次に、この発明の一実施形態のヒートポンプ式温水暖房システム1の構成について、図面に基づき詳細に説明する。
2は加熱された循環液を供給するヒートポンプ式熱源機としてのヒートポンプユニットで、ヒートポンプユニット2は、その筐体内に、冷媒を圧縮する回転数可変の圧縮機3、冷媒と循環液との熱交換を行う液冷媒熱交換器4、冷媒を減圧する減圧手段としての膨張弁5、送風ファン6の作動により送られる空気(外気)との熱交換を行う空気熱交換器7とを有し、それらを冷媒配管8で環状に接続して冷媒が循環するヒートポンプ回路9を形成している。前記ヒートポンプ回路9を循環する冷媒としては、HFC冷媒や二酸化炭素冷媒等の任意の冷媒を用いることができる。前記液冷媒熱交換器4は、例えば、プレート式熱交換器で構成され、プレート式熱交換器は、複数の伝熱プレートが積層され、冷媒を流通させる冷媒流路と循環液を流通させる液流路とが各伝熱プレートを境にして交互に形成されている。
10は圧縮機3から吐出される冷媒の吐出温度を検出する吐出温度検出手段としての吐出温度センサ、11は外気温度を検出する外気温度センサ、12は空気熱交換器7から圧縮機3までの冷媒配管8に設けられ、空気熱交換器7の出口側の冷媒の温度を検出する冷媒温度検出手段としての冷媒温度センサである。
13はヒートポンプユニット2と配管としての往き管14および戻り管15を介して接続され、ヒートポンプユニット2で加熱された循環液が供給され、供給された循環液を熱源として被空調空間の暖房を行う熱交換端末である。熱交換端末13としては、床暖房パネルや輻射パネルやラジエータ等の輻射式端末を用いることができる。図1では3台の熱交換端末13A、13B、13Cが設けられているが、熱交換端末13は1台でも2台でも3台以上の複数台であってもよい。
ここで、ヒートポンプユニット2の液冷媒熱交換器4から熱交換端末13に向かって延びる前記往き管14の途中には、1つの往きヘッダ16が設けられており、往き管14のうち往きヘッダ16より上流側部分は、1つの共通往き管14aとして構成され、ヒートポンプユニット2の液冷媒熱交換器4にて加熱された循環液(例えば、水や不凍液等であり、以下、加熱された循環液を温水と適宜表現する)が供給される。そして、往き管14のうち往きヘッダ16より下流側部分は熱交換端末13の台数分だけ(図示の例では3本)の個別往き管14bが分岐している。分岐した個別往き管14bには、それぞれ流量制御弁としての熱動弁17(17A、17B、17C)が付設されている。
同様に、熱交換端末13からヒートポンプユニット2の液冷媒熱交換器4に向かって延びる戻り管15の途中には、1つの戻りヘッダ18が設けられており、戻り管15のうち戻りヘッダ18より上流側部分は、熱交換端末13の台数分だけ(図示の例では3本)の個別戻り管15bが分岐している。そして、戻り管15のうち戻りヘッダ18より下流側部分は、1つの共通戻り管15aとして構成され、個別戻り管15bを介して導入された循環液をヒートポンプユニット2の液冷媒熱交換器4へと戻すものである。
前記往きヘッダ16および前記戻りヘッダ18は、図示のようにヒートポンプユニット2の筐体内に設けられていても、ヒートポンプユニット2筺体外に設けられていても、どちらでもよい。
19はヒートポンプユニット2の液冷媒熱交換器4と、熱交換端末13とを、往き管14および戻り管15で接続して形成され循環液が循環する循環回路で、共通戻り管15aには、循環回路19に循環液を循環させる回転数可変の循環ポンプ20と、循環液を貯留し循環回路19の圧力を調整するシスターン21とを備えている。前記戻り管15の前記個別戻り管15bのそれぞれには、前記液冷媒熱交換器4の液流路に流入する循環液の温度を検出する、温度検出手段としての戻り温度センサ22(22A、22B、22C)が設けられている。
23はリビング等の室内壁面に設置されるリモコンで、リモコン23は、表示部24と、操作スイッチとしての熱交換端末13の運転開始・停止を指示するための運転/停止スイッチ25と、熱交換端末13に対しタイマーによる運転を指示するためのタイマースイッチ26と、熱交換端末13の運転態様(通常モード・セーブモード等)の切替を指示する運転切替スイッチ27と、画面表示を1つ前の画面に戻すための戻るスイッチ28と、メニュー/決定スイッチ29と、上下左右方向への十字キー30と、が備えられている。なお、リモコン23には、各種の表示を行うための制御手段としてのCPUや記憶手段としてのメモリ等が内蔵されており、後述する制御部31との間で双方向通信により情報の伝達を行うことができる。リモコン23は熱交換端末13に供給する循環液の温度レベル(温水温度)を設定する機能を有し、本実施形態では、温度レベルとしてレベル1〜9を設定することができる。
ここで、リモコン23の表示について図2を用いて説明すると、表示部24は、前記CPUの制御により、複数の設定画面(画面100〜101)を切替可能に表示することができる。すなわち、表示部24は、図2(a)に示す例では、ヒートポンプ式温水暖房システム1全体に係わる設定を行うための全体設定画面100を表示している。表示部24に全体設定画面100が表示されている場合、全体設定画面100中央にヒートポンプユニット2(熱源)の運転状態が表される(この例では停止)と共に、メインタブTM内にヒートポンプユニット2の運転状態を表す状態表示がなされる(この例では停止状態である「OFF」が表記される)。
一方、図2(b)に示す例では、表示部24は、熱交換端末13の運転開始・停止設定を含む、熱交換端末13に係わる設定を行うための端末設定画面101を表示している。なお、端末設定画面101は、接続される熱交換端末13の台数に対応した数(本実施形態では3つ)だけ設けることができる。表示部24に端末設定画面101が表示されている場合、端末設定画面101中央に、対応する熱交換端末13の部屋名および運転状態が表され、画面右寄りには、熱交換端末13に供給される温水の温度レベルと、その温度レベルを表すインジケータが表示される。この例では、被空調空間としてA室に対応する熱交換端末13Aの端末設定画面101が表示され、画面中央にA室の温水暖房が停止状態であること、および画面右寄りに温水の温度レベルが5に設定されていることが表示されている。なお、タブTA内には、A室に対応する熱交換端末13Aの運転状態を表す状態表示(「OFF」表記)がなされる。詳細な説明は省略するが、B室に対応する熱交換端末13Bの端末設定画面101、C室に対応する熱交換端末13Cの端末設定画面101に表示される内容は、上記のA室に対応する熱交換端末13Aの端末設定画面101に表示される内容と同様である。
本実施形態では、1つのリモコン23で3台の熱交換端末13A、13B、13Cの運転設定を行えるようにしているが、リモコン23を熱交換端末13毎に設け、1つのリモコン23から対応する1つの熱交換端末13の運転設定を行えるようなものであってもよい。
31は各種のデータやプログラムを記憶する記憶手段と、演算・制御処理を行う制御手段とを備えた制御部であり、制御部31はヒートポンプユニット2内の各種センサの信号やリモコン23からの信号を受け、圧縮機3、膨張弁5、送風ファン6、熱動弁17、循環ポンプ20の駆動を制御するものであり、熱交換端末13に供給される温水の温度が目標温水温度になるように、ヒートポンプユニット2(圧縮機3、膨張弁5、送風ファン6)、熱動弁17、循環ポンプ20を制御して暖房運転を行うものである。
前記制御部31は、図4に示すように、圧縮機3の回転数を制御する圧縮機制御手段32、膨張弁5の開度を制御する膨張弁制御手段33と、循環ポンプ20の回転数を制御する循環ポンプ制御手段34と、熱交換端末13に供給される循環液の目標温水温度を設定する目標温水温度設定手段35と、圧縮機3から吐出される冷媒の目標吐出温度を設定する目標吐出温度設定手段36とを有している。なお、上記の各手段の制御・処理内容の詳細については後述する。
また、前記制御部31は、暖房運転時に、所定の蓄熱運転開始条件が成立した場合に、運転中の熱交換端末13に供給される循環液の温度をそれまでよりも高い蓄熱目標温度に上昇させる蓄熱運転を行わせる蓄熱制御手段37と、空気熱交換器7の霜を溶かす除霜運転を行わせる除霜制御手段38とを有し、前記蓄熱制御手段37は、蓄熱運転開始からの時間をカウントするカウント手段39と、蓄熱運転時に循環液の温度が蓄熱目標温度に到達してから所定の除霜開始条件が成立するまでの時間を計測する計測手段40と、今回の蓄熱運転の状況に基づいて次回の蓄熱運転開始条件を補正する蓄熱開始条件補正手段41とを有している。なお、上記の各手段の制御・処理内容の詳細については後述する。
次に、ヒートポンプ式温水暖房システム1の暖房運転時の動作について図面を用いて説明する。ここでは、熱交換端末13Aによる暖房運転が行われる場面について説明を行う。
まず、リモコン23の表示部24に端末設定画面101が表示された状態で、ユーザによりリモコン23の運転/停止スイッチ25が操作され、熱交換端末13Aの暖房運転開始指示がなされると、制御部31でその指示信号を受ける。この時、リモコン23の表示部24には、図3(b)に示されているように、運転状態(A室温水暖房運転中)や温度レベル(レベル5)が表示され、タブTA内は「ON」表記となる。全体設定画面100では、図3(a)に示されているように、画面中央にヒートポンプユニット2の運転状態(運転中)が表示されると共に、タブTM内は「ON」表記となる。
