本発明は、下記式(1)
{式中、
R1、およびR2は、それぞれ、水素原子又はウレイレン基の保護基であり、同一であっても、異なる基であってもよく、
R4は、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基であり、
R5、R6、およびR7は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、またはハロゲン原子である。)で示される基である。}
で示されるトリオン化合物を、
(ii)エタノール中、水素化ホウ素カルシウムで還元することにより、
下記式(3)
(式中、
R1、R2、R4、R5、R6、およびR7は、前記式(1)におけるものと同義である。)で示されるアミドアルコール化合物
で示されるアミドアルコール化合物を製造する方法である。
(原料となるトリオン化合物)
本発明においては、下記式(1)
で示されるトリオン化合物を還元する。
式中、R1、およびR2は、それぞれ、水素原子又はウレイレン基の保護基であり、同一であっても、異なる基であってもよい。
ウレイレン基の保護基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアシル基が挙げられる。中でも、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数6〜11のアラルキル基、または炭素数1〜11のアシル基が好ましい。特に、それぞれがベンジル基であることが好ましい。
ここで、ウレイレン基は−NHCONH−で示される基である。ウレイレン(ureylene)基の保護基とは、ウレイド基に置換して所定反応中に不活性化する基である。所定反応後、脱保護によりウレイレン基が形成される。
R4は、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基である。中でも、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜11のアラルキル基、または炭素数5〜10のアリール基が好ましい。特に、メチル基であること好ましい。
R5、R6、およびR7は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、またはハロゲン原子である。中でも、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、またはハロゲン原子であることが好ましい。特に、それぞれが水素原子であることが好ましい。
この中でも、特に好適な前記トリオン化合物を例示すれば、cis−1,3−ジベンジル−5−[(R)−1−フェネチル]ヘキサヒドロピロロ[3,4−d]イミダゾール−2,4,6−トリオンが挙げられる。
該トリオン化合物は、公知の方法、例えば、特許文献1に記載の方法で合成できる。ただし、トリオン化合物の直前の原料となる化合物は、有機溶媒に対する溶解性が低いため、以下の方法で製造することが好ましい。
(トリオン化合物の好適な製造方法)
本発明の実施形態で使用するトリオン化合物は、以下の方法で製造することが好ましい。先ず、下記式(11)
(式中、R1、およびR2は、前記式(1)におけるものと同義である。)で示されるウレイド化合物を脱水して、下記式(7)
(式中、
R1およびR2は、前記式(1)におけるものと同義である。)で示される無水化合物を製造する。次いで、得られた無水化合物を下記式(8)
(式中、
R4、R5、R6、およびR7は、前記式(1)におけるものと同義である。)で示される光学活性アミン化合物と反応させて、下記式(9)
(式中、R1、R2、R4、R5、R6、およびR7は前記式(1)におけるものと同義である。)で示されるアミド体I、および下記式(10)
(式中、R1、R2、R4、R5、R6、およびR7は前記式(1)におけるものと同義である。)で示されるアミド体IIを含む混合物を得る。
最後に該混合物を脱水することにより、前記式(1)で示されるトリオン化合物を製造する。以上のような方法を採用することが好ましい。
本発明者等の検討によれば、前記混合物は、特許文献1で示されているトルエンのような溶媒では溶解し難いことが分かった。そのため、反応条件によっては、トルエン中に該混合物の結晶が析出し、反応系内の攪拌を阻害する場合があることが分かった。そのため、以上の反応は、次に示す方法で実施することが好ましい。
(トリオン化合物の好適な製造方法;無水化合物の製造方法)
無水化合物は、特に制限されるものではないが、以下の方法により製造することが好ましい。つまり、前記式(11)で示されるウレイド化合物を脱水して製造することが好ましい。このウレイド化合物は、公知の化合物であり、特許文献1に例示されている化合物である。
無水化合物は、上記式(11)で示されるウレイド化合物を脱水して環化することにより製造できる。前記ウレイド化合物の脱水は、沸点が140℃以上の芳香族炭化水素系溶媒中で実施することが好ましい。該芳香族炭化水素系溶媒を使用することにより、前記ウレイド化合物を容易に脱水できる。
前記芳香族炭化水素系溶媒中で前記ウレイド化合物を脱水するためには、以下の方法を採用することが好ましい。すなわち、前記ウレイド化合物が前記芳香族炭化水素系溶媒に溶解した溶液を準備する。そして、この溶液を還流温度に維持しながら、反応系内に生じる水を該系外に取り出せばよい。
前記ウレイド化合物を脱水する場合の条件は、特に制限されるものではないが、以下の条件を採用することが好ましい。
具体的には、後工程、および脱水のし易さ等を考慮すると、前記ウレイド化合物1gに対して、前記芳香族炭化水素系溶媒を1〜20mL使用することが好ましく、さらには、2〜6mL使用することが好ましい。
また、脱水反応を行う際には、反応系内が十分に混合されるような状態とすることが好ましく、撹拌混合することが好ましい。脱水する際の温度(反応温度)は、反応液の還流温度とすることが好ましく、具体的には、140℃以上210℃の範囲が好ましく、さらには160〜190℃の範囲が好ましい。この脱水反応は、減圧、常圧、加圧下の何れの条件で実施してもよい。ただし、脱水を十分に行うためには、減圧から常圧下の範囲で実施することが好ましい。中でも、前記芳香族炭化水素溶媒を使用した場合には、水と共沸し易く、容易に脱水反応が進むため、常圧であってもよい。
反応時間も特に制限されるものではなく、前記無水化合物の生成状態を確認して適宜決定すればよい。つまり、共沸する水の量を確認して反応の進行を確認し、共沸する水が出なくなるまで実施すればよい。通常、0.5〜20時間で十分である。また、反応雰囲気も、特に制限されるものではなく、空気雰囲気下、または窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で実施できる。
以上のような脱水反応は、公知の設備で実施できる。例えば、冷却機を備えた装置(例えば、Dean−Stark脱水装置)を使用して実施できる。
前記芳香族炭化水素系溶媒は、沸点が140℃以上であれば、特に制限されるものではない。該芳香族炭化水素系溶媒の沸点は、該溶媒自体の工業的生産、除去のし易さ、有用性等を考慮すると、140〜210℃であることが好ましく、160〜190℃であることがさらに好ましい。
前記芳香族炭化水素系溶媒は、市販のものが何ら制限なく使用できる。具体的には、沸点が140℃以上であって、ベンゼンに炭素数1〜3のアルキル基が1〜6個置換した溶媒、または、ベンゼンにハロゲン原子が2〜6個置換した溶媒であることが好ましい。具体的な溶媒を例示すると、メシチレン(沸点165℃)、プソイドクメン(沸点169℃)、ヘミメリデン(沸点176℃)、クメン(沸点152℃)、1,2−ジクロロベンゼン(沸点180℃)、1,3−ジクロロベンゼン(沸点172℃)、1,4−ジクロロベンゼン(沸点174℃)が挙げられる。これら溶媒は、単独で使用することもできるし、複数種類の混合溶媒を使用することもできる。中でも、脱水のし易さ、前記無水化合物の溶解性、および次の反応における操作性等を考慮すると、メシチレン(沸点165℃)が特に好ましい。
本発明においては、前記ウレイド化合物の脱水反応に、沸点が140℃以上の芳香族炭化水素系溶媒を使用した場合には、脱水反応が終了した後は、前記式(7)で示される無水化合物、および前記沸点が140℃以上の芳香族炭化水素系溶媒を含む反応溶媒を含む第二反応溶液が得られる。本発明の実施形態においては、一旦、無水化合物を反応系内から取り出すこともできるが、操作性をより向上するためには、前記第二反応溶液をそのまま、次工程の反応(光学活性アミン化合物との反応)に使用することが好ましい。
