JP2021080213A - ラクトン化合物の製造方法 - Google Patents

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雅彦 関
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Abstract

【課題】ビオチン製造の際の重要中間体であるラクトン化合物を高純度で効率的に得る製造方法の提供。【解決手段】下記式(1)(式中、R1及びR2は、互いに異なっていて良い、置換又は非置換のベンジル基であり、R3は、置換又は非置換のフェニル基である。)で示されるアミドアルコール化合物を、非プロトン性極性溶媒を含む溶媒中で、塩化水素と接触させて、ラクトン化合物を製造する方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ビオチンの重要な合成中間体であるラクトン化合物の新規な製造方法に関する。
ビオチンは、糖尿病予防効果等が期待される医薬品、及び飼料添加剤等に使用される水溶性ビタミンである。
該ビオチンは、非常に長い製造工程を有する。そのため、中間体であっても多くの工程を経て製造されている。例えば、ビオチンの代表的な中間体である、
下記式(2)
Figure 2021080213
(式中、R、およびRは、互いに異なっていて良い、置換又は非置換のベンジル基である。)で示されるラクトン化合物であっても、以下のような非常に長い工程で製造されている(特許文献1参照)。下記工程においては、R、およびRがベンジル基(Bn基)である場合の例(特許文献1の実施例1、3)を示した。
Figure 2021080213
特許文献1の実施例には、先ず、1,3−ジベンジル−2−イミダゾリドン−シス−4,5−ジカルボン酸にα−フェネチルアミン((R)−(+)−1−メチルベンジルアミン)のような光学活性アミンを反応させて、1,3−ジベンジル−5−(α−フェネチル)−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d]イミダゾール−2,4,6−トリオンを製造する(step1)。次いで、1,3−ジベンジル−5−(α−フェネチル)−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d]イミダゾール−2,4,6−トリオンを還元(step2)、酸による環化反応(step3)を実施することにより、ベンジル基を有するラクトン化合物を製造する方法が示されている。そして、特許文献1には、該ラクトン化合物の硫化反応を行ったチオラクトン化合物とし、その後、さらに7工程の反応を行い、最終目的物であるビオチンが得られることが示されている。
以上の通り、ビオチンは、非常に多くの工程を経て製造される。そのため、ビオチンの製造コストを低減するためには、各工程における中間体の製造コスト、すなわち各中間体の収率向上も重要になる。
前記方法において、アミドアルコール化合物を酸によって環化してラクトン化合物を製造する際には、酸として硫酸または塩酸を使用していた。しかしながら、硫酸は使用後の除去が難しいこと、および副反応が生じ易いことがあり、後処理工程が煩雑となるという点で改善の余地があった。加えて、特許文献1では、反応溶媒としてブタノールを使用しており、該ブタノールが水に溶解し難い。そのため、後工程を煩雑とする要因となり、改善の余地があった。
そこで本願発明者らは、2−メトキシ−1−プロパノール等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルを含む溶媒を用いて上記環化反応を行うことにより、ラクトン化合物の収率を改善することができるとともに、反応に使用した反応溶媒の除去が容易となり、後処理工程の操作性を向上できることを見出した(特許文献2参照)。
米国特許第3876656号明細書 特開2018−108979号公報
しかしながら、特許文献2記載の方法で、アミドアルコール化合物の環化反応を行った際に、目的物であるラクトン化合物の他に、アミドアルコール化合物とアルキレングリコールモノアルキルエーテルとの反応によりエステル体が副生することが、本願発明者らの検討によって判明し、高純度のラクトン化合物を得る点で、なお改善の余地があった。
前記の通り、ラクトン化合物の収率、および製造時の操作性を改善することができれば、最終的に得られるビオチンの収率も改善することができる。
