JP2021073750A - 発振装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 周波数の可変幅の拡大とその可変ピッチの微細化とを両立する発振装置を提供することにある。【解決手段】 本発明の一実施形態に係る発振装置1は、発振部10と、発振部10の出力信号の周波数(f1)を、分周数Nとして周波数(f1/N)に分周する分周器20と、所定の周波数(f3)で振動するアナログのシフト信号を発生するシフト信号発生部30と、分周器20の出力信号の周波数(f1/N)をシフト周波数(f3)だけシフトした周波数(f1/N+f3)に変換するために分周器20の出力信号にシフト信号を合成する第1信号合成部40と、発振部10の出力信号の周波数(f1)を周波数(f1+f1/N+f3)に変換するために発振部10の出力信号に第1信号合成部40の出力信号を合成する第2信号合成部50とを具備する。【選択図】 図1
Description
本発明の実施形態は発振装置に関する。
携帯電話やスマートフォン、モバイルルータといった、モバイル端末による無線通信容量は、端末装置の高機能化や、動画像ファイルや楽曲ファイル等の配信コンテンツの充実などにより、年々増加し続けている。そういった需要に対応するために、無線通信技術の開発も進んでいる。現在は、第4世代(4G)の通信規格に対応した種々の端末装置や基地局設備の普及が進み、一般に広く利用されている。
上記のような無線通信端末装置で信号を受信するとき、アンテナで受信した高い周波数帯の受信信号は、ローカル発振器の出力信号と乗算され、通信によってやり取りする情報そのものを含む低い周波数帯域のベースバンド信号にダウンコンバートされる。また、信号を送信するとき、ベースバンド信号は、ローカル発振器の出力信号と乗算され、高い周波数帯の信号にアップコンバートされる。
第4世代の通信規格では、変調方式として256QAMなどの直交振幅変調などの多値変調方を使用することで通信容量を増やし、通信方式として直交周波数分割多元接続(OFDMA)と呼ばれる複数のサブキャリアを用いた通信を行うことで、周波数帯域の利用効率を高めている。上記の通信規格で通信を安定的に行うためには、ローカル発振器の出力信号の周波数の安定化と、ローカル発振器の出力信号のスペクトル純度の向上が要求される。また、今後も通信技術が発展していく中で、種々の通信規格に対応するために、ローカル発振器の出力信号の周波数の可変幅の拡大とその可変ピッチの微細化とが要求される。
本発明の目的の一つは、周波数の可変幅の拡大とその可変ピッチの微細化とを両立する発振装置を提供することにある。
本発明の一実施形態に係る発振装置は、発振部と、前記発振部の出力信号の周波数(f1)を、分周数Nとして周波数(f1/N)に分周する分周器と、所定の周波数(f3)で振動するアナログのシフト信号を発生するシフト信号発生部と、前記分周器の出力信号の周波数(f1/N)を前記周波数(f3)だけシフトした周波数((f1/N)+f3)に変換するために前記分周器の出力信号に前記シフト信号を合成する第1信号合成部と、前記発振部の出力信号の周波数(f1)を周波数(f1+(f1/N)+f3)に変換するために前記発振部の出力信号に前記第1信号合成部の出力信号を合成する第2信号合成部とを具備する。
以下、本実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に係る発振装置1は、発振部10と、発振部10の出力信号の周波数(f1)を、分周数Nとして周波数(f1/N)に分周する分周器20と、所定のシフト周波数(f3)で振動するアナログのシフト信号を発生するシフト信号発生部30と、分周器20の出力信号の周波数(f1/N)をシフト周波数(f3)だけシフトした周波数((f1/N)+f3)に変換するために分周器20の出力信号にシフト信号を合成する第1信号合成部40と、発振部10の出力信号の周波数(f1)を周波数(f1+(f1/N)+f3)に変換するために発振部10の出力信号に第1信号合成部40の出力信号を合成する第2信号合成部50とを有する。