(トリオン化合物の好適な製造方法;光学活性アミン化合物との反応条件)
本発明においては、前記式(7)で示される無水化合物と前記式(8)で示される光学活性アミン化合物とを反応させる。
前記式(7)で示される無水化合物と前記式(8)で示される光学活性アミン化合物とを、沸点が140℃以上の芳香族炭化水素系溶媒を含む反応溶媒中で反応させることが好ましい。該芳香族炭化水素系溶媒としては、前記「無水化合物の製造方法」における芳香族炭化水素系溶媒と同じ溶媒が挙げられ、好ましい溶媒も同じ理由で同じ溶媒である。
ここで、前記無水化合物を一旦反応系内から取り出し、別途、沸点が140℃以上の芳香族炭化水素溶媒を含む反応溶媒中で、前記光学活性アミン化合物と反応させることもできる。ただし、より操作性を向上するためには、前記無水化合物および前記沸点が140℃以上の芳香族炭化水素系溶媒を含む反応溶媒を含む第二反応溶液と、光学活性アミン化合物とを混合することにより、反応を進行させることが好ましい。なお、前記反応溶媒には、不可避的に混入される水等が含まれていてもよい。
沸点が140℃以上の芳香族炭化水素系溶媒は、前記無水化合物1gに対して、1〜20mL使用することが好ましく、2〜6mL使用することが好ましい。前記芳香族炭化水素系溶媒の使用量を前記範囲とすることで、後述するアミド体Iおよびアミド体IIを含む混合物等の析出を抑制できる。なお、前記第二反応溶液を使用する場合、前記芳香族炭化水素系溶媒の量が足りない場合には、新たに、前記芳香族炭化水素系溶媒を追加することもできる。
また、前記光学活性アミン化合物は、特に制限されるものではないが、前記無水化合物1モルに対して、0.8〜2.0モル使用することが好ましく、0.9〜1.2モル使用することがより好ましい。
前記無水化合物と前記光学活性アミン化合物とを反応させる際の反応温度としては、原料となる無水化合物、並びに生成するアミド体Iおよびアミド体IIを含む混合物が析出しない温度が好ましい。具体的には、140℃以上が好ましく、さらには160℃以上が好ましい。また、反応温度の上限は、反応液の還流温度であるが、具体的には、210℃でもよく、さらに190℃でもよい。
前記無水化合物と前記光学活性アミン化合物との反応は、両者を混合することにより瞬時に反応する。そのため、前記無水化合物が反応系内に析出しないような条件下において、前記光学活性アミン化合物を混合することが好ましい。混合は、反応系内を攪拌混合してやればよい。すなわち、共沸により水が除去された第二反応溶液において、前記無水化合物が析出しないような温度条件下で、前記光学活性アミン化合物を前記第二反応溶液に添加しながら、撹拌混合することが好ましい。
この反応は、前記反応溶液(好ましくは第二反応溶液)に光学活性アミン化合物が配合された際の溶液の還流温度で実施することが好ましい。この場合、反応が終了した時点で、後述する混合物の脱水反応が始まり、トリオン化合物を得ることができる。そのため、使用する装置は、前記無水化合物を製造したのと同じ装置で実施することが好ましい。同じ装置を使用することで、操作性を向上できる。
この反応は、前記の通り、前記無水化合物と前記光学活性アミン化合物とが接触すると瞬時に完了する。そのため、反応時間は、前記無水化合物の消費の状態を確認して適宜決定すればよい。また、反応雰囲気も、特に制限されるものではなく、空気雰囲気下、または窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で実施できる。また、この反応は、瞬時に完結するため、減圧、常圧、加圧下の何れの条件で実施してもよい。ただし、その後の混合物の脱水反応を直ぐに行うためには、減圧から常圧下での実施が好ましい。中でも、前記芳香族炭化水素系溶媒を使用する場合には、常圧下で実施することが好ましい。
本発明者等の検討によれば、前記無水化合物と前記光学活性アミン化合物との反応で得られる、前記式(9)で示されるアミド体I、および前記式(10)で示されるアミド体IIを含む混合物は、トルエンのような溶媒に溶解し難いことが分かった。そのため、反応条件によっては、トルエン中に該混合物の結晶が析出し、反応系内の攪拌を阻害する場合があることが分かった。これに対し、上述の沸点が140℃以上の芳香族炭化水素系溶媒は、該混合物の溶解性が高いため、該混合物の析出を抑制しつつ、均一な条件で該混合物の脱水反応を進めることができる。
(トリオン化合物の好適な製造方法;混合物の脱水反応)
本発明においては、次に、前記アミド体Iおよび前記アミド体IIを含む混合物を脱水して、後述する式(1)で示されるトリオン化合物を製造する。特に、前記反応により得られる、前記アミド体Iおよび前記アミド体IIを含む混合物、並びに、沸点が140℃以上の芳香族炭化水素系溶媒を含む第一反応溶液を、そのまま還流して、該混合物を脱水し、トリオン化合物を得ることができる。以下に、前記アミド体Iおよび前記アミド体IIを含む混合物の脱水反応について説明する。
前記反応で得られた、前記アミド体Iおよび前記アミド体IIを含む混合物は、一旦反応系内から取り出し、別途、脱水反応を実施することもできる。ただし、この脱水反応を比較的柔和な条件、例えば、公知文献よりも低い温度(220℃未満)で実施するためには、該混合物が溶解した溶液から水を抜く方法を採用することが好ましい。この溶液を準備するためには、前記「無水化合物の製造方法」で例示した芳香族炭化水素系溶媒と同じ溶媒を使用することが好ましい。その中でも、操作性を最も向上させるためには、前記第一反応溶液を使用することが好ましい。
該混合物の脱水反応を、均一に溶解した溶液中で実施するためには、前記混合物(前記アミド体Iと前記アミド体IIとの合計)1gに対して、前記芳香族炭化水素系溶媒を1〜20mL使用することが好ましく、さらには2〜6mL使用することが好ましい。前記第一反応溶液を使用する場合において、前記芳香族炭化水素系溶媒の量が足りない場合には、新たに、前記芳香族炭化水素系溶媒を追加することもできる。
前記混合物の脱水反応は、反応系内が十分に混合されるような状態で行うことが好ましく、撹拌混合することが好ましい。脱水する際の温度(反応温度)は、反応液の還流温度が好ましく、具体的には、140℃以上210℃の範囲が好ましく、さらには160〜190℃の範囲が好ましい。この脱水反応は、減圧、常圧、加圧下の何れの条件で実施してもよい。ただし、脱水を十分に行うためには、減圧から常圧下の範囲で実施することが好ましい。中でも、前記芳香族炭化水素溶媒を使用した場合には、水と共沸し易く、容易に脱水反応が進むため、常圧であってもよい。
反応時間も特に制限されるものではなく、トリオン化合物の生成状態を確認して適宜決定すればよい。つまり、共沸する水の量を確認して反応の進行を確認し、共沸する水が出なくなるまで実施すればよい。通常、0.5〜20時間で十分である。また、反応雰囲気も、特に制限されるものではなく、空気雰囲気下、または窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で実施できる。
本発明の実施形態においては、操作性をより一層向上させるためには、前記第一反応溶液をそのまま使用し、該溶液から脱水することが好ましい。つまり、前記第一反応溶液をそのまま還流して、水を前記芳香族炭化水素系溶媒と共沸させて反応系内から除去して脱水反応を進めることができる。そのため、使用する装置は、前記無水化合物と光学活性アミン化合物とを反応させた装置と同じ装置で実施することが好ましい。同じ装置を使用することで、操作性を向上できる。
前記混合物、すなわち、前記アミド体Iおよび前記アミド体IIを含む混合物を脱水すると、両者が共に前記式(1)で示されるトリオン化合物となる。
(トリオン化合物の好適な製造方法;トリオン化合物の精製)
本発明の実施形態においては、前記方法でトリオン化合物を製造できる。トリオン化合物を精製する方法は、特に制限されるものではないが、以下の方法を採用することが好ましい。
具体的には、反応液から溶媒、例えば、前記芳香族炭化水素系溶媒を留去する。その後、残渣を、炭素数1〜6のアルコール、炭素数1〜6のグリコール、炭素数2〜6のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等の親水性溶媒と水とを含む混合溶媒中に溶解させ、結晶(トリオン化合物)を析出させることが好ましい。該混合溶媒は、残渣の固形分1gに対して、親水性溶媒を0.5〜10mL、水を0.5〜10mL使用することが好ましく、さらに親水性溶媒を2〜6mL、水を1〜3mL使用することが好ましい。結晶化等させる温度、残渣を溶解させる際の温度は、前記混合溶媒の使用量で適宜決定することが好ましい。