前記暖房運転の開始指示が出ると、制御部31はヒートポンプ回路9の作動を開始(圧縮機3、送風ファン6の駆動を開始すると共に、膨張弁5を所定開度に制御)させ、さらに、制御部31は、熱交換端末13Aに対応する熱動弁17Aを開弁させ、循環ポンプ20の駆動を開始させることで、暖房運転が開始される。前記暖房運転中、ヒートポンプ回路9では、圧縮機3で圧縮された高温・高圧のガス状の冷媒が圧縮機3から吐出され、冷媒は凝縮器として機能する液冷媒熱交換器4にて、循環回路19を流れる温水と熱交換を行って温水に熱を放出して加熱しながら気液混合状態で高圧の冷媒に変化する。そして、この状態の冷媒が膨張弁5において減圧されて低圧の冷媒となって蒸発しやすい状態となり、蒸発器として機能する空気熱交換器7において、送風ファン6の駆動により送風される外気と熱交換を行って外気から吸熱して低温・低圧のガス状の冷媒となって、再び圧縮機3へ戻るものである。(図5中の矢印が示す冷媒の流れ参照。)
一方、循環回路19では、一定回転数で駆動される循環ポンプ20の駆動により液冷媒熱交換器4に流入した温水は、凝縮器として機能する液冷媒熱交換器4において冷媒と熱交換されて加熱され、加熱された温水は、その後、熱交換端末13Aに供給されて熱交換端末13Aに対応する被空調空間(A室)の暖房に用いられ、熱交換端末13Aにて放熱されて温度低下した温水は再び液冷媒熱交換器4へと戻り加熱されるものである。ここでは、熱交換端末13Bおよび熱交換端末13Cによる暖房は停止されているため、熱交換端末13Bに対応する熱動弁17Bと、熱交換端末13Cに対応する熱動弁17Cとは閉弁された状態であり、図5に示すように、液冷媒熱交換器4で加熱された温水は熱交換端末13Aにのみ循環される。(図5中の矢線が示す温水の流れ参照。)
前記暖房運転時において、熱交換端末13Aに供給される温水の目標温水温度は、前記目標温水温度設定手段35により設定される。目標温水温度設定手段35は、リモコン23で設定された温度レベルに応じて、対応する目標温水温度を設定する。本実施形態では、目標温水温度設定手段35は、リモコン23で設定された温度レベルに応じて、対応する目標温水温度として目標戻り温度(例えば、温度レベルに対応付けられた温水温度−所定温度)を設定している。前記圧縮機制御手段32は、戻り温度センサ22Aにより検出される温水の温度が、目標温水温度設定手段35により設定された前記目標戻り温度になるように、圧縮機3の回転数を制御することで、熱交換端末13Aに供給される温水温度がリモコン23で設定された温度レベルになるようにしている。ここでは、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度が目標戻り温度に到達することが、熱交換端末13Aに供給される温水の温度がリモコン23で設定された温度レベルに到達したこととして判断される。
より詳細に圧縮機3の回転数制御について説明すると、圧縮機制御手段32は、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度と、目標温水温度設定手段35で設定された目標戻り温度との温度差から負荷の大きさを判断し、その負荷の大きさに応じて、圧縮機3の回転数を増減制御するものであり、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度が目標戻り温度に達していない場合は、圧縮機3の回転数を増加させる。一方、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度が目標戻り温度に到達してきたら、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度を目標戻り温度に維持するために、圧縮機3の回転数を減少させるものである。
なお、本実施形態において、目標温水温度設定手段35は、リモコン23で設定された温度レベルに応じて、対応する目標温水温度としての目標戻り温度を設定し、液冷媒熱交換器4の入口側(流入側)の戻り管15に設けた戻り温度センサ22で検出された温水の温度が目標戻り温度になるように圧縮機3の回転数を制御する、いわゆる戻り温度制御を行っているが、これに限定されず、目標温水温度設定手段35は、リモコン23で設定された温度レベルに対応する温水温度をそのまま目標温水温度(目標往き温度)として設定し、液冷媒熱交換器4の出口側(流出側)の往き管14に温度検出手段として往き温度センサ(図示せず)を設けて、往き温度センサで検出された温水の温度が目標往き温度になるように圧縮機3の回転数を制御する、いわゆる往き温度制御を行うものであってもよい。
また、前記暖房運転時において、圧縮機3から吐出される冷媒の目標吐出温度は、前記目標吐出温度設定手段36で設定される。目標吐出温度設定手段36は、目標温水温度設定手段35で設定された目標温水温度に基づいて、対応する目標吐出温度を設定する。より詳細には、目標吐出温度設定手段36は、目標温水温度設定手段35で設定された目標温水温度に加え、暖房運転時の圧縮機3の回転数に関する係数および外気温度センサ11で検出される暖房運転時の外気温度に関する係数に基づいて、対応する目標吐出温度(=目標温水温度+圧縮機3の回転数に関する係数+外気温度に関する係数)を設定している。前記膨張弁制御手段33は、吐出温度センサ10により検出される圧縮機3から吐出される冷媒の温度が、目標吐出温度設定手段36により設定された前記目標吐出温度になるように、膨張弁5の開度を制御している。
より詳細に膨張弁5の開度制御について説明すると、膨張弁制御手段33は、吐出温度センサ10により検出される冷媒の温度と、目標吐出温度設定手段36で設定された目標吐出温度との温度差に応じて、膨張弁5の開度を制御するものであり、吐出温度センサ10により検出される冷媒の温度が目標吐出温度に達していない場合は、膨張弁5の開度を絞る方向(閉じ方向)に制御させる。一方、吐出温度センサ10により検出される冷媒の温度が目標吐出温度に到達してきたら、吐出温度センサ10により検出される冷媒の温度を目標吐出温度に維持するために、膨張弁5の開度を開く方向に制御させるものである。
また、前記暖房運転時において、循環ポンプ20は循環ポンプ制御手段34によって一定回転数(例えば、3500rpm)に制御される。
次に、前記暖房運転中に行われる特徴的な動作である蓄熱運転について説明し、ここでは、熱交換端末13Aによる暖房運転が行われる場面に基づいて説明を行う。前記蓄熱運転は、前記暖房運転時に所定の蓄熱運転開始条件が成立した場合に、熱交換端末13Aに供給される循環液の温度を上昇させるものである。なお、前記蓄熱運転開始条件は、外気温度と空気熱交換器7の出口側の冷媒温度とに基づいて設定される条件、すなわち、外気温度と空気熱交換器7の出口側の冷媒温度とから、じきに除霜運転が開始されると推測される条件(除霜開始条件が成立するよりも手前で成立する条件)である。
前記暖房運転時、蓄熱制御手段37は、前記蓄熱運転開始条件が成立したか否かを判断し、蓄熱運転開始条件が成立したと判断した場合、蓄熱運転を開始する。この蓄熱運転の開始と同時にカウント手段39のカウントも開始される。蓄熱運転が開始されると、蓄熱制御手段37から蓄熱運転中である旨の信号が出力され、目標温水温度設定手段35は、その信号を受け、それまで設定されていた暖房運転時の目標戻り温度(目標温水温度)より高い所定の蓄熱目標温度を新たな目標戻り温度(目標温水温度)として設定する。
この時、前記圧縮機制御手段32は、戻り温度センサ22Aにより検出される温水の温度が、目標温水温度設定手段35により設定された前記蓄熱目標温度になるように、圧縮機3の回転数を制御するものであり、実際の動きとして、蓄熱運転開始直後は、目標戻り温度(目標温水温度)がそれまで設定されていた暖房運転時の目標戻り温度よりも高い温度である蓄熱目標温度に変更されることから、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度と目標戻り温度(蓄熱目標温度)との温度差が、蓄熱運転直前の暖房運転時よりも大きくなるので、圧縮機制御手段32は、圧縮機3の回転数を増加させるようにする。そして、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度が目標戻り温度(蓄熱目標温度)に到達してきたら、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度を目標戻り温度に維持するために、圧縮機3の回転数を減少させるようにする。
また、蓄熱運転が開始されると、蓄熱制御手段37から蓄熱運転中である旨の信号が目標吐出温度設定手段36にも出力され、目標吐出温度設定手段36は、その信号を受けると、蓄熱運転を開始する直前の暖房運転時に設定されていた目標吐出温度を維持するよう制御する。すなわち、蓄熱運転時は、暖房運転時のように、目標戻り温度(目標温水温度)に応じて目標吐出温度を変更するといった設定方法をとらず、目標戻り温度が暖房運転時より高い所定の蓄熱目標温度に変更されたとしても、蓄熱運転を開始する直前の暖房運転時に設定されていた目標吐出温度をそのまま維持し、蓄熱運転が終了するまでその目標吐出温度が維持される。