発振部10は、周波数(f1)で振動する発振信号を発生する。典型的には、発振部10は、公称周波数(f0)で振動する発振信号を発生するSAW発振器11と、SAW発振器11の出力信号の周波数(f0)を固定の逓倍数(n)で逓倍する逓倍器13とを有する。発振部10の出力信号の周波数(f1)は、周波数(n・f0)を示す。SAW発振器11は、発振周波数が制御不可なタイプの発振器であり、外部からの制御信号により発振周波数を任意に制御可能な発振器と区別される。SAW発振器11は発振周波数が制御不可な他のタイプの発振器に代替可能である。勿論、発振装置1から最終的に出力する発振信号の目標周波数に応じて、逓倍器13は適宜省略することができる。また、逓倍器13は、逓倍数(n)が可変できる構成にしてもよい。例えば、逓倍数が異なる複数の逓倍器を並列に配置し、そのうち一の逓倍器を制御部60の制御に従って切り替える構成であってもよい。
なお、典型的には、発振部10の出力信号(発振信号)の周波数(f1)が数十GHz等の高周波数帯域を示すように、発振器11と逓倍器13とが構成される。例えば、公称周波数800MHz帯のSAW発振器11と、逓倍数(n)が32の逓倍器13とを用いた場合、発振部10の出力信号の周波数(f1)は20GHz帯を示す。
ここで本実施形態に係る発振装置1は、発振部10から出力される発振信号の周波数(基準周波数)を、その発振信号に中域の周波数帯の信号と低域の周波数帯の信号とを加えることで、他の周波数(出力周波数)に変換する機能を備えているものである。分周器20で発振信号から中域の周波数帯の信号を生成し、シフト信号発生部30で低域の周波数帯の信号を生成することにより、周波数変換の切替応答を高速化する。詳細は後述する。
分周器20は、制御部60の制御に従って設定された分周数(N;分周率1/N)で発振部10の出力信号の周波数(f1)を分周する。分周器20の出力信号の周波数は周波数(f1/N)を示す。典型的には、分周器20は、デジタル直接合成発振器(以下単にDDSという)により構成される。DDSは、1周期分の正弦波の波形を示すデジタルデータを格納したROMを有する。発振部10の出力信号を基準クロックとして、この基準クロックに同期して、制御部60から入力された周波数設定値を累積し、その累積値をアドレスとして、ROMから正弦波データを読み出す。この読み出した正弦波データをDACでデジタルアナログ変換することにより階段状の正弦波のアナログデータが得られる。したがって、周波数設定値を変更することで、分周器20は、発振部10の出力信号の周波数(f1)を任意の分周数(N)で分周することができる。DDSは、14bitなど高ビットレートを有するものではなく、1bitなどの低ビットレートを有するものでよい。これにより、分周数(N)が整数に限定されてしまうが、波高値の切替回数を少なくすることができ、デジタルアナログ変換時のDACの消費電力を低減することができる。分周器20の出力信号に含まれる所望周波数(f1/N)の整数倍の周波数のスプリアスは、分周器20の出力に配置されるローパスフィルタ25(以下、単にLPFという)で減衰することができる。このLPF25は、分周数(N)の変更に伴う分周器20の出力信号の周波数(f1/N)の変動に対応するため、典型的にはカットオフ周波数が異なる複数のLPFを並列に配置し、リレーにより切り替え可能なLPFバンクにより構成される。
なお、周波数(f1/N)が数十MHzなど低くなりすぎると、第2信号合成部50による信号合成処理により発生するローカルリーク成分とイメージ成分とが所望信号成分に対して近接してしまい、第2信号合成部50の出力信号からこれらの成分の除去が困難となる。周波数(f1/N)が数GHzなど高くなりすぎると、後段のADC70に入力される信号の周波数が高くなり、ADC70のサンプルホールドの製作が困難となる。さらに、周波数(f1/N)の可変幅が広すぎると、後段のLPF25を構成するLPFの数が増加し、コスト増加、実装面積の増加を発生させる。上記を鑑みて、典型的には、分周数(N)は、分周器20の出力信号の周波数(f1/N)が数百MHz等の中域の周波数帯域の周波数を示す範囲に設定される。
シフト信号発生部30は、制御部60の制御に従って設定された所定のシフト周波数(f3)で振動するアナログのシフト信号を発生する。典型的には、シフト信号発生部30は、デジタルシフト信号発生部31とデジタルアナログ変換器(以下単にDACという)33とを有する。デジタルシフト信号発生部31は、制御部60の制御に従って設定されたシフト周波数(f3)の波形をデジタルで表現するデジタルシフト信号を発生する。典型的には、デジタルシフト信号発生部31は、数値制御発振器により構成される。デジタルシフト信号発生部31は、1周期分の正弦波の波形を示すデジタルデータを格納したROMを有する。デジタルシフト信号発生部31は、水晶発振器110の出力信号を基準クロックとして、この基準クロックに同期して、制御部60から入力された周波数設定値を累積し、その累積値をアドレスとして、ROMから正弦波データを読み出す。この読み出されたデジタルデータが、周波数設定値に応じたシフト周波数(f3)で振動する正弦波の波形をデジタルで表現したデジタルシフト信号に対応する。デジタルシフト信号発生部31により発生されたデジタルシフト信号は、デジタルシフト信号発生部31の出力に配置されたDAC33によりアナログに変換され、シフト信号として第1信号合成部40に入力される。