以上のように取り出したトリオン化合物の結晶は、再度、晶析、カラム分離、洗浄等の方法により精製することもできる。
次に、上記トリオン化合物を還元してアミドアルコール化合物を製造する方法について説明する。
(トリオン化合物の還元(アミドアルコール化合物の製造方法))
一実施形態においては、公知の方法、又は前記方法で製造したトリオン化合物を
(i)NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2で還元した後、水素化ホウ素金属塩でさらに還元する、又は
(ii)水素化ホウ素カルシウムで還元することにより、
前記式(3)で示されるアミドアルコール化合物を製造することを最大の特徴とする。
前記(i)又は(ii)の条件で還元反応を実施することにより、光学異性体の不純物を低減できる。以下に、この反応について説明する。
(i)NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2で還元した後、水素化ホウ素金属塩でさらに還元する方法
この方法においては、先ず、前記トリオン化合物をNaAlH2(OCH2CH2OCH3)2で還元する。使用するNaAlH2(OCH2CH2OCH3)2は、60質量%以上70質量%以下のトルエン溶液であればよく、市販のものを使用できる。
(i)−1 NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2による還元
NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2により前記トリオン化合物を還元すると、以下のような化合物が得られる。すなわち、下記式(12)
(式中、R1、R2、R4、R5、R6、およびR7は、前記式(1)におけるものと同義である。)で示されるアミナール体(以下、単に「アミナール体」とする場合もある。)、および、一部
下記式(13)
(式中、R1、R2、R4、R5、R6、およびR7は、前記式(1)におけるものと同義である。)で示されるアミドアルデヒド体(以下、単に「アミドアルデヒド体」とする場合もある)が得られる。ただし、前記アミナール体と前記アミドアルデヒド体とは平衡状態にあり、その多くが前記アミナール体であるため、前記アミドアルデヒド体の単離、分析は難しい。そのため、以下のさらなる還元等においては、前記アミナール体と前記アミドアルデヒド体との合計量を基準とする。
NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2により前記トリオン化合物を還元すると、前記アミナール体、および前記アミドアルデヒド体を得ることができる。そのため、これら化合物を後述する水素化ホウ素金属塩で還元した場合、光学異性体の不純物が少ないアミドアルコール化合物を得ることができる。
NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2により前記トリオン化合物を還元するには、両者を接触させればよい。接触させる場合には、反応溶媒中で実施することが好ましい。
使用する反応溶媒としては、脂肪族系炭化水素、芳香族系炭化水素、エーテル、または含ハロゲン炭化水素等が挙げられる。具体的には、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、クロロベンゼン等を挙げることができる。これら反応溶媒は、1種類であっても、複数種類の溶媒を混合したものであってもよい。複数種類の溶媒を使用する場合、反応溶媒の使用量は、複数種類の溶媒の合計量が基準となる。
反応溶媒の使用量は、特に制限されるものではない。中でも、操作性、後処理等を考慮すると、反応溶媒の使用量は、前記トリオン化合物1質量部に対して、その1〜100倍が好ましく、さらに、3〜20倍が好ましい。
NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2の使用量は、特に制限されるものではない。確実に収率よく前記アミナール体、および前記アミドアルデヒド体を得るためには、NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2の使用量は、前記トリオン化合物1モルに対して、1〜10モルが好ましく、さらに1〜3モルが好ましい。
NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2、および前記トリオン化合物を接触させるためには、これらを混合することが好ましい。特に、反応溶媒中で混合攪拌することにより、接触させることが好ましい。反応容器内に、NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2、および前記トリオン化合物を導入し、該反応容器中で混合する場合において、各成分を該容器中に導入する手順は、特に制限されるものではない。
例えば、反応容器中に、各成分を同時に導入することもできるし、1成分を先に反応容器に導入しておき、他の成分を反応容器に導入することもできる。好ましくは、前記トリオン化合物を必要に応じて溶媒で希釈して反応容器中に先に導入し、温度を下げたうえ、必要に応じて溶媒で希釈したNaAlH2(OCH2CH2OCH3)2を反応容器に添加する。こうすることにより、局所的な反応を抑制し、不純物の少ない前記アミナール体および前記アミドアルデヒド体を得ることができる。
前記トリオン化合物をNaAlH2(OCH2CH2OCH3)2で還元する際の反応温度は、高選択的に反応を進行させる観点から、−100℃以上10℃以下が好ましく、さらに、−20℃以上5℃以下が好ましい。
その他、反応時間も、特に制限されるものではなく、原料となる前記トリオン化合物の消費量を確認し、適宜決定すればよい。
以上のような条件でNaAlH2(OCH2CH2OCH3)2、および前記トリオン化合物を接触させることにより、効率よく、前記アミナール体および前記アミドアルデヒド体を製造できる。得られた前記アミナール体および前記アミドアルデヒド体は、反応溶媒から取り出さず、そのまま次の還元反応を行うことができる。また、一旦、反応溶媒から取り出して、次の還元反応を行うこともできる。
(i)−2 NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2で還元した後の水素化ホウ素金属塩による還元
NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2を大過剰使用し、また反応温度等を高くすることにより、NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2のみで還元して、前記トリオン化合物からアミドアルコール化合物を得ることも可能である。ただし、製造コスト、温和な条件で反応を進める観点から、前記トリオン化合物をNaAlH2(OCH2CH2OCH3)2で一旦、前記アミナール体および前記アミドアルデヒド体とした後、該アミナール体および該アミドアルデヒド体を水素化ホウ素金属塩でさらに還元することが好ましい。前記アミナール体および前記アミドアルデヒド体を水素化ホウ素金属塩で還元することにより、
下記式(3)で示されるアミドアルコール化合物を製造できる。そのため、先ず、NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2で還元した後、次いで、水素化ホウ素金属塩で還元するという順序が非常に重要となる。例えば、先に水素化ホウ素ナトリウムで還元反応を行うと、特許文献1のように、不純物として該アミドアルコール化合物の光学異性体が増加する傾向にある。
水素化ホウ素金属塩としては、特に制限されるものではない。具体的には、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カルシウム等が挙げられる。これら水素化ホウ素金属塩は、1種類のものを使用できるし、複数種類のものを使用することもできる。複数種類のものを使用する場合には、合計量が基準となる。