このとき、目標吐出温度は、蓄熱運転を開始する直前の暖房運転時に設定されていたものがそのまま維持されるため、膨張弁制御手段33は、膨張弁5の開度を大きく変更することはなく、蓄熱運転開始直後は蓄熱運転を開始する直前の暖房運転時の開度を維持する。蓄熱運転中、圧縮機3から吐出される冷媒の温度は多少の高低はあれども、目標吐出温度は蓄熱運転を開始する直前の暖房運転時より高くされることはないので、膨張弁5の開度を大きく絞る(閉じる)という動作は発生せず、空気熱交換器7に循環される冷媒温度が大きく低下することもない。
また、蓄熱運転が開始されると、蓄熱制御手段37から蓄熱運転中である旨の信号が循環ポンプ制御手段34にも出力され、循環ポンプ制御手段34は、その信号を受けると、循環ポンプ制御手段34は、循環ポンプ20の回転数を暖房運転時よりも低下させるように制御する。
ここで、液冷媒熱交換器4に流入する温水の温度が一定で、液冷媒熱交換器4において冷媒から温水に一定の熱量が与えられた場合を想定すると、循環ポンプ20の回転数を低下させたときの方が、単位時間当たりの温水の循環流量が減少し、温度効率が上がるため、液冷媒熱交換器4から流出する温水の温度は高くなる。よって、蓄熱運転時に循環ポンプ20の回転数を低下させると、熱交換端末13Aに供給される温水の温度を上昇させることができる。さらに、蓄熱運転時の目標温水温度は、暖房運転時の目標温水温度よりも高い蓄熱目標温度に設定されるため、圧縮機3の回転数が増加する方向に制御される。その結果、液冷媒熱交換器4を通過する冷媒の循環流量が増加し、液冷媒熱交換器4において冷媒から温水に与えようとする熱量が増加するので、液冷媒熱交換器4から流出する温水の温度を上昇させやすくなる。また、循環ポンプ20の回転数は暖房運転時より低下しているため、液冷媒熱交換器4において冷媒から温水に与えられる熱量は減り、液冷媒熱交換器4から流出する冷媒の温度が高くなる。そうすると、空気熱交換器7へ循環される冷媒の温度も高くなり、空気熱交換器7への霜の付着の進行を抑えることができる。その上、蓄熱運転時に循環ポンプ20の回転数を低下させて熱交換端末13Aに供給される温水の温度を高くしているが、循環ポンプ20の回転数を低下させていることで、温水の循環流量は下がり、熱交換端末13Aで放熱されにくくなり、温水の温度自体は高くなるが、熱交換端末13Aに対応するA室の室温が上がりすぎるようなことはなく、ユーザに不快感を与えることがない。
前記蓄熱運転時の循環ポンプ20の回転数低下制御について、より具体的に説明すると、循環ポンプ制御手段34は、蓄熱運転の際、戻り温度センサ22Aで検出される温水温度が前記蓄熱目標温度に到達するまで、循環ポンプ20の回転数を所定時間毎に所定値ずつ徐々に低下させるように制御する。なお、蓄熱運転時に低下させることのできる循環ポンプ20の下限回転数は予め設定されており、循環ポンプ20の回転数を徐々に低下させ、戻り温度センサ22Aで検出される温水温度が前記蓄熱目標温度に到達するまでの間に、循環ポンプ20の回転数が予め設定された下限回転数に到達した場合、到達後は、循環ポンプ20を下限回転数で制御するようにする。
前記暖房運転中および蓄熱運転中において、外気温度が低い場合、空気熱交換器7は徐々に着霜する。前記蓄熱運転中に、所定の除霜開始条件が成立した場合、蓄熱運転を終了した後に、除霜制御手段38は空気熱交換器7の霜を溶かすための除霜運転の実行を開始するものである。除霜運転の詳細については後述する。
上記の蓄熱運転時における制御を実現するために、制御部31によって実行される制御手順を、図6のフローチャートにより説明する。ここでは、熱交換端末13Aによる暖房運転が行われる場面について説明を行う。
前記暖房運転時、蓄熱制御手段37は、蓄熱運転開始条件が成立したと判断した場合、蓄熱運転を開始し、カウント手段39による蓄熱運転の時間のカウントが開始される(ステップS1)。
その後、目標温水温度設定手段35は、目標温水温度(目標戻り温度)として前記蓄熱目標温度を設定し(ステップS2)、ステップS3に移行する。なお、ステップS2で行われる蓄熱目標温度の設定の仕方については後述する。
ステップS3において、目標吐出温度設定手段36は、蓄熱運転を開始する直前の暖房運転時に設定されていた目標吐出温度と同じ温度を、継続して目標吐出温度として設定し、ステップS4で、循環ポンプ制御手段34は、循環ポンプ20の回転数を暖房運転時の回転数(例えば、3500rpm)から所定値(例えば、100rpm)低下させる。
その後、ステップS5で、蓄熱制御手段37にて所定時間(ここでは、1分)が経過したか否かが判定される。1分が経過していなければ判定が満たされずループ待機し(ステップS5:NO)、1分が経過したら判定が満たされ(ステップS5:YES)、ステップS6に移行する。
ステップS6において、蓄熱制御手段37は、戻り温度センサ22Aで検出される温水温度がステップS2で設定した目標温水温度(蓄熱目標温度)に到達したか否かを判定する。戻り温度センサ22Aで検出される温水温度が蓄熱目標温度に到達していなければ判定が満たされず(ステップS6:NO)、ステップS7に移行し、ステップS7において、除霜制御手段38は、所定の除霜開始条件が成立したか否か判定する。ここで、前記除霜開始条件の成立は、外気温度と空気熱交換器7の出口側の冷媒温度とに基づいて設定される条件、例えば、外気温度が所定温度(例えば2℃)以下、且つ、外気温度−空気熱交換器7の出口側の冷媒温度>8℃という条件か、または蓄熱運転を開始してから一定時間(例えば、40分)が経過すること、すなわちカウント手段39のカウントする時間が一定時間を超えるという条件のうち、何れか一方の条件が成立することである。
前記ステップS7において、所定の除霜開始条件が成立していなければ判定が満たされず(ステップS7:NO)、ステップS8に移行し、ステップS8で、循環ポンプ制御手段34は、現在の循環ポンプ20の回転数が下限回転数か否か判定する。現在の循環ポンプ20の回転数が下限回転数ではない場合は判定が満たされず(ステップS8:NO)、ステップS4に移行し、循環ポンプ20の回転数を100rpm低下させる。
上記のように、戻り温度センサ22Aで検出される温水温度が目標温水温度(蓄熱目標温度)に到達しておらず(ステップS6:NO)、除霜開始条件も成立せず(ステップS7:NO)、現在の循環ポンプ20の回転数が下限回転数ではない場合(ステップS8:NO)は、ステップS6:NO→ステップS7:NO→ステップS8:NO→ステップS4→ステップS5→ステップS6をループし、循環ポンプ20の回転数は1分毎に100rpmずつ低下していく。そして、戻り温度センサ22Aで検出される温水温度が目標温水温度(蓄熱目標温度)に到達しておらず(ステップS6:NO)、除霜開始条件も成立していない(ステップS7:NO)が、現在の循環ポンプ20の回転数が下限回転数に到達した場合(ステップS8:YES)は、ステップS6に移行し、以後、蓄熱運転が終了するまでは、循環ポンプ20の回転数は下限回転数で維持される。
前記ステップS6において、戻り温度センサ22Aで検出される温水温度が目標温水温度(蓄熱目標温度)に到達していない(ステップS6:NO)が、除霜開始条件は成立(ステップS7:YES)した場合は、蓄熱制御手段37は蓄熱運転を終了させる。そして、除霜制御手段38は除霜運転を開始させる。
また、前記ステップS6において、戻り温度センサ22Aで検出される温水温度が目標温水温度(蓄熱目標温度)に到達したら判定が満たされ(ステップS6:YES)、ステップS9に移行し、ステップS9において、除霜制御手段38は、所定の除霜開始条件が成立したか否か判定する。除霜開始条件が成立するまでは、ステップS9の判定が満たされず(S9:NO)ループ待機し、除霜開始条件が成立したら判定が満たされ(ステップS9:YES)、蓄熱制御手段37は蓄熱運転を終了させる。そして、除霜制御手段38は除霜運転を開始させる。
以上説明したように、本実施形態のヒートポンプ式温水暖房システム1では、蓄熱運転の際、目標温水温度設定手段35は、それまで設定されていた暖房運転時の目標温水温度より高い所定の蓄熱目標温度を目標温水温度として設定し、目標吐出温度設定手段36は、蓄熱運転直前の暖房運転時の目標吐出温度を維持し、循環ポンプ制御手段34は、循環ポンプ20の回転数を暖房運転時よりも低下させるようにしている。
そうすると、蓄熱運転の際に、目標温水温度設定手段35により、目標温水温度が、それまでよりも高い所定の蓄熱目標温度に設定されたとしても、目標吐出温度設定手段36により、目標吐出温度は、蓄熱運転を開始する直前の暖房運転時に設定されていたものがそのまま維持され、膨張弁制御手段33により、膨張弁5の開度が大きく変更されることはなく、空気熱交換器7に循環される冷媒温度が大きく低下することもないので、空気熱交換器7への霜の付着が進行する状況になることがない。