なお、シフト周波数(f3)の上限値は、DAC33の性能により制限される。すなわち、DAC33は、変換対象の信号の周波数(f3)がクロック周波数の(1/2)以下であれば、歪みが抑制された波形を出力することができるが、クロック周波数の(1/2)以上であると、出力波形に歪みを発生させる。また、クロック周波数が高い程、変換対象の信号の周波数を高くすることができるが、変換対象の信号の周波数が高いと、DAC33での消費電力が増加する。また、分周器20の出力信号の周波数(f1/N)が数百MHz等の中域の周波数帯域をカバーしているため、シフト周波数(f3)が数百MHzをカバーする必要性は低い。上記を鑑みて、典型的には、シフト周波数(f3)はゼロ乃至数十MHz等の低域の周波数帯域の範囲内の値に設定される。
第1信号合成部40は、分周器20の出力信号の周波数(f1/N)をシフト周波数(f3)だけシフトした周波数((f1/N)+f3)に変換するために分周器20の出力信号にシフト信号を合成する。典型的には、第1信号合成部40は、直交変調器により構成される。
以下、デジタルシフト信号発生部31、DAC33及び第1信号合成部40の具体的な構成について図2を参照して説明する。図2に示すように、デジタルシフト信号発生部31は、2つの出力ポート311,312を有する。DAC33は、2つのDAC331,332を有する。第1信号合成部40は、2つのアナログ乗算器401,402と加算器403と90度移相器404とを有する。
第1、第2出力ポートから、デジタルシフト信号発生部31により発生されたシフト周波数(f3)が同一で位相が約90度異なる第1、第2デジタルシフト信号がそれぞれ出力される。第1出力ポート311から出力された第1デジタルシフト信号は、第1DAC331によりアナログ変換され、第1シフト信号として第1アナログ乗算器401に入力される。第1アナログ乗算器401は、分周器20から出力され90度移相器404により位相が90度遅延された信号に対して第1シフト信号を乗算する。第1アナログ乗算器401の出力信号は、加算器403に入力される。第2出力ポート312から出力された第2デジタルシフト信号は、第2DAC332によりアナログに変換され、第2シフト信号として第2アナログ乗算器402に入力される。第2アナログ乗算器402は、分周器20の出力信号に対して第2シフト信号を乗算する。第2アナログ乗算器402の出力信号は、加算器403に入力される。
加算器403は第1アナログ乗算器401の出力信号に第2アナログ乗算器402の出力信号を加算する。この加算信号が、第1信号合成部40から最終的に出力される。第1信号合成部40の出力信号の周波数は、分周器20の出力信号の周波数(f1/N)にシフト信号の周波数(f3)を加算した値((f1/N)+f3)を示す。なお、分周器20の出力信号の周波数(f1/N)からシフト信号の周波数(f3)を減算した周波数((f1/N)-f3)の信号成分を第1信号合成部40から取り出したい場合は、90度移相器404を、第2アナログ乗算器402の入力に配置すればよい。または、第1デジタルシフト信号の位相を第2デジタルシフト信号に対して90度遅延させればよい。
第2信号合成部50は、発振部10の出力信号の周波数(f1)を周波数(f1+(f1/N)+f3)に変換するために発振部10の出力信号に第1信号合成部40の出力信号を合成する。典型的には、第2信号合成部50も直交変調器により構成される。第1信号合成部40の説明と同様に、第2信号合成部50の構成を変更することで、発振部10の出力信号の周波数(f1)から、第1信号合成部40の出力信号の周波数(分周器20の出力信号の周波数(f1/N)とシフト信号発生部30の出力信号の周波数((f1/N)+f3)を減算した周波数(f1-(f1/N)-f3)を示す信号を、発振装置1から最終的な発振信号として出力することもできる。