したがって、本発明の目的は、ビオチンの中間体であるラクトン化合物の収率、および操作性を改善できる、該中間体の新規な製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。そして、前記ラクトン化合物を製造する際の条件を様々検討した。その結果、塩化水素を酸として使用し、かつ、N,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒を含む溶媒下で反応を行うことで、副反応が生じることなくラクトン化が完結することを見出した。さらに反応終了後の反応液は、ハロゲン化炭化水素等の有機溶媒と接触させることで、前記ラクトン化合物が容易に抽出することができ、高純度のラクトン化合物を効率よく得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
下記式(1)
Figure 2021080213
(式中、R及びRは、互いに異なっていて良い、置換又は非置換のベンジル基であり、Rは、置換又は非置換のフェニル基である。)
で示されるアミドアルコール化合物を、非プロトン性極性溶媒を含む溶媒下、塩化水素と接触させて、下記式(2)
Figure 2021080213
(式中R及びRは、前記式(1)におけるものと同義である。)
で示されるラクトン化合物の製造方法である。
上記本発明のラクトン化合物の製造方法では以下の態様を好適に採りうる。
(1)上記方法により、前記式(2)で示されるラクトン化合物を含む溶液を得、次いで該溶液とハロゲン化炭化水素溶媒とを接触させること。
(2)前記式(1)で示されるアミドアルコール化合物1モルに対して、塩化水素を0.5〜100モル接触させること。
(3)前記式(1)で示されるアミドアルコール化合物1質量部に対して前記非プロトン性極性溶媒を0.1〜10容量部用いること。
(4) 下記式(3)
Figure 2021080213
(式中R、R及びRは、前記式(1)におけるものと同義である。)
で示されるトリオン化合物と、水素化ホウ素塩とを接触させて、前記式(1)で示されるアミドアルコール化合物を含む溶液を得、
次いで該溶液と濃度4〜10質量%の塩酸とを接触させて、前記式(1)で示されるアミドアルコール化合物を得ること。
(5)前記トリオン化合物と、水素化ホウ素塩との接触を炭素数1〜6のアルコール中で行うこと。
本発明の方法によれば、ビオチンの中間体であるラクトン化合物を、副反応を抑制させながら製造することができる。さらに反応終了後の反応液は、ハロゲン化炭化水素等の有機溶媒と接触させることで、前記ラクトン化合物が容易に抽出することができるため、後処理工程の操作性を向上できる。その結果、本発明の方法によれば、ビオチンを効率よく製造することができる。
本発明の製造方法は、前記式(1)で示されるアミドアルコール化合物を、塩化水素の存在下、非プロトン性極性溶媒を含む溶媒下、塩化水素と接触させることが特徴である。本明細書においては特に断らない限り、数値A及びBについて「A〜B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。以下本発明について詳細に説明する。
<アミドアルコール化合物>
前記式(1)で示されるアミドアルコール化合物におけるR及びRは、ベンジル基である。ベンジル基は置換基を有していても良く、置換基は、ベンジル基のベンゼン環の水素原子の少なくとも1つが置換されているもの、或いは、ベンジル基のメチレン基の水素原子の少なくとも1つが置換されていても良く、或いは、ベンジル基のベンゼン環、及びメチレン基のいずれもが置換されていても良い。ベンジル基の置換基としては、メチル基、メトキシ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン基等が挙げられる。また、R及びRは互いに異なっていても良い。
これらの基の中でも、ビオチン製造における有用性の観点から、R及びRは、ベンジル基、1−メチルベンジル基から選ばれる基であることが好適である。
また、上記式(1)中、Rは、フェニル基である。フェニル基のベンゼン環の水素原子は非置換であっても、該水素原子の1つ以上が置換されていても良い。フェニル基の置換基としては、メチル基、メトキシ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン基等が挙げられる。これらのフェニル基に2つ以上の置換基が導入される場合、それらの置換基は互いに異なっていても良い。
該アミドアルコール化合物は、下記式(3)
Figure 2021080213
(式中R、R及びRは、前記式(1)におけるものと同義である。)で示されるトリオン化合物(以下、単に「トリオン化合物」とも言う。)と還元剤とを接触させて得ることができる。以下、上記アミドアルコール化合物の製造方法について説明する。
<アミドアルコール化合物の製造方法>