そして、蓄熱運転時には、循環ポンプ制御手段34により、循環ポンプ20の回転数を暖房運転時よりも低下させるため、単位時間当たりの温水の循環流量が減少し、温度効率が上がるため、液冷媒熱交換器4から流出する温水の温度は高くなり、熱交換端末13Aに供給される温水の温度が上昇し、熱交換端末13A側に蓄熱することができる。さらに、蓄熱運転時に循環ポンプ20の回転数を低下させていることで、温水の循環流量は下がり、熱交換端末13Aで放熱されにくくなり、温水の温度自体は高くなるが、熱交換端末13Aに対応する空間(A室)の室温が上がりすぎるようなことはなく、ユーザに不快感を与えることがないものである。
上記のようにすることで、空気熱交換器7への霜の付着が進行する状況とはならず、除霜時間が長くなることがないため、熱交換端末13A側に蓄熱した分で、除霜運転時に低下する循環液の温度低下分を賄うことができ、除霜運転時に快適性が損なわれることがないものである。
また、蓄熱運転の際、循環ポンプ制御手段34は、温水の温度が蓄熱目標温度に到達するまで、循環ポンプ20の回転数を徐々に低下させるようにしている。
これは、循環ポンプ20の回転数を急激に低下させると、液冷媒熱交換器4から流出する温水の温度が一気に上昇して高くなり過ぎて、高温異常と判定されてしまい、熱交換端末13A側に必要な熱量を蓄熱する前にヒートポンプユニット2が停止してしまうおそれがあるためであり、循環ポンプ20の回転数を徐々に低下させることで、無駄にヒートポンプユニット2を停止させることなく、温水の温度を蓄熱目標温度に近づけ、必要な熱量を熱交換端末13A側に蓄熱することができるものである。
また、蓄熱運転の際、循環ポンプ制御手段34は、循環ポンプ20の回転数を低下させ、予め設定された下限回転数に到達した場合、その後は循環ポンプ20を下限回転数で制御するようにしている。
これは、循環ポンプ20の回転数を際限なく下げると、熱交換端末13Aで温水の熱を放熱するのに必要な循環流量が確保されず、熱交換端末13Aに対応する空間(A室)の暖房がされなくなってしまうおそれがあるからであり、熱交換端末13Aで温水の熱を放熱するのに必要な循環流量が確保できる循環ポンプ20の下限回転数を予め設定しておき、蓄熱運転の際、循環ポンプ20の回転数が下限回転数に到達した場合、その後は循環ポンプ20を下限回転数で制御するようにして、蓄熱運転時に暖房がされないという状態が生じないようにしたものである。
また、圧縮機制御手段32は、蓄熱運転の際、温水の温度が蓄熱目標温度になるように圧縮機3の回転数を制御するようにしている。
蓄熱運転時の目標温水温度は、暖房運転時の目標温水温度よりも高い蓄熱目標温度に設定されるため、蓄熱運転直前の暖房運転時の目標温水温度と温水との温度差よりも、蓄熱運転時の目標温水温度(蓄熱目標温度)と温水との温度差の方が大きくなり、圧縮機3の回転数は増加する方向に制御される。その結果、液冷媒熱交換器4を通過する冷媒の循環流量が増加し、液冷媒熱交換器4において冷媒から温水に与えようとする熱量が増加するので、液冷媒熱交換器4から流出する温水の温度を上昇させやすくなり、熱交換端末13A側への蓄熱を促進できる。また、蓄熱運転時の循環ポンプ20の回転数は暖房運転時より低下しているため、液冷媒熱交換器4において冷媒から温水に与えられる熱量は減り、液冷媒熱交換器4から流出する冷媒の温度が高くなる。そうすると、空気熱交換器7へ循環される冷媒の温度も高くなり、空気熱交換器7への霜の付着の進行を抑えることができるものである。
次に、前記ステップS2における目標温水温度(蓄熱目標温度)の設定の仕方について説明する。前記蓄熱目標温度は、それまで設定されていた暖房運転時の目標温水温度に、暖房負荷の大きさに影響を与える負荷要因量に応じた加算値を加えた温度(蓄熱目標温度=暖房運転時の目標温水温度+加算値)に設定される。前記加算値は、前記負荷要因量に応じて決定されるものであるが、これは循環回路19を循環する温水の温度を下げる要因として暖房負荷の大きさが関係するからである。暖房負荷の大きさはその時々によって異なり、蓄熱運転で必要な蓄熱量を熱交換端末13側に蓄熱するためには、暖房負荷の大きさに影響を与える負荷要因量に応じた加算値を決める必要がある。
前記暖房負荷の大きさに影響を与える負荷要因量としては、暖房運転を行っている熱交換端末13の数があり、暖房運転を行っている熱交換端末13の数により暖房負荷は増減する。暖房運転を行っている熱交換端末13の数に応じた加算値を第1加算値とした場合、第1加算値は、暖房運転を行っている熱交換端末13の数が少ないほど、前記蓄熱目標温度がより高くなるように大きい値が設定される。暖房負荷自体は暖房運転を行っている熱交換端末13の数が多いほど大きいが、暖房運転を行っている熱交換端末13の数が多い場合、家屋全体でみたときに蓄熱量が大きく、温水の温度が下がりにくい状態となるので、その場合は第1加算値としては小さくてよい。よって、第1加算値としては、暖房運転を行っている熱交換端末13の数が少ないほど、前記蓄熱目標温度がより高くなるように大きい値が設定され、逆に言えば、暖房運転を行っている熱交換端末13の数が多いほど、小さい値が設定される。
上記の暖房運転を行っている熱交換端末13の数にしたがい、前記ステップS2における目標温水温度(蓄熱目標温度)設定を実現するための制御手順を、図7のフローチャートにより説明すると、まず、蓄熱制御手段37は、暖房運転中の熱交換端末13の数を取得する(ステップS201A)。この暖房運転中の熱交換端末13の数の取得は、リモコン23の端末設定画面101で運転中となっている熱交換端末13の運転ON信号の数(本実施形態では、暖房運転中の熱交換端末13は熱交換端末13Aのみであり、暖房運転中の熱交換端末13の数は1となる。)を取得することで事足りる。
続いて、蓄熱制御手段37は、取得した暖房運転中の熱交換端末13の数に基づき第1加算値Xを決定する(ステップS202A)。なお、蓄熱制御手段37には、ステップS202Aに表されているように、暖房運転中の熱交換端末13の数と第1加算値Xの対応関係を示すテーブルデータが予め記憶されており、このテーブルデータに基づき、第1加算値Xを決定している。ここでは、暖房運転中の熱交換端末13の数が1台の場合、第1加算値Xは20℃に決定され、暖房運転中の熱交換端末13の数が2台の場合、第1加算値Xは20℃に決定され、暖房運転中の熱交換端末13の数が3台の場合、第1加算値Xは15℃に決定され、暖房運転中の熱交換端末13の数が4台の場合、第1加算値Xは15℃に決定され、暖房運転中の熱交換端末13の数が5台以上の場合、第1加算値Xは10℃に決定される。
そして、蓄熱制御手段37は、ステップS202Aで決定した第1加算値Xの情報を、目標温水温度設定手段35へと出力し、目標温水温度設定手段35は、それまで設定されていた暖房運転時の目標温水温度に第1加算値Xを加えることで蓄熱目標温度を決定し、その蓄熱目標温度を新たな目標温水温度として設定し(ステップS203)、ステップS2における目標温水温度(蓄熱目標温度)設定を終了して、先に述べたステップS3の処理に移行するものである。
また、前記暖房負荷の大きさに影響を与える負荷要因量としては、暖房運転を行っている熱交換端末13の数以外に、外気温度があり、外気温度の変動により暖房負荷は増減する。より詳細には、外気温度が低くなるほど暖房負荷は大きくなっていく。外気温度に応じた加算値を第2加算値とした場合、第2加算値は、外気温度が低いほど、前記蓄熱目標温度がより高くなるように大きい値が設定される。
前記ステップS2における目標温水温度(蓄熱目標温度)設定を実現するための制御手順を、図8のフローチャートにより説明すると、まず、外気温度センサ11により外気温度を検出し(ステップS201B)、蓄熱制御手段37は、外気温度センサ11で検出された外気温度に基づき第2加算値Yを決定する(ステップS202B)。なお、蓄熱制御手段37には、ステップS202Bに表されているように外気温度Tと第2加算値Yの対応関係を示すテーブルデータが予め記憶されており、このテーブルデータに基づき、第2加算値Yを決定している。ここでは、外気温度センサ11で検出された外気温度が−10℃未満の場合、第2加算値Yは10℃に決定され、外気温度が−10℃以上且つ−5℃未満の場合、第2加算値Yは7℃に決定され、外気温度が−5℃以上且つ2℃未満の場合、第2加算値Yは5℃に決定される。
そして、蓄熱制御手段37は、ステップS202Bで決定した第2加算値Yの情報を、目標温水温度設定手段35へと出力し、目標温水温度設定手段35は、それまで設定されていた暖房運転時の目標温水温度に第2加算値Yを加えることで蓄熱目標温度を決定し、その蓄熱目標温度を新たな目標温水温度として設定し(ステップS203)、ステップS2における目標温水温度(蓄熱目標温度)設定を終了して、先に述べたステップS3の処理に移行するものである。
また、前記ステップS2における目標温水温度(蓄熱目標温度)を設定するために、先に述べた、暖房運転中の熱交換端末13の数に応じた第1加算値および外気温度に応じた第2加算値の双方の加算値を用いてもよいものであり、それを実現するための制御手順を、図9のフローチャートにより説明すると、まず、暖房運転中の熱交換端末13の数を取得し(ステップS201A)、外気温度センサ11により外気温度を検出する(ステップS201B)。