以上説明した本実施形態に係る発振装置1は、発振部10から出力された高域の周波数帯の信号に対して、分周器20から出力される任意に周波数を変更可能な中域の周波数帯の信号を合成することにより、発振部10の出力信号の周波数を大まかにシフトし、シフト信号発生部30から出力される任意に周波数を変更可能な低域の周波数帯の信号を合成することにより、発振部10の出力信号の周波数を細かくシフトすることができる。このように、発振部10の出力信号に対して、周波数帯が異なる2種類の信号を合成することは、本実施形態に係る発振装置の一つの特徴である。このように周波数変換処理を中域と低域とで分散処理することにより、発振器11の発振信号の周波数変換の可変幅の拡大と、その可変ピッチの微細化とを両立することを実現している。
また、分周器20とシフト信号発生部30とをデジタルシステムにより構成した点も一つの特徴である。この特徴により、分周器20の出力信号の周波数(f1/N)とシフト信号発生部30の出力信号の周波数(f3)とは、制御部60の制御に従って、即時に変化させることができる。したがって、本実施形態に係る発振装置1は、位相同期回路を有する発振器を組み込んだ構成に比べて、さらに応答速度を速くし、周波数の切り替えを高速化できる。
また、発振部10をSAW発振器11により構成した点も一つの特徴である。この特徴により、発振装置1から最終的に出力される発振信号のスペクトル純度を高めることができる。スペクトル純度を高くすることで、例えば、本実施形態に係る発振装置1を無線システムのローカル発振器として用いた場合、通信容量を増加することができる。
しかしながら、実際には、発振部10の出力信号の周波数は変動する場合がある。例えば、SAW発振器11の出力信号の周波数は、温度変動、外部衝撃等の外乱の影響を受けて、公称周波数(f0)から変動する。発振器11の出力信号の周波数の変動は、発振部10の出力信号の周波数(f1)を変動させるだけではなく、分周器20の出力信号の周波数(f1/N)も変動させる。発振器11の周波数変動は、公称周波数の±0.01%程度であるが、高周波数帯では影響が大きく、本実施形態のように、発振器11の出力信号を逓倍するような構成において、その影響は拡大する。以下、発振器11の出力信号の周波数を周波数(f0+fe)と表記する。周波数(fe)は、発振器11の公称周波数(f0)からの誤差周波数を示す。
本実施形態に係る発振装置1は、発振器11の公称周波数(f0)に対する発振器11の出力信号の周波数(f0+fe)の誤差周波数(fe)を検出し、発振装置1から出力される最終的な発振信号に含まれる誤差成分を補正する機能を備える。この機能により、発振装置1から出力される最終的な発振信号の周波数を目標周波数で安定化することができる。
また、第1、第2信号合成部40、50による信号合成処理に起因して、第1、第2信号合成部40,50の出力信号には所望信号成分以外に、ローカルリーク成分及びイメージ成分がそれぞれ含まれてしまう。例えば、図3に示すように、第1信号合成部40の出力信号は、分周器20の出力信号の周波数(f1/N)にシフト信号の周波数(f3)を加算した周波数((f1/N)+f3)を示す所望信号成分と、分周器20の出力信号の周波数(f1/N)を示すローカルリーク成分と、分周器20の出力信号の周波数(f1/N)からシフト信号の周波数(f3)を減算した周波数((f1/N)-f3))を示すイメージ成分とが含まれる。無線通信端末装置のローカル発振器として本実施形態に係る発振装置1を用いた場合、発振装置1から最終的に出力される発振信号にローカルリーク成分とイメージ成分とが残存していると、無線通信に悪影響を及ぼす。具体的には、送信時には、これらの成分が他のシステムの妨害波となってしまう。また、受信時には、これらの成分により、所望信号以外の信号がシステムに取り込まれてしまい、システムエラーが発生してしまう可能性がある。
本実施形態に係る発振装置1は、第1、第2信号合成部40,50の出力信号に含まれるローカルリーク成分とイメージ成分とを減衰する。具体的には、第2信号合成部50は、高周波数帯の信号と中域の周波数帯の信号とを合成するため、第2信号合成部50の出力信号に含まれるローカルリーク成分とイメージ成分とは、所望信号成分に対して周波数が離間する。そのため、第2信号合成部50の出力にBPF90を配置することで、第2信号合成部50の出力信号に含まれるこれらのスプリアス成分を減衰させることができる。
