコアを2/3とし、装入物の降下状態が小スリップであるときには個別不安定スコアを1/3とすることができる。小スリップよりも小さい降下異常については個別不安定スコアを1/3未満とし、装入物の降下状態が大スリップ、中スリップ、小スリップ、ドロップ、突っ込み、滑り、のいずれにも属さないときには個別不安定スコアを0とすることができる。
炉頂散水流量について、上述した第1の算出方法においては、上述した平均値D_ave1を算出することなく、散水が行われたか否かに応じて個別不安定スコアSnを算出することができる。具体的には、炉頂散水流量が0[t/h](基準値D_ref)よりも多ければ、個別不安定スコアSnを1とし、炉頂散水流量が0[t/h]であれば、個別不安定スコアSnを0とすることができる。一方、炉頂散水流量を複数段階に区分し、炉頂散水流量が多いほど個別不安定スコアが1以下の範囲内で大きくなるように、区分ごとに個別不安定スコアを定めておいてもよい。
以上、個別不安定スコアSn及び総合不安定スコアStの算出方法の一例について述べたが、その算出方法はこれに限定されない。上述した説明では、個別不安定スコアSn及び総合不安定スコアStが大きいほど炉況が不安定であると判断するようにしているが、例えば、個別不安定スコアSn及び総合不安定スコアStが小さいほど炉況が不安定であると判断するようにしてもよい。また、個別不安定スコアSnの範囲は0〜1でなくてもよい。例えば、指標データ(平均値D_ave1)が、炉況が不安定であると判断する条件(操業管理指標の種類毎に基準値D_refによって規定される条件)を満たすときの個別不安定スコアSnを、負の値としてもよい。さらに例えば、炉況が不安定であると判断する上記条件を満たさないとき(すなわち、炉況が不安定ではないとき)の個別不安定スコアSnを0より大きい値として、指標データ(平均値D_ave1)が基準値D_refに近づくにつれて、個別不安定スコアSnが大きくなる値としてもよい。個別不安定スコアSnの最大値は、10又は100などとしてもよい。
上述した第1の算出方法では、個別不安定スコアSnの計算式が上記式(4)及び上記式(5)に限定されないことは既に述べたとおりであるが、例えば上記式(4)中の下限値D_minを基準値D_refとしてもよいし、上記式(5)中の上限値D_maxを基準値D_refとしてもよい。
上述した第2の算出方法では、図3(一例)又は図4(一例)に示すシグモイド関数を用いて、個別不安定スコアSnを算出しているが、これに限るものではない。すなわち、平均値D_ave1の連続的な増減に対して、個別不安定スコアSnが単調減少又は単調増加する関数を用いて、平均値D_ave1から個別不安定スコアSnを算出できればよい。例えば、シグモイド関数の代わりに、一次関数を用いることもできる。
ここで、平均値D_ave1が大きいほど、炉況が不安定になりやすい操業管理指標については、平均値D_ave1が大きいほど、個別不安定スコアSnが大きくなる一次関数(例えば、図5に示す直線)を用いることができる。また、平均値D_ave1が小さいほど、炉況が不安定になりやすい操業管理指標については、平均値D_ave1が小さいほど、個別不安定スコアSnが大きくなる一次関数(例えば、図6に示す直線)を用いることができる。
一次関数を定義するときには、例えば、平均値D_ave1が基準値D_refであるときに、個別不安定スコアSnが0.5となるように定義することができる。ここで、一次関数の傾き(図5又は図6に示す直線の傾き)は、操業管理指標の種類に応じて適宜決めることができる。
一方、平均値D_ave1が取り得る最大値及び最小値に基づいて、一次関数を定義することもできる。最大値及び最小値は、操業管理指標に応じて予め決めておくことができる。
例えば、平均値D_ave1が大きいほど、炉況が不安定になりやすい操業管理指標については、平均値D_ave1が最大値であるときの個別不安定スコアSnを1とし、平均値D_ave1が最小値であるときの個別不安定スコアSnを0とする。そして、平均値D_ave1及び個別不安定スコアSnの座標系(図5に示す座標系)において、最大値及び最小値を結ぶ直線を一次関数として定義することができる。上記式(4)は、平均値D_ave1が大きいほど炉況が不安定になりやすい操業管理指標についての一次関数の例示であるともいえる。
一方、平均値D_ave1が小さいほど、炉況が不安定になりやすい操業管理指標については、平均値D_ave1が最小値であるときの個別不安定スコアSnを1とし、平均値D_ave1が最大値であるときの個別不安定スコアSnを0とする。そして、平均値D_ave1及び個別不安定スコアSnの座標系(図6に示す座標系)において、最大値及び最小値を結ぶ直線を一次関数として定義することができる。上記式(5)は、平均値D_ave1が小さいほど炉況が不安定になりやすい操業管理指標についての一次関数の例示であるともいえる。