前記水素化ホウ素金属塩の使用量は、前記アミナール体および前記アミドアルデヒド体が十分に還元できる量であれば、特に制限されるものではない。中でも、前記アミドアルコール化合物の収率、後処理のし易さ等を考慮すると、前記水素化ホウ素金属塩の使用量は、前記アミナール体および前記アミドアルデヒド体の合計1モルに対して、0.5〜10モルが好ましく、さらに0.5〜2モルが好ましい。
前記アミナール体および前記アミドアルデヒド体と前記水素化ホウ素金属塩とを接触させる場合には、反応溶媒中で実施することが好ましい。すなわち、反応溶媒中で両者を攪拌混合して接触させることが好ましい。この反応溶媒は、特に制限されるものではなく、前記の還元反応を促進できる溶媒であればよい。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル(2−メトキシエタノール)、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メチル−2−ブタノール等の炭素数1〜6のアルコール;1,2−ジメトキシエタンなどのエーテルがより好ましい。さらに、エタノール、2−プロパノールを使用することが好ましい。なお、これらの反応溶媒は、不可避的に含まれる水を含んでいてもよい。
反応溶媒の使用量も、特に制限されるものではなく、前記アミナール体および前記アミドアルデヒド体の合計1質量部に対して、その0.5〜100倍が好ましく、さらに、2〜20倍が好ましい。
前記アミナール体および前記アミドアルデヒド体と前記水素化ホウ素金属塩とを接触させる際の反応温度は、特に制限されるものではなく、−20℃以上100℃以下が好ましく、さらに、0℃以上60℃以下が好ましい。
前記アミナール体および前記アミドアルデヒド体を還元するための反応時間も、特に制限されるものではなく、前記アミナール体および前記アミドアルデヒド体の消費量、前記アミドアルコール化合物の生成量を確認し、適宜決定すればよい。
前記方法に従い、前記アミナール体および前記アミドアルデヒド体を還元することにより、前記アミドアルコール化合物を収率よく得ることができる。得られたアミドアルコール化合物は、公知の方法により、反応系内より取り出すことができる。具体的には、反応が完了した反応溶液中に、酸を加えて過剰の金属水素化物を分解する。次いで、水を加えて前記アミドアルコール化合物の結晶を析出させて取り出すか、反応溶媒を濃縮して適当な溶媒で前記アミドアルコール化合物を抽出し、濃縮、再結晶、乾燥等の操作を行い結晶として取り出すことができる。
(ii)水素化ホウ素カルシウムによる還元
従来技術においては、水素化ホウ素ナトリウムを使用して、前記トリオン化合物を還元し、前記アミドアルコール化合物を製造している。この水素化ホウ素ナトリウムと類似の物質であるが、水素化ホウ素カルシウムを使用することにより、光学異性体の不純物を低減できる。この理由としては、水素化ホウ素ナトリウムと比較して、水素化ホウ素カルシウムは、より低温で反応するという特徴があるからと考えられる。
水素化ホウ素カルシウムで還元することにより、一旦、前記アミノール体および前記アミドアルデヒド体が生成しているものと考えられる。ただし、この還元反応の系においては、反応が比較的速く進行するため、生成した前記アミノール体および前記アミドアルデヒド体は、直ぐに、前記アミドアルコール化合物になるものと考えられる。そのため、(ii)の方法においては、前記アミノール体および前記アミドアルデヒド体が生成したことを証明することは難しい。しかし、前記アミドアルコール化合物が多く得られることから、前記アミノール体および前記アミドアルデヒド体が生成した後、前記アミドアルコール化合物になると推定される。なお、下記の実施例で示すように、反応液を単離しない場合には、前記アミノール体は、高速液体クロマトグラフィーにて確認できる。
水素化ホウ素カルシウムは、以下のようにして製造できる。例えば、カルシウムのハロゲン化物と、水素化ホウ素の1価の金属塩(例えば、水素化ホウ素ナトリウム、又は水素化ホウ素カリウム)とを炭素数1〜4のアルコール類等の溶媒中で反応させることにより、水素化ホウ素カルシウムを製造できる。該反応には、カルシウムのハロゲン化物1モルに対して、2モルの「水素化ホウ素の1価の金属塩」を使用すればよい。具体的には、塩化カルシウム1モルに対して、2モルの水素化ホウ素ナトリウムを反応させることにより、1モルの水素化ホウ素カルシウムを合成できる。
得られた水素化ホウ素カルシウムは、上記方法で製造した後、一旦、精製して使用することもできるが、水素化ホウ素カルシウムは、不安定であるため、製造後は単離することなく、そのまま使用することが好ましい。
前記トリオン化合物を還元するためには、該トリオン化合物と水素化ホウ素カルシウムとを接触させればよい。
前記水素化ホウ素カルシウムの使用量は、前記トリオン化合物が十分に還元できる量であれば、特に制限されるものではない。中でも、前記アミドアルコール化合物の収率、後処理のし易さ等を考慮すると、前記水素化ホウ素カルシウムの使用量は、前記トリオン化合物1モルに対して、1〜10モルが好ましく、さらに1〜4モルが好ましい。なお、「水素化ホウ素カルシウム」は前記の方法で製造できる。該方法で製造した際、反応に使用したカルシウムのハロゲン化物と同じモル数の「水素化ホウ素カルシウム」が生成する。そのため、単離せずに「水素化ホウ素カルシウム」を使用する場合には、反応に使用したカルシウムのハロゲン化物のモル数を基準にして、還元に使用する「水素化ホウ素カルシウム」のモル数を決定すればよい。
前記トリオン化合物と前記水素化ホウ素カルシウムとを接触させる場合には、反応溶媒中で実施することが好ましい。すなわち、反応溶媒中で両者を攪拌混合して接触させることが好ましい。この反応溶媒は、特に制限されるものではなく、(i)−2 「水素化ホウ素金属塩による還元」で説明した反応溶媒と同じものを使用できる。中でも、炭素数1〜6のアルコールが好ましく、その中でも、エタノールが好ましい。
反応溶媒の使用量も、特に制限されるものではなく、前記トリオン化合物1質量部に対して、その1〜100倍が好ましく、さらに、2〜20倍が好ましい。なお、この反応溶媒の量には、水素化ホウ素カルシウムを生成した際の溶媒を含んでもよい。
前記トリオン化合物と前記水素化ホウ素カルシウムとを接触させる際の反応温度は、特に制限されるものではなく、−100℃以上100℃以下が好ましく、−30℃以上50℃以下がより好ましく、−10℃以上50℃以下がさらに好ましく、−10℃以上40℃以下が特に好ましい。
前記トリオン化合物を還元するための反応時間も、特に制限されるものではなく、前記アミナール体の消費量、前記アミドアルコール化合物の生成量を確認し、適宜決定すればよい。
前記方法に従い、前記トリオン化合物を還元することにより、前記アミドアルコール化合物を収率よく得ることができる。得られたアミドアルコール化合物は、公知の方法により、反応系内より取り出すことができる。具体的には、反応が完了した反応溶液に中に、酸を加えて過剰の金属水素化物を分解する。次いで、水を加えて前記アミドアルコール化合物の結晶を析出させて取り出すか、反応溶媒を濃縮して適当な溶媒で前記アミドアルコール化合物を抽出し、濃縮、再結晶、乾燥等の操作を行い結晶として取り出すことができる。
このようにして得られたアミドアルコール化合物からラクトン化合物を製造する。以下に、ラクトン化合物の製造方法について詳述する。
(ラクトン化合物の製造方法)
前記方法で得られたアミドアルコール化合物は、公知の方法でラクトン化合物とすることができる。具体的には、前記アミドアルコール化合物を酸により環化することにより、
下記式(4)
(式中、
R1、およびR2は、前記式(1)におけるものと同義である。)で示されるラクトン化合物を製造できる。
使用する酸は、特に制限されるものではなく、公知の酸を使用できる。具体的には、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、リン酸、酢酸などを挙げることができる。
前記アミドアルコール化合物と前記酸とは、接触させるために、両者を混合すればよい。混合においては、反応溶媒中で混合することが好ましい。反応溶媒は、前記アミノール体の製造方法で例示した溶媒を使用することができる。
使用する酸の量は、特に制限されるものではなく、通常、前記アミドアルコール化合物1モルに対して、0.1〜1000モルである。また、反応温度も、特に制限されるものではないが、−20〜110℃が好ましい。
以上のような方法に従えば、前記ラクトン化合物を製造することができる。得られたラクトン化合物は、適当な溶媒で抽出、濃縮、再結晶、及び乾燥等の操作を行い、反応系内から取り出すことができる。