続いて、蓄熱制御手段37は、取得した暖房運転中の熱交換端末13の数に基づき第1加算値Xを決定すると共に、外気温度センサ11で検出された外気温度に基づき第2加算値Yを決定する(ステップS202C)。
そして、蓄熱制御手段37は、ステップS202Cで決定した第1加算値Xおよび第2加算値Yの情報を、目標温水温度設定手段35へと出力し、目標温水温度設定手段35は、それまで設定されていた暖房運転時の目標温水温度に第1加算値Xおよび第2加算値Yを加えることで蓄熱目標温度を決定し、その蓄熱目標温度を新たな目標温水温度として設定し(ステップS203)、ステップS2における目標温水温度(蓄熱目標温度)設定を終了して、先に述べたステップS3の処理に移行するものである。
以上説明したように、本実施形態のヒートポンプ式温水暖房システム1では、蓄熱運転の際、目標温水温度設定手段35は、暖房運転時の目標温水温度に、暖房負荷の大きさに影響を与える負荷要因量に応じた加算値を加えて蓄熱目標温度とし、この蓄熱目標温度を新たな目標温水温度として設定するようにしている。
これは、循環回路19を循環する温水の温度を下げる要因として暖房負荷の大きさが関係するからであり、暖房負荷の大きさを考慮しないと、蓄熱運転で必要な蓄熱量を熱交換端末13側に蓄熱することができないからである。暖房負荷の大きさを考慮しない場合、蓄熱運転時の熱交換端末13側への蓄熱量が不足してしまうことがあり、そうなると、熱交換端末13側に蓄熱した分では、除霜運転時に低下する温水の温度低下分を賄うことができず、除霜運転時に暖房感が低下して快適性を損なうおそれがあり、また、暖房負荷の大きさを考慮しない場合、蓄熱運転時の熱交換端末13側への蓄熱量が過剰となってしまうことがあり、そうなると、過剰分は熱交換端末13側でただ放熱されるだけとなり、無駄なエネルギー消費となるおそれがある。
そこで、蓄熱運転の際、目標温水温度設定手段35は、暖房運転時の目標温水温度に、暖房負荷の大きさに影響を与える負荷要因量に応じた加算値を加えて蓄熱目標温度とし、この蓄熱目標温度を新たな目標温水温度として設定するようにしたことで、蓄熱運転で必要な蓄熱量を過不足なく熱交換端末13側に蓄熱することができるものである。
また、目標温水温度設定手段35は、蓄熱目標温度を設定するとき、負荷要因量としての暖房運転を行っている熱交換端末13の数に応じた第1加算値を用いるようにしている。
暖房負荷の大きさに影響を与える負荷要因量としては、暖房運転を行っている熱交換端末13の数があり、暖房運転を行っている熱交換端末13の数に応じた第1加算値を用いることで、暖房負荷の大きさに対応した蓄熱目標温度を設定することができるものである。
また、第1加算値は、暖房運転を行っている熱交換端末13の数が少ないほど、蓄熱目標温度が高くなるようにその値が設定されている。
これは、暖房負荷自体は暖房運転を行っている熱交換端末13の数が多いほど大きいが、暖房運転を行っている熱交換端末13の数が多い場合、家屋全体でみたときに蓄熱量が大きくなり、温水の温度が下がりにくい状態となるので、この場合、第1加算値としては小さくてよい。よって、暖房運転を行っている熱交換端末13の数が少ないほど、蓄熱目標温度がより高くなるように大きい値が設定され、暖房運転を行っている熱交換端末13の数が多いほど、小さい値が設定されることで、暖房負荷の大きさに対応した適切な蓄熱目標温度を設定することができるものである。
また、目標温水温度設定手段35は、蓄熱目標温度を設定するとき、負荷要因量としての外気温度に応じた第2加算値を用いるようにしている。
暖房負荷の大きさに影響を与える負荷要因量としては、暖房運転を行っている熱交換端末13の数以外に、外気温度が考えられ、外気温度に応じた第2加算値を用いることで、暖房負荷の大きさに対応した蓄熱目標温度を設定することができるものである。
また、第2加算値は、外気温度が低いほど、前記蓄熱目標温度が高くなるようにその値が設定されている。
これは、外気温度が低くなるほど暖房負荷は大きくなっていくからであり、第2加算値は、外気温度が低いほど、蓄熱目標温度がより高くなるように大きい値が設定されることで、暖房負荷の大きさに対応した適切な蓄熱目標温度を設定することができるものである。
なお、前記第1加算値と前記第2加算値の双方の加算値を用いることでも、暖房負荷の大きさに対応した蓄熱目標温度を設定することができる。したがって、目標温水温度設定手段35は、蓄熱目標温度を設定するとき、前記第1加算値または前記第2加算値のうち、少なくとも一方の加算値を用いればよいものである。
次に、特徴的な動作として、前記蓄熱運転開始条件を補正する制御について説明する。先に述べたとおり、蓄熱運転開始条件は、除霜開始条件が成立するよりも手前で成立する条件であるが、蓄熱運転時において、温水の温度が目標温水温度(蓄熱目標温度)に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間は、各地域の環境条件(温度や湿度等)により大きく異なる。温水の温度が目標温水温度(蓄熱目標温度)に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間が長すぎる、あるいは短すぎるということがないように、蓄熱運転の開始タイミングを調整する、すなわち、各地域の環境条件を学習しそれに合わせて蓄熱運転開始条件を補正する必要がある。
本実施形態では、蓄熱制御手段37により、蓄熱運転開始条件の補正を実現するものであり、蓄熱制御手段37は、外気温度が所定温度(例えば2℃)以下、且つ、外気温度−空気熱交換器7の出口側の冷媒温度>4℃+αという蓄熱運転開始条件を予め記憶している。この式でいうαが補正値であり、この値を変更することで、蓄熱運転開始条件の補正が行われる。なお、αの初期値としてはゼロが入力されている。また、蓄熱運転開始条件である外気温度と空気熱交換器7の出口側の冷媒温度との温度差の上限値としては6℃(4℃+α=6℃)が設定され、外気温度と空気熱交換器7の出口側の冷媒温度との温度差の下限値としては2℃(4℃+α=2℃)が設定され、予め蓄熱制御手段37に記憶されている。
ここで、蓄熱制御手段37には、図10に示すような、蓄熱運転時において温水の温度が蓄熱目標温度に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間tと補正値αの対応関係を示すテーブルデータが予め記憶されている。蓄熱運転時において温水の温度が蓄熱目標温度に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間は、前記計測手段40で計測されており、その計測時間が、予め設定された第1時間範囲(10分以上且つ20分未満)内の場合、前記蓄熱開始条件補正手段41は、補正値としてα=0を選択し、次回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件の補正を行わないようにする。
また、前記計測時間が、前記第1時間範囲より長い第2時間範囲(20分以上且つ30分未満)内の場合、前記蓄熱開始条件補正手段41は、補正値としてα=1を選択し、次回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件を、蓄熱運転の開始を遅らせる方向に補正するようにする。ここで、補正値αとして正の値(ここでは、1)を選択するということは、次回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件が成立するためには、外気温度と空気熱交換器7の出口側の冷媒温度との温度差が、今回よりも大きくならなければいけないということになり、蓄熱運転開始条件が成立しにくい方向、すなわち、除霜開始条件により近づく方向にし、熱交換端末13側に蓄熱する時間を減らして、無駄な放熱時間が短くなるようにすることを意味する。
さらに、前記計測時間が、前記第2時間範囲より長い第3時間範囲(30分以上)内の場合、前記蓄熱開始条件補正手段41は、補正値としてα=2を選択し、次回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件を、計測時間が前記第2時間範囲内であるときよりも、蓄熱運転の開始がより遅れる方向に補正するようにする。
また、前記計測時間が、前記第1時間範囲より短い第4時間範囲(0分以上且つ10分未満)内の場合、前記蓄熱開始条件補正手段41は、補正値としてα=−1を選択し、次回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件を、蓄熱運転の開始が早まる方向に補正するようにする。ここで、補正値αとして負の値(ここでは、−1)を選択するということは、次回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件が成立するためには、外気温度と空気熱交換器7の出口側の冷媒温度との温度差が、今回よりも小さくてよいということになり、蓄熱運転開始条件が成立しやすい方向、すなわち、除霜開始条件からより遠ざかる方向にして、除霜運転開始までに熱交換端末13側に蓄熱する時間を増やすようにすることを意味する。
