JP2021074722A - プレス成形方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】平面視で長手方向に沿って湾曲するプレス成形品に曲げ成形によりプレス成形するプレス成形方法を提供する。【解決手段】本発明に係るプレス成形方法は、ダイ21とパンチ23とを用いて、プレス成形品1を曲げ成形によりプレス成形するものであって、ダイ21は、プレス成形品1の長手方向中央の中央部13を成形する中央部ダイ25と、プレス成形品1の長手方向両端側の両端部15を成形するともに、湾曲内側のフランジ部9に長手方向両端に向かう張力を付与する段差部9aを形成する両端部ダイ27と、を備えてなり、両端部ダイ27に先行して中央部ダイ25を成形下死点まで相対移動させて中央部13を曲げ成形する第1成形ステップと、両端部ダイ27を成形下死点まで相対移動させて、両端部15を成形するとともに湾曲内側のフランジ部9の長手方向両端側に段差部9aを形成する第2成形ステップと、を備えたことを特徴とするものである。【選択図】 図1

Description

本発明は、プレス成形方法に関し、特に、平面視で長手方向に沿って湾曲する断面ハット形状のプレス成形品のプレス成形方法に関する。
一般に、プレス成形品のプレス成形過程において生じるしわ対策としては、プレス成形過程における材料流入を抑制するために、例えば絞り成形においては、ダイとブランクホルダーとでブランクを挟持するクッション圧を増加させて成形する技術や、非特許文献1に開示されているように、材料流入に伴ってブランクの板厚が増加する部位にビードなどの形状を設ける技術が適用されている。
薄鋼板成形技術研究会編、プレス成形難易ハンドブック第4版、「第5章 面形状精度不良と成形難易評価」、pp.244−247、日刊工業新聞社、(2017)
図3(a)に例示するような、天板部33と、天板部33から連続する縦壁部35及び縦壁部37と、縦壁部35及び縦壁部37のそれぞれから連続するフランジ部39及びフランジ部41とを有してなる断面ハット形状であり、平面視で長手方向に沿って湾曲するプレス成形品31は、そのプレス成形過程において、湾曲の内側にあるフランジ部39の長手方向中央に向かって材料が流入し、フランジ部39の幅方向先端部にしわが発生しやすいという問題がある。
このようなプレス成形品31のしわ発生を抑制するために、前述のとおり、ダイとブランクホルダーとによりブランクにおけるフランジ部に相当する部位を挟持するクッション圧を増加させてドロー成形することで、湾曲内側のフランジ部39における材料流入を抑制してしわの発生を抑制することができるといった効果がある。しかしながら、その反面、プレス成形品31におけるパンチ肩R部34に割れが発生するという課題があった。そのため、ドロー成形ではなく曲げ成形によりプレス成形品をプレス成形することが望まれる場合があった。
また、非特許文献1に開示されているように、プレス成形過程においてしわが発生しやすい部位にしわ取り形状としてのビードを形成する技術は、プレス成形品の製品形状の変更を伴うものであるため、しわ発生の対策として適用することができない場合があった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、製品形状の変更を要せずに割れを防止しつつ、曲げ成形により平面視で湾曲するハット断面形状のプレス成形品をプレス成形するプレス成形方法を提案することを目的とする。
(1)本発明に係るプレス成形方法は、ダイ及びパンチを用いて、ブランクを、天板部と、該天板部から連続する縦壁部と、該縦壁部から連続するフランジ部とを有してなる断面ハット形状であり、平面視で長手方向に沿って湾曲するプレス成形品に曲げ成形によりプレス成形するものであって、前記ダイは、前記プレス成形品における長手方向の中央部を成形する中央部ダイと、前記中央部を挟んで前記プレス成形品の長手方向両端側を成形するともに、該両端部を成形する過程において、前記ブランクにおける湾曲内側のフランジ部に相当する部位に長手方向両端に向かう張力を付与する形状の張力付与形状部を前記湾曲内側のフランジ部の長手方向両端側に形成する両端部ダイと、を備えてなり、前記