一方、第1信号合成部40は、中域の周波数帯の信号と低域の周波数帯の信号とを合成するため、第1信号合成部40の出力信号に含まれるローカルリーク成分とイメージ成分とは、所望信号成分に対して周波数が近接する。そのため、第1信号合成部40の出力信号に含まれるローカルリーク成分とイメージ成分とを減衰させるためには、高い性能を有するBPFが必要である。しかしながら、高い性能のBPFの使用は、コストを増加させる。そこで、発振装置1は、第1信号合成部40の出力にBPFを配置することなく、第1信号合成部40の出力信号に含まれるローカルリーク成分とイメージ成分とを減衰する。この機能により、第1信号合成部40の出力にBPFを配置することによるコスト増加、実装面積の増加を回避しながら、第1信号合成部40の出力信号に含まれるスプリアス成分を減衰させる。
なお、本実施形態では、第2信号合成部50の出力にBPF90を配置したが、発振装置1の用途、目的に応じて適宜省略することができる。また、所望信号成分に対してローカルリーク成分とイメージリーク成分とが離間しているため、発振装置1が組み込まれるシステムのBPFを用いてこれらの成分を減衰できるかもしれない。この場合も、BPF90を省略することができる。
誤差周波数を補正する機能と第1信号合成部40の出力信号に含まれるスプリアス成分を減衰させる機能との2つの機能を実現するために、本実施形態に係る発振装置1は、アナログデジタル変換器(以下単にADC)70、誤差周波数検出部81、ローカルリーク成分強度検出部83、及びイメージ成分強度検出部85をさらに備える。
図4に示すように、ADC70は、第1信号合成部40の出力に配置され、第1信号合成部40の出力信号をデジタル変換する。ADC70には好適にはアンダーサンプリング方式が採用される。周知の通りアンダーサンプリング方式を採用した場合であっても、第1信号合成部40の出力信号に含まれる誤差周波数成分、ローカルリーク成分、イメージ成分はADC70の出力信号上でも維持される。ADC70にアンダーサンプリング方式を採用することにより、実効的な各検出部の検出処理速度を確保することができる。
ADC70の出力には、誤差周波数検出部81、ローカルリーク成分強度検出部83、イメージ成分強度検出部85が並列に配置される。なお、誤差周波数検出部81に取り込む信号は、発振器11の出力信号、逓倍器13の出力信号、分周器20の出力信号、及び第1信号合成部40の出力信号のいずれの信号であってもよい。ただし、誤差周波数の検出処理のためだけに、ADCを設けることは回路コストと実装面積とを増加させる。元々、ローカルリーク成分強度検出部83とイメージ成分強度検出部85とには、第1信号合成部40に出力信号を入力する必要があるため、第1信号合成部40の出力にADC70を配置しなければならない。第1信号合成部40の出力に配置されたADC70の出力信号を誤差周波数検出部81に入力する構成とすることで、ADCの数を少なくし、回路コストの増加を抑制する。
誤差周波数検出部81は、ADC70の出力信号に基づいて、発振器11の公称周波数(f0)に対する発振器11の出力信号の周波数(f0+fe)の誤差周波数(fe)を検出する。誤差周波数検出部81により検出された誤差周波数(fe)に関するデータは制御部60に出力される。
制御部60は、誤差周波数(fe)に基づいて、デジタルシフト信号の周波数を変更するために、デジタルシフト信号発生部31を制御する。具体的には、制御部60は、第2信号合成部50の出力信号に含まれる誤差周波数(fe)が起因となる誤差成分をキャンセルするために、誤差周波数(fe)、シフト周波数(f3)、逓倍数(n)及び分周数(N)に基づいて、デジタルシフト信号の周波数(f3-n・fe-((n・fe)/N))を計算する。制御部60は、その計算した周波数(f3-n・fe-((n・fe)/N))の波形をデジタルで表現するデジタルシフト信号を発生させるために、デジタルシフト信号発生部31を制御する。
制御部60は、デジタルシフト信号の特性(周波数、位相シフト量、DCオフセット量)を一定の制御周期で繰り返し変動させるために、デジタルシフト信号発生部31を制御する。この制御周期は、誤差周波数の検出周期よりも長い、誤差周波数の検出結果を収束させるために必要な時間長よりも若干長く設定される。図6に示すように、誤差周波数検出部81は、所定の検出周期で繰り返し誤差周波数(fe)を検出する。デジタルシフト信号の特性が変化してから、誤差周波数(fe)の検出結果(LPF815の出力信号)が収束するまでには時間を要する。これは、誤差周波数検出部81に帰還ループが形成されていること等が要因である。この間に、デジタルシフト信号の特性が変化してしまうと、誤差周波数の検出結果が収束しない状態となってしまい、正確な誤差周波数(fe)の検出結果を取得できない可能性がある。誤差周波数(fe)の検出結果が収束する間にデジタルシフト信号の特性を変化させないために、制御部60によるデジタルシフト信号発生部31の制御周期を設ける。例えば、制御部60は、誤差周波数検出部81から繰り返し入力される誤差周波数(fe)の変動値を所定のしきい値に対して比較し、その変動値がしきい値未満のときに検出された誤差周波数(fe)を用いて、次の制御周期のデジタルシフト信号の周波数を計算処理する。これにより、最終的に出力される発振信号の誤差成分をキャンセルする精度を向上し、周波数を安定化させることができる。