上記のとおり、アミドアルコール化合物は、上記トリオン化合物と還元剤とを接触させることにより得ることができる。ここで、トリオン化合物を還元する還元剤としては、特許文献1記載の還元剤等、公知の還元剤を用いることができる。かかる還元剤として具体的には、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カルシウム等の水素化ホウ素塩等が挙げられる。水素化ホウ素塩の使用量は、前記トリオン化合物1モルに対して、1〜10モルが好ましく、さらに1〜3モルが好ましい。
ここで、上記トリオン化合物を還元する際、下記式に示すように、目的とするアミドアルコール化合物(I)の他に、その光学異性体であるアミド化合物(II)も生成するが、目的物であるアミドアルコール化合物(I)の選択性が高いという点で還元剤として水素化ホウ素カルシウムを用いることが好ましい。以下、還元剤として水素化ホウ素カルシウムを用いるアミドアルコール化合物の製造方法について説明する。
Figure 2021080213
<水素化ホウ素カルシウムによる還元>
従来技術においては、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを使用して、前記トリオン化合物を還元し、前記アミドアルコール化合物を製造している。この水素化ホウ素ナトリウムと類似の物質であるが、水素化ホウ素カルシウムを使用することにより、光学異性体の不純物を低減できる。この理由としては、水素化ホウ素ナトリウムと比較して、水素化ホウ素カルシウムは、より低温で反応するという特徴があるからと考えられる。
水素化ホウ素カルシウムは、以下のようにして製造できる。例えば、カルシウムのハロゲン化物と、水素化ホウ素の1価の金属塩(例えば、水素化ホウ素ナトリウム、又は水素化ホウ素カリウム)とを炭素数1〜4のアルコール類等の溶媒中で反応させることにより、水素化ホウ素カルシウムを製造できる。該反応には、カルシウムのハロゲン化物1モルに対して、2モルの「水素化ホウ素の1価の金属塩」を使用すればよい。具体的には、塩化カルシウム1モルに対して、2モルの水素化ホウ素ナトリウムを反応させることにより、1モルの水素化ホウ素カルシウムを合成できる。
得られた水素化ホウ素カルシウムは、上記方法で製造した後、一旦、精製して使用することもできるが、水素化ホウ素カルシウムは、不安定であるため、製造後は単離することなく、そのまま使用することが好ましい。
前記トリオン化合物を還元するためには、該トリオン化合物と水素化ホウ素カルシウムとを接触させればよい。
前記水素化ホウ素カルシウムの使用量は、前記トリオン化合物が十分に還元できる量であれば、特に制限されるものではない。中でも、前記アミドアルコール化合物の収率、後処理のし易さ等を考慮すると、前記水素化ホウ素カルシウムの使用量は、前記トリオン化合物1モルに対して、1〜10モルが好ましく、さらに1〜3モルが好ましい。なお、「水素化ホウ素カルシウム」は前記の方法で製造できる。該方法で製造した際、反応に使用したカルシウムのハロゲン化物と同じモル数の「水素化ホウ素カルシウム」が生成する。そのため、単離せずに「水素化ホウ素カルシウム」を使用する場合には、反応に使用したカルシウムのハロゲン化物のモル数を基準にして、還元に使用する「水素化ホウ素カルシウム」のモル数を決定すればよい。
<アミドアルコール化合物の製造条件>
前記トリオン化合物と前記水素化ホウ素カルシウムとの反応は、反応溶媒中で実施することが好ましい。反応溶媒として具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル(2−メトキシエタノール)、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メチル−2−ブタノール等の炭素数1〜6のアルコール類;1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類が挙げられる。これらの溶媒の内でも、エタノール、2−プロパノールを使用することが好ましい。なお、これらの反応溶媒は、不可避的に含まれる水を含んでいてもよい。
反応溶媒の使用量も、特に制限されるものではなく、前記トリオン化合物1質量部に対して、その1〜100容量部が好ましく、さらに、5〜20容量部が好ましい。なお、この反応溶媒の量には、水素化ホウ素カルシウムを生成した際の溶媒を含んでもよい。
前記トリオン化合物と前記水素化ホウ素カルシウムとを接触させる際の反応温度は、特に制限されるものではなく、−30℃以上80℃以下が好ましく、−10℃以上60℃以下がより好ましい。
前記トリオン化合物を還元するための反応時間も、特に制限されるものではなく、前記アミドアルコール化合物の生成量を確認し、適宜決定すればよい。
<アミドアルコール化合物の取り出し>