なお、蓄熱運転時において温水の温度が蓄熱目標温度に到達する前に除霜開始条件が成立した場合、前記蓄熱開始条件補正手段41は、前記計測手段40の計測時間に応じることなく、補正値としてα=−1を選択し、次回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件を、蓄熱運転の開始が早まる方向に補正するようにする。ここで、蓄熱運転時において温水の温度が蓄熱目標温度に到達する前に除霜開始条件が成立してしまうということは、熱交換端末13側の温水の温度が蓄熱目標温度よりも低く、必要とする蓄熱量に到達する前に除霜運転が開始されてしまうことになる。よって、蓄熱運転時において温水の温度が蓄熱目標温度に到達する前に除霜開始条件が成立した場合は、補正値αとして負の値(ここでは、−1)を選択し、次回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件が成立しやすい方向、すなわち、除霜開始条件からより遠ざかる方向にして、除霜運転開始までに熱交換端末13側に蓄熱する時間を増やすようにするものである。
次に、蓄熱運転開始条件の補正を実現するための制御手順を、図11のフローチャートにより説明する。ここでは、熱交換端末13Aによる暖房運転が行われる場面について説明を行う。
前記暖房運転が開始されると、蓄熱開始条件補正手段41は蓄熱運転開始条件の設定を行う(ステップS11)。設置後、初めての暖房運転の場合、補正値αには初期値としてゼロが記憶されているため、蓄熱運転開始条件は、外気温度が所定温度(例えば2℃)以下、且つ、外気温度−空気熱交換器7の出口側の冷媒温度>4℃に設定される。
そして、蓄熱制御手段37は、外気温度センサ11で検出される外気温度および冷媒温度センサ12で検出される空気熱交換器7の出口側の冷媒温度に基づき、ステップS11で設定された蓄熱運転開始条件が成立したか否か判定する(ステップS12)。蓄熱運転開始条件が成立していなければ判定が満たされずループ待機し(ステップS12:NO)、蓄熱運転開始条件が成立したら判定が満たされ(ステップS12:YES)、蓄熱制御手段37は、蓄熱運転を開始し(ステップS13)、カウント手段39による蓄熱運転の時間のカウントが開始され(ステップS14)、ステップS15に移行する。
ステップS15において、蓄熱制御手段37は、戻り温度センサ22Aで検出される温水温度が目標温水温度設定手段35で設定された目標温水温度(蓄熱目標温度)に到達したか否かを判定する。戻り温度センサ22Aで検出される温水温度が目標温水温度に到達していなければ判定が満たされず(ステップS15:NO)、ステップS16に移行し、ステップS16において、除霜制御手段38は、所定の除霜開始条件が成立したか否か判定する。ここで、前記除霜開始条件の成立は、外気温度と空気熱交換器7の出口側の冷媒温度とに基づいて設定される条件、例えば、外気温度が所定温度(例えば2℃)以下、且つ、外気温度−空気熱交換器7の出口側の冷媒温度>8℃という条件か、または蓄熱運転を開始してから一定時間(例えば、40分)が経過すること、すなわちカウント手段39のカウントする時間が一定時間を超えるという条件のうち、何れか一方の条件が成立することである。
前記ステップS16において、所定の除霜開始条件が成立していなければ判定が満たされず(ステップS16:NO)、ステップS15に移行する。このように、戻り温度センサ22Aで検出される温水温度が目標温水温度(蓄熱目標温度)に到達しておらず(ステップS15:NO)、除霜開始条件も成立しない場合(ステップS16:NO)、ステップS15:NO→ステップS16:NO→ステップS15をループすることになる。そして、除霜開始条件が成立する前に、戻り温度センサ22Aで検出される温水温度が目標温水温度(蓄熱目標温度)に到達した場合(ステップS15:YES)、ステップS17に移行する。
ステップS17において、計測手段40は、温水の温度が蓄熱目標温度に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間の計測を開始し、ステップS18に移行する。
ステップS18において、除霜制御手段38は、所定の除霜開始条件が成立したか否か判定する。除霜開始条件が成立していなければ判定が満たされずループ待機し(ステップS18:NO)、除霜開始条件が成立したら判定が満たされ(ステップS18:YES)、蓄熱運転を終了し、ステップS19に移行する。
ステップS19において、蓄熱開始条件補正手段41は、計測手段40で計測された計測時間に基づき補正値αを決定する。このステップS19で蓄熱開始条件補正手段41は、図10に示したテーブルデータを用いて、計測手段40の計測時間に基づいて補正値αを決定し、新たな補正値αが記憶され、前記ステップS11の処理に戻る。次回の蓄熱運転が行われるときは、前記ステップS11の蓄熱運転開始条件設定処理において、ステップS19で決定・記憶された補正値αを適用した蓄熱運転開始条件が設定される。
前記ステップS19において、計測時間が前記第1時間範囲(10分以上且つ20分未満)内の場合、蓄熱開始条件補正手段41は、補正値α=0を選択・決定し、次回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件を、今回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件から変更せず、実質的に補正しないようにする。
前記ステップS19において、計測時間が前記第2時間範囲(20分以上且つ30分未満)内の場合、蓄熱開始条件補正手段41は、補正値としてα=1を選択・決定し、次回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件を、今回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件に比べて、蓄熱運転の開始を遅らせる方向に補正するようにする。
前記ステップS19において、計測時間が前記第3時間範囲(30分以上)内の場合、蓄熱開始条件補正手段41は、補正値としてα=2を選択・決定し、次回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件を、今回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件に比べて、蓄熱運転の開始を遅らせる方向に補正し、且つ計測時間が前記第2時間範囲内であるときよりも、蓄熱運転の開始がより遅れる方向に補正するようにする。
前記ステップS19において、計測時間が前記第4時間範囲(0分以上且つ10分未満)内の場合、ステップS19にて蓄熱開始条件補正手段41は、補正値としてα=−1を選択・決定し、次回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件を、今回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件に比べて、蓄熱運転の開始が早まる方向に補正するようにする。
一方、前記ステップS15において、戻り温度センサ22Aで検出される温水温度が目標温水温度(蓄熱目標温度)に到達する前に(ステップS15:NO)、除霜制御手段38により除霜開始条件が成立したと判定された場合(ステップS16:YES)、ステップS19において、蓄熱開始条件補正手段41は、補正値としてα=−1を選択・決定し、次回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件を、今回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件に比べて、蓄熱運転の開始が早まる方向に補正するようにする。
以上説明したように、本実施形態のヒートポンプ式温水暖房システム1では、蓄熱運転時に温水の温度が所定の蓄熱目標温度に到達してから所定の除霜開始条件が成立するまでの時間を計測する計測手段40と、計測手段40で計測された計測時間に応じて、次回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件を補正する蓄熱開始条件補正手段41とを設けている。
蓄熱運転開始条件は、除霜開始条件が成立するよりも手前で成立する条件であるが、蓄熱運転時において、温水の温度が蓄熱目標温度に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間は、各地域の環境条件(温度や湿度等)により大きく異なるため、温水の温度が蓄熱目標温度に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間が長くなった場合、熱交換端末13A側への蓄熱分が無駄に放熱される時間が長くなってしまい、また、温水の温度が蓄熱目標温度に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間が短い、または温水の温度が蓄熱目標温度に到達しない場合、熱交換端末13A側への蓄熱分が不足しているおそれがある。