ローカルリーク成分強度検出部83は、ADC70の出力信号に基づいて、第1信号合成部40による信号合成処理に起因して生じるローカルリーク成分の信号強度を検出する。ローカルリーク成分の信号強度の検出には、例えば位相検波が用いられる。位相検波では、ADC70の出力信号に対して、ローカルリーク成分の周波数、位相が同一の参照信号を乗算する。乗算結果として得られる周波数(0Hz)の直流成分の値はADC70の出力信号に含まれるローカルリーク成分の信号強度に比例する。そのため、ローカルリーク成分強度検出部83は直流成分の値から、ローカルリーク成分の信号強度を特定することができる。ローカルリーク成分強度検出部83により検出されたローカルリーク成分の信号強度に関するデータは制御部60に入力される。
制御部60は、ローカルリーク成分の強度に応じたDCオフセット量に従ってシフト信号をオフセットさせるためにデジタルシフト信号発生部31を制御する。具体的には、制御部60は、第1、第2デジタルシフト信号のDCオフセット量を増やした結果、ローカルリーク成分の信号強度が大きくなれば、DCオフセット量を減らし、第1、第2デジタルシフト信号のDCオフセット量を増やした結果、ローカルリーク成分の信号強度が小さくなれば、DCオフセット量をさらに増やすためにデジタルシフト信号発生部31を制御する。
イメージ成分強度検出部95は、ADC70の出力信号に基づいて、第1信号合成部40による信号合成処理に起因して生じるイメージ成分の信号強度を検出する。イメージ成分の信号強度の検出には、例えば、ローカルリーク成分強度検出部83と同様に位相検波が用いられる。イメージ成分強度検出部95により検出されたイメージ成分の信号強度に関するデータは制御部60に入力される。
制御部60は、イメージ成分の強度に応じた位相シフト量に従ってシフト信号の位相をシフトさせるためにデジタルシフト信号発生部31を制御する具体的には、制御部60は、第1、第2デジタルシフト信号の間の位相シフト量を増やした結果、イメージ成分の信号強度が大きくなれば、位相シフト量を減らし、第1、第2デジタルシフト信号の間の位相シフト量を増やした結果、イメージ成分の信号強度が小さくなれば、位相シフト量をさらに増やすためにデジタルシフト信号発生部31を制御する。なお、位相シフト量を増やすとは、例えば、ある制御周期で設定された第1、第2デジタルシフト信号の位相差が89度であったのを、その次の制御周期で90度に設定することを表す。
なお、デジタルシフト信号発生部31、誤差周波数検出部81、ローカルリーク成分強度検出部83、イメージ成分強度検出部85及び制御部60の各機能は、FPGA100上に実装される。このFPGA100のクロック端子に水晶発振器110が接続される。
以下、誤差周波数検出部81の構成について図5を参照して説明する。図5に示すように、誤差周波数検出部81は、デジタル乗算器813、数値制御発振器(以下単にNCOという)811、ローパスフィルタ(以下単にLPFという)815、及び誤差周波数計算部817を有する。
デジタル乗算器813は、ADC70の出力信号に対してNCO811の出力信号を乗算する。デジタル乗算器813の出力信号に含まれる高周波成分(ADC70の出力信号の周波数にNCO811の出力信号の周波数を加算した加算信号成分とAD変換等が起因となる高い周波数のノイズ成分を含む)は、デジタル乗算器813の出力に配置されたLPF815により減衰される。LPF815を通過した、デジタル乗算器813の低周波成分(ADC70の出力信号の周波数からNCO811の出力信号の周波数を減算した減算信号成分を含む)は、誤差周波数計算部817に入力されるとともに、NCO811に周波数制御信号として供給される。