両端部ダイに先行して前記中央部ダイを前記パンチ側に成形下死点まで相対移動させて前記プレス成形品の中央部を曲げ成形し、該中央部における前記湾曲内側のフランジ部に生じる材料余りを長手方向両端側に逃がす第1成形ステップと、前記中央部ダイを成形下死点に保持して前記中央部を押さえた状態で、前記両端部ダイを前記パンチ側に成形下死点まで相対移動させて、前記両端部を成形するとともに該両端部における前記湾曲内側のフランジ部の長手方向両端側に前記張力付与形状部を形成することにより、前記第1成形ステップにおいて前記湾曲内側のフランジ部に生じた材料余りを長手方向両端側に伸ばしながら前記両端部における湾曲内側のフランジ部を成形する第2成形ステップと、を備えたことを特徴とするものである。
(2)本発明に係るプレス成形方法は、ダイ及びパンチを用いて、ブランクを、天板部と、該天板部から連続する縦壁部と、該縦壁部から連続するフランジ部とを有してなる断面ハット形状であり、平面視で長手方向に沿って湾曲するプレス成形品に曲げ成形によりプレス成形するものであって、前記ダイは、前記プレス成形品における長手方向の中央部を成形する中央部ダイと、前記中央部を挟んで前記プレス成形品の長手方向両端側を成形するともに、該両端部を成形する過程において、前記ブランクにおける天板部及び湾曲内側のフランジ部それぞれに相当する部位に長手方向両端に向かう張力を付与する形状の張力付与形状部を前記天板部及び湾曲内側のフランジ部それぞれの長手方向両端側に形成する両端部ダイと、を備えてなり、前記両端部ダイに先行して前記中央部ダイを前記パンチ側に成形下死点まで相対移動させて前記プレス成形品の中央部を曲げ成形し、該中央部における前記湾曲内側のフランジ部に生じる材料余りを長手方向両端側に逃がす第1成形ステップと、前記中央部ダイを成形下死点に保持して前記中央部を押さえた状態で、前記両端部ダイを前記パンチ側に成形下死点まで相対移動させて、前記両端部を成形するとともに該両端部における前記天板部及び湾曲内側のフランジ部それぞれの長手方向両端側に前記張力付与形状部を形成することにより、前記第1成形ステップにおいて前記湾曲内側のフランジ部に生じた材料余りを長手方向両端側に伸ばしながら前記両端部における湾曲内側のフランジ部を成形する第2成形ステップと、を備えたことを特徴とするものである。
(3)上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記第1成形ステップにおいて形成する張力付与形状部は、プレス成形方向に段差状に凹んだ段差部であることを特徴とするものである。
(4)上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記第1成形ステップにおいて形成する張力付与形状部は、前記プレス成形品の湾曲から所定角度の方向に延在する凸状又は凹状のビード部であることを特徴するものである。
本発明においては、平面視で長手方向に沿って湾曲するプレス成形品を曲げ成形によりプレス成形するに際し、該プレス成形品の長手方向の中央部を成形した後に長手方向の両端部側を成形することで、ブランクにおける前記プレス成形品の湾曲内側のフランジ部に相当する部位における長手方向両端から中央への材料の流入を拘束するとともに長手方向中央から両端に向かって張力を付与することで、該湾曲内側のフランジ部における圧縮応力を緩和し、しわが発生しやすい前記湾曲内側のフランジ部の長手方向中央を平坦に成形することができ、該湾曲内側のフランジ部におけるしわ発生を抑制してプレス成形することができる。
本発明の実施の形態に係るプレス成形方法によりプレス成形されるプレス成形品と、該プレス成形品の湾曲内側のフランジ部に発生するしわを抑制することができる理由を説明する図である((a)プレス成形品の斜視図、(b)プレス成形品とダイ及びパンチのA−A断面図)。 本発明の実施の形態に係るプレス成形方法において用いる中央部ダイ及び両端部ダイとパンチの一例を示す図である。 本発明で成形対象とするプレス成形品のプレス成形過程において発生するしわと、該しわの発生を抑制する手段について説明する図である((a)しわ発生、(b)しわ発生の抑制)。 