(ラクトン化合物の好適な製造方法)
以上のような方法でラクトン化合物を製造できるが、ラクトン化合物の収率を改善し、反応に使用した反応溶媒の除去が容易となり、後処理工程の操作性を向上するためには、以下のような条件で環化することが好ましい。具体的には、前記式(3)で示されるアミドアルコール化合物を製造した後、該アミドアルコール化合物を、塩化水素の存在下、分子中の全炭素原子の数が2〜12であるアルキレングリコールモノアルキルエーテルを含む溶媒中で環化させることにより、前記ラクトン化合物を製造することが好ましい。
すなわち、分子中の全炭素原子数が2〜12であるアルキレングリコールモノアルキルエーテルを含む溶媒中で、前記アミドアルコール化合物と塩化水素とを接触させることにより、該アミドアルコール化合物を環化させて、前記ラクトン化合物を製造することが好ましい。
(ラクトン化合物の好適な製造方法;塩化水素)
ラクトン化合物の好適な製造方法は、塩化水素の存在下で実施することが好ましい。使用する塩化水素は、水を含む塩酸の状態で反応系内に導入することもできるし、塩化水素ガスを反応系内に導入することもできる。ただし、生産性、装置の簡便化を考慮すると、水を含む塩酸の状態で使用することが好ましい。塩酸を使用する場合、塩化水素が30〜40質量%であり、水が60〜70質量%である塩酸(ただし、水と塩化水素との合計は100質量%である)を使用できる。これら塩化水素、または塩酸は、市販のものを使用できる。
塩化水素の使用量は、特に制限されるものではないが、後処理工程を容易とし、反応を十分に進めるためには、前記アミドアルコール化合物1モルに対して、0.1〜100モルが好ましく、さらには、1〜10モルが好ましい。
(ラクトン化合物の好適な製造方法;反応溶媒(アルキレングリコールモノアルキルエーテル))
ラクトン化合物の好適な製造方法においては、分子中の全炭素数が2〜12であるアルキレングリコールモノアルキルエーテルを含む溶媒中で環化反応を行う。該アルキレングリコールモノアルキルエーテルを使用することにより、比較的短時間で反応が進み、かつ副生物の生成を抑制し、後処理工程を容易にすることができる。中でも、その除去をより容易とし、ラクトン化合物の収率をより高めるためには、分子中の全炭素数が2〜6であるアルキレングリコールモノアルキルエーテルを使用することが好ましい。
該アルキレングリコールモノアルキルエーテルは、下記式(A)
(式中、
R1Aは、炭素数1〜6のアルキル基であり、
R1Bは、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキルであり、nが2以上の場合、R1Bは同一の基であっても、異なる基であってもよく、
nは、1〜6の整数である。)で示されるアルコールであることが好ましい。すなわち、前記式(A)において、R1Aの炭素原子数と、nの繰り返し部分における炭素原子数との合計数が2〜12であり、さらには2〜6となることが好ましい。
R1Aは、炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基である。
R1Bは、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基である。また、nが2以上の場合、R1Bは、同一の基であっても、異なる基であってもよい。異なる基である場合には、例えば、一方が水素原子であり、他方が炭素数1〜6のアルキル基であってもよい。
また、nは、1〜6の整数であり、好ましくは1〜2の整数である。
具体的なアルキレングリコールモノアルキルエーテルを例示すると、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ヘキシルオキシエタノール、2−イソブトキシエタノール、2−フェノキシエタノール、2−メトキシ−1−プロパノール等が挙げられる。中でも、ラクトン化合物の収率、取り扱い易さ、除去のし易さを考慮すると、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−メトキシ−1−プロパノールを使用することが好ましい。
ラクトン化合物の好適な製造方法において、前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルの使用量は、特に制限されるものではなく、反応系内が十分に攪拌混合できるだけの量を使用すればよい。中でも、操作性、除去のし易さを考慮すると、23℃における前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルの使用量は、前記アミドアルコール化合物1gに対して、0.5〜20mlが好ましく、さらには1〜10mlが好ましい。
ラクトン化合物の好適な製造方法においては、反応溶媒は、主成分が前記アルキレングルコールモノアルキルエーテルであれば、環化反応に悪影響を及ぼさない範囲でその他の溶媒を含んでもよい。例えば、塩化水素を塩酸として反応系内に存在させる場合には、反応溶媒として水を含んでいてもよい。また、その他、前記アミドアルコール化合物に含まれる溶媒を含むこともできるし、不可避的に混入する溶媒を含むこともできる。ただし、本発明の効果を考慮すると、反応溶媒を100体積%としたとき、前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルを90〜100体積%、その他の溶媒を0〜10体積%とすることが好ましい。
(ラクトン化合物の好適な製造方法;その他の反応条件)
ラクトン化合物の好適な製造方法においては、塩化水素と前記アミドアルコール化合物とを前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含む反応溶媒中で接触させるため、撹拌混合することが好ましい。反応系内に、前記アミドアルコール化合物、塩化水素、および前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含む反応溶媒を導入する方法は、特に制限されるものではない。例えば、前記アミドアルコール化合物を前記反応溶媒に溶解させておき、撹拌混合しながら、そこに塩化水素(塩酸)を加えることができる。
前記アミドアルコール化合物を環化させてラクトン化合物とする際の温度(反応温度)は、特に制限されるものではないが、反応を十分に進行させる観点から、10〜200℃が好ましく、さらには50〜120℃が好ましい。
反応時間は、特に制限されるものではなく、前記アミドアルコール化合物の消費量、前記ラクトン化合物の生成量を確認し、適宜決定すればよい。通常であれば、1分間〜20時間であればよく、10分間〜2時間であることが好ましい。
また、反応時の雰囲気も特に制限されるものではなく、空気雰囲気下、または不活性ガス雰囲気下の何れであってもよい。操作性を考慮すると、空気雰囲気下で実施することが好ましい。また、反応時の圧力も特に制限されるものではなく、加圧下、大気圧下、減圧下の何れであってもよい。こちらも操作性を考慮すると、大気圧下で実施することが好ましい。
(ラクトン化合物の好適な製造方法;ラクトン化合物の取り出し)
得られたラクトン化合物は、特に制限されるものではないが、以下の方法により反応系外に取り出すことが好ましい。すなわち、反応液に水を加え、その中で結晶として取り出す方法を採用することが好ましい。前記ラクトン化合物を含む反応液に加える水の量は、特に制限されるものではないが、得られるラクトン化合物の純度を高くするためには、反応液に含まれる水の全量が、ラクトン化合物1gに対して、5〜50mlとなることが好ましく、さらに1〜10mlとなることが好ましい。なお、この水の全量には、例えば、塩酸を使用した場合の水も含まれるものとする。
ラクトン化合物の結晶を析出させる際の温度は、特に制限されるものではないが、純度のより高いラクトン化合物を得るためには、10〜40℃が好ましく、20〜35℃がより好ましい。
ブタノールを使用している従来技術においては、ブタノールが水と混合し難く、相分離を生じてしまう場合があった。そのため、ラクトン化合物を反応系外に取り出すには、沸点の高いブタノールを留去する必要があり、このことが操作性を低下させる一因となる場合があった。これに対し、ラクトン化合物の好適な製造方法では、水に対する溶解性の高い前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルを使用しているため、反応系内に水を導入しても相分離することなく、その中でラクトン化合物の結晶を析出できる。その結果、操作性よく、純度の高いラクトン化合物を取り出すことができる。