上述した第2の算出方法によれば、シグモイド関数又は一次関数などに基づいて、平均値D_ave1から個別不安定スコアSnを算出することにより、平均値D_ave1に応じた個別不安定スコアSnを算出することができる。すなわち、平均値D_ave1の僅かなずれを反映した個別不安定スコアSnを算出することができる。そして、この個別不安定スコアSnから総合不安定スコアStを算出することにより、平均値D_ave1の変化に応じた個別不安定スコアSnの挙動を総合不安定スコアStの挙動に反映させることができる。結果として、総合不安定スコアStの挙動を把握しやすくなる。
所定期間t1及び所定期間t2も上述の例示に限定されず、平均値D_ave2の算出において、指標データを取得するたびに更新することも必須ではない。
また、総合不安定スコアStを用いた炉況判断において、炉況が不安定であると最終的に判断するための追加の条件を適宜課してもよい。例えば、連続する複数の所定期間t3において総合不安定スコアStが所定スコアSth以上となったときのみ炉況が不安定であると判断してもよい。また例えば、複数の個別不安定スコアSnのそれぞれが所定値以上であるときのみ炉況が不安定であると判断してもよい。
なお、図2で説明した処理(いわゆる機能)は、プログラムによって実現可能である。具体的には、各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムを補助記憶装置に格納しておき、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出されたプログラムを制御部が実行することにより、各機能を動作させることができる。各機能は、1つの制御装置で動作させることもできるし、互いに接続された複数の制御装置によって動作させることもできる。
上記プログラムは、コンピュータで読取可能な記録媒体に記録された状態において、コンピュータに提供することも可能である。記録媒体としては、CD−ROM等の光ディスク、DVD−ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magnet Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやリムーバブルハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
炉容積が5000m3級である高炉を対象として、約1年間にわたり本実施形態である炉況判断方法の効果を検証した。具体的には、ある熟練したオペレータが操業管理指標などを総合的に判断した炉況の安定/不安定と、本実施形態の炉況判断方法による炉況の判断結果(安定/不安定)を比較検証した。ここで、図2に示すステップS106の処理において、炉況が不安定ではないと判断したときには、炉況が安定であるとみなした。また、個別不安定スコアSnについては、上述した第1〜第3の算出方法のそれぞれに基づいて算出し、各算出方法によって算出された個別不安定スコアSnに基づいて、総合不安定スコアStをそれぞれ算出した。なお、第1〜第3の算出方法では、対象とする期間はそれぞれ異なる。
オペレータによる炉況の安定/不安定の判断は、主として上記表1に示す操業管理指標やその他のセンサ情報の時間変化も考慮したうえで、1日単位で炉況の安定/不安定を総合的に判断した。オペレータとしては、能力や経験を十分に備えたオペレータを採用した。
本実施例では、操業管理指標として、上記表1に示すK値(全体)、K値(上部)、総合熱負荷、SLC量、溶銑温度、シャフト圧力変動時間を用いた。これらの操業管理指標の指標データを所定周期(30分)で取得し、所定期間t1を2時間として、平均値D_ave1を算出した。また、休風を除いた1年分を所定期間t2とし、各操業管理指標の平均値D_ave2及び標準偏差σを算出した。上述した第1の算出方法において、上限値D_maxは、平均値D_ave2に標準偏差σの3倍(上記式(2)に示すN)の値を加算した値とし、下限値D_minは、平均値D_ave2から標準偏差σの3倍(上記式(3)に示すN)の値を減算した値とした。基準値D_refは、過去の操業実績に基づいて定めた。
上述した第1の算出方法において、上述した操業管理指標のうち、K値(全体)、K値(上部)、総合熱負荷、SLC量及びシャフト圧力変動時間は、平均値D_ave1が基準値D_ref以上であるときに炉況が不安定である操業管理指標であるため、上記式(4)に基づいて、個別不安定スコアSnを算出した。ここで、平均値D_ave1が基準値D_ref未満であるときには、個別不安定スコアSnを一律に0とし、平均値D_ave1が上限値D_max以上であるときには、個別不安定スコアSnを一律に1とした。