本発明の実施の形態に係るプレス成形方法において、張力付与形状部の他の例としてビード部を形成したプレス成形品を示す図である。 本発明の実施の形態に係るプレス成形方法の他の態様を説明する図である((a)プレス成形品の斜視図、(b)プレス成形品とダイ及びパンチのB−B断面図)。 実施例において、比較例に係るプレス成形品の成形下死点における周方向の板厚平均応力分布の結果を示す図である。 実施例において、発明例に係るプレス成形品の成形下死点における周方向の板厚平均応力分布の結果を示す図である。 実施例において、発明例に係るプレス成形品の成形過程において生じる湾曲内側のフランジ部における材料余り(a)と、段差部の形成により材料余りが伸ばされる様子(b)を示す図である。 実施例において、プレス成形品1の中央部を成形する中央部ダイの中心角Xと、両端部ダイにおける段差形成部を除いた部分の中心角Yを示す図である。 中央部ダイの中心角Xと、両端部ダイにおける段差形成部を除いた部分の中心角Yとの比X/Yを変えてプレス成形品を成形したときの成形下死点における周方向の板厚平均応力分布の結果を示す図である。
本発明は、図1(a)に一例として示すように、天板部3と、天板部3から連続する縦壁部5及び縦壁部7と、縦壁部5及び縦壁部7のそれぞれから連続するフランジ部9及びフランジ部11とを有してなる断面ハット形状であり、平面視で長手方向に沿って湾曲するプレス成形品1を成形対象とする。プレス成形品1において、縦壁部5及びフランジ部9は湾曲の内側にあり、縦壁部7及びフランジ部11は湾曲の外側にある。
本発明の実施の形態に係るプレス成形方法は、図2に例示するように、ダイ21及びパンチ23を用いて、ブランク(図示なし)を、プレス成形品1に曲げ成形によりプレス成形するものであって、第1成形ステップと、第2成形ステップと、を備えたものである。ここで、図1(b)は、図1(a)に示すプレス成形品1の湾曲内側のフランジ部9の幅方向中央(1点鎖線)に沿ったA−A断面における形状を示す図である。また、図2に、ダイ21及びパンチ23の具体的な形状の一例を示す。
以下、本実施の形態に係るプレス成形方法で用いるダイ21及びパンチ23について説明した後に、上記の各ステップについて説明する。
<ダイ及びパンチ>
ダイ21は、図1(b)及び図2(b)に示すように、プレス成形品1における長手方向の中央部13を成形する中央部ダイ25と、中央部13を挟んでプレス成形品1の長手方向両端側を成形する両端部ダイ27と、を備えてなる分割構造である。
中央部ダイ25は、プレス成形品1の中央部13におけるフランジ部9を成形するフランジ成形部25aを有する。
両端部ダイ27は、プレス成形品1の両端部15におけるフランジ部9を成形するフランジ成形部27aを有する。
さらに、両端部ダイ27は、プレス成形品1の両端部15を成形する過程において、長手方向の両端に向かう張力をブランクにおける湾曲の内側にあるフランジ部9に付与する形状の張力付与形状部である段差部9aをフランジ部9の長手方向両端側に形成する段差形成部27bを有する。
中央部ダイ25と両端部ダイ27は、互いに独立してパンチ23側に相対移動し、中央部ダイ25は、両端部ダイ27に先行して成形下死点に到達する。
パンチ23は、図1(b)及び図2(a)に示すように、中央部ダイ25及び両端部ダイ27のフランジ成形部25a及びフランジ成形部27aと協働してフランジ部9を成形するフランジ成形部23aと、両端部ダイ27の段差形成部27bと協働して段差部9aを形成する段差形成部23bと、を有する。
なお、パンチ23の段差形成部23bと両端部ダイ27の段差形成部27bとで形成される段差部9aは、フランジ部9において段差部9aから連続する面部9bがプレス成形方向に段差状に凹んだ形状である。
<第1成形ステップ>
第1成形ステップは、図1(b)に示すように、両端部ダイ27に先行して中央部ダイ25をパンチ23側に成形下死点まで相対移動させてプレス成形品1の中央部13を曲げ成形し、中央部13における湾曲内側のフランジ部9に生じる材料余りを長手方向両端側に逃がすステップである。
<第2成形ステップ>