NCO811は、水晶発振器110の出力信号を基準クロックとし、LPF815から周波数制御信号として入力されたデジタル乗算器813の出力信号の低周波成分に基づいて、任意の周波数で振動する波形をデジタルで表現したデジタル波形信号を発生する。具体的には、LPF815を通過した低周波成分は、ADC70の出力信号とNCO811の出力信号との間の周波数差を示す。NCO811は、この周波数差がゼロに接近するように、つまりADC70の出力信号に追従するように動作する。これにより、NCO811は、ADC70の出力信号の周波数に略一致した周波数の波形をデジタルで表現したデジタル波形信号を発生する。NCO811の出力信号の周波数、位相がADC70の出力信号に一致するとき、LPF815を通過した低周波成分は周波数0Hzの直流成分となり、その直流成分のデジタル値はADC70の出力信号の周波数に対応する。
誤差周波数計算部817は、LPF815を通過した低周波成分に基づいて、誤差周波数(fe)を計算する。具体的には、誤差周波数計算部817には、制御部60から発振器11の公称周波数(f0)、逓倍数(n)、分周数(N)、シフト周波数(f3)に関するデータが提供されている。これらのデータに基づいて、発振器11の出力信号に誤差周波数(fe)が含まれないときのADC70の出力信号の周波数を計算することができる。したがって、誤差周波数計算部817は、LPF815の出力信号が示すADC70の出力信号の周波数から、予め計算された誤差周波数がないときのADC70の出力信号の周波数を減算することにより、発振器11の公称周波数(f0)に対する発振器11の出力信号の周波数(f0+fe)の誤差周波数(fe)を検出することができる。誤差周波数検出部81により検出された誤差周波数(fe)に関するデータは制御部60に入力される。
第1信号合成部40は、分周器20の出力信号の周波数((n・(f0+fe)/N)を周波数(f3-n・fe-((n・fe)/N))だけシフトした周波数((n・f0)+f3-n・fe)に変換するために分周器20の出力信号にシフト信号を合成する。
第2信号合成部50は、発振部10の出力信号の周波数(n・(f0+fe))を周波数(n・f0+((n・f0)/N)+f3)に変換するために発振部10の出力信号に第1信号合成部40の出力信号を合成する。
以上説明したように、図1に示す発振装置1の基本構成に、誤差周波数検出部81を付加することにより、発振器11の出力信号に誤差周波数(fe)が含まれていても、その誤差周波数(fe)を検出し、誤差周波数(fe)に基づいてデジタルシフト信号の周波数を調整することにより、第1、第2信号合成部40、50の信号合成処理を経て、発振装置1から最終的に出力される発振信号から誤差周波数(fe)に応じた成分をキャンセルすることができる。つまり、発振装置1から最終的に出力される発振信号の周波数を目標周波数で安定させることができる。
さらに、第1信号合成部40の出力信号に基づいて、ローカルリーク成分の信号強度とイメージ成分の信号強度とを検出し、その検出結果に基づいて第1、第2デジタルシフト信号の位相シフト量とDCオフセット量とを調整することにより、第1信号合成部40による信号合成処理に起因して生じるローカルリーク成分とイメージ成分とを減衰させることができる。これにより、最終的に発振装置1から出力される発振信号に含まれるスプリアスを減衰させることができる。
なお、逓倍器13が配置される位置は本実施形態に限定されない。逓倍器13は、第2信号合成部50の出力に配置してもよいし、第2信号合成部50の入力の直前に配置してもよい。さらに、複数の逓倍器を分散して配置してもよい。具体的には、図7に示す変形例に係る発振装置1のように、2つの逓倍器13、15を、発振器11の出力と第2信号合成部50の出力とにそれぞれ配置するようにしてもよい。逓倍器を配置する位置、配置する数は、回路設計、目標周波数、周波数のシフト幅等に応じて、適宜変更することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1…発振装置、10…発振部、11…発振器、13…逓倍器、20…分周器、25…LPF、30…シフト信号発生部、31…デジタルシフト信号発生部、33…DAC、40…第1信号合成部、50…第2信号合成部、60…制御部、70…ADC、81…誤差周波数検出部、83…ローカルリーク成分強度検出部、85…イメージ成分強度検出部、100…FPGA、110…水晶発振器。
Claims (10)
- 発振部と、
前記発振部の出力信号の周波数(f1)を、分周数Nとして周波数(f1/N)に分周する分周器と、
所定の周波数(f3)で振動するアナログのシフト信号を発生するシフト信号発生部と、
前記分周器の出力信号の周波数(f1/N)を前記周波数(f3)だけシフトした周波数((f1/N)+f3)に変換するために前記分周器の出力信号に前記シフト信号を合成する第1信号合成部と、