また、上述した操業管理指標のうち、溶銑温度は、平均値D_ave1が基準値D_ref以下であるときに炉況が不安定である操業管理指標であるため、上記式(5)に基づいて、個別不安定スコアSnを算出した。ここで、平均値D_ave1が基準値D_refを超えているときには、個別不安定スコアSnを一律に0とし、平均値D_ave1が下限値D_min以下であるときには、個別不安定スコアSnを一律に1とした。
一方、上述した第2の算出方法において、上述した操業管理指標のうち、K値(全体)、K値(上部)、総合熱負荷、SLC量及びシャフト圧力変動時間は、平均値D_ave1が大きいほど、炉況が不安定になりやすい操業管理指標であるため、上記式(6)に基づいて、個別不安定スコアSnを算出した。また、上述した操業管理指標のうち、溶銑温度は、平均値D_ave1が小さいほど、炉況が不安定になりやすい操業管理指標であるため、上記式(7)に基づいて、個別不安定スコアSnを算出した。
上述した第1〜第3の算出方法において、K値(全体)及びK値(上部)は、同一種類の操業管理指標であるため、K値(全体)及びK値(上部)をまとめた1つのK値(総合K値という)について、個別不安定スコアSnを算出した。具体的には、K値(全体)及びK値(上部)のそれぞれについて個別不安定スコアSnを算出し、2つの個別不安定スコアSnの平均値(個別不安定スコアSnの合計値を2で除算した値)を総合K値の個別不安定スコアSnとした。
溶銑温度については、上述した通り、1タップの出銑中に複数回測定された複数の溶銑温度の平均値を所定周期(30分単位)で取得される溶銑温度とした上で、上述した第1の算出方法における平均値D_ave2、標準偏差σ、上限値D_max及び下限値D_minを算出したり、上述した第2の算出方法における標準偏差σを算出したりした。また、シャフト圧力変動時間については、上述した通り、指標データを取得する所定周期内において、複数の圧力センサの測定値から算出されたシャフト圧力変動時間の合計値を平均値D_ave1の代わりに用いた。
上述した第1〜第3の算出方法のそれぞれによって個別不安定スコアSnを算出した後、総合K値、総合熱負荷、SLC量、溶銑温度及びシャフト圧力変動時間の個別不安定スコアSnを平均化することにより、総合不安定スコアStを算出した。具体的には、総合K値、総合熱負荷、SLC量、溶銑温度及びシャフト圧力変動時間の個別不安定スコアSnを合算し、この合計値を5(総合K値、総合熱負荷、SLC量、溶銑温度及びシャフト圧力変動時間、という操業管理指標の種類の総数)で除算することにより、総合不安定スコアStを算出した。
総合不安定スコアStが所定スコアSth未満であるとき、炉況が安定であると判断した。また、総合不安定スコアStが所定スコアSth以上であるとき、炉況が不安定であると判断した。ここで、上述した第1の算出方法によって個別不安定スコアSnを算出した場合には、所定スコアSthを0.3とし、上述した第2の算出方法によって個別不安定スコアSnを算出した場合には、所定スコアSthを0.4とし、上述した第3の算出方法によって個別不安定スコアSnを算出した場合には、所定スコアSthを0.8とした。
上述した第1の算出方法によって個別不安定スコアSnを算出した場合における総合不安定スコアStの経時変化を図7に示す。上述した第2の算出方法によって個別不安定スコアSnを算出した場合における総合不安定スコアStの経時変化を図8に示す。上述した第3の算出方法によって個別不安定スコアSnを算出した場合における総合不安定スコアStの経時変化を図9に示す。図7〜図9において、横軸は経過時間[日]であり、縦軸は総合不安定スコアStである。
1年間において、オペレータによる炉況判断結果と、本実施例の炉況判断方法による判断結果との対比を下記表2〜表4に示す。下記表2は、上述した第1の算出方法によって個別不安定スコアSnを算出した場合であり、下記表3は、上述した第2の算出方法によって個別不安定スコアSnを算出した場合であり、下記表4は、上述した第3の算出方法によって個別不安定スコアSnを算出した場合である。本実施例の炉況判断方法では、平均値D_ave1が算出されるたびに個別不安定スコアSnが算出され、1日の間に複数の個別不安定スコアSnが算出されることになるが、これらの個別不安定スコアSnの平均値を1日単位の個別不安定スコアSnとみなした。そして、1日単位の個別不安定スコアSnに基づいて総合不安定スコアStを算出し、総合不安定スコアStを所定スコアSth(0.3、0.4又は0.8)と比較することにより、炉況が不安定であるか否かを判別した。