第2成形ステップは、中央部ダイ25を成形下死点に保持して中央部13を押さえた状態で、両端部ダイ27をパンチ23側に成形下死点まで相対移動させて、プレス成形品1の両端部15を成形するとともに両端部15における湾曲内側のフランジ部9の長手方向両端側に段差部9aを形成することにより、第1成形ステップにおいて湾曲内側のフランジ部9に生じた材料余りを長手方向両端側に伸ばしながら両端部15における湾曲内側のフランジ部9を成形するステップである。
以下、本実施の形態に係るプレス成形方法により断面ハット形状のプレス成形品1を成形するに際し、湾曲の内側となるフランジ部9においてしわの発生を抑制することができる理由について説明する。
前述した図3に示すように、平面視で長手方向に沿って湾曲する断面ハット形状のプレス成形品31を従来の曲げ成形によりプレス成形すると、湾曲内側のフランジ部39においては長手方向中央に向かって材料が流入するために圧縮変形が生じ、しわが発生する。
これに対し、本実施の形態に係るプレス成形方法は、第1成形ステップにおいて中央部ダイ25とパンチ23とにより長手方向の中央部13における湾曲内側のフランジ部9を成形すると材料余りが生じるが、ブランクにおける中央部13よりも長手方向両端側は両端部ダイ27で拘束されていないため、材料余りを長手方向両端側に逃がすことができる。
そして、第2成形ステップにおいては、両端部ダイ27とパンチ23とにより長手方向の両端部15を成形する過程でフランジ部9の両端側に段差部9aを形成すると、ブランクにおけるフランジ部9に相当する部位においては、長手方向中央に向かう材料の流入が拘束されるとともに成形下死点の直前で長手方向両端に向かう張力が付与される(図1(b)、図3(b)参照)。そして、この張力により、第1成形ステップにおいて中央部13におけるフランジ部9を成形した際に生じた材料余りは長手方向両端側に伸ばされ、フランジ部9を平坦に成形することができる。
このように、プレス成形品1の中央部13を成形した後に両端部15を成形することで、ブランクにおけるフランジ部9に相当する部位の圧縮応力を緩和させ、しわの発生を抑制してフランジ部9をプレス成形することができる。
さらに、第2成形ステップにおいて、中央部13における湾曲の内側のフランジ部9を押さえることで、より確実にしわを防止することができる。
ここで、本実施の形態に係るプレス成形方法において段差部9aを形成する位置は、製品形状のプレス成形品の長手方向両端から外側とすればよい。そして、段差部9aが形成されたプレス成形品1に対し、図1(a)に示すように、段差部9aを含む長手方向の両端側を点線に沿って切除し、残りの長手方向の中央側の部位を製品として採取することにより、湾曲の内側のフランジ部9のしわが抑制された製品を容易に得ることができる。
段差部9aのプレス成形方向における段差深さ等の具体的な形状は、第1成形ステップにおいて、ブランクにおけるフランジ部9に相当する部位の長手方向両端部における材料の流入を拘束するとともに該長手方向の両端に向かう張力を付与し、第2成形ステップにおいてフランジ部9のしわの発生を効果的に抑制するこことが可能となるように、適宜設定すればよい。
また、上記の説明は、フランジ部9の長手方向両端側に形成する拘束形状部として、図1(b)に示すような段差部9aを形成する場合についてのものであった。もっとも、本発明に係るプレス成形方法は、張力付与形状部の具体的な形状としては、段差部9aに限定するものではなく、ブランクにおける湾曲内側のフランジ部9に相当する部位において、長手方向の両端側から中央に向かう材料の流入を拘束するともに長手方向の両端に向かう張力を付与することができる形状であればよい。
例えば、図4に示す、天板部53と、天板部53から連続する縦壁部55及び縦壁部57と、縦壁部55及び縦壁部57のそれぞれから連続するフランジ部59及びフランジ部61とを有してなる断面ハット形状であり、平面視で長手方向に沿って湾曲するプレス成形品51のように、湾曲内側のフランジ部59の長手方向の両端側に、該湾曲に直交する方向に延在するビード部59aを両端部ダイ及びパンチ(図示なし)により形成するものであってもよい。なお、図4に示すビード部59aは、プレス成形方向に凹状に形成されたものであるが、張力付与形状部として、プレス成形方向に凸状に形成した形成するものであってもよい。また、ビード部59aは必ずしも湾曲に直交する方向に延在する必要はなく、湾曲と所定角度θ(湾曲の接線となす角度)を有すればよい。さらに、所定角度θは、45°〜90°(直交)がよい。