取り出したラクトン化合物の結晶は、公知の方法で精製、乾燥を行えばよい。
このようにして得られたラクトン化合物を硫化してチオラクトン化合物を製造し、該チオラクトン化合物からビオチンを製造する。以下に詳述する。
(チオラクトン化合物の製方法)
前記方法、又は公知の方法で得られたラクトン化合物は、公知の方法でチオラクトン化合物とすることができる。具体的には、前記ラクトン化合物を硫化剤と反応させることにより、
下記式(5)
(式中、R1およびR2は、前記式(1)におけるものと同義である。)で示されるチオラクトン化合物を製造できる。
使用する硫化剤としては、特に制限されるものではなく、公知の硫化剤を使用できる。具体的には、チオ酢酸カリウム、キサントゲン酸カリウム、水硫化ナトリウム、チオアセトアミド等を挙げることができる。
前記アミドアルコール化合物と前記硫化剤とを、接触させるためには、両者を混合すればよい。混合においては、反応溶媒中で混合することが好ましい。反応溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等を使用できる。
使用する硫化剤の量は、特に制限されるものではなく、通常、前記ラクトン化合物1モルに対して、1〜10モルでよい。また、反応温度も、特に制限されるものではないが、50〜200℃が好ましい。
以上のような方法に従えば、前記チオラクトン化合物を製造できる。得られたチオラクトン化合物は、適当な溶媒で抽出、濃縮、再結晶、及び乾燥等の操作を行い、反応系内から取り出すことができる。
(ビオチンの製造方法)
前記チオラクトン化合物は、それを原料として、下記式(6)
で示されるビオチンを製造できる。
前記チオラクトン化合物からビオチンを製造する方法は、公知の方法を採用できる。具体的には、特許文献1、その特許文献のファミリー特許である特公昭53−35076号公報および特公昭55−16435号公報、または特開2000−191665号公報の方法に従い実施すればよい。
具体的には、グリニヤール反応により側鎖を導入し、脱水、水素添加する。次いで、ハロゲン化水素によりスルホニウム塩とし、マロン酸ジエチルと反応させ、加水分解脱炭酸し、N1,N3−置換基を除去することにより、前記ビオチンを製造できる(特許文献1、特公昭53−35076号公報、特公昭55−16435号公報参照。)。
また、側鎖に該当する亜鉛試薬(亜鉛試薬:X−Zn−CH2−Q−Y、式中、X:ハロゲン原子、Q:例えば、トリメチレン基、Y:例えば、エステル基)を前記チオラクトン化合物に付加反応させた後、加水分解し、脱水を行う。次いで、還元、および必要に応じてR1、およびR2の脱保護反応を行うことにより、前記ビオチンを製造できる(特開2000−191665号公報参照)。
以上のような方法でビオチンを製造できる。本発明の実施形態によれば、ビオチンの中間体である、前記アミドアルコール化合物の収率を向上できるため、最終的に得られるビオチンも効率よく製造できる。また、前記アミドアルコール化合物、および前記ラクトン化合物を本明細書に記載した好適な方法で製造することにより、より一層、操作性を向上でき、最終的にビオチンをより効率よく製造できる。
以下に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、具体例であって、本発明はこれらにより限定されるものではない。
製造例1
下記式で示される反応を行い、トリオン化合物を準備した。
ジカルボン酸(100g;前記式の左側の化合物)、(R)−(+)−1−メチルベンジルアミン(90.2g)およびo−キシレン(400mL;キシレンの沸点144.4℃)の混合物を10時間、加熱環流した。反応液を減圧留去後、濃縮残渣を220℃で、1時間、加熱後2−プロパノールを加えて結晶化し、濾過することにより、トリオン化合物(前記式の右側の化合物:112g、90%)を得た。トリオン化合物の融点(mp)は157〜159℃であった。
参考例1
(i)−1 NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2による還元
次いで、製造例1で製造したトリオン化合物を使用して、下記式で示されるアミナール体を以下の条件で製造した。
トリオン化合物(1.32g)のテトラヒドロフラン:THF(10mL)溶液に、NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2のトルエン溶液(70質量%、866mg)を、反応温度が−10℃となるようにして加えた。同温で5時間、撹拌混合した後、反応液に塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した。生成物を酢酸エチルで抽出し、水洗、乾燥、減圧濃縮することによりアミナール体(1.26g、95%)を油状物として得た。
分析結果
MS(質量分析):442(M++1)。
IR(KBr):ν3332,1699cm-1。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 7.35-6.99(m,15H),5.38-5.32 and 5.28-5.22(m,1H), 5.12-5.02(m,2H),4.78-4.72 and 4.40-4.35(m,1H),4.06-4.00(m,1H),3.88-3.83(m,1H),3.75-3.65(m,2H),1.80-1.60(m,3H)。
(i)−2 水素化ホウ素金属塩による還元
次いで、アミナール体を還元して下記式のアミドアルコール化合物を下記の条件で製造した。
前記方法と同様の操作を行い製造したアミナール体(1.32g)を2−プロパノール(13mL)に溶かし、水素化ホウ素ナトリウム(113mg)を加えて40℃で10時間、撹拌混合した。反応終了後、5質量%塩酸(4mL)を20℃以下で徐々に反応系内に加えた。析出結晶を濾過することによりアミドアルコール化合物(998mg、75%)を得た。得られたアミドアルコール化合物の融点(mp)は113〜116℃であり、MS:444(M++1)であった。
参考例2
(ii)水素化ホウ素カルシウムによる還元
製造例1で製造したトリオン化合物を下記に示す条件で還元してアミドアルコール化合物を製造した。
塩化カルシウム(333mg;3mmol)を2−プロパノール(13mL)に縣濁し、水素化ホウ素ナトリウム(227mg;6mmol)を−10℃で加えた(水素化ホウ素カルシウム;3mmolを生成した。)。同温で30分撹拌後、製造例1で得たトリオン化合物(1.32g:3mmol)を−10℃で加えた。-10℃で5時間、撹拌混合しながら、徐々に40℃まで昇温した後、40℃で5時間、さらに攪拌混合した。反応液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で各成分の面積割合を確認したところ、トリオン化合物の転化率(反応にかかわった割合)95%であり、目的物のアミドアルコール化合物/その目的物の異性体(以下、単に「異性体比」とする)=75/25であり、中間体であるアミナール体は0.6%であった。
反応終了後、5質量%塩酸(4mL)を20℃以下の温度として徐々に加えた。析出結晶を濾過することによりアミドアルコール化合物(931mg、70%)を得た。得られたアミドアルコール化合物の融点は113−116℃であり、MS:444(M++1)であった。
実施例3(ラクトン化合物の製造)
下記に示す反応式に従い、以下の条件でラクトン化合物を製造した。
参考例2と同様の操作を行い製造したアミドアルコール化合物(1.33g)を1,4−ジオキサン(5mL)に縣濁し、濃塩酸(0.5mL)を加えて、5時間加熱環流した。反応後、反応液を室温まで冷却後水洗濃縮することによりラクトン化合物(967mg, quant.)を得た。mp:115〜120℃。
実施例4(チオラクトン化合物の製造)
下記の反応式に従い、以下の条件でチオラクトン化合物を製造した。
実施例3と同様の操作を行い製造した前記ラクトン化合物(3.22g)のN,N−ジメチルアセトアミド(5mL)溶液に、チオ酢酸カリウム(1.52g)を加え、150℃で1時間、撹拌混合撹拌した。反応終了後、水(17mL)を60℃で加え、室温まで徐々に冷却後、10℃以下で1時間、撹拌混合した。得られた固体を濾取後メタノールから再結晶することによりチラクトン化合物(2.87g、85%)を得た。mp:126℃。
実施例5(ビオチンの製造)