前記方法に従い、前記トリオン化合物を還元することにより、前記アミドアルコール化合物を収率よく得ることができる。得られたアミドアルコール化合物は、反応が完了した反応溶液に中に、酸を加えて過剰の水素化ホウ素塩を分解して、前記アミドアルコール化合物の固体を析出させて取り出すか、反応溶媒を濃縮して適当な溶媒で前記アミドアルコール化合物を抽出し、濃縮、再結晶、乾燥等の操作を行い結晶として取り出すことができる。
反応溶媒を直接濃縮して適当な溶媒で前記アミドアルコール化合物を抽出する場合、その後固体として取り出す際の固体の流動性が悪く、濾過性が悪い場合があるため、反応が完了した反応溶液に中に、酸を加えて過剰の金属水素化物を分解して、前記アミドアルコール化合物の固体を析出させて取り出す方法が好ましい。
過剰の水素化ホウ素塩の分解に用いる酸としては、塩酸、硫酸、酢酸等の酸を用いることができる。特に析出した固体の流動性が高く、得られる固体中に分解した水素化ホウ素塩由来の塩の混入を抑制できる点から塩酸を用いることが好ましい。
また、上記の酸を直接添加した場合、アミドアルコール化合物の環化反応が進行し、ラクトン化合物が副生し、目的物であるアミドアルコール化合物の純度が低下する場合があるため、上記の酸を水で希釈した後に上記還元反応後の反応溶液に添加することが好ましい。添加する酸の濃度としては、4〜10質量%、好ましくは6〜8質量%の範囲で用いるのが好適である。酸の量としては、過剰の水素化ホウ素塩を分解するに十分であれば良く、水素化ホウ素塩1モルに対し、酸を0.5〜3.0モル、好ましくは0.8〜2.5モルの範囲で用いるのが好適である。水で希釈した酸の使用量としては、生成するアミドアルコール化合物のろ過性、ないし、酸で分解した水素化ホウ素塩由来の塩の除去効果等の観点から、反応に用いた溶媒1容量部に対して、上記濃度の酸を5〜11容量部、好ましくは、6〜10容量部の範囲で用いれば良い。従って、用いる酸としては、水素化ホウ素塩に対して所定の量の酸を含有し、上記の濃度、及び使用量となるように水で希釈して用いれば良い。
上記アミドアルコール化合物を含む溶液と希釈した酸とを接触させる際の温度、時間については、アミドアルコール化合物の結晶が析出するに十分な温度、時間であれば良く、20℃〜60℃、好ましくは、30℃〜50℃の温度で、0.5〜4時間、好ましくは、1〜3時間で行えば良い。
析出したアミドアルコール化合物は、加圧ろ過、減圧ろ過、遠心分離等、公知の固液分離操作によって単離することができる。単離したアミドアルコール化合物の結晶は、溶媒を用いて洗浄することで、結晶に付着する溶液を置換することができる。洗浄の際に用いる溶媒としては、特に制限されないが、アミドアルコール化合物の単離収率の観点、及び酸により分解した金属水素化物由来の塩の除去効率の観点から、水または、含水エタノールを用いることが好ましい。含水エタノールに含まれるエタノールと水の混合比は、容量比でエタノール:水=5:5〜8:2の範囲で適宜用いれば良い。また洗浄に用いる含水エタノールの量は固液分離装置の種類、大きさに応じて適宜決定すれば良い。
<ラクトン化合物の製造方法>
上述のとおり、本発明のラクトン化合物の製造方法は、前記式(1)で示されるアミドアルコール化合物を、非プロトン性極性溶媒を含む溶媒下、塩化水素と接触させることが特徴である。
<非プロトン性極性溶媒>
本発明のラクトン化合物の製造方法は、非プロトン性極性溶媒下で行う。上記特許文献記載の方法は、いずれも溶媒としてアルコール系の溶媒を使用しているが、かかる場合には、目的物であるラクトン化合物の他に、アミドアルコール化合物とアルコール系溶媒との反応によるエステル体が副生する場合がある。本発明の製造方法では、溶媒としてアルコール系溶媒を使用しないため、エステル化を抑制し、高純度でラクトン化合物を得ることができる。ここで非プロトン性極性溶媒とは、プロトン供与性基を有しない極性溶媒である。かかる非プロトン性極性溶媒として、具体的には、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルイミダゾリドン(DMI)等のアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類等が挙げられる。これらの溶媒は単独で使用しても或いは上記溶媒の混合溶媒、さらには、非プロトン性極性溶媒と水との混合溶媒としても良い。かかる溶媒の中でも、反応性や、反応後の処理の容易さの観点から、ジメチルアセトアミド(DMA)、或いはジメチルアセトアミド(DMA)と水との混合溶媒を用いることが好ましい。溶媒の使用量は、反応容器の容量等を勘案して適宜決定すれば良いが、通常前記アミドアルコール化合物1質量部に対して、0.1〜10容量部、好ましくは0.2〜5容量部の範囲で用いれば良い。非プロトン性極性溶媒と水との混合溶媒を用いる場合、反応後の処理の容易さの観点から、混合溶媒全体100容量部に対する非プロトン性極性溶媒の割合を30〜90容量部、好ましくは50〜80容量部の範囲とすることが好ましい。