さらに、上記の本実施の形態に係るプレス成形方法は、張力付与形状部として段差部9aを湾曲の内側のフランジ部9の長手方向両端側のみに形成するものであったが、本実施の形態に係るプレス成形方法の他の態様としては、図5(a)に例示するプレス成形品71を、図5(b)に示すような中央部ダイ95及び両端部ダイ97を備えてなるダイ91とパンチ23とを用いて、プレス成形するものであってもよい。なお、図5(b)は、図5(a)に示すプレス成形品71の天板部73の幅方向中央(1点鎖線)に沿ったB−B断面における形状を示す図である。
ダイ91は、図5(b)に示すように、プレス成形品71における長手方向の中央部83を成形する中央部ダイ95と、中央部83を挟んでプレス成形品71の長手方向両端部85を成形する両端部ダイ97と、を備えてなる分割構造である。
中央部ダイ95は、プレス成形品71の中央部83における天板部73を成形する天板成形部95aと、湾曲内側のフランジ部79を成形するフランジ成形部(図示なし)を有する。
両端部ダイ97は、プレス成形品71の両端部85における天板部73を成形する天板成形部97aと、湾曲内側のフランジ部79を成形するフランジ成形部(図示なし)を有する。
さらに、両端部ダイ97は、プレス成形品71の両端部85を成形する過程において、長手方向の両端に向かう張力をブランクにおける湾曲の内側にあるフランジ部79に付与する形状の張力付与形状部として、天板部73の長手方向両端側に段差部73aを形成する段差形成部97bと、湾曲内側のフランジ部79の長手方向両端側に段差部79aを形成する段差形成部(図示なし)と、を有する。
中央部ダイ95と両端部ダイ97は、互いに独立してパンチ93側に相対移動し、中央部ダイ95は、両端部ダイ97に先行して成形下死点に到達する。
パンチ23は、図5(b)に示すように、中央部ダイ95及び両端部ダイ97の天板成形部95a及び天板成形部97aと協働して天板部73を成形する天板成形部23aと、両端部ダイ97の段差形成部97bと協働して天板部73の長手方向両端側に段差部73aを形成する段差形成部23bと、両端部ダイ97のフランジ成形部(図示なし)と協働して湾曲内側のフランジ部79を形成するフランジ成形部(図示なし)と、両端部ダイ97の段差形成部と協働して湾曲内側のフランジ部79の長手方向両端側に段差部を形成する段差形成部(図示なし)と、を有する。
なお、図5において、パンチ23の段差形成部23bと両端部ダイ97の段差形成部97bとで形成される段差部73aは、天板部73において段差部73aから連続する面部73bがプレス成形方向に段差状に凹んだ形状である。
さらに、湾曲内側のフランジ部79の長手方向両端側に形成される段差部79aも、前述したプレス成形品1の段差部9a(図1(a))と同様、フランジ部79において段差部79aから連続する面部79bがプレス成形方向に段差状に凹んだ形状である。
本実施の形態にプレス成形方法の他の態様では、まず、第1成形ステップにおいて、中央部ダイ95を成形下死点まで相対移動させてプレス成形品71の中央部83を成形する。このとき、中央部ダイ95のフランジ成形部(図示なし)とパンチ23のフランジ成形部(図示なし)とで中央部83における湾曲の内側のフランジ部79を成形する際に生じる材料余りを長手方向両端側に逃がす。
続く第2成形ステップにおいては、中央部ダイ95によりプレス成形品71の中央部83を押さえたまま、両端部ダイ97を成形下死点まで相対移動させて、プレス成形品71の中央部83よりも長手方向両端側である両端部85を成形する。
第2成形ステップで両端部85を成形する過程において、湾曲内側のフランジ部79の長手方向両端側に張力付与形状部として段差部79aを形成するとともに、天板部73の長手方向両端側にも張力付与形状部として段差部73aを形成する。
このように、プレス成形品71を曲げ成形する過程において、段差部79a及び段差部73aを形成することで、ブランクにおける湾曲の内側のフランジ部79に相当する部位の長手方向両端から中央に向かう材料の流入が拘束されるとともに、成形下死点の直前で長手方向両端に向かう張力が付与される。