下記の反応式に従い、以下の条件でビオチンを製造した。
亜鉛末(9.3g)のTHF(18mL)およびトルエン(12ml)縣濁液に、臭素(5.8g)を40℃以下で加えた。さらに、5−ヨードペンタン酸エチルエステル(18.6g)を1時間かけて加えた。同温で1時間、撹拌混合した後、実施例4と同様の操作を行い製造したチオラクトン化合物(17.6g)、トルエン(36mL)、ジメチルホルムアミドDMF(4.4ml)、10質量%Pd/C(0.5g)を加えて、28℃から40℃の温度範囲で5時間、撹拌混合した。反応終了後、反応液に18質量%塩酸水(34mL)を加えて室温で1時間、撹拌混合した。有機層を分離し水洗、乾燥後、減圧濃縮した。
濃縮残渣をメタノール(160ml)および水(44mL)の混合液に溶かし、Pd(OH)2/C(50質量%ウエット、1.6g)を加えて、110℃、水素圧0.9MPaで12時間、接触還元した。反応終了後、反応液を濾過後、濾液に31質量%NaOH水溶液(19g)を加えて40℃で2時間、撹拌混合した。
水素付加反応終了後、反応液に10質量%塩酸を加えてpH1とした。メタノールを減圧留去し、生成物を酢酸エチルで抽出、水洗、濃縮した。
濃縮残渣にメタンスルホン酸(1.2g)およびメシチレン(1.2mL)を加えて135℃で3時間、撹拌混合した。反応液を85℃まで冷却後、分液し、下層を水(8ml)中に注入した。この混合液を10℃以下で1時間、撹拌混合した後、析出した結晶を濾過することによりビオチン(10.7g、85%)を得た。mp:231〜232℃。
<製造例2>
下記式で示されるウレイド化合物から同じ反応容器内でトリオン化合物を製造した場合の例である。
(ウレイド化合物から無水化合物を製造する方法;脱水反応)
3口ナスフラスコにcis−1,3−ジベンジル−2−オキソ−4,5−イミダゾリジンジカルボン酸(200.0g、564.4mmol ウレイド化合物)、メシチレン(600.0mL;沸点165℃)を仕込んだ。3口ナスフラスコにDean−Stark管と冷却管を取り付け、窒素を1分流し窒素置換をした。185℃で加熱、環流、攪拌した。Dean−Stark管に溜まった水は適時除去した。合計3時間以上加熱した。反応の進行は反応液を0.1〜0.2mL抜き出し、2mLのメタノールを加え、さらに5MのNaOMeメタノール液を数滴加えるメタリシス処理を行なったサンプルを用いてHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で確認した(無水化合物が合成されているのを確認した。)。この脱水反応により、沸点が140℃以上の芳香族炭化水素系溶媒と前記無水化合物とを含む第二反応溶液を準備した。第二反応溶液は、前記無水化合物1g当たり、メシチレンを3mL含むものであった。
(無水化合物と光学活性アミン化合物との反応)
前記3口ナスフラスコに滴下ロートを取り付け、(R)−(+)−1−メチルベンジルアミン(65.6g、536.2mmol、0.95当量 光学活性アミン化合物)を前記3口ナスフラスコ中に仕込んだ。つまり、第二反応溶液を185℃に加熱、撹拌したまま、2時間30分かけて、該第二反応溶液中に該光学活性アミン化合物を滴下した。瞬時に反応が完了した。無水化合物が消費された(アミド体Iおよびアミド体IIを含む混合物が生成した)のは、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で確認した。また、この際、アミド体Iおよびアミド体IIを含む混合物は、溶液中に析出しなかった。以上の方法を行うことにより、前記混合物、およびメシチレンを含む第一反応溶液を準備した。この時、第一反応溶液は、前記混合物1g当たり、メシチレンを3mL含むものであった。
(混合物の脱水反応)
光学活性アミン化合物の滴下終了後さらに、撹拌しながら第一反応溶液を3時間30分加熱した。そして、Dean−Stark管にさらに水が溜まらないことを確認した。前記混合物が消費された(トリオン化合物が生成した)のは、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で確認した。
(トリオン化合物の取り出し、精製)
その後、このDean−Stark管からメシチレンを合計200mL抜き出した。反応器内の温度を100℃以下に下げた。攪拌しながらイソプロピルアルコールを700mL加えた。温度を80℃に保ちながら、さらに水を280mL滴下した。その後、種晶を加え、さらに、水を220mL加えた。その後、23℃まで放冷して24時間撹拌し、得られた結晶をろ過した。
ろ取した結晶を5℃以下に冷却したイソプロピルアルコール75mLと水25mL混合液で洗浄した。洗浄した結晶を60℃で23時間30分真空乾燥することにより、目的のトリオン化合物を205.2g得た(466.9mmmol、収率87%)。mp:157℃、IR(KBr):1780、1705、1680cm−1。
製造参考例1
3口ナスフラスコにcis−1,3−ジベンジル−2−オキソ−4,5−イミダゾリジンジカルボン酸(20.0g、56.4mmol ウレイド化合物)、トルエン(80mL)を仕込んだ。3口ナスフラスコにDean−Stark管と冷却管を取り付け、窒素を1分流し窒素置換をした。110℃で加熱、環流、攪拌した。Dean−Stark管に溜まった水は適時除去した。合計10時間以上加熱した。この時点で、無水化合物が多量に析出し撹拌困難となった。
前記方法で得られた無水化合物と(R)−(+)−1−メチルベンジルアミン(光学活性アミン化合物)とを以下の条件で反応させた。すなわち、該無水化合物(50g)をトルエン(20mL)に縣濁し(R)−(+)−α−メチルベンジルアミン(18.9g)を加えて110℃でDean−Stark管を用いて環流脱水した。2時間経過した時、反応溶液中でアミド体Iおよびアミド体IIを含む混合物の結晶が析出し、撹拌が困難となった。
比較例1
製造例2で得られたトリオン化合物(1g;2.28mmol)をエタノール(500mL)に溶かし、水素化ホウ素ナトリウム(2.28mmol;0.19g(純度90%)を氷冷下で反応系内に仕込み、反応温度23℃で16時間撹拌した。その後、反応温度を50℃として2時間攪拌混合した。得られた反応液をHPLCで分析した。トリオン化合物の転化率:100%、異性体比:61/39、アミナール体:0%であった。
参考例6
製造例2で得られたトリオン化合物を使用した以外は、参考例2と同様の操作を行った。得られたアミドアルコール化合物の収率等は、参考例2と同じ結果であった。
実施例7(水素化ホウ素カルシウムによる還元)
ナスフラスコに塩化カルシウム(68.26mmol、7.97g(純度95%))とエタノール(180mL、純度99.4%)を入れて超音波を用いて溶かした。氷浴につけて5分以上攪拌した。氷浴で冷やしたまま、水素化ホウ素ナトリウム(136.51mmol、5.74g(純度90%))を加えた。そのまま氷浴で20分攪拌して水素化ホウ素カルシウムを製造した。
次いで、製造例2に記載の方法で製造したトリオン化合物(30.0g、68.26mmol)を仕込み、室温(23℃)で16時間攪拌した。50℃に温度を上げて2時間攪拌した。得られた反応液をHPLCで分析した。トリオン化合物の転化率:100%、異性体比:75/25、アミナール体:0.6%であった。
反応液に水(270mL)と酢酸(15mL)を加えた。反応液をろ過した。得られた固体を60℃で6時間以上真空乾燥した。本品を含水メタノールから再結晶することによりアミドアルコール化合物を得た(収量:18.8g収率:62%)。
実施例8(水素化ホウ素カルシウムによる還元)
実施例7において、トリオン化合物を仕込んだ後、反応温度を23℃、反応時間を16時間とした以外は、実施例7と同様の操作を行った。得られた反応液をHPLCで分析した結果は、トリオン化合物の転化率:100%、異性体比:78/22、アミナール体:3.4%であった。
実施例9(水素化ホウ素カルシウムによる還元)
実施例7において、塩化カルシウム(204.78mmol、23.91g(純度95%))、水素化ホウ素ナトリウム(409.53mmol、17.22g(純度90%))、反応温度を23℃、反応時間を室温16時間とした以外は、実施例7と同様の操作を行った。得られた反応液をHPLCで分析した結果は、トリオン化合物の転化率:100%、異性体比:75/25、アミナール体:2.4%であった。
実施例10(水素化ホウ素カルシウムによる還元)