そこで、蓄熱運転時に温水の温度が所定の蓄熱目標温度に到達してから所定の除霜開始条件が成立するまでの時間を計測する計測手段40と、計測手段40で計測された計測時間に応じて、次回の蓄熱運転時の蓄熱運転開始条件を補正する蓄熱開始条件補正手段41とを設けたことで、蓄熱運転の開始タイミングを調整して、各地域の環境条件に合った蓄熱運転開始条件とすることができ、熱交換端末13A側への蓄熱を過不足なく行うことができるものである。
また、計測手段40の計測する計測時間が、予め設定された第1時間範囲より長い第2時間範囲または第3時間範囲の場合、蓄熱開始条件補正手段41は、次回の蓄熱運転開始条件を、蓄熱運転の開始を遅らせる方向に補正するようにしている。
蓄熱運転時に温水の温度が蓄熱目標温度に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間が長いということは、除霜運転開始までに無駄に放熱している時間が長いということであり、その場合は、次回の蓄熱運転開始条件が今回よりも成立しにくくなるよう蓄熱運転の開始を遅らせる方向(除霜開始条件により近づく方向)に補正することで、次回の蓄熱運転時において、温水の温度が蓄熱目標温度に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間を短くし、除霜運転開始までの無駄な放熱時間が短くなるようにして、熱交換端末13A側への蓄熱が過剰とならないようにすることができるものである。
また、蓄熱開始条件補正手段41は、計測手段40の計測する計測時間が長いほど、蓄熱運転の開始がより遅れる方向に補正するようにしている。
蓄熱運転時に温水の温度が蓄熱目標温度に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間が長いほど、除霜運転開始までに無駄に放熱している時間が長くなっているということである。つまり、計測時間が第2時間範囲内であった場合よりも、第3時間範囲内であった場合の方が、次回の蓄熱運転開始条件が成立しにくくなるよう蓄熱運転の開始がより遅れる方向(除霜開始条件により近づく方向)に補正することで、次回の蓄熱運転時において、温水の温度が蓄熱目標温度に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間を短くし、除霜運転開始までの無駄な放熱時間が短くなるようにして、熱交換端末13A側への蓄熱が過剰とならないようにすることができるものである。
また、計測手段40の計測する計測時間が、予め設定された第1時間範囲より短い第4時間範囲の場合、蓄熱開始条件補正手段41は、次回の蓄熱運転開始条件を、蓄熱運転の開始が早まる方向に補正するようにしている。
蓄熱運転時に温水の温度が蓄熱目標温度に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間が短いということは、蓄熱量に余裕分がなく不足するかもしれないということであり、その場合は、次回の蓄熱運転開始条件が今回よりも成立しやすくなるよう蓄熱運転の開始が早まる方向(除霜開始条件から遠ざかる方向)に補正することで、次回の蓄熱運転時において、温水の温度が蓄熱目標温度に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間を長くし、除霜運転開始までに熱交換端末13A側へ蓄熱する時間が増えるようにして、熱交換端末13A側への蓄熱が不足しないようにすることができるものである。
また、計測手段40の計測する計測時間が、予め設定された第1時間範囲内の場合、蓄熱開始条件補正手段41は、次回の蓄熱運転開始条件を補正しないようにしている。
蓄熱運転時に温水の温度が蓄熱目標温度に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間が最適で、熱交換端末13A側への蓄熱を過不足なく行うことができている状態のため、その場合は、次回の蓄熱運転開始条件を今回の蓄熱運転開始条件から変更しない、つまり、次回の蓄熱運転開始条件を補正しないようにすることで、次回の蓄熱運転時において、温水の温度が蓄熱目標温度に到達してから除霜開始条件が成立するまでの時間も最適な時間となり、熱交換端末13A側への蓄熱を過不足なく行うことができるものである。
また、蓄熱運転時において、温水の温度が所定の蓄熱目標温度に到達する前に所定の除霜開始条件が成立した場合、蓄熱開始条件補正手段41は、計測手段40で計測された計測時間に応じることなく(計測手段40で計測された計測時間とは無関係に)、次回の蓄熱運転開始条件を、蓄熱運転の開始が早まる方向に補正するようにしている。
蓄熱運転時において、温水の温度が所定の蓄熱目標温度に到達する前に所定の除霜開始条件が成立するということは、熱交換端末13A側への蓄熱量が不足しているということであり、その場合は、次回の蓄熱運転開始条件が今回よりも成立しやすくなるよう蓄熱運転の開始が早まる方向(除霜開始条件から遠ざかる方向)に補正することで、次回の蓄熱運転時において、除霜開始条件成立までに熱交換端末13A側へ蓄熱する時間が増えるようにして、熱交換端末13A側への蓄熱が不足しにくくすることができるものである。
次に、空気熱交換器7の霜を溶かす除霜運転について説明する。本実施形態の除霜運転は、暖房運転時と同方向に冷媒を循環させる形態(いわゆる正サイクル除霜)であり、圧縮機3から吐出された冷媒は、液冷媒熱交換器4を介して膨張弁5を通過し、空気熱交換器7に供給されて空気熱交換器7に発生した霜を溶かす。
なお、前記除霜運転は、先に説明してきた除霜開始条件が成立したか否かを除霜制御手段38が判断して、除霜開始条件が成立したと判断したら除霜運転が開始され、前記除霜運転の完了は、所定の除霜終了条件が成立したか否かを除霜制御手段38が判断して、除霜開始条件が成立したと判断したら、前記除霜運転の完了となる。前記除霜終了条件は、例えば、冷媒温度センサ12で検出される空気熱交換器7の出口側の冷媒の温度が、予め設定された除霜終了温度(例えば、5℃)に達することである。
前記除霜運転が開始されると、除霜制御手段38から圧縮機制御手段32に除霜運転中である旨の信号が出力され、圧縮機制御手段32は、その信号を受け、圧縮機3を予め設定された除霜時回転数(一定回転数)で制御する。なお、ここでは、除霜制御手段38からの指示に基づき圧縮機制御手段32が圧縮機3の回転数を制御するようにしているが、除霜運転時において、除霜制御手段38が、直接、圧縮機3の回転数を制御するようにしても、同様の制御を実施することができる。
また、前記除霜運転が開始されると、除霜制御手段38から膨張弁制御手段33に除霜運転中である旨の信号が出力され、膨張弁制御手段33は、その信号を受け、膨張弁5を暖房運転時の開度よりも大きい所定の開度(例えば全開)まで拡大させ、膨張弁5を通過する冷媒が膨張弁5で減圧されることがないようにする。なお、ここでは、除霜制御手段38からの指示に基づき膨張弁制御手段33が膨張弁5の開度を制御するようにしているが、除霜運転時において、除霜制御手段38が、直接、膨張弁5の開度を制御するようにしても、同様の制御を実施することができる。
さらに、前記除霜運転が開始されると、除霜制御手段38から循環ポンプ制御手段34に除霜運転中である旨の信号が出力され、循環ポンプ制御手段34は、その信号を受け、冷媒温度センサ12の検出する冷媒温度に基づいて循環ポンプ20の駆動を制御する。なお、ここでは、除霜制御手段38からの指示に基づき循環ポンプ制御手段34が循環ポンプ20の駆動を制御するようにしているが、除霜運転時において、除霜制御手段38が、直接、循環ポンプ20の駆動を制御するようにしても、同様の制御を実施することができる。説明を簡単化するため、以下、除霜運転時においては、除霜制御手段38が、直接、循環ポンプ20の駆動を制御するものとする。
ここで、除霜運転時における循環ポンプ20の駆動制御(回転数制御)について説明すると、除霜運転中において、除霜制御手段38は、空気熱交換器7の除霜を継続しながら(換言すると、膨張弁5を全開にして空気熱交換器7に高温冷媒が流れるようにして空気熱交換器7の除霜を行いながら)、冷媒温度センサ12で検出される温度に基づいて循環ポンプ20の駆動を制御する。以下、詳細について説明する。
まず、除霜運転開始時に、除霜制御手段38は、それまで駆動中であった循環ポンプ20の駆動を停止させ、温水の循環を停止させる。これは、除霜運転開始時に、循環ポンプ20を駆動させた状態だと、液冷媒熱交換器4において冷媒と温水との熱交換により、冷媒の保有熱量の一部が温水側に吸熱されてしまい、空気熱交換器7を除霜するための熱量が奪われ、空気熱交換器7の除霜が進まなくなってしまうので、除霜運転開始時に循環ポンプ20の駆動を停止させるのである。特に、除霜運転開始時は、空気熱交換器7の着霜量が多いため、冷媒の保有熱量が除霜のためだけに使用されるように、除霜運転開始時に循環ポンプ20の駆動を停止させるのがよい。なお、上記の温水の循環停止とは、実質的に温水の流れが止まることをいうものである。
そして、除霜運転中において、除霜制御手段38は、冷媒温度センサ12で検出される温度が、前記除霜終了条件が成立する手前で必ず成立する所定の循環ポンプ駆動開始条件に到達したと判断したら、循環ポンプ20の回転数を暖房運転時よりも低い回転数で駆動させ、温水の循環を行わせるようにする。