そして、長手方向両端に向かう張力が付与されることで、第1成形ステップにおいて湾曲の内側にあるフランジ部79に相当する部位に生じた材料余りをフランジ部79の長手方向の両端側に伸ばし、両端部ダイ97のフランジ成形部(図示なし)とパンチ23のフランジ成形部(図示なし)とにより両端部85におけるフランジ部79を平坦に成形する。
これにより、湾曲内側のフランジ部79を曲げ成形する過程において、ブランクにおける湾曲内側のフランジ部79に相当する部位に生じる圧縮応力が緩和される。その結果、湾曲の内側のフランジ部79におけるしわの発生を抑制してプレス成形品71をプレス成形することができる。
また、本実施の形態に係るプレス成形方法の他の態様においても、図5に示す点線に沿ってプレス成形品71の長手方向両端側を切除し、残りの部位を製品として採取することで、湾曲の内側となるフランジ部79のしわが抑制された製品を容易に得ることができる。
なお、天板部73の長手方向両端側に形成する張力付与形状部は、前述の本実施の形態に係るプレス成形方法と同様、プレス成形品の湾曲から所定角度(湾曲の接線となす角度)の方向に延在してプレス成形方向に凸状又は凹状のビード部であってもよい。そして、所定角度は、45°〜90°(直交)がよい。
上記のように、本発明に係るプレス成形方法は、プレス成形品の長手方向の中央部を成形する中央部ダイと、プレス成形品の長手方向の中央部よりも両端側を成形する両端部ダイと、を備えてなる分割構造のダイを用いるものであるが、中央部ダイによりプレス成形品の中央部を成形する長手方向の範囲については、湾曲内側のフランジ部におけるしわ発生を効果的に抑制することができるように適宜設定すればよい。
なお、本発明に係るプレス成形方法は、ブランクとして材料強度440MPa級〜1470MPa級の鋼板を用いて、平面視で長手方向に沿って湾曲する断面ハット形状のプレス成形品を曲げ成形によりプレス成形する場合に好ましく適用することができる。
また、上記の説明において成形対象としたプレス成形品1(図1(a))は、長手方向の全長にわたって平面視で湾曲するものであるが、本発明は、平面視で長手方向に沿って湾曲する部位と、該湾曲する部位の長手方向の両端又は一端から直線状に延出する部位と、を有するプレス成形品を成形対象とするものであってもよい。
このような直線状に延出する部位を有するプレス成形品を本発明に係るプレス成形方法により曲げ成形する場合であっても、両端部側ダイとパンチとを用い、製品形状よりも外側の部位に張力付与形状部を形成すればよい。
本発明に係るプレス成形方法の作用効果について確認するためにCAE成形解析を行ったので、その結果について以下に説明する。
実施例において、図1(a)に示すように、平面視で長手方向に沿って湾曲する断面ハット形状のプレス成形品1を成形対象とし、プレス成形品1を曲げ成形する過程のCAE解析を行った。そして、CAE解析において、プレス成形に供するブランクは、板厚1.0mm、引張強度980MPa級の鋼板とした。
プレス成形品1の目標形状の寸法は、天板部3の幅方向中心における湾曲の曲率半径を270mm、天板部3の幅を30mm、成形高さ(プレス成形方向における縦壁部5及び縦壁部7の高さ)を40mm、フランジ部9及びフランジ部11のフランジ幅を40mmとした。
実施例では、湾曲の内側のフランジ部9の長手方向の両端側に、張力付与形状部としてプレス成形方向に凹状の段差部9aを形成した。
段差部9aの寸法については、プレス成形方向における段差深さを20mmとし、この段差部9aを形成することより湾曲の内側のフランジ部9における長手方向の両端側を約20mmプレス成形方向に折り曲げた。
実施例では、図2に示す中央部ダイ25と両端部ダイ27とを備えてなるダイ21及びパンチ23を用いてプレス成形品1を成形したものを発明例とした。
発明例においては、まず、両端部ダイ27に先行して中央部ダイ25をパンチ23側に成形下死点まで相対移動させてプレス成形品1の中央部13を成形した。中央部ダイ25が成形下死点に到達した時、両端部ダイ27は成形下死点まで20mmの位置にあるものとした。