実施例7において、塩化カルシウム(136.52mmol、15.94g(純度95%))、水素化ホウ素ナトリウム(273.02mmol、11.48g(純度90%))、反応温度を23℃、反応時間を室温16時間とした以外は、実施例7と同様の操作を行った。得られた反応液をHPLCで分析した結果は、トリオン化合物の転化率:100%、異性体比:80/20、アミナール体4.95%であった。
実施例11(水素化ホウ素カルシウムによる還元)
実施例10において、反応温度を室温(23℃)、反応時間を16時間とし、次いで反応温度を50℃、反応時間を2時間とした以外は、実施例10と同様の操作を行った。得られた反応液をHPLCで分析した結果は、トリオン化合物の転化率:100%、異性体比:77/23、アミナール体:0.51%であった。
実施例12(水素化ホウ素カルシウムによる還元)
実施例7において、塩化カルシウム(51.20mmol、5.98g(純度95%))、水素化ホウ素ナトリウム(102.38mmol、4.305g(純度90%))、反応温度を室温23℃、反応時間を16時間とした以外は、実施例7と同様の操作を行った。得られた反応液をHPLCで分析した結果は、トリオン化合物の転化率:98%、異性体比:78/22、アミナール体:7.65%であった。
実施例13(水素化ホウ素カルシウムによる還元)
実施例12において、反応温度を室温(23℃)、反応時間を16時間とし、次いで反応温度を50℃、反応時間を2時間とした以外は、実施例12と同様の操作を行った。得られた反応液をHPLCで分析した結果は、トリオン化合物の転化率:99%、異性体比:77/23、アミナール体:4.94%であった。
実施例14(水素化ホウ素カルシウムによる還元)
実施例7において、塩化カルシウム(34.13mmol、3.99g(純度95%))、水素化ホウ素ナトリウム(68.25mmol、2.87g(純度90%))、反応温度を室温23℃、反応時間を16時間とした以外は、実施例7と同様の操作を行った。得られた反応液をHPLCで分析した結果は、トリオン化合物の転化率:99%、異性体比:80/20、アミナール体:16.83%であった。
実施利15(水素化ホウ素カルシウムによる還元)
実施例14において、反応温度を室温(23℃)、反応時間を16時間とし、次いで反応温度を50℃、反応時間を2時間とした以外は、実施例14と同様の操作を行った。得られた反応液をHPLCで分析した結果は、トリオン化合物の転化率:99%、異性体比:80/20、アミナール体:16.83%であった。
参考例6、実施例7〜15の結果を表1にまとめた。
参考例16
実施例7において、エタノールの代わりにn−プロパノールを使用した以外は、実施例7と同様の操作を行った。反応液をHPLCで分析した結果は、転化率:100%、異性体比:75/25、アミナール体:6.94%であった。
参考例17
実施例7において、エタノールの代わりに1−メトキシ−2−プロパノールを使用した以外は、実施例7と同様の操作を行った。反応液をHPLCで分析した結果は、転化率:100%、異性体比:70/30、アミナール体:0.05%であった。
参考例18
実施例7において、エタノールの代わりに1−メチル−2−ブタノールを使用した以外は、実施例7と同様の操作を行った。反応液をHPLCで分析した結果は、転化率:100%、異性体比:80/20、アミナール体:8.63%であった。
参考例19
実施例7において、エタノールの代わりに2−メトキシエタノールを使用した以外は、実施例7と同様の操作を行った。反応液をHPLCで分析した結果は、転化率:100%、異性体比:75/25、アミナール体:7.88%であった。
以上の実施例7、参考例16〜19、参考に比較例1の結果を表2にまとめた。
実施例20(ラクトン化合物の製造)
実施例7と同様の操作を行い、得られたアミドアルコール化合物を使用して以下の反応を行った。
3口ナスフラスコに、参考例6で得られたアミドアルコール化合物(235.0g、含水量17質量%、440mmol)と、アルキレングリコールモノアルキルエーテルとして、2−メトキシエタノール940mLと、36質量%塩酸(115.9g、塩化水素 1140mmol、前記アミドアルコール化合物1モルに対して2.6モル使用)を仕込んだ。
予め温めていたオイルバスに、前記3口ナスフラスコを入れて加熱した。内温105℃で10分間攪拌した。攪拌したまま25℃〜30℃に冷却し、水(940mL)を5分以上かけてゆっくりと加えた後、室温(25℃)で一晩攪拌して、前記式で示されるラクトン化合物を反応液中に析出させた。得られた反応液をガラスフィルター漏斗でろ過して、前記ラクトン化合物の結晶を得た。得られた結晶に水(200mL)を加えて、かき混ぜろ過した。同じ操作を6回行い結晶の洗浄を行なった。最後に、結晶に水(600mL)を加えてかき混ぜろ過した。ろ液のpHと、洗浄に使用している水のpHの差が0.5以下であることを確認した。得られた結晶を80℃で1日真空乾燥した。目的のラクトン化合物を136.5g得た(423.5mmol、収率96%)。
得られたラクトン化合物の分析値;mp:100〜101℃、IR(Nujol):1775cm−1であり、目的とするラクトン化合物であることが確認できた。
実施例21(ラクトン化合物の製造)
実施例20と同じ反応を行った。3口ナスフラスコに実施例20と同じアミドアルコール化合物(実施例7と同様の方法で製造したアミドアルコール化合物; 5.00g、含水量17%、9.4mmol)と、アルキレンモノアルキルエーテルとして2−ブトキシエタノール(20mL)と、36質量%の塩酸(2.47g、塩化水素 24mmol 前記アミドアルコール化合物1モルに対して2.6モル使用)を仕込んだ。
予め温めておいたオイルバスに該3口ナスフラスコを入れて加熱した。内温105℃で1時間攪拌した。攪拌したまま30℃に冷却し、水(40mL)を5分以上かけてゆっくりと加え、室温(25℃)で一晩攪拌して、前記式で示されるラクトン化合物の結晶を反応液中に析出させた。
反応液をガラスフィルター漏斗でろ過して結晶を得た。得られた結晶に水(50mL)を加えてかき混ぜろ過した。さらに水(100mL)を加えて、結晶と水とをかき混ぜろ過した。得られた結晶を80℃で1日真空乾燥した。目的のラクトン化合物を2.30g得た(7.14mmol、収率76%)。
得られたラクトン化合物の分析値;mp:99〜101℃、IR(Nujol):1775cm−1であり、目的とするラクトン化合物であることが確認できた。
実施例22(ラクトン化合物の製造)
実施例20と同じ反応を行った。3口ナスフラスコに実施例20と同じアミドアルコール化合物(実施例7と同様の方法で製造したアミドアルコール化合物; 4.15g、9.4mmol)と、アルキレンモノアルキルエーテルとして2−メトキシ−1−プロパノール(8.3mL)と、36質量%の塩酸(2.07g、塩化水素 20.4mmol 前記アミドアルコール化合物1モルに対して2.2モル使用)を仕込んだ。
予め温めておいたオイルバスに該3口ナスフラスコを入れて加熱した。内温100℃で15分間攪拌した。攪拌したまま30℃に冷却し、水(83mL)を5分以上かけてゆっくりと加え、室温(25℃)で2時間攪拌して、前記式で示されるラクトン化合物の結晶を反応液中に析出させた。
反応液をガラスフィルター漏斗でろ過して結晶を得た。得られた結晶に水(20mL)を加えてかき混ぜろ過した。得られた結晶を60℃で17時間、送風乾燥した。目的のラクトン化合物を2.96g得た(9.18mmol、収率98%)。
得られたラクトン化合物の分析値;mp:100〜101℃、IR(Nujol):1775cm−1であり、目的とするラクトン化合物であることが確認できた。
実施例23(ラクトン化合物の製造)
実施例20と同じ反応を行った。3口ナスフラスコに実施例20と同じアミドアルコール化合物(実施例7で製造したアミドアルコール化合物 40.00g、90mmol)と、ブタノール(400mL)と、36質量%の塩酸(93.5g、塩化水素 900mmol 前記アミドアルコール化合物1モルに対して10モル使用)を仕込んだ。
内温110℃で4時間攪拌した。反応終了後、反応液に6N NaOH水(90mL)を加えて中和した。得られた混合物を分液し、有機層を水洗後減圧濃縮した。濃縮残渣を酢酸エチルで抽出し、再度水洗後減圧濃縮した。濃縮残渣は結晶化しなかったので、シリカゲルカラムクロマト(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=3:1)で精製することにより目的とするラクトン化合物20g(68%)得た。