上記表2において、安定(オペレータ)/安定(炉況判断方法)に該当する割合(83%)は、炉況の判断を行った全日数に対して、オペレータ及び炉況判断方法の両方によって炉況が安定であると判断された日数の割合である。不安定(オペレータ)/不安定(炉況判断方法)に該当する割合(9%)は、炉況の判断を行った全日数に対して、オペレータ及び炉況判断方法の両方によって炉況が不安定であると判断された日数の割合である。安定(オペレータ)/不安定(炉況判断方法)に該当する割合(2%)は、炉況の判断を行った全日数に対して、オペレータによって炉況が安定であると判断された一方で、炉況判断方法によって炉況が不安定であると判断された日数の割合である。不安定(オペレータ)/安定(炉況判断方法)に該当する割合(6%)は、炉況の判断を行った全日数に対して、オペレータによって炉況が不安定であると判断された一方で、炉況判断方法によって炉況が安定であると判断された日数の割合である。
上記表2によれば、熟練したオペレータによる炉況判断結果と、本実施例の炉況判断方法による判断結果との一致率は92%であった。ここでいう一致率とは、オペレータ及び炉況判断方法による炉況判断(安定及び不安定)が一致した割合の合計(83%+9%)である。この一致率によれば、本実施例の炉況判断方法により、熟練したオペレータの総合的な判断に沿った炉況判断を行うことができた。また、本実施例の炉況判断方法によれば、各操業管理指標の個別不安定スコアSnから算出した総合不安定スコアStに基づいて炉況が不安定であるか否かを判断しているため、オペレータの能力や経験等に依存することなく炉況を判断することができる。
上記表3において、安定(オペレータ)/安定(炉況判断方法)に該当する割合(86%)は、炉況の判断を行った全日数に対して、オペレータ及び炉況判断方法の両方によって炉況が安定であると判断された日数の割合である。不安定(オペレータ)/不安定(炉況判断方法)に該当する割合(7%)は、炉況の判断を行った全日数に対して、オペレータ及び炉況判断方法の両方によって炉況が不安定であると判断された日数の割合である。安定(オペレータ)/不安定(炉況判断方法)に該当する割合(3%)は、炉況の判断を行った全日数に対して、オペレータによって炉況が安定であると判断された一方で、炉況判断方法によって炉況が不安定であると判断された日数の割合である。不安定(オペレータ)/安定(炉況判断方法)に該当する割合(4%)は、炉況の判断を行った全日数に対して、オペレータによって炉況が不安定であると判断された一方で、炉況判断方法によって炉況が安定であると判断された日数の割合である。
上記表3によれば、熟練したオペレータによる炉況判断結果と、本実施例の炉況判断方法による判断結果との一致率は93%であった。ここでいう一致率とは、オペレータ及び炉況判断方法による炉況判断(安定及び不安定)が一致した割合の合計(86%+7%)である。この一致率によれば、本実施例の炉況判断方法により、熟練したオペレータの総合的な判断に沿った炉況判断を行うことができた。また、本実施例の炉況判断方法によれば、各操業管理指標の個別不安定スコアSnから算出した総合不安定スコアStに基づいて炉況が不安定であるか否かを判断しているため、オペレータの能力や経験等に依存することなく炉況を判断することができる。
上記表4において、安定(オペレータ)/安定(炉況判断方法)に該当する割合(88%)は、炉況の判断を行った全日数に対して、オペレータ及び炉況判断方法の両方によって炉況が安定であると判断された日数の割合である。不安定(オペレータ)/不安定(炉況判断方法)に該当する割合(4%)は、炉況の判断を行った全日数に対して、オペレータ及び炉況判断方法の両方によって炉況が不安定であると判断された日数の割合である。安定(オペレータ)/不安定(炉況判断方法)に該当する割合(2%)は、炉況の判断を行った全日数に対して、オペレータによって炉況が安定であると判断された一方で、炉況判断方法によって炉況が不安定であると判断された日数の割合である。不安定(オペレータ)/安定(炉況判断方法)に該当する割合(6%)は、炉況の判断を行った全日数に対して、オペレータによって炉況が不安定であると判断された一方で、炉況判断方法によって炉況が安定であると判断された日数の割合である。
上記表4によれば、熟練したオペレータによる炉況判断結果と、本実施例の炉況判断方法による判断結果との一致率は92%であった。ここでいう一致率とは、オペレータ及び炉況判断方法による炉況判断(安定及び不安定)が一致した割合の合計(88%+4%)である。この一致率によれば、本実施例の炉況判断方法により、熟練したオペレータの総合的な判断に沿った炉況判断を行うことができた。また、本実施例の炉況判断方法によれば、各操業管理指標の個別不安定スコアSnから算出した総合不安定スコアStに基づいて炉況が不安定であるか否かを判断しているため、オペレータの能力や経験等に依存することなく炉況を判断することができる。