次いで、中央部ダイ25を成形下死点に保持して中央部13を押えたまま、両端部ダイ27をパンチ23側に成形下死点まで相対移動させ、プレス成形品1の両端部15を成形した。
また、比較対象として、図6(a)に示すダイ101及びパンチ103を用いた従来のプレス成形方法により、ブランク105をプレス成形品31(図3)に曲げ成形する過程のCAE解析を行ったものを比較例とした。
図6(b)に、比較例に係るプレス成形品31の曲げ成形においてダイが成形下死点にあるときの周方向の板厚平均応力分布を示す。
また、図7に、発明例に係るプレス成形品1の曲げ成形において中央部ダイ25及び両端部ダイ27が成形下死点にあるときの周方向の板厚平均応力分布を示す。
比較例(図6(b))と発明例(図7)を比較すると、発明例に係る湾曲の内側のフランジ部9においては圧縮応力が緩和されていることがわかる。
本発明に係るプレス成形方法において用いる中央部ダイ25及び両端部ダイ27の効果を説明するために、図8に、プレス成形品1の曲げ成形過程におけるプレス成形品1の湾曲内側のフランジ部9の断面図を示す。ここで、図8(a)は、中央部ダイ25が成形下死点に位置し、両端部ダイ27がプレス成形方向において成形下死点まで20mmの位置にあるときの断面図、図8(b)は、両端部ダイ27も成形下死点近くの3mmの位置にあるときの断面図である。
図8(a)に示すように、中央部ダイ25によりプレス成形品1の中央部13におけるフランジ部9を成形することで、中央部13におけるフランジ部9のしわ発生は抑制されており、中央部ダイ25とパンチ23とで押さえていない両端部15側に材料余りが生じている。
そして、図8(b)に示すように、両端部ダイ27が成形下死点まで3mmの位置に相対移動すると、フランジ部9の長手方向の両端側には段差部9aが形成されることにより、ブランクにおけるフランジ部9の長手方向両端側に相当する部位が拘束され、中央部ダイ25により両端部15側に逃がした材料が長手方向両端側(図8(b)中の外側)に引っ張られ、材料余りが解消していることが分かる。
中央部ダイ25により長手方向の中央部13を成形する範囲が成形下死点におけるプレス成形品1の応力分布に与える影響を調べるために、図9に示すようにダイ21を分割した中央部ダイ25の中心角をX、分割前のダイ21の段差形成部21aを除く部位の中心角をYとし、X/Yを変更してCAE解析を行った。
図10に、X/Yを0、1/10、1/5、1/3、2/3としてCAE解析を行ったときの成形下死点における周方向の板厚平均応力分布の結果を示す。
X/Y=0、すなわち、ダイ21の中央部ダイ25と両端部ダイ27とに分割を行わないときは、湾曲内側のフランジ部9の長手方向中央に圧縮応力の集中が見られる。
X/Yを1/10、1/5、1/3と大きくしていくと、中央部ダイ25の働きによって、湾曲内側のフランジ部における長手方向中央の応力が長手方向両端側に散っていく様子がわかる。
本実施例におけるCAE解析の範囲内では、X/Y=2/3とした場合において湾曲内側のフランジ部の周方向応力が最も小さくなるという結果となった。このように、中央部ダイ25により中央部を成形する範囲を規定する中心角Xには最適な値が存在することが示された。
中央部ダイ25の中心角Xの最適値は、プレス成形品の湾曲の曲率などの部品形状に依存するが、中央部ダイ25の中心角Xを変更してCAE成形解析を行うことにより、最適な中心角Xを見出すことができる。
そして、CAE解析により見出した中央部ダイ25の中心角Xの最適な値に基づいて、中央部ダイ25により曲げ成形するプレス成形品1の中央部の範囲を設定すればよいことが示唆された。
1 プレス成形品
3 天板部
5 縦壁部
7 縦壁部
9 フランジ部(湾曲の内側)
9a 段差部
9b 面部
11 フランジ部
13 中央部
15 両端部
21 ダイ
23 パンチ
25 中央部ダイ
25a フランジ成形部
27 両端部ダイ
27a フランジ成形部
27b 段差形成部
31 プレス成形品
33 天板部
35 縦壁部
37 縦壁部
39 フランジ部(湾曲の内側)
41 フランジ部
51 プレス成形品
53 天板部
55 縦壁部
57 縦壁部