<塩化水素>
本発明の製造方法では、前記アミドアルコール化合物に塩化水素を接触させる。使用する塩化水素は、水を含む塩酸の状態で反応系内に導入することもできるし、塩化水素ガスを反応系内に導入することもできる。ただし、生産性、装置の簡便化を考慮すると、水を含む塩酸の状態で使用することが好ましい。塩酸を使用する場合、塩化水素が30〜40質量%であり、水が60〜70質量%である塩酸(ただし、水と塩化水素との合計は100質量%である)を使用することができる。これら塩化水素、または塩酸は、市販のものを使用することができる。
塩化水素の使用量は、特に制限されるものではないが、後処理工程を容易にし、反応を十分に進めるためには、前記アミドアルコール化合物1モルに対して、0.5〜100モル使用することが好ましく、さらには、1〜3モル使用することが好ましい。
なお、塩化水素として塩酸を用いる場合、塩酸中の水は反応溶媒に含まれる。従って本発明における溶媒の使用量としては、塩酸中の水の量を加味して適宜設定すれば良い。
<その他の反応条件>
本発明の製造方法においては、塩化水素と前記アミドアルコール化合物とを前記非プロトン性極性溶媒を含む反応溶媒中で接触させるため、撹拌混合することが好ましい。反応系内に、前記アミドアルコール化合物、塩化水素、前記非プロトン性極性溶媒を導入する方法は、特に制限されるものではない。例えば、前記アミドアルコール化合物を、前記非プロトン性極性溶媒を含む反応溶媒に溶解させておき、撹拌混合しながら、そこに塩化水素(塩酸)を加えることができる。
前記アミドアルコール化合物を環化させてラクトン化合物とする際の温度(反応温度)は、特に制限されるものではなく、反応を十分に進行させるためには、20〜150℃が好ましく、さらには50〜120℃が好ましい。
反応時間は、特に制限されるものではなく、前記アミドアルコール化合物の消費量、前記ラクトン化合物の生成量を確認し、適宜決定すればよい。通常であれば、0.1時間〜5時間、好ましくは0.3〜4時間の範囲で適宜設定すれば良い。
また、反応時の雰囲気も特に制限されるものではなく、空気雰囲気下、または不活性ガス雰囲気下の何れであってもよい。操作性を考慮すると、空気雰囲気下で実施することが好ましい。また、反応時の圧力も特に制限されるものではなく、加圧下、大気圧下、減圧下の何れであってもよい。こちらも操作性を考慮すると、大気圧下で実施することが好ましい。
<ラクトン化合物の取り出し>
以上のような条件で、下記式(2)
Figure 2021080213
(式中R及びRは、前記式(1)におけるものと同義である。)で示されるラクトン化合物を製造することができる。得られたラクトン化合物は、特に制限されるものではないが、以下の方法により反応系外に取り出すことが好ましい。すなわち、反応液に有機溶媒を加えてラクトン化合物を有機層に抽出し、ラクトン化合物を含む有機層を水洗し、有機層を濃縮した後、ラクトン化合物を析出させて単離することが好ましい。上記ラクトン化合物の抽出溶媒として用いる溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼン等が挙げられる。これらの有機溶媒でも得られるラクトン化合物の純度の点、精製操作が簡便な点からクロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素溶媒が好ましく、特に塩化メチレンが好ましい。上記方法により単離したラクトン化合物は、純度が高く、そのままビオチンの製造に好適に用いることができるが、必要に応じてシリカゲルカラムクロマトグラフィーや再結晶等の精製操作を行っても良い。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
製造例1(アミドアルコール化合物の製造例)
以下の反応式に示すアミドアルコール化合物(ALC)を合成した。
Figure 2021080213
塩化カルシウム0.53g(4.78mmol)、エタノール16mLを加え30分撹拌した。10℃まで冷却を行った後、攪拌液に水素化ホウ素ナトリウム0.39g(10.3mmol)を加え10℃以下で5分攪拌を行った。攪拌溶液にIMD 2.00g(4.55mmol)を10℃で添加し30℃で24時間、50℃で2時間攪拌を行った。