前記発振部の出力信号の周波数(f1)を周波数(f1+(f1/N)+f3)に変換するために前記発振部の出力信号に前記第1信号合成部の出力信号を合成する第2信号合成部と、
を具備する発振装置。 - 前記周波数(f1)は数十ギガ帯域、前記周波数(f1/N)は数百メガ帯域、前記周波数(f3)はゼロ乃至数十メガ帯域である請求項1記載の発振装置。
- 前記シフト信号発生部は、
前記周波数(f3)の波形をデジタルで表現するデジタルシフト信号を発生するデジタルシフト信号発生部と、
前記デジタルシフト信号を前記シフト信号に変換するデジタルアナログ変換器と、を有する請求項1記載の発振装置。 - 前記発振部は、SAW発振器と、前記発振器の出力信号の周波数を所定の逓倍数で逓倍する逓倍器とを有する請求項1記載の発振装置。
- 周波数(f0+fe;feは誤差周波数)で発振する発振器と、
前記発振器の出力信号の周波数(f0+fe)を所定の逓倍数(n)で逓倍する逓倍器と、
前記逓倍器の出力信号の周波数(n・(f0+fe))を、分周数(N)として周波数((n・(f0+fe))/N)に分周する分周器と、
初期的周波数(f3)の波形をデジタルで表現するデジタルシフト信号を発生するデジタルシフト信号発生部と、
前記デジタルシフト信号をアナログのシフト信号に変換するデジタルアナログ変換器と、
前記分周器の出力信号の周波数((n・(f0+fe))/N)を前記周波数(f3)だけシフトした周波数(((n・(f0+fe))/N)+f3)に変換するために前記分周器の出力信号に前記シフト信号を合成する第1信号合成部と、
前記逓倍器の出力信号の周波数(n・(f0+fe))を周波数(n・(f0+fe)+((n・(f0+fe))/N)+f3)に変換するために前記逓倍器の出力信号に前記第1信号合成部の出力信号を合成する第2信号合成部とを具備し、
前記第2信号合成部の出力に含まれる誤差成分(n・fe+((n・fe)/N))をキャンセルするためにさらに、
前記第1信号合成部の出力信号をデジタル変換するアナログデジタル変換器と、
前記アナログデジタル変換器の出力に基づいて前記発振器の公称周波数に対する前記発振器の実際の周波数の誤差周波数(fe)を検出する誤差周波数検出部と、
前記誤差周波数(fe)、前記逓倍数(n)、前記分周数(N)に基づいて前記デジタルシフト信号を周波数(f3−n・fe−((n・fe)/N))で発生するよう前記デジタルシフト信号発生部を制御する制御部とを備える発振装置。 - 前記誤差周波数(fe)は第1周期で繰り返し検出され、
前記制御部は、前記シフト信号の周波数を前記第1周期より長い第2周期で変動させるために前記デジタルシフト信号発生部を制御する請求項5記載の発振装置。 - 前記誤差周波数検出部は、
デジタル波形信号を発生する数値制御発振器と、
前記アナログデジタル変換器の出力信号に前記デジタル波形信号を乗算するデジタル乗算器と、
前記デジタル乗算器の出力信号に含まれる低周波成分を通過させるローパスフィルタと、
前記低周波成分に基づいて前記誤差周波数を計算する誤差周波数計算部とを有し、
前記ローパスフィルタから出力される前記低周波成分に含まれる、前記アナログデジタル変換器の出力信号の周波数と前記デジタル波形信号の周波数との減算成分をゼロに接近させるように前記デジタル波形信号の周波数が変化する請求項5記載の発振装置。 - 前記アナログデジタル変換器の出力信号に基づいて、前記第1信号合成部の信号合成処理により生じるローカルリーク成分の強度を検出するローカルリーク成分強度検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記ローカルリーク成分の強度に応じたDCオフセット量に従って前記デジタルシフト信号をオフセットさせるために前記デジタルシフト信号発生部を制御する、請求項5記載の発振装置。 - 前記アナログデジタル変換器の出力信号に基づいて、前記第1信号合成部の信号合成処理により生じるイメージ成分の強度を検出するイメージ成分強度検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記イメージ成分の強度に応じた位相シフト量に従って前記デジタルシフト信号の位相をシフトさせるために前記デジタルシフト信号発生部を制御する、請求項5記載の発振装置。 - 前記発振器はSAW発振器である請求項5記載の発振装置。
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