59 フランジ部(湾曲の内側)
59a ビード部(張力付与形状部)
61 フランジ部
71 プレス成形品
73 天板部
73a 段差部(張力付与形状部)
75 縦壁部
77 縦壁部
79 フランジ部(湾曲の内側)
79a 段差部(張力付与形状部)
81 フランジ部
91 ダイ
95 中央部ダイ
95a 天板成形部
97 両端部ダイ
97a 天板成形部
97b 段差形成部
101 ダイ
103 パンチ
105 ブランク

Claims (4)

  1. ダイ及びパンチを用いて、ブランクを、天板部と、該天板部から連続する縦壁部と、該縦壁部から連続するフランジ部とを有してなる断面ハット形状であり、平面視で長手方向に沿って湾曲するプレス成形品に曲げ成形によりプレス成形するプレス成形方法であって、
    前記ダイは、前記プレス成形品における長手方向の中央部を成形する中央部ダイと、前記中央部を挟んで前記プレス成形品の長手方向両端側を成形するともに、該両端部を成形する過程において、前記ブランクにおける湾曲内側のフランジ部に相当する部位に長手方向両端に向かう張力を付与する形状の張力付与形状部を前記湾曲内側のフランジ部の長手方向両端側に形成する両端部ダイと、を備えてなり、
    前記両端部ダイに先行して前記中央部ダイを前記パンチ側に成形下死点まで相対移動させて前記プレス成形品の中央部を曲げ成形し、該中央部における前記湾曲内側のフランジ部に生じる材料余りを長手方向両端側に逃がす第1成形ステップと、
    前記中央部ダイを成形下死点に保持して前記中央部を押さえた状態で、前記両端部ダイを前記パンチ側に成形下死点まで相対移動させて、前記両端部を成形するとともに該両端部における前記湾曲内側のフランジ部の長手方向両端側に前記張力付与形状部を形成することにより、前記第1成形ステップにおいて前記湾曲内側のフランジ部に生じた材料余りを長手方向両端側に伸ばしながら前記両端部における湾曲内側のフランジ部を成形する第2成形ステップと、を備えたことを特徴とするプレス成形方法。
  2. ダイ及びパンチを用いて、ブランクを、天板部と、該天板部から連続する縦壁部と、該縦壁部から連続するフランジ部とを有してなる断面ハット形状であり、平面視で長手方向に沿って湾曲するプレス成形品に曲げ成形によりプレス成形するプレス成形方法であって、
    前記ダイは、前記プレス成形品における長手方向の中央部を成形する中央部ダイと、前記中央部を挟んで前記プレス成形品の長手方向両端側を成形するともに、該両端部を成形する過程において、前記ブランクにおける天板部及び湾曲内側のフランジ部それぞれに相当する部位に長手方向両端に向かう張力を付与する形状の張力付与形状部を前記天板部及び湾曲内側のフランジ部それぞれの長手方向両端側に形成する両端部ダイと、を備えてなり、
    前記両端部ダイに先行して前記中央部ダイを前記パンチ側に成形下死点まで相対移動させて前記プレス成形品の中央部を曲げ成形し、該中央部における前記湾曲内側のフランジ部に生じる材料余りを長手方向両端側に逃がす第1成形ステップと、
    前記中央部ダイを成形下死点に保持して前記中央部を押さえた状態で、前記両端部ダイを前記パンチ側に成形下死点まで相対移動させて、前記両端部を成形するとともに該両端部における前記天板部及び湾曲内側のフランジ部それぞれの長手方向両端側に前記張力付与形状部を形成することにより、前記第1成形ステップにおいて前記湾曲内側のフランジ部に生じた材料余りを長手方向両端側に伸ばしながら前記両端部における湾曲内側のフランジ部を成形する第2成形ステップと、を備えたことを特徴とするプレス成形方法。
  3. 前記第1成形ステップにおいて形成する張力付与形状部は、プレス成形方向に段差状に凹んだ段差部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス成形方法。
  4. 前記第1成形ステップにおいて形成する張力付与形状部は、前記プレス成形品の湾曲から所定角度の方向に延在する凸状又は凹状のビード部であることを特徴する請求項1又は2に記載のプレス成形方法。
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