反応後、37質量%塩酸1.06g(10.8mmol、水素化ホウ素ナトリウム1モルに対して2.1モル)、水4mLの混合液(塩酸濃度7.8質量%)を50℃のまま、5分かけて滴下し、50℃で2時間攪拌を行った。この時、ラクトン化合物(下記実施例におけるLCT)がHPLC上で0.18面積%生成していた。40℃に温度を下げた後18時間攪拌したのちろ過した。ろ過は21mmの桐山ロートと定量濾紙5Cで行った。ロートからの液が10秒間以上落ちなくなるまでを濾過時間とした場合の濾過時間は2分41秒であった。結晶をメタノール1.6mLと水0.4mLの混液で洗浄し、水2mLで洗浄した。固体を乾燥して1.23g(60.9%収率)でALCを得た。HPLCで分析した結果、純度は99.50%であり、ラクトン化合物(LCT)の含有量は0.03%であった。また異性体比は100/0であった。
<HPLC条件>
測定波長:254nm
流速:1.0mL/min
充填剤:X Bridge、C18、5μm、4.8mmx150mm)
移動相:アセトニトリル:(AcOH:HO=1:400)=40:60(0min)、→20:80(20min)→100:0(30min)
カラム温度:30℃
保持時間:ALC:10.8min ALCの異性体:10.8min、LCT:9.9min
製造例2〜3
塩酸濃度を表1とした以外は製造例1と同様にしてALCを製造した。結果を表1に示した。
Figure 2021080213
実施例1
以下の反応式に示すラクトン化合物(LCT)を合成した。
Figure 2021080213
窒素雰囲気下、塩化カルシウム21.3g(0.192mol)のエタノール(640mL)溶液を30分室温で攪拌し氷水冷却にて10℃まで冷却を行った。攪拌液に水素化ホウ素ナトリウム15.2g(0.402mol)を加え10℃以下で5分攪拌を行った。攪拌溶液にIMD 80.0g(0.182mol)を溶液の温度が10℃以下を維持しながら15分かけて分割添加した。添加後、10℃以下で1時間、20℃で32時間攪拌を行った。反応終了後、37質量%塩酸42.5g(0.431mol)、水160mLの混合液(塩酸濃度7.6質量%)を20℃で15分かけて滴下した。この混合液を40℃に昇温後2時間攪拌した後、濾過した。得られた結晶をメタノール64mLと水16mLの混合液で洗浄したのち、さらに水80mLで洗浄し、湿体約159gを得た。得られた湿体119.2gを送風乾燥して52gの固体(ALCの含量:48.4g、収率60%)を得た。
次いで、得られたALCの湿体(39.8g、0.0455mol)に、DMA(12mL)、37質量%塩酸(6.00g、0.0608mol)を加えて100℃で3時間撹拌した。30℃以下まで冷却し、ジクロロメタン(48mL)、水(48mL)を加えて分液し、有機層を水洗(48mLx2)、5% aq.NaHCO洗(48mL)、水洗(48mL)した。有機層を濃縮してLCT(14g、95%)、を得た。得られたLCTのHPLC純度は100%であった。

Claims (6)

  1. 下記式(1)
    Figure 2021080213
    (式中、R及びRは、互いに異なっていて良い、置換又は非置換のベンジル基であり、Rは、置換又は非置換のフェニル基である。)
    で示されるアミドアルコール化合物を、非プロトン性極性溶媒を含む溶媒中で、塩化水素と接触させて、下記式(2)
    Figure 2021080213
    (式中R及びRは、前記式(1)におけるものと同義である。)
    で示されるラクトン化合物を得る、ラクトン化合物の製造方法。
  2. 請求項1に記載の方法により、前記式(2)で示されるラクトン化合物を含む溶液を得、次いで該溶液とハロゲン化炭化水素溶媒とを接触させるラクトン化合物の製造方法。
  3. 前記式(1)で示されるアミドアルコール化合物1モルに対して、塩化水素を0.5〜100モル接触させる請求項1又は2記載のラクトン化合物の製造方法。
  4. 前記式(1)で示されるアミドアルコール化合物1質量部に対して前記非プロトン性極性溶媒を0.1〜10容量部用いる請求項1〜3のいずれか一項に記載のラクトン化合物の製造方法。
  5. 下記式(3)
    Figure 2021080213
    (式中R、R及びRは、前記式(1)におけるものと同義である。)
    で示されるトリオン化合物と、水素化ホウ素塩とを接触させて、前記式(1)で示されるアミドアルコール化合物を含む溶液を得、
    次いで該溶液と濃度4〜10質量%の塩酸とを接触させて、前記式(1)で示されるアミドアルコール化合物を得る請求項1〜4のいずれか一項に記載のラクトン化合物の製造方法。
  6. 前記トリオン化合物と、水素化ホウ素塩との接触を炭素数1〜6のアルコール中で行う請求項5記載のラクトン化合物の製造方法。
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