前記循環ポンプ駆動開始条件は、例えば、冷媒温度センサ12で検出される空気熱交換器7の出口側の冷媒の温度が予め設定された循環ポンプ駆動開始温度(0℃より高く且つ除霜終了温度の5℃より低い、例えば1℃)以上になったか否かとされ、除霜制御手段38は、前記循環ポンプ駆動開始条件が成立したと判断すると、循環ポンプ20を暖房運転時よりも低い所定回転数(例えば1000rpm)で駆動を開始させ、冷媒温度センサ12で検出される空気熱交換器7の出口側の冷媒の温度が、上昇に伴って除霜終了条件の成立する方向に近づくにつれ、循環ポンプ20の回転数を増加させるように制御するものである。
前記除霜運転中に空気熱交換器7の霜が溶け始めると、除霜に必要な熱量に対して冷媒の保有熱量が過剰となり、冷媒温度センサ12で検出される冷媒温度が上昇してくる。何もしなければ除霜に必要な熱量以外の余剰の熱量は空気熱交換器7から単に放熱されるだけであり、放熱ロスとなってしまう。その放熱ロス分を暖房用の熱量にするために、冷媒温度センサ12で検出される空気熱交換器7の出口側の冷媒の温度が上昇してきて予め設定された所定温度以上になったときに、循環ポンプ20を暖房運転時よりも低回転数で駆動を開始させて、液冷媒熱交換器4において冷媒の保有熱量の一部を温水側に吸熱させ、それまで除霜のためだけに用いられていた熱量の一部を暖房に用いるのである。また、冷媒温度センサ12で検出される空気熱交換器7の出口側の冷媒の温度が上昇していき、除霜終了条件の成立する方向に近づくということは、除霜に必要な熱量以外の余剰の熱量が増えているということであり、そうした場合は、冷媒温度センサ12で検出される空気熱交換器7の出口側の冷媒の温度が除霜終了条件の成立する方向に近づくにつれて、循環ポンプ20の回転数を増加させ、暖房に用いる熱量を増やすように制御するものである。
前記除霜運転開始時は、空気熱交換器7の着霜量が多いため、冷媒の保有熱量が除霜のためだけに使用されるように循環ポンプ20の駆動を停止させているが、除霜運転中に冷媒温度センサ12で検出される冷媒温度が所定温度まで上昇してきたら、循環ポンプ20の駆動を開始させて、除霜を継続しながらも、温水を熱交換端末13に循環させ暖房も行うことができるものである。
なお、前記除霜制御手段38には、図12に示すように、空気熱交換器7の出口側の冷媒温度rと循環ポンプ20の駆動回転数の対応関係を示すテーブルデータが予め記憶されており、このテーブルデータに基づき、循環ポンプ20の回転数を決定するようにしている。ここでは、冷媒温度センサ12で検出された冷媒温度が1℃未満の場合、循環ポンプ20の回転数は0rpmに決定、すなわち停止状態とされ、冷媒温度センサ12で検出された冷媒温度が1℃以上且つ2℃未満の場合、循環ポンプ20の回転数は1000rpmに決定され、冷媒温度センサ12で検出された冷媒温度が2℃以上且つ3℃未満の場合、循環ポンプ20の回転数は1200rpmに決定され、冷媒温度センサ12で検出された冷媒温度が3℃以上且つ5℃未満の場合、循環ポンプ20の回転数は1500rpmに決定される。
次に、上記除霜運転時の動作を実現するための制御手順を、図13のフローチャートにより説明する。ここでは、熱交換端末13Aによる暖房運転(蓄熱運転を含む)が行われているときに除霜運転が実施される場面について説明を行う。
前記暖房運転時において、除霜制御手段38が、前記除霜開始条件が成立したと判定した場合、空気熱交換器7の霜を溶かす除霜運転が開始され、まず、除霜制御手段38は、循環ポンプ20を停止させて、温水の循環を停止させ(ステップS21)、さらに、圧縮機3の回転数を除霜時回転数で駆動させると共に、膨張弁5の開度を全開に拡大させ(ステップS22)、ステップS23に移行する。
ステップS23において、除霜制御手段38は、循環ポンプ駆動開始条件が成立したか否か、すなわち、冷媒温度センサ12で検出された冷媒温度が循環ポンプ駆動開始温度(ここでは1℃)以上になったか否かを判定する。冷媒温度センサ12で検出された冷媒温度が1℃に到達していなければ判定が満たされず(ステップS23:NO)、ループ待機し、冷媒温度センサ12で検出された冷媒温度が1℃に到達したら判定が満たされ(ステップS23:YES)、ステップS24に移行する。
ステップS24において、除霜制御手段38は、冷媒温度センサ12で検出された冷媒温度に応じて循環ポンプ20の駆動回転数を決定し、決定した回転数で循環ポンプ20の駆動を制御し、温水の循環を行わせる。このステップS24で除霜制御手段38は、図12に示したテーブルデータを用いて、冷媒温度センサ12で検出された空気熱交換器7の出口側の冷媒温度に基づいて循環ポンプ20の駆動回転数を決定する。
前記ステップS24において、冷媒温度センサ12で検出された冷媒温度が1℃以上且つ2℃未満の場合、循環ポンプ20の回転数は1000rpmに決定され、冷媒温度センサ12で検出された冷媒温度が2℃以上且つ3℃未満の場合、循環ポンプ20の回転数は1200rpmに決定され、冷媒温度センサ12で検出された冷媒温度が3℃以上且つ5℃未満の場合、循環ポンプ20の回転数は1500rpmに決定される。実際の動作としては、ステップS23にて循環ポンプ駆動開始条件が成立した場合、ステップS24にて、まず、循環ポンプ20は停止状態から1000rpmで駆動開始され、冷媒温度センサ12で検出された冷媒温度が上昇するにつれ、1200rpm、1500rpmと徐々に循環ポンプ20の回転数は増加されていくこととなる。
そして、ステップS25において、除霜制御手段38は、所定の除霜終了条件が成立したか否か、すなわち、冷媒温度センサ12で検出された冷媒温度が除霜終了温度(ここでは5℃)以上になったか否かを判定する。除霜終了条件が成立していなければ判定が満たされず(ステップS25:NO)、ステップS24の処理に戻り、除霜終了条件が成立したら判定が満たされ(ステップ25:YES)、除霜運転を終了し、熱交換端末13Aによる暖房運転を再開させる。
以上説明したように、本実施形態のヒートポンプ式温水暖房システム1では、除霜運転(正サイクル除霜)開始時には、温水の循環を停止させ、正サイクル除霜中には、空気熱交換器7の除霜を継続しながら、冷媒温度センサ12で検出される冷媒温度に基づき所定の条件に到達したと判断したら、温水の循環を行わせるようにしたことで、除霜運転中に、除霜を行いつつも、空気熱交換器7の出口側の冷媒温度に応じて、適宜、循環ポンプ20を駆動させて温水を循環させ、熱交換端末13Aによる暖房も行うことができるものである。
また、除霜制御手段38は、除霜開始時に循環ポンプ20を停止させ、除霜運転中に、冷媒温度センサ12で検出される冷媒温度が、除霜終了条件成立前に成立する循環ポンプ駆動開始条件に到達したと判断したら、循環ポンプ20の回転数を暖房運転時よりも低い回転数で駆動させるようにしたことで、除霜運転開始時は、空気熱交換器7の着霜量が多いため、冷媒の保有熱量が除霜のためだけに使用されるように循環ポンプ20の駆動を停止させて集中的に除霜を行い、そして、冷媒温度センサ12で検出される冷媒温度が上昇してきて、循環ポンプ駆動開始条件まで上昇してきたら、循環ポンプ20を暖房運転時よりも低回転数で駆動開始させて除霜に必要な熱量を奪いすぎないようにして、除霜を継続しながらも、温水を熱交換端末13Aに循環させ暖房も行うことができ、除霜運転時の無暖房の時間を短縮することができるものである。
さらに、除霜制御手段38は、前記循環ポンプ駆動開始条件に到達したと判断した後、冷媒温度センサ12で検出される冷媒温度が、除霜終了条件の成立する方向(除霜終了温度)に近づくにつれ、循環ポンプ20の回転数を増加させていくようにしたことで、冷媒温度センサ12で検出される冷媒温度が、循環ポンプ駆動条件に到達してから除霜終了条件の成立する方向に近づくということは、すなわち、空気熱交換器7の出口側の冷媒の温度が上昇しているということであり、空気熱交換器7の除霜に必要な熱量以外の余剰の熱量が増えているということであり、その場合、冷媒温度センサ12で検出される空気熱交換器7の出口側の冷媒の温度が除霜終了条件の成立する方向に近づくにつれて、循環ポンプ20の回転数を増加させて、暖房に用いる熱量を増やすことができ、除霜運転時における暖房感の低下を抑制することができるものである。
なお、本発明は先に説明した一実施形態に限定されるものではなく、本実施形態では、熱交換端末13Aのみによる暖房運転を行っている場面において、本発明たる蓄熱運転時の目標温水温度設定、目標吐出温度設定、圧縮機3の回転数制御、および循環ポンプ20の回転数制御を適用したが、複数の熱交換端末13の中で、少なくとも1台が暖房運転を行っている状況であれば、本発明を適用してよいものである。
また、本実施形態では、除霜運転として正サイクル除霜を行っているが、本発明たる蓄熱運転は、除霜運転を行う前に熱交換端末13側に蓄熱することを目的とするものであるため、除霜運転としては暖房運転時と逆方向に冷媒を循環させる公知の逆サイクル除霜を行うものであってもよい。
また、本実施形態では、ヒートポンプユニット2は、暖房運転のみが行えるものとしているが、暖房運転および冷房運転を行えるヒートポンプユニット2としてもよい。